JP5894769B2 - イオンフロー型静電描画装置 - Google Patents

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Description

本発明は、イオンフロー型静電描画装置に関する。
放電現象を伴わずに大気中での電子放出を可能とする素子構造が、たとえば特許文献1に開示されている。この電子放出素子は、電極間に、導電体からなり、抗酸化作用が強い導電性微粒子と、その導電性微粒子の大きさよりも大きい絶縁体物質とが含まれる電子加速層を有することで、特に大気中での長時間動作を可能としている。
電子放出素子から放出された電子は大気中でイオン流を生じることから、電子放出素子は、静電潜像を利用して画像を得る記録装置で利用される。このような利用形態では、一般的に電子写真プロセスの帯電工程で用いられるコロナチャージャーと比べて、人体に有害なオゾン発生が無いこと、大気中での活性物質の生成量が極めて微量なので感光体および現像剤の劣化を抑制できること等のメリットがある。また、電子放出素子の電子放出部を多数の微細なドット形状とし、各ドットには独立した電極を配置して多チャンネル駆動することも可能であり、これにより、感光体上に静電潜像を直接描画するイオンフロー型静電描画装置とすることができる。
このような電子放出素子は、薄膜の積層体で構成されるので、ガラスやアルミニウムからなる基板材料に比べると、著しく機械的強度が小さく壊れやすい。したがって、薄膜の積層体を指で触れたり、硬い物体と衝突させたりすると、容易に機械的な損傷が生じてしまう。
そこで、電子放出素子を取り扱うには、電子放出素子を保護する何らかの構造を設ける必要がある。特許文献2には、外部からの接触および取り扱い上の不備による半導体素子等の機械的損傷を防止する方法が開示されている。特許文献2の方法では、保護するべき半導体素子を、絶縁支持基板表面に形成した微細な凹部内に、樹脂等の絶縁物でモールドして埋め込むことで、外部からの接触および取り扱い上の不備による半導体素子等の機械的損傷を防止している。
特開2009−146891号公報 特開2008−192413号公報
特許文献2の方法のように、基板に形成される微細な凹部の底部に電子放出素子を配置すれば、電子放出素子を保護可能になる。しかしながら、電子放出素子をイオンフロー型静電描画装置に用いる場合、基板の凹部に電子放出素子を配置するという単純な構成では、次のような問題を生じる。
凹部の作る段差は、電子放出素子と被帯電体(感光体)との距離を、凹部が無い場合に比べて長くする。これにより、イオン流の飛翔する距離が長くなり、イオン同士の反発力によるイオンの拡散作用が大きく現れ、その結果、感光体上におけるイオンの着弾面積が、電子放出素子における電子の放出面積に比べて大きくなってしまう。また、絶縁性の基板の凹部内に電子放出素子が配置されることで、凹部表面が帯電し、帯電電荷によってイオン流の軌道が変化して、イオンの着弾位置がずれてしまう。このようにイオンの着弾面積が大きくなったり、着弾位置がずれたりすると、静電潜像はぼやけてしまい、解像度の高い潜像を描画できなくなる。
本発明は、上述した課題を解決するためのものであり、接触による電子放出素子の機械的損傷を防止するとともに、イオンの拡散を抑制して、高解像度の静電潜像を描画可能とするイオンフロー型静電描画装置を提供することを目的とする。
本発明は、静電潜像担持体に向かって開口する凹部が形成される基板と、
前記凹部の底部の表面上に設置される電子放出素子であって、並んで配置される複数の第1電極と、前記第1電極に積層された状態で対向して設けられる第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に設けられ、前記第1電極に1対1で対応する開口部が形成される絶縁層と、絶縁性微粒子および導電性微粒子を含み、前記開口部に充填される微粒子層と、を備え、前記第1電極と前記第2電極との間に電圧が印加されたときに、前記底部から前記静電潜像担持体へ向かう方向に電子を放出する電子放出素子と、
前記凹部の2つの側壁部にそれぞれ設けられるフローティング電極であって、前記底部側から前記静電潜像担持体側に向かうにつれて互いに遠ざかるように、前記底部の表面に対してそれぞれ傾斜して設けられるフローティング電極と、を備えることを特徴とするイオンフロー型静電描画装置である。
また本発明は、前記フローティング電極の、前記底部の表面に対する傾斜角度は、それぞれ、15°以上75°以下の範囲内で選択されることを特徴とする。
また本発明は、前記第2電極に積層され、前記第2電極よりも幅が狭く形成される第3電極を備えることを特徴とする。
本発明によれば、電子放出素子が、基板に形成された凹部内に設けられるので、接触によって電子放出素子に機械的損傷が生じるのを防ぐことができる。さらに、電子放出素子が放出した電子によって生じたイオンを静電潜像担持体に向けて飛翔させるための電界が、フローティング電極によって歪められるので、イオンの拡散が抑制される。したがって、接触による電子放出素子の機械的損傷を防止するとともに、イオンの拡散を抑制して、高解像度の静電潜像を描画することが可能になる。
