JP5831904B2 - 粘弾性測定方法及び粘弾性測定装置 - Google Patents
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Description
このうち、振動式の粘度計として、測定対象物中で感応板を所定の振幅で電磁振動させたときの駆動電流から測定対象物の粘度を求めるようにしたもの(例えば、特許文献1参照)、或いは、振動体を強制加振させ、加振周波数と振動体の振動振幅との対応を表す周波数応答曲線を求め、そのQ値から粘度を求めるようにしたもの等が提案されている。
また、測定対象物の弾性率を測定する方法として、測定対象物に静的なひずみを与えて応力を測定し弾性率を算出する方法や、測定対象物に強制的に振動を与えて、共振周波数から弾性率を算出する方法が知られている。これらの測定方法については、例えば、非特許文献1に記載されている。
また、測定対象物に静的なひずみを与えて応力を測定し弾性率を算出する方法は、振動や電気ノイズなどの外乱に影響を受けやすく、高精度かつ安定な測定を実現するのは困難であった。特に、粘弾性体には、適用が困難であった。
本発明は、線形速度フィードバックと非線形フィードバックとの双方を用いたフィードバック制御によって振動体を自励振動させることで、線形粘性、線形弾性のみならず、非線形粘性、非線型弾性をも測定することが可能な粘弾性測定方法及び粘弾性測定装置を提供することを目的とする。
Fb=(Glin−Gnon・x2)・(dx/dt) ・・・(1)
ただし、Fb:フィードバック制御信号
Glin:正値である線形速度フィードバックゲイン
Gnon:正値である非線形フィードバックゲイン
x:振動体の変位
dx/dt:振動体の振動速度
で表されるフィードバック制御信号により前記アクチュエータを駆動してフィードバック制御するフィードバック制御手段と、を含む粘弾性測定装置を用いた測定対象物の粘弾性測定方法であって、前記フィードバック制御における前記線形速度フィードバックゲイン及び前記非線形フィードバックゲインのいずれか一方を選択的に変化させるゲイン調整ステップと、前記ゲイン調整ステップにおいて前記線形速度フィードバックゲイン及び前記非線形フィードバックゲインのいずれか一方を変化させたときの前記振動体の振動に係る物理量を測定する物理量測定ステップと、前記物理量測定ステップで測定した物理量と、前記振動体の弾性及び減衰性をモデル化した力学モデルと、前記測定対象物の線形粘性、非線形粘性、線形弾性及び非線形弾性をモデル化した力学モデルと、前記式(1)との間で成立する方程式とに基づき、前記測定対象物の線形粘性係数、非線形粘性係数、線形弾性率及び非線形弾性率を算出する粘弾性算出ステップと、を含むことを特徴としている。
x=acos((β+3Knona2/8β)t+C’) ・・・(2)
a=2((Glin−C−Clin)/(3Cnonβ2+Gnon))1/2
・・・(3)
β2=1+Klin ・・・(4)
ただし、a:振動体の振幅
C’:初期条件で決まる積分定数
C:振動体の減衰係数
K:振動体のバネ定数
Clin:測定対象物の線形粘性係数
Cnon:測定対象物の非線形粘性
Klin:測定対象物の線形弾性
Knon:測定対象物の非線形弾性
に基づき、前記測定対象物の線形粘性係数Clin、非線形粘性係数Cnon、線形弾性率Klin及び非線形弾性率Knonを算出することを特徴としている。
ωs=β+3Knona2/8β ・・・(5)
に基づき、前記非線形弾性率Knonを算出することを特徴としている。
Fb=(Glin−Gnon・x2)・(dx/dt) ・・・(6)
ただし、Fb:フィードバック制御信号
Glin:正値である線形速度フィードバックゲイン
Gnon:正値である非線形フィードバックゲイン
x:振動体の変位
dx/dt:振動体の振動速度
