JP2014206286A - 電動式ディスクブレーキ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】電動式ディスクブレーキ装置において、制動時にブレーキパッドからの軸方向荷重を受ける受圧部の周方向の面圧分布の均一化を図ることである。【解決手段】ハウジング1に一体化して設けられたキャリパボディ40内にブレーキディスク41の外周の一部を配置し、そのブレーキディスク41の両側に固定ブレーキパッド42と可動ブレーキパッド43とを設け、前記可動ブレーキパッド43を被駆動部材5によりブレーキディスク41に押し付けて、ブレーキディスク41に制動力を付与するようにした電動式ディスクブレーキ装置において、ブレーキディスク41に対する制動力の付与時に、可動ブレーキパッド43から受圧部に至る軸方向荷重の負荷経路に調心機構を設け、その調心機構によって受圧部での周方向の面圧分布の均一化を図る。【選択図】図2

Description

この発明は、電動式ディスクブレーキ装置に関する。
電動モータを駆動源とする電動式直動アクチュエータにおいては、電動モータのロータ軸の回転運動を運動変換機構によって軸方向に移動自在に支持された被駆動部材の直線運動に変換するようにしている。
電動式直動アクチュエータに採用された運動変換機構として、ボールねじ機構やボールランプ機構が知られているが、これらの運動変換機構においては、ある程度の増力機能を有するものの、電動式ディスクブレーキ装置等で必要とされるような大きな増力機能を確保することができない。
そこで、上記のような運動変換機構を採用した電動式直動アクチュエータにおいては、遊星歯車機構等の減速機構を別途組込んで駆動力の増大を図るようにしており、上記減速機構を組込む分、構成が複雑となり、電動式直動アクチュエータが大型化するという問題があった。
そのような問題点を解決するため、本件出願人は、減速機構を組込むことなく大きな増力機能を確保することができ、直動ストロークが比較的小さい電動式ディスクブレーキ装置への採用に好適な電動式直動アクチュエータを特許文献1および特許文献2において既に提案している。
ここで、上記特許文献1および2に記載された電動式直動アクチュエータにおいては、電動モータによって回転駆動される回転軸と軸方向に移動自在に支持された外輪部材との間に遊星ローラを組込み、上記回転軸の回転により、その回転軸との摩擦接触によって遊星ローラを自転させつつ公転させ、その遊星ローラの外径面に形成された螺旋溝または円周溝と外輪部材の内径面に設けられた螺旋突条との噛み合いによって外輪部材を軸方向に直線移動させるようにしている。
また、上記特許文献1および2に記載された電動式直動アクチュエータにおいては、遊星ローラとその遊星ローラを回転自在に支持するキャリアのインナ側ディスク間にスラスト軸受を組込み、そのスラスト軸受によって外輪部材から遊星ローラに負荷される軸方向の押し込み荷重を受けて、遊星ローラの回転の円滑化を図るようにしている。
特開2010−65777号公報 特開2010−90959号公報
ところで、特許文献1および2に記載された電動式直動アクチュエータにおいては、外輪部材から遊星ローラに負荷される軸方向荷重は、遊星ローラの外径面に形成された螺旋溝または円周溝と外輪部材の内径面に設けられた螺旋突条の係合部に入力されるため、その遊星ローラのインナ側端面に形成された軸受軌道面へ負荷される軸方向荷重は偏荷重となり、スラスト軸受はその偏荷重を受けることになる。
このため、スラスト軸受においては、軸方向荷重が入力される入力部位と同一の位相に位置する転動体に大きな軸方向荷重が負荷され、その転動体から周方向にずれるにしたがって転動体に負荷される荷重が次第に小さくなって、スラスト軸受の面圧分布が周方向で不均一となり、転動体や軌道輪が偏摩耗する可能性がある。
この発明の課題は、遊星ローラを回転自在に支持するスラスト軸受の周方向の面圧分布の均一化を図ることである。
上記の課題を解決するため、この発明に係る電動式直動アクチュエータにおいては、円筒状のハウジング内に外輪部材を組込み、その外輪部材の軸心上に電動モータによって回転駆動される回転軸を設け、その回転軸の外径面と前記外輪部材の内径面間に組み込まれた遊星ローラを前記回転軸を中心にして回転自在に支持されたキャリアによって回転自在に支持し、その遊星ローラの外径面には前記外輪部材の内径面に設けられた螺旋突条に噛合する螺旋溝または円周溝を形成し、前記回転軸の回転により、その回転軸との摩擦接触により遊星ローラを自転および公転させて外輪部材を軸方向に直線移動させ、その外輪部材から遊星ローラに負荷される押し込み方向への軸方向力を、その遊星ローラとキャリアのインナ側ディスクとの間に組み込まれたスラスト軸受で受けるようにした電動式直動アクチュエータにおいて、前記遊星ローラとスラスト軸受間またはスラスト軸受とキャリアのインナ側ディスク間に調心座を設けた構成を採用したのである。
また、この発明に係る電動式ディスクブレーキ装置においては、電動式直動アクチュエータによりブレーキパッドを直線駆動し、そのブレーキパッドでブレーキディスクを押圧して、そのブレーキディスクに制動力を付与するようにした電動式ディスクブレーキ装置において、前記電動式直動アクチュエータとしてこの発明に係る電動式直動アクチュエータを用いた構成を採用したのである。
上記の構成からなる電動式直動アクチュエータにおいて、電動モータの駆動により回転軸を回転すると、遊星ローラが回転軸との摩擦接触によって自転しつつ公転し、遊星ローラの外径面に形成された螺旋溝または円周溝と外輪部材の内径面に設けられた螺旋突条の係合により外輪部材が軸方向に直線移動する。
このため、上記外輪部材に電動式ディスクブレーキ装置のブレーキパッドを接続することにより、ブレーキパッドを直線駆動してブレーキディスクに押し付けることができ、ブレーキディスクに制動力を付与することができる。
上記のような制動力の付与時、外輪部材から遊星ローラに軸方向荷重が負荷される。その軸方向荷重の入力部位は、外輪部材の内径面に設けられた螺旋突条と遊星ローラの外径面に形成された螺旋溝または円周溝の係合部であるため、遊星ローラには偏荷重が負荷されることになる。
このとき、遊星ローラとスラスト軸受間またはスラスト軸受とキャリアのインナ側ディスク間には調心座が設けられているため、上記のように、遊星ローラに偏荷重が負荷されると、加圧側調心座と受圧側調心座の接触面でずれ動きが生じて、周方向の面圧分布の均一化が図られることになり、スラスト軸受には、周方向の全体にわたって同じ大きさの軸方向荷重が負荷され、転動体や軌道輪が偏摩耗するという不都合の発生はない。
