以下に、本願発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
(1).エンジンの概要
はじめに、図1〜図6を参照しながら、コモンレール式のエンジン201の概要について説明する。なお、以下の説明では、クランク軸線と平行な両側部(クランク軸線を挟んで両側の側部)を前後、冷却ファン209配置側を右側、フライホイルハウジング210配置側を左側と、排気マニホールド7配置側を前側、吸気マニホールド6配置側を後側と称して、これらを便宜的に、エンジン201における四方及び上下の位置関係の基準としている。
図1〜図6に示すように、農業機械や建設・土木機械等の作業機に搭載される原動機としてのエンジン201は、連続再生式の排気ガス浄化装置である排気フィルタ202(ディーゼルパティキュレートフィルタ)を備えている。排気フィルタ202によって、エンジン201から排出される排気ガス中の粒子状物質(PM)が除去されると共に、排気ガス中の一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)が低減される。
エンジン201は、エンジン出力軸であるクランク軸203とピストン(図示省略)とを内蔵したシリンダブロック204を備えている。シリンダブロック204上にはシリンダヘッド205が搭載されている。シリンダヘッド205の後側面に吸気マニホールド206が配置され、シリンダヘッド205の前側面に排気マニホールド207が配置されている。シリンダヘッド205の上面側はヘッドカバー208にて覆われている。シリンダブロック204の左右両側面から、クランク軸203の左右両端側を突出させている。エンジン201の右側面側に冷却ファン209を設けている。クランク軸203の左側端側から冷却ファン用Vベルト222を介して冷却ファン209に回転動力が伝達される。
エンジン201の後面側にフライホイルハウジング210が設けられている。フライホイルハウジング210内に、フライホイル211がクランク軸203の後端側に軸支された状態で収容されている。エンジン201の回転動力は、クランク軸203からフライホイル211を介して作業機の作動部に伝達される。シリンダブロック204の下面には、潤滑油を貯留するオイルパン212を配置している。オイルパン212内の潤滑油は、シリンダブロック204の後側面に配置されたオイルフィルタ213等を介してエンジン201の各潤滑部に供給され、その後、オイルパン212に戻る。
シリンダブロック204後側面におけるオイルフィルタ213の上方(吸気マニホール
ド206の下方)には燃料供給ポンプ214が設けられている。また、エンジン201には、電磁開閉制御型の燃料噴射バルブ219(図10参照)を有する四気筒分のインジェクタ215を備えている。シリンダブロック204の後側面のうち吸気マニホールド206の下方には、エンジン201の各気筒に燃料を一燃焼サイクル中に多段噴射するコモンレール装置220を設けている。各インジェクタ215は、燃料供給ポンプ214、コモンレール装置220及び燃料フィルタ217を介して、作業機に搭載された燃料タンク218に接続している。燃料タンク218の燃料は、燃料供給ポンプ214から燃料フィルタ217を経由してコモンレール装置220に圧送される。各インジェクタ215の燃料噴射バルブ219を開閉制御することによって、コモンレール装置220内に蓄えられた高圧の燃料が、各インジェクタ215からエンジン201の各気筒に噴射される。
シリンダブロック204の左側面側には、冷却水潤滑用の冷却水ポンプ221が冷却ファン029のファン軸と同軸状に配置されている。クランク軸203の回転動力によって、冷却ファン用Vベルト222を介して、冷却ファン209と共に冷却水ポンプ221が駆動される。作業機に搭載されるラジエータ(図示省略)内の冷却水は、冷却水ポンプ221の駆動によって、シリンダブロック204及びシリンダヘッド205に供給され、エンジン201を冷却する。エンジン201の冷却に寄与した冷却水はラジエータに戻される。なお、冷却水ポンプ221の左側方にオルタネータ223が配置されている。
シリンダブロック204の前後側面に機関脚取付け部224をそれぞれ設ける。各機関脚取付け部224には、防振ゴムを有する機関脚体(図示省略)がそれぞれボルト締結される。エンジン201は、各機関脚体を介して作業機(具体的にはエンジン取付けシャーシ)に防振支持される。
図2及び図4に示すように、吸気マニホールド206の入口部は、EGR装置226(排気ガス再循環装置)を介してエアクリーナ(図示省略)に連結されている。エアクリーナに吸い込まれた新気(外部空気)は、当該エアクリーナにて除塵及び浄化されたのち、EGR装置226を介して吸気マニホールド206に送られ、エンジン201の各気筒に供給される。
EGR装置226は、エンジン201の排気ガスの一部(排気マニホールド207からのEGRガス)及び新気(エアクリーナからの外部空気)を混合させて吸気マニホールド206に供給するEGR本体ケース227と、エアクリーナにEGR本体ケース227を連通させる吸気スロットル部材228と、排気マニホールド207にEGRクーラ229を介して接続する再循環排気ガス管230と、再循環排気ガス管230にEGR本体ケース227を連通させるEGRバルブ部材231とを備えている。
吸気マニホールド206には、EGR本体ケース227を介して吸気スロットル部材228が連結されている。吸気スロットル部材228はEGR本体ケース227の長手方向の一端部にボルト締結されている。EGR本体ケース227の左右内向きの開口端部が吸気マニホールド206の入口部にボルト締結されている。EGR本体ケース227には、EGRバルブ部材231を介して、再循環排気ガス管230の出口側を連結している。再循環排気ガス管230の入口側は、EGRクーラ229を介して排気マニホールド207の下面側に連結されている。EGRバルブ部材231の開度を調節することによって、EGR本体ケース227へのEGRガスの供給量が調節される。
上記の構成において、エアクリーナから吸気スロットル部材228を介してEGR本体ケース227内に新気(外部空気)が供給される一方、排気マニホールド207からEGRバルブ部材231を介してEGR本体ケース227内にEGRガス(排気マニホールド207から排出される排気ガスの一部)を供給される。エアクリーナからの新気及び排気