で表されるフィードバック制御信号により前記アクチュエータを駆動してフィードバック制御するフィードバック制御手段と、前記フィードバック制御における前記線形速度フィードバックゲイン及び前記非線形フィードバックゲインのいずれか一方を選択的に変化させるゲイン調整手段と、前記ゲイン調整手段において前記線形速度フィードバックゲイン及び前記非線形フィードバックゲインのいずれか一方を変化させたときの前記振動体の振動に係る物理量を測定する物理量測定手段と、前記物理量測定手段で測定した物理量と、前記振動体の弾性及び減衰性をモデル化した力学モデルと、前記測定対象物の線形粘性、非線形粘性、線形弾性及び非線形弾性をモデル化した力学モデルと、前記式(1)との間で成立する方程式とに基づき、前記測定対象物の線形粘性係数、非線形粘性係数、線形弾性率及び非線形弾性率を算出する粘弾性算出手段と、を備えることを特徴としている。
また、非線形フィードバック制御によって、振動体の自励振動の振幅を小さくすることができるので、測定対象物が流体の場合に、渦の発生を抑制し、また層流状態の流れを維持し乱流状態の発生を防ぐことが可能である。
(構成)
図1は、本実施形態に係る振動体と粘弾性体とアクチュエータと変位センサとの関係を説明するための力学系の模式図である。
本実施形態の粘弾性測定方法は、測定対象物である粘性と弾性とを併せ持つ粘弾性体の線形弾性、非線形弾性、線形粘性及び非線形粘性を測定する方法である。本実施形態では、かかる方法を実現するために、粘弾性体に接触させる振動体(例えば、カンチレバー等)と、振動体に力を与えるためのアクチュエータと、アクチュエータを線形及び非線形フィードバックゲインを用いてフィードバック制御する制御手段と、振動体の変位xを測定するための変位センサと、変位センサの信号を微分して速度の出力に変換する変換回路と、振動体の振動周波数を測定する測定装置とを含む粘弾性測定装置を用いる。
図1に例示した力学モデルは、振動体を、粘性と弾性とを併せ持つ流体中に挿入した一構成例を示すものである。
図1の力学モデルにおいて、振動体は、弾性定数Kのばねと、減衰定数Cのダッシュポットとを並列接続し、これらの一端が固定され、これらの他端に質量Mのマス(振動体)が接続された構成として表現される。
具体的には、下式(7)に示すフィードバック制御信号Fbを演算し、演算したFbに基づき、アクチュエータを駆動してフィードバック制御する。
Fb=(Glin−Gnon・x2)・(dx/dt) ・・・(7)
上式(7)において、Fbはフィードバック制御信号、Glinは正値である線形速度フィードバックゲイン、Gnonは正値である非線形フィードバックゲイン、xは振動体の変位、dx/dtは振動体の振動速度である。
このような力関係において、下式(8)に示す運動方程式が成立する。
M(d2x/dt2)+C(dx/dt)+Kx=−Klinx−Knonx3−Clin(dx/dt)−Cnon(dx/dt)3+Glin(dx/dt)−Gnonx2(dx/dt) ・・・(8)
上式(8)において、Mは振動体の質量、Cは振動体の減衰定数、Kは振動体のばね定数、Clinは測定対象物の線形粘性係数、Cnonは測定対象物の非線形粘性係数、Klinは測定対象物の線形弾性率、Knonは測定対象物の非線形弾性率である。
ここで、測定者が振動体を設計すること等によって、振動体の質量M、振動体の減衰定数C、振動体のばね定数Kは既知の値とする。また、Glin及びGnonも測定者によって設定される値であるため既知の値となる。
(d2x/dt2)+C(dx/dt)+x=−Klinx−Knonx3−Clin(dx/dt)−Cnon(dx/dt)3+Glin(dx/dt)−Gnonx2(dx/dt) ・・・(9)
更に、上式(9)を移項して整理すると、下式(10)が得られる。
(d2x/dt2)+(C+Clin−Glin+Gnonx2)(dx/dt)+Cnon(dx/dt)3+(1+Klin)x+Knonx3=0・・・(10)
x=acos((β+3Knona2/8β)t+C’) ・・・(11)
a=2((Glin−C−Clin)/(3Cnonβ2+Gnon))1/2
・・・(12)
β2=1+Klin ・・・(13)
上式(11)において、C’は、初期条件から決まる積分定数である。
図2に示すように、粘弾性測定装置100は、振動体1と、変位センサ2と、変位検出器3と、振動速度演算器4と、増幅器5と、アクチュエータ6と、ドライバ7と、周波数検出部8と、自励発振検出手段9と、演算器10と、乗算器11,12と、増幅器13と、ゲイン調整手段14と、演算器15とを含んで構成される。
