JP2014227390A - メントール誘導体、並びにこれを用いた冷感剤、trpm8活性化剤、冷感付与方法及びtrpm8活性化方法 - Google Patents

メントール誘導体、並びにこれを用いた冷感剤、trpm8活性化剤、冷感付与方法及びtrpm8活性化方法 Download PDF

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Abstract

【課題】強い冷感を付与することができる新規化合物、並びにこれを用いた冷感剤、TRPM8活性化剤、冷感付与方法及びTRPM8活性化方法を提供すること。【解決手段】例えば下記式の化合物が例示される。上記(2)、(3)は互いにエナンチオマーの関係にある。【選択図】なし

Description

本発明は、メントール誘導体、並びにこれを用いた冷感剤、TRPM8活性化剤、冷感付与方法及びTRPM8活性化方法に関する。
使用中や使用後における清涼感を付与することを目的として、化粧品、ヘアケア製品、トイレタリー製品、入浴剤、医薬品等の各種製品に、冷感物質がしばしば配合されており、斯様な冷感物質として、メントールが広く用いられている。
メントールによる冷感付与は、皮膚や粘膜組織中に存在する知覚神経終末にメントールが直接作用することにより生じると考えられており、この冷感付与に関するメカニズムの検討が進められてきた。
まず、ラットの感覚神経のうち、弱い冷却刺激に応答して内向きのイオン電流を生じるニューロンが、メントールに対しても同様の応答性を示すことが発見された(非特許文献1)。この発見により、メントールの刺激による冷感が内向きのカルシウム電流により引き起こされるものであることが明らかとなった。
そして、メントール及び冷刺激に応答性を示す受容体として、三叉神経ニューロンからCMR−1(cold and menthol sensitive receptor)が同定された(非特許文献2)。この受容体はTRPM8と呼ばれており(非特許文献3)、TRPイオンチャネルファミリーに属する興奮性のイオンチャネルであるこの受容体が、前述のカルシウム電流を引き起こすと考えられる。
これらの報告によって、感覚神経に存在するTRPM8にメントールが結合して内向き電流が発生することにより、メントールによる冷感が生じることが明らかとなっている。
REID,G.&FLONTA,M.L.(2002),Neurosci.Lett.,324,p164−168 MCKEMY,D.D.,NEUHAUSSER,W.M.&JULIUS,D.(2002),Nature,416,p52−56 PEIER,A.M.,MOQRICH,A.,HERGARDEN,A.C.,REEVE,A.J.,ANDERSSON,D.A.,STORY,G.M.,EARLEY,T.J.,DRAGONI,I.,MCINTYRE,P.,BEVAN,S.&PATAPOUTIAN,A.(2002),Cell,108,p705−715 BEHRENDT,H.−J.,GERMANN,T.,GILLEN,C.,HATT,H.&JOSTOCK,R.(2004),Br.J.Pharmacol.,141,p737−745
しかしながら、メントールは、多量に使用した場合に、皮膚や粘膜への刺激や特有の不快な刺激臭等が問題となるため、使用量が制限されることがある。
また、メントールの他に、リナロール、ゲラニオール、ヒドロキシシトロネラール等もTRPM8を活性化することが知られているが(非特許文献4)、近年では強い清涼感やその持続性が要求される傾向があり、これらによるTRPM8活性化作用では斯かる要求を充分には満足できない。
したがって、本発明は、強い冷感を付与することができる新規化合物、並びにこれを用いた冷感剤、TRPM8活性化剤、冷感付与方法及びTRPM8活性化方法に関する。
本発明者らは、8,4'−オキシネオリグナン類似構造を有する特定の新規メントール誘導体が、優れたTRPM8活性化作用を有し強い冷感を付与できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、下記式(1)
Figure 2014227390
〔式(1)中、R1は、水素原子、ヒドロキシ基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、R2は、水素原子又はヒドロキシ基を示し、R3は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、R4は、水素原子又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示す。〕
で表される化合物(以下、化合物(1)とも称する)を提供するものである。
また、本発明は、化合物(1)を有効成分とする冷感剤を提供するものである。
更に、本発明は、化合物(1)を有効成分とするTRPM8活性化剤を提供するものである。
