JP2014202250A - 複列ころ軸受用の櫛型保持器及び複列ころ軸受 - Google Patents
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Abstract
Description
複列ころ軸受には潤滑性能を維持するためにグリースが設けられており、そのグリースは保持器にも付着して保持されているが、回転速度が急変すると、保持器に保持されていたグリースが飛び散ることがある。例えば、グリースが保持器から軸方向外側へ振り切られ、早期にグリース不足が発生するおそれがある。グリース不足が発生すると、複列ころ軸受の焼き付きや損傷の原因となり、軸受の寿命(耐久性)が低下してしまうという問題点がある。
この場合、保持器が急加速して回転しても、溝底部及びその両側の溝側面で囲まれた溝内に溜められているグリースが、溝内から飛び散ることを、両側の溝側面によって抑えることができ、早期にグリース不足となるのを抑制することができる。
この場合、円環部の内周面に形成されている第一溝に、グリースを保持することができ、また、保持器の回転に伴い、このグリースを第二溝によって柱部の径方向内側の面へと誘導する。そして、誘導されたグリースを、柱部とその周方向隣りに設けられるころとの間に供給することが可能となる。
なお、仮に、第二溝が、柱部の先部まで延びて形成されている場合、第二溝に誘導され第二溝の溝先端を乗り越えて軸方向に流れたグリースは、ころが存在している領域(ポケット)ではなく、ころが存在していない領域へ多く飛び散ってしまうおそれがある。
この場合、ポケット内のころの端面が対向する面に、当該端面側に開口している凹部が形成されており、この凹部により、ころの端面との間でグリースを保持する。更に、この凹部は、円環部の内周面において開口し、その内周面に存在しているグリースが導入される。このため、円環部の内周面に存在しているグリースを凹部に導入させることで、安定してころの端面と保持器との間にグリースを保持させることが可能となり、複列ころ軸受内において早期にグリース不足となるのを抑制することができる。
〔1. 複列ころ軸受の全体構成について〕
図1は、複列ころ軸受1の縦断面図である。なお、各図面において同一の構成要素に対しては同一の符号(参照番号)を付し、重複する説明は省略する。
主軸6の直径は例えば50〜150ミリ程度であり、主軸6の最大回転数は10000〜15000rpmとなる。そして、主軸6は、低速回転する場合や、高速回転する場合があり、また、低速又は停止状態から高速回転状態(最大回転数)へと急加速する。
一方側のころ列用の保持器5と他方側のころ列用の保持器5とは、複列ころ軸受1への取り付け方向が異なるが、同じものである。これら保持器5,5は、軸方向に並べて複列ころ軸受1に組み込まれており、各保持器5の軸方向に向く一側面11が、複列ころ軸受1の軸方向外側へ向くように配置され、保持器5,5の対向する環状の背面14,14同士が接触可能となる。そして、保持器5,5それぞれは独立して各ころ列と共に回転することができる。
そして、所要回転数を越えると、保持器5に作用する遠心力が大きくなり、柱部20が大きく変形する。この状態で、保持器5は、主に円環部10の外周面(の一部)において、外輪3の内周面によって径方向について位置決めされる(外輪案内)。
保持器5は、主軸6が急加速してもグリースが多く飛び散らないように保持することができ、かつ、保持しているグリースを、保持器5の回転に伴ってころ4との間(ポケット7)、及び、隣りに設置される別の保持器5との間(背面14,14間)に、徐々に供給する機能を有している。
図6は、第一溝13の溝断面形状(横断面形状)を説明する説明図である。図6に示す第一溝13の溝断面形状は、円弧形状であり、一定の半径を有する円弧からなる。最も径方向内側の開口端で溝幅Bが最大であり、この開口端から径方向外側に向かうにしたがって溝の軸方向寸法が小さくなる。つまり、第一溝13の溝断面形状は、溝底部30に向かうにしたがって溝幅Bが小さくなる形状である。溝底部30は、第一溝13内で最も径方向外側に位置する部分であり、図6の場合、溝底部30は周方向に連続している。そして、この第一溝13は、溝長手方向(周方向)に沿って断面形状が変化しない。
このため、保持器5が急加速して回転しても、溝底部30及びその両側の溝側面31,32によって囲まれた溝(13)内に溜められているグリースが、両側の溝側面31,32によって、溝(13)内から飛び散るのを抑えることができ、早期にグリース不足となるのを抑制することができる。
