JP2014213554A - 拡径用ドリルビット - Google Patents

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Abstract

【課題】単純な構造で、細径の下穴にも対応可能な拡径用ドリルビットを提供する。【解決手段】下穴Hの一部を拡径するための拡径用ドリルビット10であって、複数の切刃部21、複数の切刃部21を径方向に移動自在に保持する切刃保持部22、および切刃保持部22を支持するシャンク部23を有するビット部11と、基端側で動力源側の回転軸3aに着脱自在に装着され、先端側でビット部11を回転可能に支持するシャフト部12と、シャフト部12の先端部に設けられ、シャフト部12の回転力を複数の切刃部21に直接伝達する板状ばね18と、を備え、板状ばね18は、複数の切刃部21を径方向外側に拡開するように移動させると共に、複数の切刃部21を介してビット部11を回転させる。【選択図】図2

Description

本発明は、主として、コンクリート等の躯体に穿孔した下穴の一部を拡径するための拡径用ドリルビットに関するものである。
従来、この種の拡径用ドリルビットとして、コンクリート等の躯体に穿孔したストレート形状の下穴に挿入して用いられ、下穴の最奥部を拡径するアンダーカットドリル装置が知られている(特許文献1参照)。
このアンダーカットドリル装置は、下穴に挿入される中空円筒状の筒体と、下穴の開口縁部に着座し、ベアリングを介して筒体を回転自在に支持する当て部材と、同軸上において筒体にスライド自在に係合し、筒体と一体回転するシャフトと、筒体の先端側に設けられ、外周面に4つのガイド溝を有する円錐台形状のコーン部と、シャフトの先端部に取り付けられ、各ガイド溝に係合する4つのアームと、4つアームの先端部外面に交互に設けた2つの切刃および2つのガイド部と、を備えている。
切刃およびガイド部は、シャフトを引き上げた状態で筒体の内側に位置している。下穴に挿入した筒体およびシャフトを一体回転させ、シャフトを下動させてゆくと、コーン部のガイド溝により4つのアームが下動しながら外側に開いてゆく。これにより、切刃が下穴の内周面を研削し、下孔の底部(最奥部)に拡径部を形成する。
特開2005−280243号公報
このような従来のアンダーカットドリル装置では、切刃を有するアームをコーン部の外周面でガイドする構造となっているため、コーン部を筒体で支持せざるを得ず、構造が極めて複雑になる問題があった。また、シャフトの外側にアーム、コーン部および筒体を配置する構造となるため、全体が太径となり、比較的細径の下穴に使用することができない問題があった。
本発明は、単純な構造で、細径の下穴にも対応可能な拡径用ドリルビットを提供することをその課題としている。
本発明の拡径用ドリルビットは、躯体に穿孔した下穴に挿入して用いられ、下穴の一部を研削により拡径するための拡径用ドリルビットであって、下穴の一部を研削する複数の切刃部、複数の切刃部を径方向に移動自在に保持する切刃保持部、および切刃保持部を支持するシャンク部を有するビット部と、基端側で動力源側の回転軸に着脱自在に装着され、先端側でビット部を回転可能に支持するシャフト部と、シャフト部の先端部に設けられ、シャフト部の回転力を複数の切刃部に直接伝達する動力伝達部と、を備え、動力伝達部は、複数の切刃部を径方向外側に拡開するように移動させると共に、拡開した複数の切刃部を介してビット部を回転させることを特徴とする。
この構成によれば、ビット部を下穴に挿入した状態で、動力源を回転駆動させると、シャフト部を介して動力伝達部が回転する。この動力伝達部の回転により、ビット部の複数の切刃部は径方向外側に移動して拡開し、且つ拡開が規制された時点で回転に移行して、ビット部が回転する。すなわち、複数の切刃部は、拡開しつつ回転し、下穴の一部を研削し拡径させる。この場合、動力伝達部により、複数の切刃部の拡開と、ビット部(複数の切刃部)の回転とが連続して行われるため、構造を単純化することができる。また、下穴に挿入される複数の切刃部は、切刃保持部と共に径方向に集約して配置することができる。したがって、細径の下穴にも対応(拡径)させることができる。
