JP4167329B2 - 乗用管理機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、三輪型乗用管理機のPTO軸または前輪の変速機構に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、前後方向に機体フレームを配置し、該機体フレームの前部には操向及び駆動が可能な前輪を一輪配し、後部には駆動可能な後輪を二輪配して三輪駆動式とし、更に、該前輪と後輪との間の腹部には作業機を作業機装着装置を用いて吊設し、機体フレーム後部に載置した運転席に搭乗して管理作業を行うようにした乗用管理機は公知となっている。この乗用管理機において、従来のPTO軸は、ロータリー耕耘のような定回転作業用としてエンジンの動力をそのまま伝達する定回転PTO軸と、播種、施肥のような車速同調作業用として変速後の動力を伝達する車速同調PTO軸の2本から構成され、ミッションケースから突出されていた。また、この乗用管理機では、前記機体フレームの前部に固設したフロントケースの下部に、前輪を支持する支持部材を回動可能に設け、旋回時にはハンドル操作で操向輪である前輪を左右方向に回動させると同時に、後二輪のうちの旋回内側車輪のサイドクラッチを切り、旋回外側車輪を駆動して旋回を行っていた。すなわち、前記支持部材にカムを固設して前輪と一緒に回動するようにし、該カムの回動軌跡上にはカムフォロアを配置し、該カムフォロアは後二輪にそれぞれ設けたサイドクラッチにワイヤを介して連動連結しており、ハンドルの回動によりカムが回動され、カムフォロアを回動し、その回動によってワイヤを牽引してサイドクラッチを切るように構成していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ミッドマウント作業では、地上高さを高く取り、かつ運転席から作業部のある前下方の視野を広くして死角を少なくするために、前輪駆動軸や前記複数のPTO軸等が狭いスペースに交錯して配置されており、性能の安定性や製造ラインでの組立性の面で好ましくない、という問題があった。さらに、前記PTO軸は作業機の種類により変える必要があるため、作業機毎に取り出し位置が異なり、作業機の着脱作業が煩雑になる、という問題もあった。また、従来のサイドクラッチ機構では、サイドクラッチの切れた後二輪の旋回内側車輪を中心にして機体が旋回するが、この際、前輪は後二輪の旋回外側車輪よりも旋回半径が大きくなるため周速が増し、タイヤがスリップしながら外方に横滑りする形で旋回して土寄せが発生し圃場を荒らす、という問題があった。本発明は、前記の点に鑑み、機体の組立性、性能の安定性、及び作業機の着脱性に優れ、圃場の荒れも防止可能な乗用管理機を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次に該課題を解決するための手段を説明する。
請求項1においては、機体フレーム(1)の前下部に操向駆動輪となる一輪の前輪(2)を配し、後部には駆動輪となる二輪の後輪(3・3)を配した乗用管理機において、前記機体フレーム(1)前部に一輪の前輪(2)を左右回動可能に支持し、ステアリングハンドル(14)の操作により左右回動される、該前輪(2)の左右回動軸上にカム部(184a)を設け、該カム部(184a)の外周部の後部には、外周半径を小さくした短径当接部(184b)を略180度の範囲で形成し、前部には外周半径が前記短径当接部(184b)よりも大きな長径当接部(184c)を形成し、該カム部(184a)の外周部に、左右のカムフォロア(106・106)を当接して配置し、該左右のカムフォロア(106・106)を後二輪の各サイドクラッチと連動連結するサイドクラッチ制御機構を形成し、該短径当接部(184b)に左右のカムフォロア(106・106)が当接された状態では、サイドクラッチ機構は「接」状態であり、左右の後輪(3・3)ともに駆動力が伝達され、左右のカムフォロア(106・106)のいずれかが長径当接部(184c)に乗り上げると、左右いずれかのサイドクラッチ操作アーム(90・90)が操作され、いずれかのサイドクラッチ機構を「断」として動力伝達を断ち、機体を旋回操作し、前後進変速可能な主変速装置(102)又は副変速装置の出力軸と、前輪動力伝達軸(73)との間に、「低速」と「高速」の切替えが可能な前輪高低速切替え手段(180)を設け、該前輪高低速切替え手段(180)を、前記左右のカムフォロア(106・106)と連動連結した前輪変速機構を形成し、前記前輪(2)の左右回動が、略180度の短径当接部(184b)の範囲を越えると、旋回側のサイドクラッチが「断」になると同時に、前輪動力伝達軸(73)が「高速」に切替わるべく構成したものである。
