以下の実施の形態では、同一の部品には同一の参照番号を付してある。それらの機能及び名称も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。以下では、空間中に電荷を発生させる電荷発生素子である電子放出素子を用いた非接触帯電システムの電源装置に本発明を適用した例について説明する。
(構成)
図1を参照して、本発明の一実施の形態に係る非接触帯電システム20は、電子写真方式の画像形成装置(図示せず。)内に設けられる。この非接触帯電システム20は、電子を放出する電子放出装置30及び被帯電体である感光体ドラム40を含む。電子放出装置30は、電子を放出する電子放出素子200、電子放出素子200に電圧を印加する電源装置100、及び電源装置100を制御する制御装置50を含む。電子放出素子200は、感光体ドラム40を帯電させる帯電装置に用いられる。この電子放出素子200は、電子を放出することによって生じた負極性の酸素イオンを感光体ドラム40に供給する。すなわち、電子放出素子200は、感光体ドラム40を帯電させるためのイオンを供給するイオン供給源として機能する。
本実施の形態に係る電源装置100は、電子放出素子200全体を負極性のバイアス電圧となる高電圧でフロートし、素子駆動電圧である低電圧をバイアス電圧に重畳する。電子放出装置30(電源装置100)は電子放出素子200を駆動させることによって感光体ドラム40にイオンを供給し、感光体ドラム40を帯電させる。電源装置100及び電子放出素子200の詳細については後述する。
感光体ドラム40は、電子写真プロセスにおいて像担持体として機能する。感光体ドラム40は、一方向に回転し、その表面は、図示しないクリーニング装置と除電装置によりクリーニングされた後、電子放出素子200(帯電装置)により均一に帯電する。
制御装置50は、制御中枢となるCPU52を含む。制御装置50はさらに、デジタル−アナログ出力ポートであるD/Aポート54、及びアナログ−デジタル出力ポートであるA/Dポート56を含む。制御装置50は、D/Aポート54を介して制御信号(「駆動信号」ともいう。)を出力し、A/Dポート56を介してPWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)信号を出力する。
画像形成装置のその他の構成は従来と同様であるためその説明は省略する。
《電源装置100の構成》
図2を参照して、電源装置100は駆動回路102を含む。駆動回路102(電源装置100)は、D/Aポート54から出力された制御信号が入力される入力部110と、電子放出素子200を駆動する駆動電圧を出力する出力部130と、絶縁アンプ180と、直流バイアス電圧を出力するバイアス電源部190とを含む。絶縁アンプ180は、入力部110と出力部130との間を電気的に絶縁する一方、入力部110に入力された制御信号を出力部130に伝達する。
入力部110は保護回路120を含む。保護回路120は、電流方向を制限するダイオード122及び124、並びに、保護抵抗126及び128を含む。保護抵抗126の抵抗値は例えば4.3kΩであり、保護抵抗128の抵抗値は例えば1kΩである。保護回路120は、絶縁アンプ180の一次側(入力側)に接続されている。
出力部130は、バッファ回路140及び反転増幅回路160を含む。バッファ回路140は等倍のアンプであり、抵抗142、144、146及び148、並びにオペアンプ150を含む。抵抗142、抵抗144及び抵抗146の抵抗値はそれぞれ例えば10kΩであり、抵抗148の抵抗値は例えば5.1kΩである。反転増幅回路160は、増幅率を決める抵抗162、164及び166、並びにオペアンプ168を含む。抵抗162の抵抗値は例えば20kΩであり、抵抗164の抵抗値は例えば51kΩである。抵抗166の抵抗値は例えば5.1kΩである。反転増幅回路160はさらに、増幅信号のゼロ点調整のための抵抗170及び172を含む。抵抗170の抵抗値は例えば5.1kΩであり、抵抗172の抵抗値は例えば10kΩである。オペアンプ168の反転入力端子にはコンデンサ174が接続されている。コンデンサ174の容量は例えば0.1μFである。バッファ回路140は、絶縁アンプ180の二次側(出力側)に接続されており、反転増幅回路160は、バッファ回路140に接続されている。
バイアス電源部190は帯電制御電圧用の電源である。バイアス電源部190はDC高圧発生回路(高電圧バイアス回路)からなる。このバイアス電源部190は、スイッチング素子であるトランジスタ192、昇圧トランス194、及び昇圧トランス194の二次側出力を整流平滑する整流平滑回路196を含む。整流平滑回路196は、ダイオード196a及びコンデンサ196bを含む。バイアス電源部190は、コンデンサ196bと並列に接続されるブリーダ抵抗198をさらに含む。ブリーダ抵抗198の抵抗値は例えば1kΩである。トランジスタ192のベースには、A/Dポート56から出力されたPWM信号が入力される。トランジスタ192はPWMデューティーに応じてスイッチングを行なう。PWM信号の駆動周波数は例えば20kHzである。バイアス電源部190は、PWM信号のデューティーを変調することにより例えばDC−500V〜−800Vの定電圧(バイアス電圧)を出力する。
