次に、添付図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。最初に、図1、図5及び図6を参照して、本発明に係る第1実施形態のねじの締結状況の試験方法及び装置について説明する。
図1は、ねじの締結状況の試験装置10の本体部10Aを示す正面図(a)及び本体部10Aの主要部分(中心部分)を示す平面図(b)である。防振台11上に複数(図示例では4本)の支柱12を介して基板13が固定されている。この基板13には、加振器14が吊り下げられた状態で固定されている。加振器14は、特に限定されないが、例えば、ボイスコイルモータ等の駆動モータを内蔵し、図示例では駆動モータにより垂直方向(第1の方向)に振動する加振部14aを備える。加振部14aは、基板13の中央に設けられた開口部13aを通して上方へ露出している。加振部14a上には接続部材15が固定されている。加振部14aの振動周波数と振幅は、上記駆動モータに与える駆動信号の周波数fdと電圧Vdによって制御できるようになっている。例えば、加振器14に与える交流電力により、50~200Hz(例えば、50Hz、60Hz,100Hz、200Hzなど)の周波数で加振することができる。また、振幅も、電圧Vdを0.1~1.0Vの範囲で調整することにより、fd=50Hzのとき98~796μm、fd=100Hzのとき35~250μm、fd=200Hzのとき6~40μmといった形で変化させることができる。
接続部材15は、加振部14aの中心部に沿った垂直な取付面15aを有し、この取付面15a上にねじ締結体16が取り付けられる。ねじ締結体16は、上記取付面15a上に固定された第1部材161と、この第1部材161と重なるように配置された第2部材162と、第1部材161と第2部材162を貫通するボルト(ねじ)163と、このボルト163の軸部に螺合し、第1部材161と第2部材162を締め付けるナット164とを備える。特に限定されるものではないが、図示例では、第1部材161と第2部材162はそれぞれ板状体である。なお、取付面15aには、上記ボルト163の軸部の先端及びナット164を収容するための凹部15bが設けられる。ここで、接続部材15は、図5に示すように、加振器14の加振部14aの軸線14xがねじ締結体16を通過するように、ねじ締結体16を配置するように構成されることが好ましい。これにより、加振器14による加振方向F(第1の方向)とねじ締結体16の振動方向とのずれや、当該ずれに起因して生ずるねじ締結体16の振動の加振方向Fと交差する方向の揺れ(振れ)を低減できる。
上記第1部材161は、上記接続部材15に対して、取付部材17により取り付けられる。取付部材17は、取付ブラケット17a、17bを備える。これらの取付ブラケット17a,17bを用いてボルト等により第1部材161が取付面15a上に固定される。図示例では、取付ブラケット17aは第1部材161の下側の二辺を下方から支持するように接続部材15(取付面15a)に固定され、取付ブラケット17bは第1部材161の上側の二辺を上方から支持するように接続部材15(上面15c)に固定される。
図5は、上述のようにねじ締結体16を取り付けた接続部材15と、ねじ締結体16のねじ構造の軸線16xの方向(第2の方向)の位置を測定するための位置測定手段であるレーザ変位計18と、ねじ締結体16の加振方向Fの振動を検出するための位置測定手段(実質的には振動検出手段)であるレーザ変位計19と、これらのレーザ変位計18,19による測定結果を表示するとともに、当該測定結果による振動態様を表示するように構成された、位置測定手段の一部と振動計測手段を構成する計測機101とを示す説明図である。ねじの締結状況の試験装置10は、上記本体部10Aと、上記レーザ変位計18,19及び計側機101から構成される検出部10Bとを有する。
本実施形態のねじの締結状況の試験装置10では、レーザ変位計18により、ねじ締結体16のねじ構造の軸線16xの方向の第2部材162の位置(表面の光反射面の位置)を測定し、この位置の振動の範囲及び/又は振幅のばらつきなどといった振動態様を検出する。レーザ変位計18は、レーザ光18iを第2部材162の表面に照射し、当該表面(光反射面)により反射された反射光18rを検知することにより、当該表面の測定方向Eの位置との間の距離を測定することができる。ここで、図示例では、測定方向Eは、ねじ締結体16のねじ構造の軸線16xの方向である。ただし、測定方向Eは、図示例のように軸線16xの方向(第2の方向)と一致する場合に限らず、軸線16xの方向(第2の方向)との間に90度未満の角度を有していてもよい。これは、レーザ変位計18により軸線16xの方向のねじ締結体16の位置を測定できればよいので、測定信号に上記方向の検出成分が含まれていればよいからである。
