以下、本発明を実施するための形態を説明する。
図1は、本発明の屋根構造の実施の形態の一例を示しており、屋根の一方の側端に形成されているケラバ部40付近の断面図を示している。尚、図1の断面図は、屋根面において屋根の軒棟方向と直交する方向に沿って屋根を切断したときの切断面を表している。ここでいう屋根の軒棟方向は、屋根の傾斜方向又は水流れ方向と同じ方向である。
本実施形態の屋根構造は、屋根下地30と、この屋根下地30に敷設される屋根部材1と、固定部材2とを有している。
本実施形態の屋根構造では、屋根部材1として、化粧金属板10と、この化粧金属板10の裏面に一体に設けられる断熱板11とを備えて形成される、いわゆる金属サイディングが使用されている。本形態の屋根構造において、屋根部材1は、化粧金属板10が屋根の表面側(屋根下地30と逆方向側)を向くように敷設される。尚、本明細書においては、屋根部材1の化粧金属板10側の面を「屋根部材1の表面」ということがあり、これと逆側の面を「屋根部材1の裏面」ということがある。
図2は、その屋根部材1、すなわち、金属サイディングの一例を示しており、(a)は、屋根部材1の平面図(屋根部材1の表面側から直視した図)、(b)は(a)におけるa−a断面図を示している。尚、図2(a)は、屋根部材1の一部分を省略して示した図であり、具体的には、図2(a)における波線の間を切断して示した図である。屋根部材1は、図2(a)に示すように、平面視における外形が矩形状になるように形成させることができる。この場合、屋根部材1は長手辺と短手辺とを有する長尺矩形状に形成されていてもよい。尚、図2の屋根部材1は長尺矩形状に形成された例であり、図2(b)は、短手方向に沿って切断したときの切断面としている。
化粧金属板10は、板状に形成された金属材料で形成させることができる。化粧金属板10を構成する金属材料の種類は特に制限されないが、例えば、溶融55%アルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板、亜鉛めっき鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム鋼板、チタン板等の金属板で形成させることができる。また、化粧金属板10の表面は、化成処理が施されていてもよいし、さらにその表面に塗料などが塗装されて表面に化粧模様が施されていてもよい。化粧金属板10は、ロール成形加工や曲げ加工等で所望の形状に成形することができる。
断熱板11は、断熱性の高い材料により板状に形成させることができる。断熱板11を形成させるための材料は特に制限されず、例えば、硬質イソシアヌレートフォーム、ウレタンフォーム、スチレンフォーム、フェノールフォーム等の発泡体や、ロックウール、グラスウールやセラミックファイバー等の繊維状無機材料等で形成させることができる。
本実施形態の屋根構造で使用されている屋根部材1は、図1や図2(b)に示すように、断熱板11が化粧金属板10の裏面に一体に設けられて形成されている。化粧金属板10は断熱板11の表面を覆うように設けられている。さらに、本形態の屋根部材1では、化粧金属板10の両側端が屈曲して断熱板11の一対の側端面も覆っている。尚、断熱板11の側端面も覆う化粧金属板10は、断熱板11の側端面の下端でさらに内側に屈曲して断熱板11の裏面の一部を覆っていてもよい。
屋根部材1の裏面側には、さらに裏面シート12が貼り付けられていてもよい。この場合、断熱板11の裏面が裏面シート12に保護されるので、断熱板11の損傷が防止しやすくなる。裏面シート12としては、例えば、アルミ箔等の金属箔やアルミニウム板等の金属板を使用することができる。裏面シート12は、例えば、断熱板11の裏面全面に直接貼り付けて設けることができる。屋根部材1としての金属サイディングが、上記のように形成されている場合、金属サイディングは、化粧金属板10と裏面シート12との間に断熱板11が充填されて成るものとなる。
上記のように形成される金属サイディング(屋根部材1)の製造方法は特に限定されるものではなく、従来から行われている方法により製造することができる。
屋根部材1は、一方の側端部に嵌合凹部14、他方の側端部に嵌合凸部15が形成されている。図1,2の形態では、屋根部材1の一方の長手側に嵌合凹部14、他方の長手側に嵌合凸部15が形成されている。以下、一方の長手側から他方の長手側への方向を屋根部材1の幅方向とする。
嵌合凹部14は、屋根部材1の幅方向内方へ凹没するように形成されている。屋根部材1に嵌合凹部14が形成されることで、屋根部材1の嵌合凹部14側の側端には、嵌合凹部14以外の部分が側端突部14a、14bとして形成されることになる。図2(b)に示すように、一対の側端突部14a、14bのうちの下側(裏面方向側)を側端突部14a、上側(表面方向側)が側端突部14bとしている。
嵌合凸部15は、屋根部材1の幅方向外方へ突出するように形成されている。この嵌合凸部15は、他の屋根部材1の嵌合凹部14と嵌合できるように形成されている。
嵌合凹部14及び嵌合凸部15はいずれも、屋根部材1の側端部の全長にわたって形成させることができる。
尚、本実施形態では、嵌合凹部14及び嵌合凸部15は、上述のように屋根部材1の長尺側の端部に形成されたものであり、以下では、この構成を前提に説明するが、もちろん、嵌合凹部14及び嵌合凸部15は、屋根部材1の短尺側の側端部に形成されたものであってもよい。