この場合、動力伝達部は、基端側をシャフト部の先端部に取り付けられ、先端側で複数の切刃部の内面に係合するトーションばねを有していることが好ましい。
この構成によれば、トーションばねを介して複数の切刃部に、拡開のための動力と回転のための動力とが伝達される。このため、複数の切刃部による下穴の研削において負荷変動が生じても、この負荷変動を吸収することができる。したがって、下穴の研削を円滑に行うことができると共に、ビット部の耐久性を向上させることができる。
この場合、複数の切刃部は、180°点対称位置に配置した2つの切刃部で構成され、トーションばねは、シャフト部と同軸上に配設した板状のばねで構成され、板状のばねは、両面を2つの切刃部に挟まれた状態から、2つの切刃部を外側に押しやって拡開させつつ回転力を伝達することが好ましい。
この構成によれば、板状のばねを含む切刃部廻りをコンパクト且つ単純に構成することができる。また、下穴を研削するための2つの切刃部の拡開ストロークを、十分にとることができる。
また、切刃保持部は、下穴に嵌挿されると共に、ビット部において最も太径に形成された太径嵌合部を有していることが好ましい。
この構成によれば、ビット部の一部として回転する太径嵌合部が、下穴に嵌挿される径を有するため、これをビット部の回転ブレを防止する部材として機能させることができる。したがって、研削時の切刃部の回転が安定し、複数の切刃部による下穴の拡径を、短時間で円滑に行うことができる。
さらに、切刃保持部は、複数の切刃部を移動自在に保持する複数の切刃開口部を有し、各切刃部は、切刃開口部に対し径方向にスライド自在に係合する切刃本体と、切刃本体の基部側に設けられ、切刃保持部に対し抜け止めとなる抜止め部と、を有していることが好ましい。
この構成によれば、動力伝達部により径方向外側に移動する切刃部は、その切刃本体が切刃保持部の切刃開口部に案内されてスライド移動する。この場合、切刃本体が、切刃開口部に対し径方向にスライド自在に係合しているため、切刃本体は、径方向外側に平行移動する。これにより、下穴(の一部)を均一に研削することができる。また、抜止め部により、径方向外側に移動する切刃本体の移動端位置が規制されるため、切刃部の切刃保持部からの脱落を防止することができると共に、下穴の拡径寸法を一定にすることができる。なお、各切刃本体の先端面は断面円弧状に形成することが好ましい。このようにすれば、拡開が進むに従って、各切刃本体の研削部位が円弧状の周面全体から中間部分に移行する。すなわち、研削が進むに従って切刃部の摩擦抵抗が小さくなるため、研削を円滑に進めることができる。
一方、シャフト部は、動力源側の回転軸に着脱自在に装着されるシャフト本体と、シャフト本体から同軸上に先方に延在し、ビット部を回転可能に支持するビット支持部と、を有していることが好ましい。
この構成によれば、ビット部とビット支持部との間の適度な摩擦により、複数の切刃部に拡開力を作用させながら、ビット部を回転させることができる。これにより、複数の切刃部による下穴の拡径を、短時間で円滑に行うことができる。
この場合、シャフト本体に取り付けられ、下穴の開口縁部に当接してビット部の下穴への挿入深さを調整可能な調整アタッチメントを、更に備えることが好ましい。
この構成によれば、調整アタッチメントにより、ビット部の下穴への挿入深さを調整することができ、下穴の任意の深さ位置に対し拡径を行うことができる。
また、ビット部の先端部に冷却剤を供給するために、シャフト部は、軸心部に、ビット支持部の先端部に開放したシャフト内流路を有していることが好ましい。
この構成によれば、シャフト内流路を介して、動力源側からビット部(複数の切刃部)に冷却剤を供給することができる。これにより、下穴の拡径を円滑に且つ効率良く行うことができる。なお、冷却剤として、冷却液、圧縮エアー、冷却ガス等を用いることが好ましい。
