JP5931328B2 - エンジンの排ガス浄化装置および浄化方法 - Google Patents
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DPFは、フィルターを用いた捕集装置であり、排ガス温度が低いエンジン運転状態では、このDPFにPMが蓄積し続けるため、強制的に排ガス温度を上げてこのDPFに堆積したPMを燃焼除去する強制再生が行われる。
従って、図6に示すように、強制再生されることでPM中のスート(煤成分)は焼却されて強制再生前と強制再生後とで圧損の増加と減少を繰り返すが、運転時間の増大につれて燃焼除去されないアッシュ成分の堆積量が増大し、アッシュ堆積による圧力損失が増大し、DPF前後の圧力損失に影響を与え、エンジンの許容排圧を超える問題が生じる。
従って、アッシュ堆積量がエンジンの許容排圧を超えてエンジン性能に悪影響を与えない範囲内で、且つオイルダイリューションがエンジン性能に悪影響を与えない許容範囲内でDPFを使用することが、アッシュのメンテナンス間隔を最大に伸ばしつつ、エンジントラブルを回避する上で最も効果的である。
このアッシュメンテナンス間隔を伸ばすことは、メンテナンスに伴う車両の非稼働時間、または発電機等の定置エンジンでは発電等の非稼働時間を極力抑えて効率的な運転を可能にする上で重要である。
従って、オイルダイリューションの推定量に基づいて、強制再生の手段が選択されるため、オイルダイリューション量に基づいて判定されるオイル交換やアッシュ洗浄等の警告時期を延ばすことができ、メンテナンスに伴う車両の非稼働時間、または発電機等の定置エンジンでは発電等ができない非稼働時間を極力抑えることができる。
これによって、アッシュ堆積によるエンジントラブルのリスクを回避しつつアッシュメンテナンス間隔を極力延ばすことが可能になる。
EGR(排ガス再循環装置)が設けられているエンジンでは、DPFの強制再生を行う際には、EGRバルブを閉じるため強制再生時には排ガス流量が増大、さらに定格点の運転のためガス量は増加する。そのため、強制再生中にエンジンが定格点の運転状態にある場合には、排圧が上昇しエンジンの許容排圧を超過するおそれがある。従って、定格点での圧力損失推定値を基にDPF許容値に達しているか否かを判定することによって、許容排圧を超えての運転を防止でき、エンジントラブルを確実に回避できる。
すなわち、排ガス流量が少ないエンジン低回転、低負荷時には圧力センサからの検出値の誤差が大きく検出値に影響するため、低流量域における圧力センサの計測誤差を補正する。この補正は、低流量域における圧損計測値に運転領域に応じた領域補正を行う補正係数を掛ける。これによって、低流量域での差圧センサの誤差による強制再生頻度の増加を抑制できる。なお、補正係数は、低流量域になるに従って小さい係数を掛けるように補正される。
従って、アッシュ堆積によるエンジントラブルのリスクを回避しつつアッシュメンテナンス間隔を極力延ばすことで、メンテナンスに伴う車両の非稼働時間、または発電機等の定置エンジンでは発電等の稼働できない非稼働時間を低減して効率的な運転が可能になる。
また、排気通路3には排気タービン11aとこれに同軸駆動されるコンプレッサ11bを有する排気ターボ過給機11を備えており、該排気ターボ過給機11のコンプレッサ11bから吐出された空気は給気通路13を通って、インタークーラ15に入り給気が冷却された後、給気スロットルバルブ17で給気流量が制御され、その後、インテークマニホールド19からシリンダ毎に設けられた吸気ポート21からエンジン1の吸気弁23を介して燃焼室25内に流入するようになっている。
さらに、エンジン回転数信号57、エンジン燃料噴射量信号59がそれぞれ制御装置(ECU)45に入力されている。
強制再生手段43によるPMの燃焼除去についての制御概要をまず説明する。
