以下、実施形態に係るドア用配線装置について説明する。
<ドア用配線装置の全体構成>
まず、ドア用配線装置の全体構成について説明する。図1〜図4はそれぞれドア用配線装置20が車両に取付けられた状態を示しており、図1はドアの開状態におけるドア用配線装置20を示す概略側面図であり、図2はドアの開状態におけるドア用配線装置20を示す概略平面図であり、図3はドアの閉状態におけるドア用配線装置20を示す概略側面図であり、図4はドアの閉状態におけるドア用配線装置20を示す概略平面図である。
ドア用配線装置20は、車両の車体10とドア14との間にワイヤーハーネスWHを配索するためのものである。
ここで、説明の便宜上、車体10及びドア14について説明しておく。
車体10は、金属等で形成され車両の外面を形作る部分であり、図1〜図4では、車体10のうち乗員席外側に設けられる乗降用開口が形成された部分を示している。
ドア14は、乗降用開口を閉じることができるように、車体10に対してドアヒンジ12を介して開閉可能に支持されている。ドア14は、例えば、運転席又は助手席の外側に設けられるフロントサイドドアである。ドアヒンジ12の回転軸は、通常、鉛直方向に沿っているが、鉛直方向に対して傾いていてもよい。
上記ドア14は、金属板をプレス成型、打抜き等して形成されたドアインナーパネル15及びその外側に設けられる外装部材としてのドアアウターパネルと、合成樹脂材料等で形成され、ドアインナーパネル15の車内側に取り付けられる内装部材としてのトリム16とを備えている(図2参照)。
上記ドアインナーパネル15とトリム16との間にプロテクタ30が配設され、当該プロテクタ30内でワイヤーハーネスWHの余長が吸収される。また、ドア14のうち車体10との連結側(車両前側)の縁部には、導入開口部14hが形成されており、この導入開口部14hを通じてワイヤーハーネスWHが配索される。
また、車体10には、内外にワイヤーハーネスWHを挿通配索するための貫通孔部10hが形成されている。この貫通孔部10hは、車体10のうち乗降用開口を囲む周縁部であって、ドア14の閉状態において導入開口部14hと対向する部位に形成されている(図4参照)。
また、ドア14には、その周縁部に沿って防水用のウエザーストリップ18が設けられている(図2、図4参照)。このウエザーストリップ18は、ゴム等で形成された細長い弾性部材であり、ドア14を閉めた状態で、車体10の乗降用開口の開口縁部に密着して、車内外において水密状態を保つ。本ドア用配線装置20のうち車体10とドア14との間に配設される部分、導入開口部14h及び貫通孔部10hは、ウエザーストリップ18より車内側に配設され、これにより、ドア用配線装置20に対する防水が図られている。
本ドア用配線装置20は、上記車体10とドア14とに組込まれるものであり、ワイヤーハーネスWHと、ドア14内に配設されたプロテクタ30と、曲げ規制部材50とを備える。
ワイヤーハーネスWHは、ドア14に組込まれるスイッチ、パワーウインドウモータ、ドアロックモータ、サイドミラーモータ及びスピーカー等の電気機器に対して電源供給又は信号伝達するための複数の電線が、配索経路に対応して必要に応じて分岐しつつ束ねられて構成されている。ワイヤーハーネスWHにおける車体10からドア14に架け渡される部分は、上記複数の電線が1本に束ねられて構成されている。
プロテクタ30は、上記ドア14内に配設される部品であり、車体10側からワイヤーハーネスWHが挿入される挿入口部31と、ワイヤーハーネスWHをドア14内に向けて引出す引出口部32とを有し、ドア14の延在方向に沿う偏平形状に形成されると共に前記挿入口部31と引出口部32との間でワイヤーハーネスWHの余長を吸収する収容空間が形成されたケース形状に形成されている。
より具体的には、プロテクタ30は、プロテクタ本体部34と、蓋部38とを備えている。これらプロテクタ本体部34及び蓋部38は、樹脂等によって形成される部品である。
プロテクタ本体部34は、主板部35の周囲に周壁部が形成された構成とされている。主板部35は、長方形状部分の一辺側に半円形状部分を連設した板形状に形成されている。周壁部は、主板部35の周囲に沿って当該主板部の一主面側に突設されており、主板部35の弧状部分に沿って設けられた弧状壁部35aと、主板部35の一対の対向辺に沿って設けられた一対の側壁部35b、35cと、主板部35のうち前記弧状部分の反対側の辺に沿って設けられた壁部35dとを備える。
壁部35dのうち一方(ここでは上方)の側壁部35bの内側延長上に、挿入口部31が形成されている。換言すれば、側壁部35bは、第1壁部として、挿入口部31からワイヤーハーネスWHの挿入方向延長上に設けられている。挿入口部31は、ワイヤーハーネスWHを挿入可能な筒形状に形成され、壁部35dの外方に突出するように形成されている。