実施形態に係る拡径用ドリルビットを穿孔装置に装着した状態の外観図である。 第1実施形態に係る拡径用ドリルビットの構造図である。 拡径用ドリルビットのビット部廻りの斜視図である。 拡径用ドリルビットのビット部廻りの分解構造図(a)および断面図(b)である。 拡径用ドリルビットの拡径動作を示す説明図である。 第1実施形態の第1変形例(a)および第2変形例(b)に係る切刃部廻りの構造図である。 第2実施形態に係る拡径用ドリルビットの構造図である。 第3実施形態に係る拡径用ドリルビットの構造図である。
以下、添付の図面を参照して、本発明の一実施形態に係る拡径用ドリルビットについて説明する。この拡径用ドリルビットは、主として、アンカーを打ち込むためにコンクリートや石材等の躯体に形成した下穴に対し、その一部を拡径するものであり、打ち込んだアンカーの引抜き強度を高め得るものである。ダイヤモンドコアドリル等で穿孔したストレート形状の下穴は、微小な軸ブレにより開口部側が広く奥側が狭く穿孔され、実質上、微小なテーパー形状となる。このため、打ち込んだアンカーに、地震等による大きな力が繰り返し加わると、経時的に引抜き強度が低下する。拡径用ドリルビットは、このようなアンカーの経時的な引抜き強度の低下を防止すべく、下穴と同様の作業要領で下穴の一部を拡径するものである。
図1は、拡径用ドリルビットを穿孔装置に装着した状態の外観図である。同図に示すように、穿孔装置1は、手持ちの電動ドリル2と、電動ドリル2に装着した冷却液アタッチメント3とを有し、この冷却液アタッチメント3に拡径用ドリルビット10が装着される。すなわち、拡径用ドリルビット10は、動力源を構成する穿孔装置1(電動ドリル2)の冷却液アタッチメント3における回転軸3aに着脱自在に装着して用いられる。
この回転軸3aには、冷却液の流路が形成される一方、冷却液アタッチメント3は、図外の冷却液供給装置が接続されており、冷却液は、この冷却液供給装置から冷却液アタッチメント3を介して拡径用ドリルビット10の先端部に供給される。実施形態の穿孔装置1では、冷却液アタッチメント3に穿孔用ドリルビット(例えば、ダイアモンドコアビット)を装着して下穴Hを穿孔した後、穿孔用ドリルビットに代えて拡径用ドリルビット10を装着し、下穴Hの最奥部Haを拡径するようにしている。
図2は、第1実施形態に係る拡径用ドリルビット10の構造図である。同図に示すように、拡径用ドリルビット10は、先端部で下穴Hの拡径を行うビット部11と、基端側で穿孔装置1の回転軸3a(冷却液アタッチメント3)に着脱自在に装着され、先端側でビット部11を回転自在に支持するシャフト部12と、シャフト部12の先端部に設けられ、シャフト部12の回転力をビット部11に伝達する動力伝達部13と、を備えている。
シャフト部12は、冷却液アタッチメント3の回転軸3aに着脱自在に装着されるシャフト本体15と、シャフト本体15から同軸上に先方に延在し、ビット部11を滑り軸受の形式で回転自在に支持するビット支持部16と、を有している。また、動力伝達部13は、ビット支持部16の先端部に取り付けられ、トーションばねの機能を奏する板状ばね18で構成されている。
一方、ビット部11は、下穴Hを研削する複数(実施形態のものは2つ)の切刃部21と、2の切刃部21を径方向に移動自在に保持する切刃保持部22と、切刃保持部22を介して複数の切刃部21を支持するシャンク部23と、を有している。そして、ビット部11は、シャンク部23の部分で、シャフト部12のビット支持部16に回転自在に装着され、この状態で、2の切刃部21は、上記の板状ばね18の先端部を挟むように配設されている。
この拡径用ドリルビット10では、ビット部11を下穴Hに挿入した状態で、穿孔装置1により拡径用ドリルビット10を回転させると、シャフト部12と共に、シャフト部12(ビット支持部16)の先端部に取り付けられた板状ばね18が回転し、この板状ばね18の回転により、2つの切刃部21が同時に径方向外側に拡開(移動)する。2つの切刃部21が拡開した次の瞬間、下穴Hの周壁に接触した2つの切刃部21により板状ばね18の回転が規制され、2つの切刃部21を介して、ビット部11全体が回転する(図5参照)。
