JP2014500232A - 哺乳類細胞中へのウイルスの侵入の阻害剤 - Google Patents

哺乳類細胞中へのウイルスの侵入の阻害剤 Download PDF

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Abstract

本発明は、哺乳類におけるウイルス感染を阻害するための化合物および方法の開発に関する。ウイルスの宿主細胞中への侵入を予防する非ペプチド性小分子阻害剤を同定するための高スループットアッセイにおける使用のための偽型ウイルスを開発した。
【選択図】図10

Description

関連出願への相互参照
本明細書で開示される主題は、2010年9月13日に出願された米国仮特許出願一連番号61/382,215の利益を主張し、その開示を本明細書にそのまま援用する。
連邦政府により資金提供を受けた研究に関する記載
本明細書で記述される発明は国立衛生研究所の助成金番号1R43A1072861−01A2により支援された。従って、米国政府は本発明において一定の権利を有する。
本発明は、ウイルスの表面上に存在するタンパク質を標的とすることによりウイルスの宿主細胞中への侵入の阻害剤として機能する新規非ペプチド性小分子の発見に向けられている。特に、本発明は、受容体結合およびウイルスの宿主細胞との融合によりインフルエンザウイルスの侵入を媒介するヘマグルチニン(HA)エンベロープ糖タンパク質を特異的に標的とする抗H5N1侵入阻害剤の発見に、およびエボラウイルスの表面タンパク質を標的としてエボラウイルスの宿主細胞中への侵入を予防する阻害剤に向けられている。
ウイルスは地球上で群を抜いて最も豊富な寄生体であり、それらは動物、植物、および細菌を含む全てのタイプの細胞性生命に感染することが分かっている。しかし、様々なタイプのウイルスは限られた範囲の宿主にしか感染することができず、多くは種特異的である。例えば天然痘ウイルスのような一部のウイルスは1つの種(この場合はヒト)にしか感染することができず、狭い宿主範囲を有すると言われる。他のウイルス、例えば狂犬病ウイルスは哺乳類の異なる種に感染することができ、広い範囲を有すると言われる。植物に感染するウイルスは動物には無害であり、他の動物に感染するほとんどのウイルスはヒトには無害である。ウイルスにより引き起こされる一般的なヒトの疾患の例には、感冒、インフルエンザ、水疱および口唇ヘルペスが含まれる。多くの重篤な疾患、例えばエボラ、AIDS、トリインフルエンザおよびSARSはウイルスにより引き起こされる。ウイルスの疾患を引き起こす相対的な能力は、病原性の点から記述される。世界的流行は世界中に広がった流行である。例えば、一般にスペイン風邪と呼ばれる1918年の流感の世界的流行は、異常に重症型の致命的なインフルエンザAウイルスにより引き起こされたカテゴリー5のインフルエンザの世界的流行であった。その犠牲者はしばしば健康な若年成人であり、これは主に年少の、年輩の、またはそうでなければ弱った患者を冒すほとんどのインフルエンザの大流行と対照的であった。広範囲に及ぶ世界的流行(pandemice)を引き起こすことができるウイルスの他の例には、トリインフルエンザウイルス、エボラウイルス、および水疱性口内炎ウイルスが含まれるが、それらに限定されない。
ウイルスの侵入を妨害することは、ウイルス感染を制御するための新規の魅力的な療法戦略である。このアプローチの原理証明は、ペプチド性HIV阻害剤であるエンフビルチド(enfuvirtide)から来ている。ウイルス感染の処置のための侵入阻害剤の療法的利益を確証する一方で、エンフビルチドはペプチド性抗ウイルス薬の潜在的な問題も目立たせてきた。エンフビルチドのような大きな7回繰り返し(heptad repeat)に由来するペプチドは製造に費用がかかり、胃腸管からの乏しい吸収は静脈内送達を余儀なくさせる。
インフルエンザウイルス
トリインフルエンザA(H5N1)ウイルスの拡大している地理的分布はより多くのヒトを感染の危険にさらしており、ヒトの集団中にこれらのウイルスに対する既存の免疫が存在しないことは、新しいインフルエンザの世界的流行の懸念を生じさせてきた(Trampuz et al., Mayo Clin Proc., 79: 523-530 (2004))。加えて、そのウイルスは種の障壁を越えて1997年以来アジアおよび欧州の特定の地域において数多くのヒトの死を引き起こしてきた(Beigel et al., 2005 上記)。現在、ヒトのためのこのウイルスに対する有効なワクチンは存在しない(Cox et al., Topley & Wilson's Microbiology and Microbial Infections, Collier L, Balows A, Sussman M.(編者), ロンドン, pp. 634-698 (2005); Kemble, G., and H. Greenberg, Vaccine, 21: 1789-1795 (2003))。
オルトミクソウイルス科(family Orthomyxoviridae)はインフルエンザA、B、およびCウイルス、ならびにトゴトウイルスおよびイサウイルスを含む(Cox et al., 2005, 上記; Lamb, R.A., and R. M. Krug, Fields Virology, 第4版, vol. 1, pp. 1487-1531, Knipe, D.M., Howley, P.M.(編者), Lippincott Williams and Wilkins Publishers, フィラデルフィア(2001))。ヒトにおけるインフルエンザの世界的流行は、インフルエンザAウイルスにより引き起こされる。インフルエンザAウイルスは、10〜11個のタンパク質をコードする8個の一本鎖のマイナスセンス(negative−sense)ウイルスRNA(vRNA)を含有する(Lamb, R.A., 2001, 上記; Wright, P.F., and R. G. Webster, Fields Virology, 第4版, vol. 1, p. 1533-1579, Knipe, D.M., Howley, P.M.(編者), Lippincott Williams and Wilkins Publishers, フィラデルフィア(2001))。
インフルエンザAウイルスは2個の表面糖タンパク質:ヘマグルチニン(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)を含有する(図1)。HAおよびNAタンパク質の抗原性に基づいて、インフルエンザAウイルスの16種類の異なるHA亜型(H1〜H16)および9種類の異なるNA亜型(N1−N9)が同定されている。これらの内で、限られた数のウイルス亜型のみがヒトにおいて循環する(すなわち、H1〜H3、およびN1、N2)(Lamb, R.A., 2001, 上記; Wright, P.F., 2001, 上記)。
HAは主要なウイルス抗原であり、受容体結合および膜融合活性を媒介し、一方でNAは細胞表面からウイルス粒子を放出させる受容体破壊酵素である(Lamb, R.A., 2001, 上記; Wright, P.F., 2001, 上記)。原型のHAは単一のポリペプチドとして合成され、続いて切断されてHA1およびHA2サブユニットになる。HAの切断は感染性に必要であり、これはそれがHA2の疎水性のN末端を生成し、それがウイルス膜と細胞膜の間の融合を媒介するためである(Steinhauer, D.A., Virology, 258: 1-20 (1999); Skehel, J. J. and D.C. Wiley, Annu. Rev. Biochem., 69: 531-569 (2000); Lamb, R.A., 2001, 上記; Wright, P.F., 2001, 上記)。
HAに媒介される侵入プロセスにおけるいくつかの段階は、新規の抗インフルエンザ療法薬のための魅力的な標的である:
(a)HAのそのシアル酸受容体への付着:HAの受容体結合部位は、それぞれのサブユニット上でHA1の末端の球形部分に位置するポケットであり、多価の付着プロセスで細胞表面のシアル酸残基に結合する。そのポケットを形成する残基(Y98、W153、H183、E190、L194)は、インフルエンザの全ての亜型の間で大部分が保存されている(Skehel, J. J., 2000, 上記)。
従って、受容体結合部位に結合するか、または何らかの他の機構によりその相互作用を妨げるかのどちらかによりそのウイルスの細胞への結合を遮断するであろう阻害剤を開発することができる。いくつかの高分子量ポリマー、例えばポリフェノールおよびリグニンは、そのウイルスの細胞膜への結合を阻害することが報告されている(Sakagami et al., Sieb. Et Zucc. In Vivo, 6: 491-496 (1992); Mochalova et al., Antiviral Research, 23: 179-190 (1994); Sidwell et al., Chemotherapy, 40: 42-50 (1994))。
(b)HAに媒介されるウイルス−細胞融合:インフルエンザウイルスはその宿主細胞に、受容体に媒介されるエンドサイトーシスおよびそれに続くエンドソームにおける酸に活性化される膜融合により侵入する。エンドソーム中の低pH環境は、HAの非膜融合立体構造から膜融合立体構造への移行を誘発するのに必要である。この立体構造変化はその融合ペプチド断片をHA2のアミノ末端からその分子の先端へと再配置する。この立体構造変化の後、その融合ペプチドはウイルス膜をエンドソーム膜と融合させる。エンドソームの酸性化を妨げるエンドソームのH+-ATPアーゼの阻害は、MDCK細胞におけるインフルエンザウイルスの複製を強く阻害する(Hernandez et al., Annu. Rev. Cell Dev. Biol., 12: 627-661 (1996))。しかし、エンドソームのH+-ATPアーゼの活性はウイルス特異的な標的ではなく、H+-ATPアーゼの活性を妨げることは望ましくない毒性の副作用をもたらす可能性がある;
(c)膜融合性ヘアピン三量体(trimer−of−hairpins)構造:クラスI融合タンパク質は次の3種類の別個の立体構造状態を取ることができる:(i)非膜融合性の天然構造、ここでその融合ペプチドはその三量体タンパク質内に埋まっている;(ii)一過性の前ヘアピン中間体、ここでそのN末端の融合ペプチドは延びて宿主細胞の標的膜を貫通する;ならびに(iii)膜融合性ヘアピン三量体構造、ここでそのC末端およびN末端の7回繰り返しペプチド(HR−CおよびHR−N)は6本のらせんの束(six−helix−bundle)の立体構造で会合し、それは融合に重要である(Hernandez et al., 1996, 上記; Dutch et al., Biosci. Rep., 20: 597-612 (2000); Eckert, D. and Kim P., Annu. Rev. Biochem., 70: 777-810 (2001))。その融合ヘアピン三量体構造はタンパク質間相互作用により維持されている。そのHR−N三量体表面のC末端において、空洞に通じている深い溝が存在し、小分子阻害剤に関する可能性のある結合部位として認識されている疎水性のポケットを形成している。その保存された受容体結合ドメインおよび膜融合性ヘアピン三量体構造を標的とすることは、薬剤耐性を与える変化の可能性を小さくするであろう。
インフルエンザの世界的流行
インフルエンザの世界的流行は“抗原不連続変異”、すなわちヒト集団中への新規のHA(または新規のHAおよびNA)亜型の導入により引き起こされる(Cox et al., Annu. Rev. Med., 51: 407-421 (2000))。その新規のHA(またはHAおよびNA)亜型への事前の曝露の欠如は、その“抗原不連続変異”変種に対して免疫学的にナイーブである集団を作り出し、結果として極度に高い感染率および世界中への急速な蔓延をもたらす。20世紀において、合計3回の主な世界的流行が起きた:1918/1919年の“スペイン風邪”は記録上最も破壊的な感染症である。世界中で推定2000〜5000万人の人々が死亡し、米国における期待寿命が10年減少した(Johnson et al., Bull. Hist. Med., 76: 105-115 (2000))。‘スペイン風邪’の原因微生物はH1N1インフルエンザAウイルスであり、それはトリの種からヒト集団中に導入された可能性がある(Gamblin et al., Science, 303: 1838-1842 (2004); Reid et al., Nature Rev. Microbiol, 2: 909-914 (2004); Stevens et al., Science, 303: 1866-1870 (2004))。1957年および1968年に、‘アジアインフルエンザ’および‘香港インフルエンザ’は米国においてそれぞれ推定70,000人および33,800人の人々を殺した(Johnson et al., 2002, 上記)。これらの2回の世界的流行のインフルエンザウイルス株も、ヒトおよびトリの株の再集合に起因した(Scholtissek et al., Virology, 87: 13-20 (1978); Kawaoka et al., J. Virol., 63: 4603-4608 (1989); Nakajima et al., Nature, 274: 334-339 (1978))。
高病原性H5N1トリインフルエンザウイルスの大流行
高病原性H5N1ウイルスはまだヒトでの世界的流行を引き起こしていないが、それらの継続的なヒトへの伝染およびヒトにおける高い死亡率は、これらのウイルスに対する療法の開発を優先させてきた。高病原性H5N1トリインフルエンザウイルスのヒトへの最初の伝染は1997年に香港で起こり、その際に18人の感染者の内の6人がその感染で死亡した。2003年以来、高病原性H5N1トリインフルエンザウイルスは東南アジアで流行するようになり、この地域のいくつかの国で家禽の風土病になっている(Fauci, A. S., Cell, 124: 665-670 (2006))。4200回より多くの大流行がアジア、アフリカ、および欧州の国々で報告されており、結果として1億以上の家禽の死または殺処分をもたらしてきた(Beigel et al., 2005, 上記)。これらの地域の農村地帯におけるヒトと家禽の間の密接な接触は、おそらくウイルスのヒトへの伝染を促進する。138件の死亡を伴う236件のヒトの感染が9の異なる国で報告されてきた(Beigel et al., 2005, 上記)。さらに、H5N1のオセルタミビル(oseltamivir)(NA阻害剤)耐性株の出現は、新規の療法処置が緊急に必要とされていることを示している(Le et al., 2005, 上記)。
世界的流行の制御のための選択肢
H5N1トリインフルエンザウイルスまたはヒトにおけるあらゆる新興もしくは再興インフルエンザウイルスと戦うための理想的な方法は、種間の移動を阻止する、または少なくともその可能性を低減することであり、これは包括的、多面的なアプローチを必要とする。現在、ワクチン接種はインフルエンザ感染に対する防御のための証明された有効な戦略である。しかし、世界的流行の間のその有効性は、新興株(単数または複数)に対する‘世界的流行ワクチン’を前もって開発することができないため、限られているであろう(Hayden, F. G., 2004, 上記)。現在の不活化3価ワクチンはH5およびH7トリインフルエンザ株に対する防御を提供しない(Cox et al., 2005); Kemble, G., and H. Greenberg, 2003)。さらに、この時点で我々は現在循環しているH5N1が次の世界的流行株であろうかどうかを予測することができない。加えて、そのワクチン生産能力は、世界中で膨大な数の人を短期間に免疫する必要により、世界的流行の間は限度一杯に使われるであろう。従って、抗ウイルス薬は医療介入の最前線である。