ここで、加圧側調心座とは、遊星ローラから軸方向荷重が負荷される側の調心座をいい、受圧側調心座とはその加圧側調心座を受ける側の調心座をいう。
上記調心座は、凸形球面と凹形球面の組み合わせからなるものであってもよく、あるいは、凸形球面と凹入状テーパ面の組み合わせからなるものであってもよい。
上記凹形球面を採用する場合において、その凹形球面の球径を凸形球面の球径と同一値以上とすることにより、凹形球面が形成された座板の軸方向長さのコンパクト化を図ることができる。また、凹入状テーパ面を採用する場合において、そのテーパ面のテーパ角を鈍角とすることにより、上記と同様に、テーパ面が形成された座板の軸方向長さのコンパクト化を図ることができる。
調心座を形成する凸形球面と凹面のうち、少なくとも一方に放射状溝あるいは螺旋溝からなる潤滑剤保持用の溝、あるいは各々が独立してランダムに形成された無数の微小な凹形状の窪みを設けておくと、凸形球面と凹面の接触部における摺動性の向上を図ることができ、摩耗や焼付きの防止に効果を挙げることができる。
この発明にかかる電動式直動アクチュエータにおいて、調心座は、遊星ローラとスラスト軸受間またはスラスト軸受とキャリアのインナ側ディスク間に組み込まれた一対の座板の対向面それぞれに形成してもよい。
ここで、スラスト軸受の軌道輪やキャリアのインナ側ディスク、あるいは、遊星ローラのインナ側端面に加圧側または受圧側の調心座を形成することにより、上記一対の座板の一方を省略することができ、その部品点数の低減によって組立性の向上と軸方向長さのコンパクト化を図ることができる。
調心座が形成された部材の形成材料として鉄鋼材料や焼結材料を挙げることができ、鍛造や焼結によって成型することにより、コストの低減を図ることができる。また、表面処理することによって、耐久性の向上を図ることができる。
この発明に係る電動式直動アクチュエータにおいては、上記のように、遊星ローラとスラスト軸受間またはスラスト軸受とキャリアのインナ側ディスク間に調心座を設けたことにより、外輪部材から遊星ローラに負荷される偏荷重によって加圧側調心座と受圧側調心座の接触面でずれ動きが生じるため、遊星ローラを回転自在に支持するスラスト軸受の周方向の面圧分布の均一化を図ることができ、スラスト軸受の耐久性の低下を抑制することができる。
この発明に係る電動式直動アクチュエータの第1の実施の形態を示す縦断面図 図1の一部を拡大して示す断面図 図2のIII−III線に沿った断面図 図2の一部を拡大して示す断面図 (a)および(b)は、凹面が形成された座板の各例を示す断面図 この発明に係る電動式直動アクチュエータの第2の実施の形態を示す縦断面図 この発明に係る電動式直動アクチュエータの第3の実施の形態を示す縦断面図 この発明に係る電動式直動アクチュエータの第4の実施の形態を示す縦断面図 この発明に係る電動式直動アクチュエータの第5の実施の形態を示す縦断面図 この発明に係る電動式直動アクチュエータの第6の実施の形態を示す縦断面図 この発明に係る電動式直動アクチュエータの第7の実施の形態を示す縦断面図 この発明に係る電動式直動アクチュエータの第8の実施の形態を示す縦断面図 この発明に係る電動式直動アクチュエータの第9の実施の形態を示す縦断面図 (c)は、座板の他の例を示す正面図、(d)は、(c)の縦断面図 (e)は、座板の他の例を示す正面図、(f)は、(e)の縦断面図 (g)、(h)は、座板の他の例を示す断面図 この発明に係る電動式直動アクチュエータの第10の実施の形態を示す縦断面図 この発明に係る電動式直動アクチュエータの第11の実施の形態を示す縦断面図 この発明に係る電動式直動アクチュエータの第12の実施の形態を示す縦断面図 この発明に係る電動式直動アクチュエータの第13の実施の形態を示す縦断面図 この発明に係る電動式ディスクブレーキ装置の実施の形態を示す縦断面図
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1乃至図3は、この発明に係る電動式直動アクチュエータAの第1の実施の形態を示す。図1に示すように、ハウジング1は、円筒状をなし、その一端には径方向外方に張り出すベースプレート2が設けられ、そのベースプレート2の外側面はハウジング1の一端部にボルト止めされたカバー3によって覆われている。
ハウジング1の内部には外輪部材5が組込まれている。外輪部材5は回り止めされ、かつ、ハウジング1の内径面に沿って軸方向に移動自在とされ、その内径面には、図2に示すように、断面V字形の螺旋突条6が設けられている。
図1に示すように、ハウジング1内には、外輪部材5の軸方向一端側に軸受部材7が組込まれている。軸受部材7は円盤状をなし、その中央部にはボス部7aが設けられている。軸受部材7は、ハウジング1の内径面に取付けた止め輪8によってカバー3側に移動するのが防止されている。
軸受部材7のボス部7a内には一対の転がり軸受9が軸方向に間隔をおいて組込まれ、その転がり軸受9によって外輪部材5の軸心上に配置された回転軸10が回転自在に支持されている。
ハウジング1のベースプレート2には電動モータ11が支持され、その電動モータ11のロータ軸12の回転は、カバー3内に組込まれたギヤ減速機構13によって回転軸10に伝達されるようになっている。
外輪部材5の内側には回転軸10を中心にして回転可能なキャリア14が組込まれている。図2および図3に示すように、キャリア14は、軸方向で対向する一対のディスク14a、14bを有し、一方のディスク14bに設けられた複数の間隔調整用柱部15によって一対のディスク14a、14bの対向間隔が一定に保持されている。
キャリア14は、一対のディスク14a、14bの内径面に組み込まれたすべり軸受16により回転軸10を中心にして回転自在に、かつ、軸方向にスライド自在に支持され、上記回転軸10の軸端部に取付けられた止め輪17により回転軸10の軸端から抜け出るのが防止されている。
キャリア14における一対のディスク14a、14bのそれぞれには、軸方向で対向する一対の軸挿入孔18が周方向に間隔をおいて形成され、その対向一対の軸挿入孔18のそれぞれ内部にローラ軸19の軸端部が挿入されており、それぞれのローラ軸19に対向一対の軸受20が嵌合され、その軸受20によって遊星ローラ21が回転自在に支持されている。