また本発明によれば、フローティング電極が、凹部の底部の表面に対して、15°以上75°以下の傾斜角度で設置されるので、電界を歪め、イオンの拡散を抑制する効果を確実に発揮することができる。
また本発明によれば、第2電極に、第2電極よりも幅の狭い第3電極が積層されるので、第3電極に電圧を印加することで、第2電極の面方向において電位分布に偏りのない一様な電圧印加が可能となる。これによって、電子放出素子の各電子放出点で一様に電子を放出させることができ、その結果、静電潜像担持体に、イオンを一様に照射することが可能になる。
イオンフロー型静電描画装置1を備えた静電潜像記録機構10の構成を示す断面図である。 イオンフロー型静電描画装置1の電子放出素子11を拡大して示す断面図である。 イオンフロー型静電描画装置1の斜視図である。 フローティング電極24の作用を説明するための図である。 図3の一部分9を拡大して示す図である。
図1は、本発明の一実施形態であるイオンフロー型静電描画装置1を備えた静電潜像記録機構10の構成を示す断面図である。図2は、イオンフロー型静電描画装置1の電子放出素子11を拡大して示す断面図である。図3は、イオンフロー型静電描画装置1の斜視図である。
静電潜像記録機構10は、イオンフロー型静電描画装置1と、静電潜像担持体である感光体25とを備える。イオンフロー型静電描画装置1は、ガラス基板2に形成された溝(凹部2a)の底部2aaの表面上に、電子放出素子11が配置されて構成される。電子放出素子11は、ガラス基板2側から順に、電子放出点と1対1に対応する複数の第1電極(下部電極3)、電子放出点となる開口部(貫通孔8)を有する絶縁層4、貫通孔8に充填されるとともに絶縁層4上に形成される微粒子層5、複数の下部電極3に対する共通の電極となる第2電極(上部電極6)、および第3電極(バス配線7)が積層された積層構造である。
電子放出素子11は、最上層となるバス配線7が、凹部2aの高さを超えないように形成される。このような構造にすることで、イオンフロー型静電描画装置1に何かが接触したとしても、凹部2aの、底部2aaを挟む2つの側壁部2abがバンパーとして機能し、底部2aaの表面に配置された電子放出素子11に機械的損傷が生じるのを防ぐことができる。
ガラス基板2に形成される凹部2aは、その底部2aaが、たとえば、長さ215mm、幅500μmである。電子放出点となる絶縁層4の貫通孔8は、このガラス基板2の凹部2aの幅方向中央において、凹部2aの長手方向に沿って同じ高さで形成される。また、このガラス基板2の凹部2aの底部2aaからは、下部電極3が、凹部2aの外へ引き出され、ガラス基板2表面に実装された駆動ドライバに接続される。図1では、駆動ドライバの代わりにパルス電源21を図示し、静電潜像記録機構10の動作について説明する。バス配線7にはDC電源22が接続され、上部電極6に電圧を印加する。
ガラス基板2の凹部2aの2つの側壁部2abは、その表面が、底部2aaに近づくほど開口度合いが小さくなるように傾斜した傾斜面となっている。この傾斜面には、凹部2aの長手方向に沿って電子放出点が存在する範囲に、2つのフローティング電極24が、絶縁層4を介してそれぞれ設置される。したがって、2つのフローティング電極24は、凹部2aの底部2aa側から上部電極6側に向かうにつれて互いに遠ざかるように、凹部2aの底部2aaの表面に対して、それぞれ傾斜している。
このようなイオンフロー型静電描画装置1を動作させるには、下部電極3と上部電極6との間に、上部電極6が正極となるように電圧を印加すればよい。たとえば、下部電極3へ+15V、上部電極6へ+15Vの電圧を印加した後、下部電極3の電圧を0Vに落として電位差を形成すると、電子が下部電極3から上部電極6へ走行可能となる。このとき、絶縁層4の各貫通孔8は各電子放出点となり、放出された電子は上部電極6側へ向かうことになる。
下部電極3に印加する電圧波形は、たとえば、10kHz〜100kHzであり、電子が上部電極6から放出されるON時間の割合を指すパルスデューティーを、50%以下とする矩形波である。パルス状の矩形波を利用するのは、電子放出素子11からの電子放出に伴って電子放出素子11と感光体25との間での異常放電が生じるのを防止するためである。このような理由から、矩形波は高周波であるほど望ましいが、電子放出素子11のインピーダンスの都合上、高周波になるほど、波形に変形(なまり)が生じるので、正確な電圧の印加が困難となる。上記の100kHzの周波数上限は、実験で確認された、実用的な制御範囲である。10kHzの周波数下限は、以下のようにして決定される。
