JP2014240346A - 強化用ガラス板及び強化ガラス板 - Google Patents

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Abstract

【課題】大型及び/又は薄型の強化用ガラス板をイオン交換処理した後、所定サイズの強化ガラス板を得る場合であっても、反り量を可及的に低減し得る強化用ガラス板の提供。【解決手段】板面積が0.01m2以上、板厚が1.5mm以下の強化用ガラス板は、有効面内を50mm間隔で測定したリターデーションの最大値が5.0nm以下の強化用ガラス板で、オーバーフローダウンドロー法により成形され、ガラス組成として、質量%で、SiO250〜80%、Al2O35〜25%、B2O30.7〜15%、Na2O 1〜20%、K2O 0〜10%を含有する強化用ガラス板。【選択図】図1

Description

本発明は、強化用ガラス板及び強化ガラス板に関し、特に、携帯電話、デジタルカメラ、PDA(携帯端末)等の表示デバイスのカバーガラスに好適な強化用ガラス板及び強化ガラス板に関する。
携帯電話、デジタルカメラ、PDA、タッチパネルディスプレイ、大型テレビ等の表示デバイスは、益々普及する傾向にある。
従来、これらの用途では、ディスプレイを保護するための保護部材としてアクリル等の樹脂板が使用されていた。しかし、樹脂板は、ヤング率が低いため、ペンや人の指等でディスプレイの表示面が押された場合に撓み易い。このため、樹脂板が内部のディスプレイに接触して、表示不良が発生することがあった。また、樹脂板は、表面に傷が付き易く、視認性が低下し易いという問題もあった。これらの問題を解決する方法は、保護部材としてガラス板を用いることである。この用途のガラス板には、(1)高い機械的強度を有すること、(2)低密度で軽量であること、(3)安価で多量に供給できること、(4)泡品位に優れること、(5)可視域において高い光透過率を有すること、(6)ペンや指等で表面を押した際に撓み難いように高いヤング率を有すること等が要求される。特に、(1)の要件を満たさない場合は、保護部材として用を足さなくなるため、従来からイオン交換処理した強化ガラス板が用いられている(特許文献1、2、非特許文献1参照)。
従来まで、強化ガラス板は、予め強化用ガラス板を所定形状に切断した後、イオン交換処理を行う方法、所謂、「強化前切断」で作製されていたが、近年、大型の強化用ガラス板をイオン交換処理した後、所定サイズに切断する方法、所謂、「強化後切断」が検討されている。強化後切断を行うと、強化ガラス板や各種デバイスの製造効率が飛躍的に向上するという利点がある。
特開2006−83045号公報 特開2011−88763号公報
泉谷徹郎等、「新しいガラスとその物性」、初版、株式会社経営システム研究所、1984年8月20日、p.451−498
ところで、フロート法は、大型、薄型のガラス板を安価、且つ大量に作製し得るため、強化ガラス板の成形方法として一般的である。例えば、特許文献2には、フロート法で成形されてなると共に、ガラス組成として、モル%で、SiO 67〜75%、Al 0〜4%、NaO 7〜15%、KO 1〜9%、MgO 6〜14%、CaO 0〜1%、ZrO 0〜1.5%、SiO+Al 71〜75%、NaO+KO 12〜20%を含有し、且つ厚み1.5mm以下の強化ガラス板が開示されている。
しかし、フロート法で成形された強化用ガラス板をイオン交換処理すると、ガラス製造工程中でスズ浴に接した側、所謂ボトム面と、その反対側、所謂トップ面とでは、表面近傍の性状、組成が相違し、強化ガラス板がトップ面側に凸に反るという問題が生じる。強化ガラス板の反り量が大きいと、強化ガラス板の歩留まりが低下する。
一方、オーバーフローダウンドロー法で強化用ガラス板を成形すれば、おもて面と裏面の性状差、組成差を低減し得るため、これによる反りを低減することができる。しかし、オーバーフローダウンドロー法で成形する場合であっても、強化用ガラス板が大型化及び/又は薄型化すると、強化ガラス板に反りが発生してしまう。
この現象は、大型及び/又は薄型の強化用ガラス板をイオン交換処理した後、所定サイズの強化ガラス板を得る場合に、顕在化し易くなる。
そこで、本発明は上記事情に鑑み成されたものであり、技術的課題は、大型及び/又は薄型の強化用ガラス板をイオン交換処理した後、所定サイズの強化ガラス板を得る場合であっても、反り量を可及的に低減し得る強化用ガラス板を創案することである。
本発明者等は、鋭意検討の結果、大型、且つ薄型の強化用ガラス板のリターデーションを所定範囲に規制することにより、上記技術的課題を解決し得ることを見出し、本発明として提案するものである。具体的に説明すると、本発明者等は、強化用ガラス板の有効面内のリターデーションに着目し、その有効面内において、局所的に大きなリターデーションが存在すると、反りを誘発することを見出し、この反りは、有効面全域においてリターデーションを所定値以下に規制すると、改善し得ることを見出した。すなわち、本発明の強化用ガラス板は、板面積が0.01m以上、板厚が1.5mm以下の強化用ガラス板であって、有効面内を50mm間隔で測定したリターデーションの最大値が5.0nm以下であることを特徴とする。ここで、「板面積」とは、端面を除く板表面の面積を指し、おもて面と裏面の何れか一方の面積を指す。「有効面内」とは、端面から内側に10mmの領域を除いた表面を指す。「リターデーションの最大値」は、市販の複屈折測定装置で測定可能であり、例えば、ユニオプト社の光ヘテロダイン法による共通光路干渉計とフーリエ解析法を利用した複屈折測定装置により測定可能である。
本発明の強化用ガラス板は、イオン交換処理後に切断工程に供されることが好ましい。
本発明の強化用ガラス板は、イオン交換処理前に切断工程に供されることが好ましい。このようにすれば、強化用ガラス板(強化ガラス板)の取り扱いが容易になる。