ここで、一対のディスク14a、14bに形成された軸挿入孔18は径方向に長い長孔とされており、ローラ軸19はその長孔の両端に当接する範囲において移動自在とされ、それぞれのローラ軸19の軸端部を包み込むようにかけ渡された径方向に弾性変形可能な弾性リング22によりローラ軸19が内向きに付勢されて、遊星ローラ21が回転軸10の外径面に押し付けられている。このため、回転軸10が回転すると、その回転軸10の外径面に対する摩擦接触によって遊星ローラ21が回転するようになっている。
遊星ローラ21の外径面には、外輪部材5に設けられた螺旋突条6のピッチと同一のピッチで螺旋溝23が形成され、その螺旋溝23に螺旋突条6が係合している。なお、螺旋溝23に代えて、複数の円周溝を螺旋突条6のピッチと同一のピッチで形成してもよい。
キャリア14の一対のディスク14a、14bのうち、軸受部材7側に位置するインナ側ディスク14aと遊星ローラ21間には、遊星ローラ21側より順に、スラスト軸受24、加圧座板25および受圧座板26が組み込まれている。
図4に示すように、スラスト軸受24は、軌道輪24aと、その軌道輪24aと遊星ローラ21の対向面に沿って転動可能な複数の転動体24bと、その転動体24bを保持する保持器24cからなっている。
加圧座板25と受圧座板26の対向面には調心座27が形成されている。調心座27は、加圧座板25に形成された凸形球面27aと受圧座板26に形成されてその凸形球面27aを接触案内する凹面27bとからなっている。凹面27bは、図5(a)に示すように、凹形球面であってもよく、図5(b)に示すように、テーパ面であってもよい。
加圧座板25および受圧座板26のそれぞれ中心部にはローラ軸19が挿通される軸挿入孔25a、26aが形成され、受圧座板26に形成された軸挿入孔26aとローラ軸19との間には隙間28がある。
一方、加圧座板25に形成された軸挿入孔25aの内径はローラ軸19の外径とほぼ同径とされ、前記隙間28の範囲内において加圧座板25は傾動自在とされている。
図2に示すように、キャリア14におけるインナ側ディスク14aと軸受部材7の対向面間には、環状のサポート部材30と、スラスト軸受31とが組み込まれ、上記スラスト軸受31はキャリア14およびサポート部材30に負荷される軸方向のスラスト荷重を受けるようになっている。
サポート部材30にはインナ側ディスク14aと対向する面に環状溝32が形成され、その環状溝32内に前述の弾性リング22が収容されている。
外輪部材5のハウジング1の端部開口から外部に位置する他端の開口はシールカバー33の取付けにより閉塞されて内部に異物が侵入するのが防止されている。一方、ハウジング1の他端開口は、その他端部と外輪部材5の他端部間に取付けられたブーツ34により閉塞されて内部に異物が侵入するのが防止されている。
第1の実施の形態で示す電動式直動アクチュエータAは上記の構造からなり、図21は、その電動式直動アクチュエータAを採用した電動式ディスクブレーキ装置Bを示す。この電動式ディスクブレーキ装置においては、電動式直動アクチュエータにおけるハウジング1の他端部にキャリパボディ部40を一体に設け、そのキャリパボディ部40内に外周部の一部が配置されたブレーキディスク41の両側に固定ブレーキパッド42と可動ブレーキパッド43を設け、その可動ブレーキパッド43を外輪部材5の他端部に連結一体化している。
図21に示すような電動式ディスクブレーキ装置Bへの電動式直動アクチュエータAの使用状態において、図1に示す電動モータ11の駆動により回転軸10が回転すると、遊星ローラ21が回転軸10との摩擦接触により自転しつつ公転する。
この時、遊星ローラ21の外径面には螺旋溝23が形成され、その螺旋溝23に外輪部材5の内径面に設けられた螺旋突条6が係合しているため、遊星ローラ21の自転および公転により外輪部材5が軸方向に移動し、可動ブレーキパッド43がブレーキディスク41に押し付けられ、ブレーキディスク41に制動力が付与される。
上記のような制動力の付与時、外輪部材5から遊星ローラ21に軸方向荷重が負荷される。その軸方向荷重の入力部位は、外輪部材5の内径面に設けられた螺旋突条6と遊星ローラ21の外径面に形成された螺旋溝23の係合部であるため、遊星ローラ21には偏荷重が負荷されることになる。
このとき、遊星ローラ21とキャリア14のインナ側ディスク14a間には加圧座板25と受圧座板26が組み込まれ、その両座板25、26の対向面に調心座27が設けられているため、上記のように、遊星ローラ21に偏荷重が負荷されると、加圧座板25の凸形球面27aが受圧座板26の凹面27bに接触案内される状態で加圧座板25が傾動し、凸形球面27aと凹面27bの接触部で周方向の面圧分布の均一化が図られることになる。
このため、スラスト軸受24には、周方向の全体にわたって同じ大きさの軸方向荷重が負荷されることになり、軌道輪24aや転動体24bが偏摩耗するという不都合の発生はなく、スラスト軸受24の耐久性の低下が抑制される。
図6は、この発明に係る電動式直動アクチュエータの第2の実施の形態を示す。この実施の形態では、遊星ローラ21とスラスト軸受24間に加圧座板25と受圧座板26とを組み込んでいる点で第1の実施の形態と相違する。このため、第1の実施の形態と同一の部品には同一の符号を付して説明を省略する。
図6では、加圧座板25に凸形球面27aを設け、受圧座板26に凹面27bを設けたが、図7に示す第3の実施の形態のように、加圧座板25に凹面27bを設け、受圧座板26に凸形球面27aを形成するようにしてもよい。
図6に示す第2の実施の形態および図7に示す第3の実施の形態において、受圧座板26にスラスト軸受24の転動体24bの転動を案内する軌道面を形成して、軌道輪24aを省略してもよい。
図8は、この発明に係る電動式直動アクチュエータの第4の実施の形態を示す。この実施の形態では、加圧座板25に凹形球面からなる凹面27bを設け、受圧座板26には凸形球面27aを設けた点で第1の実施の形態と相違する。このため、第1の実施の形態と同一の部品には同一の符号を付して説明を省略する。
第2乃至第4のいずれの実施の形態に示す電動式直動アクチュエータにおいても、外輪部材5から遊星ローラ21に負荷される偏荷重により加圧座板25が傾動し、その傾動による調心作用によってスラスト軸受24の周方向の面圧分布の均一化が図られる。
なお、図8において、凹面27bが形成された加圧座板25にスラスト軸受24の転動体24bを案内する軌道面を設けることにより、同図に示す軌道輪24aを省略することができる。
図9は、この発明に係る電動式直動アクチュエータの第5の実施の形態を示す。この実施の形態では、スラスト軸受24の軌道輪24aとキャリア14のインナ側ディスク14a間に受圧座板26を組込み、上記軌道輪24aに凸形球面27aを設け、受圧座板26には凹形球面からなる凹面27bを形成して、その凹面27bと凸形球面27aとで調心座27を形成している。