異常放電の抑制効果は10kHz以下の周波数でも現れるが、作像プロセス上、静電潜像を描く時間には制限があり、あまり低周波の矩形波を利用する事はできない。すなわち、電子放出素子11でドット状の静電潜像を描く場合、静電潜像記録機構10が潜像を描ける時間は、静電潜像を利用して画像を得る記録装置の作像プロセスに要する時間(一般的に感光体25は可動式であり、その可動速度に合わせて潜像を描かねばならない)と、潜像の解像度とに依存してしまう。たとえば、潜像を描くプロセススピードを145mm/秒とし、潜像の解像度を600dpiとした場合、1ドットの潜像を描くのに許容される時間は290μ秒となり、周波数で表すと3.4kHzとなる。この周波数を画素周波数と呼ぶことにする。イオンフロー型静電描画装置1の駆動周波数が画素周波数よりも小さい場合、潜像を連続して描いた際に、イオンフロー型静電描画装置1は直流電圧で駆動するのと同じ電圧印加条件となってしまう。これでは、異常放電を抑制するための矩形波の意味が無くなってしまうので、イオンフロー型静電描画装置1の駆動周波数は画素周波数よりも十分高い値としなければならない。このように、駆動周波数の下限値は、プロセススピードと解像度とから制限される値であり、上記条件を想定した場合の十分条件として、10kHzに定めている。
パルス電源21は、波高値を16V0−pとする定電圧制御で動作する。このとき、DC電源22は、パルス電源21の波高値と同一の直流電圧を印加する。イオンフロー型静電描画装置1の電圧電流特性から、環境変動、経時劣化等で、パルス電源21の波高値を上下させる必要もあるが、DC電源22の出力値は、常にパルス電源21の波高値と連動させる。
このような条件でイオンフロー型静電描画装置1を駆動することで、下部電極3から上部電極6に向かう電子が放出され、放出された電子によって、空気中でイオンが形成される。このイオンが着弾可能なように、感光体25は、電子放出素子11の上部電極6に対向する位置に設置される。感光体25の表面に、イオンフロー型静電描画装置1によって生成されたイオンが着弾し、その結果、静電潜像が形成されることになる。
感光体25は、イオンを回収するための静電界(回収電界)を形成するために、裏面に金属電極25aを備えており、この金属電極25aにはDC電源23が接続される。DC電源23は、金属電極25aに、DC電源22の出力値よりも大きな正電圧、たとえば、+600Vの電圧を発生させる。このようにDC電源23によって感光体25に電圧が印加されることで、感光体25とイオンフロー型静電描画装置1との間には、負極性イオンを回収するための、感光体25から電子放出素子11に向かう静電界(回収電界)が形成される。
一般的な放電を用いたイオン生成機構では、大気の電離領域=強電界領域であるので、生成されたイオンは、生成直後から大きな初速度を有する。しかしながら、電子放出素子11によって放出された電子は大気中の酸素分子に衝突を繰り返し、これによって酸素イオンが生成されるので、生成された時点での酸素イオンの初速度は、ほぼゼロと考えられる。そこで、上記のように回収電界によって、イオンを感光体25に向けて飛翔させている。
上記のように電子によって生成されたイオンは、同極性(負極性)であるので、互いに反発し、拡散する性質を有している。生成された時点でのイオンの初速度はほぼゼロと考えられるので、電子放出素子11によるイオンの走行時間は、一般的な放電を用いた場合に比べて長くなる。また、電子放出素子11は、凹部2a内に設けられるので、凹部2aの段差の分、走行距離が長くなる。よって、電子放出素子11から感光体25へ向かうイオン流は拡散し易くなっている。イオン流が拡散すると、感光体25上におけるイオンの着弾面積が、電子放出素子11における電子の放出面積に比べて大きくなってしまい、感光体25上の静電潜像がぼやけた像になってしまう。そこで、本発明では、フローティング電極24を設けて、イオンの拡散を抑制している。より詳細には、凹部2a内に配置される電子放出素子11を挟むように、凹部2aの底部2aaの表面に対して傾斜したフローティング電極24を設けることにより、回収電界を歪ませ、これによって、イオンの拡散を抑制し、解像度の高い潜像形成を可能としている。回収電界を歪ませる要因は、以下に説明するように、電界が導体表面から垂直方向にしか生じない物理現象にある。
図4を用いて、フローティング電極24の作用を説明する。図4(a)は、2つのフローティング電極24が、凹部2aの底部2aaの表面に対して、それぞれ45°の傾きで設置された場合の、回収電界に対応する電気力線を示している。フローティング電極24が設けられない場合、電気力線は、感光体25から電子放出素子11へ向かって、紙面上から下へ真っ直ぐに延びるが、フローティング電極24が設けられることによって、電気力線は、凹部2aの幅方向において互いに遠ざかるように曲げられる。これは、導電体であるフローティング電極24が、感光体25から電子放出素子11へ向かう静電界中に設置されることで、フローティング電極24の、感光体25側の表面に、負極性の誘導電荷が生じるからである。誘導電荷が生じる要因は、静電界中に導電体が置かれると、導電体内部の電界を打ち消すように、導電体内の自由電子が移動するからである。図4(a)のように電気力線が曲がった状態、すなわち回収電界が歪んだ状態で負極性のイオンが生成されると、負極性のイオンは電気力線に沿って反対向きに進むので、凹部2aの幅方向において互いに近づくように進むことになり、その結果、イオンの拡散が抑制されることになる。
