JP2014210994A - 静電植毛用フロック - Google Patents

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美彰 鹿島
肇 高見
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肇 高見
弘 安達
Hiroshi Adachi
弘 安達
保利 赤嶺
Yasutoshi Akamine
保利 赤嶺
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Abstract

【課題】短絡現象を発生せず、優れた飛翔性を有する静電植毛用フロックの提供。【解決手段】導電性フィラーが添加されたポリアミド、ポリエステル、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びフッ素樹脂からなる群より選択される導電性の短繊維中に、炭素粉末が該短繊維中に非局在化して存在する、または局在化して存在し、ポリピロール等の導電性ポリマー層により被覆されてなる表面抵抗が100ないし109Ωの範囲にある静電植毛用フロック。【選択図】なし

Description

本発明は、静電植毛用フロックに関するものであり、詳細には、導電性フィラーが添加された樹脂から形成される導電性の短繊維が、導電性ポリマー層により被覆されてなる静電植毛用フロックに関する。
一般に、静電植毛とは、繊維を短く切断(カット)して作られたフロックを、高電圧の印加によって形成された電界内で、静電気的な吸引力により飛翔させ、予め接着剤の塗布された基材に植え付ける技術をいう。単に繊維を短く切断しただけでは、高電圧の電界内において繊維の帯電が十分大きいものとはならず、従って、静電植毛用フロックとして必要な飛翔力が生まれない。また、切断された短繊維は、相互に凝集して、絡まりとか塊を形成しやすく、分離性能が一般に不良である。そこで、従来、フロックの帯電性、分離性を良好にして、その飛翔力を高めるために、フロックの帯電性を改良する処理が、切断された短繊維に対して為されている。この処理は、一般に電着処理と呼ばれている。
この電着処理としては、従来、切断された短繊維の表面をタンニン、吐酒石等で処理して、タンニン化合物等を繊維表面に生成せしめ、これにより、タンニン化合物等の保水性を利用して、フロック表面の通電性を良好に保つ方法と、無機塩類(例えば珪酸ソーダ、水ガラス、塩化ナトリウムなど)、界面活性剤、有機珪素化合物(コロイダルシリカ)またはこれらの混合物を切断された短繊維の表面に付着させ、これにより、それらの結晶水を利用して、フロック表面の通電性を良好に保つ方法等が知られている。
一方、帯電防止性能が要求される用途に使用するために、種々の導電繊維が樹脂に炭素粉末や金属粒子を添加することにより製造されている。
しかし、導電繊維のフロックは、非導電繊維のフロックに比して頻繁に短絡現象を発生し、また、殆ど飛翔性を有さないものが多く、そのため、静電植毛のための材料として使用するのは困難なものであった。
特開平10−309760号公報には、導電繊維を芯体(基材)に静電植毛する際に、芯体(基材)と電極との間に高電圧を間欠的に印加し、それにより短絡現象を防止する方法が開示されている。
該公報においては、電圧が印加されていない期間、つまり電圧の遮断部で導電繊維の飛翔速度が低下すると同時に、重力で導電繊維が落下しようとする力で芯体(基材)と電極との間に連なる導電繊維を解きほぐす作用が働き、これにより短絡現象が防止されると説明されている。
しかし、上記の方法は、操作が煩雑であるし、また、使用する導電繊維の種類により条件の変更が必要と考えられるものである。
特開平10−309760号公報
本発明は、静電植毛において、短絡現象を発生せず、優れた飛翔性を有する導電繊維のフロックの提供を課題とする。
導電繊維のフロックは、既知の電着処理を施してもその飛翔性が十分に改善されるものではなく、また、依然として短絡現象を頻発させるものであった。
そのため、本発明者らは、導電繊維のフロックを、短絡現象を発生せず且つ優れた飛翔性を有するものとするために鋭意検討した結果、導電繊維のフロックを導電性ポリマー層で被覆すると、該フロックの飛翔性が格段に向上し、また、飛翔したフロックは、一箇所に集まることなくフロック同士がある程度の間隔を保ったまま広範囲に分散し、それにより短絡現象が生じないことを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、
(1)導電性フィラーが添加された樹脂から形成される導電性の短繊維が、導電性ポリマー層により被覆されてなる静電植毛用フロック、
(2)前記導電性ポリマー層における導電性ポリマーが、導電性ポリピロールである前記(1)記載の静電植毛用フロック、
(3)前記導電性フィラーが添加された樹脂における樹脂が、ポリアミド、ポリエステル、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン及びフッ素樹脂からなる群より選択される樹脂である前記(1)又は(2)記載の静電植毛用フロック、
(4)前記導電性の短繊維の表面抵抗値が、100ないし109Ωの範囲にある前記(1)ないし(3)の何れか1つに記載の静電植毛用フロック、
