定義
[058] 本発明の化合物、組成物及び方法を詳細に説明する前に、説明する特定のプロセス、組成物、又は方法は変化することがあるので、本発明がこれに限定されないことを理解されたい。説明で使用する用語は、特定のバージョン又は実施形態を説明することのみが目的であり、請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定するものではないことも理解されたい。他に規定していない限り、本明細書で使用する全ての専門用語及び科学用語は、当業者が一般的に理解する通りの意味を有する。本明細書で説明するものと同様又は同等の方法及び材料は全て、本発明の実施形態の実践又は試験に使用することができるが、次に好ましい方法、装置、及び材料を説明する。
[059] 明快さを期して別個の実施形態の状況で説明する本発明の特定の特徴を、単一の実施形態で組み合わせても提供できることがさらに認識される。逆に、簡潔さを期して単一の実施形態の状況で説明する本発明の様々な形態を、別個に、又は任意の適切な下位組み合わせでも提供することができる。
定義
[060] 単数形の「ある」及び「上記」は、異なることが文脈で明白に規定していない限り、複数の表示を含む。したがって、例えばある「細胞」に言及した場合、それは1つ又は複数の細胞及び当業者に知られているその同等物などに言及したことになる。
[061] 本明細書で使用する「約」という用語は、所与の値の±10%を意味する。例えば「約50%」は45%〜55%の範囲にあるという意味である。
[062] 「シグマ−2リガンド」は、シグマ−2受容体に結合する化合物を意味し、作用物質、拮抗物質、部分作用物質、逆作用物質、及び単純にこの受容体又はタンパク質の他のリガンドの競合物質を含む。
[063] 「作用物質」という用語は、存在すると、ある受容体に対して自然に発生したリガンドの存在に起因する生物活性と同じである上記受容体の生物活性をもたらす化合物を指す。
[064] 「部分作用物質」という用語は、存在すると、ある受容体に対して自然に発生したリガンドの存在に起因する生物活性と同じであるが、それより小さい大きさの上記受容体の生物活性をもたらす化合物を指す。
[065] 「拮抗物質」という用語は、存在すると、受容体の生物活性の大きさが低下することになる実態、例えば化合物を指す。特定の実施形態では、拮抗物質が存在した結果、受容体の生物活性が完全に阻害される。シグマ−2受容体における「機能的拮抗物質」は、例えば膜輸送アッセイなどのインビトロアッセイ、又は挙動アッセイで、又はそれを必要とする患者などで見られるようなAベータオリゴマーに誘発されるシナプス不全を遮断する拮抗物質である。機能的拮抗物質は、例えばAベータオリゴマーなどの結合を阻害することによって直接的に作用するか、又はシグマ−2受容体に結合するAベータオリゴマーに由来する下流方向の信号伝達を妨害することによって間接的に作用する。
[066] 「選択性」又は「選択的」という用語は、非シグマ受容体と比較したシグマ−2受容体の結合親和性Kiの差を指す。シグマ−2拮抗物質は、シナプスニューロン中のシグマ受容体に対して高い選択性を有する。シグマ−2受容体又はシグマ−2受容体及びシグマ1受容体の両方のKiが、非シグマ受容体のKiと比較される。一態様では、シグマ−2又はシグマ−1/シグマ−2選択的リガンドは、非シグマ受容体と比較して、シグマ受容体に対して親和性が少なくとも10倍、20倍、30倍、50倍、70倍、100倍、500倍高い、すなわちより選択的である。非シグマ受容体は、例えばムスカリン性M1−M4受容体、セロトニン(5−HT)受容体、アルファアドレナリン性受容体、ベータアドレナリン性受容体、オピオイド受容体、セロトニン輸送体、ドーパミン輸送体、アドレナリン性輸送体、ドーパミン受容体、又はNMDA受容体である。
[067] 本出願では、「高親和性」という用語は、参照により本明細書に組み込まれ、シグマ−1及びシグマ−2受容体部位に対する化合物の結合親和性を測定したWeber他(Proc, Natl. Acad. Sci (USA) 83: 8784-8788 (1986))によって開示されたように、シグマ受容体結合アッセイにおいて例えば、[3H]−DTGに対して600nM未満、500nM未満、400nM未満、300nM未満、200nM未満、150nM未満、100nM未満、80nM未満、60nM未満、又は好ましくは50nM未満のKi値を呈する化合物を意味するものである。特に好ましいシグマリガンドは、[3H]−DTGに対して約150nM未満、好ましくは100nM未満、約60nM未満、約10nM未満、又は約1nM未満のKi値を呈する。
[068] 「Aベータ種」又は「Aβ」は、可溶性アミロイドペプチド含有成分、例えばAベータモノマー、Aベータオリゴマー、他の可溶性ペプチド又はタンパク質さらにアミロイド前駆体タンパク質の任意の加工品を含む他の可溶性Aベータ集合との(単量体、二量体、又は重合体形態の)Aベータペプチドの複合体などの組成物を含むものである。可溶性Aβオリゴマーは神経毒性であることが知られている。Aβ1−42二量体さえも、マウスの海馬切片でシナプスの可塑性を損なうことが知られている。当技術分野で知られている1つの理論では、天然Aβ1−42モノマーは、神経保護性であると考えられ、神経毒性になるにはAβモノマーが可溶性Aベータオリゴマーに自己会合する必要がある。しかし、特定のAβ突然変異モノマー(北極型突然変異(E22G))は、家族型ADに関連すると報告されている。例えば、Giuffrida他の、「β-Amyloid monomers are neuroprotective」(J. Neurosci. 2009 29(34):10582-10587)を参照されたい。Aベータ種を含む製剤の非制限的な例が、米国特許出願第13/021,872号、米国特許公開第2010/0240868号、国際特許出願WO/2004/067561号、国際特許出願WO/2010/011947号、米国特許公開第20070098721号、米国特許公開第20100209346号、国際特許出願WO/2007/005359号、米国特許公開第20080044356号、米国特許公開第20070218491号、WO/2007/126473号、米国特許公開第20050074763号、国際特許出願WO/2007/126473号、国際特許出願WO/2009/048631号、及び米国特許公開第20080044406号で開示され、これらはそれぞれ参照により本明細書に組み込まれている。
[069] 「投与」は、本発明の化合物との組み合わせで使用する場合、標的組織内に又は上に化合物を直接投与するか、又は患者又は他の対象に化合物を全身又は局所的に投与することを意味する。
[070] 本明細書で使用する「動物」という用語は、ヒト及び非ヒト脊椎動物、例えば野生動物、家畜及び農場の動物を含むが、これらに限定されない。
[071] 本明細書で使用する「対象」、「個体」及び「患者」という用語は、区別なく使用され、任意の動物、例えば哺乳類、マウス、ラット、他の齧歯類、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ、霊長類、非ヒト霊長類、ヒトなどを指す。
[072] 本明細書で使用する「接触」という用語は、2つのペプチド間又は1つのタンパク質と別のタンパク質又は他の分子、例えば小分子の間の非共有相互作用などの分子間相互作用を可能にする距離内になるように、分子同士を(又はある分子を細胞又は細胞膜のようにさらに高次の構造と)一緒にするか、又は組み合わせることを指す。幾つかの実施形態では、接触は、一般的な溶媒中で複合又は接触分子が混合され、自由に会合することができる溶液中で生じる。幾つかの実施形態では、接触は細胞で、又は他の方法で細胞内で、又は無細胞環境中で生じることがある。幾つかの実施形態では、無細胞環境は細胞から産生された溶解物である。幾つかの実施形態では、細胞溶解物は全細胞溶解物、核溶解物、細胞質溶解物、及びその組み合わせでよい。幾つかの実施形態では、無細胞溶解物は、核抽出及び単離により得られた溶解物であり、細胞集団の核を細胞から除去し、次に溶解させる。幾つかの実施形態では、核は溶解されないが、それでも無細胞環境と見なされる。分子は、渦巻き、振盪などの混合により一緒にすることができる。
[073] 「改善する」という用語は、本発明が、それが提供、適用又は投与された組織の特徴及び/又は身体的属性を変化させることを伝えるために使用される。「改善する」という用語は、疾病状態と組み合わせて使用することもでき、したがって疾病状態が「改善」されると、疾病状態に関連する症状又は身体的特徴が減少、低下、消失、遅滞、又は回避される。
[074] 「阻害」という用語は、特定の結果又はプロセスの妨害、忌避、又は逆の結果又はプロセスの回復を含む。本発明の化合物を投与することによる予防又は処置に関して、「阻害」は、症状に対して(部分的又は全体的に)保護するか、又はその発症を遅延させるか、又は症状を緩和するか、又は疾患、状態又は障害に対して保護するか、それを減少させるか、又は消失させることを含む。
[075] 「輸送欠損を阻害する」という用語は、細胞、好ましくはニューロン細胞中で可溶性Aβオリゴマーが誘発する膜輸送欠損を遮断する能力を指す。輸送欠損を阻害することができる化合物は、膜輸送アッセイで20uM未満、15uM未満、10uM未満、5uM未満、及び好ましくは1μM未満のEC50を有し、さらに、可溶性Aベータオリゴマーが誘発する膜輸送欠損のAベータオリゴマー効果を最大で少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、さらに好ましくは少なくとも70%阻害することができる。
[076] 本明細書の様々な箇所で、本発明の化合物の置換基は複数の基又は範囲で開示されている。本発明の実施形態は、このような基及び範囲の要素の個別的下位組み合わせをそれぞれ全て含むことが特に意図される。例えば、「C1−6アルキル」という用語は、メチル(C1アルキル)、エチル(C2アルキル)、C3アルキル、C4アルキル、C5アルキル、及びC6アルキルを個別に開示していることが特に意図される。
[077] 変種が複数回現れる本発明の化合物の場合、各変種は、変種を規定するMarkush基から選択された異なる部分とすることができる。例えば、同じ化合物上に同時に存在する2つのR基を有する構造を説明する場合、この2つのR基はRについて規定されたMarkush基から選択された異なる部分を表すことができる。
[078] nが整数である「n員」という用語は通常、ある部分の環形成原子の数を述べるものであり、環形成原子の数がnである。例えば、ピリジンは6員ヘテロアリール環の一例であり、チオフェンは5員ヘテロアリール基の一例である。
[079] 本明細書で使用する「アルキル」という用語は、直鎖状又は分岐した飽和炭化水素基を指すものとする。例示的なアルキル基にはメチル(Me)、エチル(Et)、プロピル(例えばn−プロピル及びイソプロピル)、ブチル(例えばn−ブチル、イソブチル、t−ブチル)、ペンチル(例えばn−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル)などが含まれるが、これらに限定されない。アルキル基は1個〜約20個、2個〜約20個、1個〜約10個、1個〜約8個、1個〜約6個、1個〜約4個、又は1個〜約3個の炭素原子を含有することができる。「アルキレン」という用語は、二価アルキル連結基を指す。アルキレンの一例はメチレン(CH2)である。
[080] 本明細書で使用する「ハロアルキル」は、1つ又は複数のハロゲン置換基を有するアルキル基を指す。例えば、ハロアルキル基にはCF3、C2F5、CHF2、CCl3、CHCl2、C2Cl5、CH2CF3などが含まれるが、これらに限定されない。
[081] 本明細書で使用する「アリール」は、例えばフェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル、インダニル、インデニルなどの一環又は多環(例えば2個、3個又は4個の縮合環を有する)芳香族炭化水素を指す。幾つかの実施形態では、アリール基は6個〜約20個の炭素原子を有する。幾つかの実施形態では、アリール基は6個〜約10個の炭素原子を有する。
[082] 本明細書で使用する「シクロアルキル」は、最大20個の環形成炭素原子を有する環化アルキル、アルケニル、及びアルキニル基を含む非芳香族環状炭化水素を指す。シクロアルキル基は、一環又は多環式(例えば2個、3個又は4個の縮合環を有する)環構造、さらにスピロ環構造を含むことができる。シクロアルキル基は3個〜約15個、3個〜約10個、3個〜約8個、3個〜約6個、4個〜約6個、3個〜約5個、又は5個〜約6個の環形成炭素原子を含有することができる。シクロアルキル基の環形成炭素原子は、任意選択でオキソ又はスルフィドで置換することができる。例示的なシクロアルキル基にはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプタトリエニル、ノルボルニル、ノルピニル、ノルカルニル、アダマンチルなどが含まれるが、これらに限定されない。シクロアルキルの定義には、シクロアルキル環に縮合した(すなわちそれと共通の原子の化学結合を有する)1個又は複数個の芳香環を有する部分、例えばペンタン、ペンテン、ヘキサンなどのベンゾ又はチエニル誘導体(例えば2,3−ジヒドロ−1H−インデン−1−イル、又は1H−インデン−2(3H)−オン−1−イル)も含まれる。「シクロアルキル」は、最大20個の環形成炭素原子を含有する環化アルキル基を指すことが好ましい。シクロアルキルの例にはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、アダマンチルなどが含まれることが好ましい。
[083] 本明細書で使用する「ハロ」又は「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、及びヨードを含む。
[084] 本明細書で使用する「アルコキシ」は−O−アルキル基を指す。例示的なアルコキシ基にはメトキシ、エトキシ、プロポキシ(例えばn−プロポキシ及びイソプロポキシ)、t−ブトキシなどが含まれる。
[085] 本明細書で使用する「ハロアルコキシ」は、−O−ハロアルキル基を指す。例示的なハロアルコキシ基はOCF3である。本明細書で使用する「トリハロメトキシ」は3個のハロゲン置換基を有するメトキシ基を指す。トリハロメトキシ基の例には−OCF3、−OCClF2、−OCCl3などが含まれるが、これらに限定されない。
[086] 本明細書で使用する「アミノ」はNH2を指す。
[087] 本明細書で使用する「アルキルアミノ」はアミノ基をアルキル基で置換したものを指す。
[088] 本明細書で使用する「ジアルキルアミノ」は、アミノ基を2個のアルキル基で置換したものを指す。
[089] 本明細書で使用するC(O)はC(=O)を指す。
[090] 本明細書で使用する「任意選択で置換」という用語は、置換が任意選択であり、したがって非置換及び置換原子及び部分の両方を含むという意味である。「置換」原子又は部分は、指定された原子又は部分の任意の水素が、その指定原子又は部分の正常な原子価を超えない限り、指示された置換基からの選択肢で置き換えることができ、置換した結果、安定した化合物になることを示す。例えば、メチル基(すなわちCH3)を任意選択で置換する場合、炭素原子上の3個の水素原子を指示されたとおりに置換基で置き換えることができる。
[091] 本明細書で使用する「非致死的アミロイドベータ効果」は、Aベータ種と接触している細胞への効果、特に非致死的効果を指す。例えば、ニューロン細胞が可溶性アミロイドベータ(「Aベータ」)オリゴマーと接触している場合、オリゴマーはインビトロでニューロン細胞のサブセット上のシナプスのサブセットに結合することが判明している。この結合は、例えばインビトロでAベータオリゴマー結合を測定するアッセイで数量化することができる。記録されているAベータ種の別の効果は、シナプス数の減少であり、これはヒトの海馬では約18%になると報告されており(Scheff他、2007)、(例えばシナプス数を測定するアッセイで)数量化することができる。別の例として、ニューロン細胞がアミロイドベータ(「Aベータ」)オリゴマーと接触している場合、膜輸送が調節され、その後に膜輸送が変化することが判明している。この異常は、MTTアッセイを含むが、これに限定されない多くのアッセイで視覚化することができる。例えば、黄色いテトラゾリウム塩は細胞によって貪食され、エンドソーム経路内の小胞内に位置する酵素によって塩が紫の不溶性ホルマザンに還元される。紫のホルマザンのレベルは、培養物中で活発に代謝する細胞の数を反映し、ホルマザンの量の減少は培養物中の細胞死又は代謝毒性の尺度と見なされる。黄色いテトラゾリウム塩と接触している塩を顕微鏡で観察すると、最初に細胞を満たす細胞内小胞中に紫のホルマザンが見える。時間とともに、不溶性ホルマザンが水性媒質の環境に曝露するにつれ、小胞が貪食され、ホルマザンが血漿膜の外面上で針状結晶として沈殿する。Aベータ種のさらに他の効果には、新しい記憶を形成する能力の低下、及び記憶消失などの認知低下が含まれ、これは動物モデルを使用したアッセイでインビボで測定することができる。
[092] 幾つかの実施形態では、試験化合物は、ニューロン細胞上の可溶性Aベータオリゴマー種に伴う効果を負の対照と比較して約10%超、好ましくは15%超、及び好ましくは20%超阻害できる場合に、認知低下又はそれに関連する疾病の処置に有効であると言われる。幾つかの実施形態では、試験薬剤は、アミロイド先駆タンパク質が媒介した効果を正の対照と比較して約10%超、好ましくは15%超、好ましくは20%超阻害できる場合、有効であると言われる。例えば、以下の実施例に示すように、Aベータオリゴマー結合を18%しか阻害しなくても、シナプスの減少を完全に阻害する。例えば図3C及び図3Dを参照されたい。本明細書ではニューロン代謝の異常やシナプス数の減少など、Aベータ種の非致死的効果の阻害に焦点を当てているが、これらは認知機能と相関することが示され、時間の経過とともに(未処置対象と比較して)アミロイド病理の測定可能な下流症状の減少をもたらすことがさらに予測され、症状とは、1)フロルベタピル、PittB又は任意の他の造影剤のようなアミロイド造影剤によって測定される原繊維又はプラークの蓄積、2)FDG−PETで検出されるブドウ糖代謝低下によって測定されるようなシナプス消失又は細胞死、又は3)ELISAによって患者から得られた脳脊髄液、脳生検又は血漿中で撮像又はタンパク質/代謝物検出によって検出可能な脳又は身体中のタンパク質発現又は代謝物量の変化(ELISAによって測定したAベータ42、リン酸化タウ、総タウのレベル及び比率の変化、又はELISAパネルで検出可能なタンパク質発現パターンの変化など)(参照文献:Wyss-Coray T.他の、「Modeling of pathological traits in Alzheimer's disease based on systemic extracellular signaling proteome」(Mol Cell Proteomics 2011 Jul 8)を参照されたい。これは全体が参照により本明細書に組み込まれている)、4)MRIによって検出可能な血管水腫又は微量出血の存在、及び撮像技術によって検出可能な任意の他の症状によって測定可能な脳血管異常、及び5)ADAS−Cog、MMSE、CBIC又は任意の他の認知試験計器のような任意の管理認知試験によって測定される認知消失、などの顕著な臨床症状である。
[093] 本明細書で使用する「ニューロン細胞」という用語は、単一の細胞又は細胞集団を指すために使用することができる。幾つかの実施形態では、ニューロン細胞は1次ニューロン細胞である。幾つかの実施形態では、ニューロン細胞は不死化又は形質転換ニューロン細胞又は幹細胞である。1次ニューロン細胞とは、グリア細胞などの他のタイプのニューロン細胞に分化することができないニューロン細胞である。幹細胞は、ニューロン及びグリアなどの他のタイプのニューロン細胞に分化することができる細胞である。幾つかの実施形態では、少なくとも1つのニューロン細胞を含む組成物にはグリア細胞がない。幾つかの実施形態では、組成物は、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、又は約1%未満のグリア細胞を含み、これはAベータを内部移行させ、蓄積することが知られている。1次ニューロン細胞は、動物の脳の任意の区域から誘導することができる。幾つかの実施形態では、ニューロン細胞は海馬又は皮質細胞である。グリア細胞の存在は、任意の方法で判定することができる。幾つかの実施形態では、グリア細胞はGFAPの存在によって検出することができ、ニューロンは、MAP2に対して配向された抗体で陽染することによって検出することができる。
[094] 「薬学的に許容可能な」というフレーズは、一般的に安全で非毒性であると見なされる分子要素及び組成物を指す。特に、本発明の薬学的組成物で使用する薬学的に許容可能な担体、希釈剤又は他の賦形剤は、患者に投与した場合、生理学的に耐容性があり、他の成分と適合し、通常はアレルギー又は同様の有害反応(例えば急性胃蠕動、眩暈など)を生じない。本明細書で使用する「薬学的に許容可能な」という用語は、動物、特にヒトに使用するために連邦又は州政府の規制当局に認可されるか、又は米国薬局方又は他の一般的に認められている薬局方にリストされているという意味であることが好ましい。本明細書で使用する「薬学的に許容可能な塩」というフレーズは、哺乳類に使用するのに安全で効果的であり、所望の生物活性を有する本発明の化合物の塩を含む。薬学的に許容可能な塩には、本発明の化合物中に、又は本発明の方法により識別された化合物中に存在する酸性基又は塩基性基の塩が含まれる。薬学的に許容可能な酸添加塩には塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルカル酸塩、サッカラート、蟻酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩及びパモエート(すなわち1,1’−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸塩))塩が含まれるが、これらに限定されない。本発明の特定の化合物は、様々なアミノ酸で薬学的に許容可能な塩を形成することができる。適切な塩基塩にはアルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、亜鉛、鉄及びジエタノールアミン塩が含まれるが、これらに限定されない。薬学的に許容可能な塩基添加塩も、有機アミンなどのアミンで形成される。適切なアミンの例には、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、N−メチルグルカミン及びプロカインがある。
[095] 本明細書で使用する「治療的」という用語は、対象の望ましくない状態又は疾病を処置、退治、寛解、保護又は改善するために使用する薬剤を意味する。
[096] 本明細書で使用する「有効量」という用語は、特定の疾患又は病態経過の少なくとも1つの症状又はパラメータの測定可能な阻害をもたらす量である。Aベータオリゴマーの存在下で測定可能なシナプス減少の低下を提供する本発明のシグマ−2リガンドの量は、有効量と認定される。何故なら、アミロイド病態の臨床症状が少なくとも即座には変化しなくても、病理経過を軽減するからである。
[097] 本発明の化合物又は組成物の「治療学的有効量」又は「有効量」は、任意の医学的処置に適用可能な妥当な利益/リスクの比率で、処置した対象に治療効果を与える所定の量である。治療効果は客観的(すなわち何らかの試験又はマーカによって測定可能)又は主観的(すなわち対象が効果を示すか、又は感じるか、又は医師が変化を観察する)であってよい。本発明の化合物の有効量は、約0.01mg/Kg〜約500mg/Kg、約0.1mg/Kg〜約400mg/Kg、約1mg/Kg〜約300mg/Kg、約0.05〜約20mg/Kg、約0.1mg/Kg〜約10mg/Kg、又は約10mg/Kg〜約100mg/Kgの広い範囲でよい。本明細書で想定される効果には、適宜、医学的に治療及び/又は予防的処置の両方が含まれる。治療及び/又は予防効果を獲得するために本発明により投与される化合物の特定の用量は、言うまでもなく症例を取り巻く特定の環境によって決定される。例えば、患者の投与化合物、投与経路、他の活性成分の同時投与、処置中の状態、使用する特定の化合物の活性、使用する特定の組成物、年齢、体重、全体的健康、性及び食事と、処置の投与時間、投与経路、使用する特定の化合物の排出率及び継続時間などである。投与される有効量は、上記関連する環境及び健全な医学的判断を行使することに鑑みて、医師が決定する。本発明の化合物の治療的有効量は、通常は、生理学的に耐容性がある賦形剤組成物で投与すると、有効な全身濃度又は組織の局所濃度を達成するのに十分であるような量である。単回量又は分割量でヒト又は他の動物に投与される本発明の化合物の総1日量は、1日に体重当たり例えば、0.01mg/Kg〜約500mg/Kg、約0.1mg/Kg〜約400mg/Kg、約1mg/Kg〜約300mg/Kg、約10mg/Kg〜約100mg/Kg、又はさらに一般的には0.1〜25mg/kgの量でよい。単回量の組成物は、このような量又は1日量を構成するその約量を含有することができる。一般的に、このような治療を必要とする患者への投与を含む本発明による処置療法は、通常、単回量又は多回量で1日当たり本発明の化合物約1mg〜約5000mg、10mg〜約2000mg、20〜1000mg、好ましくは20〜500mg及び最も好ましくは約50mg含む。
[098] 本明細書で使用する「処置する」、「処置した」、又は「処置」という用語は、治療処置と予防措置との両方を指し、その目的は、望ましくない生理学的状態、障害又は疾病から(部分的又は全体的に)保護するか、又はそれを減速させる(軽減する)、又は異常になった、又は異常になるようなパラメータ、値、機能又は結果の低下を部分的又は全体的に回復又は阻害するような有利又は所望の臨床結果を得ることである。本発明では、有利又は所望の臨床結果には、症状の緩和、状態、障害又は疾病の程度又は勢い又は速度の減少、状態、障害又は疾病の安定化(すなわち悪化させないこと)、状態、障害又は疾病の発症の遅滞又はその進行の減速、状態、障害又は疾病状態の寛解、及び実際の臨床症状の即座の軽減、状態、障害又は疾病の増強又は改善に移行するか移行しないかにかかわらず(部分的又は全体的)緩解が含まれるが、これらに限定されない。処置は、過度なレベルの副作用がない状態で臨床的に重大な応答を引き出すことを目指す。処置は、処置を受けない場合に予測される生存期間と比較して生存期間を延長することも含む。
[099] 一般的に、「組織」という用語は、特定の機能を実行する際に一体化される同様に特殊化した細胞の任意の集合を指す。
[0100] 本明細書で使用する「認知低下」は、動物の認知機能における任意の負の変化とすることができる。例えば、認知低下は記憶消失(挙動記憶消失)、新しい記憶の獲得失敗、混乱、判断障害、人格変化、見当識障害、又はその任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない。したがって、認知低下の処置に効果的である化合物が効果的になり得るのは、長期ニューロン残留記憶(LTP)又は長期ニューロン抑鬱(LTD)又は電気生理学的に測定したシナプス可塑性バランスを回復する、神経変性を阻害、処置及び/又は寛解する、一般的アミロイドーシスを阻害、処置及び/又は寛解する、アミロイド産生、アミロイド集合、アミロイド凝集、及びアミロイドオリゴマー結合のうち1つ又は複数を阻害、処置、寛解する、1つ又は複数のAベータ種がニューロン細胞に及ぼす非致死的効果(シナプス消失又は不全及び異常な膜輸送など)を阻害、処置、及び/又は寛解する、及びその任意の組み合わせによるものである。また、その化合物はAベータ関連の神経変性疾病及び障害の処置にも効果的であることがあり、その疾病及び障害には軽度のアルツハイマー病を含むアルツハイマー病(AD)、ダウン症候群、血管性認知症(脳アミロイド血管障害及び卒中)、レビー小体型認知症、HIV認知症、軽度の認知障害(MCI)を含むが、これらに限定されない認知症と、年齢に伴う記憶障害(AAMI)と、年齢関連性認知低下(ARCD)、症状発現前のアルツハイマー病(PCAD)と、認知症なし認知障害(CIND)とが含まれるが、これらに限定されない。本明細書で使用する「自然リガンド」という用語は、対象の体内に存在し、タンパク質、受容体、膜脂質、又は他の結合パートナーとインビボで結合することができるか、又はインビトロで再現することができるリガンドを指す。自然リガンドは起源が合成でもよいが、自然に、且つ対象内でヒトの介入がない状態でも存在していなければならない。例えば、Aベータオリゴマーはヒト対象に存在することが知られている。したがって、対象の体内に見られるAベータオリゴマーは自然リガンドと見なされる。Aベータオリゴマーの結合パートナーとの結合は、組み換え技術又は合成技術を使用してインビトロで再現することができるが、Aベータオリゴマーの調製又は製造方法にかかわらず、Aベータオリゴマーはなお自然リガンドと見なされる。これも同じ結合パートナーに結合することができる合成小分子は、対象の体内に存在しない場合、自然リガンドではない。例えば、本明細書で説明する化合物IIは、通常は対象の体内に存在せず、したがって自然リガンドとは見なされない。
本発明の新規の化合物
[0101] 本明細書で説明する化合物は、本明細書で説明する方法により、又はWO2011/014880号(出願第PCT/US2010/044136号)、WO2010/118055号(出願第PCT/US2010/030130号)、出願第PCT/US2011/026530号、及びWO2012/106426号(出願第PCT/US2012/023483号)の説明通りに合成することができ、それぞれが全体的に参照により本明細書に組み込まれている。これらの化合物を調製する追加の選択肢を以下で詳細に検討する。
[0102] 幾つかの実施形態では、本発明のシグマ−2拮抗物質は以下の式Iの通りであり、
式中、
R1及びR2は、H、OH、ハロ、C1−6アルコキシ、C1−6ハロアルキル、C1−6ハロアルコキシ、(R16)(R17)N−C1−4アルキレン−O−から別個に選択されるか、又はR1とR2が相互に連結されて−O−C1−2メチレン−O−基を形成し、ここで、
R16及びR17はそれぞれ、C1−4アルキル又はベンジルであるか、又はR16とR17は窒素とともに下式から選択される環を形成し、
式中、
XはN又はOであり、R18はH又は非置換フェニルであり、
ここで、R1及びR2の少なくとも一方はHではなく、
R3は下式から選択され、
式中、
R6、R7、R8、R9、及びR10はそれぞれ、H、ハロ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C1−6ハロアルキル、及びS(O)2−C1−6アルキルから選択され、
R20はHであり、
nは1〜4であり、
R4はC1−6アルキルであり、
R4’はH又はC1−6アルキルであり、
R5はH、C1−6アルキル、及びC(O)O(C1−4アルキル)、C(O)(C1−4アルキル)、又はC(O)(C1−4ハロアルキル)であるか、又は
R3及びR5は窒素とともに下式から選択される環を形成し、
式中、
R11及びR12はそれぞれ、H、ハロ、及びC1−6ハロアルキルから選択され、
YはCH又はNであり、
R13は、H、C1−6アルキル、C3−6シクロアルキル、非置換フェニル又はC1−6ハロアルキルで置換したフェニル、又は非置換ベンジルであり、
R14及びR15はそれぞれ、H及びハロから選択され、
R19は、H、又はその薬学的に許容可能な塩である。
[0103] 幾つかの実施形態では、本発明のシグマ−2拮抗物質は式Iの通りであり、
式中、
R1及びR2は別個にH、OH、ハロ、C1−6アルコキシ、C1−6ハロアルキル、C1−6ハロアルコキシ、(R16)(R17)N−C1−4アルキレン−O−から選択されるか、又はR1とR2は相互に連結して−O−C1−2メチレン−O−基を形成し、ここで、
R16及びR17は別個にC1−4アルキル又はベンジルであるか、又はR16及びR17は窒素とともに下式から選択される環を形成し、
式中、
XはN又はOであり、R18は存在しないか、又はH又は非置換フェニルであり、
ここでR1及びR2のうち少なくとも一方はHではなく、
R3は下式から選択され、
式中、
R6、R7、R8、R9、及びR10は、別個にH、ハロ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C1−6ハロアルキル、及びS(O)2−C1−6アルキルから選択され、
R20はHであり、
nは1〜4であり、
R4はC1−6アルキルであり、
R4’はH又はC1−6アルキルであり、
R5はH、C1−6アルキル、及びC(O)O(C1−4アルキル)、C(O)(C1−4アルキル)、又はC(O)(C1−4ハロアルキル)であるか、又は、
R3及びR5は窒素とともに下式から選択される環を形成し、
式中、
R11及びR12は、別個にH、ハロ、及びC1−6ハロアルキルから選択され、
YはCH又はNであり、
R13は、H、C1−6アルキル、C3−6シクロアルキル、非置換フェニル又はC1−6ハロアルキルで置換したフェニル、又は非置換ベンジルであり、
R14及びR15は、別個にH及びハロから選択され、
R19はHであるか、又はその薬学的に許容可能な塩である。
[0104] 幾つかの実施形態では、本発明のシグマ−2拮抗物質は式Iの通りであり、
式中、
R1は、OH、OMe、F、Cl、CF3、(R16)(R17)N−エチレン−O−から選択され、ここで、
R16及びR17はそれぞれメチル、イソプロピル、n−ブチル又はベンジルであるか、又はR16及びR17は窒素とともに下式から選択される環を形成し、
式中、
XはN又はOであり、R18は存在しないか、又は非置換フェニルであり、
R2は、H、Cl、F、CF3、OMe、OCF3であるか、又は
R1とR2は相互に連結されて−O−C1−2メチレン−O−基を形成し、
R3は下式から選択され、
式中、
R6は、H、F、Cl、Me、イソプロピル、t−ブチル、OMe、CF3、又はS(O)2Meであり、
R7及びR8は、別個に、H、OMe、F、Cl、又はCF3であり、
R9及びR10は、別個に、H、OMe、F及びClから選択され、
R20はHであり、
nは1であり、
R4はMeであり、
R4’はH又はMeであり、
R5はHであるか、又は
R3及びR5は窒素とともに下式から選択される環を形成し、
式中、
R11及びR12は別個にH、Cl、及びCF3から選択され、
YはCH又はNであり、
R13は、H、Me、シクロヘキシル、非置換フェニル又はCF3で置換したフェニル、又は非置換ベンジルであり、
R14及びR15は別個にH及びClから選択され、
R19はH、又はその薬学的に許容可能な塩である。
[0105] 幾つかの実施形態では、本発明のシグマ−2拮抗物質は式Iの通りであり、
式中、
R1は、OH、OMe、F、Cl、CF3、(R16)(R17)N−エチレン−O−であり、ここで、
R16及びR17はそれぞれ、メチル、イソプロピル、n−ブチル又はベンジルであるか、又はR16及びR17は窒素とともに下式から選択される環を形成し、
式中、
XはN又はOであり、R18は存在しないか、又は非置換フェニルであり、
R2は、H、Cl、F、CF3、OMe、OCF3であるか、又は