マニホールド207からのEGRガスがEGR本体ケース227内で混合されたのち、EGR本体ケース227内の混合ガスが吸気マニホールド206に供給される。このように、排気マニホールド207から排出された排気ガスの一部を吸気マニホールド206経由でエンジン201に還流させることによって、高負荷運転時の最高燃焼温度を低下させ、エンジン201からのNOx(窒素酸化物)の排出量を低減している。
図1〜図5に示すように、シリンダヘッド205の右側方で且つ排気マニホールド207の上方には、ターボ過給機232が配置されている。ターボ過給機232は、タービンホイル(図示省略)を内蔵したタービンケース233と、ブロアホイル(図示省略)を内蔵したコンプレッサケース234とを備えている。タービンケース233の排気入口側は、排気マニホールド207の出口部に接続されている。タービンケース233の排気出口側は、排気フィルタ202を介してテールパイプ(図示省略)に連結されている。エンジン201の各気筒から排気マニホールド207に排出された排気ガスは、ターボ過給機232のタービンケース233及び排気フィルタ202等を経由して、テールパイプから外部に放出される。
コンプレッサケース234の吸気入口側は、吸気管235を介してエアクリーナに連結されている。コンプレッサケース234の吸気出口側は、過給管236を介して吸気スロットル部材228に連結されている。エアクリーナにて除塵された新気は、コンプレッサケース234から吸気スロットル部材228及びEGR本体ケース227を経由して吸気マニホールド206に送られ、エンジン201の各気筒に供給される。吸気管235は、ブローバイガス戻し管237を介してヘッドカバー208内のブリーザ室に連結されている。ブリーザ室にて潤滑油を分離除去されたブローバイガスは、ブローバイガス戻し管237を通じて吸気管235に戻され、吸気マニホールド206に還流されてエンジン201の各気筒に再供給される。
(2).排気フィルタの構造
次に、図7〜図9を参照しながら、排気フィルタ202の構造について説明する。排気フィルタ202は、浄化入口管241及び浄化出口管242を有する耐熱金属材料製の浄化ケーシング240を備えている。浄化ケーシング240の内部には、二酸化窒素(NO2)を生成する白金等のディーゼル酸化触媒243と、捕集した粒子状物質(PM)を比較的低温で連続的に酸化除去するハニカム構造のスートフィルタ244とが、排気ガスの移動方向(図9の矢印方向参照)に直列に並べて収容されている。浄化ケーシング240の長手方向両側(一端側と他端側)に、浄化入口管241と浄化出口管242とが振り分けて設けられている。浄化入口管241はタービンケース233の排気出口側に連結されている。浄化出口管242はテールパイプ(図示省略)に連結されている。
上記の構成において、エンジン201の排気ガスは、タービンケース233の排気出口側から浄化入口管241を経由して浄化ケーシング240内に流入し、ディーゼル酸化触媒243、スートフィルタ244の順に通過して浄化処理される。排気ガス中の粒子状物質は、スートフィルタ244における各セル間の多孔質な仕切り壁を通り抜けできずに捕集される。その後、ディーゼル酸化触媒243及びスートフィルタ244を通過した排気ガスがテールパイプに向けて放出される。
排気ガスがディーゼル酸化触媒243及びスートフィルタ244を通過する際に、排気ガス温度が再生可能温度(例えば約300℃)を超えていれば、ディーゼル酸化触媒243の作用で、排気ガス中の一酸化窒素(NO)が不安定な二酸化窒素(NO2)に酸化される。そして、二酸化窒素が一酸化窒素に戻る際に放出する酸素(O)がスートフィルタ244に堆積した粒子状物質を酸化除去することによって、スートフィルタ244の粒子状物質捕集能力は回復する(スートフィルタ244は自己再生する)。なお、実施形態で
は、浄化ケーシング240の長手方向他端側が消音器245に構成されており、当該消音器245に浄化出口管242が設けられている。
入口側ケース247の一端側(排気上流側の端部)に入口側蓋体254が溶接固定されている。入口側ケース247の一端側を入口側蓋体254によって塞いでいる。入口側ケース247の外周側に浄化入口管241が溶接固定されている。浄化入口管241は、入口側ケース247に形成された排気ガス入口255を介して入口側ケース247内に連通している。なお、入口側ケース246と出口側ケース247は、複数組の厚板状フランジ体271と複数本のボルト272とによって着脱可能に締結している。
浄化ケーシング240の長手方向他端側に位置する消音器45は、消音ケース251を備えている。消音ケース251の一端側(排気上流側の端部)は、出口側ケース247に連通接続している。消音ケース251の他端側(排気下流側の端部)には出口側蓋体265が溶接固定されている。消音ケース251には、多数の排気連通穴を有する浄化出口管242を設けている。浄化出口管42の突出端側は、例えばテールパイプや既設の消音部材に接続される。なお、出口側ケース247と消音ケース251とは、複数組の厚板状フランジ体273と複数本のボルト274とによって着脱可能に締結している。
厚板状フランジ体273の少なくとも一つに、浄化ケーシング240をエンジン201に支持させる連結脚体277を着脱可能に取り付ける。浄化ケーシング240(実施形態では入口側ケース247)の外周側には、浄化ケーシング240をエンジン201に支持させる固定脚体279を溶接によって固着している。連結脚体277及び固定脚体279は、フライホイルハウジング210の上面側に形成したケーシング取付け部280にボルト締結している。つまり、排気フィルタ202は、連結脚体277及び固定脚体279によって、高剛性部材であるフライホイルハウジング210上に安定的に連結支持される。
図7及び図8に示すように、浄化ケーシング240の外周側には、浄化ケーシング240内の排気ガス圧力を検出する差圧センサ281と、同じく浄化ケーシング240内の排気ガス温度を検出するDPF温度センサ282の電気配線コネクタ294とを備えている。差圧センサ281は、スートフィルタ244を挟んだ排気上流側及び排気下流側間の排気ガスの差圧を検出するものであり、当該差圧を用いてスートフィルタ44のPM堆積量が換算され、排気フィルタ202内の詰り状態が推定される。PM堆積量の換算結果に基づき、吸気スロットル部材228やコモンレール216の作動を制御することによって、スートフィルタ244(排気フィルタ202)の再生制御が行われる。