(5)前記導電性の短繊維は、炭素粉末が該短繊維中に非局在化して存在する前記(1)ないし(4)の何れか1つに記載の静電植毛用フロック、
(6)前記導電性の短繊維は、炭素粉末が該短繊維中に局在して存在する前記(1)ないし(4)の何れか1つに記載の静電植毛用フロック、
(7)表面抵抗値が102ないし108Ωの範囲にある前記(1)ないし(6)の何れか1つに記載の静電植毛用フロック、
に関する。
本発明により、静電植毛において、短絡現象を発生せず、優れた飛翔性を有する導電繊維のフロックが提供される。
また、本発明の静電植毛用フロックは、飛翔性に優れるものであり、特に、飛翔したフロックが一箇所に集まることなくフロック同士がある程度の間隔を保ったまま広範囲に分散し、それにより短絡現象が生じないという優れた特徴を有するものである。
また、本発明の静電植毛用フロックは、温度・湿度の影響が少なく、連続して安定した飛翔性を得ることが可能である。
また、本発明は、例えば、導電性フィラーが短繊維中に非局在化して存在する導電繊維や導電性フィラーが短繊維中に局在して存在する導電繊維等の、導電性フィラーの分散形態が異なる種々の導電繊維において幅広く適用できる汎用性の高いものであり、また、これにより、何れの導電繊維を用いた場合でも、同様の優れた飛翔性を有する静電植毛用フロックとすることができ、それにより優れた静電植毛品を提供することができる。
これにより、従来の電着処理法では、全く飛翔性を示さなかった導電繊維であっても、優れた飛翔性を有する静電植毛用フロックとすることができる。
加えて、上記の飛翔性は、導電繊維が本来的に有する表面抵抗値の大きさにあまり影響されないため、適用範囲が広い。
また、導電性ポリマー層による被覆、特に、導電性ポリピロールによる被覆は、得られるフロック表面の電気漏洩抵抗値を102ないし108(Ω)の範囲で任意に設定することが可能であり、また、該抵抗値を意図的に変化させることにより、静電植毛用フロックの飛翔性をコントロールすることができる。
また、導電性ポリマー層による被覆、特に、導電性ポリピロールによる被覆は、極めて
薄い均一な皮膜として形成することが可能であるため、使用する導電繊維固有の性質、例えば、柔軟性、屈曲性を損なわない。
導電性フィラーが短繊維中に局在して存在する態様を説明する模式図である。 実施例1と同様の方法により製造した静電植毛用フロックを、種々の湿度及び温度で静電植毛した際の、絶対湿度と植毛密度の相関を示したグラフである。 実施例1と同様の方法により製造した静電植毛用フロック、従来の電着処理を施した比較例1のフロック及び非導電性のポリエステル繊維に従来の電着処理を施した参考例1のフロックを静電植毛した際の植毛密度を比較したグラフである。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明に係る静電植毛用フロックは、導電性フィラーが添加された樹脂から形成される導電性の短繊維が、導電性ポリマー層により被覆されてなることを特徴とする。
前記導電性ポリマー層に使用し得る導電性ポリマーとしては、導電性ポリマーとして既知であるものであれば特に限定されないが、例えば、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン及びそれらの各種誘導体が挙げられ、好ましくは、ポリピロールが挙げられる。
導電性フィラーとしては、アルミニウム、スズ、鉄、銅などの金属粉体や金属繊維、酸化スズ、酸化チタンなどの金属酸化物、硫化銅や硫化亜鉛などの金属硫化物、カーボンブラックなどの炭素粉末などを挙げることができる。
好ましい導電性フィラーとしては、炭素粉末などが挙げられる。
導電性フィラーが添加された樹脂における樹脂としては、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン4,6等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン及びフッ素樹脂等が挙げられる。
前記フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(四フッ素化樹脂、略号:PTFE)等の完全フッ素化樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン(三フッ素化樹脂、略号:PCTFE, CTFE)、ポリフッ化ビニリデン(略号:PVDF)、ポリフッ化ビニル(略号:PVF)等の部分フッ素化樹脂及びペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(略号:PFA)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(略号:FEP)、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(略号:ETFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(略号:ECTFE)等のフッ素化樹脂共重合体等が挙げられる。
前記導電性の短繊維の表面抵抗値は、100ないし109Ωの範囲である。
