上記の構成では、前後に近接配備した駆動軸と従動軸とにわたって、駆動軸に対する従動軸の先行回転を許容するワンウェイクラッチを構成することから、ワンウェイクラッチの断続作動を円滑にするためには、駆動軸の回転中心と従動軸の回転中心とを一致させる芯出し作業を行う必要がある。しかも、駆動軸においては、爪体の摺動を許容し、かつ、バネの嵌合装備を可能にするために、駆動軸を支持する軸支部から従動軸に向けて延出する後端部の延出長さを長くする必要があり、又、従動軸においては、爪体の摺動を許容するために、従動軸を支持する軸支部から駆動軸に向けて延出する前端部の延出長さを長くする必要がある。そのため、駆動軸の後端部と従動軸の前端部とにわたって装備するワンウェイクラッチを長期にわたって安定性良く支持することが難しくなっており、PTOクラッチに兼用することによって使用頻度が高くなるワンウェイクラッチの円滑な断続作動を長期にわたって安定して得られるようにする上において改善の余地がある。
本発明の目的は、伝動軸の芯出し作業を不要にしながら、ワンウェイクラッチの円滑な断続作動を長期にわたって安定して得られるようにすることにある。
本発明の課題解決手段は、
動力取り出し用のPTO軸に伝動するPTO伝動系に、従動側の先行回転を許容するワンウェイクラッチを備え、
前記ワンウェイクラッチを、第1爪クラッチ部材と、第2爪クラッチ部材と、それらのうちの一方を他方に対する噛合解除位置から噛合位置に復帰付勢する付勢手段とから構成し、
前記第1爪クラッチ部材と前記第2爪クラッチ部材のうちの一方を、他方の爪クラッチ部材との噛合を可能にする入り位置と、前記他方の爪クラッチ部材との噛合を阻止する切り位置とに、位置切り替え保持可能に構成し、
伝動軸に筒軸を相対回転可能に外嵌し、
前記第1爪クラッチ部材と前記第2爪クラッチ部材のうちの一方を前記伝動軸に配備し、他方を前記筒軸に配備して、前記ワンウェイクラッチを単一の前記伝動軸上に構成した。
この手段によると、ワンウェイクラッチを、PTOクラッチに兼用しながら、単一の伝動軸上に安定した状態で構成することができる。
これにより、PTO伝動系における部品点数の削減を図ることができる。又、例えば、前後に近接配備した前後の伝動軸にわたってワンウェイクラッチを構成する場合に比較して、前後の伝動軸の回転中心を一致させる芯出し作業などを不要にしながら、PTOクラッチに兼用することによって使用頻度が高くなるワンウェイクラッチの断続操作を、長期にわたって安定した状態で円滑に行うことができる。
従って、ワンウェイクラッチをPTOクラッチに兼用することにより、部品点数の削減による構成の簡素化や組み付け性の向上などを図りながら、ワンウェイクラッチを、その断続操作を長期にわたって安定した状態で円滑に行うことができる信頼性の高いものに構成することができる。
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、
前記筒軸に、作業動力取り出し用の伝動ギヤを前記筒軸と一体回転する状態で備えた。
この手段によると、伝動軸を、PTO軸と同軸心上に配備した状態でPTO軸に連動連結することができ、又、伝動軸をPTO軸に兼用することも可能になる。
つまり、例えば、伝動軸に作業動力取り出し用の伝動ギヤを伝動軸と一体回転する状態で備えた場合、伝動軸に外嵌する筒軸からPTO軸への伝動を、それらに一体回転する状態で備えた中継ギヤなどを介して行うように構成する必要が生じるが、上記の手段を採用することにより、中継ギヤなどを不要にすることができる。
従って、PTO伝動系における部品点数の削減による構成の簡素化や組み付け性の向上などを更に図ることができる。
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、
前記伝動軸に、前記第2爪クラッチ部材を前記伝動軸と一体回転する状態で相対摺動可能に外嵌するとともに、前記筒軸を相対摺動不能に外嵌し、
前記筒軸に、前記第1爪クラッチ部材を前記筒軸と一体回転する状態で相対摺動可能に外嵌するとともに、前記伝動ギヤを相対摺動不能に外嵌し、
前記付勢手段として圧縮バネを採用するとともに、前記圧縮バネを前記第1爪クラッチ部材と前記伝動ギヤとの間に位置する状態で前記筒軸に外嵌して、
前記第1爪クラッチ部材を前記圧縮バネによって前記噛合位置に復帰付勢するように構成し、かつ、前記第2爪クラッチ部材を前記入り位置と前記切り位置とに位置切り替え保持可能に構成した。
この手段によると、筒軸に伝動ギヤと圧縮バネと第1爪クラッチ部材とを外嵌することにより、それらをPTO伝動系の駆動側伝動部としてユニット化した状態で伝動軸に外嵌することができる。
従って、PTO伝動系の組み付け性を更に向上させることができる。