【0005】
請求項2においては、請求項1記載の乗用管理機において、前記機体フレーム(1)後部に前記主変速装置(102)を設け、該主変速装置(102)の入力軸(60)または出力軸(63)の、いずれか一方の動力を選択して取り出し、PTO軸(35)に伝達可能なPTO軸変速機構を設けたものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態を説明する。図1は腹部に中耕ロータリを装着し下降させた状態の乗用管理機の全体側面図、図2は同じく全体平面図、図3は本発明の機体フレームを有する乗用管理機の部分側面図、図4は同じく乗用管理機の機体フレームの側面断面図、図5は同じく乗用管理機の機体フレームの平面断面図、図6はフロントケースの平面断面図、図7はフロントケースおよびフロントアクスルケースの側面断面図、図8はフロントケースおよびフロントアクスルケースの正面断面図、図9はミッションケースにおけるPTO軸変速機構及び前後輪駆動系のスケルトン図、図10は後輪サイドクラッチ及び前輪高低速切替え手段を作動させるための前輪回動検知手段を示す平面断面図、図11は前輪高低速切替え手段のスケルトン図である。
【0007】
まず、本発明に係わる乗用管理機の全体構成を図1乃至図4により説明する。三輪型乗用管理機において、前後方向に延びた機体フレーム1の後部に運転部Bが配され、該機体フレーム1の後端部にはエンジン6が搭載され、ミッションケース51によって走行変速し、該ミッションケース51の下部に配するリアアクスルケース4より後輪駆動ケース5を介して後輪3・3が駆動される。
【0008】
前記ミッションケース51からは、図4のように機体フレーム1内に配置した動力伝達軸を介して前輪2に動力を伝達する構成とし、該機体フレーム1の前部にはフロントケース7を設け、該フロントケース7下部に鉛直方向を軸芯として左右回動可能にフロントアクスルケース8を装着し、該フロントアクスルケース8に一輪の前輪2を支持して駆動できるようにして、三輪駆動車を構成している。尚、前記フロントケース7上部はカバー30で被装されている。
【0009】
また、前記エンジン6はボンネット10によって被装され、該ボンネット10の前方には、ミッションケース51及び後輪3を被装する車体カバー11が配され、該車体カバー11上には運転席12が載置され、該運転席12前方の機体フレーム1上にはステアリングコラム13が立設されている。該ステアリングコラム13の上部より上方にはステアリングハンドル14が突出され、該ステアリングコラム13の右側部には図示せぬアクセルレバーが突出されるとともに、ステアリングコラム13下部側方にサイドクラッチペダル16が配置されている。
【0010】
また、前記前輪2と後輪3との間の腹部には作業機装着装置29が配される。該作業機装着装置29は図3、図4に示すように、前記機体フレーム1の前下部(フロントケース7の後方位置)に、左右一対のブラケット18・18が下方に突出され、該ブラケット18・18の上下に支持軸149・150が横架されている。上方の支持軸149の両端部に上リンク19・19の前部が枢支され、下方の支持軸150両端部に下リンク20・20前部が枢支されている。前記上リンク19・19は機体フレーム1の左右幅に略等しい間隔に設けられている。該上リンク19は機体フレーム1の側方に位置するまで上昇回動させることができ、作業機26を持ち上げられるようにしている。更に、上リンク19と下リンク20の途中部には連結アーム160によって連結され、平行リンクが構成されている。
【0011】
また、前記ブラケット18・18に昇降シリンダ22の基部が枢支され、該昇降シリンダ22のロッド先端は前記下リンク20・20の途中部と前記連結アーム160下端を連結した連結ピン164に枢支され、該昇降シリンダ22が平行リンクの左右方向の中央位置に介装されるようにしている。
【0012】
前記上リンク19の後端と下リンク20の後端に装着部材であるヒッチ21が枢支され、該ヒッチ21に作業機26が係止される。図1に示すように、該ヒッチ21からは棒状のツールバー23が左右方向に延出され、該ツールバー23の中央部と左右側部に、取付け位置を変更可能に複数の作業機26を装着できるようにし、複数条の管理作業を行えるようにしている。
【0013】
また、前記ツールバー23の左右方向中央位置には動力入力ケース36が固設されており、該動力入力ケース36の入力軸には、前記ミッションケース51下部より前方に突出されたPTO軸35から後述するユニバーサルジョイント81やPTO伝動軸37を介して動力が伝達される。前記動力入力ケース36から、側方に動力軸38・38が突出され、該動力軸38が作業機26としての各ロータリ耕耘機のチェーンケース25上部内に挿入され、ロータリ耕耘機に動力が伝達されるのである。
