JP2014201753A - コネクタ端子材料の製造方法およびコネクタ端子の製造方法 - Google Patents

コネクタ端子材料の製造方法およびコネクタ端子の製造方法 Download PDF

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幹朗 佐藤
齋藤 寧
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寧 齋藤
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Kingo Furukawa
欣吾 古川
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Abstract

【課題】アルミニウムまたはアルミニウム合金よりなる電線導体に接続されるアルミニウムまたはアルミニウム合金を母材とするコネクタ端子材料において、他の導電部材と接触する接点部となる部位の表面に母材のアルミニウムまたはアルミニウム合金以外の金属よりなる異種金属層を形成するとともに、異種金属層の形成によらずに、電線と接触する圧着部となる部位を電線と低い電気抵抗値で電気的接続可能な状態にすることができる、簡便かつ低コストなコネクタ端子材料の製造方法およびコネクタ端子の製造方法を提供すること。
【解決手段】アルミニウム又はアルミニウム合金よりなる母材の表面全域にアルマイト層を形成した後、一部の領域のアルマイト層をアルカリ洗浄によって除去してアルミニウムまたはアルミニウム合金を露出させ、アルマイト層を除去した表面に母材と異なる金属よりなる金属層をめっき法によって形成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、コネクタ端子材料の製造方法およびコネクタ端子の製造方法に関し、さらに詳しくはアルミニウム又はアルミニウム合金を母材とするコネクタ端子材料およびコネクタ端子の製造方法に関する。
従来、自動車用配線に使用される電線導体やコネクタ端子の母材としては、銅や銅合金が広く利用されてきた。しかし近年、電線の軽量化による車両の軽量化を目的とし、銅又は銅合金よりなる電線導体の代わりに、アルミニウム又はアルミニウム合金よりなる電線導体が用いられることが増えている。アルミニウム及びアルミニウム合金は、銅及び銅合金に比べ、リサイクルが容易であり、資源量も豊富であるという利点もある。
電線導体とそれに接続されるコネクタ端子が異種金属を母材として形成されると、それらの酸化還元電位の差により、大気中の塩分などの影響で電線導体とコネクタ端子との接続部で腐食が発生するおそれがある。これを回避するため、電線導体としてアルミニウム又はアルミニウム合金からなるものが使用される時に、コネクタ端子としても母材がアルミニウム又はアルミニウム合金からなるものを使用することが望ましい。
アルミニウム及びアルミニウム合金のようなアルミニウム系材料の表面には通常、非常に硬くて破壊されにくく、化学的にも安定な厚い酸化物被膜が形成される。よって、コネクタ端子において、相手方コネクタ端子と電気的に接触する接点部の最表面にアルミニウム系材料が露出していると、この酸化物被膜の影響で、大きな接触抵抗が発生してしまう。
母材表面に存在する酸化物等の絶縁性の被膜が、他の導体との接点部において接触抵抗を上昇させることを避け、接点部における接続信頼性を高めるために、コネクタ端子の接点部に種々の異種金属層(母材と異なる金属よりなる金属層)を形成することが従来一般に行われてきた。このような接点部表面に形成される異種金属層としては、スズ層が最も一般的である。スズ層を最表面に有するコネクタ端子においては、最表面に比較的硬い絶縁性の酸化スズ被膜が形成されるが、酸化スズ被膜は弱い力で破壊され、容易に軟らかいスズ層が露出するので、良好な電気的接触が形成される。アルミニウム系材料を母材とするコネクタ端子においても、スズ層を最表面に形成することができれば、接続信頼性の向上を達成することができる。
例えば、特許文献1には、アルミニウム系材料よりなる母材の表面にジンケート処理を施したうえで、銅めっき層を形成し、さらに最表面にスズ層を形成したコネクタ端子が開示されている。また、アルミニウム系材料よりなる母材の表面にジンケート処理を施したうえで、ニッケルめっき層、銅めっき層を順に形成し、最表面にスズ層を形成したコネクタ端子が開示されている。
特開2010−272414号公報