尚、この手段では、第1爪クラッチ部材と第2爪クラッチ部材と圧縮バネにより、筒軸(駆動側)に対する伝動軸(従動側)の先行回転を許容するワンウェイクラッチを構成し、第1爪クラッチ部材と第2爪クラッチ部材により、筒軸(駆動側)から伝動軸(従動側)への伝動を断続するPTOクラッチを構成している。
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、
前記伝動軸に、前記第2爪クラッチ部材を前記伝動軸と一体回転する状態で相対摺動可能に外嵌するとともに、前記筒軸を相対摺動可能に外嵌し、
前記筒軸に前記第1爪クラッチ部材と前記伝動ギヤとを一体形成し、
前記付勢手段として圧縮バネを採用するとともに、前記圧縮バネを前記伝動軸における前記筒軸を挟んだ前記第2爪クラッチ部材との反対側の位置に外嵌して、
前記第1爪クラッチ部材を前記圧縮バネによって前記噛合位置に復帰付勢するように構成し、かつ、前記第2爪クラッチ部材を前記入り位置と前記切り位置とに位置切り替え保持可能に構成し、
前記第1爪クラッチ部材の前記噛合位置と前記噛合解除位置とにわたる摺動にかかわらず、前記伝動ギヤが伝動状態を維持するように構成した。
この手段によると、筒軸に第1爪クラッチ部材と伝動ギヤとを一体形成することにより、PTO伝動系における部品点数の削減を更に図ることができ、これにより、構成の簡素化や組み付け性の向上などを更に図ることができる。
又、第1爪クラッチ部材の噛合解除位置への摺動に伴って、伝動ギヤが駆動側の伝動ギヤとの噛合を解除することを防止することができ、これにより、伝動ギヤが駆動側の伝動ギヤとの噛合を解除することに起因して、第1爪クラッチ部材の噛合解除位置から噛合位置への摺動が行われ難くなる虞を回避することができる。
尚、この手段では、筒軸と伝動ギヤと第1爪クラッチ部材と第2爪クラッチ部材と圧縮バネにより、筒軸(駆動側)に対する伝動軸(従動側)の先行回転を許容するワンウェイクラッチを構成し、第1爪クラッチ部材と第2爪クラッチ部材により、筒軸(駆動側)から伝動軸(従動側)への伝動を断続するPTOクラッチを構成している。
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、
前記伝動軸に、前記第2爪クラッチ部材を前記伝動軸と一体回転する状態で相対摺動不能に外嵌するとともに、前記筒軸を相対摺動可能に外嵌し、
前記筒軸に、前記第1爪クラッチ部材を前記筒軸と一体回転する状態で相対摺動可能に外嵌するとともに、前記伝動ギヤを一体形成し、
前記付勢手段として圧縮バネを採用するとともに、前記圧縮バネを前記第1爪クラッチ部材と前記伝動ギヤとの間に位置する状態で前記筒軸に外嵌して、
前記第1爪クラッチ部材を前記圧縮バネによって前記噛合位置に復帰付勢するように構成し、かつ、前記第1爪クラッチ部材を前記入り位置と前記切り位置とに位置切り替え保持可能に構成し、
前記第1爪クラッチ部材の前記入り位置と前記切り位置とにわたる摺動にかかわらず、前記伝動ギヤが伝動状態を維持するように構成した。
この手段によると、筒軸に伝動ギヤを一体形成することによってPTO伝動系における部品点数の削減を更に図ることができ、又、その筒軸に圧縮バネと第1爪クラッチ部材とを外嵌することにより、それらをPTO伝動系の駆動側伝動部としてユニット化した状態で伝動軸に外嵌することができる。
又、第1爪クラッチ部材の切り位置への摺動に伴って、伝動ギヤが駆動側の伝動ギヤとの噛合を解除することを防止することができ、これにより、伝動ギヤが駆動側の伝動ギヤとの噛合を解除することに起因して、第1爪クラッチ部材の切り位置から入り位置への摺動が行われ難くなる虞を回避することができる。
従って、PTO伝動系における部品点数の削減やユニット化による構成の簡素化や組み付け性の向上などを更に図ることができる。
尚、この手段では、第1爪クラッチ部材と第2爪クラッチ部材と圧縮バネにより、筒軸(駆動側)に対する伝動軸(従動側)の先行回転を許容するワンウェイクラッチを構成し、筒軸と伝動ギヤと圧縮バネと第1爪クラッチ部材と第2爪クラッチ部材により、筒軸(駆動側)から伝動軸(従動側)への伝動を断続するPTOクラッチを構成している。
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、
トランスミッションケースの内部に、変速装置を収容する第1収容空間と前後進切替装置を収容する第2収容空間とを前後に形成し、
前記第1収容空間に前記ワンウェイクラッチを収容した。
この手段によると、後進用の伝動軸を備えることによって変速装置よりも軸数の多い前後進切替装置を収容する前後進切替装置収容空間にワンウェイクラッチを配備する場合に比較して、ミッションケースの小型化、及び、PTO伝動系の組み付け性の向上などを図ることができる。