前記導電性の短繊維としては、上記樹脂に導電性フィラーを添加し、該樹脂から導電繊維を製造し、これを短繊維に加工して使用することもできるが、市販の導電繊維を短繊維に加工して使用することもできる。
また、前記導電性の短繊維としては、導電性フィラーが短繊維中に非局在化して存在するもの及び導電性フィラーが短繊維中に局在して存在するものを用いることができる。
導電性フィラーが短繊維中に非局在化して存在する繊維としては、導電性フィラーが短繊維中に均一に存在する導電性ポリエステル繊維(繊度:11.1T、表面抵抗値:109Ω)等が挙げられ、導電性フィラーが短繊維中に局在して存在する繊維としては、導電性ポリエステル繊維(繊度:6.3T、表面抵抗値:103-5Ω:導電性フィラーが短繊維中に局在して存在する)、導電性ナイロン繊維(繊度:6.3T、表面抵抗値:102-5Ω:導電性フィラーが短繊維中に局在して存在する)、導電性ナイロン繊維(繊度:11.1T、表面抵抗値:102-4Ω:導電性フィラーが短繊維中に局在して存在する)、導電性アクリル繊維(繊度:3.3T、表面抵抗値:100-2Ω:導電性フィラーが短繊
維中に局在して存在する)等が挙げられる。
尚、導電性フィラーが短繊維中に局在して存在する態様を説明する模式図を図1として示した。
図1において、黒く塗り潰された部分が導電性フィラーが存在する部分を示す。
図1から、導電性フィラーは、0%(非導電糸)から100%(非局在状態)の間で、様々な存在状態(局在状態)を取り得ることが分る。
本発明に使用し得る導電性の短繊維は、染色されていてもよく、また、その繊度は、約1〜65T(デシテックス)が挙げられ、その繊維長は、0.3〜6.0mmが挙げられ、そしてアスペクト比は、1:30〜1:100の特性を有するものが好ましい。アスペクト比が1:100を超える繊維であると、均一な静電植毛を行なうことができない場合がある。繊度が大きいほど、アスペクト比がより大きい値の繊維をも使用することができるが、繊度が小さい場合には、アスペクト比がより小さい繊維を選択して使用する必要がある。一般に、繊維長がデシテックス数の0.3倍の長さ(mm)である繊維が、静電植毛用フロックとして最も適当であるといわれている。
本発明における、導電性の短繊維の導電性ポリマー層による被覆は、例えば、該繊維を含む処理液中で、モノマーを酸化重合して導電性ポリマー被覆を繊維表面に形成する過程を利用して、酸性コロイダルシリカ、酸性シリカ超微細粒およびアルミナゾルよりなる群から選択された少なくとも一種の超微細粒子を導電性ポリマーと一緒に繊維の表面に付着させて、それらの被覆を形成することにより達成される。
酸性コロイダルシリカ、酸性シリカ超微細粒およびアルミナゾルは、上記処理液中に共存させても、モノマーの重合に悪影響(例えば、反応阻害)を与えない物質であり、また、重合時共存する繊維自体に対しても、それ本来の性質(例えば、柔軟性)を損ねない物質である。従って、導電性の短繊維の導電性ポリマー層による被覆は、その製造過程において、繊維表面への酸性コロイダルシリカ等の超微細粒子の被覆と導電性ポリマーの被覆とを、何ら不都合なく、同時に進行させることができるという利点があり、現在のところ、その製造において重大な技術的不利益を受けるものでないと考えられる。
また、酸性コロイダルシリカ等の超微細粒子の被覆と導電性ポリマーの被覆とを一つの重合過程の中で同時に為すことにより製造することができるため、静電植毛用フロック製造の生産性においても大変有利である。
繊維の表面に被覆される酸性コロイダルシリカ、酸性シリカ超微細粒および/またはアルミナゾルよりなる超微細粒子層の厚さ、並びに、導電性ポリマー層の厚さは、ともに、基本的には任意であるが、約0.01μm〜約0.1μmの厚さが適当である。何とならば、0.01μm未満の厚さであると、均一厚の導電性ポリマー層等を形成することが困難となり、この結果、必要な導電性を付与できない場合が増え、一方、0.1μmを超える厚さであると、被覆層の摩擦堅牢度が低下し、また経済性の面からも不利となるからである。かように極薄膜であるため、導電性ポリマー層等の存在によって、繊維本来の風合い、柔軟さ等が大して損ねることもない。例えば自動車窓ガラスのウェザーストリップに用いた場合、繊維の硬化が極めて少ないために、繊維本来の弾性が保持され、摺動抵抗値の安定したものが得られる。
また、酸性コロイダルシリカ、酸性シリカ超微細粒および/またはアルミナゾルよりなる超微細粒子層の膜厚、並びに、導電性ポリマー層の膜厚は、重合条件等に依り変わるが、一般に、フロック表面の電気漏洩抵抗値が102ないし108Ω/cmの範囲内にあるように、これらの被覆量は調整される。また必要により、上記レベルの導電性を確保するために、導電性ポリマー等の被覆を為す前に、適当な予備処理を繊維表面に施してもよい。
本発明で用いる酸性コロイダルシリカは、水、アルコール(特にメタノール)等の分散
