以下、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態に対する構成及び作用を詳細に説明すれば次のとおりである。なお、下記の実施形態は様々な他の形態に変形が可能で、本発明の範囲が下記の実施形態に限定されるものではない。
一般に、船舶から排出される排気ガスのうち、国際海事機関(International Maritime Organization)の規制を受けているものは、窒素酸化物NOx及び硫黄酸化物SOxであり、二酸化炭素CO2の排出も規制しようとする動きがある。特に、窒素酸化物NOx及び硫黄酸化物SOxの場合、1997年の海洋汚染防止協約(MARPOL;The Prevention of Marine Pollution from Ships)議定書によって提起され、8年もの長期間を費やした後、2005年5月に発効要件を満たし、現在、強制規定として履行している。
よって、このような規定を満たすために、窒素酸化物NOxの排出量を低減するための様々な方法が紹介されているが、このような方法のうち、LNG運搬船のために、高圧天然ガス噴射エンジン、例えばME−GIエンジンが開発されて使用されている。
このようなME−GIエンジンは、LNG(Liquefied Natural Gas)を極低温に耐える貯蔵タンクに貯蔵して運搬させるLNG運搬船などのような海上構造物(本明細書における海上構造物とは、LNG運搬船、LNG RVなどの船舶をはじめとして、LNG FPSO、LNG FSRUなどの海上プラントまですべてを含む概念である。)に設置されることができ、この場合、天然ガスを燃料として使用するようになり、その負荷に応じて150〜400bara(絶対圧)程度の高圧のガス供給圧力が要求される。
ME−GIエンジンのような高圧天然ガス噴射エンジンを搭載した海上構造物の場合も、LNG貯蔵タンクで発生するボイルオフガス(Boil Off Gas;BOG)を処理するためには再液化(Reliquefaction)装置が依然として必要である。ME−GIエンジンのような高圧天然ガス噴射エンジンと、ボイルオフガスを処理するための再液化装置とをすべて搭載した従来の海上構造物の場合、ガスと燃料油の価格変化及び排気ガスの規制程度に応じてボイルオフガスを燃料として使用するか、それともボイルオフガスを再液化して貯蔵タンクに送り重油(Heavy Fuel Oil;HFO)を使用するかを選択できる長所があり、特に、特定の規制を受ける海域を通過する際に簡便にLNGを気化させて燃料として使用できるという長所があり、次世代の環境にやさしいエンジンとして効率が50%に迫り、今後はLNG運搬船のメインエンジンとして使用され得る。
図2には本発明による燃料供給方法を説明するための概略的なブロック図が図示されている。本発明の燃料供給方法によれば、貯蔵タンクで発生したボイルオフガス、すなわちNBOGをボイルオフガス圧縮機に供給して12乃至45bara程度の中圧に圧縮させた後、この中圧BOGを混合冷媒、例えば非爆発性混合冷媒(Non Flammable Mixed Refrigerant)やSMR(Single Mixed Refrigerant)、又は窒素を冷媒として使用する再液化装置に供給する。再液化装置で液化されたボイルオフガス、すなわちLBOGは、燃料供給システムでME−GIエンジンで要求する圧力(例えば400bara程度の高圧)に圧縮された後、ME−GIエンジンに燃料として供給される。本発明によれば、再液化装置から燃料供給システムに供給されるLBOGが貯蔵タンクに戻らないので、従来技術のように、フラッシュガスが発生する問題を防止でき、そのため、ボイルオフガス圧縮機でボイルオフガスを中圧に圧縮させることができる。
本明細書において、高圧が意味する圧力範囲は、高圧天然ガス噴射エンジンで要求する燃料供給圧力である150乃至400bara程度の圧力で、中圧が意味する圧力範囲は、ボイルオフガス圧縮部13でボイルオフガスを圧縮する12乃至45bara程度の圧力で、低圧が意味する圧力範囲は、従来の技術でボイルオフガスを再液化装置に供給するために圧縮する4乃至8bara程度の圧力である。
このような中圧範囲の圧縮後の再液化は、図6a及び図6bのように窒素冷媒を使用する場合、非爆発性混合冷媒を使用する場合、図6cのようにSMRを使用する場合のいずれにおいて従来の低圧再液化に比べ、相当な再液化エネルギー低減の効果を示す。
図6a及び図6bに示すデータはHysys工程モデル(Aspentech社製品)を用いて導き出された結果である。この結果を見てみると、窒素ガスを冷媒として使用するHamworthy社のMark III再液化装置(国際公開第2007/117148号に記載の技術)を使用した場合は、ボイルオフガス圧縮機の圧力が8baraの場合、再液化に必要とする所要動力が約2,776kWであることに対し、ボイルオフガス圧縮機の圧力が12baraに上昇するとともに2,500kWに急激に減ることがわかる。ボイルオフガス圧縮機の圧力が12bara以上では再液化に必要とする所要動力が漸進的に減少することが示される。
図6cに示すグラフは、冷媒として炭化水素系SMRを使用した場合の所要動力の変化を示す。この結果を見てみると、冷媒としてSMRを使用する場合も、再液化に必要とする所要動力はボイルオフガス圧縮機の圧力が8baraの場合に比べ、ボイルオフガス圧縮機の圧力が12baraである場合は急激に減ることがわかる。ボイルオフガス圧縮機の圧力が12bara以上では再液化に必要とする所要動力が漸進的に減少することが示される。
SMRの組成は、各液化圧力毎に、効率最適化のために、下記表1のように調節された。
本発明に記載の非爆発性混合冷媒(NFMR、下記表4の組成)を使用した再液化装置の場合は、前記窒素ガス冷媒を使用する場合に比べて再液化に要するエネルギーがさらに減少することがわかる。
本発明で、ボイルオフガスの圧力範囲は、中圧範囲、すなわち12bara乃至45baraが好ましい。12bara以下では再液化に必要な所要動力の低減効果が大きくないので好ましくない。また45baraを超える場合は、ボイルオフガスの加圧に必要な所要動力に比べ、再液化に必要なエネルギーの低減効果が大きくないので好ましくない。
(第1実施形態)
図3aは、本発明の第1実施形態による高圧天然ガス噴射エンジン、例えばME−GIエンジンを有する海上構造物、特に液化天然ガス運搬船の燃料供給システムを示した構成図である。図3aには、天然ガスを燃料として使用できるME−GIエンジンを設置したLNG運搬船に本発明の高圧天然ガス噴射エンジン用燃料供給システムが適用された例が図示されているが、本発明の高圧天然ガス噴射エンジン用燃料供給システムは、液化ガス貯蔵タンクが設置された全ての種類の海上構造物、すなわちLNG運搬船、LNG RVのような船舶をはじめとして、LNG FPSO、LNG FSRUのような海上プラントに適用され得る。
本発明の第1実施形態による高圧天然ガス噴射エンジンを有する海上構造物の燃料供給システムによれば、液化ガス貯蔵タンク11で発生して排出されたボイルオフガス(NBOG)は、ボイルオフガス圧縮部13で12乃至45bara(絶対圧)程度の中圧に圧縮された後、再液化装置20に供給される。再液化装置20で液化エネルギー、すなわち冷熱を供給されて再液化された液化ボイルオフガス(LBOG)は高圧ポンプ33によって150乃至400bara程度の高圧に圧縮された後、高圧気化器37に供給される。高圧気化器37で気化されたボイルオフガスは、引き続き高圧天然ガス噴射エンジン、例えばME−GIエンジンに燃料として供給される。
高圧ポンプ33によって高圧に圧縮された液化ボイルオフガス(すなわち、液化天然ガス)は超臨界圧状態であるため、事実上液相と気相とを区別することができない。しかし、本明細書では、高圧状態で液化ボイルオフガスを周囲温度(又は高圧天然ガス噴射エンジンで要求する温度)まで加熱することを気化させると表現しており、高圧状態で液化ボイルオフガスを周囲温度まで加熱する装置を高圧気化器と表現する。
貯蔵タンクは、LNGなどの液化ガスを極低温状態に貯蔵できるように密封壁及び断熱壁を備えているが、外部から伝達される熱を完壁に遮断することはできない。そのため、貯蔵タンク11内では液化ガスの蒸発が継続的に行われ、ボイルオフガスの圧力を適正な水準に維持するために、ボイルオフガス排出ラインL1を介して貯蔵タンク11内部のボイルオフガスを排出させる。
排出されたボイルオフガスは、ボイルオフガス排出ラインL1を介してボイルオフガス圧縮部13に供給される。ボイルオフガス圧縮部13は、1つ以上のボイルオフガス圧縮機14、及び該ボイルオフガス圧縮機14で圧縮されるとともに温度が上昇したボイルオフガスを冷却させるための1つ以上の中間冷却器15を含む。図3aでは、5つのボイルオフガス圧縮機14及び5つの中間冷却器15を含む5段圧縮のボイルオフガス圧縮部13が例示されている。
ボイルオフガス圧縮部13で圧縮されたボイルオフガスは、ボイルオフガス供給ラインL2を介して再液化装置20に供給される。再液化装置20に供給されたボイルオフガスは、再液化装置20のコールドボックス21を通過しながら冷媒によって冷却されて再液化される。再液化装置20としては、LNGなどの液化ガスから発生するボイルオフガスなどを液化させることができるものであれば、いかなる構成のものでも使用され得る。
