JP5999680B2 - 線形弾性率の測定方法及び線形弾性率測定装置 - Google Patents
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Description
また、強制的に振動を与えて、共振周波数から弾性率を算出する方法は、特に、粘性応力によるダンピングが大きい場合に、共振周波数近傍のパワースペクトルが広がってピークがあいまいになったり、ピーク自体が生じなかったりして、共振周波数を精度よく決定することが困難であった。
本発明は、線形弾性体の弾性率を測定する方法における上記の問題点を解決し、振動や電気ノイズなどの外乱の影響が少なく、粘性応力によるダンピングが大きい場合でも高精度かつ安定な線形弾性率を測定することが可能な線形弾性率の測定方法及び線形弾性率測定装置を提供することを目的とする。
Fs=Glin・(dx/dt)
ただし、Fs:フィードバック制御信号
Glin:正値である線形速度フィードバックゲイン
dx/dt:振動体の振動速度
で表されるフィードバック制御信号により前記アクチュエータをフィードバック制御するフィードバック制御手段と、を含む線形弾性率測定装置を用いた線形弾性率の測定方法であって、前記フィードバック制御における前記線形速度フィードバックゲインを変化させるステップと、前記振動体が自励振動したか否かを検出するステップと、
前記振動体が自励振動したことを検出したときの振動周波数に基づき、前記測定対象物の線形弾性率を算出するステップと、を含むことを特徴としている。
klin=ωs 2×M
ただし、ωs:2π×fs
から算出し、前記振動周波数fsとして前記振動体が自励振動したことを検出したときの振動周波数を適用することを特徴としている。
Fs=Glin・(dx/dt)
ただし、Fs:フィードバック制御信号
Glin:正値である線形速度フィードバックゲイン
dx/dt:振動体の振動速度
で表されるフィードバック制御信号により前記アクチュエータをフィードバック制御するフィードバック制御手段と、前記フィードバック制御における前記線形速度フィードバックゲインを変化させるゲイン調整手段と、前記振動体が自励振動したか否かを検出する自励発振検出手段と、前記自励振動検出手段で前記振動体が自励振動したことを検出したと判定したときの振動周波数に基づき、前記測定対象物の線形弾性率を算出する線形弾性率算出手段と、を備えることを特徴としている。
(構成)
図1は、本発明の実施形態に係る線形弾性体と振動体とアクチュエータと変位センサとの関係を説明するための力学系の模式図である。
本実施形態の線形弾性率の測定方法は、線形弾性体に力を与えるためのアクチュエータと、変位を測定するための変位センサと、変位センサの信号を微分して力の出力に変換する変換回路と、振動周波数を測定する測定装置とを含む線形弾性率測定装置を用いる。
なお、ここで言う接触とは、測定対象物の物性などに応じて、例えば、測定対象物が半固体であれば振動体の一面を測定対象物に密着すること等が該当する。また、例えば、測定対象物が流体であれば例えばカンチレバー等の振動体を流体内に挿入すること等が該当する。
M(d2x/dt2)+clin(dx/dt)+klinx=F ・・・(1)
上式(1)においてMは振動体の質量、Clinは粘性項の比例係数、klinは線形弾性率、xは線形弾性体の変位(振動体の変位と同じ)である。本実施形態では、線形弾性体に、その運動速度に比例した力F(以下、Fvと称す)を与える。この場合、運動方程式は、下式(2)のようになる。
M(d2x/dt2)+clin(dx/dt)+klinx=Glin(dx/dt) ・・・(2)
M(d2x/dt2)+(clin−Glin)(dx/dt)+klinx=0
・・・(3)
線形速度フィードバックゲインGlinが粘性項の比例定数Clinよりも大きくなると、負の粘性項が生まれ、線形弾性体に自励発振が発生する。この際の振動角周波数は、下式(4)で表せる。
ωs=(klin/M)1/2 ・・・(4)
ここで、上式(4)のωsは自励発振によって発生した振動(自励振動)の角周波数である。上式(4)から、自励発振の振動角周波数ωsを測定できれば、上式(4)を変形した下式(5)によって線形弾性率klinを算出することができる。
klin=ωs 2×M ・・・(5)
図3に示すように、本実施形態に係る線形弾性率測定装置100は、振動体1と、変位センサ2と、変位検出器3と、振動速度演算器4と、ゲイン調整手段5aと、増幅器5bと、アクチュエータ6と、ドライバ7と、周波数検出部8と、自励発振検出手段9と、演算器10とを含んで構成される。
変位検出器3は、変位センサ2からのセンサ出力に基づき、振動体1の変位xを検出し、検出した変位xを振動速度演算器4、周波数検出部8及び自励発振検出手段9にそれぞれ供給する。
なお、変位センサ2、又は変位センサ2及び変位検出器3の組み合わせとしては、例えば、静電容量変位センサ、エンコーダ、光学式変位計、ひずみゲージ等を用いることができる。