バイアス電源部190(DC高圧発生回路)は、帯電制御電圧となるバイアス電圧を出力部130に印加することにより、出力部130をバイアス電圧でフロートする。このとき、電子放出素子200を含む、一点鎖線104で囲まれた二次側全体が負極性のバイアス電圧(帯電制御電圧)でフロートした状態となる。すなわち、絶縁アンプ180の二次側の基準電位が、帯電制御電圧でフロートされる。バイアス電源部190は、帯電制御電圧となるバイアス電圧を出力することにより、被帯電体となる感光体ドラム40の帯電電位を制御する。
図3を参照して、絶縁アンプ180は、一次側(入力側)及び二次側(出力側)にそれぞれ4つの端子が設けられている。絶縁アンプ180の一次側と二次側とは絶縁されている。絶縁アンプ180には増幅機能は特に必要がなく、一次側と二次側との絶縁耐圧及び信号周波数帯域以上の十分な帯域を有することが望まれる。絶縁耐圧については、二次側で要する高電圧が被帯電体である感光体ドラム40の帯電制御電圧となるため、本実施の形態では、絶縁アンプ180の絶縁耐圧は800V程度を必要とする。周波数帯域は、例えば5kHzの矩形波に対してデューティー制御を行なう場合、50kHz程度あれば十分である。
絶縁アンプ180の絶縁方法はトランスによって行なわれるものと、電圧―光変換を通して行なわれるものとがある。どちらの方法も、一次側に入力した信号はトランスを用いた場合、数百kHz程度の変調をかけられて二次側に伝達されるため、伝送波形は正弦波である必要がなく、DC〜製品の許容帯域まで取り扱い可能である。
再び図2を参照して、電源装置100の駆動回路102は+24Vの外部電源(図示せず。)で稼働される。絶縁アンプ180、及び一部のオペアンプの駆動電源である±5V、並びに増幅段オペアンプ168の−24V等は、図示しないDC−DCコンバータで生成される。このとき、絶縁アンプ180の二次側へ電力を供給するDC−DCコンバータは、基準電位が帯電制御電圧でフロートされるため、アイソレーションタイプのものを使用するのが好ましい。
絶縁アンプ180の一次側のVin+は、保護回路120と接続されている。絶縁アンプ180の二次側のVout+は、抵抗146を介してオペアンプ150(バッファ回路140のオペアンプ)の非反転入力端子に接続されており、絶縁アンプ180の二次側のVout−は、抵抗144を介してオペアンプ150(バッファ回路140のオペアンプ)の反転入力端子に接続されている。オペアンプ150の出力端子は、抵抗166を介して増幅段(反転増幅回路160)のオペアンプ168の反転入力端子に接続されている。
増幅段のオペアンプ168は、−24V及び+5Vの電源と接続されており、±5Vのオフセット調整を備えることで、0〜−20Vの振幅からなる駆動信号出力を確保している。
《電子放出素子200の構成》
図4を参照して、電子放出素子200は、下部電極となる電極基板210と導電体薄膜からなる上部電極との間に微粒子層230(「電子加速層」ともいう。)が設けられた構造を有する。電極基板210は、支持体となる基板212と、基板212上に形成された下電極層214とを含む。基板212は所定の厚みを有する絶縁体基板からなる。絶縁体基板には例えばガラス基板を用いることができる。図5を参照して、基板212(電極基板210)はまた、電子写真プロセスの帯電装置として利用する目的から細長い板形状に形成されている。図6を参照して、基板212の具体的な寸法は、例えば310mm×10mm(長さLが310mm、幅Wが10mm)である。
再び図4を参照して、下電極層214は、基板212の上面上の略全面に形成されている。基板212上に形成される下電極層214は、基板212上に形成された、銅からなる厚膜層(図示せず。)と、厚膜層上に形成された、高融点金属からなる薄膜層(図示せず。)とを含む。すなわち、下電極層214は、基板212上に、厚膜層及び薄膜層が順に積層された積層構造を有する。厚膜層の膜厚は、消費電力に対する耐圧を保持するために、数100nm以上であるのが好ましい。より好ましくは、厚膜層の膜厚は例えば約300nmである。薄膜層は、銅からなる厚膜層を酸化から守る保護層となる。薄膜層はさらに、素子駆動時の銅原子の移動を抑制する。この薄膜層は、例えばクロム、モリブデン、又はチタン等の高融点金属を用いて形成されているのが好ましい。薄膜層の好ましい膜厚は、例えば約50nmである。
下電極層214上には絶縁層220が形成されている。この絶縁層220は、電子放出点となる貫通孔222を有している。下電極層214の表面の一部はこの貫通孔222を介して微粒子層230と接している。電子放出点となる貫通孔222の大きさ、形成位置及び数は、電子放出量(イオン供給総量)を決定するパラメータとなる。これらの値は、実験によって決定できる。本実施の形態では、実験結果より、貫通孔222の開口直径が40μm、隣接する開口部(貫通孔222)との間隔が100μm、貫通孔222の総数が約12万点とされている。電子放出点となる貫通孔222はまた、電極基板210の長手方向に整列されている。