シャフト本体15は、冷却液アタッチメント3の回転軸3aに着脱自在に装着される本体太径部31と、本体太径部31の先端に設けられ、ビット支持部16を支持する本体細径部32と、を有している。本体太径部31は、その小口に窪入形成した雌ねじ部34を有し、この雌ねじ部34が、冷却液アタッチメント3の回転軸3aの雄ねじ部(図1参照)に螺合される。図示しないが、本体太径部31にはスパナ用の工具掛け部が形成されており、シャフト部12は、雌ねじ部34の部分で冷却液アタッチメント3、すなわち穿孔装置1に着脱自在に装着される。なお、冷却液を使用しない場合には、拡径用ドリルビット10を電動ドリル2に直接装着することも可能である。
ビット支持部16は、ビット部11をシャンク部23の部分で回転自在に支持する支持軸部36と、支持軸部36に連なり、板状ばね18を支持するばね取付け部37と、を有している。支持軸部36とシャンク部23との間には、基部側および先端側の2箇所にそれぞれOリング38が介設されている。この2つのOリング38により、ビット部11に供給される冷却液がシールされ、且つビット部11が支持軸部36に着脱自在に装着されている。なお、Oリング38は、1つでもよい。
ばね取付け部37の先端部には、板状ばね18を取り付けるための割スリット39が形成され、板状ばね18は、その基端部を割スリット39に差し込んだ状態で固定されている。板状ばね18は、捻じり方向にばね力を有して長方形に形成され、シャフト部12と同軸上において、割スリット39から2つの切刃部21の位置まで延びている。
詳細は後述するが、板状ばね18の先端部は、2つの切刃部21に挟まれるように配設されており、板状ばね18が回転を開始すると、その先端部の一方の辺が一方の切刃部21を、他方の辺が他方の切刃部21を、それぞれ外方に押し出す。外方に押し出された2つの切刃部21は、下穴Hの周壁に突き当たるが、この瞬間2つの切刃部21には、板状ばね18から付勢力と回転力が作用する。
これにより、ビット部11全体が回転を開始し、2つの切刃部21による下穴Hの研削が開始される。回転する2つの切刃部21は、常に板状ばね18から径方向外側に移動する力(回転力)を受けており、研削が持続する。このように、2つの切刃部21には、板状ばね18による付勢力と回転力が作用するため、各切刃部21に生ずる拡開開始時のショックや、研削時に切刃部21が受ける負荷変動が適切に吸収される。
一方、シャフト部12を構成する本体太径部31、本体細径部32、支持軸部36およびばね取付け部37は、ステンレスやスチール等により一体に形成され、その軸心部には、冷却液用のシャフト内流路41が形成されている。シャフト内流路41は、基端側で冷却液アタッチメント3に連通すると共に、先端側でばね取付け部37に形成した横孔42(径方向に貫通)を介してビット部11内に開放されている。横孔42から放出された冷却液は、ビット部11の切刃保持部22およびシャンク部23の内側に構成されたビット内流路43に流入する。このように、シャフト部12を冷却液アタッチメント3の回転軸3aに装着すると、このシャフト内流路41を介して、ビット部11の先端部に冷却液の通液が可能となる。
図2、図3および図4に示すように、ビット部11は、シャフト部12(ビット支持部16)に装着したシャンク部23と、シャンク部23の先端に設けた円筒状の切刃保持部22と、切刃保持部22に保持された2つの切刃部21と、を有している。この場合、切刃保持部22は、2つの切刃部21を装着した状態で、シャンク部23の先端部に取り付けられている。
シャンク部23は、先端部内面に雌ねじ51を有して円筒状に形成され、基端側の半部で、シャフト部12(ビット支持部16)の支持軸部36に装着されている。シャンク部23の基端側の半部は、上記の2つのOリング38を介在させた状態で、支持軸部36に対し回転可能に支持され、且つ軸方向から着脱自在に装着されている。詳細は後述するが、支持軸部36(シャフト部12)の回転開始時には、シャンク部23は滑って、切刃部21の拡開を許容しつつ、ほぼ支持軸部36と一体回転する。