媒中で水和によって表面にOH基を有する二酸化珪素(SiO2)の酸性(好ましくは、pH2〜4)のコロイド懸濁液である。酸性コロイダルシリカは、コロイド表面に負イオンを有するが、重合反応の処理液中に共存する化学酸化剤の特に第二鉄イオンによって沈殿を生じないので、モノマーの重合反応を阻害する虞れがないものである。酸性コロイダルシリカとしては、繊維の表面に導電性ポリマーの膜厚と同程度の厚さの層を形成することができるような粒子径を有するコロイダルシリカよりなる系がより好ましい。特に好ましくは、粒子径0.01〜0.02μmの範囲にある酸性コロイダルシリカである。例えば、pH2〜4、固形分20%程度の酸性コロイダルシリカが本発明に好適に利用される。その具体的な市販品としては、例えば、商標名スノーテックス(snowtex) のコロイダルシリカ商品、特に品名MA−ST−M(分散媒メタノール)、メタノールシリカゾル(分散媒メタノール)、IPA−ST(分散媒イソプロパノール)、ST−O(分散媒 水)(いずれも日産化学工業株式会社製)が挙げられる。
本発明で用いる酸性シリカ超微細粒は、シラノール基を有する超微細粒子形態の二酸化珪素(SiO2)であり、酸性(好ましくは、pH2〜4)の粉体である。酸性シリカ超微細粒も、酸性コロイダルシリカと同様、重合反応の処理液中に共存する化学酸化剤の特に第二鉄イオンによって沈殿を生じないので、モノマーの重合反応を阻害する虞れがないものである。酸性シリカ超微細粒としては、上記の酸性コロイダルシリカの粒子径に匹敵する粒子径を有する酸性シリカが、繊維の表面に導電性ポリマーの膜厚と同程度の厚さの層を形成することができるので、より好ましい。粒子径を単位重量当りの表面積で以て表現すると、特に好ましい酸性シリカ超微細粒は、約300〜400m2 /gの表面積を有するものである。但し、この酸性シリカ超微細粒は、真比重2.5〜2.6であっても、嵩比重がそれより格段に小さいため、上記した所望の粒子径を有するところの酸性シリカ超微細粒を正確に計量して使用することが比較的困難であり、従って、酸性シリカ超微細粒は、秤量の精度および取り扱い易さの点で、既に非溶剤中に分散された形態にあるところの酸性コロイダルシリカよりも劣る。本発明においては、比重2〜3および粒子径0.01〜0.02μmの範囲内にある酸性シリカ超微細粒が大変好適に利用される。その具体的な市販品としては、例えば、商標名ニプシル( 日本シリカ工業社製 )、シルトン(水澤化学社製)、ハイシル(PPGインダストリーズ社製)、スターシル(神島化学社製)、HGKT40(ワッカーケミカル社製)等の酸性シリカ超微細粒商品が挙げられる。
本発明で用いるアルミナゾルは、水、アルコール(特にメタノール)等の分散媒中で水和によって表面にOH基を有する酸化アルミニウム(Al23 )の酸性(好ましくは、pH2〜4)のコロイド懸濁液である。アルミナゾルもまた、酸性コロイダルシリカと同様、モノマーの重合反応の処理液中に共存する化学酸化剤の特に第二鉄イオンによって沈殿を生じないので、モノマーの重合反応を阻害する虞れがないものである。アルミナゾルとしては、繊維の表面に導電性ポリマーの膜厚と同程度の厚さの層を形成することができるような粒子径を有するコロイダルアルミナよりなる系がより好ましい。特に好ましくは、粒子径0.01〜0.02μmの範囲にあるアルミナゾルである。本発明においては、比重2〜3および粒子径0.01〜0.02μmの範囲内にあるアルミナゾルが大変好適に利用される。その具体的な市販品としては、例えば、商標名アルミナゾル100、200、520( 総て、日産化学工業社製)が挙げられる。
酸性コロイダルシリカ、酸性シリカ超微細粒および/またはアルミナゾルよりなる超微細粒子の使用量は繊維の種類、性質に依り適宜変更されるべきものであるが、その好適な範囲は、シリカ分およびアルミナ分として繊維の重量に基づいて0.5重量%〜3.0重量%の量に換算される範囲である。超微細粒子のシリカ分およびアルミナ分が0.5重量%未満の量であると、フロックの流動性が有意義に改良されない。一方、そのシリカ分およびアルミナ分が3.0重量%の量を越えると、フロックの流動性が特にそれ以上改良されなくなり、それだけでなく、フロックの導電性が所望の水準より低下するので、好まし
くない。シリカ分およびアルミナ分として0.5重量%〜3.0重量%の範囲に設定するとき、フロックの流動性および分級性が満足に改良され、かつ難燃性も満足に改良され、過剰供給の条件下でスパーク発生および発火の現象が起きないので、より好ましい。
導電性ポリマーを形成するためのモノマーとしては、ピロール、N−メチルピロール、N−エチルピロール、N−フェニルピロール、N−ナフチルピロール、N−メチル−3−メチルピロール、N−メチル−3−エチルピロール、N−フェニル−3−メチルピロール、N−フェニル−3−エチルピロール、3−メチルピロール、3−エチルピロール、3−n−ブチルピロール、3−メトキシピロール、3−エトキシピロール、3−n−プロポキシピロール、3−n−ブトキシピロール、3−フェニルピロール、3−トルイルピロール、3−ナフチルピロール、3−フェノキシピロール、3−メチルフェノキシピロール、3−アミノピロール、3−ジメチルアミノピロール、3−ジエチルアミノピロール、3−ジフェニルアミノピロール、3−メチルフェニルアミノピロール及び3−フェニルナフチルアミノピロール等のピロール誘導体;アニリン、o−クロロアニリン、m−クロロアニリン、p−クロロアニリン、o−メトキシアニリン、m−メトキシアニリン、p−メトキシアニリン、o−エトキシアニリン、m−エトキシアニリン、p−エトキシアニリン、o−メチルアニリン、m−メチルアニリン及びp−メチルアニリン等のアニリン誘導体;チオフェン、3−メチルチオフェン、3−n−ブチルチオフェン、3−n−ペンチルチオフェン、3−n−ヘキシルチオフェン、3−n−ヘプチルチオフェン、3−n−オクチルチオフェン、3−n−ノニルチオフェン、3−n−デシルチオフェン、3−n−ウンデシルチオフェン、3−n−ドデシルチオフェン、3−メトキシチオフェン、3−ナフトキシチオフェン及び3,4−エチレンジオキシチオフェン等のチオフェン誘導体等が挙げられ、好ましくはピロール、アニリン、チオフェン及び3,4−エチレンジオキシチオフェン等が挙げられ、より好ましくはピロールが挙げられる。