屋根部材1の寸法は特に制限されるものでなく、形成させる屋根の形状等に応じて適宜設定することができる。例えば、図2(a)に示すように、屋根部材1が平面視で幅方向に短尺の略長方形に形成されている場合、幅400〜500mm、長さ1000〜4000mmとすることができ、また、厚みは15〜25mmとすることができる。
屋根部材1には、本実施の形態のように、化粧金属板10の表面、すなわち、屋根部材1の表面に複数の凹溝17が形成されていてもよい。図2(a)に示すように、凹溝17は屋根部材1の一端から他端に向かって延伸するように形成されて、長尺の溝として形成されている。図1,2の屋根部材1の凹溝17は、屋根部材1の幅方向(嵌合凹部14から嵌合凸部15に向かう方向)と直交する方向に沿って長く形成されている。すなわち、凹溝17は、屋根部材1の長尺方向に沿って形成されている。また、凹溝17の長尺方向における両端は開口している。凹溝17は所定の間隔を空けて互いに略平行に複数形成されている。これにより、図1、2に示すように、凹溝17と平坦部16が屋根部材1の一方の長手側から他方の長手側に向かって交互に繰り返し形成されることになる。
図2(b)に示すように、屋根部材1の一方の側端部には、水切り部18が屋根部材1の幅方向外方に突出するように形成されていてもよい。本実施形態では、水切り部18は、屋根部材1の嵌合凸部15側の側端部の下端から外方に突出しており、その突出長さが嵌合凸部15の突出長さよりも長く形成されている。水切り部18は、断熱板11の嵌合凸部15側の側端面を覆っている化粧金属板10をさらに延長させて、これを曲げ加工等することで形成させることができる。
上記の水切り部18は、屋根部材1の側端部の下端から外方に延伸する平坦状の水切り平坦部18cと、この先端で表面側に折り返し屈曲されて形成された折り返し片18aとを有して形成されている。さらに、水切り平坦部18cと折り返し片18aとの間には、上方、すなわち、屋根部材1の表面側に突出する突条部18bとを有している。突条部18bは複数形成されていてもよい。水切り部18は屋根部材1の裏面と略同一平面上に形成される。
固定部材2は、図1に示すように、固定片21と、この固定片21の端部で折り返し屈曲して形成されている係止片22とを有して、断面略J字状に形成されている。固定片21は略平板状に形成されている。また、固定片21の、係止片22が形成されている端部と逆側の端部には、折り返し屈曲されて形成される折り返し片21aを有していてもよい。一方、係止片22は、固定片21の端部において固定片21に対して略垂直に立ち上がる立ち上がり部22aと、この立ち上がり部22aの先端で固定片21の方向へ略垂直に屈曲することで形成される係止部22bとで形成される。係止部22bと固定片21とは略平行に形成されることが好ましい。尚、図1の実施形態では、立ち上がり部22aは平坦状に形成されているが、これに限定されず、例えば、湾曲して断面略U字状に形成されていてもよいし、屈曲して断面略V字状に形成されていてもよい。
固定部材2は、適宜の金属材料からなる金属板を折り曲げ加工することで形成することができる。また、固定部材2は、後述するようにケラバ部40に沿うように配置されるが、固定部材2のケラバ部40に沿った方向の長さは、一つの屋根部材1と同じ長さか、それよりも長く形成されていてもよい。あるいは、固定部材2のケラバ部40に沿った方向の長さは、屋根部材1よりも短く形成されていてもよい。
屋根下地30は、母屋材の上に野地板31を設け、さらに、この野地板31の表面の略全面にはルーフィング材32を敷設させて形成させることができる。尚、図1では、母屋材は省略している。野地板31やルーフィング材32は従来から一般的に使用されているものを採用することができる。屋根下地30は、上記の他、桟木、防水シート、垂木等で形成させてもよく、また、必要に応じて防水シートが敷かれていてもよい。屋根下地30は、屋根面の略全面に至るように設けることができる。
ケラバ部40は、図1に示すように、屋根下地30上に配設されている桟木42と、この桟木42を覆うケラバカバー41を備えている。ケラバ部40とは、屋根の軒棟方向に対して直交する方向における端部(妻側端部ともいう)の箇所のことをいう。尚、ケラバ部40は屋根の両端部の2箇所において存在するが、ここでは、そのうちの一方の端部に形成されているケラバ部40について説明する。そして、ここで説明する屋根の一方の端部に形成されているケラバ部40を「第1ケラバ部40」と称する。また、他方の端部に形成されているケラバ部40は「第2ケラバ部40」と称する。
第1ケラバ部40において、桟木42は屋根下地30の側端部の略全長にわたって設けられている。桟木42の厚みは屋根部材1の厚みよりも大きくなるように形成されている。そのため、桟木42が屋根下地30に配設されている状態においては、桟木42の頂面は、屋根下地30に敷設された屋根部材1の頂面よりも高くなっている。
ケラバカバー41は、ケラバ固着片41a、カバー部41b、ケラバ支持部41c及びケラバ捨て水切り41dとで構成されている。ケラバ固着片41aは略平坦状に形成されている。図1の屋根構造においては、ケラバ固着片41aは桟木42の外側の側面及び屋根下地30の外側の側端面に沿うように配設されている。カバー部41bは、ケラバ固着片41aの先端から折り返し屈曲加工されて断面略J字状に形成されている。具体的には、図1に示すように、カバー部41bは、ケラバ固着片41aの先端で桟木42側に略垂直に屈曲して桟木42の頂面に沿いながら桟木42の頂面を通過するまで延長していると共にその先端で裏面側(屋根下地30側)に折り返し屈曲加工されている。ケラバ支持部41cは、カバー部41bの先端で屋根下地30側に略垂直に屈曲するように形成されており、桟木42の内側側面に沿うように配設されている。ケラバ捨て水切り41dは、ケラバ支持部41cの下端で内側方向に略垂直に屈曲して略平坦状に形成され、屋根下地30に沿うように配設されている。ケラバ捨て水切り41dの先端は、表面側に折り返し屈曲されて、水止め部41eが形成されていてもよい。
