JP2014210826A - 含フッ素有機化合物の分解方法 - Google Patents

含フッ素有機化合物の分解方法 Download PDF

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佳奈 石川
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義富 森澤
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Takahiko Sakamoto
峻彦 坂本
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Abstract

【課題】含フッ素有機化合物を効率よく分解でき、反応容器の腐食が抑えられ、得られる低分子量含フッ素化合物への金属(ただし、アルカリ金属およびアルカリ土類金属を除く。)の混入が少ない含フッ素有機化合物の分解方法を提供する。【解決手段】反応容器内にて含フッ素有機化合物を亜臨界水と接触させて分解する方法であって、含フッ素有機化合物の分解によって消費されるものを含め、反応容器内に存在する分子状酸素の量が、含フッ素有機化合物に含まれる炭素原子のモル数の1倍モル以上であり、亜臨界水中には、金属元素(ただし、アルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素を除く。)が実質的に存在せず、反応容器内の温度が、250℃以上374.15℃未満である含フッ素有機化合物の分解方法。【選択図】なし

Description

本発明は、亜臨界水による含フッ素有機化合物の分解方法に関する。
含フッ素有機化合物を分解して、含フッ素有機化合物よりも分子量の低い低分子量含フッ素化合物(フッ化水素、アルカリ金属やアルカリ土類金属のフッ化物等)を回収し、低分子量含フッ素化合物を、含フッ素有機化合物の原料等として再利用することが提案されている。たとえば、下記の方法が開示されている。
(1)スルホン酸型官能基を有する含フッ素ポリマーを、鉄粉の存在下、亜臨界水で分解する方法(特許文献1)。
亜臨界水または超臨界水を用いて含フッ素有機化合物を分解する方法としては、たとえば、下記の方法が開示されている。
(2)含ハロゲンポリマーを、塩基性化合物の存在下、超臨界水と混合して分解し、低分子量炭化水素を得る方法(特許文献2)。
(3)有機フルオロスルホン酸類または有機フルオロカルボン酸類を、金属粉の存在下、亜臨界水で分解する方法(特許文献3)。
(4)スルホン酸型官能基を有する含フッ素ポリマーおよび触媒金属を含む燃料電池の電極を、超臨界水で処理し、スルホン酸型官能基を有する含フッ素ポリマーを分解して、触媒金属を回収する方法(特許文献4)。
特開2010−059301号公報 特開平10−088146号公報 特開2006−306736号公報 特開2010−240542号公報
しかしながら、上述の(1)の方法では、スルホン酸型官能基を有する含フッ素ポリマーに含まれるフッ素原子のモル数の1倍モル以上の鉄粉が必要であり、得られる低分子量含フッ素化合物に多量の鉄分が混入する。低分子量含フッ素化合物の精製に手間がかかり、工業的に実施することが難しい。
(2)の方法では、超臨界水を用いるため、反応容器が腐食しやすい。また、腐食した反応容器から溶出した多量の金属が、低分子量含フッ素化合物に混入するため、低分子量含フッ素化合物の精製に手間がかかり、工業的に実施することが難しい。
(3)の方法では、有機フルオロスルホン酸類等のモル数の1倍モル以上の金属粉が必要であり、得られる低分子量含フッ素化合物に金属が混入する。低分子量含フッ素化合物の精製に手間がかかり、工業的に実施することが難しい。
(4)の方法では、超臨界水を用いるため、反応容器が腐食しやすい。また、腐食した反応容器や電極の触媒金属から溶出した多量の金属が、低分子量含フッ素化合物に混入する。低分子量含フッ素化合物の精製に手間がかかり、工業的に実施することが難しい。
本発明は、含フッ素有機化合物を効率よく分解でき、反応容器の腐食が抑えられ、得られる低分子量含フッ素化合物への金属(ただし、アルカリ金属およびアルカリ土類金属を除く。)の混入が少ない含フッ素有機化合物の分解方法を提供することを目的とする。
本発明者等は、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、金属粉の代わりに分子状酸素を存在させた状態において、含フッ素有機化合物を亜臨界水中で効率よく分解できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下[1]〜[5]の構成を有する含フッ素有機化合物の分解方法である。