R1とR2は相互に連結されて−O−C1−2メチレン−O−基を形成し、
R3は下式から選択され、
式中、
R6は、H、F、Cl、Me、イソプロピル、t−ブチル、OMe、CF3、又はS(O)2Meであり、
R7及びR8は、別個にH、OMe、F、Cl、又はCF3であり、
R9及びR10は、別個にH、OMe、F、及びClから選択され、
nは1であり、
R4はMeであり、
R4’はHであり、
R5はHであるか、又は
R3及びR5は窒素とともに下式から選択される環を形成し、
式中、
R11及びR12は別個にH、Cl、及びCF3から選択され、
YはCH又はNであり、
R13は、H、Me、シクロヘキシル、非置換フェニル又はCF3で置換したフェニル、又は非置換ベンジルであり、
R14及びR15は別個にH及びClから選択され、
R19はH、又はその薬学的に許容可能な塩である。
[0106] 幾つかのさらに特定の実施形態では、本発明のシグマ−2拮抗物質は式Iaの通りであり、
式中、R4’はHであり、残りの基は式Iの化合物に関して上記で規定された通りであるか、又はその薬学的に許容可能な塩である。
[0107] 幾つかの実施形態では、本発明のシグマ−2拮抗物質は式IIaの通りであり、
式中、
R1=ハロ、C1−6ハロアルキル、又はOH、
R2=H、ハロ又はC1−6ハロアルキル、又はR1とR2は相互に連結されて−O−メチレン−O−基を形成し、
R3=C1−6ハロアルキル、及び
R4=C1−6アルキル、又はその薬学的に許容可能な塩である。
[0108] 幾つかのさらに特定の実施形態では、本発明のシグマ−2拮抗物質は式IIaの通りであり、
式中、
R1=Cl、F、CF3、又はOH、
R2=H、Cl、F、CF3、又はR1とR2が相互に連結されて−O−エチレン−O−基を形成し、
R3=CF3、及び
R4=メチル、又はその薬学的に許容可能な塩である。
[0109] 幾つかのさらに特定の実施形態では、本発明のシグマ−2拮抗物質は式IIbの通りであり、
式中R1〜R4は、式IIaの化合物に関して上記で規定した通りであるか、又はその薬学的に許容可能な塩である。
[0110] 本発明の特定の例示的化合物は、下表で示したもの、
又はその薬学的に許容可能な塩である。
[0111] 本発明で使用する好ましい塩には、以下を含め、上記化合物の塩酸塩が含まれる。
[0112] これらは、本明細書で提供する一般的方法及び特定の合成例により合成されており、任意の追加のステップは十分に当技術分野の範囲内である。これらの化合物のうち幾つかを、本明細書で詳述するように様々なアッセイで試験し、活性であることが判明した。試験した化合物は、WO2010/110855号に開示された化合物を基準として生物学的利用能の上昇も示した。
[0113] 化合物IIは下式を有する。
[0114] 幾つかの実施形態では、上記一般式はそれぞれ、式IIの化合物を除去するという条件を含むことがある。
[0115] 幾つかの実施形態では、上記一般式はそれぞれ、以下の化合物のうち1つ又は複数を除去するという条件を含むことがある。
[0116] 別の実施形態では、本発明のシグマ−2拮抗物質は式VIIIaの通りであり、
式中、
は、単結合又は二重結合であり、
R1はC1−6アルキル、C1−6ハロアルキル、非置換ベンジル又はハロ、C1−6アルキル若しくはC1−6ハロアルキルで置換したベンジルであり、
R2はHであるか、又は
R1及びR2は窒素とともに下式の環を形成し、
式中、
XはCH、N、又はOであり、
R4は存在しないか、又はH、C1−6アルキル、又は非置換フェニル、又はハロ、C1−6アルキル若しくはC1−6ハロアルキルで置換したフェニルであり、
R3はC1−4アルキル、ハロ、又はC1−6ハロアルコキシ、又はその薬学的に許容可能な塩である。
[0117] 幾つかの実施形態では、本発明のシグマ−2拮抗物質は式VIIIaの通りであり、
式中、
は、単結合又は二重結合であり、
R1はイソブチル、ベンジル、又はクロロ、メチル、又はCF3で置換したベンジルであり、
R2はHであるか、又は
R1及びR2は窒素とともに環を形成し、
式中、
XはCH、N、又はOであり、
R4は存在しないか、又はH、イソプロピル、又は非置換フェニルであり、
R3はオルト−Me、メタ−Me、パラ−Me、パラ−F、又はパラ−OCF3、又はその薬学的に許容可能な塩である。
[0118] 幾つかのさらに特定の実施形態では、本発明のシグマ−2拮抗物質は式VIIIbの通りであり、
式中、R1〜R3は式VIIIaに関して上記で規定した通り、又はその薬学的に許容可能な塩である。
[0119] 幾つかのさらに特定の実施形態では、本発明のシグマ−2拮抗物質は式VIIIcの通りであり、
式中、R1〜R3は式VIIIaに関して上記で規定した通り、又はその薬学的に許容可能な塩である。
[0120] 本発明の特定の例示的化合物は下表で示したもの、
又はその薬学的に許容可能な塩である。
本発明に使用する好ましい塩には、以下を含め、上記化合物の塩酸塩が含まれる。
[0121] 幾つかの実施形態では、上記一般式はそれぞれ、以下の化合物:
のうち1つ又は複数を除去するという条件を含むことがある。
[0122] 追加的に、ジアステレオマーの混合物である式IXa及びIXbの化合物を開示する。
[0123] シグマ−2拮抗物質
[0124] 理論に拘束されることなく、シグマ−2受容体はニューロン中のAベータオリゴマーの受容体であると提案される。プリオンタンパク質、インスリン受容体、ベータアドレナリン様受容体及びRAGE(進行したグリケーションの最終産物)など、可溶性Aベータオリゴマーに関して、文献で様々な受容体が提案されている。Lauren, J.他の2009年のNature(457(7233): 1128-1132)、Townsend, M.他のJ. Biol. Chem.(2007, 282:33305-33312)、Sturchler, E.他の2008年のJ. Neurosci.(28(20):5149-5158)。実際、Aベータオリゴマーが複数の受容体タンパク質に結合し得ると多くの研究者が考えている。理論に拘束されることなく、本明細書に提示された証拠に基づき、本発明の発明者は、(必ずしも排他的ではなく)ニューロン中に位置するAベータオリゴマーの追加の受容体を仮定する。
[0125] 理論に拘束されることなく、Aベータオリゴマーは、シグマタンパク質複合体に結合し、迷走性輸送及びシナプス消失を引き起こすシグマ受容体拮抗物質である。ニューロン中のこの相互作用及び/又はシグマ受容体機能に拮抗する高親和性シグマ−2リガンドは、Aベータオリゴマーと競合し、ニューロン応答を正常に復帰させることが本明細書で実証されている。このようなリガンドは、機能的シグマ−2受容体拮抗物質と見なされ、このように、又はより簡単にシグマ−2受容体拮抗物質、又はシグマ−2拮抗物質と呼ばれる。
[0126] 幾つかの実施形態では、本発明のシグマ−2受容体拮抗物質化合物は、膜輸送アッセイで可溶性Aベータオリゴマーが誘発するシナプス消失を阻害し、可溶性Aベータオリゴマーが誘発する欠陥を阻害し、シグマ−2受容体にて高親和性を呈し、さらに任意の他の非シグマ受容体と比較して1つ又は複数のシグマ受容体に対して高い選択性を有し、及び良好な薬物様特性を呈することに関して、ニューロン細胞中で機能的拮抗物質として作用する。
[0127] 幾つかの実施形態では、本明細書で詳述する特定のインビトロアッセイの基準に適合するシグマ−2受容体の機能的拮抗物質は、本明細書で開示するような1つ又は複数の関連する動物の挙動モデルにおいて、挙動有効性を呈するか、又は挙動有効性を有すると予想される。幾つかの実施形態では、挙動有効性はp.o.で10mg/kg以下で判定される。
[0128] 幾つかの実施形態では、開示は高親和性のシグマ−2受容体リガンドの挙動有効性を予測するインビトロアッセイのプラットホームを提供する。インビトロアッセイのプラットホームによると、リガンドは高親和性でシグマ−2受容体と結合し、ニューロン中でAベータオリゴマーが誘発した効果に対して機能的拮抗物質として作用し、中枢ニューロン中でAベータオリゴマーが誘発するシナプス消失を阻害するか、又はニューロンへのAベータオリゴマー結合を減少させてシナプス消失を阻害し、Aベータオリゴマーが存在しない状態で輸送又はシナプス数に影響を与えない。インビトロアッセイにおけるこの活性パターンを「治療表現型」と呼ぶ。Aベータオリゴマーが存在しない状態で、シグマ−2受容体拮抗物質が正常な機能に影響せずに、成熟ニューロン中のAベータオリゴマーの効果を遮断する能力は、治療表現型の基準に適合する。次に、治療表現型を有する選択的シグマ−2拮抗物質は、Aベータオリゴマーが誘発するシナプス不全を遮断できることを開示する。
[0129] 幾つかの実施形態では、必要とする患者のAベータオリゴマーが誘発したシナプス不全を治療するために、以下の特徴も有する治療表現型を有する高親和性の選択的シグマ−2拮抗物質が、治療候補として適切である。すなわち、シグマ受容体における高い親和性、他の非シグマCNS受容体と比較してシグマ受容体に対する高い選択性、シグマ−2及びシグマ−1受容体におけるシグマ−2受容体の例えば1桁以内の高い親和性又は同等の親和性、中枢神経系に関する他の受容体とは対照的なシグマ受容体に対する選択性、及び良好な薬物様特性である。薬物様特性には、例えば肝ミクロソームに曝露することによって測定されるような許容可能な脳浸透性(血液脳関門を通過する能力)、血漿中の良好な安定性及び良好な代謝安定性が含まれる。理論に拘束されることなく、高親和性のシグマ−2受容体拮抗物質はAベータオリゴマーと競合し、及び/又はアルツハイマー病につながる病理学的なシグマ受容体のシグナル伝達を停止する。
[0130] 幾つかの実施形態では、必要とする患者のAベータオリゴマーが誘発したシナプス不全を治療するために、以下の特徴も有する治療表現型を有するシグマ−2拮抗物質が、治療候補として適切である。すなわち、シグマ受容体における高い親和性、他の非シグマCNS受容体と比較してシグマ受容体に対する高い選択性、シグマ−2受容体に対する高い親和性、又はシグマ−2及びシグマ−1受容体における同等の親和性、及び良好な薬物様特性である。薬物様特性には、高い脳浸透性、血漿安定性、及び代謝安定性が含まれる。
[0131] 幾つかの実施形態では、結合活性研究で、最大約600nM、最大約500nM、最大約400nM、最大約300nM、最大約200nM、最大約150nM、最大約100nM、好ましくは最大約75nM、好ましくは最大約60nM、好ましくは最大40nM、さらに好ましくは最大10nM、最も好ましくは最大1nMのIC50又はKi値は、シグマ受容体結合部位に対して高い結合親和性を示す。
[0132] 幾つかの実施形態では、他の非シグマCNS又は標的受容体と比較してシグマ受容体に対して約20倍超、約30倍超、約50倍超、約70倍超、又は好ましくは約100倍超の選択性を有して、脳浸透性及び良好な代謝及び/又は血漿安定性を含む良好な薬物様特性を有し、治療表現型を有するシグマ−2受容体にて、親和性が高い(好ましくはKiが、約600nM未満、約500nM未満、約400nM未満、約300nM未満、約200nM未満、約150nM未満、約100nM未満、約70nM未満、約60nM未満、約50nM未満、約30nM未満、又は約10nM未満の)シグマ−2受容体拮抗物質は、挙動有効性を有すると予想され、必要とする患者でAベータオリゴマーが誘発したシナプス不全の処置に使用することができる。
[0133] 本明細書で使用する「脳浸透性」という用語は、薬物、抗体又はフラグメントが血液脳関門を通過する能力を指す。幾つかの実施形態では、動物の薬物動態学(pK)的研究、例えばマウスの薬物動態学/血液脳関門研究を用いて、脳浸透性を判定又は予想することができる。幾つかの実施形態では、例えば動物モデルで、様々な濃度、例えば3mg/kg、10mg/kg及び30mg/kgの薬物を例えばp.o.で5日間投与することができ、様々なpK特性を測定することができる。幾つかの実施形態では、用量関連の血漿及び脳レベルを判定する。幾つかの実施形態では、脳のCmaxは、100ng/mL超、300ng/mL超、600ng/mL超、1000ng/mL超、1300ng/mL超、1600ng/mL超、又は1900ng/mL超である。幾つかの実施形態では、良好な脳浸透性とは、0.1超、0.3超、0.5超、0.7超、0.8超、0.9超、好ましくは、1超、さらに好ましくは、2超、5超、又は10超の脳/血漿比と定義される。他の実施形態では、良好な脳浸透性は、所定の期間の後にBBBを通過した投与量の約0.1%超、約1%超、約5%超、約10%超、及び好ましくは、約15%超と定義される。特定の実施形態では、用量は経口(p.o.)投与される。他の実施形態では、用量はpK特性を測定する前に静脈内(i.v.)投与される。アッセイ及び脳浸透性については実施例7で説明し、化合物IIのデータを図2A及び図2Bに示す。化合物IIは初回通過代謝を受けることが知られ、したがって皮下投薬したが、それでも化合物IIは急性及び慢性投薬の後も脳浸透性が高かった。化合物IIの脳/血漿比は8を超えていた。
[0134] 本明細書で使用する「血漿安定性」という用語は、例えばヒドロラーゼ及びエステラーゼなどによる血漿中の化合物の分解を指す。様々なインビトロアッセイのいずれかを使用することができる。薬物を血漿中で様々な期間インキュベートする。各時点にて残存する親化合物(検体)百分率は血漿安定性を反映する。安定性の特徴が不良な場合、生物学的利用能が低くなる傾向があり得る。良好な血漿安定性とは、30分後の残存検体が50%を超える、45分後の残存検体が50%を超える、及び好ましくは60分後の残存検体が50%を超えると定義することができる。
本明細書で使用する「代謝安定性」という用語は、化合物が初回通過代謝(経口投与された薬物の腸内及び肝臓分解又は抱合)を乗り越える能力を指す。これは、例えば化合物をマウス又はヒトの肝ミクロソームに曝露させることによってインビトロで評価することができる。幾つかの実施形態では、良好な代謝安定性とは、化合物をマウス又はヒトの肝ミクロソームに曝露した後、t1/2>5分、>10分、>15分、>20分、及び好ましくは、>30分であることを指す。幾つかの実施形態では、良好な代謝安定性とは、固有クリアランス率(Clint)が300uL/分/mg未満、好ましくは、200uL/分/mg以下、及びさらに好ましくは、100uL/分/mg以下であることを指す。
本発明の新規の化合物の塩、溶媒和物、立体異性体、誘導体、プロドラッグ及び活性代謝物
[0135] 本発明は、式Iの化合物の塩、溶媒和物、立体異性体、プロドラッグ及び活性代謝物をさらに包含する。
[0136] 「塩」という用語は、遊離塩基の酸添加塩又は添加塩を含むことができる。塩は薬物学的に許容可能であることが好ましい。薬学的に許容可能な酸添加塩を形成するために使用できる酸の例には、硝酸、リン酸、硫酸、又は臭化水素酸、ヨウ化水素酸、フッ化水素酸、亜リン酸などの非毒性無機酸由来の塩、さらに脂肪族一塩基酸及びジカルボン酸、フェニル置換アルカノン酸、ヒドロキシルアルカノン酸、アルカンジオン酸、芳香族酸、脂肪族酸及び芳香族スルホン酸、及び酢酸、マレイン酸、コハク酸、又はクエン酸などの非毒性有機酸由来の塩が含まれるが、これらに限定されない。このような塩の非限定的な例にはナパジシル酸塩、ベシル酸塩、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、一水素リン酸塩、二水素リン酸塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩素、ホウ素、ヨウ素、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、プロピオン酸塩、カプリル酸塩、イソブチル酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、フタル酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、酢酸フェニル、クエン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩などが含まれる。アルギン酸塩など及びグルコン酸塩、ガラクツロン酸塩などのアミノ酸の塩も想定される(例えば、Berge他の、「Pharmaceutical Salts」(J. Pharma. Sci. 1977;66: 1)を参照されたい)。
[0137] 式Iの化合物の酸添加塩は、従来の方法で遊離塩基形を十分な量の所望の酸と接触させ、塩を生成することによって調製することができる。遊離塩基形は、従来の方法で塩形を塩基と接触させ、遊離塩基を単離することによって再生することができる。遊離塩基形は、その個々の塩形とは、極性溶媒中の可溶性など特定の物理的特性が多少異なるが、それ以外では、塩は本発明の趣旨ではその個々の自由塩基と同等である。
[0138] 全塩及び部分塩も含まれる。すなわち式Iの化合物の酸1モル当たり1個、2個又は3個、好ましくは2個の塩基等価物があるか、又は式Iの化合物の塩基1モル当たり1濃、2個又は3個、好ましくは1個の酸等価物がある。
[0139] 単離又は精製のために、薬学的に許容不能な塩を使用することも可能である。しかし、治療には薬学的に許容可能な非毒性塩のみ使用し、したがってこれが好ましい。
[0140] 薬学的に許容可能な塩基添加塩は、アルカリ及びアルカリ土類金属又は有機アミンなどの金属又はアミンで形成される。カチオンとして使用される金属の例にはナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどがある。適切なアミンの例にはN,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、N−メチルグルカミン、及びプロカインがある。
[0141] 上記酸性化合物の塩基添加塩は、従来の方法で遊離酸形を十分な量の望ましい塩基と接触させ、塩を産生することによって調製される。遊離酸形は、塩を酸と接触させ、遊離酸を単離することによって再生することができる。
[0142] 本発明の化合物は、塩基性中心と酸性中心の両方を有することができ、したがって双性イオン又は内塩の形態とすることができる。
[0143] 通常、式Iの化合物の薬学的に許容可能な塩は、所望の酸又は塩基を適宜使用することによって容易に調製することができる。塩は、溶液から沈殿させ、濾過によって採取するか、溶媒の蒸発によって回収することができる。例えば、塩酸などの酸の水溶液を式Iの化合物の水性懸濁液に添加し、その結果の混合物を乾燥するまで蒸発させ(凍結乾燥させ)、酸添加塩を固体として獲得することができる。あるいは、式Iの化合物を例えばイソプロパノールのようなアルコールなどの適切な溶媒に溶解させることができ、酸を同じ溶媒又は別の適切な溶媒に添加することができる。この結果となる酸添加塩を、次に直接沈殿させるか、又はジイソプロピルエーテル又はヘキサンのようなこれより極性が低い溶媒を添加することにより、濾過で単離することができる。
[0144] 有機化学の当業者には、多くの有機化合物が、それが反応する溶媒、又はそれが沈殿又は結晶化する元となる溶媒と複合体を形成できることが認識される。これらの複合体は「溶媒和物」として知られている。例えば、水との複合体は「水和物」として知られる。本発明の化合物の溶媒和物は、本発明の範囲に入る。式Iの化合物の塩は溶媒和物(例えば水和物)を形成することができ、本発明はこのような溶媒和物も全て含む。「溶媒和物」という言葉の意味は、当業者には溶媒と溶質との相互作用(すなわち溶媒和)によって形成された化合物として知られている。溶媒を調製する技術は当技術分野で十分確立されている(例えばBrittainの、「Polymorphism in Pharmaceutical solids」(Marcel Decker、ニューヨーク、1999)を参照されたい)。
[0145] 本発明は、式Iの化合物のN−オキシドも包含する。「N−オキシド」という用語は、他に置換していないsp2N原子を含有するヘテロ環の場合、N原子は共有結合したO原子を含むことができる、すなわち−N→Oであることを意味する。このようなN−オキシド置換ヘテロ環の例には、ピリジルN−オキシド、ピリミジルN−オキシド、ピラジニルN−オキシド及びピラゾリルN−オキシドが含まれる。
[0146] 式Iの化合物は、1つ又は複数のキラル中心を有することができ、個々の置換基の性質に応じて、幾何異性体も有することができる。空間における原子の配置構成が異なる異性体を「立体異性体」と呼ぶ。相互に鏡像ではない立体異性体を「ジアステレオマー」と呼び、相互に重ね合わせることができない鏡像であるものを「鏡像異性体」と呼ぶ。ある化合物がキラル中心を有する場合は、1対の鏡像異性体が可能である。鏡像異性体はその非対称中心の絶対配置を特徴とすることができ、カーン及びブレローグのR−及びS−配列決定規則によって、分子が偏光面を回転する方法によって説明され、右旋性又は左旋性(すなわちそれぞれ(+)又は(−)異性体)と呼ばれる。キラル化合物は、個々の鏡像異性体として、又は鏡像異性体の混合物として存在することができる。等しい割合の鏡像異性体を含有する混合物を「ラセミ混合物」と呼ぶ。含有する鏡像異性体の部分が等しくない混合物は、R又はS化合物の「鏡像異性体過剰率」(ee)を有すると言う。ある混合物の1つの鏡像異性体の過剰率は、下式によって決定される鏡像異性体過剰率(%ee)値で述べることが多い。
%ee=(R)−(S)/(R)+(S)
[0147] 鏡像異性体の比率は「光学純度」で定義することもでき、鏡像異性体の混合物が面偏光を回転する程度を、光学的に純粋な個々のR化合物及びS化合物と比較する。光学純度は、下式を使用して判定することができる。
光学純度=鏡像異性体major/(鏡像異性体major+鏡像異性体minor)
[0148] 化合物は、本明細書で説明する化合物の実質的に純粋な(+)又は(−)鏡像異性体でもよい。幾つかの実施形態では、実質的に純粋な鏡像異性体を含む組成物は、一方の鏡像異性体の少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%を含む。幾つかの実施形態では、実質的に純粋な鏡像異性体を含む組成物は少なくとも99.5%が一方の鏡像異性体である。幾つかの実施形態では、組成物は本明細書で説明する化合物の一方の鏡像異性体のみを含む。
[0149] 本発明は式Iの化合物の個々の異性体を全て含む。本明細書及び請求の範囲で特定の化合物について説明し、その名前を挙げる場合、それは個々の鏡像異性体及びその混合物、ラセミ体又はその他の両方を含むものとする。立体異性体の立体化学を判定し、分解又は定位合成する方法は、当技術分野で周知である。特に、一般式I及びIIの化合物中に示され、1組の鏡像異性体を生じさせるキラル中心がある。置換基に応じて、追加のキラル中心が存在することがある。
[0150] 多くの用途で、実質的に光学的に純粋な材料を生成するように、立体選択的合成を実行する及び/又は反応生成物を適切な精製ステップにかけることが好ましい。ラセミ混合物を精製して光学的に純粋な画分にする手順と同様に、光学的に純粋な材料を生成するために適切な立体選択的合成手順が当技術分野で周知である。本発明の化合物が多型形で存在することができ、化合物が様々な形で結晶化できることが、当業者にはさらに認識される。多形を識別し、分離する適切な方法が当技術分野で知られている。
[0151] ジアステレオマーは物理的特性と化学反応性の両方で異なる。ジアステレオマーの混合物は、可溶性、画分の結晶化又はクロマトグラフ特性、例えば薄層クロマトグラフィ、カラムクロマトグラフィ又はHPLCに基づいて鏡像異性体の対に分離することができる。
[0152] ジアステレオマーの複雑な混合物を精製して鏡像異性体にするには、通常、2つのステップが必要である。第1のステップでは、ジアステレオマーの混合物を上述したように鏡像異性体の対に分解する。第2のステップでは、鏡像異性体対をさらに精製して、一方又は他方の鏡像異性体が豊富になった組成物にするか、さらに好ましくは純粋な鏡像異性体を含む組成物中に分解させる。鏡像異性体を分解するには通常、例えば溶媒又はカラム基質などのキラル剤との反応又は分子相互作用が必要である。分解は、例えば第2の剤、すなわち分解剤の純粋な鏡像異性体と反応させることにより、例えばラセミ混合物などの鏡像異性体の混合物をジアステレオマーに変換することなどによって達成することができる。これで、その結果である2つのジアステレオマー産物を分離することができる。次に、初期の化学変質を逆転させることにより、分離したジアステレオマーを純粋な鏡像異性体に再転換する。
[0153] 鏡像異性体の分解は、キラル物質に対する非共有結合の差によって、例えばホモキラル吸着剤のクロマトグラフィによって達成することもできる。鏡像異性体とクロマトグラフィ吸着剤との非共有結合は、ジアステレオマー複合体を確立し、クロマトグラフィシステムの移動及び結合状態での分配差につながる。したがって、2つの鏡像異性体は、例えばカラムなどのクロマトグラフィシステムを異なる速度で移動し、それによって分離することができる。
[0154] キラル分解カラムは当技術分野で周知であり、(例えば、カリフォルニア州レークフォレストのANSYS Technologies, Inc.の一部門であるMetaChem Technologies Inc.から)市販されている。鏡像異性体は、例えばHPLCのキラル固定相(CSP)を使用して分析及び精製することができる。キラルHPLCカラムは通常、シリカ充填材料の表面に固定化された鏡像異性体化合物の一形態を含有する。
[0155] D−フェニルグリシン及びL−ロイシンはI型CSPの例であり、π−π相互作用、水素結合、双極子−双極子相互作用、及び立体化学的相互作用の組み合わせを使用して、キラル認知を達成する。I型カラム上で分解するには、検体鏡像異性体は、検体がCSPとの基本的相互作用を経験するように、CSPのそれに対して相補的な機能性を含まなければならない。サンプルは以下の官能基のうち1つを含むことが好ましい。すなわちπ−酸、π−塩基、水素結合供与体及び/受容体、又はアミド双極子である。時には、これらがない化合物に相互作用部位を加えるために、誘導体化を用いる。最も一般的な誘導体は、アミン及びカルボン酸からのアミドの形成を伴う。
[0156] MetaChiral ODM(商標)は、II型CSPの一例である。溶質−CSP複合体を形成する主なメカニズムは引力相互作用であるが、包含複合体も重要な役割を果たす。水素結合、π−π相互作用、及び双極子スタッキングは、MetaChiral(商標)ODM上でキラルが分解するために重要である。溶質分子が溶質−カラム相互作用に必要な基を含有していない場合、誘導体化が必要になることがある。アミン及びカルボン酸のような極性が高い一部の分子は、非特異的立体相互作用を通して固定相と強力に相互作用してしまい、その分子には誘導体化、通常はベンジルアミドへの誘導体化が必要になることがある。
[0157] 適宜、式I、又はIIの化合物は、例えばカラムクロマトグラフィ又はTLCによるシリカゲル上での分離によってジアステレオマー対に分離することができる。これらのジアステレオマー対を、本明細書では上TLC Rfのジアステレオマー及び下TLC Rfのジアステレオマーと呼ぶ。ジアステレオマーはさらに、本明細書で説明するような当技術分野で周知の方法を用いて、特定の鏡像異性体を増強するか、又は単一鏡像異性体中に分解することができる。
[0158] ジアステレオマー対の相対配置は、理論的モデル又は規則(例えばクラム則、フェルキン−アン模型)を適用して、又は計算機化学プログラムにより生成したさらに確実な3次元模型を使用して演繹することができる。多くの場合、これらの方法は、いずれのジアステレオマーがキメラ形質転換のエネルギー的に好ましい産物であるか予想することができる。代替法として、ジアステレオマー対の相対配置は、ジアステレオマー対の一方(又は両方)の単一鏡像異性体の絶対配置を発見することにより、間接的に判定することができる。
[0159] 立体中心の絶対配置は、当業者に非常によく知られた方法(例えばX線回折、円偏光二色性)で判定することができる。絶対配置の判定は、理論模型の予測精度を確認するためにも有用なことがあり、同様のメカニズムとの反応(例えば、ケトン還元及び水素化物によるケトンの還元アミン化)によって調製された同様の分子にこれらの模型の使用を拡大するために役立つことがある。
[0160] 本発明は、直接缶に連結していない二重結合に対するR2−R3置換基により、Z−E型の立体異性体、及びその混合物も包含することができる。mが1ではなく、mとnとが異なる場合は、追加のZ−E立体異性体に遭遇する。二重結合置換基の二重結合の面にある個々の位置により、立体異性体がZかEかを判定するために、カーン−インゴールド−プレログの優先則を適用する。優先性が最高の2つの基がC=C結合を通る基準面の同じ側にある場合、その立体異性体をZ(zusammen=一緒)と呼ぶ。他の立体異性体をE(entgegen=反対)と呼ぶ。
[0161] E−Z型の立体異性体の混合物は、これらの化合物の様々な化学物理的特性に基づく古典的な精製方法を使用して、その成分に分離する(及び/又は特徴付ける)ことができる。これらの方法には、分別結晶作用、低、中又は高圧技術により実行するクロマトグラフィ、分別蒸留、及び当業者に非常によく知られている任意の他の方法が含まれる。
[0162] 本発明は、式I又はIIの化合物、すなわち哺乳類対象に投与された場合に式I又はIIによってインビボで活性薬物を放出する化合物のプロドラッグも包含する。プロドラッグとは、形質転換により薬学的に活性な薬剤に変換する薬学的に活性、又はさらに一般的には不活性な化合物である。式Iの化合物のプロドラッグは、修飾剤をインビボで分割して親化合物を放出できるような方法で、式Iの化合物中に存在する官能基を修飾することによって調製される。プロドラッグは、生理学的状態でインビボにて容易に化学変化を起こし(例えば加水分解されるか、又は自然に発生する酵素の作用を受け)、その結果、薬学的に活性な薬剤が遊離する。プロドラッグは式I又はIIの化合物を含み、ここでヒドロキシ、アミノ、又はカルボキシ基が、インビボで分割して遊離ヒドロキシ、アミノ又はカルボキシ基を再生することができる任意の基に結合する。プロドラッグの例には式Iの化合物のエステル(例えば、酢酸塩、蟻酸塩、及び安息香酸塩誘導体)、又は生理学的pHにするか酵素作用を受けると活性の親薬物に変換される任意の他の誘導体が含まれるが、これらに限定されない。適切なプロドラッグ誘導体を選択し、調製するための従来の手順が、当技術分野で説明されている(例えば、Bundgaardの「Design of Prodrugs」(Elsevier, 1985)を参照されたい)。
[0163] プロドラッグは、その転換先の活性成分と同じ方法で投与することができるか、又は、例えば経皮パッチ、又は(酵素又は他の適切な試薬を提供することによって)プロドラッグを時間をかけて徐々に活性成分に変換し、活性成分を患者に送達することができるように適応した他の貯蔵所などの貯蔵形態で送達することができる。
[0164] 特に指示しない限り、「活性成分」という用語は、本明細書で定義するような式Iの化合物を指すものと理解されたい。
[0165] 本発明は代謝物も包含する。本明細書で開示する化合物の「代謝物」は、化合物が代謝された場合に形成される化合物の誘導体である。「活性代謝物」という用語は、化合物が代謝された場合に形成される化合物の生物学的活性誘導体を指す。「代謝された」という用語は、生体内で特定の物質が変化するプロセスの総和を指す。簡潔に言うと、体内に存在する全化合物は、身体からエネルギーを引き出す、及び/又はそれらを除去するために体内で酵素によって操作される。特定の酵素は化合物に特定の構造的変化を生成する。例えば、シトクロムP450は様々な酸化還元反応に触媒作用を及ぼし、ウリジン二リン酸グルクロン酸転移酵素は、活性化したグルクロン酸分子の芳香族アルコール、脂肪族アルコール、カルボン酸、アミン、及び遊離メルカプト基への転移に触媒作用を及ぼす。代謝に関するさらなる情報は、「The Pharmacological Basis of Therapeutics」第9版(McGraw-Hill (1996)、11〜17ページ)で入手することができる。本明細書で開示する化合物の代謝物は、化合物を受容者に投与して、受容者からの組織サンプルを分析することによって、又は化合物を肝細胞とともにインビトロでインキュベートし、その結果の化合物を分析することによって識別することができる。両方の方法とも当技術分野で周知である。
シグマ−2受容体組成物
[0166] 幾つかの実施形態では、本発明はシグマ−2受容体を含む結合アッセイ混合物などの組成物、例えば式I又はIIによるシグマ−2受容体及びシグマ−2リガンド化合物、例えば限定なく本明細書で特に説明した個々の化合物を含む組成物を提供する。
[0167] 幾つかの実施形態では、シグマ−2受容体はシグマ−2リガンド化合物と複合体を形成する。幾つかの実施形態では、シグマ−2受容体を含む組成物は単離組成物である。シグマ−2受容体に関して本明細書で使用する「単離組成物」という用語は、細胞がない、又は自然環境から取り出されたシグマ−2受容体を指す。幾つかの実施形態では、自然環境は溶解していない、又は他の方法で破壊されていない細胞である。細胞からのシグマ−2受容体の単離は、(非限定的な例により、競合放射リガンド法を使用して)様々な細胞成分を分離し、それぞれにシグマ−2受容体が存在するか試験するなど、日常的な既知の方法で実行することができる。したがって、単離したシグマ−2受容体は、細胞質中に、又はミトコンドリア又は小胞体、エンドソーム又はリソソームのような細胞の様々な亜区画中に、又は自然環境におけるシグマ−2受容体の物理的位置となることもある脂質ラフト中に存在することができる。脂質ラフトは通常小さく(10〜200nm)、不均一で高度に動的な集合であり、コレステロール及びスフィンゴ脂質を含むがこれらに限定されない特定の成分中に濃縮される。脂質ラフトの他の成分にはグルタミン酸受容体(例えば向イオン性(カチオン特異的イオンチャネル)及び/又は向代謝性(G−タンパク結合)、mGluR5)、コレステロール、脂質、BACE、γ−セクレターゼ、完全長APP(アミロイド前駆体タンパク)、ガングリオシド(例えばガングリオシドGM1)、タンパク質1(APLP1)、膜内外タンパク質30B(TMEM30B)、アルファ7ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChRα7)、進行グリコシル化最終産物受容体(RAGE)、N−メチル−D−アスパラギン酸受容体(NMDAR)、神経成長因子受容体(NGFR)(例えばTrkA及びp75ニューロトロフィン受容体)、インスリン受容体サブユニット、又はその任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。Rushworth他のInternational Journal of Alzheimer's Disease第2011巻、論文ID603052の14ページを参照されたい。これは全体が参照により本明細書に組み込まれている。脂質ラフトは細胞から単離することができ、単離した脂質ラフトはシグマ−2受容体を含有することができる。
[0168] 幾つかの実施形態では、シグマ−2受容体は、アミロイド−ベータオリゴマーと会合するか、又はそれと複合体になるように、Aベータオリゴマー又は他のAベータ種に曝露する。幾つかの実施形態では、アミロイド−ベータオリゴマーは細胞から単離されている。幾つかの実施形態では、アミロイド−ベータオリゴマーは合成で作成するか、又はインビトロで調製されている。アミロイド−ベータオリゴマー及び種の非限定的な例を本明細書で説明する。
