JP2014227470A - ポリ乳酸系樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】ポリプロピレン樹脂とポリ乳酸樹脂を含有し、耐熱性や耐煮沸性に優れ、食品トレイ用途に好適に使用することができる樹脂組成物を提供する。【解決手段】ポリ乳酸樹脂(A)、ポリプロピレン樹脂(B)、タルク(C)、スチレン・エチレンブチレン・スチレンブロックポリマー(SEBS)(D)及びスルホン酸塩系核剤(E)を含有する樹脂組成物であって、(A)と(B)との質量比率((A)/(B))が32/68〜44/56であり、(A)と(B)の合計100質量部に対して、(C)の含有量が12〜36質量部、(D)の含有量が1.1〜8.2質量部、(E)の含有量が1.5〜3.5質量部であり、繊維状フィラーを含有しないことを特徴とするポリ乳酸系樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリ乳酸樹脂(A)、ポリプロピレン樹脂(B)を含有し、繊維状フィラーを含有しない組成物であって、耐熱性、耐煮沸性、表面外観に優れた成形品を得ることができるポリ乳酸系樹脂組成物に関する。
一般に、成形用の原料としては、ポリプロピレン(PP)、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂)、ポリアミド(PA6、PA66)、ポリエステル(PET、PBT)、ポリカーボネート(PC)等の樹脂が使用されている。しかしながら、このような樹脂から製造された成形品は、成形性、機械的強度に優れているが、廃棄する際、ゴミの量を増すうえに、自然環境下でほとんど分解されないために、埋設処理しても半永久的に地中に残留する。
一方、近年、環境保全の見地から、生分解性ポリエステル樹脂が注目されている。生分解性ポリエステル樹脂の中でも、ポリ乳酸、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートなどの樹脂は、大量生産可能なためコストも安く、有用性が高い。そのうち、ポリ乳酸樹脂は、既にトウモロコシやサツマイモ等の植物を原料として製造可能となっており、使用後に焼却されても、これらの植物の生育時に吸収した二酸化炭素を考慮すると、炭素の収支として中立であることから、特に、地球環境への負荷の低い樹脂とされている。
しかしながら、ポリ乳酸樹脂は、成形性や物性性能の点で、従来使用されている各種成形用樹脂に比べて劣っている。そこで、成形性や物性性能の改善のために、種々の添加剤を添加してポリ乳酸樹脂そのものを改質する方法や、あるいは、従来使用されている各種樹脂をポリ乳酸樹脂と混合(アロイ化)するなどの方法がとられている。
従来使用されている各種樹脂のうち、ポリプロピレン樹脂は、通常のプラスチック用途に充分対応できる物性性能を有し、また経済的なメリットがあることから、広範囲に用いられている。すなわち、ポリプロピレン樹脂は、通常の日用品用途に対応するレベルの耐熱性を有し、また、タルクなどの鉱物系の充填材で強化されたものは、より高い耐熱性を有することから、より高い耐熱性を要する分野で広く用いられている。例えば、タルク等で強化されたポリプロピレン樹脂成形品は、使用後の繰り返しの煮沸洗浄が広く行われる給食用のトレイとして多く用いられている。このように、タルク等で強化されたポリプロピレン樹脂成形品は、耐熱性を有するだけでなく、煮沸洗浄を繰り返した後の形状の安定性においても良好な特性を有するものである。
したがって、ポリプロピレン樹脂とポリ乳酸樹脂をアロイ化することにより、ポリプロピレン樹脂に低環境負荷性を付与することができれば、特に二酸化炭素の固定化の面で、大きな貢献とすることができる。
ところで、特許文献1には、ポリプロピレン樹脂とポリ乳酸樹脂とタルクとを含む樹脂組成物が開示されている。しかしながら、この樹脂組成物は、良好な耐熱性を得るためには、ポリ乳酸の比率を著しく小さくする、あるいは、タルクの比率を大きくする必要があり、前者は環境配慮面から不適当であり、後者は得られる成形品の外観が悪くなるという点から不適当なものであった。
また、特許文献2には、ポリプロピレン樹脂とポリ乳酸樹脂と充填材とを含む樹脂組成物に、さらにガラス繊維を配合することによって耐熱性が付与された樹脂組成物が提案されている。しかしながら、この樹脂組成物は自動車部品用途に好適なものであるため、耐熱性には優れているが、耐煮沸性という課題は検討されていなかった。このため、具体的に特許文献2の実施例に記載されている組成の樹脂組成物を用いて成形した成形品は、煮沸洗浄を繰り返すと反りが大きくなり、上記のような給食用トレイに用いることができないものであった。
