JP2014211130A - エンジンの制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】エンジン再始動時においてその始動性の向上とPMエミッションの悪化の抑制とを両立することができるエンジンの制御装置を提供する。【解決手段】筒内噴射用のインジェクタを有する複数の気筒が設けられたエンジンのECU40は、アイドリングストップ制御でエンジンを自動停止状態から自動再始動させる際に、複数の気筒のうち始動開始後に最も早く圧縮行程噴射が可能になる第1気筒を判定し、第1気筒について、始動開始後の最初の燃料噴射時に圧縮行程噴射を実施しかつ始動開始後の2回目以降の燃料噴射として吸気行程噴射を実施する。また、第1気筒以外の第2気筒については、始動開始後の最初の燃料噴射から吸気行程噴射を実施する。【選択図】 図3

Description

本発明はエンジンの燃料噴射を制御するエンジンの制御装置に関する。
近年、燃費向上技術として、エンジンの自動停止及び自動再始動を実施するアイドリングストップシステムに注目が集まっている。また、アイドリングストップ制御としてエンジンを自動停止させた後に、エンジンの再始動を早期に実施するための技術が各種提案されている。例えば、筒内に燃料を直接噴射する直噴式多気筒エンジンにおいて、エンジンを停止状態から再始動させる場合に、所定の燃焼開始タイミングに至ってから所定期間が経過するまでの間は圧縮行程噴射を実施するようにした技術が知られている(特許文献1参照)。これにより、始動時のトルク立ち上がりを早期化できるため、始動時間の短縮が可能となっている。
特開2007−170205号公報
しかしながら、エンジンの再始動時に圧縮行程噴射を実施する場合、燃焼室内においてピストンに付着する燃料(いわゆるピストンウエット)が大幅に増加し、局所的にリッチな部分が発生する。そのため、PMエミッションが悪化することが懸念される。したがって、エミッション改善の観点からして改善の余地があると考えられる。
本発明は、エンジン再始動時においてその始動性の向上とPMエミッションの悪化の抑制とを両立することができるエンジンの制御装置を提供することを主たる目的とするものである。
請求項1に記載の発明では、筒内噴射用の燃料噴射手段を有する複数の気筒が設けられたエンジンの制御装置において、前記エンジンの自動停止条件が成立した際に前記エンジンを自動停止させ、前記エンジンの再始動条件が成立した際に前記エンジンを自動再始動させるアイドリングストップ制御手段と、前記エンジンを自動停止状態から自動再始動させる際に、前記複数の気筒のうち始動開始後に最も早く圧縮行程噴射が可能になる第1気筒を判定する気筒判定手段と、前記第1気筒について、始動開始後の最初の燃料噴射時に圧縮行程噴射を実施しかつ始動開始後の2回目以降の燃料噴射として吸気行程噴射を実施するとともに、前記第1気筒以外の第2気筒については、始動開始後の最初の燃料噴射から吸気行程噴射を実施する燃料噴射制御手段と、を備えることを特徴とする。
上記発明では、エンジンの自動停止状態からの自動再始動時に、第1気筒(最も早く圧縮行程噴射が可能な気筒)の最初の燃料噴射として圧縮行程噴射が実施されるため、再始動のための初期回転の開始後には、第1気筒において圧縮行程の直後の上死点付近(圧縮TDC付近)で最初の燃焼が行われる。これにより、アイドリングストップ制御の再始動開始後においていち早いエンジン始動が可能となる。
また、圧縮行程噴射を実施するのは第1気筒において始動開始後の最初の燃料噴射時に限られ、第1気筒の2回目以降の燃料噴射としては吸気行程噴射が実施されるとともに、第1気筒以外の第2気筒の燃料噴射としては最初から吸気行程噴射が実施される。そのため、エンジン始動後において燃焼室内のウエットに起因するPMエミッションの悪化を抑制できる。
