JP2015005313A - 記録テープカートリッジ及びそれに設けられる制動部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】記録テープカートリッジの制動部材に球状部材を容易に設けられるようにするとともに精度よく保持させる。【解決手段】記録テープが巻装されたリールハブ32の底部36に係合部が形成されたリール30と、底部36に対し接離して係合部に係合する回転ロック位置と係合部との係合状態を解除する回転許容位置とを選択的に取る制動部材60と、底部36にリール30の軸方向へ移動可能にかつリール30と一体回転するように設けられ、リール30を回転させる際に制動部材60を回転許容位置に保持する解除部材84と、を備えた記録テープカートリッジであって、制動部材60の軸心部からリール30の軸方向へ突設された突出部70に、解除部材84と当接させる球状部材58を収容する収容部69と、収容部69の開口端部からリール30の径方向内側へ張り出すことにより収容部69に収容された球状部材58を回転不能に保持する張出部71と、を形成する。【選択図】図6

Description

本発明は、主にコンピューター等の記録再生媒体として使用される磁気テープ等の記録テープが巻装された単一のリールをケース内に収容してなる記録テープカートリッジと、記録テープカートリッジに設けられる制動部材に関する。
磁気テープ等の記録テープが巻装された単一のリールをケース内に収容してなる記録テープカートリッジでは、不使用時にリールがケース内で回転しないようにするために、リールに係合する樹脂製の制動部材を備えている。そして、使用時には、樹脂製の解除部材により制動部材を持ち上げてリールに対する係合を解除するようになっている。
つまり、解除部材はリールと共に回転するようになっており、制動部材との間で摺接するようになっている。ここで、その摺接部位の摩擦に伴う摩耗を低減するために、制動部材に鋼球を回転可能に設け、その鋼球が解除部材と摺接するようにしたものが、従来から知られている(例えば、特許文献1参照)。また、ドライブ装置側に解除部材としての樹脂製の球体が設けられたものも、従来から知られている(例えば、特許文献2参照)。
特開2000−339911号公報 米国特許第6279845号公報
しかしながら、特許文献1に記載されているように、制動部材に鋼球が回転可能に設けられていると、その鋼球の回転に伴って、制動部材の鋼球を保持している部分が摩耗するおそれがあり、記録テープカートリッジの使用頻度に伴って鋼球を精度よく保持できなくなるおそれがある。
また、特許文献1に記載されているものでは、制動部材のソケット部に鋼球を嵌め込む際、リールの径方向に延在する基底壁を、その径方向外側へ弾性変形させなければならないため、鋼球を嵌め込み難いという問題がある。また、その嵌め込みにより、鋼球の抜け外れ防止用としてソケット部に形成されたリブが破損又は塑性変形するおそれがある。
ソケット部に形成されたリブが破損又は塑性変形した場合には、鋼球に対するソケット部の保持力が低下し、鋼球の保持位置がずれるおそれがある。すなわち、ソケット部が鋼球を精度よく保持することができなくなるおそれがある。このような危惧は、特許文献2に記載されているような解除部材側でも同様である。
そこで、本発明は、球状部材を容易に設けることができるとともに精度よく保持することができる制動部材又は解除部材を備えた記録テープカートリッジと、その記録テープカートリッジに設けられる制動部材を得ることを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明に係る第1の態様の記録テープカートリッジは、ケース内に収容され、記録テープが巻装された有底円筒状のリールハブの底部に係合部が形成されたリールと、ケース内に回転不能に設けられ、リールハブの底部に対し接離して、係合部に係合する回転ロック位置と、係合部との係合状態を解除する回転許容位置とを選択的に取る樹脂製の制動部材と、リールハブの底部に、リールの軸方向へ移動可能に、かつリールと一体回転するように設けられ、リールを回転させる際に制動部材を回転許容位置に保持する樹脂製の解除部材と、制動部材及び解除部材の何れか一方における軸心部からリールの軸方向へ突設され、制動部材及び解除部材の何れか他方と当接させる球状部材を収容する収容部が形成されるとともに、収容部の開口端部からリールの径方向内側へ張り出すことにより収容部に収容された球状部材を回転不能に保持する張出部が形成された突出部と、を有することを特徴としている。
第1の態様の発明によれば、制動部材及び解除部材の何れか一方における軸心部からリールの軸方向へ突設された突出部に、制動部材及び解除部材の何れか他方と当接させる球状部材を収容する収容部と、その収容部の開口端部からリールの径方向内側へ張り出すことにより収容部に収容された球状部材を回転不能に保持する張出部と、が形成されている。
ここで、球状部材は、収容部に嵌め込まれることで(張出部が球状部材を乗り越えることで)設けられるが、その収容部が形成されている突出部は、リールの軸方向へ突設されているので、リールの径方向外側へ弾性変形させ易い。したがって、球状部材は容易に設けられ、張出部が破損又は塑性変形し難い。そして、球状部材は回転不能に保持されるため、制動部材又は解除部材の球状部材を保持している部分が摩耗するおそれがない。よって、球状部材は制動部材又は解除部材に精度よく保持される。
また、本発明に係る第2の態様の記録テープカートリッジは、第1の態様の記録テープカートリッジであって、収容部が、収容部の開口端部側へ向かうに従って内径が大きくなる内壁を有し、内壁と張出部とで球状部材が挟持固定されていることを特徴としている。
第2の態様の発明によれば、収容部の内壁と張出部とで球状部材が挟持固定される。したがって、収容部の内壁と張出部とで球状部材が挟持固定されない構成に比べて、球状部材は回転不能に精度よく保持される。
また、本発明に係る第3の態様の記録テープカートリッジは、第1又は第2の態様の記録テープカートリッジであって、突出部の突出高さは、球状部材の直径から、収容部の開口端部から露出されている球状部材の一部の高さを減算した高さよりも高いか、又は、その減算した高さと同一であることを特徴としている。