【0014】
更に、図3に示すように、前記ヒッチ21の後面には機体フレーム1側に係止するための係止体44が固設され、また、前記ステアリングコラム13直前方の機体フレーム1の下部にステー140・140を下方に突出し、該ステー140・140下端部に回動アーム142・142の上端部が枢支され、回動アーム142・142の他端部に係止ピン141が外側方に突出して軸支されている。該係止ピン141の一側端部に操作杆143の前端部が枢支され、操作杆143の後端が前記ステアリングコラム13下部の側方に略前後に摺動自在に支持されている。
【0015】
そして、作業機26を最上位置まで上昇させて、前記操作杆143を前方に摺動操作して、回動アーム142が下方へ回動され、係止ピン141が係止体44の下方に移動し、係止体44と係止ピン141とが係合され、作業機26を腹部に配した状態で移動する場合に、作業機26を最上昇位置に確実に保持することができるようにしているのである。
【0016】
次に、以上のような全体構成から成る乗用管理機において、本発明のPTO軸変速機構を図9により説明する。前記エンジン6からの出力軸64上にはポンプ用プーリー65が固定され、該ポンプ用プーリー65に巻回されたベルト67により、ポンプ軸69上のポンプ駆動プーリー70が回動され、前記作業機の昇降などに用いる油圧ポンプ68へ動力が伝達される。また、前記出力軸64上には駆動用プーリー66も固定されており、該駆動用プーリー66と入力プーリー61との間にベルト62が巻回され、該入力プーリー61を介してHST入力軸60にエンジン6からの動力が伝達される構成となっている。
【0017】
HST入力軸60に伝達された動力はHST変速装置102で主変速後にHST出力軸63に出力され、該HST出力軸63上にはスプライン嵌合状態で左右に摺動可能に副変速摺動ギヤ71が配置され、該副変速摺動ギヤ71の後方には、副変速軸72、該副変速軸72上の高速固設ギヤ74及び低速固設ギヤ75が配置され、この高速固設ギヤ74と低速固設ギヤ75のいずれかに前記副変速摺動ギア71が噛合することにより、副変速が行われる。すなわち、前記副変速摺動ギヤ71が左方向に摺動し、前記低速固設ギヤ75と噛合すると低速回転が副変速軸72に伝達され、前記副変速摺動ギヤ71が右方向に摺動し、前記高速固設ギヤ74と噛合すると、副変速軸72には高速回転が伝達されるのである。
【0018】
該高速固設ギヤ74の右方の副変速軸72上には同調スプロケット76が固定され、該同調スプロケット76に巻回されたチェーン77により、HST入力軸60前方のPTO駆動軸80上に遊嵌された同調駆動スプロケット82に副変速された動力が伝達される。一方、該同調駆動スプロケット82は右側にクラッチ爪を有し、更に右方のPTO駆動軸80上には左右両側にクラッチ爪を有するPTO軸変速用摺動ギヤ83がスプライン嵌合状態で左右に摺動可能に配置され、該PTO軸変速用摺動ギヤ83の更に右方には左側にクラッチ爪を有する定回転駆動ギヤ84が遊嵌され、該定回転駆動ギヤ84は前記HST入力軸60上の定回転ギヤ85と噛合されている。
【0019】
従って、前記PTO軸変速用摺動ギヤ83が左方向に摺動され、前記同調駆動スプロケット82とクラッチ爪で噛合することにより、同調スプロケット76、同調駆動スプロケット82、及びPTO軸変速用摺動ギヤ83を介してPTO駆動軸80に車速と同調した動力が伝達される。一方、PTO軸変速用摺動ギヤ83が右方向に摺動され、前記定回転駆動ギヤ84にクラッチ爪で噛合することにより、定回転ギヤ85、定回転駆動ギヤ84、及びPTO軸変速用摺動ギヤ83を介して、PTO駆動軸80に変速前のエンジンからの一定回転の動力がそのまま伝達されるのである。このように異なる動力が伝達されるPTO駆動軸80の右端には、ベベルギヤ86が固設され、該ベベルギヤ86は前記PTO軸35後端部に固設したベベルギヤ87と噛合されている。すなわち、PTO軸変速用摺動ギヤ83の摺動による選択操作により、PTO軸クラッチの中立位置からの離脱と復帰に対応した「入」「切」、並びに、PTO軸回転の「定回転」「車速同調」の切替えが可能となり、しかも、ロータリー耕耘装置のような定回転作業と、播種、施肥のような車速同調作業が同じ一本のPTO軸35を使って行うことができる構成となっている。
【0020】