つまり、圧縮行程噴射を実施する場合には、燃料噴射手段からの噴射燃料がピストンに付着するピストンウエットが生じやすく、そのピストンウエットに起因してPMエミッションの悪化の懸念が生じる。この点、上記のとおり圧縮行程噴射の実施を第1気筒の最初の燃料噴射時のみにすることにより、ピストンウエットを減らし、ひいてはPMエミッションの悪化を抑制できる。したがって、エンジン再始動時においてその始動性の向上とPMエミッションの悪化の抑制とを両立できる。
筒内噴射式エンジンの制御システムの概略を示す構成図。 アイドリングストップ制御処理の手順を示すフローチャート。 燃料噴射制御処理の手順を示すフローチャート。 燃料噴射制御を具体的に説明するためのタイムチャート。 第2実施形態における燃料噴射制御処理の手順を示すフローチャート。 バルブオーバーラップ量と減量補正値との関係を示す図。
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、車両に搭載される筒内噴射式の多気筒エンジン(内燃機関)を制御対象としており、当該エンジンにおける各種アクチュエータの電子制御を実施するものとしている。なおエンジンは4つの気筒が搭載された4ストロークエンジンであり、各気筒が吸気行程、圧縮行程、膨張行程、排出行程の4つの行程を繰り返し実行することでエンジンが回転される。
まず、図1によりエンジン制御システムの全体概略構成を説明する。
図1に示す筒内噴射式エンジン(以下、エンジン10という)において、吸気管11の上流部には吸入空気量を検出するためのエアフロメータ12が設けられている。エアフロメータ12の下流側には、DCモータ等のスロットルアクチュエータ13によって開度調節されるスロットルバルブ14が設けられており、該スロットルバルブ14の開度(スロットル開度)はスロットルアクチュエータ13に内蔵されたスロットル開度センサにより検出される。スロットルバルブ14の下流側にはサージタンク16が設けられ、このサージタンク16には吸気管圧力を検出するための吸気管圧力センサ17が設けられている。サージタンク16には、エンジン10の各気筒に空気を導入する吸気マニホールド18が接続されている。
シリンダブロック20には電磁駆動式のインジェクタ(燃料噴射手段)21が設けられており、シリンダ内壁とピストン22の上面(頂部)とにより区画形成される燃焼室23内にはインジェクタ21から燃料が直接噴射される。インジェクタ21に対しては、高圧ポンプを有してなる高圧燃料システムから高圧燃料が供給されるようになっている。
高圧燃料システムについて簡単に説明する。本システムは、主たる構成として、燃料タンク24内の燃料をくみ上げる低圧ポンプ25と、この低圧ポンプ25にてくみ上げられた低圧燃料を高圧化する高圧ポンプ26と、高圧ポンプ26から吐出される高圧燃料を蓄えるデリバリパイプ(蓄圧配管)27とを有しており、デリバリパイプ27に各気筒のインジェクタ21がそれぞれ接続されている。高圧ポンプ26により高圧化されデリバリパイプ27内に蓄えられた高圧燃料はインジェクタ21により燃焼室23内(気筒内)に噴射される。また、高圧ポンプ26とデリバリパイプ27とを接続する高圧燃料配管28には、燃料の圧力(燃圧)を検出するための燃圧センサ29が設けられている。
高圧ポンプ26は、機械式ポンプであり、エンジン10のカム軸の回転により駆動される。高圧ポンプ26の燃料吐出量は、同ポンプ26に設けられた燃圧制御弁(図示略)の開閉により制御され、デリバリパイプ27内の燃圧が最大で例えば20MPa程度に高圧化される。なお、低圧ポンプ25は電動式ポンプである。
エンジン10の吸気ポート及び排気ポートにはそれぞれ吸気バルブ31及び排気バルブ32が設けられており、吸気バルブ31の開動作により吸入空気が燃焼室23内に導入され、排気バルブ32の開動作により燃焼後の排気が排気管33に排出される。