厚板状フランジ体273の少なくとも一つに、差圧センサ281及びDPF温度センサ282の電気配線コネクタ294を支持するセンサブラケット283を着脱可能に取り付ける。センサブラケット283に、差圧センサ281及びDPF温度センサ282の電気配線コネクタ294を並設している。差圧センサ281には、上流及び下流センサ配管288,289の一端側がそれぞれ接続される。スートフィルタ244を挟むような位置関係で、浄化ケーシング240に一対の圧力用ボス体292を設ける。各圧力用ボス体292にはそれぞれ対応するセンサ配管288,289が接続される。排気ガス温度センサ282の電気配線コネクタ294は複数個あり、各電気配線コネクタからセンサ配管295を延出させる。浄化ケーシング240に設けた温度用ボス体298に、それぞれ対応するセンサ配管295が接続される。
(3).コモンレール装置の概略
次に、図10及び図11を参照しながら、燃料噴射装置であるコモンレール装置220の概略を説明する。エンジン201における四気筒分の各インジェクタ215には、コモンレール装置220及び燃料供給ポンプ214を介して、燃料タンク218を接続してい
る。前述の通り、各インジェクタ215は、電磁開閉制御型の燃料噴射バルブ219を備えている。コモンレール装置220は、円筒状のコモンレール216(蓄圧室)を備えている。燃料供給ポンプ214の吸入側は、燃料フィルタ217及び低圧管261を介して燃料タンク218に接続している。燃料タンク218内の燃料は、燃料フィルタ217及び低圧管261を介して燃料供給ポンプ216に吸い込まれる。燃料供給ポンプ216の吐出側には、高圧管262を介してコモンレール216を接続している。コモンレール216には、四本の燃料噴射管263を介して四気筒分のインジェクタ215を接続している。
燃料タンク218には、燃料戻り管264を介して燃料供給ポンプ214を接続している。コモンレール216の長手方向の端部には、コモンレール216内の燃料の圧力を制限する戻り管コネクタ266を介して、コモンレール戻り管267の一端側を接続している。コモンレール戻り管267の他端側は燃料戻り管264を介して燃料タンク218に接続している(燃料戻り管264に合流している)。燃料供給ポンプ214の余剰燃料とコモンレール216の余剰燃料とは、燃料戻り管264及びコモンレール戻り管267を介して燃料タンク218に回収される。
上記の構成において、燃料タンク218の燃料は燃料供給ポンプ214によってコモンレール216に圧送され、高圧の燃料としてコモンレール216に蓄えられる。各燃料噴射バルブ219をそれぞれ開閉制御(電子制御)することによって、コモンレール216内の高圧の燃料が、噴射圧力、噴射時期、噴射期間(噴射量)を高精度にコントロールされた上で、各インジェクタ115からエンジン201の各気筒に噴射される。このため、エンジン201から排出される窒素酸化物(NOx)を低減できると共に、エンジン201の騒音振動を低減できる。
図11に示すように、コモンレール装置220は、上死点(TDC)を挟む付近でメイン噴射Aを実行するように構成されている。また、コモンレール装置220は、メイン噴射A以外に、上死点より約60°以前のクランク角度θ1の時期に、NOx及び騒音の低減を目的として少量のパイロット噴射Bを実行したり、上死点直前のクランク角度θ2の時期に、騒音低減を目的としてプレ噴射Cを実行したり、上死点後のクランク角度θ3及びθ4の時期に、粒子状物質(以下、PMという)の低減や排気ガスの浄化促進を目的としてアフタ噴射D及びポスト噴射Eを実行したりするように構成されている。
パイロット噴射Bは、メイン噴射Aに対して大きく進角した時期に噴射することによって、燃料と空気との混合を促進させるものである。プレ噴射Cは、メイン噴射Aに先立って噴射することによって、メイン噴射Aでの着火時期の遅れを短縮するものである。アフタ噴射Dは、メイン噴射Aに対してやや遅角させて噴射することによって、拡散燃焼を活性化させ、エンジン201からの排気ガス温度を上昇させる(PMを再燃焼させる)ものである。ポスト噴射Eは、メイン噴射Aに対して大きく遅角した時期に噴射することによって、実際の燃焼過程に寄与せずに未燃焼の燃料として排気フィルタ202に供給するものである。排気フィルタ202に供給された未燃焼の燃料は、ディーゼル酸化触媒243上で反応し、その反応熱によって排気フィルタ202内の排気ガス温度が上昇することになる。ここで、図11におけるグラフの山の高低は、大まかに言って、各噴射段階A〜Eでの燃料噴射量の差異を表現している。
(4).エンジンの制御関連の構造
次に、図10〜図13を参照しながら、エンジン201の制御関連の構造について説明する。図10に示す如く、エンジン201における各気筒の燃料噴射バルブ219を作動させるECU311を備えている。詳細は省略するが、ECU311は、各種演算処理や制御を実行するCPUの他、各種データを予め固定的に記憶させたROM、制御プログラ
ムや各種データを書換可能に記憶するEEPROM、制御プログラムや各種データを一時的に記憶するRAM、時間計測用のタイマ、及び入出力インターフェイス等を有していて、エンジン201又はその近傍に配置している。
ECU311は、電源印加用のキースイッチ331を介してバッテリー332に接続している。キースイッチ331は、鍵穴に差し込んだ所定の鍵によって切り位置、入り位置及びスタータ位置という3つの端子位置に回動操作可能なロータリスイッチである。キースイッチ331は、エンジン201搭載対象の作業機に設けた計器パネル340に配置している(図12参照)。キースイッチ331の入り位置(端子)をECU311の入力側に接続している。
ECU311の入力側には少なくとも、コモンレール216内の燃料圧力を検出するレール圧センサ312、燃料ポンプ214を回転又は停止させる電磁クラッチ313、エンジン201の回転速度(クランク軸203のカムシャフト位置)を検出するエンジン回転センサ314、インジェクタ215の燃料噴射回数(一行程の燃料噴射期間中の回数)を検出及び設定する噴射設定器315、アクセル操作具(図示省略)の操作位置を検出するスロットル位置センサ316、吸気経路中の吸気温度を検出する吸気温度センサ317、排気経路中の排気ガス温度を検出する排気温度センサ318、エンジン201の冷却水温度を検出する冷却水温センサ319、コモンレール216内の燃料温度を検出する燃料温度センサ320、EGRガスの温度を検出するEGR温度センサ321、排気フィルタ202内におけるスートフィルタ244前後(上下流)の排気ガスの差圧を検出する差圧センサ281、排気フィルタ202内の排気ガス温度を検出するDPF温度センサ282、排気フィルタ202再生動作を許可する再生承認部材としての再生スイッチ322、排気フィルタ202再生動作を禁止する再生禁止部材としての再生禁止スイッチ323、並びに、ロック状態で非作業再生制御(詳細は後述する)以降の各再生制御の実行を禁止するインターロックスイッチ324を接続している。