特開2008−239858号公報 特開2008−088359号公報
本発明は、前記の問題点を解決しようとするものであり、ポリプロピレン樹脂とポリ乳酸樹脂を含有し、耐熱性や耐煮沸性に優れ、食品トレイ用途に好適に使用することができる樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ポリ乳酸樹脂とポリプロピレン樹脂とタルクとからなる樹脂組成物に、特定の添加剤を特定量添加することにより、前記課題が解決されることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明の要旨は、下記の通りである。
(1)ポリ乳酸樹脂(A)、ポリプロピレン樹脂(B)、タルク(C)、スチレン・エチレンブチレン・スチレンブロックポリマー(SEBS)(D)及びスルホン酸塩系核剤(E)を含有する樹脂組成物であって、ポリ乳酸樹脂(A)とポリプロピレン樹脂(B)との質量比率((A)/(B))が32/68〜44/56であり、ポリ乳酸樹脂(A)とポリプロピレン樹脂(B)の合計100質量部に対して、タルク(C)の含有量が12〜36質量部、スチレン・エチレンブチレン・スチレンブロックポリマー(SEBS)(D)の含有量が1.1〜8.2質量部、スルホン酸塩系核剤(E)の含有量が1.5〜3.5質量部であり、繊維状フィラーを含有しないことを特徴とするポリ乳酸系樹脂組成物。
(2)上記(1)記載のポリ乳酸系樹脂組成物を成形してなる食品用トレイ。
(3)上記(1)記載のポリ乳酸系樹脂組成物を射出成形して成形品を製造する方法であって、表面温度が95〜110℃である金型を使用することを特徴とする成形品の製造方法。
本発明の樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂とポリプロピレン樹脂とタルクとを含有する樹脂組成物であり、これにスチレン・エチレンブチレン・スチレンブロックポリマー(SEBS)およびスルホン酸塩系核剤を特定量含有することにより、ポリプロピレン樹脂とポリ乳酸樹脂との相溶性が向上し、安定した押出操業性で成形品を製造することが可能となる。さらに、本発明の樹脂組成物は、結晶性に優れ、かつ繊維状フィラーを含有していないため、高温金型で成形することにより、耐熱性に優れるとともに、耐煮沸性(繰り返し煮沸処理を行っても反りの発生がないこと)にも優れた成形品を得ることができる。特に、繰り返し煮沸洗浄が行われる食品用トレイの成形に特に適するものである。このため、本発明の樹脂組成物より得られた成形品は、表面外観に優れるとともに、繰り返し煮沸洗浄を行っても反りの発生がなく形状の安定したものとなる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂(A)、ポリプロピレン樹脂(B)、タルク(C)、スチレン・エチレンブチレン・スチレンブロックポリマー(SEBS)(D)及びスルホン酸塩系核剤(E)を含有するものである。
本発明においてポリ乳酸樹脂(A)としては、耐熱性、成形性の面からポリ(L−乳酸)、ポリ(D−乳酸)、およびこれらの混合物または共重合体を用いることができるが、供給性、生分解性および成形加工性の観点からは、L−乳酸成分の割合が95モル%以上である、ポリ(L−乳酸)を主体とするものであることが好ましい。
また、ポリ(L−乳酸)を主体とするポリ乳酸樹脂(A)は、光学純度によってその融点が異なるが、本発明においては、成形品の機械的特性や耐熱性を考慮すると、融点を160℃以上とすることが好ましい。ポリ(L−乳酸)を主体とするポリ乳酸樹脂(A)において、融点を160℃以上とするためには、D−乳酸成分の割合(D体含有量)を3モル%未満とすることが好ましい。
中でも、結晶化速度向上の点から、ポリ乳酸樹脂(A)のD−乳酸成分の割合は0.6モル%以下であることが好ましい。ポリ乳酸樹脂(A)の結晶化速度が向上することにより、成形品を金型から変形させずに取り出すことができ、すなわち、型取り出し性に優れたものとなり、また得られた成形品は、耐熱性に優れたものとなる。
本発明のポリ乳酸樹脂(A)としては、市販のポリ乳酸樹脂であるNatureWorks社製ポリ乳酸樹脂『3001D』やトヨタ自動車社製ポリ乳酸樹脂『S−09』、『S−12』、『S−17』などを用いることができる。