[1]反応容器内にて含フッ素有機化合物を亜臨界水と接触させて分解する方法であって、前記含フッ素有機化合物の分解によって消費されるものを含め、前記反応容器内に存在する分子状酸素の量が、前記含フッ素有機化合物に含まれる炭素原子のモル数の1倍モル以上であり、前記亜臨界水中には、金属元素(ただし、アルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素を除く。)が実質的に存在せず、前記反応容器内の温度が、250℃以上374.15℃未満であることを特徴とする、含フッ素有機化合物の分解方法。
[2]前記含フッ素有機化合物が、含フッ素ポリマーである、[1]の含フッ素有機化合物の分解方法。
[3]前記含フッ素有機化合物が、炭化水素系モノマーに由来する繰り返し単位を有する含フッ素ポリマー、スルホン酸型官能基を有する含フッ素ポリマーである、[2]の含フッ素有機化合物の分解方法。
[4]前記反応容器内に、塩基性化合物、フッ化ナトリウムおよびフッ化カリウムからなる群から選ばれる1種以上を存在させる、[1]〜[3]のいずれかの含フッ素有機化合物の分解方法。
[5]下記の工程(i)〜(iii)を有する、[1]〜[4]のいずれかの含フッ素有機化合物の分解方法。
(i)反応容器内に水および含フッ素有機化合物を入れる工程。
(ii)反応容器内に分子状酸素を含む気体を導入する工程。
(iii)反応容器内の水が亜臨界水となる圧力および温度条件下で、含フッ素有機化合物を亜臨界水と接触させて分解する工程。
本発明の含フッ素有機化合物の分解方法によれば、含フッ素有機化合物を効率よく分解でき、反応容器の腐食が抑えられ、得られる低分子量含フッ素化合物への金属(ただし、アルカリ金属およびアルカリ土類金属を除く。)の混入が少ない。
すなわち、含フッ素有機化合物に含まれる炭素原子のモル数の1倍モル以上の分子状酸素を存在させ、かつ反応容器内の温度が250℃以上であるため、金属粉等の触媒金属が存在しなくても、含フッ素有機化合物を亜臨界水中で効率よく分解できる。
反応容器内の温度が374.15℃未満であるため、反応容器の腐食が抑えられる。また、腐食した反応容器から溶出し、低分子量含フッ素化合物に混入する金属元素(ただし、アルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素を除く。)が少なくなるため、低分子量含フッ素化合物の精製が容易となる。
亜臨界水中に金属元素(ただし、アルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素を除く。)を実質的に存在させないため、得られる低分子量含フッ素化合物への金属(ただし、アルカリ金属およびアルカリ土類金属を除く。)の混入が少なく、低分子量含フッ素化合物の精製が容易となる。
本明細書における「超臨界水」とは、臨界点(圧力22.12MPa、温度374.15℃)以上の圧力および温度条件下の水を意味する。
本明細書における「亜臨界水」とは、100℃以上臨界温度未満の温度において液体状態である水を意味する。
本明細書における「含フッ素有機化合物」とは、分子内にフッ素原子を1つ以上有する有機化合物を意味する。
本明細書における「低分子量含フッ素化合物」とは、含フッ素有機化合物を分解して得られる、含フッ素有機化合物よりも分子量の低い、分子内にフッ素原子を1つ以上有する有機化合物または無機化合物を意味する。
本明細書における「亜臨界水中に金属元素が実質的に存在しない」とは、亜臨界水中に金属元素(ただし、アルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素を除く。)を含む化合物を加える等の操作によって亜臨界水中に金属元素を含ませないことを意味する。すなわち、亜臨界水中に金属元素がまったく存在しない、または亜臨界水中に不可避的不純物としての金属元素(反応容器や処理対象物から溶出した金属元素等)が含まれていてもよいことを意味する。具体的に「亜臨界水中に金属元素が実質的に存在しない」とは、亜臨界水中に金属イオン(ただし、アルカリ金属イオンおよびアルカリ土類金属イオンを除く。)が10,000ppm以下、金属粉(ただし、アルカリ金属粉およびアルカリ土類金属粉を除く。)が10,000ppm以下、金属酸化物(ただし、アルカリ金属酸化物およびアルカリ土類金属酸化物を除く。)が10,000ppm以下含まれる状態を意味する。
