JP2014210369A - インクジェットヘッドの物流用充填液、インクジェットヘッドおよびインクジェットヘッドの物流方法 - Google Patents
インクジェットヘッドの物流用充填液、インクジェットヘッドおよびインクジェットヘッドの物流方法 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】サーマル方式のインクジェットヘッドを物流させる際に、インク吐出口に連通するノズル流路に充填されるインクジェットヘッドの物流用充填液である。インクジェットヘッドは、インク吐出口の開口面積が100〜350μm2であるとともに、インク吐出口の周縁に親水性領域が形成されたものであり、少なくとも水溶性有機化合物および水を構成成分とする水性媒体に、染料が溶解され、染料が、物流用充填液の全質量に対し、0.2質量%以上、1質量%以下の濃度で、かつ、水溶性有機化合物に対する飽和溶解度以下の濃度で含有され、表面張力が、25mN/m以上、34mN/m以下である。
【選択図】なし
Description
本発明によれば、サーマル方式のインクジェットヘッドを物流させる際に、インク吐出口に連通するノズル流路に充填されるインクジェットヘッドの物流用充填液であって、前記インクジェットヘッドは、前記インク吐出口の開口面積が100〜350μm2であるとともに、前記インク吐出口の周縁に親水性領域が形成されたものであり、少なくとも水溶性有機化合物および水を構成成分とする水性媒体に、染料が溶解され、前記染料が、前記物流用充填液の全質量に対し、0.2質量%以上、1質量%以下の濃度で、かつ、前記水溶性有機化合物に対する飽和溶解度以下の濃度で含有され、表面張力が、25mN/m以上、34mN/m以下であることを特徴とするインクジェットヘッドの物流用充填液が提供される。
また、本発明によれば、サーマル方式のインクジェットヘッドであって、前記インク吐出口の開口面積が100〜350μm2であるとともに、前記インク吐出口の周縁に親水性領域が形成されたものであり、前記インク吐出口に連通するノズル流路に、本発明の物流用充填液が充填されていることを特徴とするインクジェットヘッドが提供される。
本発明によれば、サーマル方式のインクジェットヘッドを物流させるためのインクジェットヘッドの物流方法であって、前記インクジェットヘッドとして、インク吐出口の開口面積が100〜350μm2であるとともに、前記インク吐出口の周縁に親水性領域が形成されたものを用い、前記インク吐出口に連通するノズル流路に、本発明の物流用充填液を充填した状態でインクジェットヘッドを物流させることを特徴とするインクジェットヘッドの物流方法が提供される。
「物流用充填液」とは、サーマル方式のインクジェットヘッドを物流させる際に、前記インク吐出口に連通するノズル流路に充填される液体である。この物流用充填液はインクジェットヘッドを物流させるに先立って生産者(製造メーカー)によってノズル流路に充填される。そして、物流用充填液は消費者(ユーザー)がインクジェットヘッドを使用する際に印刷用インク(記録液)と置換され、ヘッド外部に排出される。本発明の物流用充填液は、インク吐出口の開口面積が100〜350μm2の小口径のインクジェットヘッド、インク吐出口の周縁に親水性領域が形成された親水ヘッドに好適に用いることができる。
本発明の物流用充填液は、色材として染料を含有している。所定量の染料を含有させることで、水性媒体(水、水溶性有機化合物等)やヘッドの構成材料等に微量含まれる不純物がヘッドの親水性領域に付着するために起こる親水性の低下を有効に防止することができる。色材として顔料ではなく染料を用いたのは、顔料のように顔料粒子が沈降してインク吐出口に固着する現象が生じ難く、前記固着に起因する「よれ印字」やノズルの詰まり(不吐ノズルの発生)等の不具合を生じ難いためである。また、所定量の染料を含有させることで、物流用充填液で印字検査を行うことが可能となる。
イエロー染料としては、C.I.ダイレクトイエロー、C.I.アシッドイエロー、C.I.リィアクティブイエロー、C.I.フードイエロー等を挙げることができる。具体的には、
(1)C.I.ダイレクトイエロー8、11、12、27、28、33、39、44、50、58、85、86、87、88、89、98、100、110、132、142;
(2)C.I.アシッドイエロー1、3、7、11、17、23、25、29、36、38、40、42、44、76、98、99;
(3)C.I.リィアクティブイエロー2、3、17、25、37、42;
(4)C.I.フードイエロー3;等を用いることが好ましい。
レッド染料としては、C.I.ダイレクトレッド、C.I.アシッドレッド、C.I.リィアクティブレッド、C.I.フードレッド等を挙げることができる。具体的には、