ECU311の出力側には少なくとも、四気筒分の各燃料噴射バルブ219の電磁ソレノイドがそれぞれ接続されている。すなわち、コモンレール216に蓄えた高圧燃料が燃料噴射圧力、噴射時期及び噴射期間等を制御しながら、一行程中に複数回に分けて燃料噴射バルブ219から噴射されることによって、窒素酸化物(NOx)の発生を抑えると共に、スートや二酸化炭素(CO2)等の発生も低減した完全燃焼を実行し、燃費を向上させるように構成されている。
また、ECU311の出力側には、エンジン201の吸気圧(吸気量)を調節する吸気スロットル部材228、吸気マニホールド206へのEGRガスの供給量を調節するEGRバルブ部材231、エンジン201の異常を報知するエンジン警報ランプ325、排気ガスが高温である旨を報知する排気温度警報ランプ326、非作業再生制御以降の再生制御の実行を促す再生要求ランプ327、排気フィルタ202再生動作に関連して明滅する再生ランプ328、再生禁止スイッチ323の禁止操作によって作動する再生禁止ランプ329、及び、排気フィルタ202再生動作等に関連して鳴動する警報ブザー330を接続している。各種ランプ325〜329の明滅や警報ブザー330の鳴動に関するデータは、予めECU311のEEPROMに記憶している。なお、図12に示すように、再生スイッチ322、再生禁止スイッチ323及び各種ランプ325〜329は、エンジン201搭載対象の作業機にある計器パネル340に配置している。インターロックスイッチ324は計器パネル340又はその近傍に配置している。
図12に示すように、再生スイッチ322と再生禁止スイッチ323とは、中央部に位置する支軸回りに回動可能なロッカースイッチ333(シーソースイッチ)に構成している。ロッカースイッチ333において支軸を挟んだ一方が再生スイッチ322であり、他
方が再生禁止スイッチ323である。
再生スイッチ322はモーメンタリ動作タイプのものである。すなわち、再生スイッチ322は、一回の押下で一つのONパルス信号を発するノンロックタイプのプッシュスイッチである。オペレータによる再生スイッチ322の押下時間は、リセット再生制御(詳細は後述する)以降の各再生制御の実行可否を判別する基準の一つに採用している。
再生禁止スイッチ323はオルタネイト動作タイプのものである。すなわち、再生禁止スイッチ323は、一回押下するとその押下位置でロックされ、もう一回押下すると元の位置に復帰するロック形のプッシュスイッチである。再生禁止スイッチ323を押下してロックされていれば、エンジン201における現状の駆動状態が維持され、リセット再生制御以降の各再生制御の実行が禁止される。再生禁止スイッチ323のオンオフも、リセット再生制御以降の各再生制御の実行可否を判別する基準の一つである。
実施形態の再生スイッチ322には再生ランプ328を内蔵している。すなわち、ロッカースイッチ333の再生スイッチ322部分を再生ランプ328付きスイッチに構成している。また同様に、実施形態の再生禁止スイッチ323には再生禁止ランプ329を内蔵していて、ロッカースイッチ333の再生禁止スイッチ323部分を再生禁止ランプ329付きスイッチに構成している。なお、ロッカースイッチ333の構造の特性上、再生禁止スイッチ323を押下してオンにすると、再生スイッチ322はオフになる。再生禁止スイッチ323がロック状態であれば、再生スイッチ322はオンにできない。再生禁止スイッチ323が解除状態であれば、再生スイッチ322を押下してオンにできる。
ECU311のEEPROMには、エンジン201の回転速度NとトルクT(負荷)との関係を示す出力特性マップM(図13参照)を予め記憶させている。また、詳細は省略するが、ECU311のEEPROMには、エンジン201の回転速度Nと燃料噴射量との関係から排気ガス流量を換算する排気ガス流量マップや、同じくエンジン201の回転速度Nと燃料噴射量との関係からエンジン201のPM排出量を換算するPM排出量マップも予め記憶させている。出力特性マップM等の各マップは実験等にて求められる。図13に示す出力特性マップMでは、回転速度Nを横軸に、トルクTを縦軸に採っている。出力特性マップMは、上向き凸に描かれた実線Tmxで囲まれた領域である。実線Tmxは、各回転速度Nに対する最大トルクを表した最大トルク線である。この場合、エンジン201の型式が同じであれば、ECU311に記憶される出力特性マップMはいずれも同一(共通)のものになる。図13に示すように、出力特性マップMは、所定の排気ガス温度における回転速度NとトルクTとの関係を表した境界線BL1,BL2によって上下三つに分断される。
第1境界線BL1よりも上側の領域は、エンジン201の通常運転だけでスートフィルタ244に堆積したPMを酸化除去できる(ディーゼル酸化触媒243の酸化作用が働く)自己再生領域である。第1境界線BL1と第2境界線BL2との間の領域は、エンジン201の通常運転だけではPMが酸化除去されずにスートフィルタ244に堆積するものの、後述するアシスト再生制御やリセット再生制御の実行によって排気フィルタ202が再生する再生可能領域である。第2境界線BL2よりも下側の領域は、アシスト再生制御やリセット再生制御を実行しても排気フィルタ202が再生しない再生不可領域である。再生不可領域でのエンジン201の排気ガス温度は低過ぎるため、この状態からアシスト再生制御やリセット再生制御を実行しても、排気ガス温度が再生境界温度まで上昇しない。つまり、エンジン201の回転速度NとトルクTとの関係が再生不可能領域にあれば、アシスト再生制御やリセット再生制御では排気フィルタ202が再生しない(スートフィルタ244の粒子状物質捕集能力が回復しない)。なお、第1境界線BL1上の排気ガス温度は、自己再生可能な再生境界温度(約300℃程度)である。