ポリ乳酸樹脂(A)の190℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR、例えば、JIS規格K−7210(試験条件4)による値)は、0.1〜50g/10分であることが好ましく、0.2〜20g/10分であることがより好ましく、0.5〜10g/10分であることがさらに好ましい。メルトフローレートが50g/10分を超える場合は、溶融粘度が低すぎて成形品の機械的特性や耐熱性が劣る場合がある。また、メルトフローレートが0.1g/10分未満の場合は成形加工時の負荷が高くなって、操業性が低下する場合がある。
ポリ乳酸樹脂(A)は公知の溶融重合法で、あるいは、さらに固相重合法を併用して製造される。また、ポリ乳酸樹脂(A)のメルトフローレートを所定の範囲に調節する方法として、メルトフローレートが大きすぎる場合は、少量の鎖長延長剤、例えば、ジイソシアネート化合物、ビスオキサゾリン化合物、エポキシ化合物、酸無水物等を用いて樹脂の分子量を増大させる方法が挙げられる。逆に、メルトフローレートが小さすぎる場合は、メルトフローレートの大きなポリエステル樹脂や低分子量化合物と混合する方法が挙げられる。
本発明で用いられるポリプロピレン樹脂(B)としては、あらゆるタイプのものを用いることができ、プロピレン単位のみからなるホモポリマータイプ、あるいは他のモノマー単位が共重合されたコポリマータイプのいずれでもよい。他のモノマー単位としてはエチレンをはじめ、酢酸ビニル、アクリル酸、メタアクリル酸、無水マレイン酸などが挙げられる。コポリマータイプとしてはブロックコポリマータイプ、あるいはランダムコポリマータイプのいずれでもよく、中でも、ポリ乳酸樹脂(A)との相溶性の点から、また耐衝撃性の点から、ブロックコポリマータイプのものが好ましい。また、ポリプロピレン樹脂(B)は、有機過酸化物などで三次元架橋されたものでもよいし、一部が塩素化されていてもよい。
ポリプロピレン樹脂(B)の分子量は、特に限定されないが、その指標となる230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレートが1〜70g/10分の範囲であることが好ましく、3〜50g/10分の範囲であることがさらに好ましい。
ポリプロピレン樹脂(B)のうち、ブロックコポリマータイプのものとしては、例えば、日本ポリプロ社製『ノバテック』BCシリーズの各種グレードのものが挙げられる。
本発明の樹脂組成物において、ポリ乳酸樹脂(A)とポリプロピレン樹脂(B)との質量比率((A)/(B))は、32/68〜44/56であることが必要であり、35/65〜42/58であることが好ましい。ポリ乳酸樹脂(A)が32質量%未満では、ポリ乳酸による低環境負荷性を充分に発揮することが困難となる。一方、ポリ乳酸樹脂(A)が44質量%を超えると、すなわちポリプロピレン樹脂(B)が56質量%未満になると、樹脂組成物の海島構造を構成するポリ乳酸樹脂(A)の島部が大きくなりすぎて、島部の形状を円形にすることが困難となる。また、成形時に成形品に大きなバリが発生する他、金型からの取り出し時に成形品に変形が生じ、型取り出し性に劣ることがある。そして、得られた成形品は、繰り返し煮沸処理を行うと反りが発生し、耐煮沸性に劣るものとなる。
本発明の樹脂組成物において、タルク(C)は、耐熱性を付与し、また成形性を向上することを目的として配合される。タルク(C)の配合により、剛性が付与され、成形の際、金型からの突き出し時の変形が抑制されるので、成形性を向上することができる。
本発明の樹脂組成物におけるタルク(C)の含有量は、ポリ乳酸樹脂(A)とポリプロピレン樹脂(B)の合計100質量部に対して、12〜36質量部であることが必要であり、中でも15〜30質量部であることが好ましい。タルク(C)の含有量が12質量部未満の場合は、充分な耐熱性、成形性が得らない。一方、36質量部を超えた場合は、成形品が曇りのある外観となり、光沢に悪影響を及ぼすことがある。
なお、成形品外観への影響の点から、タルク(C)の平均粒径は、10μm以下であることが好ましく、6μm以下であることがより好ましい。平均粒径が6μmを超えるタルク(C)を使用した場合、成形品の表面外観が、フィラー浮きなどによって悪化することがある。
