JP2014192945A - 樹脂含浸装置及び樹脂含浸方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】コイル巻装体に対し熱硬化性樹脂を含浸硬化させるものにあって、余分な樹脂の使用を抑える。
【解決手段】樹脂含浸装置11は、ロータ1を、軸心(シャフト2)を水平にして回転させながら、塗布ノズルから流動性あるエポキシ樹脂を滴下して巻線部分に含浸させる塗布工程を実行する塗布機構12と、ロータ1を、軸心を水平にして回転させながら、該ロータ1の巻線部分に含浸されたエポキシ樹脂を加熱して硬化させる加熱硬化工程を実行する加熱硬化機構13と、ロータ1を塗布機構12から加熱硬化機構13に移載する移載工程を実行する移載機構14とを備えている。塗布機構12部分は、加熱硬化機構13の熱風室23とは熱的に区画されており、常温で塗布工程を実行する。
【選択図】図1

Description

本発明は、コイル巻装体に対し、熱硬化性樹脂を含浸させ、硬化させるための樹脂含浸装置及び樹脂含浸方法に関する。
コイル巻装体、例えば自動車のオルタネータのロータ1には、図7、図8に示すように、ランデル型ロータコアと称されるものが採用されている。このロータ1は、シャフト2、軸方向に2分割された形態の一対のロータコア(ポールコア)3,3、ロータコア3,3内に収容される巻線4を備えている。ロータコア3,3は、複数(例えば8個)の爪部を有し、それら爪部が組合わされる形態とされる。尚、ロータコア3,3の両端面には、夫々ファン5が設けられている。
このとき、図7に示すように、ロータコア3,3の外周面には、ロータコア3,3間に位置して、円周方向にジグザグに延びる形態のスリット(隙間)3aが形成されており、前記巻線4は、そのスリット3aの内周側に配置される。そして、前記巻線4の固着や絶縁性向上等のために、樹脂含浸装置を用いて、スリット3aを通して巻線4部分に熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂)を含浸させ、硬化させることが行われる(例えば、特許文献1参照)。
詳しく図示はしないが、従来の樹脂含浸装置は、前記ロータ1を190℃に加熱(予熱)するための加熱室、図9に一部示す塗布機構6、巻線4に対する含浸後のエポキシ樹脂を硬化させるための保温室等を備えている。前記塗布機構6は、図9に示すように、円形状をなし垂直軸を中心に図で矢印A方向(左回り方向)に所定角度(45度)ずつ回転されるインデックステーブル7を備えると共に、そのインデックステーブル7上の外周部の8か所(45度間隔)に、チャック装置8を備えている。
前記チャック装置8は、前記ロータ1のシャフト2の端部を、該シャフト2が外周(放射)方向に延びて水平になるように保持すると共に、図示しない回転機構により該シャフト2(ロータ1)を矢印B方向に回転(自転)させるように構成されている。また、前記インデックステーブル7には、図で右側に位置してワーク取出位置7aが設けられ、そこから45度矢印A方向に進んだ位置が、ワークセット位置7bとされ、更に45度進んだ位置が樹脂含浸位置7cとされている。樹脂含浸位置7cの上方には、図7に示すように、樹脂を滴下する塗布ノズル9が設けられている。
これにて、前記ロータ1は、加熱室において190℃に予熱された後、塗布機構6のワークセット位置7bに搬入され、チャック装置8に保持される。次いで、樹脂含浸位置7cに進み、前記スリット3aに沿って該塗布ノズル9からエポキシ樹脂を滴下して含浸させる。この塗布ノズル9からエポキシ樹脂を滴下させる際には、塗布ノズル9が前記スリット3aに沿って相対的に移動するように、ロータ1を回転させながら、その回転と同期して塗布ノズル9を矢印C方向(軸方向に平行)に往復移動させる。この場合、塗布ノズル9から滴下されるエポキシ樹脂を、スリット3aに沿う軌跡を描くように追従させるために、ロータ1の回転は比較的低速となる。
