ところで、近年、多層配線基板のさらなる小型化や高密度化が要求されており、例えば、コア基板をガラス基板にすることが考えられている。ガラス基板は、基板主面及び基板裏面の平坦度が高いため、寸法精度が高く、配線の微細化に有利だからである。
しかし、コア基板がガラス基板である場合、特許文献1,2に記載の従来技術を採用すると、以下の問題が生じてしまう。即ち、コア基板に基板主面及び基板裏面にて開口する貫通孔を設け、貫通孔内にビア導体を形成する場合、コア基板が割れやすいガラスからなるため、ガラス部分に貫通孔を起点としたクラックが発生するおそれがある。よって、特許文献1,2に記載の従来技術を採用して、基板主面の外周部に検査用配線を形成したとしても、コア基板の中央部(貫通孔の形成領域)に発生したクラックを検出するには不十分である。この場合、不具合があるコア基板を用いて多層配線基板が製造される可能性が高いため、多層配線基板の歩留まりが低下し、多層配線基板に必要とされる所定の信頼性を付与できないという問題がある。
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その第1の目的は、不具合を確実に検出することにより、信頼性の向上を図ることが可能な配線基板を提供することにある。また、第2の目的は、歩留まりを向上させることにより、信頼性に優れた多層配線基板を製造することが可能な多層配線基板の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するための手段(手段1)としては、基板主面及び基板裏面を有し、前記基板主面及び前記基板裏面にて開口する複数の貫通孔を有し、絶縁性を有する無機材料を含む基板本体と、前記複数の貫通孔内に形成される複数のビア導体と、前記複数のビア導体における前記基板主面側端部及び前記基板裏面側端部に接続される複数のランドとを備える配線基板であって、前記基板主面及び前記基板裏面の少なくとも一方の上に、基板面方向に沿って延びる延設配線が形成され、前記延設配線の少なくとも一部は隣接する前記複数のランド間に配置されていることを特徴とする配線基板がある。
従って、手段1に記載の発明によると、延設配線の少なくとも一部が隣接する複数のランド間に配置されている。即ち、延設配線は、基板本体において不具合(具体的には、貫通孔を起点としたクラックの発生など)が生じやすい箇所の近傍に配置されている。このため、延設配線が検査用の配線であれば、延設配線の導通状態を測定して得られた測定結果に基づいて、不具合が生じているか否かを確実に検出することができる。ゆえに、配線基板の信頼性を向上させることができる。
配線基板は、基板主面及び基板裏面を有し、基板主面及び基板裏面にて開口する複数の貫通孔を有する基板本体を備える。基板本体の形成材料は、絶縁性を有する無機材料を含むものであれば特に限定される訳ではなく、コスト性、加工性、機械的強度などを考慮して適宜選択することができる。よって、基板本体としては、例えば、セラミック基板やガラス基板などが挙げられる。なお、セラミック基板の形成材料としては、低温焼成ガラスセラミック、ガラスセラミック等が好適に使用される。また、ガラス基板の形成材料としては、ホウケイ酸ガラス、低温焼成ガラスセラミック、ガラスセラミック等が好適に使用される。なお、基板本体が、絶縁性及び平滑性に優れたガラスからなるガラス基板であれば、基板本体が例えば樹脂基板である場合よりも狭ピッチで基板本体に貫通孔を形成できるため、配線基板に設けられる配線の自由度が大きくなる。
ここで、基板本体の厚さは特に限定されないが、例えば10μm以上400μm以下であることがよい。仮に、基板本体の厚さが10μm未満になると、基板本体が薄くなりすぎるため、基板本体の強度が低下して破損する可能性がある。一方、基板本体の厚さが400μmよりも大きくなると、基板本体、ひいては配線基板が肉厚になってしまう。
上記配線基板を構成する複数のビア導体は、複数の貫通孔内に形成される。かかるビア導体は、例えば、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、タングステン(W)などからなる導電性金属を用いてめっきを施すことにより形成される。
上記配線基板を構成する複数のランドは、複数のビア導体における基板主面側端部及び基板裏面側端部に接続される。ランドは主として銅からなり、サブトラクティブ法、セミアディティブ法、フルアディティブ法などといった公知の手法によって形成される。具体的に言うと、例えば、銅箔のエッチング、無電解銅めっきあるいは電解銅めっきなどの手法が適用される。なお、スパッタやCVD等の手法により薄膜を形成した後にエッチングを行うことでランドを形成したり、導電性ペースト等の印刷によりランドを形成したりすることも可能である。
さらに、基板主面及び基板裏面の少なくとも一方の上には、基板面方向に沿って延びる延設配線が形成される。延設配線は主として銅からなり、スパッタ、CVDなどといった公知の手法によって形成される。また、銅箔のエッチング、無電解銅めっきあるいは電解銅めっき等の手法により延設配線を形成したり、導電性ペースト等の印刷により延設配線を形成したりすることも可能である。なお、延設配線は、ランドと同じ導電性材料を主体として形成されることが好ましい。このようにすれば、延設配線の形成に際してランドとは別の材料を準備しなくても済む。よって、配線基板の製造に必要な材料が少なくなるため、配線基板の低コスト化を図ることが可能となる。