本発明の樹脂組成物において相溶化剤として用いるスチレン・エチレンブチレン・スチレンブロックポリマー(SEBS)(D)としては、種々のものを使用することができ、その含有量は、ポリ乳酸樹脂(A)とポリプロピレン樹脂(B)の合計100質量部に対して、1.1〜8.2質量部であることが必要であり、中でも2.0〜7.5質量部であることが好ましい。含有量が1.1質量部未満の場合は、ポリ乳酸樹脂(A)とポリプロピレン樹脂(B)の相溶性を向上させることができず、良好な海島構造ができない。このため、得られる成形品は、耐煮沸性に劣ったり、ウェルド強度に劣るものとなる。一方、8.2質量部を超えた場合は、耐熱性に劣ったものとなる。
ウェルド強度や耐熱性の点から、スチレン・エチレンブチレン・スチレンブロックポリマー(SEBS)(D)におけるスチレン含有量は、50質量%以上であることが好ましい。スチレン含有量が50質量%未満である場合は、ウェルド強度や耐熱性に改善の余地を残すものとなる。
このようなスチレン・エチレンブチレン・スチレンブロックポリマー(SEBS)(D)のうち、市販のものとしては、例えば、旭化成社製『タフテック』シリーズに属する『タフテックH1043』(スチレン含有量=67質量%)が挙げられる。
本発明の樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂(A)用核剤としてスルホン酸塩系核剤(E)を含有することが必要である。スルホン酸塩系核剤(E)としては種々のものを用いることができ、たとえば、有機スルホン酸カリウム塩や有機スルホン酸バリウム塩などが挙げられ、環境アピール性の点から、有機スルホン酸カリウム塩が好ましい。
本発明の樹脂組成物において、スルホン酸塩系核剤(E)の含有量は、ポリ乳酸樹脂(A)とポリプロピレン樹脂(B)の合計100質量部に対して、1.5〜3.5質量部であることが必要であり、1.8〜3.2質量部であることが好ましい。含有量が1.5質量部未満であると、海島構造を構成するポリ乳酸樹脂(A)の島部の結晶化速度が遅くなり、円形の島部が結晶化された構造とはならず、得られる成形品は、耐煮沸性に劣るものとなることがあり、また耐熱性が不充分となる。一方、3.5質量部を超えた場合、コストが高くなり、本組成の普及による環境面での貢献の点で不充分となる。
本発明の樹脂組成物は、上記相溶化剤としてのスチレン・エチレンブチレン・スチレンブロック共重合体(SEBS)(D)と、ポリ乳酸樹脂(A)用核剤としてのスルホン酸塩系核剤(E)とを組み合わせて含有することにより、煮沸時において発生する成形品の反りを抑制することができる。この効果は、以下のように推測される。つまり、海島構造において、ポリ乳酸樹脂(A)の島部とポリプロピレン樹脂(B)の海部の界面を挟んで、島部中のスルホン酸塩系核剤(E)のスルホン基部分と、海部中のスチレン・エチレンブチレン・スチレンブロック共重合体(SEBS)(D)中のスチレンの芳香環とが、水素結合により引き合った状態で配列する形となっており、このため、島部が円形の形状となりやすい。そして、このような海島形状を保持した状態で成形品が得られることにより、異方性(物体の物理的性質が方向によって異なること)の生じにくい成形品となっているためと推測される。
一方、ガラス繊維などの繊維状フィラーが含有されている樹脂組成物からなる成形品は、異方性が大きく、煮沸時に反りなどを発生させる原因となるものである。したがって、本発明の樹脂組成物は、上記の原因となるような繊維状フィラーを実質的に含有しないことが必要である。なお、繊維状フィラーを実質的に含有しないとは、樹脂組成物に繊維状フィラーを積極的に添加しないことをいう。繊維状フィラーの具体例としては、ガラス繊維、アスベスト繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、金属繊維、各種ウィスカー等の無機物を含んでなる繊維状(針状)フィラー、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、アラミド繊維の合成高分子材料を含んでなる繊維状(針状)フィラー、セルロース繊維、アセテート繊維、ケナフ繊維等の天然物を含んでなる繊維状(針状)フィラーが挙げられる。
本発明の樹脂組成物は、さらにメタクリル系樹脂を含有することが好ましい。メタクリル系樹脂を含有することにより、スチレン・エチレンブチレン・スチレンブロックポリマー(SEBS)(D)の、ポリ乳酸樹脂(A)やポリプロピレン樹脂(B)への相溶性を改善し、成形品のウエルド強度を向上させ、また樹脂組成物の混練時のストランド押出操業性をさらに向上させることができる。