(1)C.I.ダイレクトレッド2、4、9、11、20、23、24、31、39、46、62、75、79、80、83、89、95、197、201、218、220、224、225、226、227、228、229、230;
(2)C.I.アシッドレッド6、8、9、13、14、18、26、27、32、35、37、42、51、52、80、83、87、89、92、106、114、115、133、134、145、158、198、249、265、289;
(3)C.I.リィアクティブレッド7、12、13、15、17、20、23、24、31、42、45、46、59;
(4)C.I.フードレッド87、92、94;等を用いることが好ましい。
バイオレット染料としては、C.I.ダイレクトバイオレット等を挙げることができる。具体的には、C.I.ダイレクトバイオレット107;等を用いることが好ましい。
ブルー染料としては、C.I.ダイレクトブルー、C.I.アシッドブルー、C.I.リィアクティブブルー等を挙げることができる。具体的には、
(1)C.I.ダイレクトブルー1、15、22、25、41、76、77、80、86、87、90、98、106、108、120、158、163、168、199、226;
(2)C.I.アシッドブルー1、7、9、15、22、23、25、29、40、43、59、62、74、78、80、90、100、102、104、117、127、138、158、161;
(3)C.I.リィアクティブブルー4、5、7、13、14、15、18、19、21、26、27、29、32、38、40、44、100;等を用いることが好ましい。
ブラック染料としては、C.I.ダイレクトブラック、C.I.アシッドブラック、C.I.フードブラック等を挙げることができる。具体的には、
(1)C.I.ダイレクトブラック17、19、22、31、32、51、62、71、74、112、113、154、168、195;
(2)C.I.アシッドブラック2、48、51、52、110、115、156;
(3)C.I.フードブラック1、2;等を用いることが好ましい。
本発明の物流用充填液は、少なくとも水溶性有機化合物および水を構成成分とする水性媒体に、染料が溶解されている。
「水溶性有機化合物」とは、水と自由に混和するか、或いは水に対する溶解度(25℃)が20g/100g以上の有機化合物を意味する。更に、本発明においては、前記水溶性有機化合物が、20℃における蒸気圧が3Pa以下の水溶性有機溶剤、即ち難揮発性の化合物であることが好ましい。このような化合物を用いることによって、水性媒体中の揮発成分(水等)が揮発してしまった場合でも、染料の溶解状態を維持することができ、染料の析出や固化を防止することができる。また、水溶性有機化合物は、染料に対する溶解性を示すものが好ましい。
ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ペンタメチレングリコール、トリメチレングリコール、ブチレングリコール、イソブチレングリコール、チオジグリコール、1,2−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,2ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、グリセリン、ジグリセリン等;
γ−ブチロラクトン、ジアセチン、リン酸トリエチル等;
(3)低級アルコキシアルコール類:
2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール等;
(4)アミン類:
エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタメチルジエチレントリアミン等;
ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等;
(6)複素環類:
2−ピロリドン、N−エチルピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、モルホリン、N−エチルモルホリン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、イミダゾール、メチルイミダゾール、ヒドロキシイミダゾール、ジメチルアミノピリジン、1,3−プロパンスルトン、ヒドロキシエチルピペラジン、ピペラジン等;