上記のように、軌道輪24aと受圧座板26との対向面に調心座27を形成することにより、図2に示す加圧座板25を省略することができるため、部品点数の低減によって、組立ての容易化と電動式直動アクチュエータの軸方向長さのコンパクト化を図ることができる。
図10は、この発明に係る電動式直動アクチュエータの第6の実施の形態を示す。この実施の形態では、スラスト軸受24とキャリア14のインナ側ディスク14aとの間に加圧座板25を組込み、その加圧座板25に凹形球面からなる凹面27bを形成し、上記インナ側ディスク14aには加圧座板25と対向する位置に凸形球面27aを設けて、その凸形球面27aと凹面27bとで調心座27を形成している。
上記のように、加圧座板25とキャリア14のインナ側ディスク14aとの対向面に調心座27を形成することにより、図8に示す受圧座板26を省略することができるため、部品点数の低減によって組立ての容易化と電動式直動アクチュエータの軸方向長さのコンパクト化を図ることができる。
図10では、加圧座板25に凹面27bを形成し、インナ側ディスク14aに凸形球面27aを設けたが、図11に示す第7の実施の形態のように、加圧座板25に凸形球面27aを設け、インナ側ディスク14aに凹面27bを形成してもよい。
図10および図11に示す実施の形態において、加圧座板25にスラスト軸受24の転動体24bの転動を案内する軌道面を設けることにより、図10および図11のそれぞれに示す軌道輪24aを省略することができる。
図12は、この発明に係る電動式直動アクチュエータの第8の実施の形態を示す。この実施の形態では、遊星ローラ21とスラスト軸受24間に受圧座板26を組込み、その受圧座板26の遊星ローラ21と対向する面に凹形球面からなる凹面27bを形成し、遊星ローラ21には受圧座板26と対向する面に凸形球面27aを形成して、その凸形球面27aと凹面27bとで調心座27を形成している。
上記のように、遊星ローラ21と受圧座板26の対向面間に調心座27を設けることにより、図6に示す加圧座板25を省略することができるため、部品点数の低減によって組立ての容易化と電動式直動アクチュエータの軸方向長さのコンパクト化を図ることができる。
図12に示す第8の実施の形態では、遊星ローラ21に凸形球面27aを形成し、受圧座板26に凹面27bを設けたが、図13に示す第9の実施の形態のように、遊星ローラ21に凹面27bを設け、受圧座板26に凸形球面27aを形成してもよい。この場合、受圧座板26にスラスト軸受24の転動体24bの転動を案内する軌道面を設けることにより、同図に示す軌道輪24aを省略することができる。
図5(a)に示す受圧座板26のように、凹面27bが凹形球面からなる場合において、その凹形球面からなる凹面27bの曲率半径を図4に示す凸形球面27aの曲率半径と同一値以上とすることにより、受圧座板26の軸方向厚さを薄くすることができ、電動式直動アクチュエータの軸方向長さのコンパクト化を図ることができる。
また、図5(b)に示す受圧座板26のように、凹面27bがテーパ面からなる場合に、そのテーパ面からなる凹面27bのテーパ角θを鈍角とすることで、上記と同様に、受圧座板26の軸方向厚さを薄くすることができ、電動式直動アクチュエータの軸方向長さのコンパクト化を図ることができる。
図14(c)、(d)は、調心座27を形成する凸形球面27aに放射状の溝35を設けた例を示す。また、図15(e)、(f)は、調心座27を形成する凹面27bに螺旋状の溝35を設けた例を示す。上記のように、調心座27を形成する凸形球面27aや凹面27bに溝35を設けると、その溝35で潤滑油やグリースといった油脂からなる潤滑剤を保持することができるため、凸形球面27aと凹面27bの接触部における摺動性の向上を図ることができ、摩耗や焼付きの防止に効果を挙げることができる。
なお、溝35に代えて、図16(g)、(h)に示すように、調心座27を形成する凸形球面27aや凹面27bに各々が独立した無数の微細な凹部36をランダムに形成し、その凹部36で油脂を保持するようにしてもよい。また、凸形球面27aや凹面27bに固体潤滑被膜を形成して、凸形球面27aと凹面27bの接触部を潤滑するようにしてもよい。
図17は、この発明に係る電動式直動アクチュエータの第10の実施の形態を示す。この実施の形態では、遊星ローラ21とスラスト軸受24との間に凸形球面27aを有する加圧座板25と凹形球面からなる凹面27bを有する受圧座板26とが組込まれ、その加圧座板25に形成された軸部25bが遊星ローラ21の端面に形成された軸挿入孔21a内に圧入されて遊星ローラ21とともに加圧座板25が回転するようになっている。
また、受圧座板26に形成された軸部26bがスラスト軸受24およびキャリア14のインナ側ディスク14aによって回転自在に支持されている。
さらに、インナ側ディスク14aと軸受部材7のボス部7a間にはばねホルダ51が組み込まれ、そのばねホルダ51の凹部52内に組み込まれた弾性部材50はキャリア14を外方に向けて付勢し、アウタ側ディスク14bのテーパ孔14cが回転軸10の軸端部に形成されたテーパ面10aに押し付けられている。
ここで、凹面27bの曲率半径は凸形球面27aの曲率半径よりもわずかに大きくされている。また、ばねホルダ51と軸受部材7間にはスラスト軸受31と間座53とが組み込まれている。
上記の実施の形態では、図1に示すローラ軸19を不要としている。その実施の形態で示す電動式直動アクチュエータにおいては、外輪部材5から遊星ローラ21に偏荷重が負荷されると、凹面27bの曲率半径が凸形球面27aの曲率半径より大きいため、その荷重は受圧座板26の凹面27bの曲率中心に一旦集中し、同軸上に配置されたスラスト軸受24には、この集中荷重が各転動体24bおよびその転動体24bを案内する軌道輪24aに均等に分散されて負荷されることになる。
第10の実施の形態では、凹面27bの曲率半径は凸形球面27aの曲率半径よりもわずかに大きくしているが、同一の大きさであってもよい。この場合、凸形球面27aと凹面27bの球面接触によって転動体24bおよび軌道輪24aに均等な荷重が負荷されるようになる。
第10の実施の形態では、軸部25bを有する加圧座板25に凸形球面27aを形成し、軸部26bを有する受圧座板26に凹面27bを設けたが、図18に示す第11の実施の形態のように、加圧座板25に凹面27bを設け、受圧座板26に凸形球面27aを形成してもよい。