本発明の強化用ガラス板は、オーバーフローダウンドロー法により成形されてなることが好ましい。オーバーフローダウンドロー法で成形すれば、未研磨で表面品位が良好なガラス板を作製し易くなり、また大型、薄型のガラス板を作製し易くなり、結果として、強化ガラスの表面の機械的強度を高め易くなる。更におもて面と裏面の表面近傍の性状差、組成差が同等になり易く、これによる反りを抑制し易くなる。ここで、「オーバーフローダウンドロー法」は、耐熱性の樋状構造物の両側から溶融ガラスを溢れさせて、溢れた溶融ガラスを樋状構造物の下端で合流させながら、下方に延伸成形してガラス板を成形する方法である。
本発明の強化用ガラス板は、ガラス組成中のBの含有量が0.7〜15質量%であることが好ましい。
本発明の強化用ガラス板は、ガラス組成中のNaOの含有量が1〜20質量%であることが好ましい。
本発明の強化用ガラス板は、ガラス組成として、質量%で、SiO 50〜80%、Al 5〜25%、B 0.7〜15%、NaO 1〜20%、KO 0〜10%を含有することが好ましい。このようにすれば、イオン交換性能と耐失透性を高いレベルで両立することができる。
本発明の強化用ガラス板は、440℃のKNO溶融塩中で6時間のイオン交換処理を行ったとき、表面の圧縮応力層の圧縮応力値が400MPa以上、且つ圧縮応力層の応力深さが15μm以上になることが好ましい。ここで、「圧縮応力層の圧縮応力値」および「圧縮応力層の応力深さ」は、表面応力計(例えば、有限会社折原製作所製FSM−6000)を用いて、試料を観察した際に、観察される干渉縞の本数とその間隔から算出される値を指す。なお、本発明の強化用ガラス板は、370〜470℃のKNO溶融塩中で2〜8時間のイオン交換処理を行ったとき、表面の圧縮応力層の圧縮応力値が400MPa以上、且つ圧縮応力層の応力深さが15μm以上になることも好ましい。
本発明の強化用ガラス板は、未研磨の表面を有することが好ましい。このようにすれば、強化ガラスの生産性が向上する共に、表面の機械的強度を高め易くなる。
本発明の強化用ガラス板は、表示デバイスのカバーガラスに用いることが好ましい。
本発明の強化ガラス板は、強化用ガラス板をイオン交換処理してなる強化ガラス板であって、強化用ガラス板が、上記の強化用ガラス板であることを特徴とする。
[実施例]の欄の試料No.1の原板のリターデーションの測定データである。 [実施例]の欄の試料No.2の原板のリターデーションの測定データである。 [実施例]の欄の試料No.1の個片の反り量のデータである。 [実施例]の欄の試料No.2の個片の反り量のデータである。
本発明の強化用ガラス板において、板面積が0.01m以上であり、好ましくは0.1m以上、0.25m以上、0.35m以上、0.45m以上、0.8m以上、1.2m以上、1.5m以上、2m以上、1.2.5m以上、3m以上、3.5m以上、4m以上、4.5m以上、特に5〜10mである。板面積が大きい程、強化後切断による強化ガラス板の採取枚数が多くなり、強化ガラス板や各種デバイスの製造効率が飛躍的に向上する。なお、板面積が大きい程、強化ガラス板が反り易くなるため、本発明の効果を享受し易くなる。
板厚は1.5mm以下、1.0mm以下、0.8mm以下、0.7mm以下、0.6mm以下、特に0.5mm以下が好ましい。このようにすれば、表示デバイスの軽量化を図り易くなると共に、強化後切断を行う場合に、表面の圧縮応力層の影響により、切断面に圧縮応力が生じ易くなり、切断面の機械的強度が低下し難くなる。一方、板厚が小さ過ぎると、所望の機械的強度を得難くなる。また強化ガラス板が反り易くなる。よって、板厚は0.1mm以上が好ましい。なお、板厚が小さい程、強化ガラス板が反り易くなるため、本発明の効果を享受し易くなる。
本発明の強化用ガラス板において、有効面内を50mm間隔で測定したリターデーションの最大値は5.0nm以下であり、好ましくは4.0nm以下、3.5nm以下、3.0nm以下、2.5nm以下、2.0nm以下、特に0.1〜1.5nmである。リターデーデョンの最大値が大き過ぎると、イオン交換処理後に強化ガラス板が反り易くなり、強化ガラス板の製造効率が低下し易くなる。特に、強化後切断を適正に行うことができなくなる。板厚が0.5mm以下の場合、リターデーションの最大値は、好ましくは1.8nm以下、1.5nm以下、1.2nm以下、特に0.1〜1.0nm未満である。板厚が0.5超〜0.6mmの場合、リターデーションの最大値は、好ましくは2.2nm以下、1.9nm以下、1.7nm以下、特に0.1〜1.5nmである。板厚が0.6超〜1.0mmの場合、リターデーションの最大値は、好ましくは4.0nm以下、3.5nm以下、3.0nm以下、2.5nm以下、2.0nm以下、特に0.1〜1.5nmである。
強化用ガラス板のリターデーションを低下させるには、例えば、溶融ガラスを成形炉(成形体)でガラスリボンに成形する際に、ガラスリボンの端部の厚みとガラスリボンの中央部の厚みとの差ができるだけ小さくなるように成形したり、ガラスリボンを徐冷炉で徐冷(冷却)する際に、ガラスリボンの幅方向における温度分布をできるだけ小さくするように冷却すればよい。
成形工程において、ガラスリボンの端部の厚みとガラスリボンの中央部の厚みとの差ができるだけ小さくなるように成形する理由は、ガラスリボンの端部の厚みがガラスリボンの中央部の厚みと大きく異なると、成形後の冷却工程において、ガラスリボンの端部と中央部とで冷却速度が異なり、その結果、有効面内のリターデーションが大きくなるためである。例えば、溶融ガラスをガラスリボンに延伸成形するための成形ロール等の回転速度等を調整すると、ガラスリボンの端部の厚みとガラスリボンの中央部の厚みを均一化し易くなる。
また、徐冷炉での冷却工程において、ガラスリボンの幅方向における温度分布を可及的に小さくする方法として、下記の方法が挙げられる。
