JP2014219058A - 自動変速機 - Google Patents
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Abstract
【課題】後進レンジから前進レンジに切り換えられるときのショックを抑制すると共に、スムーズにインギヤすることができる自動変速機を提供する。
【解決手段】自動変速機の制御部は、後進レンジから前進レンジに切り換えられたと判定され、且つ車速が所定速度以上であると判定された場合に、「後進段を確立したときに係合が阻止される第1摩擦係合機構」への油圧の供給を開始する油圧供給工程と、第1摩擦係合機構へ供給される油圧が第1所定値以上となったときに、「後進段を確立するときに係合されると共に、前進側の最低速段を確立するときには開放される第2摩擦係合機構」の開放を開始する開放工程と、第1摩擦係合機構へ供給される油圧が第1所定値よりも高い値に設定された第2所定値以上となり、第2摩擦係合機構を開放させた後に、切換機構を固定状態から逆転阻止状態に切り換える切換機構工程と、を備える。
【選択図】図6
【解決手段】自動変速機の制御部は、後進レンジから前進レンジに切り換えられたと判定され、且つ車速が所定速度以上であると判定された場合に、「後進段を確立したときに係合が阻止される第1摩擦係合機構」への油圧の供給を開始する油圧供給工程と、第1摩擦係合機構へ供給される油圧が第1所定値以上となったときに、「後進段を確立するときに係合されると共に、前進側の最低速段を確立するときには開放される第2摩擦係合機構」の開放を開始する開放工程と、第1摩擦係合機構へ供給される油圧が第1所定値よりも高い値に設定された第2所定値以上となり、第2摩擦係合機構を開放させた後に、切換機構を固定状態から逆転阻止状態に切り換える切換機構工程と、を備える。
【選択図】図6
Description
本発明は、入力部の回転を複数の遊星歯車機構を介して複数段に変速して出力部から出力する自動変速機に関する。
従来、4つの遊星歯車機構とクラッチやブレーキからなる6つの係合機構とを用いて前進8段、後進1段の変速を行えるように構成された自動変速機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1の自動変速機は、変速機ケース内に回転自在に軸支した入力軸と、入力軸と同心に配置された出力ギヤからなる出力部とを備えている。出力部の回転は、ディファレンシャルギヤ又はプロペラシャフトを介して車両の左右の駆動輪に伝達される。
変速機ケース内には、第1〜第4の4つの遊星歯車機構が入力軸と同心に配置されている。第1遊星歯車機構は、第1サンギヤと、第1リングギヤと、第1サンギヤと第1リングギヤとに噛合する第1ピニオンを自転及び公転自在に軸支する第1キャリアとの3つの要素からなる所謂シングルピニオン型の遊星歯車機構(キャリアを固定してサンギヤを回転させると、リングギヤがサンギヤと異なる方向に回転するため、マイナス遊星歯車機構又はネガティブ遊星歯車機構ともいう。なお、リングギヤを固定してサンギヤを回転させると、キャリアがサンギヤと同一方向に回転する。)で構成されている。
第1遊星歯車機構の3つの要素を、第1遊星歯車機構の共線図(サンギヤ、キャリア、リングギヤの3つの要素の相対回転速度の比を直線(速度線)で表すことができる図)の並び順に一方から夫々第1要素、第2要素及び第3要素とすると、第1要素は第1サンギヤ、第2要素は第1キャリア、第3要素は第1リングギヤになる。
第2遊星歯車機構も、第2サンギヤと、第2リングギヤと、第2サンギヤ及び第2リングギヤに噛合する第2ピニオンを自転及び公転自在に軸支する第2キャリアとの3つの要素からなる所謂シングルピニオン型の遊星歯車機構で構成される。第2遊星歯車機構の3つの要素を、第2遊星歯車機構の共線図の並び順に一方から夫々第4要素、第5要素及び第6要素とすると、第4要素は第2リングギヤ、第5要素は第2キャリア、第6要素は第2サンギヤになる。
第3遊星歯車機構も、第3サンギヤと、第3リングギヤと、第3サンギヤ及び第3リングギヤに噛合する第3ピニオンを自転及び公転自在に軸支する第3キャリアとの3つの要素からなる所謂シングルピニオン型の遊星歯車機構で構成される。第3遊星歯車機構の3つの要素を、第3遊星歯車機構の共線図の並び順に一方から夫々第7要素、第8要素及び第9要素とすると、第7要素は第3サンギヤ、第8要素は第3キャリア、第9要素は第3リングギヤになる。
第4遊星歯車機構も、第4サンギヤと、第4リングギヤと、第4サンギヤ及び第4リングギヤに噛合する第4ピニオンを自転及び公転自在に軸支する第4キャリアとの3つの要素からなる所謂シングルピニオン型の遊星歯車機構で構成される。第4遊星歯車機構の3つの要素を、第4遊星歯車機構の共線図の並び順に一方から夫々第10要素、第11要素及び第12要素とすると、第10要素は第4リングギヤ、第11要素は第4キャリア、第12要素は第4サンギヤになる。
第1遊星歯車機構の第1サンギヤ(第1要素)は、入力軸に連結されている。また、第4遊星歯車機構の第4リングギヤ(第10要素)は、出力部に連結されている。
また、第1遊星歯車機構の第1キャリア(第2要素)と第2遊星歯車機構の第2キャリア(第5要素)と第3遊星歯車機構の第3リングギヤ(第9要素)とが連結されて、第1連結体(第2要素、第5要素、第9要素)が構成されている。また、第1遊星歯車機構の第1リングギヤ(第3要素)と第4遊星歯車機構の第4サンギヤ(第12要素)とが連結されて、第2連結体(第3要素、第12要素)が構成されている。また、第3遊星歯車機構の第3キャリア(第8要素)と第4遊星歯車機構の第4キャリア(第11要素)とが連結されて、第3連結体(第8要素、第11要素)が構成されている。
また、特許文献1の自動変速機は、第1から第3の3つのクラッチと、第1から第3の3つのブレーキとからなる合計6つの係合機構を備える。
第1クラッチは、湿式多板クラッチであり、第1遊星歯車機構の第1サンギヤ(第1要素)と第3連結体(第8要素、第11要素)を連結する連結状態と、この連結を断つ開放状態とに切換自在に構成されている。第2クラッチは、湿式多板クラッチであり、第1遊星歯車機構の第1サンギヤ(第1要素)と第2遊星歯車機構の第2リングギヤ(第4要素)とを連結する連結状態と、この連結を断つ開放状態とに切換自在に構成されている。
第3クラッチは、湿式多板クラッチであり、第2遊星歯車機構の第2サンギヤ(第6要素)と第2連結体(第3要素、第12要素)とを連結する連結状態と、この連結を断つ開放状態とに切換自在に構成されている。第1ブレーキは、湿式多板ブレーキであり、第3連結体(第8要素、第11要素)を変速機ケースに固定する固定状態と、この固定を解除する開放状態とに切換自在に構成されている。
第2ブレーキは、湿式多板ブレーキであり、第3遊星歯車機構の第3サンギヤ(第7要素)を変速機ケースに固定する固定状態と、この固定を解除する開放状態とに切換自在に構成されている。第3ブレーキは、湿式多板ブレーキであり、第2遊星歯車機構の第2サンギヤ(第6要素)を変速機ケースに固定する固定状態と、この固定を解除する開放状態とに切換自在に構成されている。
特許文献1の自動変速機では、第1ブレーキ、第2ブレーキ、及び第3ブレーキを固定状態とすることで、前進1速段が確立される。第2ブレーキ、及び第3ブレーキを固定状態とし、第3クラッチを連結状態とすることで、前進2速段が確立される。第2ブレーキ、及び第3ブレーキを固定状態とし、第2クラッチを連結状態とすることで、前進3速段が確立される。第2ブレーキを固定状態とし、第2クラッチC2及び第3クラッチC3を連結状態とすることで、前進4速段が確立される。
第2ブレーキを固定状態とし、第1クラッチC1及び第2クラッチC2を連結状態とすることで、前進5速段が確立される。第1から第3の3つのクラッチC1〜C3を連結状態とすることで、前進6速段が確立される。第3ブレーキB3を固定状態とし、第1クラッチC1及び第2クラッチC2を連結状態とすることで、前進7速段が確立される。第3ブレーキB3を固定状態とし、第1クラッチC1及び第3クラッチC3を連結状態とすることで、前進8速段が確立される。第1ブレーキ、及び第3ブレーキB3を固定状態とし、第2クラッチC2を連結状態とすることで、後進段が確立される。
従来の自動変速機では、第1ブレーキをツーウェイクラッチで構成することが考えられる。このツーウェイクラッチは、例えば、第3連結体(第8要素、第11要素)の正転(入力軸の回転方向と同一方向への回転、前進方向の回転)を許容し、逆転(入力軸の回転方向とは逆方向の回転、後進方向の回転)阻止する逆転阻止状態と、第3連結体(第8要素、第11要素)を変速機ケースに固定する固定状態とに切換自在に構成することができる。
