JP2014190771A - 質量測定方法及び質量測定装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】質量測定装置100は、連成振動可能な範囲で極めて弱い連成効果を持つ状態で結合した二つのカンチレバー1A及び1Bのうちカンチレバー1Aの速度フィードバックとしてカンチレバー1Aの変位x1を積分した積分値を演算し、この積分値にフィードバックゲインαを乗算してフィードバック制御信号を生成し、このフィードバック制御信号に基づきアクチュエータ6を駆動してカンチレバー1A及び1Bに対して、カンチレバー1Aの振動速度に比例した力を与えて、カンチレバー1A及び1Bを自励振動させる。そして、自励振動を検出時のカンチレバー1A及び1Bの変位x1及びx2に基づきカンチレバー1Bに付加した測定対象物の質量に相当する値を演算する。
【選択図】図3
Description
かかる技術は、同一支持部材に同一形状の二つのカンチレバーを連成振動可能に設ける。具体的に、二つのカンチレバーを同一支持部材に所定の間隔を空けて並設する。このとき、連成振動が発生するように、支持部材の二つのカンチレバーの根元部分にこれら二つのカンチレバーをつなぐオーバーハング部分を設ける。また、連成振動可能な範囲で、オーバーハング部分の幅を短くするなど連成の効果が弱くなるようにする。そして、このような構造の二つのカンチレバーの固有振動モードの形状から、カンチレバーに付加された測定対象物の微小質量を測定する。
また、少しでも粘性があるシステムでは、周波数応答曲線のピークを与える加振周波数は、システムの固有振動数とは厳密には一致せず、固有振動モードを高い精度で正確に把握することはもともと不可能であった。
本発明は、上記の問題点に着目して、正確に固有振動数で発振する固有振動モードを正確に求めることが可能で、かつ、高粘性環境中でも高精度かつ安定な質量測定を行うことが可能であり、更に、リアルタイムの質量測定を行うのに好適な質量測定方法及び質量測定装置を提供することを目的とする。
ここで、上記質量に相当する値とは、測定対象物質の質量そのもの、振幅比などの質量変化の解る値などが該当する。このことは、以下の形態5に記載の質量測定装置においても同様である。
〔形態4〕 さらに、形態4の質量測定方法は、形態1乃至3のいずれか1の構成に対して、前記複数の振動体のうち前記フィードバック値の正帰還に関与しないいずれか一つの振動体に前記測定対象物を付加することを特徴としている。
〔形態6〕 一方、上記目的を達成するために、形態6の質量測定装置は、複数の振動体を連成振動可能に結合した構成の振動部と、前記複数の振動体に予め設定した変位方向の力を付与するアクチュエータと、前記振動体の振動速度に比例したフィードバック値を正帰還して前記アクチュエータをフィードバック制御するフィードバック制御部と、前記フィードバック制御部が前記フィードバック値の演算に用いるフィードバックゲインであって、前記複数の振動体を自励振動させるフィードバックゲインを設定するゲイン設定部と、前記複数の振動体が自励振動したときの該複数の振動体の振幅を検出する振幅検出部と、前記複数の振動体の振幅に基づき、前記振動体に付加した測定対象物の質量に相当する値を検出する質量検出部と、を備えることを特徴としている。
このような構成であれば、極めて弱い連成効果を持つ状態で結合した複数の振動体が自励振動したときの複数の振動体の振幅が、振幅検出部によって検出され、質量検出部によって、検出された振幅に基づき、振動体に付加した測定対象物の質量に相当する値が検出される。
(概要)
本実施形態の質量測定方法は、同等なばね剛性と質量をもち同一支持部材に連成振動可能に設けられた二つの振動体(例えば、カンチレバー等)を有する振動部を用いる。
具体的に、二つの振動体の内、一方の振動体の振動速度(変位速度)に比例したフィードバック値を正帰還して二つの振動体に対して等しい加振入力を与える。これにより、二つの振動体に自励振動を発生させる。ここで、自励振動を発生させるために、フィードバックゲインを、予め設定した値から徐々に上げていく(または下げていく)。そうすると、まず低次の固有振動モードのみで自励振動が発生する。このときの二つの振動体の振幅比が、厳密に低次の固有振動モードに対応する。
かかる質量測定方法は、測定環境の粘性及び振動体自体の等価粘性摩擦力などを補償し、高粘性の測定環境下でも利用可能である。