ECU311は基本的に、エンジン回転センサ314で検出した回転速度とスロットル位置センサ316で検出したスロットル位置とからエンジン201のトルクを求め、トルクと出力特性とを用いて目標燃料噴射量を演算し、当該演算結果に基づきコモンレール装置220を作動させる燃料噴射制御を実行する。なお、コモンレール装置220の燃料噴射量は主に、各燃料噴射バルブ219の開弁期間を調節して、各インジェクタ215への噴射期間を変更することによって調節される。
エンジン201の制御方式(再生制御方式)としては、エンジン201の通常運転だけで排気フィルタ202が自発的に再生する通常運転制御(自己再生制御)と、排気フィルタ202の詰り状態が規定水準以上になると排気ガス温度を自動的に上昇させるアシスト再生制御と、ポスト噴射Eを用いて排気ガス温度を上昇させるリセット再生制御と、ポスト噴射Eとエンジン201の所定高速回転速度とを組み合わせて排気ガス温度を上昇させる非作業再生制御(緊急再生制御といってもよい)と、非作業再生制御の失敗時に実行可能なリカバリ再生制御とがある。
通常運転制御では、エンジン201における回転速度NとトルクTとの関係が出力特性マップMの自己再生領域にあり、排気フィルタ202内でのPM酸化量がPM捕集量を上回る程度に、エンジン201の排気ガスが高温になっている。
アシスト再生制御では、吸気スロットル部材228の開度調節とアフタ噴射Dとによって、排気フィルタ202を再生させる。すなわち、アシスト再生制御では、EGRバルブ部材231を閉弁すると共に、吸気スロットル部材228を所定開度まで閉弁させる(絞る)ことによって、エンジン201への吸気量を制限する。そうすると、エンジン201負荷が増大するから、設定回転速度維持のためにコモンレール装置220の燃料噴射量が増加し、エンジン201の排気ガス温度を上昇させる。これに合わせて、メイン噴射Aに対してやや遅角させて噴射するアフタ噴射Dによって拡散燃焼を活性化させ、エンジン201の排気ガス温度を上昇させる。その結果、排気フィルタ202内のPMが燃焼除去される。なお、以降に説明する再生制御のいずれにおいても、EGRバルブ部材231は閉弁される。
リセット再生制御は、アシスト再生制御が失敗した場合(排気フィルタ202の詰り状態が改善せずPMが残留した場合)や、エンジン201の累積駆動時間TIが設定時間TI2(例えば100時間程度)以上になった場合に行われる。リセット再生制御では、アシスト再生制御の態様に加え、ポスト噴射Eをすることによって、排気フィルタ202を再生させる。すなわち、リセット再生制御では、吸気スロットル部材228の開度調節とアフタ噴射Dとに加えて、ポスト噴射Eで排気フィルタ202内に未燃燃料を直接供給し、未燃燃料をディーゼル酸化触媒243で燃焼させることによって、排気フィルタ202内の排気ガス温度を上昇させる(約560℃程度)。その結果、排気フィルタ202内のPMが強制的に燃焼除去される。
非作業再生制御は、リセット再生制御が失敗した場合(排気フィルタ202の詰り状態が改善せずPMが残留した場合)等に行われる。非作業再生制御では、リセット再生制御の態様に加えて、エンジン201の回転速度Nを所定高速回転速度(例えば2200rpm、最高回転速度若しくはハイアイドル回転速度でもよい)に維持することによって、エンジン201の排気ガス温度を上昇させた上で、排気フィルタ202内でもポスト噴射Eによって排気ガス温度を上昇させる(約600℃程度)。その結果、リセット再生制御よりも更に好条件下で、排気フィルタ202内のPMが強制的に燃焼除去される。なお、非作業再生制御での吸気スロットル部材228は絞るのではなく、完全に閉弁させる。非作業再生制御でのアフタ噴射Dは、アシスト再生制御やリセット再生制御よりもリタード(
遅角)させて行われる。
非作業再生制御では、エンジン201の出力を最大出力よりも低い非作業時最大出力(例えば最大出力の80%程度)に制限している。この場合、エンジン201の回転速度Nを所定高速回転速度に維持するので、トルクTを抑制して非作業時最大出力となるように、コモンレール装置220の燃料噴射量を調節する。
リカバリ再生制御は、非作業再生制御が失敗した場合(排気フィルタ202の詰り状態が改善せずPMが過堆積になった場合)等に行われる。実施形態のリカバリ再生制御は、リカバリ第一再生制御とリカバリ第二再生制御との二段階に分けて実行される。リカバリ第一再生制御は、過堆積したPMの暴走燃焼のおそれがある状況下で、排気フィルタ202内のPMを徐々に燃焼除去して、排気フィルタ202を緩やかに再生させるものである。リカバリ第二再生制御は、暴走燃焼のおそれがなくなった状況下で、排気フィルタ202を速やかに再生させるものである。
リカバリ再生制御全体としては非作業再生制御の態様と基本的に同様に行われるが、リカバリ第一再生制御では、過堆積したPMの暴走燃焼を防止するために、例えばポスト噴射Eでの燃料噴射量を少なくする等して、排気フィルタ202内の排気ガス温度が非作業再生制御よりも低い温度TP3(例えば500℃程度)を目標にして且つ長時間(例えば3〜3.5時間程度以内)をかけて、排気フィルタ202内のPMを徐々に燃焼除去する。リカバリ第一再生制御では、エンジン201の出力を非作業時最大出力(例えば最大出力の80%程度)よりも低いリカバリ時最大出力に制限している。この場合、エンジン201のトルクTだけでなく回転速度Nも抑制してリカバリ時最大出力となるように、コモンレール装置220の燃料噴射量を調節する。
リカバリ第二再生制御では、吸気スロットル部材228の閉弁、アフタ噴射D、ポスト噴射E及びエンジン201の所定高速回転速度によって、排気フィルタ202内の排気ガス温度がリカバリ第一再生制御よりも高い温度TP4(例えば600℃程度)を目標にして、排気フィルタ202を速やかに再生させる。すなわち、リカバリ第二再生制御の態様は、非作業再生制御の態様と同様である。リカバリ第一再生制御とリカバリ第二再生制御との主たる相違点はポスト噴射Eの噴射量であり、例えばリカバリ第一再生制御時のポスト噴射Eの噴射量は、リカバリ第二再生制御時のポスト噴射Eの噴射量よりも少なくなっている。
通常運転制御はもちろんであるが、アシスト再生制御及びリセット再生制御では、エンジン201の動力を例えば作業機の作動部に伝達して各種作業を実行することが可能である(エンジン201を通常運転で駆動できる)。非作業再生制御及びリカバリ再生制御では、専らPMの燃焼除去のためにエンジン201を駆動させ、エンジン201の動力によって例えば作業機の作動部を駆動させない。
(5).排気フィルタ再生制御の態様