その後、図9に示すように、ロータ1は、引続き矢印B方向への回転(自転)を継続しながら、矢印A方向に順次進む。含浸されたエポキシ樹脂が、その間に巻線4の内部まで浸透すると共にゲル化され、ワーク取出位置7aにおいて取出される。この後、ロータ1は保温室に収容され、巻線4に含浸されたエポキシ樹脂が硬化される。
特開2006−136159号公報
しかしながら、上記従来構成では、ロータ1を予熱した上で、エポキシ樹脂の含浸処理を行うため、次のような問題点があった。即ち、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂は、常温から温度上昇(加熱)していくに伴い、粘度が一旦低下して液状となり、その後粘度が上昇(硬化)するという粘度挙動を呈する(図6参照)。このとき、ロータ1が予熱されて高温になっていることにより、ロータコア3部分に滴下されたエポキシ樹脂は、すぐに粘度が低下して液状となり、容易に垂れ落ちて蒸発してしまう。そのため、垂れ落ちて蒸発する分を予め見越してエポキシ樹脂の含浸塗布を行うようにしており、エポキシ樹脂を必要以上に余分に消費してしまうことになる。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、コイル巻装体に対し、熱硬化性樹脂を含浸硬化させるものにあって、余分な樹脂の使用を抑えることができる樹脂含浸装置及び樹脂含浸方法を提供するにある。
上記目的を達成するために、本発明の樹脂含浸装置は、コイル巻装体に対し、熱硬化性樹脂を含浸硬化させるものにあって、前記コイル巻装体を、軸心を水平にして回転させながら、塗布ノズルから流動性ある熱硬化性樹脂を滴下して含浸させる塗布機構と、前記コイル巻装体を、軸心を水平にして回転させながら、該コイル巻装体に含浸された熱硬化性樹脂を加熱して硬化させる加熱硬化機構と、前記コイル巻装体を前記塗布機構から前記加熱硬化機構に移載する移載機構とを備えると共に、前記塗布機構は、前記コイル巻装体に対する熱硬化性樹脂の含浸を常温で実行するように構成されているところに特徴を有する(請求項1の発明)。
また、本発明の樹脂含浸方法は、コイル巻装体に対し、熱硬化性樹脂を含浸硬化させる方法にあって、前記コイル巻装体を、塗布機構により、軸心を水平にして回転させながら、塗布ノズルから流動性ある熱硬化性樹脂を滴下して含浸させる塗布工程と、前記塗布工程が完了した前記コイル巻装体を、移載機構により加熱硬化機構に移載させる移載工程と、前記コイル巻装体を、前記加熱硬化機構により、軸心を水平にして回転させながら、該コイル巻装体に含浸された熱硬化性樹脂を加熱して硬化させる加熱硬化工程とを含むと共に、前記塗布工程は、前記コイル巻装体に対する熱硬化性樹脂の含浸を常温で実行するところに特徴を有する(請求項7の発明)。
上記構成によれば、コイル巻装体に対し、塗布機構により、軸心を水平にして回転させながら、塗布ノズルから流動性ある熱硬化性樹脂を滴下して含浸させる塗布の工程が実行されることにより、コイル巻装体に熱硬化性樹脂が含浸される。次いで、移載機構により移載の工程が実行されることにより、コイル巻装体が塗布機構から加熱硬化機構に移載される。この後、コイル巻装体に対し、加熱硬化機構により、軸心を水平にして回転させながら、該コイル巻装体に含浸された熱硬化性樹脂を加熱して硬化させる加熱硬化の工程が実行される。
ここで、熱硬化性樹脂を滴下させる塗布の工程は、加熱硬化の工程とは別の装置(工程)によって行われるので、コイル巻装体に対する熱硬化性樹脂の含浸を常温で実行することができる。この場合、熱硬化性樹脂の含浸を常温で行うことにより、熱硬化性樹脂の粘度低下を抑制することができるので、コイル巻装体の回転速度が比較的低速であっても、熱硬化性樹脂が垂れ落ちてしまうことを防止することができる。そして、加熱硬化の工程がコイル巻装体を回転させながら行われることにより、含浸された熱硬化性樹脂を落下させることなく硬化させることができる。
