(第1実施形態)
以下、本発明に係る内燃機関の吸気装置の第1実施形態を図面を参照しながら説明する。図1は、車両に搭載されたエンジンシステム1の構成図を示している。エンジンシステム1は、内燃機関としてのディーゼルエンジン10(以下、単にエンジンという)と、そのエンジン10の運転に必要な各種構成とを備える形で構成されている。なお、本実施形態では、エンジン10は、4つの気筒111〜114(シリンダ)を有した4気筒エンジンである。エンジン10は、各気筒111〜114において、吸気、圧縮、燃焼、排気の4行程を経て動力を生み出す4ストローク機関である。吸気、圧縮、燃焼、排気の4行程による燃焼サイクル(「720°CA」周期)が、例えば各気筒111〜114間で「180°CA」ずらして逐次実行される。図1の右側の気筒111から順に1番から4番までの番号を付けたときに、本実施形態では、1番目の気筒111、3番目の気筒113、4番目の気筒114、2番目の気筒112の順に燃焼サイクルが実行される。なお、以下では、4つの気筒111〜114のうちのどの気筒であるかを特定しないときには、符号「11」で気筒を示す。
各気筒11には、筒内(気筒11の内部)に吸入される吸入空気(ガス)の導入口となる吸気ポートとして、スワール生成ポート12とタンブル生成ポート13の2つの吸気ポートが接続されている。それら吸気ポート12、13は、気筒11の上部に設けられたエンジンヘッド内に形成されている。スワール生成ポート12は、筒内に吸入されるガスにスワール流(横渦)を生じさせる吸気ポートである。タンブル生成ポート13は、筒内に吸入されるガスにタンブル流(縦渦)を生じさせる吸気ポートである。これら2つの吸気ポート12、13により、インジェクタ(図示外)から噴射された燃料と吸気ポート12、13から吸入されたガスとの混じりを良くできる。
なお、各吸気ポート12、13と筒内とを繋ぐ開口140(図1参照)にはその開口140の開閉を行う吸気バルブ14が設けられている。また、各気筒11には、筒内での燃焼後のガスを筒内から排出する排気ポートが接続されている。その排気ポートと筒内とを繋ぐ開口にはその開口の開閉を行う排気バルブ15が設けられている。
エンジンシステム1には、エンジン10の筒内に吸入される新気が流れる吸気通路21が設けられている。その吸気通路21には、上流側から、新気を圧縮する過給器31、過給器31で圧縮された新気を冷却するインタークーラ32が設けられている。また、インタークーラ32より下流の吸気通路21には、新気量を調整するスロットル33が設けられている。そのスロットル33より下流の吸気通路21から、各気筒11(厳密にはエンジンヘッド)に繋がる通路22(インテークマニホールドの通路。以下、EGRリーンガス通路という)が分岐している。各EGRリーンガス通路22は各気筒11のスワール生成ポート12に接続されている。EGRリーンガス通路22及び吸気通路21には、新気のみ又は新気にEGRバルブ41の開度に応じたEGRガスが混ざったガスglean(以下、EGRリーンガスという)が流れる。
また、各気筒11には、各気筒11から排出される排気ガスをまとめて排気通路27に渡すためのエキゾーストマニホールド23が接続されている。なお、排気通路27には、上流側から、排気ガスからエネルギーを回収する過給器のタービン37(可変ノズルターボ(VNT))、排気ガスに対して所定の処理を行う後処理装置38、排気ガスの流量を調整する排気絞り弁39がこの順で配置されている。後処理装置38は、排気ガス中のCO、HC等を酸化して除去する酸化触媒や排気ガス中のPMを除去するDPFなどである。
後処理装置38より下流の排気通路27に一端が接続され、他端が過給器37よりも上流にて吸気通路21に接続された低圧EGR通路28が設けられている。その低圧EGR通路28は排気ガスの一部をEGRガスとして吸気通路21に還流するための通路である。低圧EGR通路28には、その低圧EGR通路28を流れるEGRガスを冷却する低圧EGRクーラ40や、そのEGRガスの流量を調整する低圧EGRバルブ41が設けられている。なお、これら低圧EGR通路28、低圧EGRクーラ40及び低圧EGRバルブ41を有した低圧EGRシステムが備えられていなくても良い。この場合には、吸気通路21には新気のみが流れることになる。
エキゾーストマニホールド23には、排気ガスの一部をEGRガスとして吸気系に還流させるための高圧EGR通路24が接続されている。その高圧EGR通路24には、高圧EGR通路24を流れるEGRガスを冷却する高圧EGRクーラ34や、そのEGRガスの流量を調整する高圧EGRバルブ35が設けられている。その高圧EGRバルブ35より下流の高圧EGR通路24からは、各気筒11(厳密にはエンジンヘッド)に繋がる通路25(以下、EGRリッチガス通路という)が分岐している。各EGRリッチガス通路25は、各気筒11のタンブル生成ポート13に接続されている。EGRリッチガス通路25には、EGRリーンガス通路22を流れるガス、すなわちEGRリーンガスよりもEGRガスの濃度が濃い(排気濃度が高い、酸素濃度が低い)ガスgrich(以下、EGRリッチガスという)が流れる。
また、エンジンシステム1には、吸気通路21と高圧EGR通路24とを接続する接続通路29が設けられている。その接続通路29は、EGRリーンガス通路22に分岐する前の吸気通路21と、EGRリッチガス通路25に分岐する前の高圧EGR通路24とを接続している。その接続通路29により、吸気通路21及びその下流のEGRリーンガス通路22を流れるガスの圧力と、高圧EGR通路24及びその下流のEGRリッチガス通路25を流れるガスの圧力とを同等にできる。その結果、筒内において、圧力の違いによりEGRリーンガスとEGRリッチガスとの成層分布が乱れるのを抑制できる。
さらに、低圧EGR通路28から還流されるEGRガスやEGRリッチガス通路25を流れるEGRリッチガス(排気ガス)だけではEGR率の目標値(目標EGR率)を達成できない場合には、接続通路29を介して高圧EGR通路24から吸気通路21にEGRガスを流し、又は吸気通路21から高圧EGR通路24に新気を流すことで、目標EGR率を達成できるようになっている。すなわち、目標EGR率が高い場合には、接続通路29を介して高圧EGR通路24から吸気通路21にEGRガスを流して吸気通路21及びEGRリーンガス通路22を流れるEGRリーンガスのEGR濃度を高くすることで、EGR率を上げることができる。反対に目標EGR率が低い場合には、接続通路29を介して吸気通路21から高圧EGR通路24に新気を流して高圧EGR通路24及びEGRリッチガス通路25を流れるEGRリッチガスのEGR濃度を低くすることで、EGR率を下げることができる。なお、EGR率は、筒内に吸入されるEGRガス(排気ガス)の量を、筒内に吸入されるガスの総吸入量(新気の吸入量+EGRガスの吸入量)で割った値である。
各EGRリッチガス通路25には、各EGRリッチガス通路25の開閉を行うバルブ421〜424(以下、吸気制御バルブという)が設けられている。なお、以下では、4つの吸気制御バルブ421〜424のうちどの吸気制御バルブかを特定しないときには、符号「42」で吸気制御バルブを示す。吸気制御バルブ42の設置位置はできるだけ吸気バルブ14に近いほうが良い。なぜなら、吸気バルブ14から吸気制御バルブ42までの容積が小さくなり、吸気流量の制御性が良くなるからである。吸気制御バルブ42はタンブル生成ポート13内に設けられていたとしても良い。
図2に吸気制御バルブ42の断面を例示している。図2に示す吸気制御バルブ42は、弁を回転させて通路の開閉を行うタイプのバルブ(例えばバタフライバルブ)である。詳細には、吸気制御バルブ42は、開閉を行う通路(本実施形態ではEGRリッチガス通路25)に接続される筒状の弁箱42aと、その弁箱42a内に配置されて後述する回転軸44周りに回転する円盤状、球状等の弁体42bとを備えている。その弁体42bが回転軸44周りに一方向に回転することで、又は揺動することで通路25の開閉が行われる。
また、吸気制御バルブ42は、弁体42bが回転しても開度が閉じたままとなる作動領域を有している。具体的には、弁箱42aの筒側面には外側に弧状に膨らんだ弧状部42cが形成されている。弁体42bがその弧状部42cの角度範囲θで回転しているときには吸気制御バルブ42の開度は閉じた状態から変化しないようになっている。なお、角度範囲θは何度であっても良いが、例えば90°とすることができる。以下では、弧状部42cを開度不変領域と言う。
図1に示すように、4つの吸気制御バルブ42(厳密には弁体42b)は1つの(共通の)回転軸44に接続されている。その回転軸44は、回転軸44を回転駆動するモータ43が接続されている。つまり、モータ43が回転すると回転軸44が回転し、その回転軸44の回転により4つの吸気制御バルブ42(弁体42b)が同時に作動するようになっている。なお、モータ43に代えて、他の方式のアクチュエータ(例えば油圧シリンダなど)で回転軸44を回転、つまり吸気制御バルブ42を作動させても良いし、エンジン10の回転を利用して吸気制御バルブ42を作動させても良い。エンジン10の回転を利用して吸気制御バルブ42を作動させる場合には、例えば、エンジン10のクランク軸と回転軸44とをベルト等の連結部材で連結して、エンジン10の回転により回転軸44を回転させるようにする。
また、各吸気制御バルブ42に接続して、各吸気制御バルブ42間に開度の位相差を与える位相調整機構45が設けられている。その位相調整機構45が作動しない通常状態のときには、回転軸44の回転に対して4つの吸気制御バルブ42間で同じ開度で変化するように、つまり同位相の開度で変化するように、各吸気制御バルブ42は回転軸44に接続されている。そして、位相調整機構45が作動すると、4つの吸気制御バルブ42間で予め定められた開度の位相差が付与されるようになっている。詳細には、4つの気筒111〜114のうち、吸気行程が隣り合わない気筒111、114への吸気を制御する吸気制御バルブ421、424の組と、同じく吸気行程が隣り合わない気筒112、113への吸気を制御する吸気制御バルブ422、423の組との間で、位相調整機構45により開度の位相差が付与されるようになっている。