ケラバカバー41は、ビスや釘等の固定具4を用いて固定することができる。図1の実施形態では、ケラバ固着片41a表面から桟木42に固定具4が打ち込まれており、また、ケラバ捨て水切り41dから屋根下地30に固定具4が打ち込まれて、ケラバカバー41が屋根下地30に固定されている。
本実施形態の屋根構造では、固定部材2は、第1ケラバ部40に隣接するように配置されている。具体的には、固定部材2の立ち上がり部22aは、ケラバカバー41のケラバ支持部41cと対向して配設されており、そのケラバ支持部41cを挟んで桟木42の側面と対向していることになる。そして、係止片22の先端22c、すなわち、係止部22bの先端22cは、ケラバ支持部41cとは逆方向側を向いている。言い換えれば、係止片22の先端22cは、第2ケラバ部40側の方向を向いていることになる。また、固定片21は、ケラバ捨て水切り41d上に位置しており、屋根下地30と平行に配置している。
固定部材2は、ビスやねじ等の固定具4によって屋根下地30に固定されている。図1の形態では、固定片21に固定具4が屋根下地30方向へ打ち込まれており、その固定具4の先端がケラバ捨て水切り41dを貫通して、屋根下地30に打ち込まれている。尚、固定部材2が屋根下地30に固定されている状態においては、立ち上がり部22aとケラバ支持部41cとは、接触していてもよいし、接触していなくてもよい。固定部材2が短尺である場合、いわゆる、ピース部品である場合には、第1ケラバ部40に沿って複数並べるように設ければよい。
本実施形態の屋根構造においては、屋根部材1は、屋根下地30上に複数敷設されるが、ここではまず、第1ケラバ部40側に最も近接して敷設される屋根部材1の敷設について説明する。尚、以下では、第1ケラバ部40側に最も近接して配置される屋根部材1を「第1の屋根部材1a」と称することがある。図1に示すように、第1の屋根部材1aは、嵌合凹部14が、第1のケラバ部40側の方向を望むように敷設される。また、図1の実施形態のように第1の屋根部材1aに凹溝17が形成されている場合、凹溝17の長尺方向が軒棟方向と平行になるように第1の屋根部材1aが敷設される。
上記第1の屋根部材1aは、固定部材2に係止されて敷設されており、これによって第1の屋根部材1aが屋根下地30に固定される。具体的に説明すると、嵌合凹部14内に係止部22bが挿入されるように第1の屋根部材1aが敷設されており、このとき、側端突部14aは、固定片21及び係止部22bとで挟まれるように配置される。これによって、第1の屋根部材1aが固定部材2により係止されて保持される。係止片22の先端22cは、嵌合凹部14と接触していてもよいし、接触せずに隙間を有していてもよいが、屋根部材1aがより強固に係止されるという点では、係止部の先端22cが嵌合凹部14に接触していることが好ましい。一方、側端突部14aの厚み方向(屋根部材1の表面側から裏面側に向かう方向)の長さと、係止部22b及び固定片21間の距離X(図1参照)とが略同等であれば、係止片22と固定片21とで側端突部14aを強く挟持できる。従って、この場合は屋根部材1がより強固に係止されて保持される。ただし、屋根部材1に大きなガタツキが生じず、屋根部材1が安定して敷設されるのであれば、上記距離Xは、側端突部14aの厚みよりも大きくてもよい。
上記のように屋根部材1が固定部材2により係止されて固定されると、屋根部材1は、その一部が固定片21の上に載置された状態となる。そして、屋根部材1の嵌合凹部14側の端部表面がケラバカバー41のカバー部41bで覆われる状態となる。
一方、屋根部材1の水切り部18は、屋根下地30上に配置されており、水切り平坦部18cに固定具4が打ち込まれることで、屋根部材1が屋根下地30に連結して固定されている。図1の形態では、固定具4は、突条部18bよりも嵌合凸部15側に打ち込まれているが、これに限らず、突条部18bよりも折り返し片18a側に打ち込まれてもよい。この場合は、屋根部材1どうしの嵌合箇所等から浸入した雨水が突条部18bにより堰き止められ、固定具4が打ち込まれている付近に雨水が流れ込みにくくなり、屋根の防水性がより向上する。
尚、図1では、各部材の形状や構成をわかりやすくするために、各部材間はあえて間隔をあけて図示している。例えば、ケラバ捨て水切り41dは実際には固定片21に接した状態となり、また、第1の屋根部材1aは固定片21に接している状態となる。
上記のように敷設された第1の屋根部材1aの嵌合凸部15側には他の屋根部材1が隣接して敷設される。第1の屋根部材1aの嵌合凸部15側に敷設される他の屋根部材1を「第2の屋根部材1b」と称することがある。尚、図1では、第2の屋根部材1bは省略して示している(詳細は後述の図3を参照)。
図3に示すように、第2の屋根部材1bは、その嵌合凹部14が第1の屋根部材1aの嵌合凸部15と嵌合して敷設される。尚、図3は、第1の屋根部材1a及び第2の屋根部材1bとの嵌合部分を示す図であるが、第1の屋根部材1a及び第2の屋根部材1b以外の部材は省略して示している。上記のように第1の屋根部材1aと第2の屋根部材1bとが嵌合すると、第1の屋根部材1aに形成されている水切り部18は、第2の屋根部材1bの裏面に接触して配置される。