他方(下方)の側壁部35cは、第2壁部として上記一方(上方)の側壁部35bに対して間隔をあけて対向している。ここでは、両側壁部35b、35cは、互いに平行であるが、両者が斜めの位置関係で設けられていてもよい。他方(ここでは下方)の側壁部35cのうち挿入口部31よりの位置(即ち、壁部35dよりの位置)に、引出口部32が設けられている。引出口部32は、側壁部35cの外方に向けて突出する筒形状に形成されている。また、引出口部32の先端部には、その周方向の一部において外向きに突出する固定片32aが形成されている。ワイヤーハーネスWHが引出口部32に挿通された状態で、ワイヤーハーネスWH(ここでは、後述する曲げ規制部材50が外装されている)と固定片32aとに粘着テープ、結束バンド等を巻回することで、ワイヤーハーネスWHを本引出口部32に固定できるようになっている。
なお、ここでは、引出口部32は、側壁部35cから弧状壁部35a側に向いつつ外方に突出する形状に形成されているが、その他の方向に突出していてもよい。また、ここでは、上記挿入口部31及び引出口部32が、外方に突出する筒形状に形成されている例で説明したが、挿入口部及び引出口部は、プロテクタの周壁部に形成された孔であってもよい。
蓋部38は、上記プロテクタ本体部34のうち主板部35とは反対側の開口を閉塞可能に構成されている。すなわち、蓋部38は、上記主板部35と同形状の板状に形成されている。そして、周壁部の先端側縁部と蓋部38の周縁部とを一致させるように、蓋部38をプロテクタ本体部34に被せることで、プロテクタ本体部34の開口が蓋部38によって閉塞される。プロテクタ本体部34と蓋部38との固定は、両者間の嵌め込み構造、それらの外周に設けられたロック構造、ネジ止、接着剤固定等の各種構成によってなされる。
プロテクタ本体部34に蓋部38が被せられた状態で、一対の側壁部35b、35cとの間、より具体的には、主板部35と蓋部38との間であって周壁部によって囲まれる空間によって、ワイヤーハーネスWHの余長を吸収可能な収容空間が形成される。すなわち、上記ワイヤーハーネスWHは、挿入口部31からプロテクタ30の収容空間内を通って引出口部32に導かれ、当該引出口部32を通って外部に引出される。ワイヤーハーネスWHは、引出口部32で固定されているので、挿入口部31を介して収容空間内にワイヤーハーネスWHを送込むと、収容空間内に導入されたワイヤーハーネスWHのうち、挿入口部31と引出口部32との距離よりも長い余長部分は、収容空間内で曲って配設され、これにより、ワイヤーハーネスWHの余長が吸収される。また、収容空間内でワイヤーハーネスWHの余長が吸収された状態で、挿入口部31を通じてワイヤーハーネスWHを引出すと、ワイヤーハーネスWHのうち前記収容空間内で曲ることによって吸収されていた余長が解消される。
より具体的には、挿入口部31を通じて収容空間内に導かれたワイヤーハーネスWHは、一方(ここでは上方)の側壁部35bの内面に沿って配設された後、挿入口部31の反対側に凸となるように湾曲しつつ他方(ここでは下方)の側壁部35cに向い、さらに、他方(ここでは下方)の側壁部35cの内面に沿って配設された後、引出口部32に達すると、当該引出口部32を通ってプロテクタ30外に引出される。
そして、ドア14が完全に閉められてワイヤーハーネスWHがプロテクタ30内に挿入され、当該プロテクタ30内における余長が最も長くなっている状態では、ワイヤーハーネスWHのうち両側壁部35b、35c間の湾曲部分は、弧状壁部35aに対して最も近づいた状態となる(図3及び図4参照)。また、ドア14が完全に開かれてワイヤーハーネスWHがプロテクタ30から引出され、当該プロテクタ30内における余長が最も短くなっている状態では、ワイヤーハーネスWHのうち両側壁部35b、35c間の湾曲部分は、弧状壁部35aに対して最も離れた状態となる(図1及び図2参照)。ドア14が完全に閉じられた位置と完全に開かれた位置との中間状態にある状態では、上記両状態の中間状態となる。
このため、ドアの開閉に伴う、挿入口部31に対するワイヤーハーネスWHの送込み及び引込に伴って、ワイヤーハーネスWHは、両側壁部35b、35c間での湾曲部分の存在位置を、両側壁部35b、35cの延在方向に沿って変えることで、余長の吸収動作を行う。余長の吸収動作中において、ワイヤーハーネスWHにおける湾曲部分は、ドア14の開閉に伴って逐次変更するため、ワイヤーハーネスWHの特定箇所が集中して変形し難いようになっている。
曲げ規制部材50は、第1曲げ規制部材52Aと、第2曲げ規制部材52Bとを備える。第1曲げ規制部材52Aは、ワイヤーハーネスWHのうち車体10側の部分に取付けられており、第2曲げ規制部材52BはワイヤーハーネスWHのうちプロテクタ30側の部分に取付けられている。これら第1曲げ規制部材52Aと第2曲げ規制部材52Bとの曲げ規制方向は異なっている。そして、第1曲げ規制部材52Aと第2曲げ規制部材52Bとは、ワイヤーハーネスWHのうち車体10とドア14との間に配設される部分と、プロテクタ30内において余長吸収動作を行う部分とを、それぞれ異なる態様で曲げ方向規制を行う。この曲げ規制部材50については、後でさらに説明する。
また、このドア用配線装置20は、グロメット70と貫通孔取付プロテクタ80とを備える。グロメット70は、車体10とドア14との間で、ドア用配線装置20のより完全な防水を行うためのものであり、貫通孔取付プロテクタ80は、グロメット70の車体側端部を車体10に対して固定保持すると共に、ワイヤーハーネスWHと貫通孔部10hとの直接接触を回避するためのものである。