強制再生を開始する条件、例えば、PMの堆積量を推定、車両であれば走行距離、エンジンの運転時間、トータル燃料消費量等を基に判定されて、強制再生が開始されるとDOC5を活性化するためのDOC昇温制御が実行される。このDOC昇温制御は、給気スロットルバルブ17の開度が絞られ、燃焼室内に流入する空気量を絞って、排ガス中の未燃燃料を増加させる。さらに、アーリーポスト噴射によって、主噴射直後にシリンダ内の圧力がまだ高い状態で主噴射より少量の燃料を噴射する1回目のポスト噴射を燃料噴射制御手段61によって行う。このアーリーポスト噴射によって、エンジンの出力には影響を与えずに排ガス温度を高め、この高温化された排ガスがDOC5に流入することで、DOC5を活性化させ、そしてDOC5の活性化に伴い排ガス中の未燃燃料を酸化される際に発生する酸化熱で排ガス温度を上昇させる。
このレイトポスト噴射によって、排気弁の開状態時に燃焼室から排気通路3へ燃料を排出させて、排出された燃料は既に活性化されたDOC5において反応して、発生した酸化熱により排ガス温度をさらに上昇させてDPF7の再生に必要な温度、例えば600℃にしてPMの燃焼を促進する。
まず、ステップS1で、排ガス温度をDPF入口温度センサ51、DPF出口温度センサ53からの信号を基に、入口出口温度の平均値として算出し、排ガス量をエアフローメータ47で検出した給気量と、燃料噴射制御手段61からの燃料噴射量とを基に算出する。さらに、差圧センサ55からの信号を基にDPF7による圧損を計測する。
ここで、ΔP:DPF圧力損失もしくはDPF部のゲージ圧[kPa]
Q :体積ガス流量[Am3/h]
T :DPF出入口平均ガス温度[℃]
W :質量ガス流量[kg/h]
ρ :排ガス密度[kg/Nm3]
μ :ガス粘度[μPa・sec]
添字MV:通常の運転状態
添字RP:定格点での運転状態
である。
低流量域における圧力センサの計測誤差を補正するために、低流量域における差圧計測値に運転領域に応じた領域補正を行う領域補正値Fを掛ける。この領域補正値Fは、図4のように低流量域になるに従って小さい係数を掛けて補正する。
ステップS4で、Yesの場合には、ステップS6に進んで、領域補正値Fを掛けたDPF圧損推定値が、エンジン性能上において悪影響が生じるDPF許容値を超えるか否かの判定を行う。例えば、このDPF許容値を24〜25KPaの値に設定する。
このアッシュメンテナンスは、DPF7のフィルターを取り外して、圧縮エアー等で堆積しているアッシュ(灰成分)を吹き飛ばす作業を行う。さらに、アッシュが堆積し過ぎている状況では、図6に示すように基本となる圧損が大きいため強制再生が頻繁に行われる結果、オイルダイリューション量が増加していることから、必要に応じてエンジンオイルの交換も行われる。
オイルダイリューション量は、エンジンのオイルパン内にオイルレベルセンサを設けて、オイルパン内のエンジンオイル量を計測することで推定する。
ステップS9の判定で、Noの場合には、ステップS11に進んで停車時強制再生を実行する。
一方、後述する運転時強制再生処理とは、DPFにおけるPM堆積量が所定の条件を満したときに、車両の走行中もしくは作業中に自動的に再生処理が実行されるものである。
これはポスト噴射された燃料が、エンジンのシリンダ内に付着し、オイルパン等にあるオイルに浸透することによって生ずるものである。オイルの希釈化の程度(即ち、オイル希釈度)は、ポスト噴射時に噴射された燃料がエンジンにおいて燃焼されずに残存する量に依存する。
尚、燃料消費率の観点から言えば、定車時再生処理は、車両を停車してエンジンがアイドリング状態またはそれより少し高いエンジン回転数状態で、再生処理だけにエンジンを回転させるため、運転時強制再生処理のように車両の走行中や車両を用いて作業を行っている最中に実行する運転時強制再生処理に比べて燃料消費率が不利になる傾向がある。
すなわち、PMの強制再生中には排ガス温度上昇によって排ガス体積が増大して排圧が上昇する傾向にあるが、そのような状況下において、稼働時再生を実施するとさらに運転状態に応じた回転数及び負荷によって排ガス流量が増大して、エンジンの許容排圧を超える恐れがある。しかし、停車状態で強制再生を実施することでこのような問題を回避できる。
さらに、DPF許容値内においては、オイルダイリューション量がオイルダイリューション閾値に達するまで強制再生を繰り返してDPFを使用するため、DPF7の交換やアッシュメンテナンス間隔を極力延ばすことができる。