これに対して、図4(b)は、フローティング電極24を、仮に、凹部2aの底部2aaの表面に対して0°の傾きで、すなわち、底部2aaと平行に設置した場合の、回収電界に対応する電気力線を示している。このように設置された場合、電気力線の向きに変化は全く生じないので、イオンの拡散を抑制する効果は発揮されない。また、図4(c)は、フローティング電極24を、仮に、凹部2aの底部2aaの表面に対して90°の傾きで、すなわち、底部2aaと垂直に設置した場合の、回収電界に対応する電気力線を示している。このように設置された場合、フローティング電極24の上端に負極性の誘導電荷が生じ、フローティング電極24の下端が正極性となる。その結果、電子放出素子11によって生成された負極性のイオンは、フローティング電極24の下端に引き寄せられてしまうので、イオンはより拡散してしまう。
フローティング電極24は、それぞれ、異なる向きで、凹部2aの底部2aaの表面に対して、45°の傾きで設置されることが好ましい。以下の表1は、実験で確認されたフローティング電極24の設置角度と、設置角度に対応する、イオンの拡散抑制効果とを示している。評価対象となる潜像画像は、600dpiの孤立ドットを1by1(40μmのドットを40μmの間隔で作製した像)とした。表1で、◎は、600dpiの孤立ドットが明瞭に作製された事を示し、○は、孤立ドットの像拡散が、20%以内に収まっている事を示し、△は、孤立ドットの像拡散が、50%以内に収まっている事を示している。また×は、600dpiの孤立ドットを認識するのが困難な程度に像のぼやけを生じていることを示す。
Figure 0005894769
表1に示すように、フローティング電極24の設置角度は、それぞれ、15°以上75°以下の範囲内で設定可能である。電子放出点となる絶縁層4の貫通孔8は、凹部2aの幅方向中央において、凹部2aの長手方向に沿って同じ高さで形成されるので、フローティング電極24の設置角度は、ともに45°にすることが好ましい。表1に示すように、設置角度をともに45°にすると、イオンの拡散抑制効果が最もよく現れる。
次に、イオンフロー型静電描画装置1を構成する各部材の詳細について説明する。ガラス基板2に形成される微細な凹部2aは、底部2aaから遠ざかるにつれて開口度合いが大きくなるように、底部2aaの幅をたとえば300μmとし、開口幅をたとえば500μmとする。また、凹部2aの高さは、たとえば100μmである。凹部2aは、一般的なフォトリソグラフィーを用いたウェットエッチング法、またはダイサーを用いたダイシング加工で形成可能である。
図5に、図3の一部分9を拡大して示す。図3および図5に示すように、複数の下部電極3は、400ラインをひとまとまりとして、ドット状に並んで形成される各電子放出点に臨む凹部2a内の位置から凹部2aの外側まで延びて形成され、ガラス基板2における凹部2aの左右に実装されたIC(Integrated Circuit)チップである各駆動ドライバ21Aに接続される。図1では、説明の都合上、駆動ドライバ21Aの代わりにパルス電源21を示しているが、電子放出素子11の実際の構成は、ガラス基板2上に各駆動ドライバ21Aを実装した図3の構成となる。
後述するように、電子放出素子11は、微粒子層5に電流を生じさせて電子を放出するので、下部電極3は抵抗の小さな金属を厚膜で構成するのが好ましく、特に、数100nm以上の膜厚を有した銅を使用するのが好ましい。また、電子放出素子11駆動時の銅原子の移動を抑制するために、クロムやモリブデン等の高融点金属の薄膜を積層させることが好ましい。より具体的には、チタン、クロム、モリブデン薄膜で、数100nm以上の膜厚の銅を挟み込んで形成される積層膜がよい。たとえば、ガラス基板2表面にチタンを200nm成膜し、その上に銅を1000nm成膜し、その上に再びチタンを50nm成膜した金属薄膜が有用である。また、ガラス基板2表面にクロムを150nm成膜し、その上に銅を300nm成膜し、その上に再びクロムを50nm成膜した金属薄膜も有用である。
下部電極3上に形成される絶縁層4は、電子放出点となる貫通孔8を有する。この絶縁層4の貫通孔8の下方には、上述したように、下部電極3がそれぞれ形成されている。絶縁層4は、凹部2a内の位置から凹部2aの外側まで延びて形成される。
電子放出点となる貫通孔8の大きさは、静電潜像の解像度を決定するパラメータである。照射後のイオン拡散を考慮すると、600dpiの解像度を得るためには、その開口直径は30μmとするのがよい。
絶縁層4は、電気的絶縁性能、耐熱性、表面硬度、そして任意のパターン形成処理の容易さから、アクリル樹脂から形成するのが好ましい。アクリル樹脂は、たとえば感光性アクリル樹脂である。感光性アクリル樹脂のベースポリマーは、メタクリル酸とグリシジルメタクリレートとのポリマーであり、感光剤としてナフトキシジアジド系ポジ型感光剤を含む。アクリル樹脂から形成される絶縁層4の膜厚は、1μm程度である。絶縁層4の膜厚は、微粒子層5の形成のし易さを考慮して、微粒子層5の膜厚の2倍程度に設定される。たとえば、アクリル樹脂から形成された絶縁層4の膜厚が1μmよりも大きい場合、スピンコート法によって膜厚500μm程度の微粒子層5を形成しようとするときに支障が生じる。なお、アクリル樹脂から形成された絶縁層4の膜厚が1μmよりも小さい場合、絶縁層4の絶縁性が低下するので、電子放出素子11の電気的耐圧に問題が生じる。