エンジンシステム1には、吸気制御バルブ42を含む各バルブ(スロットル33、EGRバルブ35、41、吸気バルブ14、排気バルブ15など)の開閉(開閉時期や開度など)やインジェクタなどを制御することでエンジン10の運転を制御するECU50が設けられている。そのECU50は、CPU、ROM、RAM等を備えたコンピュータを主として構成されている。ECU50には、エンジン10の回転数を検出する回転数センサ61や、車両を運転する運転者の要求トルクを車両側に知らせるための運転操作部に相当するアクセルペダルの操作量(踏み込み量)を検出するアクセルセンサ62が接続されている。そして、ECU50は、それらセンサから入力されたエンジン回転数、アクセルペダルの操作量等に基づき、燃料噴射時期や噴射量や目標EGR率を決定したり、吸気制御バルブ42等のバルブの開閉を制御したりする。また、ECU50は、位相調整機構45の作動を制御して、吸気制御バルブ421〜424間の開度を同位相の状態と位相差がある状態との間で切り替える。また、ECU50は、自身が実行する処理のプログラム等の各種情報を記憶したROM、RAM等のメモリ51を備えている。なお、ECU50による吸気制御(吸気制御バルブ42の開閉制御)は本発明の特徴部分であるので、後に詳細に説明する。
図1のエンジンシステム1は1つのモータ43、1つの回転軸44で4つの吸気制御バルブ42を作動させる1軸方式のシステムであるが、その図1のシステムの他に、図3、図4のエンジンシステムを採用することもできる。なお、図3、図4において、図1のエンジンシステム1と同じ構成には同一符号を付している。図3のエンジンシステム2は、吸気行程が隣り合わない気筒111、114の吸気制御バルブ421、424の組と、同じく吸気行程が隣り合わない気筒112、113の吸気制御バルブ422、423の組に分けて、各組を他の組から独立して作動できるようにした2軸方式のシステムである。具体的には、エンジンシステム2には、1番目の吸気制御バルブ421と4番目の吸気制御バルブ424とが接続された第1の回転軸441と、その第1の回転軸441を回転駆動する第1のモータ431とが設けられている。それら第1の回転軸441、第1のモータ431により、2つの吸気制御バルブ421、424が同時に作動するようになっている。なお、吸気制御バルブ421、424は、第1の回転軸441の回転により互いに同じ開度で変化するように、つまり、同じ位相で第1の回転軸441に接続されている。
エンジンシステム2には、2番目の吸気制御バルブ422と3番目の吸気制御バルブ423とが接続された第2の回転軸442と、その第2の回転軸442を回転駆動する第2のモータ432とが設けられている。それら第2の回転軸442、第2のモータ432により、2つの吸気制御バルブ422、423が同時に作動するようになっている。なお、吸気制御バルブ422、423は、第2の回転軸442の回転により互いに同じ開度で変化するように、つまり、同じ位相で第2の回転軸442に接続されている。モータ431、432、回転軸441、442以外の構成は図1と同じである。
図4のエンジンシステム3は、各吸気制御バルブ421〜424ごとにモータ433〜436が接続された4軸方式のシステムである。すなわち、エンジンシステム3では、モータ433〜436により、各吸気制御バルブ421〜424を他の吸気制御バルブから独立して作動できるようになっている。モータ433〜436以外の構成は図1と同じである。
次に、図1、図3、図4のECU50による吸気制御バルブ42の開閉制御の詳細を説明する。ECU50はエンジン10から排出されるエミッションを抑制するために、EGRリーンガスとEGRリッチガスとが筒内で成層分布するように、それらEGRリーンガス、EGRリッチガスを筒内に吸入させている。詳細には、EGRリーンガスは、吸気行程の間中、スワール生成ポート12から筒内に吸入され続ける。他方、EGRリッチガスは吸気行程の前半は吸入を停止し、後半から筒内に吸入されるように、ECU50は、吸気バルブ14の開閉タイミングに合わせて吸気制御バルブ42の開閉(厳密にはモータ43(図1)、431、432(図3)、433〜436(図4)の回転)を制御する。
図5を参照してさらに吸気制御バルブ42の開閉制御を説明する。図5は、吸気行程において吸気制御バルブ42をどのように開閉させるかを説明する図である。詳細には、図5は、クランク角に対する吸気バルブ14のリフト量の変化(図5(A))、吸気制御バルブ42の弁体42b(図2参照)の回転角の変化(図5(B))、吸気制御バルブ42の開度の変化(図5(C))、各吸気ポート12、13から吸入されるガスの流量の変化(図5(D))を示している。なお、図5(A)〜(D)間で横軸のクランク角が同じとなっている。また、図5(B)には、図2の吸気制御バルブ42を用いたときの回転角の変化201(実線)の他に、図2の開度不変領域42cが無いタイプの通常のバルブを用いたときのそのバルブの回転角の変化202(破線)を示している。また、図5(B)において、図2に示すように、弁体42bが通路に対して直角の位置にある状態、言い換えると、弁体42bが開度不変領域42cの中央に位置している状態を、吸気制御バルブ42の回転角0°としている。
また、図5(C)において、吸気制御バルブ42が閉じている状態、つまり、開度不変領域42cにある状態をバルブ開度0°とし、図6に示すように吸気制御バルブ42が全開している状態をバルブ開度90°としている。また、図5(D)において、符号「203」のラインは、スワール生成ポート12から吸入されるガス、つまりEGRリーンガスの吸気流量の変化を示している。符号「204」のラインは、タンブル生成ポート13から吸入されるガス、つまりEGRリッチガスの吸気流量の変化を示している。
図5(A)で吸気バルブ14がリフトしている期間が吸気行程を示している。図5(B)のライン201で示すように、ECU50は、吸気行程の比較的早い時点からモータ43(図1の場合)の回転駆動を開始して、吸気制御バルブ42を作動させる。このとき、吸気制御バルブ42は最初は開度が変わらない開度不変領域42c(図2参照)で作動するので、図5(C)に示すように、吸気行程の途中までは閉じたままとなる。その後、吸気制御バルブ42が、図7に示すように開度不変領域42cの終了位置の角度θ1(例えば45°)まで回転したとき、つまり、吸気行程の途中から吸気制御バルブ42が開き始める(図5(C)参照)。その後、吸気制御バルブ42は最終的に全開になる。
これに対して、図8に示す通常のバルブ46を用いた場合、図5(C)のようにバルブ開度を変化させようとするには、図5(B)のライン202で示すように、吸気行程の後半からバルブ46の作動を開始する必要がある。吸気行程の前半からバルブ46を作動させてしまうと、吸気行程の前半からEGRリッチガスが吸入されてしまい、所望の成層分布を達成できなくなるからである。
このように、作動しても閉じたままとなる作動領域を有した吸気制御バルブ42を用いることで、図8の通常のバルブ46を用いたときに比べて、閉から開に又は開から閉に要する応答時間を長くできる。つまり、バルブの応答性を緩和できる。言い換えると、応答が低速のバルブ42を採用でき、結果、コストが増加するのを抑制できる。
図5(D)のライン203で示すように、EGRリーンガスは、吸気行程の間中(吸気行程の前半、後半ともに)、吸入され続ける。これに対し、ライン204で示すように、EGRリッチガスは、図5(B)、(C)のように吸気制御バルブ42が制御される結果、吸気行程の前半よりも後半で吸気流量が増加している。なお、図5(D)では、吸気行程の前半にもEGRリッチガスが多少吸入されていることを示しているが、これは吸気制御バルブ42の漏れなどによるものであり、意図した吸入ではない。
また、図9は、スワール生成ポート12から筒内110に吸入されるガスの流れ(スワール流)と、タンブル生成ポート13から吸入されるガスの流れ(タンブル流)とを模式的に示している。図9に示すように、スワール流(EGRリーンガス)は筒内110の外周寄りに吸入されるのに対し、タンブル流(EGRリッチガス)は筒内110の中央寄りに吸入される。その結果、図10に示すように、吸気行程終了時(圧縮行程開始時)では、筒内110の下部(ピストン16側)にEGRリーンガスgleanが配置され、上部(吸気バルブ側)にEGRリッチガスgrichが配置される。詳細には、筒内110の上部の中央付近にEGRリッチガスgrichが配置され、そのEGRリッチガスgrichの周りにEGRリーンガスgleanが配置される。このように、圧縮行程開始時に、EGRリーンガスgleanとEGRリッチガスgrichとを筒内110で層状に分布させることができる。
その後、圧縮行程の終了時になると、図11に示すように、インジェクタ47の直下の中央エリア163にEGRリッチガスgrichを、つまり、排気濃度が高い(酸素濃度が低い)ガスを配置できる。また、中央エリア163の周りのスキッシュエリア162(ピストン16の上面外周部とエンジンヘッドの間のエリア)にEGRリーンガスgleanを配置できる。さらに、ピストン16の上面にはキャビティ161が形成されており、そのキャビティ161の底面(以下、キャビティ底面161という)にEGRリーンガスgleanを配置できる。中央エリア163は、酸素量が多くかつ温度が高くなりやすいエリアであり、窒素と酸素が結びついてNOxが発生しやすいエリアとなっている。これに対し、キャビティ底面161やスキッシュエリア162は、酸素量が少なくスモーク(煤)が発生しやすいエリアである。よって、中央エリア163に配置された、酸素濃度が低いEGRリッチガスgrichの層はNOxの低減に寄与し、スキッシュエリア162及びキャビティエリア161に配置された、酸素濃度が高いEGRリーンガスgleanの層はスモークの低減に寄与する。つまり、図11のように層状に配置することで、エミッション(NOx、スモーク)を低減できる。
上述したように、エンジン10は、気筒111〜114間で吸気、圧縮、燃焼、排気の行程をずらして実行している。そのため、図1のECU50は、各吸気制御バルブ421〜424の開度が、対応する気筒111〜114の吸気行程の前半よりも後半で大きくなるように、回転軸44の回転制御(モータ43の駆動制御)を行っている。以下、その回転制御の詳細を説明する。