水としては、イオン交換水を用いることが好ましい。水の含有率は、物流用充填液の全質量に対し、30質量%以上、90質量%以下であることが好ましい。30質量%以上とすることにより、染料および水溶性有機化合物を水和させることができ、物流時における染料や水溶性有機化合物の凝集を防止することができる。一方、90質量%以下とすることにより、相対的に水溶性有機化合物の量が増え、水性媒体中の揮発成分(水等)が揮発してしまった場合でも、染料の溶解状態を維持することができ、染料の析出や固化を防止することができる。前記効果をより確実に発揮させるためには、水の含有率を55質量%以上、85質量%以下とすることが更に好ましい。
水性媒体には、界面活性剤が含有されていることが好ましい。界面活性剤は物流用充填剤の吐出安定性を向上させる効果、物流用充填液の表面張力と濡れ性を調整する効果がある。界面活性剤の種類は特に限定されないが、ノニオン性界面活性剤を用いることが好ましい。中でもHLB値(Hydrophile-Lipophile Balance)が10以上の親水性が高いノニオン性界面活性剤が好ましい。具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物等を用いることが好ましい。
水性媒体には、目的に応じて、界面活性剤以外の添加剤が添加されていてもよい。そのような添加剤としては、例えば、消泡剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、酸化防止剤等を挙げることができる。
物流用充填液は、表面張力を25mN/m以上、34mN/m以下に調整する。表面張力を25mN/m以上とすることにより、インク吐出口のメニスカスを維持することができ、物流中に物流用充填液がインク吐出口から流出してしまう不具合を防止することができる。表面張力を34mN/m以下とすることにより、インク吐出口の周縁に形成された親水性領域の親水性低下を防止することができる。従って、物流用充填液を記録液に置換して印刷を行う際に、よれ印字やサテライトの増加を防止することができる。
物流用充填液は、粘度が1.3mPa・s以上、5.0mPa・s以下のものが好ましい。物流用充填液の粘度を前記範囲とすることにより、物流用充填液によって印字検査を行うことが可能となる。この点については、物流方法の項で具体的に説明する。
以下、本発明のインクジェットヘッドの一の実施形態について、図1A〜図1Cおよび図2A〜図2Cを用いて説明する。但し、本発明のインクジェットヘッドは、以下に説明する構成に限定されるものではない。
まず、ノズル部分の構造について図1A〜図1Cを用いて説明する。図1Aはインクジェットヘッドのノズルの内部構造を模式的に示す上面図である。図1Bは図1Aに示すノズルの内部構造を模式的に示す側面図である。図1Cは図1Aに示すノズルのインク吐出口を模式的に示す正面図である。
本発明のインクジェットヘッドは、インク吐出口の周縁に親水性領域が形成されたものである。そして、インク吐出口の周縁に、物流用充填液との接触角が60°以下の親水性領域が形成されていることが好ましく、接触角が0°の(即ち、接触角を形成しない)親水性領域が形成されていることが更に好ましい。接触角はJIS R 3257に準拠して、接触角計(例えば、エキシマ社製、商品名「SImage−mini」等)を用い、ATAN1/2θ法により測定することができる。ここに言う「物流用充填液」とは、本発明の物流用充填液であり、表面張力が25mN/m以上、34mN/m以下であるものが好ましい。
ノズル流路159を仕切るノズル壁153、ノズル天板162、ノズル底板164は、例えば感光性樹脂により形成することができる。感光性樹脂としては、ラジカル重合反応を利用したネガ型レジスト、カチオン重合反応を利用したネガ型レジスト等を挙げることができる。
次に、インクジェットヘッドの全体構造について図2A〜図2Cを用いて説明する。図2Aは、本発明のインクジェットヘッドの構造例を説明するための正面図であり、図2Bは、図2AのA−A断面図であり、図2Cは、図2AのB−B断面図である。説明の便宜上、正面図において液体供給ケースカバーは省略している。
前記インク吐出口に連通するノズル流路に、本発明の物流用充填液が充填されている。物流用充填液は、インクジェットヘッド内部の空洞のうち、少なくともインク吐出口から共通液室までの部分(即ち、ノズル流路および共通液室)に充填することが好ましい。充填方法としては、例えば物流用充填液をインクタンクに注入し、前記インクタンクをインクジェット記録装置に接続し、吸引動作によりインクジェットヘッドのノズル流路内に物流用充填液を充填する方法等を挙げることができる。
以下、参考までに、本発明のインクジェットヘッドに好ましく用いられるインクジェット記録装置(以下、単に記録装置ともいう)について、図3を用いて説明する。図3は、インクジェット記録装置の全体構成を模式的に示す正面図である。
