ところで、通常、このような熱処理装置において、ローラーなどを含む回転体は炉体を貫通しており、炉体外部に配置されたモーターの駆動軸と接続されている。モーターを炉体外部に配置する理由は、炉体の内部が例えば高温になる場合があるなど、炉体内部の環境がモーターを配置するのに適さないためである。そのため、炉体には回転体が貫通する貫通孔が形成されている。そして、このような貫通孔が存在することで、回転体の軸方向に沿って炉体内部の雰囲気が炉外に流出してしまう場合があった。
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、炉体の内部から外部空間への雰囲気の流出をより抑制することを主目的とする。
本発明の熱処理方法は、
処理空間としての第1空間を形成する炉体と、
前記第1空間に連通する第2空間を内部に形成し、第1壁部と、第2壁部と、該第2空間内に外部からガスを供給可能な第2空間供給口と、を有する壁体と、
前記第1空間内で被処理物を搬送可能であり、該第1空間側から外部空間に向かって前記第1壁部,前記第2空間,前記第2壁部をこの順に貫通して一端が該第2壁部から突出している回転体と、
前記回転体の前記一端側と接続されて該回転体を回転駆動可能な駆動手段と、
前記第1壁部を前記回転体が貫通する部分に設けられ、該回転体を回転可能に支持し且つ前記回転体の貫通方向にガスが流通可能な隙間を有する転がり軸受である第1軸受と、
前記第2壁部を前記回転体が貫通する部分に設けられ、前記第1軸受と比べてシール性の高いシール部材と、
を備えた熱処理装置を用いた熱処理方法であって、
前記駆動手段が前記回転体を回転駆動させることで前記処理空間内で前記被処理物を搬送しながら熱処理を行う工程、
を含み、
前記工程では、前記第1空間の雰囲気と比べて高圧のガスを前記第2空間供給口を介して前記第2空間内に供給する、
ものである。
この本発明の熱処理方法では、熱処理方法に用いる熱処理装置が、処理空間としての第1空間を形成する炉体と、前記第1空間に連通する第2空間を内部に形成し、第1壁部と、第2壁部と、該第2空間内に外部からガスを供給可能な第2空間供給口と、を有する壁体と、を備えている。また、第1空間内で被処理物を搬送可能な回転体が、第1空間側から外部空間に向かって第1壁部,第2空間,第2壁部をこの順に貫通して一端が第2壁部から突出している。そして、この回転体の一端側と接続された駆動手段が回転体を回転駆動させることで、第1空間内で回転体により被処理物を搬送しながら第1空間内で被処理物の熱処理を行う。このとき、回転体が第1壁部を貫通する部分には、回転体を回転可能に支持し且つ回転体の貫通方向にガスが流通可能な隙間を有する転がり軸受である第1軸受が設けられている。また、回転体が第2壁部を貫通する部分には、第1軸受と比べてシール性の高いシール部材が設けられている。そして、熱処理中において、第1空間の雰囲気と比べて高圧のガスを第2空間供給口を介して前記第2空間内に供給する。これにより、第2空間に供給されたガスはシール部材よりもシール性の低い第1軸受の隙間から第1空間側に向かおうとする。そのため、第1空間から第1軸受の隙間を通って雰囲気ガスが流出するのを、第2空間から第1空間へ向かおうとするガスが押さえ込むことになる。したがって、炉体の内部から外部空間への雰囲気の流出をより抑制することができる。
ここで、シール部材が「第1軸受と比べてシール性が高い」とは、回転体の貫通方向にガスが流通可能な隙間が、第1軸受と比べてシール部材の方が小さいことを意味する。また、シール部材が「第1軸受と比べてシール性が高い」とは、回転体の貫通方向にガスが流通可能な隙間をシール部材が有さない(封止されている)場合も含む。「第1空間に連通する第2空間」は、第1空間と第2空間とが直に連通している場合や、第1空間と第2空間とが他の空間(ただし外部空間以外の空間)を介して連通している場合を含む。
本発明の熱処理方法において、前記炉体は、前記第1空間内の雰囲気を排気可能な排気口を有し、前記工程では、前記第1空間の雰囲気が所定の圧力に保たれるように、前記排気口から前記第1空間の雰囲気を排気すると共に前記第2空間にガスを供給してもよい。こうすれば、第2空間供給口,第2空間及び第1軸受の隙間を介して第1空間内にガスを供給する場合に、排気口から雰囲気を排気することで第1空間内の雰囲気の圧力を所定の圧力に調整することができる。
本発明の熱処理方法において、前記炉体は、前記第1空間内にガスを供給可能な第1空間供給口を有し、前記工程では、前記第1空間の雰囲気が所定の圧力に保たれるように、前記排気口から前記第1空間の雰囲気を排気すると共に前記第1空間及び前記第2空間にガスを供給してもよい。こうすれば、第2空間及び第1軸受の隙間を介さない経路で第1空間にガスを供給するため、第1空間内の雰囲気(雰囲気ガスの組成や気圧など)を調整しやすい。なお、前記工程において、第1空間供給口から第1空間に供給するガスと、第2空間供給口から第2空間に供給するガスとは、組成及び圧力が同じであってもよいし、組成及び圧力の少なくとも一方が異なっていてもよい。
本発明の熱処理方法において、前記熱処理装置は、前記第1空間供給口に接続された第1配管と、前記第2空間供給口に接続された第2配管と、前記第1配管及び前記第2配管に接続された共通配管と、を備え、前記工程では、前記共通配管にガスを供給することで、該共通配管及び第2配管を介して前記第1空間の雰囲気と比べて高圧のガスを前記第2空間内に供給し、前記共通配管及び前記第1配管を介してガスを第1空間内に供給してもよい。こうすれば、第1空間供給口を介した第1空間へのガスの供給と、第2空間供給口を介した第2空間へのガスの供給との両方を、共通配管にガスを供給することでまとめて行うことができる。なお、前記工程では、前記第1配管に、共通配管以外の経路からもガスを供給してもよい。こうすれば、共通配管にガスを供給することで第1空間と第2空間との両方にガスを供給しつつ、第1配管に他の経路からのガスも流通させる(共通配管からのガスと混合させる)ことで、第1空間供給口を介して供給するガスと第2空間供給口を介して供給するガスとの組成を異ならせることができる。
本発明の熱処理方法において、前記熱処理装置は、前記第1配管に接続され該第1配管の流量を調整する第1流量調整弁と、前記第2配管に接続され該第2配管の流量を調整する第2流量調整弁と、を備えており、前記工程では、前記共通配管にガスを供給することで、該共通配管及び前記第1配管を介して前記第1流量調整弁で流量が調整されたガスを前記第1空間に供給すると共に、該共通配管及び前記第2配管を介して前記第2流量調整弁で流量が調整されたガスを前記第2空間に供給してもよい。
本発明の熱処理方法において、前記熱処理装置は、前記共通配管と前記第1配管との少なくとも一方に設けられ、且つ前記第1流量調整弁よりも上流側に設けられた第1減圧弁と、前記第2配管のうち前記第2流量調整弁よりも上流側に設けられた第2減圧弁と、を備え、前記第1減圧弁は、下流側のガスの圧力を前記第1空間の雰囲気よりも高圧の第1圧力まで減圧し、前記第2減圧弁は、下流側のガスの圧力を前記第1空間の雰囲気よりも高圧の第2圧力まで減圧し、前記工程では、前記第1圧力及び前記第2圧力を超える圧力のガスを前記共通配管に供給してもよい。こうすれば、減圧後の圧力(第1圧力及び第2圧力)よりも高圧のガスを共通配管から供給するため、第1減圧弁より上流側や第2減圧弁より上流側の配管を細くしても必要なガスの流量を確保することができる。
本発明の熱処理方法において、前記熱処理装置は、前記被処理物を前記外部空間と前記第1空間との間で搬送する搬送路と、前記搬送路の鉛直上側に設けられ、鉛直下側に開口して該搬送路内に連通する上方空間を形成する上方空間形成部と、前記搬送路の鉛直下側に設けられ、鉛直上側に開口して該搬送路内に連通する下方空間を形成する下方空間形成部と、を備え、前記工程では、前記第1空間の雰囲気を外気より高い温度に加熱し、前記上方空間と前記下方空間との少なくとも一方を吸引してもよい。こうすれば、第1空間の雰囲気ガスが外気より高い温度に加熱されているため、第1空間から搬送路に流出する雰囲気ガスは上方空間に向かいやすく、外気は下方空間に向かいやすい。また、この状態で上方空間と下方空間との少なくとも一方を吸引することで、搬送路から上方空間に向かう上方向のガスの流れと搬送路から下方空間に向かう下方向のガスの流れとの少なくとも一方が生じる。これらにより、第1空間の雰囲気や外気は搬送路内で上下方向に流れやすくなるため、外部空間及び第1空間の一方の雰囲気が搬送路を通過して他方に流れる(上下方向に垂直な方向にガスが流れる)のをより抑制できる。すなわち、炉体の内外での搬送路を介した雰囲気の流出入をより抑制することができる。また、炉体が搬送路を介して外部空間に常に開口した状態でも、上記のように炉体の内外での流出入をより抑制できる。ここで、前記搬送路は、前記被処理物を外部から炉体に搬入するためのものであってもよいし、前記被処理物を炉体から外部に搬出するためのものであってもよい。
本発明の熱処理装置は、
処理空間内で被処理物に対する熱処理を行う熱処理装置であって、
前記処理空間としての第1空間を形成する炉体と、
前記第1空間に連通する第2空間を内部に形成し、第1壁部と、第2壁部と、該第2空間内に外部からガスを供給可能な第2空間供給口と、を有する壁体と、
前記第1空間内で前記被処理物を搬送可能であり、該第1空間側から外部空間に向かって前記第1壁部,前記第2空間,前記第2壁部をこの順に貫通して一端が該第2壁部から突出している回転体と、
前記回転体の前記一端側と接続されて該回転体を回転駆動可能な駆動手段と、
前記第1壁部を前記回転体が貫通する部分に設けられ、該回転体を回転可能に支持し且つ前記回転体の貫通方向にガスが流通可能な隙間を有する転がり軸受である第1軸受と、
前記第2壁部を前記回転体が貫通する部分に設けられ、前記第1軸受と比べてシール性の高いシール部材と、
を備えたものである。
この本発明の熱処理装置は、処理空間としての第1空間を形成する炉体と、前記第1空間に連通する第2空間を内部に形成し、第1壁部と、第2壁部と、該第2空間内に外部からガスを供給可能な第2空間供給口と、を有する壁体と、を備えている。また、第1空間内で被処理物を搬送可能な回転体が、第1空間側から外部空間に向かって第1壁部,第2空間,第2壁部をこの順に貫通して一端が第2壁部から突出している。そして、この回転体の一端側と接続された駆動手段が回転体を回転駆動させることで、第1空間内で回転体により被処理物を搬送しながら第1空間内で被処理物の熱処理を行うことができる。このとき、回転体が第1壁部を貫通する部分には、回転体を回転可能に支持し且つ回転体の貫通方向にガスが流通可能な隙間を有する転がり軸受である第1軸受が設けられている。また、回転体が第2壁部を貫通する部分には、第1軸受と比べてシール性の高いシール部材が設けられている。このため、例えば熱処理中において、第1空間の雰囲気と比べて高圧のガスを第2空間供給口を介して前記第2空間内に供給することで、第2空間に供給されたガスはシール部材よりもシール性の低い第1軸受の隙間から第1空間側に向かおうとする。そのため、第1空間から第1軸受の隙間を通って雰囲気ガスが流出するのを、第2空間から第1空間へ向かおうとするガスが押さえ込むことになる。したがって、炉体の内部から外部空間への雰囲気の流出をより抑制することができる。
本発明の熱処理装置において、前記第1軸受よりも前記回転体の前記一端側を回転可能に支持する一端側軸受、を備え、前記シール部材は、軸シールであってもよい。この場合において、前記一端側軸受は、前記第2壁部を前記回転体が貫通する部分に設けられていてもよい。また、前記一端側軸受は、外部空間で前記回転体を支持していてもよい。
本発明の熱処理装置において、前記シール部材は、前記第2壁部を前記回転体が貫通する部分に設けられ、該回転体を回転可能に支持し且つ前記第1軸受と比べてシール性の高い転がり軸受である第2軸受であってもよい。こうすることで、上述した軸シールの役割と一端側軸受の役割とを第2軸受が兼ねることができる。
