JP2014215113A - 発光分光分析方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】金属試料と該金属試料に対向する電極との間でスパーク放電を多数回発生させて発光を分光し、各スパーク放電に対して得られる元素毎の固有スペクトル線の発光強度から金属試料に含まれる炭素の濃度を分析するに当たり、鉄の発光強度IpFeに対するアルミニウムの発光強度IpAlの比IpAl/IpFeおよび鉄の発光強度IpFeに対する炭素の発光強度IpCの比IpC/IpFeを各スパーク放電に対して算出し、算出されたIpAl/IpFeのデータに基づいて、算出されたIpC/IpFeのデータの一部を抽出し、該抽出されたIpC/IpFeのデータから前記金属試料に含まれる炭素の濃度を分析することを特徴とする。
【選択図】図4
Description
そこで、本発明の目的は、鋼板材料等の金属材料に含まれる炭素の濃度を迅速かつ高精度に分析することができる発光分光分析方法を提供することにある。
上記の、発光強度が著しく高くなるアルミニウムの異常発光は、アルミニウム系介在物に起因したものと考えられる。そして、上記の発光強度の違いが、炭素濃度の分析精度の低下を引き起こす原因について、発明者らは以下のように考えている。
すなわち、スパーク放電発光分光分析法では、分析対象である試料とこれに対向した電極との間で毎秒数百回のスパーク放電を起こさせ、その放電で発生した光をスペクトル分析している。しかし、その発光強度は、放電のゆらぎや、放電効率の時間変動、その他物理的変動に起因して放電ごとに異なる。そこで、試料内に均一に含まれている一つの元素を内標準元素とし、その元素特有の輝線強度と分析対象の元素特有の輝線強度とを対比することによって結果を定量化している。その際に分析精度を高めるために数百〜数千回の放電を行いそれらの結果を平均化している。
鉄鋼材料のスパーク放電発光分光分析法においては、上記内標準元素として、一般に、試料の主体元素である鉄を用いている。これは、マトリックスである鉄を内標準物質とすることによって、本来、測定対象元素の発光強度は、鉄の発光強度と連動して変化するはずであるため、何らかの放電不良等が生じても、同等の分析値、分析精度を得ることができると考えられているからである。
しかし、図2に示したように、その原因は未だ明らかではないが、炭素濃度の分析精度が劣る試料では、鉄の発光強度は、アルミニウム系介在物による異常発光に連動して低下しているが、炭素の発光強度は、鉄の発光強度のように連動せず、ほぼ一定であるため、内標準元素としての鉄が有効に働かず、分析精度の低下を引き起こしているものと考えられる。なお、炭素以外のその他の元素は、鉄と同様、アルミニウムの異常発光に連動して変化するため、大きな分析精度の低下は起こらない。
酸素はアルミニウムと介在物を形成していると考えられるが、上記のように、アルミニウムの発光強度が鉄の発光強度の低下と同じタイミングで高くなっていることが分かったため、酸素の発光強度についても、アルミニウムおよび鉄の発光強度との関係があるかを調べた。そのために、炭素濃度の分析精度が高い試料(σ=0.002質量%)と低い試料(σ=0.009質量%)について、酸素の発光強度を測定し、上記と同様にアルミニウムおよび鉄の発光強度と比較したが、酸素の発光強度とアルミニウムの発光強度の挙動とは、全ては一致せず、また、鉄の発光強度が著しく低くなるタイミングと酸素の発光強度が変化するタイミングとは必ずしも一致しないことが分かった。これは、アルミニウム以外の酸化物系介在物も存在し、そこからの酸素の発光もあるためと推定された。結果として、炭素濃度を高い精度で分析するためには、アルミニウムの発光強度に基づいた補正を行うことが最適であると考えた。