最新の抗インフルエンザ薬であるオセルタミビルおよびザナミビル(zanamivir)は2004年のH5N1ウイルスのNA活性をインビトロで効率的に遮断し、これはH5N1ウイルス感染に対するインフルエンザ化学療法および予防におけるそれらの有効性を示している(Ward et al., 2005, 上記; Mase et al., Virology, 332: 167-176 (2005); Gubareva et al., Lancet, 355: 827-835 (2000))。しかし、最近のこれらの化合物に対する耐性変異株の分離は、新規の抗ウイルス薬の開発に関する緊急の必要性を強調してきた(Le et al., 2005, 上記)。HAの保存された受容体結合部位または融合ドメインを遮断するであろう新規の抗ウイルス薬の開発は有望なアプローチであり、他の機構的アプローチを補完するであろう。
エボラウイルス
エボラウイルスは急性、致死的な出血熱を引き起こし、現在それに関するワクチンまたは処置は存在しない。エボラウイルスのGPはI型膜貫通糖タンパク質である。異なるエボラウイルス株のGPに関する予測されるアミノ酸配列の比較は、そのタンパク質の中央における高度に可変性の領域を伴う、アミノ末端およびカルボキシ末端領域におけるアミノ酸の保存を示す(Feldmann et al., Virus Res., 24: 1-19 (1992))。エボラウイルスのGPは高度に糖鎖付加されており、N結合型およびO結合型糖質の両方を含有し、それはそのタンパク質の分子量の50%に至るまでに寄与している。その糖鎖付加部位のほとんどは、GPの中央の可変領域にある。
その膜に固定された糖タンパク質は、ウイルス粒子および感染細胞の表面上にあることが既知の唯一のウイルスタンパク質であり、そのウイルスの受容体結合および宿主細胞との融合の原因であると推定されている。結果として、エボラ糖タンパク質はウイルスの宿主細胞中への侵入を予防する重要な標的である可能性がある。エボラウイルスに関する予防的処置の開発は、エボラ糖タンパク質がいくつかの形態で存在するという観察によりくじかれる。エボラウイルスの膜貫通糖タンパク質は、それが2個のオープンリーディングフレームでコードされている点で普通でない。糖タンパク質の発現は、その2個の読み枠が転写的または翻訳的編集により連結された際に起こる(Sanchez et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93: 3602-3607 (1996); Volchkov et al., Virology, 214: 421-430, (1995))。その未編集のGPのmRNAは非構造的な分泌される糖タンパク質(sGP)を生成し、それは感染の過程の初期の間に大量に合成される(Volchkov et al., 1995, 上記; Sanchez et al., 1996, 上記; Sanchez et al., J. Infect. Dis. 179 (suppl. 1, S164, (1999)。編集の後、そのウイルス粒子と会合した膜貫通糖タンパク質はタンパク質分解的に処理されて2個のジスルフィドでつながった生成物になる(Sanchez et al., J. Virol., 72: 6442-6447 (1998))。そのアミノ末端生成物はGPと呼ばれ(140kDa)、そのカルボキシ末端切断生成物はGPと呼ばれる(26kDa)。GPおよび膜に結合したGPは共有結合的に会合してウイルス粒子の表面上にあるGPスパイクの単量体を形成する(Volchkov et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95: 5762 (1998); Sanchez et al., J. Virol., 72: 6442 (1998))。GPはまた、感染細胞から可溶性形態で放出される(Volchkov. et al., Virology, 245: 110 (1998))。sGPおよびGPはそれらの最初の295個のN末端アミノ酸において同一であり、一方でsGPの残りの69個のC末端アミノ酸およびGPの残りの206個のアミノ酸は異なる読み枠によりコードされている。そのウイルスの受容体結合および宿主細胞との融合を妨げるであろう新規の抗ウイルス薬の開発は、エボラおよび侵入、すなわち宿主細胞への感染に関して類似の機構を有するあらゆるウイルスに対するワクチンのための有望なアプローチである。
水疱性口内炎ウイルス(VSV)
水疱性口内炎ウイルス(VSV)は非分節型マイナス鎖RNAウイルスであり、ラブドウイルス科(family Rhabdoviridae)、ヴェシキュロウイルス属(genus Vesiculovirus)に属する。VSVはウマ、ウシ、ブタ、ヒツジおよびヤギにおいて接触感染症を引き起こし、それは舌、口腔粘膜および乳房上の水疱性病変を特徴とし、媒介節足動物により伝染する。水疱性口内炎の顕著な臨床症状は、口腔中ならびに頻度はより低いが乳頭および蹄冠帯上の小水疱および潰瘍の発生である。死亡率は典型的には非常に低いが、冒された動物は体重が減少し、跛行または乳腺炎を発現する可能性があるため、生産が損害を受ける。水疱性口内炎による最も重大な懸念は、ウシおよびブタにおいて、それは足および口の疾患ならびにブタの水疱性疾患と臨床的に識別できないことである。結果として、水疱性口内炎の大流行は国際検疫の迅速な賦課ならびに動物および畜産物の貿易の停止につながる。
ヒトが感染する可能性があり(Patterson, W. C., et al., J. Am. Vet. Med. Ass., 133, 57 (1958))、そのウイルスは媒介昆虫により広められる可能性がある(Ferris et al., J. Infect. Dis., 96, 184 (1955), Tesh et al., Science, 175, 1477 (1972))ため、公衆衛生の懸念もある。
VSVは単一のリボ核酸(RNA)のマイナス鎖を含有し、それは5種類のメッセンジャーRNA(mRNA)をコードしており、その11kbのゲノムはそのウイルスの5種類の構造タンパク質をコードする5個の遺伝子を有する:複製されたRNAのカプシド形成のために化学量論量で必要なヌクレオカプシドタンパク質(N);RNA依存性RNAポリメラーゼ(L)の補助因子であるリンタンパク質(P);マトリックスタンパク質(M)および付着糖タンパク質(G)(例えばGallione et al., 1981 J. Virol., 39:529-535; Rose and Gallione, 1981, J. Virol., 39:519-528;米国特許第6,033,886号;米国特許第6,168,943号参照)。
水疱性口内炎ウイルスのエンベロープタンパク質Gは宿主細胞表面に結合して感染を開始する。そのウイルスエンベロープタンパク質は、ウイルスの宿主細胞への結合および/またはその感染性ウイルスの宿主細胞中への侵入に関与する。
ウイルスの侵入を妨害することは、ウイルス感染を制御するための新規の魅力的な療法戦略である。このアプローチの原理証明は、ペプチド性HIV阻害剤であるエンフビルチドから来ている。ウイルス感染の処置のための侵入阻害剤の療法的利益を確証する一方で、エンフビルチドはペプチド性抗ウイルス薬の潜在的な問題も目立たせてきた。エンフビルチドのような大きな7回繰り返しに由来するペプチドは製造に費用がかかり、胃腸管からの乏しい吸収は静脈内送達を余儀なくさせる。
米国特許第6,033,886号 米国特許第6,168,943号
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本発明は、ウイルスの宿主細胞中への侵入を阻害するための非ペプチド性小分子の開発に関する。これらの薬物様分子に関して多数の投与経路が考えられ、非常に対費用効果の高い生産戦略を容易に達成することができる。このアプローチに関する概念的支持は、以前のパラミクソウイルスの侵入を妨害するいくつかの小分子の同定から来ている(Plemper et al., Antimicrob. Agents Chemother., 49: 3755-3761 (2005); Plemper et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 101: 5628-5633 (2004); Cianci et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 101: 15046-15051 (2004); Cianci et al., Antimicrob. Agents Chemother., 48: 413-422 (2004))。HAは、HIVのGp120およびパラミクソウイルスのFタンパク質がそうであるように、クラスI融合タンパク質である(Cianci et al., 2004, 上記)。クラスI融合タンパク質は、CおよびN末端の7回繰り返しの会合をもたらす一連の立体構造の再編成を経る。その結果として生じる構造である安定な6本のらせんの束は、融合の間にウイルスおよび細胞のエンベロープが近くに配置される(juxtaposition)のを促進する。この最終的な融合ヘアピン構造は、タンパク質間相互作用により維持されている。その最終的な融合ヘアピン構造の形成または硬化(consolidation)を妨害するパラミクソウイルスの小分子侵入阻害剤が同定されている(Plemper et al., 2005, 上記; Cianci et al., 2004, 上記)。インフルエンザのHAを含む異なるクラスI融合タンパク質において類似の構造が存在するため、これらの結果は創薬のための戦略としてHAを標的とする仮説を支持する。
抗ウイルス薬は世界的流行の事象における医療介入の最前線であろう。耐性株の出現を防ぐための相乗的抗ウイルス作用のためには、異なる機構の抗ウイルス活性を有する多数の薬物の併用が必要であろう。従って、新しい世界的流行に対抗するための新規の薬物に関する緊急の必要性が存在する。加えて、抗ウイルス薬に関する世界的市場はおおよそ100億$/年であると概算されており(Datamonitor)、新規の療法が利用可能になるにつれて急速に成長することが予想されている。
従って、世界的に公衆衛生に対する重大な脅威である世界的流行の問題に取り組みために、ウイルス感染に対する広いスペクトルの療法薬が決定的に必要とされている。ウイルス感染の阻害剤の発見および開発は、本明細書で概説するように、世界中で救命療法を提供し、潜在的に壊滅的な世界的流行の対処において計り知れないほど価値があることが分かるであろう。ウイルスの侵入を妨害することは、本明細書で記述するように、ウイルス感染を制御するための新規の魅力的な療法戦略であり、RNAエンベロープウイルスに関する宿主細胞侵入の類似の機構のため、類似の小分子阻害剤が多くのこれらのタイプのウイルスの宿主細胞中への侵入を予防するのに有効であろうと信じられている。本発明の小分子阻害剤が宿主細胞の感染の予防において有効であると考えられるウイルスの例には、インフルエンザウイルス、例えばトリH5N1インフルエンザウイルス、エボラウイルス、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、およびSARSが含まれるが、それらに限定されない。
従って、本発明は、新規の非ペプチド性小分子阻害剤化合物の発見、およびその化合物をそれを必要とする個体、すなわち哺乳類に投与することを含むウイルス感染を処置または予防するための方法に関する。別の態様において、本発明は、新規の(noel)非ペプチド性小分子阻害剤化合物の発見、および本明細書で記述される阻害剤化合物のそれを必要とする個体、すなわち哺乳類への投与を含むウイルスの宿主細胞中への侵入を処置または予防、すなわち阻害するための方法に向けられている。
別の態様において、本発明は、インフルエンザウイルスの哺乳類宿主細胞中への侵入を予防する新規の非ペプチド性小分子阻害剤の発見に関する。特に好ましい態様において、その新規の非ペプチド性小分子は、ヒトにおけるトリH5N1インフルエンザウイルス亜型の侵入、すなわち感染を阻害する。本明細書で記述される阻害剤は、哺乳類、とくにヒトにおけるトリH5N1インフルエンザウイルスの処置および/または予防に適している。
別の好ましい態様において、本発明は、エボラウイルスの哺乳類宿主細胞、好ましくはヒト宿主細胞中への侵入を予防する新規の非ペプチド性小分子阻害剤の発見に関する。本明細書で記述される阻害剤は、哺乳類、とくにヒトにおけるエボラウイルス感染の処置および/または予防に適している。
別の好ましい態様において、本発明は、水疱性口内炎ウイルス(VSV)の哺乳類宿主細胞、好ましくはヒト宿主細胞中への侵入を予防する新規の非ペプチド性小分子阻害剤の発見に関する。本明細書で記述される阻害剤は、哺乳類、とくにヒトにおける水疱性口内炎ウイルス感染の処置および/または予防に適している。
本発明に従うウイルスの宿主細胞中への侵入の非ペプチド性小分子阻害剤は、式Iを含む化合物およびそれらの医薬的に許容できる塩類であり:
式中:
ArおよびArは独立して1価のアリールまたはヘテロアリール部分であり、それは未置換であってよく、または以下:ハロ、アミノ、アミジノ、グアニジノ、アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アシル、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノ、アシルアミノ、アミド、スルホンアミド、メルカプト、アルキルチオ、アリールチオ、ヒドロキサメート、チオアシル、アルキルスルホニル、およびアミノスルホニルから選択される5個までの置換基により置換されていてよく、そして
は1価アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリール部分であり、それは未置換であってよく、または加えて以下の:シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アシル、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノ、アシルアミノ、アミド、スルホンアミド、メルカプト、アルキルチオ、アリールチオ、ヒドロキサメート、チオアシル、アルキルスルホニル、およびアミノスルホニルから選択される置換基の1個以上により置換されていてよく、そして
およびRは独立して水素またはアルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、およびアシルアミノ部分から選択され、そして
は水素または1価アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、およびヘテロシクロアルキル部分から選択され;
そして式中:
置換基RおよびRはつながって炭素環式または複素環式環を形成していてよく、そして
置換基RおよびRが異なる場合、その鏡像異性体は(R)−もしくは(S)−立体配置のどちらか、またはラセミ化合物であってよい。
別の態様において、本発明は、式Iの非ペプチド性小分子阻害剤の投与を含む、ウイルスの宿主細胞中への侵入、すなわちウイルス感染を処置または予防するための方法に関する。好ましい態様において、本発明は、式Iの非ペプチド性小分子阻害剤化合物の投与によりインフルエンザウイルスの哺乳類宿主細胞中への侵入を処置または予防するための方法に関する。特に好ましい態様において、本発明は、式Iの非ペプチド性小分子阻害剤の投与によりヒトにおけるトリインフルエンザウイルスH5N1亜型の侵入、すなわち感染を処置または予防するための方法に向けられている。本明細書で記述される方法は、哺乳類、特にヒトにおけるトリH5N1インフルエンザウイルスの処置および/または予防に適している。
別の態様において、本発明は、式Iの非ペプチド性小分子阻害剤化合物の投与により哺乳類宿主細胞におけるエボラウイルスの侵入、すなわち感染を処置または予防するための方法に関する。特に好ましい態様において、本発明は、式Iの非ペプチド性小分子阻害剤化合物の投与によりヒトにおけるエボラウイルスの侵入、すなわち感染を予防するための方法に向けられている。本明細書で記述される方法は、哺乳類、特にヒトにおけるエボラウイルス感染の処置および/または予防に適している。
さらに別の態様において、本発明は、式Iの非ペプチド性小分子阻害剤化合物の投与により哺乳類宿主細胞における水疱性口内炎ウイルスの侵入、すなわち感染を処置または予防するための方法に関する。特に好ましい態様において、本発明は、式Iの非ペプチド性小分子阻害剤化合物の投与によりヒトにおける水疱性口内炎ウイルスの侵入、すなわち感染を予防するための方法に向けられている。本明細書で記述される方法は、哺乳類、特にヒトにおける水疱性口内炎ウイルス感染の処置および/または予防に適している。