[0169] 幾つかの実施形態では、シグマ−2受容体を含む組成物は、追加的に他の受容体又はそのパネルを含む。その例にはグルタミン酸受容体(例えば向イオン性(カチオン特異的イオンチャネル)及び/又は向代謝性(G−タンパク結合)、mGLuR5として知られる)、α7ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChRα7)、進行グリコシル化最終産物受容体(RAGE)、N−メチル−D−アスパラギン酸受容体(NMDAR)、神経成長因子受容体(NGFR)(例えばTrkA及びp75ニューロトロフィン受容体)、インスリン受容体サブユニット、又はその任意の組み合わせがある。組成物の可能な他の成分にはコレステロール、脂質、BACE、γ−セクレターゼ、完全長APP(アミロイド前駆体タンパク質)、ガングリオシド(例えばガングリオシドGM1)、細胞プリオンタンパク質、膜内外タンパク質、アミロイド−β前駆体様タンパク1(APLP1)、膜内外タンパク質30B(TMEM30B)が含まれる。
[0170] シグマ−2受容体、シグマ−2リガンド、及び脂質ラフト又はタンパク質、脂質、コレステロール、又は脂質ラフトからの他の成分を含む組成物は、例えばシグマ−2受容体を細胞から単離し、シグマ−2受容体をシグマ−2リガンドと接触させることによって調製される。幾つかの実施形態では、シグマ−2リガンドとシグマ−2受容体は、複合体を形成するのに十分な状態で接触する。幾つかの実施形態では、複合体はアミロイドベータオリゴマーの存在下で形成される。
[0171] プリオンタンパク質、インスリン受容体、ベータアドレナリン様受容体、及びRAGE(進行グリコシル化最終産物の受容体)を含むAベータオリゴマーに関する文献で、様々な受容体が提案されている。Lauren, J.他、2009、Nature(457(7233): 1128-1132)、Townsend, M.他、J. Biol. Chem.(2007, 282:33305-33312)、Sturchler, E.他、2008、J. Neurosci.(28(20): 5149-5158)を参照されたい。実際、多くの研究者がAベータオリゴマーは複数の受容体タンパク質に結合できると考えている。Krafft GA、Klein WL Neuropharmacology((2010)Sep-Oct; 59(4-5): 230-42)。本明細書で、及び本出願と同日に出願された共願特許出願でも提示された証拠に基づき、本発明の発明者は、(必ずしも排他的ではなく)ニューロン中にAベータオリゴマーの追加の受容体が位置すると仮定している。理論に拘束されることなく、シグマ−2受容体は、ニューロン中のAベータオリゴマーの受容体であると提案される。幾つかの実施形態では、本発明はニューロン中に発現したAベータオリゴマー受容体、及びAベータオリゴマーを含む組成物を提供する。このような組成物は、Aベータオリゴマー受容体ではない1つ又は複数のニューロンタンパク質を追加的に含むことができる。幾つかの実施形態では、Aベータオリゴマー受容体はシグマ−2受容体である。幾つかの実施形態では、シグマ−2受容体は活性化した受容体である。幾つかの実施形態では、シグマ−2受容体は不活性又は脱感作受容体である。幾つかの実施形態では、組成物は脂質ラフトタンパク質を含む。脂質ラフトタンパク質の例を本明細書で述べるが、例は限定的ではない。ニューロンタンパク質は、ニューロン細胞中に、又は少なくとも中枢神経系に特異的に発現するタンパク質である。幾つかの実施形態では、ニューロンタンパク質は脳に特異的に発現する。幾つかの実施形態では、ニューロンタンパク質はニューロン中で発現し、他の組織又は細胞型には発現しないタンパク質である。幾つかの実施形態では、ニューロンタンパク質は、ニューロン中で発現し、精巣以外の他の組織又は細胞型には発現しないタンパク質である。幾つかの実施形態では、追加的タンパク質は、ニューロン中のAベータオリゴマーの有害作用を促進することがある。
[0172] シグマ−2受容体を含有する上記組成物は、この受容体に結合し、したがってシナプス消失又は膜輸送異常に対して保護し、これを軽減又は逆転させる際に活性化する可能性があり、さらに認知低下の阻止及びMCI及びアルツハイマー病の処置に活性化するさらなる化合物を識別するアッセイに使用することができる。例えば、このようなアッセイには、標識したシグマ−2リガンドの標識がない候補シグマ−2リガンドによる置換を測定することができるアッセイが含まれるが、これに限定されない。活性化合物を識別するこのような競合的結合アッセイは、製薬業で数十年間使用されており、当業者に知られている。
本発明の化合物の使用
[0173] 幾つかの実施形態では、本発明は、ニューロン細胞がAベータ種に曝露することに伴うシナプス数の低下又は膜輸送異常を阻害する方法を提供する。本発明は、患者の認知低下及び/又は神経変性症、例えばアルツハイマー病又は軽度の認知障害(MCI)を処置し、本明細書で説明するシグマ−2リガンド、又はその薬学的に許容可能な塩を投与することを含む方法も提供する。幾つかの実施形態では、認知低下及び/又は神経変性症、例えばアルツハイマー病を阻害、又は処置する方法は、記憶消失、錯乱、判断障害、人格変化、見当識障害、及び言語技能の消失からなる群から選択された認知低下の1つ又は複数の症状の阻害、又は処置を含む。幾つかの実施形態では、上記方法は、Aベータオリゴマーによって仲介されるか、又はそれに関連する疾病又は障害又は状態の阻害、又は処置を含む(パラグラフ002参照)。幾つかの実施形態では、認知低下及び/又は神経変性症、例えばアルツハイマー病を阻害、又は治療する方法は、(i)電気生理学的測定によって検出可能な長期残留記憶(LTP)、LTD又はシナプス可塑性、又は上記用語の定義で言及したような認知機能の他のネガティブな変化を回復すること、(ii)神経変性を阻害又は処置すること、及び/又は(iii)一般的アミロイドーシスを阻害又は処置すること、(iv)アミロイド酸性、アミロイド集合、アミロイド凝集、及びアミロイドオリゴマー結合、及びアミロイド沈着のうち1つ又は複数を阻害又は治療すること、及び/又は(v)ニューロン細胞上の1つ又は複数のAベータオリゴマーの効果、特に非致死的効果を阻害、処置及び/又は寛解することのうち1つ又は複数を含む。幾つかの実施形態では、認知低下及び/又は神経変性症、例えばアルツハイマー病を阻害、処置及び/又は寛解する方法は、アミロイド産生、アミロイド集合、1つ又は複数のAベータオリゴマーがニューロン細胞、アミロイド凝集、アミロイド結合、及びアミロイド沈着のうち1つ又は複数に与える作用/効果の阻害、処置及び/又は寛解することを含む。幾つかの実施形態では、認知低下及び/又は神経変性症、例えばアルツハイマー病を阻害、処置及び/又は寛解する方法は、ニューロン細胞に1つ又は複数のAベータオリゴマーが与える作用/効果のうち1つ又は複数を阻害、処置及び/又は寛解することを含む。
[0174] 幾つかの実施形態では、1つ又は複数のAベータオリゴマーがニューロン細胞、アミロイド凝集、アミロイド結合、及びアミロイド沈着に与える作用/効果は、Aベータオリゴマーが膜輸送又はシナプス数に与える効果である。幾つかの実施形態では、シグマ−2リガンドは、膜輸送又はシナプス数又はAベータオリゴマー結合に対するAベータオリゴマーの効果を阻害する。
[0175] 幾つかの実施形態では、本発明はタンパク質感応症を処置する方法を提供する。幾つかの実施形態では、上記方法はタンパク質感応症を有する対象を本発明のシグマ−2リガンドに、又はそれを含有してシグマ−2受容体に結合する組成物に接触させることを含む。
[0176] 幾つかの実施形態では、タンパク質感応症はCNSタンパク質感応であり、MCI、ダウン症候群、黄斑変性症又はアルツハイマー病などのAベータタンパク質の増加を特徴とする。
[0177] 幾つかの実施形態では、本発明は、本発明によるシグマ−2リガンドを投与することにより、1つ又は複数の軽度の認知障害(MCI)、又は認知症を処置する方法を提供する。幾つかの実施形態では、本発明はMIC及び認知症を処置する方法を提供する。
[0178] 幾つかの実施形態では、本発明は、対象の細胞を、AベータオリゴマーなどのAベータ種による有害作用を受けた機能に関して正常な表現型に部分的又は全体的に回復するために、本発明によるシグマ−2リガンドで個体を処置する方法を提供する。その例には、シナプス数の減少及び膜輸送異常があり、これは本明細書で説明するアッセイなどの様々な方法で測定することができる。正常な表現型とは、例えば正常な膜輸送とすることができる。幾つかの実施形態では、正常な表現型は正常な認知能力である。「正常な」表現型は、対象の結果を正常な対象のサンプルと比較することによって判断することができる。サンプルは、わずか1の対象又は1のサンプルのこともあれば、10より多くのサンプル又は対象のこともあり、基準は複数の対象に基づいて計算された平均である。
[0179] 幾つかの実施形態では、上記方法は、認知低下又は神経変性症に苦しむ対象に、シグマ−2タンパク質に結合してベータ−アミロイド病変を阻害する化合物又は組成物を投与することを含む。幾つかの実施形態では、ベータ−アミロイド病変は、膜輸送欠陥、シナプス数の減少、樹状突起棘数の減少、樹枝状突起棘の形態変化、LTPの変化、LTDの変化、動物の記憶及び学習手段の欠陥、又はその任意の組み合わせなどである。以上は、下記のように本発明により提示される証拠の結果を利用する。
[0180] 本明細書では、式I及びII、特に式IIの化合物が、合成製剤又はアルツハイマーのヒトの脳から単離された製剤(後者の方がアミロイド病変をインビトロで仲介する効力が実質的により高い)中で、ニューロン細胞中のAベータに関連するシナプス減少を阻害し、Aベータオリゴマー導入の前又は後に添加すると、Aベータオリゴマーに対するニューロン細胞の曝露に伴うこのような細胞中の膜輸送の異常を(例えば以下で述べるMTTアッセイを使用して)阻害することを示してきた。式I及びII中の他の化合物も、膜輸送の異常を阻害することを示してきた。化合物IIも本明細書で、本明細書で説明したようなアルツハイマー病の遺伝子組み換え及び誘導動物モデルが呈した、認知低下及び記憶消失と相関する認知欠陥を阻害することを示してきた。化合物II、さらに化合物B及びIIのような式I内の他の化合物も、薬物動態学で全身で吸収され、血液脳関門を通過して生物学的利用能があることを示してきた。このような特性の結果、及び最新技術により、早期ステージのアルツハイマー病などのアミロイド病変の発生ではAベータオリゴマー及びAベータ集合体に大きい役割があるとされていることから、化合物IIは、軽度の認知障害の処置及び保護、及びアルツハイマー病の(本明細書で定義したような)処置に有効であると予測される。さらに、化合物IIに構造的に類似していることから、及び以上で特に開示されたものの中でも、化合物IIのインビトロの活性、式I及びIIの代表的な数の他の化合物の薬物動態学的特性及びシグマ−2リガンドの状態が以上で確認されていることから、式I及びIIの化合物は全て、インビボで同様の活性があると予想される。
[0181] 化合物IIの挙動有効性:マウスの恐怖条件付けにおけるAベータオリゴマー誘発の記憶障害は、コロンビア大学のOttavio Arancio博士のラボラトリで確立されたモデルである(Puzzo '08)。幾つかの製薬会社が、努力発見でこの同じモデルを使用している。文脈的恐怖条件付けは、ヒトの認知機能、特に新しい記憶の生成に相関する連想記憶形成の公認モデルである(Delgado '06)。Aベータオリゴマーを、条件付け訓練の直前に野生型動物の海馬に注入し、24時間後にすくみ反応を介して記憶を評価する。詳細を実施例9に提供する。ここで、化合物IIは単独で投薬した場合に、記憶を阻害したり、いかなる挙動又は運動毒性も引き起こしたりせずに、マウスの記憶障害を完全に解消することができた。このモデル系を選択したのは、オリゴマーの海馬内投与によって化合物の活性及び標的外毒性の迅速な比較評価が可能だからである。結果を図4のグラフで示す。
[0182] 化合物IIは、Aベータオリゴマー関連の記憶消失を逆転させる化合物の効果を示すために、2匹の遺伝子組み換えアルツハイマーモデルでインビボで試験することもできた。特に、化合物IIは、加齢により記憶消失を特徴とする認知低下を漸進的に発症する2匹の異なる突然変異型マウスモデルが、記憶消失の発現前に獲得したスキルを思い出す能力を回復した。また、化合物IIは、野生型マウスの海馬がAベータオリゴマーに曝露する効果を大幅に阻害し、マウスが新しい記憶を獲得する能力を保持した。
[0183] これらの挙動研究は全体的に、化合物IIが、短期又は長期投与後に2つの異なるモデルのアルツハイマー病での両性での2つの異なる挙動タスクで、学習及び記憶の改善を引き起こすことを実証し、インビトロアッセイはインビボ活性と相関することを実証している。したがって、化合物IIがシグマ−2受容体と結合し、それがAベータ関連病理をインビトロで阻害することを示すデータと組み合わせると、これらの結果は、化合物IIを使用してアルツハイマー病などの神経変性症を処置できることを示す。式I及びIIの他の化合物も、シグマ−2受容体に結合し、化合物IIと同じインビトロ活性を有することが判明した。化合物IIと、及び化合物IIが模倣するAベータオリゴマーのファルマコフォアとの類似性に基づき、これはインビトロ及びインビボで化合物IIと同じ活性を有すると予想される。実際、これらの化合物をインビトロで試験している限り、化合物IIと同じタイプの活性を有し、したがってインビボでの同じ活性を、及び同じ治療指標を有すると予想される。式I又はII内の幾つかの他のシグマ−2リガンド化合物を、本明細書で説明したシナプス減少及び/又は膜輸送アッセイで試験してきた、又は今後試験し、Aベータオリゴマー関連のシナプス消失の阻害、及びAベータオリゴマー関連の膜輸送異常の阻害に活性を有し、認知低下の阻害及びアルツハイマー病の処置の処置に同様の活性があることが予想される。
[0184] 上記結論は、アルツハイマー病及び軽度の認知障害に関する以下の背景に基づいている。本明細書で検討するように、膜輸送によって仲介されたニューロン表面受容体の発現のAベータオリゴマーが仲介した減少が、オリゴマー阻害に関してシナプス可塑性(LTP)の、したがって学習及び記憶の電気生理学的尺度のベースであることを、証拠は示唆している(Kamenetz F、Tomita T、Hsieh H、Seabrook G、Borchelt D、Iwatsubo T、Sisodia S、Malinow Rの、「APP processing and synaptic function」(Neuron. 2003 Mar 27;37(6):925-37)、及びHsieh H、Boehm J、Sato C、Iwatsubo T、Tomita T、Sisodia S、Malinow Rの、「AMPAR removal underlies Abeta-induced synaptic depression and dendritic spine loss」(Neuron. 2006 Dec 7;52(5):831-43)を参照されたい)。Aベータオリゴマー遮断薬を発見するために、ホルマザンの形態学的シフトを介してオリゴマーにより誘発された膜輸送速度変化の測定が複数の細胞系で使用されてきており[Maezawa I、Hong HS、Wu HC、Battina SK、Rana S、Iwamoto T、Radke GA、Pettersson E、Martin GM、Hua DH、Jin LW、「A novel tricyclic pyrone compound ameliorates cell death associated with intracellular amyloid-beta oligomeric complexes」(J Neurochem. 2006 Jul;98(1):57-67);Liu Y、Schubert D、「Cytotoxic amyloid peptides inhibit cellular 3-(4,5-dimethylthiazol-2-yl)-2,5-diphenyltetrazolium bromide (MTT) reduction by enhancing MTT formazan exocytosis」(J Neurochem. 1997 Dec;69(6):2285-93);Liu Y、Dargusch R、Banh C、Miller CA、Schubert D、「Detecting bioactive amyloid beta peptide species in Alzheimer's disease」(J Neurochem. 2004 Nov;91(3):648-56);Liu Y、Schubert D、「Treating Alzheimer's disease by inactivating bioactive amyloid beta peptide」(Curr Alzheimer Res. 2006 Apr;3(2):129-35);Rana S、Hong HS、Barrigan L、Jin LW、Hua DH、「Syntheses of tricyclic pyrones and pyridinones and protection of Abeta-peptide induced MC65 neuronal cell death」(Bioorg Med Chem Lett. 2009 Feb 1;19(3):670-4. Epub 2008 Dec 24);及びHong HS、Maezawa I、Budamagunta M、Rana S、Shi A、Vassar R、Liu R、Lam KS、Cheng RH、Hua DH、Voss JC、Jin LW、「Candidate anti-Abeta fluorene compounds selected from analogs of amyloid imaging agents」(Neurobiol Aging. 2008 Nov 18. (Epub ahead of print))]、Aベータオリゴマー遮断薬はインビボで齧歯類の脳Aベータレベルを低下させる[Hong HS、Rana S、Barrigan L、Shi A、Zhang Y、Zhou F、Jin LW、Hua DH、「Inhibition of Alzheimer's amyloid toxicity with a tricyclic pyrone molecule in vi
tro and in vivo」(J Neurochem. 2009 Feb;108(4):1097-1108)]。したがって、上記試験は、アルツハイマー病及び軽度の認知障害を処置する化合物を識別する際の妥当性を確立している。
[0185] 幾つかの実施形態では、ある化合物は、ニューロン(脳内ニューロンなど)、アミロイド集合又はその破壊、及びアミロイド(アミロイドオリゴマーを含む)結合、及びアミロイド沈着に対するAベータオリゴマーの効果のうち1つ又は複数を阻害することに関して、100μM未満、50μM未満、20μM未満、15μM未満、10μM未満、5μM未満、1μM未満、500nM未満、100nM未満、50nM未満、又は10nM未満のIC50値を有する。幾つかの実施形態では、その化合物は、ニューロン(中枢ニューロンなど)に対するオリゴマーなどのAベータ種の活性/効果を阻害することに関して、100μM未満、50μM未満、20μM未満、15μM未満、10μM未満、5μM未満、1μM未満、500nM未満、100nM未満、50nM未満、又は10nM未満のIC50値を有する。
[0186] 幾つかの実施形態では、本発明の化合物がニューロン(脳内ニューロンなど)に対するオリゴマーなどのAベータ種の効果、例えばシナプスに対するアミロイド(アミロイドオリゴマーを含む)結合、及びAベータオリゴマーに仲介された膜輸送の異常のうち1つ又は複数を阻害する百分率が、10nM〜10μMの濃度で測定された。幾つかの実施形態では、測定した阻害百分率は約1%〜約20%、約20%〜約50%、約1%〜約50%、又は約1%〜約80%である。阻害は、例えばアミロイドベータ種に対する曝露前及び曝露後にニューロンのシナプス数を数量化するか、又はシグマ−2リガンドとAベータ種の両方の存在下でシナプスの数を数量化することによって評価することができ、ここでシグマ−2リガンドはAベータ種の曝露と同時、又はその前又はその後である。別の例として、阻害は、本発明によりAベータ種が存在する、及び存在しない状態、及びシグマ−2リガンドが存在する、及び存在しない状態で、膜輸送を判定し、開口分泌率及び提訴、取り込み率及び程度、又は細胞代謝の他の指標を測定する1つ又は複数のパラメータを比較することによって評価することができる。本発明の発明者は、本発明の化合物もアミロイド凝集を呈するという生化学的アッセイの証拠を提示している。
[0187] 幾つかの実施形態では、本明細書で説明する化合物はシグマ−2受容体に特異的に結合する。特定の受容体に特異的に結合する化合物とは、1つの受容体に対して別の受容体よりも優先性を示す化合物を指す。例えば、ある化合物はシグマ−1受容体とシグマ−2受容体の両方に結合することができるが、シグマ−1受容体に対するよりも結合親和性が少なくとも10%大きい状態で結合する場合、その化合物はシグマ−2受容体に対して特異的であると言うことができる。幾つかの実施形態では、特異性は、一方の結合パートナー(例えば受容体)が第2の結合パートナーより少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、又は1000%大きい。
[0188] 幾つかの実施形態では、本発明は標識付けしたシグマ−2リガンドを使用して、動物でベータ−アミロイド関連の認知低下を測定する方法を提供する。幾つかの実施形態では、上記方法は、動物を本発明により標識付けしたシグマ−2リガンドに接触させることと、シグマ−2の活性又は発現を測定することと、を含む。幾つかの実施形態では、上記方法は、動物のシグマ−2活性又は発現を、ベータ−アミロイド誘発認知低下を有することが分かっている動物と比較することを含む。活性又は発現が、ベータ−アミロイド誘発認知低下を有することが分かっている動物と同じである場合、その動物は同レベルの認知低下を有すると言われる。動物は、様々なステージのベータアミロイド誘発認知低下で知られている活性又は発現との類似性に従ってランク付けすることができる。本明細書で説明するシグマ−2リガンドのいずれも、標識付けしたシグマ−2リガンドをインビボで使用できるように標識を付けることができる。
[0189] 上式のいずれかの化合物、及び以上でシグマ−2拮抗物質として説明した他の化合物が、本明細書で説明する様々な状態の処置に有効であるかを判定する際に、インビトロアッセイを使用することができる。インビトロアッセイは、化合物IIを使用したインビボの効果と関連付けられてきた。例えば、化合物IIとの構造的類似性を有する式III−IVの化合物が、例えば本明細書で説明するインビトロアッセイで活性である場合、これをインビボでも使用して、本明細書で説明する状態を処置又は寛解する、例えばシナプス消失を阻害又は回復する、ニューロン細胞の膜輸送変化を調節する、記憶消失から保護するか、又はそれを回復する、及び認知低下状態、疾病、及び障害、例えばMCI及びアルツハイマー病を処置することができる。アッセイは部分的に、アミロイドβオリゴマー、及びシナプスにてニューロンに結合する際のその機能に、及びアミロイドβオリゴマーがインビトロでニューロンに及ぼす効果に基づいている。幾つかの実施形態では、本発明の発明者がシグマ−2タンパク質を含むと考えるニューロン中のAベータオリゴマー受容体が、本明細書で説明するようにアミロイドベータ集合体と接触し、シグマ−2タンパク質と結合する式I、II又はVIIIによる化合物が、受容体に対するアミロイドベータ集合体の結合を阻害する。競合的放射性リガンド結合アッセイで、本発明の発明者は、本発明の化合物がシグマ−2受容体に対して特異的であることを示した。本発明の発明者は、本発明の化合物がニューロンの表面上でこれまで識別されていない受容体に対するAベータオリゴマーの結合を阻害することも示した。幾つかの実施形態では、ニューロンのシグナル伝達における上記いずれかの式の化合物のシグマ−2リガンドの有効性を判定する方法を提供する。幾つかの実施形態では、上記方法は、1次ニューロンを含むがこれに限定されない細胞をシグマ−2リガンドと接触させることと、ニューロン機能を測定することとを含む。幾つかの実施形態では、細胞をインビトロで接触させる。幾つかの実施形態では、細胞をインビボで接触させる。ニューロン活性とは、シグナル伝達活性、電気的活性、シナプスタンパク質の産生又は放出などとすることができる。信号伝達を増強又は回復するシグマ−2拮抗物質は、ニューロン活性を調節する際に有効な化合物として識別される。幾つかの実施形態では、細胞は病理学的サンプル由来である。幾つかの実施形態では、細胞は神経変性症を有する対象由来である。幾つかの実施形態では、神経変性症はMCI又はアルツハイマー病、特に軽度のアルツハイマー病である。
[0190] アミロイドベータ集合体及び集合体を使用する方法の実施例を本明細書及び以下で説明し、これはWO2011/014880号(出願第PCT/US2010/044136号)、WO2010/118055号(出願第PCT/US2010/030130号)、及び出願第PCT/US2011/026530号にも説明され、これはそれぞれ全体が参照により本明細書に組み込まれている。使用できる膜輸送アッセイ及び/又は恐怖条件付けアッセイなどの他のアッセイも使用することができる。これらの方法は本明細書で、及びWO2011/014880号(出願第PCT/US2010/044136号)、WO2010/118055号(出願第PCT/US2010/030130号)、及び出願第PCT/US2011/026530号で説明され、それぞれ全体が参照により本明細書に組み込まれている。
受容体結合アッセイ及び化合物のスクリーニング
[0191] 本発明は、認知低下を阻害するか、又は神経変性症を処置する別の化合物を識別する方法も提供する。幾つかの実施形態では、上記方法は、シグマ−2受容体に結合する化合物に細胞を接触させることを含む。幾つかの実施形態では、上記方法は、化合物がベータ−アミロイド病変を阻害するか判定することを含み、ベータ−アミロイド病変を阻害する化合物は、シグマ−2受容体に結合し、認知低下を阻害するか、又は神経変性症を処置する化合物として識別される。幾つかの実施形態では、上記方法は、シグマ−2受容体に結合する追加の化合物を識別することも含む。幾つかの実施形態では、シグマ−2受容体に結合する化合物を識別する方法は、競合的結合アッセイを含み、試験化合物を、本発明の化合物などの既知のシグマ−2リガンドの存在下でシグマ−2受容体と接触させ、既知のリガンドの結合を競合的に阻害する試験化合物をシグマ−2受容体リガンドとして識別する。
[0192] 化合物がシグマ−2受容体に結合できるかを判定する方法が知られており、任意の方法を使用することができる。例えば、受託調査機構によって試験が実施されており、化合物がシグマ−2に結合するか判定するために使用することができる。様々なアッセイを実施して、化合物がシグマ−2受容体に結合するか判定することができる。幾つかの実施形態では、ヒト胚性腎(HEK293)、ジャーカット細胞、又はシグマ−2受容体を含むがこれらに限定されないヒト受容体の均質集団を安定的に発現するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞などであるが、これらに限定されない細胞を使用する。他の事例では、齧歯類の新皮質などのシグマ−2受容体の組織源を使用する。この一例を本明細書の実施例のセクションで説明する。
[0193] 幾つかの実施形態では、試験化合物を細胞又は細胞膜と接触させ、試験化合物がシグマ−2受容体と結合できるか判定する。幾つかの実施形態では、試験化合物をジメチルスルホキシドなどであるがこれらに限定されない担体又はビヒクル中に溶解させる。幾つかの実施形態では、融合するまで細胞を培養する。幾つかの実施形態では、融合すると、穏やかに掻き取ることで細胞を引き離すことができる。幾つかの実施形態では、細胞はトリプシン処理によって、又は任意の他の適切な引き離し手段によって引き離す。
[0194] 幾つかの実施形態では、シグマ−2受容体への試験化合物の結合は、例えば競合的放射性リガンド結合アッセイによって判定することができる。放射性リガンド結合アッセイは、ヒト受容体又は組織源を安定して発現する無傷の細胞で実施することができる。引き離した細胞又は組織細胞は、例えば洗浄、遠心分離、及び/又は緩衝液中に再懸濁することができる。試験化合物は、本明細書で説明する方法を含むがこれらに限定されない任意の方法により放射性標識を付けることができる。放射性リガンドは、様々な濃度(範囲は例えば1010〜103M又は1011〜104Mとすることができる)の競合薬物が存在しない、及び存在する状態で0.1μCiの固定濃度で使用することができる。薬物を緩衝液中の組織又は細胞(例えば細胞約50,000個)に添加し、インキュベートを可能にすることができる。受容体のサブタイプ毎に広範囲の活性化剤又は阻害剤又は機能的作用物質又は拮抗物質の存在下で(例えばシグマ受容体の場合は、例えば受容体毎に10μMの適切なリガンドの存在下で)非特異的結合を判定することができる。急速濾過によって反応を終了することができ、その後に氷冷緩衝剤で2回洗浄することができる。乾燥したフィルタディスクへの放射能は、液体シンチレーション分析器を含むがこれに限定されない任意の方法を使用して測定することができる。置換曲線をプロットすることができ、受容体サブタイプの試験リガンドのKi値を、例えば、GraphPad Prism(GraphPad Software Inc.、カリフォルニア州サンディエゴ)を使用して判定することができる。全結合(壊変毎分)と非特異的結合(壊変毎分)との差を全結合(壊変毎分)で割ることにより、特異的結合百分率を判定することができる。
[0195] 幾つかの実施形態では、細胞系又は組織源の結合研究の場合、様々な濃度の各薬物を各実験で二重に添加し、例えばGraphPad Prismソフトウェアを使用して個々のIC50値を判定した。各リガンドのKi値は、Cheng及びPrusoff(1973)が記載している式に従って求めることができ、最終データはpKi±SEMとして表すことができ、幾つかの実施形態では試験数は約1〜6である。
[0196] 幾つかの実施形態では、上記方法はさらに、可溶性Aβオリゴマー誘発シナプス消失の阻害、及び可溶性Aβオリゴマー誘発障害に関して、可溶性Aβオリゴマー誘発神経毒性を阻害することによって、膜輸送アッセイでシグマ−2受容体に結合する化合物が、シグマ−2受容体における拮抗物質として作用するかを判定することを含む。幾つかの実施形態では、上記方法はさらに、シグマ−2受容体拮抗物質が、Aベータオリゴマーの存在下で輸送又はシナプス数に影響しない、ニューロン細胞中でカスパーゼ−3活性を誘発しない、シグマ−2受容体作用物質によりカスパーゼ−3活性の誘発を阻害する、及び/又はシグマ−2受容体作用物質により引き起こされたニューロン細胞のニューロン毒性を減少させるか、又はそれに対して保護することを判断することを含む。
[0197] 試験は、結合パートナーに対する試験化合物の影響を判定する機能的アッセイも含むことができ、結合パートナーはシグマ−2受容体でよいが、これに限定されない。様々な標準的アッセイ技術を使用することができる。例えば、生細胞又は組織中で化合物の機能的作用物質様又は拮抗物質様活性を測定する方法を使用することができる。上記方法は、cAMP濃度及びIP1レベルを判定するTR−FRET、カルシウム流動を監視するリアルタイム蛍光、インピーダンス変調、回腸収縮、又は腫瘍細胞アポトーシスを測定する細胞誘電分光を含むが、これらに限定されない。試験化合物の特異性は、例えば化合物がシグマ−1受容体、シグマ−2受容体又はその両方に結合するか、いずれにも結合しないかを判断することによっても判定することができる。試験化合物がシグマ−1受容体に結合するかを判定する方法が、Ganapathy, M.E他によって説明され(1999、J. Pharmacol. Exp. Ther.、289: 251-260)、これは全体が参照により本明細書に組み込まれている。試験化合物がシグマ−1受容体に結合するかを判定する方法は、全体が参照により本明細書に組み込まれているBowen, W.D他の(1993、Mol. Neuropharmacol.、3: 117-126)、及びこれも全体が参照により本明細書に組み込まれているXu, J.他の(Nature Communications、2011, 2:380 DOI: 10.1038/ncomms 1386)によっても説明されている。
[0198] 様々な実施形態では、本開示は、可溶性Aβオリゴマー誘発シナプス消失の阻害に関して可溶性Aβオリゴマー誘発神経毒性を阻害することによってシグマ−2受容体における機能的拮抗物質として作用することができ、膜輸送アッセイで可溶性Aβオリゴマー誘発障害を阻害し、Aベータオリゴマーが存在しない状態で輸送又はシナプス数に影響せず、本明細書で説明するような良好な薬物様特性を呈する選択的で高親和性のシグマ−2受容体リガンドを識別するアッセイプロトコルを提供し、したがってこのように識別された選択的で高親和性のシグマ−2受容体拮抗物質を使用して、可溶性Aβオリゴマー誘発シナプス不全をインビボで処置することができる。
[0199] 幾つかの実施形態では、非致死的Aベータオリゴマーの毒性を軽減するか、それに対して保護するのに活性があるようになる化合物を識別するために、試験化合物がシグマ−2受容体に結合する能力をスクリーニング基準として組み込むことにより実質的に恩恵を受け、例えば既知のリガンドを置換する能力又は任意の他の方法によって評価されるスクリーニング方法が提供される。また、試験化合物を、本明細書で説明する膜輸送アッセイ又はシナプス数又はオリゴマー結合アッセイ、又は本明細書で説明するような認知低下の処置を評価するインビボアッセイなど、化合物がニューロンに及ぼすAベータオリゴマーの非致死的有害作用を遮断するか、又は軽減する能力を評価することができる少なくとも1つのインビトロ試験にかける。
[0200] 幾つかの実施形態では、本発明は、対象をシグマ−2拮抗物質で処置すべきか判定する方法を提供し、ここで対象は、認知低下又は神経変性症、又は本明細書で説明する他の状態、疾病又は障害の疑いがある。幾つかの実施形態では、上記方法は、患者由来のサンプルをシグマ−2拮抗物質に接触させることと、シグマ−2変調化合物がサンプルに存在するベータ−アミロイド病変を阻害するか寛解するか判断することとを含み、ここでサンプルに存在するベータ−アミロイド病変の阻害又は寛解を示すサンプルは、対象をシグマ−2拮抗物質で処置すべきことを示す。
[0201] さらに、本発明は、Aβオリゴマー誘発シナプス数減少などを阻害するシグマ−2拮抗物質を識別する方法を含む。幾つかの実施形態では、上記方法を使用して、ベータ−アミロイド病変を処置するシグマ−2拮抗物質を識別することができる。幾つかの実施形態では、上記方法を使用して、ベータ−アミロイド病変を処置する処置の効力を判断する。幾つかの実施形態では、ベータ−アミロイド病変とは、膜輸送の欠陥、シナプス不全、動物の記憶及び学習欠陥、シナプス数の減少、樹状突起棘の長さ又は棘の形態の変化、LTPの欠陥、又はタウタンパク質のリン酸化の増加である。