絶縁層220は、電気的絶縁性能、耐熱性、表面硬度、及び任意のパターン形成処理の容易さから、アクリル樹脂から形成されているのが好ましい。アクリル樹脂は、例えば感光性アクリル樹脂である。感光性アクリル樹脂のベースポリマーは、メタクリル酸とグリシジルメタクリレートとのポリマーであり、感光剤としてナフトキシジアジド系ポジ型感光剤を含む。絶縁層220の膜厚は1μm程度である。絶縁層220の膜厚は微粒子層230の形成のし易さを考慮して、微粒子層230の膜厚の2倍程度に設定される。例えば、絶縁層220をアクリル樹脂から形成した場合、絶縁層220の膜厚が1μmよりも大きくなると、スピンコート法によって膜厚500μm以下の微粒子層230を形成しようとする時に、貫通孔222部位の微粒子層が均一に仕上がらなくなるおそれがある。一方、絶縁層220の膜厚が1μmより小さくなると、絶縁層220の絶縁性が低下して、電子放出素子200に必要な駆動電圧を印加できなくなるおそれがある。
絶縁層220上には微粒子層230が形成されている。微粒子層230は、導電体からなる抗酸化作用が強い導電性微粒子232、導電性微粒子232よりも大きい絶縁体物質(絶縁性微粒子234)、及びそれらを固着する結着樹脂236を含む。これらの微粒子はいずれもナノサイズの微粒子である。絶縁性微粒子234は、例えば二酸化ケイ素(略称「シリカ」、以下「SiO2」と呼ぶ。)から形成されるシリカ微粒子である。絶縁性微粒子234は、電子トラップとして機能する表面準位を有する。
絶縁性微粒子234の平均粒径は例えば50nmである。ここで、平均粒径は、電子顕微鏡で撮影した所定の個数の各粒子における、円相当径の算術平均値である。絶縁性微粒子234は、平均粒径が10nm〜1000nmであるものが好ましく、10nm〜200nmであるものがより好ましい。絶縁性微粒子234は、粒径の分散状態が平均粒径に対してブロードであってもよく、例えば平均粒径50nmの微粒子は、20nm〜100nmの範囲にその粒径が広く分布していても問題ない。このような分散状態でも、絶縁性微粒子234の粒径が上述した平均粒径の範囲を満たせばよい。
絶縁性微粒子234の平均粒径が10nmよりも小さいと、粒子間に働く力が強いために粒子が凝集し易くなり、微粒子層230中での分散が困難になり易い。一方、絶縁性微粒子234の平均粒径が1000nmよりも大きいと、分散性は良いものの、薄膜に形成される微粒子層230の空隙が大きくなり、微粒子層230の抵抗の調整が困難になり易い。そのため平均粒径は上述した範囲であるのが好ましい。
微粒子層230の表面には、絶縁性微粒子234によって凹凸が形成される場合がある。微粒子層230の表面の凹凸は、微粒子層230に形成される電界強度を不均一にする。特に、微粒子層230の表面の凹部は、局所的な強電界の部分を形成するので、導電路が集中してしまう傾向がある。この状態が顕著な場合、電子放出点が凹部に集中し、電子放出を面状に維持することが困難となる。こうした現象を緩和させるために、絶縁性微粒子234の平均粒径は200nmよりも小さいことが好ましい。
導電性微粒子232は、例えば銀から形成される。導電性微粒子232の平均粒径は、例えば10nmである。導電性微粒子232としては、微粒子層230の導電性を制御するために、絶縁性微粒子234の平均粒径よりも小さい平均粒径のものが用いられる。したがって、導電性微粒子232の平均粒径は、3nm〜20nmであるのが好ましい。導電性微粒子232の平均粒径を、絶縁性微粒子234の平均粒径よりも小さくすることによって、微粒子層230内で導電性微粒子232による導電パスが形成されず、微粒子層230内での絶縁破壊が起こり難くなる。導電性微粒子232の平均粒径が3nmより小さい場合、凝集力が強すぎるために粒径を維持することが困難となる。平均粒径の上限を20nmとしているのは、製造工程からの制限である。具体的には、導電性微粒子232の粒径があまりに大きいと、絶縁性微粒子234であるシリカ微粒子との質量差から、成膜時に導電性微粒子232が沈降し、導電性微粒子232の分散状態を維持することが困難となる。
微粒子層230は、絶縁性微粒子234と導電性微粒子232とが、結着樹脂材であるシリコーン樹脂で固着されている。シリコーン樹脂は、微粒子層230の機械的強度を向上させる機能に加えて撥水機能を有する。そのため、水分子の微粒子層230への付着を抑制できる。大気中での電気抵抗が安定するため、湿度変動を伴う大気中でも電子放出素子200を安定して駆動できる。シリコーン樹脂としては、例えば、東レ・ダウコーニング・シリコン株式会社製の室温・湿気硬化タイプのSR2411、2441シリコーン樹脂が有用である。