本発明の物流方法は、サーマル方式のインクジェットヘッドの物流方法である。そして、前記インクジェットヘッドとして、既に説明した本発明のインクジェットヘッドを用い、前記インクジェットヘッドのインク吐出口に連通するノズル流路に、本発明の物流用充填液を充填した状態でインクジェットヘッドを物流させるものである。本発明の物流方法には、ヘッドを単独で物流させる形態、ヘッドをインクジェット記録装置に搭載した状態で物流させる形態の双方が含まれる。ヘッドを記録装置に搭載した状態で物流させる形態としては、例えばキャッピングした状態のヘッドを記録装置の本体に装着した状態で物流させる形態等を挙げることができる。
まず、実施例および比較例で用いる染料について、水溶性有機化合物に対する飽和溶解度(25℃)を測定した。染料としては、C.I.フードブラック2(FB−2)、C.I.ダイレクトブルー199(DBL199)、C.I.ダイレクトイエロー86(DY86)を用いた。水溶性有機化合物としては、グリセリン(GLY)、トリエチレングリコール(TEG)、ジエチレングリコール(DEG)、GLYとTEGの1:1混合溶液、GLY:TEG:エチレン尿素(EtU)の10:10:1混合液、GLY:TEG:トリメチロールプロパン(TMP)の10:10:1混合液を用いた。また、GLY:TEG:EtUの10:10:1混合液およびGLY:TEG:TMPの10:10:1混合液については、GLYとTEGの1:1混合液に対しEtUまたはTMPを0.1の割合で混合することにより調製した。
染料としてC.I.フードブラック2(FB−2)を、水溶性有機化合物としてグリセリンを、ノニオン系界面活性剤としてPOE(10)アセチレングリコール(川研ファインケミカル社製「アセチレノールE100」)を用いた。FB−2(0.2質量部)、グリセリン(20質量部)、ノニオン系界面活性剤(0.5質量部)に、イオン交換水を加え、全体を100質量部とした。この組成物を2時間撹拌した後、前記組成物を1μmのメンブレンフィルターで濾過し、イオン交換樹脂層を通過させてカルシウム等の不純物を除去することにより、実施例1の物流用充填液を得た。
FB−2の添加量を0.4質量部に変更した点以外は、実施例1と同様にして、実施例2の物流用充填液を得た。
FB−2の添加量を0.5質量部に変更した点以外は、実施例1と同様にして、実施例3の物流用充填液を得た。
FB−2の添加量を0.8質量部に変更した点以外は、実施例1と同様にして、実施例4の物流用充填液を得た。
FB−2の添加量を0.8質量部に変更し、水溶性有機化合物の添加量を40質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例5の物流用充填液を得た。
水溶性有機化合物を、トリエチレングリコールに変更した点以外は、実施例3と同様にして、実施例6の物流用充填液を得た。
水溶性有機化合物を、ジエチレングリコールに変更した点以外は、実施例3と同様にして、実施例7の物流用充填液を得た。
水溶性有機化合物を、グリセリン:トリエチレングリコール(1:1)混合液に変更した点以外は、実施例3と同様にして、実施例8の物流用充填液を得た。
染料を、C.I.ダイレクトイエロー86(DY86)に変更し、水溶性有機化合物を、グリセリン:トリエチレングリコール:エチレン尿素(10:10:1)混合液に変更した点以外は、実施例3と同様にして、実施例9の物流用充填液を得た。
染料を、DY86に変更し、水溶性有機化合物を、グリセリン:トリエチレングリコール:トリメチロールプロパン(10:10:1)混合液に変更した点以外は、実施例3と同様にして、実施例10の物流用充填液を得た。
染料を、C.I.ダイレクトブルー199(DBL199)に変更した点以外は、実施例3と同様にして、実施例11の物流用充填液を得た。
染料を、DY86に変更した点以外は、実施例3と同様にして、実施例12の物流用充填液を得た。
ノニオン系界面活性剤の添加量を1質量部に変更した点以外は、実施例11と同様にして、実施例13の物流用充填液を得た。
ノニオン系界面活性剤の添加量を0.3質量部に変更した点以外は、実施例11と同様にして、実施例14の物流用充填液を得た。
FB−2の添加量を0.1質量部に変更した点以外は、実施例1と同様にして、比較例1の物流用充填液を得た。
FB−2の添加量を1.5質量部に変更し、グリセリンの添加量を40質量部とした点以外は、実施例1と同様にして、比較例2の物流用充填液を得た。
グリセリンの添加量を10質量部とした点以外は、実施例3と同様にして、比較例3の物流用充填液を得た。
ノニオン系界面活性剤の添加量を0.1質量部に変更した点以外は、実施例3と同様にして、比較例4の物流用充填液を得た。
界面活性剤を、ノニオン系界面活性剤からフッ素系の両性界面活性剤(AGCセイケミカル社製「サーフロンS231」)に変更した点以外は、実施例3と同様にして、比較例5の物流用充填液を得た。
