ところで、上述の特許文献1に記載の樹脂成形体フィルム加飾方法では、例えば、フィルムから加飾印刷層等の薄膜が被転写体に転写された場合において、当該被転写体に転写された薄膜の光沢感の点で更なる改善の余地がある。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、被転写体に転写された薄膜の光沢感を向上することができる被転写体製造方法、インクジェットプリンタ、転写フィルム及び被転写体を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明に係る被転写体製造方法は、転写フィルムを構成するシート状の基材に接して設けられる薄膜の、前記基材とは反対側の面に接するように平滑層を印刷する平滑層印刷工程と、前記平滑層の前記薄膜とは反対側の面、又は、被転写体の被転写面に接するように接着層を印刷する接着層印刷工程と、前記被転写面と前記平滑層との間に前記接着層が介在するように前記被転写体と前記転写フィルムとを積層させ押圧することで前記薄膜を前記被転写面に転写する転写工程と、少なくとも前記転写工程より後に、前記基材と前記薄膜とを剥離する剥離工程とを含み、前記平滑層は、前記接着層より硬度が高いことを特徴とする。
これにより、当該被転写体製造方法によって製造された被転写体は、薄膜と接着層との間に硬度が高い平滑層が介在することで、薄膜の表面の凹凸を低減することができるので、当該被転写体に転写された薄膜の光沢感を向上することができる。
また、上記被転写体製造方法では、前記平滑層印刷工程は、少なくとも、前記平滑層を形成するインクであって露光することで硬化度が変化するインクである平滑層インクを前記薄膜の前記基材とは反対側の面に吐出した後に当該平滑層インクに対して露光することによって本硬化の状態に硬化させて第1層を印刷する第1層印刷工程と、前記平滑層を形成するインクを前記第1層の前記薄膜とは反対側の面に吐出し、当該インクを当該第1層の前記薄膜とは反対側の面に形成される凹凸の凹部内に収納し、当該第1層の前記薄膜とは反対側の面を平滑化する第2層を印刷する第2層印刷工程とを含むものとすることができる。
これにより、当該被転写体製造方法によって製造された被転写体は、第1層の本硬化によって当該第1層の表面に生じうる凹凸に対して、第2層を形成するインクが入り込むことで、当該第2層によって第1層の表面をレベリング(水平化)することができる。この結果、当該被転写体は、平滑層自体の平滑度を向上することができるので、当該被転写体に転写された薄膜の光沢感をさらに向上することができる。
また、上記被転写体製造方法の前記第2層印刷工程では、前記平滑層を形成するインクであって露光することで硬化度が変化するインクである前記平滑層インクを前記第1層の前記薄膜とは反対側の面に吐出した後に当該平滑層インクに対して露光することによって前記本硬化の状態より硬化度が低い仮硬化の状態に硬化させて前記第2層を印刷するものとすることができる。
これにより、当該被転写体製造方法によって製造された被転写体は、第1層を形成するインクと共通のインクで第2層を形成することができると共に、比較的に短時間で当該第2層を形成することができるので、製造効率を向上することができる。
また、上記被転写体製造方法の前記接着層印刷工程では、前記接着層を形成するインクであって露光することで硬化度が変化するインクである接着層インクを前記平滑層の前記薄膜とは反対側の面、又は、前記被転写面に吐出した後に当該接着層インクに対して露光することによって前記本硬化の状態より硬化度が低い仮硬化の状態に硬化させて前記接着層を印刷し、さらに、少なくとも前記転写工程より後に、前記接着層、及び、前記平滑層の前記第2層に対して露光することによって前記接着層、及び、前記平滑層の前記第2層を本硬化の状態に硬化させる照射工程を含むものとすることができる。
これにより、当該被転写体製造方法によって製造された被転写体は、転写工程より後に、接着層等を本硬化させる照射工程を行うことで、接着層が仮硬化の状態で薄膜を被転写面に転写した後、当該接着層を本硬化させることができるので、薄膜と被転写面とを確実に接着させることができる。
上記目的を達成するために、本発明に係るインクジェットプリンタは、平滑層を形成するインクであって露光することで硬化度が変化するインクである平滑層インクを貯留する平滑層インクタンクと、接着層を形成するインクであって露光することで硬化度が変化するインクである接着層インクを貯留する接着層インクタンクと、前記平滑層インクタンクに貯留された前記平滑層インク、及び、前記接着層インクタンクに貯留された前記接着層インクを吐出可能である吐出部と、前記吐出部から吐出された前記平滑層インク、及び、前記接着層インクに対して露光可能である露光部と、前記吐出部、及び、前記露光部を制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記吐出部によって前記平滑層インクタンクに貯留された前記平滑層インクを、転写フィルムを構成するシート状の基材に接して設けられる薄膜の、当該基材とは反対側の面に吐出した後に前記露光部によって当該平滑層インクに対して露光することによって硬化させることで前記平滑層を印刷する制御、前記吐出部によって前記接着層インクタンクに貯留された前記接着層インクを、前記平滑層の前記薄膜とは反対側の面、又は、被転写体の被転写面に吐出した後に前記露光部によって当該接着層インクに対して露光することによって仮硬化の状態で硬化させることで前記接着層を印刷する制御、及び、前記薄膜が前記被転写面に転写された後に、前記露光部によって前記接着層に対して露光することによって当該接着層を本硬化の状態に硬化させる制御を実行可能であり、前記平滑層は、前記接着層より硬度が高いことを特徴とする。