好ましい態様において、トリH5N1インフルエンザウイルスのヒト中への侵入を予防することが望ましい場合、本発明の阻害剤は、ウイルスの細胞中への侵入を媒介するヘマグルチニン(HA)エンベロープ糖タンパク質を標的とする、すなわちそれに特異的であろう。しかし、本明細書で記述される手順に従うことにより、あらゆるインフルエンザウイルス、ウイルス亜型、またはウイルス標的に関する非ペプチド性小分子阻害剤を同定することができる。
H5N1ウイルスの宿主細胞中への侵入を予防する阻害剤を同定するため、HA(H5亜型)を発現する偽型ウイルスを、生ウイルスの細胞中へのHAに媒介される侵入を模倣するためのモデルとして開発した。その偽型ウイルスは、ウイルス侵入機構を安全に複製する、およびその阻害剤を同定するための手段を提供し、次いでその阻害剤をその偽型ウイルスを用いる最初のスクリーニングには必要でない厳しい制御条件下で生ウイルス感染に対して試験することができる。
従って、本明細書で記述される手順に従うことにより、HA(H5)阻害剤に関してスクリーニングするためにHTSアッセイをHIV/HA(H5)を用いて開発した。25μM未満のIC90および25μMより大きいCC50を有する36種類のHA(H5)特異的阻害剤が同定され、36種類の化合物全部が細胞培養で増殖させたインフルエンザウイルス(H1N1)(PR8)を阻害した。
加えて、エボラウイルスおよび水疱性口内炎ウイルスの宿主細胞中へのウイルス侵入を予防するいくつかの阻害剤が同定されている(図4参照)。
この発明の好ましいウイルス侵入阻害剤化合物は、図12で示す構造を有する。
別の態様において、本発明の阻害剤化合物は医薬的に許容できるキャリヤーまたは賦形剤中に配合され、皮内、経皮、筋内、腹腔内および静脈内が含まれるがそれらに限定されない注射により適用される。本発明の別の態様によれば、その阻害剤化合物の投与は経口投与によってよく、そのワクチンは例えば錠剤の形で与えられてよく、またはゼラチンカプセルもしくはマイクロカプセルに入っていてよく、それは経口適用を単純化する。これらの投与の形態の製造は、当業者の一般知識の範囲内である。多数の投与経路がこれらの薬物様分子に関して予想されており、非常に対費用効果の高い製造戦略を容易に達成することができる。
特許請求するスルホンアミド化合物がインフルエンザ、エボラ、および水疱性口内炎ウイルス感染を阻害することを示す、本明細書で示すデータは、式Iのスルホンアミド化合物のクラスは、RNAエンベロープウイルスが含まれるがそれらに限定されないある範囲のウイルスの感染性、すなわち宿主細胞への侵入を阻害するのに有効であろうことを示している。RNAエンベロープウイルスは、全てが1型膜タンパク質を有し、宿主細胞への侵入に関して類似の機構、すなわち受容体に媒介されるエンドサイトーシスおよびそれに続く細胞質中への放出のための酸溶解による機構を利用する点で類似している。特定の理論には一切限定されないが、本明細書で記述されるスルホンアミド化合物はウイルスの感染性のこの機構を有効に遮断すると信じられている。
従って、式Iの化合物がトリH5N1インフルエンザウイルス、エボラウイルス、および水疱性口内炎ウイルスの宿主細胞中へのウイルス侵入を予防することを実証する、本明細書で示すデータは、単に本発明に従って阻害され得るウイルスのタイプを代表するものであり、従って、当業者は、本明細書で記述される阻害剤化合物は多くの他のタイプのウイルス、特に上記でRNAエンベロープウイルスに関して記述した侵入機構を利用するウイルス、例えばSARSウイルスの宿主細胞中へのウイルス侵入を予防するのに適しているであろうことを認識するであろう。
図1は、インフルエンザAウイルスの模式図である。 図2は、高病原性トリインフルエンザ(HPAI)ウイルスおよび低病原性トリインフルエンザ(LPAI)ウイルスにおけるHA前駆体分子の翻訳後タンパク質分解的切断部位の模式図である。 図3は、4種類の細胞株:293T(ヒト)、HeLa(ヒト)、QT6(ウズラ)、およびDF−1(ニワトリ)細胞におけるHIV/HA偽型ウイルスの対照と比較した感染性(ルシフェラーゼ活性)を示す。そのHIV/HA偽型ウイルスに感染した4種類の細胞株は全て、感染性を示す高レベルのルシフェラーゼ活性を示した。 図4は、293T産生細胞(producer cells)におけるノイラミニダーゼ(NA)処理(0〜40単位/ml)のHIV/HA偽型ウイルスの感染性への作用を示す。形質移入の26時間後にNA(0〜40単位/ml)で処理した細胞は、対照と比較してより高いレベルの感染性を示した。 図5は、HIV/HAおよびHIV/HA(USDA)偽型ウイルスの、トリプシンによる前処理を行った、または行っていない293T細胞への感染の比較を示す。トリプシンによる処理はHIV/HAの侵入への作用を一切有さず、これはこの偽型ウイルスがそのプロテアーゼの切断部位を含むためである。トリプシンによる前処理は、天然のプロテアーゼの切断部位(cite)を有しないが感染性に酵素処理を必要とするHIV/HA(USDA)の侵入を増進した。 図6は、エンドソームの酸性化を妨害するバフィロマイシン(bafilomycin)A(0〜150nM)および弱塩基であるNHCl(0〜25nM)の、HIV/HA偽型ウイルスの293T細胞への感染性への作用を示す。293T細胞のバフィロマイシンによる前処理はその細胞のHIV/HA感染を予防し、これはHIV/HAのその細胞中への侵入が低pH環境に依存していることを示している。 図7は、バフィロマイシン(0〜200nM)処理のインフルエンザ株A/WS/33のMDCK細胞への感染性への作用を示す。その結果は、インフルエンザAウイルスA/WS/33の侵入も低pH環境に依存していることを示唆している。 図8は、いくつかの標的細胞株のHIV/HA偽型ウイルスへの感染に対する感受性を示す。ヒト肺細胞株A549およびNCI/H661は、HIV/HAによる感染に非常に感受性であった。これらの2種類の細胞株を、そのインフルエンザウイルスの侵入を予防する小分子阻害剤に関する化合物ライブラリーのスクリーニングのために用いた。 図9は、HA/阻害剤相互作用の方式を解明するための、感受性細胞に対するHA結合アッセイの開発を示す。図9Aは、ヒトIgGのFcと融合させて融合タンパク質を生成したH5N1のHA1の4つの異なる領域を示す。 図9Bは、1マイクログラムのそれぞれの融合タンパク質をSDS−PAGE上で泳動し、クマシーブルーで染色したものを示す。 図9Cは、フローサイトメトリーにより測定した、融合タンパク質(1μg〜20μg)の293T細胞への結合を示す。コンストラクト#2および#3は優れた結合を示さなかったが、コンストラクト#1および#4は293T細胞への優れた結合を示した。HA1のN末端の残基17〜88を欠くコンストラクト#4が完全長HA1タンパク質であるコンストラクト#1よりも優れた293T細胞への結合を示したことは、興味深い。 図9Dは、融合タンパク質の感受性293TおよびA549細胞ならびに耐性Jurkat(ヒトT細胞株)細胞への結合を示す。予想されたように、コンストラクト#4は293TおよびA549細胞への著しい結合を示したが、Jurkat細胞への結合は示さなかった。従って、これらの結果は、高感度なHA結合アッセイが開発されたことを示している。 図10は、HIV/HA偽型ウイルスを生成するためのプロセスおよびそのウイルスによる細胞の感染の図式的(diagramatic)表現である。 図11は、HIV/HAを用いた最初のスクリーニング段階からの小さい化合物の“ヒット”をHA特異的インフルエンザ阻害剤へと進めるための作業の流れの図である。 図12は、実施例9において記述するような本発明に従って同定された類似の小分子阻害剤化合物を研究するための予備的なSARの骨格(scaffold)として用いられた、単離された化合物2の構造を示す。
定義
用語“ハロ”または“ハロゲン”は、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を示す。
“アルキル”は、飽和および/または不飽和炭素原子および水素原子の直鎖または分枝鎖の1価または2価の基、例えばメチル(Me)、エチル(Et)、プロピル(Pr)、イソプロピル(iPr)、ブチル(Bu)、イソブチル(iBu)、sec−ブチル(sBu)、tert−ブチル(tBu)等を指し、それは未置換であってよく、または1個以上の本明細書で見付かる適切な置換基により置換されていてよい。
“ハロアルキル”は、1個以上の同一または異なるハロゲン原子で置換されているアルキル部分、例えば−CHCl、−CF、−CHCF、−CHCCl等を指す。
“アルケニル”は、2〜8個の炭素原子および少なくとも1個の二重結合を有する直鎖、分枝状、または環状炭化水素基、例えばエテニル、3−ブテン−1−イル、3−ヘキセン−1−イル、シクロペンタ−1−エン−3−イル等を指し、それは未置換であってよく、または1個以上の本明細書で見付かる適切な置換基により置換されていてよい。
“アルキニル”は、2〜8個の炭素原子および少なくとも1個の三重結合を有する直鎖または分枝状炭化水素基、例えばエチニル、3−ブチン−1−イル、2−ブチン−1−イル、3−ペンチン−1−イル等を指し、それは未置換であってよく、または1個以上の本明細書で見付かる適切な置換基により置換されていてよい。
“シクロアルキル”は、そのそれぞれが飽和または不飽和であってよい3〜12個の炭素原子を有する非芳香族の1価または2価の単環式または多環式基、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル、デカリニル(decalinyl)等を指し、それは未置換または本明細書で見付かる適切な置換基の1個以上により置換されており、1個以上のアリール基、ヘテロアリール基、またはヘテロシクロアルキル基がそれに融合していてよく、それはそれら自体が未置換であってよく、または1個以上の本明細書で見付かる適切な置換基により置換されていてよい。
“ヘテロシクロアルキル”は、そのそれぞれが飽和または不飽和であってよい2〜12個の炭素原子および窒素、酸素または硫黄から選択される1〜5個の複素原子を有する非芳香族の1価または2価の単環式または多環式基、例えばピロロジニル(pyrrolodinyl)、テトラヒドロピラニル、モルホリニル、ピペラジニル、オキシラニル等を指し、それは未置換または本明細書で見付かる適切な置換基の1個以上により置換されており、1個以上のアリール基、ヘテロアリール基、またはヘテロシクロアルキル基がそれに融合していてよく、それはそれら自体が未置換であってよく、または1個以上の本明細書で見付かる適切な置換基により置換されていてよい。
“アリール”は、6〜18個の炭素環員を含む芳香族の1価または2価の単環式または多環式基、例えばフェニル、ビフェニル、ナフチル、フェナントリル等を指し、それは本明細書で見付かる適切な置換基の1個以上により置換されていてよく、1個以上のヘテロアリール基またはヘテロシクロアルキル基がそれに融合していてよく、それはそれら自体が未置換であってよく、または1個以上の本明細書で見付かる適切な置換基により置換されていてよい。
“ヘテロアリール”は、2〜18個の炭素環員および窒素、酸素または硫黄から選択される少なくとも1個の複素原子を含む芳香族の1価または2価の単環式または多環式基、例えばピリジル、ピラジニル、ピリジジニル(pyridizinyl)、ピリミジニル、フラニル、チエニル、トリアゾリル、キノリニル、イミダゾリニル、ベンズイミダゾリニル、インドリル等を指し、それは本明細書で見付かる適切な置換基の1個以上により置換されていてよく、1個以上のアリール、ヘテロアリール基、またはヘテロシクロアルキル基がそれに融合していてよく、それはそれら自体が未置換であってよく、または1個以上の本明細書で見付かる適切な置換基により置換されていてよい。
“ヒドロキシ”は基−OHを示す。
“アルコキシ”は基−ORを示し、ここでRはアルキルまたはシクロアルキル基である。
“アリールオキシ”は基−OArを示し、ここでArはアリール基である。
“ヘテロアリールオキシ”は基−O(HAr)を示し、ここでHArはヘテロアリール基である。
“アシル”は−C(O)R基(ここでRはアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、またはヘテロシクロアルキルである)、例えばアセチル、ベンゾイル等を示す。
“カルボキシ”は基−C(O)OHを指す。
“アルコキシカルボニル”は−C(O)OR基を指し、ここでRはアルキル、アルケニル、アルキニル、またはシクロアルキルである。
“アリールオキシカルボニル”は−C(O)OR基を指し、ここでRはアリールまたはヘテロアリールである。
“アミノ”は基−NHを指す。
“アルキルアミノ”は基−NRR’を指し、ここでRおよびR’は独立して水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、またはヘテロアリール、またはヘテロシクロアルキルである。
“アシルアミノ”は基−NHC(O)R(ここでRはアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、またはヘテロシクロアルキルである)、例えばアセチル、ベンゾイル等、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノ等を指す。
“アミド”は基−C(O)NRR’を指し、ここでRおよびR’は独立して水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、またはヘテロアリール、またはヘテロシクロアルキルである。
“スルホニルアミノ”は基−NHSORを指し、ここでRはアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、またはヘテロシクロアルキルである。
“アミジノ”は基−C(NR)NR’R’’(ここでR、R’およびR’’は独立して水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、ここでR、R’およびR’’はヘテロシクロアルキル環を形成していてよい)、例えばカルボキサミド、イミダゾリニル、テトラヒドロピリミジニルを指す。
“グアニジノ”は基−NHC(NR)NR’R’’を指し、ここでR、R’およびR’’は独立して水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、ここでR、R’およびR’’はヘテロシクロアルキル環を形成していてよい。
“メルカプト”は基−SHを指す。
“アルキルチオ”は基−SRを指し、ここでRはアルキルまたはシクロアルキル基である。
“アリールチオ”は基−SArを示し、ここでArはアリール基である。
“ヒドロキサメート”は基−C(O)NHORを指し、ここでRはアルキルまたはシクロアルキル基である。
“チオアシル”は−C(S)R基を指し、ここでRはアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、またはヘテロシクロアルキルである。
“アルキルスルホニル”は基−SORを指し、ここでRはアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、またはヘテロシクロアルキルである。
“アミノスルホニル”は基−SONRR’を指し、ここでRおよびR’は独立して水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、またはヘテロアリール、またはヘテロシクロアルキルである。
本発明は、新規のウイルス感染の非ペプチド性小分子阻害剤の発見に関する。より詳細には、本発明は、ウイルスの宿主細胞中への侵入、すなわち感染を予防するための新規の非ペプチド性小分子阻害剤の発見および方法に関する。
1態様において、本発明は、インフルエンザウイルスの哺乳類宿主細胞中への侵入を予防する新規の非ペプチド性小分子阻害剤の発見に関する。特に好ましい態様において、その非ペプチド性小分子は、ヒトにおけるトリH5N1インフルエンザウイルス亜型の侵入、すなわち感染を阻害する。本明細書で記述される阻害剤は、本明細書で記述される小分子阻害剤の投与による、哺乳類、特にヒトにおけるトリH5N1インフルエンザウイルスの処置および/または予防のための方法に適している。