このようなツーウェイクラッチで第1ブレーキを構成した場合、車両が前進しているときは切換機構を逆転阻止状態とし、車両が後進しているときは切換機構を固定状態とする。そして、運転者のシフト操作によって、シフトポジションが後進レンジから前進レンジに切り換えられたとき、切換機構は、固定状態から逆転阻止状態に切り換えられる。
また、シフトポジションが後進レンジから前進レンジに切り換えられるときに、第2ブレーキが開放状態から固定状態に切り換えられ、第2クラッチが連結状態から開放状態に切り換えられる。
ここで、従来の自動変速機では、後進レンジから前進レンジに切り換えられるときに、第2クラッチが開放状態されることで、入力軸の回転速度が増加する。この入力軸の回転速度の増加により、インギヤの時間が延びたり、入力軸の回転速度の増加分をクラッチやブレーキで吸収する必要があった。また、この入力軸の回転速度の増加により、インギヤのときにショックが発生する虞もある。
本発明は、以上の点に鑑み、シフトポジションが後進レンジから前進レンジに切り換えられるときのショックを防止又は抑制すると共に、スムーズにインギヤすることができる自動変速機を提供することを目的とする。
[1]上記目的を達成するため、本発明は、駆動源からの駆動力が伝達されるトルクコンバータと、該トルクコンバータを介して前記駆動源の駆動力が伝達される入力部と、サンギヤ、キャリア、リングギヤの3つの要素を夫々有する複数の遊星歯車機構と、前記遊星歯車機構の要素同士を連結し、または前記要素を固定する複数の油圧作動型の摩擦係合機構と、前記要素の前進方向の回転を許容し後進方向の回転を阻止する逆転阻止状態と、前記要素を固定する固定状態とに切換自在な切換機構と、前記摩擦係合機構と前記切換機構とを制御する制御部とを備え、該制御部で前記摩擦係合機構、及び前記切換機構の状態を制御して、前記駆動源からの駆動力を所定の車両情報に基いて複数段に変速して出力する自動変速機であって、前記摩擦係合機構に供給される油圧を検出する油圧検出部を備え、前記制御部は、車両の走行速度を検出する車速検出部からの情報を受けられるように構成されると共に、車両のシフトポジションを検出するシフトポジション検出部からの情報を受けられるように構成され、後進段を確立する場合に係合される前記摩擦係合機構に加えて係合させると前記入力部の回転を阻止可能な摩擦係合機構を第1摩擦係合機構と定義し、前記後進段を確立するときに係合されると共に、前進側の最低速段を確立するときには開放される摩擦係合機構を第2摩擦係合機構と定義して、前記制御部は、前記シフトポジション検出部の情報に基いて、シフトポジションが後進レンジから前進レンジに切り換えられたか否かを判定する前進レンジ切換工程と、前記車速検出部の情報に基いて、車速が第1所定速度以上であるか否かを判定する車速判定工程と、前記前進レンジ切換工程で、シフトポジションが後進レンジから前進レンジに切り換えられたと判定され、且つ前記車速判定工程で車速が第1所定速度未満であると判定された場合に、前記第1摩擦係合機構への油圧の供給を開始する油圧供給工程と、前記第1摩擦係合機構へ供給される油圧が第1所定値以上となったときに、前記第2摩擦係合機構の開放を開始する開放工程と、前記第1摩擦係合機構へ供給される油圧が前記第1所定値よりも高い値に設定された第2所定値以上となり、前記第2摩擦係合機構を開放させた後に、前記切換機構を固定状態から逆転阻止状態に切り換える切換機構工程と、を備えることを特徴とする。
本発明によれば、第1摩擦係合機構を係合させてから第2摩擦係合機構を開放する。これにより、一時的に後進段を確立する摩擦係合機構に加えて第1摩擦係合機構が係合されることとなり、入力部の回転が阻害されることとなる。従って、入力部の回転数の増加が阻止され、シフトポジションが後進レンジから前進レンジに切り換えられるときのショックを防止又は抑制すると共に、スムーズにインギヤすることができる。
[2]具体的には、本発明において、制御部は、ブレーキペダルが踏まれているか否かを検出するブレーキ検出部からの情報を受けられるように構成されると共に、所定の車両情報に基いて車両が停車中であるか否かを判定する停車判定部を備え、制御部は、車速判定工程で検出される車速が所定速度未満であると判定された場合に、停車判定部で車両が停車中であり、且つブレーキ検出部でブレーキペダルが踏まれているか否かを判定する停車判定工程と、停車判定工程で停車中ではなく、又はブレーキペダルが踏まれていないと判定された場合に、第1摩擦係合機構への油圧の供給を開始する油圧供給工程と、車速判定工程で検出される車速が第1所定速度未満に設定された第2所定速度以下であるか否かを判定する車速ゼロ判定工程と、第1摩擦係合機構の係合を完了させると共に、第2摩擦係合機構を開放させる開放工程と、を備えるように構成することができる。
かかる構成によれば、後進車速が第1所定速度未満の低車速である場合に、第1摩擦係合機構を油圧供給工程で係合させることで、スムーズに車速を第2所定速度以下(例えば、速度「0」)まで落として、後進レンジから前進レンジの切り換えを迅速に行うことができる。
[3]また、本発明においては、制御部は、停車判定工程で停車中であり、且つブレーキペダルが踏まれていると判定された場合に、第1摩擦係合機構へ供給する油圧を最終目標油圧まで一気に増加させる早期油圧増加工程と、第1摩擦係合機構へ供給される油圧が第1所定値以上であるか否かを判定する第1所定値工程と、第1摩擦係合機構へ供給される油圧が第1所定値以上であるときに、第2摩擦係合機構を開放させる開放工程とを備えるように構成することができる。
かかる構成によれば、車両が停車中であるときに、入力部の回転を「0」にすることができるため、早期油圧増加工程で第1摩擦係合機構へ油圧を迅速に供給することができ、インギヤの応答性を向上させることができる。
[4]また、本発明においては、制御部は、ブレーキペダルが踏まれているか否かを検出するブレーキ検出部からの情報を受けられるように構成されると共に、所定の車両情報に基いて車両が停車中であるか否かを判定する停車判定部を備え、制御部を、停車判定部で車両が停車中であり、且つブレーキ検出部からブレーキペダルが踏まれているか否かを判定する停車判定工程と、停車判定工程で車両が停車中ではなく、又はブレーキペダルが踏まれていないと判定した場合に、第1摩擦係合機構への油圧の供給を開始する油圧供給工程と、第1摩擦係合機構へ供給される油圧が第1所定値以上であるか否かを判定する第1所定値工程と、第1所定値工程で第1摩擦係合機構へ供給される油圧が第1所定値以上であると判定された場合に、切換機構を固定状態から逆転阻止状態に切り換える切換機構工程と、切換機構工程を実行した後に、車速が第1所定速度未満に設定された第2所定速度以下であるか否かを判定する車速ゼロ判定工程と、車速ゼロ判定工程で車速が第2所定速度以下であると判定された場合に、第1摩擦係合機構へ供給される油圧を第2所定値以上となるようにし、第2摩擦係合機構の開放する開放工程と、を備えるように構成することができる。
かかる構成によれば、切換機構を逆転阻止状態として、前進方向の回転を許容できるようにし、第1摩擦係合機構と、第2摩擦係合機構とを係合させることで、確立される変速段(前進側最低速段よりも高速側の変速段)にインギヤしてから前進側最低速段にインギヤすることとなる。これにより、後進レンジから前進レンジへの切り換えの際のショックをより低減することができる。
[5]また、本発明においては、制御部は、停車判定工程で停車中であり、且つブレーキペダルが踏まれていると判定された場合に、第1摩擦係合機構へ供給する油圧を最終目標油圧まで一気に増加させる早期油圧増加工程と、第1摩擦係合機構へ供給される油圧が第1所定値以上であるか否かを判定する第1所定値工程と、第1所定値工程で第1摩擦係合機構へ供給される油圧が第1所定値以上であると判定された場合に、切換機構を固定状態から逆転阻止状態に切り換える切換機構工程と、切換機構工程を実行した後に、第1摩擦係合機構へ供給される油圧を第2所定値以上となるようにし、第2摩擦係合機構の開放する開放工程と、を備えるように構成することができる。
かかる構成によれば、切換機構を逆転阻止状態として、前進方向の回転を許容できるようにし、第1摩擦係合機構と、第2摩擦係合機構とを係合させることで、確立される変速段(前進側最低速段よりも高速側の変速段)にインギヤしてから前進側最低速段にインギヤすることとなる。これにより、後進レンジから前進レンジへの切り換えの際のショックをより低減することができる。
[6]また、本発明においては、制御部は、車両の駆動輪がロックして回転していないロック状態であるか否かを検出するロック検出部からの情報を受けられるように構成され、制御部を、油圧供給工程を実行した後で、ロック検出部でロック状態が検出されているか否かを判定するロック判定工程と、ロック判定工程でロック状態であると判定した場合には、第2摩擦係合機構を開放するロック解除工程と、を備えるように構成することができる。