第2の屋根部材1bの隣側には、他の屋根部材1が上記同様に嵌合され、さらにその隣側に他の屋根部材1が上記同様に順次嵌合しながら敷設され、複数の屋根部材1が第1ケラバ部40から第2ケラバ部40に至るまで屋根下地30上に敷き詰められる。
図4は、第2ケラバ部40側(第1ケラバ部40側とは反対側のケラバ部)付近における屋根の断面を示しており、ここでは例として、(a)〜(d)の4種類の態様を示している。
第1ケラバ部40と第2ケラバ部40の構成で異なる点は、第一に、第1ケラバ部40では、固定部材2が設けられているのに対し、第2ケラバ部40ではそれが設けられていない。第二に、第1ケラバ部40では、ケラバカバー41にはケラバ捨て水切り41dが一体となって形成されていたのに対し、第2ケラバ部40ではケラバカバー41はケラバ捨て水切り41dを有しておらず、その代わりに、ケラバ水切り材45が別体で設けられている。ケラバ水切り材45は、屋根下地30の上面に配置される水切り部45aと水切り部45aの端部で略垂直に立ち上がるように屈曲する立ち上がり部45bとで構成されている。立ち上がり部45bは、桟木42の端面と対向して配置されており、ケラバ支持部41cと桟木42の間に介在している。第2ケラバ部40のその他の構成は、第1ケラバ部40と同様である。
図4(a)では、第2ケラバ部40に隣接して敷設されている屋根部材1は、嵌合凸部15が第2ケラバ部40(ケラバ支持部41c)と対向し、折り返し片18aの先端がケラバ支持部41cに近接もしくは接触するように敷設されている。水切り平坦部18cには固定具4が設けられており、これにより、屋根部材1が屋根下地30に固定されている。
図4(b)では、第2ケラバ部40に隣接して敷設されている屋根部材1は、その水切り部18が途中で軒棟方向に沿って切断されて、折り返し片18a及び突条部18bが切除されており、水切り平坦部18cの先端がケラバ支持部41cに近接もしくは接触するように敷設されている。図4(b)の形態は、図4(a)において、屋根部材1が納まりきらなかった場合に採用され得る態様である。水切り平坦部18cには固定具4が設けられ、これにより、屋根部材1が屋根下地30に連結固定される。また、この形態では、ケラバカバー41がより安定に屋根下地30に固定されるようにするため、水切り部45aにも固定具4を設けている。
図4(c)では、第2ケラバ部40に隣接して敷設されている屋根部材1は、その水切り部18が途中で略垂直に屈曲しており、ケラバ支持部41cに沿って立ち上がっている。水切り平坦部18cには固定具4が設けられることで、屋根部材1が屋根下地30に固定されている。図4(c)の形態は、図4(b)の形態同様、図4(a)において、屋根部材1が納まりきらなかった場合になり採用され得る態様である。尚、このように水切り部18を屈曲して立ち上げることで、水切り部18の樋としての機能がより発揮されるようになり、排水性がさらに向上するものとなる。
図4(d)では、第2ケラバ部40に隣接して敷設されている屋根部材1は、屋根部材1が途中で軒棟方向(屋根部材1の幅方向と直交方向)に沿って切断されて、嵌合凸部15や水切り部18が切除されており、屋根部材1の切断面19がケラバ支持部41cに近接もしくは接触するように敷設されている。そして、屋根部材1側端部表面から固定具4が屋根部材1を貫通するように設けられており、これにより、屋根部材1が屋根下地30に固定されている。また、この形態では、ケラバカバー41がより安定に屋根下地30に固定させるために、水切り部45aにも固定具4を設けている。この形態では水切り部8を切除しているため、カバー部41bと屋根部材1との間隙から雨水等が浸入しないように、シーリング35をカバー部41bと屋根部材1との間隙に設けることもできる。シーリング35は、従来から知られているシーリング材や、樹脂製等の防水部材を使用することができる。図4(d)の形態は、図4(a)において、屋根部材1が納まりきらなかった場合に採用され得る態様である。尚、本実施形態においてはケラバカバー41として、第1ケラバ部40と第2ケラバ部40とで異なる形態としたが、これに限られず、双方共に同じ形態のケラバカバー41を用いることは勿論可能である。また、第1ケラバ部40においても、第2ケラバ部40同様、ケラバ捨て水切り41dを有していないケラバカバー41を用いて、別体でケラバ水切り材45を設けることも勿論可能である。
本発明では、図4(a)〜(d)のいずれの形態でも取り得ることができ、屋根部材1の寸法や屋根下地30の寸法に応じて適宜選択すればよい。
ここで、屋根下地30に敷設されている屋根部材1の軒棟方向側の両端面(屋根の軒棟方向から見た場合の屋根部材1の前端面及び後端面)が化粧金属板10で覆われていない場合は、断熱板11が露出していることになる。このように屋根部材1の断熱板11が露出していると、外観の意匠性が損なわれるおそれがあったり、断熱板11が劣化したりするおそれがある。そのため、屋根部材1の軒棟方向側の端面を被覆できるような保護キャップ39を設けてもよい(後述の図5を参照)。保護キャップ39は、例えば、AES(アクリロニトリル/エチレン−プロピレン−ジエン/スチレン)等の樹脂材料で形成させることができる。保護キャップ39は、屋根部材1の断面形状に合致するように形成され、屋根部材1の端部に嵌め込むことができるようなキャップを使用することができる。このような保護キャップ39は、屋根部材1の前端面及び後端面の一方又は両方に取り付けることができ、これにより、屋根の意匠性の低下が抑制でき、また、屋根部材1の端面に対する防水性も向上させることができる。