すなわち、貫通孔取付プロテクタ80は、グロメット70の車体側端部に取付可能に構成されると共に、貫通孔部10hに取付可能に構成されている。
より具体的には、貫通孔取付プロテクタ80は、筒形状に形成されている。貫通孔取付プロテクタ80の一端部には、つば部82が形成されている。プロテクタ30のドア側端部が上記つば部82に被せられることで、本貫通孔取付プロテクタ80がプロテクタ30のドア側端部に取付けられる。
また、貫通孔取付プロテクタ80の他端部は、貫通孔部10h内に嵌め込み可能な筒形状に形成されると共に、その外周囲に係止部84が形成されている(図2〜図4参照)。係止部84は、貫通孔取付プロテクタ80の他端部を貫通孔部10hに対して車体10外側から挿入することで、当該貫通孔部10hに対して抜止め係止可能な構成とされている。
また、貫通孔取付プロテクタ80には、曲げ規制部材50の車体側端部を固定可能な曲げ規制部材固定孔81が形成されている。ここでは、曲げ規制部材固定孔81は、貫通孔取付プロテクタ80を軸方向に貫通する孔であり、当該曲げ規制部材50の車体側端部の外形状に応じた内周面形状に形成された孔とされている。そして、曲げ規制部材50の車体側端部が、本曲げ規制部材固定孔81内に配設されることで、曲げ規制部材50の車体側端部が貫通孔取付プロテクタ80を介して車体10に固定される。
曲げ規制部材固定孔81の内周面は、曲げ規制部材50をより確実に位置決め固定されるように、当該曲げ規制部材50の凹凸形状に応じた位置決め部、例えば、後述する曲げ規制部材50の切込み125、ピン挿通孔124に嵌め込み可能な位置決め凸部が形成されていることが好ましい。もっとも、貫通孔取付プロテクタ80間における曲げ規制部材50の挟込み力、接着剤等の力によって、貫通孔取付プロテクタ80に対する曲げ規制部材50の固定がなされてもよい。
また、曲げ規制部材固定孔81内に曲げ規制部材50の車体側端部を容易に配設することができるように、貫通孔取付プロテクタ80がその軸方向に沿った分割ラインによって上下又は左右に分割されていてもよい。貫通孔取付プロテクタ80の各分割部分の合体状態の維持は、ロック構造、接着剤、粘着テープ等によって行うことができる。
グロメット70は、中間止水部76の一端部(車体側端部)に車体側止水部72が設けられると共に、他端部(ドア側端部)にドア側止水部74が設けられた止水用部材であり、全体としてゴム材料を射出成型すること等により一体に形成されている。
車体側止水部72は、貫通孔取付プロテクタ80に被せられ、車体10の貫通孔部10hから車体10内に水、埃及び砂が侵入することを抑制するための部位である。この車体側止水部72は、全体として環状に形成されており、その内周部につば部嵌合凹部72aが形成されると共に、その外周部に車体シール部72bが形成されている。
つば部嵌合凹部72aは、車体側止水部72の内周部に形成された環状凹溝であり、本車体側止水部72が貫通孔取付プロテクタ80に被せられると、つば部82がつば部嵌合凹部72aに嵌め込まれ、グロメット70のドア側端部と貫通孔取付プロテクタ80との取付固定がなされる。
また、車体側止水部72は、車体側止水部72の外周部からその外周側に向けて順次拡開するように設けられたスカート状の環状形状に形成されている。
そして、グロメット70の車体側端部を貫通孔取付プロテクタ80に取付けた状態で、貫通孔取付プロテクタ80を貫通孔部10hに挿入して、貫通孔取付プロテクタ80の係止部84を貫通孔部10hに係止させると、車体シール部72bが貫通孔部10hの周りで車体10の外向き面に押付けられる。この状態では、つば部82は、車体シール部72bを挟んで、貫通孔部10hの反対側に位置しており、従って、つば部82は、車体シール部72bを車体10に向けてより確実に押込む。これにより、車体10の外向き面と車体シール部72bとの間がより確実にシールされる。
中間止水部76は、車体10とドア14との間で、ワイヤーハーネスWH及びこれを覆う曲げ規制部材50を覆う筒形状に形成されている。ここでは、中間止水部76は、曲げ容易な蛇腹筒形状に形成されており、車体10に対するドア14の開閉に伴って追随変形できるようになっている。なお、中間止水部76の縦断面形状は、円形状を呈していてもよいし、方形状を呈していてもよい。例えば、中間止水部76の縦断面形状を、ヒンジ軸の方向に沿って長い形状とすることで、本グロメット70によっても、ワイヤーハーネスWHがヒンジ軸に対して直交する面において容易に曲げられ、他の方向へは曲げ難くなるようにすることができる。
ドア側止水部74は、ドア14内のプロテクタ30の内部等に水、埃及び砂等が侵入するのを抑制するための部位である。ここでは、ドア側止水部74は、プロテクタ30の挿入口部31に外嵌め可能な筒形状に形成されている。好ましくは、ドア側止水部74の内径は、挿入口部31の外径よりも小さく設定され、本ドア側止水部74が挿入口部31に外嵌めされると、ドア側止水部74自身の弾性復元力によって、本ドア側止水部74が挿入口部31に締付け固定される。