本明細書における「繰り返し単位」とは、モノマーが重合することによって形成された該モノマーに由来する単位を意味する。繰り返し単位は、重合反応によって直接形成された単位であってもよく、ポリマーを処理することによって該単位の一部が別の構造に変換された単位であってもよい。
本明細書における「モノマー」とは、重合反応性の炭素−炭素二重結合を有する化合物を意味する。
本明細書における「スルホン酸型官能基」とは、スルホ基(−SOH)、または加水分解または中和によってスルホ基に変換し得る官能基を意味する。スルホ基に変換し得る官能基としては、−SOM(ただし、Mはアルカリ金属または第4級アンモニウム塩基である。)、−SOF、−SOCl、−SOBr等が挙げられる。
本明細書における「カルボン酸型官能基」とは、カルボキシ基(−COOH)、または加水分解または中和によってカルボキシ基に変換し得る官能基を意味する。カルボキシ基に変換し得る官能基としては、−CN、−COF、−COOR(ただし、Rは炭素数1〜10のアルキル基である。)、−COOM(ただし、Mはアルカリ金属または第4級アンモニウム塩基である。)、−COONR(ただし、RおよびRは、水素原子または炭素数1〜10のアルキル基であり、RおよびRは、同一であってもよく、異なっていてもよい。)等が挙げられる。
〔含フッ素有機化合物の分解方法〕
本発明の含フッ素有機化合物の分解方法は、反応容器内にて、分子状酸素が存在し、かつ金属元素が実質的に存在しない条件下で、含フッ素有機化合物を亜臨界水と接触させて分解する方法である。
具体的には、下記の工程(i)〜(iii)を順に行う方法が挙げられる。
(i)反応容器内に水および含フッ素有機化合物を入れる工程。
(ii)反応容器内に分子状酸素を含む気体を導入する工程。
(iii)反応容器内の水が亜臨界水となる圧力および温度条件下で、含フッ素有機化合物を亜臨界水と接触させて分解する工程。
分解生成物を回収する場合には、以下の工程(iv)を工程(iii)の後に行ってもよい。
(iv)反応容器内から分解生成物を回収する工程。
(工程(i))
工程(i)は、反応容器内に、水および含フッ素有機化合物を入れる工程である。反応容器内には、必要に応じてフッ化水素と反応し得る化合物を入れることも好ましい。撹拌手段によって内容物を接触させることが好ましい。
<反応容器>
反応容器は、工程(iii)における圧力および温度条件、ならびに亜臨界水に耐え得るものであればよい。含フッ素有機化合物の分解によってフッ化水素が生成する場合には、フッ化水素酸に耐え得るものが好ましい。
反応容器の材質としては、ステンレス鋼、ハステロイ、インコネル等が挙げられる。含フッ素有機化合物の分解によってフッ化水素が生成する場合には、ハステロイまたはインコネルが好ましい。または、めっきまたはコーティング等の方法で、反応容器のフッ化水素酸に接する表面を、フッ化水素酸に耐え得る材質で被覆することが好ましい。フッ化水素酸に耐え得る材質としては、金等が挙げられる。
<撹拌手段>
撹拌手段としては、マグネティックスターラ、撹拌翼付き撹拌機等の公知の撹拌手段が挙げられる。含フッ素有機化合物の分解によってフッ化水素が生成する場合には、フッ化水素酸に接する部分の材質が、フッ化水素酸に耐え得る材質であることが好ましい。
<含フッ素有機化合物>
含フッ素有機化合物としては、含フッ素ポリマー、有機フルオロスルホン酸類、有機フルオロカルボン酸類等が挙げられる。本発明の含フッ素有機化合物の分解方法は、焼却処分等の従来の処分方法では廃棄処理が困難であった含フッ素ポリマーの数平均分子量(Mn)が1,000以上の含フッ素ポリマーの分解に特に有用である。該数平均分子量(Mn)はサイズ排除クロマトグラフィまたは溶融動的せん断性率測定で測定することができる。
有機フルオロスルホン酸類の分子量としては、1,000以上が好ましい。有機フルオロカルボン酸類の分子量としては、1,000以上が好ましい。
含フッ素ポリマーは、フッ素原子を1つ以上有するモノマーに由来する繰り返し単位を有するものであればよい。
フッ素原子を1つ以上有するモノマーとしては、下記のモノマーが挙げられる。
フルオロエチレン類:CF=CF、CF=CFCl、CF=CFH、CFH=CH、CF=CH等。
フルオロプロピレン類:CF=CFCF、CF=CHCF等。
炭素数2〜12のフルオロアルキル基を有するポリフルオロアルキルエチレン類:CFCFCH=CH、CFCFCFCFCH=CH、CFCFCFCFCF=CH、CFHCFCFCF=CH等。