別の態様において、本発明は、エボラウイルスの哺乳類宿主細胞、好ましくはヒト宿主細胞中への侵入を予防する新規の非ペプチド性小分子阻害剤の発見に関する。本明細書で記述される阻害剤は、本明細書で開示される阻害剤の投与による、哺乳類、特にヒトにおけるエボラウイルスの処置および/または予防のための方法において適切である。
別の態様において、本発明は、水疱性口内炎ウイルスの哺乳類宿主細胞、好ましくはヒト宿主細胞中への侵入を予防する新規の非ペプチド性小分子阻害剤の発見に関する。本明細書で記述される阻害剤は、本明細書で開示される阻害剤の投与による、哺乳類、特にヒトにおける水疱性口内炎ウイルスの処置および/または予防のための方法において適切である。
可能性のあるトリインフルエンザH5N1の世界的流行は、世界的な公衆衛生の懸念である。H5N1ウイルスに関して利用可能な認可されたヒトのワクチンはまだなく、今までに不活化H5N1ワクチンを用いて実施された研究は、これらの試験ワクチンは低い免疫原性を有することを示唆している。従って、ヒトの患者における薬剤耐性H5N1株の出現は、新規の抗H5N1(および他のインフルエンザ)療法の開発に関するモーニングコール(wake−up call)である(Le et al., 2005, 上記)。新規の抗インフルエンザ療法を開発するための本明細書で記述される戦略は表面タンパク質ヘマグルチニン(HA)を標的とすることであり、それはインフルエンザウイルスの受容体結合およびそのウイルスの宿主細胞との融合による侵入を媒介している(Lamb, R.A., 2001, 上記; Wright, P.F., 2001, 上記)。
本発明は、ウイルスの宿主細胞中への侵入を阻害するように機能する非ペプチド性小分子の単離および同定を記述する。このアプローチに関する概念的支持は、以前のRSVおよびMVの侵入を妨害するいくつかの小分子の同定から来ている(Plemper et al., 2005, 上記; Plemper et al., 2004, 上記; Cianci et al., 2004, 上記; Cianci et al., Antimicrob. Agents Chemother., 48: 413-422 (2004))。HAはクラスI融合タンパク質であり、それはHIVのGp120およびパラミクソウイルス(RSVおよびMV)のFタンパク質が含まれるクラスである(Lamb, R.A., 2001, 上記; Wright, P.F., 2001, 上記; Cianci et al., 2004, 上記)。
クラスI融合タンパク質は一連の立体構造の再編成を経て、結果として安定な6本のらせんの束の融合構造がもたらされ、それはタンパク質間相互作用により維持される(Cianci et al., 2004, 上記)。その最終的な融合ヘアピン構造の形成または硬化を妨害する、RSVおよびMVの小分子侵入阻害剤が同定されている(Plemper et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 101: 5628-33 (2004); Cianci et al., 2004, 上記)。インフルエンザのHAを含む他のクラスI融合タンパク質において類似の構造が存在するため、これらの阻害剤の発見は創薬のための戦略としてHAを標的とする仮説を支持する。
本発明は、ウイルスの宿主細胞中への侵入を阻害する特定の有機化合物を提供する。本明細書で概説する手順に従うことにより、ウイルスの侵入、すなわち宿主細胞の感染を予防する、スルホンアミド骨格を有する一連の化合物が発見された。
本発明の化合物は式Iの構造およびその医薬的に許容できる塩類を含む:
式中:
ArおよびArは独立して1価のアリールまたはヘテロアリール部分であり、それは未置換であってよく、または以下:ハロ、アミノ、アミジノ、グアニジノ、アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アシル、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノ、アシルアミノ、アミド、スルホンアミド、メルカプト、アルキルチオ、アリールチオ、ヒドロキサメート、チオアシル、アルキルスルホニル、およびアミノスルホニルから選択される5個までの置換基により置換されていてよく、そして
は1価アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリール部分であり、それは未置換であってよく、または加えて以下の:シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アシル、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノ、アシルアミノ、アミド、スルホンアミド、メルカプト、アルキルチオ、アリールチオ、ヒドロキサメート、チオアシル、アルキルスルホニル、およびアミノスルホニルから選択される置換基の1個以上により置換されていてよく、そして
およびRは独立して水素またはアルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、およびアシルアミノ部分から選択され、そして
は水素または1価アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、およびヘテロシクロアルキル部分から選択され;
そして式中:
置換基RおよびRはつながって炭素環式または複素環式環を形成していてよく、そして
置換基RおよびRが異なる場合、その鏡像異性体は(R)−もしくは(S)−立体配置のどちらか、またはラセミ化合物であってよい。
経口で有効な療法剤(錠剤または液体)を開発するのが好ましく、これはそれが世界的流行の場合に大きな曝露された集団に薬物を投与するための最も好都合かつ迅速な方法であるためである。しかし、本明細書で記述される阻害剤は、自然な大流行の場合には感染した患者がIV投与を必要とする可能性があることが予想されるため、IV投与にも適しているであろう。従って、本明細書で記述される阻害剤は、あらゆる新しく出現した世界的流行株(単数または複数)に関して有効、安全、かつ容易な療法的選択肢を提供するであろう。
経口投与に関して、その医薬組成物は、例えば一般に用いられる手段により医薬的に許容できるキャリヤーまたは賦形剤、例えば結合剤(例えばアルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース);増量剤(例えばラクトース、微結晶性セルロースまたはリン酸カルシウム);潤滑剤(例えばステアリン酸マグネシウム、タルクまたはシリカ)、崩壊剤(disintegrants)(例えばジャガイモデンプンまたはデンプングリコール酸ナトリウム(sodium starch glycolate));または湿潤剤(例えばラウリル硫酸ナトリウム)を用いて調製される錠剤またはカプセルの形をとってよい。その錠剤は、当技術で周知の方法によりコートすることができる。経口投与のための液体製剤は、例えば溶液、シロップまたは懸濁液の形をとってよく、またはそれらは使用の前に水もしくは他の適切なビヒクルを用いて構成するための乾燥製品として与えられてよい。そのような液体製剤は、一般に用いられる手段により、医薬的に許容できる添加剤、例えば懸濁化剤(例えばソルビトールシロップ、メチルセルロースまたは硬化食用脂肪);乳化剤(例えばレシチンまたはアカシア);非水性ビヒクル(例えばアーモンド油、油性エステル類またはエチルアルコール)および保存剤(例えばp−ヒドロキシ安息香酸メチルもしくはプロピルまたはソルビン酸)を用いて調製することができる。
本明細書で1個以上の名前を挙げられた要素または工程を“含んでいる”と記述された組成物または方法は開放型(open−ended)であり、それはその名前を挙げられた要素または工程は本質的であるが他の要素または工程をその組成物または方法の範囲内に加えてよいことを意味する。冗長さを避けるため、1個以上の名前を挙げられた要素または工程を“含んでいる”(または“含む”)と記述されたあらゆる組成物または方法は、その同じ名前を挙げられた要素または工程“から本質的になっている(consisting essentially of)”(または“から本質的になる(consists essentially of)”)対応するより限定された組成物または方法も記述し、それはその組成物または方法にはその名前を挙げられた本質的な要素または工程が含まれ、その組成物または方法の基本的および新規の特徴(単数または複数)に実質的に影響を及ぼさない追加の要素または工程も含まれていてよいことを意味することも理解されている。本明細書で1個以上の名前を挙げられた要素または工程を“含んでいる”、または1個以上の名前を挙げられた要素または工程“から本質的になっている”と記述されたあらゆる組成物または方法は、あらゆる他の名前を挙げられていない要素または工程を除外するように、名前を挙げられた要素または工程“からなっている”(または“からなる”)対応する、より限定された、および閉鎖型の(closed−ended)組成物または方法も記述することも理解されている。本明細書で開示されるあらゆる組成物または方法において、あらゆる名前を挙げられた本質的な要素または工程の既知の、または開示された均等物は、その要素または工程の代わりに用いられてよい。“からなる群から選択される”要素または工程は、その列挙された要素または工程のあらゆる2個以上の組み合わせを含む、後に続くリスト中の要素または工程の1個以上を指す。
他の用語の意味は、有機化学、薬理学、および微生物学の分野が含まれる技術分野の当業者により理解されている通りに、文脈により理解されるであろう。
本発明は、ウイルスの宿主細胞中への侵入を予防する非ペプチド性小分子阻害剤の発見に関する。式Iのクラスのスルホンアミド化合物は、RNAエンベロープウイルスが含まれるがそれに限定されないある範囲のウイルスの感染性、すなわち宿主細胞への侵入を阻害するのに有効であろう。RNAエンベロープウイルスは、全てが1型膜タンパク質を有し、宿主細胞への侵入に関して類似の機構、すなわち受容体に媒介されるエンドサイトーシスおよびそれに続く細胞質中への放出のための酸溶解による機構を利用する点で類似している。インフルエンザウイルス、エボラウイルス、および水疱性口内炎ウイルスは、この侵入機構を利用するRNAエンベロープウイルスの代表的な例である。特定の理論には一切限定されないが、本明細書で記述されるスルホンアミド化合物はウイルスの感染性のこの機構を有効に遮断すると信じられている。従って、本明細書で記述される式Iのスルホンアミド化合物は、宿主細胞のこのクラスのウイルス、すなわち例えばSARSウイルスが含まれるRNAエンベロープウイルスによる感染性の阻害において有効であろうことは、当業者には理解されるであろう。
別の態様において、本発明は、インフルエンザウイルスの感染を処置または予防するための非ペプチド性小分子阻害剤の発見および方法に関する。本明細書で記述される阻害剤は、インフルエンザウイルスの処置および/または予防に適している。より詳細には、本明細書で記述される阻害剤はヒトにおけるインフルエンザウイルスの処置および/または予防に適している。具体的には、本発明は、そのウイルスの宿主細胞中への侵入を予防する非ペプチド性小分子(阻害剤)の同定および特性付けに関する。さらにもっと詳細には、本発明は、トリインフルエンザH5N1亜型の宿主細胞中への侵入を予防するための非ペプチド性小分子阻害剤の同定に関する。好ましい態様において、本発明の阻害剤は、ウイルスの細胞中への侵入を媒介するヘマグルチニン(HA)エンベロープ糖タンパク質を標的とする、すなわちそれに特異的であろう。しかし、本明細書で記述される手順に従うことにより、あらゆるインフルエンザウイルスまたはインフルエンザウイルス亜型だけでなく、例えばエボラウイルスおよび水疱性口内炎ウイルス(それらに限定されない)のような他のウイルスに関しても非ペプチド性小分子阻害剤を同定することができることは理解されるであろう。
別の態様において、本発明は、エボラウイルスの感染を処置または予防するための非ペプチド性小分子阻害剤の発見および方法に関する。本明細書で記述される阻害剤は、哺乳類におけるエボラウイルス感染の処置および/または予防に適している。より詳細には、本明細書で記述される阻害剤はヒトにおけるエボラウイルス感染の処置および/または予防に適している。具体的には、本発明は、エボラウイルスの宿主細胞中への侵入を予防する非ペプチド性小分子(阻害剤)の同定および特性付けに関する。しかし、本明細書で記述される手順に従って、あらゆるウイルスまたはウイルス亜型による宿主感染を予防するための非ペプチド性小分子阻害剤を同定することができることは、当業者には理解されるであろう。
別の態様において、本発明は、水疱性口内炎ウイルス(VSV)の感染を処置または予防するための非ペプチド性小分子阻害剤の発見および方法に関する。本明細書で記述される阻害剤は、哺乳類におけるVSV感染の処置および/または予防に適している。より詳細には、本明細書で記述される阻害剤はヒトにおけるVSV感染の処置および/または予防に適している。具体的には、本発明は、VSVの宿主細胞中への侵入を予防する非ペプチド性小分子(阻害剤)の同定および特性付けに関する。しかし、本明細書で記述される手順に従うことにより、あらゆるウイルスまたはウイルス亜型による宿主感染を予防するための非ペプチド性小分子阻害剤を同定することができることは、当業者には理解されるであろう。
以下は、トリインフルエンザウイルスH5N1の宿主細胞中への侵入を予防するための阻害剤化合物を同定するための偽型ウイルスの構築を記述する。しかし、下記で記述する手順は、エボラウイルスおよび水疱性口内炎ウイルスが含まれるがそれらに限定されない多くのウイルスのいずれの宿主細胞中への侵入を予防する阻害剤化合物を同定するのにも適していることは、当業者には理解されるであろう。
トリインフルエンザウイルスH5N1に対する阻害剤の同定。
H5N1ウイルスの宿主細胞中への侵入を予防する阻害剤を同定するために、HA(H5亜型)を発現する偽型ウイルスを、生ウイルスの細胞中へのHAに媒介される侵入を模倣するためのモデルとして開発した。その偽型ウイルスは、ウイルス侵入機構を安全に複製する、およびその阻害剤を同定するための手段を提供し、次いでその阻害剤をその偽型ウイルスを用いる最初のスクリーニングには必要でない厳しい制御条件下で生ウイルス感染に対して試験することができる。
その偽型ウイルスを構築するため、渡り鳥における高病原性H5N1インフルエンザウイルスのHA遺伝子をコードするcDNAを、pcDNA3哺乳類発現ベクター中に、CMVプロモーターの制御下にクローニングした。HAを発現するHIV由来のインフルエンザ偽型(HIV/HA)を生成するため、ルシフェラーゼレポーター遺伝子を含有するHIV−1プロウイルスゲノム(pNL4.3.Luc.R−E−)をH5のHA(pcDNA3−HA)と共に293T細胞中に同時形質移入した。そのHIV/HAはレポーター遺伝子であるルシフェラーゼ遺伝子を含有する。標的細胞中への侵入の際、ウイルスRNAが逆転写され、能動的に核の中に運び入れられ、安定にゲノム中に組み込まれる。形質導入された細胞におけるルシフェラーゼの活性は、ウイルスの感染性の尺度を提供する(Basu et al., J. Virol., 81: 3933-3941 (2007); Manicassamy et al., J. Virol., 79: 4793-4805 (2005))。ルシフェラーゼアッセイは非常に高感度であり、96ウェルプレート形式の高スループットスクリーニング(HTS)に適している。加えて、複製しないHIVに由来するインフルエンザ偽型の使用は、病原性トリインフルエンザ株を取り扱うために必要な厳重なバイオハザード条件を必要とせずにHTSを実行可能にする。これは、ウイルスの付着および侵入を測定するためのHTSアッセイを開発するためのHIV/HAの重要な利点である。
本出願は、以下のことを含む本発明に従う小分子阻害剤の発見に関するいくつかの重要なパラメーターの最適化にも取り組む:(a)HIV/HAの生成、(b)用いるべき標的細胞、(c)HIV/HAの力価測定、ならびに(d)感染性およびシグナル対バックグラウンド(S/B)比を最大化する(>100/1)ための制御。