更に、本発明は、化合物(1)を用いる非治療的な冷感付与方法を提供するものである。
更に、本発明は、化合物(1)を用いる非治療的なTRPM8活性化方法を提供するものである。
本発明の化合物は、優れたTRPM8活性化作用を有し強い冷感を付与することができる。
本発明の化合物は、下記式(1)
Figure 2014227390
〔式(1)中、R1は、水素原子、ヒドロキシ基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、R2は、水素原子又はヒドロキシ基を示し、R3は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、R4は、水素原子又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示す。〕
で表されるものである。斯かる化合物は新規化合物である。
式(1)中、R1は、水素原子、ヒドロキシ基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示すが、水素原子、炭素数1〜3のアルコキシ基が好ましく、より好ましくは水素原子である。上記アルコキシ基は直鎖状でも分枝状でもよく、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基が挙げられる。
2は、水素原子又はヒドロキシ基を示すが、水素原子が好ましい。
3は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示すが、水素原子、炭素数2〜6のアルケニル基が好ましく、TRPM8活性化作用の観点から、炭素数2〜6のアルケニル基がより好ましい。
また、上記アルキル基の炭素数は、好ましくは1〜3である。一方、アルケニル基の炭素数は、好ましくは2〜4であり、より好ましくは2又は3であり、更に好ましくは3である。
また、上記R3で示されるアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基は直鎖状でも分枝状でもよく、アルキル基としては例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基等が挙げられる。
また、上記アルケニル基としては例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−メチル−1−ブテニル基、1−ペンテニル基、1−ヘキセニル基等が挙げられる。斯様なアルケニル基の中でも、TRPM8活性化作用の観点から、末端二重結合を有するアルケニル基が好ましい。
また、上記アルコキシ基としては例えば、R1で示されるアルコキシ基として例示したものが挙げられる。
4は、水素原子又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示すが、TRPM8活性化作用の観点から、炭素数1〜3のアルコキシ基が好ましい。斯かるアルコキシ基としては、R1で示されるものと同様のものが挙げられ、メトキシ基が好ましい。
また、式(1)の構造から明らかなように、化合物(1)は少なくとも5つの不斉炭素原子を有し、斯かる不斉炭素原子に由来して、化合物(1)には32種の立体異性体が存在する。化合物(1)は、これら立体異性体のいずれでもよく、これら異性体の混合物であってもよいが、TRPM8活性化作用の観点から、メントールに由来する構造がl−メントールに由来するもの又はd−メントールに由来するものであるのが好ましい。なお、上記l−メントールに由来する構造をもつ化合物は、下記式(1−1)で表され、上記d−メントールに由来する構造をもつ化合物は、下記式(1−2)で表される。
Figure 2014227390
(式中、各記号は前記と同義である。)
次に、化合物(1)の合成方法について説明する。
化合物(1)は、K.Konya,Zs.Valga&S.Antus,Phytomedicine,2001,8(6),454−459に記載の方法等の常法を適宜組み合わせれば合成できる。また、A.Isogai,S.Murakoshi,A.Suzuki&S.Tamura,Agr.Biol.Chem.,1973,37(4),889−895などに記載の方法に準じ、天然物から単離、或いは単離したネオリグナン類の7位炭素に結合している基−OHに、メントールを常法に従って付加することによっても調製できる。
斯様な方法として、例えば、以下の合成方法が挙げられる。なお、斯かる方法においては、後述する工程(i)〜(vi)に、保護反応や脱保護反応、光学分割を必要に応じて適宜組み合わせて行ってもよい。
Figure 2014227390
(式中、各記号は前記と同義である。)
工程(i)は、原料化合物(a)とグリニャール試薬(b)を反応させ、中間体(c)を得る工程である。