ペルフルオロビニルエーテル類:R(OCFXCFOCF=CF(ただし、式中Rは炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基であり、Xはフッ素原子またはトリフルオロメチル基であり、mは0〜5の整数である。)、CF=CFCFOCF=CF、CF=CF(CFOCF=CF等。
カルボン酸型官能基を有するペルフルオロビニルエーテル類:YCFCFCFOCF=CF(ただし、Yはカルボン酸型官能基である。)等。
スルホン酸型官能基を有するペルフルオロビニルエーテル類:ZCFCFOCF(CF)CFOCF=CF(ただし、Zはスルホン酸型官能基である。)等。
含フッ素ポリマーとしては、効率よく分解できる点で、フッ素原子を有さないモノマーに由来する繰り返し単位を有していることが好ましい。または、スルホン酸型官能基を有する含フッ素ポリマーが好ましい。
フッ素原子を有さないモノマーとしては、炭化水素系モノマーが好ましく、下記のモノマーが挙げられる。
炭化水素系モノマー:エチレン、プロピレン、イソブテン、1−ブテン等。
炭化水素系モノマーに由来する繰り返し単位を有する含フッ素ポリマーとしては、エチレンまたはプロピレンに由来する繰り返し単位を有する含フッ素ポリマーが好ましく、エチレンまたはプロピレンに由来する繰り返し単位とフルオロエチレン類に由来する繰り返し単位とを有する含フッ素ポリマーがより好ましく、エチレンに由来する繰り返し単位とテトラフルオロエチレン(CF=CF)に由来する繰り返し単位とを有するエチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(以下、ETFEと記す。)が特に好ましい。ETFEは、エチレン以外の炭化水素系モノマーに由来する繰り返し単位、CF=CF以外のフッ素原子を1つ以上有するモノマーに由来する繰り返し単位を有していてもよい。
スルホン酸型官能基を有する含フッ素ポリマーとしては、スルホン酸型官能基を有するペルフルオロビニルエーテル類に由来する繰り返し単位を有する含フッ素ポリマーが好ましく、CF=CFに由来する繰り返し単位とスルホン酸型官能基を有するペルフルオロビニルエーテル類に由来する繰り返し単位とを有するテトラフルオロエチレン/スルホン酸型官能基を有するペルフルオロビニルエーテル共重合体が特に好ましい。
含フッ素ポリマーの数平均分子量は、本発明の含フッ素有機化合物の分解方法の有用性の点から、1,000〜1,000,000,000が好ましい。
含フッ素ポリマーがスルホン酸型官能基を有する含フッ素ポリマーの場合、分子量の指標となるTは、本発明の含フッ素有機化合物の分解方法の有用性の点から、100℃以上が好ましく、150〜300℃が特に好ましい。Tは、容量流速100mm/秒を示す温度(℃)である。容量流速は、含フッ素ポリマーを2.94MPa加圧下、長さ1mm、内径1mmのノズルから溶融流出させ、流出する含フッ素ポリマーをmm/秒の単位で示したものである。通常、Tが高いほど分子量は大きい。
含フッ素ポリマーの形態は、特に限定されない。具体的には、粉末、ペレット、成形体(フィルム、Oリング、パッキン等)等が挙げられる。
含フッ素有機化合物は、1種のみからなるものであってもよく、2種以上の混合物であってもよい
含フッ素有機化合物としては、他材料との組成物であってもよく、他材料へ被覆されたものであってもよい。具体的には、無機材料(カーボン、シリカ等)との組成物、フッ素原子を含まない低分子量および/または高分子量有機化合物との組成物、他材料(紙、繊維、プラスチック等)にコーティングされたもの、水および/または有機溶媒への分散液等が挙げられる。
含フッ素有機化合物の含有量は、経済性の点から、水の100質量部に対して、0.01〜50質量部が好ましく、0.1〜10質量部が特に好ましい。含フッ素有機化合物の量が上記範囲の下限値以上であれば、低分子量含フッ素化合物を充分に回収できる。含フッ素有機化合物の量が上記範囲の上限値以下であれば、含フッ素有機化合物をさらに効率よく分解できる。
<フッ化水素と反応し得る化合物>
フッ化水素と反応し得る化合物は、工程(iv)で得られる分解生成物からフッ化水素をフッ化物塩として効率よく回収するために使用される。
フッ化水素と反応し得る化合物としては、塩基性化合物(アルカリ金属またはアルカリ土類金属の酸化物、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、アンモニア等)、フッ化水素付加物を生成する化合物(フッ化ナトリウム、フッ化カリウム等)が挙げられる。