図1は、本発明の実施形態に係る振動部の構成例を示す図である。
図1に示すように、振動部1は、カンチレバー1Aと、カンチレバー1Bと、支持部材1Cと、オーバーハング部1Dとを含んで構成される。
カンチレバー1A及び1Bは、共に同じ材料及び形状で構成されており、支持部材1Cに一端が固定され他端が自由端となる片持ち梁の状態で該支持部材1Cに並設(連成)されている。つまり、カンチレバー1A及び1Bは、同等なばね剛性と質量を有している。
ここで、図2は、振動部1の力学系の等価モデルの一例を示す図である。
図2に示すように、振動部1を、連成された二つのカンチレバー1A及び1Bを考慮に入れた、「ばね−質量(マス)−ダンパ」系の等価モデル(以下、連成モデルと称す)として考える。
同様に、カンチレバー1Bは、図2に示すように、支持部材1Cに一端が支持されたばね定数k2の第2ばねと、支持部材1Cに一端が支持された減衰定数c2の第2ダンパと、第2ばね及び第2ダンパの他端に支持された質量m2の第2物体とを備えたモデルとなる。
更に、かかる連成モデルでは、図2に示すように、第1物体と第2物体とは、ばね定数kcの第3ばねによって接続されている。このばね定数kcの第3ばねが、図1のオーバーハング部1Dに相当し、二つのカンチレバー1A及び1Bの連成効果を表している。
ここで、図2に示す等価モデルにおいて、カンチレバー1A及び1Bの減衰定数c1及びc2が等しいとして、c1=c2=cとする。また、カンチレバー1A及び1Bの等価剛性を表すばね定数についても、ばね定数k1及びk2が等しいとして、k1=k2=kとする。更に、外部からカンチレバー1A及び1Bの支持点に変位Δxを与える。このとき、システム(図2の連成モデル)の運動方程式は下式(1)のようになる。
α∫x1dt ・・・(2)
上式(2)から、上式(1)は、下式(3)のように書き換えられる。
β=α(m/k)1/2 ・・・(5A)
2γ=c/(m/k)1/2 ・・・(5B)
δ=Δm/m ・・・(5C)
κ=kc/k ・・・(5D)
上式(5A)〜(5D)において、βは無次元フィードバックゲイン、γは減衰係数、δはカンチレバーの質量に対する付加質量の比、κはカンチレバーの剛性と連成剛性の比を表す。
更に、質量マトリックスM、減衰マトリックスC及び剛性マトリックスKを下式(6A)〜(6C)のように定義する。
上式(4)から、システムの固有値並びに固有ベクトルを調べるために、剛性マトリックスKを対角化する。剛性マトリックスKの固有方程式を解くと、固有値λ、並びに固有ベクトルpが得られる。具体的に、振動モードが1次モードでかつ固有値が「λ=ω1 2」のときに、固有ベクトルp1が下式(7)のように得られる。
c11=−γ(−2+δ)−β(−1+δ/4κ) ・・・(10)
c12=−γδ−β(1+δ+3δ/4κ) ・・・(11)
c21=−γ−β/4κ ・・・(12)
c22=−γ(−2+δ)+βδ/4κ ・・・(13)
上式(7)及び(8)より、固有ベクトルはδ/κ並びにδによって決まることが解る。ここで、δは、カンチレバーの質量に対する、カンチレバーに付加した測定対象物の質量の比(即ち、δ=Δm/m)である。また、κは、カンチレバー単体の等価剛性に対する、連成効果のばね剛性の比(即ち、κ=kc/k)である。従って、κの値を小さくしておけば、微小質量の場合でも(質量比δが十分に小さい場合でも)、その効果が振動モードの変化を発生させる。
次に、上式(9)を、多重尺度法を用いて解析する。ここでは、フィードバックゲインの適切な設定により、カンチレバー1A及び1Bを自励発振の臨界状態近傍に設定する。その結果、粘性環境下でも、微小質量の測定が可能になる。即ち、臨界状態を実現することにより、測定環境の粘性の影響とフィードバック制御の効果を含んだ上式(9)に含まれる一階微分の係数は全て微小量になり、フィードバックにより等価的に測定環境中の粘性効果を相殺できる。このようにして、微小量に設定された減衰マトリックスの要素、即ち、上式(10)〜(13)で得られた対角化されたマトリックスの要素を、微小パラメータε(0<ε≪1)を用いて下式(14A)〜(14D)のように表す。
u1=u10+εu11 ・・・(15A)
u2=u20+εu21 ・・・(15B)
また、多重尺度法を導入して、「t0=t」、「t1=εt」とする。