かかる構成によれば、車両の駆動輪のロックを迅速に解除することができ、車両の挙動安定性を向上させることができる。
図1及び図2は、本発明の自動変速機TMの実施形態を示している。自動変速機TMは、変速機ケース1内に回転自在に軸支した、内燃機関(エンジン)等の駆動源ENGが出力する駆動力がロックアップクラッチLC及びダンパDAを有するトルクコンバータTCを介して伝達される入力部としての入力軸2と、入力軸2と同心に配置された出力ギヤからなる出力部3とを備えている。
出力部3の回転は、図外のデファレンシャルギヤ、またはプロペラシャフトを介して車両の左右の駆動輪に伝達される。尚、トルクコンバータTCに代えて、摩擦係合自在に構成される単板型、または多板型の発進クラッチを設けてもよい。
変速機ケース1内には、第1〜第4の4つの遊星歯車機構PGS1〜4が入力軸2と同心に配置されている。第1遊星歯車機構PGS1は、サンギヤSaと、リングギヤRaと、サンギヤSaとリングギヤRaとに噛合するピニオンPaを自転及び公転自在に軸支するキャリアCaとからなる所謂シングルピニオン型の遊星歯車機構(キャリアを固定してサンギヤを回転させると、リングギヤがサンギヤと異なる方向に回転するため、マイナス遊星歯車機構、またはネガティブ遊星歯車機構ともいう。尚、リングギヤを固定してサンギヤを回転させると、キャリアがサンギヤと同一方向に回転する。)で構成されている。
図3に第1から第4の4つの遊星歯車機構PGS1〜PGS4の共線図を示す。本明細書において、共線図は、サンギヤ、キャリア、リングギヤの3つの要素の相対回転速度の比を直線(速度線)で表すことができる図と定義する。共線図において、3つの要素は、ギヤ比(リングギヤの歯数/サンギヤの歯数)に対応する間隔で並ぶ。
図3の上から2段目に示す第1遊星歯車機構PGS1の共線図を参照して、第1遊星歯車機構PGS1の3つの要素Sa,Ca,Raを、共線図におけるギヤ比(リングギヤの歯数/サンギヤの歯数)に対応する間隔での並び順に左側から夫々第1要素、第2要素及び第3要素とすると、第1要素はサンギヤSa、第2要素はキャリアCa、第3要素はリングギヤRaになる。
ここで、サンギヤSaとキャリアCa間の間隔とキャリアCaとリングギヤRa間の間隔との比は、第1遊星歯車機構PGS1のギヤ比をhとして、h:1に設定される。尚、共線図において、下の横線と上の横線(4th及び6thと重なる線)は夫々回転速度が「0」と「1」(入力軸2と同じ回転速度)であることを示している。
第2遊星歯車機構PGS2も、サンギヤSbと、リングギヤRbと、サンギヤSb及びリングギヤRbに噛合するピニオンPbを自転及び公転自在に軸支するキャリアCbとからなる所謂シングルピニオン型の遊星歯車機構で構成される。
図3の上から1段目(最上段)に示す第2遊星歯車機構PGS2の共線図を参照して、第2遊星歯車機構PGS2の3つの要素Sb,Cb,Rbを、共線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に左側から夫々第4要素、第5要素及び第6要素とすると、第4要素はリングギヤRb、第5要素はキャリアCb、第6要素はサンギヤSbになる。サンギヤSbとキャリアCb間の間隔とキャリアCbとリングギヤRb間の間隔との比は、第2遊星歯車機構PGS2のギヤ比をiとして、i:1に設定される。
第3遊星歯車機構PGS3も、サンギヤScと、リングギヤRcと、サンギヤSc及びリングギヤRcに噛合するピニオンPcを自転及び公転自在に軸支するキャリアCcとからなる所謂シングルピニオン型の遊星歯車機構で構成される。
図3の上から3段目に示す第3遊星歯車機構PGS3の共線図を参照して、第3遊星歯車機構PGS3の3つの要素Sc,Cc,Rcを、共線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に左側から夫々第7要素、第8要素及び第9要素とすると、第7要素はサンギヤSc、第8要素はキャリアCc、第9要素はリングギヤRcになる。サンギヤScとキャリアCc間の間隔とキャリアCcとリングギヤRc間の間隔との比は、第3遊星歯車機構PGS3のギヤ比をjとして、j:1に設定される。
第4遊星歯車機構PGS4も、サンギヤSdと、リングギヤRdと、サンギヤSd及びリングギヤRdに噛合するピニオンPdを自転及び公転自在に軸支するキャリアCdとからなる所謂シングルピニオン型の遊星歯車機構で構成される。
図3の上から4段目(最下段)に示す第4遊星歯車機構PGS4の共線図を参照して、第4遊星歯車機構PGS4の3つの要素Sd,Cd,Rdを、共線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に左側から夫々第10要素、第11要素及び第12要素とすると、第10要素はリングギヤRd、第11要素はキャリアCd、第12要素はサンギヤSdになる。サンギヤSdとキャリアCd間の間隔とキャリアCdとリングギヤRd間の間隔との比は、第4遊星歯車機構PGS4のギヤ比をkとして、k:1に設定される。
第1遊星歯車機構PGS1のサンギヤSa(第1要素)は、入力軸2に連結されている。また、第4遊星歯車機構PGS4のリングギヤRd(第10要素)は、出力ギヤからなる出力部3に連結されている。
また、第1遊星歯車機構PGS1のキャリアCa(第2要素)と第2遊星歯車機構PGS2のキャリアCb(第5要素)と第3遊星歯車機構PGS3のリングギヤRc(第9要素)とが連結されて、第1連結体Ca−Cb−Rcが構成されている。また、第1遊星歯車機構PGS1のリングギヤRa(第3要素)と第4遊星歯車機構PGS4のサンギヤSd(第12要素)とが連結されて、第2連結体Ra−Sdが構成されている。また、第3遊星歯車機構PGS3のキャリアCc(第8要素)と第4遊星歯車機構PGS4のキャリアCd(第11要素)とが連結されて、第3連結体Cc−Cdが構成されている。
また、本実施形態の自動変速機TMは、第1ブレーキB1からなる1つの切換機構と、第1から第3の3つのクラッチC1〜C3、及び第2から第4の3つのブレーキB2〜B4とからなる6つの係合機構とを備える。第1クラッチC1は、油圧作動型の湿式多板クラッチであり、第1遊星歯車機構PGS1のサンギヤSa(第1要素)と第3連結体Cc−Cdとを連結する連結状態と、この連結を断つ開放状態とに切換自在に構成されている。
第2クラッチC2は、油圧作動型の湿式多板クラッチであり、第1遊星歯車機構PGS1のサンギヤSa(第1要素)と第2遊星歯車機構PGS2のリングギヤRb(第4要素)とを連結する連結状態と、この連結を断つ開放状態とに切換自在に構成されている。第3クラッチC3は、油圧作動型の湿式多板クラッチであり、第2遊星歯車機構PGS2のサンギヤSb(第6要素)と第2連結体Ra−Sdとを連結する連結状態と、この連結を断つ開放状態とに切換自在に構成されている。
第1ブレーキB1は、2ウェイクラッチであり、第3連結体Cc−Cdの正転(入力軸2の回転方向と同一方向への回転。車両の前進方向の回転)を許容し、逆転(入力軸2の回転方向と異なる方向への回転。車両の後進方向の回転)を阻止する逆転阻止状態と、第3連結体Cc−Cdを変速機ケース1に固定して、第3連結体Cc−Cdの回転を阻止する固定状態とに切換自在に構成されている。第2ブレーキB2は、油圧作動型の湿式多板ブレーキであり、第3遊星歯車機構PGS3のサンギヤSc(第7要素)を変速機ケース1に固定する固定状態と、この固定を解除する開放状態とに切換自在に構成されている。
第3ブレーキB3は、油圧作動型の湿式多板ブレーキであり、第2遊星歯車機構PGS2のサンギヤSb(第6要素)を変速機ケース1に固定する固定状態と、この固定を解除する開放状態とに切換自在に構成されている。第4ブレーキB4は、油圧作動型の湿式多板ブレーキであり、第2遊星歯車機構PGS2のリングギヤRb(第4要素)を変速機ケース1に固定する固定状態と、この固定を解除する開放状態とに切換自在に構成されている。
各クラッチC1〜C3及び各ブレーキB1〜B4は、トランスミッション・コントロール・ユニットからなる制御部ECU(図1参照)により、車両の走行速度等の車両情報に基づいて、状態が切り換えられる。
入力軸2の軸線上には、駆動源ENG及びトルクコンバータTC側から、第1クラッチC1、第3遊星歯車機構PGS3、第4遊星歯車機構PGS4、第1遊星歯車機構PGS1、第3クラッチC3、第2遊星歯車機構PGS2、第2クラッチC2の順番で配置されている。
