以下、図面を参照して、本実施形態に係る自動変速機について説明する。本実施形態は、自動変速機を車両に搭載した場合の実施形態であるが、本発明の自動変速機は、船舶等、他の乗り物や無人機にも搭載し得るものである。
まず、図1及び図2を参照して、自動変速機TMの概略構成について説明する。図1は、自動変速機TMの構成を示す模式図である。図2は、自動変速機TMのスケルトン図である。
図1に示すように、自動変速機TMは、変速機ケース1(筐体)と、変速機ケース1内で回転自在に軸支されている入力軸2(入力部材)と、変速機ケース1内で入力軸2と同心に回転自在に軸支されている出力ギヤ3(出力部材)とを備えている。
また、自動変速機TMが搭載される車両は、シフトポジション(変速段)を前進レンジ、ニュートラルレンジ及び後進レンジのいずれかに切換自在なシフトレバーSLと、アクセルペダルAPのオン・オフを検出するアクセル開度検出器4と、ブレーキペダルBPのオン・オフを検出するブレーキペダル検出器5とを備えている。
図2に示すように、入力軸2には、内燃機関(エンジン)等の駆動源ENGが出力する駆動力が、トルクコンバータTCを介して伝達される。トルクコンバータTCは、ロックアップクラッチLC及びダンパDAを有している。なお、トルクコンバータTCに代えて、摩擦係合自在に構成される単板型又は多板型の発進クラッチを設けてもよい。
出力ギヤ3の回転は、ディファレンシャルギヤ(不図示)又はプロペラシャフト(不図示)を介して、車両の左右の駆動輪に伝達される。
変速機ケース1内には、第1遊星歯車機構PGS1、第2遊星歯車機構PGS2、第3遊星歯車機構PGS3及び第4遊星歯車機構PGS4の4つの遊星歯車機構が、入力軸2と同心に配置されている。
また、変速機ケース1内には、第1クラッチC1、第2クラッチC2及び第3クラッチC3、並びに、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2、第3ブレーキB3及び第4ブレーキB4の7つの係合機構が設けられている。
次に、図3を参照して、自動変速機TMが備えている4つの遊星歯車機構及び7つの係合機構について説明する。
なお、図3における共線図(遊星歯車機構の3つの要素の相対回転速度の比を直線(速度線)で表すことができる図)は、図の上から順に、第2遊星歯車機構PGS2、第1遊星歯車機構PGS1、第3遊星歯車機構PGS3、第4遊星歯車機構PGS4の共線図を示している。
第1遊星歯車機構PGS1は、サンギヤSaと、リングギヤRaと、サンギヤSa及びリングギヤRaに噛合するピニオンPaを自転及び公転自在に軸支するキャリアCaとからなるいわゆるシングルピニオン型の遊星歯車機構で構成されている。
なお、第1遊星歯車機構PGS1のようなシングルピニオン型の遊星歯車機構は、キャリアを固定してサンギヤを回転させると、リングギヤがサンギヤと異なる方向に回転するので、マイナス遊星歯車機構又はネガティブ遊星歯車機構ともいう。また、この遊星歯車機構は、リングギヤを固定してサンギヤを回転させると、キャリアがサンギヤと同一方向に回転する。
図3の上から2段目の共線図に示すように、第1遊星歯車機構PGS1の3つの要素Sa,Ca,Raを、共線図におけるギヤ比(リングギヤの歯数/サンギヤの歯数)に対応する間隔での並び順に左側(一方)からそれぞれ第1要素、第2要素及び第3要素とすると、第1要素はサンギヤSa、第2要素はキャリアCa、第3要素はリングギヤRaになる。
サンギヤSaとキャリアCaとの間の間隔とキャリアCaとリングギヤRaとの間の間隔との比は、第1遊星歯車機構PGS1のギヤ比をhとした場合、h:1に設定されている。
第2遊星歯車機構PGS2も、第1遊星歯車機構PGS1と同様に、サンギヤSbと、リングギヤRbと、サンギヤSb及びリングギヤRbに噛合するピニオンPbを自転及び公転自在に軸支するキャリアCbとからなるいわゆるシングルピニオン型の遊星歯車機構で構成されている。
図3の上から1段目(最上段)の共線図に示すように、第2遊星歯車機構PGS2の3つの要素Sb,Cb,Rbを、共線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に左側(一方)からそれぞれ第4要素、第5要素及び第6要素とすると、第4要素はリングギヤRb、第5要素はキャリアCb、第6要素はサンギヤSbになる。
サンギヤSbとキャリアCbとの間の間隔とキャリアCbとリングギヤRbとの間の間隔との比は、第2遊星歯車機構PGS2のギヤ比をiとした場合、i:1に設定されている。
第3遊星歯車機構PGS3も、第1遊星歯車機構PGS1及び第2遊星歯車機構PGS2と同様に、サンギヤScと、リングギヤRcと、サンギヤSc及びリングギヤRcに噛合するピニオンPcを自転及び公転自在に軸支するキャリアCcとからなるいわゆるシングルピニオン型の遊星歯車機構で構成されている。
図3の上から3段目の共線図に示すように、第3遊星歯車機構PGS3の3つの要素Sc,Cc,Rcを、共線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に左側(一方)からそれぞれ第7要素、第8要素及び第9要素とすると、第7要素はサンギヤSc、第8要素はキャリアCc、第9要素はリングギヤRcになる。
サンギヤScとキャリアCcとの間の間隔とキャリアCcとリングギヤRcとの間の間隔との比は、第3遊星歯車機構PGS3のギヤ比をjとした場合、j:1に設定されている。
第4遊星歯車機構PGS4も、第1遊星歯車機構PGS1、第2遊星歯車機構PGS2及び第3遊星歯車機構PGS3と同様に、サンギヤSdと、リングギヤRdと、サンギヤSd及びリングギヤRdに噛合するピニオンPdを自転及び公転自在に軸支するキャリアCdとからなるいわゆるシングルピニオン型の遊星歯車機構で構成されている。
図3の上から4段目(最下段)の共線図に示すように、第4遊星歯車機構PGS4の3つの要素Sd,Cd,Rdを、共線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に左側からそれぞれ第10要素、第11要素及び第12要素とすると、第10要素はリングギヤRd、第11要素はキャリアCd、第12要素はサンギヤSdになる。
