JP2014237756A - 太陽電池モジュール用の封止材組成物及び封止材 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明の太陽電池モジュール用の封止材(以下、単に、「封止材」とも言う)を製造するために用いる、本発明の太陽電池モジュール用の封止材組成物(以下、単に、「封止材組成物」とも言う)は、ベース樹脂(A)と、ベース樹脂(A)よりも融点の高い耐熱性樹脂(B)とを含んでなる組成物である。ベース樹脂(A)は、融点70℃以下の相対的に密度の低いポリエチレン系樹脂であり、その封止材組成物中の含有量は60質量%以上88質量%以下、好ましくは、70質量%以上80質量%以下である。又、耐熱性樹脂(B)は、融点125℃以上の相対的に密度が高いポリエチレン系樹脂、又は、その他の熱可塑性樹脂であり、その封止材組成物中の含有量は12質量%以上40質量%以下、好ましくは15質量%以上35質量%以下である。
ベース樹脂(A)として用いる低融点のポリエチレン系樹脂としては、融点70℃以下で、密度が0.900g/cm3以下、好ましくは0.870g/cm3以上0.890g/cm3以下の低密度ポリエチレン(LDPE)を用いることができる。又、より好ましくは、エチレンとα−オレフィンとの共重合体であり、その密度が上記範囲にある直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)を用いることができる。ベース樹脂(A)の種類、融点、及び密度範囲を上記範囲とすることにより、封止材に好ましい柔軟性を付与することができる。
MFR(g/10min):JIS K7210に準拠して測定。具体的には、ヒーターで加熱された円筒容器内で合成樹脂を、190℃で加熱・加圧し、容器底部に設けられた開口部(ノズル)から10分間あたりに押出された樹脂量を測定した。試験機械は押出し形プラストメータを用い、押出し荷重については2.16kgとした。
尚、多層フィルムである封止材については、全ての層が一体積層された多層状態のまま、上記処理による測定を行い、得た測定値を当該多層の封止材のMFR値とした。
耐熱性樹脂(B)として用いる高融点の熱可塑性樹脂としては、融点125℃以上170℃以下で、密度が0.930g/cm3以上0.970g/cm3以下、好ましくは、0.935g/cm3以上0.965g/cm3以下の高密度ポリエチレン(HDPE)を用いることができる。耐熱性樹脂(B)として、上記融点、及び密度範囲にあるHDPEを、上述した通りの配合比で封止材組成物に含有させることにより、ベース樹脂(A)の有する柔軟性を保持したまま、必要な耐熱性を封止材に備えさせることができる。又、耐熱性樹脂(B)を、ベース樹脂(A)と同様にポリエチレン系樹脂とすることにより、両樹脂間の高い相溶性により、良好な成形性・分散性を得ることができる。
本発明の封止材組成物には、α−オレフィンとエチレン性不飽和シラン化合物とをコモノマーとして共重合してなるシラン共重合体(以下、「シラン変性ポリエチレン樹脂」とも言う)を、上記ベース樹脂(A)及び耐熱性樹脂(B)に、更に加えて、封止材組成物に一定量含有させることが好ましい。シラン変性ポリエチレン系樹脂は、主鎖となる直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)等に、エチレン性不飽和シラン化合物を側鎖としてグラフト重合してなるものである。このようなグラフト共重合体は、接着力に寄与するシラノール基の自由度が高くなるため、太陽電池モジュールにおける他の部材への封止材の接着性を向上することができる。このシラン変性ポリエチレン系樹脂の封止材組成物中の含有量は5質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
一般的には太陽電池モジュール用の封止材は発電効率最大化の観点から高い透明性を求められる。但し、太陽電池モジュールにおいて太陽電池素子の非受光面側に配置される封止材については、必ずしも透明性は必須ではない。むしろ、モジュール内での太陽光線を拡散反射することによる発電効率の向上や、或いは、意匠性の向上を目的として、白色の封止材とすることが求められる場合がある。
本発明の封止材組成物に用いるポリエチレン系樹脂としては、上記のシラン変性ポリエチレン樹脂の他にも、エチレンを重合して得られる通常のポリエチレン樹脂のみならず、α−オレフィン等のようなエチレン性の不飽和結合を有する化合物を重合して得られた樹脂、エチレン性不飽和結合を有する複数の異なる化合物を共重合させた樹脂、及びこれらの樹脂に別の化学種をグラフトして得られる変性樹脂等を適宜用いることができる。
太陽電池モジュール用の封止材は、上記の封止材組成物を、従来公知の方法で溶融成形することにより、単層又は多層のシート状又はフィルム状としたものである。尚、本発明におけるシート状とはフィルム状も含む意味であり両者に差はない。