そして、第4ブレーキB4が第2遊星歯車機構PGS2の径方向外方に配置され、第3ブレーキB3が第3クラッチC3の径方向外方に配置され、第1ブレーキB1は第3遊星歯車機構PGS3の径方向外方に配置され、第2ブレーキB2は第1クラッチC1の径方向外方に配置されている。このように、4つのブレーキB1〜B4を遊星歯車機構、またはクラッチの径方向外方に配置することにより、ブレーキB1〜B4を遊星歯車機構及びクラッチと共に入力軸2の軸線上に並べて配置した場合に比べて、自動変速機TMの軸長の短縮化を図ることができる。尚、第4ブレーキB4を第2クラッチC2の径方向外方に配置し、第3ブレーキB3を第2遊星歯車機構PGS2の径方向外方に配置してもよい。
次に、図3及び図4を参照して、実施形態の自動変速機TMの各変速段を確立させる場合を説明する。
1速段を確立させる場合には、2ウェイクラッチたる第1ブレーキB1を逆転阻止状態(図4の「R」)とし、第2ブレーキB2及び第3ブレーキB3を固定状態とする。第1ブレーキB1を逆転阻止状態とすることで、第3連結体Cc−Cdの逆転が阻止される。また、第2ブレーキB2を固定状態とすることで第3遊星歯車機構PGS3のサンギヤSc(第7要素)の回転速度が「0」になる。そして、第3連結体Cc−Cdの回転速度も「0」になる。
これにより、第3遊星歯車機構PGS3の第7から第9の3つの要素Sc,Cc,Rcが相対回転不能なロック状態となり、第3遊星歯車機構PGS3のリングギヤRc(第9要素)を含む第1連結体Ca−Cb−Rcの回転速度も「0」になる。そして、出力部3が連結された第4遊星歯車機構PGS4のリングギヤRd(第10要素)の回転速度が図4に示す「1st」となり、1速段が確立される。
尚、1速段を確立させるためには第3ブレーキB3を固定状態とする必要はないが、1速段から後述する2速段へスムーズに変速できるように1速段で固定状態とさせている。また、1速段でエンジンブレーキを効かせる場合には、2ウェイクラッチからなる第1ブレーキB1を固定状態(図4の「L」)に切り換えればよい。
2速段を確立させる場合には、2ウェイクラッチたる第1ブレーキB1を逆転阻止状態(図4の「R」)とし、第2ブレーキB2及び第3ブレーキB3を固定状態とし、第3クラッチC3を連結状態とする。第1ブレーキB1を逆転阻止状態とすることで、第3連結体Cc−Cdの正転が許容される。また、第2ブレーキB2を固定状態とすることで、第3遊星歯車機構PGS3のサンギヤSc(第7要素)の回転速度が「0」になる。また、第3ブレーキB3を固定状態とすることで、第2遊星歯車機構PGS2のサンギヤSb(第6要素)の回転速度が「0」になる。
また、第3クラッチC3を連結状態とするで、第2連結体Ra−Sdの回転速度が、第2遊星歯車機構PGS2のサンギヤSb(第6要素)の回転速度と同一速度の「0」になる。そして、出力部3が連結された第4遊星歯車機構PGS4のリングギヤRd(第10要素)の回転速度が図3に示す「2nd」となり、2速段が確立される。
3速段を確立させる場合には、2ウェイクラッチたる第1ブレーキB1を逆転阻止状態とし、第2ブレーキB2及び第3ブレーキB3を固定状態とし、第2クラッチC2を連結状態とする。第1ブレーキB1を逆転阻止状態とすることで、第3連結体Cc−Cdの正転が許容される。また、第2ブレーキB2を固定状態とすることで、第3遊星歯車機構PGS3のサンギヤSc(第7要素)の回転速度が「0」になる。また、第3ブレーキB3を固定状態とすることで、第2遊星歯車機構PGS2のサンギヤSb(第6要素)の回転速度が「0」になる。
また、第2クラッチC2を連結状態とすることで、第2遊星歯車機構PGS2のリングギヤRb(第4要素)の回転速度が、入力軸2に連結された第1遊星歯車機構PGS1のサンギヤSa(第1要素)の回転速度と同一速度の「1」となる。第2遊星歯車機構PGS2のサンギヤSb(第6要素)の回転速度が「0」、リングギヤRb(第4要素)の回転速度が「1」となるため、キャリアCb(第5要素)の回転速度、即ち第1連結体Ca−Cb−Rcの回転速度は、i/(i+1)となる。そして、出力部3が連結された第4遊星歯車機構PGS4のリングギヤRd(第10要素)の回転速度が図3に示す「3rd」となり、3速段が確立される。
4速段を確立させる場合には、2ウェイクラッチたる第1ブレーキB1を逆転阻止状態とし、第2ブレーキB2を固定状態とし、第2クラッチC2及び第3クラッチC3を連結状態とする。第1ブレーキB1を逆転阻止状態とすることで、第3連結体Cc−Cdの正転が許容される。また、第2ブレーキB2を固定状態とすることで、第3遊星歯車機構PGS3のサンギヤSc(第7要素)の回転速度が「0」になる。
また、第3クラッチC3を連結状態とすることで、第2遊星歯車機構PGS2のサンギヤSb(第6要素)と第2連結体Ra−Sdとが同一速度で回転する。これにより、第1遊星歯車機構PGS1と第2遊星歯車機構PGS2との間では、キャリアCa(第2要素)とキャリアCb(第5要素)とが連結され、リングギヤRa(第3要素)とサンギヤSb(第6要素)とが連結されることとなり、第3クラッチC3を連結状態とする4速段においては、第1遊星歯車機構PGS1と第2遊星歯車機構PGS2とで4つの回転要素からなる1つの共線図を描くことができる。
そして、第2クラッチC2を連結状態とすることで、第2遊星歯車機構PGS2のリングギヤRb(第4要素)の回転速度が、第1遊星歯車機構PGS1のサンギヤSa(第1要素)の回転速度と同一速度の「1」となり、第1遊星歯車機構PGS1と第2遊星歯車機構PGS2とで構成される4つの回転要素のうちの2つの回転要素の回転速度が同一速度の「1」となる。
従って、第1遊星歯車機構PGS1及び第2遊星歯車機構PGS2の各要素が相対回転不能なロック状態となり、第1遊星歯車機構PGS1及び第2遊星歯車機構PGS2の全ての要素の回転速度が「1」となる。そして、第3連結体Cc−Cdの回転速度がj/(j+1)となり、出力部3が連結された第4遊星歯車機構PGS4のリングギヤRd(第10要素)の回転速度が図3に示す「4th」となり、4速段が確立される。
5速段を確立させる場合には、2ウェイクラッチたる第1ブレーキB1を逆転阻止状態とし、第2ブレーキB2を固定状態とし、第1クラッチC1及び第2クラッチC2を連結状態とする。第1ブレーキB1を逆転阻止状態とすることで、第3連結体Cc−Cdの正転が許容される。また、第2ブレーキB2を固定状態とすることで、第3遊星歯車機構PGS3のサンギヤSc(第7要素)の回転速度が「0」になる。
また、第1クラッチC1を連結状態とすることで、第3連結体Cc−Cdの回転速度が第1遊星歯車機構PGS1のサンギヤSa(第1要素)の回転速度と同一速度の「1」になる。そして、出力部3が連結された第4遊星歯車機構PGS4のリングギヤRd(第10要素)の回転速度が図3に示す「5th」となり、5速段が確立される。
尚、5速段を確立させるためには第2クラッチC2を連結状態とする必要はない。しかしながら、4速段及び後述する6速段では第2クラッチC2を連結状態とする必要があるため、5速段から4速段へのダウンシフト、及び5速段から後述する6速段へのアップシフトをスムーズに行えるように5速段でも連結状態とさせている。
6速段を確立させる場合には、2ウェイクラッチたる第1ブレーキB1を逆転阻止状態とし、第1から第3の3つのクラッチC1〜C3を連結状態とする。第1ブレーキB1を逆転阻止状態とすることで、第3連結体Cc−Cdの正転が許容される。
また、第2クラッチC2及び第3クラッチC3を連結状態とすることで、4速段で説明したように、第1遊星歯車機構PGS1と第2遊星歯車機構PGS2の各要素が相対回転不能な状態となり、第2連結体Ra−Sdの回転速度が「1」となる。また、第1クラッチC1を連結状態とすることで、第3連結体Cc−Cdの回転速度が「1」となる。
従って、第4遊星歯車機構PGS4は、キャリアCd(第11要素)とサンギヤSd(第12要素)とが同一速度の「1」となり、各要素が相対回転不能なロック状態となる。そして、出力部3が連結された第4遊星歯車機構PGS4のリングギヤRd(第10要素)の回転速度が図3に示す「6th」の「1」となり、6速段が確立される。
7速段を確立させる場合には、2ウェイクラッチたる第1ブレーキB1を逆転阻止状態とし、第3ブレーキB3を固定状態とし、第1クラッチC1及び第2クラッチC2を連結状態とする。第1ブレーキB1を逆転阻止状態とすることで、第3連結体Cc−Cdの正転が許容される。
また、第3ブレーキB3を固定状態とすることで、第2遊星歯車機構PGS2のサンギヤSb(第6要素)の回転速度が「0」になる。また、第2クラッチC2を連結状態とすることで、第2遊星歯車機構PGS2のリングギヤRb(第4要素)の回転速度が、第1遊星歯車機構PGS1のサンギヤSa(第1要素)の回転速度と同一速度の「1」となり、第2遊星歯車機構PGS2のキャリアCb(第5要素)を含む第1連結体Ca−Cb−Rcの回転速度がi/(i+1)となる。