このように、本ドア用配線装置20では、グロメット70及び貫通孔取付プロテクタ80によって、車体10とドア14との間において、ドア用配線装置20に対する防水がなされている。もっとも、このようなグロメット70及び貫通孔取付プロテクタ80が設けられていることは必須ではない。
<曲げ規制部材>
曲げ規制部材50についてより詳細に説明する。図5はワイヤーハーネスWHに装着された曲げ規制部材50を示す概略平面図であり、図6は同曲げ規制部材50を示す概略側面図である。図5及び図6では、各ワイヤーハーネスWHの部分において曲げ可能な方向を矢印で示してある。上記したように、曲げ規制部材50は、第1曲げ規制部材52Aと第2曲げ規制部材52Bとを備える。第1曲げ規制部材52A及び第2曲げ規制部材52Bは、ワイヤーハーネスWHの車体10側からプロテクタ30の引出口部32に向けて、この順で装着されている。
曲げ規制部材50の両端部は、ワイヤーハーネスWHに対して固定されている。ここでは、曲げ規制部材50の両端部及びワイヤーハーネスWHに粘着テープTを螺旋状に巻回することで、曲げ規制部材50の両端部とワイヤーハーネスWHとが固定されている。もっとも、曲げ規制部材50の両端部とワイヤーハーネスWHとが固定されていることは必須ではない。
また、第1曲げ規制部材52Aと第2曲げ規制部材52Bとは、一体化されている。ここでは、第1曲げ規制部材52Aの端部と第2曲げ規制部材52Bの端部とを突合わせた状態で、それぞれに粘着テープTを螺旋状に巻回することで、第1曲げ規制部材52Aと第2曲げ規制部材52Bとが一体化されている。もっとも、他の構成、例えば、半筒形状の一対の部材間に第1曲げ規制部材52Aの端部と第2曲げ規制部材52Bの端部とを挟込んだ状態で、半筒形状の一対の部材同士をロック構造又は粘着テープT、接着剤等で合体させた状態に維持して、第1曲げ規制部材52Aと第2曲げ規制部材52Bとを一体化させてもよい。もっとも、第1曲げ規制部材52Aと第2曲げ規制部材52Bとが一体化されていることは必須ではない。
なお、曲げ規制部材50のうち車体10側の端部は、貫通孔取付プロテクタ80を介して車体10に固定されている。これにより、第1曲げ規制部材52Aは、車体10に固定されている。また、曲げ規制部材50のうちプロテクタ30側の端部は、引出口部32に配設されており、曲げ規制部材50のうちプロテクタ30側の端部と固定片32aとに粘着テープT等が巻回されている。これにより、第2曲げ規制部材52Bのうちプロテクタ30側の端部が、引出口部32に固定されている。
上記第1曲げ規制部材52A及び第2曲げ規制部材52Bのそれぞれの曲げ規制方向は異なっている。その理由は、次の通りである。
すなわち、上記のようなドア用配線装置20では、ワイヤーハーネスWHは、車体10とドア14との間、及び、プロテクタ30内のそれぞれにおいて異なる方向に曲げ変形する。つまり、ワイヤーハーネスWHのうち車体10とドア14との間に配設される部分は、車体10に対してドア14がドアヒンジ12を介して開く動作に追随して、ドアヒンジ12の軸方向に対して垂直な平面において変形する(図2及び図4参照)。また、ドア14は、ドアヒンジ12の軸方向に沿って平坦な形状に形成されているため、ワイヤーハーネスWHを、ドア14が延在する面に沿って曲げ変形させると、ドア14内においてワイヤーハーネスWHをより長い寸法で余長吸収することができる。このため、プロテクタ30の収容空間は、ドア14が延在する面(ドアヒンジ12の軸に沿った面)に沿って偏平な空間として広がるように形成されており、ワイヤーハーネスWHはドアヒンジ12に沿った面で曲げ変形して余長吸収する。つまり、ワイヤーハーネスWHのうちプロテクタ30内で余長吸収を行う部分は、ドアヒンジ12の軸に沿った面において変形する。
ここで、ワイヤーハーネスWHは、複数の電線が束ねられた構成であるため、それ自体は各種方向に自由に曲ることができる。
とすると、ワイヤーハーネスWHのうち車体10とドア14との間に配設される部分は、ドアヒンジ12の軸方向においても曲ることができ、車体10とドア14との間で垂下がるように変形し得る。また、本来的には、車体10に対してドア14が開くと、ワイヤーハーネスWHのうち車体10とドア14との間の部分は、車内側に向けて湾曲するように変形し(図2参照)、車体10に対してドア14を閉じると、ワイヤーハーネスWHのうち車体10とドア14との間の部分は、直線状になるように変形しつつ、プロテクタ30内に押込まれるように動作するのが好ましい。ところが、ワイヤーハーネスWHが自由に曲げ変形可能であるとすると、車体10とドア14との間でワイヤーハーネスWHが車外側に湾曲するように変形してしまい、ワイヤーハーネスWHをプロテクタ30内に向けてうまく押込めない事態が生じ得る。
また、ワイヤーハーネスWHのうちプロテクタ30内で余長吸収動作を行う部分は、プロテクタ30の厚み方向においても自由に曲ることができ、主板部35或は蓋部38に強く擦れてしまう恐れがある。また、ワイヤーハーネスWHのうちプロテクタ30内で余長吸収動作を行う部分が、弧状壁部35aの反対側に向けて湾曲するように変形してしまい、収容空間内における余長吸収動作が安定しない事態が生じ得る。