微粒子層230の膜厚は300nm〜500nmである。この膜厚は、微粒子層230に電流路を形成するための通電処理、いわゆるフォーミングという前処理に要する電力量によって制限される。本来絶縁体として振舞う微粒子層230は、気温25℃、相対湿度20〜60%の大気中でゆっくりとした昇圧速度で電圧を印加することで、電流が生じるようになる。これがフォーミングと呼ばれる処理である。この処理が済んだ電子放出素子200は、必要な電圧を印加することで電子を放出することが可能となる。微粒子層230の膜厚によってフォーミングに要する電圧値及び電流値は異なる。具体的には、ある所望の電子放出出力(イオン供給量)を得るまでに要するフォーミング条件において、膜厚の増加と、素子内に形成される電界強度及び素子で消費される電力量とが比例関係にある。このため、膜厚が増加する程、フォーミング時に電界及びジュール熱に起因した素子の破壊が生じ易くなる傾向にある。
微粒子層230の膜厚別のフォーミング特性評価により、微粒子層230の膜厚が500nm以下であれば、フォーミング時の破壊を避けられる結果が得られている。膜厚300nmという下限値は、現状のスピンコート法による下限値である。微粒子層230はより薄く形成する工夫を施すことで、さらなる性能の向上が望めると考えられる。
微粒子層230の上には、薄膜電極からなる上電極層240が積層されている。上電極層240は電子放出素子200の上部電極として機能する。上電極層240を構成する材料は、電極としての機能と大気中での坑酸化機能とを有する材料であればよく、例えば金又はパラジウム等からなる金属膜が好ましい。上電極層240の膜厚は、電子放出点から外部へ電子を効率よく放出させるための条件として重要なパラメータである。この膜厚は、15nm〜100nmの範囲内であることが好ましい。上電極層240の膜厚が15nmよりも小さいと、導電性を保持できなくなるおそれがある。この理由として、微粒子層230の表面の凹凸が15nmを遥かに超えるためと考えられる。上電極層240の膜厚が100nmより大きいと、電子放出量が極端に減少してしまう。電子放出量の減少は、上電極層240が電子を吸収又は反射することにより、電子の放出効率を低下させるためであると考えられる。
上電極層240上にはバス配線250が形成されている。図5及び図6を参照して、このバス配線250は、基板212(電極基板210)の長手方向において、絶縁層220の貫通孔222に被らないように上電極層240全体に亘って設けられる。バス配線250の幅は、例えば10μm〜50μmである。バス配線250の膜厚は、例えば500nm〜1000nmである。その材料は、上電極層240と同様、金又はパラジウム等からなる金属膜であるのが好ましい。
電子放出素子200は、一方向に延びる細長い板形状の電極基板210を用いることによって、電極基板210と同様の形状に形成されている。すなわち、電子放出素子200は、例えば310mm×10mmの細長い板形状を有している。
図5を参照して、電子放出素子200の長手方向の端部には、電気供給点である上電極端子260及び下電極端子270が設けられている。上電極端子260は、バス配線250を介して上電極層240と電気的に接続されている。下電極端子270は、電極基板210の下電極層214と電気的に接続されている。
なお、電子放出素子200にバス配線250を設けることによって、電子放出素子200の上電極層240で生じる電圧降下を抑制できる。100nm以下の薄膜で構成される上電極層240は、導電材料で形成されているとはいえ抵抗値が高い。そのため、上電極層240は、電流量の増加に比例して電位降下を生じてしまう。電子放出素子200は、電子放出点が電極基板210の長手方向に整列した構造であるため、電子放出素子200の長手方向で電位降下が発生し易い。そのため、電極基板210の端部に設けられた、上電極層240への上電極端子260及び下電極端子270から遠い部分では、十分な電圧が掛らず電子放出量の低下(ばらつき)が生じてしまう。これを防止するためにバス配線250が設けられる。
図4を参照して、このように構成される電子放出素子200において、下電極層214(下部電極)と上電極層240(上部電極)との間に、上電極層240が正極電位となるように電圧が印加されると、下電極層214から供給される電子が微粒子層230を通過して上電極層240へ移動する際に、当該電子に何らかのエネルギーが与えられて電子が上電極層240から外部の空間へ放出される。電子の放出によって負極性の酸素イオンが生じ、このイオンが感光体ドラム40に供給される。
電子放出に至る物理現象については、現時点で不明な点が多く推測の域を出ないが、微粒子層230を流れる電流によるジュール熱と、微粒子層230内に形成される局所的な強電界領域とが関わっていると予想される。
一般的に、電子が固体内部から外部へ放出される物理機構として、熱電子放出、光電子放出、電界電子放出、及び二次電子放出等が知られている。熱電子放出は、フェルミ準位(ゼロKで電子が充たされている準位)と真空準位とのエネルギー障壁に相当するエネルギー(仕事関数)を熱により与えることで電子を真空中へ放出させる現象である。電界電子放出(冷電界電子放出)は、金属表面と真空との間に形成される電界強度を1×109V/m程度とし、エネルギー障壁を非常に薄くすることで、室温程度でもトンネル効果により電子を真空中へ放出させる現象である。この熱電子放出と電界電子放出とが混交した現象は熱電界放出と呼ばれ、電子放出素子の電子放出機構として最も妥当な機構と考えられる。すなわち、ジュール熱による見かけの仕事関数の低下と、強電界によるエネルギー障壁の低下及びトンネル現象とが合わさって、電子放出に至ると考えられる。