以下、本発明を実施するための形態の一例として、本発明に係る作業車のPTO伝動構造を、作業車の一例であるトラクタに適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態で例示するトラクタは、車体フレーム11の前半部に水冷式のエンジン14などを配備し、車体フレーム11の後半部に搭乗運転部29を形成している。そして、エンジン14の左右に駆動可能な操舵輪としての前輪27を配備し、搭乗運転部29の左右に制動可能な駆動輪としての後輪24を配備して、4輪駆動型に構成している。
車体フレーム11は、エンジン14の下部に、その下部から前方に向けて延出するように前フレーム部材26を連結し、エンジン14の後下部に、エンジン14の後下部から後方に向けて延出するようにハウジングフレーム13を連結して構成している。前フレーム部材26には、左右の前輪27を前車軸(図示せず)などを介して駆動可能かつ操舵可能に支持する前車軸ケース28をローリング可能に装備している。
図1〜5に示すように、搭乗運転部29は、板金製の搭乗ステップ23、位置調節可能な運転座席30、前輪操舵用のステアリングホイール32、及び、エンジン回転数調節用のアクセルペダル64、などを配備して構成している。ステアリングホイール32は、ステアリング軸36及びパワーステアリング機構などを介して左右の前輪27に連係している。つまり、ステアリングホイール32、ステアリング軸36、及び、パワーステアリング機構、などによって、前輪操舵用の操作手段33を構成している。ステアリング軸36は、搭乗運転部29の前端箇所に後傾姿勢で備えたステアリングポスト31に挿通している。ステアリングポスト31は、車体フレーム1に後傾姿勢で立設した前後方向視が略門型の支持部材38の上端に立設している。
図1、図6及び図7に示すように、ハウジングフレーム13は、前ケース部15と中間ケース部16と後ケース部17とに分割可能な3分割構造に構成している。そして、それらのうちの中間ケース部16と後ケース部17とからトランスミッションケース(以下、ミッションケースと称する)12を構成している。後ケース部17には、トラクタの後部に連結するロータリ耕耘装置やプラウなどの作業装置(図示せず)の昇降操作を可能にする左右一対のリフトアーム2、左右のリフトアーム2を上下方向に揺動駆動する油圧式のリフトシリンダ3、及び、トラクタの後部にロータリ耕耘装置などの駆動型の作業装置を連結した場合に作業装置への作業用動力の取り出しを可能にするPTO軸25、などを装備している。
エンジン14からの動力は、乾式の単板クラッチからなる主クラッチ18を経由した後、走行伝動系4とPTO伝動系5とに分配供給している。そして、走行伝動系4を経由する走行用の動力を左右の前輪27及び左右の後輪24に伝達している。又、PTO伝動系5を経由する作業用の動力をPTO軸25に伝達している。
走行伝動系4には、エンジン14からの動力を4段に変速可能に構成したスライディングメッシュ式の主変速装置19、主変速装置19による変速後の動力を前進用と後進用とに切り換え可能に構成したシンクロメッシュ式の前後進切替装置20、前後進切替装置20による前後進切り替え後の動力を高低2段に変速可能に構成したスライディングメッシュ式の副変速装置21、左右の後輪24の差動を許容しながら副変速装置21による変速後の動力を左右の後輪24に伝達する後輪用差動装置6、副変速装置21による変速後の動力から前輪駆動用の動力を取り出すギヤユニット7、及び、左右の前輪27の差動を許容しながらギヤユニット7からの動力を左右の前輪27に伝達する前輪用差動装置8、などを備えている。
図1〜7に示すように、主クラッチ18は、搭乗運転部29の左足元箇所に配備したクラッチペダル45の踏み込み操作に連動して、エンジン14からの動力を第1伝動軸70に伝達する入り状態から、その伝動を遮断する切り状態に切り替わり、クラッチペダル45の踏み込み解除操作に連動して切り状態から入り状態に切り替わるように構成している。
主変速装置19は、その入力軸を兼ねる第1伝動軸70、第1伝動軸70の後端部に一体形成した第1駆動ギヤ71、第1伝動軸70における第1駆動ギヤ71の前方箇所に一体形成した第2駆動ギヤ72、第1伝動軸70における第2駆動ギヤ72の前方箇所にスプライン嵌合した第3駆動ギヤ73、第1伝動軸70における第3駆動ギヤ73の前方箇所にスプライン嵌合した第4駆動ギヤ74、第1伝動軸70の上方に第1伝動軸70と平行に配置した第2伝動軸75、第2伝動軸75にスプライン嵌合した拡径用の筒軸76、第1駆動ギヤ71と噛合する状態で第2伝動軸75に相対回転可能に外嵌した第1従動ギヤ77、筒軸76の後半部に摺動可能にスプライン嵌合した第2従動ギヤ78、筒軸76の前半部に摺動可能にスプライン嵌合した第3従動ギヤ79、及び、第4駆動ギヤ74と噛合する状態で第2伝動軸75に相対回転可能に外嵌した第4従動ギヤ80、などを備えている。