コネクタ端子においては、接点部において他の導電部材と電気的接触を形成する必要があるのに加え、電線との圧着部においても電気的接触を形成することが必要となる。接点部においては、スズ層に代表される異種金属層を設けることで、相手方接続部材との間の電気接続特性を改良することが非常に有効である。一方、アルミニウム系電線にアルミニウム系コネクタ端子を接続する場合に、コネクタ端子の接点部と同様に圧着部にもスズ等の異種金属層を形成して、電線とコネクタ端子の間の抵抗値を低下させることが考えられる。しかしながら、この場合には、コネクタ端子の圧着部表面に形成された異種金属層と電線のアルミニウム(またはアルミニウム合金)とが密着した状態に維持されることで、異種金属間腐食が起こってしまう。よって、圧着部には、異種金層を形成することなく、電線との間に低い抵抗値を有した状態で電気的接続を形成することができる表面処理が求められる。
本発明が解決しようとする課題は、アルミニウムまたはアルミニウム合金よりなる電線導体に接続されるアルミニウムまたはアルミニウム合金を母材とするコネクタ端子材料において、他の導電部材と接触する接点部となる部位の表面にアルミニウムまたはアルミニウム合金以外の金属よりなる異種金属層を形成するとともに、異種金属層の形成によらずに、電線と接触する圧着部となる部位を電線と低い電気抵抗値で電気的接続可能な状態にすることができる、簡便かつ低コストなコネクタ端子材料の製造方法およびコネクタ端子の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明にかかるコネクタ端子材料の製造方法は、アルミニウム又はアルミニウム合金よりなる母材の表面全域にアルマイト層を形成した後、一部の領域の前記アルマイト層をアルカリ洗浄によって除去して前記母材のアルミニウムまたはアルミニウム合金を露出させ、前記アルマイト層を除去した表面に前記母材と異なる金属よりなる金属層をめっき法によって形成することを要旨とする。
ここで、前記アルマイト層は、酸性の電解液を用いて形成されるとよい。
また、前記金属層は、最表面にスズ層が露出したものであることが好ましい。
さらに、前記金属層は、前記母材表面に接触するニッケル層と、前記ニッケル層の表面を被覆して最表面に露出したスズ層よりなるとよい。
本発明にかかるコネクタ端子の製造方法は、アルミニウムまたはアルミニウム合金を母材とし、他の導電部材と電気的に接触する接点部の表面に前記母材と異なる金属よりなる金属層を有し、電線導体が圧着される端子圧着部の表面にアルマイト層を有するコネクタ端子の製造方法において、前記母材と異なる金属よりなる金属層および前記アルマイト層を、上記のようなコネクタ端子材料の製造方法を用いて形成する工程を有することを要旨とする。
ここで、単一の板材よりなる母材の表面に前記アルマイト層を形成した後、前記母材を複数に分割し、複数のコネクタ端子を製造することが好ましい。
上記発明にかかるコネクタ端子材料の製造方法によると、アルミニウムまたはアルミニウム合金よりなる母材の表面の一部の領域に、アルミニウムまたはアルミニウム合金以外の金属よりなる金属層(異種金属層)が形成される。一方、それ以外の部位には、異種金属層が形成されず、アルマイト層が最表面に露出した状態となる。異種金属層が形成された領域を他の導電部材と電気的に接触する接点部としてコネクタ端子を形成すれば、異種金属層が付与する特性を、相手方の導電部材との間の電気的接続に利用することができる。一方、アルマイト層が露出した領域が電線導体に圧着して導通を形成する圧着部となるようにコネクタ端子を形成すれば、圧着を経て端子圧着部とアルミニウムまたはアルミニウム合金よりなる電線導体との間に、低い電気抵抗値を有した状態で導通が形成される。圧着部に異種金属層が形成されないことにより、圧着部と電線の間で異種金属間腐食が起こるおそれがない。
上記コネクタ端子材料の製造方法によると、母材表面全域に形成したアルマイト層の一部を除去してから異種金属層を形成するので、マスキングを行って一部の領域にのみアルマイト層を形成し、そのマスキングを除去したうえでアルマイト層を形成した領域に別途マスキングを行って、異種金属層を形成するような工程を経る必要がない。このため、表面に異種金属層が形成された領域とアルマイト層が形成された領域をともに有するコネクタ端子材料を簡便に、しかも低コストで形成することができる。
ここで、アルマイト層が、酸性の電解液を用いて形成されている場合には、形成されたアルマイト層をアルカリ洗浄によって容易に除去することができる。
また、接点部となる部位に形成された金属層が、最表面にスズ層が露出したものである場合には、この部位をコネクタ端子の接点部とした場合に、低い接触抵抗を得ることができ、コネクタ端子の接続信頼性を高めることができる。
さらに、その金属層が、母材表面に接触するニッケル層と、ニッケル層の表面を被覆して最表面に露出したスズ層よりなる場合には、ニッケル層の寄与によって、スズ層と母材との間の密着性が高められる。