変位検出器3は、変位センサ2からのセンサ出力に基づき、振動体1の変位xを検出し、検出した変位xを振動速度演算器4、周波数検出部8、自励発振検出手段9、演算器10、乗算器11及び12にそれぞれ供給する。
なお、変位センサ2又は、変位センサ2及び変位検出器3の組み合わせとしては、例えば、静電容量変位センサ、エンコーダ、光学式変位計、ひずみゲージ等を用いることができる。
ゲイン調整手段14は、指令信号に応じて、増幅器5の線形速度フィードバックゲインGlinの初期値を設定すると共に、増幅器13の非線形フィードバックゲインGnonの初期値を設定する。更に、ゲイン調整手段14は、指令信号に応じて、増幅器5の線形速度フィードバックゲインGlin及び増幅器13の非線形フィードバックゲインGnonのいずれか一方を選択的に変化させる。
乗算器11は、変位検出器3からの2つの変位xを乗算してx2を演算し、演算したx2を乗算器12に供給する。
増幅器13は、可変増幅器を含んで構成され、ゲイン調整手段14によって設定された非線形フィードバックゲインGnonと、乗算器12から供給されるx2・dx/dtとを乗算する。そして、増幅器13は、算出したGnon・x2・dx/dtを演算器15に供給する。
演算器15は、増幅器5から供給されるGlin・dx/dtから、増幅器13から供給されるGnon・x2・dx/dtを減算して、フィードバック制御信号Fb(=(Glin−Gnon・x2)・dx/dt)を演算し、演算したFbをドライバ7に供給する。
アクチュエータ6は、ドライバ7から供給される駆動信号に基づき、振動体1に力Fvを与えるものである。アクチュエータ6としては、例えば、ピエゾ素子、ボイスコイルモータ、静電アクチュエータなどを用いることができる。
周波数検出部8は、変位検出器3から供給される振動体1の変位xに基づき、変位xからなる振動波形の周波数を検出する。そして、周波数検出部8は、検出した周波数fsを演算器10に供給する。
なお、周波数検出部8として、例えば、周波数カウンタ、FFTアナライザ、スペクトラムアナライザ等を用いることができる。
演算器10は、ゲイン調整手段14によって、Glin又はGnonを変化させたときの変位x、周波数fs等の振動体1の振動に係る物理量と、発振限界ゲインGlin*と、上式(11)〜(13)とに基づき、測定対象物の線形粘性係数Clin、非線形粘性係数Cnon、線形弾性率Klin及び非線形弾性率Knonを演算する。
具体的に、各種制御や演算処理を担うCPU(Central Processing Unit)と、ワークメモリの役割を担うRAM(Random Access Memory)と、上記各機能を実現するための専用のプログラムやプログラムの実行に必要なデータ等を記憶するROM(Read Only Memory)と、各構成要素にデータを伝送するためのデータ伝送用バスとを備えている。
次に、図3に基づき、粘弾性測定装置100において実行される粘弾性測定処理の処理手順を説明する。図3は、粘弾性測定処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図3に示すように、まず、ステップS100に移行し、ゲイン調整手段14において、増幅器5の線形速度フィードバックゲインGlinと、増幅器13の非線形フィードバックゲインGnonとを初期値に設定する。その後、ステップS102に移行する。Glin及びGnonの初期値は、任意に設定することができる。
ステップS102では、ゲイン調整手段14によって、非線形フィードバックゲインGnonを増加させて、ステップS104に移行する。
ここで、上式(11)において、(β+3Knona2/8β)の項は、下式(14)に示すように、振動体1の発振角周波数となる。
ωs=β+3Knona2/8β ・・・(14)
上式(14)において振動振幅a≒0とすることで、周波数成分をβのみとすることができる。つまり、非線形フィードバックゲインGnonを増加させて、上式(14)をβに近似できる程度にa2を小さくする。従って、振動振幅a≒0のときの発振周波数fs*を測定することで、β(=2πfs*)を測定することができる。
ステップS110では、ゲイン調整手段14において、振動振幅a≒0の状態から、増幅器13の非線形フィードバックゲインGnonを予め設定されたΔg1だけ変化させて、ステップS112に移行する。