第3の態様の発明によれば、突出部の突出高さが、球状部材の直径から、収容部の開口端部から露出されている球状部材の一部の高さを減算した高さよりも高いか、又は、その減算した高さと同一とされている。つまり、球状部材は、制動部材の本体部又は解除部材の本体部へ突出することがない。したがって、突出部の径方向外側への弾性変形の影響が、制動部材の本体部又は解除部材の本体部に及ぶことがなく、制動部材及び解除部材の精度が高精度に維持される。
また、本発明に係る第4の態様の記録テープカートリッジは、第1又は第2の態様の記録テープカートリッジであって、突出部の突出高さは、球状部材の直径よりも低くされており、収容部の開口端部から露出されている球状部材の一端部の高さが、開口端部とは反対側に形成された開口から突出されている球状部材の他端部の高さよりも高いことを特徴としている。
第4の態様の発明によれば、突出部の突出高さが、球状部材の直径よりも低くされ、収容部の開口端部から露出されている球状部材の一端部の高さが、開口端部とは反対側に形成された開口から突出されている球状部材の他端部の高さよりも高い。したがって、外部から球状部材に対してリールの軸方向に力が加わった場合でも、球状部材が制動部材又は解除部材から外れることがない。
また、本発明に係る第5の態様の記録テープカートリッジは、第1又は第2の態様の記録テープカートリッジであって、突出部の突出高さは、球状部材の直径よりも低くされており、収容部の開口端部から露出されている球状部材の一端部の高さが、開口端部とは反対側に形成された開口から突出されている球状部材の他端部の高さよりも低くされるとともに、開口端部とは反対側には、球状部材の他端部の少なくとも一部を覆うカバー部が形成されていることを特徴としている。
第5の態様の発明によれば、突出部の突出高さが、球状部材の直径よりも低くされ、収容部の開口端部から露出されている球状部材の一端部の高さが、開口端部とは反対側に形成された開口から突出されている球状部材の他端部の高さよりも低くされるとともに、開口端部とは反対側に、球状部材の他端部の少なくとも一部を覆うカバー部が形成されている。したがって、外部から球状部材に対してリールの軸方向に力が加わった場合でも、カバー部により、球状部材が制動部材又は解除部材から外れることがない。
また、本発明に係る第6の態様の記録テープカートリッジは、第1〜第5の何れかの態様の記録テープカートリッジであって、突出部は、制動部材に突設されていることを特徴としている。
第6の態様の発明によれば、球状部材を回転不能に保持する突出部が、ケースに対して回転不能な制動部材に突設されているので、リールと一体に回転する解除部材に突設されている場合に比べて、リールの回転速度の高速化に寄与可能となる。
また、本発明に係る第7の態様の記録テープカートリッジは、第6の態様の記録テープカートリッジであって、突出部は、制動部材にリールの径方向に延在するように形成された円板部から突設されていることを特徴としている。
第7の態様の発明によれば、突出部が、制動部材にリールの径方向に延在するように形成された円板部から突設されている。したがって、収容部へ球状部材を嵌め込むときに、突出部の径方向外側への弾性変形を阻害するものがなく、その突出部は、径方向外側へ良好に弾性変形可能となる。
また、本発明に係る第8の態様の記録テープカートリッジに設けられる制動部材は、リールの径方向に延在する円板部と、円板部の軸心部からリールの軸方向へ突設された突出部と、突出部に形成された収容部に一部を露出させた状態で収容された球状部材と、突出部における収容部の開口端部からリールの径方向内側へ張り出すように形成され、収容部に収容された球状部材を回転不能に保持する張出部と、を有することを特徴としている。
第8の態様の発明によれば、球状部材を容易に設けることができるとともに精度よく保持することができる制動部材が得られる。
以上のように、本発明によれば、記録テープカートリッジに備えられる制動部材又は解除部材に、球状部材を容易に設けることができるとともに精度よく保持させることができる。
(A)本実施形態に係る記録テープカートリッジを上方から見た斜視図である。(B)本実施形態に係る記録テープカートリッジを下方から見た斜視図である。 本実施形態に係る記録テープカートリッジのリールが回転ロック位置にあるときの側断面図である。 本実施形態に係る記録テープカートリッジのリールが回転許容位置にあるときの側断面図である。 本実施形態に係る記録テープカートリッジのブレーキ部材及びクラッチ部材を示す上方から見た分解斜視図である。 本実施形態に係る記録テープカートリッジのブレーキ部材及びクラッチ部材を示す下方から見た分解斜視図である。 本実施形態に係る記録テープカートリッジのブレーキ部材とクラッチ部材との摺接部分を拡大して示す側断面図である。 本実施形態に係る記録テープカートリッジのブレーキ部材における突出部を拡大して示す断面図である。 本実施形態に係る記録テープカートリッジのブレーキ部材における突出部の変形例を拡大して示す断面図である。 本実施形態に係る記録テープカートリッジのブレーキ部材における突出部の変形例を拡大して示す断面図である。 本実施形態に係る記録テープカートリッジのブレーキ部材を成形する金型を示す断面図である。 本実施形態に係る記録テープカートリッジのブレーキ部材を金型から抜くときの動作を説明する断面図である。 本実施形態に係る記録テープカートリッジのブレーキ部材を金型の入れ子から外すときの動作を説明する断面図である。
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を基に詳細に説明する。なお、説明の便宜上、記録テープカートリッジ10のドライブ装置への装填方向を矢印Aで示し、それを記録テープカートリッジ10の前方向(前側)とする。そして、矢印Aと直交する矢印Bで示す方向を記録テープカートリッジ10の上方向(上側)とする。また、以下において、リール30の径方向及び軸方向を、単に「径方向」、「軸方向」という場合がある。