ここで、延設配線の幅は特に限定されないが、例えば10μm以下であることがよい。また、延設配線の厚さも特に限定されないが、例えば1μm以下であることがよい。延設配線の幅が10μm以下、延設配線の厚さが1μm以下になると、基板本体の変形に伴ってクラック等の不具合が生じる際に切断されやすくなるため、延設配線の導通状態が変化しやすくなり、基板本体の不具合を検出しやすくなる。
なお、延設配線は、基板主面及び基板裏面の両方に形成されていることがよい。このようにすれば、クラック等の不具合が、基板本体の基板主面付近及び基板裏面付近のどちらに生じたとしても、確実に不具合を検出することができる。また、延設配線は、基板主面及び基板裏面の少なくとも一方において複数系統存在していてもよい。このようにすれば、不具合を検査する前の時点で既に破損している延設配線があったとしても、他の延設配線を用いて不具合を確実に検出することができる。
さらに、延設配線は、検査用治具が当接可能な幅広の検査部を複数有していてもよい。このようにした場合、延設配線よりも幅広の検査部に検査用治具を当接させることによって、延設配線の導通状態を測定するため、得られた測定値に基づいて不具合を確実に検出することができる。なお、検査部の位置は特に限定される訳ではない。例えば、検査部は、延設配線の端部に設けられていてもよいし、延設配線の中間部分に設けられていてもよいが、特には、延設配線の端部に設けられていることがよく、さらには、基板主面の外周部及び基板裏面の外周部の少なくとも一方に配置されていることがよい。このようにすれば、基板主面上や基板裏面上に位置するランドを避けて検査部を配置できるため、検査部に検査用治具を当接させやすくなる。
また、基板主面の外周部全体及び基板裏面の外周部全体に、基板本体を介して互いに向かい合うようにダミー電極が形成され、ダミー電極が、延設配線及びランドから電気的に独立し、基板主面側のダミー電極と基板裏面側のダミー電極とが互いに電気的に独立していてもよい。このようにすれば、樹脂絶縁層及び導体層を積層した構造を有する配線積層部を、基板主面上及び基板裏面上の少なくとも一方に形成した場合に、基板本体に形成されたダミー電極と樹脂絶縁層との接触面積が大きくなり、基板本体と樹脂絶縁層との密着性が向上するため、樹脂絶縁層の剥離(デラミネーション)が発生しにくくなる。また、延設配線の導通状態を測定して得られた測定値に基づいて不具合を検出するだけでなく、基板主面側のダミー電極と基板裏面側のダミー電極との間の静電容量を測定することによっても、得られた測定値に基づいて不具合(具体的には、ダミー電極の剥離や、基板本体内でのクラックの発生)を検出することができる。ゆえに、配線基板の信頼性をよりいっそう向上させることができる。さらに、樹脂絶縁層の剥離は、基板本体の外周部で最も生じやすくなっている。また、配線基板の製造時には、基板本体の側面(基板側面)に衝撃が加わることが多い。そこで、上記のように、基板主面の外周部全体及び基板裏面の外周部全体をダミー電極で覆うようにすれば、樹脂絶縁層の剥離や製造時における基板本体の破損を防止できるため、配線基板の信頼性をよりいっそう向上させることができる。
ここで、「ダミー電極」とは、導電体で形成されているものの、基本的に電極としては機能しないものをいい、他の電極と電気的及び物理的に接続されないものである。ダミー電極は主として銅からなり、サブトラクティブ法、セミアディティブ法、フルアディティブ法などといった公知の手法によって形成される。具体的に言うと、例えば、銅箔のエッチング、無電解銅めっきあるいは電解銅めっきなどの手法が適用される。なお、スパッタやCVD等の手法により薄膜を形成した後にエッチングを行うことでダミー電極を形成したり、導電性ペースト等の印刷によりダミー電極を形成したりすることも可能である。
上記課題を解決するための別の手段(手段2)としては、基板主面及び基板裏面を有し、前記基板主面及び前記基板裏面にて開口する複数の貫通孔を有し、絶縁性を有する無機材料を含む基板本体を準備する基板本体準備工程と、前記基板本体準備工程後、前記複数の貫通孔内に複数のビア導体を形成するビア導体形成工程と、前記ビア導体形成工程後、前記複数のビア導体における前記基板主面側端部及び前記基板裏面側端部に接続される複数のランドを形成するランド形成工程と、前記ランド形成工程後、樹脂絶縁層及び導体層を積層した構造を有する配線積層部を、前記基板主面上及び前記基板裏面上の少なくとも一方に形成する配線積層部形成工程とを含む多層配線基板の製造方法において、前記基板本体準備工程後かつ前記配線積層部形成工程前に、前記基板主面及び前記基板裏面の少なくとも一方に、基板面方向に沿って延び、隣接する前記複数のランド間に少なくとも一部が位置する延設配線を形成する延設配線形成工程を含むことを特徴とする多層配線基板の製造方法がある。
従って、手段2に記載の発明によると、延設配線形成工程において、隣接する複数のランド間に少なくとも一部が位置する延設配線を形成することにより、延設配線が、基板本体において不具合(具体的には、貫通孔を起点としたクラックの発生など)が生じやすい箇所の近傍に配置されるようになる。このため、延設配線の導通状態を測定して得られた測定結果に基づいて、不具合が生じているか否かを確実に検出することができる。ゆえに、不具合がある基板本体を用いて多層配線基板が製造されてしまう、といった問題が未然に防止されるため、多層配線基板の歩留まりを向上させることができる。以上のことから、信頼性に優れた多層配線基板を製造することができる。