これにより、当該インクジェットプリンタによって各層が印刷された被転写体は、薄膜と接着層との間に硬度が高い平滑層が介在することで、薄膜の表面の凹凸を低減することができるので、当該被転写体に転写された薄膜の光沢感を向上することができる。
また、上記インクジェットプリンタでは、前記制御装置は、前記吐出部によって前記平滑層インクタンクに貯留された前記平滑層インクを、前記薄膜の前記基材とは反対側の面に吐出した後に前記露光部によって当該平滑層インクに対して露光することによって本硬化の状態に硬化させることで前記平滑層の第1層を印刷する制御、前記吐出部によって前記平滑層を形成するインクを前記第1層の前記薄膜とは反対側の面に吐出し、当該インクを当該第1層の前記薄膜とは反対側の面に形成される凹凸の凹部内に収納し、当該第1層の前記薄膜とは反対側の面を平滑化する前記平滑層の第2層を印刷する制御を実行可能であるものとすることができる。
これにより、当該インクジェットプリンタによって各層が印刷された被転写体は、第1層の本硬化によって当該第1層の表面に生じうる凹凸に対して、第2層を形成するインクが入り込むことで、当該第2層によって第1層の表面をレベリング(水平化)することができる。この結果、当該被転写体は、平滑層自体の平滑度を向上することができるので、当該被転写体に転写された薄膜の光沢感をさらに向上することができる。
また、上記インクジェットプリンタでは、前記制御装置は、前記平滑層の第2層を印刷する制御として、前記吐出部によって前記平滑層インクタンクに貯留された前記平滑層インクを、前記第1層の前記薄膜とは反対側の面に吐出した後に前記露光部によって当該平滑層インクに対して露光することによって前記本硬化の状態より硬化度が低い仮硬化の状態に硬化させることで当該平滑層の第2層を印刷する制御を実行可能であり、さらに、前記薄膜が前記被転写面に転写された後に、前記露光部によって前記第2層に対して露光することによって当該第2層を本硬化の状態に硬化させる制御を実行可能であるものとすることができる。
これにより、当該インクジェットプリンタによって各層が印刷された被転写体は、第1層を形成するインクと共通のインクで第2層を形成することができると共に、比較的に短時間で当該第2層を形成することができるので、製造効率を向上することができる。
上記目的を達成するために、本発明に係る転写フィルムは、シート状の基材と、前記基材に接して設けられる薄膜と、前記薄膜の前記基材とは反対側の面に接して設けられる平滑層と、前記平滑層の前記薄膜とは反対側の面に接して設けられる接着層とを備え、前記平滑層は、前記接着層より硬度が高いことを特徴とする。
これにより、当該転写フィルムから薄膜が転写された被転写体は、薄膜と接着層との間に硬度が高い平滑層が介在することで、薄膜の表面の凹凸を低減することができるので、当該被転写体に転写された薄膜の光沢感を向上することができる。
また、上記転写フィルムでは、前記平滑層は、前記平滑層は、少なくとも、当該平滑層を形成するインクであって露光することで硬化度が変化するインクである平滑層インクを前記薄膜の前記基材とは反対側の面に吐出した後に当該平滑層インクに対して露光することによって本硬化の状態に硬化させた第1層と、前記平滑層を形成するインクを前記第1層の前記薄膜とは反対側の面に吐出し、当該インクが当該第1層の前記薄膜とは反対側の面に形成される凹凸の凹部内に収納されることで当該第1層の前記薄膜とは反対側の面を平滑化する第2層とを含んで構成されるものとすることができる。
これにより、転写フィルムから薄膜が転写された被転写体は、第1層の本硬化によって当該第1層の表面に生じうる凹凸に対して、第2層を形成するインクが入り込むことで、当該第2層によって第1層の表面をレベリング(水平化)することができる。この結果、当該被転写体は、平滑層自体の平滑度を向上することができるので、当該被転写体に転写された薄膜の光沢感をさらに向上することができる。
また、上記転写フィルムでは、前記第2層は、前記平滑層インクを前記第1層の前記薄膜とは反対側の面に吐出した後に当該平滑層インクに対して露光することによって前記本硬化の状態より硬化度が低い仮硬化の状態に硬化させた層であるものとすることができる。
これにより、転写フィルムから薄膜が転写された被転写体は、第1層を形成するインクと共通のインクで第2層を形成することができると共に、比較的に短時間で当該第2層を形成することができるので、製造効率を向上することができる。
上記目的を達成するために、本発明に係る被転写体は、被転写面に接して設けられる接着層と、前記接着層の前記被転写面とは反対側の面に接して設けられる平滑層と、前記平滑層の前記接着層とは反対側の面に接して設けられる薄膜とを備え、前記平滑層は、前記接着層より硬度が高いことを特徴とする。
これにより、被転写体は、薄膜と接着層との間に硬度が高い平滑層が介在することで、薄膜の表面の凹凸を低減することができるので、当該被転写体に転写された薄膜の光沢感を向上することができる。
本発明に係る被転写体製造方法、インクジェットプリンタ、転写フィルム及び被転写体は、被転写体に転写された薄膜の光沢感を向上することができる、という効果を奏する。
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
[実施形態]
図1は、実施形態に係る転写フィルムの概略構成を表す模式的断面図である。
図1に示す本実施形態の転写フィルム1は、被転写体50の被転写面51に重ね合わされて押圧されることで、所望の図形(文字、模様等)に形成された薄膜3を被転写面51に転写することができるものである。被転写体50は、例えば、携帯カバー、瓶、容器等の立体物を適用可能であるが、これに限らず、種々の形状、素材の物体を適用することができる。被転写体50の被転写面51は、典型的には、後述のUV(紫外線)硬化インクがしみこみにくい素材等で形成されることが好ましい。被転写体50の被転写面51は、平面に限らず、曲面であってもよい。