図1〜図3に示されるように、記録テープカートリッジ10は、樹脂製の上ケース14と樹脂製の下ケース16とで構成されたケース12を備えている。上ケース14は、平面視略矩形状の天板14Aと、天板14Aの外縁に沿って立設された略枠状の周壁14Bと、を有している。下ケース16は、天板14Aに対応した平面視略矩形状の底板16Aと、底板16Aの外縁に沿って立設された略枠状の周壁16Bと、を有している。
したがって、ケース12は、周壁14Bの開口端と周壁16Bの開口端とを突き当てた状態で、上ケース14と下ケース16とが超音波溶着やビス止め等によって互いに接合されることで、略矩形箱状に形成される。また、ケース12の前側における一方(右側)の隅角部は平面視で斜めに切り欠かれており、その部位には開口18が形成されている。
更に、下ケース16の底板16Aの略中央部には、円形状のギア開口20が形成されており、後述するリールギア42及びリールプレート54の露出用とされている。そして、底板16Aにおけるギア開口20の縁部には、環状リブ22が上方へ向けて突設されており、後述するリール30の位置決め用及び防塵用とされている。
また、底板16Aの外面における前端近傍には、図示しないドライブ装置に設けられた位置決めピンが挿入される一対の位置決め穴24、26が形成されており、位置決め穴24、26周りは、平滑な位置決め面24A、26Aとされている。これにより、記録テープカートリッジ10のドライブ装置内での水平方向(左右・前後)及び鉛直方向(上下)の位置決めがなされるようになっている。
また、ケース12内には、後述する樹脂製のリール30が1つだけ回転可能に収容されるようになっている。リール30には、磁気テープ等の記録テープTが巻装されており、記録テープTの自由端にはリーダー部材としてのリーダーブロック28が取り付けられている。リーダーブロック28は、記録テープカートリッジ10の不使用時には、開口18を閉塞するようにケース12に収容保持され、ケース12内への塵埃等の侵入を抑制又は防止するようになっている。
また、リーダーブロック28は、その先端に係合凹部28Aが形成されている。この係合凹部28Aにドライブ装置内の引出部材が係合してリーダーブロック28をケース12から引き出すことにより、ケース12内から記録テープTが引き出されるようになっている。なお、リーダーブロック28は、ドライブ装置内の巻取リールのリールハブに嵌入されるようになっており、係合凹部28Aとは反対側の端面が、そのリールハブの外周面の一部を構成する円弧面28Bとなっている。
図2〜図4に示されるように、リール30は、その軸心部を構成するリールハブ32を備えている。リールハブ32は、外周面に記録テープTが巻装される円筒部34と、円筒部34の下部を閉塞する底部36と、を有する有底円筒状に形成されている。そして、リールハブ32(円筒部34)の底部36側の端部(下端部)には、下フランジ38が、その径方向外側に同軸的かつ一体に延設されている。
リールハブ32(円筒部34)の上端部には、樹脂製で環状の上フランジ40(図4では省略)が接合されるようになっている。上フランジ40は、外径が下フランジ38の外径と同径とされるとともに、軸心部に円筒部34の内径に対応する外径の短筒部40Aが形成されており、短筒部40Aが円筒部34の上端部に内嵌した状態で、リールハブ32に同軸的に溶着されている。したがって、リールハブ32の上方は開口されている。
そして、リール30は、下フランジ38と上フランジ40との対向面間において、リールハブ32の円筒部34の外周面に記録テープTが巻回されるようになっている。また、リールハブ32の底部36の下面(外面)側には、環状のリールギア42がリール30と同軸的に形成されている(図1(B)も参照)。このリールギア42は、ドライブ装置の後述する回転シャフト100に設けられた駆動ギア108と噛合可能とされている。
リールハブ32の底部36の上面(内面)側には、係合部としての環状の係合ギア44がリール30と同軸的に形成されている。係合ギア44は、底部36の内面より若干隆起した環状の台座部46上に形成されており、後述するブレーキ部材60の制動ギア66と噛合可能とされている。
また、係合ギア44(台座部46)の径方向外側には、それぞれリール30の軸方向に沿って、円筒部34の内周面及び底部36の上面に連続する立リブ48が、周方向に等間隔で複数設けられている。この立リブ48により、係合ギア44は、リールギア42よりも径方向内側に形成されるようになっている。なお、立リブ48については、ブレーキ部材60と共に後述する。
更に、リールハブ32の底部36における軸心部には、円形状の貫通孔50が形成されている。そして、底部36の上面から、貫通孔50の縁部に沿ってガイド壁部としての短円筒状のクラッチ用ボス部52が立設されている。このクラッチ用ボス部52については、クラッチ部材84と共に後述する。
また、リールハブ32の底部36の下面におけるリールギア42の径方向内側には、磁性材で平板環状に形成されたリールプレート54がインサート成形によって同軸的かつ一体的に設けられている(図1(B)も参照)。リールプレート54の軸心部には、円形状の透孔54Aが形成されており、透孔54Aの内径は貫通孔50の内径よりも僅かに小さくされている(図6参照)。
また、リール30は、不使用時には、後述する圧縮コイルバネ82によって下方へ付勢されて環状リブ22上に載置されるようになっている。これにより、リール30の径方向の移動(ケース12内でのガタつき)が抑制又は防止されるとともに、ギア開口20からの塵埃等の侵入が抑制又は防止されるようになっている。
そして、リールギア42及びリールプレート54は、ギア開口20からケース12外へ露出されるようになっており、リールプレート54の透孔54Aを通じて、後述するクラッチ部材84がギア開口20に臨むようになっている。これにより、ケース12外からリール30のチャッキング(保持)及び回転駆動が可能になっている。
また、図2、図3に示されるように、上フランジ40の短筒部40Aの内周面側には、天板14Aから立設された環状の規制リブ56が非接触状態で挿入されるようになっている。つまり、規制リブ56は、その外周面を上フランジ40の短筒部40Aの内周面に近接させて配置されており、ケース12内におけるリール30のガタつきを更に抑制又は防止するようになっている。