以下、多層配線基板の製造方法について説明する。
基板本体準備工程では、基板主面及び基板裏面を有し、基板主面及び基板裏面にて開口する複数の貫通孔を有し、絶縁性を有する無機材料を含む基板本体を従来周知の手法により作製し、あらかじめ準備しておく。続くビア導体形成工程では、複数の貫通孔内に複数のビア導体を形成し、続くランド形成工程では、複数のビア導体における基板主面側端部及び基板裏面側端部に接続される複数のランドを形成する。
続く配線積層部形成工程では、樹脂絶縁層及び導体層を積層した構造を有する配線積層部を、基板主面上及び基板裏面上の少なくとも一方に形成する。樹脂絶縁層は、絶縁性、耐熱性、耐湿性等を考慮して適宜選択することができる。樹脂絶縁層を形成するための高分子材料の好適例としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂などの熱硬化性樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリプロピレン樹脂などの熱可塑性樹脂等が挙げられる。また、導体層は、主として銅からなり、サブトラクティブ法、セミアディティブ法、フルアディティブ法などといった公知の手法によって形成される。
なお、基板本体準備工程後かつ配線積層部形成工程前には、基板主面及び基板裏面の少なくとも一方に、基板面方向に沿って延び、隣接する複数のランド間に少なくとも一部が位置する延設配線を形成する延設配線形成工程が行われる。以上のプロセスを経て、多層配線基板が製造される。
以下、本発明の多層配線基板10を具体化した一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
図1に示されるように、本実施形態の多層配線基板10は、ICチップ搭載用のガラスインターポーザ(ガラス中継基板)である。多層配線基板10は、略矩形板状のコア基板11(基板本体)と、コア基板11の基板主面12(図1では上面)に形成される主面側ビルドアップ層31(配線積層部)と、コア基板11の基板裏面13(図1では下面)上に形成される裏面側ビルドアップ層32(配線積層部)とからなる。
図1,図2に示されるように、コア基板11は、1つの基板主面12、1つの基板裏面13、及び、4つの基板側面14を有し、略矩形板状をなしている。本実施形態のコア基板11は、絶縁性を有する無機材料(本実施形態ではホウケイ酸ガラス)からなるガラス基板である。なお、コア基板11の大きさは、縦10mm×横10mmに設定されている。また、コア基板11の厚さは、10μm以上400μm以下(本実施形態では100μm)に設定されている。本実施形態において、コア基板11の熱膨張係数は、15ppm/℃未満、具体的には4〜5ppm/℃程度となっている。なお、コア基板11の熱膨張係数は、30℃〜400℃間の測定値の平均値をいう。
また、コア基板11には、基板主面12及び基板裏面13の両方にて開口する複数の貫通孔15が格子状に形成されている。各貫通孔15は、平面視円形状をなし、基板主面12側及び基板裏面13側のそれぞれに向かうに従って徐々に内径が大きくなる両テーパ状をなしている。そして、かかる貫通孔15内には、銅からなるビア導体16が設けられている。なお、本実施形態では、説明の便宜上、ビア導体16を3列×3列で図示したが、実際にはさらに多くの列(具体的には、10列×10列)が存在している。また、隣接するビア導体16の中心間距離(ピッチ)は、400μmに設定されている。
図1,図2に示されるように、コア基板11の基板主面12上には、平面視円形状をなす主面側ランド21が基板主面12の面方向に沿って縦横に複数配列され、コア基板11の基板裏面13上には、同じく平面視円形状をなす裏面側ランド22が基板裏面13の面方向に沿って縦横に複数配列されている。各主面側ランド21は、各ビア導体16における基板主面21側端部に電気的に接続され、各裏面側ランド22は、各ビア導体16における基板裏面13側端部に電気的に接続されている。なお、各ランド21,22の外径は、ビア導体16の最大径(本実施形態では100μm)よりも大きく(本実施形態では150μm)設定されている。また、本実施形態における各ランド21,22の厚さは、10μmに設定されている。
また、コア基板11の基板主面12の上には、銅からなる主面側延設配線81がパターン形成され、コア基板11の基板裏面13の上には、同じく銅からなる裏面側延設配線82がパターン形成されている。即ち、延設配線81,82は、基板主面12及び基板裏面13の両方に形成されている。また、延設配線81,82は、幅5μm×厚さ1μmの線状をなし、基板面方向に沿って延びている。詳述すると、主面側延設配線81は、基板主面12において1系統のみ存在しており、基板面方向に沿って一直線に延びる複数の直線部86と、直線部86同士を直交した状態で接続する複数の接続部87とからなっている。主面側延設配線81は、隣接する主面側ランド21間に一部が配置され、主面側ランド21と述するダミー電極51との間に残りの部分が配置されている。一方、裏面側延設配線82は、基板裏面13において1系統のみ存在しており、基板面方向に沿って一直線に延びる直線部(図示略)と、直線部同士を直交した状態で接続する接続部(図示略)とを有している。裏面側延設配線82は、隣接する裏面側ランド22間に一部が配置され、裏面側ランド22と後述するダミー電極52との間に残りの部分が配置されている。なお、裏面側延設配線82は、主面側延設配線81と同じ平面形状をなしている。