コールドボックス21での熱交換を介して再液化されたボイルオフガスは、バッファタンク31で気体状態と液体状態とに分離され、液体状態の液化ボイルオフガスのみが燃料供給ラインL3を介して高圧ポンプ33に供給される。高圧ポンプ33は、複数個、例えば2つが並列に設置され得る。
高圧ポンプ33では、液化ボイルオフガスを高圧天然ガス噴射エンジン(例えばME−GIエンジン)で要求する燃料供給圧力まで加圧して送出する。高圧ポンプ33から送出される液化ボイルオフガスは、150〜400bara(絶対圧)程度の高圧を有する。
図3aに例示された再液化装置20は、冷媒とボイルオフガスとの熱交換によってボイルオフガスを再液化させるためのコールドボックス21と、該コールドボックス21で加熱されて部分的に気化された冷媒を気体状態の冷媒と液体状態の冷媒とに分離するための1つ以上の冷媒気液分離器22と、該冷媒気液分離器22で分離された気体状態の冷媒を圧縮させるための1つ以上の冷媒圧縮機23と、冷媒圧縮機23で圧縮された冷媒を冷却させるための冷媒冷却器24と、冷媒圧縮機23で圧縮された後、冷媒冷却器24で冷却された冷媒を膨脹させて温度を下げる冷媒膨脹バルブ25と、冷媒気液分離器22で分離された液体状態の冷媒を冷媒膨脹バルブ25に供給するための冷媒ポンプ26と、を含む。
冷媒ポンプ26を介して冷媒膨脹バルブ25に供給される冷媒は、冷媒膨脹バルブ25の上流側で冷媒冷却器24を通過した後、冷媒膨脹バルブ25に供給される冷媒と混合されることが好ましい。
一方、冷媒膨脹バルブ25に供給される冷媒は、膨脹の前にコールドボックス21を通過しながら膨脹後の極低温状態の冷媒と熱交換され得るように構成されても良い。
また、冷媒冷却器24で冷却された冷媒は、他の冷媒気液分離器に供給されて気体状態の冷媒と液体状態の冷媒とに分離されて処理され得る。そのために、図3aの再液化装置20は、それぞれ2つずつの冷媒気液分離器22、冷媒圧縮機23、冷媒冷却器24、及び冷媒ポンプ26を含むものが例示されているが、これは本発明を限定するものではなく、設計時の必要に応じて設置個数は加減され得る。
(第1実施形態の変形例)
図3bには本発明の好ましい第1実施形態の変形例による燃料供給システムが図示されている。本第1実施形態の変形例は、ボイルオフガス圧縮部13及び再液化装置20の構成が上記の第1実施形態に比べて部分的に異なるので、以下ではその相違点のみを説明する。
図3bに例示された本第1実施形態の変形例によるボイルオフガス圧縮部13は、5つのボイルオフガス圧縮機14を有するという点においては図3aに例示されたものと同じであるが、ボイルオフガス圧縮部13に含まれた1番目のボイルオフガス圧縮機と2番目のボイルオフガス圧縮機との間、及び2番目のボイルオフガス圧縮機と3番目のボイルオフガス圧縮機との間に中間冷却器15が省略されているという点において図3aに例示されたものと異なる。本発明によれば、このようにボイルオフガス圧縮機14の間に中間冷却器15が配置されても良く、配置されなくても良い。
また、図3bに例示された本第1実施形態の変形例による再液化装置20は、冷媒とボイルオフガスとの熱交換が行われるコールドボックス21、該コールドボックス21で加熱されて少なくとも部分的に気化された冷媒を圧縮するための圧縮手段、圧縮された冷媒を膨脹させて温度を下げるための膨脹手段を含む。
さらに詳しくは、図3bに例示された本第1実施形態の変形例による再液化装置20は、冷媒とボイルオフガスとの熱交換によってボイルオフガスを再液化させるためのコールドボックス21と、該コールドボックス21で加熱されて部分的に気化された冷媒を気体状態の冷媒と液体状態の冷媒とに分離するための第1冷媒気液分離器22aと、該第1冷媒気液分離器22aで分離された気体状態の冷媒を圧縮させるための第1冷媒圧縮機23aと、該第1冷媒圧縮機23aで圧縮された冷媒を冷却させるための第1冷媒冷却器24aと、該第1冷媒冷却器24aで冷却された冷媒を二次的に気体状態の冷媒と液体状態の冷媒とに分離するための第2冷媒気液分離器22bと、該第2冷媒気液分離器22bで分離された気体状態の冷媒を圧縮させるための第2冷媒圧縮機23bと、該第2冷媒圧縮機23bで圧縮された冷媒を冷却させるための第2冷媒冷却器24bと、第1冷媒気液分離器22aで分離された液体状態の冷媒を第2冷媒冷却器24bに供給するための第1冷媒ポンプ26aと、第2冷媒気液分離器22bで分離された液体状態の冷媒を第2冷媒冷却器24bに供給するための第2冷媒ポンプ26bと、第2冷媒冷却器24bで冷却された冷媒を三次的に気体状態の冷媒と液体状態の冷媒とに分離するための第3冷媒気液分離器22cと、該第3冷媒気液分離器22cで分離された液体状態の冷媒を膨脹させて温度を下げるための冷媒膨脹バルブ25と、液体状態の冷媒を第3冷媒気液分離器22cから冷媒膨脹バルブ25に供給するための第3冷媒ポンプ26cと、を含む。
第1及び第2冷媒気液分離器22a,22bから第2冷媒冷却器24bに供給される液体状態の冷媒は合流した後、第2冷媒圧縮機23bから第2冷媒冷却器24bに供給される気体状態の冷媒と混合された状態で第2冷媒冷却器24bに供給され得る。また、第3気液分離器22cで分離された気体状態の冷媒は、第3冷媒ポンプ26cによって冷媒膨脹バルブ25に供給される液体状態の冷媒と混合されることができる。また、冷媒膨脹バルブ25に供給される冷媒は、膨脹前にコールドボックス21を通過しながら膨脹後の極低温状態の冷媒と熱交換され得るように構成されても良い。
図3bの再液化装置20は、例示にすぎず、本発明を限定するものではなく、設計時の必要に応じて再液化装置の構成は変化され得る。
(非爆発性混合冷媒)
本発明によれば、再液化装置20内で循環する冷媒としては、従来とは異なって、R14を含む非爆発性混合冷媒が使用され得る。複数の非爆発性冷媒を混合してなる非爆発性混合冷媒は、中圧に圧縮されたボイルオフガスを再液化する時の液化温度でも凝結しない特性を有するようにする混合組成比を有する。
混合冷媒の相変化を利用した冷凍サイクルは、窒素のみを冷媒とする窒素ガス冷凍サイクルより効率が高い。従来の混合冷媒は、爆発性冷媒が混合されるため、安全性に問題があったが、本発明の非爆発性混合冷媒は、非爆発性冷媒を混合した冷媒であるため、安全性が高い。
本発明の非爆発性混合冷媒によって、混合冷媒ジュール=トムソン冷凍サイクルを、海上用LNG再液化装置に適用することを可能にすることができる。一方、従来の陸上用LNG液化プラントでは、混合冷媒を使用することが知られていたが、その混合冷媒は、炭化水素(Hydro−Carbon;以下、「HC」と称する)混合冷媒であって、爆発性を有するため取り扱いが難しかった。本発明の非爆発性混合冷媒は、アルゴン、ハイドロフルオロカーボン(Hydro−Fluoro−Carbon;以下、「HFC」と称する)冷媒、及びフルオロカーボン(Fluoro−Carbon;以下、「FC」と称する)冷媒からなるため、爆発性がない。
HFC/FC冷媒としては、下記表2のようなものが使用され得る。表2にはアルゴンをともに表示した。
表2に示す冷媒の他にも、かかる冷媒を2つ以上混合して別途の冷媒番号(R400及びR500系列)を付して使用する場合もある。このようなHFC/FC混合冷媒は表3に表示した。
ただし、図4a及び図4bに示すように、HFC/FC冷媒の場合、氷点がLNGの通常の温度(−163℃)より高くLNGの再液化時の冷媒として使用することができない。しかし、本発明者らは、図4Cに示すように、天然ガス(又はボイルオフガス)の圧力が高くなるほど液化(又は再液化)温度が上昇する点に着目し、効率が高く安全なHFC/FC混合冷媒(すなわち、非爆発性混合冷媒)で、ジュール=トムソン冷凍サイクルによって海上構造物におけるLNG貯蔵タンクから発生するボイルオフガスを再液化できる再液化装置を開発した。言い換えれば、本発明によれば、ボイルオフガスを再液化する前に12乃至45baraの中圧に加圧することによって、常圧でのボイルオフガス再液化温度より高い温度、すなわち非爆発性混合冷媒の氷点より高い温度でボイルオフガスの再液化を可能にする。
本発明の非爆発性混合冷媒は、沸点が天然ガス液化温度(又はボイルオフガス再液化温度)と常温の間に均等に分布して広い相変化区間を利用できるように様々な成分の冷媒を混合して作られる。沸点が互いに類似した冷媒を5つの系列に分類し、それぞれの系列から1つ以上の成分を選択して本発明の非爆発性混合冷媒を構成することが好ましい。すなわち、本発明の非爆発性混合冷媒は、5つの系列からそれぞれ少なくとも1つの成分を選択して混合することによって作られる。
図5に示すように、系列Iには冷媒のうち、沸点が最も低いArが含まれ、系列IIにはR14が含まれ、系列IIIにはR23、R116、及びR41が含まれ、系列IVにはR32、R410A、R410B、R125、R143a、R507、R407B、R404A、R407A、R407C、R407E、R407D、R161、R218、R134a、R152a、及びR227eaが含まれ、系列VにはR236fa及びR245faが含まれる。