フッ化水素と反応し得る化合物の量は、経済性の点から、含フッ素有機化合物の100質量部に対して、0〜1,200質量部が好ましく、0〜600質量部が特に好ましい。
(工程(ii))
工程(ii)は、反応容器内に分子状酸素を含む気体を導入する工程である。この工程では、必要に応じて反応容器内の圧力を、工程(iii)における温度において水が亜臨界水となるような圧力としてもよい。
工程(iii)の直前(含フッ素有機化合物を分解する直前)の分子状酸素の導入量は、含フッ素有機化合物に含まれる炭素原子のモル数の1倍モル以上であり、1.5倍モル以上が好ましく、2倍モル以上が特に好ましい。
分子状酸素の導入量が、含フッ素有機化合物に含まれる炭素原子のモル数の1倍モル以上であれば、含フッ素有機化合物が二酸化炭素にまで分解でき、分解生成物に含まれる炭化水素類を充分に低減できる。
分子状酸素を含む気体は、純酸素ガスであってもよく、空気であってもよく、酸素ガスと不活性ガスとの混合ガスであってもよい。
含フッ素有機化合物に含まれる炭素原子のモル数は、分解対象物に含まれる含フッ素有機化合物の割合を公知の方法によって求め、含フッ素有機化合物に含まれる炭素原子のモル数を公知の分析方法(元素分析等)によって定量することによって求めることができる。
(工程(iii))
工程(iii)は、反応容器内の水が亜臨界水となる圧力および温度条件下で、含フッ素有機化合物を亜臨界水と接触させて分解する工程である。工程(iii)では、必要に応じて反応容器内に分子状酸素を含む気体、または反応容器内の圧力を所定の圧力に保つための気体を、連続的または断続的に導入してもよい。
工程(iii)で分子状酸素を追加する場合には、含フッ素有機化合物の分解によって消費されるものを含めた反応容器内に存在する分子状酸素の量は、分子状酸素を含む気体を導入する前に反応容器内に存在していた気体(空気)中の分子状酸素の量と、工程(ii)から工程(iii)にかけて反応容器内に導入された気体中の分子状酸素の量とから求めることができる。
<圧力および温度条件>
反応容器内の温度は、250℃以上374.15℃未満であり、300℃以上374.15℃未満が好ましく、320℃以上374.15℃未満が特に好ましい。反応容器内の温度が250℃以上であれば、含フッ素有機化合物を亜臨界水中で効率よく分解できる。反応容器内の温度が374.15℃未満であれば、水が超臨界水となることがないため、反応容器の腐食を抑えることができる。
反応容器内の圧力は、前記温度において反応容器内の水が亜臨界水となるような圧力であればよい。
含フッ素有機化合物と亜臨界水との接触時間は、含フッ素有機化合物の量、温度、圧力等に応じて適宜決定すればよい。
<金属>
亜臨界水中には、反応容器や処理対象物から溶出した不純物を除き、触媒金属(鉄粉等)等に由来する金属元素(ただし、アルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素を除く。)を実質的に存在させない。亜臨界水中に金属元素が実質的に存在しなければ、得られる低分子量含フッ素化合物への金属(ただし、アルカリ金属およびアルカリ土類金属を除く。)の混入が少なくなる。
(工程(iv))
工程(iv)は、反応容器内から分解生成物を回収する工程である。分解生成物は低分子量含フッ素化合物を含む。また、工程(iv)では、必要に応じて分解生成物からさらに低分子量含フッ素化合物を回収する。
<分解生成物>
分解生成物としては、水、低分子量含フッ素化合物が挙げられる。工程(iii)の反応条件や含フッ素有機化合物によっては、低分子量含フッ素化合物に加えて炭化水素類や、亜臨界水で分解できない材料等が含まれる場合もある。
<低分子量含フッ素化合物>
低分子量含フッ素化合物としては、低分子量含フッ素有機化合物、低分子量含フッ素無機化合物が挙げられる。フッ化水素、含フッ素有機化合物の原料等として再利用しやすい点から、低分子量含フッ素無機化合物が特に好ましい。
低分子量含フッ素有機化合物の分子量は、フッ化水素、含フッ素有機化合物の原料等として再利用しやすい点から、1,000未満が好ましく、20〜900がより好ましく、20〜100がさらに好ましく、20〜80が特に好ましい。