図2に示されるように、主面側延設配線81は、検査用治具であるプローブ85(図6参照)が当接可能な主面側検査部83,84を2箇所に有している。主面側検査部83,84は、縦1mm×横1mmの平面視矩形状をなし、主面側延設配線81における他の部分よりも幅広になっている。主面側検査部83,84は、主面側延設配線81の両端部にそれぞれ設けられている。また、主面側検査部83,84は、基板主面12の外周部において、1つの基板側面14の近傍に配置されている。
同様に、裏面側延設配線82は、プローブ85が当接可能な裏面側検査部(図示略)を2箇所に有している。裏面側検査部は、縦1mm×横1mmの平面視矩形状をなし、裏面側延設配線82における他の部分よりも幅広になっている。裏面側検査部は、裏面側延設配線82の両端部にそれぞれ設けられている。また、裏面側検査部は、基板裏面13の外周部において、1つの基板側面14の近傍に配置されている。
図1,図2に示されるように、コア基板11の基板主面12上には、厚さ10μmの銅からなるダミー電極51がパターン形成され、コア基板11の基板裏面13上には、同じく厚さ10μmの銅からなるダミー電極52がパターン形成されている。ダミー電極51及びダミー電極52は、コア基板11を介して互いに向かい合うように配置されている。詳述すると、ダミー電極51は基板主面12の外周部全体を覆っており、ダミー電極52は基板裏面13の外周部全体を覆っている。なお、基板主面12においてダミー電極51が占める割合、及び、基板裏面13においてダミー電極52が占める割合は、いずれも51.0%である。
また、ダミー電極51には、主面側ランド21及び主面側延設配線81を露出させる主面側開口部53が形成され、ダミー電極52には、裏面側ランド22及び裏面側延設配線82を露出させる裏面側開口部54が形成されている。なお、開口部53,54は、縦7mm×横7mmの平面視矩形状をなしている。また、主面側ランド21及び主面側延設配線81は、それぞれの外側面が主面側開口部53の内側面と向かい合うように主面側開口部53内に配置され、裏面側ランド22及び裏面側延設配線82は、それぞれの外側面が裏面側開口部54の内側面と向かい合うように裏面側開口部54内に配置されている。即ち、ダミー電極51,52は、ランド21,22及び延設配線81,82からは電気的に独立している。また、基板主面12側のダミー電極51、及び、基板裏面13側のダミー電極52は、互いに電気的に独立している。
図1に示されるように、主面側ビルドアップ層31は、厚さ17.5μmの熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂)からなる2層の樹脂絶縁層33,35と、銅からなる導体層41,42とを積層した構造を有している。本実施形態において、樹脂絶縁層33,34の完全硬化状態での熱膨張係数は、10〜60ppm/℃程度であり、具体的には46ppm/℃となっている。なお、樹脂絶縁層33,35の完全硬化状態での熱膨張係数は、25℃〜150℃間の測定値の平均値をいう。また、樹脂絶縁層33,35内には、それぞれ銅めっきによって形成されたビア導体43が設けられている。さらに、樹脂絶縁層35の表面は、ソルダーレジスト37によってほぼ全体的に覆われている。ソルダーレジスト37の所定箇所には、導体層42を露出させる開口部46が形成されている。導体層42の表面上には、複数のはんだバンプ45が配設されている。
なお、図1に示されるように、主面側ビルドアップ層31内には、基板主面12側のダミー電極51に電気的に接続される測定用配線61が複数箇所に設けられている。各測定用配線61は、測定用ビア導体62及び測定用導体層63からなっている。測定用ビア導体62は、銅めっきによって形成されており、樹脂絶縁層33内に設けられるとともに、ダミー電極51の表面に接続されている。測定用導体層63は、銅からなり、樹脂絶縁層33の表面に形成されるとともに、測定用ビア導体62の端面に電気的に接続されている。
そして、各はんだバンプ45は、ICチップ(半導体集積回路素子)の面接続端子に電気的に接続されている。本実施形態のICチップは、縦6.0mm×横6.0mm×厚さ0.9mmの平面視矩形状をなす板状物であって、熱膨張係数が3〜4ppm/℃程度(具体的には3.5ppm/℃程度)のシリコンからなる。
図1に示されるように、裏面側ビルドアップ層32は、上述した主面側ビルドアップ層31と略同じ構造を有している。即ち、裏面側ビルドアップ層32は、厚さ17.5μmの熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂)からなる2層の樹脂絶縁層34,36と、銅からなる導体層41,42とを積層した構造を有している。本実施形態において、樹脂絶縁層34,36の完全硬化状態での熱膨張係数は、10〜60ppm/℃程度であり、具体的には46ppm/℃となっている。なお、樹脂絶縁層34,36の完全硬化状態での熱膨張係数は、25℃〜150℃間の測定値の平均値をいう。また、樹脂絶縁層34,36内には、それぞれ銅めっきによって形成されたビア導体47が設けられている。さらに、樹脂絶縁層36の下面は、ソルダーレジスト38によってほぼ全体的に覆われている。ソルダーレジスト38の所定箇所には、樹脂絶縁層36の下面上に配設された導体層42を露出させる開口部48が形成されている。そして、導体層42の表面上には、図示しないマザーボード側との電気的な接続を図るための複数のはんだバンプ49が配設されている。