次に、図14以降のフローチャートを参照しながら、ECU311による排気フィルタ202再生制御の一例について説明する。前述の各再生制御はECU311の指令に基づき実行される。すなわち、図14以降のフローチャートにて示すアルゴリズムは、ECU311のEEPROMに記憶されていて、当該アルゴリズムをRAMに呼び出してからCPUで処理することによって、前述の各再生制御が実行される。
図14に示すように、排気フィルタ202再生制御ではまず、キースイッチ331がオンであれば(S101:YES)、エンジン回転センサ314、冷却水温センサ319、差圧センサ281及びDPF温度センサ282の検出値と、吸気スロットル部材228並びにEGRバルブ部材231の開度と、コモンレール装置220による燃料噴射量とを読み込む(S102)。次いで、過去にアシスト再生制御、リセット再生制御又は非作業再生制御を実行してからの累積駆動時間TIが設定時間TI1(例えば50時間)未満であ
れば(S103:NO)、排気フィルタ202内のPM堆積量を推定する(S104)。ステップS104では、差圧センサ281の検出値と排気ガス流量マップとに基づくP法でのPM堆積量推定と、エンジン回転センサ314の検出値と燃料噴射量とPM排出量マップと排気ガス流量マップとに基づくC法でのPM堆積量推定とを行う。P法及びC法でのPM堆積量のいずれかが規定量Ma(例えば8g/l)以上であれば(S105:YES)、アシスト再生制御を実行する(S106)。
アシスト再生制御の開始から所定時間TI3(例えば30分)が経過した場合は(S107:YES)、アシスト再生制御を終了して通常運転制御に戻る。アシスト再生制御開始から所定時間内であれば(S107:NO)、C法によって排気フィルタ202内のPM堆積量を推定する(S108)。この点から分かるように実施形態では基本的に、各再生制御の実行中はC法でPM堆積量を推定し、それ以外ではP法でPM堆積量を推定している。各再生制御の実行中か否かによってPM堆積量の推定方法を変更している。C法でのPM堆積量が規定量Ma(例えば6g/l)未満であれば(S109:YES)、アシスト再生制御を終了して通常運転制御に戻る。P法及びC法でのPM堆積量のいずれかが規定量Ma以上の場合において(S109:NO)、この状態で所定時間TI4(例えば10分)を経過した場合は(S110:YES)、リセット再生制御の前のリセット待機モードであるステップS201へ移行する。
ステップS103に戻り、累積駆動時間TIが設定時間TI1以上で、更に設定時間TI2(例えば100時間)以上の場合(S111:YES)、リセット待機モードであるステップS201へ移行する。この段階では、再生ランプ328が点滅し、オペレータにリセット再生制御の実行を促す。再生禁止スイッチ323がオフで再生スイッチ322を所定時間(例えば3秒)オンの場合は、排気フィルタ202内の排気ガス温度TPがTP1(例えば250℃)以上ならば(S201:YES)、リセット再生制御を実行する(S202)。この段階では、再生ランプ328と共に排気温度警報ランプ326が点灯する。
再生禁止スイッチ323オンか、再生スイッチ322オフか、排気フィルタ202内の排気ガス温度TPがTP1未満の場合は(S201:NO)、C法によって排気フィルタ202内のPM堆積量を推定し(S203)、C法でのPM堆積量が規定量Mr(例えば6g/l)未満の状態で所定時間TI5(例えば1時間)を経過すれば(S204:YES)、リセット待機モードから抜けて通常運転制御に戻る。ステップS204がNOの状態で所定時間TI6(例えば3時間)が経過した場合は(S205:YES)、PM過堆積の可能性が懸念されるので、非作業再生制御の前の非作業待機モードであるステップS301へ移行する。
リセット再生制御の実行中は、P法及びC法によって排気フィルタ202内のPM堆積量を推定する(S206)。P法及びC法でのPM堆積量のいずれかが規定量Mr(例えば10g/l)未満であり(S207:NO)、且つ、排気フィルタ202内の排気ガス温度TPがTP2(例えば600℃)以上の状態で所定時間TI7(例えば25分)を経過するか(S208:YES)、リセット再生制御開始から所定時間TI8(例えば30分)を経過すれば(S209:YES)、リセット再生制御を終了して通常運転制御に戻る。P法及びC法でのPM堆積量のいずれかが規定量Mr以上であれば(S207:YES)、リセット再生制御失敗とみなし、PM過堆積の可能性が懸念されるので、非作業再生制御の前の非作業待機モードであるステップS301へ移行する。
図15に示すように、非作業待機モードでは始めに、P法及びC法によって排気フィルタ202内のPM堆積量を推定する(S301)。この段階では、エンジン警報ランプ325及び再生要求ランプ327が点灯し、オペレータに非作業再生制御の実行を予告する
。P法及びC法でのPM堆積量のいずれかが規定量Mb(例えば12g/l)未満で(S302:NO)且つ所定時間TI9(例えば10時間)内であれば(S303:NO)、予め設定した非作業移行条件が成立するまで待機する(S304)。P法及びC法でのPM堆積量のいずれかが規定量Mb以上か(S302:YES)、非作業待機モードのままで所定時間TI9(例えば10時間)を経過した場合は(S303:YES)、PM過堆積の可能性が懸念されるので、リカバリ再生制御の前のリカバリ待機モードであるステップS401へ移行する。なお、非作業待機モードでは、PM堆積量が例えば10g/l未満であれば警報ブザー330が断続的に鳴動し、例えば10g/l以上であれば警報ブザー330が連続的に鳴動する。警報ブザー330の鳴動状態によって、オペレータは排気フィルタ202の詰り具合を大まかに把握できる。
ステップS304に示す非作業移行条件は、インターロックスイッチ324が解除状態(オフ)、再生スイッチ322を所定時間(例えば3秒)オン、再生禁止スイッチ323がオフ、エンジン201がローアイドル回転速度(無負荷時の最低限度の回転速度)、並びに、冷却水温センサ319の検出値が所定値(例えば65℃)以上という五つの条件からなっている。この場合、冷却水温センサ319の検出値が所定値以上ならば、エンジン201の暖機運転完了とみなしている。
ステップS304において、インターロックスイッチ324が解除状態(オフ)、エンジン201がローアイドル回転速度、及び、冷却水温センサ319の検出値が所定値以上という三つの条件が成立すると、エンジン警報ランプ325及び再生要求ランプ327の点灯を継続させたままで再生ランプ328が点滅し、オペレータに非作業再生制御の実行を促す。そして、再生禁止スイッチ323がオフで再生スイッチ322を所定時間オンになれば(S304:YES)、五つの非作業移行条件が成立し、非作業再生制御を実行する(S305)。この段階では、エンジン警報ランプ325及び再生要求ランプ327は消灯し、再生ランプ328と共に排気温度警報ランプ326が点灯する。