また、第10の実施の形態では、遊星ローラ21に加圧座板25を取付け、その加圧座板25に凸形球面27aを形成したが、図19に示す第12の実施の形態のように、遊星ローラ21の端面に凸形球面27を直接形成して、加圧座板25を省略してもよい。
さらに、第10の実施の形態では、遊星ローラ21とスラスト軸受24間に加圧座板25を組込み、その加圧座板25に形成された凸形球面27aを受圧座板26に形成された凹面27bに接触させるようにしたが、図20に示す第13の実施の形態のように、スラスト軸受24とキャリア14のインナ側ディスク14a間に加圧座板25を組込み、その加圧座板25に形成された凸形球面27aをインナ側ディスク14aに形成された凹形球面からなる凹面27bに接触させるようにしてもよい。
なお、図20に示す第13の実施の形態では、加圧座板25に設けられた軸部25bを遊星ローラ21によって回転自在に支持している。
第1の実施の形態乃至第9の実施の形態においては、凸形球面27aが形成された加圧座板25等の部材や凹形球面等の凹面27bが形成された受圧座板26等の部材を入手の容易な加工性の良好な鉄鋼材料や焼結材料で形成している。この場合、必要に応じて、熱処理やめっき処理という表面処理を施して強度、摺動性、耐摩耗性を向上させ、寿命の延長や信頼性の向上を図るようにしてもよい。
A 電動式直動アクチュエータ
B 電動式ディスクブレーキ装置
1 ハウジング
5 外輪部材
6 螺旋突条
10 回転軸
11 電動モータ
14 キャリア
14a インナ側ディスク
21 遊星ローラ
23 螺旋溝
24 スラスト軸受
24a 軌道輪
25 加圧座板(座板)
26 受圧座板(座板)
27 調心座
27a 凸形球面
27b 凹面
35 潤滑剤保持用の溝
41 ブレーキディスク
43 可動ブレーキパッド(ブレーキパッド)
この発明は、電動式ディスクブレーキ装置に関する。
電動式ディスクブレーキ装置のブレーキパッドを直線駆動する電動式直動アクチュエータにおいては、電動モータのロータ軸の回転運動を運動変換機構によって軸方向に移動自在に支持された被駆動部材の直線運動に変換するようにしている。
電動式直動アクチュエータに採用された運動変換機構として、ボールねじ機構やボールランプ機構が知られているが、これらの運動変換機構においては、ある程度の増力機能を有するものの、電動式ディスクブレーキ装置等で必要とされるような大きな増力機能を確保することができない。
そこで、上記のような運動変換機構を採用した電動式直動アクチュエータにおいては、遊星歯車機構等の減速機構を別途組込んで駆動力の増大を図るようにしており、上記減速機構を組込む分、構成が複雑となり、電動式直動アクチュエータが大型化するという問題があった。
そのような問題点を解決するため、本件出願人は、減速機構を組込むことなく大きな増力機能を確保することができ、直動ストロークが比較的小さい電動式ディスクブレーキ装置への採用に好適な電動式直動アクチュエータを特許文献1および特許文献2において既に提案している。
ここで、上記特許文献1および2に記載された電動式直動アクチュエータにおいては、電動モータによって回転駆動される回転軸と軸方向に移動自在に支持された外輪部材との間に遊星ローラを組込み、上記回転軸の回転により、その回転軸との摩擦接触によって遊星ローラを自転させつつ公転させ、その遊星ローラの外径面に形成された螺旋溝または円周溝と外輪部材の内径面に設けられた螺旋突条との噛み合いによって外輪部材を軸方向に直線移動させるようにしている。
また、上記特許文献1および2に記載された電動式直動アクチュエータにおいては、遊星ローラとその遊星ローラを回転自在に支持するキャリアのインナ側ディスク間にスラスト軸受を組込み、そのスラスト軸受によって外輪部材から遊星ローラに負荷される軸方向の押し込み荷重を受けて、遊星ローラの回転の円滑化を図るようにしている。
特開2010−65777号公報 特開2010−90959号公報
ところで、特許文献1および2に記載された電動式直動アクチュエータにおいては、直線駆動される被駆動部材としての外輪部材から遊星ローラに負荷される軸方向荷重は、遊星ローラの外径面に形成された螺旋溝または円周溝と外輪部材の内径面に設けられた螺旋突条の係合部に入力されるため、その遊星ローラのインナ側端面に形成された軸受軌道面へ負荷される軸方向荷重は偏荷重となり、スラスト軸受はその偏荷重を受けることになる。
このため、受圧部としてのスラスト軸受においては、軸方向荷重が入力される入力部位と同一の位相に位置する転動体に大きな軸方向荷重が負荷され、その転動体から周方向にずれるにしたがって転動体に負荷される荷重が次第に小さくなって、スラスト軸受の面圧分布が周方向で不均一となり、転動体や軌道輪が偏摩耗する可能性がある。
この発明の課題は、軸方向荷重を受ける受圧部の周方向の面圧分布の均一化を図ることである。
上記の課題を解決するため、この発明においては、ハウジングと、そのハウジングに支持された電動モータと、前記ハウジング内に組み込まれた軸方向に移動可能な被駆動部材と、前記電動モータのロータ軸の回転運動を前記被駆動部材の軸方向への直線運動に変換する運動変換機構とを有し、前記ハウジングに一体に設けられたキャリパボディ内にブレーキディスクの外周の一部を配置し、そのブレーキディスクの両側に固定ブレーキパッドと可動ブレーキパッドとを設け、前記可動ブレーキパッドを前記被駆動部材でブレーキディスクに押し付けて制動力を付与し、可動ブレーキパッドからの軸方向荷重を受圧部で受けるようした電動式ディスクブレーキ装置において、前記可動ブレーキパッドから前記受圧部に至る軸方向荷重の負荷系路に、前記受圧部での周方向の面圧分布の均一化を図る調心機構を設けた構成を採用したのである。
上記の構成からなる電動式ディスクブレーキ装置において、電動モータを駆動すると、運動変換機構の作動により被駆動部材が軸方向に直線移動し、可動ブレーキパッドがブレーキディスクに押し付けられてブレーキディスクに制動力が付与される。
上記のような制動力の付与時、可動ブレーキパッドから受圧部に軸方向荷重が負荷される。その軸方向荷重が偏荷重であると、調心機構が作動し、受圧部での周方向の面圧分布の均一化が図られる。
この発明においては、上記のように、ブレーキディスクに対する制動力の付与時、可動ブレーキパッドからの軸方向荷重が偏荷重であると調心機構が作動するため、受圧部での周方向の面圧分布の均一化を図り、耐久性の低下を抑制することができる。