サンギヤSdとキャリアCdとの間の間隔とキャリアCdとリングギヤRdとの間の間隔との比は、第4遊星歯車機構PGS4のギヤ比をkとした場合、k:1に設定されている。
第1遊星歯車機構PGS1のサンギヤSa(第1要素)は、入力軸2(入力部材)に連結されている。また、第4遊星歯車機構PGS4のリングギヤRd(第10要素)は、出力ギヤ3(出力部材)に連結されている。
また、第1遊星歯車機構PGS1のキャリアCa(第2要素)と第2遊星歯車機構PGS2のキャリアCb(第5要素)と第3遊星歯車機構PGS3のリングギヤRc(第9要素)とが連結されて、第1連結体Ca−Cb−Rcが構成されている。また、第1遊星歯車機構PGS1のリングギヤRa(第3要素)と第4遊星歯車機構PGS4のサンギヤSd(第12要素)とが連結されて、第2連結体Ra−Sdが構成されている。また、第3遊星歯車機構PGS3のキャリアCc(第8要素)と第4遊星歯車機構PGS4のキャリアCd(第11要素)とが連結されて、第3連結体Cc−Cdが構成されている。
第1クラッチC1は、油圧作動型の湿式多板摩擦クラッチである。第1クラッチC1は、第1遊星歯車機構PGS1のサンギヤSa(第1要素)と第3連結体Cc−Cdとが連結する連結状態とこの連結を断つ開放状態とを、切換自在に構成されている。
第2クラッチC2は、油圧作動型の湿式多板摩擦クラッチである。第2クラッチC2は、第1遊星歯車機構PGS1のサンギヤSa(第1要素)と第2遊星歯車機構PGS2のリングギヤRb(第4要素)とが連結する連結状態とこの連結を断つ開放状態とを、切換自在に構成されている。
第3クラッチC3は、油圧作動型の湿式多板摩擦クラッチである。第3クラッチC3は、第2遊星歯車機構PGS2のサンギヤSb(第6要素)と第2連結体Ra−Sdとが連結する連結状態とこの連結を断つ開放状態とを、切換自在に構成されている。
第1ブレーキB1は、いわゆるツーウェイクラッチである。第1ブレーキB1は、第3連結体Cc−Cdの正転(入力軸2の回転方向と同一方向への回転)を許容して逆転を阻止する逆転阻止状態と第3連結体Cc−Cdを変速機ケース1に固定する固定状態とを、切換自在に構成されている。
第1ブレーキB1は、逆転阻止状態では、第3連結体Cc−Cdに正転方向に回転しようとする力が加わった場合に、回転が許容され、逆転方向に回転しようとする力が加わった場合に、回転が阻止されて変速機ケース1に固定される。
また、第1ブレーキB1は、固定状態では、第3連結体Cc−Cdに正転方向に回転しようとする力が加わった場合、及び、逆転方向に回転しようとする力が加わった場合のいずれにおいても、回転が阻止されて変速機ケース1に固定される。
第2ブレーキB2は、油圧作動型の湿式多板摩擦ブレーキである。第2ブレーキB2は、第3遊星歯車機構PGS3のサンギヤSc(第7要素)を変速機ケース1に固定する固定状態とこの固定を解除する開放状態とを、切換自在に構成されている。
第3ブレーキB3は、油圧作動型の湿式多板摩擦ブレーキである。第3ブレーキは、第2遊星歯車機構PGS2のサンギヤSb(第6要素)を変速機ケース1に固定する固定状態とこの固定を解除する開放状態とを、切換自在に構成されている。
第4ブレーキB4は、ドグクラッチ又は同期機能を有するシンクロメッシュ機構からなる噛合機構である。第4ブレーキB4は、第2遊星歯車機構PGS2のリングギヤRb(第4要素)を変速機ケース1に固定する固定状態とこの固定を解除する開放状態とを、切換自在に構成されている。
第1クラッチC1、第2クラッチC2及び第3クラッチC3、並びに、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2、第3ブレーキB3及び第4ブレーキB4は、トランスミッション・コントロール・ユニットを含む制御部ECU(図1参照)によって、車両の走行速度等の車両情報に基づいて、状態が切り換えられる。
図2に示すように、入力軸2の軸線上には、駆動源ENG及びトルクコンバータTC側から、第2クラッチC2、第2遊星歯車機構PGS2、第3クラッチC3、出力ギヤ3、第1遊星歯車機構PGS1、第1クラッチC1、第3遊星歯車機構PGS3の順番で配置されている。
第4ブレーキB4は、第2遊星歯車機構PGS2の径方向外方に配置され、第3ブレーキB3が第3クラッチC3の径方向外方に配置され、第1ブレーキB1は第1クラッチC1の径方向外方に配置され、第2ブレーキB2は第3遊星歯車機構PGS3の径方向外方に配置されている。
このように、自動変速機TMでは、4つのブレーキを遊星歯車機構又はクラッチの径方向外方に配置することによって、ブレーキを遊星歯車機構及びクラッチとともに入力軸2の軸線上に並べて配置した自動変速機に比べて、自動変速機の軸長の短縮化を図っている。なお、第4ブレーキB4を第2クラッチC2の径方向外方に配置し、第3ブレーキB3を第2遊星歯車機構PGS2の径方向外方に配置してもよい。
また、第4遊星歯車機構PGS4は、第1遊星歯車機構PGS1の径方向外方に配置されている。そして、第1遊星歯車機構PGS1のリングギヤRa(第3要素)と第4遊星歯車機構PGS4のサンギヤSd(第12要素)とを一体に連結して第2連結体Ra−Sdを構成している。
このように、自動変速機TMでは、第4遊星歯車機構PGS4を第1遊星歯車機構PGS1の径方向外方に配置することによって、第1遊星歯車機構PGS1と第4遊星歯車機構PGS4とが径方向で重なり合わせて、自動変速機の軸長の短縮化を図っている。
なお、第1遊星歯車機構PGS1と第4遊星歯車機構PGS4とは、径方向で少なくとも一部が重なり合っていれば軸長の短縮化を図ることができるが、両者が径方向で完全に重なり合っていれば、最も軸長を短くすることができる。
次に、図3及び図4を参照して、自動変速機TMで各変速段を確立させる場合における係合機構(すなわち、第1クラッチC1、第2クラッチC2及び第3クラッチC3、並びに、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2、第3ブレーキB3及び第4ブレーキB4)の状態について説明する。