比較例6においては実施例3の物流用充填液を用いた。但し、以下の検討においてインクジェットヘッドとして撥水性ヘッドを用いた。
図1A〜図1Cに示すノズル構造を有し、図2A〜図2Cに示す全体構造を有するインクジェットヘッドを作製した。インク吐出口の開口面積は225μm2とし、4800個のノズルがノズル列を形成する構造とした。ノズル列の長さは4インチとした。ヘッドの解像度は1200dpiとした。親水性領域はフェイス面全体に形成した。図1Cに示すようにフェイス面には、Siからなる天板部材161および底板部分163、並びにエポキシ系感光性樹脂からなるノズル天板162、ノズル底板164およびノズル壁153が露出している。これらの部材の端面からなるフェイス面をUV/O3処理することにより親水化処理し、親水性領域を形成した。前記親水性領域と実施例1の物流用充填液との接触角は45°であった(以下、このヘッドを「親水性ヘッド」と記す場合がある)。
実施例および比較例の物流用充填液をインクタンクに注入し、前記インクタンクを図3に示す記録装置100(インクジェットプリンタ、キヤノンファインテック社製「LX−P5500」)に接続し、吸引動作によりインクジェットヘッドのノズル流路内に前記物流用充填液を充填した。実施例1〜14および比較例1〜5においては前記親水性ヘッドを用いた。比較例6においては前記撥水性ヘッドを用い、物流用充填液としては実施例3の物流用充填液と同一組成のものを用いた。
物流用充填液を充填した後、引き続き前記記録装置100により、インクジェットヘッドのヒーターに連続的にヒートパルスを30万発与え、物流用充填液によりノズルチェックのパターンを印刷し、印字検査を行った。
○:不吐ノズルがない
△:不吐ノズルが1〜2本ある
×:不吐ノズルが3本以上ある、あるいは隣接する不吐ノズルがある
物流用充填液による印字検査の後、インクジェットヘッドを前記記録装置から外してアルミパックに梱包し、60℃の条件下、2週間保存した。前記保存後、インクジェットヘッドのインク吐出口の固着がないことを確認し、前記インクジェットヘッドを記録液が注入されたインクタンクを搭載した前記記録装置に接続し、吸引動作によりインクジェットヘッドのノズル流路内の物流用充填液を記録液に置換した。記録液としては、前記記録装置用のBkインク(キヤノンファインテック社製、LX−P5500用Bkインク「BJI−P521Y」)を用いた。
○:前記回復シーケンス1回でインク置換が完了した
△:前記回復シーケンス2回でインク置換が完了した
×:前記回復シーケンス2回でインク置換が完了しなかった
前記インク置換が完了した後、記録媒体としてインクジェットプリンタ用フォトペーパー(キヤノン社製「PR−101」)を用いて、物流用充填液と同様の方法により印字検査を行った。評価基準は以下の通りとした。
◎:「よれ印字」および不吐ノズルがない
○:隣接する「よれ印字」および不吐ノズルはないが、「よれ印字」が1〜3本ある
△:隣接する「よれ印字」および不吐ノズルはないが、「よれ印字」が4〜5本ある
×:隣接する「よれ印字」または不吐ノズルがあるか、「よれ印字」が6本以上ある
Claims (19)
- サーマル方式のインクジェットヘッドを物流させる際に、インク吐出口に連通するノズル流路に充填されるインクジェットヘッドの物流用充填液であって、
前記インクジェットヘッドは、前記インク吐出口の開口面積が100〜350μm2であるとともに、前記インク吐出口の周縁に親水性領域が形成されたものであり、
少なくとも水溶性有機化合物および水を構成成分とする水性媒体に、染料が溶解され、
前記染料が、前記物流用充填液の全質量に対し、0.2質量%以上、1質量%以下の濃度で、かつ、前記水溶性有機化合物に対する飽和溶解度以下の濃度で含有され、
表面張力が、25mN/m以上、34mN/m以下であることを特徴とするインクジェットヘッドの物流用充填液。 - 前記水溶性有機化合物が、20℃での蒸気圧が3Pa以下の水溶性有機溶剤である請求項1に記載の物流用充填液。
- 前記水溶性有機化合物として、前記水溶性有機溶剤に、20℃で固体の水溶性有機化合物を溶解させた溶液を用いる請求項2に記載の物流用充填液。
- 前記水溶性有機化合物が、前記物流用充填液の全質量に対し、40質量%以下の濃度で含有されている請求項1〜3の何れか1項に記載の物流用充填液。
- 粘度が、1.3mPa・s以上、5.0mPa・s以下である請求項1〜4の何れか1項に記載の物流用充填液。
- サーマル方式のインクジェットヘッドであって、
前記インク吐出口の開口面積が100〜350μm2であるとともに、前記インク吐出口の周縁に親水性領域が形成されたものであり、
