JP2014218866A - 縦型空気式防舷材 - Google Patents

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Abstract

【課題】急激な接岸エネルギーの増大に対応できる縦型空気式防舷材を提供する。
【解決手段】下方の鏡部3に重錘11が接続されて、内部空間に所定量のバラスト水Wが収容され、胴部2が内層ゴム4と外層ゴム7との間に複数の補強層5が積層されて構成され、積層されて上下に隣り合う補強層5どうしのコード6a、6bが交差して、筒軸方向に対して所定のコード角度Aで配置され、それぞれの補強層5どうしの間に中間ゴム層8を介設するとともに、中立状態でコード角度Aを15°〜45°に設定することにより、防舷材1の内部空間に空気注入装置12から注入管12aを通じて追加の空気aを注入すると、中間ゴム層8がせん断変形しつつコード角度Aが静止角程度まで大きくなって胴部2が拡大、膨張して防舷材1のエネルギー吸収性能が迅速に増大する。
【選択図】図5

Description

本発明は、縦型空気式防舷材に関し、さらに詳しくは、急激な接岸エネルギーの増大に対応できる縦型空気式防舷材に関するものである。
空気式防舷材には、下方の鏡部に重錘が接続されるとともに、内部空間に所定量のバラスト水が収容された縦型空気式防舷材がある(例えば、特許文献1参照)。縦型空気式防舷材は、重錘および内部空間に収容されたバラスト水による鉛直下向きの力と防舷材の浮力とをバランスさせて姿勢の安定が維持される。
空気式防舷材は、一般的に円筒状の胴部の両端にボウル状の鏡部を備え、胴部は内層ゴムと外層ゴムとの間に複数の補強層が積層されて構成されている。その補強層は多数のコードが平行に引き揃えられて形成されたコード層であり、そのコードは筒軸方向に対して所定のコード角度で配置されている。積層されて上下に隣り合う補強層どうしのコードは交差して配置されている。従来、コード角度は、中立状態で静止角程度(54°〜55°)に設定されているので、空気式防舷材の内部に空気を注入して規定内圧にしても胴部の大きさ(長さおよび外径)は、それ程変化しない。
ところで、津波等によって係留船舶の急激な搖動が生じて、想定以上の接岸エネルギーが防舷材に負荷されて過剰圧縮されると、安全弁が開弁して内部空間の空気が外部に排出される。この際に、安全弁が開弁し続けると過度に空気が外部に排出されて、最悪の場合、浮力不足によって防舷材が沈んでしまう。一方、外部への空気の排出速度に対して防舷材が圧縮される速度が速すぎると、防舷材の内圧が急激に上昇して最悪の場合はバーストする危険性がある。そのため、急激な接岸エネルギーの増大に対応できる縦型空気式防舷材が望まれていた。
特開平11−117261号公報
本発明の目的は、急激な接岸エネルギーの増大に対応できる縦型空気式防舷材を提供することにある。
上記目的を達成するため本発明の縦型空気式防舷材は、円筒状の胴部の両端に鏡部を備え、前記胴部は内層ゴムと外層ゴムとの間に複数の補強層が積層されて構成され、前記補強層は多数のコードが平行に引き揃えられて形成されたコード層であり、積層されて上下に隣り合う補強層どうしのコードが交差して筒軸方向に対して所定のコード角度で配置され、下側の鏡部に重錘が接続されるとともに、内部空間にバラスト水が収容された縦型空気式防舷材において、それぞれの補強層どうしの間に中間ゴム層が介設され、中立状態で前記コード角度が15°〜45°に設定され、前記内部空間に追加の空気を注入する空気注入装置が接続されていることを特徴とする。
本発明によれば、それぞれの補強層どうしの間に、膨張させていない中立状態で中間ゴム層が介設されるとともに、積層されて上下に隣り合う補強層どうしのコードが交差して筒軸方向に対して15°〜45°のコード角度で配置されているので、中立状態の防舷材に空気注入装置によって追加の空気を注入すると、コード角度が安定な静止角まで大きくなろうとする。その際に、それぞれの中間ゴム層がせん断変形するので、コード角度が円滑に静止角程度にまで大きくなる。これにより、胴部が拡径して内部空間の容積が迅速に増大するので、エネルギー吸収性能が迅速かつ大幅に向上する。