本発明の熱処理装置において、前記第2軸受は、内輪と、外輪と、該内輪及び該外輪の間に収納された複数の転動体と、該内輪の軸方向に該複数の転動体からずれた位置で該内輪と該外輪との間に配置された遮蔽部材と、を有しており、前記第2軸受の遮蔽部材は、前記内輪と前記外輪との間に前記第1軸受の前記隙間と比べて小さい隙間を形成しているか、又は前記内輪と前記外輪との間を封止していてもよい。こうすれば、第2軸受における回転体の貫通方向にガスが流通可能な隙間を、遮蔽部材を用いて容易に小さくするか又は封止することができる。そのため、第2空間の雰囲気(例えば第2空間供給口から供給されたガス)が第2軸受の隙間を通って外部空間に流出することをより抑制することができる。なお、第2軸受の遮蔽部材は第2軸受の内輪と外輪との間を封止していることが好ましい。
第2軸受が遮蔽部材を有する態様の本発明の熱処理装置において、前記第1軸受は、内輪と、外輪と、該内輪及び該外輪の間に収納された複数の転動体と、該内輪の軸方向に該複数の転動体からずれた位置で該内輪と該外輪との間に配置された遮蔽部材と、を有しており、前記第1軸受の遮蔽部材は、前記内輪と前記外輪との間に前記隙間を形成していてもよい。こうすれば、第1軸受における回転体の貫通方向にガスが流通可能な隙間を、遮蔽部材を用いて容易に小さくすることができる。これにより、ガスが第2空間から第1空間へ向かおうとするようにしつつ、第1軸受の隙間を介して第2空間から第1空間へ塵などの微粒子が侵入することを抑制しやすい。
本発明の熱処理装置において、前記第1軸受及び前記第2軸受は、ボールベアリングとしてもよい。すなわち、前記第1軸受及び前記第2軸受の各々は、内輪と、外輪と、該内輪及び該外輪の間に収納された複数の球状の転動体とを有するものとしてもよい。なお、第1軸受及び前記第2軸受はボールベアリングに限らず、例えば転動体が円柱状であるものとしてもよい。転動体は、自身が回転することで、内輪が回転するなどの外輪と内輪との相対的な位置ずれを可能にする部材であればよい。
本発明の熱処理装置において、前記熱処理は、前記被処理物の加熱処理を含んでいてもよい。ここで、第1空間において加熱処理を含む処理が行われる場合、炉体内で回転体が加熱されることなどにより第1軸受が加熱されることがある。このような場合に、第2空間供給口から第2空間にガスを供給し、第2空間から第1軸受の隙間を介して第1空間に向かう流れを生じさせることで、このガスの流れにより第1軸受を冷却して加熱を抑制することができる。
本発明の熱処理装置において、前記炉体は、前記第1空間内の雰囲気を排気可能な排気口を有していてもよい。こうすれば、第2空間供給口,第2空間及び第1軸受の隙間を介して第1空間内にガスを供給する場合に、排気口から雰囲気を排気することで第1空間内の雰囲気の圧力を調整しやすい。この場合において、前記排気口は前記炉体の外部で排気弁に接続されていてもよい。また、本発明の熱処理装置は、排気口に接続され第1空間内の雰囲気を吸引する排気手段を備えていてもよい。
本発明の熱処理装置において、前記炉体は、前記第1空間内にガスを供給可能な第1空間供給口を有していてもよい。こうすれば、第2空間及び第1軸受の隙間を介さずに第1空間にガスを供給できるため、第1空間内の雰囲気(雰囲気ガスの組成や気圧など)を調整しやすい。なお、第1空間供給口から第1空間に供給するガスと、第2空間供給口から第2空間に供給するガスとは、組成及び圧力が同じであってもよいし、組成及び圧力の少なくとも一方が異なっていてもよい。
本発明の熱処理装置は、前記第1空間供給口に接続された第1配管と、前記第2空間供給口に接続された第2配管と、前記第1配管及び前記第2配管に接続された共通配管と、を備えていてもよい。こうすれば、第1空間供給口を介した第1空間へのガスの供給と、第2空間供給口を介した第2空間へのガスの供給との両方を、共通配管にガスを供給することでまとめて行うことができる。なお、第1配管は、共通配管以外の経路からのガスも流通可能であるものとしてもよい。こうすれば、共通配管にガスを供給することで第1空間と第2空間との両方にガスを供給可能にしつつ、第1配管に他の経路からのガスも流通させる(共通配管からのガスと混合させる)ことで、第1空間供給口を介して供給するガスと第2空間供給口を介して供給するガスとの組成を異ならせることができる。
本発明の熱処理装置は、前記第1配管に接続され該第1配管の流量を調整する第1流量調整弁と、前記第2配管に接続され該第2配管の流量を調整する第2流量調整弁と、を備えていてもよい。こうすれば、第1空間及び第2空間に流入するガスの流量を調整することができる。
本発明の熱処理装置は、前記共通配管と前記第1配管との少なくとも一方に設けられ、且つ前記第1流量調整弁よりも上流側に設けられた第1減圧弁と、前記第2配管のうち前記第2流量調整弁よりも上流側に設けられた第2減圧弁と、を備え、前記第1減圧弁は、下流側のガスの圧力を前記第1空間の雰囲気よりも高圧の第1圧力まで減圧し、前記第2減圧弁は、下流側のガスの圧力を前記第1空間の雰囲気よりも高圧の第2圧力まで減圧してもよい。こうすれば、減圧後の圧力(第1圧力及び第2圧力)よりも高圧のガスを共通配管から供給することができる。そのため、第1減圧弁より上流側や第2減圧弁より上流側の配管を細くしても必要なガスの流量を確保することができる。
本発明の熱処理装置は、前記第1空間と前記第2空間との間に該第1空間及び該第2空間と連通する第3空間を形成し、前記回転体に貫通されている第3空間形成部材、を備えていてもよい。こうすれば、第1空間と第2空間との間に第3空間が存在することで、例えば炉体からの熱伝導により壁体の第1軸受,シール部材の温度が変化するなどの、炉体から壁体への影響をより抑制することができる。また、この場合において、本発明の熱処理装置は、前記第3空間内で前記回転体を回転可能に支持する支持手段をさらに備えていてもよい。
第3空間形成部材を備える態様の本発明の熱処理装置において、前記回転体は、前記第1空間内で前記被処理物を搬送可能な搬送ローラーと、前記駆動手段に回転駆動され前記壁体を貫通する駆動軸と、前記駆動軸のうち前記搬送ローラー側の端部が挿入されて該端部と接続された中空パイプ状のホルダーと、前記搬送ローラーのうち前記駆動軸側に固定されたローラーキャップと、前記ホルダーと前記ローラーキャップとに挿入されて該ホルダー及び該ローラーキャップに接続された連結シャフトと、を備え、前記ホルダー,前記ローラーキャップ,及び前記連結シャフトは、前記第3空間内に配置されており、前記ローラーキャップの内周面と前記連結シャフトとの間にはクリアランスがあり、該連結シャフトは前記ローラーキャップに対して該クリアランスにより軸ずれ可能に接続されていてもよい。こうすれば、連結シャフトがローラーキャップに対して軸ずれ可能に接続されていることで、搬送ローラーと駆動軸とに偏心(軸ずれ)が生じても、駆動軸を介して搬送ローラーに駆動手段からの回転駆動力を伝達することができる。この場合において、本発明の熱処理装置は、前記第3空間内で前記ローラーキャップを回転可能に支持する支持手段をさらに備えていてもよい。
本発明の熱処理装置は、前記第1空間の雰囲気と比べて高圧のガスを前記第2空間内に供給するガス供給手段を備えていてもよい。こうすれば、ガス供給手段からのガスにより、第2空間から第1軸受の隙間を通って第1空間へ向かうガスの流れを生じさせることができる。
本発明の熱処理装置は、前記第1空間内に配置された加熱手段を備えていてもよい。また、本発明の熱処理装置は、第1空間内で前記被処理物を搬送可能な複数の回転体を有していてもよい。この場合、複数の回転体のうち1以上が、「第1空間側から外部空間に向かって第1壁部,第2空間,第2壁部をこの順に貫通して一端が第2壁部から突出している」ものであればよい。また、壁体は1つの回転体が貫通しているものとして、本発明の熱処理装置が複数の壁体を有していてもよい。複数の回転体に貫通されている壁体があってもよい。
本発明の熱処理装置は、前記被処理物を前記外部空間と前記第1空間との間で搬送する搬送路と、前記炉体内部の雰囲気を外気より高い温度にする加熱手段と、前記搬送路の鉛直上側に設けられ、鉛直下側に開口して該搬送路内に連通する上方空間を形成する上方空間形成部と、前記搬送路の鉛直下側に設けられ、鉛直上側に開口して該搬送路内に連通する下方空間を形成する下方空間形成部と、前記上方空間と前記下方空間との少なくとも一方を吸引する吸引手段と、を備えていてもよい。こうすれば、本発明の熱処理方法の説明で上述したように、炉体の内外での搬送路を介した雰囲気の流出入をより抑制することができる。
本発明の熱処理装置において、前記上方空間形成部は、前記炉体に対して上部が遠ざかる方向に傾斜した前記上方空間を形成していてもよい。外気より高い温度の雰囲気ガスが炉体から流出したときには、この雰囲気ガスの流れる向きは炉体に対して遠ざかるほど上昇する向きとなる。そのため、上方空間が炉体に対して上部が遠ざかる方向に傾斜していることで、炉体からの雰囲気ガスが上方空間に導かれやすくなり、外部への流出をより抑制できる。
本発明の熱処理装置において、前記上方空間形成部は、前記炉体に対して上部が遠ざかる方向に傾斜した部材であり前記上方空間を前記被処理物の搬送方向に沿って複数の区画空間に区画する区画部材を有していてもよい。こうすれば、複数の区画部材が炉体に対して上部が遠ざかる方向に傾斜していることで、炉体からの雰囲気ガスが上方空間に導かれやすくなる。この場合において、前記複数の区画空間は、前記上方空間のうち上方で互いに連通していてもよい。
本発明の熱処理装置において、前記下方空間形成部は、前記炉体に対して下部が近づく方向に傾斜した前記下方空間を形成していてもよい。外気が搬送路に流れたとき、炉体の雰囲気ガスの方が温度が高いため、この外気の流れる向きは炉体に対して近づくほど下降する向きとなる。そのため、下方空間が炉体に対して下部が近づく方向に傾斜していることで、搬送路に流れた外気が下方空間に導かれやすくなり、炉体への流入をより抑制できる。
本発明の熱処理装置において、前記下方空間形成部は、前記炉体に対して下部が近づく方向に傾斜した部材であり前記下方空間を前記被処理物の搬送方向に沿って複数の区画空間に区画する区画部材を有していてもよい。こうすれば、複数の区画部材が炉体に対して下部が近づく方向に傾斜していることで、搬送路に流れた外気が下方空間に導かれやすくなる。この場合において、前記複数の区画空間は、前記下方空間のうち下方で互いに連通していてもよい。
[第1実施形態]
次に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。図1は、本発明の熱処理方法に用いる熱処理装置の一実施形態であるローラーハースキルン10の縦断面図である。図2は、図1のA−A断面図である。図3は、図2の駆動側カバー26及び壁体30の周辺の拡大断面図である。ローラーハースキルン10は、炉体11の第1空間11a内で複数の被処理物96を載置したトレイ95を搬送しながら被処理物96に対する熱処理を行う装置である。ローラーハースキルン10は、炉体11と、従動側カバー22と、駆動側カバー26と、壁体30と、搬送ローラー61を含む複数の回転体60と、ガス供給装置70と、排気装置86と、を備えている(図1,2参照)。