そこで、第1曲げ規制部材52Aは、車体10とドア14との間で、ワイヤーハーネスWHがドアヒンジ12の軸に対して直交する面において曲げ変形でき、他の方向へは曲げ変形し難いように曲げ規制を行う。特に、本実施形態では、第1曲げ規制部材52Aは、ワイヤーハーネスWHが、ドアヒンジ12の軸に対して直交する面において一方向(より具体的には車内側に向けて凸となるように曲げ変形できる方向)に曲げ変形でき、他の方向へは曲げ難いように曲げ規制を行う。
また、第2曲げ規制部材52Bは、プロテクタ30内において、ワイヤーハーネスWHがドアヒンジ12の軸に沿った面(つまり、収容空間の延在方向に沿った面)において曲げ変形でき、他の方向へは曲げ変形し難いように曲げ規制を行う。
特に、第2曲げ規制部材52Bのうち第1曲げ規制部材52Aに近い部分52Baは、ワイヤーハーネスWHが、ドアヒンジ12の軸に沿った面において一方向(より具体的は、弧状壁部35aに向けて凸となるように曲げ変形できる方向)に曲げ変形でき、他の方向へは曲げ難いように曲げ規制を行う。
また、本実施形態では、ワイヤーハーネスWHは、プロテクタ30内において引出口部32に導かれるところ、当該引出口部32では、ワイヤーハーネスWHは、上記余長吸収動作を行う部分とは逆方向に曲げられる。このため、第2曲げ規制部材52Bのうち引出口部32に近い部分52Bbは、ドアヒンジ12の軸に沿った面(つまり、収容空間の延在方向に沿った面)において一方向(上記部分52Baが曲げを許容する方向とは逆方向)に曲げ変形できるように曲げ規制を行う。この部分52Bbが省略され、上記部分52Baが直接的にプロテクタ30に固定されてもよい。また、第2曲げ規制部材のうち引出口部側の端部に、他の方向への曲げ規制又は曲げ規制を行わない部材が連結され、当該部分を介して第2曲げ規制部材52Bの部分52Baに相当する部分が、プロテクタ30の引出口部32に対応する部分に取付られてもよい。
ここでは、第2曲げ規制部材52Bにおける部分52Baと部分52Bbとは、第1曲げ規制部材52Aと第2曲げ規制部材52Bとの一体化構成と同様の構成によって一体化されている。勿論、第2曲げ規制部材52Bにおける部分52Baと部分52Bbとは、当初から一体形成された構成であってもよい。
上記のようにワイヤーハーネスWHの曲げ規制を行う部材52A、52Bとしては、複数のコマ部材が所定の軸周りに回転可能に直線状に連結されたもの(ケーブルベヤ(商標)と呼ばれるもの等)等を用いることができる。ここでは、なるべくコンパクトな構成でワイヤーハーネスWHの曲げ規制を行うべく、曲げ規制部材52A、52Bとして、次の構成のものが用いられている。
図7及び図8は曲げ規制部材52A(52B)を示す斜視図であり、図9は同曲げ規制部材52A(52B)の切込み125での断面図であり、図10は曲げ規制部材52A(52B)を曲げた状態を示す斜視図である。また、図11は曲げ規制部材52A(52B)を構成する板材123を展開した状態を示す平面図であり、図12は曲げ規制部材52A(52B)の部分斜視図である。
この曲げ規制部材52A(52B)は、曲げ規制本体部122を備えている。曲げ規制本体部122は、板材123を筒状に変形させることにより形成されている。
板材123は、変形可能な細長板状に形成された部材である。板材123としては、ポリプロピレン(polypropylene)等の樹脂製の板材、或は、ある程度腰のある紙等を用いることができる。
上記板材123は、四角い角筒状をなすように折曲げ変形される。ここでは、板材123は、その幅方向において5つの領域に分割され、両側の領域を重ね合せるようにして、各分割領域の境界の折目Lに沿って折曲げられて、角筒状に変形される。後述する説明では、板材123の各分割領域のうち幅方向中央の領域を第1領域123a、第1領域123aの外側の2つの領域を第2領域123b、第2領域123bの外側の2つの領域を第3領域123cと表記する。なお、図11では折目Lを点線で図示している。曲げ規制本体部は、円筒状、楕円筒状、或は、多角形筒状に形成されていてもよい。
また、筒状の曲げ規制本体部122には、その外周に沿って切込み125が形成されている。この切込み125は、曲げ規制本体部122の長手方向において間隔を有して複数形成されている。なお、切込み125は、複数ある必要はなく、少なくとも1つあればよい。また、複数の切込み125の間隔は同じである必要はない。この切込み125は、筒状の曲げ規制本体部122に対して、その外周の一部を除いて残部を切離すような線状切込み形状に形成されている。ここでは、板材123に対して、切込み125が第1領域123a及びその両外側の2つの第2領域123bを横切るように形成されている。そして、両側の第3領域123c同士を重ね合せるようにして、板材123を角筒状に変形させると、四角筒状の曲げ規制本体部122に、その一辺側の第3領域123cを除き、他の3辺側の第1領域123a及び第2領域123b全体を切離すように切込み125が形成されることになる。筒状の曲げ規制本体部の外周のうちどの程度を切離さず、逆にいえばどの程度切離すかについては、曲げ規制本体部の形状、材質、どの程度の折曲げが必要か等に応じて、決定される。一般的には、プロテクタ本体部の一側部(例えば、多角形筒状である場合には、その一辺側部分)を残し、残部を切離して切込みを形成するとよい。複数の切込み125を形成する場合、切残す部分(或は切離す部分)は、プロテクタ本体部の外周において揃えた一定位置に設けるとよい。