これらの5つの系列からそれぞれ1つ以上の冷媒を選択してなる本発明の非爆発性混合冷媒は、冷媒需給の容易さ、費用などを考慮した時、下記表4のような構成成分及び組成を有することが好ましい。非爆発性混合冷媒の組成比は、ボイルオフガスとの熱交換が行われる熱交換器、すなわちコールドボックス21での高温流体(すなわち、ボイルオフガス)と低温流体(すなわち、非爆発性混合冷媒)との間の温度差ができるだけ一定に維持されるように定められることが効率面で好ましい。
非爆発性混合冷媒を使用する場合、従来技術のように、窒素ガス冷媒を使用してボイルオフガスを再液化する時に比べ、消耗される動力、すなわち電力(kW)を低減することができ、再液化効率を向上させることができる。
さらに詳しくは、本発明は、従来の再液化装置で使用される再液化時のボイルオフガス圧力に比べて相対的に高い圧力である12乃至45bara程度の中圧にボイルオフガスを圧縮させて再液化しているため、再液化時に要する動力を低減できる。特に、前記組成の非爆発性混合冷媒を使用する場合、ボイルオフガスが好ましくは12乃至45bara程度の圧力を有する時、再液化装置での再液化効率を最も良好に維持できるようになる。
また、ボイルオフガスの圧力が12baraの時の再液化温度は約−130℃で、この温度までボイルオフガスを冷却させるために非爆発性混合冷媒の温度は約−155℃まで低くなる。前記組成の非爆発性混合冷媒は、−155℃以下で凍結が発生する恐れがあるので、ボイルオフガスの圧力が12baraより低い場合は、非爆発性混合冷媒を使用する冷凍サイクルが構成されることが困難である。
また、45baraを超える場合は、ボイルオフガスの加圧に必要な所要動力の増加に比べて減少する液化エネルギーが大きくないので好ましくない。
図6aを参照すると、本発明は、中圧、すなわち12乃至45baraの圧力範囲(ボイルオフガス4.3ton/h基準)に特徴があって、窒素ガス冷媒、非爆発性混合冷媒の両方に効果があるが、窒素ガス冷媒を使用する再液化装置に比べ、本発明の上記組成を有する非爆発性混合冷媒を使用する再液化装置が10乃至20%程度動力がさらに低減されることがわかる。
図6bには、従来技術による再液化装置の条件(すなわち、再液化装置で使用される冷媒は窒素ガス(N2)で、再液化装置に供給されるボイルオフガスの圧力は8baraの場合)における動力必要量と、本発明による非爆発性混合冷媒(NFMR)を使用する再液化装置の条件(すなわち、再液化装置で使用される冷媒は非爆発性混合冷媒(NFMR)で、再液化装置に供給されるボイルオフガスの圧力は12乃至45baraの場合)における動力必要量とを比較したグラフが図示されている。図6bを参照すると、窒素冷媒を使用する従来の再液化装置(冷凍サイクル)で消耗される動力に比べ、本発明の再液化装置は、50乃至80%程度の動力だけで運転可能であることがわかる。このように、本発明は、従来に比べて相当低い動力で運転可能であるため、発電機の容量を減少させることができ、発電機の小型化が可能になる。
一方、本発明の再液化装置は、冷媒の膨脹手段としてジュール=トムソンバルブ(Joule Thomson valve)を使用するので、エクスパンダ(expander)を使用する従来の窒素コンパンダ(N2 compander)より全体システムが単純になり経済的であるという長所を得ることができる。
なお、表2には記載していないが、本発明の非爆発性混合冷媒は、表2に記載の成分以外の非爆発性冷媒成分を微小量含有できる。
(第2実施形態)
図7aは、本発明の第2実施形態による高圧天然ガス噴射エンジン(例えばME−GIエンジン)を有する海上構造物の燃料供給システムを示した構成図である。図7aに示す第2実施形態の燃料供給システムは、上記の第1実施形態の燃料供給システムに比べ、ボイルオフガスを中圧に圧縮させた後、再液化装置で再液化させる前に、高圧ポンプ33から高圧気化器37に供給されるLNGと熱交換させて予冷させるという点においてのみ異なるので、以下の説明では第1実施形態との相違点を中心に説明する。
図7aに示すように、高圧ポンプ33で高圧に圧縮された液化ボイルオフガスは、高圧気化器37に供給される前に、再液化装置20に供給されるボイルオフガスと熱交換器35で熱交換される。高圧気化器37に供給される液化ボイルオフガスは、再液化装置20に供給されるボイルオフガスに比べて相対的に低温であるため、熱交換器35を通過しながら再液化装置20に供給されるボイルオフガスの温度を下げることができ、再液化装置20での再液化エネルギーを低減できる。加えて、高圧気化器37に供給される液化ボイルオフガスは熱交換器35を通過しながら加熱されて高圧気化器37での気化エネルギーを低減できる。
ボイルオフガス圧縮部13で圧縮されたボイルオフガスは、ボイルオフガス供給ラインL2を介して再液化装置20に供給される。ボイルオフガス供給ラインL2の途中には熱交換器35が設置されており、上記のように熱交換器35で相対的に高温の圧縮されたボイルオフガスと高圧ポンプ33から排出された相対的に低温の液化ボイルオフガスとは互いに熱交換する。熱交換器35を通過しながら冷却されたボイルオフガスは、再液化装置20のコールドボックス21を通過しながら冷媒によって冷却されて再液化される。
(第2実施形態の変形例)
図7bには本発明の好ましい第2実施形態の変形例による燃料供給システムが図示されている。本第2実施形態の変形例は、第1実施形態の変形例で説明したように、ボイルオフガス圧縮部13及び再液化装置20の構成が上記の第2実施形態に比べて部分的に異なる。
すなわち、図7bに例示された本第2実施形態の変形例によるボイルオフガス圧縮部13は、5つのボイルオフガス圧縮機14を有するという点においては図7aに例示されたものと同じであるが、ボイルオフガス圧縮部13に含まれた1番目のボイルオフガス圧縮機と2番目のボイルオフガス圧縮機との間、及び2番目のボイルオフガス圧縮機と3番目のボイルオフガス圧縮機との間に中間冷却器15が省略されているという点において図7aに例示されたものと異なる。本発明によれば、このようにボイルオフガス圧縮機14の間に中間冷却器15が配置されても良く、配置されなくても良い。
また、図7bに例示された本第2実施形態の変形例による再液化装置20は、図2bに例示された第1実施形態の変形例による再液化装置20と同様に、冷媒とボイルオフガスとの熱交換が行われるコールドボックス21、該コールドボックス21で加熱されて少なくとも部分的に気化された冷媒を圧縮するための圧縮手段、圧縮された冷媒を膨脹させて温度を下げるための膨脹手段、及び気体状態の冷媒と液体状態の冷媒とを分離するための冷媒気液分離器を含む。
特に、図7bに例示された本第2実施形態の変形例による再液化装置20は、図2bと同様に、複数の冷媒気液分離器22a,22b,22cを含み、これらの複数の冷媒気液分離器の中で最下流側に配置される冷媒気液分離器22cには上流側に配置される冷媒気液分離器22a,22bで分離された気体状態の冷媒と液体状態の冷媒とが混合された後、供給される。上流側に配置される冷媒気液分離器22a,22bで分離された気体状態の冷媒は、最下流側に配置される冷媒気液分離器22cに供給される前に、冷媒圧縮機23a,23bによって圧縮されて冷媒冷却器24a,24bによって冷却される過程を経ることができる。上流側に配置される冷媒気液分離器22a,22bで分離された液体状態の冷媒は、気体状態の冷媒が最下流側に配置される冷媒気液分離器22cに供給される前に、さらに詳しくは、気体状態の冷媒が冷媒冷却器24bによって冷却される前に、この気体状態の冷媒と混合される。
(第3実施形態)
図8aは、本発明の第3実施形態による高圧天然ガス噴射エンジン(例えばME−GIエンジン)を有する海上構造物の燃料供給システムを示した構成図である。図8aに示す第3実施形態の燃料供給システムは、上記の第1実施形態の燃料供給システムに比べてボイルオフガスを圧縮させる前に予熱するという点においてのみ異なるので、以下の説明では第1実施形態との相違点を中心に説明する。
図8aに示すように、本発明の第2実施形態による高圧天然ガス噴射エンジンを有する海上構造物の燃料供給システムによれば、液化ガス貯蔵タンク11で発生して排出されたボイルオフガス(NBOG)は、ボイルオフガス圧縮部13で12乃至45bara(絶対圧)程度の中圧に圧縮された後、再液化装置20に供給される前にボイルオフガス圧縮部13の上流側に設置されたボイルオフガス予熱器41に供給される。ボイルオフガス圧縮部13で約12乃至45baraに圧縮されて中間冷却器15を介して40℃程度に冷却されたボイルオフガスは、ボイルオフガス予熱器41で液化ガス貯蔵タンク11から排出された極低温のボイルオフガスと熱交換されることによって冷却された後、再液化装置20に供給される。