上記コネクタ端子の製造方法によると、製造されたコネクタ端子において、異種金属層が付与する特性を接点部おける電気接続に利用できるとともに、端子圧着部とアルミニウムまたはアルミニウム合金よりなる電線導体との間に、低い電気抵抗値を有した状態で導通を形成することができ、端子圧着部と電線の間で異種金属間腐食が起こるおそれがない。そして、アルマイト層の形成に先立って、マスキングを行う必要がないので、接点部の表面に異種金属層が形成され、端子圧着部にアルマイト層が形成されたコネクタ端子を、簡便に、しかも低コストで形成することができる。
ここで、単一の板材よりなる母材の表面にアルマイト層を形成した後、母材を複数に分割し、複数のコネクタ端子を製造する場合には、マスキング等、小面積の部材に対して行われる工程に先立って、大面積の母材に一括してアルマイト層を形成することができるので、複数のコネクタ端子を、一層簡便に、かつ低コストで製造することができる。
本発明にかかるコネクタ端子材料の製造方法を工程順に示した模式図である。 製造されたコネクタ端子材料を用いて形成されるコネクタ端子の例を示す図である。(a)は雌型コネクタ端子、(b)は雄型コネクタ端子を示す斜視図であり、(c)は雌雄コネクタ端子の嵌合状態を示す断面図である。 実施例にかかる試料の断面を示す走査電子顕微鏡(SEM)像であり、(a)〜(c)はアルマイト層を形成した状態(試料1)、(d)〜(f)はアルマイト層を除去してスズ層を形成した状態(試料2)を、それぞれを異なる倍率で観察したものである。
以下に、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。
図1に、本発明の実施形態にかかるコネクタ端子材料の製造方法(以下、本材料の製造方法と称する場合がある)の概略を示す。まず、図1(a)のように、アルミニウムまたはアルミニウム合金よりなる母材1の表面全体に、アルマイト層(アルミニウムの陽極酸化被膜)2を形成する。次に、図1(b)のように、相手方コネクタ端子など他の導電部材と電気的に接触する接点部としたい接点領域Cのアルマイト層2を除去し、母材1を露出させる。そして、図1(c)、(d)のように、接点領域Cの露出した母材1の上に、母材1を構成するアルミニウムまたはアルミニウム合金以外の金属よりなる異種金属層3を形成する。このようにして、母材1の表面上の接点領域Cにのみ異種金属層3が露出し、それ以外の領域はアルマイト層2が露出したアルマイト領域Aとされたコネクタ端子材料10が形成される。なお、図1の例では、異種金属層3が、母材1表面と接触した第一異種金属層3aと、第一異種金属層3aを被覆して最表面に露出した第二異種金属層3bよりなっている。
各工程について詳細に説明する。図1(a)の工程においては、酸処理等によって適宜表面の自然酸化膜を除去したアルミニウムまたはアルミニウム合金よりなる母材1の表面に、アルマイト層2を形成する。アルマイト層2は、母材1を電解液中で陽極酸化することによって得られる。この際使用される電解液は、硫酸系水溶液等、酸性溶液であることが望ましい。すると、形成されたアルマイト層2が、続くアルカリ洗浄の工程において、アルカリ溶液に溶出されやすい。
アルマイト層2の厚さは、電流密度や反応時間等、陽極電解の条件によって制御することができる。アルマイト層2は、1〜10μmの範囲の厚さを有することが好適である。アルマイト層2がこれよりも薄いと、自然酸化膜に近い性質を示すようになり、母材1の腐食を防止したり、コネクタ端子の圧着部において電線との間に低い電気抵抗値で導通を形成したりという、アルマイト特有の性質が得られにくくなる。一方、アルマイト層2が上記の厚さよりも厚いと、続くアルカリ洗浄の工程で除去することが困難になり、また、アルマイト部Aの表面の絶縁性が高くなることで、コネクタ端子の圧着部において電線との間の電気抵抗値をかえって上昇させる要因となる。
次に、図1(b)のように、接点部を形成したい接点領域Cのアルマイト層2をアルカリ洗浄によって選択的に除去し、接点領域Cの母材1を露出させる。アルカリ洗浄工程においては、接点領域Cを被覆するアルマイトがアルカリ溶液に接触されて、溶出される。接点領域Cのアルマイト層2のみを選択的にアルカリ溶液に接触させるためには、例えば、マスキング材を使用し、接点領域C以外の部位を保護した状態でアルカリ洗浄を行えばよい。アルカリ溶液の濃度、接触時間等、アルカリ洗浄の条件は、領域Cのアルマイト層2を除去して母材1を露出させることができ、かつ母材1を浸食しないように選択すればよい。ここで、アルマイト層2を除去するとは、完全にアルマイト層2を除去することのみならず、続くめっき工程の障害とならない水準にまで、アルマイト層2を除去することも含む。