また、上記切込み125は、2つの第2領域123bにおいては、当該第2領域123bを横切る直線状を描いている。また、切込み125は、第1領域123aにおいては、非直線状の切込み部分126を含む。より具体的には、切込み部分126は、半円状を描く線状の切込み形状に形成されている。そして、切込み部分126の両側縁部の一方には、半円状の突出片部分126aが形成され、両側縁部の他方には、半円状の凹み部分126bが形成される。従って、切込み125が閉じている状態では、切込み部分126で、突出片部分126aが凹み部分126bに嵌まっている。これにより、切込み部分126の両側縁部同士の位置ずれが抑制され、切込み125での曲げ規制本体部122の捻れが抑制されている。なお、切込み部分126は、上記半円状の形状である必要はなく、その他、三角形状、台形状等の多角形状等であってもよい。すなわち、切込み部分126の両側縁部が相互に嵌まり合い、その長手方向における位置ずれが抑制される形状であればよい。
なお、上記例では、切込み125は、隙間が無い直線状の切込み形状であるが、隙間が開いた開口形状であってもよい。
また、上記切込み125の両端部は、上記第2領域123bと第3領域123cとの間の折目L上に位置しており、この部分には、円孔124が形成されている。円孔124は、前記折目Lに沿って板材123を容易に折曲げることができるようにする役割、切込み125の端部側から第3領域123c側に破断していくことを抑制する役割等を果す。
また、板材123の筒状形状は、次の構成によって、維持されている。
すなわち、板材123の両側の一方に係止片130が形成され、他方に係止孔部132が形成されている。
より具体的には、板材123の一側方にその延在方向に沿って間隔をあけて係止片130が形成されている。係止片130は、板材の切込み125等を形成する際に、一緒に打抜き形成等することにより形成される。係止片130は、中心角が180度よりも小さい扇板状の一部を弦に沿って切除したように形状に形成され、その弧側を外向けにした状態で、弦側が板材123の一方の縁部に延設されている。また、係止片130の基端部の両側には、凹部130aが形成されており、係止片130の基端部は、その先端側部分よりも狭まっている。
また、板材123の他方の側部であって、上記係止片130と対応する位置に係止孔部132が形成されている。係止孔部132は、板材123の両側の他方の縁部の内側に、当該縁部の延在方向に沿って形成された直線状のスリット形状に形成されている。係止孔部132の長さ寸法は、係止片130の先端側部分の最大幅と同じか小さい(僅かに小さい)程度に設定されている。また、係止孔部132のうち長手方向中央部には、係止片130の厚みに応じた幅の隙間132aが形成され、係止孔部132の両端部には、円孔132bが形成され、それらの間には、係止片130の厚みより小さい線状のスリットに形成されている。
そして、板材123を四角筒状に形成した状態で、係止片130を係止孔部132内に挿入すると、係止片130の基端部が、係止孔部132の隙間132a内に配設された状態で、係止片130の先端側部分が係止孔部132の周縁部に抜止め係止する。これにより、板材123の筒形状が維持されている。
また、板材を筒形状に維持する構成例としては、上記以外の構成を採用することができる。例えば、板材の一側部と他側部とをピン止めする構成、接着剤、粘着テープ等によって、板材を筒形状に維持する構成等を採用することができる。
上記曲げ規制部材52A、52Bは、例えば、板材123を筒状に曲げる際に、ワイヤーハーネスWHを収容することで、当該ワイヤーハーネスWHの長手方向中間部に装着することができる。
また、曲げ規制部材52A、52Bは、次のようにして、ワイヤーハーネスWHに対する曲げ規制を行う。すなわち、ワイヤーハーネスWH及び曲げ規制部材52A、52Bが直線状態に延びた状態にあるとする(図7参照)。この状態で、曲げ規制部材52A(又は52B)の両端部が近づく方向に移動するとする。すると、曲げ規制部材52A(又は52B)は、各切込み125を開きつつ、主として各切込み125の反対側の切残し部分で曲るように全体として曲げられる。この際、曲げ規制部材52A(又は52B)は、各切込み125を開く方向に曲げられる。このように、曲げ規制部材52A、52Bは、第3領域123cにおける切残し領域で曲るため、当該第3領域123cに直交する1つの面に沿って曲るように曲げ規制される。また、曲げ規制部材52A、52Bは、各切込み125を開くように、主として特定方向に曲るように曲げ規制される。