また、ねじ締結体16の測定位置としては、ねじ構造の軸線16xの方向の位置であればどこでも構わない。ただし、特に、第1部材161と第2部材162の重なった部分の上記軸線16xと交差(好ましくは直交)する表面の位置を測定することが好ましい。また、ボルト163のヘッド部やナット164の表面であってもよい。このように、上記測定位置は、本実施形態のように、第2部材162やボルト163又はナット164の一部など、加振される第1部材161に対してねじ構造を介して接続された部分であることが好ましい。これは、加振器14により加振されることにより生じた第1部材161の振動(駆動振動成分)に起因してねじ構造を介して他の部分が振動する態様(従動振動成分の態様)がねじ構造の締結状況を反映するため、この従動振動成分をなるべく多く検出することが、ねじの締結状況の高精度の把握に繋がるからである。ただし、ねじ締結体16の任意の箇所(上記第1部材161を含む。)の振動態様には必ず上記従動振動成分の態様の一部が含まれると考えられるから、上記のような測定位置に限定されるものでないことは勿論である。
レーザ変位計19は、ねじ締結体16の加振器14による加振方向Fの振動を検出する。具体的には、ねじ締結体16の任意の箇所又はこれに直接若しくは間接的に固定された加振部14aや接続部材15、或いは、取付部材17(17a,17b)の表面にレーザ光19iを照射し、その反射光19rを検知することにより、当該表面の加振方向Fの振動状態を検出することができる。この例ではレーザ変位計19を用いることから、上記表面の加振方向Fの位置を測定していることとなるが、ここでは、加振器14による加振によるねじ締結体16の振動状態(上記駆動振動成分の状態)、すなわち、加振方向Fの振動の周波数と振幅を検出することを目的としている。なお、加振方向Fの位置測定や振動測定の測定方向は、上述の軸線16xの方向の測定と同様に、加振方向F(第1の方向)の成分を測定可能であれば、加振方向F(第1の方向)そのものでなくても構わない。
なお、本実施形態のねじの締結状況の試験方法において、レーザ変位計18とレーザ変位計19を一つのレーザ変位計で兼用しても構わない。また、それぞれの測定又は検出において、位置測定手段又は振動検出手段は、ねじ締結体16に対して非接触で、位置の測定又は振動の検出を行うことができるものであればよく、上記レーザ変位計に限定されるものではない。一般的に、非接触方式で位置を測定できる方法としては、光検出方式や磁気検出方式などが挙げられる。例えば、近接センサがその一例であるが、これには、誘導形、静電容量形、超音波形、光電形、磁気形などがある。なお、レーザ変位計は、上記測定部18,19と、これらの測定部18,19から送出される信号に基づいて、被測定部の位置や当該位置の時間経過を示す振動波形を導出し、好ましくは、これらを表示する計測機101とで構成されると考えることもできる。ここで、計測機101には、軸線方向位置測定値表示部101aと、加振方向位置測定値表示部101bと、軸線方向振動波形表示部101cと、加振方向振動波形表示部101dとが設けられる。
図6は、本実施形態のねじ締結体16に対するねじの締結状況の検出過程若しくはねじの締結状況の検出システムの構成を示す概略構成図である。まず、加振器14を稼働させ(加振手段により)、接続部材15を介してねじ締結体16を加振する。これによってねじ締結体16は加振方向Fに振動する。これが駆動振動成分である。この振動状態のねじ締結体16に対して位置測定手段であるレーザ変位計18によりねじ構造の軸線16xの方向である測定方向Eの位置を測定し、その位置の時間変化を示す位置測定信号18tを振動態様検出器18Aに出力する。この振動態様検出器18Aは、入力された位置測定信号18tに基づいて、上記位置の振動の範囲や振幅のばらつきを示す位置測定信号18tの波形を形成する。そして、この波形そのものや波形を間接的に示す情報を含む振動波形信号16dを出力する。この振動態様検出器18Aは、図示しない動作プログラムを図示しないコンピュータ装置によって動作させること等により、上記検出部10Bの機能実現手段として構成できる。