第2従動ギヤ78は、第1従動ギヤ77にスプライン嵌合する1速位置と第2駆動ギヤ72に噛合する2速位置とにわたって摺動する。第3従動ギヤ79は、第3駆動ギヤ73に噛合する3速位置と第4従動ギヤ80にスプライン嵌合する4速位置とにわたって摺動する。第2従動ギヤ78及び第3従動ギヤ79は、搭乗運転部29におけるステアリングポスト31の後方箇所に配備した主変速レバー41の左右方向への揺動操作に連動して、第2従動ギヤ78が主変速レバー41に連係する第1連係状態と、第3従動ギヤ79が主変速レバー41に連係する第2連係状態とに切り替わる。そして、第1連係状態では、主変速レバー41の前後方向への揺動操作に連動して、第2従動ギヤ78が1速位置と2速位置とにわたって摺動する。第2連係状態では、主変速レバー41の前後方向への揺動操作に連動して、第3従動ギヤ79が3速位置と4速位置とにわたって摺動する。
つまり、主変速装置19は、主変速レバー41の揺動操作に連動して、第1伝動軸70に伝達された動力を、第1駆動ギヤ71と第1従動ギヤ77と第2従動ギヤ78と筒軸76とを介して第2伝動軸75に伝達する第1変速状態、第2駆動ギヤ72と第2従動ギヤ78と筒軸76とを介して第2伝動軸75に伝達する第2変速状態、第3駆動ギヤ73と第3従動ギヤ79と筒軸76とを介して第2伝動軸75に伝達する第3変速状態、又は、第4駆動ギヤ74と第4従動ギヤ80と第3従動ギヤ79と筒軸76とを介して第2伝動軸75に伝達する第4変速状態に切り替わるように構成している。
前後進切替装置20は、前後進切替装置20の入力軸を兼ねる第3伝動軸81、第3伝動軸81の前部側に相対回転可能に外嵌した後進用駆動ギヤ82、第3伝動軸81の後部側に相対回転可能に外嵌した前進用駆動ギヤ83、第3伝動軸81における後進用駆動ギヤ82と前進用駆動ギヤ83との間に介装したシンクロメッシュ式のシフト機構84、第3伝動軸81の上方に第3伝動軸81と平行に配置した第4伝動軸85、後進用駆動ギヤ82と隣接するように第4伝動軸85の前部側に一体形成した後進用従動ギヤ86、前進用駆動ギヤ83と噛合するように第4伝動軸85の後部側に一体形成した前進用従動ギヤ87、第3伝動軸81の下方に第3伝動軸81と平行に配置した後進用中継軸88、及び、後進用駆動ギヤ82と後進用従動ギヤ86とに噛合するように後進用中継軸88に一体形成した後進ギヤ89、などを備えている。
第3伝動軸81は、主変速装置19の出力軸を兼ねる第2伝動軸75に一対の中継ギヤ90,91を介して連動連結している。シフト機構84は、搭乗運転部29におけるステアリングポスト31の左方箇所に配備した前後進切替レバー39の前後方向への揺動操作に連動して、第3伝動軸81を後進用駆動ギヤ82に連動連結する状態と前進用駆動ギヤ83に連動連結する状態とに切り替わるように構成している。
つまり、前後進切替装置20は、前後進切替レバー39の前後方向への揺動操作に連動して、第3伝動軸81に伝達された動力を、後進用駆動ギヤ82と後進ギヤ89と後進用従動ギヤ86とを介して第4伝動軸85に伝達する後進伝動状態、又は、前進用駆動ギヤ83と前進用従動ギヤ87とを介して第4伝動軸85に伝達する前進伝動状態に切り替わるように構成している。
副変速装置21は、副変速装置21の入力軸を兼ねる第5伝動軸92、第5伝動軸92の前部側に一体形成した低速駆動ギヤ93、第5伝動軸92の後部側に一体形成した高速駆動ギヤ94、第5伝動軸92の下方に第5伝動軸92と平行に配置した第6伝動軸95、第6伝動軸95に摺動可能に外嵌したシフト部材96、低速駆動ギヤ93と噛合可能にシフト部材96の前端部に一体形成した低速従動ギヤ97、及び、高速駆動ギヤ94と噛合可能にシフト部材96の後端部に一体形成した高速従動ギヤ98、などを備えている。
第5伝動軸92は、前後進切替装置20の出力軸を兼ねる第4伝動軸85にカップリング99を介して連動連結している。シフト部材96は、搭乗運転部29における運転座席30の左方箇所に配備した副変速レバー104の前後方向への揺動操作に連動して、低速駆動ギヤ93に低速従動ギヤ97を噛合する状態と高速駆動ギヤ94に高速従動ギヤ98を噛合する状態とに切り替わるように構成している。
つまり、副変速装置21は、副変速レバー104の前後方向への揺動操作に連動して、第5伝動軸92に伝達された動力を、低速駆動ギヤ93と低速従動ギヤ97とを介して第6伝動軸95に伝達する低速伝動状態、又は、高速駆動ギヤ94と高速従動ギヤ98とを介して第6伝動軸95に伝達する高速伝動状態に切り替わるように構成している。