第3実施形態によれば、再液化装置20に供給されるボイルオフガスの温度をボイルオフガス予熱器41によって下げることができ、コールドボックス21での熱負荷を減少させることができる。また、ボイルオフガス圧縮部13に供給される極低温状態のボイルオフガスと、ボイルオフガス圧縮部13で圧縮された相対的に温度の高いボイルオフガスとを、ボイルオフガス圧縮部13の上流側に位置したボイルオフガス予熱器41で熱交換することで、ボイルオフガス圧縮部に供給されるボイルオフガスの温度を上昇させ、ボイルオフガス圧縮部(すなわち、ボイルオフガス圧縮機)の入口温度を一定に維持できるようになる。
ボイルオフガス圧縮部13で圧縮された後、ボイルオフガス予熱器41を通過したボイルオフガスは、上記の第1実施形態の燃料供給システムのように再液化装置20に供給される。さらに、再液化装置20で液化エネルギー、すなわち冷熱を供給されて再液化された液化ボイルオフガス(LBOG)は、高圧ポンプ33によって150乃至400bara程度の高圧に圧縮された後、高圧気化器37に供給される。高圧気化器37で気化されたボイルオフガスは、引き続き高圧天然ガス噴射エンジン、例えばME−GIエンジンに燃料として供給される。
(第3実施形態の変形例)
図8bには本発明の好ましい第3実施形態の変形例による燃料供給システムが図示されている。本第3実施形態の変形例は、再液化装置20の構成が上記の第3実施形態に比べて部分的に異なる。
すなわち、図8bに例示された本第3実施形態の変形例による再液化装置20は、図2bに例示された第1実施形態の変形例による再液化装置20と同様に、冷媒とボイルオフガスとの熱交換が行われるコールドボックス21、該コールドボックス21で加熱されて少なくとも部分的に気化された冷媒を圧縮するための圧縮手段、圧縮された冷媒を膨脹させて温度を下げるための膨脹手段、及び気体状態の冷媒と液体状態の冷媒とを分離するための冷媒気液分離器を含む。
特に、図8bに例示された本第3実施形態の変形例による再液化装置20は、図2bと同様に、複数の冷媒気液分離器22a,22b,22cを含み、これらの複数の冷媒気液分離器の中で最下流側に配置される冷媒気液分離器22cには上流側に配置される冷媒気液分離器22a,22bで分離された気体状態の冷媒と液体状態の冷媒とが混合された後、供給される。上流側に配置される冷媒気液分離器22a,22bで分離された気体状態の冷媒は、最下流側に配置される冷媒気液分離器22cに供給される前に、冷媒圧縮機23a,23bによって圧縮されて冷媒冷却器24a,24bによって冷却される過程を経ることができる。上流側に配置される冷媒気液分離器22a,22bで分離された液体状態の冷媒は、気体状態の冷媒が最下流側に配置される冷媒気液分離器22cに供給される前に、さらに詳しくは、気体状態の冷媒が冷媒冷却器24bによって冷却される前に、この気体状態の冷媒と混合される。
(第4実施形態)
図9aは、本発明の第4実施形態による高圧天然ガス噴射エンジン(例えばME−GIエンジン)を有する海上構造物の燃料供給システムを示した構成図である。図9aに示す第4実施形態の燃料供給システムは、上記の第3実施形態の燃料供給システムに比べて超過ボイルオフガスを処理するための超過ボイルオフガス消費手段、すなわち二元燃料ディーゼル機関(DFDE)と、安定した燃料供給のための手段、すなわちLNG供給ラインとが追加されたという点において異なるので、以下の説明では第2実施形態との相違点を中心に説明する。
ここで、超過ボイルオフガスとは、高圧ガス噴射エンジンで必要とする液化ボイルオフガス量より多いボイルオフガスを意味する。超過ボイルオフガスが発生する場合は、高圧ガス噴射エンジンが運転中であってもボイルオフガスの発生量が多いか、高圧ガス噴射エンジンが低速で運転しているか、又は運転をしていない場合(例えば入港するか、運河を通過する場合)に発生し得る。
本発明の第4実施形態による高圧天然ガス噴射エンジンを有する海上構造物の燃料供給システムによれば、高圧天然ガス噴射エンジンの負荷が減るか、又は発生したボイルオフガスの量が多い場合、超過液化ボイルオフガス(LBOG)は、バッファタンク31の下流で燃料供給ラインL3から分岐するLBOG復帰ラインL4に設置されるLBOG膨脹バルブ51を介して減圧され、減圧過程で発生するフラッシュガスを含むLBOGは、気液分離器を介して液体成分(LBOG)と気体成分(フラッシュガス)とに分離された後、液体成分はLBOG復帰ラインL4を介して貯蔵タンク11に戻される。
さらに詳しくは、LBOG膨脹バルブ51で減圧されてフラッシュガスを含むLBOGは、LBOG気液分離器53に供給されて液体成分と気体成分とに分離され、LBOG気液分離器53で分離された気体成分(すなわち、フラッシュガス)は、燃料ガス供給ラインL6を介して、発電などのために海上構造物内に設置され得る超過ボイルオフガス消費手段、すなわち二元燃料ディーゼル機関(DFDE)に燃料として供給される。二元燃料ディーゼル機関に供給される燃料ガスの圧力は、燃料ガス供給ラインL6の途中におけるLBOG気液分離器53の下流側に設置される圧力調節バルブによって調節されることができ、燃料ガス供給ラインL6の途中に設置される燃料ガスヒータ55で燃料ガスの温度は二元燃料ディーゼル機関で要求する温度まで加熱され得る。また、LBOG気液分離器53で分離された液体成分は、LBOG復帰ラインL4を介して貯蔵タンクに戻される。
この時、二元燃料ディーゼル機関に対する燃料ガス供給圧力は、一般に5乃至8bara程度であるため、LBOG気液分離器53で分離された液体成分の圧力が依然として常圧より高い場合がある。この場合、LBOG気液分離器53で分離された液体成分(すなわち、LBOG)は、他のLBOG膨脹バルブ52を介して追加的に減圧され、引き続き他のLBOG気液分離器54に供給されて液体成分(LBOG)と気体成分(フラッシュガス)とに分離された後、常圧の液体成分は、LBOG復帰ラインL4を介して貯蔵タンク11に戻される。他のLBOG気液分離器54で分離された気体成分は、他の超過ボイルオフガス消費手段としてのガス燃焼装置(GCU;Gas Combustion Unit)に供給されて燃焼されることによって消費され得る。
一方、二元燃料ディーゼル機関に供給される燃料が不足した場合、高圧天然ガス噴射エンジン(すなわち、ME−GI)に燃料を供給する燃料供給ラインL3から分岐されて二元燃料ディーゼル機関(すなわち、DFDE)に燃料を供給する燃料ガス供給ラインL6に連結される分岐ラインL5を介して二元燃料ディーゼル機関に燃料が追加的に供給され得る。分岐ラインL5には圧力降下のためにバルブが設置される。
また、ボイルオフガス再液化装置が作動しない、または貯蔵タンク11で発生するボイルオフガスの量が少ない場合、貯蔵タンク11内に設置されたLNG供給ポンプ57及びLNG供給ラインL7を介して貯蔵タンク11に収容されたLNGをバッファタンク31に供給することによって燃料を供給できる。
このように、二元燃料ディーゼル機関は、圧力差によって貯蔵タンク11に戻される途中のLBOGから発生し得るフラッシュガスを処理できるフラッシュガス処理手段として機能するようになる。
一方、図面には示していないが、LBOG気液分離器53で分離された気体成分は、二元燃料ディーゼル機関の代わりにガスタービンや、ボイラーなどのような消費先に供給されて燃料として使用され得る。また、この気体成分は、大気中に天然ガスを放出するガス放出装置や、大気中で燃焼させるガス燃焼装置(例えばフレアタワー)などに供給されて処理され得る。この時、二元燃料ディーゼル機関、ガスタービン、ボイラー、ガス放出装置やフレアタワーなどは超過ボイルオフガス消費手段(フラッシュガス処理手段)に含まれ、このような超過ボイルオフガス消費手段に供給される気体成分は、燃料ガスヒータ55で加熱され得る。
ボイルオフガス圧縮部13で12乃至45bara程度の中圧に圧縮された後、再液化装置20で液化されたボイルオフガスをME−GIエンジンのような高圧天然ガス噴射エンジンですべて消費できない場合は、中圧状態の液化されたボイルオフガスを貯蔵タンク11に戻す必要がある。例えば、本発明者らは、貯蔵タンク11の圧力は常圧状態であるため、液化されたボイルオフガスを貯蔵タンクに供給する前に圧力を下げる必要があるが、圧力を下げる過程でフラッシュガスが発生するという点を認識してフラッシュガスを処理できる手段、すなわち超過ボイルオフガス消費手段を備えた燃料供給システムを発明した。このように、本発明によれば、上記のようなフラッシュガスを処理できる手段、すなわち超過ボイルオフガス消費手段が具備されているため、再液化装置に供給されるボイルオフガスを12乃至45bara程度の中圧に圧縮して供給でき、それにより再液化時のエネルギー消耗量を低減できるようになる。
(第4実施形態の変形例)
図9bには本発明の好ましい第4実施形態の変形例による燃料供給システムが図示されている。本第4実施形態の変形例は、再液化装置20の構成が上記の第4実施形態に比べて部分的に異なり、超過ボイルオフガスが発生する場合、ボイルオフガス圧縮部13から又はその下流側の終端で分岐されるラインを介して超過ボイルオフガスを処理するという点において第4実施形態に比べて異なる。