以上より、初期条件で決まる定数α0、b0、φ0及びψ0を用いて、u1及びu2は、下式(16A)及び(16B)のように求まる。
β1=γ(−2+δ)/{1−(δ/4κ)} ・・・(17A)
β2=γ(−2+δ)/(δ/4κ) ・・・(17B)
1.β1<β→自励発振は起こらない。
2.β2<β<β1→周波数ω1のみ(1次モードのみ)で自励発振が起きる。
3.β<β2→周波数ω1及びω2の両方で(1次及び2次モード同時に)自励発振が起きる。
実際の質量測定においては、1次モードのみで自励発振させる必要があるので、上記2.の条件を満足するようなフィードバックゲインを設定する。
具体的に、自励振動を発生したときの1次モードの振動は、下式(18A)及び(18B)で表せる。
1/(1−δ/2κ) ・・・(19)
従って、フィードバックゲインαの値を調整して、カンチレバー1A及び1Bに自励振動を発生させ、そのときのカンチレバー1A及び1Bの振幅比を測定することで、測定対象物の質量に相当する値を測定することが可能となる。
次に、図3に基づき、本実施形態に係る質量測定装置の概略構成を説明する。図3は、本実施形態に係る質量測定装置の一例を示す概略構成図である。
図3に示すように、本実施形態に係る質量測定装置100は、振動部1と、第1変位センサ2Aと、第2変位センサ2Bと、変位検出器3と、積分器4と、ゲイン設定部5Aと、増幅器5Bと、アクチュエータ6と、ドライバ7と、自励発振検出部9と、演算器10とを含んで構成される。
振動部1は、上記図1に示す構成と同様であり、連成振動可能に構成されたカンチレバー1A及び1Bを備える。また、本実施形態において、測定対象物の質量を測定時には、カンチレバー1Bに測定対象物を付加する。
第2変位センサ2Bは、カンチレバー1Bの変位を検出するためのセンサであり、そのセンサ出力を変位検出器3に供給する。
変位検出器3は、第1変位センサ2Aからのセンサ出力に基づき、カンチレバー1Aの変位x1を検出する。更に、変位検出器3は、第2変位センサ2Bからのセンサ出力に基づき、カンチレバー1Bの変位x2を検出する。変位検出器3は、検出した変位x1を、積分器4、自励発振検出部9及び演算器10にそれぞれ供給する。また、変位検出器3は、検出した変位x2を、演算器10に供給する。
積分器4は、変位検出器3からの変位x1を積分してカンチレバー1Aの変位x1の積分値∫x1dtを算出し、算出した∫x1dtを増幅器5Bに供給する。
アクチュエータ6は、ドライバ7から供給される駆動信号に基づき、振動部1にカンチレバー1Aの振動速度に比例した力Fを与えるものである。アクチュエータ6としては、例えば、ピエゾ素子、ボイスコイルモータ、静電アクチュエータなどを用いることができる。
自励発振検出部9は、カンチレバー1Aの振動変位x1に基づき、カンチレバー1Aが自励発振しているか否かを検出する。自励発振検出部9は、自励発振していると検出したときに、自励発振していると検出したことを示す信号を、ゲイン設定部5A及び演算器10にそれぞれ供給する。
演算器10は、自励発振を検出したことを示す信号に応じて、自励発振検出時のカンチレバー1A及び1Bの振動変位x1及びx2に基づき、測定対象物の質量に相当する値としてカンチレバー1A及び1Bの振幅比P2/P1を演算する。
具体的に、各種制御や演算処理を担うCPU(Central Processing Unit)と、ワークメモリの役割を担うRAM(Random Access Memory)と、上記各機能を実現するための専用のプログラムやプログラムの実行に必要なデータ等を記憶するROM(Read Only Memory)と、各構成要素にデータを伝送するためのデータ伝送用バスとを備えている。
次に、図4に基づき、質量測定装置100において実行される質量測定処理の処理手順を説明する。図4は、質量測定処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図4に示すように、まず、ステップS100に移行し、ゲイン設定部5Aにおいて、増幅器5Bのフィードバックゲインαを初期値に設定する。その後、ステップS102に移行する。この初期値は、例えば、零など、任意に設定することができる。
