JP2010076396A - インクジェット記録ヘッド - Google Patents

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亮二 柬理
Shuichiro Tanimoto
修一郎 谷本
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雅彦 久保田
Yutaka Kurabayashi
豊 倉林
Hideto Yokoi
英人 横井
Shinichi Sakurada
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Abstract

【課題】 主に物流環境等における、シリコンもしくはシリコン化合物からなるインクジェット記録ヘッドの構成部材のインクによる溶解を防止し、信頼性の高いインクジェットプリントヘッドを提供する。
【解決手段】 インクを吐出して記録を行う記録ヘッド部と、前記ヘッド部へ供給されるインクを収納し、前記ヘッド部と自在に着脱可能なインクタンク部と、が一体化されて使用されるインクジェット記録ヘッドにおいて、
前記ヘッド部に保存用液体として、シリコンの腐食を防止する添加剤を含む液体が封入されている。
【選択図】 図1

Description

本発明は、インクジェット記録方式に用いる記録液小滴を発生するためのインクジェット記録ヘッド及び、インクジェット記録ヘッドの保存用液体に関する。
インクジェット記録ヘッドには、交換可能なインクカートリッジによりインク供給を行い半永久的に使用可能なヘッド(以下、PHと称する。)と、インクタンクとヘッドを一体化し所定のインク量ごとに定期的に交換するヘッド(以下、DHと称する。)と、に大別される。また、記録ヘッド部と記録ヘッドに対して供給されるインクタンク部とを着脱自在にできる構成とし、使用時には両者を接続して一体化し、それぞれが独立に交換可能な様にした形式のヘッド(以下、SPHと称する。)も提案されている。この構成のカートリッジにおいては、長期保存や物流時に好適な保存方法が(特許文献1、特許文献2)等に開示されている。
一方、インクジェット記録ヘッドのチップ部は、インク圧力発生素子及びその駆動回路と、流路、吐出口、インク供給口等からなるインク吐出構造体と、を同一基板上に作り込む事が容易である事から、単結晶シリコン基板が用いられることが多い。単結晶シリコン基板を用いたインクジェット記録ヘッドチップの製造方法の例として、インク供給口の形成にシリコンの結晶異方性エッチングを用いる方法が多数開示されている(特許文献3他)
特許文献4によれば、レーザー、サンドブラスト等の加工技術と結晶異方性エッチングの組み合わせにより(110)面や他の高次の面からなる貫通口を形成する手法が開示されている。また、インク流路や吐出圧力発生素子の振動板等にシリコンをエッチングした部材を用いる例も多数開示されている。
これらのシリコン部材は、インクに対して極微量の溶出が起こることが知られている。特にアルカリ溶液による異方性エッチングでエッチング速度が速い(110)面や高次の面は、少なからずシリコンの溶解がおこり、とりわけ、日中の高温での環境にさらされる物流環境などでは、ヘッドに不都合を起こす可能性があり、製品開発に当たって、入念な環境試験、評価が必要とされていた。この懸念は、不都合が生じた場合に簡単にヘッドを交換することができるDHよりも、半永久的にヘッドを使用するPHや、交換は可能であってもある程度長期間使用することを前提に設計されたSPHの場合に強くもたれていた。
特開平5−169676号公報 特開2000−127442号公報 特開平9−11479号公報 特開2004−148824号公報
本発明は、上記に鑑みなされた物である。すなわち、主に物流環境等における、シリコンもしくはシリコン化合物からなるインクジェット記録ヘッドの構成部材のインクによる溶解を防止し、信頼性の高いインクジェットプリントヘッドを提供することを目的としている。
上記目的を達成するために、本発明のインクジェット記録ヘッドは、インクを吐出して記録を行う記録ヘッド部と、前記ヘッド部へ供給されるインクを収納し、前記ヘッド部と自在に着脱可能なインクタンク部と、が一体化されて使用されるインクジェット記録ヘッドにおいて、前記ヘッド部に保存用液体として、シリコンの腐食を防止する添加剤を含む液体を封入することを特徴とする。
なお、本発明は、記録ヘッド部とインクタンク部が着脱自在であるヘッドで有効であって、ヘッド部自体もインクジェットプリンタ本体と独立して交換可能であるか否かは問わない。すなわち、PH、SPHのいずれにおいても効果的である。
本発明によれば、シリコンもしくはシリコン化合物からなるインクジェット記録ヘッドの構成部材のインクによる溶解を防止することが可能となる。特に日中の高温下にさらされる可能性がある物流環境等における、構成部材のインクによる溶解を防止することが可能となる。その結果、インクジェット記録ヘッドの信頼性が向上するのみならず、個々のヘッド、プリンタの物流環境や、在庫としての保管期間等々の違いによるヘッドの変化が極小に押さえられることで、ヘッド使用開始時のヘッド特性が安定する。また、ヘッド特性が安定することから、設計自由度が高まり、より高性能、高信頼性のインクジェット記録ヘッドを提供することが可能になる。
次に、本発明の詳細を実施例の記述に従って説明する。
以下、本発明に係る実施態様例を詳細に説明する。
保存用液体としては、インクジェット記録に用いるインクそのものや、インクから着色成分を除去した成分の液体、アルカリ性液体などが用いられる。これにR−SO−Rで表される化合物を添加することで、シリコンまたはシリコン化合物からなるヘッド構成部材の溶解を押さえることが可能となる。上式で表される化合物としては、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジ(2−ヒドロキシエチル)スルホン、ジn−プロピルスルホン、ジイソプロピルスルホン、エチルメチルスルホン、イソプロピルメチルスルホン、イソプロピルエチルスルホンからなる群より選択することが可能である。
シリコンまたはシリコン化合物からなるヘッド構成部材としては、例えばシリコン基板に貫通口を形成することでなされるインク供給口があげられる。インク供給口は、サンドブラスト、レーザー加工、ドライエッチングの他結晶異方性ウェットエッチング、もしくはこれらの組み合わせによる加工が可能である。また、同様にインク流路やオリフィスプレートをシリコンで形成する場合、吐出圧力発生素子として振動板を用いるような場合にも適用可能である。これらの部材にシリコン以外に、シリコン化合物として窒化シリコン膜や酸化シリコン膜による形成にも適用可能である。更に、基板上に形成された素子を保護するための保護膜として、シリコンや前述のシリコン化合物を形成している場合にも効果的である。