そして、本実施形態の転写フィルム1は、薄膜3と接着層5との間に平滑層4を介在させることで、被転写体50に転写された薄膜3の光沢感(グロス感)の向上を図っている。
具体的には、転写フィルム1は、基材2と、薄膜3と、平滑層4と、接着層5とを備える。転写フィルム1は、基材2側から当該基材2、薄膜3、平滑層4、接着層5の順で相互に接して層構造を構成している。
基材2は、シート状の部材であり、転写前の薄膜3を形成、保持するためのベース部材である。基材2は、例えば、可撓性を有するフィルムにより構成されるがこれに限らない。基材2は、例えば、PETのフィルム等、紫外線を透過するフィルム等を好適に用いることができる。
薄膜3は、被転写体50に転写可能な層であり、基材2に接して設けられる。薄膜3は、典型的には、光を良好に反射する性質の膜であることが好ましい。薄膜3は、例えば、基材2上に蒸着された金属蒸着膜により構成されるがこれに限らない。薄膜3は、例えば、高い光沢性を有する金や銀等の蒸着膜等を好適に用いることができる。なお、薄膜3は、金属蒸着膜にかえて、例えば、ホログラムフィルム用の薄膜等であってもよい。また、薄膜3は、基材2との接触面に、当該薄膜3と当該基材2とを剥がれ易くするための剥離層を含んで構成されてもよい。
平滑層4は、薄膜3の基材2とは反対側の面に接して設けられる。本実施形態の平滑層4は、薄膜3の基材2とは反対側の面に接するように印刷されて当該薄膜3に接して設けられる。平滑層4は、薄膜3が被転写面51に転写された際の下地層、レベリング層として機能する。平滑層4は、典型的には、露光することで硬化度が変化するインク、ここでは、紫外線を照射することで硬化するUV(紫外線)硬化インクによって形成される。なお、以下の説明では、当該平滑層4を形成するインクを「平滑層インク」という場合がある。
本実施形態の平滑層4は、接着層5より硬度が高いものを用いる。ここで、硬度とは、物質の硬さの程度を表す尺度である。平滑層4は、当該平滑層4と後述の接着層5とが完全に硬化された本硬化の状態で、接着層5より硬度が高いものを用いる。平滑層4は、接着層5より硬度が高いものとして、例えば、多官能アクリレートモノマーを用いることができる。平滑層4を形成する平滑層インクは、例えば、株式会社ミマキエンジニアリング製の「LH−100 Clear Liquid(製品名)」等を用いることができる。この「LH−100 Clear Liquid」のインク組成は、例えば、アクリル酸エステル(50−60%)、二アクリル酸ヘキサメチレン(30−35%)、開始剤(例えば、ジフェニル−2,4,6−トリメチルベンゾイルホスフィン=オキシド(10−15%)、添加剤(0.1−5%)となっている。平滑層4は、シルク印刷、インクジェット印刷等の様々な印刷方式を用いて印刷することができるが、ここでは、後述するようにインクジェットプリンタ100(図3参照)によって印刷されるものとして説明する。
ここで、図2は、実施形態に係る平滑層を含む部分断面を表す模式的断面図である。本実施形態の平滑層4は、図2に例示するように、印刷される際のインクの硬化度を相互に異ならせた第1層41と第2層42とを含む多層構造とすることが好ましい。これにより、本実施形態の転写フィルム1は、薄膜3の光沢感のさらなる向上を図ることができる。以下で説明する平滑層4は、第1層41、第2層42に加えてさらに第3層43を含む3層構造であるものとして説明するが、当該平滑層4を印刷するにインクジェットプリンタ100(図3参照)の仕様、性能、インクの吐出量、吐出されたインクのドット径等に応じて適宜変更してもよい。すなわちこの場合、平滑層4は、少なくとも第1層41と第2層42とを含んで構成されればよく、第1層41と第2層42との2層構造であってもよいし、第1層41、第2層42、第3層43に加えてさらに複数の層を含む4層以上の層構造であってもよい。
具体的には、平滑層4の第1層41は、平滑層インクを薄膜3の基材2(図1参照)とは反対側の面に吐出した後に当該平滑層インクに対して露光することによって本硬化の状態に硬化させることで形成される。一方、平滑層4の第2層42は、平滑層4を形成するインクを第1層41の薄膜4とは反対側の面に吐出し、当該インクを当該第1層41の薄膜3とは反対側の面に形成される凹凸の凹部内に収納し、当該第1層41の薄膜3とは反対側の面を平滑化する層である。ここでは、第2層42は、平滑層インクを第1層41の薄膜3とは反対側の面に吐出した後に当該平滑層インクに対して露光することによって本硬化の状態より硬化度が低い仮硬化の状態に硬化させることで形成される。同様に、平滑層4の第3層43は、平滑層インクを第2層42の第1層41とは反対側の面に吐出した後に当該平滑層インクに対して露光することによって本硬化の状態より硬化度が低い仮硬化の状態に硬化させることで形成される。
ここで、仮硬化の状態とは、例えば、UV硬化インクが完全に硬化しない程度の相対的に弱い強度の紫外線を照射し露光することにより、インクが多少の粘着性を有する状態にまでインクを半硬化させた状態である。例えば、インクを本硬化の状態にまで硬化させる場合おいて照射する紫外線の強度を100%とした場合、インクを仮硬化の状態にまで硬化させる場合において照射する紫外線の強度は、典型的には、15%〜35%、好ましくは20%〜30%、例えば23%程度とすることが好ましい(以下、同様である。)。
なお、平滑層4が4層以上を備える場合は、当該4層以降は、第2層42、第3層43と同様に形成されればよい。また、本実施形態の転写フィルム1において、平滑層4自体を上記のような多層構造とすることで薄膜3の光沢感のさらなる向上を図ることができる理由については、後で詳細に説明する。