本発明の太陽電池モジュールの一例について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の太陽電池モジュールについて、その層構成の一例を示す断面図である。本発明の太陽電池モジュール1は、入射光の受光面側から、透明前面基板2、前面封止材層3、太陽電池素子4、背面封止材層5、及び裏面保護シート6が順に積層されている。本発明の太陽電池モジュール1は、前面封止材層3及び背面封止材層5の少なくともいずれか一方の層を本発明の封止材を用いて構成するものである。
(単層フィルム)
下記表1の組成(表1中の融点、軟化温度以外の数値の単位は、全て、質量%)の封止材組成物を混合し単層用のブレンドとした。上記ブレンドをφ30mm押出し機、200mm幅のTダイスを有するフィルム成形機を用いて、押出し温度210℃、引き取り速度1.1m/minで総厚600μmの単層の太陽電池モジュール用の封止材を作製した(実施例1〜5、比較例1〜11)。
(多層フィルム)
又、下記表2の組成(表2中の融点、軟化温度以外の数値の単位は、全て、質量%)の封止材組成物を混合し3層のフィルムを成型するための中間層用及び最外層用のブレンドとした。上記ブレンドを、それぞれ、φ30mm押出し機、200mm幅のTダイスを有するフィルム成形機を用いて、押出し温度210℃、引き取り速度1.1m/minでフィルム成型し、それらを積層して、3層の太陽電池モジュール用の封止材を作製した。この封止材の層厚は、総厚を600μmとし、最外層:中間層:最外層の厚さの比を1:5:1とした。(実施例8〜10、比較例12〜13)。
(ベース樹脂(A))
ベース樹脂A1(表1中で「A1」と表記):密度0.881g/cm3、190℃でのMFRが3.5g/10分のメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン(M−LLDPE)
ベース樹脂A2(表1中で「A2」と表記):密度0.905g/cm3、190℃でのMFRが3.5g/10分のメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン(M−LLDPE)
ベース樹脂A3(表1中で「A3」と表記):密度0.919g/cm3、190℃でのMFRが2.3g/10分の低密度ポリエチレン(LDPE)
(耐熱性樹脂(B))
耐熱性樹脂B1(表1中で「B1」と表記):密度0.963g/cm3、190℃でのMFRが7.0g/10分の高密度ポリエチレン(HDPE)
耐熱性樹脂B2(表1中で「B2」と表記):密度0.890g/cm3、230℃でのMFRが2.5g/10分のポリプロピレン(PP)系エラストマー。(商品名:「ゼラスMC717R4」、三菱化学社製)
(シラン変性ポリエチレン系樹脂(Si樹脂))
シラン変性ポリエチレン系樹脂(Si樹脂)S1(表1中で「S1」と表記):密度0.900g/cm3であり、190℃でのMFRが1.2g/10分であるメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン(M−LLDPE)98質量部に対して、ビニルトリメトキシシラン2質量部と、ラジカル発生剤(反応触媒)としてのジクミルパーオキサイド0.1質量部と、を混合し、200℃で溶融、混練し、密度0.903g/cm3、190℃でのMFRが1.0g/10分であるシラン変性透明樹脂を得た。
(白色顔料)
酸化チタンT1(表1中で「T1」と表記):平均粒径0.3μmの酸化チタンを、密度0.900g/cm3であり、190℃でのMFRが3.5g/10分であるメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン(M−LLDPE)40質量部に対し、60質量部を混合し、200℃で溶融、混練し、ペレット状に成形したものを用いた。
(耐候性マスターバッチ)
耐候性MB1(表1中で「MB1」と表記):密度0.880g/cm3のチーグラー直鎖状低密度ポリエチレンを粉砕したパウダー100質量部に対して、ベンゾフェノール系紫外線吸収剤3.8質量部とヒンダードアミン系光安定化剤5質量部と、リン系熱安定化剤0.5質量部とを混合して溶融、加工し、ペレット化したマスターバッチを得た。
15mm幅にカットした実施例、比較例の各封止材を、それぞれガラス基板(白板フロート半強化ガラス JPT3.2 75mm×50mm×3.2mm)上に密着させて、下記ラミネート条件で、真空加熱ラミネート処理を行い、それぞれの実施例、比較例について太陽電池モジュール評価用サンプルを得た。これらの太陽電池モジュール評価用サンプルについて、下記の「ガラス密着強度試験方法」により、ガラス密着強度を測定して密着性を評価した。
(ラミネート条件) 真空引き:5.0分
加圧(0kPa〜100kPa):1.0分
圧力保持(100kPa):10.0分
温度165℃