また、第1クラッチC1を連結状態とすることで、第3連結体Cc−Cdの回転速度が、入力軸2に連結された第1遊星歯車機構PGS1のサンギヤSa(第1要素)の回転速度と同一速度の「1」になる。そして、出力部3が連結された第4遊星歯車機構PGS4のリングギヤRd(第10要素)の回転速度が図3に示す「7th」となり、7速段が確立される。
8速段を確立させる場合には、2ウェイクラッチたる第1ブレーキB1を逆転阻止状態とし、第3ブレーキB3を固定状態とし、第1クラッチC1及び第3クラッチC3を連結状態とする。第1ブレーキB1を逆転阻止状態とすることで、第3連結体Cc−Cdの正転が許容される。
また、第3ブレーキB3を固定状態とすることで、第2遊星歯車機構PGS2のサンギヤSb(第6要素)の回転速度が「0」になる。また、第3クラッチC3を連結状態とすることで、第2連結体Ra−Sdの回転速度が第2遊星歯車機構PGS2のサンギヤSb(第6要素)の回転速度と同一速度の「0」になる。また、第1クラッチC1を連結状態とすることで、第3連結体Cc−Cdの回転速度が第1遊星歯車機構PGS1のサンギヤSa(第1要素)の回転速度と同一速度の「1」になる。そして、出力部3が連結された第4遊星歯車機構PGS4のリングギヤRd(第10要素)の回転速度が図3に示す「8th」となり、8速段が確立される。
9速段を確立させる場合には、2ウェイクラッチたる第1ブレーキB1を逆転阻止状態とし、第3ブレーキB3及び第4ブレーキB4を固定状態とし、第1クラッチC1を連結状態とする。第1ブレーキB1を逆転阻止状態とすることで、第3連結体Cc−Cdの正転が許容される。
また、第3ブレーキB3を固定状態とすることで、第2遊星歯車機構PGS2のサンギヤSb(第6要素)の回転速度が「0」になる。また、第4ブレーキB4を固定状態とすることで、第2遊星歯車機構PGS2のリングギヤRb(第4要素)の回転速度も「0」となる。このため、第2遊星歯車機構PGS2の各要素Sb,Cb,Rbは相対回転不能なロック状態となり、第2遊星歯車機構PGS2のキャリアCb(第5要素)を含む第1連結体Ca−Cb−Rcの回転速度も「0」になる。
また、第1クラッチC1を連結状態とすることで、第3連結体Cc−Cdの回転速度は第1遊星歯車機構PGS1のサンギヤSa(第1要素)の回転速度と同一速度の「1」となる。そして、出力部3が連結された第4遊星歯車機構PGS4のリングギヤRd(第10要素)の回転速度が図3に示す「9th」となり、9速段が確立される。
10速段を確立させる場合には、2ウェイクラッチたる第1ブレーキB1を逆転阻止状態とし、第4ブレーキB4を固定状態とし、第1クラッチC1及び第3クラッチC3を連結状態とする。第1ブレーキB1を逆転阻止状態とすることで、第3連結体Cc−Cdの正転が許容される。
また、第3クラッチC3を連結状態とすることで、第2連結体Ra−Sdと第2遊星歯車機構PGS2のサンギヤSb(第6要素)とが同一速度で回転する。また、第4ブレーキB4を固定状態とすることで、第2遊星歯車機構PGS2のリングギヤRb(第4要素)の回転速度が「0」になる。また、第1クラッチC1を連結状態とすることで、第3連結体Cc−Cdの回転速度が第1遊星歯車機構PGS1のサンギヤSa(第1要素)の回転速度と同一速度の「1」となる。そして、出力部3が連結された第4遊星歯車機構PGS4のリングギヤRd(第10要素)の回転速度が図3に示す「10th」となり、10速段が確立される。
後進段を確立させる場合には、2ウェイクラッチたる第1ブレーキB1を固定状態とし、第3ブレーキB3を固定状態とし、第2クラッチC2を連結状態とする。また、第3ブレーキB3を固定状態とし、第2クラッチC2を連結状態とすることで、第1連結体Ca−Cb−Rcの回転速度がi/(i+1)となる。また、第1ブレーキB1を固定状態とすることで、第3連結体Cc−Cdの回転が阻止され、第3連結体Cc−Cdの回転速度が「0」になる。そして、出力部3が連結された第4遊星歯車機構PGS4のリングギヤRd(第10要素)の回転速度が図3に示す逆転の「Rvs」となり、後進段が確立される。
尚、図3中の破線で示す速度線は、4つの遊星歯車機構PGS1〜PGS4のうち動力伝達する遊星歯車機構に追従して他の遊星歯車機構の各要素が回転(空回り)することを表している。
図4は、上述した各変速段におけるクラッチC1〜C3、ブレーキB1〜B4の状態を纏めて表示した図であり、第1から第3の3つのクラッチC1〜C3、第2ブレーキB2から第4ブレーキB4の列の「○」は連結状態、または固定状態を示し、空欄は開放状態を示している。また、第1ブレーキB1の列の「R」は逆転阻止状態を示し、「L」は固定状態を示している。
また、下線を付した「R」及び「L」は第1ブレーキB1の働きで第3連結体Cc−Cdの回転速度が「0」となることを示している。また、「R/L」は、通常時は逆転阻止状態の「R」であるが、エンジンブレーキを効かせる場合には固定状態の「L」に切り換えることを示している。
また、図4には、第1遊星歯車機構PGS1のギヤ比hを2.734、第2遊星歯車機構PGS2のギヤ比iを1.614、第3遊星歯車機構PGS3のギヤ比jを2.681、第4遊星歯車機構PGS4のギヤ比kを1.914とした場合における各変速段の変速比(入力軸2の回転速度/出力部3の回転速度)、及び公比(各変速段間の変速比の比。所定の変速段の変速比を所定の変速段よりも1段高速側の変速段の変速比で割った値。)も示しており、これによれば、公比を適切に設定できることが分かる。
次に、図5を参照して、ツーウェイクラッチについて詳しく説明する。第1ブレーキB1は、第3連結体Cc−Cdを変速機ケース1に固定する固定状態と、第3連結体Cc−Cdの正転を許容し逆転を阻止する逆転阻止状態とに切換自在なツーウェイクラッチで構成されている。このツーウェイクラッチの一例を図5に示して具体的に説明する。
図5の第1ブレーキB1としてのツーウェイクラッチTWは、第3連結体Cc−Cdに連結されるインナーリングTW1と、インナーリングTW1の径方向外方に間隔を存して配置されると共に変速機ケース1に連結されるアウターリングTW2と、インナーリングTW1とアウターリングTW2との間に配置される保持リングTW3とを備える。
インナーリングTW1には、外周面に複数のカム面TW1aが形成されている。保持リングTW3には、カム面TW1aに対応させて複数の切欠孔TW3aが設けられている。この切欠孔TW3aには、ローラTW4が収容されている。また、ツーウェイクラッチTWは、図示省略した噛合機構を備える。
噛合機構は、アウターリングTW2と保持リングTW3とを連結するアウター連結状態と、インナーリングTW1と保持リングTW3とを連結するインナー連結状態とに切換自在に構成されている。
また、ローラTW4の径は、図5(a)に示すように、ローラTW4がカム面TW1aの中央部に存するときは隙間Aが開き、図5(b)及び(c)に示すように、ローラTW4がカム面TW1aの端部に存するときにはインナーリングTW1及びアウターリングTW2に接触するように、設定されている。
噛合機構で、アウターリングTW2と保持リングTW3とが連結されたアウター連結状態であるときは、インナーリングTW1が正転及び逆転のどちらに回転しようとしても、図5(b)及び(c)に示すように、保持リングTW3も変速機ケース1に固定されているため、ローラTW4がカム面TW1aの端部に位置することとなる。
このとき、ローラTW4がカム面TW1aとアウターリングTW2の内周面とに挟まれて、インナーリングTW1の回転が阻止される。即ち、ツーウェイクラッチTWは固定状態となる。
図示省略した噛合機構は、インナーリングTW1と保持リングTW3とを連結するインナー連結状態では、図5(b)に示すように切欠孔TW3aがカム面TW1aの一方の端部に位置する状態となるように構成されている。
図5における時計回り方向を逆転方向とすると、このツーウェイクラッチTWは、インナーリングTW1と保持リングTW3とを連結するインナー連結状態とすることにより、逆転阻止状態となる。
また、本実施形態の自動変速機TMが搭載される車両には、シフトポジションを前進レンジ、ニュートラルレンジ、後進レンジ、の何れかに切換自在なシフトバイワイヤ形式のシフトレバー42(シフトポジション検出部)と、油圧制御回路43の油の温度(油温)を検出する油温検出部43aと、油圧を調節して各クラッチC1〜C3、各ブレーキB1〜B4に供給自在なソレノイドバルブ43b(油圧検出部)と、車両の走行速度を検出する車速検出部44と、エンジンブレーキのオン、オフを検出するエンジンブレーキ判定部46と、駆動源ENGの回転数を検出する駆動源回転数検出部48と、入力軸2の回転数を検出する入力回転数検出部50と、出力部3の回転数を検出する出力回転数検出部52と、ブレーキペダルのオン、オフを検出するブレーキペダル検出部54(ブレーキ検出部)と、アクセルペダルのオン、オフを検出するアクセル開度検出部56とが設けられている。