本開示で使用されるアミロイドアミロイドベータ
[0202] ヒトアミロイドβは、ニューロンのシナプス中への濃縮が見られる一体膜タンパク質、アミロイド前駆体タンパク質(APP)の分解産物である。アミロイドβは自己会合して準安定性オリゴマー集合を形成する。濃度が上昇すると、Aベータは重合し、集合して線形原繊維になり、これはpHの低下によって促進される。原繊維がオリゴマーから形成されるか否かは現在のところ明白でない。アミロイドβオリゴマーは、学習及び記憶を遮断するニューロンシナプスの変化を誘発することによって、動物モデルにアルツハイマー病を引き起こすことが実証されており、アミロイドβ原繊維は長らく、動物及びヒトの進行ステージのアルツハイマー病に関連付けられてきた。実際、アルツハイマー病に関して多大な支持を獲得している現在有効な仮説は、Aベータ集合体及び特にAベータオリゴマーが、アルツハイマー病に関連する初期病変、さらにMCI及び軽度のADのような重篤度が比較的低い認知症に関連する病変の中心にあるというものである。Clearly, James P.他の、「Natural oligomers of the amyloid-βprotein specifically disrupt cognitive function」(Nature Neuroscience Vol. 8 (2005):79-84)、Klyubin, I.他の、「Amyloid beta protein dimer-containing human CSF disrupts synaptic plasticity: prevention by systemic passive immunization」(J Neurosci. Vol. 28 (2008):4231-4237)。しかし、オリゴマーが形成される様子、及びオリゴマーの構造的状態に関して知られていることは非常に少ない。例えば、オリゴマーを形成するために会合するアミロイドβサブユニットの数は現在知られていない。オリゴマーの構造的形状、又はどの残留物が曝露しているのかも知られていない。オリゴマーの複数の構造的状態が神経刺激性であることを示唆する証拠がある。Reed, Jess D.他の、「MALDI-TOF mass spectrometry of oligomeric food polyphenols」(Phytochemistry 66:18 (September 2005):2248-2263)、Cleary, James P.他の、「Natural oligomers of the amyloid-βprotein specifically disrupt cognitive function」(Nature Neuroscience Vol. 8 (2005): 79 - 84)。
[0203] アミロイドβは、ApoE及びApoJなど、脳で見られる多くのタンパク質に対する親和性を有する。しかし、シャペロン又は他のタンパク質が、その最終的な構造的状態及び/又はその神経刺激性に影響し得るタンパク質との会合を形成するかは不明である。
[0204] 可溶性Aベータペプチドは、シナプス不全及び認知プロセスを混乱させることによって、早期ステージのAD中に重要な役割を果たしているようである。例えば、Origlia他は、可溶性Aベータ(Aベータ42)が、p38MARKの進行グリコシル化最終産物(RAGE)仲介活性に関して、ニューロン受容体を通した嗅内皮質の長期残留記憶(LTP)を傷害することを示した。Origlia他の2008年の、「Receptor for advanced glycation end product-dependent activation of p38 mitogen-activated protein kinase contributes to amyloid-beta-mediated cortical synaptic dysfunction」(J. Neuroscience 28(13): 3521-3530)。これは参照により本明細書に組み込まれている。
[0205] シナプス不全は、早期ステージのアルツハイマー病に関与している。アミロイドベータペプチドは、シナプス機能を変化させることが示されている。Puzzo他の報告によると、Aベータの合成原繊維形は、早期のタンパク質合成相に影響せずに、LTPの後期のタンパク質合成依存相を傷害する。この報告は、Aベータオリゴマーが細胞にとって毒性が高く、シナプス不全に関与するというそれ以前の報告と合致する。Puzzo他の2006年の「Curr Alzheimer's Res」(3(3):179-183)。これは参照により本明細書に組み込まれている。Aベータは、酸化窒素カスケードを含む様々な第2のメッセンジャーカスケードにより、海馬長期残留記憶(LTP)を顕著に傷害することが判明している(NO/cGMP/cGK/CREB。Puzzo 他、J Neurosci.、2005)。幾つかの実施形態では、本開示はニューロン細胞のアミロイドベータオリゴマー誘発シナプス不全を阻害し、及びAベータオリゴマーに対するニューロンの曝露によって引き起こされた海馬長期残留記憶の抑制を阻害するために、シグマ−2受容体拮抗物質を含む組成物及び方法を提供する。
[0206] スクリーニング法及び本発明によるアッセイの実践には、任意の形態のアミロイドβ、例えばアミロイドβモノマー、オリゴマー、原繊維、さらにタンパク質と会合したアミロイドβ(「タンパク質複合体」)及びさらに一般的にはアミロイドβ集合体を使用することができる。例えば、スクリーニング法は、例えばそれぞれが参照により本明細書に組み込まれている米国特許出願第13/021,872号、米国特許公開第2010/0240868号、国際特許出願WO/2004/067561号、国際特許出願WO/2010/011947号、米国特許公開第20070098721号、米国特許公開第20100209346号、国際特許出願WO/2007/005359号、米国特許公開第20080044356号、米国特許公開第20070218491号、WO/2007/126473号、米国特許公開第20050074763号、国際特許出願WO/2007/126473号、国際特許出願WO/2009/048631号、及び米国特許公開第20080044406号、米国特許第7,902,328号及び米国特許第6,218,506号に開示されているように、様々な形態の可溶性アミロイドβオリゴマーを使用することができる。
[0207] アミロイドβのモノマー又はオリゴマーなどのアミロイドβの形態は、任意の出所から得ることができる。例えば、幾つかの実施形態では、水溶液中に市販のアミロイドβモノマー及び/又はアミロイドβオリゴマーを使用することができ、他の実施形態では、当業者が任意の数の既知の技術を使用して、タンパク質水溶液中で使用したアミロイドβモノマー及び/又はアミロイドβオリゴマーを単離して精製することができる。一般的に、タンパク質の水溶液の調製に使用するアミロイドβモノマー及び/又はアミロイドβオリゴマー、及び様々な実施形態のアミロイドβは、水溶液中に可溶性とすることができる。したがって、水溶液のタンパク質とアミロイドβは両方とも可溶性とすることができる。
[0208] 添加されるアミロイドβは任意のイソ型でよい。例えば、幾つかの実施形態では、アミロイドβモノマーはアミロイドβ1−42でよく、他の実施形態では、アミロイドβモノマーはアミロイドβ1−40でよい。さらに他の実施形態では、アミロイドβはアミロイドβ1−39又はアミロイドβ1−41でよい。したがって、様々な実施形態のアミロイドβはアミロイドβの任意のC末端イソ型を包含することができる。さらに他の実施形態は、N末端がほつれているアミロイドβを含み、幾つかの実施形態では、上述したアミロイドβC末端異性体のいずれかのN末端は、アミノ酸2、3、4、5又は6でよい。例えば、アミロイドβ1−42はアミロイドβ2−42、アミロイドβ3−42、アミロイドβ4−42、又はアミロイドβ5−42及びその混合物を包含することができ、同様にアミロイドβ1−40はアミロイドβ2−40、アミロイドβ3−40、アミロイドβ4−40、又はアミロイドβ5−40を包含することができる。
[0209] 様々な実施形態で使用するアミロイドβの形態は、野生型、すなわち多数の集団によってインビボで合成されたアミロイドβのアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列を有することができるか、又は幾つかの実施形態では、アミロイドβは突然変異アミロイドβでもよい。実施形態は、なんらかの特定の突然変異アミロイドβの変種に限定されない。例えば、幾つかの実施形態では、水溶液に導入されるアミロイドβは、既知の突然変異、例えば「オランダ型」(E22Q)突然変異又は「北極型」(E22G)突然変異を有するアミロイドβなどを含むことができる。このような突然変異モノマーは、例えばアミロイドβの家族性形態であるアルツハイマー病などの素因になる個体の集団から単離されたアミロイドβの形態など、自然に発生する突然変異を含むことができる。他の実施形態では、突然変異アミロイドβモノマーは、特定の突然変異を有するアミロイドβ突然変異体を産生する分子技術を使用して合成で産生することができる。さらに他の実施形態では、突然変異アミロイドβモノマーは、例えばランダムに発生するアミロイドβ突然変異体に見られる突然変異体など、以前に識別されていない突然変異体を含むことができる。本明細書で使用する「アミロイドβ」という用語は、アミロイドβの野生型の形態、さらにアミロイドβの任意の突然変異形態の両方を包含する意味を有する。
[0210] 幾つかの実施形態では、タンパク質水溶液中のアミロイドβは単一のイソ型でよい。他の実施形態では、アミロイドβの様々なC末端イソ型及び/又はアミロイドβの様々なN末端イソ型を組み合わせて、タンパク質水溶液中で提供できるアミロイドβ混合物を形成することができる。さらに他の実施形態では、アミロイドβは、タンパク質含有水溶液に添加してin situで分割するアミロイド前駆体タンパク質(APP)から誘導することができ、このような実施形態では、アミロイドβの様々なイソ型を溶液中に含有することができる。アミロイドβを添加した後、水溶液中でN末端のほつれ及び/又はC末端アミノ酸の除去が生じることがある。したがって、本明細書で説明するような水溶液は、最初に単一イソ型を溶液に添加している場合でも、様々なアミロイドβを含むことができる。
[0211] 水溶液に添加したアミロイドβモノマーを生組織として自然の出所から単離することができ、他の実施形態では、遺伝子組み換えマウス又は培養細胞などの合成出所から、アミロイドβを誘導することができる。幾つかの実施形態では、モノマー、オリゴマー、又はその組み合わせを含むアミロイドβ形態を、正常な対象及び/又は認知低下又はそれに関連する疾病、例えばアルツハイマー病などであるが、これらに限定されない疾病と診断されている患者から単離する。幾つかの実施形態では、アミロイドβモノマー、オリゴマー、又はその組み合わせは、正常な対象又は病気の患者から単離してあるAβ集合体である。幾つかの実施形態では、Aベータ集合体は分子量が高く、例えば100KDaより大きい。幾つかの実施形態では、Aベータ集合体は中間の分子量、例えば10〜100KDaである。いくつかのでは、Aベータ集合体は10kDa未満である。
[0212] 幾つかの実施形態のアミロイドβオリゴマーは、通常使用されている「オリゴマー」の定義に一致した任意の数のアミロイドβモノマーで構成することができる。例えば、幾つかの実施形態では、アミロイドβオリゴマーは約2〜約300個、約2〜約250個、約2〜約200個のアミロイドβモノマーを含むことができ、他の実施形態では、アミロイドβオリゴマーは約2〜約150個、約2〜約100個、約2個〜約50個、又は2個〜約25個のアミロイドβモノマーで構成することができる。幾つかの実施形態では、アミロイドβオリゴマーは2個以上のモノマーを含むことができる。様々な実施形態のアミロイドβオリゴマーは、モノマーの構成に基づいてアミロイドβ原繊維及びアミロイドβ原繊条から区別することができる。特に、アミロイドβオリゴマーのアミロイドβモノマーは、全体的に球状でβ−プリーツシートで構成され、原繊維及び原繊条のアミロイドβモノマーの2次構造は平行なβ−シートである。
[0213]アルツハイマー病の、又はその危険がある対象の識別
[0214] アルツハイマー病(AD)は歴史的に、大脳皮質に余分なβ−アミロイド(Aβ)プラーク及び神経内神経原繊維錯綜が存在することと定義される。当技術分野では、磁気共鳴映像法、単一光子射出断層撮影法、FDG PET、PiB PET、CSFタウ及びAベータ分析など、様々な診断及び予診生物マーカが知られており、さらに、その診断精度に関して使用可能なデータがAlves他の2012年の、「Alzheimer's disease: a clinical practice-oriented review」(Frontiers in Neurology, April, 2012, vol 3, Article 63, 1-20)で検討され、これは参照により本明細書に組み込まれている。
[0215] 認知症の診断は、誰が認知症を発現するかという予想とともに、[(18)F]フッ化デオキシグルコース(FDG)を使用した磁気共鳴映像法及び陽電子射出断層撮影法に補助されている。これらの技術はADに特異的なものではない。例えば、Vallabhajosula S.の、「Positron emission tomography radiopharmaceuticals for imaging brain Beta-amyloid」(Semin Nucl Med. 2011 Jul;41(4):283-99)を参照されたい。認知障害がある患者の中位から頻繁なアミロイド神経プラークを映像化するために最近FDAの認証を受けた別のPETリガンドには、フロルベタピルF18注入、(4−((1E)−2−(6−{2−(2−(2−(18F)フルオロエトキシ)エトキシ)エトキシ}ピリジン−3−イル)エテニル)−N−メチルベンゼンアミン、AMYVID(登録商標)、Lilly)がある。フロルベタピルは原繊維Aベータに特異的に結合するが、神経原繊維錯綜には結合しない。例えばChoi SR他の、「Correlation of amyloid PET ligand florbetapir F 18 binding with Aβ aggregation and neuritic plaque deposition in postmortem brain tissue」(Alzheimer Dis Assoc Disord. 2012 Jan;26(1):8-16)を参照されたい。PETリガンドフロルベタピルは、PET走査の視覚的定性評価について、特異性が低いという難点がある。Camus他の2012年のEur J Nucl Med Mol Imaging(39:621-631)。しかし、神経プラークがある多くの人は、認知が正常であるように見える。
[0216] アルツハイマー病のCSFマーカには総タウ、リン酸−タウ及びAベータ42が含まれる。例えばAndreasen、Sjogren及びBlennowのWorld J Biol Psyciatry(2003, 4(4):147-155)を参照されたい。これは参照により本明細書に組み込まれている。多くの研究で、ADではAベータのアミノ酸42個の形態(Aベータ42)のCSFレベルが低下し、総タウのCSFレベルが上昇することが判明している。また、APP遺伝子にはADを発現するリスクがある対象を識別する際に有用な突然変異の既知の遺伝子マーカがある。例えばGoate他の、「Segregation of a missense mutation in the amyloid precursor protein gene with familial Alzheimer's disease」(Nature, 349, 704-706, 1991)を参照されたい。これは参照により本明細書に組み込まれている。複数の実施形態では、任意の既知の診断又は予診法を使用して、アルツハイマー病の対象、又はそのリスクがある対象を識別することができる。
シグマ−2受容体拮抗物質を含む薬学的組成物
[0217] 本明細書の手段によって識別されたシグマ−2受容体拮抗物質化合物、抗体、又はフラグメントは、薬学的組成物の形態で投与することができる。これらの組成物は薬学技術分野で周知の方法で調製することができ、望ましいのは局所的処置か全身処置か、及び処置する領域に応じて、様々な経路により投与することができる。
[0218] したがって、本発明の別の実施形態は、薬学的に許容可能な賦形剤又は希釈剤、薬学的に有効な量の本発明のシグマ−2受容体拮抗物質、例えば鏡像異性体、ジアステレオマー、N−オキシド又はその薬学的に許容可能な塩を含む薬学的組成物を含む。
[0219] ある化合物を塊状物質として投与することが可能であるが、例えば活性剤が、所期の投与経路及び標準的な薬学的習慣に関して選択された薬学的に許容可能な担体との混合物である場合、活性成分を薬学的配合に入れて提示することが好ましい。
[0220] したがって、一態様では、本発明は、上記式のいずれか、及び上述したシグマ−2受容体拮抗物質として説明された任意の他の化合物、又はその薬学的に許容可能な誘導体(例えば塩又は溶媒和物)、及び任意選択で薬学的に許容可能な担体の少なくとも1つの化合物、抗体又はフラグメントを含む薬学的組成物を提供する。特に、本発明は、上記式又はその薬学的に許容可能な誘導体、及び任意選択で薬学的に許容可能な担体のいずれかの少なくとも1つの化合物を薬学的に有効な量含む薬学的組成物を提供する。
本発明の化合物を含む薬学的組成物
[0221] 本発明の化合物又は組成物(例えばシグマ−2拮抗物質)は、薬学的組成物の形態で投与することができる。これらの組成物は、薬学技術分野で周知の方法で調製することができ、望ましいのは局所的処置か全身処置か、及び処置する領域に応じて、様々な経路により投与することができる。
[0222] したがって、本発明の別の実施形態は、薬学的に許容可能な賦形剤又は希釈剤、及び薬学的に有効な量の本発明の化合物、又は鏡像異性体、ジアステレオマー、N−オキシド又はその薬学的に許容可能な塩を含む薬学的組成物を含む。
[0223] ある化合物を塊状物質として投与することが可能であるが、例えば薬剤が、所期の投与経路及び標準的な薬学的習慣に関して選択された薬学的に許容可能な担体との混合物である場合、活性成分を薬学的配合に入れて提示することが好ましい。
[0224] したがって、一態様では、本発明は、式I又はII又はその薬学的に許容可能な誘導体(例えば塩又は溶媒和物)、及び任意選択で薬学的に許容可能な担体の少なくとも1つを含む薬学的組成物を提供する。特に、本発明は、式I又はその薬学的に許容可能な誘導体、及び任意選択で薬学的に許容可能な担体の少なくとも1つの化合物を薬学的に有効な量含む薬学的組成物を提供する。
[0225] 同じ配合中で組み合わせる場合、2つの化合物は安定し、相互に及び配合の他の成分に対して適合性でなければならないことが認識される。別個に配合する場合、任意の都合の良い配合で、当技術分野においてこのような化合物に知られているような方法で都合よく提供することができる。
[0226] 本発明の化合物は、ヒト又は動物用医薬品で使用するために任意の都合の良い方法で投与するように配合することができ、したがって本発明は、ヒト又は動物用医薬品で使用するように適合した本発明の化合物を含む薬学的組成物をその範囲内に含む。このような組成物は、1つ又は複数の適切な担体に補助され、従来の方法で使用するように提示することができる。治療用に許容可能な担体は薬学技術分野で周知であり、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Co.、編集A. R. Gennaro、1985)に記載されている。薬学的担体の選択肢は、所期の投与経路及び標準的な薬学的習慣により選択することができる。薬学的組成物は、担体として、及びそれに加えて任意の適切な結合剤、潤滑剤、懸濁剤、コーティング剤及び/又は可溶化剤を含むことができる。
[0227] 保存剤、安定化剤、着色料、さらには着香料さえ、薬学的組成物中に提供することができる。保存剤の例には安息香酸ナトリウム、アスコルビン酸、及びp−ヒドロキシ安息香酸のエステルが含まれる。抗酸化剤及び懸濁剤も使用することができる。
[0228] 本発明の化合物は、錠剤形成のために、及び他の配合タイプのために適切な粒子サイズを得るために湿式磨砕などの既知の磨砕手順を使用して磨砕することができる。本発明の化合物の細かく分割した(ナノ粒子状の)製剤は、当技術分野で知られているプロセスで調製することができる。例えばWO02/00196号(SmithKline Beecham)を参照されたい。
組み合わせ
[0229] 本発明の組成物及び方法に関して、上記式のいずれかの化合物、及び上述したシグマ−2受容体拮抗物質として説明された他の化合物を他の治療及び/又は活性剤と組み合わせて使用することができる。
[0230] 幾つかの実施形態では、シグマ−2拮抗物質化合物は、コリンエステラーゼ阻害剤、N−メチル−D−アスパラギン酸塩(NMDA)、グルタミン酸受容体拮抗物質、ベータ−アミロイド特異的抗体、ベータ−セクレターゼ1(BACE1、ベータ部位アミロイド前駆体タンパク質分解酵素1)阻害剤、腫瘍壊死因子アルファ(TNFアルファ)調節物質、静脈内免疫グロブリン(IVIG)、又はプリオンタンパク質拮抗物質のうち1つ又は複数の組み合わせることができる。幾つかの実施形態では、シグマ−2受容体拮抗物質を、タクリン(COGNEX(登録商標);Sciele)、ドネペジル(ARICEPT(登録商標);Pfizer)、リバスチグミン(EXELON(登録商標);Novartis)及びガランタミン(RAZADYNE(登録商標);Ortho-McNeil-Janssen)から選択されたコリンエステラーゼ阻害剤と組み合わせる。幾つかの実施形態では、シグマ−2受容体拮抗物質を、ペリスピナルエタネルセプト(ENBREL(登録商標)、Amgen/Pfizer)であるTNF−アルファ調整物質と組み合わせる。幾つかの実施形態では、シグマ−2受容体拮抗物質を、バピネオズマブ(Pfizer)、ソラネズマブ(Lilly)、PF−04360365(Pfizeri)、GSK933776(GlaxoSmithKline)、ガンマガード(Baxter)又はオクタガム(Octapharma)から選択されたベータ−アミロイド特異的抗体と組み合わせる。幾つかの実施形態では、シグマ−2受容体拮抗物質を、メマンチン(NAMENDA(登録商標);Forest)であるNMDA受容体拮抗物質と組み合わせる。幾つかの実施形態では、BACE1阻害剤はMK−8931(Merck)である。幾つかの実施形態では、シグマ−2受容体拮抗物質を、Magga 他の(J Neuroinflam 2010, 7:90)「Human intravenous immunoglobulin provides protection against Ab toxicity by multiple mechanisms in a mouse model of Alzheimer's disease」、及びWhaley他の(2011, Human Vaccines 7:3
, 349-356)「Emerging antibody products and Nicotiana manufacturing」に記載されているようにIVIGと組み合わせる。これはそれぞれ参照により本明細書に組み込まれている。幾つかの実施形態では、シグマ−2受容体拮抗物質を、参照により本明細書に組み込まれている、Strittmatter他のUS2010/0291090号に開示されたようにプリオンタンパク質拮抗物質と組み合わせる。
[0231] したがって、本発明はさらなる態様で、上記式又はその薬学的に許容可能な誘導体、第2の活性剤、及び任意選択で薬学的に許容可能な担体のいずれかの少なくとも1つの化合物を含む薬学的組成物を提供する。
[0232] 同じ配合中で組み合わせる場合、2つの化合物、抗体又はフラグメントは安定し、相互に及び配合の他の成分に対して適合性でなければならないことが認識される。別個に配合する場合、任意の都合の良い配合で、当技術分野においてこのような化合物に知られているような方法で都合よく提供することができる。
投与経路及び単位量の形態
[0233] 投与(送達)の経路は、経口(例えば錠剤、カプセル、又は接種可能な溶液として)、局所的、粘膜(例えば鼻噴霧又は吸入用エアロゾルとして)、非経口(例えば注射可能な形態による)、胃腸、脊髄内、腹膜内、筋肉内、静脈内、脳室内、又は他の蓄積投与などのうち1つ又は複数を含むが、これらに限定されない。
[0234] したがって、本発明の組成物は、投与モードに合わせて特に配合される形態の組成物を含む。特定の実施形態では、本発明の薬学的組成物は経口送達にとって適切である形態で配合される。例えば化合物CB及び化合物CFは、動物モデルで経口的に生物利用可能であり、1日1回経口投与され、恐怖条件付けモデルで有効であることが示されたシグマ−2受容体拮抗物質化合物である。例えば図9Bを参照されたい。本明細書で説明するような経口的に生物利用可能な化合物は、経口配合で調製することができる。幾つかの実施形態では、シグマ−2拮抗物質化合物は経口送達に適切な経口的に生物利用可能な化合物である。他の実施形態では、本発明の薬学的組成物は、非経口送達に適切である形態で配合される。幾つかの実施形態では、シグマ−2受容体拮抗物質化合物は抗体又はそのフラグメントであり、ここで抗体又はフラグメントは非経口組成物で配合される。
[0235] 本発明の化合物は、ヒト又は動物用医薬品で使用するために任意の都合の良い方法で投与するように配合することができ、したがって本発明は、ヒト又は動物用医薬品で使用するように適合した本発明の化合物を含む薬学的組成物をその範囲内に含む。このような組成物は、1つ又は複数の適切な担体に補助され、従来の方法で使用するように提示することができる。治療用に許容可能な担体は薬学技術分野で周知であり、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Co.、編集A. R. Gennaro、1985)に記載されている。薬学的担体の選択肢は、所期の投与経路及び標準的な薬学的習慣により選択することができる。薬学的組成物は、担体として、及びそれに加えて任意の適切な結合剤、潤滑剤、懸濁剤、コーティング剤及び/又は可溶化剤を含むことができる。
[0236] 異なる送達系に応じて異なる組成物/配合要件があってもよい。化合物を全て同じ経路で投与する必要はないことを理解されたい。同様に、組成物が複数の活性成分を含む場合は、これらの成分を異なる経路で投与することができる。例示により、本発明の薬学的組成物は、小型ポンプを使用して、又は粘膜経路により、例えば鼻噴霧又は吸入用エアロゾル又は摂取可能な溶液として、又は送達用に注射可能な形態で組成物を配合する非経口で、例えば静脈内、筋肉内又は皮下経路で送達するように配合することができる。あるいは、配合は複数の経路で送達するように設計することができる。
[0237] 本発明の化合物は血液脳関門を通過するので、例えば(iv、SC、経口、粘膜、経皮的経路などにより)全身的方法、又は(頭蓋内などの)局所的方法を含む様々な方法で投与することができる。本発明の化合物を胃腸粘膜を通して粘膜送達する場合、これは胃腸管を通過中に安定状態を維持できなければならず、例えばタンパク質分解に抵抗し、酸性pHにて安定し、胆汁の洗浄効果に抵抗できなければならない。例えば、式I又はIIの化合物は腸溶性皮膜層でコーティングすることができる。腸溶性皮膜層材料は、水又は適切な有機溶媒中に分散又は溶解することができる。腸溶性皮膜層ポリマーとして、以下のうち1つ又は複数の別個に、又は組み合わせて使用することができる。例えば、メタクリル酸共重合体、酢酸フタル酸セルロース、酢酸ブチル酸セルロース、ヒドロキシプロピルフタル酸メチルセルロース、ヒドロキシプロピル酢酸コハク酸メチルセルロース、酢酸フタル酸ポリビニル、酢酸トリメリット酸セルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、セラック又は他の適切な腸溶性皮膜層ポリマーである。環境的理由から、水性コーティングプロセスが好ましいことがある。このような水性プロセスでは、メタクリル酸共重合体が最も好ましい。
[0238] 適宜、薬学的組成物は、吸入によって、皮膚パッチを使用して、又はデンプン又はラクトースなどの賦形剤を含有する錠剤の形態で経口的に、又は単独で又は賦形剤と混合してカプセル又は腔坐剤で、又は着香剤又はコーティング剤を含有するエリキシル、溶液又は懸濁液の形態で投与することができるか、又は例えば静脈内、筋肉内又は皮下で経皮注射することができる。頬側又は舌下投与の場合、組成物は錠剤又はトローチの形態で投与することができ、これは従来の方法で配合することができる。
[0239] 本発明の組成物を非経口投与する場合、このような投与は制限なく、本発明の化合物を静脈内、動脈内、髄腔内、脳室内、頭蓋内、筋肉内又は皮下投与する、及び/又は注入技術を使用することを含む。
[0240] 注射又は注入に適した薬学的組成物は、活性成分を含有する無菌水溶液、分散又は無菌粉末の形態で、必要に応じて注入又は注射に適したこのような無菌溶液又は分散剤を調製するために調整することができる。この製剤は、任意選択でリポソームに封入することができる。全てのケースで、最終製剤は生産及び保存状態にて無菌、液体で安定していなければならない。保存安定性を改善するために、このような製剤は微生物の増殖を防止する保存剤も含有することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、又はアスコルビン酸を添加することによって達成することができる。多くのケースで、体液、特に血液と同様の浸透圧を確保するために、例えば糖、緩衝剤及び塩化ナトリウムなどの等張物質が推奨される。このような注射可能な混合物の長期吸収は、モノステアリン酸アルミニウム又はゼラチンなどの吸収遅延剤を導入することによって達成することができる。
[0241] 分散剤は、グリセリン、液体ポリエチレングリコール、トリアセチン油、及びその混合物などの液体担体又は中間体中で調製することができる。液体担体又は中間体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコールなど)、植物油、非毒性グリセリンエステル及び適切なその混合物を含む溶媒又は液体分散媒質とすることができる。適切な流動性は、リポソームを生成するか、分散剤の場合は適切な粒子サイズを投与するか、又は界面活性剤を添加することによって維持することができる。
[0242] 非経口投与の場合、化合物は無菌水溶液の形態で最も適切に使用することができ、これは他の物質、例えば溶液を血液と等張にするのに十分な塩又はグルコースを含有することができる。水溶液は、適宜、適切に(好ましくは3〜9のpHに)緩衝しなければならない。無菌状態で適切な非経口配合を調製するには、当業者に周知の標準的な薬学技術によって容易に達成される。
[0243] 無菌注射溶液は、式Iの化合物を適切な溶媒及び上述した担体のうち1つ又は複数と混合し、その後に無菌濾過することによって調製することができる。無菌注射溶液の調製に使用するのに適切な無菌粉末の場合、好ましい調製方法は真空乾燥及び凍結乾燥を含み、これはアルドステロン受容体拮抗物質の粉末混合物、及びその後に無菌溶液を調製するために望ましい賦形剤を提供する。
[0244] 本発明による化合物は、注射によって(例えば静脈内ボーラス注射又は筋肉内、皮下又は髄腔内経路によって)ヒト又は動物用医薬品で使用するように配合することができ、単位量形態、アンプル、又は他の単位量容器に入れ、又は必要に応じて保存剤を添加して多用量容器に入れて提示することができる。注射用組成物は、懸濁液、溶液、又はエマルジョンの形態で、油性又は水性ビヒクルに入れることができ、懸濁、安定化、可溶化及び/又は分散剤などの配合剤を含有することができる。あるいは、活性成分は、使用前に無菌で発熱物質がない水などの適切なビヒクルで再構成する無菌粉末形態にすることができる。
[0245] 本発明の化合物は、即時、遅延、修飾、徐放、間欠的、又は制御放出適用のために、錠剤、カプセル、腔坐剤、エリキシル、溶液又は懸濁液の形態で投与することができる。
[0246] 本発明の化合物は、ヒト又は動物用医薬品で使用するために、経口又は頬側投与に適切な形態、例えば溶液、ゲル、シロップ、又は懸濁液、又は使用前に水又は他の適切なビヒクルと再構成するために乾燥粉末の形態で提示することもできる。錠剤、カプセル、トローチ、香錠、丸薬、巨丸薬、粉末、ペースト、顆粒、弾丸状又は予備混合製剤などの個体組成物も使用することができる。経口用の個体又は液体組成物は、当技術分野で周知の方法により調製することができる。このような組成物は、1つ又は複数の薬学的に許容可能な担体及び賦形剤も含有することができ、これは固体又は液体の形態でよい。
[0247] 錠剤は、微結晶質セルロース、ラクトース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、第2リン酸カルシウム及びグリシンなどの賦活剤、デンプン(好ましくはトウモロコシ、ジャガイモ又はタピオカのデンプン)、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、及び特定の複合ケイ酸塩などの錠剤分解物質、及びポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、蔗糖、ゼラチン及びアカシアなどの顆粒結合剤を含有することができる。
[0248] また、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ベヘン酸グリセリル及び滑石などの潤滑剤を含めることができる。
[0249] 組成物は、即時又は制御放出錠剤、微粒子、ミニ錠剤、カプセル、サシェ、及び経口溶液又は懸濁液、又はそれらを調製するための粉末の形態で経口投与することができる。経口製剤は任意選択で、結合剤、充填剤、緩衝剤、潤滑剤、滑剤、着色剤、錠剤分解物質、臭気剤、甘味料、界面活性剤、離型剤、癒着防止剤及びコーティングなどの様々な標準的な薬学的担体及び賦形剤を含むことができる。一部の賦形剤は、例えば結合剤と錠剤分解物質との両方として作用するなど、組成物中で複数の役割を有することができる。
[0250] 本発明に有用な経口組成物の薬学的に許容可能な錠剤分解物質の例には、デンプン、アルファ化デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、微結晶質セルロース、アルギン酸塩、樹脂、界面活性剤、発泡性組成物、水性珪酸アルミニウム及び架橋ポリビニルピロリドンが含まれるが、これらに限定されない。
[0251] 本明細書で有用な経口組成物用の薬学的に許容可能な結合剤の例には、アカシア、セルロース誘導体、例えばメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース又はヒドロキシエチルセルロース、ゼラチン、グルコース、デキストロース、キシリトール、ポリメタクリレート、ポリビニルピロリドン、ソルビトール、デンプン、アルファ化デンプン、トラガカント、キサンチン樹脂、アルギン酸塩、珪酸アルミニウムマグネシウム、ポリエチレングリコール又はベントナイトが含まれるが、これらに限定されない。