低分子量含フッ素有機化合物としては、前記フッ素原子を1つ以上有するモノマーとして記載のフルオロエチレン類、フルオロプロピレン類、ポリフルオロアルキルエチレン類、ペルフルオロビニルエーテル類、カルボン酸型官能基またはスルホン酸型官能基を有するペルフルオロビニルエーテル類、分子量が1,000未満の有機フルオロカルボン酸類(CFCOOH、CFHCOOH、CFHCOOH、HOCOCFCOOH等)、分子量が1,000未満の有機フルオロスルホン酸類(CFSOH、CFHSOH、CFHSOH、HO(C=O)CFSOH等)、含フッ素脂肪族炭化水素類(炭素数1〜10のペルフルオロカーボン類、炭素数1〜10のハイドロフルオロカーボン類、炭素数1〜10のクロロフルオロカーボン類、炭素数1〜10のハイドロクロロフルオロカーボン類等)等が挙げられる。
低分子量含フッ素無機化合物としては、フッ化水素、元素状フッ素、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のフッ化物、フッ化アンモニウム等が挙げられる。
得られる低分子量含フッ素化合物がフッ化水素である場合、公知の方法(特開2010−194468号公報および該公報に記載の先行技術文献に記載の方法等)によって再利用できる。
工程(iii)において、反応容器内にフッ化水素と反応し得る化合物を存在させた場合、フッ化水素を、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のフッ化物またはフッ化アンモニウムとして回収できる。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
例1〜4および8は実施例であり、例5は参考例であり、例6、7は比較例である。
実施例で用いた化合物は、以下の通りである。
化合物1(1,1,2,2−テトラフルオロ−2−(1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロ−3−(1,2,2−トリフオロビニロキシ)プロポキシ)エタンスルホニルフルオリド):CF=CF−OCFC(CF)F−OCFCFSO
化合物2(エチレン):CH=CH
化合物3(テトラフルオロエチレン):CF=CF
化合物4(アゾビスイソブチロニトリル):
Figure 2014210826
化合物5(1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン):CClFCFCHClF
化合物6(1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン):CHCCl
化合物7(1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−トリデカフルオロヘキサン):C13
化合物8(t−ブチルパーオキシピバレート。日本油脂株式会社製パーブチルPV。):(CHCOO−OC(CH
(フッ化物イオンの定量方法)
分解生成物中のフッ化物イオン濃度をイオンクロマトグラフィで測定した。
移動相:Na(6mM)、HBO(15mM)、NaHCO(0.2mM)、
分析カラム:東ソー社製、TSKgel Super IC−Anion、
移動相流速:0.8 mL/分、
カラム温度:40℃
検出器:サプレッサ付き電気伝導度検出器。
〔合成例1:スルホン酸型官能基を有する含フッ素ポリマーの合成〕
内容積230mLのステンレス鋼製オートクレーブに、化合物1の123.8g、溶媒として化合物5の35.23g、開始剤として化合物4の63.62mgを仕込み、冷却下、充分脱気した。その後、70℃に昇温して、化合物3を系内に導入し、圧力をゲージ圧で1.14MPaに保持した。圧力がゲージ圧で1.14MPaで一定になるように、化合物3を連続的に添加した。7.9時間経過後に、オートクレーブを冷却して、系内の残存する化合物3をパージして反応を終了させた。得られた−SOF基を有する含フッ素ポリマー(11)の溶液を化合物5で希釈してから、化合物6を添加して、含フッ素ポリマー(11)を凝集させた。化合物5および化合物6を用いて洗浄を行った後、乾燥して、含フッ素ポリマー(11)の25.13gを得た。
次に、内容積200mLの反応容器に、該含フッ素ポリマー(11)の10g、メタノールの10g、20質量%KOH水溶液の37.5gを仕込み、80℃で16時間加熱することで加水分解して、含フッ素ポリマー(11)中の−SOF基を−SOK基に変換し、含フッ素ポリマー(12)とした。
下記(α)〜(γ)の操作を7回繰り返して、含フッ素ポリマー(12)中の−SOK基を−SOH基に変換し、−SOH基を有する含フッ素ポリマー(1)とした。
(α)含フッ素ポリマーを水洗した。