なお、アルマイト層2が形成された母材1の表面からアルマイト層2を除去することは、研磨剤を噴射することなどでも行いうるが(例えば特開平10−235561号公報参照)、アルカリ洗浄を用いることで、高い効率でアルマイト層2の除去を行うことができる。
次いで、図1(c)、(d)のように、アルマイト層2が除去されて露出した接点領域Cの母材1表面に、めっき法によって異種金属層3を形成する。簡便性の観点から、異種金属層3は、電解めっき法によって形成されることが好ましい。
ただし、金属状態にあるアルミニウムおよびアルミニウム合金の表面には不可避的に絶縁性が高く化学的にも安定な自然酸化膜が形成されるので、表面に電場が形成されにくい。よって、アルマイト層2を除去したままの母材1の表面に直接電解めっきによって異種金属層3を形成することは困難である。そこで、電解めっきに先立って、接点領域Cにジンケート処理を施すことが好ましい。つまり、母材1の表面に、あらかじめ無電解めっき(化学めっき)によって薄い亜鉛層(不図示)を形成しておく。すると、その亜鉛層に覆われた表面に電場を形成して容易に電解めっきを行うことが可能となる。亜鉛層の表面に電解めっきを行って異種金属層3を形成すると、亜鉛の大部分は異種金属層3を構成する金属に置換され、最終的なコネクタ端子材料10において、母材1と異種金属層3の界面に亜鉛はごく少量しか残存しない。形成する亜鉛層の厚さは、不可避的にコネクタ端子材料10中に残る亜鉛原子が、母材1や異種金属層3の腐食を促進することがないように、0.1μm以下であることが好ましい。
ジンケート処理後、電解めっきを行って、異種金属層3を接点領域Cの表面に形成する。異種金属層3を構成する金属材料は、コネクタ端子材料10の機械的特性や電気的特性を向上させることができるいかなる材料であってもよく、異種金属層3は、複数種の層が積層されてなるものであってもよい。図1では、(c)の工程において第一異種金属層3aを形成した上に、さらに(d)の工程において、第一異種金属層3aとは異なる金属よりなる第二異種金属層3bを形成している。
アルカリ洗浄によって接点領域Cのアルマイトを選択的に除去するために、接点領域C以外の領域にマスキングを行っている場合、接点領域Cに異種金属層3を形成した後に、マスキング材を剥離すればよい。
上述したように、接点領域Cを被覆する異種金属層3としては、コネクタ端子の接点部の機械的特性、電気的特性等の諸特性を改良できるいかなる金属層よりなってもよい。また、異種金属層3の厚さも、それらの効果を発揮できるように、適宜選択すればよい。異種金属層3の厚さは、アルマイト層2と同じであっても異なっていてもよい。異種金属層3の最表面に露出される金属種としては、接点部表面の接触抵抗を低減し、相手方の導電部材と良好な電気的接続を形成することを目的とする場合、スズ、銀、金、インジウム等、抵抗率が小さく、軟らかい金属が好適である。
異種金属層3の最表面に露出される金属種としては、上記のうち、安価で非常に高い接続信頼性を与えることからコネクタ用接続端子の接点部を被覆する金属として汎用されるスズを、最も好適な例として示すことができる。スズ層は、低い抵抗率を有し、軟らかいうえ、表面に形成される自然酸化膜が容易に破壊されることで、端子接点部に高い接続信頼性を与える。スズ層の厚さは、1〜3μmの範囲内にあることが好適である。この範囲よりも薄いと、接触抵抗低減の効果が発揮されにくく、この範囲よりも厚いと、接点部表面の摩擦係数が大きくなってしまい、コネクタ端子の挿入力を上昇させる傾向があるからである。
異種金属層3の最表面にスズ層が形成される場合、母材とスズ層の間にニッケル層が形成されることが好ましい。つまり、図1(d)の第一金属層3aをニッケル層とし、第二金属層3bをスズ層とすることが好ましい。スズはアルミニウムと合金を形成しないので、アルミニウムまたはアルミニウム合金よりなる母材の表面に直接スズ層を形成すると、スズ層と母材表面との間に高い密着性が得られず、スズ層が容易に剥離してしまう。ニッケルは、アルミニウム、スズの双方と合金化するので、母材とスズ層の間に介在されることで、スズ層の母材表面に対する密着性を高める。ニッケル層の厚さは、0.1〜0.5μmの範囲とすることが好ましい。これよりも薄いと、スズ層と母材との密着性を高める効果が得られにくくなり、この範囲よりも厚いと、ニッケルの硬さのために、コネクタ端子材料10の加工性が低下してしまう。