原料化合物(a)としては、バニリン、5−ヒドロキシバニリン、シリンガアルデヒド等が挙げられる。
また、グリニャール試薬(b)としては、エチルマグネシウムブロマイド等が挙げられる。
工程(ii)は、酸化剤を用いて、中間体(c)の基−OHを基=Oに変換し、中間体(d)を得る工程である。酸化剤としては、二酸化マンガン等が挙げられる。
工程(iii)は、中間体(d)をα臭素化し、中間体(e)を得る工程である。
工程(iv)は、中間体(e)と化合物(f)を塩基存在下で反応させ、中間体(g)を得る工程である。
化合物(f)としては、例えば、6−メトキシオイゲノール、4−(1−プロペニル)シリンゴール、オイゲノール、イソオイゲノール等が挙げられる。
また、塩基としては、炭酸カリウム等が挙げられる。
工程(v)は、中間体(g)の7位炭素に結合している基=Oを、基−OHに変換し、中間体(h)を得る工程である。
なお、本反応を水素化アルミニウムリチウム等の強い還元剤存在下で行えば、中間体(h)のエリトロ体が得られ、一方、水素化ホウ素ナトリウム等の弱い還元剤とクラウンエーテルの存在下で行えば、中間体(h)のトレオ体が得られる。
工程(vi)は、l−メントールやd−メントール等のメントールを用いて、中間体(h)の7位炭素に結合している基−OHにメントールを付加し、化合物(1)を得る工程である。なお、本反応は、必要に応じて塩酸等の強酸存在下で行ってもよい。
なお、前記各工程において、各反応生成物の単離は、必要に応じて、ろ過、洗浄、乾燥、再結晶、再沈殿、遠心分離、各種溶媒による抽出、中和、クロマトグラフィー等の通常の手段を適宜組み合わせて行えばよい。
前記のようにして得られる化合物(1)は、後記実施例に示すように、優れたTRPM8活性化作用を有し強い冷感を付与することができる。また冷感持続性にも優れる。
したがって、化合物(1)は、冷感剤及びTRPM8活性化剤(以下、冷感剤等とも称する)としてそのまま用いることができ、また、冷感剤等を製造するための素材として使用することができる。なお、上記冷感剤等は仮にメントールを含んでいなくても上記効果を得ることが可能である。
次に、本発明の冷感剤及びTRPM8活性化剤について説明する。
本発明の冷感剤等は、前記化合物(1)を有効成分とするものである。
前記冷感剤等は、ヒト又は動物用の医薬品、化粧料、飲食品、口腔用組成物、ペットフード、他の嗜好品(タバコ等)等として使用できる。
前記冷感剤等を医薬品として使用する場合、任意の投与形態で投与され得る。投与形態は、経粘膜、経皮等の非経口投与と経口投与とに大別される。
また、前記医薬品の剤型は特に限定されない。非経口投与用の医薬品の剤型としては、例えば、液剤、ゲル剤、クリーム剤、軟膏剤、パップ剤、エアゾール剤、ローション剤、ファンデーション等の皮膚外用剤の他、点眼剤、点鼻剤等が挙げられる。
一方、経口投与用の医薬品の剤型としては、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、粉剤、丸剤、糖衣錠、内服液、懸濁液、シロップ剤等が挙げられる。
また、前記医薬品は、消炎鎮痛剤、殺菌消毒剤、収斂剤、抗生物質等の他の薬効成分を1種又は2種以上含んでいてもよい。
また、前記冷感剤等を化粧料として使用する場合、その形態は特に限定されない。例えば、皮膚外用剤(虫除けスプレー等)、洗浄剤、化粧水、乳液、スキンクリーム、ファンデーション、口紅、頭皮用化粧料、毛髪化粧料(シャンプー、ヘアトニック等)、入浴剤等とすることができる。
また、前記化粧料は、化合物(1)の他に、油剤、セラミド類、擬似セラミド類、ステロール類、保湿剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、美白剤、アルコール類、キレート剤、pH調整剤、防腐剤等を1種又は2種以上含んでいてもよい。
また、前記冷感剤等を飲食品として使用する場合、その形態は特に限定されない。例えば、キャンディ、ガム、タブレット、カプセル、飲料水等が挙げられる。
また、前記冷感剤等を口腔用組成物として使用する場合、その形態は特に限定されず、例えば、歯磨剤、洗口液、歯肉マッサージクリーム等が挙げられる。
また、前記冷感剤等に含まれる化合物(1)の含有量は特に限定されないが、経口投与のための医薬品、飲食品、口腔用組成物又はペットフードである場合、TRPM8活性化作用の観点から、下限として、0.1ppm以上が好ましく、1ppm以上がより好ましく、10ppm以上が更に好ましく、50ppm以上が更に好ましい。一方、その上限としては、下限と同様の観点から、10000ppm以下が好ましく、1000ppm以下が更に好ましく、750ppm以下が更に好ましい。具体的には、TRPM8活性化作用の観点から、0.1ppm以上が好ましく、1〜10000ppmがより好ましく、10〜1000ppmが更に好ましく、50〜750ppmが特に好ましい。