また、記録テープカートリッジ10は、不使用時にリール30の回転を阻止するための制動部材としての樹脂製(例えばポリアセタール製)のブレーキ部材60を備えている。図4、図5に示されるように、ブレーキ部材60は、本体部としての基部62を有しており、基部62は、短円筒状に形成された筒部62Aと、筒部62Aの上端を閉塞する円板部62Bとで、下方に開口した略有底円筒状に形成されている。
筒部62Aは、その外径が係合ギア44(台座部46)の内径よりも小さく、かつ、その内径がクラッチ用ボス部52の外径よりも大きくされている(図2、図3参照)。そして、基部62(筒部62A)の外周面における軸方向中間部には、略平板状のリング部64が全周に亘って一体に形成されている。
リング部64の下面には、係合ギア44と噛合可能な制動ギア66が全周に亘って一体に形成されている。そして、リング部64の上面には、その外縁部に沿って環状の補強リブ68が立設されており、リング部64(制動ギア66)の剛性が確保されるようになっている。
また、図2、図3、図5、図6に示されるように、基部62の円板部62Bの下面における軸心部から、リール30の軸方向へ円柱状の突出部70が突設されている。そして、図7に示されるように、突出部70の軸心部には、球状部材としての鋼球58の一部を先端部70Aから露出させるとともに、その一部を除く部分を収容保持する穴状の収容部69が形成されている。
収容部69内は、開口(先端部70A)側が、略円柱形状の空間部S2とされ、開口側とは反対側の底部側が、空間部S2に連続する円錐台形状の空間部S1とされている。空間部S1を構成する収容部69の内壁は、底部側へ向かうに従って内径が小さくなる(先端部70A側へ向かうに従って内径が大きくなる)傾斜壁69Aとされている。
一方、空間部S2を構成する収容部69の内壁は、傾斜壁69Aと連続し、傾斜壁69Aよりも軸方向に対する傾斜角度の小さいテーパー壁69Bと、テーパー壁69Bと連続し、軸方向に沿ったストレート壁69Cと、で構成されている。そして、収容部69の開口端部(先端部70A)には、ストレート壁69Cと連続し、リール30の径方向内側へ張り出す張出部71が全周に亘って形成されている。
張出部71は、所謂アンダーカット部であり、収容部69の開口端部の内径を小さくするように、かつリール30の軸方向に所定の厚み(高さ)を有するように形成されている。これにより、張出部71が、収容部69に収容された鋼球58を、その収容部69(傾斜壁69A)とで回転不能に保持できる程度の剛性を備える構成になっている。
鋼球58は、ステンレス等の金属で成形されており、ステンレス球としては、SUS304、SUS440Cが代表的なものとしてある。また、鋼球58の材質としては、高炭素高クロム鋼材(JIS G 4805 SUJ−2)や冷間圧造用炭素鋼(JIS G 3505 SWRCM10やSWRCM12、JIS G 4051SCK)などでもよい。
このような鋼球58は、一般的に熱伝導率が樹脂材に比べて高い。したがって、鋼球58にした場合には、相手側の樹脂製部材(後述するクラッチ部材84)との摺動で発生する摩擦熱を発散させて接触点の温度を下げ易く、相手側の樹脂製部材(クラッチ部材84)に溶融や変形を発生させ難くすることができる。
また、鋼球58は、収容部69内に、その開口端部(先端部70A)側からアウトサート(嵌め込み)によって取り付けられるようになっている。すなわち、張出部71が形成されている突出部70の先端部70Aは、リール30の径方向外側に広がるように弾性変形して鋼球58を受け入れるようになっている。
そして、鋼球58は、図6に示されるように、弾性変形から復元した張出部71と傾斜壁69Aとで挟持固定されるようになっている。つまり、鋼球58は、その嵌め込み方向(リール30の軸方向)で挟持固定されることにより、リール30が回転駆動されても(クラッチ部材84との摺接状態で)、突出部70の先端部70Aに回転不能に、かつ収容部69内から抜け落ちないように保持されるようになっている。
なお、鋼球58に対する収容部69の軸方向の寸法形状は、張出部71と傾斜壁69Aとで鋼球58を挟持固定できるように(回転不能に保持できるように)適宜設定される。また、鋼球58の一部は、突出部70の先端部70A(収容部69の開口端部)から外部へ露出されるようになっており、その外部に露出された鋼球58の一部における先端部が、クラッチ部材84の摺接面86Aと点接触する摺接部58Aとなっている。
そして、突出部70の円板部62Bの下面からの突出高さHは、鋼球58の直径Dから、突出部70の先端部70A(収容部69の開口端部)から外部へ露出されている鋼球58の一部の高さHdを減算した高さよりも高いか、又は、その減算した高さと同一とされている。これにより、鋼球58を収容部69内へ嵌め込むときに、張出部71(突出部70の先端部70A)がリール30の径方向外側へ弾性変形しても、その弾性変形の影響が基部62(円板部62B)に及ばない構成になっている。
また、突出部70の先端部70Aにおける下端面は、側面視で筒部62Aの下端面と面一か、それよりも僅かに上方(筒部62A内側)に位置するようになっている(図2、図3参照)。つまり、突出部70の先端部70Aにおける下端面は、側面視で筒部62Aの下端面から下方へ突出しないようになっている。これにより、突出部70の剛性低下が抑制されるようになっている。
また、図2〜図5に示されるように、円板部62Bの上面には、平面視十字状の挿入溝72Aを有する十字突起72が立設されている。そして、挿入溝72A内における円板部62Bで、突出部70が突設されている軸心部(交差部)を除く部分には、その軸心部から放射状に延在するように、平面視矩形状の4つの貫通孔74が形成されている。
また、基部62の上端外周部には、環状のリブ76が一体に立設されており、リブ76の外周面と筒部62Aの外周面とが一体化されている。そして、リブ76と十字突起72との間の円板部62Bの上面が、後述する圧縮コイルバネ82の一端部が当接するバネ受け面78とされている。
以上のような構成のブレーキ部材60は、リールハブ32の円筒部34内に上下方向(リール30の軸方向)へ移動可能となるように挿設されている。すなわち、ブレーキ部材60は、上下方向へ移動することで、その制動ギア66をリールハブ32の係合ギア44と噛合する位置(回転ロック位置)と、その噛合を解除する位置(回転許容位置)とを選択的に取るようになっている。