なお、図1に示されるように、裏面側ビルドアップ層32内には、基板裏面13側のダミー電極52に電気的に接続される測定用配線71が複数箇所に設けられている。各測定用配線71は、測定用ビア導体72及び測定用導体層73からなっている。測定用ビア導体72は、銅めっきによって形成されており、樹脂絶縁層34内に設けられるとともに、ダミー電極52の表面に接続されている。測定用導体層73は、銅からなり、樹脂絶縁層34の表面に形成されるとともに、測定用ビア導体72の端面に電気的に接続されている。
次に、本実施形態の多層配線基板10の製造方法を説明する。
まず、基板本体準備工程では、コア基板11を従来周知の手法により作製し、あらかじめ準備しておく(図3参照)。なお、本実施形態の基板本体準備工程では、コア基板11となるべき基板形成領域が平面方向に沿って縦横に複数配置された多数個取り用コア基板を準備する。
コア基板11は以下のように作製される。まず、市販の薄ガラス基板(日本電気硝子株式会社製 OA−10G)を用意する。本実施形態の薄ガラス基板は、縦100mm×横100mm×厚さ100μmの平面視矩形状をなす板状物である。次に、レーザー照射、ドリル加工、サンドブラストなどといった周知の手法によって薄ガラス基板に貫通孔15を多数個貫通形成する(図4参照)。さらに、基板主面12側からチタン(Ti)のスパッタリングを行ってチタン層を形成し、基板主面12に形成されるチタン層と、貫通孔15の基板主面12側の内側面に形成されるチタン層とを、分断されることなく連続した層とする。また、基板裏面13側からチタンのスパッタリングを行ってチタン層を形成し、基板裏面13に形成されるチタン層と、貫通孔15の基板裏面13側の内側面に形成されるチタン層とを、分断されることなく連続した層とする。さらに、基板主面12側及び基板裏面13側から銅(Cu)のスパッタリングを行い、チタン層上に銅層を形成する。
基板本体準備工程後のビア導体形成工程及びランド形成工程では、貫通孔15内にビア導体16を形成し、ビア導体16における基板主面12側端部に接続される複数の主面側ランド21を形成するとともに、ビア導体16における基板裏面13側端部に接続される複数の裏面側ランド22を形成する。具体的に言うと、チタン層及び銅層が形成された基板主面12及び基板裏面13にそれぞれドライフィルムをラミネートして、めっきレジスト(図示略)を形成する。次に、フォトリソグラフィーによるパターニングを行った後、貫通孔15の内側面に形成された銅層の表面、基板主面12に形成された銅層の表面、及び、基板裏面13に形成された銅層の表面に対してそれぞれ電解銅めっきを行う。この時点で、貫通孔15内にビア導体16が形成され、基板主面12上に主面側ランド21がダミー電極51と同時に形成されるとともに、基板裏面13上に裏面側ランド22がダミー電極52と同時に形成される(図5参照)。その後、めっきレジストを剥離し、めっきレジストで保護されていたチタン層及び銅層をエッチングにより除去する。なお、ガラスセラミックのグリーンシートにビア導体を形成する場合には、銅層を形成した後に、図示しないペースト圧入充填装置を用いて、ビア導体用銅ペーストを各貫通孔15内に充填する。この後、グリーンシートの乾燥を行い、グリーンシートをある程度固化させる。次に、グリーンシートを脱脂し、さらに所定温度で所定時間焼成を行う。その結果、ガラスセラミック及びペースト中の銅が同時焼結し、複数のビア導体が形成されたコア基板となる。
なお、ランド21,22を別の方法で形成してもよい。詳述すると、めっきレジストを形成せずに、基板主面12に形成された銅層の表面、及び、基板裏面13に形成された銅層の表面に対してそれぞれ電解銅めっきを行う。この時点で、基板主面12全体を覆うベタパターンが形成されるとともに、基板裏面13全体を覆うベタパターンが形成される。その後、サブトラクティブ法でパターニングを行う。具体的には、基板主面12上及び基板裏面13上に対してドライフィルムをラミネートし、ドライフィルムに対して露光及び現像を行うことにより、所定パターンのエッチングレジストを形成する。この状態で、基板主面12側及び基板裏面13側のベタパターンに対して、エッチングによるパターニングを行う。この時点で、基板主面12上に主面側ランド21及びダミー電極51が形成されるとともに、基板裏面13上に裏面側ランド22及びダミー電極52が形成される(図5参照)。その後、エッチングレジストを剥離する。