(β)含フッ素ポリマーと3規定の硫酸水溶液の30gとを60℃で1時間混合した。
(γ)含フッ素ポリマーを回収した。
含フッ素ポリマー(1)をさらに水洗、乾燥し、含フッ素ポリマー(1)の8gを得た。
フローテスターCFT−500D(島津製作所社製)を用いて測定した含フッ素ポリマー(1)のTは、225℃であった。
滴定によって求めた含フッ素ポリマー(1)のイオン交換容量は、1.10meq/gであった。
〔合成例2:ETFEの合成〕
1Lの撹拌機付きステンレス鋼製オートクレーブに、脱気後、化合物7の788g、化合物5の197g、化合物3の93.8g、化合物2の14.2gを室温において仕込んだ。ついで66℃に昇温させ、化合物8(10時間半減期温度55℃)の1質量%溶液(溶媒:化合物5)の2.9mLを仕込み、重合を開始させた。重合の進行にともない圧力が低下するため、圧力が一定になるように化合物3/化合物2=1/1モル比の混合ガスを連続的に仕込んだ。仕込みの混合ガス量が62gになった時点で内温を室温まで冷却し、残存する化合物2および3をパージし、オートクレーブを開放した。オートクレーブ内の得られた含フッ素ポリマー(2)のスラリーを化合物5で洗浄し、ガラスフィルタで濾過し、乾燥させ、含フッ素ポリマー(2)の64.8gを得た。含フッ素ポリマー(2)はETFEであった。
含フッ素ポリマー(2)中の繰り返し単位のモル比を測定したところ、化合物3に由来する繰り返し単位/化合物2に由来する繰り返し単位=49.0/51.0であった。溶融動的せん断性率測定によって求めた含フッ素ポリマー(2)の数平均分子量(Mn)は、320,000であった。溶融動的せん断性率測定は、Tuminello,W.H.,Polym.Eng.Sci.,26,1339−1347(1986)またはTuminello,W.H.,Macromolecules,26,499−503(1993)に記載された方法であり、溶融させたポリマーの動的粘弾性測定から貯蔵弾性率の周波数依存性を取得し、これを分子量に換算する手法である。
含フッ素ポリマー(2)の容量流速(Q値)は、7.3mm/秒であり、融点は281℃であった。容量流速(Q値)は、高下式フローテスターを用い、297℃、0.7MPa荷重下で、直径2.095mm、長さ8mmのノズルから単位時間に流出する含フッ素ポリマー(2)の容量(mm/秒)である。融点は、SII DSC6220型示差走査熱量計装置(セイコー電子社製)を用い、10℃/分の速度で昇温したときの融解ピークである。
〔合成例3:プロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体の合成〕
特開昭55−127412号公報に記載の製造方法にしたがってプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体(以下、含フッ素ポリマー(3)と記す。)を得た。サイズ排除クロマトグラフィによって求めた含フッ素ポリマー(3)の数平均分子量(Mn)は、160,000であった。なお、サイズ排除クロマトグラフィにより測定方法は、国際公開第2011/055760号に記載された方法を用いた。
〔例1〕
(工程(i))
全容積96mLのステンレス鋼製オートクレーブに、含フッ素ポリマー(1)の90mg、イオン交換水の30mL、撹拌子を入れて密閉し、内容物をマグネティックスターラで撹拌して充分に混合させた。
(工程(ii))
オートクレーブ内に純酸素ガスを、オートクレーブ内の圧力が0.5MPaになるまで導入した。オートクレーブ内の分子状酸素の量は、含フッ素ポリマー(1)に含まれる炭素原子のモル数の4.8倍モルであった。
(工程(iii))
オイルバスでオートクレーブ内の温度が350℃になるまで1時間かけて加熱して、オートクレーブ内の水を亜臨界水とし、該温度にて6時間撹拌翼で撹拌した。次に、オートクレーブを室温まで冷却した後、開放した。
(工程(iv))
オートクレーブに存在する水(30mL)中のフッ化物濃度を測定し、オートクレーブに存在する水中に含まれるフッ化物イオン量を算出したところ、1.69ミリモルであった。これは、用いた含フッ素ポリマー(1)に含まれるフッ素原子の60.2%に相当する。
なお、オートクレーブの内部表面をのぞいたところ、腐食は確認できなかった。
〔例2〕
含フッ素ポリマー(1)の代わりに含フッ素ポリマー(2)を用いた以外は、例1と同様に分解反応を行った。その結果、用いた含フッ素ポリマー(2)に含まれるフッ素原子の70.5%がフッ化物イオン(フッ化水素)として回収された。オートクレーブの内部表面には、腐食は確認できなかった。