(1)金属試料と該金属試料に対向する電極との間でスパーク放電を多数回発生させて発光を分光し、各スパーク放電に対して得られる元素毎の固有スペクトル線の発光強度から前記金属試料に含まれる炭素の濃度を分析するに当たり、鉄の発光強度IpFeに対するアルミニウムの発光強度IpAlの比IpAl/IpFeおよび前記鉄の発光強度IpFeに対する炭素の発光強度IpCの比IpC/IpFeを各スパーク放電に対して算出し、算出されたIpAl/IpFeのデータに基づいて、算出されたIpC/IpFeのデータの一部を抽出し、該抽出されたIpC/IpFeのデータから前記金属試料に含まれる炭素の濃度を分析することを特徴とする発光分光分析方法。
そして、百分位値は以下のようにして算出している。すなわち、得られたデータを、鉄に対するアルミニウムの発光強度比IpAl/IpFeデータが小さい方から大きい方へ昇順に並べたn個のデータXi(i=1,2,3, ...n、ここで、X1≦X2≦・・・Xn-1≦Xnであり、Xiは小さい方から数えてi番目のIpAl/IpFe)とし、これらのデータの所定の百分位値、例えば、m百分位値(mは自然数)Qmを求める場合、(n+1)×m/100=qで与えられるqが自然数の場合、Qm=Xqである。
一方、上記qが自然数でない時には、Qm=(ceil(q) - q) Xfloor(q)+(q - floor(q)) Xceil(q)である。ここで、ceil(q)は天井関数、floor(q)は床関数であり、それぞれqの小数部分を切り上げた値、切り捨てた値である。
Q50 = (51- 50.5) X50 + (50.5 - 50) X51 = 0.5 X50 + 0.5 X51
となる。
Q25 = (25 - 25.25) X25 + (25.25-25) X26 = 0.75 X25+ 0.25 X26
となる。
図4(b)に示すように、上記のようにして求めた所定の百分位値を超えるIpAl/IpFeに対応するスパーク放電に対応するIpC/IpFeのデータを除外し、所定の百分位値以下のIpAl/IpFeに対応するスパーク放電に対応するIpC/IpFeのデータのみを、後述する炭素濃度を分析するために用いる。
炭素濃度の算出は、予め、複数の認証標準物質を上記本発明の方法にて分析し求めた平均IpC/IpFeと、赤外線吸収法や湿式分析等の他の方法で求めた(炭素質量%/鉄質量%)とから検量線を作成しておき、これを用いて分析対象試料の上記平均IpC/IpFeから(炭素質量%/鉄質量%)を求める。
このようにして得られた(炭素質量%/鉄質量%)から、従来法に従って、鋼中の炭素濃度を求めることができる。求められた(炭素質量%/鉄質量%)は鉄に対する炭素の質量比であるが、従来公知の方法により、試料中(鋼材中)の炭素の濃度に変換することが可能である。例えば、試料鋼に対する鉄の質量比を求め、それと積算したり、もしくは鋼中の炭素以外の元素について定量分析を行い、その値を加味することにより試料中(鋼材中)の炭素の濃度を算出することができる。
以下、実施例について説明するが、これに限定されない。
まず、表1に示した成分組成を有する鋼種の製鋼途中から採取した円筒形の鋳込み試料を金属試料として用意した。これらの試料を中間で輪切りにして、ベルトサンダー(粒度(#):80)で研磨した面を分析に供した。目標の分析精度はσ≦0.002質量%とした。
次に、上記金属試料とこの金属試料に対向する電極との間でスパーク放電を発生させた。1回の測定での放電条件は、放電エネルギー:0.1J、周波数:333Hzであり、予備放電として2000回放電した後、データを採取する測定用放電として1000回放電させた。この測定用のスパーク放電の各々に対して、鉄、アルミニウムおよび炭素の固有スペクトル線の発光強度を測定し、鉄の発光強度に対するアルミニウムの発光強度の比IpAl/IpFe、および鉄の発光強度に対する炭素の発光強度の比IpC/IpFeをスパーク放電毎に算出した。
続いて、鉄の発光強度に対するアルミニウムの発光強度の比IpAl/IpFeのデータを昇順に並べ替えてIpAl/IpFeのデータの50百分位値を算出し、算出された50百分位値を超えるIpAl/IpFeのデータに対応するスパーク放電の、IpC/IpFeのデータを除外し、算出された50百分位値以下のIpAl/IpFeのデータに対応するスパーク放電の、IpC/IpFeのデータを平均して金属試料に含まれる炭素の濃度を分析した。