炉体11は、略直方体に形成された断熱構造体であり、内部で被処理物96の熱処理を行う処理空間である第1空間11aと、炉体の前端面12(図1の左端面)及び後端面13(図1の右端面)にそれぞれ形成され外部から第1空間11aへの出入口となる開口14,15を有している(図1)。この炉体11は、前端面12から後端面13までの長さが例えば2〜15mである。第1空間11a内には、複数の搬送ローラー61が搬送方向(図1の前後方向)に沿って開口14から開口15に亘って配置されている。この搬送ローラー61が回転することによって、複数の被処理物96が載置されたトレイ95は、開口14から第1空間11a内を通過して開口15まで搬送される。なお、搬送ローラー61は、図2に示すように、搬送方向と直交する方向(図2の左右方向)に炉体11を貫通している。炉体11は左右方向に貫通孔16,貫通孔17を有しており、搬送ローラー61の一端(図2の左端)が炉体11の貫通孔16を貫通して駆動側カバー26内まで到達し、他端(図2の右端)が炉体11の貫通孔17を貫通して従動側カバー22内まで到達している。また、第1空間11a内には、複数の搬送ローラー61を上下から挟むように、炉体11の天井及び底部に複数のヒーター20が配置されている。ヒーター20は、長手方向が搬送方向に直交するように配置されており、搬送方向に沿って複数配置されている。ヒーター20は、第1空間11a内を通過する被処理物96を加熱するものであり、例えばSiCヒーターなどのセラミックスヒーターとして構成されている。なお、ヒーター20に限らず、ガスバーナーなど、被処理物96の熱処理を行うことができる加熱装置であればよい。図2に示すように、炉体11の天井部分には、排気装置86と接続され第1空間11aの雰囲気を排気可能な排気口19が形成されている。また、炉体11の底部には、ガス供給装置70と接続され第1空間11aにガスを供給可能な第1空間供給口18が形成されている。なお、炉体11は、開口14,15、貫通孔16,17、第1空間供給口18、排気口19を除いて気密な構造をしており、これらの部分以外では、外部空間などの他の空間との気体の流出入がほとんど生じないようになっている。また、開口14,開口15は気密構造の図示しない置換室内に開口していてもよい。
従動側カバー22は、炉体11の右側(図2の右側)に配置された略直方体の構造体である。この従動側カバー22は、貫通孔17を貫通した搬送ローラー61の他端がローラーハースキルン10の外部空間に露出しないように搬送ローラー61の他端を覆っている。従動側カバー22は、炉体11側の貫通孔17に連なる開口を除いて気密な構造をしており、従動側カバー22内の空間と外部空間とで気体の流出入がほとんど生じないようになっている。また、従動側カバー22内には、搬送ローラー61を下側から支持する従動側支持ローラー24が配置されている。従動側支持ローラー24は、例えば搬送ローラー61の下側且つ搬送ローラー61の中心軸から前後(図2の紙面手前及び奥)にずらした位置に2つのローラーを並べたものであり、この複数のローラーによって搬送ローラー61を回転可能に支持している。
駆動側カバー26は、炉体11の左側(図2の左側)に配置された略直方体の構造体であり、内部に第3空間26aを形成している。駆動側カバー26は、炉体11側(図2の右側)が開口しており、第3空間26aは貫通孔16を介して第1空間11aと連通している。第3空間26a内には、貫通孔16を貫通した搬送ローラー61の一端が到達しており、駆動側カバー26は搬送ローラー61の一端を覆っている。また、駆動側カバー26の左側には第3空間26aに連通する開口27が形成されており、搬送ローラー61に接続された駆動軸65が開口27を貫通している(図3参照)。駆動側カバー26は、開口27や炉体11側の貫通孔16に連なる開口を除いて気密な構造をしており、これらの部分以外では、第3空間26aと第1空間11a,第2空間30a,外部空間との間で気体の流出入がほとんど生じないようになっている。第3空間26a内には、回転体60(ローラーキャップ62)を下側から支持する駆動側支持ローラー28が配置されている。駆動側支持ローラー28は、従動側支持ローラー24と同様の構成であり、回転体60(ローラーキャップ62)を回転可能に支持している。
壁体30は、駆動側カバー26の左側(図2の左側)に配置された略直方体の構造体である。図3に示すように、壁体30は、板状の部材である第1壁部31と第2壁部32とを有しており、これらを含む複数の板状部材を接着剤やボルト締めなどにより組み合わせて略直方体の構造体としたものである。これにより壁体30の内部には、第2空間30aが形成されている。第1壁部31及び第2壁部32は、回転体60の軸方向(図3の左右方向)に沿って第2空間30aを挟むように対向して配置されている。第1壁部31は、炉体11側(図3の右側)の面が駆動側カバー26の壁体30側(図3の左側)の面と接しており、駆動側カバー26の開口27を塞ぐように配置されている。これにより、第1壁部31は、炉体11側の面が第1空間11aに連なる第3空間26aに面しており、炉体11とは反対側の面が第2空間30aに面している。すなわち、第1壁部31は第3空間26aと第2空間30aとを区画している。また、第2壁部32は、炉体11側の面が第2空間30aに面しており、炉体11とは反対側の面が外部空間に面している。すなわち、第2壁部32は第2空間30aと外部空間とを区画している。壁体30の天井(図3の上部)には、ガス供給装置70と接続され第2空間30aにガスを供給可能な第2空間供給口33が形成されている。また、第1壁部31は駆動軸65によって貫通されており、この貫通部分には第1軸受40が取り付けられている。同様に、第2壁部32は駆動軸65によって貫通されており、この貫通部分には第2軸受50が取り付けられている。なお、壁体30は、第2空間供給口33,第1軸受40の隙間44a,45a(図3の拡大部分参照)を除いて気密な構造をしており、これらの部分以外では、外部空間や第3空間26aとの気体の流出入がほとんど生じないようになっている。
第1軸受40は、ボールベアリングとして構成された転がり軸受であり、回転体60(駆動軸65)を回転可能に支持するものである。第1軸受40は、内輪41と、外輪42と、複数の球体43と、遮蔽部材44,45と、を有している。内輪41は、中心を駆動軸65が貫通しており、駆動軸65と一体に回転可能に構成されている。外輪42は、内輪41と同心円状に配置された部材である。外輪42の外周面は第1壁部31に取り付けられて、固定されている。外輪42の外周面と第1壁部31の貫通部分の内周面との間は、例えば封止材などにより封止されている。球体43は、内輪41と外輪42との間で回転可能に配置された部材である。この球体43は、内輪41の外周面及び外輪42の内周面に沿って円周方向に等間隔に複数配置されている。駆動軸65の回転に伴って内輪41が回転すると、回転する内輪41と固定された外輪42との相対的な位置ずれを球体43が回転することで吸収する。これにより、第1軸受40は駆動軸65を回転可能に支持する。遮蔽部材44,45は、内輪41の軸方向(図3の左右方向)に複数の球体43からずれた位置で内輪41と外輪42との間に配置されたリング状の部材である。なお、遮蔽部材44が球体43よりも第1空間11a側に配置され、遮蔽部材45が球体43よりも第2空間30a側に配置されている。遮蔽部材44,45は、例えば鋼板の表面に合成ゴムなどの弾性体を固着させた部材であり、外輪42の内周面に形成された溝に遮蔽部材44,45の外周面のリング状の突起が嵌り込むことで、外輪42に固定されている。また、遮蔽部材44,45の内周面にもリング状の突起が形成されており、この突起は内輪41の外周面の溝との間に隙間44a,45aをそれぞれ形成している。すなわち、遮蔽部材44,45は、隙間44a,45aを残して内輪41と外輪42との間の隙間を塞いでいる。この隙間44a,45aは、内輪41の溝と遮蔽部材44,45の突起とで挟まれたラビリンス形状をしている。隙間44aと隙間45aとは、複数の球体43の間の隙間を介して連通している。そのため、第1軸受40は、第2空間30aから、隙間45a,複数の球体43の間の隙間,隙間44aを経由して第3空間26aに到達するガスの流路を形成しており、これにより第2空間30aと第3空間26aとは連通している。
第2軸受50は、ボールベアリングとして構成された転がり軸受であり、回転体60(駆動軸65)を回転可能に支持するものである。第2軸受50は、内輪51と、外輪52と、複数の球体53と、遮蔽部材54,55と、を有している。内輪51は、中心を駆動軸65が貫通しており、駆動軸65と一体に回転可能に構成されている。外輪52は、内輪51と同心円状に配置された部材である。外輪52の外周面は第2壁部32に取り付けられて、固定されている。外輪52の外周面と第2壁部32の貫通部分の内周面との間は、例えば封止材などにより封止されている。球体53は、内輪51と外輪52との間で回転可能に配置された部材である。この球体53は、内輪51の外周面及び外輪52の内周面に沿って円周方向に等間隔に複数配置されている。駆動軸65の回転に伴って内輪51が回転すると、回転する内輪51と固定された外輪52との相対的な位置ずれを球体53が回転することで吸収する。これにより、第2軸受50は駆動軸65を回転可能に支持する。遮蔽部材54,55は、内輪51の軸方向(図3の左右方向)に複数の球体53からずれた位置で内輪51と外輪52との間に配置されたリング状の部材である。なお、遮蔽部材54が球体53よりも第2空間30a側に配置され、遮蔽部材55が球体53よりも外部空間側に配置されている。遮蔽部材54,55は、例えば鋼板の表面に合成ゴムなどの弾性体を固着させた部材であり、外輪52の内周面に形成された溝に遮蔽部材54,55の外周面のリング状の突起が嵌り込むことで、外輪52に固定されている。また、第1軸受40の遮蔽部材44,45とは異なり、遮蔽部材54,55の内周面に形成されたリング状の突起は、内輪51の外周面の溝内に嵌り込んで溝の底部と接触している。このため、遮蔽部材54,55と内輪51との間には隙間がなく、遮蔽部材54,55は内輪51と外輪52との間を封止している。
回転体60は、搬送ローラー61と、ローラーキャップ62と、連結シャフト63と、ホルダー64と、駆動軸65と、を有している。この回転体60は、搬送ローラー61により第1空間11a内で被処理物96を搬送可能であり、第1空間11a側から外部空間に向かって駆動側カバー26(第3空間26a),第1壁部31,第2空間30a,第2壁部32をこの順に貫通して一端(図3の左端)が第2壁部32から外部空間に突出している。より具体的には、搬送ローラー61が第1空間11aから貫通孔16を貫通して第3空間26a内に到達し、第1空間11a側から第2空間30a側に向かってローラーキャップ62,連結シャフト63,ホルダー64がこの順で第3空間26a内に配置されている。また、駆動軸65が第3空間26a内から開口27,第1壁部31(第1軸受40),第2空間30a,第2壁部32(第2軸受50)をこの順に貫通して第2壁部32から外部空間に突出している。駆動軸65の一端側にはスプロケット66が形成されており、このスプロケット66にはローラーチェーン92が掛けられている。ローラーチェーン92は、外部空間に配置されたモーター90の駆動軸91とスプロケット66とを掛け渡すように配置されており、回転体60とモーター90とを接続している。モーター90は、駆動軸91,ローラーチェーン92を介してスプロケット66に回転駆動力を伝達する。スプロケット66が回転駆動することで回転体60全体が回転し、搬送ローラー61が被処理物96を搬送する。
回転体60の各構成要素及びその接続について説明する。搬送ローラー61は、例えばセラミックス製の中空パイプであり、一端(図3の左端)側に外径の小さい円柱状の突出部61aを有している。ローラーキャップ62は、軸方向の両端が開口した筒状の部材である。ローラーキャップ62の搬送ローラー61側の端部の開口内には突出部61aが挿入されており、図示しないボルト等により突出部61aとローラーキャップ62とは固定されている。これにより、搬送ローラー61とローラーキャップ62とは同軸に固定されている。