図1に戻って、接着層5は、平滑層4の薄膜3とは反対側の面に接して設けられる。本実施形態の接着層5は、平滑層4の薄膜3とは反対側の面に接するように印刷されて当該平滑層4に接して設けられる。接着層5は、被転写体50に接着可能な接着剤として機能し、平滑層4等を介して薄膜3を被転写体50の被転写面51に接着するものである。接着層5は、典型的には、露光することで硬化度が変化するインク、ここでは、紫外線を照射することで硬化するUV(紫外線)硬化インクによって形成される。接着層5は、典型的には、本硬化の状態まで硬化しても多少のタック(粘着性)が残るインクによって形成される。なお、以下の説明では、当該接着層5を形成するインクを「接着層インク」という場合がある。
本実施形態の接着層5は、平滑層4より硬度が低く、柔軟性のあるものを用いる。接着層5は、平滑層4より硬度が低く、柔軟性のあるものとして、例えば、単官能アクリレートモノマーを用いることができる。接着層5を形成する接着層インクは、インクジェットUVプライマー、例えば、株式会社ミマキエンジニアリング製の「IJ Primer PR−100(製品名)」等を用いることができる。この「IJ Primer PR−100」のインク組成は、例えば、アクリル酸エステル(80−90%)、開始剤(5−15%)、添加剤(0.1−5%)となっている。接着層5は、平滑層4と同様に、シルク印刷、インクジェット印刷等の様々な印刷方式を用いて印刷することができるが、ここでは、後述するようにインクジェットプリンタ100(図3参照)によって印刷されるものとして説明する。
なお、接着層5は、1層でもよいが、当該接着層5を印刷するにインクジェットプリンタ100(図3参照)の仕様、性能、インクの吐出量、吐出されたインクのドット径等に応じて多層構造としてもよい。ただしこの場合、接着層5は、平滑層4とは異なり、各層において印刷される際のインクの硬化度を相互に異ならせる必要はない。
上記のように構成される転写フィルム1は、接着層5が被転写体50の被転写面51に接するように重ね合わされて基材2側から押圧されることで、薄膜3が被転写面51に転写される。
以下、図3〜図12を参照して、転写フィルム1の製造方法を含めて、所望の図形(文字、模様等)に形成された薄膜3が転写された被転写体50の製造方法について具体的に説明する。図3は、実施形態に係る被転写体製造方法で用いられるインクジェットプリンタ100の概略構成を表す概略構成図である。図4は、実施形態に係る被転写体製造方法の一例を説明するフローチャートである。図5〜図12は、実施形態に係る被転写体製造方法の一例を説明する模式的断面図である。
ここではまず、図3を参照して、被転写体製造方法において平滑層4、接着層5の印刷等に用いるインクジェットプリンタ100について説明する。
このインクジェットプリンタ100は、主走査方向に設けたYバー101と、インクタンク102と、キャリッジ103と、制御装置104とを備える。
インクタンク102は、メディア(ここでは、転写フィルム1の基材2や被転写体50)Mに吐出するインクを貯留するものであり、ここでは、少なくとも平滑層インクタンク105、接着層インクタンク106を含んで構成される。平滑層インクタンク105は、平滑層4を形成するインクであって露光することで硬化度が変化するインクである平滑層インク(例えば「LH−100 Clear Liquid」)を貯留するものである。接着層インクタンク106は、接着層5を形成するインクであって露光することで硬化度が変化するインクである接着層インク(例えば「IJ Primer PR−100」)を貯留するものである。
キャリッジ103は、Yバー101に沿って主走査方向に移動可能である。キャリッジ103は、メディアMの印刷搬送方向(副走査方向)に対して直交する方向(主走査方向)に移動制御される。キャリッジ103は、ホルダー107と、ホルダー107の主走査方向の両側に設けた露光部としての一対の紫外線ランプ108とを有する。インクジェットプリンタ100は、ホルダー107に吐出部109が配置されている。吐出部109は、平滑層インクタンク105に貯留された平滑層インク、及び、接着層インクタンク106に貯留された接着層インクをメディアM、ここでは転写フィルム1の基材2や被転写体50の被転写面51に吐出可能である。吐出部109は、例えば、メディアMに対向してインクを吐出するプリンタヘッド、インクタンク102とプリンタヘッドとを接続する各種インク流路、インク流路上に設けられるレギュレータ及びポンプ、等を含んで構成される。ここでは、プリンタヘッドは、少なくとも、平滑層4用の平滑層インクを吐出するヘッド部と、接着層5用の接着層インクを吐出するヘッド部とを含んで構成され、それぞれ、各インク流路を介して平滑層インクタンク105、接着層インクタンク106に接続される。吐出部109は、ポンプが駆動することで、プリンタヘッドの各ヘッド部から平滑層インクタンク105の平滑層インク、接着層インクタンク106の接着層インクを所定の吐出量でメディアMに向けてインクジェット方式で吐出することができる。各紫外線ランプ108は、メディアM、ここでは転写フィルム1の基材2や被転写体50の被転写面51に吐出されたインクに対して露光可能なものである。各紫外線ランプ108は、例えば、紫外線を照射可能なLEDモジュール等により構成される。また、インクジェットプリンタ100は、メディアMを載せるプラテン、テーブル等と共に、キャリッジ103に対してメディアMを印刷搬送方向(副走査方向)に相対移動させる搬送装置を備えている。