吸気バルブ31には、その開閉タイミングを可変とする可変動弁機構41が設けられている。可変動弁機構41は、エンジン10のクランク軸と吸気カム軸との相対回転位相を変更するものであり、所定の基準位置に対して進角側及び遅角側への位相変更が可能になっている。可変動弁機構41としては、油圧駆動式または電動式のものが用いられる。なお可変動弁機構41は、少なくともは吸気バルブ31の開弁タイミングを可変に調整できるものであればよい。
エンジン10のシリンダヘッドには各気筒に点火プラグ34が取り付けられており、点火プラグ34には、図示しない点火コイル等を通じて、所望とする点火時期において高電圧が印加される。この高電圧の印加により、各点火プラグ34の対向電極間に火花放電が発生し、燃焼室23内において燃料が着火されて燃焼に供される。
排気管33には、排気を浄化するための触媒35が設けられている。触媒35は、例えば排気中のCO,HC,NOxを浄化する三元触媒である。また、排気管33において三元触媒35の上流側には、排気を検出対象として混合気の空燃比を検出する空燃比センサ36が設けられている。
また、シリンダブロック20には、エンジン水温(エンジン温度に相当)を検出する水温センサ38や、クランク軸(図示略)の所定回転毎(例えば10°CA周期)にクランク角信号を出力するクランク角度センサ39が取り付けられている。また、エンジン10には、エンジン始動時においてクランク軸に対して初期回転を付与する始動手段としてのスタータ42が設けられている。図示は省略するが、上記以外に、本システムでは、車速を検出する車速センサや、アクセルペダルの踏込み操作量を検出するアクセルセンサ、ブレーキペダルの踏込み操作量を検出するブレーキセンサ等が設けられている。
上述した各種センサの出力は、エンジン制御を司る電子制御ユニット(以下、ECU40という)に入力される。ECU40は、CPU、ROM、RAM等よりなるマイクロコンピュータを有して構成され、ROMに記憶された各種の制御プログラムを実行する。ECU40は、エンジン運転状態に応じてインジェクタ21の燃料噴射量及び燃料噴射時期を制御したり、点火プラグ34の点火時期等を制御したり、高圧ポンプ26による燃料吐出量を制御したり、可変動弁機構41の駆動を制御したりする。
また、ECU40は、アイドリングストップ制御手段に相当し、アイドリングストップ制御として、所定の自動停止条件が成立した場合にエンジン10の燃焼を停止してエンジン10を自動停止させ、エンジン燃焼停止後、所定の再始動条件が成立した場合に、スタータ42を駆動しかつエンジン10の燃焼を再開してエンジン10を再始動させる。エンジン停止条件としては、例えば、エンジン水温が所定温度(例えば60℃以上)であること、車速が所定値以下(例えば5km/h以下)であること、及びアクセル操作量がゼロであること(又はブレーキ操作が行われたこと)が含まれる。また、エンジン再始動条件としては、例えば、アクセルペダルの踏込み操作が行われたことや、ブレーキ操作が解除されたこと等が含まれる。
ここで、エンジン10の始動開始当初と始動完了後とでは、燃料噴射量の算出手法が異なっている。具体的には、エンジン10の始動開始後において、エンジン回転速度が所定の始動判定値N1(例えば400rpm)に達するまで(すなわち始動完了前)は、エンジン始動時のエンジン水温に基づいて始動時噴射量Q1、Q2が算出され、その始動時噴射量Q1、Q2によりインジェクタ21の駆動が制御される。なお,噴射時期の違い(圧縮行程と吸気行程)によるトルク効率を考慮して,圧縮行程で噴射する場合と吸気行程で噴射する場合とで,異なる始動時噴射量Q1,Q2が設定される。また、始動開始後において、エンジン10で初爆が生じてエンジン回転速度が始動判定値N1に達した後(すなわち始動完了後)は、エンジン負荷(例えば吸入空気量)とエンジン回転速度とに基づいて基本噴射量が算出されるとともに、その基本噴射量に対して水温補正や空燃比補正等が適宜実施されて最終の燃料噴射量が算出され、その燃料噴射量(始動後噴射量Q3)によりインジェクタ21の駆動が制御される。なお、燃料噴射量の算出にあたってはデリバリパイプ27内の燃圧が加味されるとよく、例えば始動開始当初には、始動時水温と始動時燃圧とに基づいて始動時噴射量が算出される。