[0252] 経口組成物用の薬学的に許容可能な充填剤の例には、ラクトース、無水ラクトース、乳酸1水和物、蔗糖、デキストロース、マンニトール、ソルビトール、デンプン、セルロース(特に微結晶質セルロース)、二水素又は無水リン酸カルシウム、炭酸カルシウム及び硫酸カルシウムが含まれるが、これらに限定されない。
[0253] 本発明の組成物に有用な薬学的に許容可能な潤滑剤の例には、ステアリン酸マグネシウム、滑石、ポリエチレングリコール、エチレンオキシドの重合体、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸フマル酸ナトリウム、及びコロイド状二酸化ケイ素が含まれるが、これらに限定されない。
[0254] 経口組成物用の適切な薬学的に許容可能な臭気剤の例には、油、花、果実(例えばバナナ、リンゴ、酸果オウトウ、桃)の抽出物及びその組み合わせなどの合成芳香剤及び天然芳香油、及び同様の芳香剤が含まれるが、これらに限定されない。その使用は多くの因子に依存し、最も重要なのは薬学的組成物を摂取する集団の感覚受容性である。
[0255] 経口組成物用の適切な薬学的に許容可能な着色剤の例には、二酸化チタン、ベータ−カロテン及びグレープフルーツの皮の抽出物などの合成及び天然着色剤が含まれるが、これらに限定されない。
[0256] 通常は嚥下を促進する、放出特性を修飾する、外観を改善する、及び/又は組成物の味をマスキングするために使用される経口組成物用の有用な薬学的に許容可能なコーティングの例には、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びアクリレート−メタクリレート共重合体が含まれるが、これらに限定されない。
[0257] 経口組成物の薬学的に許容可能な甘味料の適切な例には、アスパルテーム、サッカリン、サッカリンナトリウム、シクラミン酸ナトリウム、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、ラクトース及び蔗糖が含まれるが、これらに限定されない。
[0258] 薬学的に許容可能な緩衝剤の適切な例には、クエン酸、クエン酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウムが含まれるが、これらに限定されない。
[0259] 薬学的に許容可能な界面活性剤の適切な例にはラウリル硫酸ナトリウム及びポリソルベートが含まれるが、これらに限定されない。
[0260] 同様のタイプの固体組成物を、ゼラチンカプセルの充填剤としても使用することができる。これに関して好ましい賦形剤には、ラクトース、デンプン、セルロース、乳糖又は高分子量ポリエチレングリコールが含まれる。水性懸濁液及び/又はエリキシルの場合、薬剤は様々な甘味料又は香味料、着色物質又は着色料と、乳化及び/又は懸濁剤と、及び水、エタノール、プロピレングリコール及びグリセリンなど、及びその組み合わせなどの希釈剤と組み合わせることができる。
[0261] 示したように、本発明の化合物は、鼻腔内で、又は吸入により投与することができ、乾燥粉末吸入器又はエアロゾル噴霧提示の形態で、加圧容器、ポンプ、噴霧器又はネブライザから、適切な噴霧剤、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、ハイドロフルオロアルカン、例えば1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFA 134AT)又は1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFA 227EA)、二酸化炭素又は他の適切なガスを使用して都合よく送達される。加圧エアロゾルの場合、用量単位は、弁を設けて計量した量を送達することによって決定することができる。加圧容器、ポンプ、噴霧器又はネブライザは、例えば溶媒としてエタノールと噴霧剤の混合物を使用し、活性化合物の溶液又は懸濁液を含むことができ、これは追加的に潤滑剤、例えばトリオレイン酸ソルビタンを含有することができる。
[0262] 吸入器又は注入器に使用するカプセル及びカートリッジ(例えばゼラチンから作成)は、化合物とラクトース又はデンプンなどの適切な粉末基剤との粉末混合物を含有するように配合することができる。
[0263] 吸入による局所投与の場合、本発明による化合物は、ネブライザを介してヒト又は動物用医薬品で使用するために送達することができる。
[0264] 本発明の薬学的組成物は、体積当たり0.01〜99%の重量の活性材料を含むことができる。例えば局所投与の場合、組成物は通常、0.01〜10%、さらに好ましくは0.01〜1%の活性材料を含有する。
[0265] 化合物は、小型単層ビヒクル、大型単層ビヒクル及び多層ビヒクルなどのリポソーム送達系の形態でも投与することができる。リポソームは、様々なリン脂質、例えばコレステロール、ステアリールアミン又はホスファチジルコリンから形成することができる。
[0266] 本発明の薬学的組成物又は単位量形態は、最適な活性を獲得しながら、特定の患者の毒性又は副作用を最小化するために、上記のガイドラインを鑑みて日常の試験によって規定された用量及び投与法に従い投与することができる。しかし、このような治療法の微調整は、本明細書で提供したガイドラインに鑑みて日常的なものである。
[0267] 本発明の化合物の用量は、基礎疾患の状態、個体の状態、体重、性及び年齢、及び投与様式などの様々な要素に従って変化することがある。障害を処置する有効量は、当業者に知られている経験的方法により、例えば投与の用量及び頻度のマトリクスを確立し、マトリクスの各点における実験単位又は対象の群を比較することによって、容易に決定することができる。患者に投与すべき正確な量は、障害の状態及び重症度及び患者の身体状態に応じて変化する。任意の症状又はパラメータの測定可能な寛解は、当業者が判定するか、患者が医師に報告することができる。尿路障害の何らかの症状又はパラメータの臨床的又は統計的に有意な減衰又は寛解は、本発明の範囲内であることが理解される。臨床的に有意な減衰又は寛解とは、患者及び/又は医師に知覚可能であることを意味する。
[0268] 投与すべき化合物の量は、約0.01mg/kg/日と約25mg/kg/日の間、通常は約0.1mg/kg/日と約10mg/kg/日の間、及び最も頻繁には約0.2mg/kg/日と約5mg/kg/日の間の範囲とすることができる。本発明の薬学的配合は、必ずしも障害の処置に有効である化合物の全量を含有する必要がないことが理解される。何故なら、複数の分割量のこのような薬学的配合を投与することによって、このような有効量に到達できるからである。
[0269] 本発明の好ましい実施形態では、化合物Iはカプセル又は錠剤で配合され、通常は10mg〜200mgの本発明の化合物を含有し、10mg〜300mg、好ましくは20mg〜150mg、最も好ましくは約50mgの合計1日量で患者に投与することが好ましい。
[0270] 非経口投与用の薬学的組成物は、100%重量の全薬学的組成物に基づき、重量で約0.01%〜約100%の本発明の活性化合物を含有する。
[0271] 通常、経皮投薬形態は100%全重量の投薬形態に対して重量で約0.01%〜約100%の活性化合物を含有する。
[0272] 薬学的組成物又は単位量形態は、単一1日量で投与することができるか、又は総1日量を分割した用量で投与することができる。また、障害を処置するために別の化合物の同時投与又は順次投与が望ましいことがある。そのために、組み合わせた活性原理を配合して、簡単な単位量にする。
本発明の化合物の合成
[0273] 式I、II、及びVIII及び鏡像異性体、ジアステレオマー、N−オキシド、及びその薬学的に許容可能な塩の化合物は、以降で概略する一般的方法で調製することができ、上記方法は本発明のさらなる態様を構成する。以下の説明では、R基は、他に言及していない限り、上記式の化合物について定義された意味を有する。
[0274] 化合物Iの調製に使用する中間体の保護誘導体を使用することが望ましい場合があることが当業者には認識される。官能基の保護及び保護解除は、当技術分野で知られている方法で実行することができる(例えばGreen及びWutsの、「Protective Groups in Organic Synthesis」(John Wiley and Sons, New York, 1999)を参照されたい)。水酸基又はアミノ基は、任意の水酸基又はアミノ保護基で保護することができる。アミノ保護基は、従来の技術で除去することができる。例えば、アルカノイル、アルコキシカルボニル及びアロイル基などのアシル基は、加溶媒分解によって、例えば酸性又は塩基性条件での加水分解によって除去することができる。アリールメトキシカルボニル基(例えばベンジルオキシカルボニル)は、パラジウム/チャコールなどの触媒が存在する状態で水素化分解によって分割することができる。
[0275] 標的化合物の合成は、最後から2番目の中間体に存在することがある保護基があれば全て、当業者に周知の標準的技術を使用して除去することにより終了する。次に、保護解除された最終産物を、必要に応じて、シリカゲルクロマトグラフィ、シリカゲルを使用したHPLCなどの標準技術を使用して、又は再結晶化によって精製する。上記化合物は、任意の合成経路を介して合成することができる。例えば、化合物は以下の方式(方式1)に従い調製することができる。
この方式は、本明細書で説明する類似体のラセミ混合物を生成することができる。追加のR1基を使用して他の類似体を生成することもできる。
[0276] 幾つかの実施形態では、類似体の1つの実質的に純粋な、又は純粋な鏡像異性体を生成するために、合成を非対称的に実行する。幾つかの実施形態では、本明細書で説明する化合物の非対称的合成は、方式2に従って調製される(*はキラル中心を示す):
[0277] 幾つかの実施形態では、本明細書で説明する化合物の非対称的合成は、方式3に従って調製される(*はキラル中心を示す):
[0278] 合成方式は、所望の最終産物に応じて変更することができる。「R」基は例示であり、本明細書で説明する任意の置換基で置換することができる。
[0279] 幾つかの実施形態では、式I及びIIの特定の化合物は、例えば方式4に示すエナンチオ選択的経路によって調製される。
[0280] 幾つかの実施形態では、シグマ−2拮抗物質は式VIIIの化合物である。式VIIIの特定の化合物は、対応するケトン中間体の還元アミノ化によって、例えば方式5に示す代表的経路によって調製することができる。
作業及び合成の実施例
実施例1及び2は、本明細書で説明するような実験に使用可能であるAベータオリゴマー製剤について説明する。膜輸送及びオリゴマー結合/シナプス減少アッセイに使用する特定の製剤、さらに以下で説明するインビボアッセイで使用する特定の製剤を、それぞれそれに関係する実施例で説明する。
実施例1:アミロイドβオリゴマーの調製
[0281] アミロイドβが会合可能な相手の水溶性タンパク質の環境である神経組織中でアミロイドβがオリゴマー化できる条件を再現し、アミロイドβオリゴマー及び原繊維の病気との関係が比較的高い構造状態を識別した。ラットの脳から超遠心分離によって水溶性タンパク質を調製した。詳細には、脳組織1グラム当たり5ボリュームのTBS緩衝剤(20mMのトリス−HCL、pH7.5、34mMのNaCl及び完全プロテアーゼ阻害物質カクテル(Samta Cruz))を氷上のラット脳組織に加えた。次にタイトフィット形乳棒で加圧型細胞破砕を実行した。細胞破砕した脳組織を150,000×gで1時間、4℃で遠心分離した(40,000rpm Ty65)。次に、(浮遊ミエリンと沈殿物の0.5cm上との間にある)下澄みを取り出し、アリコートを−75℃で凍結した。次に、沈殿物をTBS中で再懸濁して元の体積にし、アリコート中で−75℃で凍結した。合成単量体ヒトアミロイドβ1−42をこの混合物に添加して、1.5uMのアミロイドβの最終濃縮物にし、溶液を4℃で24時間インキュベートした。混合物の遠心分離を5,800gで10分間実施して原繊維集合体を除去し、6E10複合アガローススピンカラム(Pierce Chemical Company)を使用して4℃で24時間免疫沈降を実施した。次に、溶離したアミロイドβオリゴマーをMALDI−Tof質量分光測光分析にかけて、サンプルの内容を識別した(図1)。
[0282] アミロイドβは、タンパク質含有溶液中で自己会合して、22,599Daの5サブユニット五量体と31,950Daの7サブユニット七量体のサブユニット集合体を形成した。49,291Daにある別のピークは12サブユニット12量体を提示することがあるが、これはアミロイドβ12量体の場合、正確な分子量に見えないことがある。特に、アミロイドβ単量体及び二量体を表す4518Da又は9036Daにピークが観察されない。しかし、9,882Da及び14,731Daのピークは、それぞれ786Da(又は2×393Da)の脂質又はタンパク質と会合するアミロイドβ二量体、及び3×393Daの脂質又はタンパク質と会合するアミロイドβ三量体を表すことがある。また、19,686Daにピークが存在すると、それは4954Daのラットアミロイドβフラグメントと三量体複合体に関係する可能性がある集合状態を示す。したがって、これらのデータは、小さい脂質又はタンパク質と、生理系に独特なコンホメーション状態の集合を指向することがあるアミロイドβの二量体又は三量体との会合を反映していることがある。
実施例2:ベータ−アミロイドオリゴマーの調製
[0283] ラットの脳の可溶性タンパク質の混合物に1.5uMのモノマーヒトアミロイドβ1−42の溶液を入れて、実施例1で説明したように4℃で24時間インキュベートした。次に、スペクトルを得る前にこの溶液をトリフルオロエタノール(TFE)で処置した。TFE中では、集合タンパク質構造と非共有結合タンパク質複合体が変性タンパク質中に溶解し、集合オリゴマーに関連するピークが消失すると予想される。実施例1で観察されたタンパク質ピークの大部分が、上記識別した9822Da、14,731Da、31,950Da、及び49,291Daのピークを含めて消失した。しかし、4518Daには、アミロイドβモノマーピークを表す豊富なピークが観察される。4954.7のピークは明白であり、これはアミロイドβ1−46と同様の比較的長いAベータフラグメントを表すことがある。実施例1で説明した調製では存在しなかった7086Daに追加のピークが観察され、これは2550Daの共有結合タンパク質に会合したアミロイドβモノマーを表すことがある。
実施例3:本発明のアッセイに使用する方法
[0284] TBS可溶性抽出物:組織病理学的分析でBraak Stage V/VIのアルツハイマー病(AD)と特徴付けられたヒト患者からの死後脳組織のサンプルを、ロードアイランド病院の脳組織バンクから得た。年齢及び性に適合したAD及び正常な組織の試料を希釈して、1mMのEDTA及び1mg/mLの完全プロテアーゼ阻害物質カクテル(Sigma P8340)を含有する20mMのトリス−HCL、137mMのNaCl、pH7.6の1mL中に0.15gmの組織とし、均質化した。組織ホモジェネートの超遠心分離を105,000gで1時間、Beckman Optima XL-80K超遠心分離機で実施した。タンパク質A及びタンパク質Gアガロースカラム(Pierce Chemical)を使用して、その結果のTBS可溶性画分の免疫を除去し、次にAmicon Ultraの3、10及び100kDaのNMWCOフィルタ(Millipore Corporation)でサイズ分画した。
[0285] 免疫沈降:サイズ分画し、免疫を除去したTBS可溶性抽出物を、適切なNMWCO Amicon Ultraフィルタで約200uLに濃縮した。濃縮したTBS可溶性抽出物を、TBSサンプル緩衝剤(Pierce Chemical)で最大400uLまで希釈し、10分間5,800gで遠心分離して細繊維を除去した。その結果の上澄みを、次に6E10共役アガロースビーズで一晩、4℃で免疫沈降させ、次に浸透圧強度が高いGentle溶離緩衝剤(Pierce Chemical)を使用して抗原溶離させ、Aベータ含有タンパク質種を単離した。
[0286] MALDI−質量測光分析:Applied Biosystems(ABI)Voyager DE-Pro MALDI-Tof計器を使用して、免疫単離したベータアミロイドを質量測光分析にかけた。分析の標的分子量範囲に応じて、α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸(CHCA)、シナピン酸(SA)、又は6−アザ−2−チオシミン(ATT)などの様々なマトリクス型を使用して、サンプルを分析した。計器は、抽出遅延が可変の状態で直線正イオンモードで実行した。非蓄積スペクトルは、獲得1回当たり100ショットの「ホットスポット」を呈し、蓄積スペクトルは各スポットの12の別個の区域を呈し、獲得1回ごとに200のレーザショットがあった。
[0287] データ分析:Voyager's Data Explorerソフトウェアパッケージを使用してデータ収集及び分析を実行した。質量スペクトルの標準的処理には、信号対雑音比の変動に加えて、スペクトル及びベースライン減算ファンクションの平滑化が含まれた。
[0288] Ab数量化のためのELISA:修飾サンドイッチELISA技術を使用して、免疫沈降したTBS可溶性画分のAベータとAベータオリゴマーとの両方の「総」濃度を分析した。簡潔に言うと、6E10及び4G8でコーティングしたNunc MaxiSorpの96ウェルのプレートを、Aベータ含有サンプルでインキュベートし、次にBiotinylated 4G8検出抗体で探索した。Streptavidin-HRP(Rockland)でインキュベートした後、テトラメチルベンジジン(TMB)基質で現像すると、BioTEK Synergy HTプレート読み取り装置でAベータの比色検出(OD450)が可能になった。モノマーAベータ1−42を標準曲線の生成に使用し、これはGEN5ソフトウェアとともに免疫沈降サンプル中のAベータレベルの数量化を可能にした。[何が許容可能とされるのか?]
[0289]
実施例4:受容体結合アッセイの化合物IIは、その作用物質又は拮抗物質の結合又は作用を遮断することにより、幾つかの受容体と相互作用した。化合物IIを試験して、それが既知の細胞受容体又はシグナル伝達タンパク質と直接相互作用するか調べた。化合物II(10μM)に、細胞系で過剰発現した、又は組織から単離された任意のヒト受容体の既知の作用物質又は拮抗物質の結合を置換する能力があるか試験した。任意のヒト受容体の作用物質又は拮抗物質によって誘発された下流シグナル伝達を遮断する能力があるかも試験した。化合物IIの100の既知の受容体における作用を試験し、化合物IIは、これらの受容体のうち5個でしか50%を超える活性(アッセイの窓)を示さなかった(表A)。これは、化合物IIがCNS関連受容体の小さいサブセットでのみ特異性及び活性が高いことを示した。これは最高の親和性でシグマ−2受容体と結合し、したがってシグマ−2リガンドである。
[0290] 同じプロトコルを使用して、表2(下表)の化合物をそのシグマ−2受容体の認識について試験した。その結果により、化合物IIと構造的に類似したこれらの化合物が実際にシグマ−2リガンドである、すなわちシグマ−2受容体に優先的に結合することが確認された。
競合的放射リガンド結合アッセイ
[0291] 民間の受託調査機構により、シグマ−1受容体及びシグマ−2受容体の放射リガンド結合アッセイを実施した。シグマ−1の結合については、10uM〜1nMの様々な濃度の試験化合物を使用して、ジャーカット細胞膜上の内生受容体からの8nMの[3H](+)ペンタゾシンを置換した(Ganapathy ME他、1991、J Pharmacol. Exp. Ther. 289:251-260)。10uMのハロペリドールを使用して、非特異的結合を規定した。シグマ−2受容体については、100uM〜1nMの様々な濃度の試験化合物を使用して、300nMの(+)ペンタゾシンが存在する状態でラット大脳皮質の膜の内生受容体からの5nMの[3H]1,3−ジ−(2−トリル)グアニジンを置換し、シグマ−1受容体をマスキングした。(Bowen WD他、1993、Mol. Neuropharmcol 3:117-126)。10uMのハロペリドールを使用して、非特異的結合を規定した。Brandel 12R細胞ハーベスタを使用してWhatman GF/Cフィルタで急速濾過し、その後に氷冷緩衝剤で2回洗浄することにより、反応を終了させた。液体シンチレーション分析機(Tri-Carb 2900TR;PerkinElmer Life and Analytical Sciences)を使用して、乾燥したフィルタディスク上の放射能を測定した。置換曲線をプロットし、受容体サブタイプの試験リガンドのKi値を、GraphPad Prism (GraphPad Software Inc.、カリフォルニア州サンディエゴ)を使用して判定した。全結合(壊変毎分)と非特異的結合(壊変毎分)との差を全結合(壊変毎分)で割ることにより、特異的結合百分率を判定した。
[0292] 基準化合物については、脳組織のホモジェネートと[3H](+)ペンタゾシンを使用して、300nMの(+)ペンタゾシンが存在する状態でシグマ−1受容体及び[3H]1,3−ジ−(2−トリル)グアニジンからの置換を測定し、シグマ−2受容体からの置換を測定した公表された研究から、シグマ−1及びシグマ−2受容体の親和性を入手した。
[0293] 結果を表2に示す。
[0295] シグマ−1及びシグマ−2受容体における候補シグマ−2リガンド化合物の親和性は、既知の異なる標識付きシグマ−2又はシグマ−1リガンドの置換によっても判定した。以前に公表された手順に従い、濾過アッセイを実施した(Xu他、2005)。試験化合物を、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)又はエタノール中に溶解させ、次に150mMのNaCl及び100mMのEDTAを含有する50mMのトリス−HCl、pH7.4の緩衝剤中で希釈した。シグマ−1結合アッセイの場合はモルモットの脳から、シグマ−2結合アッセイの場合はラットの肝臓から膜ホモジェネートを作成した。膜ホモジェネートを50mMのpH8.0のトリス−HCl緩衝剤で希釈し、96ウェルのプレートで、総量150uLの0.1nM〜10uMの範囲の濃度の放射リガンド及び試験化合物で25℃にてインキュベートした。インキュベーションが終了した後、150uLの氷冷緩衝剤(10mMのトリスHCl、150mMのNaCl、pH7.4)を添加し、サンプルを収穫して、100uLの50mMのトリス−HCl緩衝剤に予め浸漬してある96ウェルのガラス繊維フィルタプレート(Millipore、マサチューセッツ州ビルリカ)で急速濾過した。各フィルタを、200uLの氷冷洗浄緩衝剤(10mMのトリス−HCl、150mMのNaCl、pH7.4)で4回洗浄した。Wallac 1450 MicroBeta 液体シンチレーションカウンタ(Perkin Elmer、マサチューセッツ州ボストン)を使用して、結合放射能を数量化した。
[0296] モルモットの脳膜ホモジェネート(約300ugのタンパク質)及び約5nMの[3H](+)−ペンタゾシン(34.9Ci/mmol、Perkin Elmer、マサチューセッツ州ボストン)を使用して、シグマ−1受容体結合アッセイを実施し、インキュベーション時間は90分で、室温であった。10μMの低温ハロペリドールを含有するサンプルで、非特異的結合を判定した。
[0297] シグマ−1部位を遮断する1uMの(+)−ペンタゾシンが存在する状態で、ラットの肝臓膜ホモジェネート(約300ugのタンパク質)及び約2nMのシグマ−2高選択的放射リガンド[3H]RHM−1のみ(他の遮断剤なし)(America Radiolabeled Chemicals Inc.、ミズーリ州セントルイス)、約10nMの[3H]DTG(58.1Ci/mmol、Perkin Elmer、マサチューセッツ州ボストン)又は約10nMの[3H]ハロペリドール(America Radiolabeled Chemicals Inc.、ミズーリ州セントルイス)を使用して、シグマ−2受容体結合アッセイを実施し、インキュベーション時間は[3H]RHM−1では6分、[3H]DTG及び[3H]ハロペリドールでは120分で、室温であった。10uMの低温ハロペリドールを含有するサンプルで、非特異的結合を判定した。
[0298] 非線形回帰分析を使用して、競合的阻害実験のデータをモデル化し、放射リガンドの特異的結合の50%を阻害する阻害剤の濃度(IC
50値)を判定した。チェン及びプルソフの方法を使用して、結合親和性、すなわちKi値を計算した。モルモットの脳の[
3H](+)−ペンタゾシンに使用するKd値は7.89nM、ラットの肝臓の[
3H]RHM−1及び[
3H]DTGではそれぞれ0.66nM及び30.73nMであった。品質保証には標準的な化合物のハロペリドールを使用した。化合物IXa、IXb及び化合物IIのシグマ−1及びシグマ−2受容体の親和性データを表3に示す。したがって、候補化合物のKi又はIC50を判定するために、当技術分野で知られているシグマ−2受容体結合アッセイのいずれも使用することができる。
実施例5:遺伝子組み換えマウスの記憶消失:モーリス水泳試験
[0299] 化合物IIを試験して、オリゴマーが年齢とともに蓄積するアルツハイマー病の比較的高齢の遺伝子組み換えマウスで、記憶消失を逆転できるか判定した。この研究のために、マウスのThy−1促進因子の制御下でヒトAPP751スウェーデン型(670/671)及びロンドン型(717)突然変異を発現したhAPPマウスを選択した。これらのマウスは、Aベータの量の年齢依存の増加を呈し、3〜6カ月でプラークの発現が開始し、8月齢で認知欠損の定着を呈した。この研究では、欠損の発生を防止するのではなく、既に定着した欠損を処置した。これらの研究は、雇用契約に従い、実験条件を知らない科学者によって実施された。化合物は、0.5及び0.1mg/kg/日で1カ月間、8月齢のメスのマウスに皮下ミニポンプで注入し、海馬系の空間学習及び記憶試験であるモーリス水迷路で認知能力を試験した。このマウスモデルはニューロン消失を呈さず、したがって記憶回復をアポトーシスの忌避に帰すことはできない。
[0300] モーリス測定の一部として泳ぐ速度を分析し、運動又は意欲の欠損がないか判定した。そのビヒクルは5%のDMSO/5%のSolutol、90%の食塩水の混合物である。遺伝子組み換え動物は、低用量(0.1mg/kg/日)及び高用量(0.5mg/kg/日)の化合物で処置した。4連続日のそれぞれで1日毎の試験3つの平均を求めた。いかなる種類の重大な運動欠損も異常挙動も検出されず、研究の過程で組み換え遺伝子ビヒクル群から1匹のみ失われ、これはその月齢の予想死亡率レベルより低かった。また、化合物の血漿レベルを監視するために、定期的に血液を抜き取った動物の標識群を維持し、これは予備的PK研究で見られた血漿レベルからの変化が非常に小さかった。
[0301] モーリス水迷路試験から逃避潜時を測定した。試験の2日目に、野生型と遺伝子組み換え動物との間に有意の差が観察され、野生型の学習速度が遺伝子組み換え型より高かった。この日に、高い方の化合物用量対ビヒクルで、遺伝子組み換え能力の大幅な改善も観察された。したがって、0.5mg/kg/日で投与された化合物IIは、ADの遺伝子組み換えモデルの認知能力を改善できるとの結論に達した。
[0302] Aベータ42はシナプス数を18%減少させ、この100%の消失は、化合物II及びその鏡像異性体によって解消される。化合物IIと同様に、幾つかの他のシグマ−2受容体拮抗物質もシナプス消失を遮断する。既知の先行技術のシグマ−2受容体リガンドNE−100及びハロペリドールは、シナプス消失を完全に解消するが、選択的シグマ−1のSM−21は、シナプス消失の解消に弱い活性しかなかった(20%回復)。
[0303] 同様のアッセイを使用して、化合物IXa及びIXbの混合物も試験した。化合物IXa及びIXbの混合物(1mg/kg/日、N=8又は10mg/kg/日、N=8)又はビヒクル(5%のDMSO/5%のSolutol/90%の食塩水、N=15)を、皮下投薬(Alzetミニポンプ)を介して9月齢のオスhAPPSL遺伝子組み換えマウス(N=8)又は非遺伝子組み換え同腹子(N=6)に20日間全身投与し、モーリス水迷路中でこれらのマウスの空間学習及び記憶を評価した。処置の最後の4日間で、マウスが1日3回の試験で潜伏プラットホームを発見するよう試験した。コンピュータ化した追跡システムが逃避潜時、すなわち泳いだ長さを自動的に数量化した。
[0304] 任意の試験日に遺伝子組み換え動物と非遺伝子組み換え動物との能力に任意の差はなかった(分析はこれらの2群に限定された;反復処置での2元(遺伝子型及び時間)ANOVAの後、ボンフェローニの事後試験)。遺伝子組み換え群に限定された同様の分析(処置及び時間)は、10mg/kg/日の化合物IXa及びIXbの混合物で処置した遺伝子組み換え動物が、ビヒクルで処置した遺伝子組み換え動物よりも試験2日目及び4日目に大幅に優れた能力であることを示した(p<0.05、スチューデントのt検定で分析)。ビヒクルで処置した非遺伝子組み換え動物は、ビヒクルで処置した遺伝子組み換え動物よりも試験の1日目及び2日目に大幅に優れた能力であった。化合物IXa及びIXbの混合物での処置は、ビヒクル処置と比較して、遺伝子組み換え動物の能力を試験の1日目(両方の用量)、2日目(10mg/kg/日の用量)及び4日目(10mg/kg/日の用量)で大幅に改善した(p<0.005;泳いだ長さ)。
[0305] これは、化合物IXa及びIXbの混合物が、用量に依存した方法で老齢の遺伝子組み換え動物の学習及び記憶における定着した挙動欠損を逆転できることを実証する。
[0306] 化合物IIの結果に基づき、その構造的類似性、及び本明細書で開示する本発明の化合物がシグマ−2リガンドであり、膜輸送アッセイで活性であるか、活性になると予想され、オリゴマー結合及びシナプス減少アッセイで活性であるか、活性になると予想されることに基づき、式I及びII中の化合物はこの記憶消失試験で同様に作用すると予想される。同様に、式VIIIの化合物は、化合物IXa及びIXbと同様に作用する。
実施例6:膜輸送アッセイによるニューロン細胞へのAベータオリゴマー効果の阻害
[0307] 上記表2のシグマ−2リガンドを、細胞に対するアミロイドβの効果を阻害する能力について試験した。シグマ−2リガンドは、膜輸送アッセイで測定して、アミロイドベータの効果を阻害することができた。結果を以下の表5に示す。このアッセイの原理は以下の通りである。
[0308] 最も早期のステージのアルツハイマー病ではシナプス及び記憶欠損が優勢で、広範囲の細胞死は優勢ではないことから、これらの変化を測定するアッセイは、オリゴマー活性の小分子阻害物質を発見するのに特に非常に適している。MTTアッセイは、培養物中の毒性の尺度として頻繁に使用される。黄色いテトラゾリウム塩は細胞に取り込まれ、エンドソーム経路内で紫の不溶性ホルマザンに還元される。紫のホルマザンのレベルは、培養物中で活発に代謝する細胞の数の反映であり、ホルマザン量の減少は、培養物中の細胞死又は代謝毒性の尺度と見なされる。顕微鏡で観察すると、細胞を充填する細胞内小胞中で紫のホルマザンが最初に見える。時間の経過とともに、小胞が開口分泌され、不溶性ホルマザンが水性媒質環境に曝露するにつれ、ホルマザンが血漿膜の外面上に針状血漿として沈降する。Liu及びSchubert(’97)は、細胞が、還元ホルマザンの開口分泌速度を選択的に加速することにより、亜致死レベルのAベータオリゴマーに応答する一方、取り込み速度には影響しないことを発見した。本発明の発明者は、培養物中で成熟1次ニューロンのこれらの観察結果を再現し、自動化した顕微鏡及び画像処理によってこれらの形態シフトを数量化した。これらの状況で、還元ホルマザンの総量に全体的変化はなく、その形成及び/又は細胞からの排出の速度の変化を反映する形態の単なるシフトである。本発明の発明者は、このアッセイが、細胞死を引き起こさない低レベルのオリゴマーに対して敏感であるという以前の発見を確認した(Liu及びSchubert、’04、Hong他、’07)。実際、LTPの阻害につながる少量のオリゴマーは、細胞死につながらず(Tong他、’04)、培養物中(又は脳切片中)のホルマザンの総量を変化させないと予想される。
[0309] 他の研究者が提示した証拠は、膜輸送に仲介されたニューロン表面の受容体発現のAベータオリゴマー仲介の減少が、シナプス可塑性(LTP)、したがって学習及び記憶のオリゴマー阻害の電気生理学的尺度のベースであることを示唆する(Kamenetz他、’08、Hseih他、’06)。ホルマザンの形態シフトを介してオリゴマーにより誘発された膜輸送速度の変化を細胞系で使用し、齧歯類のAベータ脳レベルをインビボで低下させる(Hong他、’09)Aベータオリゴマー遮断薬(Maezawa他、’06、Liu及びSchubert、’97、’04、’06、Rana他、’09、Hong他、’08)を発見した。文献で、開口分泌アッセイ/MTTアッセイの同様の手順が見られる。例えばLiu Y.他の、「Detecting bioactive amyloid beta peptide species in Alzheimer's disease」(J Neurochem. 2004 Nov;91(3):648-56)、Liu Y.及びSchubert D.の、「Cytotoxic amyloid peptides inhibit cellular 3-(4,5-dimethylthiazol-2-yl)-2,5-diphenyltetrazolium bromide (MTT) reduction by enhancing MTT formazan exocytosis」(J Neurochem. 1997 Dec;69(6):2285-93)、及びLiu Y.及びSchubert D.の、「Treating Alzheimer's disease by inactivating bioactive amyloid beta peptide」(Curr. Aliheimer Res. 2006 Apr;3(2):129-35)を参照されたい。したがって、このアプローチは妥当である。
[0310] 本開口分泌アッセイは、インビトロで3週間増殖させた成熟1次ニューロン培養物で使用するように適応させた。参照により全体が本明細書に組み込まれているWO/2011/106785号を参照されたい。Aベータオリゴマーは、Cellomics VTI自動顕微鏡システムを使用した画像処理を介して測定した状態で、紫の還元ホルマザンで満たされた細胞内小胞(穿刺液)の量の用量依存の減少を引き起こす。例えば、図1A(ホルマザンで満たされた小胞を示す、ビヒクルのみに曝露した培養ニューロン細胞を示す顕微鏡写真)を図1B(ホルマザンで満たされた小胞が大幅に少なくなり、代わりに細胞外環境に遭遇すると沈降して結晶になるホルマザンの開口分泌を示す、ビヒクルとAベータオリゴマーに曝露したニューロン細胞の顕微鏡写真)と比較されたい。Aベータオリゴマーの量が増加すると、最終的に毒性が顕性になる。したがって、アッセイに使用する神経刺激性Aベータオリゴマーの濃度は、細胞死を引き起こす濃度よりはるかに低い。本発明の発明者は、抗Aベータ抗体を添加するとAベータオリゴマーの効果が遮断されるが、抗体のみでは独自の効果がないことを示すことにより、アッセイが有効であることを確認した(データは示さず)。この方法で構成すると、Aベータオリゴマーの非致死的効果を阻害する化合物の作用を介するのがオリゴマーの分解にせよ、オリゴマーとニューロンとの結合阻害にせよ、オリゴマー結合によって開始する作用のシグナル変換メカニズムの反作用にせよ、これらの化合物を検出することができる。