本発明の樹脂含浸装置においては、前記塗布機構は、前記コイル巻装体を第1の回転速度で回転させ、前記加熱硬化機構は、前記コイル巻装体を前記第1の回転速度よりも高速の第2の回転速度で回転させるように構成することができる(請求項2の発明)。これによれば、塗布機構においては、コイル巻装体が比較的低速で回転されるので、塗布ノズルからのコイル巻装体の必要な箇所への熱硬化性樹脂の滴下の作業を位置精度良く行うことができる。加熱硬化機構にあっては、含浸された熱硬化性樹脂の粘度が低下して液状となった場合でも、コイル巻装体を、液状の熱硬化性樹脂が垂れ落ちることがない程度に十分な高速で回転させることができる。
このとき、前記移載機構を、前記コイル巻装体を前記塗布機構から回転させた状態のまま受取り、前記加熱硬化機構まで搬送して受渡すように構成すると共に、前記コイル巻装体を受取ってから受渡すまでの搬送時において、前記コイル巻装体の回転速度を前記第1の回転速度から前記第2の回転速度に上昇させるように構成することができる(請求項3の発明)。これによれば、コイル巻装体の回転速度の切替えを、熱硬化性樹脂の含浸及び硬化の処理の工程に支障をきたすことなく、スムーズに行うことができる。
また、本発明においては、前記加熱硬化機構を、前記コイル巻装体が搬入位置から取出し位置まで移動され内部に熱風が供給される熱風室を備えて構成すると共に、前記熱風室を、前記搬入位置から取出し位置までに、風量の相違するものを含む複数のゾーンを有し、前記コイル巻装体が、それら複数のゾーンを順に移動されるように構成することができる(請求項4の発明)。これによれば、コイル巻装体に含浸された熱硬化性樹脂を、熱風により効率的に加熱、硬化させることができると共に、複数のゾーンにおける熱風の風量制御を行うことにより、液状の熱硬化性樹脂が飛ばされないようにする等、熱硬化性樹脂の粘度の挙動に応じた加熱を行うことができる。
このとき、前記複数のゾーンを上下複数段に配置し、前記コイル巻装体が、下側のゾーンを先に通過した後、上側のゾーンへ移動するように構成することができる(請求項5の発明)。これによれば、複数のゾーンを上下に立体的に配置することによって、平面的に配置する場合と比べて省スペース化を図ることができる。しかも、熱硬化性樹脂の粘度が一旦低下して液状となるのは、加熱硬化の工程の初期、つまりコイル巻装体が下段のゾーンに位置している時点なので、仮にコイル巻装体から液状の熱硬化性樹脂が下方に垂れ落ちることがあっても、別のコイル巻装体に付着することはない。
さらに、前記加熱硬化機構においては、前記コイル巻装体を回転及び移動させるための駆動機構を、前記熱風室の外部に区画された形態で配設することができる(請求項6の発明)。これによれば、熱風による駆動機構の温度上昇を抑制することができ、駆動機構の保護、ひいては長寿命化を図ることができる。
本発明の一実施例を示すもので、樹脂含浸装置の全体構成を模式的に示す平面図 移載機構のチャック部分の構成を示す側面図 ロータの受取りの手順を説明するための図 加熱硬化機構の熱風室内の構成を概略的に示す正面図 加熱硬化機構の構成を示す縦断側面図 エポキシ樹脂の粘度挙動を示す特性図 ロータに対する樹脂の滴下時の様子を概略的に示す斜視図 オルタネータのロータの構成を示す縦断面図 従来例を示すもので、塗布機構を概略的に示す平面図
以下、本発明を具体化した一実施例について、図1ないし図6を参照しながら説明する。尚、本実施例においても、図7、図8に示したように、コイル巻装体として、例えば自動車のオルタネータのロータ(ランデル型ロータコア)1の巻線4部分に、熱硬化性樹脂としてのエポキシ樹脂を含浸させる場合を具体例としている。従って、図7、図8に示したロータ1については、新たな図示や説明を省略し、符号も共通して使用する。
図1は、本実施例に係る樹脂含浸装置11の平面的に見た全体構成を概略的に示している。この樹脂含浸装置11は、塗布機構12と、加熱硬化機構13と、移載機構14とを備えている。そのうち塗布機構12は、前記ロータ1を、軸心(シャフト2)を水平にして回転させながら、塗布ノズル9(図7参照)から流動性ある熱硬化性樹脂この場合エポキシ樹脂を滴下して巻線4部分に含浸させる塗布工程を実行するものである。