ピロール等のモノマーの繊維に対する使用量は、繊維の種類、径により相当に異なる。一般に、モノマーは対繊維重量比で、約0.1ないし約5.0%、より好ましくは約0.15ないし約3.0%の割合で処理液に添加される。例えば、モノマーを、繊度3デシテックス、長さ0.8mmのポリエステル繊維(比重1.34)に対して重量比0.75%で添加した場合には、平均にて、厚さ約0.044(計算値)μmの導電性ポリマー層が繊維の周面および両端面に形成される。
もっとも、等量のモノマーを使用しても、繊維表面に形成される導電性ポリマー層の厚さは、繊維の表面形状(粗さ)、多孔性、繊維組成等によって異なる。例えば、導電性のポリエステル繊維等の非浸透性繊維の場合には、添加モノマー量から算出した平均厚さにほぼ等しい平均厚さの導電性ポリマー層が形成されるが、導電性の6−ナイロン繊維、6,6−ナイロン繊維等の浸透性繊維の場合には、添加モノマー量から算出した平均厚さよりもある程度少ない平均厚さの導電性ポリマー層が形成される。また、導電性ポリマー層の厚さは、下記の処理液中の繊維の分散条件等によっても変動する。好適な導電性ポリマー層の厚さは、導電性のポリアミド繊維等の浸透性繊維の場合は一般に0.01ないし0.03μm程度であり、また導電性のポリエステル繊維、アクリル繊維等の非浸透性繊維の場合は一般に0.01ないし0.05μm程度である。
このように、導電性ポリマー層による被覆、特に、導電性ポリピロールによる被覆は、極めて薄い均一な皮膜として形成することが可能であるため、使用する導電繊維固有の性質、例えば、柔軟性、屈曲性を損なわない。
また、上述したように、導電性の短繊維の導電性ポリマー層による被覆は、モノマーの重合反応を、繊維および、酸性コロイダルシリカ、酸性シリカ超微細粒およびアルミナゾルよりなる群から選択された少なくとも一種の超微細粒子を含む処理液中において、化学酸化剤を触媒として、所望により添加されたドーパントおよび/または表面張力低下剤と
ともに進行させて、生成した導電性ポリマーを酸性コロイダルシリカ等の超微細粒子とともに処理液中の繊維の表面に被覆することにより形成される。該製法に従うことにより、得られたフロックは、繊維の長さ方向の周面および先後両端面が、導電性ポリマーおよび、酸性コロイダルシリカ、酸性シリカ超微細粒および/またはアルミナゾルよりなる超微細粒子の両材料により実質的に被覆されたものとなる。一般に、被覆されていない部分のフロック全表面に対する比率は3%以下である。
処理液へのモノマーおよび化学酸化剤の添加は、両者を一緒に添加するという手順で、あるいは、先にモノマーを添加しその後化学酸化剤を添加するという手順で行なってもよい。また触媒の化学酸化剤は、一括添加してもよく、あるいは数回に分けて添加しても、少量ずつ連続して添加してもよい。
モノマーの重合反応は、できるだけゆっくりと進行させるのが好ましい。その温度条件は低温であることが好ましく、2℃〜35℃、より好ましくは2℃〜25℃である。重合速度が著しく速いと、水相中での反応が急速に(一瞬のうちに)進行し、導電性ポリマーが繊維の表面に付着し難くなり、水槽中に遊離した導電性ポリマー粒子が形成される。重合反応は、繊維とともに、酸性コロイダルシリカ、酸性シリカ超微細粒およびアルミナゾルよりなる群から選択された少なくとも一種の超微細粒子を含むスラリー形態の処理液を攪拌または循環しながら行なわれる。モノマーの重合が進行し、そのうちに溶解度が低下してくると、生成した導電性ポリマーが酸性コロイダルシリカ等の超微細粒子とともに繊維の表面に析出または付着する。本反応は定量的な反応である。
満足な飛翔力、導電性、流動性(分級性)等を達成するためには、繊維の端面を含む総ての表面が導電性ポリマーおよび、酸性コロイダルシリカ、酸性シリカ超微細粒および/またはアルミナゾルよりなる超微細粒子の両材料により実質的に被覆され、かつ、その被覆層が表面全体にわたって均一な厚さであることが望ましい。この観点から、繊維および酸性コロイダルシリカ等の超微細粒子を含むスラリー形態の処理液中、繊維を処理液の5ないし20重量部に対して1重量部の割合で存在させるのが特に好ましい。攪拌速度は特に限定されないが、フロックの沈降を防止する必要があることから、例えば導電性のポリエステル繊維の使用の場合における攪拌速度は導電性のポリアミド繊維の使用の場合よりもより高速にする必要がある。