なお、図3の共線図において、下の横線と上の横線(例えば、図3の上から2段目の第1遊星歯車機構PGS1では共線図4th及び6thと重なる線)は、それぞれ回転速度が「0」と「1」(入力部材である入力軸2と同じ回転速度)であることを示している。
また、図3の共線図において、破線で示す速度線は、第1遊星歯車機構PGS1、第2遊星歯車機構PGS2、第3遊星歯車機構PGS3及び第4遊星歯車機構PGS4のうち動力伝達する遊星歯車機構に追従して、他の遊星歯車機構の各要素が、回転(空回り)することを表している。
また、図4として示す表は、各変速段における係合機構の状態を纏めて表示した図であり、「○」は対応する列の係合機構が連結状態又は固定状態であることを示し、空欄は対応する列の係合機構が開放状態であることを示している。
また、図4の表において、第1ブレーキB1の列の「R」は、第1ブレーキB1が逆転阻止状態であることを示し、同列の「F」は、1ブレーキB1が固定状態であることを示している。
また、図4の表において、下線を付した「R」は、第1ブレーキB1の働きで、第3連結体Cc−Cd又は第3遊星歯車機構PGS3のサンギヤSc(第7要素)の回転速度が「0」となることを示している。また、「R/F」は、通常の場合には逆転阻止状態の「R」であるが、エンジンブレーキを効かせる場合には固定状態又は正転阻止状態の「F」に切り換えることを示している。
図4に示すように、自動変速機TMにおいて、1速段を確立させる場合には、ツーウェイクラッチである第1ブレーキB1を逆転阻止状態とし、第2ブレーキB2及び第3ブレーキB3を固定状態とする。
第1ブレーキB1を逆転阻止状態とすることで、第3連結体Cc−Cd及び第3遊星歯車機構PGS3のサンギヤSc(第7要素)の逆転が阻止され、第3連結体Cc−Cd及び第3遊星歯車機構PGS3のサンギヤSc(第7要素)の回転速度が「0」になる。そして、第3遊星歯車機構PGS3のサンギヤSc(第7要素)、キャリアCc(第8要素)及びリングギヤRc(第9要素)が相対回転不能なロック状態となり、第3遊星歯車機構PGS3のリングギヤRc(第9要素)を含む第1連結体Ca−Cb−Rcの回転速度も「0」になる。
これにより、出力ギヤ3に連結された第4遊星歯車機構PGS4のリングギヤRd(第10要素)の回転速度が図3に示す「1st」となり、1速段が確立される。1速段でエンジンブレーキを効かせる場合には、第1ブレーキB1を固定状態に切り換えればよい。
なお、1速段を確立させるためには第3ブレーキB3を固定状態とする必要はない。しかし、1速段から後述する2速段へスムーズに変速できるように1速段で固定状態とさせている。
2速段を確立させる場合には、ツーウェイクラッチである第1ブレーキB1を逆転阻止状態とし、第2ブレーキB2及び第3ブレーキB3を固定状態とし、第3クラッチC3を連結状態とする。
第1ブレーキB1を逆転阻止状態とすることで、第3連結体Cc−Cdの正転が許容される。また、第2ブレーキB2を固定状態とすることで、第3遊星歯車機構PGS3のサンギヤSc(第7要素)の回転速度が「0」になる。また、第3ブレーキB3を固定状態とすることで、第2遊星歯車機構PGS2のサンギヤSb(第6要素)の回転速度が「0」になる。
また、第3クラッチC3を連結状態とすることで、第2連結体Ra−Sdの回転速度が、第2遊星歯車機構PGS2のサンギヤSb(第6要素)の回転速度と同一速度の「0」になる。
これにより、出力ギヤ3に連結された第4遊星歯車機構PGS4のリングギヤRd(第10要素)の回転速度が図3に示す「2nd」となり、2速段が確立される。
3速段を確立させる場合には、ツーウェイクラッチである第1ブレーキB1を逆転阻止状態とし、第2ブレーキB2及び第3ブレーキB3を固定状態とし、第2クラッチC2を連結状態とする。
第1ブレーキB1を逆転阻止状態とすることで、第3連結体Cc−Cdの正転が許容される。また、第2ブレーキB2を固定状態とすることで、第3遊星歯車機構PGS3のサンギヤSc(第7要素)の回転速度が「0」になる。また、第3ブレーキB3を固定状態とすることで、第2遊星歯車機構PGS2のサンギヤSb(第6要素)の回転速度が「0」になる。
また、第2クラッチC2を連結状態とすることで、第2遊星歯車機構PGS2のリングギヤRb(第4要素)の回転速度が、入力軸2に連結された第1遊星歯車機構PGS1のサンギヤSa(第1要素)の回転速度と同一速度の「1」となる。第2遊星歯車機構PGS2のサンギヤSb(第6要素)の回転速度が「0」、リングギヤRb(第4要素)の回転速度が「1」となるため、キャリアCb(第5要素)の回転速度、すなわち、第1連結体Ca−Cb−Rcの回転速度は、i/(i+1)となる。
これにより、出力ギヤ3に連結された第4遊星歯車機構PGS4のリングギヤRd(第10要素)の回転速度が図3に示す「3rd」となり、3速段が確立される。
4速段を確立させる場合には、ツーウェイクラッチである第1ブレーキB1を逆転阻止状態とし、第2ブレーキB2を固定状態とし、第2クラッチC2及び第3クラッチC3を連結状態とする。
第1ブレーキB1を逆転阻止状態とすることで、第3連結体Cc−Cdの正転が許容される。また、第2ブレーキB2を固定状態とすることで、第3遊星歯車機構PGS3のサンギヤSc(第7要素)の回転速度が「0」になる。
また、第3クラッチC3を連結状態とすることで、第2遊星歯車機構PGS2のサンギヤSb(第6要素)と第2連結体Ra−Sdとが同一速度で回転する。このとき、第1遊星歯車機構PGS1と第2遊星歯車機構PGS2との間では、キャリアCa(第2要素)とキャリアCb(第5要素)とが連結され、リングギヤRa(第3要素)とサンギヤSb(第6要素)とが連結されることとなる。そのため、第3クラッチC3を連結状態とする4速段においては、第1遊星歯車機構PGS1と第2遊星歯車機構PGS2とで4つの要素からなる1つの共線図を描くことができる。
また、第2クラッチC2を連結状態とすることで、第2遊星歯車機構PGS2のリングギヤRb(第4要素)の回転速度が、第1遊星歯車機構PGS1のサンギヤSa(第1要素)の回転速度と同一速度の「1」となり、第1遊星歯車機構PGS1と第2遊星歯車機構PGS2とで構成される4つの要素のうちの2つの要素の回転速度が同一速度の「1」となる。したがって、第1遊星歯車機構PGS1及び第2遊星歯車機構PGS2の各要素が相対回転不能なロック状態となり、第1遊星歯車機構PGS1及び第2遊星歯車機構PGS2の全ての要素の回転速度が「1」となる。