この発明に係る電動式ディスクブレーキ装置に採用される電動式直動アクチュエータの縦断面図 図1の一部を拡大して示す断面図 図2のIII−III線に沿った断面図 図2の一部を拡大して示す断面図 (a)および(b)は、凹面が形成された座板の各例を示す断面図 動式直動アクチュエータの他の例を示す縦断面図 動式直動アクチュエータのさらに他の例を示す縦断面図 動式直動アクチュエータのさらに他の例を示す縦断面図 動式直動アクチュエータのさらに他の例を示す縦断面図 動式直動アクチュエータのさらに他の例を示す縦断面図 動式直動アクチュエータのさらに他の例を示す縦断面図 動式直動アクチュエータのさらに他の例を示す縦断面図 動式直動アクチュエータのさらに他の例を示す縦断面図 (c)は、座板の他の例を示す正面図、(d)は、(c)の縦断面図 (e)は、座板の他の例を示す正面図、(f)は、(e)の縦断面図 (g)、(h)は、座板の他の例を示す断面図 動式直動アクチュエータのさらに他の例を示す縦断面図 動式直動アクチュエータのさらに他の例を示す縦断面図 動式直動アクチュエータのさらに他の例を示す縦断面図 動式直動アクチュエータのさらに他の例を示す縦断面図 この発明に係る電動式ディスクブレーキ装置の実施の形態を示す縦断面図
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1乃至図3は、この発明に係る電動式直動アクチュエータAの第1の実施の形態を示す。図1に示すように、ハウジング1は、円筒状をなし、その一端には径方向外方に張り出すベースプレート2が設けられ、そのベースプレート2の外側面はハウジング1の一端部にボルト止めされたカバー3によって覆われている。
ハウジング1の内部には外輪部材5が組込まれている。外輪部材5は回り止めされ、かつ、ハウジング1の内径面に沿って軸方向に移動自在とされ、その内径面には、図2に示すように、断面V字形の螺旋突条6が設けられている。
図1に示すように、ハウジング1内には、外輪部材5の軸方向一端側に軸受部材7が組込まれている。軸受部材7は円盤状をなし、その中央部にはボス部7aが設けられている。軸受部材7は、ハウジング1の内径面に取付けた止め輪8によってカバー3側に移動するのが防止されている。
軸受部材7のボス部7a内には一対の転がり軸受9が軸方向に間隔をおいて組込まれ、その転がり軸受9によって外輪部材5の軸心上に配置された回転軸10が回転自在に支持されている。
ハウジング1のベースプレート2には電動モータ11が支持され、その電動モータ11のロータ軸12の回転は、カバー3内に組込まれたギヤ減速機構13によって回転軸10に伝達されるようになっている。
外輪部材5の内側には回転軸10を中心にして回転可能なキャリア14が組込まれている。図2および図3に示すように、キャリア14は、軸方向で対向する一対のディスク14a、14bを有し、一方のディスク14bに設けられた複数の間隔調整用柱部15によって一対のディスク14a、14bの対向間隔が一定に保持されている。
キャリア14は、一対のディスク14a、14bの内径面に組み込まれたすべり軸受16により回転軸10を中心にして回転自在に、かつ、軸方向にスライド自在に支持され、上記回転軸10の軸端部に取付けられた止め輪17により回転軸10の軸端から抜け出るのが防止されている。
キャリア14における一対のディスク14a、14bのそれぞれには、軸方向で対向する一対の軸挿入孔18が周方向に間隔をおいて形成され、その対向一対の軸挿入孔18のそれぞれ内部にローラ軸19の軸端部が挿入されており、それぞれのローラ軸19に対向一対の軸受20が嵌合され、その軸受20によって遊星ローラ21が回転自在に支持されている。
ここで、一対のディスク14a、14bに形成された軸挿入孔18は径方向に長い長孔とされており、ローラ軸19はその長孔の両端に当接する範囲において移動自在とされ、それぞれのローラ軸19の軸端部を包み込むようにかけ渡された径方向に弾性変形可能な弾性リング22によりローラ軸19が内向きに付勢されて、遊星ローラ21が回転軸10の外径面に押し付けられている。このため、回転軸10が回転すると、その回転軸10の外径面に対する摩擦接触によって遊星ローラ21が回転するようになっている。
遊星ローラ21の外径面には、外輪部材5に設けられた螺旋突条6のピッチと同一のピッチで螺旋溝23が形成され、その螺旋溝23に螺旋突条6が係合している。なお、螺旋溝23に代えて、複数の円周溝を螺旋突条6のピッチと同一のピッチで形成してもよい。
キャリア14の一対のディスク14a、14bのうち、軸受部材7側に位置するインナ側ディスク14aと遊星ローラ21間には、遊星ローラ21側より順に、スラスト軸受24、加圧座板25および受圧座板26が組み込まれている。
図4に示すように、スラスト軸受24は、軌道輪24aと、その軌道輪24aと遊星ローラ21の対向面に沿って転動可能な複数の転動体24bと、その転動体24bを保持する保持器24cからなっている。
加圧座板25と受圧座板26の対向面には調心座27が形成されている。調心座27は、加圧座板25に形成された凸形球面27aと受圧座板26に形成されてその凸形球面27aを接触案内する凹面27bとからなっている。凹面27bは、図5(a)に示すように、凹形球面であってもよく、図5(b)に示すように、テーパ面であってもよい。
加圧座板25および受圧座板26のそれぞれ中心部にはローラ軸19が挿通される軸挿入孔25a、26aが形成され、受圧座板26に形成された軸挿入孔26aとローラ軸19との間には隙間28がある。
一方、加圧座板25に形成された軸挿入孔25aの内径はローラ軸19の外径とほぼ同径とされ、前記隙間28の範囲内において加圧座板25は傾動自在とされている。
図2に示すように、キャリア14におけるインナ側ディスク14aと軸受部材7の対向面間には、環状のサポート部材30と、スラスト軸受31とが組み込まれ、上記スラスト軸受31はキャリア14およびサポート部材30に負荷される軸方向のスラスト荷重を受けるようになっている。
サポート部材30にはインナ側ディスク14aと対向する面に環状溝32が形成され、その環状溝32内に前述の弾性リング22が収容されている。
外輪部材5のハウジング1の端部開口から外部に位置する他端の開口はシールカバー33の取付けにより閉塞されて内部に異物が侵入するのが防止されている。一方、ハウジング1の他端開口は、その他端部と外輪部材5の他端部間に取付けられたブーツ34により閉塞されて内部に異物が侵入するのが防止されている。