また、基板本体準備工程後かつ後述する配線積層部工程前に延設配線形成工程を行い、リフトオフ法によって、基板主面12に主面側延設配線81を形成するとともに、基板裏面13に裏面側延設配線82を形成する(図6参照)。具体的に言うと、基板主面12及び基板裏面13にそれぞれフォトレジスト材(図示略)をラミネートし、フォトレジスト材に対して露光及び現像を行うことにより、基板主面12及び基板裏面13を露出させる開口部を複数箇所に形成する。次に、基板主面12側からチタンのスパッタリングを行うことにより、基板主面12側のフォトレジスト材の開口部を介して露出した面に対してチタン層を形成する。また、基板裏面13側からチタンのスパッタリングを行い、基板裏面13側のフォトレジスト材の開口部を介して露出した面に対してチタン層を形成する。さらに、基板主面12側及び基板裏面13側から銅のスパッタリングを行い、チタン層上に銅層を形成する。この時点で、基板主面12上に主面側延設配線81が形成されるとともに、基板裏面13上に裏面側延設配線82が形成される(図6参照)。その後、コア基板11を除去液に浸したり、基板主面12及び基板裏面13に対して剥離液を高圧で吹き付けたりすることにより、フォトレジスト材を除去する。
さらに、延設配線形成工程後かつ配線積層部形成工程前に第1検査工程を行い、延設配線81,82の導通状態を検査する(図6参照)。即ち、延設配線81,82は検査用の配線である。詳述すると、第1検査工程では、主面側延設配線81の両端部にある主面側検査部83,84に対してそれぞれプローブ85を当接させる。そして、この状態で、主面側延設配線81の電気抵抗値を測定し、電気抵抗値を測定して得られた測定値に基づいて、導通状態の良否を判定する。具体的に言うと、得られた測定値が、主面側延設配線81が変形していない場合の測定値(第1基準値)の範囲内にある場合には、コア基板11に不具合がないと判定する(良)。一方、得られた測定値が第1基準値の範囲よりも高い場合(即ち、主面側延設配線81が変形して延びるなどした場合)、または、電気抵抗値を測定できない場合(即ち、主面側延設配線81が切断された場合)には、コア基板11に不具合があると判定する(否)。
また、第1検査工程では、裏面側延設配線82の両端部にもそれぞれプローブ85を当接させる。そして、この状態で、裏面側延設配線82の電気抵抗値を測定し、電気抵抗値を測定して得られた測定値に基づいて、導通状態の良否を判定する。具体的に言うと、得られた測定値が、裏面側延設配線82が変形していない場合の測定値(第1基準値)の範囲内にある場合には、コア基板11に不具合がないと判定する(良)。一方、得られた測定値が第1基準値の範囲よりも高い場合(即ち、裏面側延設配線82が変形して延びるなどした場合)、または、電気抵抗値を測定できない場合(即ち、裏面側延設配線82が切断された場合)には、コア基板11に不具合があると判定する(否)。
続く配線積層部形成工程では、従来周知の手法に基づいて、基板主面12上に主面側ビルドアップ層31を形成するとともに、基板裏面13上に裏面側ビルドアップ層32を形成する(図7,図8参照)。具体的に言うと、まず、厚さ17.5μmの熱硬化性エポキシ樹脂を基板主面12上に被着(貼付)することにより、樹脂絶縁層33を形成する。また、厚さ17.5μmの熱硬化性エポキシ樹脂を基板裏面13上に被着(貼付)することにより、樹脂絶縁層34を形成する。なお、熱硬化性エポキシ樹脂を被着する代わりに、感光性エポキシ樹脂や絶縁樹脂や液晶ポリマー(LCP:Liquid Crystalline Polymer)を被着してもよい。
なお、配線積層部形成工程は、測定用配線形成工程及び第2検査工程を含んでいる。測定用配線形成工程では、基板主面12上に1層の樹脂絶縁層33を積層した状態で、樹脂絶縁層33に測定用配線61を形成するとともに、基板裏面13上に1層の樹脂絶縁層34を積層した状態で、樹脂絶縁層34に測定用配線71を形成する。詳述すると、YAGレーザーまたは炭酸ガスレーザーを用いてレーザー孔あけ加工を行い、ビア導体43,47及び測定用ビア導体62,72が形成されるべき位置にビア孔を形成する。具体的には、樹脂絶縁層33を貫通するビア孔を形成し、主面側ランド21の表面及びダミー電極51の表面を露出させる。また、樹脂絶縁層34を貫通するビア孔を形成し、裏面側ランド22の表面及びダミー電極52の表面を露出させる。次に、従来周知の手法に従って電解銅めっきを行い、ビア孔の内部にビア導体43,47及び測定用ビア導体62,72を形成するとともに、樹脂絶縁層33,34上に導体層41及び測定用導体層63,73を形成する。この時点で、測定用ビア導体62及び測定用導体層63からなる測定用配線61と、測定用ビア導体72及び測定用導体層73からなる測定用配線71とが形成される(図7参照)。
測定用配線形成工程後に行われる第2検査工程では、基板主面12側の測定用導体層63に対してプローブ64を当接させるとともに、基板裏面13側の測定用導体層73に対してプローブ74を当接させる(図7参照)。そして、この状態で、基板主面12側のダミー電極51と基板裏面13側のダミー電極52との間の静電容量を測定する。そして、静電容量を測定して得られた測定値に基づいて、良否を判定する。具体的に言うと、得られた測定値が、ダミー電極51,52が剥離していない場合の測定値(第2基準値)の範囲内にある場合には、コア基板11に不具合がないと判定する(良)。一方、得られた測定値が、第2基準値の範囲よりも低い場合には、コア基板11に不具合があると判定する(否)。
第2検査工程後、厚さ17.5μmの熱硬化性エポキシ樹脂を樹脂絶縁層33,34上に被着して、樹脂絶縁層35,36を形成する。なお、熱硬化性エポキシ樹脂を被着する代わりに、感光性エポキシ樹脂や絶縁樹脂や液晶ポリマーを被着してもよい。この場合、レーザー加工機などにより、樹脂絶縁層35,36においてビア導体43,47が形成されるべき位置にビア孔が形成される。次に、従来公知の手法に従って電解銅めっきを行い、樹脂絶縁層35,36のビア孔内にビア導体43,47を形成するとともに、樹脂絶縁層35,36上に導体層42を形成する。この時点で、図8に示すビルドアップ層31,32が完成する。