微粒子層5は、絶縁層4の貫通孔8に充填されるとともに、凹部2aの底部2aaの上において、絶縁層4に積層される。微粒子層5は、絶縁性微粒子および導電性微粒子を含んでおり、これらの微粒子はともにナノサイズの微粒子である。絶縁性微粒子は、たとえば、二酸化ケイ素(略称「シリカ」、以下「SiO」と称する)から形成されるシリカ微粒子である。ただし、これに限らず、絶縁性微粒子の材料は、絶縁性を有し、かつ、電子トラップとして機能する適当な表面準位を有する材料であればよく、SiOのほか、酸化アルミニウム(以下「Al」と称する)および二酸化チタン(以下「TiO」と称する)から選ばれる材料を主成分とすればよい。SiO、Al、およびTiOのように絶縁性が高い材料であれば、微粒子層5の抵抗値を所望の値に調整することが容易となる。また、これらの酸化物を用いることで、酸化が生じ難い電子放出素子11を実現することができ、イオンフロー型静電描画装置1の劣化を防止することができる。
絶縁性微粒子による電子トラップはエネルギー障壁となり、電界電子放出の種になると考えられる。よって、絶縁性微粒子の材料としては、非晶質の構造が優位となる。そこで、たとえば、キャボット社のヒュームドシリカC413などの、非晶質の絶縁性微粒子を利用することが好ましい。
絶縁性微粒子の平均粒径は、たとえば50nmである。ここで、平均粒径は、電子顕微鏡で撮影した所定の個数の各粒子における、円相当径の算術平均値である。絶縁性微粒子は、平均粒径が10nm〜1000nmであるものが好ましく、10nm〜200nmであるものがより好ましい。絶縁性微粒子は、粒径の分散状態が平均粒径に対してブロードであってもよく、たとえば平均粒径50nmの微粒子は、20nm〜100nmの範囲にその粒径が広く分布していても問題なく、このような分散状態でも、絶縁性微粒子の粒径が上述した平均粒径の範囲を満たせばよい。
平均粒径が10nmよりも小さいと、粒子間に働く力が強いために粒子が凝集し易く、微粒子層5中での分散が困難になる。平均粒径が1000nmよりも大きいと、分散性は良いものの、薄膜に形成される微粒子層5の空隙が大きくなり、微粒子層5の抵抗の調整が困難になる。そのため、平均粒径は、上述した平均粒径であることが好ましい。
微粒子層5の表面の凹凸は、微粒子層5に形成される電界強度に不均一を生じる。特に、微粒子層5の表面の凹部は、局所的な強電界の部分を形成するので、導電路が集中してしまう傾向がある。この状態が顕著な場合、電子放出点が凹部に集中し、電子放出を面状に維持することができなくなる。そこで、この現象を緩和させるために、絶縁性微粒子の平均粒径は200nmよりも小さいことが好ましい。
導電性微粒子は、たとえば銀から形成される。これに限らず、導電性微粒子は、電子放出素子11が大気中で酸化して劣化するのを防ぐために、貴金属を用いて形成されるのが好ましい。たとえば、導電性微粒子は、銀のほか、金、白金、パラジウム、またはニッケルを主成分とする金属材料から形成されるのが好ましい。導電性微粒子は、公知の微粒子製造技術であるスパッタ法や噴霧加熱法を用いて形成可能であり、応用ナノ研究所が製造販売する銀ナノ粒子等の市販の金属微粒子粉体を利用可能である。
導電性微粒子の平均粒径は、たとえば10nmである。導電性微粒子としては、微粒子層5の導電性を制御するために、絶縁性微粒子の平均粒径よりも小さい平均粒径のものを用いる。したがって、導電性微粒子の平均粒径は、3nm〜20nmであるのが好ましい。導電性微粒子の平均粒径を、絶縁性微粒子の平均粒径よりも小さくすることによって、微粒子層5内で、導電性微粒子による導電パスが形成されず、微粒子層5内での絶縁破壊が起こり難くなる。平均粒径が3nm以下では、凝集力が強すぎるために、粒径を維持することができない。また、平均粒径の上限を20nmとしているのは、イオンフロー型静電描画装置1の製造工程からの制限である。具体的には、導電性微粒子の粒径があまりに大きいと、絶縁性微粒子であるシリカ微粒子との質量差から、成膜時に導電性微粒子が沈降し、導電性微粒子の分散状態を維持することが難しくなる。
微粒子層5は、絶縁性微粒子と導電性微粒子とが、結着材であるシリコーン樹脂で固着されている。シリコーン樹脂は、微粒子層5の機械的強度向上に加えて、撥水機能を有するので、水分子の微粒子層5への付着を抑制する。このため、大気中での微粒子層5の電気抵抗が安定する。したがって、湿度変動を伴う大気中でも、安定して動作するイオンフロー型静電描画装置1を実現することができる。このシリコーン樹脂としては、たとえば、東レ・ダウコーニング・シリコン株式会社製の室温・湿気硬化タイプのSR2411シリコーン樹脂が有用である。
微粒子層5は、その膜厚が300nm〜500nmである。この膜厚は、微粒子層5に電流路を形成するための通電処理、いわゆるフォーミングという前処理に要する電力量によって制限される。