これにより、第3連結体Cc−Cdの回転速度がj/(j+1)となり、出力ギヤ3に連結された第4遊星歯車機構PGS4のリングギヤRd(第10要素)の回転速度が図3に示す「4th」となり、4速段が確立される。
5速段を確立させる場合には、ツーウェイクラッチである第1ブレーキB1を逆転阻止状態とし、第2ブレーキB2を固定状態とし、第1クラッチC1及び第2クラッチC2を連結状態とする。
第1ブレーキB1を逆転阻止状態とすることで、第3連結体Cc−Cdの正転が許容される。また、第2ブレーキB2を固定状態とすることで、第3遊星歯車機構PGS3のサンギヤSc(第7要素)の回転速度が「0」になる。
また、第1クラッチC1を連結状態とすることで、第3連結体Cc−Cdの回転速度が第1遊星歯車機構PGS1のサンギヤSa(第1要素)の回転速度と同一速度の「1」になる。
これにより、出力ギヤ3に連結された第4遊星歯車機構PGS4のリングギヤRd(第10要素)の回転速度が図3に示す「5th」となり、5速段が確立される。
なお、5速段を確立させるためには第2クラッチC2を連結状態とする必要はない。しかし、4速段及び後述する6速段では第2クラッチC2を連結状態とする必要があるため、5速段から4速段へのダウンシフト、及び、5速段から後述する6速段へのアップシフトをスムーズに行えるように5速段でも連結状態とさせている。
6速段を確立させる場合には、ツーウェイクラッチである第1ブレーキB1を逆転阻止状態とし、第1クラッチC1、第2クラッチC2及び第3クラッチC3を連結状態とする。
第1ブレーキB1を逆転阻止状態とすることで、第3連結体Cc−Cdの正転が許容される。
また、第2クラッチC2及び第3クラッチC3を連結状態とすることで、4速段で説明したように、第1遊星歯車機構PGS1と第2遊星歯車機構PGS2の各要素が相対回転不能なロック状態となり、第2連結体Ra−Sdの回転速度が「1」となる。また、第1クラッチC1を連結状態とすることで、第3連結体Cc−Cdの回転速度が「1」となる。したがって、第4遊星歯車機構PGS4は、キャリアCd(第11要素)とサンギヤSd(第12要素)とが同一速度の「1」となり、各要素が相対回転不能なロック状態となる。
これにより、出力ギヤ3に連結された第4遊星歯車機構PGS4のリングギヤRd(第10要素)の回転速度が図3に示す「6th」の「1」となり、6速段が確立される。
7速段を確立させる場合には、ツーウェイクラッチである第1ブレーキB1を逆転阻止状態とし、第3ブレーキB3を固定状態とし、第1クラッチC1及び第2クラッチC2を連結状態とする。
第1ブレーキB1を逆転阻止状態とすることで、第3連結体Cc−Cdの正転が許容される。また、第3ブレーキB3を固定状態とすることで、第2遊星歯車機構PGS2のサンギヤSb(第6要素)の回転速度が「0」になる。
また、第2クラッチC2を連結状態とすることで、第2遊星歯車機構PGS2のリングギヤRb(第4要素)の回転速度が、第1遊星歯車機構PGS1のサンギヤSa(第1要素)の回転速度と同一速度の「1」となり、第2遊星歯車機構PGS2のキャリアCb(第5要素)を含む第1連結体Ca−Cb−Rcの回転速度がi/(i+1)となる。また、第1クラッチC1を連結状態とすることで、第3連結体Cc−Cdの回転速度が、入力軸2に連結された第1遊星歯車機構PGS1のサンギヤSa(第1要素)の回転速度と同一速度の「1」になる。
これにより、出力ギヤ3に連結された第4遊星歯車機構PGS4のリングギヤRd(第10要素)の回転速度が図3に示す「7th」となり、7速段が確立される。
8速段を確立させる場合には、ツーウェイクラッチである第1ブレーキB1を逆転阻止状態とし、第3ブレーキB3を固定状態とし、第1クラッチC1及び第3クラッチC3を連結状態とする。
第1ブレーキB1を逆転阻止状態とすることで、第3連結体Cc−Cdの正転が許容される。また、第3ブレーキB3を固定状態とすることで、第2遊星歯車機構PGS2のサンギヤSb(第6要素)の回転速度が「0」になる。
また、第3クラッチC3を連結状態とすることで、第2連結体Ra−Sdの回転速度が第2遊星歯車機構PGS2のサンギヤSb(第6要素)の回転速度と同一速度の「0」になる。また、第1クラッチC1を連結状態とすることで、第3連結体Cc−Cdの回転速度が第1遊星歯車機構PGS1のサンギヤSa(第1要素)の回転速度と同一速度の「1」になる。
これにより、出力ギヤ3に連結された第4遊星歯車機構PGS4のリングギヤRd(第10要素)の回転速度が図3に示す「8th」となり、8速段が確立される。
9速段を確立させる場合には、ツーウェイクラッチである第1ブレーキB1を逆転阻止状態とし、第3ブレーキB3及び第4ブレーキB4を固定状態とし、第1クラッチC1を連結状態とする。
第1ブレーキB1を逆転阻止状態とすることで、第3連結体Cc−Cdの正転が許容される。また、第3ブレーキB3を固定状態とすることで、第2遊星歯車機構PGS2のサンギヤSb(第6要素)の回転速度が「0」になる。また、第4ブレーキB4を固定状態とすることで、第2遊星歯車機構PGS2のリングギヤRb(第4要素)の回転速度も「0」となる。このため、第2遊星歯車機構PGS2の各要素Sb,Cb,Rbは相対回転不能なロック状態となり、第2遊星歯車機構PGS2のキャリアCb(第5要素)を含む第1連結体Ca−Cb−Rcの回転速度も「0」になる。
また、第1クラッチC1を連結状態とすることで、第3連結体Cc−Cdの回転速度は第1遊星歯車機構PGS1のサンギヤSa(第1要素)の回転速度と同一速度の「1」となる。
これにより、出力ギヤ3に連結された第4遊星歯車機構PGS4のリングギヤRd(第10要素)の回転速度が図3に示す「9th」となり、9速段が確立される。
10速段を確立させる場合には、ツーウェイクラッチである第1ブレーキB1を逆転阻止状態とし、第4ブレーキB4を固定状態とし、第1クラッチC1及び第3クラッチC3を連結状態とする。
第1ブレーキB1を逆転阻止状態とすることで、第3連結体Cc−Cdの正転が許容される。また、第4ブレーキB4を固定状態とすることで、第2遊星歯車機構PGS2のリングギヤRb(第4要素)の回転速度が「0」になる。