また、前記移載機構14は、前記塗布機構12と加熱硬化機構13との間に位置して設けられ、前記ロータ1を前記塗布機構12から前記加熱硬化機構13に移載する移載工程を実行するものである。前記加熱硬化機構13は、前記ロータ1を、軸心を水平にして回転させながら、該ロータ1の巻線4部分に含浸されたエポキシ樹脂を加熱して硬化させる加熱硬化工程を実行するものである。これらの詳しい構成は後述する。
前記塗布機構12は、図1に模式的に示すように、円形状のインデックステーブル15の上面に、180度間隔の2箇所に位置してチャック機構16を備えている。このとき、インデックステーブル15の図1で手前側が塗布作業位置とされ、奥側が取出し位置とされている。そして、インデックステーブル15の塗布作業位置の上方に、エポキシ樹脂を滴下させる塗布ノズル9が設けられている。この塗布ノズル9は、図示しない塗布ノズル駆動機構により、インデックステーブル15の直径方向(図7で矢印C方向)に往復移動されるようになっている。
前記チャック機構16は、図3にも一部示すように、前記ロータ1のシャフト2の一端部を軸方向外側から把持するエア駆動式のクランプ部16aを備えていると共に、このクランプ部16aを、水平軸を中心に同軸回転駆動する図示しない回転駆動機構を備えている。これにて、前記ロータ1は、前記塗布作業位置において、チャック機構16のクランプ部16aにより把持された状態で、軸心をインデックステーブル15の外周方向に水平に延びるようにしながら例えば矢印B方向に回転(自転)される。そして、その回転と同期して塗布ノズル9を矢印C方向(軸方向に平行)に往復移動させながら、塗布ノズル9からエポキシ樹脂を滴下させることにより、相対的にスリット3aに沿う軌跡を描くようにしながら含浸塗布の作業が実行される。
この塗布作業にあっては、塗布ノズル9から滴下されるエポキシ樹脂は、一定の粘性を有するので、塗布ノズル9から吐出されるエポキシ樹脂をスリット3aに沿って追従させるために、ロータ1の回転速度は、比較的低速な第1の回転速度(例えば10rpm)とされている。このとき、塗布機構12部分は、後述する加熱硬化機構13の熱風室23とは熱的に区画されており、常温(室温)で塗布工程が実行されるようになっている。エポキシ樹脂が含浸塗布されたロータ1は、チャック機構16に保持されて回転が継続された状態で、インデックステーブル15の回転駆動により取出し位置へ移動される。
前記移載機構14は、移載用ロボット17と、そのアームの先端に設けられるロボットチャック機構18とを備えている。前記移載用ロボット17は、例えば6軸型ロボットアームを備えており、その先端にフランジ部17a(図2参照)を有している。そして、図2に示すように、前記ロボットチャック機構18は、前記フランジ部17aに取付けられるベース部18aに、横向き(水平向き)に設けられたエア駆動式のクランプ部19、及び、このクランプ部19の開閉(把持、開放)を行う開閉機構20を、水平軸を中心に回転可能に備えている。前記開閉機構20は、ロータリジョイント20aを含んで構成されている。
また、前記ベース部18aには、前記クランプ部19を開閉機構20と共に回転駆動するためのモータ21aを含む回転駆動機構21が設けられている。回転駆動機構21の回転駆動力は、ギヤ機構21bを介して減速されてクランプ部19(及び開閉機構20)に伝達される。このとき、モータ21aとギヤ機構21bとの間には、クランプ部19(及び開閉機構20)に対する回転駆動力の伝達、切離しを行うための、電磁駆動式のクラッチ22が設けられている。