本来絶縁体として振舞う微粒子層5は、気温25℃、相対湿度20〜60%の大気中で、ゆっくりとした昇圧速度で電圧を印加することで、電流が生じるようになる。これがフォーミングと呼ばれる処理であり、この処理が済んだ電子放出素子11は、必要な電圧を印加することで、電子を放出可能となる。微粒子層5の膜厚によってフォーミングに要する電圧値、電流値は異なり、薄い場合には低電圧でよく、厚い場合には高電圧の印加を必要とする。後述するように、電子放出機構は熱電界放出と考えられるので、一定の電子放出を行うようにフォーミング処理を実施するために、微粒子層5が薄い場合には、電界放出による電子放出を強くし、微粒子層5が厚い場合には、熱によるエネルギー障壁の低下(熱によるアシスト)の影響を強くする。したがって、微粒子層5が厚い場合には、熱の果たす役割が増加し、フォーミング時に、電子放出素子11全体で消費する電力量が大きくなる。全体の消費電力量が増加すると、それに伴って、ガラス基板2で消費される電力量も増加するので、ガラス基板2の表面に形成された下部電極3の破壊を招く。すなわち、消費電力量の増加に伴って、下部電極3の構成要素である高融点金属膜(金属の中では電気抵抗が大きい)でジュール熱が発生し、ガラス基板2および下部電極3の電流路に当る部分を集中的に温めてしまう。この結果、ガラス基板2の熱膨張率と下部電極3の熱膨張率との違いが引き金となって、下部電極3に破損が生じてしまう。この現象を防止するためには、微粒子層5が厚い場合には、電圧をあまり上昇させないように制御する必要があるが、そうすると、電子放出に要する電圧を印加できなくなる。微粒子層5の膜厚500nmという上限値は、膜厚別のフォーミング特性評価によって確認された値であり、微粒子層5の膜厚が500nm以下であれば、上記の現象を起こさずに、電子放出に要する電圧を印加することが可能になる。
膜厚300nmという下限値は、現状のスピンコート法による下限値である。微粒子層5は、より薄く形成する工夫を施すことで、さらなる性能の向上が望めると考えられる。
微粒子層5上には、上部電極6が積層される。下部電極3が、電子放出点に合わせてパターン処理された電極であるのに対して、上部電極6は、各下部電極3および各電子放出点に共通な、べた膜である。上部電極6は、凹部2aの長手方向に沿って全電子放出点に対向して設けられており、幅は、たとえば100μm〜280μmである。上部電極6は、電極としての機能と、大気中での酸化抑制の機能とを有する材料であればよく、たとえば、金およびパラジウムからなる金属膜が好ましい。
上部電極6の膜厚は、各電子放出点から外部へ電子を効率よく放出させるための条件として重要なパラメータであり、15nm〜100nmの範囲内であることが好ましい。上部電極6の膜厚が15nmよりも小さいと、導電性を保持できない。恐らく、微粒子層5の表面の凹凸が、15nmを遥かに超えるためと考えられる。また、上部電極6の膜厚が100nmを超える場合には、電子放出量が極端に減少してしまう。電子放出量の減少は、上部電極6が電子を吸収または反射することにより、電子の放出効率を低下させるためであると考えられる。
バス配線7は、上部電極6上に形成され、凹部2aの長手方向において上部電極6全体に亘って設けられる。バス配線7の幅は、上部電極6の幅よりも小さく、たとえば10μm〜50μmである。また、バス配線7の膜厚は、たとえば、500nm〜1000nmである。バス配線7を設ける理由は、電子放出素子11の最上層の電極が上部電極6のみであると、上部電極6に生じる電位降下で、一様な電圧を印加できなくなるからである。すなわち、100nm以下の薄膜で構成する必要のある上部電極6は、導電材料で形成されているとはいえ、抵抗値が高くなってしまうので、電流量の増加に比例して電位降下を生じてしまう。また、電子放出素子11は、各電子放出点が一方向に長く整列した構造であるので、電子放出素子11の長手方向で電位降下が発生し易い。それ故、上部電極6への電気供給点から遠い部分では、十分な電圧が掛らず電子放出量の低下(ばらつき)を発生してしまう。これを防止するために、バス配線7が設けられる。
バス配線7は、電子放出素子11の長手方向に亘って、電子放出点上以外の位置で、上部電極6に重ねて設けられる、金属層である。バス配線7は、電気抵抗が問題にならない程度に十分な膜厚を有するので、上部電極6の面方向において電位分布に偏りのない一様な電圧印加が可能となる。これによって、電子放出素子11の各電子放出点で一様に電子を放出させることができ、その結果、感光体25に、イオンを一様に照射することが可能になる。
フローティング電極24は、凹部2aの2つの側壁部2abそれぞれに、絶縁層4を介して設置される金属製の矩形平板である。フローティング電極24は、凹部2aの長手方向に沿って電子放出点が存在する範囲に設けられ、幅がたとえば100μm〜120μmであり、膜厚がたとえば500nm〜1000nmである。フローティング電極24の材質は、電極の酸化抑制の観点から、金等の貴金属であることが好ましい。フローティング電極24は、一般的なフォトリソグラフィーで加工形成が可能である。