図12は、図1のECU50による回転軸44の回転制御の第1例を説明する図である。この第1例は、4つの吸気制御バルブ421〜424が回転軸44の回転に対して同位相で変化する場合における回転軸44の回転制御である。つまり、位相調整機構45を作動させない場合における回転軸44の回転制御である。図12(A)は、クランク角に対する各気筒111〜114の吸気バルブ14のリフト量の変化を示している。なお、図12以降の図では、1番目の気筒111を「1気筒」、2番目の気筒112を「2気筒」、3番目の気筒113を「3気筒」、4番目の気筒114を「4気筒」としている。また、図12(A)では、各気筒の吸気行程が180°CAずれて行われる例を示している。すなわち、0°〜180°CAの期間に1気筒(気筒111)の吸気行程が行われ、180°〜360°CAの期間に3気筒(気筒113)の吸気行程が行われ、360°〜540°CAの期間に4気筒(気筒114)の吸気行程が行われ、540°〜720°CAの期間に2気筒(気筒112)の吸気行程が行われる。
図12(B)は、クランク角に対する回転軸44の回転角の変化を示している。なお、図12(B)に示すライン上の○の点の横に示した角度は、回転軸44の回転角を示している。また、図12(C)は、回転軸44が図12(B)のように回転制御されたときのクランク角に対する吸気制御バルブ421〜424の開度の変化を示している。なお、図12(A)〜(C)間で横軸のクランク角は同じである。
この第1例では、ECU50は位相調整機構45(図1参照)を作動させない。そして、ECU50は、図12(B)に示すように回転軸44の回転角がクランク角に対して変化するようにモータ43を駆動制御する。具体的には、ECU50は、エンジン10の回転数と同期させて、つまり、クランク角の変化と同じ角度だけ回転するように、回転軸44を1方向に回転させる。なお、図12(B)では、吸気制御バルブ42が図13に示す開度不変領域42cの開始位置(回転軸の回転角が−θ1(例えば−45°))から作動開始している例を示している。
例えば、1気筒の吸気行程の期間(0°〜180°CA)では、回転軸44は、回転角が−θ1から−θ1+180°まで回転、つまり、180°分だけ回転されることになる(図12(B)参照)。このとき、1気筒の吸気制御バルブ421は、図12(C)の0°〜180°CAの期間のラインで示すように、作動開始後しばらくの間は開度不変領域42c(図13参照)で作動するので、開度は0°(閉弁)のままとなる。その後、吸気制御バルブ421は、開度不変領域42cを通過すると、吸気行程の途中から開き始め、吸気行程が終わる前の時点で全開(開度90°)となる。さらにその後、吸気行程の終了時に図13の状態に戻るように、つまり閉弁(開度0°)するように、吸気制御バルブ421は閉じていく。これによって、1気筒の吸気行程終了時に1気筒の筒内においてEGRリーンガスとEGRリッチガスとを図10のように成層分布させることができる。
なお、クランク角が0°〜180°CAの期間では、1気筒以外の気筒(2〜4気筒)の吸気制御バルブ422〜424も、吸気制御バルブ421と同じように開度変化する。しかし、クランク角が0°〜180°CAの期間では、2〜4気筒の吸気行程が行われない、つまり吸気バルブ14が閉じたままなので、吸気制御バルブ422〜424が開いたとしてもそれら2〜4気筒に吸入されることはない。
ECU50は、1気筒に後続して行われる3気筒、4気筒、2気筒の吸気行程においても、1気筒のときと同様に、1回の吸気行程の期間で180°回転するように回転軸44を回転させる(図12(B)参照)。これによって、3気筒の吸気行程の期間180°〜360°では3気筒の吸気制御バルブ423を、4気筒の吸気行程の期間360°〜540°では4気筒の吸気制御バルブ424を、2気筒の吸気行程の期間540°〜720°では2気筒の吸気制御バルブ422を、図12(C)に示すように吸気行程の後半で開き、吸気行程の終了時に閉弁することができる。よって、2〜4気筒の吸気行程終了時に2〜4気筒の筒内においてEGRリーンガスとEGRリッチガスとを図10のように成層分布させることができる。
この第1例では、各吸気行程終了時には、吸気制御バルブ421〜424を閉弁するようにしているので、後続して行われる他の気筒の吸気行程の開始時からEGRリッチガスが筒内に吸入されてしまうのを防止できる。また、この第1例では、吸気制御バルブ421〜424間で位相差をつける必要がないので、位相調整機構45(図1参照)を省略でき、簡易な構成で成層化を実現できる。
図14は、図1のECU50による回転軸44の回転制御の第2例を説明する図である。詳細には、図14(A)は図12(A)と同じ図である。図14(B)は、クランク角に対する回転軸44の回転角の変化を示している。図14(C)は、1気筒の吸気制御バルブ421及び4気筒の吸気制御バルブ424におけるクランク角に対する開度の変化を示している。図14(D)は、2気筒の吸気制御バルブ422及び3気筒の吸気制御バルブ423におけるクランク角に対する開度の変化を示している。
この第2例では、吸気行程が隣り合わない1気筒、4気筒の吸気制御バルブ421、424の組と、同じく吸気行程が隣り合わない2気筒、3気筒の吸気制御バルブ422、423の組との間で90°の位相差をつけている。図15、図16は、吸気制御バルブ421、424の組と、吸気制御バルブ422、423の組との間で位相差が90°となっている状態を示した図である。詳細には、図15は、回転軸44を上から見たときの各吸気制御バルブ421〜424の位相の違いを図形の違いであらわした図である。すなわち、図15では、吸気制御バルブ421、424の図形が円形で同じとされ、吸気制御バルブ422、423の図形が長方形で同じとされている。そして、吸気制御バルブ422、423の図形(長方形)は、吸気制御バルブ421、424に対して位相が90°異なっていることを示している。図16は、回転軸44の軸方向から見たときの各吸気制御バルブ421〜424を示した図である。
この第2例では、ECU50は位相調整機構45(図1参照)を作動させて、吸気制御バルブ421、424の組と、吸気制御バルブ422、423の組との間の位相差を90°に変更する(図15、図16参照)。なお、第2例を採用する場合には、位相調整機構45が作動することで位相差が90°となるように、その位相調整機構45を構成しておく。そして、ECU50は、図14(B)に示すように回転軸44の回転角が変化するようにモータ43を駆動制御する。具体的には、ECU50は、エンジン10が1回転する間に1/2回転するように、言い換えると、クランク角の2分の1の回転角で回転するように、回転軸44を1方向に回転させる。なお、図14(B)では、吸気制御バルブ421〜424が図16の状態にあるとき、つまり、吸気制御バルブ421、424が開度不変領域42cの中央に位置し、吸気制御バルブ422、423が全開のときから回転軸44の回転を開始している。
図14(B)のように回転軸44を回転させることで、1気筒、4気筒の吸気制御バルブ421、424は、図14(C)に示すように、1気筒、4気筒の吸気行程の期間において、吸気行程開始後しばらくの間は開度は0°(閉弁)のままとなり、吸気行程の途中から開き始めて、吸気行程終了時で全開(開度90°)となる。これによって、1気筒、4気筒の吸気行程終了時に1気筒、4気筒の筒内においてEGRリーンガスとEGRリッチガスとを図10のように成層分布させることができる。その後、吸気制御バルブ421、424は、隣りの3気筒、2気筒の吸気行程の期間にずれ込む形で閉じていき、その吸気行程の途中で閉弁する。このとき、3気筒、2気筒の吸気制御バルブ423、422は、吸気制御バルブ421、424と位相が90°異なっているので、3気筒、2気筒の吸気行程の前半で開いてしまうことがない(図14(D)参照)。
他方、2気筒、3気筒の吸気制御バルブ422、423は、吸気制御バルブ421、424と位相が90°異なっているので、図14(D)に示すように、吸気制御バルブ421、424のバルブ開度(図14(C))と反対のバルブ開度で作動する。すなわち、吸気制御バルブ422、423は、2気筒、3気筒の吸気行程の期間において、吸気行程開始後しばらくの間は閉じたままとなり、吸気行程の途中から開き始めて、吸気行程終了時で全開となる。これによって、2気筒、3気筒の吸気行程終了時に2気筒、3気筒の筒内においてEGRリーンガスとEGRリッチガスとを図10のように成層分布させることができる。その後、吸気制御バルブ422、423は、隣りの1気筒、4気筒の吸気行程の期間にずれ込む形で閉じていき、その吸気行程の途中で閉弁する。このとき、1気筒、4気筒の吸気制御バルブ421、424は、吸気制御バルブ422、423と位相が90°異なっているので、1気筒、4気筒の吸気行程の前半で開いてしまうことがない。
この第2例では、回転軸44をエンジン回転数の半分の回転数で回転させれば良いので、第1例に比べて吸気制御バルブ421〜424の応答性を緩和できる。よって、コスト増加をより抑えることができる。
図17は、図1のECU50による回転軸44の回転制御の第3例を説明する図である。詳細には、図17(A)は図12(A)と同じ図である。図17(B)は、クランク角に対する回転軸44の回転角の変化を示している。図14(C)は1気筒の吸気制御バルブ421におけるクランク角に対する開度の変化を示している。図14(D)は3気筒の吸気制御バルブ423におけるクランク角に対する開度の変化を示している。図14(E)は4気筒の吸気制御バルブ424におけるクランク角に対する開度の変化を示している。図14(F)は2気筒の吸気制御バルブ422におけるクランク角に対する開度の変化を示している。
この第3例では、吸気行程が行われる気筒の吸気制御バルブ順に、つまり、1気筒の吸気制御バルブ421、3気筒の吸気制御バルブ423、4気筒の吸気制御バルブ424、2気筒の吸気制御バルブ422の順に、位相を45°ずつ変えている。図18、図19は、吸気制御バルブ421〜424間で位相を45°ずつ変えている状態を示した図である。詳細には、図18は図15と同様の図である。図18では、隣り合う2つの図形(吸気制御バルブの図形)間で位相が45°異なっていることを示している。図19は、図16と同様の図である。
この第3例では、ECU50は位相調整機構45(図1参照)を作動させて、1気筒、3気筒、4気筒、2気筒の吸気制御バルブ421、423、424、422の順に位相を45°ずつ変える(図18、図19参照)。なお、第3例を採用する場合には、位相調整機構45が作動することで位相が45°ずつ変わるように、その位相調整機構45を構成しておく。そして、ECU50は、図17(B)に示すように回転軸44の回転角が変化するようにモータ43を駆動制御する。具体的には、ECU50は、エンジン10が1回転する間で1/4回転するように、言い換えると、クランク角の変化に対して4分の1の回転角で回転するように、回転軸44を1方向に回転させる。なお、図17(B)では、吸気制御バルブ421〜424が図19の状態にあるとき、つまり、吸気制御バルブ421が開度不変領域42cの終了位置にあり、吸気制御バルブ423が開度不変領域42cの中央位置にあり、吸気制御バルブ424が開度不変領域42cの開始位置にあり、吸気制御バルブ422が全開の位置にあるときから、回転軸44の回転を開始している。なお、開度不変領域42cの角度範囲は90°としている。