切刃保持部22は、フランジ状の太径嵌合部52と、太径嵌合部52に連なり、2つの切刃部21を保持する円筒保持部53と、円筒保持部53に連なる円筒ねじ部54と、を有している。また、切刃保持部22は、太径嵌合部52の中心部先端に設けた尖塔部55と、円筒保持部53に形成した2つの切刃開口部56と、円筒ねじ部54に形成され、2つの切刃開口部56に連なる2つの装着開口部57と、を有している。
この場合、太径嵌合部52、円筒保持部53、円筒ねじ部54および尖塔部55は、一体に形成されている。シャンク部23の先端側半部、円筒保持部53および円筒ねじ部54の内側は、上記のシャフト内流路41に連なるビット内流路43として機能する。ビット内流路43に導入された冷却液は、切刃開口部56と切刃部21の隙間から下穴H内に放出される。なお、冷却液に代えて、圧縮エアーや冷却ガスを用いることも可能である。
太径嵌合部52は、下穴Hに嵌挿されると共に、ビット部11において最も太径に形成されている。すなわち、太径嵌合部52は、非拡開状態の2つの切刃部21やシャンク部23より僅かに太径に形成され、且つ下穴H(の最奥部Ha)より僅かに細径に形成されている。ビット部11を下穴Hに挿入すると、尖塔部55が下穴Hの穴底に突き当たり、太径嵌合部52が下穴Hの最奥部Haに位置する。この状態で、ビット部11が回転すると、太径嵌合部52は、尖塔部55を回転中心として、下穴Hに嵌挿された状態で回転する。この場合、太径嵌合部52に対し、下穴Hが、冷却液を潤滑剤とした軸受として機能し、ビット部11の回転ブレが防止される。これにより、2つの切刃部21による下穴H(拡径部)の研削が円滑に行われる。
円筒保持部53は、シャンク部23と略同径に形成されている。そして、2つの切刃開口部56は、円筒保持部53の周方向において180°点対称位置に形成されている。円筒保持部53の内面には、2つの切刃開口部56に連なる矩形断面のガイド室58が構成されており、このガイド室58に板状ばね18が臨むと共に、板状ばね18を挟むようにして各切刃部21の基端が対峙している。詳細は後述するが、各切刃部21は、切刃本体61と抜止め部62とで構成されており、切刃本体61が切刃開口部56に、且つ抜止め部62がガイド室58に、それぞれガイドされて径方向に外側にスライド移動(拡開)する。また、抜止め部62が、ガイド室58と切刃開口部56との間の段部59に当接することで、切刃部21の径方向外側への移動端位置が規制されるようになっている。
円筒ねじ部54は、円筒保持部53より細径に形成され、外周面に雄ねじ54aが形成されている。また、2つの装着開口部57は、円筒ねじ部54の基端から円筒保持部53に向かって切り込むようにして形成されている。さらに、2つの装着開口部57は、円筒保持部53の2つの切刃開口部56に連通しており、各切刃部21は、円筒ねじ部54の基端、すなわち小口からスライドさせるようにして、円筒保持部53に装着される。
この状態で、円筒ねじ部54をシャンク部23の雌ねじ51に螺合することにより、切刃保持部22がシャンク部23に取り付けられ、2つの切刃部21が切刃保持部22に保持された状態となる。これにより、切刃部21が目減りして、交換する必要が生じた場合には、シャンク部23から円筒保持部53を外して、切刃部21の交換が行われる。
なお、本実施形態では、切刃保持部22とシャンク部23とを別体とし、ねじ接合するようにしているが、切刃保持部22とシャンク部23とを一体に形成してもよい(円筒ねじ部54無し)。かかる場合には、切刃保持部22において、円筒保持部53と太径嵌合部52(尖塔部55を含む)とを別体とし、円筒保持部53に切刃部21を装着してから、円筒保持部53に太径嵌合部52を溶着(例えば、溶接やろう接)するようにする。この場合には、切刃部21の目減りに対し、ビット部11全体として交換することとなる。
各切刃部21は、外周面(円弧面)が円筒保持部53の外周面と面一となるように設けた切刃本体61と、切刃本体61の基端に設けた抜止め部62と、を有している。抜止め部62は、ガイド室58と切刃開口部56との間の段部59により抜け止めとなるように、切刃本体61より広幅に形成されている。そして、径方向において、切刃本体61が切刃開口部56にスライド自在に係合し、抜止め部62がガイド室58の内壁面にスライド自在に係合している。