このように構成される電子放出素子11において、下部電極3と上部電極6との間に、上部電極6が正極電位となるように電圧が印加されると、下部電極3から供給される電子が微粒子層5を通過して上部電極6へ移動する際に、該電子に何らかのエネルギーが与えられ、該電子が上部電極6から外部の空間へ放出される。
電子放出に至る物理現象については、現時点で不明な点が多く、推測の域を出ないが、微粒子層5を流れる電流によるジュール熱と、微粒子層5内に形成される局所的な強電界領域とが関わっていると予想される。
一般的に、電子が固体内部から外部へ放出される物理機構として、熱電子放出、光電子放出、電界電子放出、および2次電子放出などが知られている。熱電子放出は、フェルミ準位(ゼロKで電子が充たされている準位)と真空準位とのエネルギー障壁に相当するエネルギ(仕事関数)を、熱により与えることで、電子を真空中へ放出させる現象である。また、電界電子放出(冷電界電子放出)は、金属表面と真空との間に形成される電界強度を1×10V/m程度とし、エネルギー障壁を非常に薄くすることで、室温程度でも、トンネル効果により、電子を真空中へ放出させる現象である。この熱電子放出と電界電子放出とが混交した現象は熱電界放出と呼ばれ、電子放出素子11の電子放出機構として、最も妥当な機構と考えられる。すなわち、ジュール熱による見かけの仕事関数の低下と、強電界によるエネルギー障壁の低下およびトンネル現象とが合わさって、電子放出に至ると考えられる。
以上のようなイオンフロー型静電描画装置1の製造方法について説明する。まず、ガラス基板2を用意し、このガラス基板2の表面に、ダイシング加工でテーパーの付いた溝(凹部2a)を形成する。凹部2aの底部2aaの幅はたとえば300μmであり、開口幅はたとえば500μmであり、凹部2aの高さはたとえば100μmである。この凹部2aの底部2aaの表面において、凹部2aの幅方向中央の位置で、凹部2aの長手方向に沿って、φ34μmの円形電極島を、円の中心間距離を42μmとして、5000点形成する。そして、400点の円形電極島をひとまとまりとして、各円形電極島から凹部2aの側壁部2abの表面を伝って凹部2aの外側まで、電極ラインを凹部2aの左右に引き出す。円形電極島と電極ラインとが、下部電極3となる。電極ラインのパターニング処理は、一般的なフォトリソグラフィー処理とスパッタ処理とを用いて行われる。電極ラインの構成は、ガラス基板2側から順に、クロム層150nm、銅層300nm、クロム層50nmの積層構造である。
次に、φ30μmの貫通孔8を有する絶縁層4を積層する。このとき、円形電極島の中心線と貫通孔8の中心線とが一致するように積層する。絶縁層4は、ガラス基板2表面の凹部2aから外部に引き出された電極ラインの一部までを覆うように、凹部2a内から凹部2aの外側まで形成される。絶縁層4の形成は、たとえば、感光性アクリル樹脂材料を含んだ溶液をガラス基板2上にスピンコート塗布した後、プレベーキング、貫通孔8のパターン露光、アルカリ現像、および純水洗浄によって行われる。
具体的には、まず、硬化後に1μmの膜厚となるように、感光性アクリル樹脂を含んだ溶液をスピンコート塗布法によりガラス基板2上に塗布する。感光性アクリル樹脂のベースポリマーは、メタクリル酸とグリシジルメタクリレートとのポリマーである。このポリマーが塗布されたガラス基板2は、プリベークされ、感光性アクリル樹脂の溶媒、たとえば乳酸エチル等の溶媒の乾燥が行なわれ、再度熱硬化される。アクリル樹脂が塗布されたガラス基板2に対して、貫通孔8を形成するための金属マスクパターンを重ね、露光を行う。金属マスクパターンが重ねられて露光されたアクリル樹脂は、露光後に、アルカリ性溶液で現像処理される。アルカリ性溶液によって、露光された部分のアクリル樹脂がエッチングされて、所望の位置に貫通孔8が得られる。さらに、貫通孔8が形成されたアクリル樹脂は、純水によって、表面に残った現像液が洗浄された後、ホットプレートで加熱され、架橋反応によって硬化する。
絶縁層4の形成後、フローティング電極24を形成する。フローティング電極24は、一般的なフォトリソグラフィーで加工形成する。フローティング電極24は、凹部2aの2つの側壁部2abそれぞれに、絶縁層4を介して設置される。フローティング電極24は、凹部2aの長手方向に沿って貫通孔8が存在する範囲に亘って設けられ、幅がたとえば100μmであり、膜厚がたとえば500nmである。
次に、微粒子層5を形成する。そのために、微粒子層5の材料となる微粒子分散液を作製する。微粒子分散液は、溶媒に、絶縁性微粒子と導電性微粒子とを順に投入し、超音波分散器にかけて分散させて得られる。分散溶媒としては、トルエン、ベンゼン、キシレン、またはn−ヘキサン等を用いることができる。なお、分散法は、超音波分散器に限らず、それ以外の方法で分散させてもよい。さらに、各微粒子の結着材として、シリコーン樹脂を添加する。各材料の詳細および混合量は、たとえば、溶媒としてn−ヘキサンが1.5g、絶縁性微粒子として、キャボット社製の平均粒径50nmのヒュームドシリカC413が0.05g、導電性微粒子として、応用ナノ研究所製のアルコラート絶縁被覆を有した平均粒径10nmの銀ナノ粒子が0.012g、シリコーン樹脂として、東レ・ダウコーニング社製の室温・湿気硬化タイプのSR2411シリコーン樹脂が0.44gである。