制御装置104は、吐出部109、各紫外線ランプ108等を含むインクジェットプリンタ100の各部を制御するものである。制御装置104は、機能概念的に、吐出制御部104a、露光制御部104b、パターン変換部104c等を含んで構成される。制御装置104は、演算装置、メモリ等のハードウェア及びこれらの所定の機能を実現させるプログラムから構成される。吐出制御部104aは、吐出部109のポンプ等を制御し、吐出部109から吐出するインクの吐出量、吐出タイミング、吐出期間等を制御するものである。露光制御部104bは、各紫外線ランプ108等を制御し、当該各紫外線ランプ108から照射する紫外線の強度、露光タイミング、露光期間等を制御するものである。パターン変換部104cは、制御装置104に有線/無線で接続されるPC、種々の端末等の入力装置200から入力される入力情報に応じて、吐出制御量や露光制御量を設定するものである。パターン変換部104cは、入力情報として、例えば、入力装置200等を介して入力された画像情報であって被転写体50に転写したい所望の図形(文字、模様等)の画像情報等が入力される。そして、パターン変換部104cは、当該入力情報に基づいて、被転写体50に転写したい所望の図形となるように平滑層4、接着層5のパターンを生成し、当該生成した印刷パターンを実現可能な吐出制御量、露光制御量に変換する。そして、吐出制御部104aは、パターン変換部104cが算出した吐出制御量に基づいて吐出部109による吐出を制御し、露光制御部104bは、パターン変換部104cが算出した露光制御量に基づいて各紫外線ランプ108による露光を制御する。
上記のように構成されるインクジェットプリンタ100は、制御装置104による制御に応じて、メディアMに対してキャリッジ103を主走査方向に往復移動させつつ、メディアMの印刷面に対して吐出部109によって所定の印刷幅でインクを吐出する。そして、インクジェットプリンタ100は、制御装置104による制御に応じて、各紫外線ランプ108が所定のタイミングで、相対的に弱い紫外線を照射し露光することでメディアMに着弾したインクの拡がりを抑制しそのドット径等をコントロールし滲みを抑制する仮硬化(ピニング露光)を行うと共に、相対的に強い紫外線を照射し露光することで完全硬化させる本硬化(キュアリング露光)を行う。上記で説明した仮硬化の状態は、メディアMに着弾したインクをピニング露光によって仮硬化させた状態である一方、本硬化の状態は、メディアMに着弾したインクをキュアリング露光によって本硬化させた状態である。そして、インクジェットプリンタ100は、上記所定の印刷幅に応じてキャリッジ103に対してメディアMを印刷搬送方向(副走査方向)に相対移動させながら、これを繰り返し、所定のパターンを印刷していく。この間、制御装置104は、吐出制御部104aが吐出部109から吐出するインクの吐出量、吐出タイミング、吐出期間等を制御し、露光制御部104bが各紫外線ランプ108から照射する紫外線の強度、ピニング/キュアリング露光タイミング、ピニング/キュアリング露光期間等を制御する。これにより、インクジェットプリンタ100は、パターン変換部104cが生成した印刷パターンに応じて、平滑層4、接着層5の形状、厚み、面積、直径、密度等を調節し、所望の図形を印刷することができる。
次に、図4のフローチャートを参照して、上記で説明したインクジェットプリンタ100を用いた被転写体製造方法の一例を説明する。図4で説明する被転写体製造方法は、一部の工程がインクジェットプリンタ100の制御装置104によって実行される。なお、図4の説明に際しては、適宜、図5〜図12の模式的断面図も参照する。
本実施形態の被転写体製造方法は、薄膜形成工程(ステップST1)と、平滑層印刷工程(ステップST2〜ステップST4)と、接着層印刷工程(ステップST5)と、転写工程(ステップST6)と、照射工程(ステップST7)と、剥離工程(ステップST8)とを含む。上記平滑層印刷工程(ステップST2〜ステップST4)、接着層印刷工程(ステップST5)、照射工程(ステップST7)は、インクジェットプリンタ100の制御装置104によって当該インクジェットプリンタ100の各部の駆動が制御されることで行われる。
本実施形態の被転写体製造方法では、まず、薄膜形成工程として、図5に示すように、シート状の基材2に接するように薄膜3を設ける(ステップST1)。薄膜3は、例えば、基材2上に金や銀等の金属膜を蒸着させることにより形成される。なお、被転写体製造方法では、すでに基材2に薄膜3が蒸着された既製品を用いることで、当該薄膜形成工程(ステップST1)を省略してもよい。
次に、平滑層印刷工程として、転写フィルム1(図1等参照)を構成するシート状の基材2に接して設けられる薄膜3の当該基材2とは反対側の面に接するように平滑層4を印刷する(ステップST2〜ステップST4)。このとき、インクジェットプリンタ100は、平滑層インクによって平滑層4を印刷する。この場合、制御装置104は、吐出部109によって平滑層インクタンク105に貯留された平滑層インクを、薄膜3の基材2とは反対側の面に吐出した後に露光部としての一対の紫外線ランプ108によって当該平滑層インクに対して露光することによって硬化させることで平滑層4を印刷する制御を実行可能である。制御装置104は、吐出制御部104aが吐出部109から吐出する平滑層インクの吐出量、吐出タイミング、吐出期間等を制御し、露光制御部104bが各紫外線ランプ108から照射する紫外線の強度、ピニング/キュアリング露光タイミング、ピニング/キュアリング露光期間等を制御する。これにより、制御装置104は、パターン変換部104cが生成した印刷パターンに応じて、被転写体50に転写したい所望の図形となるように平滑層4を印刷する。
本実施形態の平滑層印刷工程(ステップST2〜ステップST4)は、より詳細には、平滑層第1層印刷工程(ステップST2)と、平滑層第2層印刷工程(ステップST3)と、平滑層第3層印刷工程(ステップST4)とを含む。
ここではまず、平滑層第1層印刷工程として、図6に示すように、平滑層インクを薄膜3の基材2とは反対側の面に吐出した後に当該平滑層インクに対して露光することによって本硬化の状態に硬化させて平滑層4の第1層41を印刷する(ステップST2)。この場合、制御装置104は、吐出部109によって平滑層インクタンク105に貯留された平滑層インクを、薄膜3の基材2とは反対側の面に吐出した後に紫外線ランプ108によって当該平滑層インクに対して露光することによって本硬化の状態に硬化させることで平滑層4の第1層41を印刷する制御を実行可能である。