この場合の前輪の駆動については、前記同調駆動スプロケット82の左端に固設したベベルギヤ88が前輪出力軸73の後端に固設したベベルギヤ89と噛合され、該前輪出力軸73はユニバーサルジョイント81を介して前記第一動力伝達軸9aの後端に接続されており、前輪へは副変速後の動力が伝達される構成となっている。なお、後述する前輪変速機構により、副変速後の動力を前輪の左右回動と連動させて「高速」と「低速」に切替え可能な構成としてもよい。
【0021】
後輪の駆動についても、前記副変速軸72からは、副変速軸72の右端に固設した第一伝動ギヤ108、第一伝動軸111上の第二伝動ギヤ109、第三伝動ギヤ110を介して、第二伝動軸113上に固設した係合ギヤ112に、副変速された動力が伝達される構成となっている。
【0022】
また、旋回時の後輪のサイドクラッチ機構については、以下の構成となっている。すなわち、前記係合ギヤ112は左右両側にクラッチ爪を有し、該係合ギヤ112の左右側部には内側にクラッチ爪を有する動力断接用摺動ギヤ114・114が配され、該動力断接用摺動ギヤ114・114は第二伝動軸113上に摺動自在に遊嵌され、ミッションケース51との間に設けたバネ115により前記係合ギヤ112側に付勢されている。さらに、前記動力断接用摺動ギヤ114は後方の駆動ギヤ116に噛合され、該駆動ギヤ116を固設した後輪駆動軸117の外側端部にはベベルギヤ118を設け、該ベベルギヤ118は後輪出力軸120の前端部に設けたベベルギヤ119と噛合している。従って、通常は、前記バネ115により、前記動力断接用摺動ギヤ114・114が前記係合ギヤ112とクラッチ爪により噛合され、第二伝動軸113の副変速された動力は、ベベルギヤ118、119を介して後輪出力軸120まで伝達され、前記後輪3・3が駆動されているが、旋回時には、前記サイドクラッチペダル16と連結連動した図示せぬサイドクラッチ用ホークにより、各々の前記動力断接用摺動ギヤ114・114が外側に摺動して係合ギヤ112との噛合を外し、動力が伝達されなくなり、この時、他方の後輪3は駆動状態にあるため旋回できる構成となっている。なお、前記サイドクラッチ用ホークの作動は、前記サイドクラッチペダル16の踏み込みによる以外に、後述する前輪回動検知手段によって前輪の回動と連動させる構成としてもよい。
【0023】
ここで、前記前輪出力軸73から伝達される動力を用いた前輪駆動機構の構成について、図1、図4、図5乃至図8により説明する。前記機体フレーム1は、図1、図4に示すように、前下がりの傾斜状に前後方向に長く筒状に形成され、ステアリングコラム13を立設した前後方向略中央位置において、前部フレーム1aと後部フレーム1bとを連結し、この連結部下方に前記作業機26を位置させ、更に後部フレーム1bの後端部にはエンジン6を載置するエンジンフレーム1cが固定されている。
【0024】
前記後部フレーム1bは、正面断面視で下方が開放された「コ」字状に形成され、後部フレーム1bの後端部はミッションケース51の直前方まで延出している。該後部フレーム1b内では、ミッションケース51の上部より前方に突出される前記前輪出力軸73は、前述のように、ユニバーサルジョイント81を介して前高後低に配置された第一動力伝達軸9aの後部と連結され、該第一伝達軸9aの前部は後ユニバーサルジョイント57を介して第二伝達軸9cの後部に連結され、該第二伝達軸9cの前部は前ユニバーサルジョイント56を介して第三伝達軸9bの後部に連結されている。
【0025】
一方、前記機体フレーム1の前部に固設したフロントケース7後部側面には、図6に示すように、前輪第一伝動軸161が前後方向に配設され、該フロントケース7にベアリングを介して回動自在に支持されている。該前輪第一伝動軸161の後端には、図5に示すように、前記第三伝達軸9bの前端がユニバーサルジョイント78を介して接続され、前輪第一伝動軸161の前部は、フロントケース7内に突出し、該前輪第一伝動軸161の前端には前輪第一伝動ギヤ162が挿嵌固定されている。
【0026】
図7に示すように、該前輪第一伝動ギヤ162の上方には前輪第二伝動ギヤ163が配設されており、該前輪第二伝動ギヤ163は前記前輪第一伝動ギヤ162に噛合され、該前輪第二伝動ギヤ163はフロントケース7上部で前輪第二伝動軸166に挿嵌固定されている。尚、前輪第一伝動ギヤ162及び前輪第二伝動ギヤ163はベベルギアで構成されている。このようにして、ミッションケース51からの動力が、前記第三伝達軸9bを介して前輪第一伝動軸161を回動すると、前輪第一伝動ギヤ162が回動され、続いて、該前輪第一伝動ギヤ162に噛合した前輪第二伝動ギヤ163が回動されて、前輪第二伝動軸166に駆動力が伝達される構成としている。