ゲイン調整手段5aは、増幅器5bの線形速度フィードバックゲインGlinの初期値を設定すると共に、自励発振検出手段9からの自励発振していないと検出したことを示す信号(後述)に基づき増幅器5bのゲインGlinを変化させる。具体的に、自励発振検出手段9から自励発振していないと検出したことを示す信号を受信する毎に前回のゲインを予め設定されたΔgずつ増加(又は減少)する。このゲインの調整は、自励発振検出手段9によって、振動体1の自励発振が検出されるまで繰り返し行われる。
アクチュエータ6は、ドライバ7から供給される駆動信号に基づき、振動体1に当該振動体1の運動速度に比例した力Fvを与えるものである。アクチュエータ6としては、例えば、ピエゾ素子、ボイスコイルモータ、静電アクチュエータなどを用いることができる。
周波数検出部8は、変位検出器3から供給される振動体1の変位xに基づき、変位xからなる振動波形の周波数を検出する。そして、周波数検出部8は、検出した周波数fsを演算器10に供給する。
自励発振検出手段9は、振動変位x(又は振動速度dx/dt、又は振動振幅の周波数スペクトル)に基づき、振動体1が自励発振しているか否かを検出する。自励発振検出手段9は、自励発振していると検出したときに、検出したことを示す信号を、ゲイン調整手段5a及び演算器10にそれぞれ供給する。
演算器10は、自励発振を検出したことを示す信号に応じて、自励発振検出時の周波数fs(以下、発振周波数fsと称す)と、予め設定された振動体1の質量Mとに基づき、上式(5)に従って、測定対象物の線形弾性率klinを演算する。具体的に、発振周波数fsに2πを乗算して発振角周波数ωsを演算する。さらに、発振角周波数ωsを2乗してωs 2を演算し、ωs 2に質量Mを乗算して、線形弾性率klinを演算する。
具体的に、各種制御や演算処理を担うCPU(Central Processing Unit)と、ワークメモリの役割を担うRAM(Random Access Memory)と、上記各機能を実現するための専用のプログラムやプログラムの実行に必要なデータ等を記憶するROM(Read Only Memory)と、各構成要素にデータを伝送するためのデータ伝送用バスとを備えている。
次に、図4に基づき、線形弾性率測定装置100において実行される線形弾性率測定処理の処理手順を説明する。図4は、線形弾性率測定処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図4に示すように、まず、ステップS100に移行し、ゲイン調整手段5aにおいて、増幅器5bの線形速度フィードバックゲインGlinを初期値に設定する。その後、ステップS102に移行する。この初期値は、例えば、零など、任意に設定することができる。
ステップS102では、自励発振検出手段9において、振動体1が振動(自励発振)したか否かを判定し、振動したと判定した場合(Yes)は、振動を検出したことを示す信号を演算器10に供給して、ステップS104に移行する。一方、振動していないと判定した場合(No)は、振動をしていないと検出したことを示す信号をゲイン調整手段5aに供給して、ステップS108に移行する。
ステップS106では、演算器10において、ステップS104で獲得した発振周波数fsから発振角周波数ωsを演算し、この発振角周波数ωsを2乗してωs 2を演算する。さらに、このωs 2に振動体1の質量Mを乗算して、線形弾性率klinを演算し、一連の処理を終了する。
次に、図5に基づき、本実施形態の線形弾性率測定装置100の動作を説明する。
図5は、測定対象物である薄膜材料に本実施形態の線形弾性率の測定方法を適用した場合の線形弾性率測定装置100の装置構成の一例を示す図である。
図5(a)に示すように、測定対象物である線形弾性体は、固定された基板上に接着された薄膜材料であり、これに質量Mの振動体1が密着されている。振動体1は、針のような棒状体1aの一端に質量Mの立方体形状の構造物1bが設けられた構成となっており、この構造物1bの下端面が薄膜材料と密着した状態となっている。図5の例では、振動体1を自励振動させるアクチュエータ6として、ボイスコイルモータを採用し、ボイスコイルモータによって、薄膜材料がずり変形する方向に、力Fvを加えることができるように構成されている。
例えば、図5(a)に示す方向に力Fvを与えた場合は、この力Fvによる振動体1の変位によって、薄膜材料に、図5(b)に示す変位方向のずり変形が生じる。
まず、測定を行う前に、振動体1の質量Mを精密に測定し、測定した質量Mをメモリ(RAM等)に記憶する。質量Mは、棒状体1aの一端に設けられた構造物1bの質量が、棒状体1aの質量に比して十分大きい場合、棒状体1aの質量を無視してもよい。但し、棒状体1aの質量も考慮することで、より正確な線形弾性率の測定が可能となる。メモリに記憶した質量Mは、自励発振の検出時に演算器10において用いられる。
ここで、測定開始の初期段階においては、振動体1が変位していないため、静電容量変位計で検出される変位xは「0」となり、振動速度dx/dtも「0」となる。ところが、実際は周囲環境の雑音等が影響して、変位xは「0」とならず、何らかの値を有する。従って、静電容量変位計ではこの変位xが検出され、振動速度演算器4では、この変位xから、振動速度dx/dtが演算される。この振動速度dx/dtは、増幅器5bに供給され、設定された線形速度フィードバックゲインGlinとdx/dtとが乗算されて、その乗算結果であるGlin・dx/dtがフィードバック制御信号Fsとしてボイスコイルモータの制御回路に入力される。