そして、第1曲げ規制部材52Aは、ワイヤーハーネスWHがドアヒンジ12の軸方向よりもドアヒンジ12の軸に対して直交する方向で容易に曲げ変形できる曲げ規制を行うように、より具体的には、第3領域123cにおける切残し領域が外方を向くように、ワイヤーハーネスWHに取付けられる。
また、第2曲げ規制部材52Bのうち第1曲げ規制部材52A側の部分52Baは、ワイヤーハーネスWHがプロテクタ30の収容空間の厚み方向よりも収容部の延在方向で容易に曲げ変形できる曲げ規制を行うように、より具体的には、第3領域123cにおける切残し領域がプロテクタ30の内側を向くように、ワイヤーハーネスWHに取付けられる。さらに、第2曲げ規制部材52Bのうち引出口部32側の部分52Bbは、ワイヤーハーネスWHがプロテクタ30の収容空間の厚み方向よりも収容部の延在方向で容易に曲げ変形できる曲げ規制を行うように、より具体的には、第3領域123cにおける切残し領域がプロテクタ30の外側を向くように、ワイヤーハーネスWHに取付けられる。
そして、第1曲げ規制部材52Aと、第2曲げ規制部材52Bのうち第1曲げ規制部材52A側の部分52Baと、第2曲げ規制部材52Bのうち引出口部32側の部分52Bb、とがワイヤーハーネスWHに取付けられた状態で、粘着テープT等によって一体化される。
なお、上記したように、曲げ規制部材50の両端部は、粘着テープTによってワイヤーハーネスWHに固定され、また、曲げ規制部材50の一端部は貫通孔取付プロテクタ80を介して車体10に取付けられ、曲げ規制部材50の他端部は引出口部32に取付けられている。
<動作>
本ドア用配線装置20の動作について、特に、曲げ規制部材50の動作を中心に説明する。図13及び図14はドア14が完全に閉じられた状態を示しており、図15及び図16はドア14が完全に開かれた状態を示している。なお、図13、図15において、ワイヤーハーネスWHのうち第1曲げ規制部材52Aが装着された第1領域をWHa、第2曲げ規制部材52Bの部分52Baが装着された第2領域をWHb、第2曲げ規制部材52Bの部分52Bbが装着された第3領域をWHcと示す(図3〜図6においても同様)。
まず、ドア14を完全に閉じた状態では、図13及び図14に示すように、ワイヤーハーネスWHの第1領域WHaは、車体10とドア14との間に配設されると共に、挿入口部31を通ってプロテクタ30内に導かれ、一方(上方)の側壁部35bの内面に沿って配設されている。この状態では、ワイヤーハーネスWHの第1領域WHaは、直線状を描いている。また、ワイヤーハーネスWHの第2領域WHbは、プロテクタ30内で、弧状壁部35aの内面及び他方(下方)の側壁部35bの内面に沿って配設されている。この状態では、ワイヤーハーネスWHのうち第2領域WHbのうち両側壁部35b、35c間に配設される部分は、弧状壁部35a側に向けて凸となるように湾曲している。ワイヤーハーネスWHのうち第3領域WHcは、引出口部32に向けて導かれており、プロテクタ30内に向けて凸となるように湾曲している。
上記状態からドア14が開かれると、プロテクタ30の挿入口部31は、車体10の貫通孔部10hに対して、車体10の後方及び外方に離れた位置に配設され、ワイヤーハーネスWHが挿入口部31を通ってプロテクタ30内から引出される。そして、ドア14が完全に開かれた状態では、図15及び図16に示すように、ワイヤーハーネスWHのうち第1領域WHaの多くの部分が、車体10とドア14との間に引出され、車内側に向けて凸となるように曲る。この際、ワイヤーハーネスWHの第2領域WHaは、ドアヒンジ12の軸に対して直交する面で曲るように規制されているため、自重等によって垂下がるようには変形し難い。
また、ワイヤーハーネスWHがプロテクタ30から引出されるのに伴い、ワイヤーハーネスWHの第2領域WHbであって両側壁部35b、35c間で弧状に湾曲する部分は、弧状壁部35aから離れ、挿入口部31側に近づく。この際、ワイヤーハーネスWHのうち第2領域WHbは、ドアヒンジ12の軸に対して平行な面、即ち、収容空間の延在方向に沿って曲るように規制されているため、当該収容空間内で円滑に曲り、プロテクタ30の主板部35、蓋部38等に大きな力で擦れにくい。
また、上記状態からドア14が閉じられると、ワイヤーハーネスWHが挿入口部31を通ってプロテクタ30内に押込まれる。この際、ワイヤーハーネスWHの第1領域WHaは、車内側に向けて凸となるように曲ることができ、逆方向には曲り難いように曲げ規制されているので、ワイヤーハーネスWHは円滑にプロテクタ30内に押込まれる。また、ワイヤーハーネスWHの第2領域WHbは、弧状壁部35aに向けて凸となるように曲ることができ、逆方向には曲り難いように曲げ規制されているので、ワイヤーハーネスWHは、プロテクタ30の内側に向けて凸となるようには湾曲し難く、従って、プロテクタ30の外方に向けて凸となる湾曲部分の位置を変えることで安定した余長吸収動作を行うことができる。
以上のように構成されたドア用配線装置20によると、ワイヤーハーネスWHのうち車体10側の部分に取付けられた第1曲げ規制部材52Aと、プロテクタ30側の部分に取付けられた第2曲げ規制部材52Bとの曲げ規制方向が異なっているため、車体10とドア14との間、及び、ドア14のプロテクタ30内のそれぞれにおいて、別々の曲げ動作を行わせつつ、それぞれの曲げ動作を安定させることができる。