また、ブレーキ部材60の十字突起72で構成された挿入溝72A内には、ケース12の天板14Aから下方へ突設された十字リブ80が挿入されるようになっている。十字リブ80は、2つの薄板片を互いに直交するように交差させたような形状とされており、十字突起72(挿入溝72Aの溝壁)と係合することで、ブレーキ部材60のケース12に対する回転を阻止するようになっている。
つまり、ケース12に対する回転が阻止されたブレーキ部材60が、その制動ギア66をリールハブ32の係合ギア44に噛合させることによって、リール30の回転が阻止されるようになっている。なお、十字リブ80は、ブレーキ部材60の上下方向の全移動ストロークに亘って挿入溝72A内に挿入された状態が維持されるようになっており、ブレーキ部材60の上下方向の移動をガイドするガイド機能も有するようになっている。
更に、十字リブ80の下端部には、それぞれ突片80Aが形成されている。各突片80Aは、ブレーキ部材60の各貫通孔74内に挿入可能に形成されており、ブレーキ部材60が回転ロック位置に位置するときには、挿入溝72A内に位置し(図2参照)、ブレーキ部材60が解除位置(回転許容位置)に位置するときには、各貫通孔74内に挿入されて円板部62Bの下面から突出するようになっている(図3参照)。
これにより、十字リブ80とブレーキ部材60とのリール30の軸方向における係合量(挿入深さ)が充分に確保されるようになっており、ブレーキ部材60のケース12に対する傾きが抑制されるとともに、ブレーキ部材60の上下方向へのガイド性が向上されるようになっている。
また、ブレーキ部材60は、回転ロック位置に位置するときには、リール30の立リブ48によって径方向の移動が規制され、回転許容位置に位置するときには、リール30と共に回転する立リブ48と干渉しないように構成されている。つまり、立リブ48は、回転ロック位置に位置するブレーキ部材60の補強リブ68とは近接し、回転許容位置に位置するブレーキ部材60の補強リブ68とは、その間隔が所定値以上となるように、上部側が切り欠かれている。
また、ブレーキ部材60のバネ受け面78と天板14Aとの間には、付勢部材としての圧縮コイルバネ82が配設されている。圧縮コイルバネ82は、一端部がバネ受け面78に当接され、他端部が天板14Aに当接されており、その他端部は、十字リブ80の径方向外側における天板14Aから突設された環状壁部83の内側に配置されている。これにより、圧縮コイルバネ82の他端部の径方向への位置ずれが抑制又は防止されるようになっている。
そして、この圧縮コイルバネ82の付勢力により、ブレーキ部材60が下方に付勢され、記録テープカートリッジ10の不使用時には、制動ギア66を係合ギア44に噛合させて(ブレーキ部材60を回転ロック位置に位置させて)、リール30の不用意な回転を防止するようになっている。また、この付勢力によりリール30も下方に付勢され、環状リブ22に当接されるようになっている。
また、記録テープカートリッジ10は、ブレーキ部材60によるリール30のロック状態を解除するときに外部から操作される解除部材としての樹脂製(例えばポリアセタール製)のクラッチ部材84を備えている。図4〜図6に示されるように、クラッチ部材84は、リール30の底部36とブレーキ部材60との間に配設されており、略円柱状に形成された本体部としてのクラッチ本体86を有している。
クラッチ本体86は、その外径がリールプレート54の透孔54Aの内径よりも若干小さくされており、記録テープカートリッジ10の不使用時には、ブレーキ部材60を介して作用する圧縮コイルバネ82の付勢力により、後述する着座リブ92がストッパー溝94に当接された状態で、透孔54Aに挿通されている。そして、クラッチ本体86の軸心部における平坦な上端面が、ブレーキ部材60の突出部70に設けられた鋼球58の摺接部58Aと常時当接する摺接面86Aとされている。
また、クラッチ本体86の下端部中央には、肉抜き穴86Bが形成されており、その肉抜き穴86B周りの平坦な下端面が押圧操作面86Cとされている。この押圧操作面86Cが、後述する回転シャフト100によって上方へ向かって押圧されることにより(クラッチ部材84が上方へ移動されることにより)、圧縮コイルバネ82の付勢力に抗して、ブレーキ部材60が回転許容位置に保持されるようになっている。
また、このクラッチ部材84は、クラッチ本体86の外周面よりも径方向外側に張り出した回転規制リブ88を備えている。回転規制リブ88は、クラッチ本体86の周方向に等間隔で複数(例えば3つ)設けられ、各回転規制リブ88は平面視で放射状に配置されている。また、各回転規制リブ88は、クラッチ本体86の摺接面86A周りの上端面と、その上端面近傍の外周面とに跨る(それぞれに連続する)ように、上方及び径方向外側へ突出されている。
そして、各回転規制リブ88は、それぞれクラッチ用ボス部52の内縁部に凹設された回転規制溝90に挿入されるようになっている。各回転規制溝90は、クラッチ用ボス部52の周方向に等間隔で3つ設けられており、上方へ開口されている。これにより、クラッチ部材84は、その回転規制リブ88において、クラッチ用ボス部52の回転規制溝90にガイドされつつ上下方向の移動が可能とされている。
そして、各回転規制リブ88は、クラッチ部材84が上方に移動してブレーキ部材60を回転許容位置に位置させるときにも、クラッチ用ボス部52の回転規制溝90に挿入された状態を維持するようになっている。これにより、クラッチ部材84は、常にリール30と一体回転するようになっている。
また、各回転規制溝90の底部が閉塞されていることから、クラッチ部材84は、回転規制リブ88と回転規制溝90とによってリールハブ32からの脱落が防止されるようになっているが、回転規制リブ88とは別に、そのリールハブ32からの脱落が防止されるようにするための着座リブ92を備えている。
着座リブ92は、クラッチ本体86の周方向に等間隔で複数、例えば各回転規制リブ88間の周方向中間部に計3つ設けられている。各着座リブ92は、回転規制リブ88と同様に、クラッチ本体86の摺接面86A周りの上端面と、その上端面近傍の外周面とに跨るように、上方及び径方向外側へ突出されており、平面視で放射状に配置されている。