制御装置104は、例えば、キャリッジ103(図3参照)の主走査方向に沿った移動の往路において、吐出部109から平滑層インクを吐出すると共に紫外線ランプ108から相対的に強い紫外線を照射することによるキュアリング露光によって当該平滑層インクを本硬化の状態に硬化させる。なお、制御装置104は、例えば、上記往路における紫外線ランプ108からの紫外線照射と、後述の第2層42の印刷に伴う復路(図7参照)における紫外線ランプ108からの紫外線照射とを組み合わせて平滑層インクを本硬化の状態に硬化させるようにしてもよい。
ここで、上記のように印刷され本硬化の状態とされた平滑層4の第1層41は、後述の接着層5より高い硬度を有することとなる。このとき、インクジェットプリンタ100は、当該第1層41を形成する平滑層インクを本硬化の状態まで硬化させる場合、吐出部109から薄膜3に平滑層インクを吐出し、当該平滑層インクが薄膜3に着弾した後、すぐに紫外線照射による硬化を開始することとなる。このため、平滑層4の第1層41は、薄膜3に着弾した平滑層インクのドットが十分に拡がる前に紫外線照射による硬化が開始され、インク層が十分に平坦になる前に本硬化の状態となる場合がある。この場合、平滑層4の第1層41は、表面に微少な凹凸が残った状態で、十分に平坦になる前に本硬化の状態まで硬化してしまう場合がある。
これに対して、本実施形態の被転写体製造方法では、第1層41を印刷した後に、さらに当該第1層41上に平滑層4の第2層42を印刷することで、平滑層4を形成する。第2層42は、平滑層4を形成するインクが第1層41の薄膜3とは反対側の面に形成される凹凸の凹部内に収納されることで形成され、当該第1層41の薄膜3とは反対側の面を平滑化する。ここでは、第1層41を印刷した後に、さらに当該第1層41上に平滑層インクを吐出し仮硬化の状態に硬化させて平滑層4の第2層42を印刷することで、平滑層4を形成する。この結果、平滑層4は、第2層42を形成する平滑層インクが第1層41の表面に着弾した後、比較的にゆっくりと硬化される。これにより、平滑層4は、第1層41の表面の微少な凹凸に平滑層インクが入り込み、第1層41の表面がレベリング(水平化)された上で、当該平滑層インクが仮硬化の状態まで硬化されて第2層42が形成される。このように、平滑層4は、少なくとも、インクの硬化度を相互に異ならせた第1層41と第2層42とを含む多層構造として形成されることで、平滑層4自体の平滑度を向上することができる。
上記第2層42を形成する平滑層第2層印刷工程として、図7に示すように、平滑層4を形成するインクを第1層41の薄膜3とは反対側の面に吐出し、当該インクを当該第1層41の薄膜3とは反対側の面に形成される凹凸の凹部内に収納し、当該第1層41の薄膜3とは反対側の面を平滑化する第2層42を印刷する。ここでは、平滑層インクを第1層41の薄膜3とは反対側の面に吐出した後に当該平滑層インクに対して露光することによって本硬化の状態より硬化度が低い仮硬化の状態に硬化させて平滑層4の第2層42を印刷する(ステップST3)。この場合、制御装置104は、吐出部109によって平滑層4を形成するインクを第1層41の薄膜3とは反対側の面に吐出し、当該インクを当該第1層41の薄膜3とは反対側の面に形成される凹凸の凹部内に収納し、当該第1層41の薄膜とは反対側の面を平滑化する平滑層4の第2層42を印刷する制御を実行可能である。すなわちここでは、制御装置104は、吐出部109によって平滑層インクタンク105に貯留された平滑層インクを、第1層41の薄膜3とは反対側の面に吐出した後に紫外線ランプ108によって当該平滑層インクに対して露光することによって本硬化の状態より硬化度が低い仮硬化の状態に硬化させることで平滑層4の第2層42を印刷する制御を実行可能である。制御装置104は、例えば、キャリッジ103(図3参照)の主走査方向に沿った移動の復路において、吐出部109から平滑層インクを吐出すると共に紫外線ランプ108から相対的に弱い紫外線を照射することによるピニング露光によって当該平滑層インクを仮硬化の状態に硬化させる。
ここではさらに、平滑層4の平滑度を増すために第3層43を形成する平滑層第3層印刷工程として、図8に示すように、平滑層インクを第2層42の第1層41とは反対側の面に吐出した後に当該平滑層インクに対して露光することによって本硬化の状態より硬化度が低い仮硬化の状態に硬化させて平滑層4の第3層43を印刷する(ステップST4)。制御装置104は、平滑層第2層印刷工程(ステップST3)と同様に、例えば、キャリッジ103(図3参照)の主走査方向に沿った移動の往路において、吐出部109から平滑層インクを吐出すると共に紫外線ランプ108から相対的に弱い紫外線を照射することによるピニング露光によって当該平滑層インクを仮硬化の状態に硬化させる。
次に、接着層印刷工程として、図9に示すように、平滑層4の薄膜3とは反対側の面に接するように接着層5を印刷する(ステップST5)。このとき、インクジェットプリンタ100は、接着層インクによって接着層5を印刷する。ここでは、接着層インクを平滑層4の薄膜3とは反対側の面に吐出した後に当該接着層インクに対して露光することによって本硬化の状態より硬化度が低い仮硬化の状態に硬化させて接着層5を印刷させる。この場合、制御装置104は、吐出部109によって接着層インクタンク106に貯留された接着層インクを、平滑層4の薄膜3とは反対側の面、ここでは、平滑層4の第3層43の第2層42とは反対側の面に吐出した後に紫外線ランプ108によって当該接着層インクに対して露光することによって仮硬化の状態で硬化させることで接着層5を印刷する制御を実行可能である。制御装置104は、吐出制御部104aが吐出部109から吐出する接着層インクの吐出量、吐出タイミング、吐出期間等を制御し、露光制御部104bが各紫外線ランプ108から照射する紫外線の強度、ピニング露光タイミング、ピニング露光期間等を制御する。これにより、制御装置104は、パターン変換部104cが生成した印刷パターンに応じて、被転写体50に転写したい所望の図形となるように接着層5を印刷する。この結果、転写フィルム1(図1等参照)が完成する。