HIV/HAの構築の後、その偽型ウイルスを集め、標準的なプロトコルに従って感染性に関して評価した。その偽型ウイルスの特定の利点は、それが“生”ウイルスの宿主細胞中への侵入を安全に、かつ信頼できるものとして模倣する一方で直接その生ウイルスを扱う危険性を排除する手段を提供することである。最終的にこの初期のスクリーニングプロセスで同定された可能性のある阻害剤はその生ウイルスの宿主細胞中への侵入を予防する能力に関して試験されるであろうが、これらの後期の試験はその偽型ウイルスを扱うためには必要でない厳しい制御条件下で実施されるであろう。従って、その偽型ウイルスアッセイからの阻害剤の“一次ヒット”は、次いで感染性低病原性トリH5N2分離株に対して、および組み換えH5N1株に対して、強化(enhanced)BSL3実験室において評価されるであろう。この二次スクリーニングは、感染性ウイルスに対して有効であるそれらの化合物のみを迅速に同定するであろう。
初期のスクリーニングを生感染性ウイルスに対するものとして偽型ウイルスを用いて実施することの別の利点は、生ウイルスを扱うことはウイルスの侵入だけでなくウイルスの複製および放出(egress)も阻害するであろう化合物の同定をもたらすと考えられることである。その初期のスクリーニングは侵入阻害に関して100,000種類より多くの化合物の化合物ライブラリーを用いて実施され、従って(複製および組み立ての阻害剤の存在による)一次ヒットの数の少しの増大さえも、結果として数千種類の化合物の追加の二次試験の必要性をもたらし得る。それに対し、本明細書で記述されるような偽型ウイルスを用いた初期スクリーニングは、それは推定されるH5インフルエンザウイルスの侵入阻害剤のみを同定すると考えられるため、一次ヒットの数を低減する。従って、偽型ウイルスを用いた初期スクリーニングの方法は、取り扱う化合物の数および必要なスクリーニングの両方を低減した。
別の観点において、本発明は、可能性のあるインフルエンザウイルスの小分子阻害剤を本明細書で記述される偽型ウイルスを用いて迅速にスクリーニングするための高スループット(HTS)アッセイに向けられている。しかし、本明細書で記述される高スループットアッセイは、ウイルスの宿主細胞中への侵入を予防する阻害剤化合物、例えばエボラウイルスまたは水疱性口内炎ウイルスの宿主細胞中への侵入を予防する阻害剤化合物(それらに限定されない)を同定するのに適合している可能性があることは、当業者には理解されるであろう。従って、本明細書で記述されるアッセイは、哺乳類、特にヒトにおける多種多様なウイルスに関連する疾患を処置または予防する可能性を有するウイルス阻害化合物を同定するための価値のある手段を提供する。
受容体結合および宿主細胞との融合によるインフルエンザウイルスの侵入を媒介するエンベロープ糖タンパク質であるヘマグルチニン(HA)を標的とすることは、本発明の目的である。この出願の焦点は、抗H5N1侵入阻害剤を発見すること、ならびにH5N1および他の世界的流行の可能性のあるインフルエンザウイルスに関する入り口となる療法(entry therapeutics)を開発することである。HAは亜型間で著しい(30%より大きい)変動を示すが、受容体結合および融合に関する重要なドメインは保存されている(Fauci, A. S., 2006, 上記; Lamb, R.A., 2001, 上記; Wright, P.F., 2001, 上記)。
従って、これらの保存された領域を標的とすることは、耐性の発生の可能性を小さくするであろう。
別の態様において、本発明は、詳細に明らかにされた作用機序を有しない可能性のある広いスペクトルの抗インフルエンザ阻害剤の同定に向けられている。このタイプの阻害剤は、可能性のあるインフルエンザウイルス阻害剤としてさらに試験する一方でその作用機序をさらに解明するのに適しているであろう。
下記で概説する手順に従って、おおよそ40,000種類の別個の化合物をスクリーニングし、141個の一次ヒットを同定した。HTSに関するZ’因子(Z’ factor)は0.5±0.2であった。一次ヒットを、無関係な糖タンパク質(VSV−G)を発現する偽型ウイルスおよび感染性H1N1ウイルスを用いて、それらの特異性に関してカウンタースクリーニングした。それらをそれらの効力および細胞毒性に関して、再合成した化合物を用いて評価した。その一次ヒットの内の36種類のみがHAに媒介される侵入プロセスを特異的に阻害した。そのHTSからの最終的なヒット率は0.09%であった。36種類のヒット化合物は全て25μM以下のIC90値を示した。構造的に、そのHA阻害剤は、それぞれ2員以上の群および単集合として表すことができる。
従って、本明細書で記述される手順に従うことにより、HA(H5)阻害剤に関してスクリーニングするためにHIV/HA(H5)を用いるHTSアッセイが開発された。25μM未満のIC90および25μMより大きいCC50を有する36種類のHA(H5)特異的阻害剤が同定され、36種類の化合物は全て細胞培養で増殖させたインフルエンザウイルス(H1N1)(PR8)を阻害した。
この発明の好ましいウイルス侵入阻害剤は、図12において示す構造を有する。
実施例1.H5N1トリインフルエンザの侵入に関するHIV/HA偽型系の確立。
この研究において用いられたインフルエンザウイルスのHA。高病原性H5N1インフルエンザウイルスのHA(H5)遺伝子をコードするcDNAは、Dr.George Gao(中国科学院微生物研究所、中国)により親切に提供して頂いた。このHA遺伝子は元々中国青海省において死んだ渡り鳥(ガン)中に存在するインフルエンザA H5N1から単離された。
本明細書で記述されるHIV/HA偽型ウイルスは、レポーター遺伝子であるルシフェラーゼ遺伝子を含有する。標的細胞中に侵入すると、そのウイルスRNAが逆転写され、能動的に核の中に運び入れられ、安定にゲノム中に組み込まれる。形質導入された細胞におけるルシフェラーゼの活性は、ウイルスの感染性の尺度を提供する(Basu et al., J. Virol., 81: 3933-3941 (2007); Manicassamy et al., 2005, 上記)。ルシフェラーゼアッセイは非常に高感度であり、96ウェルプレート形式に適している。加えて、複製しないHIVに由来するインフルエンザ偽型の使用は、病原性トリインフルエンザ株を取り扱うために必要な厳重なバイオハザード条件を必要とせずにHTSを実行可能にする。両方とも、ウイルスの付着および侵入を測定するためのHTSアッセイを開発するためのHIV/HAの重要な利点である。本明細書で記述される小分子を単離するために、以下のものを含むいくつかの重要なパラメーターを最適化した:(a)HIV/HAの生成、(b)用いるべき標的細胞、(c)HIV/HAの力価測定、ならびに(d)感染性およびシグナル対バックグラウンド(S/B)比を最大化する(>100/1)ための制御。
pNL luc3 R−E−およびpNL luc3 R+E−は、HIV−1プロウイルスクローンpNL4−3に基づくプラスミドである。これらのプラスミドは、両方のプラスミドが哺乳類および植物細胞中での発現に最適化された第3世代のホタルルシフェラーゼ遺伝子であるPromegaのluc+遺伝子を含有している点で、前の版と異なる。それらはpNL lucプラスミドの前の版と、それらのそれぞれの名前におけるlucの後の3の存在により区別することができる。
本明細書で記述される偽型ウイルスを構築するため、ルシフェラーゼレポーター遺伝子を含有するエンベロープ欠損プロウイルスゲノムpNL4.3.LucR−E−を、HIV−1発現ベクターとして用いた(He et al., J. Virol., 69: 6705-6711 (1995))。そのpNL4.3.Luc.R−E−ベクターにおいて、そのホタルルシフェラーゼ遺伝子をpNL4−3 nef遺伝子中に挿入する。2個のフレームシフト(5’EnvおよびVpr aa 26)がこのクローンをEnv−およびVpr−にして、それを単一ラウンドの複製の能力しかないようにする。そのベクターは、ソーク研究所のDr.Ned Landeauから許可を与えられた。本明細書で記述される偽型ウイルスを構築するため、HA遺伝子をコードするcDNAを哺乳類発現ベクターpcDNA3(Invitrogen)中に、CMVプロモーターの制御下にクローニングした。HAを発現するHIV由来のインフルエンザ偽型[HIV/HA]を生成するため、以前に記述されたように、pNL4.3.Luc.R−E−をH5のHA(pcDNA3−HA)と共に293T細胞中に同時形質移入した(Basu et al., J. Virol., 81: 3933-3941 (2007); Manicassamy et al., 2005, 上記; Cormier et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 101: 14067-14072(2004))。その偽型ウイルスを含有する上清を形質移入の48時間後に集め、合わせて、0.45μm孔径のフィルターを通して濾過し、標準的なプロトコルに従って感染性に関して評価した(Basu et al., J. Virol., 81: 3933-3941 (2007); Hsu et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 100: 7271-7276 (2003); “Production and Use of HIV-1 Luciferase Reporter Viruses”, Enna Williams M. (編者) Current Protocols in Pharmacology, 12.5.1-12.5.12, John Wiley & Sons (2004); Connor et al., Virology, 206: 935-944 (1995))。
対照偽型ウイルスを生成するために、VSV−G(HIV/VSV−G)をコードするプラスミドおよび空ベクターもpNL4.3.Luc.R−E−と共に同時形質移入した。それらのそれぞれの感染性の直接的な比較のため、偽型ウイルスのp24含有量を商業的に入手できるキット(Beckman Coulter,カリフォルニア州)を用いて測定した。293T(ヒト)、HeLa(ヒト)、QT6(ウズラ)、およびDF−1(ニワトリ)細胞を、p24で正規化したHIV/HAまたは対照のウイルス粒子を用いて感染させ、その細胞のルシフェラーゼ活性を負荷の48時間後に決定した(図3)。予想されたように、そのVSV−G偽型HIVウイルス粒子を用いて感染させた4種類の細胞株は全て高レベルのルシフェラーゼ活性を示し(6.6〜7.2RLUのlog)、一方で空ベクターを感染させた細胞はより低いレベルのルシフェラーゼ活性を示した(2.8〜3.1RLUのlog)。そのHIV/HAウイルス粒子により感染された細胞は、バックグラウンドよりもおおよそ100倍高いルシフェラーゼ活性を発現し、これはヒト由来およびトリ由来の両方のこれらの細胞の全てがそのHIV/HAウイルスにより感染され得ることを示唆している。
これらの結果は、H5N1の感染に関する侵入機構を研究するための機能アッセイを実証している。この機能アッセイは侵入機構の研究のために、および侵入阻害剤のスクリーニングのために生H5N1ウイルスを用いることの安全性の懸念を大きく軽減するであろうことを強調するのは重要である。この機能アッセイを用いて、インフルエンザウイルスの宿主細胞中への侵入を予防する可能性のある小分子阻害剤を同定した。
下記で記述するように、このアッセイを用いることによりヒト肺細胞株A549およびNCI H661はHIV/HAの形質導入に非常に感受性であることが実証されており、これらの細胞はHIV/HAのこれらの宿主細胞中への侵入を予防する小分子阻害剤を同定するためのHTSアッセイにおける標的細胞として用いられるであろう。加えて、感染した細胞が優れたルシフェラーゼのシグナル対ノイズバックグラウンド比(>100/1)を与えるであろうように、十分な数の標的細胞/ウェルを有することが重要である。
実施例2.産生細胞のノイラミニダーゼ(NA)処理はその偽ウイルス粒子の感染性を増進する。
そのHIV/HA偽型系を最適化するため、293T産生細胞のノイラミニダーゼ(NA)処理を用いてそのHIVに基づく偽型ウイルスの感染を増進した。293T細胞にpNL4.3.Luc+ R−E−およびHAプラスミドを同時形質移入した。形質移入後(26時間)、その形質移入された293T細胞を、0、5、10、20、40単位/mlの濃度のNA(New England Biolabs)で処理した。そのウイルス上清を5倍希釈し、それを用いてその標的細胞に負荷をかけた(challenge)。感染した細胞のルシフェラーゼ活性を注入の48時間後に決定し、その結果を図4において示す。
結果は、5単位/mlのNAにおいて、NA処理した細胞から集めたHIV/HAは処理しなかった細胞よりも少なくとも10倍高いルシフェラーゼ活性を示したことを示している。産生細胞のより高い濃度のNA(10〜40単位/ml)による処理は、標的細胞におけるルシフェラーゼシグナルを、大きくではないがさらに増大させた(5.62〜5.73log)。HIV/VSVGおよび空ベクターを形質移入した偽型ウイルスを対照として用いた。これらの結果は、NA処理が産生細胞からのウイルスの放出を促進することと一致している。
加えて、その高いシグナル/バックグラウンド比は、さらなるHTSの最適化後に提案された実験のために広く用いられるであろう効率的なHIV/HA偽型ウイルスの確立の成功を示している。
従って、HIV/HA偽型を、293T細胞(100mmディッシュ中3×10細胞、約70%コンフルエント)のpcDNA3−HA(12μg)およびpNL4.3.Luc.R−E−(12μg)による、標準的なプロトコルに従ってlipofectamine 2000を用いる同時形質移入により生成した(図10参照)。対照のため、HIV由来VSV−G偽型(HIV/VSV−G)を、293T細胞におけるVSV−Gを有するプラスミド(pcDNA3−VSV−G)およびpNL4.3.Luc.R−E−の同時形質移入により生成し、その化合物のHA標的特異性を確立した。そのHIV/HAまたはHIV/VSV−G偽型は複製欠損であり、その偽型はその感染プロセスの1ラウンドのみに関して評価されるであろう。ウイルスの感染性は、その形質導入された細胞のルシフェラーゼ活性から測定される。バックグラウンドの活性は、空のpcDNA3ベクターおよびpNL4.3.Luc.R−E−を形質移入された細胞の上清を用いて感染させた細胞のルシフェラーゼ活性から決定される。
実施例3.HIV/HA偽型ウイルスはトリプシン処理を必要としない。
前に述べたように、HAの切断は感染性に必要であり、これはそれがウイルスエンベロープおよび細胞膜の間の融合を媒介するHA2の疎水性N末端を生成するためである(Skehel et al., 2000, 上記; Steinhauer, D.A., 1999, 上記; White et al., EMBO J., 1: 217-222 (1982); Luscher-Mattli M.,. Arch. Virol., 145: 2233-2248 (2000))。トリプシン処理のH5N1に由来するHIV/HAの感染性への作用を調べた。比較のため、低病原性トリH5N2分離株(CK/ミチョアカン/28159−530/95)のHAを発現する別のHIV/HA偽型ウイルスを生成した。この株のHAはあらゆる遍在性プロテアーゼにより切断され得る切断部位を有しておらず、TPCK処理されたトリプシンによる処理をその切断のために必要とする。それはDr.David L.Suarez,USDAにより親切に提供して頂いた。
この低病原性トリ分離株のHIV/HAは、それを実験のHIV/HAと区別するためにHIV/HA(USDA)と呼ばれる。HIV/HAまたはHIV/HA(USDA)偽型ウイルスをトリプシン(50μg/ml)で37℃で30分間処理するかトリプシン処理しないかのどちらかの後、標的293T細胞に負荷をかけた。トリプシン処理はHIV/HAに媒介されるウイルス侵入を増進(または阻害)しなかった(図5)。それに対し、トリプシン処理されたHIV/HA(USDA)の感染はトリプシン処理なしでの感染と比較して大きく増進された。
実施例4.低病原性実験室インフルエンザAウイルス[A/WS/33]は感染性にトリプシン処理を必要とする。