そして、各着座リブ92は、それぞれクラッチ用ボス部52の内縁部に凹設されたストッパー溝94に挿入されるようになっている。各ストッパー溝94は、クラッチ用ボス部52の周方向に等間隔で、各回転規制溝90の周方向中間部に設けられており、上方へ開口されるとともに、閉塞された底部の上面がストッパー面94Aとされている。
したがって、各着座リブ92は、ブレーキ部材60が回転ロック位置にあるときに、その下端面が各ストッパー面94Aに当接(着座)するようになっている。なお、各回転規制リブ88と各着座リブ92とは、互いの上端面の高さが一致しているが、下端面については、各回転規制リブ88の方が各着座リブ92よりも下方側に位置するようになっている。
すなわち、各回転規制溝90と各ストッパー溝94とは、互いの上端が一致しているが、各ストッパー溝94のストッパー面94Aよりも各回転規制溝90の底面の方が下方側に位置するようになっている。換言すれば、各回転規制リブ88は、各着座リブ92よりも上下方向に長く形成され、各回転規制溝90は、各ストッパー溝94よりも上下方向に深く形成されている。
これは、回転規制リブ88とクラッチ用ボス部52との係合可能量(回転規制溝90へ挿入できる量)を大きくすることで、リール30の回転時に、リール30から受ける応力を緩和するとともに、クラッチ部材84が上下動するときのガイド性を向上させ、かつブレーキ部材60を回転許容位置に位置させているときにも、クラッチ部材84のガタつきを抑えるようにするためである。
なお、ブレーキ部材60が回転ロック位置にあるとき、各回転規制リブ88の下端面は、各回転規制溝90の底面に接触しないようになっている。また、各着座リブ92の厚みが、各回転規制リブ88の厚みよりも大きくされている。これにより、各着座リブ92は、各ストッパー面94Aに当接しているときに、ブレーキ部材60を介して作用する圧縮コイルバネ82の付勢力に対して剛性が確保されるようになっている。
更に、各回転規制リブ88及び各着座リブ92は、クラッチ部材84が上方へ移動してブレーキ部材60を回転許容位置に位置させているときに、ブレーキ部材60の円板部62Bに形成された貫通孔74に挿通された突片80Aに干渉しないように、その高さ(上端の位置)が決められている(図3参照)。
また、記録テープカートリッジ10の不使用時(ブレーキ部材60が回転ロック位置にあるとき)において、押圧操作面86Cは、リールギア42の歯先とほぼ同一高さ位置に配置されるようになっており、クラッチ部材84は、リールギア42がドライブ装置の駆動ギア108に噛合する動作に伴って、ドライブ装置の解除面114Aに押圧されて上方へ移動するようになっている。
ここで、ドライブ装置の回転シャフト100について説明すると、図2〜図4に示されるように、回転シャフト100は回転軸102を備えている。回転軸102の上端には、フランジ部102Aが一体に形成されており、回転軸102の軸心部には、上方に開口したネジ穴102Bが所定深さで形成されている。そして、回転軸102の上端には、円板状の回転テーブル104がフランジ部102Aに支持された状態で固定されている。
回転テーブル104の上面における外周部には、環状凸部106が突設されており、環状凸部106の上面には、記録テープカートリッジ10のリールギア42と噛合可能な駆動ギア108が形成されている。また、回転テーブル104の軸心部には、ネジ穴102Bと同軸的に貫通孔104Aが形成されている。
また、回転テーブル104における環状凸部106(駆動ギア108)の径方向内側には、環状に形成されたマグネット110が同軸的に固着されており、マグネット110の軸心部には、貫通孔104Aと同軸的に貫通孔110Aが形成されている。そして、この回転シャフト100には、貫通孔110A、104Aを通してネジ穴102Bに螺合する操作部材112が設けられている。
この操作部材112は、例えば六角穴付ボルトとされており、金属製であることが望ましく、頭部114と、ネジ穴102Bに螺合するスクリュー部112Aと、を有している。そして、頭部114の平坦とされた上面(六角穴周り)が、クラッチ部材84の押圧操作面86Cに当接する解除面114Aとされている。
この解除面114Aは、マグネット110の上面と同等以上の平坦度に仕上げられており、当接して上方へ移動させるクラッチ部材84の姿勢を安定させるようになっている。つまり、上昇されたクラッチ部材84のリール30の軸方向に対する傾きが抑制又は防止されるようになっている。
また、この操作部材112は、ネジ穴102Bに螺合するスクリュー部112Aの深さを調節することにより、押圧操作面86Cに対する突出高さを調整できるようになっている。したがって、クラッチ部材84や回転シャフト100等の各部材に成形上又は組立上で若干の寸法誤差があっても、精度よくクラッチ部材84の押圧操作面86Cに対して解除面114Aを当接させることができるようになっている。
以上のような構成の記録テープカートリッジ10において、次にその作用について説明する。
記録テープカートリッジ10を矢印A方向に沿ってドライブ装置へ装填すると、その水平方向及び鉛直方向が位置決めされ、回転シャフト100がギア開口20に向かって相対的に接近(上方へ移動)し、リール30を保持する。すなわち、回転シャフト100は、マグネット110によって非接触でリールプレート54を吸着保持しつつ、その駆動ギア108をリールギア42に噛合させる。
そして、リールギア42と駆動ギア108との噛合動作に伴って、回転シャフト100(操作部材112)の解除面114Aがクラッチ部材84の押圧操作面86Cに当接し、圧縮コイルバネ82の付勢力に抗して、クラッチ部材84を上方へ押し上げる。これにより、鋼球58を介してクラッチ部材84に当接しているブレーキ部材60も上方へ移動され、制動ギア66と係合ギア44との噛合(リール30に対する回転ロック状態)が解除される。
そして更に、回転シャフト100が上方へ相対移動すると、圧縮コイルバネ82の付勢力に抗して、リール30がクラッチ部材84及びブレーキ部材60と共に(相対位置を変化させないまま)上方に持ち上げられる。つまり、下フランジ38が環状リブ22から離間され、リール30は、ケース12の内面と非接触状態で回転可能となる回転許容位置へ移動される。