(1)ガラスリボンが均一に加熱されるように、ヒーターの数を多くする。
(2)ヒーターからの熱がガラスリボンに均一に伝わるように、ヒーターとガラスリボンの間に均熱板を設置する。
(3)ガラスリボンの中央部と端部の冷却速度の差が小さくなるように、ガラスリボンの端部に囲いを設置したり、その部分にヒーターを多く配置する。
(4)ガラスの板引き速度を低く(遅く)する。
オーバーフローダウンドロー法は、フロート法と異なり、低温雰囲気である切断工程から高温雰囲気である徐冷炉及び成形炉の方向に、常にガラスリボンの表面に沿って低温の空気流が上昇し、上昇した低温の空気流は徐冷炉等の内部で加熱された後、その一部が周壁部の隙間を通して外部雰囲気に洩れ出すため、徐冷炉や成形炉の雰囲気温度が変動し易くなっている。その結果、オーバーフローダウンドロー法で成形されたガラス板は、有効面内のリターデーションが大きくなり易い。そのため、オーバーフローダウンドロー法でガラス板を成形する場合は、ガラスリボンの端部と中央部の厚みをほぼ同じ厚みにすること、温度分布を小さくすることに加えて、徐冷炉や成形炉における低温の空気流の上昇を抑えることが好ましい。
徐冷炉や成形炉における低温の空気流の上昇を抑えるには、徐冷炉内に対流防止板を設けたり、送風機等を用いて成形炉や徐冷炉の外部雰囲気の気圧が高くなるように調整する等して、成形炉や徐冷炉内の空気を外部雰囲気に洩れ出し難くすればよい。
上記の方法以外にも、ガラス組成中のSiO、Al、Bの含有量を増加させて、熱膨張係数を低下させたり、アルカリ土類金属酸化物の含有量を増加させて、光弾性定数を低下させることにより、強化用ガラス板のリターデーションを低下させることも有効である。
本発明の強化用ガラス板は、ガラス組成中のBの含有量が0.7〜15質量%であることが好ましい。Bは、高温粘度や密度を低下させると共に、ガラスを安定化させて結晶を析出させ難くし、液相温度を低下させる成分である。またクラックレジスタンスを高める成分である。更に熱膨張係数を低下させて、リターデーションを低下させる成分である。しかし、Bの含有量が多過ぎると、イオン交換処理によって、ヤケと呼ばれる表面の着色が発生したり、耐水性が低下したり、圧縮応力層の圧縮応力値が低下したり、圧縮応力層の応力深さが小さくなる傾向がある。
本発明の強化用ガラス板は、ガラス組成中のNaOの含有量が1〜20質量%であることが好ましい。NaOは、主要なイオン交換成分であり、また高温粘度を低下させて、溶融性や成形性を高める成分である。また、NaOは、耐失透性を改善する成分でもある。しかし、NaOの含有量が少な過ぎると、溶融性が低下したり、熱膨張係数が低下したり、イオン交換性能が低下し易くなる。一方、NaOの含有量が多過ぎると、熱膨張係数が高くなり過ぎて、耐熱衝撃性が低下したり、周辺材料の熱膨張係数に整合させ難くなる。また歪点が低下し過ぎたり、ガラス組成の成分バランスを欠き、かえって耐失透性が低下する場合がある。
本発明の強化用ガラス板は、ガラス組成として、質量%で、SiO 50〜80%、Al 5〜25%、B 0.7〜15%、NaO 1〜20%、KO 0〜10%を含有することが好ましい。上記のように各成分の含有範囲を限定した理由を下記に示す。なお、各成分の含有範囲の説明において、%表示は質量%を指す。
SiOは、ガラスのネットワークを形成する成分であり、また熱膨張係数を低下させて、リターデーションを低下させる成分である。SiOの含有量は、好ましくは50〜80%、52〜75%、55〜72%、55〜70%、特に55〜67.5%である。SiOの含有量が少な過ぎると、ガラス化し難くなり、また熱膨張係数が高くなり過ぎて、リターデーションが高くなり易い。一方、SiOの含有量が多過ぎると、溶融性や成形性が低下し易くなる。なお、リターデーションの低下を優先させる場合、SiOの含有量は多い方が好ましく、具体的には、55%以上、58.4%以上、59%以上、59.5%以上、60%以上、特に60.5%以上が好ましい。
Alは、イオン交換性能を高める成分であり、また歪点やヤング率を高める成分であり、更に熱膨張係数を低下させて、リターデーションを低下させる成分である。Alの含有量は5〜25%が好ましい。Alの含有量が少な過ぎると、熱膨張係数が高くなり過ぎて、リターデーションが高くなり易いことに加えて、イオン交換性能を十分に発揮できない虞が生じる。よって、Alの好適な下限範囲は7%以上、8%以上、10%以上、12%以上、14%以上、15%以上、特に16%以上である。一方、Alの含有量が多過ぎると、ガラスに失透結晶が析出し易くなって、オーバーフローダウンドロー法等でガラス板を成形し難くなる。また熱膨張係数が低くなり過ぎて、周辺材料の熱膨張係数に整合させ難くなり、更には高温粘性が高くなり、溶融性が低下し易くなる。よって、Alの好適な上限範囲は22%以下、20%以下、19%以下、18%以下、特に17%以下である。なお、リターデーションの低下を優先させる場合、Alの含有量は多い方が好ましく、具体的には、14%以上、15%以上、16%以上、17%以上、18%以上、19%以上、特に20%以上が好ましい。
は、高温粘度や密度を低下させると共に、ガラスを安定化させて結晶を析出させ難くし、液相温度を低下させる成分である。またクラックレジスタンスを高める成分である。更に熱膨張係数を低下させて、リターデーションを低下させる成分である。しかし、Bの含有量が多過ぎると、イオン交換処理によって、ヤケと呼ばれる表面の着色が発生したり、耐水性が低下したり、圧縮応力層の圧縮応力値が低下したり、圧縮応力層の応力深さが小さくなる傾向がある。よって、Bの含有量は、好ましくは0.7〜15%、1〜10%、1超〜8%、1.5〜6%、特に2〜5%である。