炭素濃度の算出は、予め、複数の認証標準物質を上記本発明と同じ方法により分析して求めた平均IpC/IpFeと、赤外線吸収法で求めた(炭素質量%/鉄質量%)とから検量線を作成しておき、これを用い、分析対象試料の平均IpC/IpFeから(炭素質量%/鉄質量%)を求めた。
発明例と同様に、金属試料に含まれる炭素の濃度を分析した。ただし、得られた全てのIpC/IpFeのデータを平均して炭素の定量を行った。また、用いた検量線は、本比較例で用いた従来法(得られた全てのIpC/IpFeのデータを平均する方法)で作成したものを用いた。その他の条件は発明例と全て同じである。
発明例および比較例に対して、分析された炭素濃度の精度を評価した。まず、同一分析面を場所を変えて6回分析した際の単純繰り返しの標準偏差σ1を求めた。次に分析面を研磨し新生面を出した後に同様に6回の分析を行ない、同じように標準偏差σ2を求めた。このように6回の分析を分析面を変えて計5回分析し、得られたσ1〜σ5の平均値σAVEを求めた。これを各試料につき、発明例の方法と比較例の方法で行った。得られた結果を表2に示す。なお、以下に、標準偏差σの算出方法を示す。
表2から明らかなように、比較例では、試料AおよびCの精度の平均値が目標を大きく上回っているのに対して、発明例では、目標値を達成する精度が得られていることが分かる。なお、試料AおよびCには、アルミニウム系介在物に放電したと思われる異常なパルスデータが多く認められた。一方、異常放電が少なかった、試料BおよびDは比較例、発明例ともに良好な精度が得られた。こうしたことから、異常放電が多く認められた試料AおよびCにおいても、鉄に対する炭素濃度を高精度に求めることができていることがわかる。
Claims (5)
- 金属試料と該金属試料に対向する電極との間でスパーク放電を多数回発生させて発光を分光し、各スパーク放電に対して得られる元素毎の固有スペクトル線の発光強度から前記金属試料に含まれる炭素の濃度を分析するに当たり、
鉄の発光強度IpFeに対するアルミニウムの発光強度IpAlの比IpAl/IpFeおよび前記鉄の発光強度IpFeに対する炭素の発光強度IpCの比IpC/IpFeを各スパーク放電に対して算出し、算出されたIpAl/IpFeのデータに基づいて、算出されたIpC/IpFeのデータの一部を抽出し、該抽出されたIpC/IpFeのデータから前記金属試料に含まれる炭素の濃度を分析することを特徴とする発光分光分析方法。 - 前記IpC/IpFeのデータの抽出は、多数回のスパーク放電の各々に対して得られるIpAl/IpFeのデータを昇順に並び替え、該IpAl/IpFeの所定の百分位値を上回るスパーク放電から得られるIpC/IpFeのデータを除外することにより行う、請求項1に記載の発光分光分析方法。
- 前記所定の百分位値は20百分位値以上80百分位値以下である、請求項2に記載の発光分光分析方法。
- 前記金属試料に含まれる炭素の濃度は0.05質量%以上0.3質量%以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の発光分光分析方法。
- 前記金属試料に含まれるアルミニウムの濃度は0.2質量%以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の発光分光分析方法。
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WO2023199591A1 (ja) * | 2022-04-11 | 2023-10-19 | Jfeスチール株式会社 | 金属材料中Sbの発光分光分析法、精錬中溶鋼のSb濃度測定方法および鋼素材の製造方法 |
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