また、第3クラッチC3を連結状態とすることで、第2連結体Ra−Sdと第2遊星歯車機構PGS2のサンギヤSb(第6要素)とが同一速度で回転する。また、第1クラッチC1を連結状態とすることで、第3連結体Cc−Cdの回転速度が第1遊星歯車機構PGS1のサンギヤSa(第1要素)の回転速度と同一速度の「1」となる。
これにより、出力ギヤ3に連結された第4遊星歯車機構PGS4のリングギヤRd(第10要素)の回転速度が図3に示す「10th」となり、10速段が確立される。
後進段を確立させる場合には、ツーウェイクラッチである第1ブレーキB1及び第3ブレーキB3を固定状態とし、第2クラッチC2を連結状態とする。
第1ブレーキB1を固定状態とすることで、第3連結体Cc−Cdの回転速度が「0」になる。また、第3ブレーキB3を固定状態とし、第2クラッチC2を連結状態とすることで、第1連結体Ca−Cb−Rcの回転速度がi/(i+1)となる。
これにより、出力ギヤ3に連結された第4遊星歯車機構PGS4のリングギヤRd(第10要素)の回転速度が図3に示す逆転の「Rvs」となり、後進段が確立される。
また、図4には、第1遊星歯車機構PGS1のギヤ比hを2.734、第2遊星歯車機構PGS2のギヤ比iを1.614、第3遊星歯車機構PGS3のギヤ比jを2.681、第4遊星歯車機構PGS4のギヤ比kを1.914とした場合における各変速段に対応する変速比(入力軸2の回転速度/出力ギヤ3の回転速度)、及び、公比(各変速段間の変速比の比。所定の変速段に対応する変速比を所定の変速段よりも1段高速側の変速段に対応する変速比で割った値。)も示しており、これによれば、公比を適切に設定できることが分かる。
次に、図5〜図8を参照して、自動変速機TMで第1ブレーキB1(切換機構)として用いられるツーウェイクラッチの一例を説明する。
第1ブレーキB1は、第3連結体Cc−Cdを変速機ケース1に固定する固定状態と、第3連結体Cc−Cdの正転を許容し逆転を阻止する逆転阻止状態とに切換自在なツーウェイクラッチで構成されている。そのツーウェイクラッチとしては、例えば、図5〜図8に示すような構成のツーウェイクラッチTWが用いられる。
図5及び図6に断面で示すように、ツーウェイクラッチTWは、変速機ケース1に固定された固定プレートTW1と、第3連結体Cc−Cdに連結される回転プレートTW2とを備えている。
図7及び図8に示すように、固定プレートTW1は、環状(ドーナツ状)に形成されている。また、図7及び図8では省略しているが、回転プレートTW2も固定プレートTW1と同様に環状(ドーナツ状)に形成されている。固定プレートTW1と回転プレートTW2とは、同心に配置されている。
図5に示すように、固定プレートTW1の回転プレートTW2に対向する固定プレート側対向面TW1aには、凹部として形成された第1収納部TW1b及び第2収納部TW1cが形成されている。第1収納部TW1bには、板状の正転阻止部材TW3が収納可能に配置されている。第2収納部TW1cには、板状の逆転阻止部材TW4が収納可能に配置されている。
正転阻止部材TW3の周方向他方側(回転プレートTW2が逆転する方向)の端部は、揺動端部TW3aとなっている。揺動端部TW3aは、固定プレートTW1の周方向一方側(回転プレートTW2が正転する方向)の端部を軸として、揺動可能となっている。
逆転阻止部材TW4の周方向一方側(回転プレートTW2が正転する方向)の端部は、揺動端部TW4aとなっている。揺動端部TW4aは、固定プレートTW1の周方向他方側(回転プレートTW2が逆転する方向)の端部を軸として、揺動可能となっている。
第1収納部TW1bの底面と正転阻止部材TW3との間には、第1バネTW5が配置されている。第1バネTW5は、正転阻止部材TW3の揺動端部TW3aを、第1収納部TW1bから突出させるように付勢している。
第2収納部TW1cの底面と逆転阻止部材TW4との間には、第2バネTW6が配置されている。第2バネTW6は、逆転阻止部材TW4の揺動端部TW4aを、第2収納部TW1cから突出させるように付勢している。
回転プレートTW2の固定プレートTW1と対向する回転プレート側対向面TW2aには、正転阻止部材TW3に対応する位置に、第1凹部TW2bが設けられている。また、回転プレート側対向面TW2aには、逆転阻止部材TW4に対応する位置に、第2凹部TW2cが設けられている。
第1凹部TW2bの回転プレートTW2の周方向他方側(逆転方向側)には、第1係合部TW2dが設けられている。第1係合部TW2dは、正転阻止部材TW3の揺動端部TW3aと係合可能な段形状に形成されている。
第2凹部TW2cの回転プレートTW2の周方向一方側(正転方向側)には、第2係合部TW2eが設けられている。第2係合部TW2eは、逆転阻止部材TW4の揺動端部TW4aと係合可能な段形状に形成されている。
図5及び図7に示すように、正転阻止部材TW3の揺動端部TW3aと第1係合部TW2dとが係合可能な状態であり、且つ、逆転阻止部材TW4の揺動端部TW4aと第2係合部TW2eとが係合可能な状態であるときには、回転プレートTW2が正転逆転共に阻止される。
したがって、揺動端部TW3a及び揺動端部TW4aとそれに対応する第1係合部TW2d及び第2係合部TW2eとが互いに係合する状態が、ツーウェイクラッチTWにおける固定状態となる。
固定プレートTW1と回転プレートTW2との間には、切換プレートTW7が挟まれている。図7及び図8に示すように、切換プレートTW7も環状(ドーナツ状)に形成されている。切換プレートTW7には、正転阻止部材TW3及び逆転阻止部材TW4に対応する位置に第1切欠孔TW7a及び第2切欠孔TW7bが設けられている。
切換プレートTW7の外縁には、径方向外方に突出する突部TW7cが設けられている。図8に示すように、切換プレートTW7は固定プレートTW1に対して揺動自在となっている。
正転阻止部材TW3に対応する第1切欠孔TW7aは、切換プレートTW7を図7に示す固定状態から図8に示す状態に揺動させたとき、正転阻止部材TW3に対応する位置から周方向に移動する。そのため、正転阻止部材TW3は、切換プレートTW7に押されて、第1バネTW5の付勢力に抗し、第1収納部TW1b内に収納される(図6参照)。これにより、正転阻止部材TW3の揺動端部TW3aと第1係合部TW2dとの係合が阻止される。したがって、回転プレートTW2の正転側の回転が許容される。