NaOは、主要なイオン交換成分であり、また高温粘度を低下させて、溶融性や成形性を高める成分である。また、NaOは、耐失透性を改善する成分でもある。NaOの含有量は1〜20%である。NaOの含有量が少な過ぎると、溶融性が低下したり、熱膨張係数が低下したり、イオン交換性能が低下し易くなる。よって、NaOを導入する場合、NaOの好適な下限範囲は10%以上、11%以上、特に12%以上である。一方、NaOの含有量が多過ぎると、熱膨張係数が高くなり過ぎて、耐熱衝撃性が低下したり、周辺材料の熱膨張係数に整合させ難くなる。また歪点が低下し過ぎたり、ガラス組成の成分バランスを欠き、かえって耐失透性が低下する場合がある。よって、NaOの好適な上限範囲は17%以下、特に16%以下である。
Oは、イオン交換を促進する成分であり、アルカリ金属酸化物の中では圧縮応力層の応力深さを増大させる効果が大きい成分である。また高温粘度を低下させて、溶融性や成形性を高める成分である。更には、耐失透性を改善する成分でもある。KOの含有量は0〜10%である。KOの含有量が多過ぎると、熱膨張係数が高くなり過ぎて、耐熱衝撃性が低下したり、周辺材料の熱膨張係数に整合させ難くなる。また歪点が低下し過ぎたり、ガラス組成の成分バランスを欠き、かえって耐失透性が低下する傾向がある。よって、KOの好適な上限範囲は8%以下、6%以下、4%以下、特に2%未満である。
上記成分以外にも、例えば以下の成分を導入してもよい。
LiOは、イオン交換成分であると共に、高温粘度を低下させて、溶融性や成形性を高める成分である。またヤング率を高める成分である。更にアルカリ金属酸化物の中では圧縮応力値を増大させる効果が大きい。しかし、LiOの含有量が多過ぎると、液相粘度が低下して、ガラスが失透し易くなる。また、熱膨張係数が高くなり過ぎて、耐熱衝撃性が低下したり、周辺材料の熱膨張係数に整合させ難くなる。更に、低温粘性が低下し過ぎて、応力緩和が起こり易くなると、かえって圧縮応力値が小さくなる場合がある。従って、LiOの含有量は、好ましくは0〜3.5%、0〜2%、0〜1%、0〜0.5%、特に0.01〜0.2%である。
LiO+NaO+KOの好適な含有量は5〜25%、10〜22%、15〜22%、特に17〜22%である。LiO+NaO+KOの含有量が少な過ぎると、イオン交換性能や溶融性が低下し易くなる。一方、LiO+NaO+KOの含有量が多過ぎると、ガラスが失透し易くなることに加えて、熱膨張係数が高くなり過ぎて、耐熱衝撃性が低下したり、周辺材料の熱膨張係数に整合させ難くなる。また歪点が低下し過ぎて、高い圧縮応力値が得られ難くなる場合がある。更に液相温度付近の粘性が低下して、高い液相粘度を確保し難くなる場合もある。なお、「LiO+NaO+KO」は、LiO、NaO及びKOの合量である。
MgOは、高温粘度を低下させて、溶融性や成形性を高めたり、歪点やヤング率を高める成分であり、アルカリ土類金属酸化物の中では、イオン交換性能を高める効果が大きい成分である。また光弾性定数を低下させる成分である。しかし、MgOの含有量が多過ぎると、密度や熱膨張係数が高くなり易く、またガラスが失透し易くなる。よって、MgOの好適な上限範囲は12%以下、10%以下、8%以下、5%以下、特に4%以下である。なお、ガラス組成中にMgOを導入する場合、MgOの好適な下限範囲は0.1%以上、0.5%以上、1%以上、特に2%以上である。
CaOは、他の成分と比較して、耐失透性の低下を伴うことなく、高温粘度を低下させて、溶融性や成形性を高めたり、歪点やヤング率を高める効果が大きい。また光弾性定数を低下させる成分である。CaOの含有量は0〜10%が好ましい。しかし、CaOの含有量が多過ぎると、密度や熱膨張係数が高くなり、またガラス組成の成分バランスを欠いて、かえってガラスが失透し易くなったり、イオン交換性能が低下し易くなる。よって、CaOの好適な含有量は0〜5%、0.01〜4%、0.1〜3%、特に1〜2.5%である。
SrOは、耐失透性の低下を伴うことなく、高温粘度を低下させて、溶融性や成形性を高めたり、歪点やヤング率を高める成分である。また光弾性定数を低下させる成分である。しかし、SrOの含有量が多過ぎると、密度や熱膨張係数が高くなったり、イオン交換性能が低下したり、ガラス組成の成分バランスを欠いて、かえってガラスが失透し易くなる。SrOの好適な含有範囲は0〜5%、0〜3%、0〜1%、特に0〜0.1%未満である。
BaOは、耐失透性の低下を伴うことなく、高温粘度を低下させて、溶融性や成形性を高めたり、歪点やヤング率を高める成分である。また光弾性定数を低下させる成分である。しかし、BaOの含有量が多過ぎると、密度や熱膨張係数が高くなったり、イオン交換性能が低下したり、ガラス組成の成分バランスを欠いて、かえってガラスが失透し易くなる。BaOの好適な含有範囲は0〜5%、0〜3%、0〜1%、特に0〜0.1%未満である。
ZnOは、イオン交換性能を高める成分であり、特に圧縮応力値を増大させる効果が大きい成分である。また低温粘性を低下させずに、高温粘性を低下させる成分である。しかし、ZnOの含有量が多過ぎると、ガラスが分相したり、耐失透性が低下したり、密度が高くなったり、圧縮応力層の応力深さが小さくなる傾向がある。よって、ZnOの含有量は0〜6%、0〜5%、0〜1%、0〜0.5%、特に0〜0.1%未満が好ましい。
ZrOは、イオン交換性能を顕著に高める成分であると共に、液相粘度付近の粘性や歪点を高める成分であるが、その含有量が多過ぎると、耐失透性が著しく低下する虞があり、また密度が高くなり過ぎる虞がある。よって、ZrOの好適な上限範囲は10%以下、8%以下、6%以下、特に5%以下である。なお、イオン交換性能を高めたい場合、ガラス組成中にZrOを導入することが好ましく、その場合、ZrOの好適な下限範囲は0.01%以上、0.5%、特に1%以上である。
は、イオン交換性能を高める成分であり、特に圧縮応力層の応力深さを大きくする成分である。しかし、Pの含有量が多過ぎると、ガラスが分相し易くなる。よって、Pの好適な上限範囲は10%以下、8%以下、6%以下、4%以下、2%以下、1%以下、特に0.1%未満である。