なお、本実施の形態において、電子放出素子200の310mmという長さは、電子写真プロセスの感光体ドラム40の幅から、10mmという幅は、感光体ドラム40の表面が電子放出素子200を通過する時間から決定される。例えば、感光体ドラム40が225mm/secの表面速度で回転する場合、紙送り方向(ドラム回転方向)に10mm幅を有する電子放出素子200は、約44msec(=10[mm]/225[mm/s])の間イオンの供給を行なうことができる。すなわち、感光体ドラム表面のある位置が電子放出素子200を通過する時間は約44msecであり、この間に感光体ドラム40の表面の当該位置にイオンを堆積させることができる。感光体ドラム40は一定の速度で回転しているため、感光体ドラム40の表面が均一に帯電される。
(動作)
本実施の形態に係る非接触帯電システム20は以下のように動作する。
電源装置100は増幅器であるため、入力された制御信号の波形と同様の波形の駆動信号電圧(駆動電圧)を出力する。すなわち、電源装置100は、矩形波の制御信号が入力されると、矩形波の駆動電圧を出力する。電源装置100はまた、AC波形が入力されるとAC波形の駆動電圧を出力し、DC波形が入力されるとDC波形の駆動電圧を出力する。以下では、制御信号として矩形波の信号(PWM信号)が電源装置100に入力される場合について説明する。
図1を参照して、制御装置50は、デジタル−アナログ出力ポートであるD/Aポート54から電子放出素子200の駆動電圧の1/10の波高値となる制御信号(駆動信号)を電源装置100に出力する。D/Aポート54から出力された制御信号は電源装置100の入力部110に入力される。制御装置50はまた、アナログ−デジタル出力ポートであるA/Dポート56からバイアス電源部190を駆動するためのPWM信号を出力する。
図2を参照して、バイアス電源部190を駆動するPWM信号がトランジスタ192のベースに入力されると、トランジスタ192はスイッチング動作を実行する。トランジスタ192のスイッチング動作によって、昇圧トランス194がオンオフする。昇圧トランス194は、このオンオフ動作によって当該昇圧トランス194に入力された電圧を昇圧する。昇圧トランス194によって昇圧された電圧は整流平滑回路196で整流及び平滑化され、DCバイアス電圧として出力される。バイアス電源部190は、バイアス電圧を電源装置100の出力部130に印加し、一点鎖線104で囲まれた二次側全体を負極性のバイアス電圧(帯電制御電圧)でフロートする。これにより、絶縁アンプ180の二次側の基準電位が帯電制御電圧でフロートされる。
電源装置100に入力された制御信号は、保護回路120を介して絶縁アンプ180の一次側に入力される。本実施の形態では、絶縁アンプ180の一次側に入力される制御信号は、例えば0V〜+2Vの振幅とされる。絶縁アンプ180の一次側に入力された制御信号は、絶縁アンプ180の二次側に伝達される。電源装置100の出力部130は、バイアス電源部190のバイアス電圧によって高電圧にフロートした状態にある。そのため、絶縁アンプ180の出力も高電圧にフロートした状態になる。絶縁アンプ180の出力は、バッファ回路140を介して反転増幅回路160に入力され、所望の極性と所望の電圧値とに増幅される。具体的には、絶縁アンプ180の二次側の出力は、後段のバッファ回路140、及び反転増幅回路160を介して例えば0V〜−20Vの振幅からなる駆動信号電圧となり、電子放出素子200の下電極層214(図4参照)へ供給される。
絶縁アンプ180の二次側の基準電位は帯電制御電圧でフロートされているため、電源装置100は、制御信号を増幅した駆動電圧に帯電制御電圧を重畳した電圧を出力する。制御信号を増幅した駆動電圧は、制御信号と同様、矩形波(パルス波)であり、制御信号のデューティー比を変えることによって駆動電圧のデューティー比が変更される。
図4を参照して、電源装置100は、電子放出素子200の下電極層214と上電極層240との間に、上電極層240が正極電位となるように電圧を印加する。電子放出素子200は、下電極層214から供給(放出)される電子を微粒子層230で加速し、上電極層240から外部の空間へ電子を放出する。図1を参照して、電子の放出によって負極性の酸素イオンが生じ、このイオンが感光体ドラム40に供給される。
制御装置50は、矩形波(パルス波)からなる制御信号のデューティー比を変えることにより、電子放出素子200から得られるイオン供給量を制御できる。非接触帯電システム20は、電子放出素子200のイオン供給量を精度よく制御して、感光体ドラム40を帯電できる。
(本実施の形態の効果)
以上の説明から明らかなように、本実施の形態に係る非接触帯電システム20(電源装置100)を利用することにより、以下に述べる効果を奏する。