非作業再生制御の実行中は、C法で排気フィルタ202内のPM堆積量を推定する(S306)。C法でのPM堆積量が規定量Ms(例えば8g/l)未満であり(S307:YES)、且つ、排気フィルタ202内の排気ガス温度TPがTP2(例えば600℃)以上で所定時間TI10(例えば25分)を経過するか(S308:YES)、非作業再生制御開始から所定時間TI11(例えば30分)を経過すれば(S309:YES)、非作業再生制御を終了して通常運転制御に戻る。C法でのPM堆積量が規定量Ms以上の場合(S307:YES)、この状態で所定時間TI12(例えば30分)を経過すれば(S310:YES)、非作業再生制御失敗とみなし、PM過堆積の可能性が懸念されるので、リカバリ再生制御の前のリカバリ待機モードであるステップS401へ移行する。
非作業再生制御の実行中に、インターロックスイッチ324がロック状態(オン)か、再生禁止スイッチ323がオンになると(S311:YES)、非作業再生制御が中断される。この段階では、エンジン警報ランプ325及び再生要求ランプ327が点灯し、再生ランプ328が点滅する。再生禁止スイッチ323をオンにしていれば、再生禁止ランプ329も点灯する。なお、非作業再生制御を中断した場合は、再生スイッチ322をオンすれば非作業再生制御が再開される。
図16に示すように、リカバリ待機モードでは、予め設定したリカバリ移行条件が成立するまで待機する(S401)。この段階では、非作業待機モードと同様に、エンジン警報ランプ325及び再生要求ランプ327が点灯し、オペレータにリカバリ再生制御の実行を予告する。ステップS401に示すリカバリ移行条件は、非作業移行条件と基本的に同じであるが、再生スイッチ322の押下時間が非作業移行条件の場合よりも長い。すなわち、リカバリ移行条件は、インターロックスイッチ324が解除状態(オフ)、再生ス
イッチ322を所定時間(例えば10秒)オン、再生禁止スイッチ323がオフ、エンジン201がローアイドル回転速度(無負荷時の最低限度の回転速度)、並びに、冷却水温センサ319の検出値が所定値(例えば65℃)以上という五つの条件からなっている。この場合も、冷却水温センサ319の検出値が所定値以上ならば、エンジン201の暖機運転完了とみなしている。
ステップS401において、インターロックスイッチ324が解除状態(オフ)、エンジン201がローアイドル回転速度、及び、冷却水温センサ319の検出値が所定値以上という三つの条件が成立すると、エンジン警報ランプ325及び再生要求ランプ327の点灯を継続させたままで再生ランプ328が点滅し、オペレータにリセット再生制御の実行を促す。そして、再生禁止スイッチ323がオフで再生スイッチ322を所定時間オンになれば(S401:YES)、五つのリカバリ移行条件が成立し、リカバリ第1再生制御を実行する(S402)。この段階では、エンジン警報ランプ325及び再生要求ランプ327は消灯し、再生ランプ328と共に排気温度警報ランプ326が点灯する。
リカバリ第一再生制御の実行中は、C法によって排気フィルタ202内のPM堆積量を推定し(S404)、C法でのPM堆積量が規定量Mc(例えば8〜10g/l程度)未満になれば(S405:YES)、リカバリ第二再生制御に移行する(S407)。リカバリ第一再生制御の実行中に、インターロックスイッチ324がロック状態(オン)か、再生禁止スイッチ323がオンになると(S406:YES)、リカバリ第一再生制御が中断される。この段階では、エンジン警報ランプ325及び再生要求ランプ327が点灯し、再生ランプ328が点滅する。再生禁止スイッチ323をオンにしていれば、再生禁止ランプ329も点灯する。なお、リカバリ第一再生制御を中断した場合は、再生スイッチ322をオンすればリカバリ第一再生制御が再開される。C法でのPM堆積量が規定量Mc未満に減らずに(S405:NO)、リカバリ第一再生制御開始から所定時間TI13(例えば3〜3.5時間程度)を経過すれば(S403:YES)、これ以上リカバリ再生制御を継続しても排気フィルタ202再生が困難であると判断してリターンする。この状態では警報が発せられ、エンジンを停止させることになる。
リカバリ第二再生制御において、リカバリ第二再生制御開始から所定時間TI14(例えば30分)を経過すれば(S408:YES)、リカバリ第二再生制御を終了して通常運転制御に戻る。リカバリ第二再生制御の実行中に、インターロックスイッチ324がロック状態(オン)か、再生禁止スイッチ323がオンになると(S409:YES)、リカバリ第二再生制御が中断される。この段階でも、エンジン警報ランプ325及び再生要求ランプ327が点灯し、再生ランプ328が点滅する。再生禁止スイッチ323をオンにしていれば、再生禁止ランプ329も点灯する。なお、リカバリ第二再生制御を中断した場合は、再生スイッチ322をオンすればリカバリ第二再生制御が再開される。
さて、実施形態の排気フィルタ202再生制御では、リセット再生制御又は非作業再生制御を実行してから設定時間TI1(例えば50時間)が経過すると、リセット再生制御を経由することなく非作業再生制御を実行できるアローモードを設定している。図14のステップS111において、累積駆動時間TIが設定時間TI1以上でTI2以下であれば(S111:NO)、ステップS501に移行する(図17参照)。ステップS501において、以前にリセット再生制御又は非作業再生制御を実行済であれば(S501:YES)、再生要求ランプ327が点灯すると共に再生ランプ328が点滅し、リセット再生制御を経ずに非作業再生制御が可能なアローモードを実行できる旨を報知する。非作業待機モード時とは異なり、エンジン警報ランプ325は点灯しない。そして、インターロックスイッチ324が解除状態(オフ)、再生禁止スイッチ323がオフ及び再生スイッチ322を所定時間(例えば10秒)オンにすれば(S502:YES)、アローモードの待機状態となる(S503)。
ステップS503において、インターロックスイッチ324が解除状態(オフ)、再生スイッチ322を所定時間(例えば3秒)オン、再生禁止スイッチ323がオフ、エンジ