連結シャフト63は、ローラーキャップ62の両端の開口径よりも小さい(例えば2分の1など)外径を有し、且つ、ホルダー64の両端の開口径よりも小さい外径を有する円柱状の部材である。ホルダー64は、軸方向の両端が開口した中空パイプ状の部材である。連結シャフト63の炉体11側の端部は、ローラーキャップ62の壁体30側の端部の開口内に挿入されている。また、連結シャフト63の炉体11側の端部付近では、差込ピン67aが連結シャフト63の中心軸と垂直に連結シャフト63を貫通している。連結シャフト63と差込ピン67aとは、差込ピン67aと垂直に連結シャフト63を貫通する止めネジ68aにより固定されている。この差込ピン67aは、ローラーキャップ62の外径よりも長い部材であり、ローラーキャップ62の壁体30側の端部に形成された一対の切り込み部62a,62bを貫通している。切り込み部62a,62bは、ローラーキャップ62の壁体30側の端面から軸方向に沿ってローラーキャップ62の筒状部分を切り欠いて形成された、軸方向に沿った溝(深さ方向が軸方向である溝)である。そのため、連結シャフト63と差込ピン67aとを止めネジ68aで固定した状態で、連結シャフト63をローラーキャップ62の内部に挿入すると共に、ローラーキャップ62の壁体30側の端面から切り込み部62a,62b内に差込ピン67aを挿入可能になっている。また、差込ピン67aよりもローラーキャップ62の左端部側(切り込み部62a,62bの開口側)にはC型止め輪69aが取り付けられており、これにより挿入後の差込ピン67aが切り込み部62a,62bから軸方向に抜けるのを防止している。このように、差込ピン67a,切り込み部62a,62b,C型止め輪69aによってローラーキャップ62と連結シャフト63とが接続されている。連結シャフト63の壁体30側の端部は、炉体11側の端部と同様に差込ピン67bに貫通されて止めネジ68bにより差込ピン67bが固定されている。これにより、上述したローラーキャップ62と連結シャフト63との接続と同様に、ホルダー64の炉体11側の切り込み部64a,64bと、差込ピン67bと、C型止め輪69bとによって、円筒状のホルダー64内に連結シャフト63が挿入されつつ両者が接続されている。
駆動軸65は、ホルダー64の両端の開口径よりも小さい外径(例えば、連結シャフト63と同じ外径)を有する円柱状の部材である。駆動軸65の炉体11側の端部は、連結シャフト63と同様に差込ピン67cに貫通されて止めネジ68cにより差込ピン67cが固定されている。これにより、上述したホルダー64と連結シャフト63との接続と同様に、ホルダー64の壁体30側の切り込み部64c,64dと、差込ピン67cと、C型止め輪69cとによって、円筒状のホルダー64内に駆動軸65が挿入されつつ両者が接続されている。
なお、本実施形態では、ホルダー64の内径と連結シャフト63及び駆動軸65の外径との差が比較的小さく(例えば1mm未満など)、ローラーキャップ62の内径と連結シャフト63の外径との差が比較的大きい(例えば十数ミリなど)ものとした。これにより、ホルダー64の内径と連結シャフト63及び駆動軸65の外径とのクリアランスは比較的小さいが、ローラーキャップ62の内径と連結シャフト63の外径とのクリアランスは比較的大きい。そのため、ホルダー64と連結シャフト63及び駆動軸65とがほぼ同軸に保たれて接続されているのに対し、連結シャフト63とローラーキャップ62とは、このクリアランスにより差込ピン67aの長手方向(図3の上下方向)に軸ずれ可能に接続されている。なお、差込ピン67aは、連結シャフト63とローラーキャップ62とが軸ずれしても切り込み部62a,62bから抜けることのないような十分な長さを有するものとした。このような、差込ピン67a〜67cを用いてローラーキャップ62,連結シャフト63,ホルダー64,駆動軸65を接続する構成は、例えば特開平9−26264号公報(又は特許第3556739号公報)に記載されている。
ガス供給装置70は、図2に示すように、第1ガスを供給する第1ガス供給源71と、第2ガスを供給する第2ガス供給源72と、を備えている。また、ガス供給装置70は、第2ガス供給源72から接続部76aまでの第1ガスの流路となる共通配管73と、接続部76aから接続部76bを経由して第1空間供給口18までのガスの流路となる第1配管74と、接続部76aから第2空間供給口33までのガスの流路となる第2配管75と、を備えている。共通配管73のガスの流路の途中には、第2ガス供給源72から接続部76aに向かって、フィルター80と、流量計81と、第1減圧弁82と、がこの順に取り付けられている。また、第1配管74のガスの流路の途中には、接続部76bよりも下流側(第1空間供給口18側)に第1流量調整弁84が取り付けられている。第2配管75のガスの流路の途中には、接続部76aから第2空間供給口33に向かって、第2減圧弁83と、第2流量調整弁85と、がこの順に取り付けられている。
第1ガス供給源71は、第1配管74の接続部76bに第1ガスを供給する装置である。この第1ガスは、接続部76bから第1配管74,第1空間供給口18を介して、第1空間11a内に到達する。第2ガス供給源72は、共通配管73に第2ガスを供給する装置である。この第2ガスは、共通配管73から第1配管74内を流通し、接続部76bで第1ガスと混合された上で第1空間供給口18から第1空間11a内に到達する。また、第2ガスは、共通配管73から第2配管75内を流通し、第2空間供給口33を介して第2空間30a内に到達する。ここで、第2ガスは、被処理物96の熱処理時における第1空間11a内の雰囲気の成分の少なくとも一部を含むガスである。本実施形態では、熱処理時における第1空間11a内の雰囲気は還元雰囲気とし、具体的には窒素に微量の水素を混合した雰囲気(例えば雰囲気中の水素濃度が数%など)とした。そして、第2ガスは窒素とした。また、第1ガスは、熱処理時における第1空間11a内の雰囲気のうち第2ガスに含まれない成分を少なくとも含むものであり、本実施形態では水素とした。
フィルター80は、第2ガス供給源72から供給された第2ガスから塵などの微粒子を除去する装置である。流量計81は、共通配管73を流れる第2ガスの流量を測定する装置である。第1減圧弁82は、第1流量調整弁84よりもガスの上流側に設けられており、自身の上流側に第2ガス供給源72から供給されたガスの圧力を、所定の第1圧力まで減圧して、自身の下流側に流す。この第1圧力は、被処理物96の熱処理時における第1空間11aの雰囲気よりも高圧の圧力(例えば第1空間11aの雰囲気の十数倍の圧力)として予め定められている。特に限定するものではないが、第1圧力は、第2ガス供給源72が供給する第2ガスの圧力の半分以下としてもよい。第2減圧弁83は、第2流量調整弁85よりもガスの上流側に設けられており、自身の上流側に供給されたガスの圧力を、所定の第2圧力まで減圧して、自身の下流側に流す。なお、図2からもわかるように、第1減圧弁82は第2減圧弁83の上流側に設けられているため、第2減圧弁83の上流側には第1圧力でガスが供給される。すなわち、第2減圧弁83は第1圧力のガスを第2圧力まで減圧して下流側に流すことになる。この第2圧力は、被処理物96の熱処理時における第1空間11aの雰囲気よりも高圧の圧力(例えば第1空間11aの雰囲気の数倍の圧力)として予め定められている。特に限定するものではないが、第2圧力は、第1圧力の100分の1以下としてもよい。第1流量調整弁84は、自身を通過するガス(第1ガスと第2ガスとが混合されたガス)の流量が所定の第1流量となるように(第1流量を超えないように)調整する装置である。第2流量調整弁85は、自身を通過する第2ガスの流量が所定の第2流量となるように(第2流量を超えないように)調整する装置である。
排気装置86は、排気口19に接続されて第1空間11a内の雰囲気を吸引して排気する装置である。この排気装置86は、排気弁87と、吸気弁88と、排気ファン89とを有している。排気弁87は、弁の開度を調整することにより、第1空間11aから排気口19を介して流れる雰囲気ガスの流量を調整する装置である。吸気弁88は、例えば周囲の大気などを吸気することにより、第1空間11aから流れてきた雰囲気ガスを冷却する装置である。排気ファン89は、排気口19,排気弁87,吸気弁88を介して第1空間11a内の雰囲気を吸引し、これを排気する。排気ファン89は単位時間あたりの排気量を調整可能であってもよい。
被処理物96は、炉体11内を通過する際にヒーター20からの熱により例えば焼成などの熱処理を行うものである。特に限定するものではないが、本実施形態では、被処理物96は、セラミックス製の誘電体と電極とを積層した積層体(寸法は例えば縦横が1mm以内)であり、焼成後にセラミックスコンデンサのチップとなるものとした。
以上、図1〜3を用いてローラーハースキルン10の構成を説明したが、図2,3では、1つの回転体60と、その回転体60が貫通する1つの駆動側カバー26及び1つの壁体30などを図示した。本実施形態では、第1空間11a内に配置された複数の回転体60のいずれもが、図2,3と同様の構成を有するものとした。すなわち、ローラーハースキルン10は、第1空間11a内に配置された回転体60の本数と同じ数だけ、駆動側カバー26,壁体30,モーター90,従動側カバー22などを有する。また、第2配管75は、第2流量調整弁85の下流で壁体30と同じ数だけ分岐しているものとし、分岐先が複数の第2空間供給口33のそれぞれに接続されているものとした。
次に、こうして構成されたローラーハースキルン10を用いて被処理物96の熱処理を行う様子について説明する。まず、モーター90を動作させて複数の回転体60を回転駆動させると共に、ヒーター20に通電してヒーター20を発熱させる。回転体60から回転体60への駆動力は、本実施形態では熱処理に要する時間に基づいて予め定められているものとした。ヒーター20の出力は、第1空間11a内での被処理物96の熱処理時の温度(例えば1000℃前後など)に基づいて予め定められているものとした。続いて、複数の被処理物96を載置したトレイ95を複数用意し、開口14側の端部の回転体60(搬送ローラー61)の上に順次載置していく。トレイ95は、搬送方向と垂直な方向(図2の左右方向)に複数列載置してもよい。搬送ローラー61に載置されたトレイ95は、複数の搬送ローラー61の回転により炉体11内に搬入されて搬送方向に順次搬送されていく。そして、トレイ95は、第1空間11aを通過して開口15側から搬出される。このように、ローラーハースキルン10では、モーター90が回転体60を回転駆動させることで第1空間11a内で被処理物96を順次搬送しながら、ヒーター20により熱処理を行う。
そして、被処理物96を搬送している間、すなわち熱処理を行っている間は、第1ガス供給源71及び第2ガス供給源72から第1ガス及び第2ガスをそれぞれ供給すると共に、排気ファン89により第1空間11a内の雰囲気を吸引して排気する。以下、ガスの流れについて説明する。
第2ガス供給源72は、第1圧力及び第2圧力を超える圧力の第2ガスを共通配管73に供給する。共通配管73に供給された第2ガスは、フィルター80,流量計81を通過し、第1減圧弁82で第1圧力まで減圧される。第1減圧弁82で減圧された第2ガスは、接続部76aで第1配管74と第2配管75とに分岐して流れる。第1配管74を流れる第2ガスは、接続部76bで第1ガス供給源71が供給する第1ガスと混合される。なお、第1ガス供給源71は、例えば第1圧力と同じか少し高い圧力で第1ガスを接続部76bに供給する。第1ガスと第2ガスとが混合されたガスは、接続部76bの下流の第1流量調整弁84で流量が第1流量となるように調整され、この第1流量で第1空間供給口18から第1空間11a内に流入する。
一方、接続部76aで第2配管75に分岐した第2ガスは、第2減圧弁83で第2圧力まで減圧され、第2流量調整弁85で流量が第2流量となるように調整されて、この第2流量で第2空間供給口33から第2空間30a内に流入する。ここで、第2圧力は、熱処理時の第1空間11aの雰囲気の圧力より高い値としており、第2空間30a内に供給される第2ガスの圧力が第1空間11a(及びそれに連通する第3空間26a)の雰囲気の圧力より高い値となるように調整されている。また、壁体30は、第2空間30aが第1軸受40の隙間44a,45aを介して第3空間26aと連通しているが、それ以外は気密に保たれている。これらにより、第2空間30aに供給された第2ガスは、第1軸受40の隙間44a,45aから第1空間11a側に向かおうとする。そのため、第2空間30a内の第2ガスは隙間44a,45aから第3空間26a内を経由して第1空間11a内に流入する。