これにて、詳しくは後述するように、移載機構14は、塗布工程が完了し取出し位置へ移動されたロータ1を、ロボットチャック機構18により、前記塗布機構12のチャック機構16から回転させた状態のまま受取る。そして、受取ったロータ1を移載用ロボット17により前記加熱硬化機構13のセット位置13a(後述)まで搬送して受渡すように構成されている。このとき、ロータ1を受取ってから加熱硬化機構13側に受渡すまでの搬送時において、ロータ1の回転速度を第1の回転速度から、それよりも高速の第2の回転速度(例えば20rpm)に上昇させる。
前記加熱硬化機構13は、図4及び図5に示すように、熱風室23、この熱風室23内に例えば195℃の熱風を供給するための熱風供給機構24、前記熱風室23内においてロータ1を搬送するワーク搬送機構25を備えている。前記熱風室23は、図5に示すように、図で左右方向に長く構成され、図で左端部にワーク出入口23aを有している。また、熱風室23内には、複数この場合6つのZ1〜Z6が設けられている。即ち、熱風室23内の中段部の左側部位が第1のゾーンZ1、中段部の左右方向中間部が第2のゾーンZ2、中段部の右側部位が第3のゾーンZ3、上段部の右側部位が第4のゾーンZ4、上段部の左右方向中間部が第5のゾーンZ5、上段部の左側部位が第6のゾーンZ6とされている。
前記ワーク搬送機構25は、前記ロータ1のシャフト2の一端部を水平に吸着保持する多数個の保持治具26を有している。これと共に、これら保持治具26(ひいてはロータ1)を矢印B方向に回転(自転)させながら、矢印D方向に搬送(移動)させる駆動機構27を有して構成される。前記駆動機構27は、保持治具26ひいてはロータ1をワーク出入口23aの外側(図5で左側)のセット位置13aから、熱風室23内の中段部位を右方に搬送する。さらに、熱風室23内の右端部で上方に折返し、熱風室23内の上部寄り部位を左方に搬送し、ワーク出入口23aの外側の取出し位置13bに搬送するように構成されている。
これにて、保持治具26に保持されたロータ1は、駆動機構27により、熱風室23内の第1〜第6のゾーンZ1〜Z6を順に移動される。この場合、ロータ1は、先に、下段側のゾーンZ1〜Z3を順に通過し、その後、上段側のゾーンZ4〜Z6へ移動するように構成されている。尚、前記ロータ1がセット位置13aから取出し位置13bまで全ゾーンZ1〜Z6を搬送される時間(搬送速度)は、含浸されたエポキシ樹脂が硬化するに必要十分な時間(熱量)となっている。尚、ワーク出入口23aの外側のセット位置13a及び取出し位置13bでは、熱風室23とは熱的に一定の隔離がなされており、常温に近い温度とされている。
前記駆動機構27は、具体的には、図4に示すように、熱風室23の背壁部のスリット23bを貫通して後方に延びる駆動軸28を有している。前記各保持治具26は、各駆動軸28の先端に連結されている。そして、それら多数個の駆動軸28は、図5に示す駆動輪29と駆動輪30との間に無端ループ状に掛渡されたコンベア31に、所定間隔で取付けられている。
詳しく図示はしないが、駆動機構27は、前記駆動軸28の後端部に設けられたスプロケット32(図4参照)やチェーン等を備えており、チェーンの駆動により、駆動軸28(保持治具26)を矢印B方向に回転(自転)させながら、矢印D方向(図5参照)に搬送(移動)するように構成されている。このとき、駆動機構27は、熱風室23の外部にその背壁部を隔てて区画された形態で配設されている。
前記熱風供給機構24は、ファン装置やヒータ等からなる図示しない熱風供給源を備えると共に、熱風室23の背壁部側に位置して、前記熱風室23の各ゾーンZ1〜Z6に対応して熱風を供給する熱風供給ダクト34を備えている。各熱風供給ダクト34の先端部は、図5に示すように、熱風室23内の各ゾーンZ1〜Z6における、ロータ1の搬送経路のすぐ上部に位置して、下向きの熱風供給口35に接続されている。尚、熱風室23の背壁部の下段部には、排気口36aが設けられており、この排気口36aに接続された排気ダクト36によって排気がなされるようになっている。