図17(B)のように回転軸44を回転させることで、各吸気制御バルブ421〜424は、図17(C)〜(F)に示すように、各吸気制御バルブ421〜424が担当する各吸気行程の期間において、吸気行程開始から徐々に開き始めて、吸気行程終了時で全開となる。つまり、吸気行程の前半よりも後半でバルブ開度が大きくなる。これによって、各気筒の吸気行程終了時に、各気筒の筒内においてEGRリーンガスとEGRリッチガスとを図10のように成層分布させることができる。その後、各吸気制御バルブ421〜424は、隣りの気筒の吸気行程にずれ込む形で閉じていき、その吸気行程の終了時で閉弁する。
この第3例では、吸気行程の前半にも多少はEGRリッチガスが吸入されてしまうものの、回転軸44をエンジン回転数の4分の1の回転数で回転させれば良く、第1例、第2例に比べて吸気制御バルブ421〜424の応答性を緩和できる。よって、コスト増加をより抑えることができる。
上記第1例〜第3例では、回転軸44を1方向に回転制御する例であったが、回転軸44を搖動させる(1方向にある量だけ回転させた後、逆方向にある量だけ回転させる)ことで、吸気制御バルブ421〜424を開閉させても良い。図20は、回転軸44を搖動させる制御の一例であり、図1のECU50による回転軸44の回転制御の第4例を説明する図である。詳細には、図20(A)は図12(A)と同じ図である。図20(B)は、クランク角に対する回転軸44の回転角の変化を示している。図20(C)は、吸気制御バルブ421〜424のクランクに対する開度の変化を示している。
この第4例では、ECU50は位相調整機構45(図1参照)を作動させないで、吸気制御バルブ421〜424を同位相にしておく。そして、ECU50は、図20(B)に示すように回転軸44の回転角が変化するようにモータ43を駆動制御する。なお、図20(B)の縦軸の回転角は、吸気制御バルブ421〜424が図21の符号「42d」の位置にあるとき、つまり開度不変領域42cの終了位置にあるときを45°とし、符号「42e」の位置にあるとき、つまり全開の位置にあるときを90°としている。図20(B)に示すように、ECU50は、各気筒の吸気行程開始時に回転軸44の回転角を45°の状態、つまり各吸気制御バルブ421〜424を開度不変領域42cの終了位置にしておく。そして、ECU50は、吸気行程開始後しばらくの間は、回転角45°の状態に保持しておき、つまり回転軸44を回転させないようにし、吸気行程の途中から回転軸44を回転させ始め、吸気行程が終了する前に回転角90°の状態にする。その後、ECU50は、回転軸44を反対の方向に回転させて、吸気行程終了時には回転角45°の状態に戻るようにする。つまり、ECU50は、吸気制御バルブ421〜424を、図21の符号「42d」の状態と、符号「42e」の状態との間で搖動させる。
図20(B)のように回転軸44を回転させることで、吸気制御バルブ421〜424は、図20(C)で示すように、吸気行程の途中までは閉じ、吸気行程の途中から全開まで開き、その後、吸気行程終了時に閉弁する。これによって、吸気行程終了時に、各気筒の筒内においてEGRリーンガスとEGRリッチガスとを図10のように成層分布させることができる。
この第4例では、吸気制御バルブ421〜424を開度不変領域42c(図21参照)では作動させていないものの、回転軸44を45°回転させるだけで、吸気制御バルブ421〜424を閉弁から全開に、及び全開から閉弁にすることができる。よって、通常のバルブ46(図8参照)を搖動させる場合に比べて、吸気制御バルブ421〜424の応答性を緩和できる。
図22は、回転軸44を搖動させる制御の別例であり、図1のECU50による回転軸44の回転制御の第5例を説明する図である。詳細には、図22(A)は図12(A)と同じ図である。図22(B)は、クランク角に対する回転軸44の回転角の変化を示している。図22(C)は、1気筒、4気筒の吸気制御バルブ421、424におけるクランク角に対する開度の変化を示している。図22(D)は、2気筒、3気筒の吸気制御バルブ422、423におけるクランク角に対する開度の変化を示している。
この第5例では、上記第2例(図14参照)に対して回転軸44の回転制御を1方向の回転から搖動に変更している。すなわち、ECU50は位相調整機構45(図1参照)を作動させて、吸気制御バルブ421、424の組と、吸気制御バルブ422、423の組との間で位相を90°ずらす(図15、図16参照)。そして、ECU50は、図22(B)の回転角で変化するように回転軸44を搖動させる。なお、図22(B)では、吸気制御バルブ421〜424が図16の状態にあるとき、つまり、吸気制御バルブ421、424が開度不変領域42cの中央位置にあり、吸気制御バルブ422、423が全開の位置にあるときから回転軸44の搖動を開始している。また、図22(B)の縦軸の回転角は、吸気制御バルブ421〜424が図23の符号「42f」の位置にあるとき、つまり開度不変領域42cの中央位置にあるときを0°とし、符号「42g」の位置にあるとき、つまり全開の位置にあるときを90°としている。
具体的には、ECU50は、図22(A)、(B)に示すように、1気筒、4気筒の吸気行程の期間では、吸気行程開始時から回転軸44を図23の紙面で時計まわりに回転させて、吸気行程終了時に回転角90°の状態にする。その後の2気筒、3気筒の吸気行程の期間では、吸気行程開始時から回転軸44を図23の紙面で反時計まわりに回転させて、吸気行程終了時に回転角0°の状態にする。つまり、ECU50は、吸気制御バルブ421〜424を、図23の符号「42f」の状態と、符号「42g」の状態との間で搖動させる。
図22(B)のように回転軸44を搖動させることで、1気筒、4気筒の吸気制御バルブ421、424は、図22(C)に示すように、第2例(図14(C)参照)と同じように開度が変化する。また、2気筒、3気筒の吸気制御バルブ422、423は、図22(D)に示すように、第2例(図14(D)参照)と同じように開度が変化する。これによって、吸気行程終了時に、各気筒の筒内においてEGRリーンガスとEGRリッチガスとを図10のように成層分布させることができる。
この第5例では、クランク角が180°変化する間に回転軸44を90°だけ回転させれば良いので、通常のバルブ46(図8参照)を搖動させる場合に比べて、吸気制御バルブ421〜424の応答性を緩和できる。
図24は、回転軸44を搖動させる制御の別例であり、図1のECU50による回転軸44の回転制御の第6例を説明する図である。詳細には、図24(A)は図12(A)と同じ図である。図24(B)は、クランク角に対する回転軸44の回転角の変化を示している。図24(C)は、1気筒、4気筒の吸気制御バルブ421、424におけるクランク角に対する開度の変化を示している。図24(D)は、2気筒、3気筒の吸気制御バルブ422、423におけるクランク角に対する開度の変化を示している。
この第6例では、ECU50は、位相調整機構45(図1参照)を作動させて、図25に示すように、吸気制御バルブ421、424の組と、吸気制御バルブ422、423の組との間で位相を45°ずらしている。なお、図25では、吸気制御バルブ421、424は開度不変領域42cの終了位置にあり、吸気制御バルブ422、423は全開の位置にある状態を示している。そして、ECU50は、図24(B)の回転角で変化するように回転軸44を搖動させる。なお、図24(B)では、吸気制御バルブ421〜424が図25の状態にあるときから回転軸44の搖動を開始している。また、図24(B)の回転角は、吸気制御バルブ421、424が開度不変領域42cの終了位置にあるとき(吸気制御バルブ422、423は全開の位置にあるとき)を45°とし、吸気制御バルブ421、424が全開の位置にあるとき(吸気制御バルブ422、423は開度不変領域42cの開始位置にあるとき)を90°としている。
具体的には、ECU50は、図24(A)、(B)に示すように、1気筒、4気筒の吸気行程の期間では、吸気行程開始時からしばらくの間は回転角45°の状態に回転軸44を保持、つまり回転軸44を作動させないようにする。その後、ECU50は、1気筒、4気筒の吸気行程の途中から回転軸44を図25の紙面で時計まわりに回転させて、吸気行程の終了前で回転角90°の状態にする。その後、ECU50は、3気筒、2気筒の吸気行程にずれ込む形で回転角90°の状態に回転軸44を保持する。その後、ECU50は、3気筒、2気筒の吸気行程の途中から図25の紙面で反時計まわりに回転させて、その吸気行程の終了前に回転角45°の状態にする。その後、ECU50は、1気筒、4気筒の吸気行程にずれ込む形で回転角45°の状態に回転軸44を保持する。この第6例では、第4例(図20参照)と同様に、回転軸44を回転角0°と45°の間で搖動させているが、搖動させるタイミングが第4例と異なっている。
図24(B)のように回転軸44を搖動させることで、1気筒、4気筒の吸気制御バルブ421、424は、図24(C)に示すように、1気筒、4気筒の吸気行程の途中までは閉じた状態となり(開度0°)、吸気行程の途中から開き始めて吸気行程の終了前に全開(開度90°)の状態になる。その後、吸気制御バルブ421、424は、しばらくの間(3気筒、2気筒の吸気行程にずれ込む形で)全開の状態を維持する。その後、吸気制御バルブ421、423は、3気筒、2気筒の吸気行程の途中から閉じ始めて、その吸気行程の終了前に閉弁(開度0°)の状態になる。その後、吸気制御バルブ421、424は、しばらくの間、その閉弁の状態を維持する。
他方、2気筒、3気筒の吸気制御バルブ422、423は、吸気制御バルブ421、424と位相が45°ずれていることにより、図24(D)に示すように、吸気制御バルブ421、424と反対の開度で変化する。すなわち、吸気制御バルブ422、423は、2気筒、3気筒の吸気行程の途中から開いて、その吸気行程の終了前に全開になる。その後、吸気制御バルブ422、423は、しばらくの間全開の状態に維持した後、1気筒、4気筒の吸気行程にずれ込む形で閉じる。
これによって、吸気行程終了時に、各気筒の筒内においてEGRリーンガスとEGRリッチガスとを図10のように成層分布させることができる。