このように、第1空間供給口18を経由して第1ガス及び第2ガスが第1空間11aに供給されると共に、第2空間供給口33を経由して第2ガスが第1空間11aに供給されて、これらのガスが混合したものが第1空間11a内の雰囲気ガスとなる。本実施形態では、熱処理時における第1空間11a内の雰囲気が所望の組成(例えば水素濃度が数%の窒素雰囲気)となるように、第1ガス供給源71からの第1ガスの供給量及び第2ガス供給源72からの第2ガスの供給量を予め実験により定めておくものとした。また、排気ファン89により、第1空間11aの雰囲気は排気される。そのため、第1ガス供給源71及び第2ガス供給源72からのガスの供給と、排気ファン89からのガスの排気とのバランスにより、第1空間11a内の圧力を調整することができる。本実施形態では、熱処理時における第1空間11a内の雰囲気が所望の圧力(例えば、数百PaG程度の加圧雰囲気)に保たれるように、第1圧力,第2圧力,第1流量,第2流量,排気弁87の開度,排気ファン89の排気量などを予め実験により定めておくものとした。なお、例えば第1空間11a,第2空間30aに圧力計を配置し、コンピューターに圧力計が検出した値を入力して、圧力が所望の圧力に近づくようにコンピューターが第1圧力,第2圧力,第1流量,第2流量,排気弁87の開度,排気ファン89の排気量を制御するものとしてもよい。
なお、熱処理の開始時において第1空間11aの雰囲気が大気雰囲気となっているなどの場合には、第1ガス供給源71及び第2ガス供給源72からのガスの供給と排気ファン89による排気とを最初に開始し、第1空間11aの雰囲気が熱処理時の所望の雰囲気になった後で被処理物96の搬送を開始してもよい。
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態のローラーハースキルン10が本発明の熱処理装置に相当し、炉体11が炉体に相当し、第1壁部31が第1壁部に相当し、第2壁部32が第2壁部に相当し、壁体30が壁体に相当し、回転体60が回転体に相当し、モーター90が駆動手段に相当し、第1軸受40が第1軸受に相当し、第2軸受50が第2軸受に相当し、第2空間供給口33が第2空間供給口に相当する。また、球体43,53が転動体に相当し、駆動側カバー26が第3空間形成部材に相当し、駆動側支持ローラー28が支持手段に相当し、第2ガス供給源72がガス供給手段に相当し、排気ファン89が排気手段に相当する。なお、本実施形態では、ローラーハースキルン10の動作を説明することにより、本発明の熱処理方法の一例も明らかにしている。
以上説明した本実施形態のローラーハースキルン10は、処理空間としての第1空間11aを形成する炉体11と、第1空間11aに連通する第2空間30aを内部に形成し、第1壁部31と、第2壁部32と、第2空間30a内に外部からガスを供給可能な第2空間供給口33と、を有する壁体30と、を備えている。また、第1空間11a内で被処理物96を搬送可能な回転体60が、第1空間11a側から外部空間に向かって第1壁部31,第2空間30a,第2壁部32をこの順に貫通して一端が第2壁部32から突出している。そして、この回転体60の一端側と接続されたモーター90が回転体60を回転駆動させることで、第1空間11a内で回転体60により被処理物96を搬送しながら第1空間11a内で被処理物96の熱処理を行う。このとき、回転体60が第1壁部31を貫通する部分には、回転体60を回転可能に支持し且つ回転体60の貫通方向にガスが流通可能な隙間44a,45aを有する転がり軸受である第1軸受40が設けられている。また、回転体60が第2壁部32を貫通する部分には、回転体60を回転可能に支持し且つ第1軸受40と比べてシール性の高い転がり軸受である第2軸受50が設けられている。そして、熱処理中において、第1空間11aの雰囲気と比べて高圧のガスを第2空間供給口33を介して第2空間30a内に供給する。これにより、第2空間30aに供給されたガスは第2軸受50よりもシール性の低い第1軸受40の隙間44a,45aから第1空間11a側に向かおうとする。そのため、第1空間11aから貫通孔16,第3空間26a,第1軸受40の隙間44a,45aを通って雰囲気ガスが流出するのを、第2空間30aから第1空間11aへ向かおうとするガスが押さえ込むことになる。したがって、炉体11の内部から外部空間への雰囲気の流出をより抑制することができる。なお、回転体60は炉体11,駆動側カバー26,壁体30を貫通して外部空間に突出しており、回転体60が回転する以上、例えばブッシュ(ブッシング)などを用いたとしても回転体60の周囲の間の隙間を完全に封止することは難しい。本実施形態のローラーハースキルン10では、壁体30が第1空間11aからの雰囲気の流出口となる駆動側カバー26の開口27を塞ぐと共に回転体60の周囲にあえて隙間44a,45aを形成している。これにより、回転体60の貫通部分を経由して第1空間11a内にガスを積極的に流入させるようにして、隙間を封止するのではなくガスの流れによって第1空間11aの雰囲気の流出を抑制している。なお、ローラーハースキルン10では、熱処理時の第1空間11aの雰囲気に水素が含まれるため、この雰囲気の外部空間への流出を抑制する意義が高い。
また、第2軸受50は、内輪51と、外輪52と、内輪51及び外輪52の間に収納された複数の球体53と、内輪51の軸方向に複数の球体53からずれた位置で内輪51と外輪52との間に配置された遮蔽部材54,55と、を有している。そして、第2軸受50の遮蔽部材54,55は、内輪51と外輪52との間を封止している。これにより、第2軸受50における回転体60の貫通方向にガスが流通可能な隙間を、遮蔽部材54,55を用いて封止することができる。そのため、第2空間30aの雰囲気(例えば第2空間供給口33から供給された第2ガス)が第2軸受50の隙間を通って外部空間に流出することをより抑制することができる。
さらに、第1軸受40は、内輪41と、外輪42と、内輪41及び外輪42の間に収納された複数の球体43と、内輪41の軸方向に該複数の球体43からずれた位置で内輪41と外輪42との間に配置された遮蔽部材44,45と、を有している。そして、第1軸受40の遮蔽部材44,45は、内輪41と外輪42との間に隙間44a,45aを形成している。これにより、第1軸受40における回転体60の貫通方向にガスが流通可能な隙間44a,45aを、遮蔽部材44,45を用いて容易に小さくすることができる。これにより、ガスが第2空間30aから第1空間11aへ向かおうとするようにしつつ、第1軸受40の隙間を介して第2空間30aから第1空間11aへ塵などの微粒子が侵入することを抑制しやすい。
さらにまた、ローラーハースキルン10は、被処理物96の加熱処理を含む熱処理を行う。ここで、第1空間11aにおいて加熱処理を含む処理が行われる場合、炉体11内で回転体60が加熱されることなどにより第1軸受40が加熱されることがある。このような場合に、第2空間供給口33から第2空間30aにガスを供給し、第2空間30aから第1軸受40の隙間44a,45aを介して第1空間11aに向かう流れを生じさせることで、このガスの流れにより第1軸受40を冷却して加熱を抑制することができる。
そしてまた、炉体11は、第1空間11a内の雰囲気を排気可能な排気口19を有している。そして、熱処理時において、第1空間11aの雰囲気が所定の圧力に保たれるように、排気口19から第1空間11aの雰囲気を排気すると共に第2空間30aにガスを供給する。そのため、第2空間供給口33,第2空間30a及び第1軸受40の隙間44a,45aを介して第1空間11a内にガスを供給する場合に、排気口19から雰囲気を排気することで第1空間11a内の雰囲気の圧力を所定の圧力に調整することができる。また、炉体11は、第1空間11a内にガスを供給可能な第1空間供給口18を有している。そして、熱処理時において、第1空間11aの雰囲気が所定の圧力に保たれるように、排気口19から第1空間11aの雰囲気を排気すると共に第1空間11a及び第2空間30aにガスを供給する。これにより、第2空間30a及び第1軸受40の隙間44a,45aを介さない経路で第1空間11aにガスを供給するため、第1空間11a内の雰囲気を調整しやすい。
そしてまた、ローラーハースキルン10は、第1空間供給口18に接続された第1配管74と、第2空間供給口33に接続された第2配管75と、第1配管74及び第2配管75に接続された共通配管73と、を備えている。そして、熱処理時において、共通配管73にガスを供給することで、共通配管73及び第2配管75を介して第1空間11aの雰囲気と比べて高圧のガスを第2空間内30aに供給し、共通配管73及び第1配管74を介してガスを第1空間11a内に供給する。これにより、第1空間供給口18を介した第1空間11aへのガスの供給と、第2空間供給口33を介した第2空間30aへのガスの供給との両方を、共通配管74にガスを供給することでまとめて行うことができる。また、熱処理時において、第1配管74に、共通配管以外の経路から第1ガス供給源71により第1ガスを供給する。そのため、共通配管73にガスを供給することで第1空間11aと第2空間30aとの両方にガスを供給にしつつ、第1配管74に他の経路からのガスも流通させる(共通配管73からのガスと混合させる)ことで、第1空間供給口18を介して供給するガスと第2空間供給口33を介して供給するガスとの組成を異ならせることができる。
そしてまた、ローラーハースキルン10は、第1配管74に接続され第1配管74の流量を調整する第1流量調整弁84と、第2配管75に接続され第2配管75の流量を調整する第2流量調整弁85と、を備えている。そして、熱処理時において、共通配管73にガスを供給することで、共通配管73及び第1配管74を介して第1流量調整弁84で流量が調整されたガスを第1空間11aに供給すると共に、共通配管73及び第2配管75を介して第2流量調整弁85で流量が調整されたガスを第2空間30aに供給する。このように、第1空間11a及び第2空間30aに流入するガスの流量を調整することができる。
そしてまた、ローラーハースキルン10は、共通配管73に設けられ、且つ第1流量調整弁84よりも上流側に設けられた第1減圧弁82と、第2配管75のうち第2流量調整弁85よりも上流側に設けられた第2減圧弁83と、を備え、第1減圧弁82は、下流側のガスの圧力を第1空間11aの雰囲気よりも高圧の第1圧力まで減圧し、第2減圧弁83は、下流側のガスの圧力を第1空間11aの雰囲気よりも高圧の第2圧力まで減圧する。そして、熱処理時において、第1圧力及び第2圧力を超える圧力のガスを共通配管73に供給する。これにより、減圧後の圧力(第1圧力及び第2圧力)よりも高圧のガスを共通配管から供給するため、第1減圧弁より上流側や第2減圧弁より上流側の配管を細くしても必要なガスの流量を確保することができる。配管を細くできることで、例えばローラーハースキルン10の設置面積を減らすなど構成をコンパクトにしたり、製造コストを下げたりすることができる。
そしてまた、ローラーハースキルン10は、第1空間11aと第2空間30aとの間に第1空間11a及び第2空間30aと連通する第3空間26aを形成し、回転体60に貫通されている駆動側カバー26、を備えている。これにより、第1空間11aと第2空間30aとの間に第3空間26aが存在することで、例えば炉体11からの熱伝導により壁体30の第1軸受40,第2軸受50の温度が変化するなどの、炉体11から壁体30への影響をより抑制することができる。