メタクリル系樹脂としては、メタクリル酸アルキル系樹脂、特に、メタクリル酸メチル系樹脂を用いることができ、一般成形用としてメタクリル樹脂、PMMA樹脂、時にはアクリル樹脂などとも呼称され市販されているものを好適に用いることができる。耐熱性への影響の点から、単体での荷重たわみ温度(1.8MPa)が95℃以上である耐熱タイプのメタクリル酸メチル系樹脂が好ましい。具体的な商品としては、例えば、三菱レイヨン社製『アクリペットVH』、住友化学社製『MHF』、アルケマ社製『V825』などが挙げられる。
本発明の樹脂組成物に、メタクリル系樹脂を含有させる場合において、その含有量は、ポリ乳酸樹脂(A)とポリプロピレン樹脂(B)の合計100質量部に対して、0.5〜2.0質量部であることが好ましい。メタクリル系樹脂(G)含有量が0.5質量部未満の場合は、相溶性の改善効果が不十分となり、得られる成形品のウェルド強度が低いものとなる。一方、2.0質量部を超える場合は、得られる成形品は耐熱性に劣るものとなる。また、混練時の押出し操業性が悪化する場合がある。
本発明の樹脂組成物は、ポリプロピレン樹脂(B)用核剤としてリン酸エステル塩系核剤を含有することが好ましい。リン酸エステル塩系核剤の好ましい例としては、リン酸=2,2′−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)=ナトリウムが挙げられる。
リン酸エステル塩系核剤を含有させる場合において、その含有量は、ポリ乳酸樹脂(A)とポリプロピレン樹脂(B)の合計100質量部に対して、0.3〜0.9質量部であることが好ましい。リン酸エステル塩系核剤の含有量が0.3質量部未満であると、得られる成形品は耐熱性に劣るものとなる。一方、0.9質量部を超える場合、含リン化合物という点で環境アピール性に改善の余地を残すものとなる。
本発明の樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂(A)の耐加水分解性を向上させて、耐久性を向上させることを目的として、さらに加水分解抑制剤を含有することが好ましい。給食用トレイなど、繰り返し煮沸洗浄を行う場合は、耐加水分解性が極めて重要である。加水分解抑制剤としては、ポリカルボジイミド化合物が好ましい。モノカルボジイミド化合物を樹脂組成物に配合した場合、ブリードアウトしやすいため、食器など衛生性が求められる用途において使用する場合に支障がある。
本発明の樹脂組成物におけるポリカルボジイミド化合物の含有量は、ポリ乳酸樹脂(A)とポリプロピレン樹脂(B)の合計100質量部に対して、0.5質量部以上であることが好ましく、中でも0.5〜3質量部であることが好ましい。ポリカルボジイミド化合物の含有量が0.5質量部未満の場合は、充分な耐加水分解性向上効果が得られない。
ポリカルボジイミド化合物としては、脂肪族系(脂環族系含む)、芳香族系を問わず、種々のものを用いることができ、具体的な商品としては、日清紡社製『LA−1』、『HMV−8CA』、『HMV−15CA』、ラインケミー社製『スタバクゾールP』などが挙げられ、環境面でのアピールの点、特に食器用途を含めた本組成の普及による環境面での貢献の点で、ポリオレフィン等衛生協議会に登録されているものを用いることが好ましい。
本発明の樹脂組成物は、流動パラフィンなどの展着剤を含有してもよい。展着剤を含有することによって、押出混練時の原料供給において、タルク(C)を、ポリ乳酸樹脂(A)やポリプロピレン樹脂(B)などの樹脂ペレットになじませることができ、押出機の供給部の食い込み不良を抑制することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物にはその特性を大きく損なわない限りにおいて熱安定剤、酸化防止剤、顔料、耐候剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤等を添加することができる。
本発明の樹脂組成物を製造する際の、各原料を混合する手段は特に限定されないが、一軸あるいは二軸の押出機を用いて溶融混練する方法を挙げることができる。混練状態をよくする意味で二軸の押出機を使用することが好ましい。混練温度は180〜250℃の範囲が、また、混練時間は20秒〜30分の範囲が好ましい。この範囲より低温や短時間であると、混練や反応が不充分となったり、逆に、高温や長時間であると樹脂の分解や着色が起きる場合があり、ともに好ましくない。