しかも、溝(13)内に保持されているグリースは、保持器5の回転に伴って徐々に溝側面31,32それぞれをつたって内周面12のうちの第一溝13の両側の面に出ることができ、やがて、この面に達したグリースを、環状部10の一側面11側及び他側面(背面14)側へ供給することができる。
また、第三溝23の断面形状は、第一溝13と同じであり、溝長手方向(軸方向)に沿って断面形状が変化しない。
図7(A)(B)(C)それぞれは、第一溝13の他の形態の説明図である。
図7(A)に示す第一溝13の溝断面形状は、図6に示すものよりも、溝深さが浅い。この場合、図6に示す第一溝13と比較して、グリースの保持性能は低くなるが、グリースを一側面11及び背面14側へ供給しやすくなる。
図8(A)に示す第一溝13の溝断面形状は、複合円弧からなる。つまり、溝断面は、半径R1を有する第一円弧部34と、この第一円弧部34の溝幅方向両側に設けられ半径R1と大きさが異なる半径R2を有する第二円弧部35,35とを含む。第一円弧部34と第二円弧部35,35とは滑らかに連続しており、また、第二円弧部35,35は円環部10の内周面12と滑らかに連続している。
溝底部30は、第一円弧部34の最も径方向外側の部分からなる。そして、この溝底部30の溝幅方向の両側に溝側面31,32が設けられており、これら溝側面31,32は、溝底部30から径方向内側へ広がるように形成されている。溝側面31,32それぞれは、第一円弧部34の一部(溝底部30を除く部分)と、第二円弧部35とを含む。
また、図7及び図8に示す各第一溝13が形成されている保持器5の保持器内面9に、更に、第三溝23を形成する場合、その第三溝23の断面形状は、第一溝13と同じであり、溝長手方向(軸方向)に沿って断面形状が変化しない。または、その第三溝23の溝断面形状は、第一溝13の溝断面形状と異なっていてもよく、例えば、図3に示す第二溝22と同様の形状であってもよい。
前記実施形態(図2参照)では、保持器内面9に、第一溝13、第二溝22及び第三溝23が形成されている場合について説明した。他の形態の保持器5として、図9に示すように、保持器内面9には第一溝13のみが形成されている。つまり、円環部10の内周面12に、周方向を溝長手方向とする第一溝13が形成されている。なお、図9は、環状である保持器5を平面的に展開し、その保持器内面9を模式的に示した図である。図9に示す第一溝13は、図2に示す第一溝13と構成が同じであり、ここでは、その詳細についての説明を省略する。
また、図10の二点鎖線で示すように、保持器5の中心線に平行な仮想直線に沿う方向を溝長手方向とする(第二溝22のような)溝22aを、第二溝22とは別に、又は、第二溝22に代えて、円環部10の内周面12に形成してもよい。
そして、図11に示す保持器5は、ころ4の端面4a(図1参照)との間でグリースを溜めて保持することができ、かつ、保持しているグリースを、ころ4の端面4aとの間(ポケット7)に供給する機能を有している。
保持器5の円環部10において、ポケット7内のころ4の端面4a(図14参照)が対向する面15に、凹部16が形成されている。この凹部16は、ころ4の端面4aとの間でグリースを保持するために、端面4a側に開口して形成されている。なお、凹部16が形成されている前記面15は、ポケット7内の一側面11である。そして、凹部16は、更に、円環部10の内周面12に存在しているグリースを導入させるために、内周面12において開口している。
そこで、本実施形態の保持器5では、凹部16の外側壁面18における開口縁18a(図13と図14の太線部分)は、一側面11(面15)のうち窪部40に対向する領域内に位置している。なお、図13では、前記領域を符号Kで示しており、その領域Kにクロスハッチを付している。
特に、本実施形態では、円環部10の内周面12に第一溝13が形成されていることから、この第一溝13にはグリースが保持されており、また、この第一溝13と凹部16とが繋がっていることから、保持されているグリースを、凹部16へ導入することができる。
なお、本実施形態では、凹部16の底面17を傾斜面としたが、これ以外として、段付き面であってもよく、また、底面17は、一側面11と平行な平面であってもよい。
以上の前記各実施形態に係る保持器5によれば、複列ころ軸受1(図1及び図2参照)が支持する主軸6が高速回転し、しかも回転速度が急変しても、保持器内面9の一部にグリースを保持する溝(13,22,23)が形成されていることから、グリースが保持器5から飛び散るのを抑えることが可能となり、複列ころ軸受1内において早期にグリース不足となるのを抑制することができる。
さらに、各溝は、グリースを溜めて保持するのみならず、保持しているグリースを保持器5の回転に伴って徐々に溝外へ流れさせることができる。
この結果、グリース不足による複列ころ軸受1の寿命の低下を防ぐことができる。