図6及び図7に示すように、ハウジングフレーム13は、その内部における前ケース部15と中間ケース部16の前端部分とにわたる前端箇所に、主クラッチ18を収容する主クラッチ収容空間65を形成している。又、その内部における主クラッチ収容空間65の後方箇所となる中間ケース部16の前半部分に、主変速装置19を収容する第1収容空間としての主変速装置収容空間66を形成し、かつ、その内部における主変速装置収容空間66の後方箇所となる中間ケース部16の後半部分に、前後進切替装置20を収容する第2収容空間としての前後進切替装置収容空間67を形成している。そして、その内部における前後進切替装置収容空間67の後方箇所となる後ケース部17の前半部分に、副変速装置21を収容する副変速装置収容空間68を形成し、かつ、その内部における副変速装置収容空間68の後方箇所となる後ケース部17の後半部分に、後輪用差動装置6を収容する後輪用差動装置収容空間69を形成している。
図1〜7に示すように、中間ケース部16の上部には、主変速装置収容空間66の開放を可能にする蓋部材9を着脱可能にボルト連結している。蓋部材9の左前端部の左右中央箇所には、主変速レバー41を揺動可能に支持するレバー支持部42を上向きに膨出形成している。
図1〜5に示すように、搭乗ステップ23は、ミッションケース12の中間ケース部16を上方から覆うカバーを兼ねる板金製のセンタステップ部43と、このセンタステップ部43から左右に延出する板金製の左右のサイドステップ部44とから構成している。センタステップ部43は、中間ケース部16におけるレバー支持部42よりも後側部分を上方から覆う前後長さを有する状態で、その左右幅が中間ケース部16の左右幅よりも幅広になるように逆U字状に屈曲形成している。そして、その左下端部分の内面には、中間ケース部16の左側面との間に空間を確保するための円筒状の前後一対のスペーサ57を溶接している。又、その右側面には、横向きU字状に屈曲形成した板金製のレバーガイド61を溶接している。左側のサイドステップ部44は、中間ケース部16の上下中間部に位置するように、前後のスペーサ57を利用してセンタステップ部43とともに中間ケース部16の左側壁にボルト連結している。右側のサイドステップ部44は、中間ケース部16の上下中間部に位置するように、センタステップ部43とともに中間ケース部16の右側壁にボルト連結している。そして、中間ケース部16にセンタステップ部43及び左右のサイドステップ部44をボルト連結した状態では、中間ケース部16の上面とセンタステップ部43との間、及び、中間ケース部16の左側面とセンタステップ部43との間のそれぞれに所定の空間を確保することができ、又、左右のサイドステップ部44が同じ高さ位置に位置するように構成している。センタステップ部43における天板部分の右後端箇所には、中間ケース部16の右後端上部に備えたオイルゲージ(図示せず)の抜き差しを許容する切欠部58を形成している。
ステアリングホイール32などを支持する略門型の支持部材38は、その後方側を開放する形状に形成されており、中間ケース部16における蓋部材9よりも前側の前端部分にボルト連結している。支持部材38は、ハウジングフレーム13の前部に立設されており、ステアリングホイール32の他に、前後進切替レバー39を上方側に突出させて支持している。支持部材38における左側壁部38Aの内面側には、筒状の軸支部48を、支持部材38に略沿った後傾姿勢で左側壁部38Aとパワーステアリング機構のコントロールユニット37との間に位置するように固定装備している。又、左側壁部38Aの上端部には、前後進切替レバー39のレバーガイドを兼ねる軸支部材47をボルト連結している。
前後進切替レバー39は、中間ケース部16における左側壁の後側部位から左方に突出する前後進切替装置20の操作軸35に、前後進切り替え用の連係機構46を介して連係している。このように、操作軸35は、支持部材38よりも後方側のハウジングフレーム13の側部に備えられている。そして、連係機構46は、支持部材38に支持された前後進切替レバー39による操作力を、支持部材38の後方に配置された操作軸35に入力するように、前後進切替レバー39と操作軸35を連係している。連係機構46は、L字状に屈曲形成した第1連係ロッド49、長さ調節可能なターンバックル式でクランク状に屈曲形成した第2連係ロッド50、及び、中間ケース部16の左側面とセンタステップ部43との間に位置するように操作軸35の突出端部に固定装備した操作アーム55、などを備えている。
第1連係ロッド49は、その縦軸部56の下部側を支持部材38の軸支部48に回転可能に内嵌し、かつ、摺動不能にピン固定している。又、縦軸部56の上部側を、支持部材38及び軸支部材47に形成した挿通孔に挿通し、かつ、軸支部材47に軸受部材62を介して回転可能かつ摺動不能に連結している。そして、縦軸部56の上端部分に、その上端部分から左方に延出する状態で前後進切替レバー39を上下揺動可能に連結している。又、縦軸部56の下端部分から支持部材38の右側壁部38Cに向けて延出するアーム部51の延出端に、第2連係ロッド50の前端部を枢支連結している。つまり、第1連係ロッド49には、支持部材38の内部において、前後進切替レバー39に連結されて上方側から下方側に向けて延出されており、その下端部において第2連係ロッド50に連結されている。