また、追加の空気を内部空間に注入することにより内圧が上昇するので、この内圧上昇によってもエネルギー吸収性能が向上する。そのため、津波等によって係留船舶の急激な搖動が生じて急激に接岸エネルギーが増大しても、バーストすることなく十分に対応することが可能になる。
ここで、前記空気注入装置としては、例えば、内蔵電源作動または非電気作動の空気注入ボンベを用いる。このような空気注入ボンベであれば、外部電源を必要とせずに急速に防舷材の内部空間に空気を注入できるので、停電等の緊急事態であっても確実に防舷材の吸収エネルギーを大幅に向上させることが可能になる。
中立状態で前記中間ゴム層の厚さを例えば1mm〜5mmにする。中間ゴム層が1mm未満であると、コード角度を円滑に静止角度程度まで大きくして胴部を拡径させることが困難になる。一方、中間ゴム層が5mm超であると防舷材の重量が過大になる。
前記中間ゴム層のゴムの100%モジュラスが0.5MPa〜5.0MPaであると、安定的に胴部を十分に拡径させることができる。前記中間ゴム層のゴムの100%モジュラスが0.5MPa未満であると、胴部を収縮させて縮径させるのに時間を要し、元の直径に戻らない可能性もある。一方、5.0MPa超では、拡径する際に中間ゴム層のせん断力が大きくなり変形し難くなって胴部を十分に拡径させ難くなる。
中立状態で前記中間ゴム層の厚さが外周側の中間ゴム層ほど厚くなっている仕様にすることもできる。胴部が拡径する際に、外側の中間ゴム層ほど大きなせん断変形が必要になることがあるので、この仕様によれば、一部の中間ゴム層に過大な負荷が生じることを防止するには有利になる。
本発明の縦型空気式防舷材の使用状態を例示する説明図である。 中立状態の図1の縦型空気式防舷材の胴部の補強層の状態を一部切欠いて例示する説明図である。 図2の鏡部の補強層の状態を例示する説明図である。 図2の縦型空気式防舷材の胴部の一部拡大断面図である。 胴部を拡径させた際の補強層の状態を一部切欠いて例示する説明図である。
以下、本発明の縦型空気式防舷材を図に示した実施形態に基づいて説明する。
図1〜図3に例示するように本発明の縦型空気式防舷材1(以下、防舷材1という)は、円筒状の胴部2の両端にボウル状の鏡部3を備えている。それぞれの鏡部3には口金部9が設けられている。防舷材1の内部空間には所定量のバラスト水Wが収容されている。
上側の鏡部3の口金部9には安全弁10が設けられ、この口金部9またはその周辺には圧力センサ13が設けられている。安全弁10は、防舷材1の内圧が予め設定されている上限圧力を超えた際に開弁して内部空間の空気aを外部に排出して内圧を低減させる。圧力センサ13は防舷材1の内圧を検知する。
上側の鏡部3の口金部9には、さらに、空気注入装置12の注入管12aが接続されている。注入管12aはパイプやホース、或いはこれらの相当物であり、空気注入装置12は通常停止していて、注入管12aは閉じられている。空気注入装置12は、必要な時に防舷材1の内部空間に追加の空気aを注入する。空気注入装置12としては、例えば、内蔵電源作動または非電気作動の空気注入ボンベを用いる。
下側の鏡部3の口金部9には重錘11が接続されている。また、それぞれの口金部9にはガイチェーン14の一端部が接続されている。それぞれのガイチェーン14の他端部は、アンカー等を介して岸壁16に固定されている。
この防舷材1には、バラスト水Wと重錘11によって鉛直下向きの力が加わり、この鉛直下向きの力と防舷材1の浮力とがバランスして防舷材1は両端の鏡部3を上下方向にした立った姿勢を維持している。
図4に例示するように、胴部2は内層ゴム4と外層ゴム7との間に複数の補強層5が積層されて構成されている。この実施形態では6層の補強層5(5a〜5f)が積層されている。補強層5の積層数は、例えば6〜12程度である。それぞれの補強層5どうしの間には中間ゴム層8(8a〜8e)が介設されている。