一方、逆転阻止部材TW4に対応する第2切欠孔TW7bは、切換プレートTW7を図7に示す固定状態から図8に示す状態に揺動させたときでも、逆転阻止部材TW4に対応する位置にある。そのため、逆転阻止部材TW4は、切換プレートTW7に押されることがなく、第2バネTW6の付勢力によって、第2収納部TW1cから突出する(図5参照)。これにより、逆転阻止部材TW4の揺動端部TW4aと第2係合部TW2eとが係合する。したがって、回転プレートTW2の逆転側の回転が阻止される。
このようにして、回転プレートTW2の正転側の回転が許容され、逆転側の回転が阻止された状態が、ツーウェイクラッチTWにおける逆転阻止状態となる。
また、逆転阻止部材TW4に対応する第2切欠孔TW7bは、切換プレートTW7を図8において二点鎖線で示す位置からさらに正転側に移動させたとき、逆転阻止部材TW4に対応する位置から周方向に移動する。そのため、逆転阻止部材TW4は、切換プレートTW7に押されて、第2バネTW6の付勢力に抗し、第2収納部TW1c内に収納される。これにより、逆転阻止部材TW4の揺動端部TW4aと第2係合部TW2eとの係合が阻止される。したがって、回転プレートTW2の逆転側の回転が許容される。
一方、正転阻止部材TW3に対応する第1切欠孔TW7aは、切換プレートTW7を図8において二点鎖線で示す位置からさらに正転側に移動させたときでも、正転阻止部材TW3に対応する位置にある。そのため、正転阻止部材TW3は、切換プレートTW7に押されることがなく、第1バネTW5の付勢力によって、第1収納部TW1bから突出する(図5参照)。これにより、正転阻止部材TW3の揺動端部TW3aと第1係合部TW2dとが係合する。したがって、回転プレートTW2の正転側の回転が阻止される。
このようにして、回転プレートTW2の逆転側の回転が許容され、正転側の回転が阻止された状態が、ツーウェイクラッチTWにおける正転阻止状態となる。
次に、図9を参照して、制御部ECUからの信号に応じて、係合機構の切り換えを行うための切換制御機構の一例を説明する。
図9に示すように、油圧制御回路HCは、切換プレートTW7に設けられた突部TW7cと係合するスライダHC1を備えている。スライダHC1が図9の右側に位置する場合、ツーウェイクラッチTWが逆転阻止状態に切り換えられ、スライダHC1が図9の左側に位置する場合、ツーウェイクラッチTWが固定状態に切り換えられる。
スライダHC1の図面右側には、ソレノイド弁からなる第1開閉弁HC2を介して、ライン圧を供給自在に構成されている。スライダHC1の図面左側には、ソレノイド弁からなる第2開閉弁HC3を介してライン圧を供給自在に構成されている。第1開閉弁HC2はノーマルクローズ式であり、第2開閉弁HC3はノーマルオープン式である。
第1開閉弁HC2及び第2開閉弁HC3は、制御部ECUからの信号に応じて開閉する。すなわち、ツーウェイクラッチTWは、油圧制御回路HCを介して、制御部ECUによって制御されている。
また、スライダHC1の図面右側には、ライン圧を受ける面とは異なる面に位置させて、第2クラッチC2に供給される油圧が供給される。スライダHC1の図面左側には、ライン圧を受ける面とは異なる面に位置させて、第1クラッチC1に供給される油圧が供給される。スライダHC1に供給される第1クラッチC1及び第2クラッチC2の油圧はRVS準備圧として用いられる。
また、スライダHC1には、ディテント機構HC4が設けられ、ライン圧が所定圧を超えなければ、図9Aに示す固定状態と図9Bに示す逆転阻止状態とが切り換えられないように構成されている。
この油圧制御回路HCによれば、第1開閉弁HC2を開とし、第2開閉弁HC3を閉として、ライン圧を、第1クラッチC1及び第2クラッチC2の油圧の圧力差及びディテント機構HC4の係合力に基づいて設定される所定の切換油圧以上とすることにより、スライダHC1が図面左側に移動し、ツーウェイクラッチTWが固定状態に切り換わる。
逆に、第1開閉弁HC2を閉とし、第2開閉弁HC3を開として、ライン圧を上述した所定の切換油圧以上とすることにより、スライダHC1が図面右側に移動し、ツーウェイクラッチTWが逆転阻止状態に切り換わる。
次に、図1及び図10〜図12を参照して、自動変速機TMの制御部ECUが、駆動源ENGの停止前におけるツーウェイクラッチTWである第1ブレーキB1(切換機構)の切り換えの際に行う制御について詳細に説明する。
図1に示すように、自動変速機TMが搭載される車両は、シフトポジション(変速段)を前進レンジ、ニュートラルレンジ及び後進レンジのいずれかに切換自在なシフトレバーSLと、アクセルペダルAPのオン・オフを検出するアクセル開度検出器4と、駆動源ENGの回転数を検出する駆動源回転数検出器6と、ドライバの操作に応じて駆動源ENGの停止要求を認識する停止要求認識部7と、車速を検出する車速検出器8とを備えている。
ここで、停止要求認識部7は、車両用の電源のオン・オフや、イグニッションスイッチのオン・オフに基づいて、ドライバからの駆動源ENGの停止要求を認識する。
また、自動変速機TMは、入力軸2の回転数を検出する入力回転数検出器9と、制御部ECUからの指示に応じて、第1ブレーキB1、第4ブレーキB4、第1クラッチC1及び第2クラッチC2に油圧を供給し、それらの切り換えを行う油圧制御回路HCとを備えている。
油圧制御回路HCは、油圧制御回路HCから供給される油圧を検出する油圧検出器HC5と、制御部ECUからの情報に基づいて、油圧制御回路HCの油圧を調節自在な油圧調節弁からなる油圧調節部HC6とを有している。
制御部ECUは、シフトレバーSLからのシフトポジションの情報、駆動源回転数検出器6からの駆動源ENGの回転数の情報、停止要求認識部7からの停止要求の情報、車速検出器8からの車速の情報、入力回転数検出器9からの入力軸2の回転数の情報、及び、油圧検出器HC5からの油圧の情報を受信する。