次に、上記のように検出されたねじ締結体16の振動波形信号(例えば、振動波形そのもの、或いは、振動の範囲、振幅のばらつきを示す信号)16dは、ねじ締結状況判定器18Bに出力される。このねじ締結状況判定器18Bでは、上記振動波形信号16dに基づいて、ねじ締結体16のねじ構造の締結状況を判定し、それを判定結果を出力する。このねじ締結状況判定器18Bも、上記振動態様検出器18Aと同様に動作プログラムをコンピュータ装置によって動作させること等により、上記検出部10Bの機能実現手段として構成できる。ねじ構造の締結状況の判定は、上記振動波形信号16dによって示される、ねじ締結体16の上記軸線方向の位置の振動の範囲の基準位置からのずれ(図5に示す測定表面(第2部材162の表面)であれば、上記位置の振動の範囲の増大方向へのずれ)、或いは、上記軸線方向の位置の振幅のばらつきの変化(図示例であれば、ばらつきの増加)の程度に応じて行われる。ここで、上記のずれ量やばらつきが増加するほど、ねじ構造の締結状況は緩む方向に進んでいると判定される。このようにして得られたねじ締結状況の判定結果16sは、判定表示手段である判定表示器18Cによって表示される。ここで、ねじ締結状況の判定結果16sは、文字(列)、数値、記号、色などの種々の方法で表示できる。例えば、ねじ締結状況の判定結果16sとしては、緩み状態か否か(緩み状態の有無)、締結状況(緩みの程度)の段階を表示する数値(例えば、10段階であれば、1~10までの数値)とすることができる。一方、判定表示器18Cは、上記コンピュータ装置に接続された出力装置、例えば、表示モニタや印刷機などによって構成できる。
図5に示すように、上記位置測定信号18tは、計測機101の上記軸線方向位置測定値表示部101aに時間的に変化する数値として表示される。また、上記位置測定信号19tは、計測機101の上記加振方向位置測定値表示部101bに時間的に変化する数値として表示される。さらに、上記振動波形信号16dは、位置測定信号18tをサンプリングする等により、計測機101の上記軸線方向振動波形表示部101cに振動波形(例えば、縦軸が振幅、横軸が時間の二次元グラフ)として表示される。また、上記位置測定信号19tから求められた加振方向の振動波形が、位置測定信号19tをサンプリングする等により、上記加振方向振動波形表示部101dに振動波形(例えば、縦軸が振幅、横軸が時間の二次元グラフ)として表示される。なお、軸線方向振動波形表示部101cや加振方向振動波形表示部101dの表示内容は、それまでの平均波形を示すようにしてもよく、或いは、定期的に、若しくは、適宜の操作により、その都度更新されるようにしてもよい。
ここで、前述のように、レーザ変位計19により、ねじ締結体16の加振方向Fの振動状態を検知し、位置測定信号19tを出力する場合には、この位置測定信号19tを上記振動態様検出器18A及び/又は上記ねじ締結状況判定器18Bに入力し、上記振動波形信号16dの出力処理や上記ねじ締結状況判定結果16sの判定処理に利用することができる。例えば、上記位置の振動の範囲のずれ量や振幅のばらつきの程度を求める際に、上記位置の軸線方向の振動波形に対して上記位置測定信号19tを基準信号として用いることによってノイズ除去等を施すことができる。また、上記振動波形信号16dにより示される軸線16xの方向の振動態様のうち、振動の範囲の安定性や振幅のばらつきは、基本的に、ねじ締結体16が緊締状態にあるときには、上記位置測定信号19tから得られる加振方向Fの振動態様の振動の範囲の安定性や振幅のばらつきとほぼ同様である。一方で、ねじ締結体16が緩み状態にあるとき、或いは、緊締状態から緩み状態へ移行したときには、加振方向Fの振動の範囲の安定性や振幅のばらつきに比べて、軸線16xの方向の振動の範囲の安定性が低下し、振幅のばらつきも増大する。したがって、軸線16xの方向の振動態様と加振方向Fの振動態様とを対比することによって、ねじ締結体16のねじの締結状況を判定するようにしてもよい。
さらに、上記位置測定信号19tは、実際のねじ締結体16の加振方向Fの振動状態、すなわち、同方向の振動の周波数や振幅を示すため、加振器14(加振手段)によって標準の振動状態が得られているか否かの確認や、加振方向Fの標準の振動状態からのずれによる影響を解消するために、例えば、上記振動波形信号16dや上記ねじ締結状況判定結果16sを加振方向Fの標準の振動状態からのずれの程度に応じて修正するために用いてもよい。ただし、上記位置測定信号19tを単に基準信号として表示するだけでも構わない。例えば、上記位置測定信号19tの波形を上記振動波形信号16dの波形と対比して示すことなどが考えられる。