第2連係ロッド50は、第1連係ロッド49と直交する後下がり傾斜姿勢で第1連係ロッド49のアーム部51と操作アーム55とにわたって架設している。そして、その架設状態では、その前後向きの前側部分52が、支持部材38における左右の側壁部38A,38Cの間の後方側の空間部38Bから中間ケース部16の上方におけるレバー支持部42の右側方を通り、斜め向きの中間部分54が、中間ケース部16の上面とセンタステップ部43との間を通り、前後向きの後側部分53が、中間ケース部16の左側面とセンタステップ部43との間を通るように構成している。このように、第2連係ロッド50は、センタステップ部43にて覆われるようにハウジングフレーム13の上部及び側部に沿わせて配設されている。そして、第2連係ロッド50は、支持部材29に孔部等の加工をせずに、支持部材29の後方側の空間部38Bを通して延設されており、第1連係ロッド49と第2連係ロッド50の連結部が、ハウジングフレーム13における上部右側部分に位置していることから、ハウジングフレーム13における上部左側部分に位置しているレバー支持部42を迂回して第2連係ロッド50を配設し易い。また、第2連係ロッド50は、前後向きの前側部分52と、前後方向に対して傾斜する斜め向きの中間部分54と、前後向きの後側部分53とを備えていることから、単純な形状の前後向きの部分を多く有しながら、第1連係ロッド49から操作軸35に至る連係ロッドの配索距離を短くできる。
つまり、前後進切り替え用の連係機構46は、略門型の支持部材38における左右の側壁部38A,38Cの間に確保した空間、及び、中間ケース部16とセンタステップ部43との間に確保した空間を利用して、前後進切替レバー39と前後進切替装置20の操作軸35とにわたるように構成している。
前後進切替レバー39には、軸支部材47に第1連係ロッド49の縦軸部56を中心とする円弧状に形成したガイド孔47Aに係入するガイド杆40を備えている。軸支部材47には、ガイド杆40との係合による前後進切替レバー39の中立位置での係止保持を可能にする凹部47Bを、ガイド孔の前後中間箇所に連通させた状態で形成している。前後進切り替え用の連係機構46には、ガイド杆40を凹部47Bに係合付勢するねじりバネ63を備えている。
上記の構成から、前後進切替レバー39をねじりバネ63の作用によって凹部47Bに係合することにより、前後進切替レバー39を中立位置に係合保持することができ、これにより、前後進切替装置20を中立状態に維持して、主変速装置19から左右の前輪27及び左右の後輪24への伝動を遮断することができる。この状態から、前後進切替レバー39をねじりバネ63の作用に抗する方向(上方)に揺動操作して、ガイド杆40の凹部47Bとの係合を解除することにより、前後進切替レバー39の前後進切り替え方向(前後方向)への揺動操作を可能にすることができる。そして、前後進切替レバー39を前後進切り替え方向に揺動操作することにより、前後進切替装置20を前進伝動状態と後進伝動状態とに切り替えることができ、走行状態を前進状態と後進状態とに切り替えることができる。
つまり、前後進切替レバー39及び前後進切り替え用の連係機構46により、搭乗運転部29からの前後進切替装置20の操作を可能にする前後進切り替え用の操作手段34を構成している。
図1〜3及び図5に示すように、中間ケース部16とセンタステップ部43との間の空間には、前後進切り替え用の連係機構46の第2連係ロッド50とともに、トラクタに備えた、例えばエンジン回転数を検出する回転数センサ(図示せず)などの各種の検出器(図示せず)、搭乗運転部29に備えた表示パネル10や各種の設定器(図示せず)、及び、トラクタに搭載した制御ユニット(図示せず)、などを通信可能に接続する信号線などを束ねたワイヤハーネス59を通している。つまり、ワイヤハーネス59が、第2連係ロッド50とは別に、ハウジングフレーム13の前方側から後方側に向けて延ばされて備えられている。ワイヤハーネス59は、センタステップ部43にて覆われるようにハウジングフレーム13の上部に沿わせて配設されている。このように、中間ケース部16とセンタステップ部43との間の空間を、前後進切り替え用の連係機構46やワイヤハーネス59などを配索する配索空間に有効利用している。
図1〜6に示すように、中間ケース部16における左側壁の前後中間箇所には、クラッチペダル45を上下揺動可能に支持する左右向きの支軸100を装備している。クラッチペダル45は、支軸100に装着した状態では、その揺動始端側が左側のサイドステップ部44の下方を通って左側のサイドステップ部44の前方に向かう状態になり、その遊端側が左側のサイドステップ部44の前方から左側のサイドステップ部44の前端部上方に向かう状態になるように、横向きV字状に屈曲形成している。そして、その揺動支点部に一体装備した連係アーム101を、中間ケース部16における左側壁の前端部位から左方に突出する主クラッチ18の操作軸102に、左側のサイドステップ部44の下方に位置するように操作軸102の突出端部に固定装備した操作アーム(図示せず)と、左側のサイドステップ部44の下方に位置する状態で連係アーム101と操作アームとにわたって架設した連係ロッド103とを介して連係している。