これにより、切刃保持部22に保持された2つの切刃部21は、板状ばね18の初期の角度回転(90°未満)を受けて、径方向外側に押し出されるようにして拡開する。実施形態の切刃部21(切刃本体61)は、研削による目減りを考慮して十分な突出長さを有しており、拡径部の研削を時間管理(10秒程度)で行うようにしている。したがって、研削時に抜止め部62が段部59と当接するようになったら、切刃部21を交換(寿命)することとなる。なお、実施形態における下穴Hの拡径は、アンカーの引抜き強度を高めるものであるため、拡径寸法は微小であってもよい。したがって、拡径に要する切刃部21のスライド移動は、0.1〜2mm程度(時間管理)とすることが好ましい。
切刃本体61は、ダイヤモンドの切刃で構成されており、研削時の目減りに対応できる突出方向の長さを有している。また、切刃本体61の外周面は、円筒保持部53と同径の円弧状を為すため、拡開が進むに従って、その研削部位が円弧状の周面全体から中間部分に移行する(図5参照)。すなわち、研削が進むに従って切刃本体61の摩擦抵抗が小さくなるため、研削を円滑に進めることができる。また、研削初期における研削抵抗を小さくすべく、切刃本体61の周方向の先端側(回転方向の先端側)は、面取り形状とすることが好ましい。なお、周方向において、2つの切刃部21が初期状態にあるこの部分の径は、下穴Hの径より0.5〜1.0mm程度細径に形成されている。
次に、図1および図5を参照して、拡径用ドリルビット10による下穴Hの拡径作業について説明する。この拡径作業では、予め対象となるコンクリート躯体A等にストレートの下穴Hが形成されているものとする。なお、この場合のコンクリート躯体Aには、コンクリート製の外壁、内壁、スラブの他、基礎や梁等が含まれる。下穴Hは、例えば上記の穿孔装置1にダイアモンドコアビットを装着した穿孔作業により形成される。
拡径作業では、先ず穿孔装置1に拡径用ドリルビット10を装着し、そのビット部11を下穴Hに挿入する(図5(a)参照)。ビット部11の尖塔部55を下穴Hの穴底に突き当てるように挿入したら、電動ドリル2を駆動して拡径用ドリルビット10を回転させる。また同時に或いは相前後して、シャフト内流路41およびビット内流路43を介して、切刃部21に冷却液を供給する。
拡径用ドリルビット10(シャフト部12)が回転すると、先ず板状ばね18が回転し、2つの切刃部21を瞬時に外側に拡開する(図5(b)参照)。2つの切刃部21が下穴Hの周壁に接触すると、板状ばね18の回転力が、2つの切刃部21に直接伝達され、ビット部11も太径嵌合部52を回転ガイドにして回転する。これにより、回転するビット部11の切刃本体61が、下穴Hの内面を研削し、下穴Hの最奥部Haが拡径されてゆく。やがて、所定時間の経過を経て、下穴Hの最奥部Haが所定の寸法に拡径される。
ここで作業者は、電動ドリル2をOFFし、拡径用ドリルビット10の回転を停止させる(冷却液の供給も停止)。拡径用ドリルビット10が停止したら、ビット部11を逆方向に僅かに回転させて(手動)板状ばね18と2つの切刃部21との係合を解き、ビット部11を下穴Hから引き抜くようにする。
このように、第1実施形態では、ビット部11を下穴Hに挿入し回転させるだけで、下穴Hの最奥部Haを簡単且つ短時間で拡径することができる。また、複数の切刃部21を、板状ばね18により拡開させる構成であるため、装置構成を単純化することができる。さらに、2つの切刃部21は、切刃保持部22と共に径方向に集約して配置することができるため、細径の下穴Hに対しても適切な拡径を行うことができる。一方、シャフト部12からビット部11への回転動力の伝達を、板状ばね18により行うようにしているため、2つの切刃部21の拡開を無理なく行うことができると共に、研削時の負荷変動も適切に吸収することができる。
次に、図6を参照して、ビット部11の複数の変形例について説明する。