本実施形態では、ねじ締結体16を加振して加振方向F(第1の方向)に振動させた状態で、光を用いて非接触で測定方向E(すなわち、ねじ締結体16のねじ構造の軸線16xの方向(第2の方向))のねじ締結体16の位置を測定し、その位置測定信号18tからねじ締結体16の軸線16xの方向の振動波形信号16d(例えば、振動の範囲や振幅のばらつき)を導出する。このようにすると、ねじ締結体16自体の振動態様に基づいて、ねじ構造の締結状況を確実に把握することができる。特に、振動波形信号16dに基づいてねじ構造の締結状況を判定し、ねじ締結状況判定結果16sを求めることにより、ねじ締結状況を客観的に示すことができる。この試験方法では、例えば、従来のロードセルや圧力センサなどのようにねじ締結体16の振動系に影響を与える虞がなく、また、電気抵抗の測定のように、振動系から悪影響を受けやすい物理量を測定するものでもないので、ねじ構造の締結状況を高精度に検出できる。特に、測定に際してねじ構造以外のロードセルや圧力センサなどの部材を介在させる必要がないため、一般の構造体におけるねじ締結体に近い状況で測定を行うことができる。
また、本実施形態では、加振器14により加振される第1部材161に対してねじ構造を介して接続される第2部材162を可動に構成し、固定していない。図示例において、第2部材162には、ボルト163とナット164等によるねじ構造による締付作用のみが与えられ、その他の拘束力は受けない。このため、加振器14によりねじ締結体16を確実に加振することができる一方で、ねじ構造自体に過剰な負荷を与える虞を回避でき、ねじ構造に対して検出に必要な負荷のみを与えて、ねじの締結状況適切に検出することができる。すなわち、従来の軸直角振動方式ねじ緩み試験のように振動によりねじの緩みを発生させるといった目的を有しない場合には、ねじ締結体16の現時点でのねじの締結状況を検出するだけでよいため、過剰な応力を与える必要がないから、加振時の振幅も低減できるので、ねじ構造の周囲に生ずる歪も抑制できる。ここで、ねじ締結体16の振動によりねじ構造に与えられる負荷は、基本的に第2部材162及びこれに接続された質量による慣性力となる。
上記の慣性力は、第2部材162自体の形状寸法(大きさや形状)や比重によって設定できるほか、後述するように、第2部材162に接続固定される錘その他の部材の形状寸法(大きさや形状)や比重によって適宜に設定することができる。このように構成される結果、本実施形態では、10mmφ以下の小径のボルトやねじなどを用いたねじ締結体16にも支障なく用いることができる。従来の軸直角振動方式ねじ緩み試験機によるねじの緩み易さを判定する試験では、加振によってねじに緩みを生じさせるために大きな振幅を与える必要がある上に第2部材162を固定するため、小径のボルトやねじでは、大きな損傷を受けたり、破断したりし、試験そのものができなくなる場合があった。本実施形態では、ねじ構造を緩める機能が不要である場合には、ねじ構造に合わせるために、或いは、ねじの締結状況の検出精度を高めるために、慣性力、加振周波数、振幅等を、より広い範囲で設定することができる。また、加振の振幅を或る程度確保すれば、上記のような試験不能の事態を回避しつつ、上記慣性力を或る程度大きくすることにより、従来の緩み易さを確認する試験機のように、ねじ構造を緩めることができる機能をも付与することができる。
次に、図2を参照して、本発明に係る第2実施形態について説明する。なお、上記第1実施形態における図5及び図6に示す内容に関する上述の説明は、第2実施形態においても共通するため、これらの内容に関する重複する説明事項は省略する。
本実施形態では、上記第1実施形態における第2部材162の代わりに、左右に延びるアーム形状の第2部材165を有する。しかし、その他の構成については、第1実施形態と全く同じであるため、同じ部分の説明は省略する。この第2部材165は、ボルト163及びナット164によって第1部材161に対して締め付けられた中央部分165aと、この中央部分165aから左右に延在する一対のアーム部165b、165bと、これらのアーム部165bの先端に固定された錘部165c,165cを備える。また、第2部材165は、左右の錘部165cに接続され、それぞれ下方へ延伸して、上述の基板13の表面に向かう延長部165dを備える。延長部165dの先端は、例えば、基板13の表面に当接していてもよいが、図示例では、基板13の表面から僅かに離れている。