本発明の樹脂組成物は、射出成形など各種の成形方法により、各種成形品とすることができるが、含まれるポリ乳酸樹脂(A)の結晶化を進行させて、耐熱性と耐煮沸性とを付与できる点から、射出成形により成形することが好ましい。
次に、本発明の成形品の製造方法について説明する。
本発明の成形品の製造方法は、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物を射出成形して成形品を製造する方法であって、ポリ乳酸樹脂(A)の結晶化を促進する点から、表面温度が95〜110℃である金型(高温金型)を使用することが必要である。金型温度が95℃未満であると、ポリ乳酸樹脂(A)の結晶化を促進することができず、耐熱性に劣る成形品となる。一方、金型温度が115℃を超えると、得られる成形品に大きなバリが発生する。なお、成形時の溶融温度としては、180℃〜250℃が好ましい。
本発明の樹脂組成物は、高温金型での射出成形により、荷重たわみ温度が126℃以上と優れた耐熱性を有し、また繰り返し煮沸処理にも耐える反りのない、耐煮沸性に優れた成形品を得ることができる。前記したように、ポリ乳酸樹脂(A)とポリプロピレン樹脂(B)との相溶化剤としてスチレン・エチレンブチレン・スチレンブロックポリマー(SEBS)(D)と、ポリ乳酸樹脂(A)用核剤としてのスルホン酸塩系核剤(E)を適量配合していることにより、円形で大きさの揃った島部が海部に浮いている海島構造となる。そして、このような海島構造の樹脂組成物を高温金型で射出成形することにより、ポリ乳酸樹脂(A)の島成分の形状(大きさの揃った円形)や大きさが変化することなく、良好な海島構造のままポリ乳酸樹脂(A)の結晶化が促進されるため、異方性の生じにくい成形品が得られると推定される。
本発明の樹脂組成物を用いた成形品の具体例としては、ポリプロピレン樹脂が用いられている各種の日用品・雑貨等が挙げられる。とりわけ、本発明の樹脂組成物を成形してなる食品用トレイが好ましく、中でも、学校給食用等に用いられる、一定以上の大きさの食品用トレイとすることが好ましい。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。実施例および比較例の樹脂組成物の特性評価に使用した試験片の調製法と、各項目の測定方法、評価方法は次のとおりである。
<試験片調製法>
(1)ISO型一般物性測定用試験片
得られた樹脂組成物のペレットを、85℃×10時間熱風乾燥したのち、東芝機械社製IS−80G型射出成形機を用いて、シリンダ温度175〜195℃、ノズル温度195℃、表1、2に記載された金型表面温度、型締め圧60tにて、成形をおこなった。
(2)300mm×220mm×厚さ2mmのプレート
得られた樹脂組成物のペレットを、85℃×10時間熱風乾燥したのち、東芝機械社製IS−80G型射出成形機を用いて、シリンダ温度175〜195℃、ノズル温度195℃、表1、2に記載された金型表面温度、充填時間25秒+冷却時間15秒の全40秒の成形条件で、300mm×220mm×厚さ2mmのプレートを成形した。この成形においては、プレートの片面中央に直径2mmの樹脂ゲートを設けて樹脂を充填した。
(3)ASTM型ウエルド測定用試験片
得られた樹脂組成物のペレットを、85℃×10時間熱風乾燥したのち、東芝機械社製IS−80G型射出成形機を用いて、シリンダ温度175〜195℃、ノズル温度195℃、表1、2に記載された金型表面温度にて、成形をおこなった。
<測定法、評価方法>
(1)耐熱性(荷重たわみ温度)
ISO型一般物性測定用試験片を、ISO75に準拠して0.45MPaにて荷重たわみ温度を測定し、耐熱性を評価した。荷重たわみ温度は、126℃以上であることが好ましい。
(2)耐煮沸性(反りの大きさ)
成形後8時間室温放置した300mm×220mm×厚さ2mmのプレートを平面に置き、プレートの一つの辺縁を平面上に密着させた際に、反対側の辺縁が平面上から浮き上がる高さ[mm]を測定し、また残りの3つの辺縁についても同様に高さを測定し、そのうちの最大高さ[mm]を、反りの大きさとした。煮沸処理前での反りの大きさは1mm以下であることが好ましい。
次に、このプレートを100℃の沸騰水で15分間煮沸後、60℃の熱風乾燥機にて10分間乾燥し、これを室温まで放冷した。この煮沸→乾燥→放冷からなる煮沸処理を3回繰り返した後、上記方法で、反りの大きさを測定し、耐煮沸性を評価した。煮沸処理を3回繰り返した後の反りの大きさは2mm以下であることが好ましい。
(3)バリ長さ