なお、上述したように、接着層5は、1層でもよいが、平滑層4と同様に多層構造(例えば3層構造)としてもよい。ただしこの場合、上述したように、接着層5は、各層において印刷される際のインクの硬化度を相互に異ならせる必要はない。この場合、制御装置104は、例えば、キャリッジ103(図3参照)の主走査方向に沿った移動の往路、復路、往路において、それぞれ吐出部109から平滑層4上に接着層インクを吐出すると共に紫外線ランプ108から相対的に弱い紫外線を照射することによるピニング露光によって当該接着層インクを仮硬化の状態に硬化させて、3層構造の接着層5を印刷するようにすればよい。
次に、転写工程として、図10に示すように、被転写体50の被転写面51と平滑層4との間に接着層5が介在するように被転写体50と転写フィルム1とを積層させ押圧することで薄膜3を被転写面51に転写する(ステップST6)。ここでは、例えば、作業員は、押圧ローラ300等を用いて手作業で転写フィルム1を基材2側から被転写面51側に均一となるように押圧し、接着層5の接着力によって薄膜3を被転写面51に転写させる。
次に、照射工程として、図11に示すように、接着層5、平滑層4の第2層42、及び、第3層43に対して露光することによって接着層5、平滑層4の第2層42、及び、第3層43を本硬化の状態に硬化させる(ステップST7)。この場合、制御装置104は、紫外線ランプ108によって接着層5、平滑層4の第2層42、及び、第3層43に対して露光することによって当該接着層5、平滑層4の第2層42、及び、第3層43を本硬化の状態に硬化させる制御を実行可能である。制御装置104は、例えば、キャリッジ103(図3参照)の主走査方向に沿った移動にともなって、紫外線ランプ108から相対的に強い紫外線を照射することによるキュアリング露光によって当該接着層5、平滑層4の第2層42、及び、第3層43を本硬化の状態に硬化させる。
次に、剥離工程として、図12に示すように、基材2と薄膜3とを剥離する(ステップST8)。この場合、作業員は、被転写体50の被転写面51に転写された薄膜3を残して基材2を剥離し、除去する。この結果、平滑層4、接着層5の形状に応じた所望の図形の薄膜3が転写された被転写体50が完成する。
上記のようにして薄膜3が転写された被転写体50は、図12に示すように、被転写体本体52の被転写面51に接して設けられる接着層5と、接着層5の被転写面51とは反対側の面に接して設けられる平滑層4と、平滑層4の接着層5とは反対側の面に接して設けられる薄膜3とを備え、平滑層4は、接着層5より硬度が高いものとなる。なお、被転写体50は、さらに、薄膜3の表面や被転写面51を覆うようにトップコートが施されてもよい。
したがって、上記の被転写体製造方法で製造された被転写体50は、所望の図形が形成された薄膜3と、相対的に柔らかい接着層5との間に、相対的に硬度が高い下地層(レベリング層)としての平滑層4を介在させることで、薄膜3に接する層の平滑度を向上することができる。この結果、上記の被転写体製造方法で製造された被転写体50は、薄膜3の表面の凹凸を低減することができ、当該被転写体50に転写された薄膜3の光沢感(グロス感)を向上することができる。
さらに、上記の被転写体製造方法で製造された被転写体50は、第2層42が第1層41の薄膜3とは反対側の面に形成される凹凸を平滑化することで、平滑層4自体の平滑度を向上することができる。ここでは、被転写体50は、上述したように平滑層4が少なくともインクの硬化度を相互に異ならせた第1層41と第2層42とを含む多層構造として形成されることで、平滑層4自体の平滑度を向上することができる。この結果、上記の被転写体製造方法で製造された被転写体50は、当該被転写体50に転写された薄膜3の光沢感さらに向上することができる。またこの場合、被転写体50は、平滑層4の第2層42、第3層43が接着層5とのなじみ層としても機能するので、平滑層4と接着層5とのなじみ性も向上することができる。
また、上記の被転写体製造方法では、転写工程(ステップST6)の後に、照射工程((ステップST7)を行って、接着層5、平滑層4の第2層42、及び、第3層43の本硬を行っている。この結果、この被転写体製造方法では、接着層5が仮硬化の状態で、薄膜3を被転写面51に転写することができるので、被転写体50に対して薄膜3を押圧しても接着層5等のインクが外に逃げにくいようにすることができる。一方、上記の被転写体製造方法では、接着層5等が液体状態のままである場合と比較して、薄膜3を押圧して平坦面にする際の作業性を向上することができる。また、上記の被転写体製造方法では、転写工程(ステップST6)の後に、照射工程(ステップST7)を行うことで、剥離工程(ステップST8)で基材2をはがす際に切れがよくなり、転写された薄膜3のエッジ等をきれいに転写することができる。また、上記の被転写体製造方法では、接着層5、平滑層4の第2層42、及び、第3層43の本硬化を行った後に基材2を剥離することで、当該基材2をはがし易くすることができる。また、上記の被転写体製造方法では、被転写体50と薄膜3とが十分な強度で接合した後に基材2をはがすことができるので、被転写体50から基材2をより適切にはがすことができる。