第1の実施の形態で示す電動式直動アクチュエータAは上記の構造からなり、図21は、その電動式直動アクチュエータAを採用した電動式ディスクブレーキ装置Bを示す。この電動式ディスクブレーキ装置においては、電動式直動アクチュエータにおけるハウジング1の他端部にキャリパボディ部40を一体に設け、そのキャリパボディ部40内に外周部の一部が配置されたブレーキディスク41の両側に固定ブレーキパッド42と可動ブレーキパッド43を設け、その可動ブレーキパッド43を外輪部材5の他端部に連結一体化している。
図21に示すような電動式ディスクブレーキ装置Bへの電動式直動アクチュエータAの使用状態において、図1に示す電動モータ11の駆動により回転軸10が回転すると、遊星ローラ21が回転軸10との摩擦接触により自転しつつ公転する。
この時、遊星ローラ21の外径面には螺旋溝23が形成され、その螺旋溝23に外輪部材5の内径面に設けられた螺旋突条6が係合しているため、遊星ローラ21の自転および公転により外輪部材5が軸方向に移動し、可動ブレーキパッド43がブレーキディスク41に押し付けられ、ブレーキディスク41に制動力が付与される。
上記のような制動力の付与時、外輪部材5から遊星ローラ21に軸方向荷重が負荷される。その軸方向荷重の入力部位は、外輪部材5の内径面に設けられた螺旋突条6と遊星ローラ21の外径面に形成された螺旋溝23の係合部であるため、遊星ローラ21には偏荷重が負荷されることになる。
このとき、遊星ローラ21とキャリア14のインナ側ディスク14a間には加圧座板25と受圧座板26が組み込まれ、その両座板25、26の対向面に調心座27が設けられているため、上記のように、遊星ローラ21に偏荷重が負荷されると、加圧座板25の凸形球面27aが受圧座板26の凹面27bに接触案内される状態で加圧座板25が傾動し、凸形球面27aと凹面27bの接触部で周方向の面圧分布の均一化が図られることになる。
このため、受圧部としてのスラスト軸受24には、周方向の全体にわたって同じ大きさの軸方向荷重が負荷されることになり、軌道輪24aや転動体24bが偏摩耗するという不都合の発生はなく、スラスト軸受24の耐久性の低下が抑制される。
図6は、この発明に係る電動式直動アクチュエータの第2の実施の形態を示す。この実施の形態では、遊星ローラ21とスラスト軸受24間に加圧座板25と受圧座板26とを組み込んでいる点で第1の実施の形態と相違する。このため、第1の実施の形態と同一の部品には同一の符号を付して説明を省略する。
図6では、加圧座板25に凸形球面27aを設け、受圧座板26に凹面27bを設けたが、図7に示す第3の実施の形態のように、加圧座板25に凹面27bを設け、受圧座板26に凸形球面27aを形成するようにしてもよい。
図6に示す第2の実施の形態および図7に示す第3の実施の形態において、受圧座板26にスラスト軸受24の転動体24bの転動を案内する軌道面を形成して、軌道輪24aを省略してもよい。
図8は、この発明に係る電動式直動アクチュエータの第4の実施の形態を示す。この実施の形態では、加圧座板25に凹形球面からなる凹面27bを設け、受圧座板26には凸形球面27aを設けた点で第1の実施の形態と相違する。このため、第1の実施の形態と同一の部品には同一の符号を付して説明を省略する。
第2乃至第4のいずれの実施の形態に示す電動式直動アクチュエータにおいても、外輪部材5から遊星ローラ21に負荷される偏荷重により加圧座板25が傾動し、その傾動による調心作用によってスラスト軸受24の周方向の面圧分布の均一化が図られる。
なお、図8において、凹面27bが形成された加圧座板25にスラスト軸受24の転動体24bを案内する軌道面を設けることにより、同図に示す軌道輪24aを省略することができる。
図9は、この発明に係る電動式直動アクチュエータの第5の実施の形態を示す。この実施の形態では、スラスト軸受24の軌道輪24aとキャリア14のインナ側ディスク14a間に受圧座板26を組込み、上記軌道輪24aに凸形球面27aを設け、受圧座板26には凹形球面からなる凹面27bを形成して、その凹面27bと凸形球面27aとで調心座27を形成している。
上記のように、軌道輪24aと受圧座板26との対向面に調心座27を形成することにより、図2に示す加圧座板25を省略することができるため、部品点数の低減によって、組立ての容易化と電動式直動アクチュエータの軸方向長さのコンパクト化を図ることができる。
図10は、この発明に係る電動式直動アクチュエータの第6の実施の形態を示す。この実施の形態では、スラスト軸受24とキャリア14のインナ側ディスク14aとの間に加圧座板25を組込み、その加圧座板25に凹形球面からなる凹面27bを形成し、上記インナ側ディスク14aには加圧座板25と対向する位置に凸形球面27aを設けて、その凸形球面27aと凹面27bとで調心座27を形成している。
上記のように、加圧座板25とキャリア14のインナ側ディスク14aとの対向面に調心座27を形成することにより、図8に示す受圧座板26を省略することができるため、部品点数の低減によって組立ての容易化と電動式直動アクチュエータの軸方向長さのコンパクト化を図ることができる。
図10では、加圧座板25に凹面27bを形成し、インナ側ディスク14aに凸形球面27aを設けたが、図11に示す第7の実施の形態のように、加圧座板25に凸形球面27aを設け、インナ側ディスク14aに凹面27bを形成してもよい。
図10および図11に示す実施の形態において、加圧座板25にスラスト軸受24の転動体24bの転動を案内する軌道面を設けることにより、図10および図11のそれぞれに示す軌道輪24aを省略することができる。
図12は、この発明に係る電動式直動アクチュエータの第8の実施の形態を示す。この実施の形態では、遊星ローラ21とスラスト軸受24間に受圧座板26を組込み、その受圧座板26の遊星ローラ21と対向する面に凹形球面からなる凹面27bを形成し、遊星ローラ21には受圧座板26と対向する面に凸形球面27aを形成して、その凸形球面27aと凹面27bとで調心座27を形成している。
上記のように、遊星ローラ21と受圧座板26の対向面間に調心座27を設けることにより、図6に示す加圧座板25を省略することができるため、部品点数の低減によって組立ての容易化と電動式直動アクチュエータの軸方向長さのコンパクト化を図ることができる。
図12に示す第8の実施の形態では、遊星ローラ21に凸形球面27aを形成し、受圧座板26に凹面27bを設けたが、図13に示す第9の実施の形態のように、遊星ローラ21に凹面27bを設け、受圧座板26に凸形球面27aを形成してもよい。この場合、受圧座板26にスラスト軸受24の転動体24bの転動を案内する軌道面を設けることにより、同図に示す軌道輪24aを省略することができる。