このようにして作製した微粒子分散液を、下部電極3、絶縁層4、およびフローティング電極24が形成されたガラス基板2の凹部2a内に、たとえば、スピンコート法やインクジェット法などによって、膜厚が300nm〜400nmとなるように塗布する。微粒子分散液を塗布した後、ガラス基板2ごと塗布物を150℃で1分間加熱し、溶媒を蒸発させ、凹部2a内に、微粒子およびシリコーン樹脂を含んだ層状体を形成する。溶媒の蒸発後、ガラス基板2の凹部2aの底部2aaの上以外に形成された層状体を、ウェスまたはスクレーパーを使用して掻き取る。特に、凹部2aの側壁部2ab上のフローティング電極24表面に付着した層状体の除去には、スクレーパーの使用が有用である。そして、ガラス基板2ごと層状体を150℃で1時間加熱し、さらに真空紫外光を3分間照射して、結着材であるシリコーン樹脂を硬化させ、これによって、微粒子層5を形成する。
微粒子層5の上に、上部電極6を形成する。上部電極6は、下部電極3の円形電極島の全てに対向するように形成する。上部電極6としては、たとえば、スパッタ法を用いて、金および白金の混合膜を50nm成膜する。
最後に、上部電極6の上に、バス配線7を形成する。バス配線7の層厚はたとえば200nmであり、蒸着法を用いて作製する。以上のようにして、イオンフロー型静電描画装置1が製造される。
製造されたイオンフロー型静電描画装置1のバス配線7は、凹部2aの外に設けられた電気接点と接続される。また、下部電極3は、ガラス基板2表面上に実装される駆動ドライバ21Aの出力端子と接続される。駆動ドライバ21Aは、たとえば、シャープ株式会社製の液晶用ソースドライバーである。そして、感光体25を有したφ30mmのアルミドラムを、イオンフロー型静電描画装置1のガラス基板2の凹部2aと感光体25の表面とが対向するように、ガラス基板2の表面に対して0.5mm離間させて設置する。アルミドラムには、イオン回収のために、600Vの電圧を印加する。以上のようにして、イオンフロー型静電描画装置1を備える静電潜像記録機構10が完成する。
このようにして製造された静電潜像記録機構10では、電子放出素子11が、ガラス基板2に形成された凹部2a内に設けられるので、接触によって電子放出素子11に機械的損傷が生じるのを防ぐことができる。さらに、電子放出素子11が放出した電子によって生じたイオンを感光体25に向けて飛翔させるための電界が、フローティング電極によって歪められるので、イオンの拡散が抑制される。したがって、接触による電子放出素子11の機械的損傷を防止するとともに、イオンの拡散を抑制して、高解像度の静電潜像を描画することが可能になる。
また、静電潜像記録機構10では、上部電極6の上に、上部電極6よりも幅の狭いバス配線7が形成されるので、上部電極6の面方向において電位分布に偏りのない一様な電圧印加が可能となる。これによって、電子放出素子11の各電子放出点で一様に電子を放出させることができ、その結果、感光体25に、イオンを一様に照射することが可能になる。
1 イオンフロー型静電描画装置
2 ガラス基板
2a 凹部
3 下部電極
4 絶縁層
5 微粒子層
6 上部電極
7 バス配線
8 貫通孔
10 静電潜像記録機構
11 電子放出素子
24 フローティング電極

Claims (3)

  1. 静電潜像担持体に向かって開口する凹部が形成される基板と、
    前記凹部の底部の表面上に設置される電子放出素子であって、並んで配置される複数の第1電極と、前記第1電極に積層された状態で対向して設けられる第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に設けられ、前記第1電極に1対1で対応する開口部が形成される絶縁層と、絶縁性微粒子および導電性微粒子を含み、前記開口部に充填される微粒子層と、を備え、前記第1電極と前記第2電極との間に電圧が印加されたときに、前記底部から前記静電潜像担持体へ向かう方向に電子を放出する電子放出素子と、
    前記凹部の2つの側壁部にそれぞれ設けられるフローティング電極であって、前記底部側から前記静電潜像担持体側に向かうにつれて互いに遠ざかるように、前記底部の表面に対してそれぞれ傾斜して設けられるフローティング電極と、を備えることを特徴とするイオンフロー型静電描画装置。
  2. 前記フローティング電極の、前記底部の表面に対する傾斜角度は、それぞれ、15°以上75°以下の範囲内で選択されることを特徴とする請求項1に記載のイオンフロー型静電描画装置。
  3. 前記第2電極に積層され、前記第2電極よりも幅が狭く形成される第3電極を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のイオンフロー型静電描画装置。
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