図9bに例示された本第4実施形態の変形例による再液化装置20は、図2bに例示された第1実施形態の変形例による再液化装置20と同様に、冷媒とボイルオフガスとの熱交換が行われるコールドボックス21、該コールドボックス21で加熱されて少なくとも部分的に気化された冷媒を圧縮するための圧縮手段、圧縮された冷媒を膨脹させて温度を下げるための膨脹手段、及び気体状態の冷媒と液体状態の冷媒とを分離するための冷媒気液分離器を含む。
特に、図9bに例示された本第4実施形態の変形例による再液化装置20は、図2bと同様に、複数の冷媒気液分離器22a,22b,22cを含み、これらの複数の冷媒気液分離器の中で最下流側に配置される冷媒気液分離器22cには上流側に配置される冷媒気液分離器22a,22bで分離された気体状態の冷媒と液体状態の冷媒とが混合された後、供給される。上流側に配置される冷媒気液分離器22a,22bで分離された気体状態の冷媒は、最下流側に配置される冷媒気液分離器22cに供給される前に、冷媒圧縮機23a,23bによって圧縮されて冷媒冷却器24a,24bによって冷却される過程を経ることができる。上流側に配置される冷媒気液分離器22a,22bで分離された液体状態の冷媒は、気体状態の冷媒が最下流側に配置される冷媒気液分離器22cに供給される前に、さらに詳しくは、気体状態の冷媒が冷媒冷却器24bによって冷却される前に、この気体状態の冷媒と混合される。
また、図9bに例示された第4実施形態の変形例による燃料供給システムは、所要量より多くのボイルオフガスが発生する場合、ボイルオフガス圧縮部13から分岐する第2分岐ラインL8を介して超過ボイルオフガスを超過ボイルオフガス消費手段としての二元燃料ディーゼル機関(DFDE)に供給して使用するように構成できる。この時、ボイルオフガス圧縮部13に含まれた中間冷却器15でボイルオフガスの温度を約40℃に冷却させるため、二元燃料ディーゼル機関に供給されるボイルオフガスの温度を調節するための別途のヒータなどの装置は省略され得る。
又は、超過ボイルオフガスをボイルオフガス圧縮部13の後端で分岐する第3分岐ラインL9を介して他の超過ボイルオフガス消費手段としてのガスタービンに供給して使用するように構成できる。同様に、この場合もガスタービンに供給されるボイルオフガスの温度を調節するための別途の装置は省略され得る。
また、図9bに例示された第4実施形態の変形例による燃料供給システムは、上記の第4実施形態に比べてLBOG復帰ラインL4にLBOG膨脹バルブ及びLBOG気液分離器がそれぞれ1つずつ配置されるものに構成されているが、必要に応じて上記の第4実施形態と同様に、他のLBOG膨脹バルブ52及びLBOG気液分離器54が追加的に配置されるように構成され得る。
(第5実施形態)
図10aは、本発明の第5実施形態による高圧天然ガス噴射エンジン(例えばME−GIエンジン)を有する海上構造物の燃料供給システムを示した構成図である。図10aに示す第5実施形態の燃料供給システムは、上記の第3実施形態の燃料供給システムに比べて超過ボイルオフガスを処理するための手段、すなわちガス燃焼装置(GCU;Gas Combustion Unit)等と、安定した燃料供給のための手段、すなわちLNG供給ラインとが追加されたという点において異なる。また、超過ボイルオフガスが発生しないようにボイルオフガスのうち一部を再液化前に分岐させて消費するための手段、すなわち二元燃料ディーゼル機関(DFDE)又はガスタービンなどを有するという点において異なる。以下の説明では第3実施形態との相違点を中心に説明する。
本発明の第5実施形態による高圧天然ガス噴射エンジンを有する海上構造物の燃料供給システムによれば、高圧天然ガス噴射エンジンの負荷が減るか、又は発生したボイルオフガスの量が多くて超過液化ボイルオフガス(LBOG)が発生することが予想される場合は、ボイルオフガス圧縮部13で圧縮された又は圧縮されている途中のボイルオフガスを分岐ラインを介して分岐させて超過ボイルオフガス消費手段で使用する。
すなわち、超過ボイルオフガスをボイルオフガス圧縮部13で分岐する第2分岐ラインL8を介して超過ボイルオフガス消費手段としての二元燃料ディーゼル機関(DFDE)に供給して使用するように構成できる。この時、ボイルオフガス圧縮部13に含まれた中間冷却器15でボイルオフガスの温度を約40℃に冷却させるため、二元燃料ディーゼル機関に供給されるボイルオフガスの温度を調節するための別途のヒータなどの装置は省略され得る。
又は、超過ボイルオフガスをボイルオフガス圧縮部13の後端で分岐する第3分岐ラインL9を介して他の超過ボイルオフガス消費手段としてのガスタービンに供給して使用するように構成できる。同様に、この場合もガスタービンに供給されるボイルオフガスの温度を調節するための別途の装置は省略され得る。
一方、上記のように、再液化装置20に供給されるボイルオフガスの量を減少させたにもかかわらず、高圧天然ガス噴射エンジンで要求するボイルオフガスの量より供給される燃料としてのボイルオフガスの量が多い場合は、超過ボイルオフガスを、上記の第4実施形態と同様に処理する。
すなわち、超過ボイルオフガスは、バッファタンク31の下流で燃料供給ラインL3から分岐するLBOG復帰ラインL4に設置されるLBOG膨脹バルブ51を介して減圧され、減圧過程で発生するフラッシュガスを含むLBOGは、LBOG気液分離器53を介して液体成分(LBOG)と気体成分(フラッシュガス)とに分離された後、液体成分はLBOG復帰ラインL4を介して貯蔵タンク11に戻される。LBOG気液分離器53で分離された気体成分(すなわち、フラッシュガス)は、燃料ガス供給ラインL6を介して、超過ボイルオフガス消費手段としてのガス燃焼装置(GCU)に燃料として供給される。
一方、高圧天然ガス噴射エンジン(すなわち、ME−GI)に燃料を供給する燃料供給ラインL3から分岐されて燃料ガス供給ラインL6に連結される分岐ラインL5を介して超過ボイルオフガスがGCUに追加的に供給され得る。分岐ラインL5には圧力降下のためにバルブが設置される。
また、上記の第4実施形態と同様に、ボイルオフガス再液化装置が作動しない、または貯蔵タンク11で発生するボイルオフガスの量が少ない場合、貯蔵タンク11内に設置されたLNG供給ポンプ57及びLNG供給ラインL7を介して貯蔵タンク11に収容されたLNGをバッファタンク31に供給することによって燃料を供給できる。
これまで説明した第4及び第5実施形態において、発生したフラッシュガスを処理するための手段として説明されたDFDE(第4実施形態)、GCU(第5実施形態)などの装置と、フラッシュガスが発生しないように超過ボイルオフガスを再液化する前に予め消費する手段として説明されたDFDE(第5実施形態)、ガスタービン(第5実施形態)などの装置は、すべてフラッシュガスの発生を抑制できるものであるから、フラッシュガス抑制手段と通称することができる。さらに、これらの装置は、いずれも高圧天然ガス噴射エンジンで必要とする燃料の量より多量の超過ボイルオフガスを消費できるものであるから、超過ボイルオフガス消費手段と通称することもできる。
(第5実施形態の変形例)
図10bには本発明の好ましい第5実施形態の変形例による燃料供給システムが図示されている。本第5実施形態の変形例は、再液化装置20の構成が上記の第5実施形態に比べて部分的に異なる。
すなわち、図10bに例示された本第5実施形態の変形例による再液化装置20は、図2bに例示された第1実施形態の変形例による再液化装置20と同様に、冷媒とボイルオフガスとの熱交換が行われるコールドボックス21、該コールドボックス21で加熱されて少なくとも部分的に気化された冷媒を圧縮するための圧縮手段、圧縮された冷媒を膨脹させて温度を下げるための膨脹手段、及び気体状態の冷媒と液体状態の冷媒とを分離するための冷媒気液分離器を含む。
特に、図10bに例示された本第5実施形態の変形例による再液化装置20は、図2bと同様に、複数の冷媒気液分離器22a,22b,22cを含み、これらの複数の冷媒気液分離器の中で最下流側に配置される冷媒気液分離器22cには上流側に配置される冷媒気液分離器22a,22bで分離された気体状態の冷媒と液体状態の冷媒とが混合された後、供給される。上流側に配置される冷媒気液分離器22a,22bで分離された気体状態の冷媒は、最下流側に配置される冷媒気液分離器22cに供給される前に、冷媒圧縮機23a,23bによって圧縮されて冷媒冷却器24a,24bによって冷却される過程を経ることができる。上流側に配置される冷媒気液分離器22a,22bで分離された液体状態の冷媒は、気体状態の冷媒が最下流側に配置される冷媒気液分離器22cに供給される前に、さらに詳しくは、気体状態の冷媒が冷媒冷却器24bによって冷却される前に、この気体状態の冷媒と混合される。
(第6実施形態)
図11は、本発明の第6実施形態による高圧天然ガス噴射エンジン(例えばME−GIエンジン)を有する海上構造物の燃料供給システムを示した構成図である。図11に示す第6実施形態の燃料供給システムは、上記した第1乃至第5実施形態の燃料供給システムに含まれたバッファタンクの代わりに再凝縮機(Recondenser)を使用するという点において異なる。