図6(a)の第1変形例に係るビット部11では、各切刃部21が、ダイヤモンドの切刃で構成された切刃本体61と、切刃本体61の内側に突設されたリブ部63と、リブ部63に設けた抜止め部62と、を有している。切刃本体61は、断面円弧状に形成されており、リブ部63が、切刃開口部56に対し径方向にスライド自在に係合している。なお、切刃本体61に対し、リブ部63および抜止め部62を軸方向において同寸法としてもよいし、リブ部63および抜止め部62を短く形成してもよい。
図6(b)の第2変形例に係るビット部11では、動力伝達部13が、棒状の捻じりばね71と、捻じりばね71の先端に設けた切刃係合部72とを有している。切刃係合部72の両端部には、各切刃部21に係合する一対の係合ピン73が設けられている。一方、各切刃部21には、その上下中間位置に切刃係合部72が臨む凹溝21aが形成されている。また、抜止め部62には、係合ピン73が係合するスライド溝62aが形成されている。
捻じりばね71を介して、切刃係合部72が角度回転すると、一対の係合ピン73が2つの切刃部21を径方向外側に押し出しながら、スライド溝62a内を延在方向に移動する。これにより、2つの切刃部21は拡開する。この変形例では、スライド溝62aに係合する係合ピン73により、2つの切刃部21は確動的に移動するため、抜止め部62や上記の段部59による抜止め構造を省略することもできる。
次に、図7を参照して、第2実施形態に係る拡径用ドリルビット10Aにつき、主に第1実施形態と異なる部分について説明する。同図に示すように、この拡径用ドリルビット10Aは、ビット部11が、シャフト部12のばね取付け部37に回転自在に支持されている。すなわち、シャンク部23の基端部は厚肉形成されており、この部分で、ビット部11はばね取付け部37の上半部に回転自在に装着されている。
この構成では、ビット部11をコンパクトに構成することができる。また、この場合にも、太径嵌合部52によりビット部11の回転ブレが防止されるため、下穴Hの拡径を円滑に行うことができる。なお、この実施形態では、上記したように、切刃保持部22とシャンク部23とを一体に形成すると共に、太径嵌合部52を別体とし、切刃部21を装着してから、太径嵌合部52を溶着することが好ましい。
次に、図8を参照して、第3実施形態に係る拡径用ドリルビット10Bにつき、主に第1実施形態と異なる部分について説明する。同図に示すように、この拡径用ドリルビット10Bは、下穴Hの最奥部Haを拡径する第1実施形態の拡径用ドリルビット10と異なり、下穴Hの任意の深さ位置を拡径することを意図している。このため、第3実施形態の拡径用ドリルビット10Bは、ビット部11の下穴Hへの挿入深さを調整可能な調整アタッチメント80を、更に備えている。
調整アタッチメント80は、シャフト部12に螺合する円筒状のアタッチメント本体81と、アタッチメント本体81に隣接してシャフト部12に螺合する止めねじ部82と、アタッチメント本体81の先端部に設けた円環状の回転受容部83と、を有している。
シャフト部12の外周面には、雄ねじが形成されており、これに対応してアタッチメント本体81の内周面および止めねじ部82の内周面には、雌ねじが形成されている。シャフト部12に対し、止めねじ部82を深く螺合した後、アタッチメント本体81を螺合してビット部11の下穴Hへの挿入深さを調整する。調整が完了したら、アタッチメント本体81が緩まないように、止めねじ部82を戻してアタッチメント本体81に接するように締め付ける。なお、シャフト部12の外周面には、挿入深さを指標する目盛を形成しておくことが好ましい。
回転受容部83は、例えばスラスト軸受で構成されており、下穴Hの開口縁部に当接するようになっている。アタッチメント本体81および止めねじ部82は、シャフト部12と共に回転するが、回転受容部83によりこの回転を縁切りし、下穴Hの開口縁部に回転動力が伝達しないように構成されている。
このような構成では、アタッチメント本体81のねじ込み深さにより、ビット部11の下穴Hへの挿入深さを調整することができる。すなわち、下穴Hの任意の深さ位置に拡径部分を形成することができる。