第1実施形態においては、図2のステップS9のオイルダイリューション量がオイルダイリューション閾値(オイルダイリューション許容閾値)を超えたか否かの判定に、オイルパン内のエンジンオイル量を直接計測することでオイルダイリューション量を推定して判定を行った例を説明したが、第2実施形態は、このオイルダイリューション量を、計算式を用いて推定することに特徴がある。すなわち、図2のM部分を図3のようにする。
まず、ステップS21では、オイルダイリューション量を推定する。このオイルダイリューション量は、強制再生中のオイルへの軽油の混入量と、通常時運転中のオイル中軽油の蒸発量とより推定する。
ステップS21では通常時運転中のオイル中軽油の蒸発量を推定するともに、後述するステップS34またはステップS25によって推定される強制再生中のオイルへの軽油の混入量をもとに、オイルダイリューション量Xが推定される。
ここで、A :オイルダイリューション比率
Qfuel in oil:オイルへの軽油混入量[ml]
QLate Post:レイトポスト噴射量[ml/sec]
TDoc In:DOC入口ガス温度[℃]
ΔTReg:強制再生時間[sec](レイトポスト噴射時間)
である。
ここで、B:エンジン負荷に対する蒸発速度係数
K:オイル中軽油の蒸発速度定数[h-1]
t:強制再生中を除く運転時間[h]
Cfuel in oil:オイル中軽油濃度[wt%]
Tq:エンジントルク[Nm]
である。
ここで、QOil 0:初期オイル量[L]
QOil :推定時オイル量[L]
ρfuel :燃料密度[kg/L]
ρOil :オイル密度[kg/L]
である。
ステップS22で第1オイルダイリューション閾値Aを超えていると判定されればステップS27で、運転時強制再生不許可を指示して、次のステップS28で、オイルダイリューション量Xの推定値が、第2オイルダイリューション閾値Bを超えているか否かが判定される。この第2オイルダイリューション閾値B(オイルダイリューション許容閾値)を超えている場合には、アッシュ堆積量が過多により、必要な強制再生間隔が確保できなくなったと判断して、ステップS29で停車時強制再生をも不許可として、さらにステップS30でオイル警告を発して作業者にアッシュメンテナンスを警告して、オイル交換、DPF交換、アッシュの洗浄処理等を促す。
そして、ステップS31で、サービス工場等でオイル交換、アッシュ洗浄処理等をして、サービスツールで、警告信号や蓄積してきたデータをリセットして初期値に戻す。
ステップS35で、停車時強制再生を完了してステップS21にリターンし、ステップS21で、ステップS34で推定した強制再生中のオイルダイリューション量と、通常時運転中のオイル中軽油の蒸発量からオイルダイリューション量が推定される。
そして、ステップS24で運転時強制再生実施が行われた後には、ステップS25で強制再生のレイトポスト(L.P.)噴射で生じたオイルダイリューション量を推定する。
このステップS25における、レイトポスト(L.P.)噴射で生じたオイルダイリューション量の増加分は、ステップS21で説明した手法によって推定する。
ステップS26で、運転時強制再生を完了してステップS21にリターンし、ステップS21で、ステップS25で推定した強制再生中のオイルダイリューション量と、通常時運転中のオイル中軽油の蒸発量からオイルダイリューション量が推定される。
3 排気通路
5 DOC(前段酸化触媒)
7 DPF(ディーゼルパティキュレートフィルター)
9 排ガス後処理装置
43 強制再生手段
45 制御装置(ECU)
47 エアフローメータ
49 DOC入口温度センサ
51 DPF入口温度センサ
53 DPF出口温度センサ
57 エンジン回転数信号
59 エンジン燃料噴射量信号
61 燃料噴射制御手段
63 オイルダイリューション量推定手段
65 圧力損失推定手段
67 報知器
69 DPFメンテナンス報知手段(メンテナンス報知手段)
71 強制再生実行制御手段
Claims (3)
- エンジンの排ガス中に含まれるPM(粒子状物質)を捕集するディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)を備えるエンジンの排ガス浄化装置において、
前記DPFに堆積されたPMを燃焼除去する強制再生手段と、
前記強制再生手段を構成するエンジンの燃料噴射制御手段と、