また本実施形態では、アイドリングストップ制御の実施によりエンジン10が自動停止された状態から自動再始動させる際に、エンジン10の全気筒のうち始動開始後に最も早く圧縮行程噴射が可能になる第1気筒と、それ以外の第2気筒とを区別している。なお第2気筒は、全気筒のうち第1気筒を除く残りの全ての気筒を示している。そして、第1気筒については、再始動開始後の最初の燃料噴射時に圧縮行程噴射を実施し、かつ再始動開始後の2回目以降の燃料噴射として吸気行程噴射を実施するようにしている。また、第2気筒については、再始動開始後の最初の燃料噴射から吸気行程噴射を実施するようにしている。
次に、ECU40が実行するアイドリングストップ制御と燃料噴射制御とをフローチャートを用いて詳細に説明する。図2は、アイドリングストップ制御処理の手順を示すフローチャートであり、図3は、燃料噴射制御処理の手順を示すフローチャートである。これら各処理は、ECU40により所定時間ごとに繰り返し実施される。
図2において、ステップS1では、エンジン10が運転中であるか否かを判定する。エンジン10が運転中であると肯定判定した場合には、ステップS02に進み、エンジン10の自動停止条件が成立したか否かを判定する。
そして、ステップS2で自動停止条件が成立したと肯定判定した場合には、続くステップS3で燃料噴射と点火とを停止させてエンジン10を自動停止させる。次にステップS4で、エンジン10が自動停止された状態でのクランク角位置の情報を取得する。この場合、クランク角信号の発生の都度カウントされるクランクカウンタを用い、エンジン停止時におけるカウンタ値を取得する。
エンジン10の自動停止後にはステップS1を否定判定し、ステップS5で、エンジン10の自動再始動条件が成立したか否かを判定する。自動再始動条件の成立を肯定判定した場合、ステップS6に進む。ステップS6では、スタータ42を駆動させるとともに燃料噴射と点火とを再開することにより、エンジン10の再始動を実施する。
また図3において、ステップS11では、今現在、エンジン10の再始動開始から始動完了までの始動期間Tstであるか否かを判定する。この始動期間Tstは、エンジン10の始動開始後、エンジン回転速度が始動判定値N1に達するまでの期間である。ステップS11を否定判定する場合、ステップS12に進み、燃料噴射制御として通常制御を実施する。この通常制御では、始動後噴射量Q3により燃料噴射が行われるようになっており、上述のとおりエンジン負荷とエンジン回転速度とに基づく基本噴射量の算出や、水温補正や空燃比補正等が適宜実施されて最終の燃料噴射量が算出される。また、例えば触媒35の暖機完了前には、触媒暖機要求による点火遅角制御に合わせて圧縮行程噴射が実施され、触媒暖機後は、吸気行程噴射が実施される。
また、ステップS11を肯定判定する場合にはステップS13に進み、再始動の開始時点でどの気筒が圧縮行程になっているか、すなわち第1気筒がどれかを判定する。このとき、エンジン10の自動停止時に取得されたクランクカウンタの値から、圧縮行程になっている気筒がどの気筒であるかが判定される。
続くステップS14では、今回の燃料噴射が、再始動開始後において、第1気筒の最初の燃料噴射であるか否かを判定する。そして、第1気筒の最初の燃料噴射であれば、ステップS15に進み、第1気筒の2回目以降の燃料噴射か又は第2気筒の燃料噴射であれば、ステップS18に進む。