これにて、熱風室23内の各ゾーンZ1〜Z6には、熱風供給口35から例えば195℃の熱風が供給されるのであるが、ここでは、各ゾーンZ1〜Z6毎に供給される熱風の風量が相違するようになっている。具体的には、例えば、第1のゾーンZ1では、風量が6m/s、第2〜第4のゾーンZ2〜Z4では、風量が15m/s、第5,第6のゾーンZ5,Z6では、風量が18m/sとされている。
尚、図示はしないが、前記塗布機構12、加熱硬化機構13、移載機構14は、コンピュータを主体とした制御装置により、所定の運転プログラムに従って制御される。これにより、樹脂含浸装置11は、多数個のロータ1に対する塗布工程、移載工程、加熱硬化工程の各工程を順に自動的に実行する。
次に、上記構成の樹脂含浸装置11における、ロータ1に対する樹脂含浸の作業の手順(工程)について述べる。まず、塗布機構12による塗布工程が実行される。上記したように、この塗布工程にあっては、図1に示すように、塗布作業位置において、チャック機構16のクランプ部16aにより把持されたロータ1を、軸心(シャフト2)を水平にして第1の回転速度(10rpm)で矢印B方向に回転(自転)させ、その回転と同期して塗布ノズル9を矢印C方向(軸方向に平行)に往復移動させながら、塗布ノズル9からスリット3aに沿うようにエポキシ樹脂を滴下させることにより行われる。このとき、ロータ1が比較的低速で回転されるので、塗布ノズル9からのエポキシ樹脂の滴下の作業を位置精度良く行うことができる。
ここで、含浸されるエポキシ樹脂(熱硬化性樹脂)は、図6に示すような粘度挙動を呈することが知られており、常温(室温)においては、粘度が比較的低く一定の流動性を有するものの、液体のようなさらさらとしたものではない。塗布工程は、エポキシ樹脂の含浸が常温で行われるので、エポキシ樹脂の粘度低下を抑制することができる。このためコイル1の回転速度が比較的低速な第1の回転速度であっても、エポキシ樹脂が垂れ落ちてしまうことを防止することができる。エポキシ樹脂が含浸塗布されたロータ1は、チャック機構16に保持されて回転が継続された状態で、取出し位置へ移動される。
次いで、塗布工程が終了し、取出し位置に移動されたロータ1を、移載機構14により、加熱硬化機構13のセット位置13aへ移載して保持治具26に保持させる移載の工程が実行される。図3は、チャック機構16に保持され回転されているロータ1を、移載機構14のロボットチャック機構18が受取る際の手順を示している。即ち、まず、図3(a)に示すように、ロータ1は、取出し位置において塗布機構12のチャック機構16によってシャフト2の一端が保持された状態で矢印B方向に回転されている。移載機構14のロボットチャック機構18は、クランプ部19を開いた状態で、第1の回転速度で矢印B方向に回転しながらシャフト2の他端側からロータ1に接近(前進)する。
次いで、図3(b)に示すように、ロボットチャック機構18のクランプ部19により、ロータ1のシャフト2の他端部を把持するのであるが、このとき把持の直前にクラッチ22を切ることにより、クランプ部19がシャフト2を把持した状態で、ロータ1と一体的に矢印B方向に共回りする状態となる。引続き、図3(c)に示すように、チャック機構16によるロータ1のシャフト2の把持を開放すると共に、それと同時にクラッチ22をつなぐことにより、受取り行われる。このときには、ロータ1がクランプ部19に保持された状態で、継続して矢印B方向に回転されるようになる。
そして、図示はしないが、受取られたロータ1は、移載用ロボット17により、加熱硬化機構13のセット位置13aに移動され、セット位置13aに位置されている保持治具26に受渡される。このとき、保持治具26は、第2の回転速度(例えば20rpm)で矢印B方向に回転しており、移載用ロボット17のロボットチャック機構18は、ロータ1を受取ってから加熱硬化機構13側に受渡すまでの搬送時において、クランプ部19(ロータ1)の回転速度を、第1の回転速度から第2の回転速度に上昇させるようになっている。これにより、ロータ1の回転速度の切替えを、熱硬化性樹脂の含浸及び硬化の処理の工程に支障をきたすことなく、スムーズに行うことができる。