制御部ECUは、シフトレバー42のシフトポジションの情報、油温検出部43aからの油圧制御回路43の油の温度(油温)の情報、ソレノイドバルブ43b(油圧検出部)からの供給する油圧の情報、車速検出部44からの車両の走行速度の情報、エンジンブレーキ判定部46からのエンジンブレーキの使用状態としてのエンジンブレーキのオン、オフの情報、駆動源回転数検出部48からの駆動源ENGの回転数の情報、入力回転数検出部50からの入力軸2の回転数の情報、ブレーキペダル検出部54からのブレーキペダルのオン、オフの情報、アクセル開度検出部56からのアクセルペダルのオン、オフの情報を受信する。
また、制御部ECUは、所定の車両情報に基いて車両が停車中であるか否かを判定する。即ち、本実施形態においては、制御部ECUが本発明の停車判定部の機能を兼ね備えている。また、制御部ECUは、車両の駆動輪の回転数情報を受信し、車両の駆動輪がロックして回転していないロック状態であるか否かを判定する。即ち、本実施形態においては、制御部ECUが本発明のロック検出部の機能を兼ね備えている。
次に、図6及び図7を参照して、本実施形態の自動変速機TMの制御部ECUの作動を説明する。本実施形態の制御部ECUは、運転者のシフト操作により、シフトポジションが後進レンジ(R)から前進レンジ(D)に切り換えられると、まず、図6に示すフローチャートの処理を所定のサイクルタイムで実行する。そして、図6に示すフローチャートの処理の実行により、1速段のインギヤが確立された後、図7に示すフローチャートの処理を実行して、ツーウェイクラッチで構成される第1ブレーキB1を固定状態(L)から逆転阻止状態(R)に切り換える。
まず、制御部ECUは、シフトポジションが後進レンジ(R)である場合に、ステップ1で、運転者のシフト操作により、シフトポジションが後進レンジ(R)から前進レンジ(D)に切り換えられたか否かを判定する(前進レンジ切換工程)。前進レンジ(D)に切り換えられていない場合は、そのまま今回の処理を終了する。
ステップ1で前進レンジ(D)に切り換えられた場合には、ステップ2に進み、後進車速が予め設定された第1所定速度以上であるか否かを判定する(車速判定工程)。後進車速が所定速度未満である場合には、ステップ3に進み、車両が停車中であり、且つブレーキペダルが踏まれているか否かを判定する(停車判定工程)。車両が停車中であり、且つブレーキペダルが踏まれている場合には、ステップ4に進み、第2ブレーキB2に油圧を供給する(油圧供給工程、早期油圧増加工程、油圧ステップ増加)。
このとき、車両は停車中であり、且つ第2クラッチC2が連結状態のままであるため、図10に示すように、入力軸2の回転数が「0」に抑えられる。即ち、本実施形態においては、第2ブレーキB2が「後進段(RVS)を確立したときに係合されると出力が阻止される摩擦係合機構」である本発明の第1摩擦係合機構に該当する。これにより、従来のように入力軸の回転数が増加することが無く(図10(b)の点線を参照)、従来よりも迅速にインギヤにすることができると共に、インギヤ時のショックを低減させることができる。
また、車速「0」、入力軸2の回転数も「0」であるため、自動変速機の内部回転が全て「0」となっており、第2ブレーキB2に供給する油圧も比較的迅速に高めることが可能となる。従って、ステップ4においては、第2ブレーキB2に供給する油圧を最終目標油圧まで一気に増加させるようにしている(油圧供給工程、早期油圧増加工程、油圧ステップ増加)。これにより、車両が停車中であるときに、入力軸2の回転を「0」にすることができるため、早期油圧増加工程で第1摩擦係合機構へ油圧を迅速に供給することができ、インギヤの応答性を向上させることができる。
また、ステップ4においては、出力部3の回転が阻止された状態となっており、この状態をインターロック状態(I/L)と定義する。本実施形態の自動変速機TMによれば、車両が停車中であり、且つ入力軸2の回転を「0」にすることができるため、通常油圧増加工程で第1摩擦係合機構へ油圧を迅速に供給することができ、インギヤの応答性を向上させることができる。
そして、ステップ5に進み、第2ブレーキB2に供給される油圧が第1所定値以上であるか否かを判定する(第1所定値工程)。第1所定値未満である場合には、そのまま今回の処理を終了する。ステップ5で第2ブレーキB2に供給される油圧が第1所定値以上である場合には、ステップ6に進み、第2クラッチC2を開放して、1速段(LOW)のインギヤ制御処理を実行する(開放工程)。そして、図6のフローチャートに示す処理を終了する。本実施形態においては、第2クラッチC2が、「後進段(RVS)を確立するときに係合されると共に、前進側の1速段(最低速段)を確立するときには開放される摩擦係合機構」である本発明の第2摩擦係合機構に該当する。
ステップ3で、車両が停車中でなく、又はブレーキペダルが踏まれていない場合には、ステップ7に分岐し、第2ブレーキB2にインギヤ制御処理のときの設定油圧を供給する(通常油圧増加工程)。このとき、車両は後進方向に走行しているが、出力部3の回転は阻止される状態となり、出力部3の回転が減速されていく半インターロック状態(半I/L)となる。
そして、ステップ8に進み、駆動輪がロックして回転していないロック状態であるか否かを判定する(ロック判定工程)。ロック状態でない場合には、ステップ9に進み車速が「0」(第2所定速度)であるか否かを判定する(車速ゼロ判定工程)。車速が「0」でない場合には、そのまま今回の処理を終了する。
ステップ9で車速が「0」である場合には、ステップ10に進み、第2ブレーキB2に第1所定値よりも高い第2所定値としてのライン圧を供給すると共に、第2クラッチC2を開放して、1速段(LOW)のインギヤ制御を実行する(開放工程)。そして、図6のフローチャートに示す処理を終了する。なお、本実施形態においては、ステップ9の車速が「0」であることをもって、第1摩擦係合機構としての第2ブレーキB2へ供給される油圧が第1所定値以上となったと判定するように構成している。
本実施形態の自動変速機TMによれば、後進車速が第1所定速度未満の低車速である場合に、第1摩擦係合機構としての第2ブレーキB2を油圧供給工程で係合(固定状態と)させることで、スムーズに車速を第2所定速度以下(例えば、速度「0」)まで落として、後進レンジから前進レンジの切り換えを迅速に行うことができる。
なお、本実施形態は、第2所定速度として、「0」を用いているが、本発明の車速ゼロ判定工程における「第1所定速度未満に設定された第2所定速度以下」とは、これに限らず、シフトポジションが後進レンジから前進レンジに切り換えられるときのショックを押さえる程度の速度以下であればよい。
ステップ8でロック状態である場合には、ステップ11に分岐して、第2クラッチC2を即時開放させることにより、駆動輪のロックを解除させると共に、1速段(LOW)のインギヤ制御を実行する(ロック解除工程)。そして、図6のフローチャートに示す処理を終了する。これにより、車両の駆動輪のロックを迅速に解除することができ、車両の挙動安定性を向上させることができる。
ステップ2で後進車速が所定車速以上である場合には、ステップ12に分岐し、第2ブレーキB2にインギヤ制御時の設定油圧を供給すると共に、第2クラッチC2を開放して、1速段(LOW)のインギヤ制御を実行する。そして、図6のフローチャートに示す処理を終了する。
図6のフローチャートに示す処理で1速段(LOW)のインギヤ制御を実行して終了した場合には、次に、図7に示すフローチャートの処理を所定のサイクルタイムで実行する。まず、制御部ECUは、ステップ21で、前進1速段定常走行であるか否かを所定の車両情報に基いて判定する。前進1速段定常走行でない場合(図7のステップ1で「No」の場合)には、そのまま今回の処理を終了する。
ステップ21で、前進1速段定常走行であると認定された場合には、ステップ22に進み、ツーウェイクラッチで構成される第1ブレーキB1が逆転阻止状態以外の他の状態(固定状態や固定状態と逆転阻止状態との切換途中の状態など)であるか否かを判定する。第1ブレーキB1が逆転阻止状態である場合には、そのまま今回の処理を終了する。
ステップ22で、第1ブレーキB1が逆転阻止状態以外の他の状態である場合には、ステップ23に進み、車速検出部44で検出された車両の走行速度が所定速度以下(例えば、時速5km以下)であるか否かを判定する。車速検出部44で検出された車両の走行速度が所定速度を超える場合には、そのまま今回の処理を終了することにより、第1ブレーキB1の固定状態から逆転阻止状態への切り換えを阻止する。