それぞれの補強層5は、多数のコード6a(6b)が平行に引き揃えられて形成されたコード層である。積層されて隣り合う補強層5どうしのコード6a、6bが交差して、胴部2の筒軸方向(筒軸心CL)に対して所定のコード角度Aで配置されている。即ち、内周側第1層の補強層5a、第3層の補強層5cおよび第5層の補強層5eは同じ方向のコード角度Aである。内周側第2層の補強層5b、第4層の補強層5dおよび第6層の補強層5fは同じ方向のコード角度Aであり、かつ、このコード角度Aは補強層5a、5c、5eとは反対の向きになっている。
コード6a、6bとしては、スチールコードや有機繊維コード等が用いられる。コード6a、6bの外径は、例えば0.5mm〜1.5mm程度である。
鏡部3は、内層ゴム4と外層ゴム7との間に複数の補強層が積層されて構成されている。放射状に延設されたコード6cで形成された補強層(コード層)と、円周方向に延設されたコード6dで形成された補強層(コード層)とが交互に積層されている。コード6c、6dの仕様は、基本的に胴部2の補強層5のコード6a、6bと同じである。
本発明の防舷材1は、中立状態で、中間ゴム層8の厚さが1mm〜5mm、コード角度Aが15°〜45°に設定されている。中立状態とは防舷材1の内部空間が通常使用時の規定内圧になっている状態である。規定内圧は、例えば50kPa〜100kPa程度である。
従来の空気式防舷材では、半径方向に隣り合う補強層どうしの間には両者を接着するためのごく薄い接着ゴムしか介在していない。本発明では、図4に例示するように、接着ゴムの他に特別に中間ゴム層8を介在させている。中間ゴム層8を形成するゴムとしては、例えば天然ゴム、ブチルゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム等が用いられる。
内層ゴム4を形成するゴムとしては、例えば天然ゴム、ブチルゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム等が用いられる。外層ゴム7を形成するゴムとしては、例えば天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム等が用いられる。防舷材1が中立状態において、内層ゴム4の厚さは、例えば2mm〜5mm程度、外層ゴム7の厚さは、例えば3mm〜12mm程度である。
防舷材1を実際に設置場所に取付けて使用する場合は、口金部9に設置されたバルブを介して内部空間にバラスト水Wを注入するとともに、空気aを注入する。空気aを注入して規定内圧にした中立状態で、それぞれの補強層5のコード6a、6bのコード角度Aは15°〜45°になる。この状態では空気注入装置12は停止したままである。
防舷材1は通常、この中立状態で使用され、岸壁16に係留される船舶15が当接する。ここで、例えば、津波等によって、岸壁16に係留されている船舶15が急激に搖動して防舷材1が過剰に圧縮されると防舷材1の内圧が異常に上昇する。この際に、圧力センサ13が基準圧力を超える内圧を検知すると、空気注入装置12を作動させる構成になっている。基準圧力は、中立状態の規定圧力よりも所定圧力だけ高く設定された防舷材1がバーストしない圧力である。
空気注入装置12が作動すると防舷材1の内部空間に追加の空気aが即座に注入される。追加の空気aの注入により、それぞれの補強層5のコード6a、6bのコード角度Aが安定な静止角程度(54°〜55°)まで大きくなろうとする。その際に、中間ゴム層8が存在しているので、それぞれの中間ゴム層8が適度にせん断変形する。これにより、図5に例示するように、コード角度Aが円滑に静止角程度まで変化するので、迅速に胴部2を大きく拡径させて膨張させることが可能になる。
例えば、追加の空気aを注入して胴部2を最大に拡径、膨張させた状態で、防舷材1の内圧は例えば150kPa程度である。
中立状態のコード角度Aが15°未満では、コード角度Aを静止角程度に大きくするには中間ゴム層8に過大なせん断応力が生じて好ましくない。一方、コード角度Aが45°超では、中立状態から追加の空気aを注入した際の胴部2の拡径具合が小さくなる。そのため、中立状態でコード角度Aを15°〜45°に設定している。