インフルエンザAウイルス実験室株A/WS/33(H1N1)[ATCC # VR−1520]を、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関から得た。ウイルスのストックを増殖させ、MDCK細胞において力価測定し、80%コンフルエントのMDCK細胞にそのウイルスを感染させ、37℃で3時間吸着させておき、ウェルが覆われた状態を保つために15分ごとに振盪した。保温の後、その細胞を洗浄し、0.125% BSA、10mM HEPES(pH7.4)を補った、1μg/ml TPCK処理トリプシンを含む、または含まないEMEMと共に保温した。トリプシン処理のインフルエンザAウイルス[A/WS/33]の感染性への作用を決定するため、MDCK細胞にトリプシン処理した、または未処理のインフルエンザAウイルス株A/WS/33を1のMOIで感染させた。表1において示すように、未処理のインフルエンザAウイルスにおいて、TPCK−トリプシンで処理されたウイルスと比較した場合に、感染性の著しい阻害があった。その結果は、HIV/HA(USDA)偽型ウイルスの結果と一致している。これはさらに、HIV/HA(USDA)偽型ウイルスにおいて、および低病原性実験室株において発現したHAの両方が類似して挙動することを示唆しており、本明細書で記述される偽型ウイルスモデルを有効にする。
実施例5.HIV/HA偽型ウイルスは侵入の間リソソーム向性(lysosomotropic)化合物に感受性である。
HAに媒介されるウイルス侵入のpH依存性を試験するため、予め決定された力価のHIV/HAを用いてバフィロマイシンAおよび塩化アンモニウム(NHCl)の存在下で293T細胞を感染させた。バフィロマイシンAはエンドソームのH+-ATPアーゼの非常に選択的な阻害剤であり、エンドソームの酸性化を妨げ、エンドソームのpHを上昇させる(Marsh et al., Adv. Virus Res., 36: 107-151 (1989); Bowman et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85: 7972-7976 (1988); Yoshimori et al., J. Biol. Chem., 266: 17707-17712 (1991); Droese et al., Biochemistry, 32: 3902-3906 (1993))。同様に、NHClは弱塩基であり、エンドソームのpHを上昇させる(Marsh, M. 1989, 上記)。図6のパネルAにおいて示したように、293T細胞のバフィロマイシンAによる処理は50〜150nMでHIV/HA偽型ウイルスの感染性を効率的に阻害した。同様に、最初の3時間のウイルス吸着の間の細胞のNHCl[5〜25mM]への曝露は、未処理の対照と比較してウイルス感染を有意に低減した(図6、パネルB)。従って、その結果は、HIV/HAの侵入はHAにおける低pHに誘導される変化に依存することを示唆している。
実施例6.バフィロマイシンAはインフルエンザAウイルス[A/WS/33]の感染を阻害する。
バフィロマイシンAのインフルエンザAウイルスの感染性への作用を調べた。MDCK細胞(6ウェルプレート中で約80%コンフルエント)を、系列希釈した用量のバフィロマイシンA(25〜200nM)で15分間処理した。インフルエンザAウイルス(約100pfu/ウェル)を細胞に添加し、37℃で3時間吸着させた。バフィロマイシンAもその3時間の吸着期間の間に存在していた。保温後、未吸着のウイルスを洗浄により除去し、細胞を4%ウシ血清アルブミンおよび1μg/mlのTPCK処理されたトリプシンを補ったEMEMを含有する0.8%アガロースで覆い、37℃で3日間培養した。3回の独立した実験を行ってウイルスの力価を決定した。
図7において示すように、バフィロマイシンAは試験した濃度(25〜200nM)でインフルエンザウイルス感染の感染性を効率的に阻害した。従って、その結果は、インフルエンザAウイルスA/WS/33の侵入もHAにおける低pHに誘導される変化に依存することを示唆しており、本明細書で記述されるHIV/HA偽型ウイルスモデルを有効にする。
実施例7.ヒト肺細胞はHIV/HA偽型ウイルスに対して最大の感染性を示す。
宿主指向性(host tropism)を特性付けおよび比較するため、HIV/HAの感染性を一群の(a panel of)標的細胞株に対して、前に記述した方法に従うプラークアッセイにより評価した。ヒト肺細胞株(A549、NCI−H661およびHAPEC)、およびラット肺細胞株(L2)を感染のための標的細胞として用いた。インフルエンザウイルス感染に耐性であるLec1(チャイニーズハムスター卵巣)細胞株も用いた。前に記述したプロトコルに従って、細胞にHIV/HAおよびHIV/HA(USDA)偽型ウイルスを感染させた。HIV/VSVGおよび空ベクターを形質移入した偽型ウイルスを、それぞれ陽性および陰性対照として用いた。ヒト肺細胞株A549およびNCI−H661は、HIV/HA偽型ウイルスによる感染に、ヒト肺細胞株HAPECと比較して非常に感受性であった(図8)。トリプシンで処理されたHIV/HA(USDA)偽型ウイルスも、これらの細胞に対して非常に感染性であった。しかし、未処理のHIV/HA(USDA)偽型ウイルスは感染性ではなかった(データは示していない)。ラット肺細胞(L2)はHIV/HAおよびHIV/HA(USDA)両方による感染にそれほど感受性ではなく、一方でLec1細胞は両方の偽型に対して高度に耐性であった(図8)。これらの結果は、HIV/HAおよびHIV/HA(USDA)はヒト肺細胞への好ましい侵入指向性を示すことを示している。そのヒト肺細胞株A549およびNCI−H661は、さらなる最適化の後に、インフルエンザ侵入阻害剤に関して化合物ライブラリーをスクリーニングするために用いられるであろう。
これらの結果は、HIV/HA偽型ウイルス中のHAは感染性インフルエンザウイルス中に存在するHAの機能的特性を保持していることを示唆している。
実施例8.感受性細胞に対するHA結合アッセイの開発。
HA/阻害剤相互作用の方式を解明するため、HA結合アッセイを開発した。H5N1 HA1の4つの異なる領域(図9Aにおいて#1〜4と表示する)をヒトIgGのFcと融合させて融合タンパク質を生成した。そのコンストラクトの全部をDNA配列決定により確認した。これらの融合タンパク質を、Kuhn et al., J. Biol. Chem., 281: 15951-15958 (2006)のプロトコルを修正したものに従って発現させ、精製した。簡潔には、それぞれのプラスミドを293T細胞中に形質移入した。細胞を、4mMのL−グルタミンを補ったVP−SFM培地で、形質移入後16時間の間、再び満たした(replenished)。上清を48および72時間の時点で2回集め、0.45μMフィルターを通して濾過した。それぞれの上清を、カラム中に組み立てられたプロテインAアガロース(Santa Cruz Biotech)(Pierce)に適用した。そのプロテインAアガロースをPBSで2回洗浄し、タンパク質を1mlの0.1Mグリシン(pH2.8)で遠心分離により3回溶離した。そのタンパク質を、溶離後すぐに60μlのトリスHCl(pH8.0)を添加することにより中和した。次いでそのタンパク質を、Slide−A−Lyzer透析カセット(Pierce)によりPBS中で透析し、Centricon遠心濾過ユニット(Millipore)により濃縮した。1ミリグラムのそれぞれの精製されたタンパク質をSDS−PAGE上で泳動し、続いてクーマシーブリリアントブルー染色を行った(図9B)。そのコンストラクトに応じて、その上清を100mmプレートからプールすることにより0.1〜1mgの融合タンパク質を精製することができ、それは下記で記述する結合アッセイに適していた。
これらのタンパク質の細胞への結合を、Kuhn et al., 2006 (上記)により記述されたようにフローサイトメトリーを用いて測定した。簡潔には、293T細胞をPBS/5mM EDTAにより脱離し、PBS/1%BSA中で再懸濁し、30分間氷上においた。異なる量のHA−hIgGタンパク質(1〜20μg)を0.5×10個の細胞と共に氷上で1時間保温し、続いてPBS/1%BSAで2回洗浄した。FITCとコンジュゲートした抗ヒトIgG抗体を1:100の希釈度で細胞と共に氷上で45分間保温した。細胞をPBS/1%BSAで3回、およびPBSで2回洗浄し、それに対してフローサイトメトリーを行った。陰性対照(HA−hIgGタンパク質を添加しなかった)の平均蛍光強度(MFI)をHA#1〜HA#4のMFIから引いた(図9C)。コンストラクト#2および#3はこれらの条件下では293T細胞に多くの結合を示さなかったことは明らかである。それに対し、コンストラクト#1および#4はその標的細胞に用量依存的な結合を示した。コンストラクト#4はHA1のN末端が欠失している(残基17〜88)が、それはその標的細胞に完全長HA1融合タンパク質(#1)よりも優れた結合を与えたことは興味深い。
これらの融合タンパク質の細胞結合特性をさらに特性付けするため、2種類の感受性細胞株および1種類の耐性細胞株をそのアッセイにおいて用いた。293Tおよびヒト肺細胞株であるA549は両方とも非常に感受性であることが示されており、一方でヒトT細胞株であるJurkatはHIV/HA感染に耐性である。2μgのそれぞれの融合タンパク質を用いた。これらの条件下で、コンストラクト#4のみがその感受性細胞に著しい結合を示し、一方で残りの3種類の融合タンパク質はあまり多くの結合を示さなかった。重要なことだが、その融合タンパク質はいずれもJurkat細胞にあまり多くの結合を示さず(図9D)、これは上記で示した形質導入のデータと一致する。これらの実験は、その融合タンパク質の1種類(コンストラクト#4)は2μgにおいてさえも特異的に感受性細胞に結合することができることを実証している。これは高感度なHA結合アッセイの開発を実証し、それは次の実験において用いられるであろう。
上記の実験に基づいて、構造的に多様な化合物ライブラリーをスクリーニングしてインフルエンザウイルスの宿主細胞中への侵入を予防するための小分子阻害剤を同定し、二次アッセイを用いることによりその化合物のヒットに優先順位をつけることが可能であった。上記で記述したように、ウイルス侵入の間にインフルエンザのHAを標的とする阻害剤を同定するためにHTSアッセイが開発された。このアッセイを用いることにより、中程度のスループットから高スループットまでのアッセイ条件(1000より多くの化合物/日)、ならびに容易な読み取り(ルシフェラーゼ/GFPレポーター)、および高いシグナル/バックグラウンド比(10/1より大きい)でスクリーニングすることが可能であった。
1.“低病原性”H5インフルエンザウイルスを用いたHA阻害剤の評価。生感染性インフルエンザH5N1ウイルスを用いる実験に必要とされる厳しい生物汚染(biocontainment)基準は、“生”H5N1ウイルスに対して評価することができる“ヒット”の数を制限するであろう。従って、“ヒット”はH5亜型のHAを発現する低病原性トリインフルエンザAウイルス株CK/ミチョアカン/28159−530/95(USDA株)(Liu et al., Science, 309: 1206 (2005))に対する盲検様式で(上記のものから)スクリーニングされ、それらの効力は細胞培養において生感染性ウイルスに対して評価されるであろう。この株はDr.David L.Suarez(USDA)から得て、野生型H5N1ウイルスのような厳しい生物汚染を必要としない。USDA株および野生型H5N1のH5のHAの間の唯一の違いは、あらゆる遍在性プロテアーゼにより切断され得る正規の(canonical)フューリン切断部位(RRRKKR)が存在しないことである(Liu et al., Science, 309: 1206 (2005))。多くの報告がH5のHAタンパク質のこのポリ塩基性切断ペプチドはH5ウイルスの高病原性に必要であることを示してきた(Steinhauer, D.A., 1999, 上記; Garten, W., 1999, 上記); Horimoto, T., 1997, 上記; Stieneke-Grober et al., EMBO J., 11: 2407-2414 (1992); Horimoto et al., 1994, 上記)。(既に切断されたHAを有する偽型ウイルスに頼るスクリーニング戦略のため)我々の“ヒット”がHAの切断に影響を及ぼすであろうとは予想されないため、高病原性H5N1ウイルスを阻害する“ヒット”はUSDA株も阻害するであろうと予測される。この低病原性USDA株に対する最高の阻害活性を有する“ヒット”は、野生型H5N1を用いてさらに評価されるであろう。野生型H5N1ウイルスは低病原性インフルエンザウイルスよりも攻撃的であるため、最終的な評価が必要である。
インフルエンザAウイルス株CK/ミチョアカン/28159−530/95は、10日齢の有精鶏卵の尿膜腔中で増殖させられるであろう。簡潔には、ウイルスを尿膜腔に注入し、37℃で28〜42時間保温するであろう。その上清を小さな分割量(aliquots)に分け、瞬間冷凍し、将来の使用のために−80℃で保存するであろう。それぞれの分割量は使用前に1回解凍されるであろう。ウイルス力価を決定するため、系列希釈したウイルス懸濁液を6ウェルプレート中のコンフルエントなMDCK単層細胞培養物中に接種し、37℃で2時間培養するであろう。その細胞を洗浄し、0.6%アガロースおよび2μg/mlアセチル化トリプシンを含有するDMEMで覆い、37℃で2日間培養するであろう。プラークをギムザ染色により可視化するであろう(Anders et al., J. Gen. Virol., 75: 615-622 (1994))。
インフルエンザウイルスの感染性の阻害。ウイルスを系列希釈した“ヒット”と共に前保温し(1時間)、96ウェルマイクロタイタープレート中のMDCK細胞(2×10細胞/ml)に0.1のMOIで、0.1mlの総量で添加するであろう。未処理のウイルスが陽性対照として用いられるであろう。37℃において2時間の保温の後、吸着していないウイルスを洗浄により除去し、2μg/mlのトリプシンを含有する新しい培地をその細胞に添加し、37℃で2日間培養するであろう。バックグラウンドは、それぞれのプレートにおいて、細胞を未感染の卵からの尿膜腔液を用いて感染させることにより決定されるであろう。比較対象(comparators)として、既知のインフルエンザ阻害剤バフィロマイシンA1、アマンタジンおよびスタキフリン(stachyflin)が用いられるであろう(Yoshimoto et al., Arch. Virol., 144: 865-878 (1999))。培養後、その培養上清を集め、その培養上清の乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)活性を測定するであろう。LDHは解糖の間にラクテートをピルベートに変化させる酸化酵素である。LDHは細胞膜および細胞質に広く存在し、細胞損傷の直後に細胞から培養上清中に放出される(Decker, T. and M. L. Lohmann-Matthes, J. Immunol. Meth. 115: 61-69 (1988))。従って、細胞外のLDHの定量化はウイルスの感染性の尺度を提供するであろう。上清のLDH活性は、CytoTox 96(登録商標)非放射性細胞毒性アッセイキット(Promega Corporation,米国)により、製造業者の説明書に従って測定されるであろう。インフルエンザウイルス感染のパーセント阻害は、(%阻害)=100−[{(OD−(OD}/{(OD−(OD}]×100として計算されるであろう。(ODは阻害剤の存在下でウイルスに感染させた培養物の上清の吸光度(LDH活性)であり、(ODは阻害剤の非存在下でウイルスを感染させた培養物の上清の吸光度(陽性対照)であり、(ODは未感染の卵からの尿膜腔液を用いて感染させた細胞の上清の吸光度(陰性対照/バックグラウンド)である。10μM未満のIC50を示す阻害剤をストックプレートから選び取り、プラークアッセイによりさらに確証するであろう。パーセント阻害は100×[化合物の存在下でのプラーク数/(あらゆる阻害剤を含まない)陽性対照のプラーク数]として計算されるであろう。陽性の結果(10μM未満のIC50)を示す化合物[“二次ヒット”]は、下記で記述するような組み換えH5N1株に対してさらに試験されるであろう。