この第6例では、図24(B)に示すように、吸気行程の一部期間で回転軸44を45°だけ回転させれば良いので、通常のバルブ46(図8参照)を搖動させる場合に比べて、吸気制御バルブ421〜424の応答性を緩和できる。この一部期間を長くとるほど応答性を緩和できるが、長くとりすぎて回転角を45°、90°の状態に保持する期間が短くなると、吸気行程の開始直後からEGRリッチガスが吸入されることになる。
以上の第1例〜第6例によれば、4つの吸気制御バルブ421〜424の開閉を各気筒の吸気行程に合わせて1つのモータ43だけで制御することができるので、システム構成を簡素にでき、コストを抑えることができる。
一方、図3、図4のエンジンシステム2、3でも上述の第1例〜第6例と同様の制御を行うことができる。具体的には例えば図12の第1例又は図20の第4例のように吸気制御バルブ421〜424を開閉させる場合には、図3、図4のECU50は、各モータ431、432の回転軸441、442(図3の場合)、モータ433〜436の回転軸(図4の場合)を、図12(B)のように回転させ、又は図20(B)のように搖動させれば良い。このとき、図3のECU50は、第1の回転軸441を回転させるときには、2気筒、3気筒の吸気行程の期間ではその回転を停止するようにしても良い。同様に、図3のECU50は、第2の回転軸442を回転させるときには、1気筒、4気筒の吸気行程の期間ではその回転を停止するようにしても良い。同様に、図4のECU50は、1気筒のモータ433を回転させるときには2〜4気筒の吸気行程の期間で、2気筒のモータ434を回転させるときには1、3、4気筒の吸気行程の期間で、3気筒のモータ435を回転させるときには1、2、4気筒の吸気行程の期間で、4気筒のモータ436を回転させるときには1〜3気筒の吸気行程の期間で回転を停止するようにしても良い。
また例えば、図3、図4のエンジンシステム2、3において、図14の第2例のように吸気制御バルブ421〜424を開閉させる場合には、図3のECU50は、図26(B)に示すように、第1の回転軸441に対してはライン205で示す回転角で変化するように回転制御する。他方、第2の回転軸442に対してはライン206で示す回転角で変化するように回転制御をすれば良い。ライン206は、ライン205よりもクランク角に対する回転角の位相が90°遅れている。なお、図26は、ライン206が追加されている点以外は図14と同じである。同様に、図4のECU50は、1気筒、4気筒のモータ431、434の回転軸に対しては図26(B)のライン205のように回転制御し、2気筒、3気筒のモータ432、433の回転軸に対してライン206のように回転制御すれば良い。これによって、1気筒、4気筒の吸気制御バルブ421、424は、図26(C)のように開度が変化し、2気筒、3気筒の吸気制御バルブ422、423は、図26(D)のように開度が変化する。
また例えば、図3、図4のエンジンシステム2、3において、図22の第5例のように吸気制御バルブ421〜424を開閉させる場合には、図3、図4のECU50は、1気筒、4気筒のモータ431の回転軸441(図3の場合)、モータ431、434の回転軸(図4の場合)に対しては、図22(B)のように回転制御する。他方、2気筒、3気筒のモータ432の回転軸442(図3の場合)、モータ432、433の回転軸(図4の場合)に対しては、図22(B)のラインから回転角の位相が90°ずれるように、回転制御すれば良い。これによって、1気筒、4気筒の吸気制御バルブ421、424は、図22(C)のように開度が変化し、2気筒、3気筒の吸気制御バルブ422、423は、図22(D)のように開度が変化する。
また例えば、図3、図4のエンジンシステム2、3において、図17の第3例のように吸気制御バルブ421〜424を開閉させる場合には、図3、図4のECU50は、図27(B)に示すように、第1の回転軸441(図3の場合)、モータ431、434の回転軸(図4の場合)に対してはライン207で示す回転角で変化するように回転制御する。他方、第2の回転軸442(図3の場合)、モータ432、433の回転軸(図4の場合)に対してはライン208で示す回転角で変化するように回転制御すれば良い。ライン208は、ライン207よりもクランク角に対する回転角の位相が45°遅れている。なお、図27は、ライン208が追加されている点以外は図17と同じである。このとき、図3のエンジンシステム2を採用する場合には、図1の位相調整機構45と同様の機構を設け、その機構を作動させることで、1気筒の吸気制御バルブ421と4気筒の吸気制御バルブ424との間で位相を90°ずらす。同様に、2気筒の吸気制御バルブ422と3気筒の吸気制御バルブ423の間で位相を90°ずらす。
これによって、1気筒の吸気制御バルブ421は図27(C)のように、3気筒の吸気制御バルブ423は図27(D)のように、4気筒の吸気制御バルブ424は図27(E)のように、2気筒の吸気制御バルブ422は図27(F)のように、開度が変化する。
同様に、図3、図4のエンジンシステム2、3において、図24の第6例のように吸気制御バルブ421〜424を開閉させる場合には、吸気制御バルブ421、424を作動するモータと、吸気制御バルブ422、423を作動するモータとの間で回転角の位相をずらして図24(B)のように回転制御することで、吸気制御バルブ421、424の開度は図24(C)のように、吸気制御バルブ422、423の開度は図24(D)のように変化させることができる。
このように、エンジンシステム2、3では、吸気制御バルブ421〜424を作動させるモータが複数設けられているので、それらモータの駆動をモータ間で異ならせることにより、吸気制御バルブ421〜424間でクランク角に対する開度を異ならせることができる。よって、図27の例を除いて、図1の位相調整機構45を省略できる。
以上説明したように、本実施形態によれば、EGRリーンガスとEGRリッチガスとが別々の吸気ポートから吸入されるので、EGRリッチガスの吸入を制御する吸気制御バルブの開閉の際の応答時間に、それらEGRリーンガス、EGRリッチガスが混合するのを抑制できる。よって、筒内におけるEGR成層化の程度、すなわち吸気行程の後、圧縮行程が終了した段階で最も排気濃度が高い部分(最も酸素濃度が低い部分)と最も排気濃度が低い部分(最も酸素濃度が高い部分)との差を向上できる。また、応答が緩やかな吸気制御バルブを採用できるのでコストを低減できる。また、EGRリーンガスの吸気を制御するバルブを設ける必要がないので、バルブ数を削減できる。
また、吸気制御バルブには作動しても閉じたままとなる開度不変領域が設けられているので、EGRリッチガスの吸入を開始する時点よりも前から吸気制御バルブの作動を開始できる。つまり、吸気制御バルブの応答性を緩和できる。また、成層化を行う際には、各気筒の吸気制御バルブの開度を各気筒の吸気行程に合わせて変更しているので、気筒ごとに成層化を実現できる。また、上記実施形態の一部の実施例では、隣りの吸気行程にずれ込む形で各吸気制御バルブの開閉を行っているので、吸気制御バルブの応答性を一層緩和できる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を上記実施形態と異なる部分を中心に説明する。この第2実施形態は、筒内でのEGR成層化の程度が向上するように目標EGR率に応じて吸気制御バルブの開閉制御を変える実施形態である。本実施形態では、第1実施形態と同じ図1、図3、又は図4のエンジンシステムが適用される。ECU50は、第1実施形態における吸気制御バルブの開閉制御を前提として、目標EGR率に応じて吸気制御バルブの制御の仕方を変更している。以下、本実施形態のECU50による吸気制御バルブ42の開閉制御の詳細を説明する。
図1、図3、図4のエンジンシステム1〜3では、EGRリーンガスが流れる通路とEGRリッチガスが流れる通路とを上流にて接続する接続通路29やEGRバルブ35、41の開度調整により、平均EGR率を調整でき、目標EGR率を達成できるようになっている。しかし、目標EGR率を考慮しないで吸気制御バルブ42を制御するとEGR率によっては接続通路29からEGRリーンガスとEGRリッチガスとの混合が進み、筒内でのEGR成層化の程度が低下してしまう。そのことを図28を参照して説明する。図28は、EGR率が低いときと高いときとで、タンブル生成ポート13から吸入されたEGRリッチガス量に応じてEGR成層化の程度がどのように変化するかを模式的に示した図である。図28において、ライン209がEGR率が低いときを示し、ライン210がEGR率が高いときを示している。
EGR成層化の程度を高くするためには、スワール生成ポート12からはできるだけ排気ガスが混ざっていないガス、つまり新気のまま吸入し、タンブル生成ポート13からはできるだけ新気が混ざっていないガス、つまりEGRガス(排気ガス)のまま吸入するのが望ましい。つまり、EGR成層化の程度を高くするためには、接続通路29を介して吸気通路21から高圧EGR通路24に流入する新気(EGRリーンガス)、高圧EGR通路24から吸気通路21に流入するEGRガス(EGRリッチガス)をできるだけ少なくするのが望ましい。
例えば、目標EGR率が30%であるとすると、スワール生成ポート12からは1回の吸気行程で吸入される総吸入量の70%の新気が吸入され、タンブル生成ポート13からは総吸入量の30%のEGRガスが吸入されたときに、理論上、EGR成層化の程度は最も高くなる。一方で、タンブル生成ポート13から例えば総吸入量の20%のEGRリッチガス(EGRガス)しか吸入されなかった場合には、残り10%分のEGRガスを接続通路29から吸気通路21に流入させる必要がある。そうすると、EGRリーンガス通路22を流れるEGRリーンガスと、EGRリッチガス通路25を流れるEGRリッチガスとの間で排気濃度の差が小さくなってしまい、筒内においてEGR成層化の程度が低下してしまう。
反対に、タンブル生成ポート13から例えば総吸入量の40%のEGRリッチガスが吸入された場合には、そのEGRリッチガスがEGRガスそのものとすると目標EGR率30%を超えてしまうので、接続通路29から高圧EGR通路24に10%分の新気を流入させて、EGRリッチガスの排気濃度を薄める必要がある。この場合も、EGRリーンガスとEGRリッチガスとの間で排気濃度の差が小さくなってしまい、筒内においてEGR成層化の程度が低下してしまう。つまり、目標EGR率を固定とすると、図28の各ライン209、210で示すように、EGRリッチガス量が少なすぎても多すぎてもEGR成層化の程度が低下してしまう。