本実施形態では、第2部材165に中央部分165aから延在するアーム部165b及びこれに接続された錘部165cを設けることによって、第2部材165に作用する慣性力を大きくしているため、ねじ締結体16のねじ構造に第1実施形態よりも大きな負荷を与えることができる。このため、ボルト163及びナット164によって構成されるねじ構造の耐力が大きい場合に、当該ねじ構造に十分な負荷を与えることによって、ねじ構造の締結状況を検出しやすくしたり、検出精度を高めたりすることができる。また、或る程度の加振による振幅を確保する必要はあるが、上記ねじ構造に大きな負荷を与えることによって、意図的にねじ構造を緩め、これによって、ねじ締結体16の緩み易さを判定する試験を行うことも可能である。さらに、アーム部165bと錘部165cからなる左右の対称構造は、加振時における軸線16x周りの回動成分の抑制にも寄与する。
また、第2部材165には、下方へ伸びて基板13の表面に極めて近い位置まで達する延長部165dを設けることにより、第1部材161が加振されてねじ締結体16に振動が発生したとき、その振動によってねじ構造の軸線16xの周りを回動する方向の揺動運動が発生することをその規制作用により抑制することができる。図示例では、左右一対の延長部165dを設けることで、左右いずれの向きの回動をも、基板13の表面による規制作用により、抑制できる。なお、このような回動抑制手段としては、例えば、第1部材161と第2部材162,165(例えば、中央部分165a)との間において、ねじ構造の軸線16xの周りに形成した回動方向のストッパ構造などによって構成してもよい。
本実施形態によれば、第2部材165の質量(或いは、第2部材に接続された質量)が増大することにより、ねじ締結体16が振動する際の慣性力が大きくなるため、ねじ構造に大きな負荷を与えることができる。したがって、加振により与えられた振動成分(駆動振動成分)に基づいて生ずる上記慣性力により、ねじ構造に与えられる振動エネルギーが大きくなることから、振動波形信号16d内のねじ構造の締め付け状況を反映した振動成分(従動振動成分)も大きくなるので、振動波形信号16dからねじの締結状況を判定することが容易になり、高精度の判定が可能になる。また、この場合には、加振器14による十分な振幅を生じさせれば、緊締されたねじ構造に対しても緩みを生じさせ易くなる。さらに、この構成であれば、上述の回動抑制手段(延長部165d)により、振動時におけるねじ締結体16の軸線16xの周りの回動を抑制できるため、加振器14による加振時の軸直角成分のみを残し、回動成分を排除できる。このため、ねじの締結状況のみを判定する目的で使用する場合には、試験時における締結状況を維持しやすくなり、また、ねじの緩み易さの試験を行う目的で使用する場合には回動成分による緩み促進作用を回避して、軸直角方向の緩み試験の精度を高めることができる。
次に、図3を参照して、本発明に係る第3実施形態について説明する。なお、上記第1実施形態における図5及び図6に示す内容に関する上述の説明は、第3実施形態においても共通するため、これらの内容に関する重複する説明事項は省略する。
この第3実施形態では、第1実施形態の加振器14の代わりに、超音波振動子からなる加振器24を用いたねじの緩み試験装置20を構成している。超音波振動子からなる加振器24としては、例えば、ボルト締めランジュバン型振動子(BLT)を用いることができるが、特に限定されない。また、超音波振動子からなる加振器24には円錐状のホーン24aを取り付け、このホーン24aを基板23に接続固定している。基板23は、箱型の基枠21に設けられた支持板22に固定されている。
この第3実施形態においても、第1実施形態と同様の上記接続部材15及びこれに取り付けられた上記ねじ締結体16が用いられる。接続部材15は、第1実施形態において、加振器14の加振部14aの軸線14xに沿って取り付けられるのと同様に、上記加振器24とそのホーン24aの軸線24x上に沿って上記基板23に取り付け固定される。このときの超音波振動子の加振方向Fは、上記軸線24xに沿った方向である。また、この実施形態の接続部材15及びねじ締結体16は、第1実施形態のものと同様に構成できるので、それらの説明は省略する。