組織培養における“生”H5N1ウイルスの阻害。その“二次ヒット”の抗H5N1インフルエンザ活性は、強化BSL3汚染施設において組み換え世界的流行H5N1インフルエンザウイルスに対して実証されるであろう。高病原性H5N1ベトナム株(A/ベトナム/1203/2004)からのHAを有する組み換えウイルスは、Fodor et al., J. Virol., 73: 9679-9682 (1999)の逆遺伝学系を用いて、Basler et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 98: 2746-2751 (2001)の方法に従って生成されるであろう。その現在循環している病原性H5N1ベトナム株(A/ベトナム/1203/2004)は、それが新しい世界的流行株を示唆する特徴を有するために選択された。“ヒット”のそのH5N1株に対する阻害活性は、MDCK細胞を用いるプラークアッセイにより確証されるであろう。パーセント阻害は、=100×[化合物の存在下でのプラーク数/(あらゆる阻害剤を含まない)陽性対照のプラーク数]として計算されるであろう。
図11は、HIV/HAを用いた最初のスクリーニング段階からの小さい化合物の“ヒット”をヒトおよび他の哺乳類におけるワクチンとしての使用に適したHA特異的インフルエンザ阻害剤へと進めるための設計の作業の流れの図を示す。
実施例9.インフルエンザウイルスの小分子阻害剤を同定するための化合物ライブラリーの初期スクリーニング
上記で概説したように、12μgの適切なウイルスエンベロープ糖タンパク質を含有するコンストラクトを12μgのpNL4−3−Luc−R− −E− HIVベクターと共に、10cmプレート中の293T細胞(90%コンフルエント)中に、Lipofectamine 2000(Invitrogen)を用いて、供給業者のプロトコルに従って同時形質移入することにより、偽型ウイルスを生成した。細胞培養で増殖させたインフルエンザH1N1(PR8)ウイルスを、標準的なプロトコル(疾病管理予防センター,2004,上記)に従って、MDCK細胞において1μg/mlのトシルスルホニルフェニルアラニル−クロロメチルケトン(TPCK)処理されたトリプシン(Sigma−Aldrich)の存在下で37℃で3日間にわたって増殖させ、力価測定した。
スクリーニングした化合物ライブラリーは、152,500種類を超える化合物の、広い、よくバランスのとれたコレクションである。それらはChembridge(カリフォルニア州サンディエゴ)およびTimtec(デラウェア州ニューアーク)から購入され、96ウェルマスタープレートにおいてジメチルスルホキシド(DMSO)中で2.5mMで希釈され、−20℃で保管された。化合物は、200〜500Daの分子量範囲で選択された。それらは好都合なcLogP値(n−オクタノール/水分配係数の対数として計算される)を有し、200を超える化学型を含む。
組み合わせ化合物ライブラリーの偽型ウイルスを用いた高スループットスクリーニングを96ウェルプレートで実施した。低継代A549細胞の単層に、25μM(終濃度)の試験化合物の存在下で、8μg/mlのポリブレンを含有する100μlの偽型ウイルスを感染させた。5時間後、その接種物を除去し、新しい培地を添加し、そのプレートを37℃および5%COにおいて72時間培養した。感染を、Britelite Plus(商標)アッセイシステム(Perkin Elmer)を用いてWallac EnVision 2102マルチラベルリーダー(Perkin Elmer,マサチューセッツ州)において定量化した。パーセント阻害を以下のように計算した:100×[化合物の存在下での相対ルシフェラーゼ単位(RLU)−陰性対照のRLU/(阻害剤を一切含まない)陽性対照のRLU−陰性対照のRLU]。
AlphaScreen SureFire GAPDHアッセイキット(Perkin Elmer)を用いて、製造業者のプロトコルに従って細胞溶解物中の内在性の細胞性GAPDHを測定することにより、細胞の生存度を試験した。
結果
おおよそ40,000種類の別個の化合物をスクリーニングし、141個の一次ヒットを同定した。HTSに関するZ’因子は0.5±0.2であった。一次ヒットを、無関係な糖タンパク質(VSV−G)を発現する偽型ウイルスおよび感染性H1N1ウイルスを用いて、それらの特異性に関してカウンタースクリーニングした。再合成した化合物を用いて、それらをそれらの効力および細胞毒性に関して評価した。その一次ヒットの内の36種類のみがHAに媒介される侵入プロセスを特異的に阻害した。そのHTSからの最終的なヒット率は0.09%であった。36種類のヒット化合物は全て25μM以下のIC90値を示した。構造的に、そのHA阻害剤は、それぞれ2員以上の群および単集合として表すことができる。
本明細書で同定されたHA阻害剤には、多数の化学的に関連する構造の群ならびに単集合が含まれていた。5種類の観察された“ヒット”(表2参照)の内で、特にスルホンアミド骨格を有する1種類の化合物(化合物2)は3.9μMのIC90を示し、この結果に基づいて、一群のスルホンアミドアナログを用いてさらなる構造活性相関(SAR)研究を実施した(表3参照)。
表3に示した骨格に関して調べられた追加の置換基には、Rにおけるエトキシ置換基(2−エトキシ、4−エトキシ)、Rにおけるハロ置換基(F、Cl、Br)、およびR−置換されたフェニル基およびアミン窒素の間の直接結合の代わりとなる柔軟なリンカー、例えば−CHCHO−(すなわち、次の式の部分:
が次の部分:
の代わりとなる)が含まれていた。
上記で同定された化合物は、インフルエンザ感染の予防および処置のための抗ウイルス剤としての開発のための候補である。その化合物は、インフルエンザウイルスの宿主細胞中への侵入の研究のための分子プローブとしても有用である可能性がある。
実施例10.合成スキーム
スキーム1 アミノアセトアミドスルホンアミドウイルス阻害剤化合物の合成
アミノアセトアミドスルホンアミド類は、2種類の置換されたアラニン(それは同じまたは異なっていることができる)、スルホニルクロリド、およびブロモアセチルブロミドから始まる収束する3工程のプロセスで合成される。一方のアラニンは水性塩基の存在下でブロモアセチルクロリドによりアセチル化されてブロモアセトアニリド(bromoacetanlilde)を形成し、一方で他方のアラニンはスルホニルクロリドによりスルホニル化されてスルホンアミドを形成する。そのスルホンアミドは穏やかな塩基により脱プロトン化され、結果として生じた陰イオンを用いてブロモアセトアニリドのブロモ置換基を置換して標的化合物を形成する。
標的化合物中の変動は、一般に出発するアニリン類のレベルで成し遂げられる。置換基RおよびR’は出発するアニリン類中にあり、合成を通して持ち越される。置換基R’’は出発するスルホニルクロリド中にあり、それもその合成を通して持ち越される。
スキーム2 アミノアセトアミドスルホンアミド類の合成に関する代表的な手順
2-アミノビフェニル(10 g, 59 mmol)のジエチルエーテル(60 mL)中における-10 ℃の溶液に、1.0 M水性NaOH (32 mL, 32 mmol)を添加した。ブロモアセチルブロミド(11.93 g, 59 mmol)のジエチルエーテル(30 mL)中における溶液を15分間かけて添加した。冷却浴を取り外し、その反応混合物をさらに15分間撹拌した。その混合物を分離し、水層をジエチルエーテル(100 mL)で洗浄した。有機性抽出物を合わせて水(2 × 50 mL)およびブライン(50 mL)で洗浄し、次いでMgSO4で乾燥させ、濾過し、最初の量の4分の1まで蒸発させた。結果として得られた固体を濾過により集め、高真空下で乾燥させると、6.5 g (37%)の望まれる生成物が白色の結晶質固体として得られた:1H-NMR (CDCl3) δ 8.32 (d, 2H), 7.53-7.36 (m, 6H), 7.27-7.22 (m, 2H)。
I.N-(4-クロロフェニル)-4-メトキシベンゼンスルホンアミド
4-メトキシベンゼンスルホニルクロリド(5.0 g, 24 mmol)および4-クロロアニリン(3.1 g, 24 mmol)のジクロロメタン(24 mL)中における0 ℃の溶液に、トリエチルアミン(3.4 mL, 24 mmol)を10分間かけて添加した。氷浴を取り外し、その混合物を16時間撹拌した。その混合物をジクロロメタン(100 mL)で希釈し、その合わせた溶液を水(50 mL)およびブライン(50 mL)で洗浄した。その有機溶液をMgSO4で乾燥させ、濾過し、蒸発させ、その粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(15〜60% EtOAc/ヘキサン)により精製した。生成物を含有する画分をプールし、蒸発させ、高真空下で乾燥させると、4.9 g (69%)の生成物が黄褐色の油として得られた:1H-NMR (CDCl3) δ 10.17 (s, 1H), 7.71 (d, 2H), 7.61 (d, 2H), 7.04 (d, 2H), 6.96 (d, 2H), 2.19 (s, 3H)。
II.N-(ビフェニル-2-イル)-2-(N-(4-クロロフェニル)-4-メトキシフェニルスルホンアミド)アセトアミド
N-(ビフェニル-2-イル)-2-ブロモアセトアミド(150 mg, 0.52 mmol)およびN-(4-クロロフェニル)-4-メトキシベンゼンスルホンアミド(154 mg, 0.52 mmol)のDMF (1.5 mL)中における混合物に、K2CO3 (180 mg, 1.3 mmol)を添加した。結果として得られた懸濁液を、60℃に45分間加熱した。その反応混合物を水(30 mL)中に注ぎ、酢酸エチル(2 × 50 mL)で抽出した。その有機層を合わせてブライン(1 × 50 mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィー(15〜40% EtOAc/ヘキサン)により精製した。生成物を含有する画分をプールし、蒸発させると、175 mg (66%)の生成物が白色の微結晶質の固体として得られた:融点100〜104 ℃, Rf 0.17 (25% EtOAc/ヘキサン); 1H-NMR (CDCl3) δ 8.78 (s, 1H), 8.49 (d, 1H), 7.72-7.67 (dd, 2H), 7.63-7.60 (m, 1H), 7.50 (d, 2H), 7.42 (d, 2H), 7.36-7.29 (t, 2H), 7.21-7.18 (m, 2H), 7.09-7.04 (t, 1H), 6.94-6.91 (dd, 2H), 6.43 (s, 1H), 6.28 (d, 1H), 4.10 (s, 2H), 3.87 (s, 3H)。
III.N-(4-トルオイル)-4-メトキシベンゼンスルホンアミド
4-メトキシベンゼンスルホニルクロリド(5.0 g, 24 mmol)および4-メチルアニリン(2.6 g, 24 mmol)のジクロロメタン(24 mL)中における0 ℃の溶液に、トリエチルアミン(3.4 mL, 24 mmol)を10分間かけて添加した。氷浴を取り外し、その混合物を16時間撹拌した。その混合物をジクロロメタン(100 mL)で希釈し、その合わせた溶液を水(50 mL)およびブライン(50 mL)で洗浄した。その有機溶液をMgSO4で乾燥させ、濾過し、蒸発させ、その粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(15〜60% EtOAc/ヘキサン)により精製した。生成物を含有する画分をプールし、蒸発させ、高真空下で乾燥させると、6.4 g (93%)の生成物が黄褐色の油として得られた:1H-NMR (DMSO-d6) δ 9.94 (s, 1H), 7.66-7.63 (m, 2H), 7.04-6.93 (m, 6H), 3.77 (s, 3H), 2.16 (s, 3H)。
IV.N-(ビフェニル-2-イル)-2-(N-(4-トルオイル)-4-メトキシフェニルスルホンアミド)アセトアミド
N-(ビフェニル-2-イル)-2-ブロモアセトアミド(150 mg, 0.52 mmol)およびN-(4-トルオイル)-4-メトキシベンゼンスルホンアミド(144 mg, 0.52 mmol)のDMF (1.5 mL)中における混合物に、K2CO3 (180 mg, 1.3 mmol)を添加した。結果として得られた懸濁液を、60℃に45分間加熱した。その反応混合物を水(30 mL)中に注ぎ、酢酸エチル(2 × 50 mL)で抽出した。その有機層を合わせてブライン(1 × 50 mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィー(15〜40% EtOAc/ヘキサン)により精製した。生成物を含有する画分をプールし、蒸発させると、122 mg (48%)の生成物が白色の微結晶質の固体として得られた:融点160〜161 ℃, Rf 0.19 (25% EtOAc/ヘキサン); 1H-NMR (DMSO-d6) δ 9.19 (s, 1H), 7.67 (d, 1H), 7.50 (d, 2H), 7.42 (t, 3H), 7.33-7.24 (m, 5H), 7.07 (d, 4H), 6.75 (d, 2H), 4.24 (s, 2H), 3.83 (s, 3H), 2.27 (s, 3H)。
V.N-(2-メトキシフェニル)-4-メトキシベンゼンスルホンアミド
4-メトキシベンゼンスルホニルクロリド(5.0 g, 24 mmol)および2-メトキシアニリン(3.0 g, 24 mmol)のジクロロメタン(24 mL)中における0 ℃の溶液に、トリエチルアミン(3.4 mL, 24 mmol)を10分間かけて添加した。氷浴を取り外し、その混合物を16時間撹拌した。その混合物をジクロロメタン(100 mL)で希釈し、その合わせた溶液を水(50 mL)およびブライン(50 mL)で洗浄した。その有機溶液をMgSO4で乾燥させ、濾過し、蒸発させ、その粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(15〜60% EtOAc/ヘキサン)により精製した。生成物を含有する画分をプールし、蒸発させ、高真空下で乾燥させると、5.3 g (44%)の生成物が黄褐色の油として得られた:1H-NMR (CDCl3) δ 7.70-7.67 (d, 2H), 7.53-7.50 (d, 1H), 7.05-6.99 (m, 2H), 6.91-6.83 (m, 3H), 6.73 (d, 1H), 3.80 (s, 3H), 3.65 (s, 3H)。
VI.N-(ビフェニル-2-イル)-2-(N-(2-メトキシフェニル)-4-メトキシフェニルスルホンアミド)アセトアミド
N-(ビフェニル-2-イル)-2-ブロモアセトアミド(150 mg, 0.52 mmol)およびN-(2-メトキシフェニル)-4-メトキシベンゼンスルホンアミド(153 mg, 0.52 mmol)のDMF (1.5 mL)中における混合物に、K2CO3 (180 mg, 1.3 mmol)を添加した。結果として得られた懸濁液を、60℃に45分間加熱した。その反応混合物を水(30 mL)中に注ぎ、酢酸エチル(2 × 50 mL)で抽出した。その有機層を合わせてブライン(1 × 50 mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィー(15〜40% EtOAc/ヘキサン)により精製した。生成物を含有する画分をプールし、蒸発させると、84 mg (33%)の生成物が白色の微結晶質の固体として得られた:融点130〜131 ℃, Rf 0.10 (25% EtOAc/ヘキサン); 1H-NMR (DMSO-d6) δ 9.16 (s, 1H), 7.68 (d, 1H), 7.51 (d, 2H), 7.40-7.28(m, 9H), 7.07 (d, 2H), 6.95 (d, 1H), 6.86 (d, 2H), 4.19 (s, 2H), 3.84 (s, 3H), 3.31 (s, 3H)。
VII.N-(4-メトキシフェニル)-4-メトキシベンゼンスルホンアミド