以下に実施例を挙げ、本発明を更に具体的に説明する。
図1は、本発明を適用可能なインクジェット記録ヘッドの斜視図である。
本実施例では、シリコンの溶解を抑制する化合物を添加した保存用液体によるシリコンの溶解特性について述べる。
まず、サンプルチップとして、あらかじめ熱酸化シリコン膜102(約7000Å)を形成した(100)、(110)、(111)各方位のシリコンウェハ101(図2a)にフォトレジスト103(東京応化工業製OFPR−PR8 PM(OFPRは登録商標))により約1mm幅の矩形のパターン104を形成する。(図2b)前記フォトレジストパターンをマスクに酸化シリコン膜を緩衝フッ酸水溶液(ダイキン工業(株)社製 バッファードフッ酸110U)によりエッチングした後、マスクとして使用したフォトレジストをレジスト剥離液(東京応化工業社製剥離液104)を用いて剥離する。(図2c)次いで、ウェハを適当なサイズに切断し、シリコン表面に酸化シリコン膜による矩形パターンが形成されたサンプルチップが完成した。
次いで、保存用液体として、マゼンダ染料+グリセリン+エチレン尿素+水を混合した物と、この混合液体にシリコンの溶解を抑制する添加物の一例として、ジエチルスルホンを3重量%の濃度で添加した物の2サンプルを準備した。密閉容器にこれらの保存用液体を充填し、先に作成したシリコンのサンプルチップを浸漬し、60℃で7日間保存した後、サンプルチップを引き上げ、純水で洗浄し、矩形パターン部の段差を測定した。測定値は、あらかじめは測定しておいた、酸化シリコン膜の段差を差し引き、シリコンの溶解による段差量を得た。(図3)以下、表1にシリコン溶解段差の測定結果を示す。なお、段差の測定には接触式段差計(ケーエルエーテンコール社製 アルファステップ200)を用いた。
表1に示す様に、ジエチルスルホンの添加によってシリコンの溶解が抑制されることが確認された。
なお、本実施例では、サンプルチップのパターンを熱酸化シリコンを用いて形成した。熱酸化シリコンは、非常に緻密な膜構造であるために、今回用いた保存用液体では、ほとんど溶解しない。しかし、組成の異なる保存用液体では、この限りではない。
Figure 2010076396
本実施例ではインク供給口として、シリコン基板を貫通するスルーホールを形成した場合について述べる。
吐出圧力発生素子として、電機熱変換素子202及び素子駆動回路(図示せず)、保護膜203を形成した(100)方位のシリコン基板裏面201に、あらかじめ、フォトレジスト204(東京応化社製OFPR−PR8 PM)を用いて、インク供給口パターン205を形成しておく。次いで、基板表面側に後に溶解可能な樹脂層としてインク流路型材207となるパターンを形成する。ここでは、東京応化工業社製ODUR−1010(ODURは登録商標)をUSHIO社製UX−3000を用いてDEEPUV光で約20000mJ/cmの照射を行いパターニングした(図4b)。次いで、インク流路型材となるパターン上に下記表1の組成からなるネガ型感光性樹脂をスピンコートした。次いで、この樹脂層206をキヤノン社製ミラープロジェクションアライナー(MPA−600Super(MPAは登録商標))のUV光にて露光、現像し、インク吐出口209を形成した(図4c)。
Figure 2010076396
次いで、基板表面側に形成したインク吐出口を保護するための保護材210として東京応化工業製OBCを塗布する(図4d)。この後、基板裏面側に形成したインク供給口パターンのフォトレジストをマスクにあらかじめ形成してあった酸化シリコン膜206をエッチングする。(ダイキン工業(株)社製バッファードフッ酸110Uを使用)(図4e)次いで、YAGレーザーを用いて、インク供給口パターン内側に止まり穴211を形成した(図4f)後、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(83℃、22%)による結晶異方性エッチングによりインク供給口212を形成した(図4g)。レーザー加工と異方性エッチングを組み合わせることにより幅が狭いスルーホールを形成することができる。更に、保護材のOBCをキシレンを用いて除去し、基板表面よりUSHIO製CE−9000により27J/cmの全面照射を行い、乳酸メチル中に超音波を付与しつつ浸漬し、溶解可能な樹脂を溶出した。
次いで、200℃/1時間加熱し、被覆樹脂層を完全に硬化させインクジェット記録ヘッドチップが完成した。(以上、図4h)
次いで保存用液体として、マゼンダ染料+グリセリン+エチレン尿素+水を混合した物と、この混合液体にシリコンの溶解を抑制する添加物の一例として、ジ(2−ヒドロキシエチル)スルホンを5重量%の濃度で添加した物の2サンプルを準備した。痕保存用液体を密閉容器に充填し、前記のインクジェット記録ヘッドチップを浸漬し、60℃で、30日間保存した。浸漬終了後、チップを切断し、図5に示したようにインク供給口の断面を詳細に観察したところ、ジ(2−ヒドロキシエチル)スルホンを添加しない液体でのサンプルでは、スルーホール側面部の幅が、約5μm広がったのに対し、ジ(2−ヒドロキシエチル)スルホンを添加した液体に浸漬したサンプルでは、ほとんど寸法変化が見られなかった。
本発明を適用可能なインクジェット記録ヘッドの斜視図である。 実施例1における、インクによるシリコンの溶解特性を調べるためのサンプル作成のフロー図である。 実施例1における、シリコンの溶解量測定の概念図である。 実施例2における、インクジェット記録ヘッドの製造プロセスを示したフロー図である。図1のA−A‘断面図として示す。 実施例2における、インク供給口の寸法変化の測定を示した概念図である。図1のA−A‘断面図として示す。
符号の説明
101 (100)、(110)、(111)各方位のシリコン基板
102 熱酸化シリコン膜
103 レジスト
104 矩形パターン
201 シリコン基板
202 電機熱変換素子
203 保護膜
204 レジスト
205 インク供給口パターン
206 酸化シリコン膜
207 インク流路型材
208 ネガ型感光性樹脂からなる樹脂層
209 インク吐出口
210 インク吐出口を保護するための保護材
211 止まり穴
212 インク供給口