ステップS102では、自励発振検出部9において、カンチレバー1Aが振動(自励発振)したか否かを判定し、振動したと判定した場合(Yes)は、振動を検出したことを示す信号を演算器10に供給して、ステップS104に移行する。一方、振動していないと判定した場合(No)は、振動をしていないと検出したことを示す信号をゲイン設定部5Aに供給して、ステップS108に移行する。
ここで、カンチレバー1Aが振動したか否かの判断は、例えば、振動変位x1が予め設定したしきい値以上変化したときに、カンチレバー1Aが振動したと判断するようにすればよい。
ステップS106では、演算器10において、ステップS104で獲得した振動変位x1及びx2に基づき、カンチレバー1A及び1Bの振幅P1及びP2を演算する。そして、測定対象物の質量に相当する値として、これら振幅P1及びP2の比P2/P1を演算する。その後、一連の処理を終了する。
次に、図5に基づき、本実施形態の質量測定装置100の動作を説明する。
図5(a)及び(b)は、高粘性の液体中に存在する測定対象物の質量を測定する場合の質量測定方法の一例を示す図である。
以下、容器に満たされた高粘性の液体中に存在する測定対象物の質量を測定する場合の動作を説明する。
図5(a)及び(b)に示すように、液体中に存在する測定対象物の質量を測定する場合、カンチレバー1A及び1Bの一部を液体中に挿入する。このとき、液体中の測定対象物がカンチレバー1Bに付加されるように、該カンチレバー1Bに、例えば、測定対象物のみを吸着させる性質を有した薬剤を予め塗布しておく。なお、測定対象物の付加位置は、カンチレバー1Bの先端や根元付近では無く、中央付近であることが望ましい。従って、ここでは、カンチレバー1Bの中央付近に吸着剤を塗布したこととする。
これにより、図5(a)及び(b)に示すように、カンチレバー1Bの中央付近に測定対象物が付加される。
ここで、測定開始の初期段階においては、カンチレバー1Aが変位していないため、第1変位センサ2A及び変位検出器3で検出される変位x1は「0」となり、積分器4の出力∫x1dtも「0」となる。ところが、実際は周囲環境の雑音等が影響して、変位x1は「0」とならず、何らかの値を有する。従って、第1変位センサ2Aではこの変位x1が検出され、積分器4では、この変位x1から、積分値∫x1dtが演算される。この積分値∫x1dtは、増幅器5Bに供給され、設定されたフィードバックゲインαと∫x1dtとが乗算されて、その乗算結果であるα∫x1dtがフィードバック制御信号としてドライバ7に入力される。
ドライバ7は、増幅器5Bから受信したα∫x1dtに基づき、カンチレバー1Aの振動速度に比例した力Fを振動部1(カンチレバー1A及び1B)に与えるためのアクチュエータ6の駆動信号を生成し、生成した駆動信号をアクチュエータ6に供給する。
アクチュエータ6は、この駆動信号に応じて駆動し、振動部1(カンチレバー1A及び1B)に力Fを与える。このようにして、フィードバックループが形成されると共に、振動部1に、カンチレバー1Aの振動速度に比例した力Fが与えられる。
演算器10では、自励振動したと検出したことを示す信号の受信に応じて、変位検出器3からカンチレバー1A及び1Bの振動変位x1及びx2を獲得する。そして、獲得した振動変位x1及びx2に基づき、カンチレバー1A及び1Bの振幅P1及びP2を演算する(ステップS104)。
更に、演算器10は、演算した振幅P1及びP2に基づき、測定対象物の質量に相当する値として、振幅比P2/P1を演算する(ステップS106)。
ここで、上記実施形態において、増幅器5B及びドライバ7が、フィードバック制御部を構成し、第1変位センサ2A、第2変位センサ2B及び変位検出器3が、振幅検出部を構成し、演算器10が、質量検出部を構成する。
また、上記実施形態において、ステップS104〜S106が、質量を検出するステップに対応する。
具体的に、連成振動可能に構成した二つのカンチレバー(以下、連成カンチレバーと称す)の一方に微小質量の測定対象物を取り付け、これら二つのカンチレバーに、一方のカンチレバーの振動速度に比例した力を付与(速度フィードバックを入力)することで該二つのカンチレバーを自励振動させる。そして、自励発振中の二つのカンチレバーの振幅を測定し、測定した振幅を用いて上式(7)で導かれた振幅比と付加質量との関係を比較する実験を行った。
以下、実験に用いる二つのカンチレバーを区別するときは、それぞれ第1カンチレバー、第2カンチレバーと呼ぶ。また、区別しない場合は、単にカンチレバーと呼ぶ。