ステップ23で、車速検出部44で検出された車両の走行速度が所定速度以下である場合には、ステップ24に進み、エンジンブレーキ判定部46でエンジンブレーキ状態でないと判定されているか否かを判定する。
エンジンブレーキ判定部46は、駆動源回転数検出部48で検出される駆動源ENGの回転数と、入力回転数検出部50で検出される入力軸2の回転数とに基いて、検出された両回転数の比がエンジンブレーキを使用していると思われる所定値を超えるとき、または出力回転数検出部52で検出される出力部3の回転数に基いて、出力部3の回転数が所定値を超えるときに、エンジンブレーキ状態であると判定する。
エンジンブレーキ判定部46がエンジンブレーキ状態であると判定している場合には、そのまま今回の処理を終了することにより、第1ブレーキB1の固定状態から逆転阻止状態への切り換えを阻止する。
ステップ24で、エンジンブレーキ判定部46がエンジンブレーキ状態でないと判定している場合には、ステップ25に進み、ブレーキペダル検出部54でブレーキペダルが踏まれていない状態であると判定されているか否かを判定する。ブレーキペダル検出部54でブレーキペダルが踏まれていると判定されている場合には、そのまま今回の処理を終了することにより、第1ブレーキB1の固定状態(L)から逆転阻止状態(R)への切り換えを阻止する。
ステップ25で、ブレーキペダル検出部54でブレーキペダルが踏まれていない状態であると判定されている場合には、ステップ26に進み、制御部ECUは、第1ブレーキB1を固定状態(状態の切り換え途中の場合はその状態)から逆転阻止状態へ切り換えて、処理を終了する(切換機構工程)。
次に、図8及び図9を参照して、第1摩擦係合機構としての第2ブレーキB2と第2摩擦係合機構としての第2クラッチC2とを係合させることにより確立される3速段にインギヤしてから1速段(LOW)にインギヤして、後進レンジ(R)から前進レンジ(D)に切り換えるときのショックをより抑制させる場合について説明する。なお、本実施形態においては、3速段が本願発明の前進側最低速段よりも高速側の変速段に相当する。
3速段にインギヤさせる場合には、図6に示すフローチャートの処理と比較して、ステップ6に相当する部分の処理と、ステップ9及びステップ10に相当する部分の処理とが異なる以外は、図6の処理と同様である。
図8を参照して、ステップ5で第2ブレーキB2に供給される油圧が第1所定値以上である場合には、ステップ31に進み、第1ブレーキB1を固定状態(L)から逆転阻止状態(R)に切り換える。第1ブレーキB1を逆転阻止状態(R)に切り換えると、第3連結体Cc−Cdの正転(前進方向の回転)が許容される状態になる。そして、3速段を確立する第2ブレーキB2及び第3ブレーキB3が固定状態であり、第2クラッチC2が開放されずに連結状態を維持しているため、3速段にインギヤすることができる。これにより、後進レンジ(R)から前進レンジ(D)へ切り替えるときのショックをより低減することができる。
ステップ32では、第1ブレーキB1が逆転阻止状態(R)に切り換えられたか否かを判定する。第1ブレーキB1の逆転阻止状態(R)の切り換えが完了していない場合には、そのまま今回の処理を終了する。
ステップ32で第1ブレーキB1の逆転阻止状態(R)の切り換えが完了している場合には、ステップ33に進み、第2クラッチC2を開放して1速段(LOW)のインギヤ制御を実行する。そして、図8のフローチャートに示す処理を終了する。
次に、図9を参照して、ステップ8でロック状態である場合、ステップ41に進み、第2ブレーキB2に供給される油圧が第1所定値以上であるか否かを判定する。油圧が第1所定値未満である場合には、そのまま今回の処理を終了する。これにより、車両の駆動輪のロックを迅速に解除することができ、車両の挙動安定性を向上させることができる。
ステップ41で油圧が第1所定値以上である場合には、ステップ42に進み、第1ブレーキB1を固定状態(L)から逆転阻止状態(R)に切り換え、第3連結体Cc−Cdの正転(前進方向の回転)が許容されるようにする。ステップ43で第1ブレーキB1の逆転阻止状態(R)への切り換えが完了したと判定した後は、ステップ44に進み、車速が「0」であるか否かを判定する。車速が「0」でない場合には、そのまま今回の処理を終了する。
ステップ44で車速が「0」である場合には、ステップ45に進み、第2ブレーキB2にライン圧を供給すると共に、第2クラッチC2を開放して、1速段(LOW)のインギヤ制御を実行する。そして、図9のフローチャートに示す処理を終了する。なお、図8及び図9の処理も所定のサイクルタイムで実行される。
図10は、図6のフローチャートにおいて、ステップ1〜ステップ6の処理を実行するときの作動を変速制御状態の遷移と共に示す説明図である。図11は、ステップ3で、停車中でないと判定されて、ステップ7〜ステップ10の処理を実行するときの作動を示す説明図である。
図12は、図8のフローチャートの処理を実行するときの作動を変速制御状態の遷移と共に示す説明図である。図13は、図9のフローチャートの処理を実行するときの作動を示す説明図である。図10(a)及び図12(a)の第2ブレーキB2の列の「ON」は油圧供給開始を意味し、図10(a)及び図12(a)の第2クラッチC2の列の「OFF」は油圧の開放開始を意味している。
本実施形態の自動変速機TMによれば、前進10段の変速を行うことができる。また、各変速段において、湿式多板クラッチ及び湿式多板ブレーキのうち開放状態となっている係合機構の数(開放数)が4つ以下となり、前進10段の変速が行えるにも拘らず、フリクションロスの増加を防止できる。
また、本実施形態の自動変速機TMによれば、第1摩擦係合機構としての第2ブレーキB1を係合(固定状態と)させてから第2摩擦係合機構としての第2クラッチC2を開放状態とする。これにより、一時的に後進段を確立する摩擦係合機構に加えて第2ブレーキB1が固定状態とされることとなり、入力軸2の回転が阻害されることとなる。従って、入力軸2の回転数の増加が阻止され、シフトポジションが後進レンジから前進レンジに切り換えられるときのショックを防止又は抑制すると共に、スムーズにインギヤすることができる。
なお、実施形態の自動変速機TMにおいては、何れか1つの変速段(例えば、10速段)を省略して前進9速段の変速を行うように構成してもよい。
また、本実施形態では、シフトポジションの切換えをシフトバイワイヤ形式のシフトレバー操作で行うものを説明した。しかしながら、シフトポジションの切換え方法については、これに限らず、例えば、ボタンの押圧などによってシフトポジションを切り換えるように構成されていてもよい。この場合、例えば、ボタンの押圧信号から選択されたシフトポジションを判断するように構成することもできる。
1…変速機ケース、2…入力軸(入力部)、3…出力部(出力ギヤ)、42…シフトレバー(シフトポジション検出部)、43…油圧回路、43a…温度検出部、43b…ソレノイドバルブ(油圧検出部)、43c…油圧スイッチ、TM…自動変速機、44…車速検出部、46…エンジンブレーキ判定部、48…駆動源回転数検出部、50…入力回転数検出部、52…出力回転数検出部、54…ブレーキペダル検出部(ブレーキ検出部)、56…アクセル開度検出部、ENG…駆動源、LC…ロックアップクラッチ、DA…ダンパ、TC…トルクコンバータ、PGS1…第1遊星歯車機構、Sa…サンギヤ(第1要素)、Ca…キャリア(第2要素)、Ra…リングギヤ(第3要素)、Pa…ピニオン、PGS2…第2遊星歯車機構、Sb…サンギヤ(第6要素)、Cb…キャリア(第5要素)、Rb…リングギヤ(第4要素)、Pb…ピニオン、PGS3…第3遊星歯車機構、Sc…サンギヤ(第7要素)、Cc…キャリア(第8要素)、Rc…リングギヤ(第9要素)、Pc…ピニオン、PGS4…第4遊星歯車機構、Sd…サンギヤ(第12要素)、Cd…キャリア(第11要素)、Rd…リングギヤ(第10要素)、Pd…ピニオン、C1…第1クラッチ、C2…第2クラッチ(第2摩擦係合機構)、C3…第3クラッチ、B1…第1ブレーキ(切換機構)、B2…第2ブレーキ(第1摩擦係合機構)、B3…第3ブレーキ、B4…第4ブレーキ、ECU…制御部(停車判定部、ロック検出部)。
Claims (6)
- 駆動源からの駆動力が伝達されるトルクコンバータと、
該トルクコンバータを介して前記駆動源の駆動力が伝達される入力部と、
サンギヤ、キャリア、リングギヤの3つの要素を夫々有する複数の遊星歯車機構と、
前記遊星歯車機構の要素同士を連結し、または前記要素を固定する複数の油圧作動型の摩擦係合機構と、
前記要素の前進方向の回転を許容し後進方向の回転を阻止する逆転阻止状態と、前記要素を固定する固定状態とに切換自在な切換機構と、