そしてまた、回転体60は、第1空間11a内で被処理物96を搬送可能な搬送ローラー61と、モーター90に回転駆動され壁体30を貫通する駆動軸65と、駆動軸65のうち搬送ローラー61側の端部が挿入されてその端部と接続された中空パイプ状のホルダー64と、搬送ローラー61のうち駆動軸65側に固定されたローラーキャップ62と、ホルダー64とローラーキャップ62とに挿入されてホルダー64及びローラーキャップ62に接続された連結シャフト63と、を備えている。そして、ホルダー64,ローラーキャップ62,及び連結シャフト63は、第3空間26a内に配置されており、ローラーキャップ62の内周面と連結シャフト63との間にはクリアランスがあり、連結シャフト63はローラーキャップ62に対してクリアランスにより軸ずれ可能に接続されている。これにより、連結シャフト63がローラーキャップ62に対して軸ずれ可能に接続されていることで、搬送ローラー61と駆動軸65とに偏心(軸ずれ)が生じても、駆動軸65を介して搬送ローラー61にモーター90からの回転駆動力を伝達することができる。なお、ローラーキャップ62と連結シャフト63とが軸ずれ可能でない場合に、搬送ローラー61と駆動軸65とに軸ずれが生じると、回転体60のいずれかの部分に無理な力がかかり、回転体60が破損する場合がある。連結シャフト63がローラーキャップ62に対して軸ずれ可能に接続されていることで、そのような回転体60の破損をより抑制できる。なお、ローラーハースキルン10は被処理物96の熱処理を行うものであり、第1空間11a内と外部空間との温度差によって搬送ローラー61と駆動軸65との軸ずれが生じやすいため、本発明を適用する意義が高い。
そしてまた、ローラーハースキルン10は、第1空間11aの雰囲気と比べて高圧のガスを第2空間30a内に供給するガス供給装置70を備えているため、第2空間30aから第1軸受40の隙間44a,45aを通って第1空間11aへ向かうガスの流れを生じさせることができる。
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
例えば、上述した実施形態では、第2軸受50の遮蔽部材54,55は内輪51と外輪52との間を封止しているものとしたが、これに限らず、第1軸受40と比べて第2軸受50のシール性が高ければよい。例えば、第2軸受50の遮蔽部材54,55が第1軸受40の遮蔽部材44,45と同様に内輪51との間に隙間を形成しているものとしてもよい。この場合、第2軸受50の隙間が第1軸受40の隙間44a,45aよりも小さいなど、第1軸受40と比べて第2軸受50のシール性が高い(ガスが第2軸受50よりも第1軸受40を通過しやすい)ものとすればよい。あるいは、第1軸受40が遮蔽部材44,45の少なくとも一方を備えないものとしてもよいし、第2軸受50が遮蔽部材54,55の少なくとも一方を備えないものとしてもよい。第1軸受40,第2軸受50が共に遮蔽部材を備えなくてもよい。この場合、第1軸受40における内輪41の外径と外輪42の内径との差が第2軸受50における内輪51の外径と外輪52の内径との差より大きくなるようにして、第2軸受50のシール性を第1軸受40よりも高くしてもよい。あるいは、球体43や球体53の数や球径を調整して、第2軸受50のシール性を第1軸受40よりも高くしてもよい。また、第1軸受40の遮蔽部材44,45が遮蔽部材54,55と同様に内輪51の外周面との隙間を形成しないものとし、代わりに遮蔽部材44,45に別の孔を形成することでガスの流路となる隙間を形成してもよい。なお、第2軸受50の遮蔽部材54,55が内輪51と外輪52との間に隙間を形成している場合など、第2軸受50の内輪51と外輪52との間に隙間がある場合には、第2空間供給口33から第2空間30aに供給されたガスが外部空間に流出する場合がある。しかし、本実施形態では第2空間30aに供給される第2ガスは窒素としたため、外部空間に流出しても問題はない。なお、第2空間供給口33から第2空間30aに供給するガスは、窒素に限らず、不活性ガスなどの流出しても問題のないガスとすることが好ましい。
上述した実施形態では、第1空間11a内に配置された回転体60の本数と同じ数だけ、駆動側カバー26や壁体30を有するものとしたが、これに限らず、複数の回転体60で駆動側カバー26や壁体30を共用としてもよい。ただし、1つの壁体30を1つの回転体60が貫通する構成とすることで、第2空間30aをなるべく容積の小さい空間として第2空間供給口33に供給するガスの流量を少なくすることができる。
上述した実施形態では、炉体11,駆動側カバー26,壁体30を回転体60が一直線に貫通しているものとしたが、これに限られない。例えば、駆動軸65が、図3の左右方向の軸を有し第1壁部31を貫通する第1部材と、図3の上下方向の軸を有し第1部材と傘歯車を介して第2空間30a内で接続されていると共に壁体30を下方向に貫通する第2部材と、を有する場合など、回転体60の軸が一直線でなくともよい。この場合、第2部材が壁体30を下方向に貫通する部分に第2軸受50を配置すればよい。このような構成でも、上述した実施形態と同様に、回転体60の軸方向に沿って第1空間11aの雰囲気が外部空間へ流出するのを抑制することができる。
上述した実施形態では、第1空間11aと第2空間30aとの間に第3空間26aが形成されているものとしたが、第1空間11aと第2空間30aとが連通していればよい。例えば、ローラーハースキルン10が駆動側カバー26を備えず、第3空間26aが形成されていなくともよい。この場合、壁体30の第1壁部31と炉体11とが接触しているなどにより、第1空間11aと第2空間30aとが貫通孔16及び隙間44a,45aを介して連通しているものとしてもよい。この場合、ローラーキャップ62,連結シャフト63,ホルダー64などは第2空間30a内に配置してもよい。
上述した実施形態では、駆動軸65と搬送ローラー61とはローラーキャップ62,連結シャフト63,ホルダー64を介して接続されているものとしたが、これらの構成の1以上を省略してもよい。また、ローラーキャップ62,連結シャフト63,ホルダー64,駆動軸65間の接続は、差込ピン67a〜67cを用いるものに限られない。
上述した実施形態では、第1軸受40、第2軸受50はボールベアリングであるものとしたが、内輪と、外輪と、内輪及び外輪の間に収納された複数の転動体と、を備えた転がり軸受けであればよい。例えば第1軸受40及び第2軸受50の少なくとも一方が、転動体として球体43,53に代えて円柱状の部材を有する構成としてもよい。
上述した実施形態では、被処理物96に対してヒーター20による加熱処理を行うものとしたが、熱処理を行うものであればよい。例えば冷却処理を行うものとしてもよいし、加熱処理と冷却処理とを所定の順序で行うものとしてもよい。
上述した実施形態では、第1減圧弁82を共通配管73に設けるものとしたが、第1配管74に設けてもよい。例えば第1減圧弁82を接続部76bと第1流量調整弁84との間に設けるなど、第1減圧弁82を第1流量調整弁84より上流の第1配管74に設けてもよい。また、第1減圧弁82,第2減圧弁83のいずれか1以上を備えないものとしてもよい。
上述した実施形態では、ガス供給装置70は第1流量調整弁84及び第2流量調整弁85を備えるものとしたが、第1流量調整弁84及び第2流量調整弁85のいずれか1以上を備えないものとしてもよい。
上述した実施形態では、第1配管74と第2配管75とが共通配管73に接続されているものとしたが、これに限られない。例えば、共通配管73を備えないものとし、第1ガス供給源71が第1配管74及び第1空間供給口18を介して第1空間11aに第1ガスを供給し、第2ガス供給源72が第2配管75及び第2空間供給口33を介して第2空間30aに第2ガスを供給してもよい。この場合、例えば第1ガスを窒素と水素との混合気体とし、第2ガスを窒素としてもよい。あるいは、第1空間供給口18を備えないものとして、ガス供給装置70は第2配管75から第2空間供給口33を介して第2空間30aにガスを供給し、第2空間30aを介して第1空間11aにガスを供給するものとしてもよい。
上述した実施形態では、排気装置86の排気ファン89が排気口19を介して第1空間11aの雰囲気を排気するものとしたが、これに限られない。例えば、排気ファン89を備えず第1空間11aの雰囲気の吸引を行わないものとしてもよい。あるいは、排気口19を備えないものとしてもよい。
上述した実施形態では、熱処理時の第1空間11aの雰囲気は窒素と水素とを含む還元雰囲気としたが、これに限らずどのような雰囲気としてもよい。熱処理を行う被処理物に応じて、熱処理時の雰囲気の組成,温度,圧力等を適宜決定すればよい。
上述した実施形態では、壁体30は、第1壁部31及び第2壁部32を含む複数の板状部材を組み合わせた構造体としたが、これに限られない。第1壁部31及び第2壁部32は、壁体30の一部であればよく、独立した部材でなくともよい。例えば、壁体30が一体形成された構造体であってもよい。
上述した実施形態では、回転体60が第2壁部32を貫通する部分には、第1軸受40と比べてシール性の高い第2軸受50が設けられているものとしたが、これに限られない。回転体60が第2壁部32を貫通する部分には、第2軸受50に限らず、第1軸受40と比べてシール性の高いシール部材が設けられていればよい。図4は、この場合の変形例のローラーハースキルンにおける壁体30周辺の拡大断面図である。なお、図4では、上述したローラーハースキルン10と同じ構成要素については同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。図4では、壁体30の第2壁部132は駆動軸65によって貫通されており、この貫通部分には一端側軸受150と軸シール156とが取り付けられている。一端側軸受150は、回転体60(駆動軸65)を回転可能に支持するボールベアリングであり、第1軸受40及び軸シール156よりも駆動軸65の一端側(図4の左側)に配置されている。この一端側軸受150は、遮蔽部材54,55を備えない点以外は、上述した第2軸受50と同じ構成をしている。軸シール156は、リング状の部材であり、中心を駆動軸65が貫通している。軸シール156は、オイルシールであり、第1軸受40と比べてシール性の高いシール部材として構成されている。この軸シール156は、本体部157と、金属環158と、バネ159と、を備えている。本体部157は、ゴムなどの弾性体からなるリング状の部材であり、外周面及び第2空間30a側(図4の右側)の面が第2壁部132に接触して固定されている。本体部157には、自身の内周面側にシールリップ部157a,ダストリップ部157bが形成されている。シールリップ部157aは、駆動軸65の軸方向の断面で見たときに、駆動軸65に向けて先端が細くなる形状をしており、この先端で駆動軸65と接触している。ダストリップ部157bは、駆動軸65に向けて突出しており、先端が駆動軸65の外周面と接触している。ダストリップ部157bは、外部空間からのダストなどの侵入を防ぐ役割を果たす。金属環158は、駆動軸65の周囲を囲むように配置されたリング状の部材であり、本体部157を第2壁部132に押しつけている。このため、本体部157と第2壁部132との間には隙間がなく、軸シール156と第2壁部132との間は封止されている。バネ159は、シールリップ部157aの周囲を囲むように設けられたリング状の弾性体である。バネ159の弾性力により、シールリップ部157aの先端は駆動軸65の外周面に押しつけられている。このため、駆動軸65と本体部157との間には隙間がなく、駆動軸65と軸シール156との間は封止されている。こうして構成された変形例のローラーハースキルンでは、回転体60が第2壁部132を貫通する部分に、第1軸受40と比べてシール性が高い軸シール156が設けられている。そのため、上述した実施形態と同様に、第2空間30aに供給されたガスが第1空間11a側に向かおうとすることになり、第1空間11aから第1軸受40の隙間44a,45aを通って雰囲気ガスが流出するのを押さえ込むことができる。なお、図4に示した変形例のローラーハースキルンでは、駆動軸65を支持する役割を一端側軸受150が担っており、第1軸受40と比べて高いシール性を発揮する役割を軸シール156が担っている。これに対し、上述した実施形態の第2軸受50は、一端側軸受150の役割と軸シール156の役割とを兼ねている。なお、図4に示した変形例のローラーハースキルンにおいて、軸シール156と第2壁部132との間や、軸シール156と駆動軸65との間には隙間がなく封止されているものとしたが、第1軸受40と比べて軸シール156のシール性が高ければ、隙間が形成されていてもよい。また、軸シール156はオイルシールとしたが、第1軸受40と比べてシール性が高ければ、どのような軸シールを用いてもよい。また、図4に示すように、一端側軸受150は軸シール156よりも駆動軸65の一端側(図4の左側)に配置されているものとしたが、一端側軸受150を軸シール156よりも駆動軸65の他端側(図4の右側)に配置してもよい。例えば図4における一端側軸受150と軸シール156との配置を逆にしてもよい。また、図4では、一端側軸受150は遮蔽部材54,55を備えておらず、一端側軸受150は第1軸受40よりもシール性が低いものとしたが、第1軸受40よりもシール性が高いものとしてもよい。また、図4の一端側軸受150はボールベアリングとしたが、これに限らず、内輪と、外輪と、内輪及び外輪の間に収納された複数の転動体と、を備えた転がり軸受であればよい。