カンチレバーの支持部は、ピエゾアクチュエータにより予め設定した方向(カンチレバーの板面に垂直となる方向(x方向))に加振される。
ここで、理論で導入した速度フィードバックゲインαは、レーザ変位計のゲインG1と、DSP装置で与えるゲインG2と、ピエゾアクチュエータの圧電定数d33とを用いて、下式(20)で表せる。
α=d33G1G2 ・・・(20)
κ=1/2(f2/f1)2−1/2 ・・・(21)
カンチレバーの固有周波数を求めるため、カンチレバーに外乱を与えて自由振動させ、その時刻歴波形をFFT解析(周波数分解能:1.00×10-2[Hz])した。その結果、システムの固有周波数は、「f1=6.55[Hz],f2=6.62[Hz]」と求めることができた。従って、上式(21)より、無次元連成ばね定数κは、「κ=1.07×10-2」と決定される。
δ=おもりの質量の合計/14.56[g] ・・・(22)
今回は、おもりの個数を0個から5個まで順に変え、その都度、入力フィードバックゲインを零から下げ、自励振動を発生する最大のフィードバックゲインを入力して実験を行った。また、以後、実験によって計測した第1カンチレバーの変位をP1、第2カンチレバーの変位をP2とする。
ここで、図6(a)〜(d)は、自励発振時のカンチレバーの変位の時刻歴波形(実験結果の一例)を示す図である。
図中の「□」でマークした点(5[mm]付近)の振幅を測定し、その振幅比を計算した。
おもりを付加しない場合、第1カンチレバー及び第2カンチレバーの測定振幅は、図6(a)及び(b)に示すように、両方とも略同じ振幅位置となっている。
この実験によって、質量比「δ=3.87×10-3」に対して、固有モードが約14[%]変化しており、振幅比1.17を計測することができた。従って、計測感度は、約300倍となる。
また、付加質量を与えたときに振幅比が1よりも最大で1.84倍ほど大きくなり、付加質量の効果を振幅比により感度良く捉えていることが解る。
従来の手法として、(1)連成していない一つのカンチレバーを自励発振させ、その固有振動数の変化から質量を計測する方法、(2)連成振動可能に構成した二つのカンチレバーを強制加振し、共振状態での振幅比から計測する方法の2つを取り上げる。
はじめに、一つのカンチレバーを自励発振させ、その固有振動数の変化から質量を計測する従来手法(1)の実験を行った。なお、カンチレバーの材質や形状は、上記本発明に係る実験で用いたものと同様となる。また、カンチレバー以外の装置についても、上記本発明に係る実験で用いたものと同様のものを用いた。
従って、固有振動数に比べて振幅比の方が1.08×102〜1.87×102倍ほど、付加質量の効果が表れることが解る。
また、実験での最小の質量比「δ=3.87×10-3」に対しては、振幅比の相対変化が「1.57×10-1」であるのに対し、固有振動数の相対変化は「1.44×10-3」である。即ち、振幅比の相対変化の方が固有振動数の相対変化よりも十分に大きいことが解る。
まず、第2カンチレバーの支持点から120[mm]の位置に1個あたりの質量が0.056[g]のおもりを取り付ける。おもりの個数を0個から5個まで順に代え、発信器から正弦波を入力する。入力する周波数を調整し、カンチレバーを共振状態にする。共振点付近でのカンチレバーの振幅を測定し、その振幅比を計算する。
図8(a)に示すように、付加質量を与えないときは、共振点付近での二つのカンチレバーの振幅がほぼ同じとなっているのに対して、図8(b)に示すように、付加質量を与えたときは、共振点付近での二つのカンチレバーの振幅が異なっていることが解る。
この結果から、微小な質量に対しても自励発振中の応答振幅比の方が強制加振による共振状態中の応答振幅比に比べ高精度であることが解る。
この違いについて、次の理由が挙げられる。
従来の強制加振による方法については、強制振動は共振点のピークを正確に測定するのが困難である。更に、粘性環境のもとではピークを与える加振周波数は、固有振動数からずれ、またそのときの振幅比は固有モードからもずれる。また、高粘性環境下では、ピークそのものが周波数応答曲線に存在しなくなるため、固有振動モードに対応する振幅比を測定することは、強制加振では一切不可能になる。
図10には、第2カンチレバーに1個あたり0.056[g]のおもりを1個取り付けたときと、2個取り付けたときの本発明の手法で測定した振幅比が示されている。