このようにして製造されたコネクタ端子材料10からコネクタ端子を作るに際し、異種金属層3が形成された接点領域Cがコネクタ端子の接点部に配される。そして、電線をかしめて接続される圧着部を含むその他の領域は、アルマイト層2が最表面に露出されたアルマイト領域Aで形成される。なお、接点部が接点領域Cによって形成されていれば、厳密に接点部のみが接点領域Cで形成されている必要はなく、接点部近傍を含んで接点部よりも広い領域が接点領域Cで形成されていてもよい。
図2に、本材料の製造方法によって形成されたコネクタ端子材料10を用いて形成されるコネクタ端子の例を示す。図2(a)は、雌型コネクタ端子の一例を示している。雌型コネクタ端子20は、雄型コネクタ端子30と嵌合され、雄型コネクタ端子30との間に電気的接続を形成するための嵌合部21を前方に有し、電線導体を固定し、電線導体との間に導通を形成するためのワイヤバレル(圧着部)22を後方に有する。ワイヤバレル22のさらに後方には、電線導体の外周を被覆する絶縁体の外周から電線をかしめ、電線を強固に雌型コネクタ端子20に固定するためのインシュレーションバレル23を有する。
嵌合部21は、中空の略角筒型の形状を有し、その内部に雄型コネクタ端子30の端子タブ31を挿入することができる。嵌合部21の前端の開口部21a下端には、後方に向かって中空部内に舌状に延出された弾性接触片24が形成されている。弾性接触片24の中途部位には、上方に膨出形成されたエンボス部24aが形成されている。弾性接触片24は、上方に付勢され、エンボス部24aが嵌合部21内に挿入された雄型端子タブ31を嵌合部21の天井に形成された内部対向接触面21bに向かって押し付ける(図2(c)参照)。本雌型コネクタ端子20においては、少なくとも雄型端子タブ31と接触するエンボス部24aと内部対向接触面21bとが、異種金属層3が形成された接点領域Cよりなっており、嵌合部21内側に露出した面が異種金属層3によって被覆されている。
ワイヤバレル22は、断面略U字型に形成され、絶縁被覆を除去して露出させた電線導体を載置してかしめることで、電線導体を雌型コネクタ端子20に対して物理的に固定するとともに、電線導体と雌型コネクタ端子30との間に導通を形成する。本雌型コネクタ端子20においては、少なくともワイヤバレル22の電線導体と接触する面が、コネクタ端子材料10のアルマイト領域Aによって形成されている。
図2(b)に、雄型コネクタ端子30の例を示す。雄型コネクタ端子30は、前方に端子タブ31を有し、後方に、雌型コネクタ端子20と同様のワイヤバレル32とインシュレーションバレル33を有する。端子タブ31は、細長い平板状の構造を有し、雌型コネクタ端子20の嵌合部21内に挿入され、弾性接触片24のエンボス部24aと内部対向接触面21bとの間で挟圧保持される(図2(c)参照)。
本雄型コネクタ端子30においては、端子タブ31が上記コネクタ端子材料10の接点領域Cによって形成され、端子嵌合時に雌型コネクタ端子20のエンボス部24aと接触する下面および内部対向接触面21bと接触する上面に異種金属層3が露出している。そして、上記雌型コネクタ端子20のワイヤバレル22と同様に、本雄型コネクタ端子30のワイヤバレル32も、コネクタ端子材料10のアルマイト領域Aよりなり、アルマイト層2が表面に露出している。
このように、雌型コネクタ端子20のエンボス部24aおよび内部対向接触面21b、そして雄型コネクタ端子30の端子タブ31がコネクタ端子材料10の接点領域Cよりなり、表面に異種金属層3が露出している。図2(c)に雌型コネクタ端子20と雄型コネクタ端子30を嵌合接続した状態を示す。この図のように、雄型コネクタ端子30の端子タブ31と雌型コネクタ端子20のエンボス部24aおよび内部対向接触面21bとが接触して、両端子間に導通を形成している。つまり、電気的接触を与える接点部の表面が全て、異種金属層3によって被覆されていることになる。これにより、電気的接続の形成において、異種金属層3が与える特性を利用することができる。例えば異種金属層3の最表面がスズ層よりなる場合には、スズ層が軟らかさと低い接触抵抗を有し、破れやすい表面酸化膜を有することの効果により、両コネクタ端子が、低い接触抵抗をもって相互に電気的に接続され、高い接続信頼性が得られる。
上記の例では、雌型コネクタ端子20と雄型コネクタ端子30の両方が、本材料の製造方法によって製造されたコネクタ端子材料10より形成されたが、いずれか一方のみがこのコネクタ端子材料10より形成され、他方は任意の材料より形成されていてもよい。この場合も、少なくとも一方の端子に関しては、異種金属層3を接点部表面に有する効果を享受することができる。また、両方のコネクタ端子20、30が、本材料の製造方法によって製造されたコネクタ端子材料10よりなる場合にも、異種金属層3を構成する具体的な金属材料は、雌型コネクタ端子20と雄型コネクタ端子30とで異なっていてもよい。