配線積層部形成工程後、樹脂絶縁層35,36上に感光性エポキシ樹脂を塗布して硬化させることにより、ソルダーレジスト37,38を形成する。次に、所定のマスクを配置した状態で露光及び現像を行い、ソルダーレジスト37,38に開口部46,48をパターニングする。
さらに、樹脂絶縁層35上に形成された導体層42上に、はんだペーストを印刷する。また、樹脂絶縁層36上に形成された導体層42上に、はんだペーストを印刷する。次に、はんだペーストが印刷された多数個取り用基板をリフロー炉内に配置して、はんだの融点より10〜40℃高い温度に加熱する。この時点で、はんだペーストが溶融し、半球状に盛り上がった形状のICチップ搭載用のはんだバンプ45が形成されるとともに、同じく半球状に盛り上がった形状のマザーボード実装用のはんだバンプ49が形成される。
さらに、従来周知の切断装置(レーザー加工機やダイシング装置等)を用いて、多数個取り用基板を基板形成領域の外形線に沿って切断することにより、基板形成領域同士が分割され、図1の多層配線基板10が複数個同時に得られる。
その後、多層配線基板10を構成する主面側ビルドアップ層31の表面にICチップを載置する。このとき、ICチップ側の面接続端子と各はんだバンプ45とを位置合わせする。そして、220〜240℃程度の温度に加熱して各はんだバンプ45をリフローすることにより、各はんだバンプ45と面接続端子とが接合し、多層配線基板10側とICチップ側とを電気的に接続する。その結果、多層配線基板10にICチップが搭載される。
次に、コア基板11の評価方法及びその結果を説明する。
まず、測定用サンプルを次のように準備した。本実施形態と同じ条件下で、各工程(基板本体準備工程、ビア導体形成工程、ランド形成工程、延設配線形成工程)を行うことによって得られたコア基板を準備し、これを実施例とした。次に、基板主面側が凸となるようにコア基板を曲げることにより、コア基板内に意図的にクラックを発生させた。また、クラックの発生に伴い、主面側延設配線の電気抵抗値を測定した。なお、電気抵抗値の測定は、10個の測定用サンプル(コア基板)に対して行った。
その結果、一部の測定サンプルでは、得られた測定値が上昇したため、主面側延設配線が変形して延びるなどしたことが確認された。また、それ以外のサンプルでは、電気抵抗値を測定できなくなったため、主面側延設配線が切断されたことが確認された。従って、基板主面上や基板裏面上に延設配線を形成すれば、クラックなどの不具合の発生を確実に検出できることが証明された。
従って、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)本実施形態の多層配線基板10によれば、主面側延設配線81の少なくとも一部が隣接する主面側ランド21間に配置され、裏面側延設配線82の少なくとも一部が隣接する裏面側ランド22間に配置されている。即ち、延設配線81,82は、コア基板11において不具合(具体的には、貫通孔15を起点としたクラックの発生など)が生じやすい箇所の近傍に配置されているため、延設配線81,82の電気抵抗値を測定して得られた測定値に基づいて、不具合が生じているか否かを確実に検出することができる。ゆえに、不具合があるコア基板11を用いて多層配線基板10が製造されてしまう、といった問題が未然に防止されるため、多層配線基板10の歩留まりを向上させることができる。以上のことから、信頼性に優れた多層配線基板10を製造することができる。
(2)本実施形態では、コア基板11に延設配線81,82(及びダミー電極51,52)を形成することにより、延設配線81,82(及びダミー電極51,52)と樹脂絶縁層33,34との接触面積が大きくなり、コア基板11と樹脂絶縁層33,34との密着性が向上するため、樹脂絶縁層33,34の剥離(デラミネーション)が発生しにくくなる。ゆえに、不具合があるコア基板11を用いて多層配線基板10が製造されてしまう、といった問題をより確実に防止できるため、多層配線基板10の歩留まりがよりいっそう向上する。
(3)本実施形態では、コア基板11に設けられた貫通孔15が、基板主面12側及び基板裏面13側のそれぞれに向かうに従って徐々に内径が大きくなる両テーパ状をなしている。このため、貫通孔15の内側面は、基板主面12及び基板裏面13に対して垂直な面となるのではなく、基板主面12及び基板裏面13に対して傾斜した面となる。その結果、異方性の薄膜形成方法であるチタンまたは銅のスパッタリングを基板主面12側及び基板裏面13側から行う際に、貫通孔15の内側面にチタンや銅を付着させやすくなる。しかも、めっきの充填により、効率良くかつ確実にビア導体16を形成することができる。従って、ビア導体16による導通を確実に確保できるため、よりいっそう信頼性に優れた多層配線基板10を製造することができる。また、貫通孔15が両テーパ状をなすことにより、貫通孔15の内側面にチタン層及び銅層を形成できるため、チタン層及び銅層によってコア基板11の貫通孔15付近を補強することができる。その結果、貫通孔15を起点としたクラックの発生をより確実に防止することができる。仮に、クラックが発生した場合であっても、延設配線81,82の導通状態を測定することにより、クラックを確実に検出できるため、多層配線基板10の歩留まりがよりいっそう向上する。