電源装置100の入力部110には、電子放出素子200を制御するための制御信号が入力される。入力部110に入力された制御信号は、絶縁アンプ180を介して出力部130に伝達される。バイアス電源部190は、バイアス電圧を出力することによって、出力部130をバイアス電圧でフロートする。出力部130の基準電位はバイアス電圧の電位となる。出力部130は、入力部110に入力された制御信号に基づいて電子放出素子200を駆動する駆動電圧を生成して出力する。出力部130はバイアス電圧でフロートされているため、バイアス電圧に駆動電圧が重畳される。すなわち、出力部130はバイアス電圧に駆動電圧が重畳された電圧を出力する。
電源装置100は、制御信号が入力される入力部110と、その制御信号を増幅し、素子の駆動電圧として、帯電制御電圧となるDC高電圧に重畳する出力部130との間が絶縁アンプ180で繋げられている。絶縁アンプ180は、交流のみならず直流も伝達するため、制御信号の波形を変えることによって駆動電圧の波形を交流波形から直流波形にまで変えることができる。さらに、駆動電圧の波形を、矩形波、及び交流駆動波形のデューティー比制御を行なった波形とすることもできる。
一般に、電子放出素子の出力調整は、駆動電圧の大きさ(駆動電圧値)を変更したり、交流駆動波形のデューティー比を変更したりすることによって行なうことができる。しかし、電子放出素子からのイオン供給量は、駆動電圧の電位差とリニアな関係にないため、ある電位領域では電位差に対してイオン供給量が指数関数的に増加、又は減少してしまう。駆動電圧の大きさを変更することによる電子放出素子の出力調整(駆動電圧による制御)は、イオン量の供給過多、又はイオン量の供給不足が生じやすい。このため、駆動電圧値の変更による電子放出素子の出力調整は、過度に厳密な電圧操作が要求される。電子放出素子を帯電装置に利用する場合、イオン量の供給過多は帯電に寄与しない無駄なイオンを生成する。逆にイオン量の供給不足は帯電電位不足を生じ易くする。さらに、駆動電圧の上昇は、電子放出素子の特に表面電極の破壊を生じ易くする。
一方、電子放出素子を帯電装置として利用する場合、電子放出によって生じた負極性の酸素イオンの移動速度が駆動周波数に比べて遅いため、交流駆動波形のデューティー比を変える出力制御方法が、生じたイオンの利用効率性、出力の制御性及び素子寿命の長期化に取って望ましい。さらに、電子放出素子からのイオン供給量と駆動時間とは極めて良好な比例関係にあるため、駆動電圧値を固定し、その印加時間を制御することで、容易にイオン供給量の制御が可能となる。このためには、素子の駆動時間と休止時間とを制御したパルス波形を供給可能な駆動電源が必要となる。
それ故、電子放出素子を帯電装置として実際に利用するには、交流駆動波形のデューティー比が1:1以外の条件にも追従し、直流波形までも取り扱い可能な駆動電源部と、素子及び駆動電源部を、被帯電体の帯電電位を制御するための直流バイアス電圧でフロートさせるバイアス電源部からなる電源装置が必要となる。
こうした電源装置は、本実施の形態に係る電源装置100によって容易に実現できる。電源装置100は、交流駆動波形のデューティー比制御を行なった波形の駆動電圧を出力可能であるため、デューティー比を変えることによって電子放出素子200の駆動時間と休止時間とを容易に制御できる。このため、駆動電圧の波形を、交流駆動波形のデューティー比制御を行なった波形とすることによって、電子放出素子200の制御性を向上できる。この場合、駆動電圧の大きさを変更することなく、電子放出素子200の出力調整ができるので、駆動電圧値(波高値)を固定することにより電子放出素子200への負荷を軽減できる。その結果、素子寿命の長期化を図ることができる。さらに、本電源装置100は、イオン供給量が適切な値となるように電子放出素子200を制御できる。これにより、生成したイオンの効率的な利用が可能になる。
さらに、電源装置100は、電子放出素子200から得られるイオン供給量を制御するために、素子の駆動電圧波形として交流電圧波形から直流電圧波形まで使用することができる。電源装置100はさらに、交流電圧波形として、デューティー比の変更を伴った矩形波を使用することにより、イオン供給量を精度よく制御できる。
−実施例−
本実施の形態と同様の構成からなる電子放出素子及び電源装置を用いて、パルス波形のデューティー制御を行なったときのイオン供給量の計測を行なった。パルス波形は波高値−17.0Vの矩形波とし、パルス中の素子駆動時間(ONデューティー)を30%、50%、75%、100%(DC)とした時のイオン供給量の計測結果をテーブル1及び図7に示す。イオンの回収電極と電子放出素子との間は1mmとし、800Vの電位差を持つように設置した。
テーブル1及び図7を参照して、ONデューティーが小さい領域では、電子放出素子の出力が若干小さくなる傾向にあるが、デューティー比とイオン回収量とはほぼ比例関係にあることが理解できる。感光体ドラムの帯電電位を制御する際、ONデューティー50%のパルス波(矩形波)を基本に駆動することで、出力を1/2〜2倍までの範囲でリニアに出力調整可能となる。