成形されたISO型一般物性測定用試験片について、ゲート部以外でのバリ発生の最大長を測定し、これをバリ長さとした。バリ長さは1.0mm以下であることが好ましい。
(4)ウェルド強度
ASTM型ウエルド測定用試験片(両端から樹脂が充填され、中央部でウエルド形成)を用い、ISO178に従って、この試験片のウエルド曲げ強度を測定した。ウエルド強度は18MPa以上であることが好ましい。
(5)表面外観(光沢)
成形された300mm×220mm×厚さ2mmのプレートを8時間室温放置した後、表面外観(光沢)を観察した。表面に曇りがまったく見られない場合を○、わずかに曇りが認められる場合を△、それを超えて曇りが認められる場合を×として、光沢を評価とした。
(6)型取り出し性
ISO型一般物性測定用試験片を成形し、離型した際に、試験片の湾曲が一時的にもまったく生じなかった場合を◎、試験片が離型時のみ一時的に湾曲したが突出しピンによる凹み痕跡はみとめられなかった場合を○、試験片の湾曲が一時的ではなく離形完了後も一部残存したが突出しピンによる凹み痕跡はみとめられなかった場合を△、突出しピンによる凹み痕跡がみとめられた場合を×として型取り出し性を評価した。型取り出し性の評価は◎または○または△であることが好ましい。
(7)耐久性
ISO型一般物性測定用試験片を、60℃、95%RHの環境下で、1000h暴露した場合の、暴露前後におけるISO178に準拠して測定した曲げ強度の保持率が90%以上である場合を○、90%未満、80%以上である場合を△、80%未満である場合を×とし、これを耐久性の評価とした。耐久性の評価は○または△であることが好ましい。
また、実施例、比較例に用いた各種原料は次の通りである。なおメルトフローレート(MFR)は、ポリ乳酸樹脂(A)については190℃、荷重2.16kg、ポリプロピレン樹脂(B)については230℃、荷重2.16kgでの測定値である。
(1)ポリ乳酸樹脂(A)
・3001D:NatureWorks社製『PLA−3001D』(D体含有量=1.4モル%、MFR=10g/10分)
・S−12:トヨタ自動車社製『S−12』(D体含有量=0.1モル%、MFR=8g/10分)
(2)ポリプロピレン樹脂(B)
・(B−1):日本ポリプロ社製『ノバテックPP−BC03C』(MFR=30g/10分)
・(B−2):同社製『ノバテックPP−BC06C』(MFR=60g/10分)
(3)タルク(C)
・(C−1):林化成社製『MWHST』(平均粒径=3μm)
・(C−2):日本タルク社製タルク『MS』(平均粒径=14μm)
(4)相溶化剤
・スチレン・エチレンブチレン・スチレンブロック共重合体(SEBS)(D):旭化成社製『タフテックH1043』(スチレン含有量=67質量%)
・E−GMA:住友化学社製エチレングリシジルメタクリレート共重合体『ボンドファーストE』
(5)核剤
(5.1)ポリ乳酸樹脂(A)用核剤
・スルホン酸塩系核剤(E):竹本油脂社製『LAK301』(有機スルホン酸金属塩)
・アミド系核剤:新日本理化社製『TF−1』(トリメシン酸アミド系化合物)
(5.2)ポリプロピレン樹脂(B)用核剤
・ADEKA社製リン酸エステル塩系核剤『NA11』(リン酸=2,2′−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)=ナトリウム)
(6)メタクリル系樹脂
・三菱レイヨン社製『アクリペットVH』(メタクリル酸メチルとアクリル酸メチルの共重合体)
(7)加水分解抑制剤
・日清紡社製カルボジイミド系化合物『カルボジライトLA−1』(ポリカルボジイミド化合物)
(8)展着剤
・松村石油社製流動パラフィン『モレスコホワイトP−85』
(9)繊維状フィラー
・オーウェンスコーニング社製ガラス繊維『03MAFT170A』(繊維径13μm、繊維長3mm)
実施例1
二軸押出機(東芝機械社製TEM37BS型)を用い、ポリ乳酸樹脂(A)としての3001D39質量部、ポリプロピレン樹脂(B−1)61質量部、タルク(C−1)19質量部、SEBS(D)3.9質量部、スルホン酸塩系核剤(E)2.6質量部、メタクリル系樹脂1.0質量部、リン酸エステル塩系核剤0.6質量部、加水分解抑制剤1.3質量部、および展着剤0.3質量部をドライブレンドして、押出機の根元供給口から供給し、バレル温度230℃、スクリュー回転数180rpm、吐出23kg/hの条件で、ベントを効かせながら押出しを実施した。押出機先端から吐出された樹脂組成物をカッティングして、樹脂組成物のペレットを得た。