より具体的には、第1曲げ規制部材52Aは、ワイヤーハーネスWHがドアヒンジ12の軸方向よりもドアヒンジ12の軸に対して直交する方向で容易に曲げ変形できるように、ワイヤーハーネスWHの曲げ方向を規制する。このため、車体10とドア14との間では、ワイヤーハーネスWHは、垂下がり等を抑制されつつ、ドア14の開閉に伴ってドアヒンジ12の軸に対して直交する方向で容易に曲げ変形でき、安定して曲げ動作することができる。また、第2曲げ規制部材52Bの部分52Baは、ワイヤーハーネスWHが収容空間の厚み方向よりも当該収容の延在方向で容易に曲げ変形できるように、ワイヤーハーネスWHの曲げ方向を規制する。このため、プロテクタ30内では、ワイヤーハーネスWHは、主板部35及び蓋部38側への変位を抑制されつつ、収容空間内でその延在方向において容易に曲げ変形でき、安定して曲げ動作することができる。これにより、ドア14の開閉に伴う、ワイヤーハーネスWHの曲げ動作が安定し、ワイヤーハーネスWHと他の部位との干渉、また、干渉による異音、摩耗等を抑制することができる。
しかも、第1曲げ規制部材52Aは、主として車体10内側に向けて凸となる湾曲状態に曲げ変形できるように規制されている。このため、ドア14を閉める際に、ワイヤーハーネスWHの第1領域WHaがプロテクタ30内に押込まれると、当該第1領域WHaは逆方向にはほとんど曲らずに、円滑にプロテクタ30内に押込まれ、この点からも車体10とドア14との間でのワイヤーハーネスWHの第1領域WHaの曲げ動作が安定する。
また、第2曲げ規制部材52Bは、主として弧状壁部35aに向けて凸となる湾曲状態に曲げ変形できるように規制されているため、プロテクタ30内においてワイヤーハーネスWHのうち第2領域WHbが余長吸収を行うべく曲る方向が安定する。ここでは、ワイヤーハーネスWHのうち第2領域WHbは、弧状壁部35a側に向けて凸となる湾曲状態を保ちつつ上記余長吸収動作を行う。このため、プロテクタ30内におけるワイヤーハーネスWHのうち第2領域WHbの余長吸収動作が安定する。
また、第1曲げ規制部材52Aと第2曲げ規制部材52Bとが一体化されているため、ワイヤーハーネスWHのうち曲げ規制部材50が装着された部分に対して、引っ張り応力、圧縮応力等が作用し難くなり、ワイヤーハーネスWHに対するダメージを抑制できる。
特に、曲げ規制部材50の車体側の端部が貫通孔部10hに対して固定され、曲げ規制部材50のプロテクタ30側の端部が引出口部32に固定されているため、ドア14の開閉に伴う引っ張り応力、圧縮応力等がワイヤーハーネスWHに対して直接作用し難くなり、ワイヤーハーネスWHに対するダメージをより確実に抑制できる。
また、曲げ規制部材50の第1曲げ規制部材52A及び第2曲げ規制部材52Bの部分52Ba、部分52Bbは、板材123が筒状に変形された曲げ規制本体部122を備え、曲げ規制本体部122の外周に沿って当該曲げ規制本体部122の外周の一部を除いて残部を分離させるように少なくとも1つの切込み125が形成されたものを用いているため、コンパクトな構成によって曲げ規制を行うことができる。
なお、上記のように板材を加工した曲げ規制部材と複数のコマ部材が所定の軸周りに回転可能に直線状に連結されたもの(ケーブルベヤ(商標)と呼ばれるもの等)等との組合わせによって、ワイヤーハーネスWHの曲げ規制が行われてもよい。
また、プロテクタ30は、挿入口部31からワイヤーハーネスWHの挿入方向延長上に設けられた一方の側壁部35bと、この側壁部35bに対して間隔をあけて対向する他方の側壁部35cとを備え、これらの側壁部35b、35cの間に収容空間が形成されると共に、他方の側壁部35cのうち挿入口部31側に(つまり、側壁部35cの中央よりも挿入口部31に近い部分)、引出口部32が設けられた構成とされている。このため、挿入口部31から挿入されたワイヤーハーネスWHは、収容空間内で、一方の側壁部35bに沿って配設された後、湾曲しつつ他方の側壁部35cに向い、さらに、当該他方の側壁部35cに沿って配設された後、引出口部32を通ってプロテクタ30外へ引出される。そして、挿入口部31に対するワイヤーハーネスWHの送込み及び引込に伴って、ワイヤーハーネスWHは、一対の側壁部35b、35cの間で湾曲箇所の位置を変えることで、余長吸収動作を行う。このため、ワイヤーハーネスWHに対して曲げ箇所が集中し難く、ワイヤーハーネスWHに対するダメージを抑制できる。また、ワイヤーハーネスWHに対する曲げ箇所を集中し難くできる結果、プロテクタ30内においてワイヤーハーネスWHを比較的小さい曲げ半径で曲げることができ、プロテクタ30の小型化を図ることができる。
もっとも、プロテクタ30が上記構成であることは必須ではない。プロテクタ内において、ワイヤーハーネスがL字状又は円状をなるように収容されていてもよい。また、引出口部は、挿入口部に対して上方の位置に設けられていてもよい。
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。