これより、本実施の形態に係る電源装置を用いることによって、電子放出素子の駆動時間と休止時間とを制御したデューティー比の変更を伴った波形を利用した供給イオン量の制御が可能となるため、生成したイオンの効率的な利用が可能となることが確認された。加えて、電子放出素子への負荷軽減の結果、素子寿命の長期化といった効果が得られることも確認された。
(変形例)
上記実施の形態では、画像形成装置内に設けられる非接触帯電システムの電源装置に本発明を適用した例を示したが、本発明はそのような実施の形態には限定されない。電子放出素子を駆動する電源装置であれば、非接触帯電システムの電源装置以外の電源装置に本発明を適用してもよい。
上記実施の形態において、電源装置の絶縁アンプは増幅機能を有する構成、及び増幅機能を有さない構成のいずれであってもよい。
上記実施の形態では、電子放出素子の電極基板にガラス基板からなる絶縁体基板を用いた例を示したが、本発明はそのような実施の形態には限定されない。電極基板には、ガラス基板以外に例えばプラスティック基板等を用いることもできる。
上記実施の形態では、電子放出素子の電極基板に、絶縁体基板上に電極層を形成した基板を用いた例を示したが、本発明はそのような実施の形態には限定されない。電極基板には、例えば導電性の基板を用いることもできる。
電子放出素子において、下部電極となる基板(電極基板)は、当該電子放出素子の支持体の役割を担う。そのため、ある程度の強度を有し、直に接する物質との接着性が良好で、その表面に適度な導電性を有するものであれば特に制限なく用いることができる。電子放出素子の基板としては、例えばSUS、Ti、Cu等の金属基板、Si、Ge、及びGaAs等の半導体基板、ガラス基板のような絶縁体基板、プラスティック基板等が挙げられる。上記実施の形態で示したように、例えばガラス基板のような絶縁体基板を用いるのであれば、電子加速層(微粒子層)と基板との界面に、金属等の導電性物質を電極として付着さることによって、下電極層を有する電極基板として用いることができる。
上記実施の形態では、電極基板の下電極層を銅から構成した例を示したが、本発明はそのような実施の形態には限定されない。下電極層は、銅以外の導電性物質で構成されていてもよい。なお、電極面として利用する導電性物質としては、抵抗の小さな金属を厚膜で構成するのが好ましく、特に、数100nm以上の膜厚を有した銅を使用するのが好ましい。この場合、素子駆動時の銅原子の移動を抑制するために、クロム、モリブデン等の高融点金属の薄膜を、銅層の上に積層させることが好ましい。具体的には、チタン、クロム、モリブデン等からなる50nmの薄膜、及び膜厚300nmの銅層から成る下電極層、そして基板層という順で積層形成されることが好ましい。
上記実施の形態では、電子放出素子の微粒子層の絶縁性微粒子にシリカ微粒子を用いた例を示したが、本発明はそのような実施の形態には限定されない。絶縁性微粒子の材料は、絶縁性を有し、かつ、電子トラップとして機能する適当な表面準位を有する材料であればよい。例えば、SiO2のほか、酸化アルミニウム(以下「Al2O3」と呼ぶ。)及び二酸化チタン(以下「TiO2」と呼ぶ。)からなる材料を主成分とするものを用いることもできる。SiO2、Al2O3、及びTiO2のような絶縁性が高い材料であれば、微粒子層の抵抗値を所望の値に調整することが容易となる。また、これらの酸化物を用いることで、酸化が生じ難い電子放出素子を容易に実現できる。
絶縁性微粒子による電子トラップはエネルギー障壁となり、電界電子放出の種になると考えられる。よって、絶縁性微粒子の材料としては、非晶質の構造を有しているものが好ましい。そのため、絶縁性微粒子として、例えばキャボット社のヒュームドシリカC413等の非晶質の絶縁性微粒子を利用するのが好ましい。
上記実施の形態では、微粒子層の導電性微粒子に銀からなる導電性微粒子を用いた例を示したが、本発明はそのような実施の形態に限定されない。導電性微粒子は銀以外の導電性物質から構成されていてもよい。導電性微粒子は電子放出素子が大気中で酸化して劣化するのを防ぐために、貴金属を用いて形成されるのが好ましい。例えば、導電性微粒子は、銀のほか、金、白金、パラジウム、又はニッケルを主成分とする金属材料から形成するのが好ましい。導電性微粒子は、公知の微粒子製造技術であるスパッタ法、又は噴霧加熱法を用いて形成可能である。さらに導電性微粒子として、例えば応用ナノ研究所が製造販売する銀ナノ粒子等の市販の金属微粒子粉体を利用可能である。
本電源装置によって駆動される電子放出素子は、上記実施の形態で示した構成以外の構成であってもよい。
(1)本発明の第1の局面に係る電源装置100は、電子を放出する電子放出素子200に対して電圧を出力する電源装置である。この電源装置100は、電子放出素子200を制御するための制御信号が入力される入力部110と、入力部110に入力された制御信号に基づいて電子放出素子200を駆動する駆動電圧を生成して出力する出力部130と、入力部110と出力部130とを電気的に絶縁する一方、入力部110に入力された制御信号を出力部130に伝達する絶縁アンプ180と、出力部130にバイアス電圧を印加して、当該出力部130をバイアス電圧でフロートするバイアス電源部190とを含む。