強制再生時の前記燃料噴射制御手段からの燃料によるエンジンオイルのオイルダイリューション量を推定するオイルダイリューション量推定手段と、
前記DPFの圧損計測結果から、排ガス流量が最大となる最大エンジン回転数および最大エンジン負荷である定格点におけるDPFの圧力損失を推定する圧力損失推定手段と、
該圧力損失推定手段によって推定された前記定格点における損失圧力が予め設定された強制再生閾値を超え且つエンジン性能上悪影響が生じるDPF許容値に達している場合には、前記DPFの交換またはDPFに堆積した灰(アッシュ)のメンテナンスまたはエンジンオイルの交換を含むメンテナンスを報知するメンテナンス報知手段と、
圧力損失推定手段によって推定された前記定格点における損失圧力が、前記強制再生閾値を超え且つ前記DPF許容値に達していない場合には、前記オイルダイリューション量推定手段による推定オイルダイリューション量がオイルダイリューション許容閾値を超えるまで前記強制再生手段による強制再生を可能とし、超えた場合には前記メンテナンス報知手段を作動する強制再生実行制御手段と、を備え、
さらに、前記強制再生実行制御手段は、前記オイルダイリューション量推定手段による推定オイルダイリューション量が第1オイルダイリューション閾値以下の場合には運転時強制再生を実行し、前記推定オイルダイリューション量が前記第1オイルダイリューション閾値より大きい前記オイルダイリューション許容閾値である第2オイルダイリューション閾値以下の場合には、停車時強制再生を実行し、前記第2オイルダイリューション閾値を超える場合には、強制再生を不許可としてさらに前記メンテナンス報知手段を作動するように構成し、前記第2オイルダイリューション閾値を超えるまで実行される強制再生を、前記DPFの圧力損失が前記DPF許容値に達する直前まで可能にすることを特徴とするエンジンの排ガス浄化装置。 - 低流量域における圧力センサの計測誤差を補正するために、低流量域における前記圧損計測結果に対して運転領域に応じた領域補正を行うことを特徴とする請求項1記載のエンジンの排ガス浄化装置。
- エンジンの排ガス中に含まれるPM(粒子状物質)を捕集するディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)を備え、前記DPFに堆積されたPMを燃焼除去する強制再生手段と、前記強制再生手段を構成するエンジンの燃料噴射制御手段と、強制再生時の前記燃料噴射制御手段からの燃料によるエンジンオイルのオイルダイリューション量を推定するオイルダイリューション量推定手段と、前記DPFの圧損計測結果から、排ガス流量が最大となる最大エンジン回転数および最大エンジン負荷である定格点におけるDPFの圧力損失を推定する圧力損失推定手段と、を備えたエンジンの排ガス浄化装置の排ガス浄化方法において、
前記圧力損失推定手段によって推定された前記定格点における損失圧力が予め設定された強制再生閾値を超え且つエンジン性能上悪影響が生じるDPF許容値に達している場合には、前記DPFのメンテナンスを報知し、
前記圧力損失推定手段によって推定された前記定格点における損失圧力が、前記強制再生閾値を超え且つ前記DPF許容値に達していない場合には、前記オイルダイリューション量推定手段による推定オイルダイリューション量がオイルダイリューション許容閾値を超えるまでは強制再生を実施可能にし、超えた場合には前記メンテナンスを報知するように構成し、
さらに、前記推定オイルダイリューション量が第1オイルダイリューション閾値以下の場合には運転時強制再生を実行し、前記推定オイルダイリューション量が前記第1オイルダイリューション閾値より大きい前記オイルダイリューション許容閾値である第2オイルダイリューション閾値以下の場合には、停車時強制再生を実行し、前記第2オイルダイリューション閾値を超える場合には、強制再生を不許可としてさらに前記メンテナンスを報知し、前記第2オイルダイリューション閾値を超えるまで実行される強制再生を、前記DPFの圧力損失が前記DPF許容値に達する直前まで可能にすることを特徴とするエンジンの排ガス浄化方法。
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