[0311] 膜輸送/開口分泌(MTT)アッセイで結果を出すために使用した方法は以下の通りである。
[0312] E18 Sprague-Dawleyラットの胎児からの1次海馬ニューロンを、384ウェルのプレートに入れ、NB媒質(Invitrogen)中で最適化した濃度で平板培養した。ニューロンを培養物中に3週間維持し、NB媒質にN2栄養補助剤(Invitrogen)を週2回補給した。これらのニューロンは、成熟脳のニューロンに特徴的なシナプスタンパク質の完全補体を発現し、活性依存の電気シグナル伝達の複雑なネットワークを呈する。このような培養物中のニューロン及びグリアは、無傷の脳回路との優れた重ね合わせを呈する分子シグナル伝達ネットワークを有し、その理由から、この20年間以上、学習及び記憶のモデルシステムとして使用されてきた(例えばKaech S、Banker G.の、「Culturing hippocampal neurons」(Nat Protoc. 2006;1(5):2406-15. Epub 2007 Jan 11)を参照されたい。Craig AM、Graf ER、Linhoff MW.の、「How to build a central synapse: clues from cell culture」(Trends Neurosci. 2006 Jan;29(1):8-20. Epub 2005 Dec 7. Review)も参照されたい)。
[0313] 試験化合物を100uM〜0.001nMの範囲の濃度で細胞に添加し、その後にビヒクル又はAベータオリゴマー製剤(Aベータタンパク質合計濃度3μM)を添加して、5%のCO2中で37℃にて1時間〜24時間インキュベートした。MTT試薬(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2イル)−2,5ジフェニル臭化テトラゾリウム)(Roche Molecular Biochemicals)を、リン酸緩衝食塩水で5mg/mLに再構成した。10μLのMTT標識付け試薬を各ウェルに添加し、37℃で1時間インキュベートして、次に映像化した。自動顕微鏡及び映像処理で開口分泌を評価し、取り込んだホルマザン及び開口分泌したホルマザンの量を数量化した。
[0314] 各アッセイプレートを、各プレートにAベータオリゴマーがあるか、又はない状態で化合物を試験するようにフォーマット化した。この設計により、スクリーニングカスケード内で(1次スクリーンのレベルにて)前もって毒性又は代謝活性化合物が除去される。細胞内小胞内に還元ホルマザンが最初に見えた。Aベータオリゴマーにより、最終的なホルマザン開口分泌が加速した。図1A及び図1Bはニューロンの顕微鏡写真の例であり、第一は最初にホルマザンが見える細胞内小胞の例、第二は開口分泌により押し出された紫の不溶性着色剤で覆われたニューロンの例である。着色剤が培養物の水性環境に沈降し、ニューロンの表面上に針状結晶を形成した。
15マイクロモルの化合物IIが存在する状態で、図1Bで捕捉された膜輸送変化が遮断され(図1C参照)、図1Cの細胞はビヒクル処置したニューロンから区別不能である。さらに、化合物IIのこの効果は、化合物IIの添加が、細胞がAベータオリゴマーに曝露する前か後かに依存するように見え、これは治療効果、さらに予防効果を示す。図1Dを参照されたい。これは、化合物II又はIXa、IXbの混合物の様々な量を添加する前(図1D)、又は添加した後(図1E)に添加した様々な量のAベータオリゴマーが存在する状態で、化合物II濃度のログに対して画像処理で見られる小胞百分率として表された膜輸送変化のプロット(用量応答曲線)である。図1D及び図1Eの左下の円はAベータオリゴマーのみを示す。塗りつぶした四角形はビヒクルのみを示す。オリゴマーの前に添加した場合(予防モード)、化合物IIはEC50=2.2uMでオリゴマー効果を遮断し、化合物IXa、IXbはEC50=4.9uMでオリゴマー効果を遮断する。オリゴマーの後に添加した場合(処置モード)、化合物IIはEC50=4.1uMでオリゴマー効果を遮断し、化合物IXa、IXbはEC50=2.0uMでオリゴマー効果を遮断する。いずれの場合も、化合物II又はIXa、IXbの混合物はそれぞれ、このアッセイに見られるAベータオリゴマーの膜輸送効果を遮断する。2つの構造的に別個の系列(II及びIXa、IXb)からの選択的で高親和性のシグマ−2受容体拮抗物質化合物の用量が上昇すると、オリゴマー効果が停止し、培養物がビヒクル処置した培養物にさらに類似して見えるようになる。
[0315] 図1Eは、ホルマザンで満たされた小胞の百分率の同様の用量反応プロットであるが、様々な量(0はダイヤモンド形で示し、1.1uMは下向きの三角形で示し、3.2uMは上向きの三角形で示し、9.7uMは塗りつぶした四角形で示す)の化合物IIが存在する状態でAベータの濃度に対するプロットである。その結果の曲線は、化合物IIの量の増加に対して右側にシフトし、同じ標的に対するAベータオリゴマーと化合物IIとの競合を示して、これはこのアッセイでAベータオリゴマーによって引き起こされる膜輸送の変化を仲介する。化合物IIの量が増加すると、Aベータオリゴマーの見かけの効能(したがって毒性)が低下し、この結果は、本発明以前には示されていなかったと本発明の発明者は考える。実際、これらの結果に基づき、Aベータオリゴマーの毒性に抗する本発明の化合物のような化合物は、アルツハイマー病で見られるようなアミロイド毒性関連の認知低下の治療様式及び(非常に早期のステージの)予防様式として有望である。
[0316] 図1F及び図1Gに見られるように、膜輸送アッセイで合成Aベータオリゴマーを投薬し、ここでこれは820nMのEC50を呈した。選択的な高親和性シグマ−2受容体拮抗物質化合物薬品の候補II及びIXa、IXbそれぞれの幾つかの濃度に対して、各濃度のAベータを試験し、これはそれぞれEC50をほぼ2桁、右方向にシフトさせた。データを古典的な線形及び非線形モデルに当てはめると、データはシルド分析で線形であった(ヒル勾配nHは1)。これは、シグマ−2受容体化合物が、膜輸送を仲介する標的の化合物に対してオリゴマーと化合物との間に真の薬理学的競合を呈することを示す。アルツハイマー病患者の脳から誘導したAベータオリゴマーを、図1J及び図1Kに示すようにこれらの化合物に対して投薬し、これも化合物曝露によって右方向へのシフトも呈した。特に、有効用量の化合物II及びIXa、IXbは合成オリゴマー(図1F、図1G、シルド勾配=−0.75、−0.51)及びヒトのアルツハイマー病患者から誘導したオリゴマー(図1J、図1K)の両方と薬理学的競合を呈する。その正味効果は、これら2つの選択的で高親和性のシグマ−2受容体拮抗物質化合物の候補薬品によって、Aベータオリゴマーのシナプス毒性が効果的に低下することであり、これらは、今日までにこの特性を実証したことを本発明者が認識した唯一の治療である。理論に拘束されることなく、実現可能で最も簡単な作用機序は、シグマ−2受容体化合物が競合的受容体拮抗物質として作用することである。
[0317] 関連する実験では、0又は20μMの化合物II鏡像異性体の効果に基づき、用量反応曲線(小胞百分率対Aベータオリゴマー濃度)の右方向へのシフトが観察された。以下の表4を参照されたい。(+)鏡像異性体は、Aベータオリゴマーの濃度が高くなると有効性が高くなることが示された。
[0318] 上記表4に示すように、20uMの鏡像異性体対0uMの鏡像異性体(すなわちAベータオリゴマーのみ)のAベータオリゴマー濃度に対する小胞約分立の用量反応曲線における右方向のシフトは、Aベータオリゴマーの濃度が高い方の(+)鏡像異性体の方が大幅に顕著である(図1F及び図1Gも参照)。
実験の対照標準:
[0319] 公開された方法により作成されたAベータ1−42を、正の対照標準として使用した。[例えばDahlgren他の、「Oligomeric and fibrillar species of amyloid-beta peptides differentially affect neuronal viability」(J Biol Chem. 2002 Aug 30;277(35):32046-53. Epub 2002 Jun 10.)、LeVine H.3rdの、「Alzheimer's beta-peptide oligomer formation at physiologic concentrations」(Anal Biochem. 2004 Dec 1;335(1):81-90)、Shrestha他の、「Amyloid beta peptide adversely affects spine number and motility in hippocampal neurons」(Mol Cell Neurosci. 2006 Nov;33(3):274-82. Epub 2006 Sep 8)、Puzzo他の、「Amyloid-beta peptide inhibits activation of the nitric oxide/cGMP/cAMP-responsive element-binding protein pathway during hippocampal synaptic plasticity」(J Neurosci. 2005 Jul 20;25(29):6887-97)、Barghorn他の、「Globular amyloid beta-peptide oligomer - a homogenous and stable neuropathological protein in Alzheimer's disease」(J Neurochem. 2005 Nov;95(3):834-47. Epub 2005 Aug 31)、Johansson他の、「Physiochemical characterization of the Alzheimer's disease-related peptides A beta 1-42 Arctic and A beta 1-42wt.」(FEBS J. 2006 Jun;2 73(12):2618-30)を参照されたい]。さらに、脳から誘導したAベータオリゴマーを使用した(例えばWalsh他の、「Naturally secreted oligomers of amyloid beta protein potently inhibit hippocampal long-term potentiation in vivo」(Nature (2002). 416, 535-539)、Lesne他の、「A specific amyloid-beta protein assembly in the brain impairs memory」(Nature. 2006 Mar 16;440(7082):352-7)、Shankar他の、「Amyloid-beta protein dimers isolated directly from Alzheimer's brains impair synaptic plasticity and memory」(Nat Med. 2008 Aug;14(8):837-42. Epub 2008 Jun 22)を参照されたい)。以上で引用され、全体が参照により本明細書に組み込まれている特許文献に記載された製剤など、任意のAベータオリゴマー製剤を対照標準として本アッセイに使用できることに留意されたい。
[0320] このことは、特にアルツハイマー病患者の脳から単離されたオリゴマー製剤を含め、様々なAベータオリゴマー製剤を使用した膜輸送アッセイで示された。様々なAベータオリゴマー製剤の効能は異なる(例えば自然のアルツハイマーの分離株は合成製剤のいずれよりも効能が高い、試験データは示さず)が、結果は性質が同じである。すなわち、オリゴマーによって仲介される病理に化合物IIが、したがって本発明の他の化合物が対抗する。オリゴマーは、界面活性剤を使用せずに死後のヒトの海馬又は前前頭皮質から単離され、6ピコモルのKdで用量依存的に膜輸送を阻害した。ヒトのアルツハイマー病患者から誘導したAベータオリゴマー(137pM、図1Hの2番目の棒)は、ビヒクル(図1Hの1番目の棒)と比較して統計的に有意な膜輸送の阻害を生成した。化合物II(3番目の棒)は、ADの脳から誘導したAベータオリゴマーによって誘発された膜輸送欠損を消失させるが、Aベータが存在しない状態で投薬した場合は、輸送に影響しない(4番目の網かけ棒)。データは3件の実験の平均である(n=3)。
[0321] 黒い棒で示した化合物IIが余分に存在する状態で(15uM、図1Jの3番目の棒)、オリゴマーが誘導する膜輸送欠損は完全に消失する。CT0109は、独自に投薬された場合は膜輸送に重大な影響を与えない(図1Jの黒い斜めの棒)。
[0322] 対照的に、年齢相応の正常な認知の個体から採取した同じ死後脳領域から単離したオリゴマーは、137pMに対して90pMと、組織の重量1グラム当たりの濃度が一般的に低くなり(図1F、2番目の棒)、ビヒクルに対して膜輸送の大幅な欠損を生じない(図1F、1番目の棒)。これらの状態で、化合物IIは、オリゴマーとともに、又は単独で投薬された場合に効果がない(図1F、それぞれ3番目及び4番目の棒)。この場合も、データは平均値である(n=3、但し2番目の棒ではn=5)。
[0323] 負の対照標準は、ビヒクルで処置したニューロン、さらに28μMという超生理的濃度のメマンチンで処置したニューロンを含む。メマンチンはこの用量で50%のオリゴマー効果の阻害を生じる。各プレートのこれらの対照標準は、プレート毎のアッセイ性能を較正する正規化ツールの働きをする。
1次ニューロン培養物
[0324] 読み取り値として開口分泌アッセイを使用するAベータオリゴマーに対する細胞応答、及び培養物中のニューロンに対するグリアの相対的割合の組織免疫化学的分析に基づいて最適な細胞密度を決定する。培養物は、週単位で監視して組織免疫化学及び画像処理に基づいて数量化し、ニューロンである培養物対グリア(グリア細胞)の百分率を監視する。インビトロのスクリーニング日齢21日(21DIV)でニューロン(1:5000(濃度は可変)のMAP2に対する(ニワトリポリクローナル)抗体(ミリポア)で陽性に染色)に対して20%を超えるグリア(GFAPに対して陽性)を含有する培養物は拒絶される。
Aベータオリゴマー製剤
[0325] ヒトアミロイドペプチド1−42を、California Peptideなどの幾つかの民間供給業者から、品質管理分析を条件としたロットの選択で入手した。オリゴマー製剤の品質管理は、オリゴマーのサイズ範囲及び相対的濃度を判定するウェスタン法と、毒性がない開口分泌の加速を確認するMTTアッセイとで構成される。毒性は、画像ベースの各アッセイで、DNA結合青色着色料DAPI(Invitrogen)で視覚化した核形態の数量化により監視した。フラグメント化した核は、後期ステージのアポトーシスと見なされ(Majno及びJoris、’95)、試験は拒絶される。ニューロン上で標準的な1.5uMの濃度で普通ではないペプチドのサイズ範囲又は重大な毒性を生じるペプチドのロットも拒絶される。
[0326] プレートベースの対照標準−アッセイの最適化は、再フォーマットしたプレートが、日常的にビヒクルとAベータオリゴマー処置のニューロンとの間で統計学的に有意な2重分離の最小値を達成し(p<0.01、スチューデントのt検定、不等分散)、プレート間のCVが10%以内である場合に完全と見なされる。
統計ソフトウェア及び分析:
[0327] データの取扱い及び分析は、Cellomics VTI画像分析ソフトウェア及びSTORE自動データベースソフトウェアで遂行した。培養3週間後で動作範囲が小さく、ウェル毎にニューロンが変動するので、対のTukey-Kramer分析で統計的に比較して、化合物+AベータオリゴマーをAベータのみから、及び化合物のみをビヒクルから区別することの重要性を判定する。成熟した1次ニューロンが、成体脳の電気生理学的に仲介されたシグナル伝達ネットワークをさらに密接に近似する能力により、このスクリーニング方式が正しいとされる。幾つかの反復スクリーニングウェルについて、偽陰性を最小化するパワー分析を設定した(例えばN=4)。本発明の試験化合物は、Aベータオリゴマーが膜輸送に及ぼす影響を大幅に逆転させるが、ニューロン代謝自体には影響しない。
[0328] Aベータオリゴマーを添加する前に、本明細書で説明するMTTアッセイで下表にて示したような式I、II及びVIII中の化合物を投薬し、これは指示されたEC
50でAベータオリゴマー誘発の膜輸送欠損を遮断することを示した。詳細には、これらの結果は、化合物が、マイクロモル濃度でAベータオリゴマーがニューロン細胞の膜輸送に与える活性/効果を遮断する/軽減することを示す。
[0329] 表5の化合物は、指示されたEC50でAベータオリゴマー誘発の開口分泌の加速を遮断することが示された。したがって、表5の化合物は、Aベータオリゴマーが仲介する膜輸送の変化を大幅に遮断した。これらの結果は、化合物が、Aベータオリゴマーがニューロン細胞に与える活性/効果を遮断する/軽減し、シグマ−2リガンドを使用して、Aベータオリゴマー誘発の膜輸送異常を遮断できることを示す。
実施例7:薬物動態研究及び代謝安定性研究
[0330] 最初の薬物動態研究は、民間の受託調査機関によってマウスのミクロソームで実施された。研究は、参照により本明細書に組み込まれているObach, R.S他(1997)のJ. Pharmacol. Exp. Ther.,283: 46-58に従って実施した。試験した表2の化合物の半減期は2〜72分の範囲であり、残りの化合物の半減期はほぼ同じ範囲になると予想される。
[0331] ミクロソームの半減期の結果を表6に示す。
[0332] 結果は、試験した化合物の幾つかが、マウス肝ミクロソーム中で化合物IIよりも大幅に長い半減期を有したことを示す。この結果は、これらの化合物を経口投与した後、生物学的利用能が大きくなることを予示する。上述した膜輸送アッセイで同じ化合物を試験し、その活性を報告した。
[0333] 化合物の固有クリアランス速度は速く、初回通過代謝が相当であることを示唆する。薬物動態特性を改善するために、代謝安定性を増大させ、薬物様特性を改善する追加の化合物を設計した。ミクロソーム安定性の実験及び血漿安定性の実験を実施し、候補化合物の代謝及び肝安定性を判定した。
[0334] 第2のPK研究をインビボで実施し、これは様々な経路で急性又は慢性的に投与した試験化合物について、血漿レベル及び脳レベルを測定することを含んでいた。
HPLC−MSの最適化
[0335] 各試験化合物の溶液を調製し、シリンジポンプを介して一定速度でTSQ Quantum分光計(Fisher Thermo Scientific)の線源に注入した。全走査MS(質量分光法)分析を実施し、正電離モードと負電離モードの両方で試験化合物毎に全イオン電流クロマトグラム及び対応する質量スペクトルを生成した。正又は負の質量スペクトルから、個々のイオン発生数の関数として、MS/MSの前駆イオンを選択した。さらに、定量分析に使用する適切な選択フラグメント反応を判定するために、生成物イオンMS/MS分析を実施した。成分の複合体混合物中に存在する場合に、試験化合物を数量化する能力を最大化するために、最終反応監視パラメータを選択した。各試験化合物に使用される特異的SRM遷移を識別した後、TSQ Quantum化合物最適化ワークスペース内の自動プロトコルを使用して、検出パラメータを最適化した。最後に、適切なLCカラム上に分析物を注入して分離し、必要に応じて勾配条件を調整することによって、LC−MS分析に使用するクロマトグラフィ条件を識別した。
IV投薬の配合:
[0336] 最初に、pH7.4のリン酸緩衝食塩水(PBS)中での試験化合物の可溶性を目視検査で評価した。化合物が標的濃度で可溶性であった場合、PBSをビヒクルとして使用した。(化合物がPBS中で完全に可溶性ではない場合は、IV投薬に適合する他のビヒクルを評価することができる。このようなビヒクルには特にDMSO、ポリエチレングリコール(PEG 400)、Solutol HS 15、及びCremophor ELが含まれる。)本明細書で報告する実験では、1ボーラス、すなわち10mg/kgの化合物IIを静脈内投与した。
[0337] 経口投薬の配合:最初に、PBS中の試験化合物の可溶性を評価した。化合物が標的濃度で可溶性である場合、PBSをビヒクルとして使用した。(試験化合物が個々の濃度にてPBSで完全に可溶性にならない場合は、DMSO/Solutol HS 15/PBS(5/5/90、v/v/v)、又はDMSO/1%メチルセルロース(5/95、v/v)を使用することができる。)
血漿中の直線性
[0338] 血漿のアリコートに、規定濃度にて試験化合物を加えた。アセトニトリル沈殿を使用して加えたサンプルを処理し、HPLC−MS又はHPLC−MS/MSで分析した。ピーク領域対濃度の較正曲線を作図した。数量化下限(LLQ)とともに、アッセイの報告可能な線形範囲を求めた。
血漿サンプルの生物学的定量分析
[0339] アセトニトリル沈殿を使用して血漿サンプルを処理し、HPLC−MS又はHPLC−MS/MSで分析した。血漿較正曲線を作成した。薬品を含まない血漿のアリコートに、規定濃度レベルにて試験化合物を加えた。同じ手順を使用し、加えた血漿サンプルを未知の血漿サンプルとともに処理した。処理した血漿サンプル(乾燥抽出物)は通常、HPLC−MS又はHPLC−MS/MS分析まで凍結保存した(−20℃)。乾燥抽出物を適切な溶媒中に再構成し、遠心分離後にHPLC−MS又はHPLC−MS/MSで分析した。ピーク領域を記録し、個々の較正曲線を使用して未知の血漿サンプル中の試験化合物の濃度を求めた。数量化下限(LLQ)とともに、アッセイの報告可能な線形範囲を求めた。
[0340] 研究に使用した動物は、それぞれ体重20〜30gのオスのC57BL/6マウス、又は体重180〜250gのオスのSprague-Dawleyラットであった。投与条件及び時点毎に3匹を処置し、したがって各動物は1回しか採血しなかった。化合物の皮下投与は腹腔内注射で遂行した。経口投与は胃管栄養法で遂行した。静脈内投与は頚静脈カテーテルを介して遂行した。
[0341] 様々な濃度で化合物を投与した後、10分、30分、60分、120分、240分、360分、480分及び1440分で血漿サンプルを採取した。
マウス及びラットからの血漿サンプル採取
[0342] 心臓穿刺(マウス)又は頚静脈カテーテル(ラット)による血液採取のために、全身性吸入麻酔(3%イソフルラン)により動物を鎮静させた。リチウムヘパリンでコーティングした管で血液アリコート(300〜400μL)を採取し、静かに混合して、次に氷に載せておき、採取から1時間以内に2,500×gで15分間、4℃で遠心分離した。次に血漿を回収し、さらに処理まで−20℃で凍結状態を維持した。
動物投薬デザイン−インビボ PK−カニューレ挿入せず絶食していない動物
群1:SC、時点毎にn=3匹(合計24匹)、又は
IV、時点毎にn=3匹(合計24匹)
群2:PO、時点毎にn=3匹(合計24匹)
群3:対照標準動物(薬品を含まない血液用)、マウスn=5匹
各動物で1回採血し、1回脳採取した。
[0343]動物からの血液サンプル採取
[0344] 血液サンプリング直後に、動物を断頭して全脳を迅速に取り出し、常温食塩水(0.9%NaCl、g/mL)で洗浄して、表面血管系を破断し、ガーゼで拭き取って計量し、採取から1時間以内にさらに処理するまで氷に載せておいた。各脳を、Power Gen 125を使用して、氷上で1.5mLのpH7.4の常温リン酸緩衝食塩水(マウス=1.5mL、ラット=)中で10秒間均質化した。次に、さらに処理するまで各脳からの脳ホモジェネートを−20℃で保存した。
脳サンプルの直線性
[0345] 脳ホモジェネートのアリコートに、規定濃度の試験化合物を加えた。各脳アリコートに、等量の冷却26%(g/mL)中性デキストラン(Sigmaからの平均分子量65,000〜85,000、カタログ番号D−1390)溶液を添加し、13%の最終デキストラン濃度を得た。ホモジェネートを54000×gで15分間、4℃で遠心分離した。その後、アセトニトリル沈降を使用して上澄みを処理し、HPLC−MS/MSで分析した。ピーク面積対濃度の較正曲線を作図した。数量化下限(LLQ)とともに、アッセイの報告可能な線形範囲を求めた。
[0346]脳サンプルの定量分析
各脳ホモジェネートのアリコートに、等量の冷却26%(g/mL)中性デキストラン(Sigmaからの平均分子量65,000〜85,000、カタログ番号D−1390)溶液を添加し、13%の最終デキストラン濃度を得た。ホモジェネートを54000×gで15分間、4℃で遠心分離した。その後、アセトニトリル沈降を使用して上澄みを処理し、HPLC−MS/MSで分析した。脳較正曲線を作成した。薬品を含まない脳ホモジェネートのアリコートに、規定濃度レベルの試験化合物を加えた。加えた脳ホモジェネートのサンプルを、同じ手順を使用して未知の脳ホモジェネートのサンプルとともに処理した。処理した脳サンプルをLC−MS/MS分析まで−20℃で保存し、分析時にはピーク面積を記録し、個々の較正曲線を使用して未知の脳サンプル中の試験化合物の濃度を求めた。数量化下限(LLQ)とともに、アッセイの報告可能な線形範囲を求めた。
脳浸透
[0347] 脳中の試験化合物の濃度(ng/g組織)及び血漿中濃度(mg/mL)、さらに各時点における脳中濃度と血漿中濃度の比率をLC−MS/MSで求め、上述したように報告した。
薬物動態
[0348] 化合物の血漿濃度対時間のプロットを作図した。WinNonlin(Pharsight)を使用した血漿データの非区画解析(NCA)から、経口及び皮下投薬後の化合物の基本的薬物動態パラメータ(AUClast、AUCINF、T1/2、Tmax及びCmax)を得た。非区画解析には、薬物についても代謝物についても特定の区画モデルを仮定する必要がない。NCAによって、血漿濃度−時間曲線下面積を測定するために台形公式を適用することができる(Gabrielsson, J.及びWeiner, D、「Pharmacokinetic and Pharmacodynamic Data Analysis: Concepts and Applications」(Swedish Pharmaceutical Press. 1997))。
報告用語の定義
[0349] 曲線下面積(AUC)−変化せず、体循環に到達した総量の尺度。曲線下面積は、濃度対時間をプロットし、各台形の増分面積を合計することによって計算した幾何学的尺度であった。
[0350] WinNonlinは、面積を計算するために2つの計算法を有する。すなわち線形台形法及び線形対数台形法である。線形台形法は、濃度−時間曲線の下降部分で偏倚した結果がでて、AUCを過大評価することがあるので、WinNonlinはAUCの計算に線形対数の選択肢を提供する。デフォルトでは、血漿濃度−時間曲線の残りの部分でTmax後の面積を測定するには、対数線形台形法を使用した。
[0351] AUClast:投薬時間から最終観察時間までの数量化限界より大きい曲線下面積。
[0352] AUCINF:投薬時間から無限まで外挿した曲線下面積。
[0353] Cmax−薬物の経口又は非IV投与後で投薬時間と最終観察時点との間で得た最大血漿薬物濃度。
[0354] Tmax−薬物投与後に最大血漿濃度(Cmax)が観察された時間を分で表したもの。
[0355] T1/2−IV及び非IV投与の両方からの末端排出半減期。
[0356] ここでラムダZ(z)は、血漿濃度−時間曲線の末端(対数−線形)部分に関連する1次速度定数である。zは、時間対対数濃度の線形回帰によって推定した。
[0357] 結果は、0.1〜0.5mg/kgの範囲の用量で急性又は慢性(5日間に1日1回)投与した場合に、化合物は生物学的利用能が高く、脳浸透性が高いことを示した。化合物IIの急性投与の結果を図2Aに示す。図2Aは、化合物の血漿レベルを左のy軸上にng/mLの単位で示すグラフである。脳レベルは、右側のy軸上に緑でng/gの単位で示す。x軸は、時間ゼロにおけるボーラスIV又はSC投与の後の時間を示す。10mg/kgで急性IV投与した後、化合物IIは高い脳濃度に到達し、投与後180分でまだ171ng/gの濃度(白抜きのダイヤモンドで示したインビボの脳有効量の57倍)を有していた。急性SC投与後も同様のパターンであった。化合物Bは、非経口投与では同レベルの生物学的利用能を示したが、経口経路では生物学的利用能が有意に高かった。試験した化合物は両方とも、BBB浸透性が明白に高いことが判明し、化合物IIは脳/血漿比率が3時間で8であった。
[0358] 化合物Bの結果、及び化合物IIの急性投与の結果を表7に示す。
[0359]
[0360] この表に示すように、化合物Bの経口生物学的利用の及び他のPKパラメータは、化合物IIより改善されている。
[0361] 0.1、0.35及び0.5mg/kg範囲の用量では、5日間にわたる慢性投与で化合物IIの相対的に安定した血漿レベルが得られ、脳の曝露が良好で、急性設定と同様の脳/血漿比率になる。結果を図2Bに示す。図2Bは、様々な量の化合物II(下向きの塗りつぶした三角形は0.5mg/kg/日、上向きの塗りつぶした三角形は0.35mg/kg/日、塗りつぶした四角形は0.1mg/日)を1日1回皮下投与した後に血漿中で(左縦座標)、及び同じ量の化合物II(それぞれ下向きの白抜きの三角形、上向きの白抜きの三角形、及び白抜きの四角形)をSC投与した後に脳中で(右縦座標)得た薬物動態データのプロットである。
[0362] 化合物Bの脳レベル測定値は、化合物IIよりピーク濃度が低かったが、持続性レベルは高かった。3時間の時点で、脳中の化合物IIの量は、化合物IIで求められた50ng/mLの有効用量よりPOの場合はほぼ40倍、SCの場合は60倍高い。しかし、化合物IIの3時間時点は、なおその化合物の有効量よりSCで3倍より高い(データは示さず)。
[0363] 化合物IXaとIXbの混合物は、1mg/kgでマウスに静脈内投与した場合、2.7時間の半減期を示した。しかし、化合物を5mg/kgで経口投与すると、血漿中に示した薬物量は無視できる値であった。化合物IXa及びIXbの混合物にマウスの肝ミクロソームの薬物標準を加えたその後の研究(表6)では、混合物の半減期が8.7分、固有クリアランスが267microL/分/mgの値になり、混合物が初回通過代謝の影響を受けることを示した。一般的に、CNS活性化合物は低い値から中位の値の固有クリアランス率を有する経口がある(CLint≦100microL/分/mg)(Wager他、’10)。13のCNS活性薬物のヒト肝ミクロソーム安定性データは、平均半減期が51±29分であった(Orbach、’99)。したがって、化合物IIが初回通過代謝を改善するための妥当な目標は、T1/2>30分及びCLint≦100microL/分/mgとなる。化合物IXa、IXbは、表8に示すように特定の既知の薬物と比較して同等の肝安定性を呈した。
[0364]
実施例8:Aベータ1−42オリゴマー結合及びシナプス消失アッセイ
[0365] 本アッセイでは、Aベータオリゴマーを培養物中の成熟1次ニューロンと接触させ、その結合を免疫組織化学(抗Aベータ抗体)で判定し、画像処理で数量化した。神経炎上の標識付けした点の数を数えることにより、神経樹状突起中のAベータの量を評価する。Aベータオリゴマーは、1次培養物中に海馬ニューロンの有意なパーセンテージ(30〜50%)で存在するシナプス後ニューロンに飽和状態で(Kd約400nM;Lauren, 2009)、且つ高い親和性で結合することが知られ(Lacor他、2004;Lambert他、2007)、このことは、アルツハイマー病患者の脳におけるAベータ結合の観察結果と良好な相関を示す(Lambert他、2007)。この標識付けはシナプスに関連し、シナプス後骨格タンパク質PSD−95と共存する(Lacor他、’04)。Aベータオリゴマーは、脳切片のヒト海馬ニューロン中で18%と報告された(Schef他、2007)シナプス消失の仲介を実行し、長期残留記憶(LTP)を阻害することも知られている。シナプスの数は、このアッセイで免疫蛍光検査で数量化することもできる。結合アッセイの同様の手順が文献に見られる。例えばLook GC.他の、「Discovery of ADDL--targeting small molecule drugs for Alzheimer's disease」(Curr Alzheimer Res. 2007 Dec;4(5):562-7. Review)を参照されたい。
[0366] ニューロン表面に結合したAベータの量の測定を、以下の機序のうち1つ又は複数を介して作用する化合物を識別するための2次スクリーンとして使用することができる。すなわち、神経表面に結合するAベータオリゴマーを妨害するか、オリゴマー自体の変更を実行(逆作用又はオリゴマー分裂)することによってAベータの効果を遮断するか、又はオリゴマーが結合する表面受容体を変更すること(アロステリック修飾又は古典的受容体拮抗作用)である。これらの化合物を、下流シグナル伝達事象に作用する化合物と区別することもできる。したがって、このアッセイは、ニューロンに対するAベータオリゴマーの非致死的効果を特徴とする疾病状態にとって適切であり、本発明の発明者が臨床的に適切な化合物を識別するために使用するスクリーニングカスケードの一部を形成する。重要なことは、本明細書で開示する化合物の一つ、すなわち化合物IIが、膜輸送アッセイ及びこの結合/シナプス消失アッセイで活性であり、アルツハイマー病の2つの異なる遺伝子組み換えモデルで、及び誘発モデルでも活性であることが判明したことである。したがって、膜輸送アッセイばかりでなくこれも、臨床的に適切な化合物の識別に有用であり、インビボの結果に予測値を有するようである。このアッセイの予測妥当性は、本発明の範囲外の化合物を使用して化合物特性を予測する能力を実証することにより確認されている。
[0367] 1次海馬ニューロン培養物を、上記膜輸送アッセイのように設け、(10−8〜30マイクロモルの濃度の)化合物IIをプレートに添加し、今後試験すべき他の化合物を(10−8〜30マイクロモルの濃度で)添加して、その後に飽和結合に到達する濃度のAベータ1−42オリゴマー含有製剤を添加した。試験する化合物での前処理は1時間かかり、70uLの最終濃縮物中にAベータオリゴマーを添加するか、オリゴマーがない(ビヒクルのみの)状態にし、その後にさらに23時間インキュベートした。