ステップS15では、始動時水温や始動時燃圧に基づいて始動時噴射量Q1を算出し、続くステップS16では、燃料噴射時期を圧縮行程として決定する。その後、ステップS17では、ステップS14で判定された圧縮行程気筒(第1気筒に相当)について圧縮行程噴射を実施する。
また、ステップS18では、始動時水温や始動時燃圧に基づいて始動時噴射量Q2を算出し、続くステップS19では、燃料噴射時期を吸気行程として決定する。その後、ステップS20では、分割噴射の実施の態様を決定する。この場合、始動時水温に基づいて分割回数を決定することとし、始動時水温が低いほど分割回数を多くするとよい。例えば、水温≧40℃であれば分割回数を2回とし、水温<40℃であれば分割回数を3回とするとよい。又は、始動時燃圧に基づいて分割回数を決定することも可能である。例えば、始動時燃圧が低いほど分割回数を多くするとよい。ステップS21では、ステップS20で決定した分割回数にて燃料噴射量を分割して、吸気行程噴射を実施する。
次に上記処理の実行例を説明する。図4は、エンジン再始動時における燃料噴射制御を具体的に説明するためのタイムチャートである、図4では、各気筒の圧縮行程を示すために圧縮行程期間に網掛けを付しており、エンジン10の再始動開始時点(時刻t1)では#1気筒〜#4気筒のうち#3気筒が圧縮行程気筒(第1気筒)となっている。なお、燃焼順序は#1→#3→#4→#2である。
図4において、時刻t1以前はエンジン10が自動停止状態にあり、時刻t1で自動再始動条件が成立することにより、エンジン再始動が開始される。この場合まずはスタータ42によりクランキング(初期回転)が開始され、時刻t2,t3でそれぞれ#4気筒の吸気行程噴射、#3気筒の圧縮行程噴射が実施される。ここで、燃焼順序からすれば#3気筒が先、#4気筒が後であるが、これら2つの気筒では略同時期に燃料噴射が実施される。時刻t2で開始される#4気筒の吸気行程噴射では2回に分割して燃料噴射が実施されている。
この場合、圧縮行程噴射が実施された#3気筒では、その直後の上死点(圧縮TDC)付近で点火が実施されて燃料が燃焼される(初爆の発生)。そしてこれにより、時刻t4では、エンジン回転速度がクランキング回転速度から上昇し始める。時刻t4〜t5では、全気筒について吸気行程噴射が実施され、各燃料噴射での燃料の燃焼によりエンジン回転速度が次第に上昇する。時刻t4〜t5でも、2回に分割して吸気行程噴射が実施されている。
時刻t5では、エンジン回転速度が始動判定値N1に達し、始動完了した旨が判定される。時刻t1〜t5が始動期間Tstである。なお、時刻t5以前は始動時噴射量Q1,またはQ2により燃料噴射が実施されているのに対し、時刻t5以降は始動後噴射量Q3により燃料噴射が実施されている。
以上詳述した本実施形態によれば以下の優れた効果が得られる。
(1)エンジン10の自動停止状態からの自動再始動時に、第1気筒(最も早く圧縮行程噴射が可能な気筒)の最初の燃料噴射として圧縮行程噴射が実施されるため、再始動のための初期回転の開始後には、第1気筒において圧縮行程の直後の上死点付近(圧縮TDC付近)で最初の燃焼が行われる。これにより、アイドリングストップ制御の再始動開始後においていち早いエンジン始動が可能となる。
また、圧縮行程噴射を実施するのは第1気筒において始動開始後の最初の燃料噴射時に限られ、第1気筒の2回目以降の燃料噴射としては吸気行程噴射が実施されるとともに、第1気筒以外の第2気筒の燃料噴射としては最初から吸気行程噴射が実施される。そのため、エンジン始動後において燃焼室23内のウエットに起因するPMエミッションの悪化を抑制できる。
つまり、圧縮行程噴射を実施する場合には、インジェクタ21からの噴射燃料がピストンに付着するピストンウエットが生じやすく、そのピストンウエットに起因してPMエミッションの悪化の懸念が生じる。この点、上記のとおり圧縮行程噴射の実施を第1気筒の最初の燃料噴射時のみにすることにより、ピストンウエットを減らし、ひいてはPMエミッションの悪化を抑制できる。したがって、エンジン再始動時においてその始動性の向上とPMエミッションの悪化の抑制とを両立できる。