前記摩擦係合機構と前記切換機構とを制御する制御部とを備え、
該制御部で前記摩擦係合機構、及び前記切換機構の状態を制御して、前記駆動源からの駆動力を所定の車両情報に基いて複数段に変速して出力する自動変速機であって、
前記摩擦係合機構に供給される油圧を検出する油圧検出部を備え、
前記制御部は、車両の走行速度を検出する車速検出部からの情報を受けられるように構成されると共に、車両のシフトポジションを検出するシフトポジション検出部からの情報を受けられるように構成され、
後進段を確立する場合に係合される前記摩擦係合機構に加えて係合させると前記入力部の回転を阻止可能な摩擦係合機構を第1摩擦係合機構と定義し、前記後進段を確立するときに係合されると共に、前進側の最低速段を確立するときには開放される摩擦係合機構を第2摩擦係合機構と定義して、
前記制御部は、
前記シフトポジション検出部の情報に基いて、シフトポジションが後進レンジから前進レンジに切り換えられたか否かを判定する前進レンジ切換工程と、
前記車速検出部の情報に基いて、車速が第1所定速度以上であるか否かを判定する車速判定工程と、
前記前進レンジ切換工程で、シフトポジションが後進レンジから前進レンジに切り換えられたと判定され、且つ前記車速判定工程で車速が第1所定速度未満であると判定された場合に、前記第1摩擦係合機構への油圧の供給を開始する油圧供給工程と、
前記第1摩擦係合機構へ供給される油圧が第1所定値以上となったときに、前記第2摩擦係合機構の開放を開始する開放工程と、
前記第1摩擦係合機構へ供給される油圧が前記第1所定値よりも高い値に設定された第2所定値以上となり、前記第2摩擦係合機構を開放させた後に、前記切換機構を固定状態から逆転阻止状態に切り換える切換機構工程と、
を備えることを特徴とする自動変速機。 - 請求項1記載の自動変速機であって、
前記制御部は、ブレーキペダルが踏まれているか否かを検出するブレーキ検出部からの情報を受けられるように構成されると共に、所定の車両情報に基いて車両が停車中であるか否かを判定する停車判定部を備え、
前記制御部は、
前記車速判定工程で検出される車速が所定速度未満であると判定された場合に、前記停車判定部で車両が停車中であり、且つ前記ブレーキ検出部でブレーキペダルが踏まれているか否かを判定する停車判定工程と、
該停車判定工程で停車中ではなく、又はブレーキペダルが踏まれていないと判定された場合に、前記第1摩擦係合機構への油圧の供給を開始する油圧供給工程と、
前記車速判定工程で検出される車速が前記第1所定速度未満に設定された第2所定速度以下であるか否かを判定する車速ゼロ判定工程と、
前記第1摩擦係合機構の係合を完了させると共に、前記第2摩擦係合機構を開放させる開放工程と、
を備えることを特徴とする自動変速機。 - 請求項2に記載の自動変速機であって、
前記制御部は、
前記停車判定工程で停車中であり、且つブレーキペダルが踏まれていると判定された場合に、前記第1摩擦係合機構へ供給する油圧を最終目標油圧まで一気に増加させる早期油圧増加工程と、
前記第1摩擦係合機構へ供給される油圧が前記第1所定値以上であるか否かを判定する第1所定値工程と、
前記第1摩擦係合機構へ供給される油圧が前記第1所定値以上であるときに、前記第2摩擦係合機構を開放させる開放工程とを備えることを特徴とする自動変速機。 - 請求項1に記載の自動変速機であって、
前記制御部は、ブレーキペダルが踏まれているか否かを検出するブレーキ検出部からの情報を受けられるように構成されると共に、所定の車両情報に基いて車両が停車中であるか否かを判定する停車判定部を備え、
前記制御部は、
前記停車判定部で車両が停車中であり、且つ前記ブレーキ検出部からブレーキペダルが踏まれているか否かを判定する停車判定工程と、
該停車判定工程で車両が停車中ではなく、又はブレーキペダルが踏まれていないと判定した場合に、前記第1摩擦係合機構への油圧の供給を開始する油圧供給工程と、
前記第1摩擦係合機構へ供給される油圧が前記第1所定値以上であるか否かを判定する第1所定値工程と、
該第1所定値工程で前記第1摩擦係合機構へ供給される油圧が前記第1所定値以上であると判定された場合に、前記切換機構を固定状態から逆転阻止状態に切り換える切換機構工程と、
該切換機構工程を実行した後に、車速が前記第1所定速度未満に設定された第2所定速度以下であるか否かを判定する車速ゼロ判定工程と、
該車速ゼロ判定工程で車速が第2所定速度以下であると判定された場合に、前記第1摩擦係合機構へ供給される油圧を前記第2所定値以上となるようにし、前記第2摩擦係合機構の開放する開放工程と、
を備えることを特徴とする自動変速機。 - 請求項2に記載の自動変速機であって、
前記制御部は、
前記停車判定工程で停車中であり、且つブレーキペダルが踏まれていると判定された場合に、前記第1摩擦係合機構へ供給する油圧を最終目標油圧まで一気に増加させる早期油圧増加工程と、
前記第1摩擦係合機構へ供給される油圧が前記第1所定値以上であるか否かを判定する第1所定値工程と、
該第1所定値工程で前記第1摩擦係合機構へ供給される油圧が前記第1所定値以上であると判定された場合に、前記切換機構を固定状態から逆転阻止状態に切り換える切換機構工程と、
該切換機構工程を実行した後に、前記第1摩擦係合機構へ供給される油圧を前記第2所定値以上となるようにし、前記第2摩擦係合機構の開放する開放工程と、
を備えることを特徴とする自動変速機。 - 請求項2又は請求項4に記載の自動変速機であって、
前記制御部は、前記車両の駆動輪がロックして回転していないロック状態であるか否かを検出するロック検出部からの情報を受けられるように構成され、
前記制御部は、
前記油圧供給工程を実行した後で、前記ロック検出部でロック状態が検出されているか否かを判定するロック判定工程と、
該ロック判定工程でロック状態であると判定した場合には、前記第2摩擦係合機構を開放するロック解除工程と、
を備えることを特徴とする自動変速機。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2013098638A JP2014219058A (ja) | 2013-05-08 | 2013-05-08 | 自動変速機 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2013098638A JP2014219058A (ja) | 2013-05-08 | 2013-05-08 | 自動変速機 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
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Family Applications (1)
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JP2013098638A Pending JP2014219058A (ja) | 2013-05-08 | 2013-05-08 | 自動変速機 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2014219058A (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2016211623A (ja) * | 2015-04-30 | 2016-12-15 | 本田技研工業株式会社 | 制御装置 |
JP2016211625A (ja) * | 2015-04-30 | 2016-12-15 | 本田技研工業株式会社 | 制御装置 |
JP2016211624A (ja) * | 2015-04-30 | 2016-12-15 | 本田技研工業株式会社 | 制御装置 |
US11852236B2 (en) * | 2022-03-31 | 2023-12-26 | Honda Motor Co., Ltd. | Control device of automatic transmission |
-
2013
- 2013-05-08 JP JP2013098638A patent/JP2014219058A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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US11852236B2 (en) * | 2022-03-31 | 2023-12-26 | Honda Motor Co., Ltd. | Control device of automatic transmission |
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