触媒の化学酸化剤としては、モノマーの重合を促進する物質一般が使用することができ、例えば、塩化第二鉄、過塩素酸第二鉄、硝酸第二鉄、クエン酸第二鉄、p−トルエンスルホン酸第二鉄、硫酸第二鉄、過沃素酸第二鉄、硫酸鉄アンモニウム等が挙げられ、これらは単独でまたは二種以上の物質を適宜組み合わせて使用される。特に水溶性の第二鉄塩が好ましい。化学酸化剤は、通常、モノマー1モル当り約2ないし約3モルの割合で使用されるが、水中の溶存酸素、空気中の酸素、過酸化水素、オゾン等の酸素ラジカル発生源を補助酸化剤として併用する場合には、モノマーに対する化学酸化剤の使用量をそれだけ減量することができる。
また、処理液は、繊維表面への導電性ポリマー皮膜の形成を均一なものとするために、さらに表面張力低下剤を添加することができる。表面張力低下剤としては、界面活性剤のほか、有機溶媒並びにシリコーン系等の消泡剤などが挙げられる。界面活性剤は、繊維表面のぬれ性を改良するものであり、また、アルコール類も、水との混和により繊維表面のぬれ性を改良するために付加的に混合することができる。上記の界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシアルキレンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムなどのアニオン型界面活性剤;あるいは、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコール ブロックコポリマー、ポリエチレングリコールアルキル
エーテル、ポリエチレングリコールアルキルフェニルエーテルなどのノニオン型界面活性剤が挙げられる。また上記の有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノール、イソアミルアルコール等のアルコール類、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン等が挙げられる。表面張力低下剤の添加量は、一般に極少量ないし少量で足り、例えば、界面活性剤の場合は処理液の全重量に対して約0.01〜約2%の範囲内の量で十分であり、またアルコール類の場合は、処理液の全重量に対して約0.1〜約5.0%の範囲で十分である。
また、繊維の導電性を高めるために、必要ならば、ドーパントをモノマーの重合に併用することも可能である。このドーパントは、好適にはpH1〜5、より好ましくはpH1〜3の条件下で使用される。適するドーパントとしては、例えば、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、モノクロロベンゼンスルホン酸、ジクロロベンゼンスルホン酸、トリクロロベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、イソプロピルナフタレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ナフタレントリスルホン酸、スルホサリチル酸およびその他の芳香族スルホン酸;あるいは過塩素酸、塩酸、硫酸、硝酸、トリフルオロメタンスルホン酸などが挙げられる。特に芳香族スルホン酸またはそのアルカリ金属塩が好ましい。
そして、重合反応の終了後、被覆された繊維は水洗いされるが、その際、必要によりフロック同志の絡み合いを防止し、静電植毛機中のストレージタンクよりの供給路におけるスクリュー等による搬送性を向上させるために、ステアリン酸アミド等の、柔軟剤または平滑剤等を少量添加使用してもよい。また、導電性ポリマー等の被覆層の形成の前に、繊維内部より重合反応の処理液中に滲出するところの界面活性剤や油状物を予め洗浄、除去しておくことが好ましい。
その後、被覆された繊維は乾燥されるが、フロック同士の絡み合いを最小限に抑えるために、流動槽乾燥法、すなわちスラリー状態ないしはこれを遠心分離で脱水した状態のフロックを流動槽内で熱空気流との接触により乾燥させるという方法を用いるのが最も好ましい。この乾燥法においてより好都合で運転するためには、温度約120〜約180℃、槽滞留時間0.1〜5秒という条件を採用するとよい。この条件で乾燥すると、1〜5%程度の水分量を有するフロックを容易に得ることができる。
本発明の静電植毛用フロックを長い繊維を使用して製造する場合、マイヤー染色機やチーズ染色機等を使用して被覆処理を行うことで、その製造を可能とすることができる。即ち、導電性ポリマーおよび、酸性コロイダルシリカ、酸性シリカ超微細粒および/またはアルミナゾルよりなる超微細粒子の両材料の同時被覆処理をマイヤー染色機やチーズ染色機等を使用して行い、その後、処理された長繊維を所定寸法に切断して短繊維とすることにより製造することができる。例えば円形状のトウを切開して直線状とした後、所定の寸法に切断してフロックとした場合、カット面、即ちフロックの端面には、導電性ポリマーの被覆層が形成されないことになるが、端面の面積は、フロックの全表面積に対して0.3〜1.2%程度であり、フロックの飛翔性には実質的に影響を与えるものではない。導電性のポリアミド繊維等は、モノマーの繊維内部への拡散があるために、トウの形態の繊維を被覆処理し続いてこれをカットするプロセスを採ったとしても、得られたフロックは、端面の外周部若しくは端面の全面が導電化される傾向があり、この場合、導電化されていない面積の比率は更に小さくなる。
本発明の静電植毛用フロックは、以上述べた諸過程を経て製造され、その結果、その水分率が約1ないし5%の公定水分率もしくはそれに近い程度にある、乾燥状態のフロック