一方、ドライブ装置の引出部材が係合凹部28Aに係合して、リーダーブロック28をケース12から引き出し、巻取リールのリールハブに嵌入させる。そして、リール30(回転シャフト100)及び巻取リールを同期して回転させることにより、記録テープTがケース12から引き出されつつ巻取リールのリールハブに巻き取られる。
ここで、ブレーキ部材60を回転許容位置に保持したクラッチ部材84は、リール30と一体に回転する、したがって、リール30の回転時には、クラッチ部材84の摺接面86Aと、ブレーキ部材60の鋼球58における摺接部58Aとが互いに摺接する。つまり、摺接面86Aに摺接するのは樹脂ではなく、金属となっている。よって、摺接面86Aの摩耗が低減され(耐久性が向上され)、摩耗粉の発生が抑制又は防止される。
また、鋼球58は、ブレーキ部材60の突出部70の先端部70Aに回転不能に保持されている。すなわち、鋼球58は、収容部69内における傾斜壁69Aと張出部71とで挟持固定されている。したがって、クラッチ部材84の摺接面86Aとの摺接時に、収容部69の内壁が鋼球58によって摩耗されることはなく、鋼球58は、記録テープカートリッジ10の使用頻度によらず、突出部70の先端部70A(収容部69)に精度よく保持される。
また、鋼球58が収容部69内に嵌め込まれるときには、張出部71(突出部70の先端部70A)が径方向外側へ弾性変形して鋼球58を乗り越えるが、突出部70は、円板部62Bの下面における軸心部からリール30の軸方向へ突設されているので、張出部71の径方向外側への弾性変形を阻害するものがなく、張出部71を径方向外側へ良好に弾性変形させ易い。したがって、鋼球58は、収容部69内に容易に設けられる。また、これにより、張出部71が破損又は塑性変形し難いので、鋼球58は、突出部70の先端部70A(収容部69)に精度よく保持される。
更に、突出部70の円板部62Bの下面からの突出高さHは、鋼球58の直径Dから、突出部70の先端部70Aから露出されている鋼球58の一部の高さHdを減算した高さよりも高いか、又は、その減算した高さと同一となっている。つまり、鋼球58は円板部62Bへ突出しないようになっている。したがって、張出部71(突出部70の先端部70A)の径方向外側への弾性変形の影響が基部62に及ぶことはなく、ブレーキ部材60の精度が高精度に維持される。
なお、図8に示されるように、突出部70の突出高さHが鋼球58の直径Dよりも低く形成されている場合には、突出部70の先端部70A(収容部69の開口端部)から露出されている鋼球58の一端部の高さHd1を、先端部70A(開口端部)とは反対側の円板部62Bに形成された開口62Cから突出されている鋼球58の他端部の高さHd2よりも高くすることが望ましい。これによれば、先端部70A側(外部)から鋼球58に対してリール30の軸方向に力が加えられても、鋼球58が突出部70(ブレーキ部材60)から外れることがない。
また、図9に示されるように、突出部70の突出高さHが鋼球58の直径Dよりも低く形成されている場合で、突出部70の先端部70A(収容部69の開口端部)から露出されている鋼球58の一端部の高さHd1が、先端部70A(開口端部)とは反対側の円板部62Bに形成された開口62Cから突出されている鋼球58の他端部の高さHd2よりも低く形成されている場合には、その円板部62Bに鋼球58の他端部の少なくとも一部を覆うカバー部63を形成することが望ましい。
これによれば、先端部70A側(外部)から鋼球58に対してリール30の軸方向に力が加えられても、そのカバー部63により、鋼球58が突出部70(ブレーキ部材60)から外れることがない。なお、カバー部63は、具体的には鋼球58の他端部における表面を平面視十字状に覆うような形状(挿入溝72Aに沿った形状)に形成されるが、鋼球58の他端部における表面全体を覆う略半球状に形成されてもよく、この場合、円板部62Bには開口62Cが形成されない。
最後に、ブレーキ部材60を成形する工程(方法)について説明する。図10〜図12に示されるように、金型120は、固定金型122と可動金型124とで構成されており、図示しない移動機構により、可動金型124が固定金型122に対して接近移動及び離隔移動するようになっている。
固定金型122には、可動金型124側(可動金型124の離隔方向)へスライド可能に構成された入れ子126が設けられており、この入れ子126によって、突出部70の先端部70A、即ちアンダーカット部となる張出部71が形成されるようになっている。
詳細には、図10に示されるように、金型120内に樹脂材(例えばポリアセタール)を射出してブレーキ部材60を成形した後、そのブレーキ部材60を保持した可動金型124を固定金型122から離隔させる。すると、図11に示されるように、その可動金型124の移動に伴って、入れ子126が可動金型124側へスライドする。
つまり、入れ子126は、アンダーカット部となる張出部71を成形する部分であるため、可動金型124が固定金型122から離隔されるように移動されると、張出部71によって係止保持されたまま、固定金型122から突出される。
そして、入れ子126は、図示しないストッパーによって停止させられるまで突出されるが、ストッパーによって入れ子126のスライドが停止させられても、更に可動金型124は固定金型122から離隔するように移動する。
すると、図12に示されるように、張出部71が形成されている突出部70の先端部70Aが径方向外側へ弾性変形して(先端部70Aの径方向外側への弾性変形を阻害するものが存在しないので)入れ子126から外れる。これにより、アンダーカット部としての張出部71を備えたブレーキ部材60が難無く成形(脱型)される。
以上、本実施形態に係る記録テープカートリッジ10について、図面を基に説明したが、本実施形態に係る記録テープカートリッジ10は、図示のものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、適宜設計変更可能なものである。例えば、ブレーキ部材60ではなく、クラッチ部材84のクラッチ本体86(摺接面86A)の軸心部に突出部70を突設し、その先端部70Aに鋼球58を設ける構成にしてもよい。