このように構成されている自動変速機TMでは、ツーウェイクラッチTWである第1ブレーキB1(切換機構)の切り換えの際には、以下に説明する制御を行っている。
まず、図10を参照して、ツーウェイクラッチTWである第1ブレーキB1を、固定状態から逆転阻止状態へ切り換える際に制御部ECUが行う制御(逆転阻止側切換制御)について説明する。
図10のフローチャートに示すように、まず、制御部ECUは、第1ブレーキB1への負荷が規定値以下であるか否かを判定する(図10/STEP10)。
具体的には、制御部ECUは、駆動源ENGの回転数や車速等に基づいて、第1ブレーキB1であるツーウェイクラッチTWに加わっているトルクを算出し、その構成部品である逆転阻止部材TW4(図5参照)に加わっている負荷を推定する。
なお、逆転阻止部材TW4へ加わる負荷の認識は、他の方法で行ってもよい。例えば、逆転阻止部材TW4に歪みセンサを取り付け、その歪みセンサの値に基づいて認識してもよい。また、STEP10における規定値としては、例えば、0等、切り換えの際に加わる負荷と比べ、無視できる程度に小さい値であればよい。
第1ブレーキB1への負荷が規定値以下でなかった場合(STEP10でNOの場合)には、制御部ECUは、第1ブレーキB1への負荷が規定値以下になるまで、所定の周期(例えば、10msec間隔)で、判定を繰り返す。
このSTEP10の判定を行うことによって、第1ブレーキB1の構成部品(例えば、逆転阻止部材TW4)に大きな力の加わっている状態で、第1ブレーキB1の切り換えが行われることが防止される。その結果、駆動源ENGを再駆動させる際だけではなく、通常の第1ブレーキB1の切り換えの際にも、第1ブレーキB1に通常よりも大きな負荷が加わりにくくなっている。なお、このSTEP10の判定は、省略してもよい。
一方、第1ブレーキB1への負荷が規定値以下であった場合(STEP10でYESの場合)には、制御部ECUは、駆動源ENGの停止要求がなされているか否かを判定する(図10/STEP11)。
停止要求がなされていた場合(STEP11でYESの場合)には、制御部ECUは、第1ブレーキB1の切り換えを行わず、処理を終了する。
一方、停止要求がなされていなかった場合(STEP11でNOの場合)には、制御部ECUは、駆動源ENGの回転数が規定値以上であるか否かを判定する(図10/STEP12)。
なお、STEP12における規定値としては、例えば、500rpm程度等、その回転数が維持されても駆動源ENGが停止してしまうおそれのない回転数であればよい。
駆動源ENGの回転数が規定値未満であった場合(STEP12でNOの場合)には、制御部ECUは、第1ブレーキB1の切り換えを行わず、処理を終了する。
一方、駆動源ENGの回転数が規定値以上であった場合(STEP12でYESの場合)には、制御部ECUは、油圧制御回路HCに対し、第1ブレーキB1を固定状態から逆転阻止状態へ切り換える指示を行い、処理を終了する(図10/STEP13)。
このように、自動変速機TMの制御部ECUは、駆動源ENGの停止要求を認識していない状態(STEP11でNO)、且つ、駆動源ENGの回転数が規定値以上の状態(STEP12でYES)で、ツーウェイクラッチTWである第1ブレーキB1を切り換えている。
そのため、第1ブレーキB1の切り換えが完了する前に第1ブレーキB1への駆動力の伝達が停止されることがなく、切り換えが不完全な状態となってしまうことが防止されている。
その結果、駆動源ENGを再度駆動させても、第1ブレーキB1の構成部品同士が通常とは異なる姿勢で当接することが防止されるので、それらの構成部品に対し局所的に大きな負荷が加わってしまうことがない。
次に、図11を参照して、ツーウェイクラッチTWである第1ブレーキB1を、逆転阻止状態から固定状態からへ切り換える際に制御部ECUが行う制御(固定側切換制御)について説明する。
図11のフローチャートに示すように、まず、制御部ECUは、第1ブレーキB1の差回転が規定値以下であるか否かを判定する(図11/STEP20)。
具体的には、制御部ECUは、入力軸2の回転数等に基づいて、第1ブレーキB1に対応する要素であるキャリアCd(第11要素)の差回転を算出する。
なお、第1ブレーキB1の差回転の認識は、他の方法で行ってもよい。例えば、キャリアCdの回転を直接センサによって測定してもよい。また、STEP20における規定値としては、例えば、0等、切り換えを行っても大きな衝撃が生じない値であればよい。
第1ブレーキB1の差回転が規定値以下でなかった場合(STEP20でNOの場合)には、制御部ECUは、第1ブレーキB1の差回転が規定値以下になるまで、所定の周期(例えば、10msec間隔)で、判定を繰り返す。
このSTEP20の判定を行うことによって、第1ブレーキB1に差回転が生じている状態で第1ブレーキが固定状態に切り換わることが防止される。その結果、駆動源ENGを再駆動させる際だけではなく、通常の第1ブレーキB1の切り換えの際にも、第1ブレーキB1に大きな衝撃が加わりにくくなっている。なお、このSTEP20の判定は、省略してもよい。
一方、第1ブレーキB1の差回転が規定値以下であった場合(STEP20でYESの場合)には、制御部ECUは、駆動源ENGの停止要求がなされているか否かを判定する(図11/STEP21)。
停止要求がなされていた場合(STEP21でYESの場合)には、制御部ECUは、第1ブレーキB1の切り換えを行わず、処理を終了する。
一方、停止要求がなされていなかった場合(STEP21でNOの場合)には、制御部ECUは、駆動源ENGの回転数が規定値以上であるか否かを判定する(図11/STEP22)。
なお、STEP22における規定値としては、例えば、500rpm程度等、その回転数が維持されても駆動源ENGが停止してしまうおそれのない回転数であればよい。
駆動源ENGの回転数が規定値未満であった場合(STEP22でNOの場合)には、制御部ECUは、第1ブレーキB1の切り換えを行わず、処理を終了する。
一方、駆動源ENGの回転数が規定値以上であった場合(STEP22でYESの場合)には、制御部ECUは、油圧制御回路HCに対し、第1ブレーキB1を逆転阻止状態から固定状態へ切り換える指示を行い、処理を終了する(図11/STEP23)。