図1及び図6〜8に示すように、PTO伝動系5は、第1伝動軸70の第1駆動ギヤ71に噛合する作業動力取り出し用の伝動ギヤ105、伝動ギヤ105にスプライン嵌合した筒軸106、筒軸106を相対回転可能かつ摺動不能に支持する状態で外嵌装備した伝動軸107、筒軸106に対する伝動軸107の先行回転を許容する状態で筒軸106と伝動軸107とを連動連結するワンウェイクラッチ108、及び、伝動軸107をPTO軸25に連動連結する中継軸109と一対のカップリング110、などを備えている。
ワンウェイクラッチ108は、筒軸106に摺動可能にスプライン嵌合した第1爪クラッチ部材111、伝動軸107に摺動可能にスプライン嵌合した第2爪クラッチ部材112、及び、第1爪クラッチ部材111を第2爪クラッチ部材112との噛合を解除する噛合解除位置から第2爪クラッチ部材112に噛合する噛合位置に復帰付勢する付勢手段としての圧縮バネ113、などを備えて構成している。
上記の構成から、筒軸106に伝動ギヤ105と圧縮バネ113と第1爪クラッチ部材111とを外嵌することにより、それらをPTO伝動系5の駆動側伝動部としてユニット化した状態で伝動軸107に外嵌することができ、これにより、PTO伝動系5の組み付け性を向上させることができる。
第1爪クラッチ部材111及び第2爪クラッチ部材112は、作業走行中の減速操作などに起因して作業装置の慣性による逆駆動状態が生じた場合に、第1爪クラッチ部材111の各噛合爪114に形成した乗上案内面115に、第2爪クラッチ部材112の各噛合爪116に形成した乗上面117が乗り上がることにより、圧縮バネ113の作用に抗して第2爪クラッチ部材112を噛合位置から噛合解除位置に摺動変位させて、第1爪クラッチ部材111に対する第2爪クラッチ部材112の先行回転を許容する乗り上げカム式に構成している。
上記の構成により、例えば、走行しながらPTO軸25から取り出した動力によって作業装置を駆動する作業走行中に、アクセルペダル64による減速操作などを行った場合に、その減速操作などにかかわらず、作業装置の慣性により、PTO軸25及び伝動軸107などとともに筒軸106及び第1伝動軸70が逆駆動状態で回転することに起因して車速が低下しない、などの不都合が生じる虞を回避するように構成している。
図1〜5に示すように、搭乗運転部29における足元箇所の左右中央側にはPTOレバー60を前後揺動可能に配備している。PTOレバー60は、センタステップ部43のレバーガイド61との係合による入り位置及び切り位置での位置保持が可能となるように構成している。そして、PTO動力断続用の連係機構(図示せず)を介してワンウェイクラッチ108の第2爪クラッチ部材112に連係している。第2爪クラッチ部材112は、PTOレバー60の前後方向への揺動操作に連動して、第1爪クラッチ部材111との噛合を可能にする入り位置と、第1爪クラッチ部材111との噛合を阻止する切り位置とにわたって摺動する。
図示は省略するが、PTO動力断続用の連係機構は、PTOレバー60揺動支点部に一体装備した連係アームを、第2爪クラッチ部材112に係合したシフトフォークに、中間ケース部16における右側壁の下側部位から右方に突出するシフトフォークの操作軸に固定装備した操作アームと、連係アームと操作アームとにわたって架設した連係ロッドとを介して連係するように構成している。
つまり、ワンウェイクラッチの第2爪クラッチ部材112は、PTOレバー60の操作による入り位置(図8中実線にて示す位置)と切り位置(図8中二点鎖線にて示す位置)との位置切り替え保持が可能となるように構成している。その結果、ワンウェイクラッチを、PTOレバー60の操作によって、エンジン14からPTO軸25に伝動する伝動状態とエンジン14からPTO軸25への伝動を遮断する遮断状態とに切り替え可能なPTOクラッチとして機能させることができる。これにより、専用のPTOクラッチを備える場合に比較してPTO伝動系5の構成を簡素化することができ、PTO伝動系5の組み付け性の向上、及び、ミッションケース12の小型化などを図ることができる。