図4に示した変形例のローラーハースキルンでは、回転体60が第2壁部132を貫通する部分に一端側軸受150が設けられているものとしたが、これに限られない。例えば、一端側軸受150が外部空間で回転体60を支持していてもよい。図5は、この場合の変形例のローラーハースキルンにおける壁体30周辺の拡大断面図である。なお、図5では、上述したローラーハースキルン10や図4のローラーハースキルンと同じ構成要素については同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。図5では、壁体30の第2壁部232は駆動軸65によって貫通されている。この貫通部分には、軸シール156が取り付けられている。また、回転体60(駆動軸65)の一端側(図5の左側)は、外部空間で支持部294を貫通している。駆動軸65が支持部294を貫通する部分には、一端側軸受250が設けられている。一端側軸受250は、外部空間で回転体60(駆動軸65)を回転可能に支持するボールベアリングであり、図4の一端側軸受150と同じ構成をしている。また、壁体30と支持部294との間には、カムクラッチ293a,293bが設けられている。カムクラッチ293aは、カムクラッチ293bと壁体30との間に配置されている。カムクラッチ293a,293bは、リング状の部材であり、中心を駆動軸65が貫通している。カムクラッチ293a,293bは、図示は省略するが、内輪と外輪とを有しており、外輪からの駆動力を内輪に伝達する一方、内輪からの駆動力は外輪には伝達されない(外輪に対して内輪が空転する)ように構成された機械式クラッチである。カムクラッチ293a,293bの内輪は、それぞれ駆動軸65の外周面に接続されている。カムクラッチ293a,293bの外輪は、それぞれスプロケット266a,266bに同軸に接続されている。スプロケット266a,266bには、それぞれローラーチェーン292a,292bが掛けられている。ローラーチェーン292aは、スプロケット266aと、外部空間に配置された図示しない低速モーターの駆動軸とを掛け渡すように配置されている。ローラーチェーン292bは、スプロケット266bと、外部空間に配置された図示しない高速モーターの駆動軸とを掛け渡すように配置されている。低速モーターから出力された回転駆動力は、カムクラッチ293aを介して駆動軸65に伝達されて回転体60全体を低速で回転させる。また、低速モーターにより駆動軸65が回転しても、カムクラッチ293bの内輪は空転するため高速モーターには回転駆動力は伝達されない。同様に、高速モーターから出力された回転駆動力は、カムクラッチ293bを介して駆動軸65に伝達されて回転体60全体を高速で回転させる。また、高速モーターにより駆動軸65が回転しても、カムクラッチ293aの内輪は空転するため低速モーターには回転駆動力は伝達されない。このように、図5の回転体60は、低速モーター及び高速モーターにより異なる速度で回転可能である。そのため、回転体60による被処理物96の搬送速度の切り換えが可能になっている。こうして構成された変形例のローラーハースキルンでは、回転体60が第2壁部232を貫通する部分に、第1軸受40と比べてシール性が高い軸シール156が設けられている。そのため、上述した実施形態や図4のローラーハースキルンと同様に、第2空間30aに供給されたガスが第1空間11a側に向かおうとすることになり、第1空間11aから第1軸受40の隙間44a,45aを通って雰囲気ガスが流出するのを押さえ込むことができる。なお、図5の一端側軸受250はボールベアリングとしたが、これに限らずどのような軸受を用いてもよい。例えばボールベアリング以外の転がり軸受としてもよい。例えば、上述した実施形態の従動側支持ローラー24や駆動側支持ローラー28のように駆動軸65を下側から回転可能に支持する転がり軸受としてもよい。あるいは、一端側軸受250は滑り軸受としてもよい。
なお、図4において一端側軸受150を省略してもよいし、図5において一端側軸受250を省略してもよい。この場合でも、第1軸受40と1以上の軸受(例えば従動側支持ローラー24,駆動側支持ローラー28など)とがあれば、駆動軸65を回転可能に支持することはできる。
[第2実施形態]
図6は第2実施形態のローラーハースキルン310の縦断面図である。ローラーハースキルン310は、第1実施形態のローラーハースキルン10に、さらに搬送路329,429などを備えたものである。そのため、ローラーハースキルン10と同じ構成要素については同じ符号を付して説明や図示を省略し、ローラーハースキルン310のうち主に搬送路329,429などの異なる構成要素について説明する。
まず、搬送路329について説明する。搬送路329は、外部から炉体11の開口14までの被処理物96の搬入路となるものである。搬送路329内には複数(本実施形態では10個)の搬送ローラー335が搬送方向(図1の前後方向)に沿って搬送口52から開口14に亘って配置されている。搬送ローラー335は、図示しないモーターなどにより回転駆動され、トレイ95及び被処理物96を搬送する。搬送路329は、外部から炉体11に向かって(前方から後方に向かって)、第3搬送路350,第1搬送路330,第2搬送路340の順に並んでいる。以下、この順に説明する。
第3搬送路350は、トレイ95及び被処理物96を外部から第1搬送路330まで搬送するための搬入路であり、管路として構成されている。この第3搬送路350は、外部からの搬入口となる搬送口352を有している。第3搬送路350の内部には、上述した複数の搬送ローラー335のうち4個が配置されている。
第1搬送路330は、トレイ95及び被処理物96を第3搬送路350から第2搬送路340まで搬送するための搬入路であり、管路として構成されている。この第1搬送路330の内部には、上述した複数の搬送ローラー335のうち3個が配置されている。
この第1搬送路330の鉛直上側には、上方空間形成部360が設けられている。この上方空間形成部360は、下方向が開口した箱状の外壁362を有しており、この外壁362の内部の空間として、鉛直下側に開口し第1搬送路330内に連通する上方空間363が形成されている。外壁362は下方向の開口以外は気密な構造をしており、第1搬送路330を介さない外部との気体の流出入がほとんど生じないようになっている。なお、外壁362は、前方(図1の左方)の壁部及び後方(図1の右方)の壁部が、炉体11に対して上部が遠ざかる方向に傾斜している。これにより、上方空間363は炉体11に対して上部が遠ざかる方向に傾斜した形状の空間となっている。また、上方空間形成部360は、外壁362の内部に、炉体11に対して上部が遠ざかる方向に傾斜した区画部材364a,364bを備えている。この区画部材364a,364bは、前方から後方に向けてこの順に配置された平板状の部材であり、図示は省略するが左右方向の両端が外壁362の左右の壁部に例えば溶接などにより取り付けられている。区画部材364a,364b,外壁362の前方の壁部及び後方の壁部は、いずれも前方から上方に向けて同じ角度θ1だけ傾斜している。傾斜の角度θ1は0°超過〜90°未満であればよい。特に限定するものではないが、例えば角度θ1を30〜60°としてもよい。本実施形態では、角度θ1は45°とした。この区画部材364a,364bにより、上方空間363の一部が区画空間365a〜365cに区画されている。区画空間365aは、外壁362の前方の壁部と区画部材364aとで区画された空間である。区画空間365bは、区画部材364aと区画部材364bとで区画された空間である。区画空間365cは、区画部材364bと外壁362の後方の壁部とで区画された空間である。これらの区画空間365a〜365cは、いずれも下方が第1搬送路330内に開口している。また、区画部材364a,364bは、いずれも外壁362の天井には接していない。そのため、区画空間365a〜365cは、上方空間363のうち上方(外壁362の天井付近)で互いに連通している。なお、外壁362の上部には、吸引装置367と接続され上方空間363を吸引するための吸引口366が形成されている。吸引装置367は、吸引口366を介して上方空間363内のガスを吸引して排気する。
また、第1搬送路330の鉛直下側には、下方空間形成部370が設けられている。この下方空間形成部370は、上方向が開口した箱状の外壁372を有しており、この外壁372の内部の空間として、鉛直上側に開口し第1搬送路330内に連通する下方空間373が形成されている。外壁372は上方向の開口以外は気密な構造をしており、第1搬送路330を介さない外部との気体の流出入がほとんど生じないようになっている。なお、外壁372は、前方(図1の左方)の壁部及び後方(図1の右方)の壁部が、炉体11に対して下部が近づく(上部が遠ざかる)方向に傾斜している。これにより、下方空間373は炉体11に対して下部が近づく方向に傾斜した形状の空間となっている。また、下方空間形成部370は、外壁372の内部に、炉体11に対して下部が近づく方向に傾斜した区画部材374a,374bを備えている。この区画部材374a,374bは、後方から前方に向けてこの順に配置された平板状の部材であり、図示は省略するが左右方向の両端が外壁372の左右の壁部に例えば溶接などにより取り付けられている。区画部材374a,374b,外壁372の前方の壁部及び後方の壁部は、いずれも後方から下方に同じ角度θ2だけ傾斜している。傾斜の角度θ2は0°超過〜90°未満であればよい。特に限定するものではないが、例えば角度θ2を30〜60°としてもよい。角度θ2は角度θ1と同じ値としてもよく、本実施形態では、角度θ2は45°とした。この区画部材374a,374bにより、下方空間373の一部が区画空間375a〜375cに区画されている。区画空間375aは、外壁372の後方の壁部と区画部材374aとで区画された空間である。区画空間375bは、区画部材374aと区画部材374bとで区画された空間である。区画空間375cは、区画部材374bと外壁372の前方の壁部とで区画された空間である。これらの区画空間375a〜375cは、いずれも上方が第1搬送路330内に開口している。また、区画部材374a,374bは、いずれも外壁372の底部には接していない。そのため、区画空間375a〜375cは、下方空間373のうち下方(外壁372の底部付近)で互いに連通している。なお、上述した第1搬送路330内の3個の搬送ローラー335は、区画空間375a〜375cの上方の開口部分に1つずつ配置されている。また、外壁372の底部には、吸引装置377と接続され下方空間373を吸引するための吸引口376が形成されている。吸引装置377は、吸引口376を介して下方空間373内のガスを吸引して排気する。