なお、自励発振の初期段階において、振動体1の変位が、周囲環境の雑音等だけでは静電容量変位計の検出下限を下回る場合は、予備的に、任意の周波数の振動を与える。つまり、振動体1を任意の一定周波数で振動させておく。
ここで、上記実施形態において、増幅器5b及びドライバ7が、フィードバック制御手段を構成し、振動速度演算器4が、振動速度検出手段を構成し、演算器10が、線形弾性率算出手段を構成する。
また、上記実施形態において、ステップS104〜S106が、線形弾性率を算出するステップに対応する。
上記実施形態において、測定対象物である線形弾性体に対してずり変形する方向の力を与える構成を例に挙げて説明したが、この構成に限らない。
例えば、線形弾性体に対して、引っ張り方向、圧縮方向等の他の方向に変形する力を与える構成としてもよい。
また、上記実施形態において、線形弾性体として薄膜状の固体材料に適用した例を説明したが、固体材料に限らず、例えば、流体等の他の線形弾性体に適用することも可能である。
また、上記実施形態は、本発明の好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、上記の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。また、上記の説明で用いる図面は、図示の便宜上、部材ないし部分の縦横の縮尺は実際のものとは異なる模式図である。
また、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
Claims (4)
- 測定対象物に接触させる振動体と、
当該振動体を自励振動させるアクチュエータと、
前記振動体の振動速度を検出する振動速度検出手段と、
前記振動速度検出手段で検出される前記振動速度を正帰還して、
Fs=Glin・(dx/dt)
ただし、Fs:フィードバック制御信号
Glin:正値である線形速度フィードバックゲイン
x:振動体の変位
dx/dt:振動体の振動速度
で表されるフィードバック制御信号により前記アクチュエータをフィードバック制御するフィードバック制御手段と、を含む線形弾性率測定装置を用いた線形弾性率の測定方法であって、
前記フィードバック制御における前記線形速度フィードバックゲインを変化させるステップと、
前記振動体が自励振動したか否かを検出するステップと、
前記振動体が自励振動したことを検出したときの振動周波数に基づき、前記測定対象物の線形弾性率を算出するステップと、を含み、
前記線形速度フィードバックゲインを変化させるステップにおいては、前記線形速度フィードバックゲインの現在の値からの変化量を、前記振動体の発振周波数が線形の固有振動数からずれない程度の小さい値に設定することを特徴とする線形弾性率の測定方法。 - 前記線形弾性率を算出するステップにおいて、
前記振動体の質量をM、前記振動体の振動周波数をfsとしたとき、前記測定対象物の線形弾性率klinを、
klin=ωs 2×M
ただし、ωs:2π×fs
から算出し、
前記振動周波数fsとして前記振動体が自励振動したことを検出したときの振動周波数を適用することを特徴とする請求項1に記載の線形弾性率の測定方法。 - 前記線形弾性率測定装置は、前記振動体の変位xを検出する変位検出手段を備え、
前記振動体が自励振動を開始したときの初期段階における前記変位xが、前記変位検出手段の検出下限値を下回るときに、前記振動体を一定の周波数で予備振動させるステップを含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の線形弾性率の測定方法。 - 測定対象物に接触させる振動体と、
当該振動体を自励振動させるアクチュエータと、
前記振動体の振動速度を検出する振動速度検出手段と、
前記振動速度検出手段で検出される前記振動速度を正帰還して、
Fs=Glin・(dx/dt)
ただし、Fs:フィードバック制御信号
Glin:正値である線形速度フィードバックゲイン
dx/dt:振動体の振動速度
で表されるフィードバック制御信号により前記アクチュエータをフィードバック制御するフィードバック制御手段と、
前記フィードバック制御における前記線形速度フィードバックゲインを変化させるゲイン調整手段と、
前記振動体が自励振動したか否かを検出する自励発振検出手段と、
前記自励発振検出手段で前記振動体が自励振動したことを検出したと判定したときの振動周波数に基づき、前記測定対象物の線形弾性率を算出する線形弾性率算出手段と、を備え、
前記ゲイン調整手段は、前記線形速度フィードバックゲインの現在の値からの変化量を、前記振動体の発振周波数が線形の固有振動数からずれない程度の小さい値に設定することを特徴とする線形弾性率測定装置。
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