以上で説明した実施形態に係る被転写体製造方法によれば、転写フィルム1を構成するシート状の基材2に接して設けられる薄膜3の、基材2とは反対側の面に接するように平滑層4を印刷する平滑層印刷工程(ステップST2〜ステップST4)と、平滑層4の薄膜3とは反対側の面に接するように接着層5を印刷する接着層印刷工程(ステップST5)と、被転写面51と平滑層4との間に接着層5が介在するように被転写体50と転写フィルム1とを積層させ押圧することで薄膜3を被転写面51に転写する転写工程(ステップST6)と、少なくとも転写工程(ステップST6)より後に、基材2と薄膜3とを剥離する剥離工程(ステップST8)とを含み、平滑層4は、接着層5より硬度が高い。
以上で説明した実施形態に係るインクジェットプリンタ100によれば、平滑層4を形成するインクであって露光することで硬化度が変化するインクである平滑層インクを貯留する平滑層インクタンク105と、接着層5を形成するインクであって露光することで硬化度が変化するインクである接着層インクを貯留する接着層インクタンク106と、平滑層インクタンク105に貯留された平滑層インク、及び、接着層インクタンク106に貯留された接着層インクを吐出可能である吐出部109と、吐出部109から吐出された平滑層インク、及び、接着層インクに対して露光可能である紫外線ランプ108と、吐出部109、及び、紫外線ランプ108を制御する制御装置104とを備え、制御装置104は、吐出部109によって平滑層インクタンク105に貯留された平滑層インクを、転写フィルム1を構成するシート状の基材2に接して設けられる薄膜3の、当該基材2とは反対側の面に吐出した後に紫外線ランプ108によって当該平滑層インクに対して露光することによって硬化させることで平滑層4を印刷する制御、吐出部109によって接着層インクタンク106に貯留された接着層インクを、平滑層4の薄膜3とは反対側の面に吐出した後に紫外線ランプ108によって当該接着層インクに対して露光することによって仮硬化の状態で硬化させることで接着層5を印刷する制御、及び、薄膜3が被転写面51に転写された後に、紫外線ランプ108によって接着層5に対して露光することによって当該接着層5を本硬化の状態に硬化させる制御を実行可能であり、平滑層4は、接着層5より硬度が高い。
以上で説明した実施形態に係る転写フィルム1によれば、シート状の基材2と、基材2に接して設けられる薄膜3と、薄膜3の基材2とは反対側の面に接して設けられる平滑層4と、平滑層4の薄膜3とは反対側の面に接して設けられる接着層5とを備え、平滑層4は、接着層5より硬度が高い。
以上で説明した実施形態に係る被転写体50によれば、被転写面51に接して設けられる接着層5と、接着層5の被転写面51とは反対側の面に接して設けられる平滑層4と、平滑層4の接着層5とは反対側の面に接して設けられる薄膜3とを備え、平滑層4は、接着層5より硬度が高い。
したがって、転写フィルム1から薄膜3が転写された被転写体50は、薄膜3と接着層5との間に平滑層4が介在することで、薄膜3の表面の凹凸を低減することができるので、当該被転写体50に転写された薄膜3の光沢感(グロス感)を向上することができる。
なお、上述した本発明の実施形態に係る被転写体製造方法、インクジェットプリンタ、転写フィルム及び被転写体は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。
以上で説明した平滑層4は、少なくとも第1層41と第2層42とを含む多層構造であるものとして説明したがこれに限らず、単相構造としてもよい。同様に、接着層5も単層構造であってもよい。この場合であっても、転写フィルム1から薄膜3が転写された被転写体50は、当該被転写体50に転写された薄膜3の光沢感を向上することができる。
また、以上の説明では、接着層印刷工程(ステップST5)として、平滑層4の薄膜3とは反対側の面に接するように接着層5を印刷するものとして説明したが、被転写体50の被転写面51に接するように接着層5を印刷するようにしてもよい。すなわち、制御装置104は、接着層印刷工程(ステップST5)において、吐出部109によって接着層インクタンク106に貯留された接着層インクを、被転写体50の被転写面51に吐出した後に紫外線ランプ108によって当該接着層インクに対して露光することによって仮硬化の状態で硬化させることで接着層5を印刷する制御を実行するようにしてもよい。つまり、接着層5は、転写フィルム1側に設けてもよいし、被転写体50の被転写面51側に設けてもよい。この場合であっても、転写フィルム1から薄膜3が転写された被転写体50は、当該被転写体50に転写された薄膜3の光沢感を向上することができる。またこの場合、被転写体50は、被転写面51における薄膜3の位置合わせの精度を向上することができる。
また、以上の説明では、平滑層4の第2層42は、第1層41を形成する平滑層インクと共通のインク、ここでは、UV(紫外線)硬化インク(例えば「LH−100 Clear Liquid」)によって形成されるものとして説明したがこれに限らない。当該第2層42は、例えば、ソルベントインクや水性インク等によって形成されてもよい。ただし、以上で説明したように、平滑層4の第2層42として、UV硬化型の平滑層インクを用いた場合、第1層41を形成するインクと共通のインクで第2層42を形成することができると共に、比較的に短時間で当該第2層42を形成することができる。すなわち、ソルベントインクや水性インクは、例えば、10%程度が固形分であるのに対して、当該UV硬化型の平滑層インクは略100%が固形分である。このため、第2層42をUV硬化型の平滑層インクで形成する場合、第1層41の表面の凹部に固形分を埋める作業時間としてはソルベントインクや水性インク等を用いた場合と比較してUV硬化型の平滑層インクを用いた方が圧倒的に短時間で済むこととなる。この結果、以上で説明した被転写体製造方法、インクジェットプリンタ、転写フィルム及び被転写体では、製造効率を向上することができる。
また、以上で説明した照射工程と剥離工程とは、ともに少なくとも転写工程(ステップST6)より後であればよく、照射工程と剥離工程との順序が逆となってもよい。