Claims (7)

  1. インクを吐出して記録を行う記録ヘッド部と、前記ヘッド部へ供給されるインクを収納し前記ヘッド部と自在に着脱可能なインクタンク部とが一体化されて使用されるインクジェット記録ヘッドにおいて、
    前記ヘッド部に保存用液体として、シリコンの腐食を防止する添加剤を含む液体が封入されていることを特徴とするインクジェット記録ヘッド。
  2. 前記記録ヘッド部は、インクを吐出するためのインク吐出圧力発生素子と、インクを吐出する吐出口と、前記吐出口に連通し吐出口から吐出するインクを供給するためのインク流路及びインク供給口とを有し、インクが接触する部材の少なくとも一部にシリコンまたはシリコン化合物が用いられている事を特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録ヘッド。
  3. 前記インク供給口の形成が、シリコン基板に貫通口を形成することで行われることを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録ヘッド。
  4. 前記インク吐出口、インク流路、インク吐出圧力発生素子を形成する部材の少なくとも一部がシリコンもしくはシリコン化合物である事を特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録ヘッド。
  5. 前記シリコン化合物は、酸化シリコン、窒化シリコンのいずれかであることを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録ヘッド。
  6. 前記シリコンの腐食を防止する添加剤は、下記式1で示される化合物を含む事を特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載のインクジェット記録ヘッド。
    式1 R−SO−R
    (式1においてR、Rは炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシル基を表す。)
  7. 上記式1に示される化合物がジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジ(2−ヒドロキシエチル)スルホン、ジn−プロピルスルホン、ジイソプロピルスルホン、エチルメチルスルホン、イソプロピルメチルスルホン、イソプロピルエチルスルホンからなる群より選択される請求項6に記載のインクジェット記録ヘッド。
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