(2)エンジン10の再始動時において吸気行程噴射を実施する際、複数回に分割して燃料噴射を実施する構成とした。この場合、分割噴射を実施することで、1回にまとめて噴射する場合に比べて、ペネトレーションを低くすることができるため、燃焼室23内でのウエット発生を抑制できる。そのため、PMエミッションの悪化を抑制する上でより効果的な構成を実現できる。
また、エンジン10が比較的低温の状態であってもPM発生を抑制できるため、アイドリングストップ制御の実施領域を低温側に拡大することが可能となる。したがって、エンジン自動停止の実施機会を増やすことができ、燃費向上に貢献できる。
(3)エンジン10の再始動時において、エンジン水温に応じて吸気行程噴射の分割回数を設定する構成とした。そのため、エンジン10が比較的低温であっても、PMの発生を適切に抑制できる。この場合、エンジン10の自動停止条件として水温条件を緩くする、すなわち自動停止の許可温度を低めにすることが可能となり、やはりPMエミッションの悪化抑制を好適に実施できる。
(第2実施形態)
次に、第2の実施形態について上記第1実施形態との相違点を主に説明する。本実施形態では、始動開始後に最初に圧縮行程噴射を実施する気筒(第1気筒)の2回目以降の燃料噴射の燃料量(吸気行程噴射の燃料量)を、エンジン再始動時におけるバルブオーバーラップ量に基づいて調整することとしている。ここで、ECU40は、例えばエンジン水温に応じて可変動弁機構41を駆動して吸気バルブ31の開弁期間を制御し、その吸気バルブ31の開弁期間の制御によりバルブオーバーラップ量が変更されるようになっている。バルブオーバーラップ量が変更されると、燃焼室23から吸気系への吹き戻し量(いわゆる内部EGR量)が変更されるようになっている。
要するに、エンジン再始動時において、最初の燃料噴射を圧縮行程噴射にすると、燃焼室23内においてウエットによる未燃燃料が残り、その未燃燃料がバルブオーバーラップにより燃焼室23から吸気側に吹き戻される。この場合、未燃燃料の吹き戻し量に基づいて、次回以降の燃焼状態に影響が及ぶと考えられる。そこで本実施形態では、再始動開始後の2回目以降の燃料噴射において、初回の圧縮行程噴射による未燃燃料の吹き戻し量を加味して、燃料噴射制御を実施する。
図5は、本実施形態における燃料噴射制御処理の手順を示すフローチャートであり、本処理は上述の図3の処理に置き換えてECU40により実施される。なお、図5では、図3との共通の処理について同じステップ番号を付しており、以下には共通部分については説明を簡略化している。
図5において、始動期間Tstであってかつ2回目以降の燃料噴射時である場合(ステップS11がYES、ステップS13がNOの場合)に、始動時噴射量Q2の算出と吸気行程噴射を実施することの決定とを行い(ステップS18,S19)、その後、ステップS31では、今回の燃料噴射が、始動開始直後に圧縮行程噴射を実施した気筒(第1気筒)であるか否かを判定する。そして、ステップS31を肯定判定した場合には、ステップS32に進み、今現在の吸気バルブ31の開弁タイミングに基づいてバルブオーバーラップ量を算出する。また、続くステップS33では、バルブオーバーラップ量に基づいて、始動時噴射量Q2を減量補正する。このとき、バルブオーバーラップ量が大きく、燃焼室23から吸気側への吹き戻し量が多い場合には未燃ガス(未燃HC)の吹き戻し量が多く、次回以降のPM発生の可能性が高くなることが懸念される。そのため、図6の関係図に示すように、バルブオーバーラップ量が大きいほど、減量補正値を大きくする。これにより、吹き戻しガス中の未燃HC分を加味した上で燃料噴射量を決定できる。