上記のように、本実施形態の屋根構造では、第1の屋根部材1aの嵌合凹部14が固定部材2により係止されて固定されていることで、第1の屋根部材1aの敷設状態が安定となる。また、係止片22は、第1の屋根部材1aを敷設する際の、位置合わせの目印とすることもできるので、施工が容易かつ短時間で行いやすく、屋根部材1の位置ずれも生じにくい。さらに、第1の屋根部材1aは、嵌合凹部14と逆側の端部が固定具4によって固定されていることで、第1の屋根部材1aが屋根下地30により安定に敷設される。そのため、この第1の屋根部材1aから第2ケラバ部40の方向へと敷設される各々の屋根部材1も屋根下地30に安定に敷設され、屋根部材1のガタツキや浮き上がりを起こしにくくすることができる。
さらに、第2のケラバ部40と隣接している屋根部材1は、図4(a)〜(d)に示すように嵌合凸部側の端部に固定具4を設けていることで、屋根下地30に安定に固定され、結果として、屋根全体の構造が安定し、耐久性に優れるものとなる。
そして、屋根部材1は、化粧金属板10と断熱板11とが一体となって形成されていることで、屋根部材1が非常にコンパクトな形状となり、屋根部材1の納まりも良好になる。特に、第1ケラバ部40においては、屋根部材1の一端は、カバー部41bによって覆われていることで、納まりの良いケラバ構造を与えるものであり、屋根全体の意匠性も向上する。
第1ケラバ部40から第2ケラバ部40への屋根部材1を敷設させるには、例えば、次のような方法で施工することができる。
まず、屋根下地30に桟木42を設け、ケラバカバー41を取り付けて、第1のケラバ部40を形成させる。桟木42の設置及びケラバカバー41を取り付けにあたっては、ケラバ固着片41a、カバー部41b及びケラバ支持部41cで桟木42を包むように設け、ケラバ捨て水切り41dが屋根下地30上に配置されるようにする。ケラバカバー41は、ケラバ固着片41a及びケラバ捨て水切り41dに固定具4を設けるなどして取り付ければよい。
そして、第1のケラバ部40に隣接するように固定部材2を設ける。固定部材2を設けるにあたっては、固定片21に固定具4を打ち込むなどして屋根下地30に取り付ければよい。このとき、立ち上がり部22aがケラバカバー41のケラバ支持部41cと対向させ、係止部の先端22cがケラバ支持部41cとは逆方向側を向くようにする。固定部材2がピース部品である場合は、複数の固定部材2を第1のケラバ部40に沿って並設させればよい。
次いで、屋根部材1を敷設させるが、屋根の軒側から順に棟側へ敷設させるようにすればよい。まず、第1の屋根部材1aを、その嵌合凹部14に係止片22が挿入されるように敷設させると共に、水切り平坦部18cに固定具4を打ち込んで、第1の屋根部材1aを屋根下地に固定させる。第1の屋根部材1aを敷設させる際、係止片22を第1の屋根部材1aの位置決めの目安にすることができるので、第1の屋根部材1a敷設位置の位置合わせを容易に行うことができる。
上記のように第1の屋根部材1aを敷設した後、新たな屋根部材1を用意し、この屋根部材1の嵌合凹部14を、既設の第1の屋根部材1aの嵌合凸部15に嵌合させるようにして敷設させる。さらに、新たな屋根部材1を用意して、同様の手順で、第2のケラバ部40側の方向へ順次敷設させていく。第2のケラバ部40に隣接する屋根部材1を敷設させるにあたっては、あらかじめ、第2のケラバ部40のうちの桟木42を設けておき、さらに桟木42に隣接させて、ケラバ水切り材45を屋根下地30に設けておくようにする。図4(a)〜(d)のいずれの形態にするかに応じて、屋根部材1を適宜、切断加工又は折り曲げ加工するなどすればよい。上記のように、第1のケラバ部40から第2のケラバ部40の方向へ屋根部材1を一列に敷設させた後、これら既設の屋根部材1の棟側にも、上記同様に屋根部材1を敷設させていき、この作業を繰り返し行うことで屋根下地30の略全面に屋根部材1を敷設させるようにする。
屋根部材1を敷設した後、第2ケラバ部40において、桟木42にケラバカバー41を設ける。第1ケラバ部40同様、ケラバカバー41を取り付けるにあたっては、ケラバ固着片41a、カバー部41b及びケラバ支持部41cで桟木42を包むように設け、また、ケラバ支持部41cと桟木42との間に立ち上がり部45bが介在するようにする。また、必要に応じて、図4(d)で示されているシーリング35を設けて防水加工をしてもよい。
以下、本発明の屋根構造のその他の部分の構成について説明する。
図5は、軒棟方向で隣り合う屋根部材1、1の連結状態を示しており、(a)は屋根の軒棟方向に沿った切断面の一部、(b)は(a)の斜視図を示している。尚、図5(b)では、軒棟方向で隣り合う一対の屋根部材1、1のみを示しており、その他の屋根部材1は省略している。
図5に示すように、軒棟方向で隣り合う屋根部材1、1は、ジョイント部材6により連結させることができる尚、図5では、軒棟方向で隣り合う屋根部材1、1のうち、軒側に敷設されている屋根部材1を屋根部材1N、棟側に敷設されている屋根部材1を屋根部材1Mと表記している。また、図5では、屋根部材1を模式的に示しており、化粧金属板10や断熱板11の構成は省略している。