なお、保持器には黄銅製(銅合金製)のものがあるが、特に高速回転の環境で用いられる場合、保持器の内周面、外周面及びポケット面等が、内輪、外輪及びころに接触することで摩耗し、摩耗粉が発生する。この摩耗粉が、複列ころ軸受の潤滑用のグリース中に混入すると、グリースの潤滑性能が劣化し、軸受の焼き付きや損傷の原因になるおそれがある。しかし、本実施形態の保持器5は樹脂製であるため、前記のような摩耗粉によるグリースの潤滑性能の劣化を防ぐことができる。つまり、樹脂製の保持器5は、黄銅製のものに比べて高速回転に適している。
また、複列ころ軸受1は、工作機械の主軸6の支持以外の用途であってもよい。
また、前記実施形態では、保持器5の回転数に応じてころ案内と外輪案内とが切り替わる場合について説明したが、これ以外であってもよく、ころ案内又は外輪案内のうちの一方であればよい。
4:ころ 5:保持器(櫛型保持器) 7:ポケット
9:保持器内面 10:円環部 11:一側面
12:内周面 13:第一溝(溝) 20:柱部
21:径方向内側の面 22:第二溝(溝) 23:第三溝(溝)
30:溝底部 31:溝側面 32:溝側面
Claims (8)
- 内輪と外輪との間に複列状態で複数のころが配置される複列ころ軸受に組み込まれ、列毎に複数の前記ころを保持すると共に、前記ころによって径方向について位置決めされるころ案内又は前記外輪によって径方向について位置決めされる外輪案内の櫛型保持器であって、
円環部、及び、この円環部の一側面から軸方向に延びかつ周方向に間隔をあけて設けられている複数の柱部を備え、
前記円環部の内周面と前記柱部の径方向内側の面とを含む保持器内面の一部に、グリースを保持する溝が形成されていることを特徴とする複列ころ軸受用の櫛型保持器。 - 前記円環部の内周面に、周方向を溝長手方向とする前記溝が形成されている請求項1に記載の複列ころ軸受用の櫛型保持器。
- 前記柱部の径方向内側の面に、当該柱部の延設方向を溝長手方向とする前記溝が形成されている請求項1又は2に記載の複列ころ軸受用の櫛型保持器。
- 前記溝は、溝底部と、この溝底部から径方向内側へ広がる溝側面とを有し、前記溝側面は、前記溝底部から溝幅方向の両側に設けられている請求項1〜3のいずれか一項に記載の複列ころ軸受用の櫛型保持器。
- 前記円環部の内周面に、周方向を溝長手方向とする第一溝が形成されており、
前記柱部の径方向内側の面に、当該柱部の延設方向を溝長手方向とする第二溝が形成されており、
前記第二溝は、前記第一溝と繋がりかつ前記柱部の基部まで延びて形成され、当該第一溝に保持されているグリースを前記柱部の径方向内側の面へと誘導する溝である請求項1に記載の複列ころ軸受用の櫛型保持器。 - 前記円環部の内周面に、前記第一溝と繋がり当該円環部の他側面側へと延びる第三溝が形成されている請求項5に記載の複列ころ軸受用の櫛型保持器。
- 前記円環部の前記一側面側であって周方向隣り合う前記柱部の間に前記ころを保持するポケットが形成され、
前記ポケット内の前記ころの端面が対向する面に、当該端面との間でグリースを保持するために当該端面側に開口している凹部が形成されており、
この凹部は、更に、前記円環部の内周面に存在しているグリースを導入させるために当該内周面において開口している請求項1〜6のいずれか一項に記載の複列ころ軸受用の櫛型保持器。 - 内輪と、外輪と、これら内輪と外輪との間に複列状態で配置された複数のころと、列毎に複数の前記ころを保持する複数の独立した保持器と、を備え、
前記保持器それぞれは、円環部、及び、この円環部の一側面から軸方向に延びかつ周方向に間隔をあけて設けられている複数の柱部を備えていると共に、前記ころによって径方向について位置決めされるころ案内又は前記外輪によって径方向について位置決めされる外輪案内の櫛型保持器であり、
前記円環部の内周面と前記柱部の径方向内側の面とを含む保持器内面の一部に、グリースを保持する溝が形成されていることを特徴とする複列ころ軸受。
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JP2016071317A (ja) * | 2014-09-30 | 2016-05-09 | 株式会社フジクラ | 光ファイバ再被覆装置 |
Citations (3)
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2013
- 2013-04-03 JP JP2013077467A patent/JP2014202250A/ja active Pending
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