(4)本実施形態のICチップはコア基板11の真上に配置される。その結果、ICチップとコア基板11とを電気的に接続する導通経路が最短となる。ゆえに、ICチップに対する電源供給をスムーズに行うことができる。また、ICチップとコア基板11との間で侵入するノイズを極めて小さく抑えることができるため、誤動作等の不具合を生じることもなく高い信頼性を得ることができる。
また、ICチップは、高剛性であって、樹脂絶縁層33〜36よりも熱膨張率が小さく、ICチップに熱膨張率が近いガラス基板(コア基板11)によって支持される。よって、コア基板11が変形しにくくなるため、コア基板11に実装されるICチップをより安定的に支持できる。従って、大きな熱応力に起因するICチップのクラックや接続不良を防止することができる。ゆえに、ICチップとして、熱膨張係数差による応力(歪)が大きくなり熱応力の影響が大きく、かつ発熱量が大きく使用時の熱衝撃が厳しい10mm角以上の大型のICチップや、脆いとされるLow−k(低誘電率)のICチップを用いることができる。
なお、本実施形態を以下のように変更してもよい。
・上記実施形態のコア基板11では、基板主面12の上に形成された主面側延設配線81が、一部の隣接する主面側ランド21間に配置され、基板裏面13の上に形成された裏面側延設配線82が、一部の隣接する裏面側ランド22間に配置されていた。しかし、延設配線の配置態様を変更してもよい。例えば、図9のコア基板111(基板本体)に示されるように、主面側延設配線112を、全ての隣接する主面側ランド113間を通過するように形成してもよい。また、図10のコア基板121(基板本体)に示されるように、主面側延設配線122を、全ての主面側ランド123を包囲するように形成してもよい。なお、主面側延設配線122において主面側ランド123を包囲する部分(包囲部124)は、円形状をなしているが、四角形状などの他の形状であってもよい。
・上記実施形態のコア基板11では、基板主面12に1系統の主面側延設配線81が存在し、基板裏面13に1系統の裏面側延設配線82が存在していた。しかし、延設配線81,82は、基板主面12及び基板裏面13において複数系統存在していてもよい。例えば、図11のコア基板131(基板本体)に示されるように、主面側延設配線132は、基板主面133において2系統存在していてもよい。
・上記実施形態のコア基板11では、主面側検査部83,84が、基板主面12の外周部において、1つの基板側面14の近傍に配置されていた。しかし、検査部を、異なる場所に配置するようにしてもよい。例えば、図9に示されるように、一方の主面側検査部114を、1つの基板側面115の近傍に配置するとともに、他方の主面側検査部116を、コア基板111において基板側面115の反対側に位置する基板側面117の近傍に配置してもよい。
・上記実施形態の第1検査工程では、延設配線81,82の電気抵抗値を測定し、電気抵抗値を測定して得られた測定値に基づいて、導通状態の良否を判定するようになっていた。しかし、他の方法によって延設配線81,82の導通状態の良否を判定するようにしてもよい。例えば、延設配線81,82が通電状態にあるか否かを測定し、通電状態にあれば、延設配線81,82の導通状態が「良」であると判定し、通電状態になければ、延設配線81,82の導通状態が「否」であると判定するようにしてもよい。
・上記実施形態では、基板主面12上及び基板裏面13上の両方にそれぞれ1層の樹脂絶縁層33,34を積層した状態で、ダミー電極51,52に電気的に接続される測定用配線61,71を形成し、両方の測定用配線61,71に対してそれぞれプローブ64,74を当接させた状態で、静電容量を測定していた。しかし、基板主面12上及び基板裏面13上にそれぞれ2層以上の樹脂絶縁層を積層した状態で測定用配線61,71を形成し、両方の測定用配線61,71に対してそれぞれプローブ64,74を当接させた状態で、静電容量を測定するようにしてもよい。また、基板主面12上及び基板裏面13上に樹脂絶縁層を積層する前の段階で、ダミー電極51,52に直接プローブ64,74を当接させ、この状態で、静電容量を測定するようにしてもよい。
・上記実施形態において、コア基板11に設けられる貫通孔15は、基板主面12側及び基板裏面13側のそれぞれに向かうに従って徐々に内径が大きくなる両テーパ状をなしていたが、基板主面12側または基板裏面13側に向かうに従って徐々に内径が大きくなる片テーパ状をなしていてもよい。なお、貫通孔は、テーパ状をなしていなくてもよい。
次に、前述した実施形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
(1)上記手段2において、前記延設配線形成工程後かつ前記配線積層部形成工程前に、前記延設配線の導通状態を検査する検査工程を行うことを特徴とする多層配線基板の製造方法。
(2)技術的思想(1)において、前記検査工程では、前記延設配線の両端部に対してそれぞれ検査用治具を当接させた状態で、前記導通状態を検査することを特徴とする多層配線基板の製造方法。
(3)技術的思想(1)または(2)において、前記検査工程では、前記延設配線の電気抵抗値を測定し、測定値に基づいて前記導通状態の良否を判定することを特徴とする多層配線基板の製造方法。