図6及び図8に示すように、PTO伝動系5の伝動軸107は、ミッションケース12において、主クラッチ収容空間65と主変速装置収容空間66とを区画する第1隔壁118、及び、主変速装置収容空間66と前後進切替装置収容空間67とを区画する第2隔壁119に、ベアリング120を介して回転可能に支持している。そして、その伝動軸107において、第1隔壁118と第2隔壁119との間に位置する両持ち支持部121に、筒軸106と第2爪クラッチ部材112とを外嵌し、筒軸106に伝動ギヤ105と第1爪クラッチ部材111と圧縮バネ113とを外嵌することにより、伝動軸107における両持ち支持部121の軸上にワンウェイクラッチ108を構成している。そして、ワンウェイクラッチ108は、主変速装置収容空間66における第2駆動ギヤ72及び第3駆動ギヤ73の下方の領域に配備している。
つまり、単一の伝動軸107における、この伝動軸107を支持する第1隔壁118と第2隔壁119との間に位置する両持ち支持部121の軸上にワンウェイクラッチ108を装備したことにより、例えば、前後に近接配備した前後の伝動軸にわたるようにワンウェイクラッチ108を構成する場合に比較して、前後の伝動軸の回転中心を一致させる芯出し作業などを不要にしながら、ワンウェイクラッチ108の断続操作を長期にわたって安定した状態で円滑に行うことができる。又、主変速装置19よりも軸数の多い前後進切替装置20を収容する前後進切替装置収容空間67にワンウェイクラッチ108を配備する場合、及び、第2駆動ギヤ72及び第3駆動ギヤ73よりも大径の第4駆動ギヤ74の下方の位置にワンウェイクラッチ108を配備する場合に比較して、ミッションケース12の小型化、及び、PTO伝動系5の組み付け性の向上などを図ることができる。
〔別実施形態〕
〔1〕作業車としては、乗用草刈機、乗用田植機、ホイールローダ、などであってもよい。
〔2〕PTO伝動系5としては、PTO軸25が車速(変速装置による変速後の動力)と連動するように構成したものであってもよい。又、エンジン回転数に連動するPTO軸25と車速に連動するPTO軸25とを備えるように構成したものであってもよい。
〔3〕ワンウェイクラッチ108としては、PTOクラッチとしての作動状態の切り替えを油圧又は電動で行うように構成したものであってもよい。
〔4〕図9に示すように、ワンウェイクラッチ108としては、伝動軸107に、第2爪クラッチ部材112を相対摺動可能にスプライン嵌合するとともに、筒軸106を相対回転可能かつ相対摺動可能に外嵌する。又、筒軸106に第1爪クラッチ部材111と伝動ギヤ105とを一体形成し、圧縮バネ113を伝動軸107における筒軸106の後側(筒軸106を挟んだ第2爪クラッチ部材112との反対側)の位置に外嵌する。そして、第2爪クラッチ部材112をPTOレバー60に連係することにより、第1爪クラッチ部材111を圧縮バネ113によって噛合位置に復帰付勢するように構成し、かつ、PTOレバー60の操作による第2爪クラッチ部材112の入り位置と切り位置との位置切り替え保持が可能となるように構成したものであってもよい。尚、この構成においては、第1爪クラッチ部材111の噛合位置と噛合解除位置とにわたる摺動変位にかかわらず、伝動ギヤ105が伝動状態を維持するように、伝動ギヤ105を幅広に形成している。
〔5〕図10に示すように、ワンウェイクラッチ108としては、伝動軸107に、第2爪クラッチ部材112を相対摺動不能にスプライン嵌合するとともに、筒軸106を相対回転可能かつ相対摺動可能に外嵌する。又、筒軸106に、第1爪クラッチ部材111を相対摺動可能にスプライン嵌合するとともに、伝動ギヤ105を一体形成し、圧縮バネ113を第1爪クラッチ部材111と伝動ギヤ105との間に位置する状態で筒軸106に外嵌する。そして、筒軸106をPTOレバー60に連係することにより、第1爪クラッチ部材111を圧縮バネ113によって噛合位置に復帰付勢するように構成し、かつ、PTOレバー60の操作による第1爪クラッチ部材111の入り位置と切り位置との位置切り替え保持が可能となるように構成したものであってもよい。尚、この構成においては、第1爪クラッチ部材111の噛合位置と噛合解除位置とにわたる摺動変位にかかわらず、伝動ギヤ105が伝動状態を維持するように、伝動ギヤ105を幅広に形成している。
〔6〕図11に示すように、ワンウェイクラッチ108としては、伝動軸107に、伝動ギヤ105及び第1爪クラッチ部材111を一体形成した第1筒軸(筒軸106)を相対回転可能かつ相対摺動不能に外嵌するとともに、第2筒軸122を相対摺動可能にスプライン嵌合する。又、第2筒軸122に、第2爪クラッチ部材112を相対摺動可能にスプライン嵌合するとともに、圧縮バネ113を第2爪クラッチ部材112と第2筒軸122の前端部との間に位置する状態で外嵌する。そして、第2筒軸122をPTOレバー60に連係することにより、第2爪クラッチ部材112を圧縮バネ113によって噛合位置に復帰付勢するように構成し、かつ、PTOレバー60の操作による第2爪クラッチ部材112の入り位置と切り位置との位置切り替え保持が可能となるように構成したものであってもよい。
〔7〕ワンウェイクラッチを、副変速装置収容空間68に配備するように構成してもよい。