図5(a)に示す受圧座板26のように、凹面27bが凹形球面からなる場合において、その凹形球面からなる凹面27bの曲率半径を図4に示す凸形球面27aの曲率半径と同一値以上とすることにより、受圧座板26の軸方向厚さを薄くすることができ、電動式直動アクチュエータの軸方向長さのコンパクト化を図ることができる。
また、図5(b)に示す受圧座板26のように、凹面27bがテーパ面からなる場合に、そのテーパ面からなる凹面27bのテーパ角θを鈍角とすることで、上記と同様に、受圧座板26の軸方向厚さを薄くすることができ、電動式直動アクチュエータの軸方向長さのコンパクト化を図ることができる。
図14(c)、(d)は、調心座27を形成する凸形球面27aに放射状の溝35を設けた例を示す。また、図15(e)、(f)は、調心座27を形成する凹面27bに螺旋状の溝35を設けた例を示す。上記のように、調心座27を形成する凸形球面27aや凹面27bに溝35を設けると、その溝35で潤滑油やグリースといった油脂からなる潤滑剤を保持することができるため、凸形球面27aと凹面27bの接触部における摺動性の向上を図ることができ、摩耗や焼付きの防止に効果を挙げることができる。
なお、溝35に代えて、図16(g)、(h)に示すように、調心座27を形成する凸形球面27aや凹面27bに各々が独立した無数の微細な凹部36をランダムに形成し、その凹部36で油脂を保持するようにしてもよい。また、凸形球面27aや凹面27bに固体潤滑被膜を形成して、凸形球面27aと凹面27bの接触部を潤滑するようにしてもよい。
図17は、この発明に係る電動式直動アクチュエータの第10の実施の形態を示す。この実施の形態では、遊星ローラ21とスラスト軸受24との間に凸形球面27aを有する加圧座板25と凹形球面からなる凹面27bを有する受圧座板26とが組込まれ、その加圧座板25に形成された軸部25bが遊星ローラ21の端面に形成された軸挿入孔21a内に圧入されて遊星ローラ21とともに加圧座板25が回転するようになっている。
また、受圧座板26に形成された軸部26bがスラスト軸受24およびキャリア14のインナ側ディスク14aによって回転自在に支持されている。
さらに、インナ側ディスク14aと軸受部材7のボス部7a間にはばねホルダ51が組み込まれ、そのばねホルダ51の凹部52内に組み込まれた弾性部材50はキャリア14を外方に向けて付勢し、アウタ側ディスク14bのテーパ孔14cが回転軸10の軸端部に形成されたテーパ面10aに押し付けられている。
ここで、凹面27bの曲率半径は凸形球面27aの曲率半径よりもわずかに大きくされている。また、ばねホルダ51と軸受部材7間にはスラスト軸受31と間座53とが組み込まれている。
上記の実施の形態では、図1に示すローラ軸19を不要としている。その実施の形態で示す電動式直動アクチュエータにおいては、外輪部材5から遊星ローラ21に偏荷重が負荷されると、凹面27bの曲率半径が凸形球面27aの曲率半径より大きいため、その荷重は受圧座板26の凹面27bの曲率中心に一旦集中し、同軸上に配置されたスラスト軸受24には、この集中荷重が各転動体24bおよびその転動体24bを案内する軌道輪24aに均等に分散されて負荷されることになる。
第10の実施の形態では、凹面27bの曲率半径は凸形球面27aの曲率半径よりもわずかに大きくしているが、同一の大きさであってもよい。この場合、凸形球面27aと凹面27bの球面接触によって転動体24bおよび軌道輪24aに均等な荷重が負荷されるようになる。
第10の実施の形態では、軸部25bを有する加圧座板25に凸形球面27aを形成し、軸部26bを有する受圧座板26に凹面27bを設けたが、図18に示す第11の実施の形態のように、加圧座板25に凹面27bを設け、受圧座板26に凸形球面27aを形成してもよい。
また、第10の実施の形態では、遊星ローラ21に加圧座板25を取付け、その加圧座板25に凸形球面27aを形成したが、図19に示す第12の実施の形態のように、遊星ローラ21の端面に凸形球面27を直接形成して、加圧座板25を省略してもよい。
さらに、第10の実施の形態では、遊星ローラ21とスラスト軸受24間に加圧座板25を組込み、その加圧座板25に形成された凸形球面27aを受圧座板26に形成された凹面27bに接触させるようにしたが、図20に示す第13の実施の形態のように、スラスト軸受24とキャリア14のインナ側ディスク14a間に加圧座板25を組込み、その加圧座板25に形成された凸形球面27aをインナ側ディスク14aに形成された凹形球面からなる凹面27bに接触させるようにしてもよい。
なお、図20に示す第13の実施の形態では、加圧座板25に設けられた軸部25bを遊星ローラ21によって回転自在に支持している。
第1の実施の形態乃至第9の実施の形態においては、凸形球面27aが形成された加圧座板25等の部材や凹形球面等の凹面27bが形成された受圧座板26等の部材を入手の容易な加工性の良好な鉄鋼材料や焼結材料で形成している。この場合、必要に応じて、熱処理やめっき処理という表面処理を施して強度、摺動性、耐摩耗性を向上させ、寿命の延長や信頼性の向上を図るようにしてもよい。
1 ハウジング
5 外輪部材(被駆動部材)
11 電動モータ
24 スラスト軸受(受圧部)
25 加圧座板(調心機構)
26 受圧座板(調心機構)
27 調心座(調心機構)
40 キャリパボディ
41 ブレーキディスク
42 固定ブレーキパッド
43 可動ブレーキパッド

Claims (1)

  1. ハウジングと、
    前記ハウジングに支持された電動モータと、
    前記ハウジング内に組み込まれた軸方向に移動可能な被駆動部材と、
    前記電動モータのロータ軸の回転運動を前記被駆動部材の軸方向への直線運動に変換する運動変換機構と、
    を有し、
    前記ハウジングに一体に設けられたキャリパボディ内にブレーキディスクの外周の一部を配置し、そのブレーキディスクの両側に固定ブレーキパッドと可動ブレーキパッドとを設け、前記可動ブレーキパッドを前記被駆動部材でブレーキディスクに押し付けて制動力を付与し、可動ブレーキパッドからの軸方向荷重を受圧部で受けるようした電動式ディスクブレーキ装置において、
    前記可動ブレーキパッドから前記受圧部に至る軸方向荷重の負荷系路に、前記受圧部での周方向の面圧分布の均一化を図る調心機構を設けたことを特徴とする電動式ディスクブレーキ装置。
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