なお、本実施形態では、切刃部21の個数を2つとしたが、3つ以上であってもよい。一方、冷却液に代えて、圧縮エアーや冷却ガスを用いる場合には、冷却液アタッチメント3に冷却液供給装置に代えて圧縮エアー供給装置(コンプレッサー等)を接続するか、或いは冷却液アタッチメント3に代えて、液化ガス等のガスボンベを搭載可能な冷却ガスアタッチメントを用いるようにする。
1 穿孔装置、2 電動ドリル、3 冷却液アタッチメント、3a 回転軸、10,10A,10B 拡径用ドリルビット、11 ビット部、12 シャフト部、13 動力伝達部、15 シャフト本体、16 ビット支持部、18 板状ばね、21 切刃部、22 切刃保持部、23 シャンク部、41 シャフト内流路、43 ビット内流路、52 太径嵌合部、53 円筒保持部、54 円筒ねじ部、55 尖塔部、56 切刃開口部、59 段部、61 切刃本体、62 抜止め部、80 調整アタッチメント、A コンクリート躯体、H 下穴、Ha 最奥部

Claims (8)

  1. 躯体に穿孔した下穴に挿入して用いられ、前記下穴の一部を研削により拡径するための拡径用ドリルビットであって、
    前記下穴の一部を研削する複数の切刃部、前記複数の切刃部を径方向に移動自在に保持する切刃保持部、および前記切刃保持部を支持するシャンク部を有するビット部と、
    基端側で動力源側の回転軸に着脱自在に装着され、先端側で前記ビット部を回転可能に支持するシャフト部と、
    前記シャフト部の先端部に設けられ、前記シャフト部の回転力を前記複数の切刃部に直接伝達する動力伝達部と、を備え、
    前記動力伝達部は、前記複数の切刃部を径方向外側に拡開するように移動させると共に、拡開した前記複数の切刃部を介して前記ビット部を回転させることを特徴とする拡径用ドリルビット。
  2. 前記動力伝達部は、基端側を前記シャフト部の先端部に取り付けられ、先端側で前記複数の切刃部の内面に係合するトーションばねを有していることを特徴とする請求項1に記載の拡径用ドリルビット。
  3. 前記複数の切刃部は、180°点対称位置に配置した2つの切刃部で構成され、
    前記トーションばねは、前記シャフト部と同軸上に配設した板状のばねで構成され、
    前記板状のばねは、両面を前記2つの切刃部に挟まれた状態から、前記2つの切刃部を外側に押しやって拡開させつつ回転力を伝達することを特徴とする請求項2に記載の拡径用ドリルビット。
  4. 前記切刃保持部は、前記下穴に嵌挿されると共に、前記ビット部において最も太径に形成された太径嵌合部を有していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の拡径用ドリルビット。
  5. 前記切刃保持部は、前記複数の切刃部を移動自在に保持する複数の切刃開口部を有し、
    前記各切刃部は、前記切刃開口部に対し径方向にスライド自在に係合する切刃本体と、前記切刃本体の基部側に設けられ、前記切刃保持部に対し抜け止めとなる抜止め部と、を有していることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の拡径用ドリルビット。
  6. 前記シャフト部は、前記動力源側の回転軸に着脱自在に装着されるシャフト本体と、
    前記シャフト本体から同軸上に先方に延在し、前記ビット部を回転可能に支持するビット支持部と、を有していることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の拡径用ドリルビット。
  7. 前記シャフト本体に取り付けられ、前記下穴の開口縁部に当接して前記ビット部の前記下穴への挿入深さを調整可能な調整アタッチメントを、更に備えたことを特徴とする請求項6に記載の拡径用ドリルビット。
  8. 前記ビット部の先端部に冷却剤を供給するために、
    前記シャフト部は、軸心部に、前記ビット支持部の先端部に開放したシャフト内流路を有していることを特徴とする請求項6または7に記載の拡径用ドリルビット。

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