ジョイント部材6は、一方の端部に形成された第1固着部61と、他方の端部に形成された第2固着部62と、第1固着部61及び第2固着部62の間に形成されている連結部63とで構成されている。第1固着部61、第2固着部62及び連結部63はいずれも平坦状に形成されている。連結部63は、第1固着部61の一端部から第1固着部61の面よりも斜め上方に起き上がって、第1固着部61側端から外方に突出するように形成されている。そのため、ジョイント部材6において、第1固着部61及び第2固着部62は互いに段違いに配置されている。また、第2固着部62は、連結部63の第1固着部61の逆側端部でさらに屈曲して、第1固着部61と略平行に形成されている。ジョイント部材6は、上記の第1固着部61、連結部63、第2固着部62が連続的に形成されてなるものである。
図5(a)に示すように、軒棟方向で隣り合う屋根部材1M、1Nは、両者の間に所定の間隔を有して敷設されている。そして、ジョイント部材6は、その第1固着部61が屋根部材1Mの裏面と屋根下地30との間に介在するように配置され、第1固着部61の表面から固定具4が打ち込まれることで屋根下地30に固定されている。また、屋根部材1Nの棟側端部表面には、第2固着部62が載置されている。図5では、図示を省略しているが、第2固着部62にビス等を設けることで、屋根部材1Nに固定することができる。また、連結部63は、軒棟方向で隣り合う屋根部材1M、1Nの間に配置されている。
以上のようにジョイント部材6が設けられることで、屋根部材1M、1Nどうしが軒棟方向で接続される。第2固着部62と屋根部材1Nとの間には、防水パッキン36やシーリング材を設けて防水構造としてもよい。また、ジョイント部材6の両側端部には、折り返し片64、65が形成されていてもよい。図5の形態では、折り返し片64は、第1固着部61の側端部で表面側に折り返されて形成され、折り返し片65は、第2固着部62の側端部で裏面側(屋根下地30側)に折り返されて形成される。
上記のように、ジョイント部材6が設けられていることで、屋根部材1の軒棟方向側に嵌合部が形成されていなくても、図5(a),(b)に示すように軒棟方向で隣り合う屋根部材1どうしが接続されることになり、軒棟方向においても屋根部材1を安定に敷設させることができる。ジョイント部材6は、軒棟方向と直交する方向に長く形成されていてもよく、一つのジョイント部材6で、軒棟方向で隣り合う屋根部材1どうしのみならず、軒棟方向と直交する方向で隣接する屋根部材1どうしをも連結してもよい。尚、図5の実施形態における屋根部材は、軒棟方向側の端面に上述した保護キャップ39が取り付けられている。
上記のようにジョイント部材6が設けられた状態では、連結部63は、水平面、すなわち、建物が立地している地上面と平行となっているか、もしくは、棟側から軒側に向かって下る傾斜面となっていることが好ましい。図5(a)では、上記の水平面と平行な面を破線Hで表している。連結部63が水平面と平行になるように配置されているか、もしくは、棟側から軒側に向かって下り傾斜するように配置されていれば、屋根の傾斜に沿って流れてくる雨水が、連結部63に滞留せず、軒側に流すことができる。そのため、屋根の排水性を向上させることができる。
図6は、ジョイント部材6の他例を示すものであり、(a)は屋根の表面側からの平面図、(b)は(a)におけるb−b断面図である。尚、図6では、軒棟方向で隣り合う一対の屋根部材1、1のみを示しており、その他の屋根部材1は省略している。
この形態では、ジョイント部材6の断面形状が、屋根部材1の断面の表面部分の形状と合致するように形成されている。このジョイント部材6は、屋根部材1M及び1Nの表面どうしを架け渡すように設けられており、これにより、屋根部材1M、1Nを連結させている。ジョイント部材6には、複数の凹所6aが形成されており、ジョイント部材6が屋根部材1M、1N表面に設けられると、複数の凹所6aが各々の凹溝17に嵌め込まれた状態となる。尚、図6に図示はしていないが、ジョイント部材6の屋根部材1への固定は、シーリング材を用いて接着させてもよいし、ビス等を用いて連結させてもよい。図6の形態においても、ジョイント部材6は軒棟方向と直交する方向に長く形成されていてもよく、この場合、一つのジョイント部材6で、軒棟方向で隣り合う屋根部材1どうしのみならず、軒棟方向と直交する方向で隣接する屋根部材1どうしをも連結することが可能となる。
図7は、屋根構造の他の実施形態を示している。尚、図7では、屋根部材1、1と、後述する水切り部材25のみを図示しており、その他の部材等は省略している。
図7の形態の屋根部材1では、図1の実施形態の屋根部材1と比較すると、水切り部18において、折り返し片18a及び突条部18bが形成されておらず、嵌合凸部15側の端面の下端部から水切り平坦部18cが外方に突出するように設けられているだけである。このような屋根部材1を使用する場合は、図7のように別途、水切り部材25を設けることで、防水性を高めることができる。
上記水切り部材25は、平坦状の排水部25bを有し、この排水部25bには、複数の突出部25aが形成されている。突出部25aは、排水部25b上で上方に突出するように形成されており、本形態では、二個の突出部25aが形成されている。また、水切り部材25の両側端部は表面側に折り返された折り返し片25c、25cが形成されている。
水切り部材25は、屋根部材1と屋根下地30との間に設けられるものであり、隣接する屋根部材1、1の嵌合凹部14と嵌合凸部15との嵌合位置に設けられる。具体的には、雨水等が上記の嵌合部分に浸入して屋根部材1の裏面側に到達した場合に、その雨水を水切り部材25で排水できるような位置に水切り部材25を設けるようにすればよい。図7の形態では、水切り部材25は、少なくともその一部が屋根部材1の水切り平坦部18cの直下に位置するように設けられている。水切り部材25は、ビス等を用いて屋根下地30に固定することができる。また、屋根部材1に水切り平坦部18cが設けられていない場合は、水切り部材25は、少なくともその一部が嵌合部分の直下に配されるように屋根部材1を設けるようにすればよい。