本発明の第6実施形態による高圧天然ガス噴射エンジンを有する海上構造物の燃料ガス供給システムによれば、液化ガス貯蔵タンク110で発生して排出されたボイルオフガス(NBOG)は、ボイルオフガス圧縮部113で12乃至45bara(絶対圧)程度の中圧に圧縮された後、再液化装置120に供給される。再液化装置120で液化エネルギー、すなわち冷熱を供給されて再液化された液化ボイルオフガス(LBOG)は、高圧ポンプ133によって150乃至400bara程度の高圧に圧縮された後、高圧気化器137に供給される。高圧気化器137で気化されたボイルオフガスは引き続き高圧天然ガス噴射エンジン、例えばME−GIエンジンに燃料として供給される。
貯蔵タンクは、LNGなどの液化ガスを極低温状態に貯蔵できるように密封壁及び断熱壁を備えているが、外部から伝達される熱を完壁に遮断することはできない。そのため、貯蔵タンク110内では液化ガスの蒸発が継続的に行われ、ボイルオフガスの圧力を適正な水準に維持するために、ボイルオフガス排出ラインL11を介して貯蔵タンク110内部のボイルオフガスを排出させる。
排出されたボイルオフガスは、ボイルオフガス排出ラインL11を介してボイルオフガス圧縮部113に供給される。ボイルオフガス圧縮部113は、1つ以上のボイルオフガス圧縮機114を含む。図示していないが、ボイルオフガス圧縮部113は、ボイルオフガス圧縮機114で圧縮されるとともに温度が上昇したボイルオフガスを冷却させるための1つ以上の中間冷却器(図示せず)を含むことができる。図11では3つのボイルオフガス圧縮機114を含む3段圧縮のボイルオフガス圧縮部113が例示されている。
ボイルオフガス圧縮部113で圧縮されたボイルオフガスは、ボイルオフガス供給ラインL12を介して再液化装置120に供給される。再液化装置120に供給されたボイルオフガスは、再液化装置120のコールドボックス、すなわち、主極低温熱交換器(Main Cryogenic Heat Exchanger)121を通過しながら冷媒によって冷却されて再液化される。
再液化装置120としては、LNGなどの液化ガスから発生するボイルオフガスなどを液化させることができるものであれば、いかなる構成のものでも使用され得る。すなわち、上記の第1乃至第5実施形態及びその変形例で説明されたような構成の非爆発性混合冷媒を活用した再液化システムが使用され得る。また、従来の公知の窒素冷媒を活用した再液化システムが使用されることもでき、例えば国際公開第2007/117148号及び国際公開第2009/136793号などに開示されているものが使用され得る。
コールドボックス121での熱交換を介して再液化されたボイルオフガスは、再凝縮機131に供給されて一時貯蔵される。本実施形態によれば、再液化された液化ボイルオフガスと、液化ガス貯蔵タンク110から供給される液化ガス、すなわちLNGを再凝縮機131に一時貯蔵し、液化ガス貯蔵タンク110から再液化装置120に供給されるボイルオフガスのうち一部又は全体を再凝縮機131に迂回させて凝縮させることによって、再液化装置120に流入するボイルオフガスの量を減少させるか、又はなくすことによって全体的なシステム効率を向上させることができる。以下、詳しく説明するように、再凝縮機131は、再液化装置120で再液化された後、再凝縮機131に供給されて一時貯蔵される液化ボイルオフガス及び貯蔵タンク110から再凝縮機131に直接供給された液化ガス(すなわち、LNG)のうち少なくとも1つからの冷熱を利用して、発生したボイルオフガスのうち一部又は全部を再凝縮させる。
再凝縮機131は、上記の実施形態におけるバッファタンクと同様に、気体成分と液体成分とを分離する機能を行うこともできるので、再凝縮機131に一時貯蔵された液化ガスは気体状態と液体状態とに分離され、液体状態の液化ガスのみが燃料供給ラインL13を介して高圧ポンプ133に供給される。高圧ポンプ133は、複数個、例えば2つが並列に設置され得る。
高圧ポンプ133では液化ガスを高圧天然ガス噴射エンジン(例えばME−GIエンジン)で要求する燃料供給圧力まで加圧して送出する。高圧ポンプ133から送出される液化ガスは150〜400bara(絶対圧)程度の高圧を有する。
高圧ポンプ133での十分な有効吸込みヘッド(NPSH;Net Positive Suction Head)を保証できるように、必要な場合、燃料供給ラインL13の再凝縮機131と高圧ポンプ133との間にはブースターポンプ132が設置され得る。
また、上記の第2実施形態と同様に、高圧ポンプ133で高圧に圧縮された液化ガスは、高圧気化器137に供給される前に、再液化装置120に供給されるボイルオフガスと熱交換器135で熱交換されるようにシステムを構成しても良い。高圧気化器137に供給される液化ガスは、再液化装置120に供給されるボイルオフガスに比べて相対的に低温であるため、熱交換器135を通過しながら再液化装置120に供給されるボイルオフガスの温度を下げることができ、再液化装置120での再液化エネルギーを低減できる。加えて、高圧気化器137に供給される液化ガスは、熱交換器135を通過しながら加熱されて高圧気化器137での気化エネルギーを低減できる。
再凝縮機131で再凝縮されて一時貯蔵された液化ボイルオフガスは、必要な場合、LBOG復帰ラインL14を介して液化ガス貯蔵タンク110に戻され得る。図11に図示していないが、LBOG復帰ラインL14には、図9a乃至図10bを参照して説明した第4及び第5実施形態及びその変形例のような膨脹バルブ、気液分離器などが設置され得る。
しかし、本第6実施形態による燃料ガス供給システムによれば、海上構造物の運航中は、大半の期間において、貯蔵タンクで発生したボイルオフガスを液化させて高圧天然ガス噴射エンジンで燃料として全部使用しており、それによりLBOG復帰ラインL14を介して貯蔵タンク110に戻る液化ガスをなくすことができる。LBOG復帰ラインL14は、海上構造物が港内に接岸するために引かれる場合、運河を通過する場合、又は低速運航中の場合のように、高圧天然ガス噴射エンジンの燃料消耗量が貯蔵タンクで発生したボイルオフガスの量より少ないという極めて例外的な場合に、LBOGを再凝縮機131から貯蔵タンク110に戻す用途に使用され得る。また、再凝縮機の故障やメンテナンス時の再凝縮機131内に残っているLBOGを貯蔵タンク11に戻す用途に使用され得る。
本実施形態によれば、海上構造物の運航時の大半の期間においてLBOGを貯蔵タンクに戻すことなく全量をエンジンで使用できるので、その期間は貯蔵タンクに戻るLBOG自体をなくすことができ、それによりLBOGの復帰途中に圧力差によって発生し得るフラッシュガスを基本的に除去できる。本明細書において、「フラッシュガスを除去する」という表現は、発生したフラッシュガスを消耗することによってフラッシュガスが貯蔵タンク110の内部に供給されないようにすることと、再液化されたボイルオフガスが貯蔵タンク11に戻ることを防止して復帰途中のフラッシュガスの発生を根本的に遮断することによってフラッシュガスの発生自体を防止することをすべて含む概念である。
また、本明細書における「高圧天然ガス噴射エンジンの燃料消耗量が貯蔵タンクで発生したボイルオフガスの量より多い、または少ない」という表現のうち「高圧天然ガス噴射エンジンの燃料消耗量」は、高圧天然ガス噴射エンジンの他にも海上構造物内においてボイルオフガスを燃料として使用するエンジン、例えばDFDE、ガスタービンなどが存在する場合、これらのエンジンでの燃料消耗量と高圧天然ガス噴射エンジンの燃料消耗量とを足したものを意味する。ボイルオフガスを燃料として使用するエンジンが高圧天然ガス噴射エンジンのみの場合は、高圧天然ガス噴射エンジンの燃料消耗量のみを意味することは勿論である。
液化ガス貯蔵タンク110で発生するボイルオフガスの量が高圧天然ガス噴射エンジンで要求する燃料量より少ない場合などは、LNG供給ラインL17を介して貯蔵タンク110に収容されたLNGを再凝縮機131に直接供給できる。貯蔵タンク110に収容されたLNGを再凝縮機131に直接供給できるように、LNG供給ラインL17の一端、すなわち液化ガス貯蔵タンク110内部に位置するLNG供給ラインL17の開始地点には潜水式ポンプ157が設置される。本実施形態によれば、再凝縮機131(又は、第1乃至第5実施形態及びその変形例におけるバッファタンク31)での内部圧力は、ボイルオフガス圧縮部130で12乃至45bara程度の中圧に圧縮されたボイルオフガスの圧力とほぼ同じ圧力を有するので、潜水式ポンプ157のみで貯蔵タンク110に常圧程度の圧力に貯蔵されている液化ガスを中圧まで圧縮させるには限界がある可能性がある。したがって、LNG供給ラインL17の途中にブースターポンプ158を設置し、潜水式ポンプ157によって貯蔵タンクの外部に排出された液化ガスを再凝縮機131(又はバッファタンク)内部の圧力と同じ水準の圧力まで圧縮させることが好ましい。
液化ガス貯蔵タンク110で発生するボイルオフガスの量が高圧天然ガス噴射エンジンで要求する燃料量より多く、超過液化ボイルオフガス(LBOG)が発生することが予想される場合は、ボイルオフガス圧縮部113で圧縮された又は段階的に圧縮されている途中のボイルオフガスを、ボイルオフガス分岐ラインL18を介して分岐させてボイルオフガス消費手段で使用する。ボイルオフガス消費手段としては、ME−GIエンジンに比べて相対的に低い圧力の天然ガスを燃料として使用できるガスタービンやDFDEなどが使用され得る。