入力部110には、電子放出素子200を制御するための制御信号が入力される。入力部110に入力された制御信号は、絶縁アンプ180を介して出力部130に伝達される。バイアス電源部190は、バイアス電圧を出力することによって、出力部130をバイアス電圧でフロートする。出力部130の基準電位はバイアス電圧の電位となる。出力部130は、入力部110に入力された制御信号に基づいて電子放出素子200を駆動する駆動電圧を生成して出力する。出力部130はバイアス電圧でフロートされているため、バイアス電圧に駆動電圧が重畳される。すなわち、出力部130はバイアス電圧に駆動電圧が重畳された電圧を出力する。本電源装置100では入力部110と出力部130との間は絶縁アンプ180で繋げられている。絶縁アンプ180は、交流のみならず直流も伝達するため、制御信号の波形を変えることによって駆動電圧の波形を交流波形から直流波形にまで変えることができる。さらに、駆動電圧の波形を、矩形波、及び交流駆動波形のデューティー比制御を行なった波形とすることもできる。
電子放出素子200からのイオン供給量は、駆動電圧の電位差とリニアな関係にない。そのため、ある電位領域では電位差に対してイオン供給量が指数関数的に増加、又は減少してしまう。駆動電圧の大きさを変更することによる電子放出素子200の出力調整(駆動電圧による制御)は、イオン量の供給過多、又はイオン量の供給不足が生じやすい。このため、過度に厳密な電圧操作が要求される。電子放出素子200を帯電装置に利用する場合、イオン量の供給過多は帯電に寄与しない無駄なイオンを生成する。イオン量の供給不足は帯電電位不足を生じ易くする。
一方、電子放出素子200からのイオン供給量と駆動時間とは極めて良好な比例関係にある。このため、駆動電圧値を固定してその印加時間を制御することで、容易にイオン供給量の制御が可能となる。このためには、電源装置100は、素子の駆動時間と休止時間とを制御したパルス波形を供給可能に構成されているのが好ましい。本電源装置100は、交流駆動波形のデューティー比制御を行なった波形の駆動電圧を出力可能であるため、デューティー比を変えることによって電子放出素子200の駆動時間と休止時間とを容易に制御できる。このため、駆動電圧の波形を、交流駆動波形のデューティー比制御を行なった波形とすることによって、電子放出素子200の制御性を向上できる。この場合、駆動電圧の大きさを変更することなく、電子放出素子200の出力調整ができるので、駆動電圧値を固定することにより電子放出素子200への負荷を軽減できる。その結果、素子寿命の長期化を図ることができる。さらに、本電源装置100は、イオン供給量が適切な値となるように電子放出素子200を制御できる。これにより、生成したイオンの効率的な利用が可能になる。
(2)好ましくは、出力部130は、絶縁アンプ180を介して伝達された制御信号を増幅するための信号増幅手段を含み、信号増幅手段によって増幅された制御信号を駆動電圧として出力する。制御信号として、例えば矩形波(パルス波)の信号を入力することにより、出力部130から矩形波の駆動電圧を出力できる。矩形波のデューティー比を制御することによって、容易に電子放出素子200の制御性を向上できる。
(3)本発明の第2の局面に係る電子放出装置30は、電子を放出する電子放出素子200と、電子放出素子200に対して電圧を出力する、上記第1の局面に係る電源装置100と、電源装置100に対して制御信号を出力する制御装置50とを含む。
制御装置50は、電源装置100に対して制御信号を出力する。電源装置100は、制御信号に応じた波形の駆動電圧を生成する。電源装置100はさらに、駆動電圧にバイアス電圧が重畳された電圧を電子放出素子200に印加する。駆動電圧の波形は、制御信号に応じて、交流から直流まで変えることができる。本電子放出装置30は、このような電源装置100を含むことによって、電子放出素子200を容易に制御できる。さらに本電子放出装置30は、素子寿命の長期化を図ることもできる。
(4)好ましくは、制御装置50は、電源装置100に対してパルス幅変調信号からなる制御信号を出力する。制御信号をパルス幅変調信号とすることにより、容易に電子放出素子200の制御性を向上できる。これにより、電子放出素子200からのイオン供給量を容易に制御できる。
(5)より好ましくは、電子放出素子200は、第1の電極と、絶縁性微粒子を含み、第1の電極上に形成される微粒子層と、微粒子層上に形成される第2の電極とを含み、第1の電極と第2の電極との間に電圧が印加されることにより、第1の電極から放出される電子を微粒子層で加速させて第2の電極から放出する。こうした電子放出素子200を用いることにより、電子放出素子200からのイオン供給量をより容易に制御できる。
今回開示された実施の形態は単に例示であって、本発明が上記した実施の形態のみに限定されるわけではない。本発明の範囲は、発明の詳細な説明の記載を参酌した上で、特許請求の範囲の各請求項によって示され、そこに記載された文言と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含む。