一方、上記雌型コネクタ端子20および雄型コネクタ端子30のワイヤバレル22、32は、本材料の製造方法によって製造されたコネクタ端子材料10のアルマイト領域Aよりなり、電線導体と接触する表面がアルマイト層2に被覆されている。アルマイトは高い抵抗率を有する物質である。しかし、ワイヤバレル22、32をアルミニウムまたはアルミニウム合金よりなる電線導体(アルミ電線)の外周に密着させ、電線の中心方向に向かって押圧することでワイヤバレル22、32を電線導体にかしめると、ワイヤバレル22、32とアルミ電線の間に、低い電気抵抗値を有した状態で導通が形成される。これは、アルマイト層2が非常に硬く、割れやすい性質を有するために、かしめる際の押圧力を受けてその一部が破壊され、露出した金属状態の母材1のアルミニウム(又はアルミニウム合金)が電線導体との間に電気的接続を形成するものと考えられる。
アルミニウムまたはアルミニウム合金を母材とするコネクタ端子材料は、主材料を同一として異種金属間腐食の発生を防ぐ目的で、アルミニウム系電線導体を有する電線に対してしばしば用いられる。上記のように、コネクタ端子20、30のワイヤバレル22、32の表面をコネクタ端子材料10のアルマイト領域Aより構成すると、ワイヤバレル22、32とアルミ電線との接触部には、アルミニウムおよびアルミニウム合金以外の金属層が存在しないことになる。この構成により、ワイヤバレル22、32とアルミ電線の間の圧着部において、相互に接触した金属間での異種金属間腐食が起こらないことになる。つまり、ワイヤバレル22、32とアルミ電線との間の圧着部において、異種金属間腐食を回避しながら、低い電気抵抗値を有する良好な電気的接続を形成することができる。また、異種金属間腐食が回避されることで、圧着部の固着力が高い状態に維持されるので、圧着部の機械的強度も確保することができる。
もしワイヤバレル22、32表面に電線導体との間の接触抵抗を下げることを目的としてスズ層を形成すると、かしめられて密着しているワイヤバレル22、32表面のスズと電線導体のアルミニウムとの間で、異種金属間腐食が起こってしまう。ワイヤバレル22、32と電線導体の間で異種金属間腐食が起こると、両者の間の接触抵抗値が高くなる。また、固着力が低下することで、圧着部の機械的強度も低下する。アルミ電線をワイヤバレル22、32に接続した直後には、低い電気抵抗値を有する良好な電気的接続を形成することができても、腐食環境に晒されると、スズよりも低い酸化還元電位を有するアルミニウムが腐食される。これにより、ワイヤバレル22、32と電線との間の抵抗値が著しく上昇し、機械的強度も低下してしまう。
このように、本製造法によって製造されるコネクタ端子材料10は、最表面に異種金属層3が露出した接点領域Cとアルマイト層2が露出したアルマイト領域Aが形成されていることから、それぞれの領域を接点部およびワイヤバレル部として用いることで、上記のように、接点部およびワイヤバレル部それぞれにおいて求められる特性を満足するコネクタ端子を製造することができる。しかも、アルマイト層2を母材1表面全域に形成したうえで、一部の部位からアルマイト層2を除去して異種金属層3を形成するという工程を経ることで、このようなコネクタ端子材料10を簡便にかつ低コストで形成することができる。
本材料の製造方法においては、接点領域Cとなる領域のアルマイトをアルカリ洗浄で除去する工程においてはじめて、マスキング等を用いて領域ごとに区分した表面処理を行うことが必要となり、アルマイト層2の形成を完了するまでの段階では、マスキング等を必要としない。特にこのことが、製造工程の簡素化および低コスト化に貢献している。大面積の材料を用いてコネクタ端子を製造する場合、マスキング等を施して材料表面の領域を区分する工程に先立って、コネクタ端子1つ1つを構成する小面積の部材に材料を分割しておく必要がある。これは、コネクタ端子の形状とマスキングを施す領域のずれを防ぐためである。大面積の材料を多数の小面積の材料に分割する工程を経ると、その工程よりも後の処理工程は、小面積の材料を単位として行わなければならないことになり、コネクタ端子の製造工程の煩雑さとコストを上昇させる。よって、マスキング等による領域の区分が必要な工程が、全製造工程の中で遅い段階にある方が、大面積の材料に対して一括して行える処理工程数が多くなるため、製造工程を簡素化し、低コスト化することができる。本材料の製造方法においては、マスキング等による領域の区分を行う前に、アルマイト層2の形成を行うことができるので、小面積に区分した母材1に対してアルマイト層2の形成を行う場合に比べて、アルマイト層2の形成工程に要する手間とコストを抑制することができる。