一方、上記のように、再液化装置120の負荷を減少させるか、または再液化装置の運転を完全に中断させて全体システムの効率を向上させることができるように、本実施形態による燃料ガス供給システムは、ボイルオフガス供給ラインL12から分岐してボイルオフガス圧縮部113で圧縮されたボイルオフガスのうち一部又は全体を再液化装置を迂回して再凝縮機131に直接供給できるボイルオフガス迂回ラインL21を含むことができる。
さらに詳しくは、ボイルオフガス迂回ラインL21は、ボイルオフガス供給ラインL12の熱交換器135の下流側で分岐して再凝縮機131に連結されることが好ましい。必要な場合、再凝縮機131の圧力を調節できるように、ボイルオフガス迂回ラインL21には圧力制御バルブ161が設置されることが好ましい。
液化ガス貯蔵タンク110で発生するボイルオフガスの量が高圧天然ガス噴射エンジンで要求する燃料量より少ない場合は、貯蔵タンク110内のLNGを再凝縮機131に供給して不足した燃料量を補充し、この時、再液化装置に供給されるボイルオフガスのうち一部をボイルオフガス迂回ラインL21を介して再凝縮機131に供給してLNGと混合させて再凝縮させることによって再液化装置の負荷を減少させることができる。
以下、上記のように構成された第6実施形態の燃料ガス供給システムが、例えばLNG運搬船に設置された時の再凝縮機131を活用した運転方法を、図11を参照して説明する。
第6実施形態による燃料ガス供給システムは、再凝縮機131を具備しているので、貯蔵タンク110で発生したボイルオフガスを再液化装置120のコールドボックス121にすべて供給することなく、少なくとも一部のボイルオフガスを再凝縮機131に迂回させることによって、エネルギー消耗の多い再液化装置の負荷を減少させるか、又は場合によっては再液化装置の作動を完全に中止できる。
貯蔵タンク110をほぼ空にして航海するバラスト(ballast)航海時には、ボイルオフガスの発生量が比較的に少ない。この場合は、貯蔵タンクから自然に発生するボイルオフガスだけでは高圧天然ガス噴射エンジンでの燃料要求量を満たすことができないので、貯蔵タンク110に貯蔵されたLNGをLNG供給ラインL17を介して再凝縮機131に直接供給する。
加えて、液化ガス貯蔵タンク110から排出されたボイルオフガスはボイルオフガス圧縮部113で12乃至45bara程度の中圧に圧縮され、熱交換器135で冷却された後、ボイルオフガス迂回ラインL21を介して全量が再凝縮機131に供給される。
バラスト航海時には発生するボイルオフガスの量が少ないため、発生したボイルオフガスは全量が再凝縮機131に供給されて再凝縮され得る。すなわち、バラスト運航の過程中においてには、大半の期間、貯蔵タンクで発生したすべてのボイルオフガスを再凝縮機131で再凝縮することによって、再液化装置の稼動を中断させることができる。ただし、バラスト運航過程中において、海上構造物が引かれる途中のように、高圧天然ガス噴射エンジンが低速で運転しているか、または作動を止めている場合は、高圧天然ガス噴射エンジンの燃料消耗量がない、または顕著に減少するため、貯蔵タンクで発生したすべてのボイルオフガスを再凝縮させて燃料として消耗することができず、部分的に再液化装置で再液化させることもできるが、この場合はバラスト運航の過程中において極めて例外的な場合である。
LNG供給ラインL17を介して再凝縮機131に供給されたLNGは過冷却された状態であるから、ボイルオフガス迂回ラインL21を介して供給されてきたボイルオフガスは、再凝縮機131内で過冷却されたLNGと混合される過程でLNGから冷熱を供給されて全量が凝縮され得る。
このように、本実施形態の燃料ガス供給システムによれば、バラスト時に発生したボイルオフガスを全部再凝縮機131内で再凝縮して高圧天然ガス噴射エンジンでの燃料として使用することができ、それにより、貯蔵タンク110に戻るLBOGが全く存在しない。
また、発生したボイルオフガスを全量再凝縮機131内で処理できるため、電力消耗が多くエネルギーを多く使用する再液化装置120を全く稼動させないことができ、相当量のエネルギーを節約できるようになる。
一方、貯蔵タンク110を満量にして航海する積載状態(laden)の航海時には、ボイルオフガスの発生量が相対的に多い。この場合は、貯蔵タンクから自然に発生するボイルオフガスを再凝縮機131ですべて処理することができないので、再液化装置120を稼動してボイルオフガスを再液化する。必要な場合、発生したボイルオフガスのうち一部はボイルオフガス迂回ラインL21を介して再凝縮機131に迂回させて再液化装置120での再液化負荷を減少させることによってエネルギーを節約できる。
再液化装置120でボイルオフガスを過冷却状態に冷却するためにボイルオフガスを飽和温度より低い過冷却温度まで冷却することは効率的ではない。しかし、ボイルオフガスを飽和温度まで冷却して液化させる場合は、飽和状態のLBOGが配管に沿って移動しながら加熱されて再び気化される恐れがあるので、再液化装置120でボイルオフガスを液化させる際は、ボイルオフガスを当該圧力での過冷却温度まで冷却させることが好ましい。
国際公開第2007/117148号及び国際公開第2009/136793号などに開示されている従来の公知の再液化装置の場合は、基本的に再液化装置によって再液化されたLBOGをLNG貯蔵タンクに戻す概念を有していたため、LNG貯蔵タンク内部の温度(約−163℃)に合わせて4乃至8baraでの飽和温度より遥かに低い温度にボイルオフガスを過冷却させていた。
しかし、本発明の燃料供給システムによれば、基本的に再液化されたLBOGを高圧天然ガス噴射エンジンに燃料として供給して使用する概念を有しているため、ボイルオフガスを約12乃至45baraに圧縮しており、再液化装置での再液化温度も当該圧力での飽和温度より1℃程度だけ低い温度に再液化装置を運転している。
本発明によれば、再液化装置で再液化されたLBOGを貯蔵タンクに戻さないので、貯蔵タンク内部に貯蔵されたLNGの温度及び圧力を考慮する必要がない。また、従来のLBOGを貯蔵タンクまで移送する配管の長さが相対的に長いことに比べ、本発明の場合、LBOGの過冷却状態を維持しながら移送しなければならない配管の長さが相対的に短いので、飽和温度より過度に低い温度までボイルオフガスを過冷却させる必要がない。
したがって、ボイルオフガスの液化温度を飽和温度より少しだけ低い温度に設定(例えば0.5〜3℃、好ましくは1℃程度だけ過冷却)して再液化装置120を稼動することによって再液化装置の動力消耗を減少させることができる。
この時、ボイルオフガス迂回ラインL21上に設置された圧力制御バルブ161を開閉調節することによって、熱交換器135での熱交換を介して冷却されたボイルオフガスが再凝縮機内に流入することができるようにして再凝縮機131の圧力を適切に調節できる。
また、本実施形態によれば、ボイルオフガスを当該圧力での飽和温度より1℃程度だけ過冷却させて液化させた後、再凝縮機131に供給しても、高圧天然ガス噴射エンジンに燃料として供給される過程でブースターポンプ132及び高圧ポンプ133によって加圧されるので、圧力増加によって飽和状態のLBOGは、その後の過冷却状態が安定して維持され得る。
上記のような本発明の第1乃至第6実施形態及びその変形例による高圧天然ガス噴射エンジンを有する海上構造物の燃料供給システムは、従来に比べて次のような長所を有する。
一般に、ボイルオフガスの再液化効率を上げるためには、ボイルオフガスを高い圧力に圧縮させることが好ましい。しかし、従来は、ボイルオフガスを再液化装置によって再液化して貯蔵タンクに戻し、貯蔵タンクに貯蔵されたLNGは常圧状態を維持していたため、再液化された液化ボイルオフガスの圧力が過度に高く貯蔵タンクに戻る際にフラッシュガス(flash gas)が発生しないように、再液化効率は低いが、4乃至8bara程度の低圧にボイルオフガスを圧縮せざるをえなかった。
それに比べ、本発明によれば、貯蔵タンクから排出されたボイルオフガスを高圧天然ガス噴射エンジンで燃料として使用するため、フラッシュガス発生の心配なくボイルオフガスを従来に比べて高い圧力に圧縮させて再液化させることによって再液化効率を上げることができる。
このように、本発明によれば、再液化されたボイルオフガスを高圧天然ガス噴射エンジン、例えばME−GIエンジンに燃料として供給するため、再液化されたボイルオフガスを貯蔵タンクに再貯蔵のために戻す必要がなく、貯蔵タンクへの復帰時も発生し得るフラッシュガスの発生を防止でき、フラッシュガスの発生が抑制されることによって、再液化前にボイルオフガスの圧力を従来に比べて高い圧力、すなわち12乃至45bara程度の中圧に圧縮させて再液化できる。このような中圧にボイルオフガスを圧縮させて再液化することによって、冷媒によらず再液化効率を向上させることができ、特に非爆発性混合冷媒による再液化効率は、窒素ガス冷媒を使用する場合に比べてさらに増大させることができる。すなわち、従来の窒素ガス冷媒を使用する場合に比べて非爆発性混合冷媒を使用する本発明の再液化装置は、相当少ないエネルギーを使用するだけでボイルオフガスを再液化してエンジンに燃料として供給することが可能になる。