第2搬送路340は、トレイ95及び被処理物96を第1搬送路330から炉体11の開口14まで搬送するための搬入路であり、管路として構成されている。この第2搬送路340の内部には、上述した複数の搬送ローラー335のうち3個が配置されている。
なお、第1搬送路330と第3搬送路350とは、連続した管路として構成されている。本実施形態では、上方空間形成部360の開口の前端部と下方空間形成部370の開口の前端部とを結んだ線分D1を、第1搬送路330と第3搬送路350との境界とした。同様に、第1搬送路330と第2搬送路340とは、連続した管路として構成されている。本実施形態では、上方空間形成部360の開口の後端部と下方空間形成部370の開口の後端部とを結んだ線分D2を、第1搬送路330と第2搬送路340との境界とした。なお、線分D1,D2はそれぞれ角度θ1,角度θ2だけ傾斜していることが好ましい。換言すると、図6のように縦断面視した状態で、外壁362の前方の壁部と外壁372の前方の壁部とが一直線上に位置していることが好ましく、外壁362の後方の壁部と外壁372の後方の壁部とが一直線上に位置していることが好ましい。同様に、区画部材364aと区画部材374bとが一直線上に位置していることが好ましく、区画部材364bと区画部材374aとが一直線上に位置していることが好ましい。また、上述した複数の搬送ローラー335の上端は、いずれも搬送口352の下端と略同じ高さに位置している。なお、図6では上方空間形成部360及び下方空間形成部370の図示の都合上、複数の搬送ローラー335の前後方向の間隔が第1搬送路330内とそれ以外とで異なっているが、実際には複数の搬送ローラー335は搬送方向に沿って等間隔に配置されている。
次に、搬送路429について説明する。搬送路429は、炉体11の開口15から外部への被処理物96の搬出路となるものである。搬送路429の第1搬送路430の鉛直上側には上方空間形成部460が設けられている。搬送路429の第1搬送路430の鉛直下側には、下方空間形成部470が設けられている。上方空間形成部460の外壁462の上部には、吸引装置467が接続されている。下方空間形成部470の外壁472の底部には、吸引装置477が接続されている。搬送路429の第3搬送路450は、外部への搬出口となる搬送口452を有している。搬送路429内には複数(本実施形態では10個)の搬送ローラー435が搬送方向(図1の前後方向)に沿って開口15から搬送口452に亘って配置されている。なお、搬送路429,上方空間形成部460,下方空間形成部470,吸引装置467,477は、それぞれ搬送路329,上方空間形成部360,下方空間形成部370,吸引装置367,377と前後方向に対称な構造をしている。そのため、搬送路429,上方空間形成部460,下方空間形成部470,吸引装置467,477の構成要素については搬送路329,上方空間形成部360,下方空間形成部370,吸引装置367,377に値100を加えた符号を付して、詳細な説明を省略する。なお、線分D3は上方空間形成部460の開口の後端部と下方空間形成部470の開口の後端部とを結んだ線分であり、搬送路329における線分D1に相当する。線分D4は上方空間形成部460の開口の前端部と下方空間形成部470の開口の前端部とを結んだ線分であり、搬送路329の線分D2に相当する。角度θ3は、区画部材464a,464b,外壁462の前方の壁部及び後方の壁部の傾斜の角度であり、上方空間形成部360における角度θ1に相当する。角度θ4は、区画部材474a,474b,外壁472の前方の壁部及び後方の壁部の傾斜の角度であり、下方空間形成部370における角度θ2に相当する。本実施形態では、角度θ1=角度θ3、角度θ2=角度θ4とした。
こうして構成されたローラーハースキルン310では、被処理物96の熱処理を行う際に、ローラーハースキルン10と同様の動作に加えて、搬送ローラー335,435を回転させる。また、吸引装置367,467によりそれぞれ上方空間363,463内の雰囲気を吸引して排気し、吸引装置377,477によりそれぞれ下方空間373,473内の雰囲気を吸引して排気する。そして、複数の被処理物96を載置したトレイ95を搬送路329の搬送口352から順次搬入していく。搬送口352から搬入されたトレイ95は、複数の搬送ローラー335の回転により第3搬送路350,第1搬送路330,第2搬送路340をこの順に通過していき、開口14から炉体11内に搬入される。続いて、トレイ95が第1空間11aを通過して開口15側から搬出されるまでの間に、ヒーター20により被処理物96の熱処理を行う。そして、開口15から搬出されたトレイ95は、複数の搬送ローラー435の回転により第2搬送路440,第1搬送路430,第3搬送路450をこの順に通過していき、搬送口452から外部に搬出される。
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。なお、第1実施形態と同じ構成要素については、対応関係の説明を省略する。本実施形態の搬送路329,429(第1搬送路330,430)が本発明の搬送路に相当し、上方空間形成部360,460が上方空間形成部に相当し、下方空間形成部370,470が下方空間形成部に相当し、ヒーター20が加熱手段に相当し、吸引装置367,377,467,477が吸引手段に相当する。
以上説明した本実施形態のローラーハースキルン310では、熱処理時にヒーター20により第1空間11aの雰囲気ガスが外気より高い温度に加熱されているため、第1空間11aから搬送路329,429に流出する雰囲気ガスは上方空間363,463に向かいやすく、外気は下方空間373,473に向かいやすい。また、この状態で上方空間363,463及び下方空間373,473を吸引装置367,467,377,477が吸引することで、搬送路329,429から上方空間363,463に向かう上方向のガスの流れと搬送路329,429から下方空間373,473に向かう下方向のガスの流れが生じる。これらにより、第1空間11aの雰囲気や外気は搬送路329,429内で上下方向に流れやすくなるため、外部空間及び第1空間11aの一方の雰囲気が搬送路329,429を通過して他方に流れる(前後方向にガスが流れる)のをより抑制できる。すなわち、炉体11の内外での搬送路329,429を介した雰囲気の流出入をより抑制することができる。また、炉体11が搬送路329,429を介して外部空間に常に開口した状態でも、上記のように炉体11の内外での流出入をより抑制できる。
また、上方空間形成部360,460は、炉体11に対して上部が遠ざかる方向に傾斜した上方空間363,463を形成している。外気より高い温度の雰囲気ガスが炉体11から流出したときには、この雰囲気ガスの流れる向きは炉体11に対して遠ざかるほど上昇する向きとなる。そのため、上方空間363,463が炉体11に対して上部が遠ざかる方向に傾斜していることで、炉体11からの雰囲気ガスが上方空間363,463に導かれやすくなり、外部への流出をより抑制できる。また、上方空間形成部360,460は、炉体11に対して上部が遠ざかる方向に傾斜した部材であり上方空間363,463を被処理物96の搬送方向に沿って複数の区画空間365a〜365c,465a〜465cに区画する区画部材364a,364b,464a,464bを有している。そのため、複数の区画部材364a,364b,464a,464bが炉体11に対して上部が遠ざかる方向に傾斜していることで、炉体11からの雰囲気ガスが上方空間363,463に導かれやすくなる。
さらに、下方空間形成部370,470は、炉体11に対して下部が近づく方向に傾斜した下方空間373,473を形成していてもよい。外気が搬送路329,429に流れたとき、炉体11の雰囲気ガスの方が温度が高いため、この外気の流れる向きは炉体11に対して近づくほど下降する向きとなる。そのため、下方空間373,473が炉体11に対して下部が近づく方向に傾斜していることで、搬送路329,429に流れた外気が下方空間373,473に導かれやすくなり、炉体11への流入をより抑制できる。また、下方空間形成部370,470は、炉体11に対して下部が近づく方向に傾斜した部材であり下方空間373,474を被処理物96の搬送方向に沿って複数の区画空間375a〜375c,475a〜475cに区画する区画部材374a,374b,474a,474bを有している。そのため、複数の区画部材374a,374b,474a,474bが炉体11に対して下部が近づく方向に傾斜していることで、搬送路329,429に流れた外気が下方空間373,474に導かれやすくなる。
なお、上述した第2実施形態において、上述した第1実施形態の種々の変形例を採用しても良い。
上述した実施形態において、吸引装置367,377のいずれか一方を省略してもよいし、吸引装置467,477のいずれか一方を省略してもよい。また、上方空間形成部360は2つの区画部材364a,364bを備えるものとしたが、1つ又は3つ以上備えるものとしてもよいし、区画部材を1つも備えなくてもよい。上方空間形成部460,下方空間形成部370,470についても同様である。また、搬送路329,429のいずれか一方を省略してもよい。
上述した実施形態では、搬送路329等と搬送路429等とは前後方向に対称な構成としたが、これに限られない。例えば、角度θ1と角度θ3とが異なっていてもよいし、角度θ2と角度θ4とが異なっていてもよい。また、上述した区画部材の数や吸引装置の有無などについても、前後方向に対称でなくともよい。
[実施例1]
図1〜3に示した第1実施形態のローラーハースキルン10を作製し、実施例1とした。なお、壁体30の第2空間30aは、上下高さが125mm,左右方向長さが53mm,前後方向長さが1100mmとした。第1軸受40としては、隙間44a及び隙間45aを有するシールド型のボールベアリングを用いた。第2軸受50としては、遮蔽部材54,55が内輪51と外輪52との間を封止しているシール型のボールベアリングを用いた。また、炉体11の開口14,15と外部との間には、それぞれ2重シャッター式の置換室を配置した。
[実施例2]
図6に示した第2実施形態のローラーハースキルン310を作製し、実施例2とした。なお、実施例2の構成要素のうちローラーハースキルン10と同じ構成要素については、実施例1と同じものを用いた。
[評価試験1]
実施例1において、被処理物96を載置した複数のトレイ95を順次置換室を介して炉体11に搬入する状態で、第1空間11aの雰囲気を水素濃度1%,1250℃,150PaGの窒素雰囲気に保つようにヒーター20の出力,第1ガス供給源71及び第2ガス供給源72からの第1ガス及び第2ガスの供給量,第1圧力,第1流量,排気弁87の開度,排気ファン89の排気量などを調整した。また、壁体30の第2空間30aに対して、第2圧力を200PaG(第1空間11aの雰囲気の圧力+50Pa),第2流量を1.2L/分とした第2ガス(窒素)を供給した。この状態では、壁体30の第2軸受50から外部に流出する水素は検知されなかった。なお、第2圧力及び第2流量の調整や流出する水素の測定は、1つの壁体30について行った。
実施例2においても、搬送路329,429を介してトレイ95を炉体11に搬出入する点、吸引装置367,467,377,477による吸引を行う点、第1空間11aの雰囲気を水素濃度1%,1250℃,2PaGの窒素雰囲気に保つようにした点、壁体30の第2空間30aに対して第2圧力を5PaG(第1空間11aの雰囲気の圧力+3Pa),第2流量を0.1L/分以下(測定目盛りの最小値以下)とした第2ガス(窒素)を供給した点以外は、実施例1と同様に測定を行った。この状態では、壁体30の第2軸受50から外部に流出する水素は検知されなかった。
以上のことから、実施例1,2のいずれにおいても、第1空間11aの雰囲気と比べて高圧のガスを第2空間供給口33を介して第2空間30a内に供給することで、炉体11の内部から外部空間への壁体30を介した雰囲気の流出を抑制できることが確認できた。