【0027】
該前輪第二伝動軸166は、図8に示すように、フロントケース7内において上下方向に配設され、その上端は、前記フロントケース7に回動自在に支持されている。該前輪第二伝動軸166の上部には前記前輪第二伝動ギヤ163が挿嵌固定されており、該前輪第二伝動軸166の下端はフロントケース7の下方に配設されたフロントアクスルケース8内の上部に突出している。該前輪第二伝動軸166の下端には前輪第三伝動ギヤ167が挿嵌固定され、該前輪第三伝動ギヤ167の下方には前輪第四伝動ギヤ168が配置され、該前輪第四伝動ギヤ168は前記第三伝動ギヤ167と噛合している。
【0028】
該前輪第四伝動ギヤ168は、フロントアクスルケース8の上部において左右方向に横設した第三伝動軸169の一端に挿嵌固定されており、該第三伝動軸169の一端は、前記フロントアクスルケース8の側部に回動自在に支持され、該第三伝動軸169の他端は、該フロントアクスルケース8の側部に固設されたチェーンケース183内に突出している。該チェーンケース183内において、前記第三伝動軸169の一端にはスプロケット181が挿嵌固定され、該スプロケット181にはチェーン182が懸架されており、該チェーン182を介して前記前輪2に動力を伝達可能に構成されている。
【0029】
以上の構成により、ミッションケース51の前記前輪出力軸73からの動力が前輪第二伝動軸166に伝達されると、前輪第三伝動ギヤ167が駆動されると共に前輪第三伝動軸169が回動され、スプロケット181によりチェーン182を介して前輪2が駆動されるのである。
【0030】
最後に、この前輪の駆動を、機体の旋回に連動させて「高低速」に切替え可能とする本発明の前輪変速機構について説明する。まず、機体旋回のための前輪の操舵機構の構成について、図1、図4、図5乃至図8により説明する。図4、図5に示すように、前記前部フレーム1a内には、操向用の回動軸43が支持され、該回動軸43後部は、中間軸46、ユニバーサルジョイント79・79を介してステアリングハンドル14のステアリングシャフト45下部に連動連結されている。一方、前記回動軸43前部は、ユニバーサルジョイントを介して、前記フロントケース7上部に前後方向に配設した第一前輪操向軸171の後端に連結されており、該第一前輪操向軸171は、図6に示すように、該フロントケース7に回動自在に固定されている。
【0031】
該第一前輪操向軸171は、前部においてウォームギヤ172に挿嵌固定されており、第一前輪操向軸171の回動に伴い該ウォームギヤ172が回動する構成をとっている。該ウォームギヤ172の側方には、該フロントケース7内において上下方向に配設した枢軸175に回動自在に挿嵌されたウォームホイール173が配設されている。該枢軸175の両端部は、図7に示すように、フロントケース7に固設されており、該枢軸175に挿嵌した前記ウォームホイール173および、該ウォームホイール173の下面に固設したギヤ174を回動自在に枢支している。
【0032】
該ギヤ174の側方には操舵ギヤ185が配設されており、該操舵ギヤ185はステアリングパイプ184の上部に挿嵌固定され、前記ギヤ174に噛合する構成になっている。ステアリングパイプ184の軸心部には、前記前輪第二伝動軸166が挿嵌しており、該ステアリングパイプ184はベアリングを介してフロントケース7に回動自在に支持されている。また、ステアリングパイプ184の下端はフロントアクスルケース8の上部に固設しており、操舵ギヤ185の回動に伴いステアリングパイプ184が回動可能に構成されている。即ち、該ステアリングパイプ184を介して、前記フロントアクスルケース8がフロントケース7に接続される構成になっている。
【0033】
従って、ステリングハンドル14を回動し、前記回動軸43を介して第一前輪操向軸171を回動し、ウォームギヤ172およびウォームホイール173を回動させ、ステアリングパイプ184が回動し、フロントアクスルケース8が回動することにより、前輪2の操舵を可能に構成しているのである。
【0034】
次に、このような操舵機構による前輪の左右回動を、前輪回動検出手段190により検出し、後輪のサイドクラッチの「断接」に連動させるサイドクラッチ制御機構について、図9、図10により説明する。前記ステアリングパイプ184下部に形設したカム部184aの外周部において、図10に示すように、その後部には外周半径を小さくした短径当接部184bが略180度の範囲で形成され、前部には外周半径が前記短径当接部184bよりも大きな長径当接部184cが形成されている。一方、前記カム部184aの左右側方にはフロントケース7に固設された枢支軸105が配置され、該枢支軸105には平面視「く」字状のアーム体104の中央部が枢支され、該アーム体104の一端は前記枢支軸105より前方内側に突出され、前端下部にはカムフォロア106が設けられている。アーム体104の他端は後方内側に突出され、その端部107には後方からのワイヤー49が締結され、該アーム体104の内側端部は後方に付勢されているため、前記カムフォロア106・106が内側に回動されてカム部184aの外周部に当接される構成となっている。