4-メトキシベンゼンスルホニルクロリド(5.0 g, 24 mmol)および4-メトキシアニリン(3.0 g, 24 mmol)のジクロロメタン(24 mL)中における0 ℃の溶液に、トリエチルアミン(3.4 mL, 24 mmol)を10分間かけて添加した。氷浴を取り外し、その混合物を16時間撹拌した。その混合物をジクロロメタン(100 mL)で希釈し、その合わせた溶液を水(50 mL)およびブライン(50 mL)で洗浄した。その有機溶液をMgSO4で乾燥させ、濾過し、蒸発させ、その粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(15〜60% EtOAc/ヘキサン)により精製した。生成物を含有する画分をプールし、蒸発させ、高真空下で乾燥させると、9.5 g (79%)の生成物が黄褐色の油として得られた:1H-NMR (DMSO-d6) δ 9.29 (s, 1H), 7.63 (d, 2H), 7.23-7.19 (m, 1H), 7.11-7.01 (m, 3H), 6.91-6.83 (m, 2H), 3.79 (s, 3H), 3.52 (s, 3H)。
VIII.N-(ビフェニル-2-イル)-2-(N-(4-メトキシフェニル)-4-メトキシフェニルスルホンアミド)アセトアミド
N-(ビフェニル-2-イル)-2-ブロモアセトアミド(150 mg, 0.52 mmol)およびN-(4-メトキシフェニル)-4-メトキシベンゼンスルホンアミド(153 mg, 0.52 mmol)のDMF (1.5 mL)中における混合物に、K2CO3 (180 mg, 1.3 mmol)を添加した。結果として得られた懸濁液を、60℃に45分間加熱した。その反応混合物を水(30 mL)中に注ぎ、酢酸エチル(2 × 50 mL)で抽出した。その有機層を合わせてブライン(1 × 50 mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィー(15〜40% EtOAc/ヘキサン)により精製した。生成物を含有する画分をプールし、蒸発させると、112 mg (42%)の生成物が白色の微結晶質の固体として得られた:融点131〜133 ℃, Rf 0.12 (25% EtOAc/ヘキサン); 1H-NMR (CDCl3) 8.98 (s, 1H), 8.35 (d, 1H), 7.62-7.47 (m, 7H), 7.29-7.19(m, 4H), 6.88 (dd, 2H), 6.71-6.67 (m, 2H), 6.21-6.18 (dd, 1H), 4.20 (s, 2H), 3.85 (s, 3H), 3.22 (s, 3H)。
IX.N-(4-トルオイル)ベンゼンスルホンアミド
ベンゼンスルホニルクロリド(4.2 g, 24 mmol)および4-メチルアニリン(2.6 g, 24 mmol)のジクロロメタン(24 mL)中における0 ℃の溶液に、トリエチルアミン(3.4 mL, 24 mmol)を10分間かけて添加した。氷浴を取り外し、その混合物を16時間撹拌した。その混合物をジクロロメタン(100 mL)で希釈し、その合わせた溶液を水(50 mL)およびブライン(50 mL)で洗浄した。その有機溶液をMgSO4で乾燥させ、濾過し、蒸発させ、その粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(15〜60% EtOAc/ヘキサン)により精製した。生成物を含有する画分をプールし、蒸発させ、高真空下で乾燥させると、10.6 g (97%)の生成物が黄褐色の油として得られた:1H-NMR (DMSO-d6) δ 10.09 (s, 1H), 7.73-7.70 (m, 2H), 7.59-7.49 (m, 3H), 6.98 (dd, 4H), 2.17 (s, 3H)。
X.N-(ビフェニル-2-イル)-2-(N-(トルオイル)フェニルスルホンアミド)アセトアミド
N-(ビフェニル-2-イル)-2-ブロモアセトアミド(150 mg, 0.52 mmol)およびN-(4-トルオイル)ベンゼンスルホンアミド(129 mg, 0.52 mmol)のDMF (1.5 mL)中における混合物に、K2CO3 (180 mg, 1.3 mmol)を添加した。結果として得られた懸濁液を、60℃に45分間加熱した。その反応混合物を水(30 mL)中に注ぎ、酢酸エチル(2 × 50 mL)で抽出した。その有機層を合わせてブライン(1 × 50 mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィー(15〜40% EtOAc/ヘキサン)により精製した。生成物を含有する画分をプールし、蒸発させると、71 mg (31%)の生成物が灰白色の粉末として得られた:融点98〜100 ℃, Rf 0.27 (25% EtOAc/ヘキサン); 1H-NMR (CDCl3) 8.84 (s, 1H), 8.48 (d, 1H), 7.72-7.67 (m, 2H), 7.62-7.59 (m, 2H), 7.54-7.46 (m, 6H), 7.46-7.28 (m, 2H), 7.2-7.17 (m, 1H), 6.90 (d, 2H), 6.18 (m, 2H), 4.16 (s, 2H), 2.26 (s, 3H)。
XI.N-(4-トルオイル)-4-クロロベンゼンスルホンアミド
4-クロロベンゼンスルホニルクロリド(5.1 g, 24 mmol)および4-メチルアニリン(2.6 g, 24 mmol)のジクロロメタン(24 mL)中における0 ℃の溶液に、トリエチルアミン(3.4 mL, 24 mmol)を10分間かけて添加した。氷浴を取り外し、その混合物を16時間撹拌した。その混合物をジクロロメタン(100 mL)で希釈し、その合わせた溶液を水(50 mL)およびブライン(50 mL)で洗浄した。その有機溶液をMgSO4で乾燥させ、濾過し、蒸発させ、その粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(15〜60% EtOAc/ヘキサン)により精製した。生成物を含有する画分をプールし、蒸発させ、高真空下で乾燥させると、6.8 g (69%)の生成物が黄褐色の油として得られた:1H-NMR (CDCl3) δ 10.17 (s, 1H), 7.71 (d, 2H), 7.61 (d, 2H), 7.04 (d, 2H), 6.96 (d, 2H), 2.19 (s, 3H)。
XII.N-(ビフェニル-2-イル)-2-(N-(4-トルオイル)-4-クロロフェニルスルホンアミド)アセトアミド
N-(ビフェニル-2-イル)-2-ブロモアセトアミド(150 mg, 0.52 mmol)およびN-(4-トルオイル)-4-クロロベンゼンスルホンアミド(153 mg, 0.52 mmol)のDMF (1.5 mL)中における混合物に、K2CO3 (180 mg, 1.3 mmol)を添加した。結果として得られた懸濁液を、60℃に45分間加熱した。その反応混合物を水(30 mL)中に注ぎ、酢酸エチル(2 × 50 mL)で抽出した。その有機層を合わせてブライン(1 × 50 mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィー(15〜40% EtOAc/ヘキサン)により精製した。生成物を含有する画分をプールし、蒸発させると、94 mg (37%)の生成物が白色の微結晶質の固体として得られた:融点159〜177 ℃, Rf 0.42 (25% EtOAc/ヘキサン); 1H-NMR (CDCl3) δ 8.77 (s, 1H), 8.48 (d, 1H), 7.71-7.59 (m, 2H), 7.52-7.40 (m, 6H), 7.38-7.32 (m, 1H), 7.29-7.26 (m, 2H), 7.19-7.15 (t, 2H), 6.95-6.23 (m, 2H), 4.13 (s, 2H), 2.27 (s, 3H)。
本明細書で引用された全ての刊行物、特許出願、特許、および他の文書をそのまま援用する。矛盾が生じる場合、定義を含め、本明細書が統制するであろう。加えて、その材料、方法、および例は説明的なものでしかなく、限定的であることを意図していない。
開示された化合物に対する明らかな変形および本発明の代わりの態様は、上記の開示を考慮すれば当業者には明らかであろう。全てのそのような明らかな変形および代替案は、本明細書で記述されたような本発明の範囲内であると考えられる。

Claims (29)

  1. 哺乳類におけるウイルス感染を阻害する方法であって、有効量の式I:
    式中:
    ArおよびArは独立して1価のアリールまたはヘテロアリール部分であり、それは未置換であってよく、またはハロ、アミノ、アミジノ、グアニジノ、アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アシル、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノ、アシルアミノ、アミド、スルホンアミド、メルカプト、アルキルチオ、アリールチオ、ヒドロキサメート、チオアシル、アルキルスルホニル、およびアミノスルホニルからなる群から選択される5個までの置換基により置換されていてよく;
    は1価アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリール部分であり、それは未置換であってよく、または加えて以下の:シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アシル、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノ、アシルアミノ、アミド、スルホンアミド、メルカプト、アルキルチオ、アリールチオ、ヒドロキサメート、チオアシル、アルキルスルホニル、およびアミノスルホニルからなる群から選択される置換基のいずれかにより置換されていてよく;
    およびRは独立して水素、アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、およびアシルアミノ部分からなる群から選択され;
    は水素、1価アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、およびヘテロシクロアルキル部分からなる群から選択され;
    そして式中:
    およびRはつながって炭素環式または複素環式環を形成していてよく;
    およびRが異なる場合、その鏡像異性体は(R)−もしくは(S)−立体配置のどちらか、またはラセミ化合物であってよい;
    を含む構造を有する少なくとも1種類の化合物および医薬的に許容できるキャリヤーまたは賦形剤を投与することを含む、前記方法。
  2. 前記の化合物がウイルスの宿主細胞中への侵入を阻害するのに有効である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記の医薬的に許容できるキャリヤーまたは賦形剤が結合剤、増量剤、潤滑剤、崩壊剤、湿潤剤、懸濁化剤、乳化剤、非水性ビヒクル、および保存剤から選択される、請求項1に記載の方法。
  4. 前記の化合物がインフルエンザ感染を阻害するのに有効である、請求項1に記載の方法。
  5. 前記のインフルエンザがトリインフルエンザである、請求項4に記載の方法。
  6. 前記のトリインフルエンザがH5N1亜型である、請求項5に記載の方法。
  7. 前記の化合物がエボラ感染を阻害するのに有効である、請求項1に記載の方法。
  8. 前記の化合物が水疱性口内炎ウイルス感染を阻害するのに有効である、請求項1に記載の方法。
  9. 前記の哺乳類がヒトである、請求項1に記載の方法。
  10. 前記の組成物が皮内、経皮、筋内、腹腔内、静脈内、または経口から選択される経路により投与される、請求項1に記載の方法。
  11. 前記の組成物が経口投与される、請求項10に記載の方法。
  12. 前記の経口投与が錠剤、ゼラチンカプセル、マイクロカプセル、および液体配合物からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
  13. 式Iの化合物:
    式中:
    ArおよびArは独立して1価のアリールまたはヘテロアリール部分であり、それは未置換であってよく、またはハロ、アミノ、アミジノ、グアニジノ、アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アシル、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノ、アシルアミノ、アミド、スルホンアミド、メルカプト、アルキルチオ、アリールチオ、ヒドロキサメート、チオアシル、アルキルスルホニル、およびアミノスルホニルからなる群から選択される5個までの置換基により置換されていてよく;
    は1価アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリール部分であり、それは未置換であってよく、または加えて以下の:シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アシル、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノ、アシルアミノ、アミド、スルホンアミド、メルカプト、アルキルチオ、アリールチオ、ヒドロキサメート、チオアシル、アルキルスルホニル、およびアミノスルホニルからなる群から選択される置換基のいずれかにより置換されていてよく;
    およびRは独立して水素、アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、およびアシルアミノ部分からなる群から選択され;
    は水素、1価アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、およびヘテロシクロアルキル部分からなる群から選択され;
    そして式中:
    およびRはつながって炭素環式または複素環式環を形成していてよく;
    およびRが異なる場合、その鏡像異性体は(R)−もしくは(S)−立体配置のどちらか、またはラセミ化合物であってよい;
    および医薬的に許容できるキャリヤーまたは賦形剤を含む組成物であって、哺乳類におけるウイルス感染を阻害するのに有効である、前記組成物。
  14. 前記の化合物がウイルスの宿主細胞中への侵入を阻害するのに有効である、請求項13に記載の組成物。
  15. 前記の医薬的に許容できるキャリヤーまたは賦形剤が結合剤、増量剤、潤滑剤、崩壊剤、湿潤剤、懸濁化剤、乳化剤、非水性ビヒクル、および保存剤から選択される、請求項13に記載の組成物。
  16. 前記の化合物がインフルエンザ感染を阻害するのに有効である、請求項13に記載の組成物。
  17. 前記のインフルエンザがトリインフルエンザである、請求項16に記載の組成物。
  18. 前記のトリインフルエンザがH5N1亜型である、請求項17に記載の組成物。
  19. 前記の化合物がエボラ感染を阻害するのに有効である、請求項13に記載の組成物。
  20. 前記の化合物が水疱性口内炎ウイルス感染を阻害するのに有効である、請求項13に記載の組成物。
  21. 前記の医薬的に許容できるキャリヤーまたは賦形剤が結合剤、増量剤、潤滑剤、崩壊剤、湿潤剤、懸濁化剤、乳化剤、非水性ビヒクル、および保存剤から選択される、請求項13に記載の組成物。
  22. 前記の化合物がインフルエンザ感染を阻害するのに有効である、請求項13に記載の組成物。
  23. 前記のインフルエンザがトリインフルエンザである、請求項22に記載の組成物。
  24. 前記のトリインフルエンザがH5N1亜型である、請求項23に記載の組成物。
  25. 前記の化合物がエボラ感染を阻害するのに有効である、請求項13に記載の組成物。
  26. インフルエンザ感染を阻害するための、請求項13に記載の組成物の使用。
  27. インフルエンザ感染を処置または予防するための医薬品の製造における、請求項13に記載の組成物の使用。
  28. エボラ感染を阻害するための、請求項13に記載の組成物の使用。
  29. エボラ感染を処置または予防するための医薬品の製造における、請求項13に記載の組成物の使用。
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