清澄剤として、As、Sb、SnO、F、Cl、SOの群(好ましくはSnO、Cl、SOの群)から選択された一種又は二種以上を0〜30000ppm(3%)導入してもよい。SnO+SO+Clの含有量は、清澄効果を的確に享受する観点から、好ましくは0〜10000ppm、50〜5000ppm、80〜4000ppm、100〜3000ppm、特に300〜3000ppmである。ここで、「SnO+SO+Cl」は、SnO、SO及びClの合量を指す。
SnOの好適な含有範囲は0〜10000ppm、0〜7000ppm、特に50〜6000ppmである、Clの好適な含有範囲は0〜1500ppm、0〜1200ppm、0〜800ppm、0〜500ppm、特に50〜300ppmである。SOの好適な含有範囲は0〜1000ppm、0〜800ppm、特に10〜500ppmである。
Nd、La等の希土類酸化物は、ヤング率を高める成分であり、また補色となる色を加えると、消色して、ガラスの色味をコントロールし得る成分である。しかし、原料自体のコストが高く、また多量に導入すると、耐失透性が低下し易くなる。よって、希土類酸化物の含有量は、好ましくは4%以下、3%以下、2%以下、1%以下、特に0.5%以下である。
本発明では、環境面の配慮から、実質的にAs、F、PbO、Biを含有しないことが好ましい。ここで、「実質的にAsを含有しない」とは、ガラス成分として積極的にAsを添加しないものの、不純物レベルで混入する場合を許容する趣旨であり、具体的には、Asの含有量が500ppm未満であることを指す。「実質的にFを含有しない」とは、ガラス成分として積極的にFを添加しないものの、不純物レベルで混入する場合を許容する趣旨であり、具体的には、Fの含有量が500ppm未満であることを指す。「実質的にPbOを含有しない」とは、ガラス成分として積極的にPbOを添加しないものの、不純物レベルで混入する場合を許容する趣旨であり、具体的には、PbOの含有量が500ppm未満であることを指す。「実質的にBiを含有しない」とは、ガラス成分として積極的にBiを添加しないものの、不純物レベルで混入する場合を許容する趣旨であり、具体的には、Biの含有量が500ppm未満であることを指す。
本発明の強化用ガラス板は、以下の特性を有することが好ましい。
密度は、2.6g/cm以下、特に2.55g/cm以下が好ましい。密度が低い程、強化用ガラス板を軽量化することができる。なお、ガラス組成中のSiO、B、Pの含有量を増加させたり、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、ZnO、ZrO、TiOの含有量を低減すれば、密度が低下し易くなる。なお、「密度」は、周知のアルキメデス法で測定可能である。
熱膨張係数は、好ましくは80×10−7〜120×10−7/℃、85×10−7〜110×10−7/℃、90×10−7〜110×10−7/℃、特に90×10−7〜105×10−7/℃である。熱膨張係数を上記範囲に規制すれば、金属、有機系接着剤等の部材の熱膨張係数に整合し易くなり、金属、有機系接着剤等の部材の剥離を防止し易くなる。また熱膨張係数が低い程、リターデーションが小さくなり易い。ここで、「熱膨張係数」は、ディラトメーターを用いて、30〜380℃の温度範囲における平均熱膨張係数を測定した値を指す。なお、ガラス組成中のSiO、Al、B、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物の含有量を増加すれば、熱膨張係数が高くなり易く、逆にアルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物の含有量を低減すれば、熱膨張係数が低下し易くなる。
歪点は、好ましくは500℃以上、520℃以上、530℃以上、特に550℃以上である。歪点が高い程、耐熱性が向上し、イオン交換処理後に、強化ガラス板を熱処理する場合、圧縮応力層が消失し難くなる。更にタッチパネルセンサー等のパターニングにおいて、高品位な膜を形成し易くなる。ここで、「歪点」は、ASTM C336の方法に基づいて測定した値を指す。なお、ガラス組成中のアルカリ土類金属酸化物、Al、ZrO、Pの含有量を増加させたり、アルカリ金属酸化物の含有量を低減すれば、歪点が高くなり易い。
104.0dPa・sにおける温度は、好ましくは1280℃以下、1230℃以下、1200℃以下、1180℃以下、特に1160℃以下である。ここで、「104.0dPa・sにおける温度」は、白金球引き上げ法で測定した値を指す。104.0dPa・sにおける温度が低い程、成形設備への負担が軽減されて、成形設備が長寿命化し、結果として、強化用ガラス板の製造コストを低廉化し易くなる。なお、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、ZnO、B、TiOの含有量を増加させたり、SiO、Alの含有量を低減すれば、104.0dPa・sにおける温度が低下し易くなる。
102.5dPa・sにおける温度は、好ましくは1620℃以下、1550℃以下、1530℃以下、1500℃以下、特に1450℃以下である。ここで、「102.5dPa・sにおける温度」は、白金球引き上げ法で測定した値を指す。102.5dPa・sにおける温度が低い程、低温溶融が可能になり、溶融窯等のガラス製造設備への負担が軽減されると共に、泡品位を高め易くなる。よって、102.5dPa・sにおける温度が低い程、強化用ガラス板の製造コストを低廉化し易くなる。なお、102.5dPa・sにおける温度は、溶融温度に相当する。また、ガラス組成中のアルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、ZnO、B、TiOの含有量を増加させたり、SiO、Alの含有量を低減すれば、102.5dPa・sにおける温度が低下し易くなる。