【0035】
また、ミッションケース51の上部には、前記動力断接用摺動ギヤ114・114を摺動操作する図示せぬホークと連動した連動軸91・91を上方に突出し、該連動軸91・91には平面視略長方形のサイドクラッチ操作アーム90・90の中央部が固設され、該サイドクラッチ操作アーム90・90の外側端部には、前記ワイヤー49・49が締結されている。一方、サイドクラッチ操作アーム90・90の内側端部にはカム部97・97が形成され、該カム部97・97は後述するアーム体96により前方に付勢されているため、通常、連動軸91・91は特定角度に維持されている。尚、該ワイヤー49・49はサイドクラッチ操作アーム90・90よりも前方に固設したアウターケース93・93の内部に摺動可能に支持されている。
【0036】
このような前輪回動検出手段190において、機体を右側に旋回する場合、ステアリングハンドル14を回動すると、前輪2の回動とともにステアリングパイプ184と一体的にカム部184aが回動され、右側のカムフォロア106が長径当接部184cに乗り上げて、アーム体104が回動されワイヤー49を前方に牽引する。該ワイヤー49により左側のサイドクラッチ操作アーム90が回動され、連動軸91に連動した図示せぬ前記サイドクラッチ用ホークを回動させ、右側のサイドクラッチ機構を「断」として動力伝達を断ち、機体は右旋回するのである。機体を左側に旋回する場合にも、ステアリングハンドル14を回動すると、前輪2の回動とともにステアリングパイプ184と一体的にカム部184aが回動され、左側のカムフォロア106が長径当接部184cに乗り上げて、アーム体104が回動されワイヤー49を前方に牽引する。該ワイヤー49により右側のサイドクラッチ操作アーム90が回動され、連動軸91に連動した図示せぬ前記サイドクラッチ用ホークを回動させ、左側のサイドクラッチ機構を「断」として動力伝達を断ち、機体は左旋回するのである。なお、前輪2を回動させない直進時には、前記短径当接部184bに左右のカムフォロア106・106が当接されており、この状態では、サイドクラッチ機構は「接」であり、左右の後輪3・3とも駆動力が伝えられている。
【0037】
最後に、上述のサイドクラッチ制御機構によって前輪の回動にサイドクラッチの「断」「接」を連動させた際に、前輪も「高速」「低速」駆動に切替えが可能な本発明の前輪変速機構について、図10、図11により説明する。前記カム部97・97の後方に枢支軸95を上方に突出させ、該枢支軸95上部には平面視略「く」字上の変速アーム96の中央部が固設され、該変速アーム96の一端は前記枢支軸95より前内側に突出され、その前端下部にはカムフォロア98が形成され、前記カム部95・95の直後に配置されている。一方、変速アーム96の他端は後内側に突出され、後述する前輪高低速切替え手段180に連結したワイヤー99が端部の連結部103に締結されており、該連結部103は通常は内側に牽引されているため、前記カムフォロア98は外側に回動されて前記カム部97・97の後部に当接された状態にある。また、前輪2が左右いずれの方向に回動しても、前述のように、ワイヤー49は常に前方に牽引されるため、前輪2の回動時には、該ワイヤー49との締結部の他端に形成された前記カム部97・97も常に後方に回動される。従って、前輪2が回動し、前述のように旋回内側の後輪のサイドクラッチが「断」にされると、同時にワイヤー49、カム部97・97等を介してカムフォロア98は後方に押圧され、他端の連結部103は前記枢支軸95を支点として外側に回動され、その結果、前記ワイヤー99が牽引される。
【0038】