なお更に、図10には、固有振動数ωと、固有振動数ω’との比である固有振動数比ω’/ωが示されている。
図10に示すように、第2カンチレバーにおもりを1個取り付けたときの本発明の手法による振幅比は「1.09」となっており、2個取り付けたときの振幅比は「1.21」となっている。
上記実施形態において、二つのカンチレバーのうち一方の振動速度に比例したフィードバック値を正帰還して、二つのカンチレバーを自励振動させる構成としたが、この構成に限らない。例えば、二つのカンチレバーの双方の振動速度に比例したフィードバック値を正帰還して、二つのカンチレバーを自励振動させる構成としてもよい。
また、上記実施形態は、本発明の好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、上記の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。また、上記の説明で用いる図面は、図示の便宜上、部材ないし部分の縦横の縮尺は実際のものとは異なる模式図である。
また、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
Claims (7)
- 複数の振動体を連成振動可能に結合した構成の振動部と、
前記複数の振動体に予め設定した変位方向の力を付与するアクチュエータと、
前記振動体の振動速度に比例したフィードバック値を正帰還して前記アクチュエータをフィードバック制御するフィードバック制御部と、を含む質量測定装置を用いた質量測定方法であって、
前記フィードバック制御部が前記フィードバック値の演算に用いるフィードバックゲインであって、前記複数の振動体を自励振動させるフィードバックゲインを設定するステップと、
前記複数の振動体が自励振動したときの該複数の振動体の振幅を検出するステップと、
前記複数の振動体の振幅に基づき、前記振動体に付加した測定対象物の質量に相当する値を検出するステップと、を含むことを特徴とする質量測定方法。 - 前記質量に相当する値は、前記複数の振動体の振幅比であることを特徴とする請求項1に記載の質量測定方法。
- 前記フィードバック制御部は、前記複数の振動体のいずれか一つの振動体の振動速度に比例したフィードバック値を正帰還して前記アクチュエータをフィードバック制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の質量測定方法。
- 前記複数の振動体のうち前記フィードバック値の正帰還に関与しないいずれか一つの振動体に前記測定対象物を付加することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の質量測定方法。
- 前記振動部は、前記複数の振動体を連成振動可能な範囲で極めて弱い連成効果を持つ状態で結合して構成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の質量測定方法。
- 複数の振動体を連成振動可能に結合した構成の振動部と、
前記複数の振動体に予め設定した変位方向の力を付与するアクチュエータと、
前記振動体の振動速度に比例したフィードバック値を正帰還して前記アクチュエータをフィードバック制御するフィードバック制御部と、
前記フィードバック制御部が前記フィードバック値の演算に用いるフィードバックゲインであって、前記複数の振動体を自励振動させるフィードバックゲインを設定するゲイン設定部と、
前記複数の振動体が自励振動したときの該複数の振動体の振幅を検出する振幅検出部と、
前記複数の振動体の振幅に基づき、前記振動体に付加した測定対象物の質量に相当する値を検出する質量検出部と、を備えることを特徴とする質量測定装置。 - 前記振動部は、前記複数の振動体を連成振動可能な範囲で極めて弱い連成効果を持つ状態で結合して構成されていることを特徴とする請求項6に記載の質量測定装置。
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JP2013065133A JP2014190771A (ja) | 2013-03-26 | 2013-03-26 | 質量測定方法及び質量測定装置 |
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