実施例2〜32および比較例1〜16
各原料の有無、量、種類を、表1、2記載のように変更した以外は実施例1と同様にして樹脂組成物ペレットを得た。ただし、比較例13、14において、繊維状フィラーとしてのガラス繊維は、押出機の途中のサイド供給口から供給した。
実施例、比較例で得られた樹脂組成物について、組成や特性を表1、2に示す。
Figure 2014227470
Figure 2014227470
表1から明らかなように、実施例1〜32で得られた樹脂組成物においては、ポリ乳酸樹脂(A)、ポリプロピレン樹脂(B)、タルク(C)、スチレン・エチレンブチレン・スチレンブロックポリマー(SEBS)(D)及びスルホン酸塩系核剤(E)を、本発明で規定する量含有するため、耐熱性、耐煮沸性、表面外観に優れた成形品を得ることができた。また、得られた成形品は、ウエルド強度が高く、耐久性にも優れていた。
一方、表2に示すように、比較例1においてはポリ乳酸樹脂(A)の割合が過少(すなわち、ポリプロピレン樹脂(B)の割合が過多)であるため、低環境負荷性に劣る結果となった。比較例2においてはポリ乳酸樹脂(A)の割合が過多(すなわち、ポリプロピレン樹脂(B)の割合が過少)であるため、耐煮沸性、バリ長さ評価および型取り出し性に劣る結果となった。
比較例3においてはタルク(C)の含有量が過少であるため、耐熱性に劣る結果となった。比較例4においてはタルク(C)の含有量が過多であるため、光沢の評価に劣る結果となった。
比較例5〜8においては、樹脂(A)用核剤としてのスルホン酸塩系核剤(E)を含有するが、比較例5においては相溶化剤としてのSEBS(D)が含有されていないため、また比較例6においてはSEBS(D)の含有量が過少であるため、耐煮沸性、ウェルド強度に劣る結果となった。比較例7においてはSEBS(D)の含有量が過多であるため、耐熱性に劣る結果となった。比較例8においては、相溶化剤としてSEBS(D)を用いず、エチレングリシジルメタクリレート共重合体(E−GMA)を用いたため、耐煮沸性に劣る結果となった。
また、比較例9〜12においては、相溶化剤としてのSEBS(D)を含有するが、比較例9においては樹脂(A)用核剤としてのスルホン酸塩系核剤(E)が含有されていないため、また比較例10においてはスルホン酸塩系核剤(E)の含有量が過少であるため、耐熱性、耐煮沸性に劣る結果となった。比較例11においてはスルホン酸塩系核剤(E)の含有量が過多であるためコスト的に不利な結果となった。比較例12においては、樹脂(A)用核剤としてスルホン酸塩系核剤(E)を用いず、アミド系核剤を用いたが、耐煮沸性に劣るものであった。
このように、相溶化剤としてのSEBS(D)と、樹脂(A)用核剤としてのスルホン酸塩系核剤(E)とを組み合わせ、そしてそれぞれの含有量を本発明で規定する量としないと、得られる成形品において、煮沸時において発生する反りを抑制することができなかった。
比較例13、14においては繊維状フィラーのガラス繊維が含まれているため、耐煮沸性に劣る結果となった。
比較例15においては、表面温度が低い金型を使用したため、得られた成形品は、耐熱性に劣る結果となり、比較例16においては、表面温度が高い金型を使用したため、得られた成形品は、バリ長さ評価に劣る結果となった。

Claims (3)

  1. ポリ乳酸樹脂(A)、ポリプロピレン樹脂(B)、タルク(C)、スチレン・エチレンブチレン・スチレンブロックポリマー(SEBS)(D)及びスルホン酸塩系核剤(E)を含有する樹脂組成物であって、ポリ乳酸樹脂(A)とポリプロピレン樹脂(B)との質量比率((A)/(B))が32/68〜44/56であり、ポリ乳酸樹脂(A)とポリプロピレン樹脂(B)の合計100質量部に対して、タルク(C)の含有量が12〜36質量部、スチレン・エチレンブチレン・スチレンブロックポリマー(SEBS)(D)の含有量が1.1〜8.2質量部、スルホン酸塩系核剤(E)の含有量が1.5〜3.5質量部であり、繊維状フィラーを含有しないことを特徴とするポリ乳酸系樹脂組成物。
  2. 請求項1記載のポリ乳酸系樹脂組成物を成形してなる食品用トレイ。
  3. 請求項1記載のポリ乳酸系樹脂組成物を射出成形して成形品を製造する方法であって、表面温度が95〜110℃である金型を使用することを特徴とする成形品の製造方法。

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