また、後輪へ変速後の動力を伝達する前記第一伝動軸111上には、スプライン嵌合状態で左右に摺動可能に左右にクラッチ爪を有する前輪変速用摺動ギヤ121が配置され、該前輪変速用摺動ギヤ121の右側には左側にクラッチ爪を有する低速ギヤ122が遊嵌され、該低速ギヤ122は後方の低速固定ギヤ124に噛合し、該低速固定ギヤ124は前輪駆動軸126の右側に固設されている。該前輪駆動軸126の左側には右側にクラッチ爪を有する高速固定ギヤ125が固設され、前記第一伝動軸111上で前輪変速用摺動ギヤ121の左側に遊嵌させた高速ギヤ123と噛合している。前輪駆動軸126の端部にはベベルギヤ127が固設され、該ベベルギヤ127は前記前輪出力軸73の端部に固設したベベルギヤ128と噛合している。一方、前記第一伝動軸111には、平面視略「T」字状を呈し交差部分を枢支軸130で枢支した前輪変速用ホーク129を並設し、該前輪変速用ホーク129の一端からは切替えアーム部129aを前記第一伝動軸111上の前輪変速用摺動ギヤ121の間に突設挿入し、前輪変速用ホーク129の他端からは連結アーム部129dを突出させ、その端部には前記ワイヤー99がバネ135を介して連結されている。また、前記連結アーム部129dの基部で、該ワイヤー99との連結部とは逆の辺部は、バネ134により牽引固定されている。
【0039】
従って、通常は、連結アーム部129dの基部が前記バネ134により牽引されているため、切替えアーム部129aにより前記前輪変速用摺動ギヤ121は右側に摺動され、クランク爪で低速ギヤ122に噛合し、直進時の速度に相当する「低速」が前輪出力軸73に伝達されている。これが旋回時には、前輪を左右に回動させて前記サイドクラッチ制御機構により旋回内側の後輪のサイドクラッチを「断」にすると、同時に、ワイヤー99を介し連結アーム部129dは通常の「低速」時とは逆方向に牽引され、切替えアーム部129aが回動して前記前輪変速用摺動ギヤ121を左側に摺動し、クラッチ爪により高速ギヤ123に噛合させ、「高速」が前輪出力軸73に伝動されるのである。
【0040】
また、前記前輪変速用ホーク129には、枢支軸130の対向辺部に凹状の高速用係止部129bと低速用係止部129cを設け、該高速用係止部129bと低速用係止部129cの間で、前記枢支軸130よりも連結アーム部129d側寄りの位置には、係止体131を摺動可能に当接させている。該係止体131には押圧バネ132の一端が固定され、該押圧バネ132の他端はミッションケース51に固定されており、前記係止体131が前記前輪変速用ホーク129を常に枢支軸130側に押圧している。従って、「低速」時には、前輪変速用ホーク129の前記低速用係止部129cが係止体131に係止され、「高速」時には、該前輪変速用ホーク129が回動して、高速用係止部129bが係止体131に係止されるようになっており、前輪を回動しワイヤー99を伸縮させるまでは簡単には前輪変速用ホーク129が回動しないようにし、確実に前輪が「高速」又は「低速」駆動に保持される構成となっている。
【0041】
なお、前輪変速用摺動ギヤ121と低速ギヤ122、前輪変速用摺動ギヤ121と高速ギヤ123に設けたクラッチ爪は、ツメが傾斜しており一方向の回転だけを伝達し、反対方向に回動するとクラッチの結合が外れるいわゆるワンウェイクラッチとすることにより、「高低速」切替え時のギヤ抜けの防止を可能とすることができる。
【0042】
【発明の効果】
本発明は以上の如く構成したので、次のような効果を奏するのである。
請求項1に記載の如く、機体フレーム(1)の前下部に操向駆動輪となる一輪の前輪(2)を配し、後部には駆動輪となる二輪の後輪(3・3)を配した乗用管理機において、前記機体フレーム(1)前部に一輪の前輪(2)を左右回動可能に支持し、ステアリングハンドル(14)の操作により左右回動される、該前輪(2)の左右回動軸上にカム部(184a)を設け、該カム部(184a)の外周部の後部には、外周半径を小さくした短径当接部(184b)を略180度の範囲で形成し、前部には外周半径が前記短径当接部(184b)よりも大きな長径当接部(184c)を形成し、該カム部(184a)の外周部に、左右のカムフォロア(106・106)を当接して配置し、該左右のカムフォロア(106・106)を後二輪の各サイドクラッチと連動連結するサイドクラッチ制御機構を形成し、該短径当接部(184b)に左右のカムフォロア(106・106)が当接された状態では、サイドクラッチ機構は「接」状態であり、左右の後輪(3・3)ともに駆動力が伝達され、左右のカムフォロア(106・106)のいずれかが長径当接部(184c)に乗り上げると、左右いずれかのサイドクラッチ操作アーム(90・90)が操作され、いずれかのサイドクラッチ機構を「断」として動力伝達を断ち、機体を旋回操作し、前後進変速可能な主変速装置(102)又は副変速装置の出力軸と、前輪動力伝達軸(73)との間に、「低速」と「高速」の切替えが可能な前輪高低速切替え手段(180)を設け、該前輪高低速切替え手段(180)を、前記左右のカムフォロア(106・106)と連動連結した前輪変速機構を形成し、前記前輪(2)の左右回動が、略180度の短径当接部(184b)の範囲を越えると、旋回側のサイドクラッチが「断」になると同時に、前輪動力伝達軸(73)が「高速」に切替わるべく構成したので、ステアリングハンドルを回動して前輪を回動させるだけで、回動内側後輪のサイドクラッチが「断」となり、同時に前輪が「高速」に切り替わりため、前輪の横滑りによる圃場の荒れが完全に防止でき、しかも、簡単な機構のために、前輪の「高低速」の切替え精度の信頼性が高く、機体重量の増加も防止することができる。