液相温度は、好ましくは1200℃以下、1150℃以下、1100℃以下、1050℃以下、1000℃以下、950℃以下、900℃以下、特に880℃以下である。ここで、「液相温度」は、標準篩30メッシュ(篩目開き500μm)を通過し、50メッシュ(篩目開き300μm)に残るガラス粉末を白金ボートに入れて、温度勾配炉中に24時間保持した後、結晶が析出する温度を指す。なお、液相温度が低い程、耐失透性や成形性が向上する。また、ガラス組成中のNaO、KO、Bの含有量を増加させたり、Al、LiO、MgO、ZnO、TiO、ZrOの含有量を低減すれば、液相温度が低下し易くなる。
液相粘度は、好ましくは104.0dPa・s以上、104.4dPa・s以上、104.8dPa・s以上、105.0dPa・s以上、105.4dPa・s以上、105.6dPa・s以上、106.0dPa・s以上、106.2dPa・s以上、特に106.3dPa・s以上である。ここで、「液相粘度」は、液相温度における粘度を白金球引き上げ法で測定した値を指す。なお、液相粘度が高い程、耐失透性や成形性が向上する。また、ガラス組成中のNaO、KOの含有量を増加させたり、Al、LiO、MgO、ZnO、TiO、ZrOの含有量を低減すれば、液相粘度が高くなり易い。
本発明の強化用ガラス板は、未研磨の表面を有することが好ましく、特に両表面が未研磨であることが好ましく、また未研磨の表面の平均表面粗さ(Ra)は好ましくは10Å以下、より好ましくは5Å以下、より好ましくは4Å以下、更に好ましくは3Å以下、最も好ましくは2Å以下である。なお、平均表面粗さ(Ra)はSEMI D7−97「FPDガラス板の表面粗さの測定方法」に準拠した方法により測定すればよい。ガラスの理論強度は本来非常に高いが、理論強度よりも遥かに低い応力でも破壊に至ることが多い。これは、ガラス表面にグリフィスフローと呼ばれる小さな欠陥が成形後の工程、例えば研磨工程等で生じるからである。それ故、強化用ガラス板の表面を未研磨とすれば、イオン交換処理後に、強化ガラス板の機械的強度が維持されて、強化ガラス板が破壊し難くなる。また、イオン交換処理後にスクライブ切断を行う際に、表面が未研磨であると、スクライブ切断時に不当なクラック、破損等が生じ難くなる。更に、強化用ガラス板の表面を未研磨とすれば、研磨工程を省略し得るため、強化用ガラス板の製造コストを低廉化することができる。なお、未研磨の表面を得るためには、オーバーフローダウンドロー法でガラス板を成形すればよい。
本発明の強化用ガラス板は、オーバーフローダウンドロー法で成形されてなることが好ましい。このようにすれば、未研磨で表面品位が良好なガラス板を成形し易くなり、結果として、強化ガラス板の表面の機械的強度を高め易くなる。この理由は、オーバーフローダウンドロー法の場合、表面となるべき面が樋状耐火物に接触せず、自由表面の状態で成形されるからである。樋状構造物の構造や材質は、所望の寸法や表面品位を実現できるものであれば、特に限定されない。また、下方への延伸成形を行うために、ガラスリボンに対して力を印加する方法は、所望の寸法や表面品位を実現できるものであれば、特に限定されない。例えば、充分に大きい幅を有する耐熱性ロールをガラスリボンに接触させた状態で回転させて延伸する方法を採用してもよいし、複数の対になった耐熱性ロールをガラスリボンの端面近傍のみに接触させて延伸する方法を採用してもよい。
本発明の強化用ガラス板は、オーバーフローダウンドロー法以外にも、スロットダウンドロー法、フロート法、ロールアウト法、リドロー法等で成形することもできる。
本発明の強化ガラス板は、強化用ガラス板をイオン交換処理してなる強化ガラス板であって、強化用ガラス板が、上記の強化用ガラス板であることを特徴とする。本発明の強化ガラス板は、本発明の強化用ガラス板の技術的特徴(例えば、ガラス組成、ガラス特性等)を有する。ここでは、重複する技術的特徴は、便宜上、その記載を省略する。
本発明の強化ガラス板は、イオン交換処理により、その表面に圧縮応力層が形成されている。イオン交換処理は、ガラスの歪点以下の温度でガラス表面にイオン半径が大きいアルカリイオンを導入する方法である。イオン交換処理で圧縮応力層を形成すれば、板厚が小さい場合でも、圧縮応力層を適正に形成することができる。
イオン交換溶液、イオン交換温度及びイオン交換時間は、ガラスの粘度特性等を考慮して決定すればよい。特に、強化用ガラス板中のNa成分を硝酸カリウム溶液中のKイオンとイオン交換処理すると、表面に圧縮応力層を効率良く形成することができる。
本発明の強化ガラス板において、圧縮応力層の圧縮応力値は、好ましくは400MPa以上、500MPa以上、600MPa以上、700MPa以上、特に800MPa以上である。圧縮応力値が大きい程、強化ガラス板の機械的強度が高くなる。一方、圧縮応力値が大き過ぎると、内部の引っ張り応力値が過大になり、強化ガラス板が自己破壊し易くなると共に、強化ガラス板をスクライブ切断し難くなる。よって、圧縮応力層の圧縮応力値は、好ましくは1500MPa以下、特に1300MPa以下である。なお、ガラス組成中のAl、TiO、ZrO、MgO、ZnOの含有量を増加させたり、SrO、BaOの含有量を低減すれば、圧縮応力値が大きくなる傾向がある。また、イオン交換時間を短くしたり、イオン交換溶液の温度を下げれば、圧縮応力値が大きくなる傾向がある。
応力深さは、好ましくは15μm以上、20μm以上、特に25μm以上である。応力深さが大きい程、強化ガラス板に深い傷が付いても、強化ガラス板が割れ難くなると共に、機械的強度のばらつきが小さくなる。一方、応力深さが大き過ぎると、内部の引っ張り応力値が過大になり、強化ガラス板が自己破壊し易くなると共に、強化ガラス板をスクライブ切断し難くなる。応力深さは、好ましくは100μm以下、80μm未満、60μm以下、特に50μm未満である。なお、ガラス組成中のKO、Pの含有量を増加させたり、SrO、BaOの含有量を低減すれば、応力深さが大きくなる傾向がある。また、イオン交換時間を長くしたり、イオン交換溶液の温度を上げれば、応力深さが大きくなる傾向がある。