一方、非経口投与のための医薬品、化粧料又は他の嗜好品である場合は、TRPM8活性化作用の観点から、下限として、0.001質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましい。一方、その上限としては、下限と同様の観点から、10質量%以下が好ましい。具体的には、TRPM8活性化作用の観点から、0.001質量%以上が好ましく、0.01〜10質量%がより好ましい。
なお、前記冷感剤等の投与又は摂取対象者としては、それを必要としている者であれば特に限定されない。
次に、本発明の冷感付与方法、TRPM8活性化方法について説明する。
本発明の冷感付与方法、TRPM8活性化方法は、前記化合物(1)を用いるものである。
また、斯かる冷感付与、TRPM8活性化方法の態様としては、化合物(1)の塗布・服用等が挙げられる。また、前記化合物(1)を用いるに際し、該化合物(1)として前記冷感剤等を用いてもよい。
また、これら方法は、ヒト若しくは非ヒト動物、又はそれらに由来する検体における使用であり得、また治療的な使用であっても非治療的な使用であってもよい。ここで、「非治療的」とは、医療行為を含まない概念、すなわち人間を手術、治療又は診断する方法を含まない概念、より具体的には、医師又は医師の指示を受けた者が人間に対して手術、治療又は診断を実施する方法を含まない概念である。斯様な非治療的使用としては、エステティシャンによる施術が挙げられる。
上述した実施形態に関し、本発明は更に以下の化合物等を開示する。
<1>上記式(1)で表される化合物。
<2>上記式(1)で表される化合物を有効成分とする冷感剤。
<3>上記式(1)で表される化合物を有効成分とするTRPM8活性化剤。
<4>上記式(1)で表される化合物を用いる冷感付与方法。
<5>上記式(1)で表される化合物を投与又は摂取する冷感付与方法。
<6>上記式(1)で表される化合物を用いるTRPM8活性化方法。
<7>上記式(1)で表される化合物を投与又は摂取するTRPM8活性化方法。
<8>非治療的な方法である<4>〜<7>のいずれか1に記載の方法。
<9>冷感剤を製造するための、上記式(1)で表される化合物の使用。
<10>TRPM8活性化剤を製造するための、上記式(1)で表される化合物の使用。
<11>冷感付与に使用するための、上記式(1)で表される化合物。
<12>TRPM8活性化に使用するための、上記式(1)で表される化合物。
<13>前記<1>〜<12>において、R1は、好ましくは水素原子、炭素数1〜3のアルコキシ基であり、より好ましくは水素原子である。
<14>前記<1>〜<12>において、R2は、好ましくは水素原子である。
<15>前記<1>〜<12>において、R3は、好ましくは水素原子、炭素数2〜6のアルケニル基、より好ましくは炭素数2〜6のアルケニル基であり、更に好ましくは末端二重結合を有する炭素数2〜6のアルケニル基である。
<16>前記<1>〜<12>において、R4は、好ましくは炭素数1〜3のアルコキシ基であり、より好ましくはメトキシ基である。
後述する実施例で得られた化合物の分析条件は以下の通りである。
<NMRスペクトル>
1H−NMRスペクトルは、CHCl3(7.24)を内部標準物質として用いて、Bruker社製Avance−600により測定した。
13C−NMRスペクトルは、CHCl3(77.0)を内部標準物質として用いて、Bruker社製Avance−600により測定した。
単離例
下記の単離スキームに従い、下記式で表されるエリトロ−Δ8'−4,7−ジヒドロキシ−3,3',5'−トリメトキシ−8−O−4'−ネオリグナン(以下、エリトロ体(1)とも称する)をニクズクより単離した。
Figure 2014227390
ニクズク(Myristica fragrans Houtt.)の種子400gに、50vol%エタノール水溶液を4L添加し、室温で2日間浸漬して抽出した後、濾過して粗抽出液を得た。これを減圧濃縮後、エタノール2Lを添加し、不溶物を濾過した。濾液を減圧濃縮後、水と酢酸エチルを各2L添加して分液を行い、酢酸エチル層を減圧乾燥して固形分13.15gを得た。このうち5.00gをシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、エリトロ体(1)を含む画分1.10gを得た。これを更に逆相HPLC(Inertsil ODS−3)によって精製し、エリトロ体(1)を得た。
実施例1
単離例1で得られたエリトロ体(1)(11.0mg)を60℃で融解したl−メントール(190mg)に溶解後、濃塩酸(2μL)を添加して60℃で3時間反応させた。冷却後、酢酸エチルと飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチル層を減圧濃縮後、シリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、Δ8'−7−(l−メントキシ)−4−ヒドロキシ−3,3',5'−トリメトキシ−8−O−4'−ネオリグナン(以下、混合物(2)とも称する)(8.9mg)を、ジアステレオマー比36:26:26:12で得た。