上記太陽電池モジュール評価用サンプルにおいて、ガラス基板上に密着している封止材を、剥離試験機(テンシロン万能試験機 RTF−1150−H)にて垂直剥離(50mm/min)試験を行いガラス密着強度を測定した。それぞれの実施例及び比較例について測定結果を、以下の評価基準により評価した。評価結果を表1及び表2に「密着性」として示す。
A:40N/15mm以上
B:25N/15mm以上40N/15mm未満
C:25N/15mm未満
7.5×5.0cmにカットした実施例、比較例の各封止材を、ガラス基板(白板フロート半強化ガラス JPT3.2 150mm×150mm×3.2mm)上に2枚重ね置き、その上からガラス基板(白板フロート半強化ガラス JPT3.2 75mm×50mm×3.2mm)を重ね置き、上記密着性試験と同じラミネート条件で真空加熱ラミネート処理を行い、それぞれの実施例、比較例について太陽電池モジュール評価用サンプルを得た。これらの太陽電池モジュール評価用サンプルについて、下記の「ガラス密着強度試験方法」により、耐熱クリープを測定し、耐熱性を評価した。
上記の太陽電池モジュール評価用サンプルを垂直に置き、130℃で12時間放置し、放置後のガラス基板(白板フロート半強化ガラス JPT3.2 75mm×50mm×3.2mm)の移動距離を計測評価した。実施例、比較例の各封止材についての測定結果を、以下の評価基準により評価した。評価結果を表1及び表2に「耐熱性」として示す。
A:1.0mm未満
B:3.0mm以上6.0mm未満
C:6.0mm以上
白板半強化ガラス、タブ線接着済みの太陽電池素子、太陽電池用バックシート、及び実施例、比較例の各封止材を、それぞれ白板半強化ガラス/封止材/タブ線接着済みの太陽電池素子/封止材/バックシートの順で積層し、密着性試験と同じラミネート条件で、真空加熱ラミネート処理を行い、それぞれの実施例、比較例について太陽電池モジュール評価用サンプルを得た。これらの太陽電池モジュール評価用サンプルについて、下記の「外観、及びEL発光試験方法」により、セル破損の有無を測定して太陽電池素子の保護性能(柔軟性)を評価した。評価結果を表1及び表2に「柔軟性」として示す。
上記の太陽電池モジュール評価用サンプルを目視し、太陽電池素子への破損(クラック)の有無を評価した。外観上破損のないものについては下記の「EL発光試験」を実施し、微細な破損(マイクロクラック)の有無を評価し、実施例、比較例の各封止材についての測定結果を、以下の評価基準により評価した。評価結果を表1及び表2に「柔軟性」として示す。上記の「EL発光試験」とは、太陽電池素子に順バイアス印加をかけたものと、逆バイアス印加をかけたものの発光現象を高精細カメラで撮影し、それぞれを画像解析することでセルのクラック有無を確認する試験のことを言う。
A:破損なし
B:EL発光試験上破損あり
C:外観上破損あり
2 透明前面基板
3 前面封止材層
4 太陽電池素子
5 背面封止材層
6 裏面保護シート
Claims (10)
- 太陽電池モジュール用の封止材組成物であって、
架橋剤を含有せず、ベース樹脂(A)と、耐熱性樹脂(B)と、を含み、
前記ベース樹脂(A)は、融点70℃以下のポリエチレン系樹脂であり、
前記耐熱性樹脂(B)は、融点125℃以上170℃以下の熱可塑性樹脂であり、
前記封止材組成物中の前記耐熱性樹脂(B)の含有量が12質量%以上40質量%以下である太陽電池モジュール用の封止材組成物。 - 前記ベース樹脂(A)が、メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレンである請求項1に記載の太陽電池モジュール用の封止材組成物。
- 前記耐熱性樹脂(B)が、密度0.930/cm3以上0.970/cm3以下のポリエチレンである請求項1又は2に記載の太陽電池モジュール用の封止材組成物。
- α−オレフィンとエチレン性不飽和シラン化合物とをコモノマーとして共重合してなる共重合体を、更に含有する請求項1から3のいずれかに記載の太陽電池モジュール用の封止材組成物。
- 請求項1から4のいずれかに記載の封止材組成物を溶融成形してなる単層フィルムである太陽電池モジュール用の封止材。
- 請求項5に記載の封止材を積層してなる多層フィルムであって、
最外層における前記耐熱性樹脂(B)の含有量が12質量%以上25質量%以下であり、前記最外層以外の中間層における前記耐熱性樹脂(B)の含有量が20質量%以上40質量%以下である太陽電池モジュール用の封止材。 - 前記多層フィルムが3層以上の層からなり、前記中間層にのみ顔料を含むことを特徴とする請求項6に記載の太陽電池モジュール用の封止材。
- 前記耐熱性樹脂(B)の融点+30℃以上で前記溶融成形を行う請求項5から7のいずれかに記載の太陽電池モジュール用の封止材の製造方法。
- 請求項5から7のいずれかに記載の太陽電池モジュール用の封止材を使用した太陽電池モジュール。
- 請求項5から7のいずれかに記載の太陽電池モジュール用の封止材が太陽電池素子の非受光面側に配置されている太陽電池モジュール。
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