また、例えば、目標EGR率が40%のときでは、スワール生成ポート12からは1回の吸気行程で吸入される総吸入量の60%の新気が吸入され、タンブル生成ポート13からは総吸入量の40%のEGRガスが吸入されたときに、理論上、EGR成層化の程度は最も高くなる。つまり、目標EGR率が変わると、EGRリッチガス量とEGR成層化の程度の関係も変わる。具体的には、図28に示すように、EGRリッチガス量とEGR成層化の程度の関係を示すラインが、EGR率の増加によりEGRリッチガス量が増加する方向にシフトする。つまり、EGR率が低いときのライン209よりも、EGR率が高いときのライン210のほうが、EGR成層化の程度を同一としたときEGRリッチガス量は大きい。
そのため、図28に示すように、例えばEGR率にかかわらずEGRリッチガス量をX1で固定とした場合には、EGR率が低いとき(ライン209)にはEGR成層化の程度を高くできるものの、EGR率が高くなったときには(ライン210)、EGR成層化の程度が低下してしまう。
そこで、ECU50は、吸気行程終了時に図10のように成層分布するようにEGRリーンガスとEGRリッチガスとを吸入しつつ、つまり、吸気行程の前半より後半で開度が大きくなるように吸気制御バルブ42を制御しつつ、目標EGR率が高いときには、低いときに比べてEGRリッチガス量が増加するように、吸気制御バルブ42の開時期や開度を変えている。図29は、EGR率に応じて吸気制御バルブ42の開時期を変更することを説明する図である。詳細には、図29(A)は、クランク角に対する吸気バルブ14(図1、図3、図4参照)のリフト量の変化を示している。図29(A)においてリフト量が変化しているクランク角の期間が吸気行程を示している。図29(B)は、EGR率が低いときにおけるクランク角に対する吸気制御バルブ42の開度の変化を示している。図29(C)は、EGR率が高いときにおけるクランク角に対する吸気制御バルブ42の開度の変化を示している。なお、図29(A)〜(C)間で、横軸のクランク角が同じである。
また、図30は、EGR率に応じて吸気制御バルブ42の開度を変更することを説明する図である。詳細には、図30(A)は、図29(A)と同じ図である。図30(B)は、EGR率が低いときにおけるクランク角に対する吸気制御バルブ42の開度の変化を示している。図30(C)は、EGR率が高いときにおけるクランク角に対する吸気制御バルブ42の開度の変化を示している。なお、図30(A)〜(C)間で、横軸のクランク角が同じである。また、図30(B)、(C)では、吸気制御バルブ42をある開度まで開いた後、その開度で一定になっているが、一定の開度に制御する趣旨ではなく、吸気制御バルブ42を開いた後の開度はこの図30(B)、(C)では問題にしていない趣旨である。
ECU50は、図29、図30に示すように、EGR率が高いときには、低いときに比べて、吸気行程中における吸気制御バルブ42の開時期を進角させたり、開度を大きくしたりする。なお、ECU50は、図29のようにEGR率に応じて開時期だけを変更しても良いし、図30のようにEGR率に応じて開度だけを変更しても良いし、開時期と開度の両方を変更しても良い。
図31は、図29(B)、図30(B)のように、EGR率が高いときに比べて吸気制御バルブ42の開時期を遅角し、または開度を小さくした場合、つまりEGR率が低い場合における、クランク角に対する吸気流量の変化を示している。図31のライン211は、スワール生成ポート12から吸入されるEGRリーンガスの吸気流量を示している。ライン212は、タンブル生成ポート13から吸入されるEGRリッチガスの吸気流量を示している。図32は、図29(C)、図30(C)のように、EGR率が低いときに比べて吸気制御バルブ42の開時期を進角し、または開度を大きくした場合、つまりEGR率が高い場合における、クランク角に対する吸気流量の変化を示している。図32のライン213はEGRリーンガスの吸気流量を、ライン214はEGRリッチガスの吸気流量を示している。
図31、図32のライン212、214の比較により、EGR率が増加して、図29(B)から図29(C)へ、または図30(B)から図30(C)へ吸気制御バルブ42の制御を変更することで、EGRリッチガスの吸気流量を増加させることができる。反対に、EGR率が減少して、図29(C)から図290(B)へ、または図30(C)から図30(B)へ吸気制御バルブ42の制御を変更することで、EGRリッチガスの吸気流量を減らすことができる。よって、例えば、図28において、EGR率が低いときにはEGRリッチガス量がX1(ライン209でEGR成層化の程度が最高になるときのEGRリッチガス量)になるように吸気制御バルブ42の開時期や開度を制御し、EGR率が高いときにはEGRリッチガス量がX2(ライン210でEGR成層化の程度が最高になるときのEGRリッチガス量)になるように吸気制御バルブ42の開時期や開度を制御することで、接続通路29から流入するガス量を少なくでき、結果、EGR成層化の程度を高い値に維持することができる。
具体的には、ECU50は、例えば図33のフローチャートの処理により、EGR率に応じた吸気制御バルブ42の開閉制御を実行する。具体的には、先ず、エンジン10の運転状態として、回転数センサ61(図1、図3、図4参照)が検出したエンジン回転数と、エンジン10の負荷とを取得する(S11)。なお、エンジン10の負荷として、具体的には、アクセルセンサ62(図1、図3、図4参照)が検出するアクセルペダルの操作量に基づいて定まる燃料噴射量を取得する。
次に、S11で取得したエンジン10の運転状態(エンジン回転数、負荷)に基づいて目標EGR率を設定する(S12)。具体的には、メモリ51(図1、図3、図4参照)に、エンジン10の運転状態に応じた目標EGR率のマップをあらかじめ記憶しておき、そのマップと、S11で取得した今回の運転状態とから、目標EGR率を設定する。
次に、S12で設定した目標EGR率に応じた吸気制御バルブ42の開時期や開度を決定する(S13)。具体的には、目標EGR率ごとに、図28で示すようなEGRリッチガス量とEGR成層化の程度の関係をあらかじめ調べておく。そして、得られたEGRリッチガス量とEGR成層化の程度の関係に基づいて、各目標EGR率においてEGR成層化の程度が高くなるEGRリッチガス量を求める。そして、そのEGRリッチガス量にするための吸気制御バルブ42の開時期や開度を求める。得られた目標EGR率ごとの開時期や開度をメモリ51に記憶しておく。
ここで、図34は、メモリ51に記憶された目標EGR率ごとの吸気制御バルブ42の開時期のテーブル300を例示している。また、図35は、メモリ51に記憶された目標EGR率ごとの吸気制御バルブ42の開度のテーブル310を例示している。テーブル300には、目標EGR率が格納されるEGR率格納欄301と、そのEGR率格納欄301に格納された各目標EGR率に応じた吸気制御バルブ42の開時期が格納される開時期格納欄302とが設けられている。同様に、テーブル310には、目標EGR率が格納されるEGR率格納欄311と、そのEGR率格納欄311に格納された各目標EGR率に応じた吸気制御バルブ42の開度が格納される開度格納欄312とが設けられている。なお、図34、図35のEGR率格納欄301、311の各欄には、目標EGR率の範囲が格納されている。
図34の開時期格納欄302には、図29で説明したように、目標EGR率が高くなるほど進角した開時期が格納される。つまり、図29において、開時期A1よりも開時期A2のほうが進角しており、その開時期A2よりも開時期A3のほうが進角している。図35の開度格納欄312には、図30で説明したように、目標EGR率が高くなるほど大きい開度が格納される。なお、図35では、各開度を全開の開度(100%)を基準とした%であらわしている。なお、目標EGR率に応じて開時期だけを変更する場合には、図35のテーブル310は不要であり、目標EGR率に応じて開度だけを変更する場合には、図34のテーブル300は不要である。
S13では、S12で設定した今回の目標EGR率に応じた開時期や開度を、メモリ51に記憶されたテーブル300、310から読み出させば良い。
次に、S13で決定した開時期や開度で作動するように、吸気行程中に吸気制御バルブ42(厳密には吸気制御バルブ42を作動させるモータ)を作動させる(S14)。これによって、図31、図32で説明したように、目標EGR率に応じてEGRリッチガス量が増減し、これにより、目標EGR率が変化してもEGR成層化の程度を高い値に維持できる。S14の後、図33のフローチャートの処理を終了する。
以上説明したように、本実施形態によれば、目標EGR率に応じて吸気制御バルブの開時期や開度を変更してEGRリッチガス量を増減させているので、接続通路29からEGRリーンガス通路22に流入するEGRリッチガス、EGRリッチガス通路25に流入するEGRリーンガスの流入量を少なくできる。これにより、EGR成層化の程度が低下するのを抑制できる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態を上記実施形態と異なる部分を中心に説明する。この第3実施形態は、筒内でのEGR成層化の程度が向上するようにエンジン負荷に応じて吸気制御バルブの開閉制御を変える実施形態である。本実施形態では、第1実施形態と同じ図1、図3、又は図4のエンジンシステムが適用される。ECU50は、第1実施形態における吸気制御バルブの開閉制御を前提として、エンジン負荷に応じて吸気制御バルブの制御の仕方を変更している。以下、本実施形態のECU50による吸気制御バルブ42の開閉制御の詳細を説明する。
本実施形態のECU50は、第1、第2実施形態と同様に、吸気行程の前半よりも後半で開度が大きくなるように吸気制御バルブ42を制御している。これにより、上記実施形態で説明したように吸気行程終了時には図10のように、圧縮行程終了時には図11のようにEGRリーンガスとEGRリッチガスとを成層分布させることができる。図36は、図11と同様に圧縮行程終了時における筒内の様子を示し、筒内の各部における排気濃度の違いを色の濃淡の違いで表した図である。図36において、色が濃くなるほど排気濃度が高いことを示している。図36に示すように、EGRリーンガスとEGRリッチガスとの成層化を行うことにより、中央エリア163は排気濃度を高く(酸素濃度を低く)、キャビティ底面161やスキッシュエリア162は排気濃度を低く(酸素濃度を高く)することができる。