加熱硬化機構13のセット位置13aにおいて保持治具26に受渡されたロータ1は、図5に示すように、矢印D方向に移動され、出入口23aから熱風室23内に進入し、加熱硬化機構13による加熱硬化の工程が実行される。この加熱硬化工程では、保持治具26に保持されたロータ1が、ワーク搬送機構25により、シャフト2を水平にしながら比較的高速な第2の回転速度で矢印B方向に回転(自転)され、これと共に、熱風室23内を矢印D方向に移動(搬送)される。これにより、第1のゾーンZ1〜第6のゾーンZ6を順に通り熱風加熱により、含浸されたエポキシ樹脂の硬化がなされる。
ここで、図6に示すように、この加熱硬化工程にあって、ロータ1に塗布含浸された常温のエポキシ樹脂は、次第に加熱されていくことにより、加熱の初期において、粘度が一旦低下してさらさらな液状となり、その後さらなる加熱によって次第に粘度が上昇し硬化が進むといった粘度特性を呈する。本実施形態では、加熱硬化の工程では、第1のゾーンZ1でエポキシ樹脂の粘度が低下して液状となった場合でも、液状のエポキシ樹脂が垂れ落ちることがない程度に十分な高速(第2の回転速度)でロータ1が回転(自転)される。これにより、エポキシ樹脂は、巻線4の内部まで浸透し、且つ全体として円周方向に均等に含浸、硬化される。
また、このとき、ロータ1が最初に通過する第1のゾーンZ1においては、熱風の風速を小さくしたので、液状となったエポキシ樹脂が熱風で飛ばされるといったことを未然に防止することができる。第2〜第6のゾーンZ2〜Z6においても、先に行くほど風量が大きくなるように構成したので、含浸されたエポキシ樹脂を熱風により効率的に加熱、硬化させることができる。
更に、熱風室23内に複数のゾーンZ1〜Z6を上下に立体的に配置することによって、平面的に配置する場合と比べて省スペース化を図ることができる。しかも、エポキシ樹脂の粘度が一旦低下して液状となるのは、加熱硬化の工程の初期、つまりロータ1が下段のゾーン(この場合第1のゾーンZ1)に位置している時点なので、仮にロータ1から液状のエポキシ樹脂が下方に垂れ落ちることがあっても、別のロータ1に付着するといったことを未然に防止することができる。
加熱硬化工程を終了したロータ1は、出入口23aを通って熱風室23内から搬出され、取出し位置13bにおいて取出される。尚、加熱硬化機構13においては、ロータ1を回転及び搬送するための駆動機構27を、熱風室23の外部に区画された形態で配設するようにしたので、熱風による駆動機構27の温度上昇を抑制することができ、例えばチェーンの伸び等を防止し、駆動機構27の保護、ひいては長寿命化を図ることができる。
このように本実施例の樹脂含浸装置11及び樹脂含浸方法によれば、塗布機構12(塗布工程)、移載機構14(移載工程)、加熱硬化機構13(加熱硬化工程)を備え、ロータ1に対しエポキシ樹脂を含浸硬化させるものにあって、従来のようなロータ1に予熱をかけたうえで塗布工程を実行するものと異なり、塗布機構12(塗布工程)を、常温で実行するように構成した。
これにより、塗布工程において、エポキシ樹脂の粘度低下を抑制することができるので、ロータ1の回転速度が比較的低速であっても、エポキシ樹脂が垂れ落ちてしまうことを防止することができる。そして、加熱硬化工程がロータ1を回転させながら行われることにより、含浸されたエポキシ樹脂を落下させることなく硬化させることができる。この結果、本実施例によれば、ロータ1に対しエポキシ樹脂を含浸硬化させるものにあって、余分な樹脂の使用を抑えることができる等の優れた効果を得ることができる。