再液化装置20,120としては、LNGなどの液化ガスから発生するボイルオフガスなどを液化させることができるものであれば、いかなる構成のものでも使用され得る。すなわち、上記の第1乃至第6実施形態及びその変形例で説明されたような構成の非爆発性混合冷媒を活用した再液化システムが使用され得る。また、従来の公知の混合冷媒又は窒素冷媒を活用した再液化システムが使用されることもでき、例えば、国際公開第2007/117148号及び国際公開第2009/136793号、大韓民国特許公開第2006−0123675号、大韓民国特許公開第2001−0089142号等に開示されているものが使用され得る。
本発明による燃料ガス供給システムによれば、海上構造物の運航中は、大半の期間において、貯蔵タンクで発生したボイルオフガスを液化させて高圧天然ガス噴射エンジンで燃料としてすべて使用しており、それによりLBOG復帰ラインL4,L14を介して貯蔵タンク11に戻る液化ガスをなくすことができる。LBOG復帰ラインL4,L14は、海上構造物が港内に接岸するために引かれる場合、運河を通過する場合、又は低速運航中の場合のように、高圧天然ガス噴射エンジンの燃料消耗量が貯蔵タンクで発生したボイルオフガスの量より少ない例外的な場合に、LBOGをバッファタンク31又は再凝縮機131から貯蔵タンク11,110に戻す用途に使用され得る。また、バッファタンク(又は再凝縮機)の故障やメンテナンス時のバッファタンク(又は再凝縮機)内に残っているLBOGを貯蔵タンク11,110に戻す用途に使用され得る。
本発明によれば、海上構造物の運航時の大半の期間においてLBOGを貯蔵タンクに戻すことなく全量をエンジンで使用できるので、その期間は貯蔵タンクに戻るLBOG自体をなくすことができ、それによりLBOGの復帰途中に圧力差によって発生し得るフラッシュガスを基本的に除去できる。本明細書で「フラッシュガスを除去する」、又は「フラッシュガスの発生を抑制する」という表現は、発生したフラッシュガスを消耗することによってフラッシュガスが貯蔵タンク11の内部に供給されないようにすることと、再液化されたボイルオフガスが貯蔵タンク11に戻ることを防止して復帰途中のフラッシュガス発生を基本的に遮断することによってフラッシュガスの発生自体を防止することをすべて含む概念である。
国際公開第2007/117148号及び国際公開第2009/136793号、大韓民国特許公開第2006−0123675号、大韓民国特許公開第2001−0089142号等に開示されている従来の公知の再液化装置の場合は、基本的に再液化装置によって再液化されたLBOGをLNG貯蔵タンクに戻す概念を有していたため、LNG貯蔵タンク内部の温度(約−163℃)に合わせて4乃至8baraでの飽和温度より遥かに低い温度にボイルオフガスを過冷却させていた。
例えば、従来のHamworthy社のMark III再液化装置(国際公開第2007/117148号に記載の技術)の場合、8baraにボイルオフガスを加圧して−159℃に液化する。この時のボイルオフガスの飽和温度は、約−149.5℃であるから9〜10℃程度が過冷却された状態である。この程度の過冷却が行われなければ、LNG貯蔵タンクに液化ボイルオフガスを回送する場合のフラッシュガスの発生が抑制することができない。しかし、本発明では、液化高圧天然ガス噴射エンジンに燃料として供給される過程で高圧ポンプによって加圧されるため、圧力増加によって飽和状態のLBOGはその後の過冷却状態が安定して維持され得る。本発明では、液化ボイルオフガスを当該圧力での飽和温度より0.5〜3℃、好ましくは1℃程度だけ過冷却させて液化させた後、燃料として供給しても良い利点がある。再液化装置で過冷却を少なくするほど再液化エネルギーの低減効果が大きい。例えば−150℃の温度でボイルオフガスを1℃過冷却させるために必要なエネルギーは、再液化に要する全動力の1%を追加的に必要とする。
本発明の燃料供給システムによれば、基本的に再液化されたLBOGを高圧天然ガス噴射エンジンに燃料として供給して使用する概念を有しているため、ボイルオフガスを約12乃至45baraに圧縮しており、再液化装置での再液化温度も当該圧力での飽和温度より0.5〜3℃、好ましくは1℃程度だけ低い温度に再液化装置を運転している。
本発明によれば、再液化装置で再液化されたLBOGを貯蔵タンクにできるだけ戻さないので、貯蔵タンク内部に貯蔵されたLNGの温度及び圧力を考慮する必要性が低い。また、従来、LBOGを貯蔵タンクまで移送する配管の長さが相対的に長いことに比べて、本発明の場合、LBOGの過冷却状態を維持しながら移送しなければならない配管の長さ(再液化装置(例えば、気液分離器)−高圧ポンプの間の長さ)が相対的に短いので、飽和温度より過度に低い温度までボイルオフガスを過冷却させる必要がない。
すなわち、海洋構造物の運航中には、高圧天然ガス噴射エンジンが必要とする燃料の量は、LNG貯蔵タンクで発生するボイルオフガスの量よりも多い時期(場合)が相当期間存在し、この時期には液化ボイルオフガスを高圧天然ガス噴射エンジンにすべて供給することによって、液化ボイルオフガスをLNG貯蔵タンクへ回送する際に伴うフラッシュガスの発生問題を解決できる。
したがって、ボイルオフガスの液化温度を飽和温度より少しだけ低い温度に設定(例えば0.5〜3℃程度だけ過冷却)して再液化装置20を稼動することによって再液化装置の動力消耗を減少させることができる。
また、本実施形態によれば、ボイルオフガスを当該圧力での飽和温度より1℃程度だけ過冷却させて液化させた後、バッファタンク31に供給しても、高圧天然ガス噴射エンジンに燃料として供給される過程で高圧ポンプ33によって加圧されるため、圧力増加によって飽和状態のLBOGは、その後の過冷却状態が安定して維持され得る。
また、高圧ポンプに供給されるLBOGが中圧範囲に加圧された状態であるため、高圧ポンプにLBOGをポンピングする時の動力も減る利点がある。
従来の再液化装置を具備した海上構造物では、上記のように、ボイルオフガスを貯蔵タンクに戻すことを念頭に置いてボイルオフガスを再液化していたので、復帰時のフラッシュガスの発生を抑制するために、ボイルオフガスの圧力を4乃至8bara程度の低圧に圧縮させることが当然であった。しかし、上記のような本発明の燃料ガス供給システムでは、ボイルオフガスを再液化した後、できるだけ高圧天然ガス噴射エンジンで燃料としてすべて使用するため、ボイルオフガスを12乃至45bara程度の比較的高い圧力に圧縮している。このような概念は、ボイルオフガスを再液化した後、貯蔵タンクに戻していた従来は全く考えられなかった本発明特有の新規かつ進歩的な概念といえる。
また、従来は、再液化されたLBOGを貯蔵タンクに再注入する過程で、減圧によってフラッシュガスが生成され、このフラッシュガスを再度再液化装置に送り再液化装置の効率を落としていたが、本発明では再液化されたLBOGを減圧することなく(むしろ加圧して)高圧天然ガス噴射エンジンで燃料としてできるだけ全量使用することによって、再液化装置の効率を従来に比べて向上させることができる。
このように、本発明の燃料ガス供給システムによれば、大半の運航期間において、ボイルオフガスを再液化した後、高圧天然ガス噴射エンジンで燃料としてすべて使用するため、ボイルオフガスを12乃至45bara程度の比較的高い圧力に圧縮することが可能である。それにより、図6bを参照して上述したように、従来の再液化装置(冷凍サイクル)で消耗される動力に比べ、本発明の再液化装置は、50乃至80%程度の動力だけで運転可能であることがわかる。このように、本発明は、従来に比べて相当低い動力で運転可能であるため、発電機容量を減少させることができ、発電機の小型化が可能で、費用を節減できるようになる。
さらに、従来の再液化装置の場合、待機状態で運転するためには約1乃至1.5MWの電力が消耗されていたが、本発明の場合、第6実施形態で説明したように、バラスト運航中には大半の期間、再液化装置の運転を中断させることができるので、再液化装置で消耗する電力を節約できる。例えば、年間バラスト運航が150日であると仮定し、再液化装置の運転のために燃料消費183g/kWhのディーゼル発電機を使用すると仮定した場合、年間660乃至923tonのHFOを節約できる。2011年9月中旬時点のシンガポールにおけるHFO価格はトンあたり671USD程度であるから、年間0.4乃至0.6mil USDを低減できるという顕著な効果がある。
以上では、本発明の燃料供給システム及び方法がLNG運搬船などの海上構造物に適用された場合を例に挙げて説明されたが、本発明の燃料供給システム及び方法は、陸上での高圧天然ガス噴射エンジンに対する燃料供給に適用されることができることは勿論である。
本発明は、前記実施形態に限定されず本発明の技術的要旨から逸脱しない範囲内で様々に修正又は変形して実施できることは、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者にとって自明なものである。