上記のように防舷材1が過剰圧縮された際に、胴部2が拡径して内部空間の容積が迅速に増大して許容圧縮量が増加する。そのため、防舷材1のエネルギー吸収性能が迅速かつ大幅に向上する。また、追加の空気aを内部空間に注入することにより内圧が上昇するので、この内圧上昇によっても防舷材1のエネルギー吸収性能が向上する。したがって、係留している船舶15に急激な搖動が生じて接岸エネルギーが急激に増大しても、防舷材1はバーストすることなく十分に対応することが可能になる。
尚、防舷材1の内圧がさらに上昇して上限内圧を超えた際には、安全弁10が開弁して、内部空間の空気aを外部に排出して内圧を低減させる。空気aを外部に排出し続けて防舷材1の内圧が下限内圧以下になった場合は、圧力センサ13がこれを検知し、空気注入装置12を作動させて追加の空気aを内部空間に注入して規定内圧にする。
空気注入装置12として、内蔵電源で作動する空気注入ボンベまたは非電気作動(機械式に開弁作動する)の空気注入ボンベを用いると、外部電源を必要とせずに急速に防舷材1の内部空間に追加の空気aを注入できる。そのため、停電等の緊急事態であっても確実に防舷材1の吸収エネルギーを大幅に向上させることが可能になる。
この実施形態のように、防舷材1の上下端部をそれぞれガイチェーン14によって岸壁16に保持することにより、防舷材1が不用意に流されることを防止できる。
中間ゴム層8の厚さが1mm未満では胴部2を拡径させる際に十分にせん断変形させ難く、5mm超では防舷材1の重量が過大になる。そのため、中間ゴム層8の厚さは1mm以上5mm以下にするのが好ましい。
中間ゴム層8を形成するゴムの100%モジュラスは0.5MPa〜5.0MPaであることがより好ましい。中間ゴム層8の100%モジュラスが0.5MPa未満では、胴部2を収縮させて縮径させるのに時間を要し、元の直径に戻らない可能性もある。一方、5.0MPa超では、胴部2を拡径させる際に中間ゴム層8のせん断力が大きくなり変形し難くなって十分に拡径させ難くなる。
この実施形態では、中立状態において、すべての中間ゴム層8の厚さが同じになっているが、中間ゴム層8の厚さが外周側の中間ゴム層8ほど厚い仕様にすることもできる。胴部2が拡径する際に、外側の中間ゴム層8ほど大きなせん断変形が必要になることがあるので、この仕様によれば、胴部2を拡径させた際に一部の中間ゴム層8に過大な負荷が生じることを防止するには有利になる。
1 空気式防舷材
2 胴部
3 鏡部
4 内層ゴム
5、5a、5b、5c、5d、5e、5f 補強層
6a、6b、6c、6d コード
7 外層ゴム
8、8a、8b、8c、8d、8e 中間ゴム層
9 口金部
10 安全弁
11 重錘
12 空気注入装置
12a 注入管
13 圧力センサ
14 ガイチェーン
15 船舶
16 岸壁
W バラスト水

Claims (5)

  1. 円筒状の胴部の両端に鏡部を備え、前記胴部は内層ゴムと外層ゴムとの間に複数の補強層が積層されて構成され、前記補強層は多数のコードが平行に引き揃えられて形成されたコード層であり、積層されて上下に隣り合う補強層どうしのコードが交差して筒軸方向に対して所定のコード角度で配置され、下側の鏡部に重錘が接続されるとともに、内部空間にバラスト水が収容された縦型空気式防舷材において、それぞれの補強層どうしの間に中間ゴム層が介設され、中立状態で前記コード角度が15°〜45°に設定され、前記内部空間に追加の空気を注入する空気注入装置が接続されていることを特徴とする縦型空気式防舷材。
  2. 前記空気注入装置が内蔵電源作動または非電気作動の空気注入ボンベである請求項1に記載の縦型空気式防舷材。
  3. 中立状態で前記中間ゴム層の厚さが1mm〜5mmである請求項1または2に記載の縦型空気式防舷材。
  4. 前記中間ゴム層のゴムの100%モジュラスが0.5MPa〜5.0MPaである請求項1〜3のいずれかに記載の縦型空気式防舷材。
  5. 中立状態で前記中間ゴム層の厚さが外周側の中間ゴム層ほど厚くなっている請求項1〜4のいずれかに記載の縦型空気式防舷材。
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