前記インク吐出口に連通するノズル流路に、請求項1〜5の何れか1項に記載の物流用充填液が充填されていることを特徴とするインクジェットヘッド。 - 前記インク吐出口の周縁に、前記物流用充填液との接触角が60°以下の親水性領域が形成されている請求項6に記載のインクジェットヘッド。
- ノズル壁によって仕切られた複数のノズル流路が形成され、
前記ノズル流路に連通する複数のインク吐出口が形成され、
各々のノズル流路の内部にヒーターが配置されている請求項6または7に記載のインクジェットヘッド。 - 前記ノズル壁が、エポキシ系感光性樹脂により形成されている請求項8に記載のインクジェットヘッド。
- 前記複数のノズル流路と連通した共通液室と、前記共通液室と連通した開口部と、前記開口部と連通したメイン液体供給室と、前記メイン液体供給室と連通する液体供給路と、前記液体供給路と連通する液体供給室と、前記液体供給室を、液体供給の際の流れに沿って上流側より第一液体供給室と、第二液体供給室とに分離するように配設された供給フィルターと、前記メイン液体供給室の一部に設けられた気液分離部と、前記気液分離部と連通する空気室と、を備え、
前記ノズル流路と、前記共通液室と、前記開口部と、前記メイン液体供給室と、前記液体供給路と、前記液体供給室と、前記供給フィルターと、前記気液分離部と、前記空気室とが、前記ノズル流路の配列方向と前記液体の吐出方向を含む平面に対して、平行平面上に配置され、
前記メイン液体供給室と、前記液体供給路と、前記供給フィルターと、前記気液分離部と、前記空気室とが、各々積層することなく配置されている請求項8または9に記載のインクジェットヘッド。 - 解像度が600dpi以上、前記複数のノズル流路によって形成されるノズル列の長さが2インチ以上である請求項6〜10の何れか1項に記載のインクジェットヘッド。
- サーマル方式のインクジェットヘッドを物流させるためのインクジェットヘッドの物流方法であって、
前記インクジェットヘッドとして、インク吐出口の開口面積が100〜350μm2であるとともに、前記インク吐出口の周縁に親水性領域が形成されたものを用い、
前記インク吐出口に連通するノズル流路に、請求項1〜5の何れか1項に記載の物流用充填液を充填した状態でインクジェットヘッドを物流させることを特徴とするインクジェットヘッドの物流方法。 - 前記インクジェットヘッドとして、前記インク吐出口の周縁に、前記物流用充填液との接触角が60°以下の親水性領域が形成されたものを用いる請求項12に記載の物流方法。
- 前記ノズル流路に、粘度が、1.3mPa・s以上、5.0mPa・s以下の物流用充填液を充填し、前記物流用充填液で印字検査を行い、
その後、前記ノズル流路に、前記物流用充填液を充填した状態でインクジェットヘッドを物流させる請求項12または13に記載の物流方法。 - 前記インクジェットヘッドとして、ノズル壁によって仕切られた複数のノズル流路が形成され、前記ノズル流路に連通する複数のインク吐出口が形成され、各々のノズル流路の内部にヒーターが配置されたものを用いる請求項12〜14の何れか1項に記載の物流方法。
- 前記インクジェットヘッドとして、前記ノズル壁が、エポキシ系感光性樹脂により形成されている請求項15に記載の物流方法。
- 前記インクジェットヘッドとして、前記複数のノズル流路と連通した共通液室と、前記共通液室と連通した開口部と、前記開口部と連通したメイン液体供給室と、前記メイン液体供給室と連通する液体供給路と、前記液体供給路と連通する液体供給室と、前記液体供給室を、液体供給の際の流れに沿って上流側より第一液体供給室と、第二液体供給室とに分離するように配設された供給フィルターと、前記メイン液体供給室の一部に設けられた気液分離部と、前記気液分離部と連通する空気室と、を備え、前記ノズル流路と、前記共通液室と、前記開口部と、前記メイン液体供給室と、前記液体供給路と、前記液体供給室と、前記供給フィルターと、前記気液分離部と、前記空気室とが、前記ノズル流路の配列方向と前記液体の吐出方向を含む平面に対して、平行平面上に配置され、前記メイン液体供給室と、前記液体供給路と、前記供給フィルターと、前記気液分離部と、前記空気室とが、各々積層することなく配置されているものを用いる請求項15または16に記載の物流方法。
- 前記インクジェットヘッドとして、解像度が600dpi以上、前記複数のノズル流路によって形成されるノズル列の長さが2インチ以上のものを用いる請求項12〜17の何れか1項に記載の物流方法。
- 前記インクジェットヘッドを、インクジェット記録装置の本体に装着した状態で物流させる請求項12〜18の何れか1項に記載の物流方法。
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