実施例2
実施例1と同様にして、エリトロ体(1)(13.5mg)を60℃で融解したd−メントール(134mg)に溶解後、濃塩酸(2μL)を添加して60℃で3時間反応させた。冷却後、酢酸エチルと飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチル層を減圧濃縮後、シリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、Δ8'−7−(d−メントキシ)−4−ヒドロキシ−3,3',5'−トリメトキシ−8−O−4'−ネオリグナン(以下、混合物(3)とも称する)(9.5mg)を、ジアステレオマー比36:26:26:12で得た。
得られた混合物(2)および(3)のNMRスペクトルと化学構造を以下に示す。なお、混合物(2)および(3)は互いにエナンチオマーの関係にあるため、NMRスペクトルは一致する。
1HNMR (600 MHz, CDCl3) δ 7.19 (d, J = 1.7 Hz, 0.12H), 7.06 (dd, J = 8.1, 1.7 Hz, 0.12H), 6.95 (m, 0.26H), 6.92 (d, J = 1.6 Hz, 0.26H), 6.88-6.76 (m, 2.24H), 6.38 (s, 0.24H), 6.36 (s, 0.52H), 6.26 (s, 0.72H), 5.98-5.86 (m, 1H), 5.58-5.44 (br, 1H), 5.11-5.01 (m, 2H), 4.71 (d, J = 5.8 Hz, 0.26H), 4.69 (d, J = 3.8 Hz, 0.12H), 4.60 (d, J = 4.2 Hz, 0.26H), 4.47 (d, J = 6.4 Hz, 0.36H), 4.37 (m, 0.26H), 4.35 (m, 0.12H), 4.31 (m, 0.36H), 4.22 (m, 0.26H), 3.88 (s, 0.36H), 3.86 (s, 0.78H), 3.84 (s, 0.78H), 3.80 (s, 1.08H), 3.78 (s, 1.56H), 3.76 (s, 0.72H), 3.71 (s, 1.56H), 3.66 (s, 2.16H), 3.45 (td, J = 10.5, 4.1 Hz, 0.26H), 3.33-3.24 (m, 2H), 3.16 (td, J = 10.5, 4.1 Hz, 0.12H), 2.98 (td, J = 10.5, 4.1 Hz, 0.36H), 2.91 (td, J = 10.5, 4.1 Hz, 0.26H), 2.60-2.51 (m, 0.26H), 2.30-2.18 (m, 1.1.36H), 2.12-2.07 (m, 0.26H), 1.86 (m, 0.12H), 1.70-1.46 (m, 2H), 1.33 (d, J = 6.3 Hz, 1.08H), 1.32-0.67 (m, 14.06), 0.46 (d, J = 6.9 Hz, 0.78H), 0.31 (d, J = 7.0 Hz, 1.08H);
13CNMR (150 MHz, CDCl3) δ 153.5, 153.4, 153.2, 153.1, 146.1, 145.9, 145.8, 145.6, 144.8, 144.7, 144.3 (2C), 137.5, 137.4 (2C), 137.3, 135.7, 135.2, 134.9 (2C), 134.8, 134.7 (2C), 134.6 (2C), 132.8, 132.7, 131.6, 121.9, 121.5, 120.6, 120.3, 115.9, 115.8 (2C), 115.7, 113.4, 113.2, 113.1 (2C), 110.7, 110.5, 110.4, 110.0, 105.8, 105.6, 105.5 (2C), 83.2, 82.9, 81.4(2C), 80.9, 80.8, 80.3, 80.0, 79.8, 79.6, 74.6 (2C), 56.1, 55.9 (2C), 55.8 (4C), 55.7, 49.3, 48.8, 48.4, 42.2, 41.9, 40.5 (3C), 40.4, 39.9, 39.5, 34.6 (3C), 34.5, 31.6 (2C), 31.4, 31.2, 25.2, 25.1, 24.9, 24.8, 22.9 (2C), 22.8, 22.7, 22.5 (2C), 22.4, 22.3, 21.5, 21.4, 21.3 (2C), 16.5, 16.4, 15.9 (2C), 14.9, 14.8.