水切り部材25を上記のように設けることで、屋根部材1に折り返し片18a及び突条部18bが形成されていない場合であっても、屋根の防水性を高めることができる。例えば、屋根部材1の嵌合部分から雨水等が浸入して屋根部材1の裏面側に到達したとしても、水切り部材25によって排水することができるので、室内側へ雨水が浸入するのを防止しやすくなり、防水性の高い屋根構造となる。
図8(a)は、他の形態の屋根構造の一例あって、屋根の断面の一部を示している。本形態の屋根構造では、保持部材9と支持台90を備えている。支持台90は、屋根付設物を支持するための部材であり、保持部材9は、支持台90を保持させるための部材である。尚、ここでいう屋根付設物とは、例えば、太陽電池パネル、給湯システム、換気装置、屋上緑化システム等、住宅等の屋根の上に設置されるような装置や設備のことを示す。
図8(b),(c)には、図8(a)における保持部材9及び支持台90のみを示しており、(b)は平面図、(c)は(b)のc−c線断面図である。
支持台90としては、例えば、一般的に太陽電池パネルなどを屋根に支持させるために用いられている金具を使用することができる。図8の形態における支持台90は断面略ハット状に形成されており、断面略逆U字状の本体部90aと、本体部90aの下部の両端から外方に突出する一対の突出片90bとを備えて形成されている。もちろん、支持台90はこの形状に限定されるものではなく、他の形状に形成された部材も使用可能である。
一方、保持部材9は、図8(a)〜(c)に示されているように、一端には平板状の荷重受け面91、他端には平板状の固定面92を有し、荷重受け面91及び固定面92との間には係合部93が形成されている。保持部材9は、金属板等の材料を折り曲げ加工することで形成されるものであり、荷重受け面91、係合部93及び固定面92が一体的に形成されている。また、図8(b),(c)からわかるように、荷重受け面91及び固定面92は係合部93を介して連結されているが、荷重受け面91と固定面92とは同一平面上には配置されておらずに互いに段違いに配置されるように形成されている。また、係合部93は屋根部材1の側端面に沿うことができるように形成されている。本形態では、係合部93は、断面略倒U字状の挟持部93aと、この挟持部93aの両端部から略垂直方向に延在する一対の支持面93b,93bとを有して形成されている。一方の支持面93bは固定面92と連続しており、他方の支持面93bは、傾斜面93cを介して荷重受け面91と連続している。尚、荷重受け面91や固定面92には、ビス等が挿入される孔5が形成されていてもよい。
図8(a)に示すように、保持部材9は、軒棟方向と直交する方向で隣接する屋根部材1,1どうしの嵌合位置付近に設けることができる。具体的には、保持部材9の荷重受け面91は、上記隣接する屋根部材1,1の一方の屋根部材1の表面側に配置される。屋根部材1の表面に凹溝17と平坦部16が形成されている場合は、荷重受け面91は、平坦部16上に位置することが好ましく、また、一つ又は複数の凹溝17を跨ぐように配置されていてもよい。一方、固定面92はその屋根部材1の水切り部18の上面または水切り部18よりも外方であって他方の屋根部材1の裏面側に配置される。この実施形態では、固定面92は水切り部18の上面に配され、固定面92及び水切り部18を介してビス等の固定具4が屋根下地30に至るまで設けられ、これによって保持部材9が固定される。そして、係合部93は、一方の屋根部材1の嵌合凸部15側の端部と、他方の屋根部材1の嵌合凹部14側の端部との間に挟まれて配置される。係合部93は、屋根部材1の側端面に沿うことができるように形成されているので、係合部93が隣接する屋根部材1,1の嵌合部分に配置されたとしても、図8(a)に示すように、双方の屋根部材1,1は嵌合凹部14と嵌合凸部15との嵌合は可能となる。係合部93が双方の屋根部材1,1の間に配置する状態にあっては、挟持部93aが嵌合凸部15の外周面を覆い、また、一対の支持面93b,93bには、側端突部14a,14bの先端が突き合わされることになる。
保持部材9は、軒棟方向及びこれと直交する方向に所定の間隔を有しながら複数個設けることができる。保持部材9の配置間隔や配置数は、屋根に設置させる屋根付設物の種類、大きさ、重量等に応じて適宜設定すればよい。
上記のように配置された保持部材9の荷重受け面91には、支持台90が取り付けられる。支持台90は、リベット等の固定具4によって荷重受け面91に取り付けられる。このように支持台90が保持部材9に固定されるので、屋根部材1の化粧金属板10や断熱板11に固定具4による穴が形成されないことになる。
支持台90には、太陽電池パネル等の屋根付設物が設置される。この際、支持台90に屋根付設物を直接載置させて固定させてもよいし、例えば、太陽電池パネルであれば、汎用のレール状の部材を複数の支持台90を架け渡すように取り付け、このレール状の部材に太陽電池パネルを設置させてもよい。