本発明の強化ガラス板は、強化後切断、特に強化後スクライブ切断されてなることが好ましい。強化ガラス板をスクライブ切断する場合、スクライブ傷の深さが応力深さより大きく、且つ内部の引っ張り応力値が120MPa以下(望ましくは100MPa以下、80MPa以下、70MPa以下、60MPa以下、50MPa以下)であることが好ましい。また、強化ガラス板の端面から5mm以上内側に離れた領域から、スクライブを開始することが好ましく、対向する端面から5mm以上内側の領域で、スクライブを終了することが好ましい。このようにすれば、スクライブ時に意図しない割れが発生し難くなり、強化後スクライブ切断を適正に行い易くなる。ここで、内部の引っ張り応力値は、以下の式で算出される値である。
内部の引っ張り応力値=(圧縮応力値×応力深さ)/(厚み−応力深さ×2)
強化後スクライブ切断する場合、強化ガラス板の表面にスクライブラインを形成した後、該スクライブラインに沿って、分断することが好ましい。このようにすれば、切断時に意図しないクラックが進展し難くなる。スクライブラインに沿って、強化ガラス板を分断するには、スクライブラインの形成中に、強化ガラスが自己破壊しないことが重要になる。自己破壊とは、強化ガラス板の表面に存在する圧縮応力、内部に存在する引っ張り応力の影響により、応力深さより深いダメージを受けた場合に、強化ガラス板が自発的に破壊される現象である。スクライブラインの形成中に強化ガラス板の自己破壊が始まると、所望の切断を行うことが困難になる。このために、スクライブラインの深さを応力深さの10倍以内、5倍以内、特に3倍以内に規制することが好ましい。なお、スクライブラインの形成には、作業性の点で、ダイヤモンドホイールチップ等を用いることが好ましい。
強化後切断される場合、強化ガラス板の端面(切断面)と表面が交差する端縁領域の一部又は全部に面取り加工が施されていることが好ましく、少なくとも表示側の端縁領域の一部又は全部に面取り加工が施されていることが好ましい。面取り加工として、R面取りが好ましく、この場合、曲率半径0.05〜0.5mmのR面取りが好ましい。また、0.05〜0.5mmのC面取りも好適である。更に、面取り面の表面粗さRaは1nm以下、0.7nm以下、0.5nm以下、特に0.3nm以下が好ましい。このようにすれば、端縁領域を起点としたクラックを防止し易くなる。ここで、「表面粗さRa」は、JIS B0601:2001に準拠した方法で測定した値を指す。
以下、実施例に基づいて、本発明を詳細に説明する。なお、以下の実施例は、単なる例示である。本発明は、以下の実施例に何ら限定されない。
表1は、本発明の実施例(試料No.1)及び比較例(試料No.2)を示している。
次のようにして、試料No.1、2を作製した。まずガラス原料を調合し、ガラスバッチを作製した。次に、このガラスバッチを連続溶融炉に投入し、清澄工程、攪拌工程、供給工程を経て、オーバーフローダウンドロー法により厚み0.7mmの板状に成形した後、所定寸法(640mm×750mm)に切断して、強化用ガラス板(原板)を作製した。この強化用ガラス板は、ガラス組成として、質量%で、SiO 57.4%、Al 13%、B 2%、MgO 2%、CaO 2%、LiO 0.1%、NaO 14.5%、KO 5%、ZrO 4%を含有し、密度が2.54g/cm、歪点が517℃、熱膨張係数が99.9×10−7/℃、104.0dPa・sにおける温度が1098℃、102.5dPa・sにおける温度が1392℃、液相温度が880℃、液相粘度が105.5dPa・sである。そして、この強化用ガラス板は、表面が未研磨である。なお、オーバーフローダウンドロー法の成形条件(成形ロールの回転速度、板引き速度)、徐冷条件(低温の空気流の上昇度)を制御することにより、有効面内のリターデーションの最大値を調整した。
強化用ガラス板(原板)のリターデーションの最大値は、有効面内を50mm間隔で測定したときの最大値であり、ユニオプト社の光ヘテロダイン法による共通光路干渉計とフーリエ解析法を利用した複屈折測定装置により測定した値である。図1は、試料No.1の原板のリターデーションの測定データである。図2は、試料No.2の原板のリターデーションの測定データである。図1及び図2において、各円の中心は測定点、円の直径はリターデーションの大きさ、円の直径として描かれた線の方向は強化用ガラス板の辺方向に対するリターデーションの方位角θを示している。この強化ガラス板を定盤上に載置し、エアーを流しながら、上方の有効面をセンサーで検知することにより反り量を測定した。
次に、各試料を440℃のKNO溶融塩中に6時間浸漬することにより、イオン交換処理を行った後、各試料の表面を洗浄し、強化ガラス板(原板サイズ)を作製した。
別途、個片の強化ガラス板の反り量も測定した。強化用ガラス板(原板)を切断することにより、有効面から18枚の7インチサイズ(114.8mm×176.4mm)の個片を採取した。次に、各個片試料を440℃のKNO溶融塩中に6時間浸漬することにより、イオン交換処理を行った後、表面を洗浄し、個片の強化ガラス板を作製した。続いて、得られた個片の強化ガラス板を斜めに立て掛けて載置した後、レーザーでスキャンし、スキャン幅に対する反りの割合を算出した。表中の反り量は、個片の強化ガラス板の反り量の平均値である。なお、イオン交換処理前の強化用ガラス板についても、同様にして、反りを評価した。