Figure 2014227390
試験例1 TRPM8活性化作用確認試験
以下の手順に従い、試験サンプルのTRPM8活性化作用におけるEC50値を測定した。
(1)ヒトTRPM8安定発現株の作製
ヒトTRPM8安定発現HEK293細胞株を作製するため、ヒトTRPM8遺伝子のクローニングを行った。全長ヒトTRPM8遺伝子は、ヒト前立腺組織全RNA(COSMOBIO社製)より、RT−PCR法を用いて増幅した。
得られたPCR産物をエントリーベクターpENTR−D/TOPO(インビトロジェン社製)へクローニングした後、pCDNA3.2−V5/DEST(インビトロジェン社製)へサブクローニングし、リポフェクトアミン2000(インビトロジェン社製)によりHEK293細胞へ形質導入した。形質導入された細胞を、450μg/mLのG−418(プロメガ社)を含有するDMEM培地中で増殖させて選抜した。HEK293細胞は内在性のTRPM8を発現しないため、TRPM8形質導入株に対するコントロールとして使用できる。
(2)カルシウムイメージング
HEK293細胞へ形質導入したTRPM8活性の測定は、蛍光カルシウムイメージング法により行った。
まず、培養したTRPM8発現細胞をポリ−D−リジンコートされた96ウェルプレート(BDファルコン社製)へ播種(30,000細胞/ウェル)し、37℃で一晩インキュベートした後、培養液を除去し、Fluo4−AM液(同仁化学社製;カルシウムキットII)を添加し、37℃で30〜60分間インキュベートした。その後、96ウェル穴プレートを蛍光プレートリーダー(FDSS3000;浜松ホトニクス社製)にセットし、装置庫内温度を32℃とした状態で、励起波長480nmで励起したときのFluo4による蛍光イメージを、CCDカメラを用いて検出波長520nmにより捕捉した。
測定は1秒毎に計4分間行い、測定開始15秒後に、FDSS3000内蔵の分注器から試験サンプル(下記表1に示す各化合物を10mM濃度でそれぞれエタノールに溶解したストック液を作成し、さらにハンクスリンガー液に終濃度の3倍の濃度で溶解させたもの)を添加し、蛍光強度の変化によりTRPM8の活性を評価した。
(3)TRPM8活性化の評価
TRPM8活性は、試験サンプル添加後の蛍光強度比の最大値を用いて評価した。下記の式を用いて蛍光強度比を算出した。
蛍光強度比=各時点の蛍光強度/測定開始時蛍光強度
各処理群あたり2ウェルで評価を行い、その平均値を用いた。
(4)TRPM8活性化作用の評価結果
以下の表1に示す各試験サンプルのTRPM8活性化作用を、終濃度1nMから1μMの範囲で上記方法により測定した。測定結果より、最小二乗法を用いてヒルの式に近似した容量依存曲線を求め、これよりEC50値を算出した。各試験サンプルのTRPM8活性化作用におけるEC50値は以下の表1に示すとおりであった。
Figure 2014227390
前記表1に示すように、実施例で得られた各化合物は優れたTRPM8活性化作用を有する。したがって、これら実施例で得られた各化合物によれば強い冷感を付与することができる。

Claims (5)

  1. 下記式(1)
    Figure 2014227390
    〔式(1)中、R1は、水素原子、ヒドロキシ基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、R2は、水素原子又はヒドロキシ基を示し、R3は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、R4は、水素原子又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示す。〕
    で表される化合物。
  2. 請求項1に記載の化合物を有効成分とする冷感剤。
  3. 請求項1に記載の化合物を有効成分とするTRPM8活性化剤。
  4. 請求項1に記載の化合物を用いる非治療的な冷感付与方法。
  5. 請求項1に記載の化合物を用いる非治療的なTRPM8活性化方法。
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