このように、キャビティ底面161やスキッシュエリア162で酸素濃度を高くしているのは、スモークがそれらエリア161、162で発生しやすいためである。一方で、本発明者は、エンジン10の負荷が高くなるとスキッシュエリア162で酸素不足になりやすいという知見をもっている。ここで、図37は、エンジン10の負荷が高くなるとスキッシュエリア162で酸素不足になりやすいことを説明する図であり、詳細には、筒内及びピストン16の断面(右半分の断面)を示し、圧縮行程後の燃焼行程において時間の経過とともにピストン16が下降している様子を示している。
インジェクタ47から噴射される燃料噴射量は、エンジン10の負荷に応じて変化し、具体的には、負荷が高いほど燃料噴射量が増加する。そのため、負荷が低いときには燃料噴射量が少ないので、インジェクタ47は、図37の上段で示した燃焼行程の初期で燃料を噴射し終える。この場合、インジェクタ47から斜めの角度φ(図37参照)で噴射された燃料は、キャビティ底面161に到達することになるので、主にキャビティ底面161で燃焼が行われることになる。それにともない、主にキャビティ底面161でスモークが発生することになる。
これに対して、負荷が高いときには、燃料噴射量が多くなるので、インジェクタ47は、図37の上段の燃焼行程の初期では未だ燃料を噴射し終えておらず、図37の中段、下段で示すように、ピストン16の下降が進んでからも燃料を噴射し続ける。この場合、燃料噴射量に対するスキッシュエリア162に到達する燃料量の割合が、負荷が低いときに比べて増加する。つまり、負荷が高くなるほど燃焼領域がスキッシュエリア162に移行していく。そのために、負荷が高いときには低いときに比べてスキッシュエリア162で酸素不足になりやすくなる。よって、図38に示すように、負荷が高くなるほどスキッシュエリア162でのSOOT(スモーク)の生成割合が増加し、反対にキャビティ底面161でのSOOT生成割合は減少する。
そこで、ECU50は、吸気行程終了時に図10のように成層分布するようにEGRリーンガスとEGRリッチガスとを吸入しつつ、つまり、吸気行程の前半よりも後半で開度が大きくなるように吸気制御バルブ42を制御する。それに加えて、ECU50は、エンジン10の負荷が高いときには、低いときに比べてスキッシュエリア162での酸素濃度が高くなるように、吸気制御バルブ42の開時期及び閉弁から開弁に至るまでの開度変化の勾配を変えている。
具体的には、ECU50は、図39で示すように負荷に応じて吸気制御バルブ42の開時期及び開度変化の勾配を変更している。図39は、負荷に応じて吸気制御バルブ42の開時期及び開度変化の勾配を変更することを説明する図である。詳細には、図39(A)は、クランク角に対する吸気バルブ14(図1、図3、図4参照)のリフト量の変化を示している。図39(B)は、負荷が低〜中程度のときにおけるクランク角に対する吸気制御バルブ42の開度の変化を示している。図39(C)は、負荷が高いときにおけるクランク角に対する吸気制御バルブ42の開度の変化を示している。なお、図39(A)〜(C)間で横軸のクランク角が同じである。
ECU50は、図39(C)に示すように、負荷が高いときには、低いとき(図39(B)参照)に比べて、吸気行程中における吸気制御バルブ42の開時期を進角させる。加えて、ECU50は、図39(C)に示すように、負荷が高いときには、低いとき(図39(B)参照)に比べて、吸気行程中に吸気制御バルブ42を開く際に閉弁から開弁に至るまでの開度が緩やかに変わるように、つまり、開度変化の勾配が小さくなるように吸気制御バルブ42を作動させる。言い換えると、ECU50は、EGRリッチガスの総吸入量は負荷によっては変えないで、負荷が高いときには低いときに比べて、EGRリッチガスの吸気行程前半の吸入量が増加し、吸気行程後半の吸入量が減少するように、吸気制御バルブ42を作動させる。
図40は、図39(B)のように吸気制御バルブ42を作動させたときにおける、クランク角に対する吸気流量の変化を示している。図40のライン215は、スワール生成ポート12から吸入されるEGRリーンガスの吸気流量を示している。図40のライン216は、タンブル生成ポート13から吸入されるEGRリッチガスの吸気流量を示している。図41は、図30(C)のように吸気制御バルブ42を作動させたときにおける、クランク角に対する吸気流量の変化を示している。図41のライン217はEGRリーンガスの吸気流量を、ライン218はEGRリッチガスの吸気流量を示している。
図40、図41のライン216、218の比較によると、負荷が増加して、図39(B)から図39(C)に吸気制御バルブ42の制御を変更することで、EGRリッチガスの吸入開始時期が早くなっていることがわかる。つまり、負荷が高いときは低いときに比べて、EGRリッチガスの吸気前半における吸入量が増加し、反対に吸気後半における吸入量は減少している。なお、図41において、吸気行程の開始時からEGRリッチガスが吸入されているが、これは吸気制御バルブ42の漏れなどによるものであり、意図した吸入ではない。この吸気制御バルブ42の漏れなどによる吸入を除くと、図41においてもEGRリッチガスは、吸気行程の前半よりも後半に多く吸入されている。
負荷に応じて図39(B)、(C)のように吸気制御バルブ42を作動させ、図40、図41のようにEGRリッチガスの吸気流量を変化させることによって、筒内におけるEGRリーンガスとEGRリッチガスとの成層分布が変わる。図42は、EGRリッチガスの吸入の仕方を変えることで成層部分が変わることを示した図である。詳細には、図42は、圧縮前後の筒内の様子を示し、図42(A)、図42(B)、図42(C)の順に、吸気前半のEGRリッチガスの吸入量が多くなっている。なお、図42(A)、図42(B)、図42(C)間で、EGRリッチガスの総吸入量は同じである。
図42に示すように、図42(A)、図42(B)、図42(C)の順に、つまり、EGRリッチガスを吸気前半に多く吸入するほど、圧縮前(吸気行程終了時)におけるEGRリッチガスの層は、筒内の上下方向(本発明の第1方向に相当)に厚くなり、反対に筒内の径方向(本発明の第2方向に相当)に薄くなることがわかる。
また、図43は、EGRリッチガスの吸入タイミングが変わるとキャビティ底面とスキッシュエリアそれぞれでEGR成層化の程度がどのように変わるかを模式的に示している。図43において、図36の中央エリア163とキャビティ底面161の間の酸素濃度差の変化(EGR成層化の程度の変化)をライン220で示し、中央エリア163とスキッシュエリア162の間の酸素濃度差の変化をライン221で示している。なお、図43では、EGRリッチガスの吸入タイミング(吸気制御バルブ42の開時期)だけでなく、吸気制御バルブ42の開度変化の勾配も変えている。図43に示すように、EGRリッチガスの吸入タイミングが遅くなるほど、キャビティ底面でのEGR成層化の程度が高くなり、反対にスキッシュエリアでのEGR成層化の程度が低くなる。
負荷が低いときには図39(B)のように吸気制御バルブ42を作動させることで、図42(A)に示すように、圧縮前においてEGRリッチガスgrichは筒内の上部に偏在することになるので、圧縮後ではキャビティ底面161の排気濃度を、図42(B)、(C)に比べて低くする(酸素濃度を高くする)ことができる。図43で説明すると、負荷が低いときには、吸気行程の遅い時点t2からEGRリッチガスを吸入することで、キャビティ底面161のEGR成層化の程度、つまり酸素濃度を高くすることができる。図38で説明したように、負荷が低いときにはスモークは主にキャビティ底面161で生成されるので、図42(A)、図43の時点t2で吸入することで、キャビティ底面161でのスモークの発生を抑制できる。
これに対して、負荷が高いときには図39(C)のように吸気制御バルブ42を作動させることで、図42(C)に示すように、圧縮前においてEGRリッチガスgrichの層が筒内の下部側に延びる。それにともない、筒内の上部外周においてEGRリッチガスgrichの占める割合が減少する。よって、圧縮後ではスキッシュエリア162の排気濃度を、図42(A)、(B)に比べて低くする(酸素濃度を高くする)ことができる。図43で説明すると、負荷が高いときには、吸気行程の早い時点t1からEGRリッチガスを吸入することで、スキッシュエリア162のEGR成層化の程度、つまり酸素濃度を高くすることができる。これによって、負荷が高いときのスキッシュエリア162での酸素不足を抑制でき、その結果、スキッシュエリア162でのスモークの発生を抑制できる。
ECU50は、例えば図44のフローチャートの処理により、負荷に応じた吸気制御バルブ42の開閉制御を実行する。具体的には、先ず、エンジン10の負荷として例えば燃料噴射量を取得する(S21)。次に、S21で取得した負荷に応じた吸気制御バルブ42の開時期及び開度変化の勾配を決定する(S22)。具体的には、例えば、負荷ごとに吸気制御バルブ42の開時期及び開度変化の勾配が反映された吸気制御バルブ42の作動プロフィールをあらかじめメモリ51に記憶しておく。
図45は、メモリ51に記憶された、負荷ごとの作動プロフィールを格納したテーブル400を例示している。テーブル400には、負荷が格納される負荷格納欄401と、その負荷格納欄401に格納された各負荷に応じた作動プロフィールが格納される作動プロフィール格納欄402とが設けられている。なお、負荷格納欄401の各欄には負荷の範囲が格納されている。また、負荷格納欄401には、燃料噴射量そのものを負荷として格納しても良い。
図45の作動プロフィール格納欄402には、図39で説明したように、負荷が高くなるほど開時期が進角し、かつ、開度変化の勾配が緩やかとなる作動プロフィールが格納されている。各作動プロフィールをどの程度の開時期及び開度変化の勾配とするかは、図38の特性を考慮して決定する。具体的には例えば、図38において、負荷が5のときにはスキッシュエリアでのSOOT生成割合は約50%となり、残り約50%のSOOTはキャビティ底面で生成されるので、例えば、圧縮後においてキャビティ底面とスキッシュエリアとの間で酸素濃度の比率が1:1になるように、吸気制御バルブ42の作動プロフィール(開時期及び開度変化の勾配)を決定する。また、例えば、図38において、負荷が10のときにはスキッシュエリアでのSOOT生成割合は約80%となり、負荷が5のときに比べて約1.6倍(=80/50)となるので、スキッシュエリアの酸素濃度が負荷が5のときに比べて約1.6倍となるように、吸気制御バルブ42の作動プロフィールを決定する。