上記のようなコネクタ端子材料10は、例えば、以下のような工程によっても製造することができる。つまり、母材1の表面の接点領域Cとしたい領域をマスキング材によって保護した状態でアルマイト層2の形成を行い、アルマイト領域Aとしたい領域に選択的にアルマイト層2を形成する。そして、接点領域Cとしたい領域を被覆していたマスキング材を剥離し、アルマイト層2を形成したアルマイト領域Aを別のマスキング材で保護する。この状態で、母材1が露出している接点領域Cとしたい領域に異種金属層3を形成する。最後に、アルマイト領域Aを被覆していたマスキング材を剥離することで、コネクタ端子材料10を得ることができる。しかし、この方法によれば、2種のマスキング材を使用し、アルマイト層2の形成工程を挟んで、それらの貼り付けと剥離を順次行わなければならず、1種類のマスキング材を使用するだけでコネクタ端子材料10を形成できる本材料の製造方法の方が、マスキングに要する手間とコストが少なくて済む。
加えて、上記のようにマスキングを施してアルマイト領域Aとなる部位のみにアルマイト層2を形成する場合には、大面積の母材1に対して一括してアルマイト層2の形成を行うことはできず、小面積に分割した母材1を単位としてアルマイト層2を形成する必要がある。これに対し、分割前の大面積の母材1に対してアルマイト層2の形成工程を実行できる本材料の製造方法においては、アルマイト層2の形成工程においても、このような方法に比べて簡素化および低コスト化を図ることができる。
本発明の実施形態にかかるコネクタ端子の製造方法は、上記のような製造方法によってコネクタ端子材料を製造する工程を含んでなり、異種金属層3を有する接点領域Cを接点部とし、アルマイト層2を有するアルマイト領域Aを圧着部とするものである。アルマイト層2を母材1の表面に形成した後、その一部を除去して異種金属層3を形成する工程がこの順に実行されさえすれば、プレス加工や曲げ加工等により、上記雌型コネクタ端子20や雄型コネクタ端子30のような端子形状を形成する工程と、接点領域Cとアルマイト領域Aを母材1の表面にそれぞれ形成する工程とは、どのような順で実行されてもかまわない。しかし、上記のように、大面積の板材よりなる母材1の表面全体にアルマイト層2を形成した後、端子1つずつに相当する小面積の板材に分割し、マスキングを行ってアルマイト層2の除去と異種金属層3の形成を行って、コネクタ端子の接点部となる領域を含むように接点領域Cを形成すればよい。そして、プレス加工、曲げ加工等によって、端子形状を形成すればよい。このように、アルマイト層2の形成を大面積の母材1に対して行えることで、コネクタ端子の製造工程を簡略にし、製造コストも抑えることができる。
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
[試料の作製]
板状のアルミニウム合金母材に対して、自然酸化膜の除去と洗浄を行ったうえで、陽極酸化によって、厚さ5μmを目標としてアルマイト層を表面に形成した。この状態の試料を、試料1とした。
試料1と同様に形成した試料の表面からアルマイト層を除去した。表面の金属光沢によって母材表面が露出したことを確認したうえで、表面にジンケート処理を行い、さらにニッケル層とスズ層を順次電解めっきによって形成した。ニッケル層の厚さは0.3μmとし、スズ層の厚さは2μmとした。この状態の試料を、試料2とした。
[試験方法]
(試料の構造評価)
走査電子顕微鏡(SEM)を用いて、試料1および試料2の断面を観察した。
(抵抗値と固着力の評価)
試料1と試料2を用いて、それぞれ図2に示したようなコネクタ端子を形成し、アルミ電線をワイヤバレル部でかしめ、その圧着部の抵抗を測定した。圧着部の固着力についても、引張試験機を用いて計測を行った。さらに、圧着部に塩水(5%塩化ナトリウム水溶液)を噴霧し、塩水噴霧直後と、さらに高温(80℃)高湿(90%RH)条件で1〜4日放置した後にも、同様に圧着部の抵抗と固着力を測定した。
[試験結果及び考察]
(試料の構造評価)
図3に、アルマイト層を有する試料1(a〜c)と、アルマイト層を除去してニッケル層とスズ層を形成した試料2(d〜f)の断面のSEM像を示す。試料1においては、母材(Al)の表面に観察される、比較的明るい領域がアルマイト層(Al)である。アルマイト層は、多数の微細な空孔を有する多孔質層として形成されている。