[0368] プレートを、リン酸緩衝食塩水中で3.7%のパラホルムアルデヒドで固定し、次にプレートをPBSで3回、5分ずつ洗浄した。プレートは、PBS中の5%のヤギ血清及び0.5%のTriton X-100中で1時間のRTにて遮断した。1次抗体(抗−MAP2ポリクローナル、Millipore #AB5622及び抗ベータアミロイド6E10モノクローナル、Covance #SIG-39300、1マイクログラム/mL、及びウサギポリクローナル抗シナプトフィジン、Anaspec、0.2マイクログラム/mL)を5%のヤギ血清中でPBSで1:1000に希釈した。1次抗体を4℃で一晩インキュベートした。次にプレートをPBSで3回、5分ずつ洗浄した。2次抗体(Alex Flor 488ポリクローナル、Invitrogen #A11008及びAlexa Flor 647モノクローナル、Invitrogen #A21235)を、5%のヤギ血清中でPBSで1:1000に希釈した。2次抗体を1時間のRTでインキュベートした。プレートをPBSで1回洗浄した。次に、DAPI(4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール、Invitrogen)を0.03ug/uLで適用し、5分のRTでインキュベートして、次にPBSで洗浄した。結果は、予想されるように、Aベータオリゴマーが、以下で説明するように調製して、使用する製剤に応じて3又は1μMで投薬した場合、赤い着色料で明らかになるようにシナプスにてニューロンに結合することを示す。早期アルツハイマー病のヒトでは、海馬のシナプス数は年齢相応の正常な認知の個体と比較して18%減少していることが示されており(Scheff他、’07)、この結果もこのアッセイでは、蛍光点の、したがってシナプス数の20%回帰によって視覚化することができる。しかし、化合物II(15uM)が同時存在すると、Aベータ結合が基本的に対照標準のレベルまで減少し、緑の蛍光が影響されず、シナプス数が減少しなかったことを示す。図3A〜図3Fを参照されたい。図3AのパネルAでは、Aベータ42オリゴマーがシナプス後突起に結合し、図3AのパネルBはシナプス前棘が1位ニューロン中のシナプトフィジンで標識付けされることを示す(21DIV)。図3AのパネルC及びDは、IXa、IXbを培養物に添加した場合の、基本的に対照標準のレベルのシナプス後棘及びシナプスをそれぞれ示す。図3Cの棒グラフで量的に示すように、単独で添加されたAベータ42オリゴマーは、ビヒクルのみの場合(1番目の棒)と比較して、24時間後に(計算値で)シナプトフィジン点の密度に20%の減少を引き起こした(4番目の棒)。この消失は化合物II又はIXa、IXb(5番目又は6番目の棒)によって逆転し、この結果は統計的に有意であった。Aベータオリゴマーが存在しない状態では、化合物IXa、IXbも化合物IIもシナプス数(網かけした棒)に影響せず、対照標準(ビヒクルのみ)と同等のレベルを維持する。目盛り棒=20um。p<0.001、ANOVA。図3D(p<0.001、ANOVA)も棒グラフであり、Aベータ点で計算したままのAベータ結合強度は、化合物II又はIXa、IXbの存在下では18%低下することを示すが、それでもこの減少は、この化合物の存在下でシナプス数が対照標準のレベルに到達できるのに十分である。
[0369] また、点状シナプスAベータオリゴマー結合は、化合物IXaとIXbの混合物の存在下で、濃度依存の状態で38%低下し、IC50は1.2μMである(データは示さず)。点強度のヒストグラムにより、正常な2頂結合集団(明るい点があるニューロン、及びそれほど明るくない点がある集団)は、薬物の存在下で左側にシフトすることが明白である(データは示さず)。Aベータオリゴマー結合の部分阻害は、LTP機能を100%復活させると報告されている(Strittmatter SM他、「Cellular Prion Protein Mediates Impairment of Synaptic Plasticity by Amyloid-Beta oligomers」(Nature (2009) 457(7233:1128-32)))。さらに、図3Cに示すように、Aベータオリゴマー(4番目の棒)は、24時間後のシナプトフィジン点の密度にビヒクル処理(1番目の棒)と比較して20%の低下を引き起こし、これは5μMの化合物IXaとIXbの混合物によって逆転した(5番目の棒)。Aベータが存在しない状態(2番目の棒)で、化合物IXaとIXbの混合物はシナプス数に影響しない。Aベータオリゴマーはシナプス数に18.2%の減少を引き起こし、5μMの化合物IXa、IXb又はIIによってこの消失の100%が解消される。化合物IXaとIXbの混合物は、Aベータで標識付けした点の密度に17.7%の低下を引き起こし(図3D)、IC50は1.21uMである。
[0370] DAPIで視覚化した核は、正常な形態を呈し、神経変性が存在しないことを示した。この手順は、式I〜IXに含まれる化合物から選択された追加の試験化合物、さらに以上でシグマ−2リガンドと説明された他の化合物で繰り返される。
Aベータオリゴマー製剤:
[0371] ヒトアミロイドペプチド1−42を、品質管理分析を条件としたロットの選択で、California Peptideから入手した。Aベータ1−42オリゴマーは、上述したように公表された方法に従い作成した。[例えばDahlgren他の、「Oligomeric and fibrillar species of amyloid-beta peptides differentially affect neuronal viability」(J Biol Chem. 2002 Aug 30;277(35):32046-53. Epub 2002 Jun 10.)、LeVine H. 3rdの、「Alzheimer's beta-peptide oligomer formation at physiologic concentrations」(Anal Biochem. 2004 Dec 1;335(1):81-90)、Shrestha他の、「Amyloid beta peptide adversely affects spine number and motility in hippocampal neurons」(Mol Cell Neurosci. 2006 Nov;33(3):274-82. Epub 2006 Sep 8)、Puzzo他の、「Amyloid-beta peptide inhibits activation of the nitric oxide/cGMP/cAMP-responsive element-binding protein pathway during hippocampal synaptic plasticity」(J Neurosci. 2005 Jul 20;25(29):6887-97)、Barghorn他の、「Globular amyloid beta-peptide oligomer - a homogenous and stable neuropathological protein in Alzheimer's disease」(J Neurochem. 2005 Nov;95(3):834-47. Epub 2005 Aug 31)、Johansson他の、「Physiochemical characterizati
on of the Alzheimer's disease-related peptides A beta 1-42 Arctic and A beta 1-42wt」(FEBS J. 2006 Jun;2 73(12):2618-30)を参照されたい。]さらに脳由来のAベータオリゴマーである(例えばWalsh他の、「Naturally secreted oligomers of amyloid beta protein potently inhibit hippocampal long-term potentiation in vivo」(Nature (2002). 416,535-539)、Lesne他の、「A specific amyloid-beta protein assembly in the brain impairs memory」(Nature. 2006 Mar 16;440(7082):352-7)、Shankar他の、「Amyloid-beta protein dimers isolated directly from Alzheimer's brains impair synaptic plasticity and memory」(Nat Med. 2008 Aug;14(8):837-42. Epub 2008 Jun 22)を参照されたい。]オリゴマー製剤の品質管理は、オリゴマーのサイズ範囲及び相対的濃度を判定するウェスタン法と、毒性がない開口分泌の加速を確認するMTTアッセイとで構成される。毒性は、画像ベースの各アッセイで、DNA結合着色料DAPI(Invitrogen)で視覚化した核形態の数量化により監視した。フラグメント化した核は、後期ステージのアポトーシスと見なされ、試験は拒絶される(Majno及びJoris、「Apoptosis, oncosis, and necrosis. An overview of cell death」(Am J Pathol 1995;146:3-16))。ニューロン上で標準的な濃度で普通ではないペプチドのサイズ範囲又は重大な毒性を生じるペプチドのロットは拒絶される。
対照標準
[0372] オリゴマー製剤での抗Aベータ抗体6E10の前吸着は、用量依存式に(7.84×10−6で)シナプス結合を阻害し、正の対照標準として使用される。抗体は1:1000(1マイクログラム/mL)で使用した。シナプス消失アッセイの場合、NMDA拮抗物質ジゾシルピン(MK−801)を、80uMで正の対照標準として使用する。
画像処理
[0373] 画像は、Neuronal Profilingアルゴリズムを使用し、Cellomics VTI自動顕微鏡プラットホームで捕捉し、解析した。統計解析のために、不等分散とのTukey-Kramer対比較を使用した。
ウェスタンブロット
[0374] Aベータ1−42を含有するサンプルを、非還元レーンマーカサンプル緩衝剤(Pierce #1859594)で希釈した(1:5)。30マイクロリットル(μL)のサンプルを、18個のウェルが予備成形された4〜15%のトリス−HClゲル(BIORAD #345-0028)に装填した。125ボルト(V)でトリス−グリシン緩衝剤を使用し、BIO-RAD Critdan予備成形ゲルシステム中で電気泳動を90分間実施した。ゲルを、トリス−グリシン/10%メタノール緩衝剤中の0.2μMのニトロセルロース膜上に30Vで120分間ブロットした。膜をPBS溶液中で5分間煮沸し、TBS/5%乳溶液で一晩、4℃で遮断した。膜を、TBS/1%乳溶液中に10μg/mLまで希釈した6E10−HRP(Covance #SIG-39345)で1時間、室温でプローブ探索した。膜を3回、毎回TBS/0.05%のtween-20の溶液で40分間洗浄し、ECL試薬(BIO-RAD #162-0112)で5分間現像した。Alpha Innotech FluorChem Q定量撮像システムで画像収集を実施し、Alphaview Qソフトウェアで解析した。
活性
[0375] 化合物IIは、結合アッセイにより、ニューロンに対するAベータオリゴマーリガンドの結合を約25%、部分的に遮断することが示され、これらの本明細書で詳細に開示した化合物から選択した化合物は、それを示すことが予想される。
[0376]
実施例9:恐怖条件付けアッセイ
[0377] 恐怖条件付けとして知られる記憶依存性の挙動タスクの動物モデルで、化合物IIを試験した。試験プロトコルは、公開されたプロトコルに基づいて設計した(例えばPuzzo D、Privitera L、Leznik E、Fa M、Staniszewski A、Palmeri A、Arancio O、「Picomolar amyloid-beta positively modulates synaptic plasticity and memory in hippocampus」(J Neurosci. 2008 Dec 31 ;28(53):14537-45.)を参照されたい)。文脈的記憶の形成は、海馬などの中葉側頭葉構造の完全性に依存する。このアッセイでは、特定の無音状況(条件付き刺激;CS)は、嫌悪イベント、この場合は軽度のフットショック(条件なし刺激;CS)を伴うことを記憶するように、マウスを訓練した。良好な学習を示す動物は、同じ状況に戻すとすくみ反応の増加を表現する。このすくみは、新規の文脈条件では存在しない。この文脈条件におけるすくみの増大は、動物に強度の海馬依存性記憶形成があることを示す。恐怖条件付けで試験した記憶は、可溶性Aβの上昇に敏感である。化合物IIは、膜輸送に対するAベータオリゴマー仲介の効果を停止するのに有効であった。Aベータオリゴマーの投与前に動物に投与した場合、化合物IIは用量依存的に記憶に対するオリゴマーの効果を遮断した。化合物は、2ピコモルの用量で、オリゴマー仲介の記憶欠損を完全に遮断した。
[0378] 実際、図4に示すように、化合物IIは記憶におけるAベータオリゴマー誘発欠損を完全に除去した(黒い棒)が、単独で投薬した場合は記憶に影響しなかった(網かけ棒)。Aベータオリゴマーのみの効果を赤い棒で示す。また、図5に示すように、化合物IXaとIXbの混合物は同様の結果を提供した。この挙動的有効度により、膜輸送アッセイが、オリゴマーに引き起こされる挙動記憶消失の治療にどの化合物が有効であるかを予想できることが実証される。記憶の恐怖条件付けモデルを本明細書で説明するように実施した。いかなる用量でも、回避行動の変化は観察されなかった。したがって、膜輸送アッセイにおけるこの化合物の能力と、恐怖条件付けアッセイにおけるその能力との間に相関があり、後者は記憶消失の指標となる。表2に列挙した化合物は、恐怖条件付けアッセイで活性になり、したがって記憶消失の処置に有効であると示されることが予想される。恐怖条件付けモデルにおける化合物の能力と、記憶消失の処置におけるその有用性との相関は、文献で確立されている(Delgado MR、Olsson A、Phelps EA、「Extending animal models of fear conditioning to humans」(Biol. Psychol. 2006 Jul;73(1):39-48))。
実施例10.ラット、アカゲザル及びヒトの死後脳サンプルでのオートラジオグラフィ研究
[0379] シグマ−2及びシグマ−1受容体リガンドの神経学及び薬理学的プロファイリングのためのオートラジオグラフィ映像研究を、Xu他(2010)によって以前に報告されているプロトコルを修飾して実施した。参照により本明細書に組み込まれているXu J、Hassanzadeh B、Chu W、Tu Z、Vangveravong S、Tones LA、Leudtke RR、Perlmutter JS、Mintun MA、Mach RHの、「[3H]4-(Dimethylamino)-N-[4-(4-(2-methoxyphenyl)piperazin-1-yl)butyl]benzamide, a selective radioligand for dopamine D(3) receptors. II. Quantitative analysis of dopamine D3 and D2 receptor density ratio in the caudate-putamen」(Synapse 64: 449-459(2010))。参照により本明細書に組み込まれているXu J、Tu Z、Jones LA、Wheeler KT、Mach RHの、「[3H]N-[4-(3,4-dihydro-6,7-dimethoxyisoquinolin-2(1 H)-yl)butyl]-2-methoxy-5-methylbenzamide: a Novel Sigma-2 Receptor Probe」(Eur. J. Pharmacol, 525: 8-17 (2005))の方法により、標識付けしたRHM−1を入手した。
[0380] ラット、アカゲザル及び死後のヒトの脳から厚さ20μMの脳切片を、Micromクリオトームを使用して切断し、スーパフロストとガラススライド(Fisher Scientific、ペンシルベニア州ピッツバーグ)に載せ、本研究には大脳皮質及び海馬の脳領域を通る連続切片を使用した。脳切片は、シグマ−2受容体の分布を撮像するためにシグマ−1受容体遮断(+)−ペンタゾシンが存在する状態で、5nMのシグマ−1受容体プロファイリング用の[3H](+)−ペンタゾシン、4nMのシグマ−2受容体特徴付け用の[3H]RHM−1のみ、10nMのDTG及び[3H]ハロペリドールでインキュベートし、放射リガンドで30分間インキュベートした後、脳切片含有ガラススライドを1分間ずつ5回、氷冷緩衝剤で洗浄した。
[0381] スライドを乾燥させ、自由側を銅箔テープでコーティングすることにより導電性にし、次に気体検出器Beta Imager 2000Z Digital Beta Imaging System(Biospace、フランス)のガス室[アルゴンとトリエチルアミンの混合物(Sigma-Aldrich、米国)]に入れた。気体が十分に混合し、均質な状態に到達した後、高品質の画像が観察されるまで、24時間〜48時間、さらに曝露した。総放射能定量分析のために、すなわちcpm/mm2〜nCi/mg組織に変換するために、同時に基準として[3H]Microscale(American Radiolabeled Chemicals, Inc.、ミズーリ州セントルイス)で計数した。解剖学的関心領域(ROI)に関して、すなわち皮質及び海馬の領域の定量的放射能摂取量(cpm/nlln2)を得るために、プログラムBeta-Image Plus(BioSpace、フランス)で定量分析を実施した。対応する放射リガンドの比放射能及び標準的[3H]Microscaleからの較正曲線に基づき、結合密度をfmol/mg組織に正規化した。これら4つの放射リガンド、すなわち[3H](+)−ペンタゾシン、[3H]RHM−1、[3H]DTG及び[3H]ハロペリドールに関する定量オートラジオグラフィを使用して、結合部位に対して競合する候補化合物の一連の希釈物(10nM、100nM、1,000nM及び10,000nM)を試験し、次に特異的結合(%対照標準)を分析して、皮質及び海馬の領域(歯状回、海馬CA1及びCA3)における結合親和性を導出した。
[0382] シグマ−1及びシグマ−2受容体のオートラジオグラフィを、それぞれ図8A及び図8Bに示す。図6Cは、(A)正常な患者、レビー小体型認知症(DLB)患者、又はアルツハイマー病(AL)患者のヒト前頭皮質切片の[3H]−(+)−ペンタゾシン(シグマ−1受容体リガンド)のオートグラフィ、及び(B)対照標準と比較した特異的結合のグラフを示す。図6Aに示すように、シグマ−1受容体は正常な対照標準と比較して、アルツハイマー病及び場合によってはDLBで統計的に下方制御される。この所見は、早期アルツハイマー病でシグマ−1受容体の密度が低下したことを報告したMishina他の所見を裏付ける。Mishina他、2008、「Low density of sigma 1 receptors in early alzheimer's disease」(Ann. Nucl Med 22: 151-156)。図6Bは、(A)正常な患者、レビー小体型認知症(DLB)患者、又はアルツハイマー病(AL)患者のヒト前頭皮質切片の[125I]−RHM−4(シグマ−2受容体リガンド)のオートグラフィ、及び(B)対照標準と比較した特異的結合のグラフを示す。シグマ−2受容体は、ADでは統計的に下方制御されていない。図6Cは、(A)サルの前頭皮質、サルの海馬又はヒトの側頭皮質の18.4nMの[3H]−RHM−1がシグマ−2リガンドに置換されること、及び(B)それぞれ1μMのシラメシン及び化合物IXA、IXB及びJが存在する、及び存在しない状態での[3H]−RHM−1の結合密度のグラフを示す。シラメシン及び化合物IXA、IXB及びIIは、標的組織中で[3H]−RHM−1を部分的に置換する。
実施例11.MTSアッセイ:様々なシグマ−2リガンドの作用物質又は拮抗物質活性の判定
[0383] 以下に示す化合物の細胞毒性を、Cell Titer96 Aqueous One Solution Assay(Promega、ウィスコンシン州マディソン)を使用して判定した。簡潔に言うと、シグマ−2受容体選択的リガンドで処置する前日に、MDA-MB-435又はMDA-MB231又はSKOV-3細胞をウェル当たり細胞2000個の密度で96ウェルのプレートに接種した。24時間処置した後、Cell Titer 96 AQueous One Solution Reagentを各ウェルに加え、プレートを37℃で2時間インキュベートした。プレートをVictor3プレート読み取り装置(PerkinElmer Life and Analytical Sciences、コネチカット州シェルトン)で490nmにて読み取った。EC
50値は、未処置細胞に対して細胞生存度を50%阻止するために必要なシグマリガンドの濃度と定義され、各細胞系の用量応答曲線から判定された。作用物質としてシラメシンを認めた。シグマ−2リガンドの作用物質及び拮抗物質を、以下のように定義した。すなわち、シグマ−2リガンドのEC50がシラメシンのEC50の2倍未満の場合、このシグマ−2リガンドを作用物質と見なす。シグマ−2リガンドのEC50がシラメシンのEC50の2倍と10倍の間である場合、このシグマ−2リガンドを部分作用物質と見なした。シグマ−2リガンドのEC50がシラメシンのEC50の10倍より大きい場合、このシグマ−2リガンドを拮抗物質と見なす。研究に使用するシグマ−2リガンドは、作用物質(シラメシン及びSV119)、部分作用物質(WC26)、拮抗物質(RHM−1)、及び候補化合物(II及びIXa、IXb)である。結果を図9Aに示す。図7Aからのデータを表9に示す。
[0384] ニューロン培養物を様々な濃度のシグマ化合物で24時間処置し、ビヒクルと比較して核強度を測定した。シグマ−2作用物質(シラメシン、SV−119、WC−26)は、試験濃度で核強度を低下させなかったシグマ−2拮抗物質(RHM−1、IXa、IXb及びII)とは対照的に、ニューロン中に甚大な異常核形態を引き起こした。したがって、シグマ−2受容体作用物質は、ニューロン及び癌細胞にとって細胞毒性であったが、シグマ−2受容体拮抗物質は毒性ではなく、さらに、シグマ−2受容体作用物質が引き起こした細胞毒性を遮断した。
実施例12:カスパーゼ−3アッセイ。シグマ−2リガンドの作用物質又は拮抗物質活性の判定。
[0385] 本明細書で説明するように、Xu他はPGRMC1タンパク質複合体を推定上のシグマ−2受容体結合部位であると識別した(Xu他、2011、Nature Commun. 2、論文番号380、参照により本明細書に組み込まれている)。シグマ−2受容体作用物質は、カスパーゼ−3依存の細胞死を誘発することができる。Xu他(2011)は、PGRMC1がシグマ−2受容体作用物質WC−26によるカスパーゼ−3活性を調節する能力を検査する機能アッセイを開示している。
[0386] Aベータオリゴマーは、低レベルのカスパーゼ−3活性を引き起こし、LTDに至る。高レベルのAベータオリゴマー及びカスパーゼ−3活性は細胞死につながる(Li 他、2010;Olsen及びSheng、2012)。本明細書で、シグマ−2受容体作用物質(SV−119、シラメシン)が腫瘍細胞及びニューロン中でカスパーゼ−3を活性化することを実証した。例えば図8A及び図8Bを参照されたい。シグマ−2受容体拮抗物質RHM−1は腫瘍細胞中の活性を阻害する(図8A)が、この実験では、ニューロン中の作用物質SV−119による活性化を遮断することができなかった(図8B)。試験化合物II及びIXa、IXb(全て以下で示すようにシグマ2受容体拮抗物質である)は、腫瘍細胞中のカスパーゼ−3の活性化を阻害し、ニューロン中のカスパーゼ−3のシグマ−2受容体作用物質SV−119活性を遮断することができた。したがって、試験化合物II及びIXa、IXbは、本実施例で実証したように、カスパーゼ−3アッセイでは腫瘍細胞及びニューロン中でシグマ−2受容体拮抗物質として作用した。
[0387] Caspase-3 Colorimetric Activity Assay Kit(Milipore、マサチューセッツ州ビレリカ)を使用し、製造業者のプロトコルに従って、シグマ−2受容体リガンドによる内在性カスパーゼ−3の活性を測定した。簡潔に言うと、MDA−MB435又はMDA−MB231細胞を0.5×106個の細胞、100mmの皿で平板培養した。平板培養後24時間で、シグマ−2リガンドを培養皿に添加し、カスパーゼ−3活性を誘発した。シグマ−2リガンドの最終濃度はそのEC50であった。処置後24時間で、細胞を回収し、300uLの細胞溶解緩衝剤に溶解させ、10,000×gで5分間遠心分離した。上澄みを採取し、カスパーゼ−3基質、すなわちDEVD−pNAで2時間、37℃でインキュベートした。タンパク質濃度は、Dcタンパク質アッセイキット(Bio-Rad、カリフォルニア州ハーキュリーズ)を使用して判定した。その結果の遊離pNAを、Victor3マイクロプレート読み取り装置(PerkinEliner Life and Analytical Sciences、コネチカット州シェルトン)を使用し、405nmで測定した。試験したリガンドには、シグマ−2作用物質(シラメシン、SV119、WC26)、及びシグマ−2拮抗物質、RHMWU−I−102(RHM−1)、及び候補化合物(II及びIXa、IXb)が含まれた。カスパーゼ3を活性化したリガンドを作用物質と見なし、カスパーゼ3を活性化しなかったリガンドを拮抗物質と見なした。図8Aに示すように、シグマ−2作用物質シラメシンはカスパーゼ−3活性を誘発し、シグマ−2拮抗物質RHM−1及び候補化合物II及びIXa、IXbはカスパーゼ−3活性を誘発しなかった。図8Bはシグマ−2作用物質SV−119によるカスパーゼ−3の活性化を示し、これは化合物IXa、IXb及びIIによって遮断される。化合物IXa、IXb及びIIは、癌細胞及びニューロンの両方でシグマ−2拮抗物質のように挙動した。
実施例13.治療表現型
[0388] 幾つかの実施形態では、本開示は挙動有効性を予測するインビトロアッセイのプラットホームを提供する。(1)高親和性でシグマ−2受容体に選択的に結合し、(2)ニューロン中で機能拮抗物質として作用し、Aβ誘発膜輸送欠損を遮断するという挙動効力を有するように予測される化合物は、Aβ誘発シナプス消失を遮断し、Aベータオリゴマーが存在しない状態で輸送又はシナプス数に影響しない。インビトロアッセイにおけるこの活性パターンを、「治療表現型」と呼ぶ。Aベータオリゴマーが存在しない状態で正常な機能に影響せず、成熟ニューロン中でAベータオリゴマーの効果を遮断するシグマ−2受容体拮抗物質の能力が、治療表現型の1つの基準である。オリゴマーが存在しない状態で輸送又はシナプス数に影響する化合物は、挙動的に有効ではない。正常な輸送に影響したり、シナプス数を変更したりせずに、オリゴマーを選択的に遮断する化合物のみが、Aベータオリゴマー誘発記憶消失の予防及び処置に挙動的に有効である。一実施形態では、インビトロアッセイのプラットホームは挙動効力を予測することができる。したがって、プラットホームアッセイにおけるこの活性パターンは治療表現型である。
例えば、表10Aを参照されたい。
[0389] 要するに、シグマ−2受容体に親和性が高く(好ましくは約600nM未満、約500nM未満、約400nM未満、約300nM未満、約200nM未満、約150nM未満、約100nM未満、又は約70nM未満のKi)、シグマ受容体に対して他の非シグマCNS又は標的受容体と比較して約20倍より大きい、約30倍より大きい、約50倍より大きい、約70倍より大きい、又は好ましくは100倍より大きい選択性を有し、脳浸透性及び良好な代謝及び/又は血漿安定性などの良好な薬物様特性を有し、治療表現型を保有するシグマ−2拮抗物質は、挙動効力を有すると予測され、必要とする患者でAベータオリゴマー誘発シナプス不全の処置に使用することができる。
[0390] 経口生物学的利用能を有すると予想され、インビトロアッセイで特徴付けられた幾つかの化合物II類似体の機能的ニューロン表現型を、図10Bに示す。
実施例14:インビトロ毒性
[0391] 代表的なシグマ−2拮抗物質II及びIXa、IXbは、インビトロでの急性又は慢性投薬でニューロン又はグリア毒性を誘発しなかった。シグマ−2受容体拮抗物質は、膜輸送におけるAベータオリゴマー誘発の変化を解消又は軽減した。オリゴマーがない投薬の場合、膜輸送に対する化合物の重大な効果は発生しなかった。EC50濃度の10倍(最大50μMのII又はIXa、IXb)で3日間試験した場合に、ニューロン数、グリア数、核のサイズ、核の形態、神経突起の長さ、細胞骨格の形態に対する毒性はなかった。表11を参照されたい。
[0393] 幾つかの標準的アッセイで化合物IIのインビトロ毒性を試験した。インビトロ毒性研究を試験すると、10μMにて遺伝毒性(AMES、小核、細菌細胞毒)がないことが明白になる。10μM(受容体xにおける親和性の100倍)における665のHepG2毒性は、HepG2腫瘍細胞系の化合物親油性又は受容体の過剰発現によるものであろう。CYP450酵素2D6、3A4、及び2C19の部分阻害(46〜73%)が10uMで生じた。100nMで中位のhERG阻害(24%)が見られた。化合物IIはPGPにて非常に弱い(IC50>30uM)活性を呈した。
実施例15:膜輸送アッセイにおける化合物IIの鏡像異性体の分離及び活性
[0394] 化合物IIをその(+)鏡像異性体と(−)鏡像異性体に分離した。ラセミ混合物を、キラルカラムCHIRALPAK AD−H(シリカゲルでコーティングしたアミローストリス(3,5−ジメチルフェニルカルバメート);4.6×250mm)に適用した。サンプルを15マイクロリットルの体積のカラムに注入した。溶離剤は、25℃で1mL/分の流量のHexane/EtOH/TEA(95/5/0.1)であった。2つの鏡像異性体を別個のピークに分離した。(+)鏡像異性体は、約16分にて第1のピークで溶離し、(−)鏡像異性体は約20分で溶離する第2のピークで溶離した。鏡像異性体は少なくとも純度98%であった。(+)鏡像異性体は+10.1(MeOH中で約1.80)の比旋光度を有し、(−)鏡像異性体は−7.2(MeOH中で約1.80)の比旋光度を有していた。(+)鏡像異性体は、実施例6で説明した膜輸送アッセイで、(−)鏡像異性体より効能が高かった。1つのサンプルでは、膜輸送アッセイでアミロイドベータ誘発欠損を阻害する上で、(+)鏡像異性体は5.6μMのEC50を有し、(−)鏡像異性体は10.9μMのEC50を有する。
実施例16.経口利用可能な化合物の挙動効力−遺伝子組み換えアルツハイマー病マウスモデルの記憶欠損の改善
[0395] ADのTGモデルとして、オスのhAPP Swe/Ldn遺伝子組み換え(Tg)マウスを使用した。ビヒクル、10又は30mg/kg/日のCB又はCFで5.5カ月経口処置した遺伝子組み換えマウス、さらにビヒクル処置した非遺伝子組み換え同腹子を、標準の恐怖条件付けパラダイムにかけた。ビヒクルで5.5カ月経口処置した9月齢のオスのビヒクル処置hAPP Swe/Ldn遺伝子組み換え(Tg)マウスは、文脈的恐怖条件付けにてビヒクル処置した非遺伝子組み換え同腹子に対して有意の記憶欠損を呈した。
[0396] 訓練の24時間後に動物の連想記憶を試験すると、反復手段での2元(遺伝子型及び時間)ANOVAで、ビヒクル処置した遺伝子組み換えマウスと非遺伝子組み換えマウスとの間に合計すくみ時間の有意の差が検出されなかった。しかし、個々に計時した間隔でのすくみ反応のさらに敏感な分析は、遺伝子組み換えマウスは、ビヒクル処置した非遺伝子組み換え動物と比較して、1〜3分間の間隔中の能力が有意に低かったことを示す(マン・ホイットニーのU検定、p<0.05)。この間隔中に、10及び30mg/kg/日のCB(p<0.05)及び30mg/kg/日のCF(p<0.005)で処置した遺伝子組み換え動物は、ビヒクルと比較して能力が有意に改善された(マン・ホイットニーのU検定)。結果を図9に示す。CBは両方の用量でADマウスの記憶欠損を大幅に逆転させ、CFは用量が高い方がADマウスの記憶欠損を逆転させた。Tg動物を10及び30mg/kg/日のCB又は30mg/kg/日のCFで処置すると、それぞれ394±287nM、793±325nM、又は331±373nM(AVG±SD)の測定脳濃度で欠損を改善する。経口利用可能な化合物の脳/谷血漿と脳/ピーク血漿の比率。
結果を表12に示す。
[0397] したがって、化合物CB及びCFは両方とも経口生物学的利用能があり、慢性長期投与後に、高齢の遺伝子組み換えアルツハイマー病マウスのモデル動物で、相当の脳浸透を達成し、定着した記憶欠損を逆転させることができる。挙動の回避行動は観察されなかった。
[0398] CB及びCFは両方とも選択的、親和性が高いシグマ−2受容体拮抗物質化合物である。CB及びCFは両方とも、表14に示すように高い親和性でシグマ−2及びシグマ−1受容体に結合する。脳受容体40個のパネルに対して逆スクリーニングを実施し、結果は、表13に示すようにCB及びCFがシグマ受容体に対して高度に選択的であることを示した。
[0399] 用量10mg/kg/日のCBでは、化合物の脳レベルがシグマ及びドーパミン輸送体のKi以上になり、30mg/kg/日の用量は、これらの値にCa++ch及び5−HT輸送体を加えたものに相当する。その後の研究を使用して、この化合物の最低有効量を求めることができる。用量30mg/kg/日のCFでは、化合物の脳レベルがシグマ受容体のみにとって選択的になり、したがって、シグマ受容体におけるその親和性が、これらの脳濃度の挙動効力を説明する。
合成実施例1:還元アミノ化による化合物の合成
[0400] バニリルアセトン(5.00g、27.0mmol)をトルエン(250mL)に溶解させ、4−トリフルオロメチルベンジルアミン(4.73g、27.0mmol)を添加した。混合物を窒素環境に維持し、ディーン−スターク蒸留により水を除去する還流で16時間加熱した。この時点で、ディーン−スタークトラップを除去し、反応混合物を氷浴で0℃まで冷却した。水素化ホウ素ナトリウム(5g)のメタノール(100mL)溶液を、勢いよく攪拌しながら一部ずつ30分間添加した。添加が終了すると、混合物を還流で16時間加熱した。この時点で、反応混合物を室温まで冷まし、飽和重炭酸ナトリウム溶液(300mL)に注入した。その結果の混合物を回転蒸発で濃縮し、水性残留物を水とクロロホルムに分割した。クロロホルム層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、次に濾過して濃縮した。次に、クロロホルム中に5%のアンモニア−メタノールの移動相を使用するシリカゲルカラムクロマトグラフィを使用して、生成物を精製した。生成物を含有する画分を化合させて濃縮し、次に高真空で一晩乾燥させ、薄茶色の油(6.72g、74%)を提供した。1H NMR (500 MHz, CDCl3)δ: 7.57 (d, J= 7.8 Hz, 2H), 7.43 (d, J = 7.9 Hz, 2H), 6.82 (d, J = 7.3 Hz, 1H), 6.65 (m, 2H), 5.16-4.42 (br s, 2H), 3.90 (d, J = 13.7 Hz, 1H), 3.84 (s, 3H), 3.80 (d, J = 13.7 Hz, 1H), 2.76-2.70 (m, 1H), 2.67-2.55 (m, 2H), 1.84-1.77 (m, 1H), 1.69-1.63 (m, 1H), 1.17 (d, J = 6.3 Hz, 3H). 13C NMR (125 MHz, CDCl3)δ: 146.7, 144.6, 143.9, 134.0, 129.1, 128.4, 127.5, 125.4, 125.3, 123.2, 120.8, 114.6, 111.0, 55.7, 52.1, 50.6, 38.8, 32.0, 20.1. MS (CI) m/z 353 (M+).