本実施形態では、加振器24から発せられた超音波(例えば、周波数15~60kHz、一例として29kHz)がホーン24aを介して基板23上の接続部材15及びねじ締結体16に印加される。このとき、ホーン24aの形状寸法を調整することにより、上記超音波の節が基板23の支持板22に対する取付面の位置に生じるように構成されることが好ましい。これにより、超音波のエネルギーを効率的にねじ締結体16に伝搬させることができる。また、上記超音波の腹が接続部材15上の上記ねじ締結体16のねじ構造の軸線16xと交差する位置に生じるように構成されることが好ましい。これにより、ねじ締結体16に与えられる加振エネルギーを増大させることができる。
ねじ締結体16は、超音波によって加振され、振動する。この場合、先の各実施形態の場合よりも高い周波数で加振されるため、ねじ締結体16自体の加振方向Fの振動数も高く、各部に高い加速度が生じ、高い振動エネルギーを生じた状態とされる。一方、超音波を用いる場合には振幅は小さく、0.01~0.05μm程度であった。このように、高い振動エネルギーを受けることによって、ねじの締結状況の検出を高精度に行うことが可能になる。一方、振幅が小さいことにより、振動状態にあってもねじ締結体16の歪量は小さいため、ねじの締結状況に影響を与え難いことから、ねじの締結状況が維持されやすいので、ねじの締結状況を高い精度で検出する目的で使用する場合に適した装置20であることがわかる。逆に、上記超音波による振動でねじの緩み状態を作り出すことは難しいため、ねじの緩み易さの試験を行う場合には適していないこともある。
本実施形態では、加振器24の加振周波数や振幅の帯域が異なるものの、ねじの緩み試験装置20の本体部の全体構成は先の各実施形態の装置10の本体部10Aとは異なるが、ねじの締結状況を示す軸線方向の振動態様を検出する方法やレーザ変位計18,19などのセンサやそれらの動作は、図5及び図6に示す検出部10Bの内容と全く変わりがない。
次に、図4を参照して、本発明に係る第4実施形態について説明する。なお、上記第1実施形態における図5及び図6に示す内容に関する上述の説明は、第4実施形態においても共通するため、これらの内容に関する重複する説明事項は省略する。
この実施形態では、上記第3実施形態と同様の、基枠21、支持板22、基板23、超音波振動子により構成される加振器24を備えているとともに、第1実施形態と同様の接続部材15やねじ締結体16を有するので、これらの説明は省略する。
本実施形態においては、第1実施形態と同様の第2部材161の代わりに、第2実施形態と類似の第2部材166を有する。この第2部材166は、中央部分166aから左右に延在するアーム部166b、166bと、これらのアーム部166bの先端にそれぞれ接続された錘部166cを有する。一方、基枠21の左右部分には案内部25,25が設けられ、これらの案内部25は、上記アーム部166b又は錘部166cを加振方向Fにスライド可能に案内する。図示例では、錘部166cが案内部25の案内面25a上で加振方向Fにスライド自在に支持されている。
本実施形態では、第2実施形態と同様に、第2部材166に大きな質量を与えたので、ねじ締結体16が振動するとき、ねじ構造は第2部材166から大きな慣性力を受ける。このため、ねじ構造に大きな負荷を与えることができるので、第2実施形態と同様にねじの締結状況の検出の高精度化やねじの締結状況の試験の容易化を図ることができる。また、アーム部166bの長さや錘部166cの質量を調整することにより、慣性力を調整することができるので、目的に応じて第2部材166による慣性力を適宜に設定し、締結状況の検出精度を高めたり、締結状況の試験の条件の最適化を図ったりすることができる。
なお、本実施形態では図示しないが、例えば、左右の案内部25,25(案内面25a)とアーム部166b又は錘部166cとの間に加振方向Fに沿った案内溝や案内リブ(リニアガイドと同様の案内構造)を設けて相互に嵌合するように構成することなどにより、第2部材166がねじ構造の軸線16xの周りに回動しない回動抑制手段として用いることができる。この回動抑制手段の作用効果は第2実施形態と同様である。
なお、第3実施形態や本実施形態のように第2部材162や166を可動に構成するのではなく、第2部材を基枠21に対して固定し、例えば、左右の案内部25,25に固定するようにしてもよい。第3実施形態や本実施形態では、加振器24が超音波を生ずるが、その振幅は小さいため、第2部材を固定しても、ねじ構造に過剰な負荷を与える虞が少ない。したがって、小径のボルトやねじなどに対しても支障なくねじの締結状況の検出や緩み試験を行うことが可能である。なお、この第2部材の固定は、第1実施形態や第2実施形態において実施しても構わない。