ン201がローアイドル回転速度(無負荷時の最低限度の回転速度)、並びに、冷却水温センサ319の検出値が所定値(例えば65℃)以上という五つの条件が成立すると(S503:YES)、アローモードでの非作業再生制御を実行する(S504)。この段階では、再生要求ランプ327は消灯し、再生ランプ328と共に排気温度警報ランプ326が点灯する。
アローモードでの非作業再生制御(S504〜S510)の態様は、リセット再生制御を経由した場合の非作業再生制御(S305〜S311)と基本的に同じである。C法でのPM堆積量が規定量Ms以上の場合(S506:YES)、この状態で所定時間TI17(例えば30分)を経過すれば(S509:YES)、アローモードでの非作業再生制御失敗とみなし、PM過堆積の可能性が懸念されるので、リカバリ再生制御の前のリカバリ待機モードであるステップS401へ移行する点も同様である。このような制御を採用すると、オペレータが意図的に非作業再生制御を実行して、排気フィルタ202内のPMを燃焼除去でき、排気フィルタ202のメンテナンス性を向上できる。
(6).まとめ
上記の記載並びに図10、図15及び図16から明らかなように、コモンレール式エンジン201と、前記エンジン201の排気経路に配置した排気ガス浄化装置202とを備え、前記排気ガス浄化装置202内に堆積した粒子状物質を燃焼除去する複数の再生制御を実行可能な排気ガス浄化システムにおいて、前記複数の再生制御としては、ポスト噴射Eと所定高速回転速度とを組み合わせて排気ガス温度を上昇させる非作業再生制御と、前記非作業再生制御の失敗時に実行可能なリカバリ再生制御とを少なくとも有し、前記非作業再生制御及び前記リカバリ再生制御では、専ら前記粒子状物質の燃焼除去のために前記エンジン201を駆動させ、前記リカバリ再生制御では、前記非作業再生制御よりも低い排気ガス温度で、且つ、前記非作業再生制御よりも長時間をかけるように設定しているから、前記排気ガス浄化装置202内で前記粒子状物質が過剰に堆積していても、暴走燃焼を生じさせることなく前記粒子状物質を燃焼除去することが可能になる。従って、前記排気ガス浄化装置202の破損(溶損)や過度のエミッション排出を防止できる。
また、前記非作業再生制御が失敗した場合に、予め設定したリカバリ移行条件(図16のS401参照)の成立を待機するリカバリ待機モードに移行し、前記リカバリ移行条件が不成立のときは前記リカバリ待機モードで待機することに加え、前記リカバリ再生制御の実行中において、予め設定したリカバリ解除条件(図16のS406、S409参照)が成立したときは前記リカバリ再生制御を中断するから、前記リカバリ待機モードに一旦移行したら、その後は、前記リカバリ再生制御か前記リカバリ待機モードにしか移行しないことになる。このため、暴走燃焼を引き起こすような再生制御を実行することがなく、暴走燃焼の発生を防止できる。
更に、前記リカバリ再生制御が完了した場合は通常運転制御に戻るから、オペレータが例えばモード切換のための戻し操作等をする必要がなく、手間が省けてオペレータの操作負担を軽減できる。
上記の記載並びに図10及び図14〜図16から明らかなように、コモンレール式エンジン201と、前記エンジン201の排気経路に配置した排気ガス浄化装置202とを備え、前記排気ガス浄化装置内に堆積した粒子状物質を燃焼除去する複数の再生制御を実行可能な排気ガス浄化システムにおいて、前記複数の再生制御としては、ポスト噴射Eを用いて排気ガス温度を上昇させるリセット再生制御と、ポスト噴射Eと所定高速回転速度とを組み合わせて排気ガス温度を上昇させる非作業再生制御と、前記非作業再生制御の失敗時に実行可能なリカバリ再生制御とを少なくとも有し、前記非作業再生制御及び前記リカバリ再生制御では、専ら前記粒子状物質の燃焼除去のために前記エンジンを駆動させるか
ら、前記非作業再生制御及び前記リカバリ再生制御では前記エンジン201が通常運転をしない。つまり、前記非作業再生制御及び前記リカバリ再生制御は、前記排気ガス浄化装置202の破損(溶損)防止や過度のエミッション排出防止といった危機回避のためのモードとして存在している。
その上で、前記リセット再生制御から前記非作業再生制御を経て前記リカバリ再生制御に移行するように設定し、前記リセット再生制御から前記非作業再生制御に移行する際は、予め設定した非作業移行条件(図15のS304参照)の成立を待機する非作業待機モードを経由し、前記非作業再生制御から前記リカバリ再生制御に移行する際は、予め設定したリカバリ移行条件(図16のS401参照)の成立を待機するリカバリ待機モードを経由し、前記各移行条件が不成立のときは前記各待機モードで待機するから、前記各待機モードに一旦移行したら、前記非作業再生制御又は前記リカバリ再生制御にしか移行しないことになる。このため、暴走燃焼を引き起こすような再生制御を実行することがなく、暴走燃焼の発生を防止でき、前記排気ガス浄化装置202の破損(溶損)防止や過度のエミッション排出防止といった危機回避を確実に行える。
また、前記非作業再生制御では、前記エンジン201の出力を最大出力よりも低い非作業時最大出力に制限し、前記リカバリ再生制御では、前記エンジン201の出力を前記非作業時最大出力よりも低いリカバリ時最大出力に制限するから、前記非作業再生制御や前記リカバリ再生制御を実行した場合に、排気ガスの過度の昇温及び昇圧を防止して、昇温による前記排気ガス浄化装置202等の排気系部品の劣化や、昇圧による前記排気系部品の接合部からの排気ガス漏れの発生を抑制できる。
(7).その他
本願発明は、前述の実施形態に限らず、様々な態様に具体化できる。例えば実施形態の排気ガス浄化システムでは、再生スイッチ322と再生禁止スイッチ323との両方を有していたが、これに限らず、再生禁止スイッチ323を省略して再生スイッチ322のみにしても、前述の実施形態と同様の制御を実行できる。
また、再生スイッチ322を省略して再生禁止スイッチ323のみにしても、前述の実施形態と同様の制御を実行できる。この場合、再生禁止スイッチ323はオルタネイト動作タイプのものにすればよい。そして、別例である図18のステップS201、図19のステップS304、図20のステップS401、図21のステップS502及びステップS503に示すように、再生スイッチ322のオンオフを判別基準から外しても、リセット再生制御以降の各再生制御の実行可否の判別は可能である。その他、各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。