このように、自動変速機TMの制御部ECUは、駆動源ENGの停止要求を認識していない状態(STEP21でNO)、且つ、駆動源ENGの回転数が規定値以上の状態(STEP22でYES)で、ツーウェイクラッチTWである第1ブレーキB1を切り換えている。
そのため、第1ブレーキB1の切り換えが完了する前に第1ブレーキB1への駆動力の伝達が停止されることがなく、切り換えが不完全な状態となってしまうことが防止されている。
その結果、駆動源ENGを再度駆動させても、第1ブレーキB1に差回転が生じているにもかかわらず第1ブレーキB1が固定状態に切り換わることが防止されるので、第1ブレーキB1に大きな衝撃が加わってしまうことがない。
ところで、自動変速機TMでは、ツーウェイクラッチTWである第1ブレーキB1以外の係合機構を連結状態又は固定状態とすることによって、第1ブレーキB1に対応する要素(すなわち、キャリアCd)の回転数を所定回転数以下とするこができる。
そして、そのようにしてキャリアCdの回転数を強制的に所定回転数以下とした場合には、第1ブレーキB1の切り換えを迅速に行うことができ、また、切換音の発生を抑制することができる。そのようにしてキャリアCdの回転数を所定回転数以下となるように係合機構を切り換えた状態を「後進側準備モード」という。
後進側準備モードは、シフトレバーSLの操作によってシフトポジションが前進レンジ(Dレンジ)からニュートラルレンジ(Nレンジ)を介して後進レンジ(Rレンジ)に切り換わる際に、後進レンジ(Rレンジ)に移行した段階で主な処理が実行される。
以下においては、図12を参照して、後進側準備モード中に、固定側切換制御を行った場合に、制御部ECUが行う制御について説明する。
図12のフローチャートに示すように、まず、制御部ECUは、後進側準備モードとするために、油圧制御回路HCに対し、第4ブレーキB4、第1クラッチC1及び第2クラッチC2へ油圧の供給を指示する(図12/STEP200)。
これは、自動変速機TMにおいては、第4ブレーキB4、第1クラッチC1及び第2クラッチC2を締結状態とすることによって、入力軸2と第1ブレーキB1に対応する要素であるキャリアCdとが締結されるので、入力軸2の回転数、ひいては、キャリアCdの回転数を低下させることができるためである。
次に、制御部ECUは、タイマのカウントダウンを開始する(図12/STEP201)。
次に、制御部ECUは、油圧検出器HC5からの信号に基づいて、第4ブレーキB4、第1クラッチC1及び第2クラッチC2に供給されている油圧が、それらを締結させるために十分な規定値以上であるか否かを判定する(図12/STEP202)。
油圧が規定値未満であった場合(STEP202でNOの場合)には、制御部ECUは、タイマのカウントをリセットする(図12/STEP203)。
その後、制御部ECUは、STEP201に戻り、再度タイマのカウントダウンを開始する。
一方、油圧が規定値以上であった場合(STEP202でYESの場合)には、制御部ECUは、規定時間が経過したか否かを判定する(図12/STEP204)。
規定時間が経過していなかった場合(STEP204でNOの場合)には、制御部ECUは、STEP202にもどり、再度油圧が規定値以上であるか否かを判定する。
このSTEP201〜STEP204における制御は、自動変速機TMが係合機構の切換制御機構として油圧制御回路HCを用いているので、係合機構の切り換えには所定の時間が必要であるために行われる。
一方、規定時間が経過した場合(STEP204でYESの場合)には、制御部ECUは、後進側準備モードへの移行が完了したと判定し、固定側切換制御を開始する。
次に、制御部ECUは、第1ブレーキB1の差回転が規定値以下であるか否かを判定する(図12/STEP205)。
第1ブレーキB1の差回転が規定値以下でなかった場合(STEP205でNOの場合)には、制御部ECUは、第1ブレーキB1の差回転が規定値以下になるまで、所定の周期(例えば、10msec間隔)で、判定を繰り返す。
一方、第1ブレーキB1の差回転が規定値以下であった場合(STEP205でYESの場合)には、制御部ECUは、駆動源ENGの停止要求がなされているか否かを判定する(図21/STEP206)。
停止要求がなされていた場合(STEP206でYESの場合)には、制御部ECUは、第1ブレーキB1の切り換えを行わず、処理を終了する。
一方、停止要求がなされていなかった場合(STEP206でNOの場合)には、制御部ECUは、駆動源ENGの回転数が規定値以上であるか否かを判定する(図12/STEP207)。
駆動源ENGの回転数が規定値未満であった場合(STEP207でNOの場合)には、制御部ECUは、第1ブレーキB1の切り換えを行わず、処理を終了する。
一方、駆動源ENGの回転数が規定値以上であった場合(STEP207でYESの場合)には、制御部ECUは、油圧制御回路HCに対し、第1ブレーキB1を逆転阻止状態から固定状態へ切り換える指示を行い、処理を終了する(図12/STEP208)。
このように、後進側準備モードへの移行と固定側切換制御を組み合わせれば、第1ブレーキB1に大きな衝撃が加わることを防止するだけでなく、第1ブレーキB1を迅速に切り換えることができる。
以上、図示の実施形態について説明したが、本発明はこのような形態に限られるものではない。
例えば、上記実施形態では、自動変速機TMを10速段に変速可能として構成している。しかし、本発明の自動変速機としては、複数の変速段に変速可能なものであればどのようなものであってもよい。
また、上記実施形態では、シフトポジションの切換えをシフトレバー操作で行うものを説明した。しかし、シフトポジションの切り換え方法についてはこれに限らず、例えば、ボタンの押圧などによってシフトポジションを切り換えるように構成されていてもよい。例えば、ボタンの押圧信号から選択されたシフトポジションを判断するように構成してもよい。
また、上記実施形態においては、切換機構として、油圧制御回路HCで切り換えられるツーウェイクラッチTWである第1ブレーキを用いて説明した。しかし、本発明の切換機構はこれに限らない。例えば、油圧制御回路に代えて電磁アクチュエータを用いて、固定状態と逆転阻止状態とを切り換えるツーウェイクラッチを用いてもよい。