最後に、具体的な振動波形の例について説明する。図7-図10には、上記第2実施形態において計測された振動波形を示す。図7は、レーザ変位計19により測定された加振方向Fの位置測定信号19tに基づく加振方向の振動波形である。このとき、加振周波数fd=50Hz、加振電圧はVd=1.0Vである。この加振方向Fの振動態様は、ねじ締結体16のねじ構造が緊締状態にあるときと緩み状態にあるときとでほとんど変化しなかった。また、図8は、同じ条件で加振し続けたときの、ねじ締結体16が緊締状態にあるときのレーザ変位計18により測定された軸線方向の位置測定信号18tに基づく軸線方向の振動波形信号16dによる振動波形を示す。このときの軸線方向の振動の範囲は-135μm-+25μmであり、この約150μmの振幅のばらつきは15-25%程度(約20%)であった。
図9は、上記と同じ条件で加振し続けたときに、途中でねじ締結体16にねじの緩みが生じた場合の軸線方向の振動波形の変化を示す。緩みが生じた後には、振動の範囲は0-200μmにシフトし、軸線方向の位置の振動の範囲はプラス側(レーザ変位計18の計測距離が増大する側)に移動している。ここで、レーザ変位計18による位置測定ではプラス側への移動はレーザ変位計18と測定対象(ねじ締結体16)との距離が近づいた(小さくなった)場合に相当するので、ねじ締結体16の第2部材162の表面が第1部材161から手前側へ移動したことになる。このことは、ねじ締結体16のねじに緩みが生じたことと整合する。また、このときの振幅のばらつきは、図8に示す程度から図9に示すように増大し、振幅のばらつきは50-90%程度(約70%)であった。
図10は、第2実施形態において、加振周波数fd=50Hz、加振電圧Vd=0.5Vで加振したときのねじ締結体16の軸線16xの方向の振動態様と加振方向Fの振動態様とを対比して示すグラフである。この例では、レーザー変位計18,19の位置測定信号18t、19tのサンプリング周波数を40kHzとし、1振動周期内の測定点が約800点となる条件で表示した。このときのねじ締結体16は緊締状態にあり、軸線16xの方向の振動態様と加振方向Fの振動態様とは、相互に位相差はあるものの、振動の範囲の安定性と、振幅のばらつきに関してほとんど差異は見られなかった。そして、上述のように、加振方向Fの振動態様は、ねじ締結体16が緊締状態にあるときと緩み状態にあるときの差は、軸線16xの方向の振動態様の変化に比べて小さい。このため、緊締状態の軸線16xの方向の振動態様を加振方向Fの振動態様を比較対象とすることにより、ねじ構造の締結状況(緊締状態か緩み状態か)を確実に検出、判定することができることがわかる。
ここで、ねじ締結体16に緩みが生じたか否か、或いは、ねじの緩み状態がどの程度か、といった締結状況の判定については、上記振動態様との間で既定の条件を定めておき、当該条件に沿って判断することが好ましい。例えば、軸線方向の位置の振動の範囲に基づいて判定を行う場合には、上記振動の範囲の求め方(当該範囲を定めるための計算方法)と、上記振動の範囲の基準値からのシフト量の判定時に用いる閾値を定めておく。また、軸線方向の位置の振幅のばらつきに基づいて判定を行う場合には、上記振幅のばらつきの求め方(当該ばらつきを求めるための計算方法)と、上記振幅のばらつきの基準値との差の判定時に用いる閾値を定めておく。なお、判定に用いる振動態様の具体的な要素(上記の振動の範囲、振動の範囲の安定性、振幅のばらつき等)は、状況に応じて適宜に変更してもよい。
なお、本発明に係るねじの締結状況の試験方法及び装置は、上述の図示例のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記各実施形態では、加振器に対してねじ締結体を装着する態様で、ねじの締結状況の試験や、ねじの緩み易さの試験などを行う例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、既存の建設物を加振器により加振し、当該建設物に存在するねじ締結体のねじの締結状況を試験する場合にも適用できる。また、本明細書において用いられる「試験」という語は、既存の方法で行われる行為だけを含むものではなく、ねじの締結状況を確認するための種々の状況で行われ得る種々の行為(締結状況と関係のある情報の検出、導出、算定、評価等)を含むものである。