が得られる。本発明の静電植毛用フロックは、周囲の外気の湿度の影響を実質的に受けないため、その水分率は殆ど変化せずに維持される。
得られる静電植毛用フロックの表面抵抗値は、102ないし108Ωの範囲とするのが好ましい。
例えば、使用するモノマー量を調節して導電性ポリマーの被覆量を変えることにより、静電植毛用フロックの表面抵抗値を、102ないし108Ωの範囲で、任意に設定することができる。
そして上記のように、静電植毛用フロックの表面抵抗値を意図的に変化させることにより、該フロックの飛翔性をコントロールすることが可能である。
このようにして製造された本発明の静電植毛用フロックは、静電植毛において飛翔性に優れるものであり、特に、飛翔したフロックが一箇所に集まることなくフロック同士がある程度の間隔を保ったまま広範囲に分散し、それにより短絡現象が生じないという優れた特徴を示すことが判った。
また、本発明の静電植毛用フロックは、温度・湿度の影響が少なく、連続して安定した飛翔性を得ることが可能であることも判った。
また、本発明の静電植毛用フロックは、あらゆる材質・形態の導電性の短繊維を用いた場合においても、優れた飛翔性を有する静電植毛用フロックとすることができるため、今まで静電植毛に使用することができなかった導電繊維を用いた場合においても優れた性能の静電植毛品を製造することが可能となる。
特に、炭素粉末が短繊維中に非局在化して存在する導電繊維や炭素粉末が短繊維中に局在して存在する導電繊維等の、炭素粉末の分散形態が異なる種々の導電繊維において幅広く適用できるため、汎用性の高いものである。
そして、本発明の静電植毛用フロックは、従来と同様の静電植毛に利用することができ、これにより種々多様な静電植毛品を製造することができる。静電植毛の方式は、特に限定されるものでなく、アップ式静電植毛法(フロックを下部電極の上に置きそして被植毛物を上部電極に備え、電圧を上下電極間に印加することによりフロックを上方へ飛翔させる植毛法)、ダウン式静電植毛法(被植毛物を下部電極に備えるとともに格子状または線状の上部電極を使用し、電圧を上下電極間に印加する状態の下、フロックを上部電極の格子目に通して落下させることによりフッロクを下方へ飛翔させる植毛法)またはサイド式静電植毛法(被植毛物を電界の側方に電極と接続して備え、電圧印加の下、フロックをホッパーより電界の中に落下させることにより、フロックを最初下方へそして途中より横方向に飛翔させる植毛法)のいずれでもよい。また、流動槽型静電植毛機(多孔板が槽の中に張られかつ振動が加えられる構造の流動槽をフロックの供給槽として用いる型式の植毛機で、アップダウン式、サイド式等がある。)を用いて本発明のフロックより自動車内装部品等の静電植毛品を製造してもよい。
本発明の静電植毛用フロックは、画像形成装置などに使用される植毛ブラシローラに使用が可能であり、植毛ブラシローラとしては、帯電ローラ、クリーニングローラ、供給ローラ、潤滑剤塗布ローラ、現像ローラなどが挙げられる。
また、上記電子機器のみに限らず、静電植毛一般にも十分利用が可能なものである。
次に本発明の実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
導電繊維として、導電性ポリエステル繊維(繊度:6.3T、表面抵抗値:103-5Ω:炭素粉末が短繊維中に局在して存在する繊維)を用い、該繊維を2.5mmに切断した
。この切断した短繊維を、水(水:繊維=10:1)中に攪拌下分散させ、繊維質量の5.0質量%(固形分質量1.0質量%)の酸性コロイダルシリカ(スノーテックス ST−O(日産化学工業株式会社製)、コロイド粒子径:0.01〜0.02mμ、固形分20%、pH3.85(温度12.5℃にて)、分散媒:水)を添加し、次に、繊維質量の2.50質量%のピロールモノマーを投入し、続いてドーパントとして、ピロールモノマー20モル当り1モルの量のアントラキノンジスルホン酸ナトリウムを処理液に配合した。次いで、混合された処理液を一緒に攪拌しながら、ピロールの重合反応を、化学酸化剤のパラトルエンスルホン酸第二鉄(ピロールモノマー1モル当り2モルの量)を触媒として、温度15℃にて3.5時間の間進行させることにより、生成したポリピロールおよび酸性コロイダルシリカを導電繊維の表面に被覆した。重合反応の終了の後、得られたフロックを処理液より取り出して、充分に水洗し、次いで所定の水分となるまで乾燥した。このようにして得られた静電植毛用フロックの表面抵抗値は、104Ωのレベルの抵抗値であった。
実施例2
導電繊維を、導電性ポリエステル繊維(繊度:11.1T、表面抵抗値:109Ω:炭素粉末が短繊維中に非局在化して存在する繊維)に代えた以外は実施例1と同様の操作を行い、表面抵抗値が104Ωのレベルの抵抗値である静電植毛用フロックを得た。
実施例3
導電繊維を、導電性ナイロン繊維(繊度:6.3T、表面抵抗値:102-5Ω:炭素粉末が短繊維中に局在して存在する繊維)に代えた以外は実施例1と同様の操作を行い、表面抵抗値が104Ωのレベルの抵抗値である静電植毛用フロックを得た。
実施例4
重合反応させたピロールモノマーの使用量を1.0質量%に代えた以外は実施例3と同様の操作を行い、表面抵抗値が106Ωのレベルの抵抗値である静電植毛用フロックを得た。