[0401]
1H NMRの化学シフトの尺度は、例えば最大0.2ppm変動することがある。
13H NMRの化学シフトの尺度は、例えば最大0.5ppm変動することがある。分析質量スペクトルは、±0.3の実験誤差を有することがある。
純度の判定
生成物の純度をHPLCで測定した。2.22分という保持時間の主要ピークは、純度が約80%、85%、90%、又は95%より高いことを示す。使用したHPLCの条件は以下の通りである。
HPLCの条件:
移動相A:水中に蟻酸アンモニウム13.3mM/蟻酸6.7mM
移動相B:水/CH
3CN(1/9、v/v)中に蟻酸アンモニウム6mM/蟻酸3mM
カラム:Synergi Fusion-RP 100A Mercury、2×20mm、2.5ミクロン(Phenomenex、部品番号00M-4423-B0_CE)
勾配プログラム:RT=2.22分
[0402] 生成物の純度も1H NMRで測定し、これは純度が90%又は95%より高い単一の化合物であることを示した。本明細書で説明する合成は、合成すべき最終生成物に応じて修正することができる。
合成実施例2:還元アミノ化による化合物の合成
[0403] バニリルアセトン(5.00g、25.7mmol)をトルエン(250mL)に溶解させ、4−クロロベンジルアミン(4.73g、27.0mmol)を添加した。混合物を窒素環境に維持し、ディーン−スターク蒸留により水を除去する還流で16時間加熱した。この時点で、ディーン−スタークトラップを除去し、反応混合物を氷浴で0℃まで冷却した。水素化ホウ素ナトリウム(5g)のメタノール(100mL)溶液を、勢いよく攪拌しながら一部ずつ30分間添加した。添加が終了すると、混合物を還流で16時間加熱した。この時点で、反応混合物を室温まで冷まし、飽和重炭酸ナトリウム溶液(300mL)に注入した。その結果の混合物を回転蒸発で濃縮し、水性残留物を水とクロロホルムに分割した。クロロホルム層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、次に濾過して濃縮した。次に、クロロホルム中に5%のアンモニア−メタノールの移動相を使用するシリカゲルカラムクロマトグラフィを使用して、生成物を精製した。生成物を含有する画分を化合させて濃縮し、次に高真空で一晩乾燥させ、薄茶色の油(6.16g、75%)を提供した。1H NMR (500 MHz, CDCl3)δ: 7.30-7.24 (m, 4H), 6.81 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 6.66-6.62 (m, 2H), 4.25 (br s, 2H), 3.82 (s, 3H), 3.82 (d, J = 13.2 Hz, 1H), 3.72 (d, J = 13.2 Hz, 1H), 2.73 (m, 1H), 2.66-2.51 (m, 1H), 1.86-1.78 (m, 1H), 1.72-1.63 (m, 1H), 1.62-1.51 (m, 1H), 1.17 (d, J = 6.3 Hz, 3H). 13C NMR (125 MHz, CDCl3)δ: 146.6, 143.8, 133.9 132.8, 129.9, 129.7, 128.6, 120.8, 114.5, 110.9, 55.8, 51.9, 50.2, 38.5, 31.9, 31.6, 29.7, 26.9, 22.6, 19.9. MS(MH+): m/z 320.
[0404] 1H NMRの化学シフトの尺度は、例えば最大0.2ppm変動することがある。13H NMRの化学シフトの尺度は、例えば最大0.5ppm変動することがある。分析質量スペクトルは、±0.3の実験誤差を有することがある。
純度の判定
[0405] 生成物の純度をHPLCで測定した。2.22分という保持時間の主要ピークは、純度が約80%、85%、90%、又は95%より高いことを示す。使用したHPLCの条件は以下の通りである。
HPLCの条件:
移動相A:水中に蟻酸アンモニウム13.3mM/蟻酸6.7mM
移動相B:水/CH
3CN(1/9、v/v)中に蟻酸アンモニウム6mM/蟻酸3mM
カラム:Synergi Fusion-RP 100A Mercury、2×20mm、2.5ミクロン(Phenomenex、部品番号00M-4423-B0_CE)
勾配プログラム:RT=2.22分
[0406] 生成物の純度も1H NMRで測定し、これは純度が90%又は95%より高い単一の化合物であることを示した。本明細書で説明する合成は、合成すべき最終生成物に応じて修飾することができる。
合成実施例3
[0407] ステップ1:4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシ−フェニル)−ブタン−2−オン(38.8g、200mmol)のTHF溶液(600mL)に、Ti(OEt)4(136.9g、600mmol)及び(S)−(−)−tert−ブチルスルフィンアミド(29g、240mmol)を添加した。混合物を70℃で16時間攪拌し、氷水で急冷して、EA(3×300mL)で抽出し、Na2SO4で乾燥させ、濃縮して粗生成物を獲得し、これをカラムクロマトグラフィ(PE/EA:3/1)で精製し、標題化合物2(35g、59%)を与えた。
[0408] ステップ2:化合物2(18g、60mmol)のTHF(180mL)溶液に、0℃でL−セレクトライド(180mL、THF中に1.0M、180mmol)を添加した。室温(rt)まで暖まるように、3時間反応できるようにした。TLCによる反応混合物の分析は、開始イミン2が完全に消費されたことを示した。次に、水を添加して溶液を急冷し、EA(3×200mL)で抽出した。化合した有機相を鹹水で洗浄し、Na2SO4上で乾燥して、真空中で濃縮し、残留物を出して、これをカラムクロマトグラフィ(PE/EA:2/1)で精製して生成物にした。生成物をPE/EA(1:1)での再結晶化で精製し続け、生成物3(9.9g、55%)を得た。ee値はHPLCで求めた。
[0409] ステップ3:3(7.0g、23.4mmol)のMeOH(20mL)溶液に、HCl(MeOH中に2M、20mL)を添加し、その結果の溶液を室温で3時間攪拌した。反応混合物のTLC分析は、化合物3が完全に消費されたことを示した。次に真空中で溶媒を取り出し、その結果の残留物4を次のステップに直接使用した。
[0410] ステップ4:粗化合物4(5.4g、23.4mmol)のTHF(100mL)溶液に、DIPEA(4.53g、35.1mmol)及び4−トリフルオロメチルベンズアルデヒド5(4.28g、24.6mmol)を添加した。その結果の溶液を室温で10分間攪拌した。次に、NaBH(OAc)3(14.9g、70.2mmol)を添加し、混合物を40℃で2時間攪拌した。混合物を0℃の水で急冷し、濾過してEtOAcで抽出した。有機相を鹹水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥して、濾過し、濾液を減圧で濃縮し、残留物をカラムクロマトグラフィ(PE/EA=1:2)で精製し、生成物6(7.0g、87%)を与えた。
[0411] ステップ5:6(1.0g、2.8mmol)のMeOH(5mL)溶液に、HCl(MeOH中に2M、20mL)を添加し、その結果の溶液を室温で30分間攪拌した。溶媒を取り出し、白い固体として生成物7a(1.1g、99%)を与えた。化合物5を適切なベンズアルデヒドで置換することにより、化合物7b及び7cを同様に作成した。
[0412] m/z (ESI+) (M+H)+: 7a [354.2]; 7b [422.2]; 7c [422.2].
合成実施例4
[0413] ステップ1:臭化メチルマグネシウムのTHF(5mL)溶液に、1(1.0g、3.3mmol)のTHF(5mL)溶液を0℃で添加した。混合物を室温で4時間攪拌し、氷水を加えて急冷して、酢酸エチル(3×30mL)で抽出し、真空中で乾燥させ粗生成物をもたらし、これをカラムクロマトグラフィ(PE/EA:3/1)で精製し、化合物2(0.6g、58%)を与えた。
[0414] ステップ2:2のEA(10mL)溶液に0℃でHCl(EA中に2M、3mL)を添加し、その結果の溶液を室温で1時間攪拌した。TLCによる反応混合物の分析は、2が完全に消費されたことを示した。真空中で濃縮し、粗生成物を次のステップに直接使用した。
[0415] ステップ3:3(0.4g、1.9mmol)のTHF(20mL)溶液に、DIPEA(0.6g、4.6mmol)及びトリフルオロメチルベンズアルデヒド(0.4g、2.3mmol)を続いて添加した。その結果の溶液を室温で10分間攪拌した。トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(1.63g、7.7mmol)を添加し、混合物を40℃で2時間攪拌した。混合物を0℃の水で急冷し、濾過して、酢酸エチル(3×40mL)で抽出した。有機相を鹹水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過して濾液を減圧して濃縮し、残留物をもたらした。残留物をカラムクロマトグラフィ(PE/EA=1:1)で精製し、4(0.4g、57%)を与えた。
[0416] ステップ4:4のEA(10mL)溶液にHCl(MeOH中に2M、2mL)を添加し、その結果の溶液を室温で1時間攪拌した。真空中で濃縮した後、残留物を酢酸エチルで洗浄し、5(0.4g、98%)をもたらした。
[0417] m/z (ESI+) (M+H)+: 5 [368.2].
合成実施例5
[0418] ステップ1:1(2g、6mmol)のMeOH(30mL)溶液に、HCl(MeOH中に2M、30mL)を添加し、その結果の溶液を室温で3時間攪拌した。反応混合物のTLC分析は、化合物1が完全に消費されたことを示した。次に真空中で溶媒を取り出し、次のステップに直接使用した。
[0419] ステップ2:2(0.4g、2mmol)のTHF(10mL)溶液に、THF(5mL)中の化合物3a(0.54g、2mmol)を添加した。Na2CO3(0.6g、6mmol)を添加し、その結果の溶液を60℃で一晩攪拌した。濃縮後、残留物をFCCで精製し、化合物4(0.2g、30%)を与えた。
[0420] ステップ3:4のEA(5mL)溶液にHCl(MeOH中に2M、3mL)を添加し、その結果の溶液を室温で1時間攪拌した。真空中で濃縮した後、残留物を酢酸エチルで洗浄し、化合物5(0.2g、95%)を与えた。化合物3を適切な臭化ジベンジルで置換することにより、化合物5bを同様に作成した。
[0421] m/z (ESI+) (M+H)+: 5a [332.1]; 5b [366.1].
合成実施例6
[0422] ステップ1:化合物1(0.4g、1.3mmol)のMeOH(10mL)溶液に、HCl(MeOH中に2M、10mL)を添加し、その結果の溶液を室温で3時間攪拌した。反応混合物のTLC分析は、化合物1が完全に消費されたことを示した。溶媒を真空中で取り出し、次のステップに直接使用した。
[0423] ステップ2:化合物2(0.2g、1mmol)及び3(0.2g、1mmol)を酢酸(10mL)中に溶解させ、100℃で2時間攪拌した。混合物を室温まで冷まし、水(10mL)で急冷して、EtOAc(3×20mL)で抽出し、乾燥させ、濃縮して標題化合物4(0.3g、76%)を与えた。
[0424] ステップ3:4(0.3g、0.7mmol)のTHF(10mL)溶液にLAH(0.1g、3.5mmol)を添加した。混合物を80℃で3時間攪拌した。混合物を水(0.1mL)、15%のNaOH(0.1mL)及び水(0.3mL)で急冷し、濾過して、濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィ(PE/EA=5:1)で精製し、化合物5(0.1g、39%)を与えた。
[0425] ステップ4:5の酢酸エチル(5mL)溶液にHCl(MeOH中に2M、3mL)を添加し、その結果の溶液を室温で1時間攪拌した。反応物を真空で濃縮し、化合物6(0.16g、91%)をもたらした。
[0426] m/z (ESI+) (M+H)+: 6 [366.2].
合成実施例7
[0427] ステップ1:1(0.278g、1.43mmol)のTHF(20mL)溶液に、Ti(OEt)4(2.1g、9.2mmol)及び4−ベンジルピペリジン)(0.34g、1.3mmol)を添加した。混合物を40℃で1日攪拌し、氷水で急冷して、酢酸エチル(3×20mL)で抽出した。真空中で濃縮した後、粗生成物をカラムクロマトグラフィ(PE/EA:1/1)で精製し、3(205mg、35%)を与えた。
[0428] ステップ2:3(0.2g、0.47mmol)の酢酸エチル(5mL)溶液に、HCl(MeOH中に2M、3mL)を添加し、その結果の溶液を室温で1時間攪拌した。反応物を真空で濃縮し、4a(0.2g、95%)を得た。アミン化合物2を適切なアミンで置換することにより、化合物4b〜4wを同様に作成した。
[0429] m/z (ESI+) (M+H)+: 4a [354.3]; 4b [409]; 4c [368.2]; 4d [346.1]; 4e [278.50]; 4f [264.05]; 4g [322.10]; 4h [338.05]; 4i [316.15]; 4j [372.10]; 4k [328.25]; 4l [384.15]; 4m [372.10]; 4n [314.10]; 4o [336.15]; 4p [354.10]; 4q [382.20]; 4r [334.15]; 4s [342.15]; 4t [326.15]; 4u [328.20]; 4v [300.10]; 4w [347.6].
合成実施例8
[0430] ステップ1:1(0.31g、1.43mmol)のTHF(20mL)溶液に、Ti(OEt)4(0.595g、2.58mmol)及びN−(4−トリフルオロメチルフェニル)−ピペラジン2(0.3g、1.3mmol)を添加した。混合物を40℃で24時間攪拌し、氷水を加えて急冷して、酢酸エチル(3×20mL)で抽出し、乾燥させた。カラムクロマトグラフィ(PE/EA:1/1)による精製により生成物3(0.25g、41%)が与えられた。
[0431] ステップ2:化合物3(0.25g、0.58mmol)の酢酸エチル(5mL)溶液にMeOH−HCl(2N、4mL)を添加した。混合物を室温で1時間攪拌した。真空中での濃縮で化合物4(0.25g、95%)が与えられた。アミン化合物2を適切なアミンで置換することにより、化合物4b〜4xを同様に作成した。
[0432] m/z (ESI+) (M+H)+: 4a [431.2]; 4b [390.2]; 4c [300.05]; 4d [286.00]; 4e [344.05]; 4f [362.00]; 4g [338.05]; 4h [394.10]; 4i [350.05]; 4j [406.05]; 4k [394.15]; 4l [336.05]; 4m [358.05]; 4n [378.05]; 4o [445.20]; 4p [356.10]; 4q [364.10]; 4r [348.05]; 4s [350.10]; 4t [322.10]; 4u [369.2]; 4v [309.00]; 4w [308.95]; 4x [309.00].
合成実施例9
[0433] ステップ1:1(3.5g、20mmol)のアセトン(20mL)及びエタノール(2mL)溶液に、水性NaOH(10%、15mL)及び水(80mL)を添加した。混合物を室温で2時間攪拌し、EA(3×50mL)で抽出した。有機相を乾燥させ、濃縮して2(4.3g、100%)を与えた。
[0434] ステップ2:2(4.3g、20mmol)のMeOH(50mL)溶液に、硫化ジフェニル(0.15mL)及びPd/C(10%、0.43g)を添加した。混合物を25℃、水素1気圧で24時間勢いよく攪拌した。反応混合物をセライトのパッドで濾過し、メタノールで洗浄して、濾液を濃縮し、3(4.3g、99%)を提供した。
[0435] ステップ3:3(10g、46mmol)のTHF(100mL)溶液にTi(OEt)4(21g、92mmol)、及び(S)−(−)−tert−ブチルスルフィンアミド(6.1g、50mmol)を添加した。混合物を70℃で12時間攪拌し、氷水で急冷して、酢酸エチル(3×250mL)で抽出した。真空により濃縮した後、粗生成物をカラムクロマトグラフィ(PE/EA:10/1)で精製し、化合物4(8.1g、55%)をもたらした。
[0436] ステップ4:化合物4(3.3g、10mmol)のTHF(30mL)溶液に、l−セレクトライド(33mL、THF中に1.0M、33mmol)を0℃で添加した。反応物が3時間かけて室温まで暖まるようにした。TLCによる反応混合物の分析は、開始イミン4が完全に消費されたことを示した。溶液を水で急冷し、酢酸エチル(3×30mL)で抽出した。化合した有機相を鹹水で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、真空下で濃縮して、残留物を与え、これをカラムクロマトグラフィ(PE/EA:2/1)で精製して、生成物5(0.9g、27%)を提供した。
[0437] ステップ5:化合物5(5g、15.5mmol)のMeOH(10mL)溶液に、HCl(MeOH中に2M、10mL)を添加し、その結果の溶液を室温で3時間攪拌した。反応混合物のTLC分析は、化合物5が完全に消費されたことを示した。溶媒を真空中で取り出し、粗生成物6(3.95g、100%)をさらに精製せず、次のステップに直接使用した。
[0438] ステップ6:6(0.6g、2.4mmol)のTHF(10mL)溶液中に、DIPEA(0.4g、3.1mmol)及び3−トリフルオロメチルベンズアルデヒド(0.41g、2.4mmol)を続けて添加した。その結果の溶液を室温で10分間攪拌した。NaBH(OAc)3(1.0g、4.7mmol)を添加し、混合物を12時間攪拌した。混合物を0℃の水で急冷し、濾過して、EtOAc(3×30mL)で抽出した。有機相を鹹水で洗浄し、硫化ナトリウム上で乾燥させ、濾過して、濾液を減圧して濃縮し、残留物をもたらした。残留物をカラムクロマトグラフィ(PE/EA=1:1)で精製し、化合物8(0.4g、45%)を与えた。
[0439] ステップ7:8(0.4g、1.08mmol)のMeOH(5mL)溶液に、HCl(MeOH中に2M、4mL)を添加し、その結果の溶液を室温で0.5時間攪拌した。反応物を濃縮してアミン9a(0.4g、90%)を与えた。化合物7を適切なベンズアルデヒドで置換することにより、化合物9b〜9eを同様に作成した。
[0440] m/z (ESI+) (M+H)+: 9a[444.2]; 9b [326.25]; 9c [376.2]; 9d [344.2]; 9e [376.1].
合成実施例10
[0441] ステップ1:臭化メチルマグネシウムのTHF(3M、15mL)溶液に、1(1.5g、4.6mmol)のTHF(20mL)溶液を0℃で添加した。混合物を室温で4時間攪拌し、氷水で急冷して、酢酸エチル(3×30mL)で抽出した。濃縮した後、粗生成物をカラムクロマトグラフィ(PE/EA:3/1)で精製し、化合物2(0.6g、39%)をもたらした。
[0442] ステップ2:化合物2(0.6g、1.8mmol)の酢酸エチル(10mL)溶液に、HCl(MeOH中に2M、3mL)を添加し、その結果の溶液を室温で1時間攪拌した。反応混合物のTLC分析は、化合物2が完全に消費されたことを示した。次に、溶媒を真空中で取り出し、粗化合物3を次のステップに直接使用した。
[0443] ステップ3:3(0.43g、1.8mmol)のTHF(20mL)溶液に、DIPEA(0.54g、4.0mmol)及び4−トリフルオロメチルベンズアルデヒド(0.36g、2.0mmol)を続けて添加した。その結果の溶液を室温で10分間攪拌した。NaBH(OAc)3(1.57g、7.4mmol)を添加し、混合物を40℃で2時間攪拌した。混合物を0℃の水で急冷し、濾過して、EtOAc(3×30mL)で抽出した。有機相を鹹水で洗浄し、硫化ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、濾液を減圧して濃縮し、残留物をもたらした。これをカラムクロマトグラフィ(PE/EA=3:1)で精製して、化合物4(0.3g、43%)を与えた。
[0444] ステップ4:4(0.3g、0.8mmol)の酢酸エチル(10mL)溶液に、HCl(MeOH中に2M、2mL)を添加し、その結果の溶液を室温で1時間攪拌した。沈殿物を濾過し、化合物5(0.25g、76%)を得た。
[0445] m/z (ESI+) (M+H)+: 5 [390.14].
合成実施例11
[0446] ステップ1:MeOH−HCl(2M、10mL)中に化合物1(1.75g、5.43mmol)を入れた混合物を、室温で3時間攪拌した。反応混合物を真空中で濃縮し、粗原料2を与え、これをさらに精製せずに、次のステップで使用した。
[0447] ステップ2:化合物アミン2(1.4g、5.43mmol)及び無水物3(1.18g、5.43mmol)のトルエン(12mL)溶液を130℃で12時間加熱した。混合物を室温まで冷まし、水(10mL)を添加し、EtOAc(3×20mL)で抽出して、乾燥させ、濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィ(PE/EA=10:1)で精製し、生成物4(0.78g、34%)を与えた。
[0448] ステップ3:化合物4(0.78g、1.87mmol)のTHF(20mL)溶液にLAH(0.36g、9.1mmol)を添加した。化合物を80℃で3時間攪拌した。冷ました混合物を水(3.46mL)、15%のNaOH(3.46mL)及び水(13.5mL)で急冷した。反応混合物を濾過し、濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィ(PE/EA=5:1)で精製し、生成物5(0.16g、23%)を与えた。
[0449] ステップ4:化合物5(0.3g、0.8mmol)を酢酸エチル(5mL)に溶解させ、MeOH−HCl(2N、3mL)を添加した。混合物を室温で1時間攪拌し、濃縮して、化合物6(0.16g、89%)を与えた。
[0450] m/z (ESI+) (M+H)+: 6 [390.0].
合成実施例12
[0451] ステップ1:化合物1(0.4g、2mmol)のDMF(6mL)溶液に二臭化物2(0.6g、2mmol)を添加した。その結果の溶液を80℃で一晩攪拌し、濃縮して、調製用HPLCで精製し、化合物3(0.1g、13%)を与えた。
[0452] ステップ2:化合物3(0.1g、0.2mmol)を酢酸エチル(5mL)に溶解させ、MeOH−HCl(2N、3mL)を添加した。混合物を室温で1時間攪拌した。混合物を濾過し、化合物4(0.11g、99%)を与えた。
[0453] m/z (ESI+) (M+H)+: 4 [388.1].
合成実施例13
[0454] ステップ1:ウコン油(100g)をカラムクロマトグラフィ(PE:EA/100:1)で精製し、粗生成物1(60g)を提供した。
[0455] ステップ2:粗生成物1(60g)をジオキサン(200mL)に溶解させ、DDQ(81.7g、360mmol)を添加した。混合物を室温で一晩攪拌し、次に水(500mL)で急冷して、セライトのパッドで濾過した。濾液を酢酸エチル(3×200mL)で抽出した。有機相を乾燥し、濃縮して、カラムクロマトグラフィ(PE:EA/30:1)で精製し、化合物2(15.6g、26%)を提供した。
[0456] ステップ3:2(7.4g、34.2mmol)のTi(OEt)4(23.4g、102.6mmol)溶液に、(S)−(−)−2−メチル−2−プロパンスルフィンアミドを添加した。混合物を70℃で12時間攪拌し、氷水で急冷して、酢酸エチル(3×100mL)で抽出し、乾燥させて、残留物を与えた。これをカラムクロマトグラフィ(PE/EA:5/1)で精製し、生成物3(7.1g、64%)を与えた。
ステップ4:化合物3(7.0g、21.9mmol)の−78℃のTHF(70mL)溶液に、DIBAL−H(22mL、THF中に1.5M、33mmol)を添加した。その結果の溶液を−78℃で2時間攪拌した。TLCによる反応混合物の分析は、開始イミンが完全に消費されたことを示し、スルフィンアミド化合物4が与えられた。溶液を水で急冷し、酢酸エチル(3×200mL)で抽出した。化合した有機相を鹹水で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、濃縮してオレンジ油を供給した。粗生成物をカラムクロマトグラフィ(PE:EA/3:1)にかけて、生成物4(3.1g、43%)を提供した。
[0457] ステップ5:化合物4(1.6g、5.0mmol)の酢酸エチル(10mL)溶液に、HCl−酢酸エチル(2N、10mL)を添加し、その結果の溶液を室温で3時間攪拌した。反応混合物のTLC分析は、化合物3が完全に消費されたことを示した。溶媒を真空中で取り出した。残留物を水(10mL)に溶解させ、K2CO3の飽和水溶液でpHを9〜10に調整し、酢酸エチル(3×20mL)で抽出して、乾燥させ、濃縮して遊離アミンを与えた。遊離アミン(1.1g、5.0mmol)をメタノール(15mL)に溶解させた。D−酒石酸(0.75g、5.0mmol)を溶液に添加した。混合物を還流で1時間攪拌した。溶液を穏やかに室温まで冷ました。形成された結晶を濾過して、生成物5(1.7g、93%)を与えた。Mp.172〜174℃。化合物5の絶対立体配置をX線結晶学で求めた。
[0458] ステップ6:化合物5(1.7g、4.6mmol)の水(20mL)溶液を、1MのNaOHによってpH9〜10に調整した。生成物を酢酸エチル(3×20mL)で抽出した。有機相を乾燥させ、濃縮して、遊離アミンを与えた。遊離アミンをTHF(10mL)に溶解させ、イソ−ブチルアミン(0.40g、5.5mmol)及びNaBH(OAc)3(3.90g、18.4mmol)を添加した。混合物を室温で12時間攪拌し、水で急冷して、酢酸エチル(3×30mL)で抽出した。有機相を乾燥させ、濃縮して、カラムクロマトグラフィ(PE:EA/3:1)で精製し、生成物6(0.9g、72%)を提供した。
[0459] ステップ7:化合物6(0.9g、3.2mmol)の酢酸エチル(10mL)溶液に酢酸エチル−HCl(2N、5mL)を添加した。混合物を室温で1時間攪拌した。酢酸エチルを真空中で取り出し、化合物7(0.95g、96%)をもたらした。
[0460] m/z (ESI+) (M+H)+: 7 [274.20].
合成実施例14
[0461] ステップ1:1(7.4g、34.2mmol)のTi(OEt)4(23.4g、102.6mmol)溶液に、(R)−(+)−2−メチル−2−プロパンスルフィンアミドを添加した。混合物を70℃で12時間攪拌し、氷水で急冷して、酢酸エチル(3×100mL)で抽出し、乾燥させた。カラムクロマトグラフィ(PE/EA:5/1)で精製して、生成物2(6.9g、63%)をもたらした。
[0462] ステップ2:化合物2(7.0g、21.9mmol)をTHF(70mL)に溶解させ、−78℃まで冷却した。次に、容器にDIBAL−H(22mL、THF中に1.5M、33mmol)を添加し、その結果の溶液を−78℃で2時間攪拌した。TLCによる反応混合物は、開始イミンが完全に消費されたことを示し、スルフィンアミド化合物3が与えられた。次に、溶液を水で急冷し、酢酸エチル(3×200mL)で抽出した。化合した有機相を鹹水で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、真空で濃縮して、オレンジ油を供給した。粗生成物をカラムクロマトグラフィ(PE:EA/3:1)にかけて、生成物3(2.5g、36%)を提供した。
[0463] ステップ3:3(2.5g、7.8mmol)の酢酸エチル(10mL)溶液に、酢酸エチル(10mL)中の2MのHClを添加し、その結果の溶液を室温で3時間攪拌した。反応混合物のTLC分析は、化合物3が完全に消費されたことを示した。溶媒を真空で取り出した。残留物を水(10mL)に溶解させ、飽和K2CO3を添加してそのpHを9〜10に調整した。混合物を酢酸エチル(3×20mL)で抽出し、乾燥させ、濃縮して遊離アミン4を得た。遊離アミン4をメタノール(15mL)に溶解させ、L−酒石酸(1.17g、7.8mmol)を添加した。混合物を還流で1時間攪拌し、室温まで冷まし、濾過して結晶塩4(2.5g、87%)を得た。
[0464] ステップ4:L−酒石酸塩4(2.5g、6.8mmol)を水(20mL)に溶解させ、1MのNaOHを添加してそのpHを9〜10に調整した。次に、混合物を酢酸エチル(3×50mL)で抽出し、乾燥させ、濃縮して遊離アミン4を得た。遊離アミン4をTHFに溶解させ、イソ−ブチルアミン(0.60g、8.2mmol)及びNaBH(OAc)3(5.85g、27.6mmol)を添加した。混合物を室温で12時間攪拌し、水で急冷して、酢酸エチル(3×30mL)で抽出した。有機相を乾燥させ、濃縮し、カラムクロマトグラフィ(PE:EA/3:1)で精製して生成物5(0.83g、45%)を提供した。
[0465] ステップ5:5(0.83g、3.0mmol)の酢酸エチル(10mL)溶液に、HCl(酢酸エチル中に2M、5mL)を添加し、その結果の溶液を室温で1時間攪拌した。溶媒を取り出し、生成物6(0.88g、94%)を与えた。
[0466] m/z (ESI+) (M+H)+: 6 [274.20]
[0467] 要約及び図面を含めて本明細書で開示した全ての特徴、及び開示したいずれかの方法又はプロセスのステップは全て、このような特徴及び/又はステップの少なくとも幾つかが相互に排他的である組み合わせを除き、任意の組み合わせで組み合わせることができる。要約及び図面を含めて本明細書で開示した各特徴は、他で明記していない限り、同じ、同等又は同様の目的に叶う代替特徴によって置き換えることができる。したがって、他で明記していない限り、開示された各特徴は同等又は同様の特徴の一般主の一例にすぎない。本明細書で説明したものに加えて、本発明の様々な変更が、以上の説明から当業者には明白になる。このような変更も、請求の範囲に入るものとする。
[0468] 本明細書で言及した全ての出版物は、全体が参照により本明細書に組み込まれている。本明細書のいずれも、本発明が、先行技術の発明によるこのような開示に先立つ権利がないことを認めるものではない。