〔例3〕
含フッ素ポリマー(1)の代わりに含フッ素ポリマー(3)を用いた以外は、例1と同様に分解反応を行った。その結果、用いた含フッ素ポリマー(3)に含まれるフッ素原子の85.2%がフッ化物イオン(フッ化水素)として回収された。オートクレーブの内部表面には、腐食は確認できなかった。
〔例4〕
工程(i)においてオートクレーブに水酸化カルシウムの106mgをさらに入れた以外は、例1と同様に分解反応を行った。その結果、フッ化カルシウムの65.0mgが得られた。該値は、用いた含フッ素ポリマー(1)に含まれるフッ素原子の59.3%がフッ化カルシウムとして回収されたことに相当する。なお、オートクレーブの内部表面には、腐食は確認できなかった。
〔例5〕
工程(iii)におけるオートクレーブ内の温度を350℃から380℃に変更した以外は、例1と同様に分解反応を行った。その結果、用いた含フッ素ポリマー(1)に含まれるフッ素原子の70.1%がフッ化物イオン(フッ化水素)として回収された。なお、オートクレーブの内部表面には、腐食が確認された。
〔例6〕
工程(ii)において酸素ガスの代わりにアルゴンガスを導入した以外は、例1と同様に分解反応を試みた。その結果、用いた含フッ素ポリマー(1)に含まれるフッ素原子の15.1%がフッ化物イオン(フッ化水素)として回収された。
〔例7〕
工程(i)においてオートクレーブにイオン交換水を入れなかった以外は、例1と同様に分解反応を試みた。その結果、用いた含フッ素ポリマー(1)に含まれるフッ素原子の0.8%がフッ化物イオン(フッ化水素)として回収された。
〔例8〕
工程(i)において含フッ素ポリマー(1)の代わりにポリフッ化ビニリデン(シンクエスト社製)を用いた以外は、例1と同様に分解反応を試みた。その結果、用いたポリフッ化ビニリデンに含まれるフッ素原子の98%がフッ化物イオン(フッ化水素)として回収された。
例1〜4および8は、含フッ素有機化合物を効率的に分解することができ、反応容器の腐食が抑えられた。
超臨界水を用いた例5は、含フッ素有機化合物を効率的に分解することはできたが、反応容器の一部が腐食した。
分子状酸素を用いなかった例6および水を用いなかった例7は、含フッ素有機化合物を効率的に分解することができなかった。
本発明の含フッ素有機化合物の分解方法によれば、使用済みの含フッ素ポリマー等の含フッ素有機化合物またはこれを含む材料から低分子量含フッ素化合物としてフッ素を効率よく回収できる。これにより、有限である天然資源(フッ素)を再利用できる。

Claims (5)

  1. 反応容器内にて含フッ素有機化合物を亜臨界水と接触させて分解する方法であって、
    前記含フッ素有機化合物の分解によって消費されるものを含め、前記反応容器内に存在する分子状酸素の量が、前記含フッ素有機化合物に含まれる炭素原子のモル数の1倍モル以上であり、
    前記亜臨界水中には、金属元素(ただし、アルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素を除く。)が実質的に存在せず、
    前記反応容器内の温度が、250℃以上374.15℃未満であることを特徴とする、含フッ素有機化合物の分解方法。
  2. 前記含フッ素有機化合物が、含フッ素ポリマーである、請求項1に記載の含フッ素有機化合物の分解方法。
  3. 前記含フッ素ポリマーが、炭化水素系モノマーに由来する繰り返し単位を有する含フッ素ポリマー、スルホン酸型官能基を有する含フッ素ポリマーである、請求項2に記載の含フッ素有機化合物の分解方法。
  4. 前記反応容器内に、塩基性化合物、フッ化ナトリウムおよびフッ化カリウムからなる群から選ばれる1種以上を存在させる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の含フッ素有機化合物の分解方法。
  5. 下記の工程(i)〜(iii)を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の含フッ素有機化合物の分解方法。
    (i)反応容器内に水および含フッ素有機化合物を入れる工程。
    (ii)反応容器内に分子状酸素を含む気体を導入する工程。
    (iii)反応容器内の水が亜臨界水となる圧力および温度条件下で、含フッ素有機化合物を亜臨界水と接触させて分解する工程。
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