実施例5
導電繊維を、導電性ナイロン繊維(繊度:11.1T、表面抵抗値:102-4Ω:炭素粉末が短繊維中に局在して存在する繊維)に代えた以外は実施例1と同様の操作を行い、表面抵抗値が106Ωのレベルの抵抗値である静電植毛用フロックを得た。
実施例6
導電繊維を、導電性アクリル繊維(繊度:3.3T、表面抵抗値:100-2Ω:炭素粉末が短繊維中に局在して存在する繊維)に代え、繊維を1.0mmに切断した以外は実施例1と同様の操作を行い、表面抵抗値が104Ωのレベルの抵抗値である静電植毛用フロックを得た。
試験例1
実施例1ないし6で製造した静電植毛用フロックを、設定電圧40kV、通電時間3分で静電植毛し、その際の短絡現象の発生の有無及び得られた静電植毛品の植毛密度を表1に纏めた。
Figure 2014210994
表1から、炭素粉末が短繊維中に非局在化して存在する導電繊維(実施例2)や炭素粉末が短繊維中に局在して存在する導電繊維(実施例1、3−6)等の、炭素粉末の分散形態が異なる種々の導電繊維を用いた場合でも、短絡現象を起さず、植毛密度の高い優れた静電植毛品を提供し得ることが明らかとなった。
また、導電繊維が本来的に有する表面抵抗値の大きさにあまり影響されることなく、どのような表面抵抗値を有する導電繊維を用いた場合でも、同様に優れた飛翔性を有する静電植毛用フロックとすることができることが明らかとなった。
試験例2:湿度及び温度の影響
実施例1と同様の方法により製造した静電植毛用フロックを使用し、絶対湿度6.02ないし10.90g/m3、温度11.0ないし25.0℃の範囲で静電植毛(設定電圧20kV、通電時間3分間、電流量30μA)を行い、その際の短絡現象の発生の有無、得られた静電植毛品の植毛密度を図2に示した。
図2から、何れの温度及び湿度で静電植毛を行った場合においても、短絡現象は発生せず、また、植毛密度及びフロック質量は殆ど変化しないことが判った。
以上より、本発明の静電植毛用フロックは、温度・湿度の影響が少なく、連続して安定した飛翔性を得ることが可能であることが明らかとなった。
試験例3:電着処理との比較
実施例1のポリピロール及び酸性コロイダルシリカの被覆処理の代わりに珪酸ソーダを用いる電着処理を従来の常法に従い行なって植毛用フロックを製造し、これを比較例1の静電植毛用フロックとした。
また、実施例1の導電性ポリエステル繊維(繊度:6.3T、表面抵抗値:103-5Ω:炭素粉末が短繊維中に局在して存在する繊維)に代えて、非導電性のポリエステル繊維(繊度:5.8T、カット寸法:2.5mm)を用い且つポリピロール及び酸性コロイダルシリカの被覆処理の代わりに珪酸ソーダを用いる電着処理を従来の常法に従い行なって植毛用フロックを製造し、これを参考例1の静電植毛用フロックとした。
実施例1と同様の方法により製造した静電植毛用フロック、比較例1の静電植毛用フロック及び参考例1の静電植毛用フロックを使用し、設定電圧40kVで静電植毛し、その際の短絡現象の発生の有無、得られた静電植毛品の植毛密度及びその際の静電植毛用フロックの総質量を表2に纏め、図3にグラフとして示した。
Figure 2014210994
比較例1の導電性のポリエステル繊維に従来の電着処理を施したフロックでは短絡現象が発生し、且つ植毛密度が極めて低い静電植毛品しか得られず、そのため、比較例1のフロックは、実質的に静電植毛に使用できないフロックといえるが、同じ導電性のポリエステル繊維を用いて製造した実施例1の本発明の静電植毛用フロックは、短絡現象が発生せず、且つ植毛密度は、比較例1のフロックに比べて、10倍近く向上することが表2及び図3から明らかとなった。
また、実施例1では、参考例1(非導電性のポリエステル繊維に従来の電着処理を施したもの)と遜色のない植毛密度が得られることを確認できており、本発明の導電処理方法が極めて有効な手段であることが確認できた。

Claims (7)

  1. 導電性フィラーが添加された樹脂から形成される導電性の短繊維が、導電性ポリマー層により被覆されてなる静電植毛用フロック。
  2. 前記導電性ポリマー層における導電性ポリマーが、導電性ポリピロールである請求項1記載の静電植毛用フロック。
  3. 前記導電性フィラーが添加された樹脂における樹脂が、ポリアミド、ポリエステル、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン及びフッ素樹脂からなる群より選択される樹脂である請求項1又は2記載の静電植毛用フロック。
  4. 前記導電性の短繊維の表面抵抗値が、100ないし109Ωの範囲にある請求項1ないし3の何れか1項に記載の静電植毛用フロック。
  5. 前記導電性の短繊維は、炭素粉末が該短繊維中に非局在化して存在する請求項1ないし4の何れか1項に記載の静電植毛用フロック。
  6. 前記導電性の短繊維は、炭素粉末が該短繊維中に局在して存在する請求項1ないし4の何れか1項に記載の静電植毛用フロック。
  7. 表面抵抗値が102ないし108Ωの範囲にある請求項1ないし6の何れか1項に記載の静電植毛用フロック。
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