図3は、試料No.1の個片の反り量のデータである。図4は、試料No.2の個片の反り量のデータである。図3、4において、上段の数値は、イオン交換処理前の反り量を示しており、下段の数値は、イオン交換処理後の反り量を示している。なお、図3、4では、強化用ガラス板(原板)の有効面からの採取位置が区画毎に図示されている。また、成形時にガラスリボンが流下した方向は、図3、4の上方から下方への方向である。
続いて、表面応力計(有限会社折原製作所製FSM−6000)を用いて観察される干渉縞の本数とその間隔から表面の圧縮応力層の圧縮応力値と応力深さを算出した。算出に当たり、各試料の屈折率を1.52、光学弾性定数を28[(nm/cm)/MPa]とした。
表1から明らかなように、試料No.1は、リターデーションの最大値が小さいため、イオン交換処理後の反り量が小さかった。一方、試料No.2は、リターデーションの最大値が大きいため、イオン交換処理後の反り量が大きかった。
なお、板面積が大きい程、反り量が大きくなり、板厚が小さい程、反り量が大きくなる。よって、板面積が大きい程、或いは板厚が小さい程、有効面内のリターデーションの最大値を所定値以下に規制する意義が大きくなるものと考えられる。そして、有効面内のリターデーションの最大値と反り量の傾向は、表2に記載の強化用ガラス(試料No.3〜7)でも同様であると考えられる。
まずガラス組成として、質量%で、SiO 60.5%、Al 20.5%、MgO 2.3%、NaO 16.0%、SnO 0.5%を含有するように、ガラス原料を調合し、ガラスバッチを作製した。次に、このガラスバッチを連続溶融炉に投入し、清澄工程、攪拌工程、供給工程を経て、オーバーフローダウンドロー法にて板状に成形した後、1800mm×1500mm×厚み0.5mmの寸法に切断して、強化用ガラス板(原板)を作製した。なお、成形、徐冷の際に、各ヒーター間の温度分布を±1℃以内に制御すると共に、成形炉や徐冷炉の外部雰囲気の気圧が高くなるように制御して、上昇気流の発生を抑制した。
上記と同様の方法により、得られた強化用ガラス板について、リターデーションの最大値を測定したところ、0.80nmであった。続いて、得られた強化用ガラス板について、430℃のKNO溶融塩中に4時間浸漬することにより、イオン交換処理を行った後、上記と同様の方法により、圧縮応力層の圧縮応力値と応力深さを算出したところ、圧縮応力値が1220MPa、応力深さが38μmであった。なお、算出に当たり、各試料の屈折率を1.50、光学弾性定数を30[(nm/cm)/MPa]とした。
更に、得られた強化ガラス板の表面にスクライブラインを形成し、そのスクライブラインに沿って、折り割り操作を行い、有効面から100枚の7インチサイズ(114.8mm×176.4mm)の個片を分断した。その結果、破損不良が発生せず、個片の強化ガラス板を100枚採取することができた。なお、スクライブラインの形成に際し、対向する端面から5mm以上内側の領域で、スクライブを終了するようにした。また、スクライブ切断に際し、スクライブ傷の深さを応力深さより大きくなるようにした。
本発明の強化用ガラス板及び強化ガラス板は、携帯電話、デジタルカメラ、PDA等の表示デバイスのカバーガラスに好適である。また、本発明の強化用ガラス板及び強化ガラス板は、これらの用途以外にも、高い機械的強度が要求される用途、例えば窓ガラス、磁気ディスク用基板、フラットパネルディスプレイ用基板、固体撮像素子用カバーガラス、食器等への応用が期待できる。

Claims (11)

  1. 板面積が0.01m以上、板厚が1.5mm以下の強化用ガラス板であって、
    有効面内を50mm間隔で測定したリターデーションの最大値が5.0nm以下であることを特徴とする強化用ガラス板。
  2. イオン交換処理後に切断工程に供されることを特徴とする請求項1に記載の強化用ガラス板。
  3. イオン交換処理前に切断工程に供されることを特徴とする請求項1に記載の強化用ガラス板。
  4. オーバーフローダウンドロー法により成形されてなることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の強化用ガラス板。
  5. ガラス組成中のBの含有量が0.7〜15質量%であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の強化用ガラス板。
  6. ガラス組成中のNaOの含有量が1〜20質量%であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の強化用ガラス板。
  7. ガラス組成として、質量%で、SiO 50〜80%、Al 5〜25%、B 0.7〜15%、NaO 1〜20%、KO 0〜10%を含有することを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の強化用ガラス板。
  8. 440℃のKNO溶融塩中で6時間のイオン交換処理を行ったとき、表面の圧縮応力層の圧縮応力値が400MPa以上、且つ圧縮応力層の応力深さが15μm以上になることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の強化用ガラス板。
  9. 未研磨の表面を有することを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の強化用ガラス板。
  10. 表示デバイスのカバーガラスに用いることを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載の強化用ガラス板。
  11. 強化用ガラス板をイオン交換処理してなる強化ガラス板であって、
    強化用ガラス板が、請求項1〜10の何れかに記載の強化用ガラス板であることを特徴とする強化ガラス板。
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