ステップS33の実施後には、減量補正後の始動時噴射量Q2について分割噴射の実施の態様を決定し、その態様(分割回数)にて分割噴射を実施する(ステップS20,S21)。
バルブオーバーラップ量が相違すると、燃焼室23から吸気側への吹き戻し量が異なり、それに起因して、圧縮行程噴射後に吸気行程噴射が実施される気筒(第1気筒)についてPM発生に影響が及ぶと考えられるが、バルブオーバーラップ量に基づいて吸気行程噴射の燃料噴射量が算出されることでPMエミッションの悪化を抑制できる。
(他の実施形態)
上記の実施形態を例えば次のように変更してもよい。
・上記実施形態では、4気筒エンジンへの適用例を説明したため、エンジン再始動の開始時には全気筒のうちいずれかが必ず圧縮行程になっており、その圧縮行程になっている気筒を「第1気筒」として圧縮行程噴射を実施したが、これを変更してもよい。例えば2気筒エンジン又は3気筒エンジンの場合には、全気筒のうちいずれかが圧縮行程になっているとは限らない。この場合には、エンジン再始動の開始時において、始動開始後に最も早く圧縮行程となる気筒(圧縮行程噴射が可能になる気筒)を「第1気筒」として圧縮行程噴射を実施する構成としてもよい。
・エンジン再始動時に吸気行程噴射を実施する際に、ECU40が、燃料噴射量(始動時噴射量Q1)が所定量よりも多いか否かを判定し、所定量よりも多い場合には分割噴射を実施し、所定量よりも少ない場合には単発噴射(1回噴射)を実施する構成としてもよい。
・上記第2実施形態では、エンジン再始動の開始直後に圧縮行程噴射を実施した気筒(第1気筒)について、バルブオーバーラップ量に基づいて始動時噴射量Q1を減量補正する構成としたが、第1気筒以外の気筒についても同様に、バルブオーバーラップ量に基づいて始動時噴射量Q2を減量補正する構成としてもよい。
・上記実施形態では、エンジン温度としてエンジン水温を用いたが、これに代えて、シリンダ壁温やエンジン潤滑油の温度を用いてもよい。
10…エンジン、21…インジェクタ、40…ECU。

Claims (4)

  1. 筒内噴射用の燃料噴射手段(21)を有する複数の気筒が設けられたエンジン(10)の制御装置において、
    前記エンジンの自動停止条件が成立した際に前記エンジンを自動停止させ、前記エンジンの再始動条件が成立した際に前記エンジンを自動再始動させるアイドリングストップ制御手段と、
    前記エンジンを自動停止状態から自動再始動させる際に、前記複数の気筒のうち始動開始後に最も早く圧縮行程噴射が可能になる第1気筒を判定する気筒判定手段と、
    前記第1気筒について、始動開始後の最初の燃料噴射時に圧縮行程噴射を実施しかつ始動開始後の2回目以降の燃料噴射として吸気行程噴射を実施するとともに、前記第1気筒以外の気筒については、始動開始後の最初の燃料噴射から吸気行程噴射を実施する燃料噴射制御手段と、を備えることを特徴とするエンジンの制御装置。
  2. 前記燃料噴射制御手段は、前記エンジンの再始動時において前記吸気行程噴射を実施する際、吸気行程噴射を2回以上の燃料噴射に分割して実施する請求項1に記載のエンジンの制御装置。
  3. 前記燃料噴射制御手段は、前記吸気行程噴射の分割の回数を、前記エンジンの温度に基づいて決定する請求項2に記載のエンジンの制御装置。
  4. 吸気バルブ(31)と排気バルブ(32)との開弁期間のオーバーラップ量を調整可能な可変動弁手段(41)を備えるエンジンに適用され、
    前記燃料噴射制御手段は、前記第1気筒について始動開始後の2回目以降の燃料噴射を実施する際、前記吸気行程噴射の燃料噴射量を前記オーバーラップ量に基づいて算出する請求項1〜3のいずれか一つに記載のエンジンの制御装置。
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