なお、鋼球58は、ブレーキ部材60とクラッチ部材84の何れか一方に設けられていればよい。鋼球58が、ブレーキ部材60とクラッチ部材84の両方に設けられていると、クラッチ部材84に対するブレーキ部材60の姿勢が不安定になってしまうからである。また、鋼球58(突出部70)は、ケース12に対して回転不能なブレーキ部材60に設けられる方が、リール30と一体に回転するクラッチ部材84に設けられる場合に比べて、リール30の回転速度の高速化に寄与することができるので望ましい。
また、ブレーキ部材60とクラッチ部材84のうち、鋼球58を設けない側は、摺接性や耐久性の向上及び製造コストの低減化等の観点から、ポリアセタール(POM)で成形することが望ましいが、鋼球58を設ける側は、ポリアセタール(POM)に限定されるものではなく、例えばポリアミド(PA)等の他の樹脂材で成形するようにしてもよい。
更に、アンダーカット部としての張出部71は、全周に亘って形成される構成に限定されるものではなく、収容部69(傾斜壁69A)とで回転不能に保持できるようになっていれば、例えば等間隔に3箇所形成される構成になっていてもよい。また、収容部69の空間部S1、S2を構成する内壁は、図示の形状(傾斜壁69A、テーパー壁69B、ストレート壁69C)に限定されるものではなく、例えば鋼球58の表面に沿った球面(曲面)形状に形成されていてもよい。
また、球状部材は、鋼球(ステンレス球)58に限定されるものではなく、他の材質としては、セラミックスや、ポリアミド(PA)等の低摩擦性の樹脂材などでもよい。また、その樹脂材には、黒鉛又は二流化モリブデンなどの固体潤滑剤や、耐摩耗性と機械的強度を上げるために、充填剤を添加するようにしてもよい。
また、記録テープTの自由端にリーダー部材としてリーダーピンが取り付けられた構成としてもよく、ケース12は、開口18を開閉する遮蔽部材(直線又は円弧に沿って移動するスライドドア等)を有する構成としてもよい。また、記録テープTは、磁気テープに限定されるものではなく、情報の記録及び記録した情報の再生が可能な長尺テープ状の情報記録再生媒体として把握されるものであればよい。
10 記録テープカートリッジ
12 ケース
30 リール
32 リールハブ
36 底部
44 係合ギア(係合部)
58 鋼球(球状部材)
60 ブレーキ部材(制動部材)
62 基部
62B 円板部
63 カバー部
69 収容部
69A 傾斜壁(内壁)
70 突出部
71 張出部
84 クラッチ部材(解除部材)
T 記録テープ

Claims (8)

  1. ケース内に収容され、記録テープが巻装された有底円筒状のリールハブの底部に係合部が形成されたリールと、
    前記ケース内に回転不能に設けられ、前記リールハブの底部に対し接離して、前記係合部に係合する回転ロック位置と、前記係合部との係合状態を解除する回転許容位置とを選択的に取る樹脂製の制動部材と、
    前記リールハブの底部に、前記リールの軸方向へ移動可能に、かつ前記リールと一体回転するように設けられ、前記リールを回転させる際に前記制動部材を前記回転許容位置に保持する樹脂製の解除部材と、
    前記制動部材及び前記解除部材の何れか一方における軸心部から前記リールの軸方向へ突設され、前記制動部材及び前記解除部材の何れか他方と当接させる球状部材を収容する収容部が形成されるとともに、該収容部の開口端部から前記リールの径方向内側へ張り出すことにより前記収容部に収容された前記球状部材を回転不能に保持する張出部が形成された突出部と、
    を有することを特徴とする記録テープカートリッジ。
  2. 前記収容部が、該収容部の開口端部側へ向かうに従って内径が大きくなる内壁を有し、該内壁と前記張出部とで前記球状部材が挟持固定されていることを特徴とする請求項1に記載の記録テープカートリッジ。
  3. 前記突出部の突出高さは、前記球状部材の直径から、前記収容部の開口端部から露出されている前記球状部材の一部の高さを減算した高さよりも高いか、又は、その減算した高さと同一であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の記録テープカートリッジ。
  4. 前記突出部の突出高さは、前記球状部材の直径よりも低くされており、
    前記収容部の開口端部から露出されている前記球状部材の一端部の高さが、前記開口端部とは反対側に形成された開口から突出されている前記球状部材の他端部の高さよりも高いことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の記録テープカートリッジ。
  5. 前記突出部の突出高さは、前記球状部材の直径よりも低くされており、
    前記収容部の開口端部から露出されている前記球状部材の一端部の高さが、前記開口端部とは反対側に形成された開口から突出されている前記球状部材の他端部の高さよりも低くされるとともに、前記開口端部とは反対側には、前記球状部材の他端部の少なくとも一部を覆うカバー部が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の記録テープカートリッジ。
  6. 前記突出部は、前記制動部材に突設されていることを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の記録テープカートリッジ。
  7. 前記突出部は、前記制動部材に前記リールの径方向に延在するように形成された円板部から突設されていることを特徴とする請求項6に記載の記録テープカートリッジ。
  8. リールの径方向に延在する円板部と、
    前記円板部の軸心部から前記リールの軸方向へ突設された突出部と、
    前記突出部に形成された収容部に一部を露出させた状態で収容された球状部材と、
    前記突出部における前記収容部の開口端部から前記リールの径方向内側へ張り出すように形成され、該収容部に収容された前記球状部材を回転不能に保持する張出部と、
    を有することを特徴とする記録テープカートリッジに設けられる制動部材。
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