S22では、S21で取得した今回の負荷が、図45の負荷格納欄401に格納されたどの負荷に属しているかを判定する。そして、属していると判定した負荷に対応付けて作動プロフィール格納欄402に格納された作動プロフィールを読み出せば良い。
次に、S22で決定した開度及び開度変化の勾配(作動プロフィール)で吸気制御バルブ42を作動させる(S23)。これによって、図40、図41で説明したように負荷に応じてEGRリッチガスの吸入の仕方が変化し、その結果、図42で説明したように負荷に応じて成層分布が変化する。よって、負荷の増減でスモークの生成領域が変化したとしても、スモークの発生を抑制できる。S23の後、図44のフローチャートの処理を終了する。
以上説明したように、本実施形態によれば、エンジン10の負荷が低いときにはキャビティ底面の酸素濃度が高くなるように、負荷が高いときにはスキッシュエリアの酸素濃度が高くなるように吸気制御バルブ42の制御を変更しているので、スモークの発生をより一層抑制できる。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態を上記実施形態と異なる部分を中心に説明する。上記第1〜第3実施形態では、筒内においてEGRリーンガスとEGRリッチガスとを成層分布させる成層EGRモード(本発明の第1モードに相当)の詳細を説明した。本実施形態は、その成層EGRモードと、筒内においてEGRリーンガスとEGRリッチガスとの成層化を行わない、つまりEGRリーンガスとEGRリッチガスとを筒内で均一に分布させる(混合させる)均一EGRモード(本発明の第2モードに相当)との間の切り替え方法に関する実施形態である。本実施形態では、第1実施形態と同じ図1、図3、又は図4のエンジンシステムが適用される。
エンジン10の負荷や回転数が高くなると、吸気流速が増加し、それにともない吸気抵抗も増加する。このとき、成層化を行うために吸気行程中に吸気制御バルブ42を開閉作動させると、吸気抵抗の影響でEGRリッチガスの筒内への吸入効率が著しく低下することがある。そこで、本実施形態のECU50は、エンジン10の負荷や回転数が高い運転領域でエンジン10を運転する場合には、吸気行程の間中、吸気制御バルブ42を全開の開度に固定する均一EGRモードを実行する。これに対して、ECU50は、エンジン10の負荷や回転数が低い運転領域でエンジン10を運転する場合には成層EGRモードを実行する。
具体的には、メモリ51には、図46に示すように、エンジン回転数及び負荷で定まるエンジン10の運転領域に応じて均一EGRモードと成層EGRモードのどちらを実行するかを示したマップが記憶されている。図46のマップでは、均一EGRモードを実行するエンジン10の運転領域501と、成層EGRモードを実行するエンジン10の運転領域502とに区分されている。運転領域501は、エンジン回転数と負荷の少なくとも一方が高い運転領域であり、言い換えると、負荷が所定値(図46ではライン503が所定値に相当する)以上となる運転領域である。反対に運転領域502は。負荷が所定値(ライン503)未満となる運転領域である。
そして、ECU50は、例えば図47のフローチャートの処理により、成層EGRモードと均一EGRモードとの切り替えを行う。具体的には、先ず、エンジン10の運転状態として、回転数センサ61(図1、図3、図4参照)が検出したエンジン回転数と、エンジン10の負荷(燃料噴射量)とを取得する(S31)。
次に、S31で取得した運転状態が、図46のマップの運転領域502に属しているか否かを判断することで、成層EGRモードを実行するか否かを判断する(S32)。S31で取得した運転状態が運転領域502に属している場合には、成層EGRモードを実行すると判断する(S32:Yes)。その後、第1〜第3実施形態で説明した成層EGRモードを実行、つまり、吸気行程中に吸気制御バルブ42を開閉作動させる(S33)。このとき、図1のエンジンシステム1で図14等の制御を行う場合には、位相調整機構45(図1参照)を作動させて、4つの吸気制御バルブ421〜424間で位相をずらす。その後、図47のフローチャートの処理を終了する。
一方、S32において、S31で取得した運転状態が運転領域501に属している場合には、均一EGRモードを実行すると判断する(S32:No)。その後、4つの吸気制御バルブ421〜424を全開の開度に固定して、吸気行程を行う(S34)。これにより、EGRリッチガスは、吸気行程の間中、タンブル生成ポート13から吸入され続け、EGRリーンガスとEGRリッチガスのそれぞれを筒内において均一に分布させることができる。よって、高負荷、高回転数で吸気抵抗が増加したとしても、吸気効率の著しい低下を防止でき、結果、所望のエンジン出力を得ることができる。その後、図47のフローチャートの処理を終了する。
ところで、エンジン負荷や回転数が低い運転領域での燃焼効率を向上するために、筒内でのスワール流を強化するためのスワールコントロールバルブが設けられることがある(例えば、特開平6−101484号公報、特開平6−257448号公報参照)。そこで、エンジン負荷や回転数が低い運転領域では、吸気制御バルブ42をスワールコントロールバルブとして用いても良い。
具体的には、図46のマップに代えて、図48のマップをメモリ51に記憶しておく。なお、図48において、図46と変更がない部分には同一符号を付している。図48のマップは、エンジン10の運転領域を、均一EGRモード_開度大の運転領域501と、成層EGRモードの運転領域504と、均一EGRモード_開度小の運転領域505とに区分したマップである。均一EGRモード_開度大は、図46の均一EGRモードと同じであり、吸気制御バルブ42を全開の開度に固定して、EGRリーンガスとEGRリッチガスとを筒内で均一に分布させるモードである。図48の均一EGRモード_開度小は、EGRリーンガスとEGRリッチガスとを筒内で均一に分布させる点では均一EGRモード_開度大と同じであるが、吸気制御バルブ42の開度が均一EGRモード_開度大とは異なっている。具体的には、均一EGRモード_開度小は、吸気制御バルブ42を全開よりも小さい開度に固定することで、スワール流を強化するスワール強化モードである。
図48の運転領域501は、図46の運転領域501と同じ領域に設定されている。運転領域504は、負荷が第1の所定値(ライン503)未満、その第1の所定値より小さい第2の所定値(ライン506)以上となる運転領域である。運転領域505は、負荷が第2の所定値(ライン506)未満となる運転領域、つまり、低負荷、低回転数の運転領域である。
そして、ECU50は、図47のフローチャートの処理に代えて、例えば図48の処理により、各モードの切り替えを行う。具体的には、先ず、エンジン10の運転状態(負荷、回転数)を取得する(S41)。次に、S41で取得した運転状態が、図48のマップの運転領域504に属しているか否かを判断することで、成層EGRモードを実行するか否かを判断する(S42)。
S41で取得した運転状態が運転領域504に属している場合には(S42:Yes)、成層EGRモードを実行する(S43)。その後、図49のフローチャートの処理を終了する。S41で取得した運転状態が運転領域504に属していない場合には(S42:No)、その運転状態が運転領域505に属しているか否かを判断することで、スワール強化モードを実行するか否かを判断する(S44)。
運転状態が運転領域504に属している場合には(S44:Yes)、スワール強化モードとして、4つの吸気制御バルブ421〜424を全開よりも小さい所定開度に固定して、吸気行程を行う(S45)。その所定開度はスワール流を強化できるようにエンジン10の運転状態(負荷、回転数)ごとにあらかじめメモリ51に記憶されている。このとき、図1のエンジンシステム1で図14等の制御を行う場合には、位相調整機構45(図1参照)を作動させて、4つの吸気制御バルブ421〜424間で位相をずらす。これにより、EGRリーンガスとEGRリッチガスのそれぞれを筒内において均一に分布させつつ、EGRリッチガスの吸入が絞られる結果、EGRリーンガスの吸入に勢いを増すことができる。つまり、スワール流を強化できる。よって、低負荷、低回転でありながら、燃焼効率を向上でき、所望のエンジン出力を得ることができる。また、吸気制御バルブ42とは別にスワールコントロールバルブを設けなくても、スワール強化モードを実現できる。S45の後、図49のフローチャートの処理を終了する。
一方、S44において、S41で取得した運転状態が運転領域501に属している場合には(S44:No)、均一EGRモード_開度大として、4つの吸気制御バルブ421〜424を全開の開度に固定して、吸気行程を行う(S46)。その後、図49のフローチャートの処理を終了する。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載を逸脱いない限度で種々の変更が可能である。例えば、上記第1〜第4実施形態のうちどの実施形態を組み合わせたとしても良い。具体的には、第1実施形態と第2実施形態とを組み合わせても良い。この場合には、図33のS13で、目標EGR率に応じた最適なバルブ開時期を決定した後、S14では、第1実施形態の図12、図14、図17、図20、図22、図24、図26、図27のように、気筒ごとにバルブ開度を変更する。その際、S13で決定したバルブ開時期で各吸気制御バルブを作動させる。これによって、気筒ごとに成層化できるとともに、目標EGR率が変わったとしてもEGR成層化の程度を高い値に維持できる。
また、同様に、第1実施形態と第3実施形態とを組み合わせても良いし、第2実施形態と第3実施形態とを組み合わせても良い。第2実施形態と第3実施形態とを組み合わせる場合には、図33のS13で決定された目標EGR率に応じたバルブ開時期や開度から定まるEGRリッチガス量が吸入されるように、吸気制御バルブを作動させる。この際、図44のS23のように、負荷に応じてEGRリッチガス量の吸入の仕方、つまり、吸気制御バルブの開時期や開度変化の勾配を変更する。これによって、目標EGR率が変わったとしてもEGR成層化の程度を高い値に維持でき、なおかつ、負荷が変わってスモークの生成領域が変わったとしてもスモークの発生を抑制できる。
また、上記実施形態では、4つの気筒を有したエンジンシステムに本発明を適用した例を説明したが、単気筒エンジンや4気筒エンジン以外の多気筒エンジンの吸気に本発明を適用しても良い。