尚、上記実施例では、コイル巻装体としてのオルタネータのロータ1に適用するようにしたが、これに限らず、回転電機のロータ全般に適用することができる。また、含浸する樹脂の種類も、エポキシ樹脂に限らず、熱硬化性樹脂全般を用いることができる。また、上記実施例では、熱風室のゾーンの数や区画の仕方、温度や風量等についても、一例を示したに過ぎない。その他、塗布機構12、加熱硬化機構13のワーク搬送機構25や駆動機構27、移載機構14のハードウエア構成等についても種々の変形が可能である等、本発明は要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得るものである。
図面中、1はロータ(コイル巻装体)、2はシャフト、4は巻線、9は塗布ノズル、11は樹脂含浸装置、12は塗布機構、13は加熱硬化機構、14は移載機構、16はチャック機構、17は移載用ロボット、18はロボットチャック機構、23は熱風室、24は熱風供給機構、25はワーク搬送機構、26は保持治具、27は駆動機構、Z1〜Z6はゾーンを示す。

Claims (7)

  1. コイル巻装体に対し、熱硬化性樹脂を含浸させ、硬化させるための装置であって、
    前記コイル巻装体を、軸心を水平にして回転させながら、塗布ノズルから流動性ある熱硬化性樹脂を滴下して含浸させる塗布機構と、
    前記コイル巻装体を、軸心を水平にして回転させながら、該コイル巻装体に含浸された熱硬化性樹脂を加熱して硬化させる加熱硬化機構と、
    前記コイル巻装体を前記塗布機構から前記加熱硬化機構に移載する移載機構とを備えると共に、
    前記塗布機構は、前記コイル巻装体に対する熱硬化性樹脂の含浸を常温で実行するように構成されていることを特徴とする樹脂含浸装置。
  2. 前記塗布機構は、前記コイル巻装体を第1の回転速度で回転させ、
    前記加熱硬化機構は、前記コイル巻装体を前記第1の回転速度よりも高速の第2の回転速度で回転させるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の樹脂含浸装置。
  3. 前記移載機構は、前記コイル巻装体を、前記塗布機構から回転させた状態のまま受取り、前記加熱硬化機構まで搬送して受渡すように構成されていると共に、
    前記コイル巻装体を受取ってから受渡すまでの搬送時において、前記コイル巻装体の回転速度を前記第1の回転速度から前記第2の回転速度に上昇させることを特徴とする請求項2記載の樹脂含浸装置。
  4. 前記加熱硬化機構は、前記コイル巻装体が搬入位置から取出し位置まで移動され内部に熱風が供給される熱風室を備えると共に、
    前記熱風室は、前記搬入位置から取出し位置までに、風量の相違するものを含む複数のゾーンを有し、前記コイル巻装体が、それら複数のゾーンを順に移動されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の樹脂含浸装置。
  5. 前記複数のゾーンは上下複数段に配置され、前記コイル巻装体は、下側のゾーンを先に通過した後、上側のゾーンへ移動するように構成されていることを特徴とする請求項4記載の樹脂含浸装置。
  6. 前記加熱硬化機構は、前記コイル巻装体を回転及び移動させるための駆動機構を備え、前記駆動機構は、前記熱風室の外部に区画された形態で配設されていることを特徴とする請求項4又は5記載の樹脂含浸装置。
  7. コイル巻装体に対し、熱硬化性樹脂を含浸させ、硬化させるための樹脂含浸方法であって、
    前記コイル巻装体を、塗布機構により、軸心を水平にして回転させながら、塗布ノズルから流動性ある熱硬化性樹脂を滴下して含浸させる塗布工程と、
    前記塗布工程が完了した前記コイル巻装体を、移載機構により加熱硬化機構に移載させる移載工程と、
    前記コイル巻装体を、前記加熱硬化機構により、軸心を水平にして回転させながら、該コイル巻装体に含浸された熱硬化性樹脂を加熱して硬化させる加熱硬化工程とを含むと共に、
    前記塗布工程は、前記コイル巻装体に対する熱硬化性樹脂の含浸を常温で実行することを特徴とする樹脂含浸方法。
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