試料2においては、母材(Al)の表面に、ニッケル層(Ni)とスズ層(Sn)が積層された構造が観察されている。母材とニッケル層の界面、ニッケル層とスズ層の界面では、高い密着性が得られている。母材とニッケル層の間には、試料1において観察されたような、独特の多孔質構造を有するアルマイト層は観察されていない。つまり、母材表面のアルマイト層が除去されて、母材金属が露出されることで、母材表面が電解めっき可能な状態となり、ニッケル層とスズ層が形成されたことが確認された。この結果は、アルマイト層を一旦形成して除去した表面に、高い母材に対する密着性を有するニッケル層とスズ層よりなる被覆層を形成することができることを示しており、本材料の製造方法によって形成したこの被覆層を、コネクタ端子の接点部に適用可能であることを示している。
(抵抗値と固着力の評価)
以下に、試料1、2それぞれについて、試料作製直後(初期)と、塩水噴霧後、1〜4日の高温高湿放置後の圧着部抵抗(表1)と固着力(表2)をまとめたものを示す。なお、表中で、「−」の記号は、腐食によって接触抵抗が上昇しすぎ、また固着力が低下しすぎて、測定が不可能であったことを示している。
表1および2によると、初期状態において、アルマイト層を形成した試料1の方は、ニッケル層とスズ層を形成した試料2と比べて、低い圧着部抵抗と大きな固着力を示している。つまり、アルマイト層を有する試料1が電線と強固に密着されて接合されることで、それ自体は絶縁性の高い物質であるアルマイト層を有する試料1の接触部において、低い接触抵抗が得られている。この結果は、アルミニウム合金よりなる母材の表面にアルマイト層が形成された構造をコネクタ端子の圧着部に配置することで、アルミ電線をかしめた際に、アルミ電線との間に良好な導通を形成できることを示している。
さらに、塩水噴霧とそれに続く高温高湿放置を経ると、ニッケル層とスズ層を有する試料2においては、ニッケル層と母材との界面で腐食が進行することで、測定不能なまでに、圧着部抵抗が上昇し、固着力も低下している。これに対し、アルマイト層を有する試料1においては、塩水噴霧を経ても、さらに高温高湿放置を経ても、圧着部抵抗、固着力とも、誤差の範囲で変動するのみで、安定した値を示しており、低い圧着部抵抗と小さい固着力が維持されている。これは、試料1が母材以外の金属層を有さないことにより、塩水噴霧や高温高湿放置を経ても、材料の腐食が進行しないことを示している。このことより、アルミニウム合金よりなる母材の表面にアルマイト層が形成された構造を、コネクタ端子の圧着部に配置することで、高い耐腐食性を有する圧着構造を形成することができることが分かる。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
1 母材
2 アルマイト層
3 異種金属層
3a 第一異種金属層3a
3b 第二異種金属層3b
10 コネクタ端子材料
20 雌型コネクタ端子
21 嵌合部
21b 内部対向接触面
22、32 ワイヤバレル
24 弾性接触片
24a エンボス部
30 雄型コネクタ端子
31 (雄型)端子タブ
A アルマイト領域
C 接点領域

Claims (6)

  1. アルミニウム又はアルミニウム合金よりなる母材の表面全域にアルマイト層を形成した後、一部の領域の前記アルマイト層をアルカリ洗浄によって除去して前記母材のアルミニウムまたはアルミニウム合金を露出させ、前記アルマイト層を除去した表面に前記母材と異なる金属よりなる金属層をめっき法によって形成することを特徴とするコネクタ端子材料の製造方法。
  2. 前記アルマイト層は、酸性の電解液を用いて形成されることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ端子材料の製造方法。
  3. 前記金属層は、最表面にスズ層が露出したものであることを特徴とする請求項1または2に記載のコネクタ端子材料の製造方法。
  4. 前記金属層は、前記母材表面に接触するニッケル層と、前記ニッケル層の表面を被覆して最表面に露出したスズ層よりなることを特徴とする請求項3に記載のコネクタ端子材料の製造方法。
  5. アルミニウムまたはアルミニウム合金を母材とし、他の導電部材と電気的に接触する接点部の表面に前記母材と異なる金属よりなる金属層を有し、電線導体が圧着される端子圧着部の表面にアルマイト層を有するコネクタ端子の製造方法において、
    前記母材と異なる金属よりなる金属層および前記アルマイト層を、請求項1〜4のいずれか1項に記載のコネクタ端子材料の製造方法を用いて形成する工程を有することを特徴とするコネクタ端子の製造方法。
  6. 単一の板材よりなる前記母材の表面に前記アルマイト層を形成した後、前記母材を複数に分割し、複数のコネクタ端子を製造することを特徴とする請求項5に記載のコネクタ端子の製造方法。
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