上記のような保持部材9を有する屋根構造では、保持部材9は隣接する屋根部材1,1間に挟まれるように固定されて設けられるので、保持部材9が強固に固定される。そのため、保持部材9に支持台90を取り付けたとしても、その取り付け状態の安定性が高く、その結果、太陽電池パネル等の屋根付設物を全体的にバランス良く支持台90に設置させることが可能となる。特に、屋根付設物の設置による荷重は支持台90を介して荷重受け面91で垂直に受けることができるので、安定に屋根付設物を支持することができ、風雨等に対する振動を低減させやすい。また、上述のように、支持台90を固定するための固定具4は、屋根部材1に穴を形成させずに設けることも可能であるので、この場合は、屋根部材1の防水性や耐久性等の点から有利となる。
保持部材9を有する屋根構造を施工するにあたっては、まず、軒棟方向と直交する方向で隣接する一対の屋根部材1,1のうちの一方の屋根部材1を敷設させた後、他方の屋根部材1を嵌合させる前に保持部材9を設けるようにする。この保持部材9を設けるにあたっては、既設の屋根部材1の嵌合凸部15側の表面に荷重受け面91を配置させつつ、係合部93を当該屋根部材1の側端面、すなわち、嵌合凸部15に嵌め込むように配置させればよい。その後、既設の屋根部材1の隣側に、他の屋根部材1を嵌合させて敷設させればよい。このような手順を繰り返し行っていくことで、保持部材9を有する屋根構造を施工することができる。このように、屋根部材1の敷設作業と並行して保持部材9を設けることができるので、施工を効率よく行えるものである。
図9は、屋根の隅棟部、すなわち、傾斜の異なる屋根面が合流する部位の構造(例えば、屋根の棟部)を示す断面図を示している。本形態の隅棟部は、屋根下地30、屋根部材1、棟部ジョイント70及び棟部カバー50と有して構成されている。
図9(a)の形態の隅棟部では、異なる傾斜角度の屋根下地30、30が先端で突き合わされ、当該突き合わされている箇所の頂部は、屋根頂部34として形成されている。そして、それぞれの屋根下地30、30には、屋根頂部34の近傍にまで屋根部材1が設けられている。尚、本形態の屋根下地30は、野地板31、ルーフィング材32及び防水シート33がこの順に積層して構成されている。
棟部カバー50は、断面逆V字状で左右対称に形成されて一対のカバー片52、52で構成されているカバー本体51と、このカバー本体51の屈折部54からカバー本体51の鋭角側に突設している差込部56とを有して形成されている。差込部56は屈折部54の全長に沿って長く形成されていてもよいし、屈折部54の全長に沿って所定の間隔を有しながら形成されていてもよい。
棟部ジョイント70は、棟部カバー50を屋根の隅棟部に固定させるための部材である。棟部ジョイント70は、断面略U字状に形成されているカバー受け部72と、このカバー受け部72の左右それぞれの上端から折り返し屈曲して断面略逆L字状のジョイント側片74、74と、各々のジョイント側片74、74の下端部から、外方へ突設して形成されている平板状の一対のジョイント支持部71、71とを有して形成されている。カバー受け部72の底面は、以下では「凹没部73」と称する。また、ジョイント支持部71は、ジョイント側片74の下端部から下方へ傾斜するように形成されている。棟部ジョイント70は、一枚の金属板等を折り曲げ加工することで形成させることができる。
棟部カバー50及び棟部ジョイント70はいずれも、屋根頂部34の上方に設けられるものであるが、少なくとも屋根頂部34の全長を覆うことができるように屋根の隅棟に沿って長く形成させることができる。この場合、棟部カバー50の全長が棟部ジョイント70よりも長くなるように形成させることが好ましい。
上記棟部ジョイント70は、カバー受け部72が屋根頂部34の上方に配置され、一対のジョイント支持部71、71は、屋根頂部34を挟んで敷設されているそれぞれの屋根部材1上に載置されるように設ける。この場合、棟部ジョイント70は、ジョイント支持部71、71にビス等を打ち込んで屋根部材1に固定させればよい。次いで、棟部カバー50を、その差込部56がカバー受け部72に挿入されるように棟部ジョイント70の上方から設けるようにする。これにより、ジョイント支持部71、71がカバー片52、52で覆われるようになる。差込部56の先端は、凹没部73と当接するようにしてもよい。尚、本形態では、棟部カバー50には差込部56が形成されているが、差込部56が形成されていない棟部カバー50を使用してもよく、このような棟部カバー50を使用する場合は、屈折部54の表面から、ビスやボルト等を打ち込むことで棟部カバー50を固定することができる。カバー片52の先端は、屋根部材1上に配置されるが、カバー片52の先端付近には、防水部材55を設けて、カバー片52と屋根部材1との間に介在させてもよい。以上のように、屋根の隅棟部が形成されることで、隅棟部の納まりが良好となり、しかも、このような隅棟部は高い防水性能も有する。
図9(b)の形態の隅棟部では、異なる傾斜角度の屋根下地30、30が先端で突き合わされ、当該突き合わされている箇所の頂部は、屋根頂部34として形成されている。そして、本形態の屋根下地30は、野地板31、ルーフィング材32及び防水シート33がこの順に積層して構成されている。それぞれの屋根下地30、30には、屋根頂部34の近傍にまで屋根部材1が設けられている。そして、図9(a)の形態と同様、本形態でも棟部ジョイント70が設けられているが、この形態ではジョイント支持部71、71が最も屋根頂部34側に設けられる屋根部材1,1と屋根下地30との間に位置するように設けられている。この構成により、棟部ジョイント70が水切りとしても機能し、防水性能を更に向上させることができる。尚、図9(b)の形態にあっても図9(a)の形態同様、棟部カバー50や防水部材55を設けることができる。