【0043】
請求項2に記載の如く、請求項1記載の乗用管理機において、前記機体フレーム(1)後部に前記主変速装置(102)を設け、該主変速装置(102)の入力軸(60)または出力軸(63)の、いずれか一方の動力を選択して取り出し、PTO軸(35)に伝達可能なPTO軸変速機構を設けたので、ロータリー耕耘のような定回転作業と、播種、施肥のような車速同調作業が同じ一本のPTO軸を使って行うことができ、機体の組立や作業機の組み替えが容易となる。また、前後輪の駆動系とPTO軸の駆動系がすっきりとまとまり、性能の安定や部品点数減によるコスト低減を図ることができるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 腹部に中耕ロータリを装着し下降させた状態の乗用管理機の全体側面図である。
【図2】 同じく全体平面図である。
【図3】 本発明の機体フレームを有する乗用管理機の部分側面図である。
【図4】 同じく乗用管理機の機体フレームの側面断面図である。
【図5】 同じく乗用管理機の機体フレームの平面断面図である。
【図6】 フロントケースの平面断面図である。
【図7】 フロントケースおよびフロントアクスルケースの側面断面図である。
【図8】 フロントケースおよびフロントアクスルケースの正面断面図である。
【図9】 ミッションケースにおけるPTO軸変速機構及び前後輪駆動系のスケルトン図である。
【図10】 後輪サイドクラッチ及び前輪高低速切替え手段を作動させるための前輪回動検知手段を示す平面断面図である。
【図11】 前輪高低速切替え手段のスケルトン図である。
【符号の説明】
1 機体フレーム
2 前輪
3 後輪
35 PTO軸
60 主変速装置の入力軸
63 主変速装置の出力軸
73 前輪動力伝達軸
102 主変速装置
106 カムフォロア
184a カム部
Claims (2)
- 機体フレーム(1)の前下部に操向駆動輪となる一輪の前輪(2)を配し、後部には駆動輪となる二輪の後輪(3・3)を配した乗用管理機において、前記機体フレーム(1)前部に一輪の前輪(2)を左右回動可能に支持し、ステアリングハンドル(14)の操作により左右回動される、該前輪(2)の左右回動軸上にカム部(184a)を設け、該カム部(184a)の外周部の後部には、外周半径を小さくした短径当接部(184b)を略180度の範囲で形成し、前部には外周半径が前記短径当接部(184b)よりも大きな長径当接部(184c)を形成し、該カム部(184a)の外周部に、左右のカムフォロア(106・106)を当接して配置し、該左右のカムフォロア(106・106)を後二輪の各サイドクラッチと連動連結するサイドクラッチ制御機構を形成し、該短径当接部(184b)に左右のカムフォロア(106・106)が当接された状態では、サイドクラッチ機構は「接」状態であり、左右の後輪(3・3)ともに駆動力が伝達され、左右のカムフォロア(106・106)のいずれかが長径当接部(184c)に乗り上げると、左右いずれかのサイドクラッチ操作アーム(90・90)が操作され、いずれかのサイドクラッチ機構を「断」として動力伝達を断ち、機体を旋回操作し、前後進変速可能な主変速装置(102)又は副変速装置の出力軸と、前輪動力伝達軸(73)との間に、「低速」と「高速」の切替えが可能な前輪高低速切替え手段(180)を設け、該前輪高低速切替え手段(180)を、前記左右のカムフォロア(106・106)と連動連結した前輪変速機構を形成し、前記前輪(2)の左右回動が、略180度の短径当接部(184b)の範囲を越えると、旋回側のサイドクラッチが「断」になると同時に、前輪動力伝達軸(73)が「高速」に切替わるべく構成したことを特徴とする乗用管理機。
- 請求項1記載の乗用管理機において、前記機体フレーム(1)後部に前記主変速装置(102)を設け、該主変速装置(102)の入力軸(60)または出力軸(63)の、いずれか一方の動力を選択して取り出し、PTO軸(35)に伝達可能なPTO軸変速機構を設けたことを特徴とする乗用管理機。
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