ここで、Gnonを変化させると、振動振幅aが変化して、上式(14)で示される発振角周波数ωsが変化する。
ステップS114では、演算器10において、周波数検出部8から、発振周波数fsを獲得し、発振角周波数ωsを演算する。次に、βの値、振動振幅aがそれぞれ既知となったので、上式(14)から、測定対象物の非線形弾性率Knonを演算し、演算したKnonをメモリに記憶して、ステップS116に移行する。
ステップS118では、自励発振検出手段9において、上式(12)中の分子部分(Glin−C−Clin)に基づき、GlinとC+Clinとを比較し、「Glin≧C+Clin」となったと判定した場合(Yes)は、ステップS120に移行し、そうでないと判定した場合(No)は、ステップS116に移行する。
ここで、振動体1の振動振幅が比較的小さく、且つ上式(10)が成り立ち、(10)式中の"dx/dt"の係数の絶対値が小さいとき、振動体1の発振周波数は線形振動理論上、振動振幅に依存しない振動体1の線形の固有振動数にほぼ等しい値をとる。
つまり、上式(12)において、線形速度フィードバックゲインGlinが粘性項の定数C+Clinよりも大きくなると、負の粘性項が生まれ、自励発振が発生する。このことから、本実施形態では、「Glin≧C+Clin」を判定する。
具体的に、Glinを自励振動が発生しない状態となる小さな値に設定し、その後、Glinを徐々に大きくしていって、振動体1が振動したか否かを判定する。または、振動体1が自励振動している状態のGlinを徐々に小さくしていって、振動体1の自励振動の振幅が検知されなくなったか否かを判定する。
つまり、振動体1が非振動状態から振動状態に移行するときのGlin、又は振動体1が振動状態から非振動状態に移行するときのGlinを発振限界ゲインGlin*として獲得する。
ステップS124では、ゲイン調整手段14によって、線形速度フィードバックゲインGlinを予め設定されたΔg2だけ変化させて、ステップS126に移行する。
ここで、Glinを変化させることで、振動体1の振動振幅aを変化させる。
次に、本実施形態の粘弾性測定装置100の動作を説明する。
ここでは、流体の粘弾性体である測定対象流体に対して、本実施形態の粘弾性測定装置100を用いて、測定対象流体の粘弾性を測定する。また、ここでは、振動体1としてカンチレバーを採用し、アクチュエータ6としてピエゾ素子を採用する。
まず、測定を行う前に、振動体1の質量M、減衰定数C及びばね定数Kを精密に測定(あるいはスペックシートから取得)し、測定(取得)した質量M、C及びKをメモリに記憶する。メモリに記憶した質量M、減衰定数C及びばね定数Kのうち減衰定数Cは、演算器10における、上式(12)に基づく演算処理において用いられる。
なお、振動体1としてカンチレバーを適用した場合、その特性から、カンチレバーの非線形成分とカンチレバーの自励振動力とがバランスすると、カンチレバーの振動振幅が一定に維持され、非線形フィードバックゲインGnonを大きくすることにより振動体1の振動振幅aを小さく抑制することができ、振動体1の発振周波数を振動振幅によらず一定な線形の固有振動数に維持することができる。
演算器15では、Glin・dx/dtからGnon・x2・dx/dtを減算した(Glin−Gnon・x2)・dx/dtを演算し、演算結果をフィードバック制御信号Fbとしてドライバ7に入力する。
なお、自励発振の初期段階において、振動体1の変位が、変位センサの検出下限を下回る場合は、予備的に、任意の周波数の振動を与える。つまり、振動体1を任意の一定周波数で振動させておく。
これにより、振動振幅aが変化する(a≒0ではなくなる)ので、演算器10は、このときの振動変位xから振動振幅aを演算する(ステップS112)。振動振幅aが変化すると、上式(14)で示されるωsが変化し、β以外の成分が発生する。演算器10は、周波数検出器8からこのときの発振周波数fsを獲得し、発振角周波数ωsを演算する。これにより、β、振動振幅a、発振周波数ωsが既知となるので、演算器10は、上式(14)に基づき、測定対象流体の非線形弾性率Knonを演算する(ステップS114)。演算器10は、演算した測定対象流体の非線形弾性率Knonをメモリに記憶する。
自励発振検出手段9は、Glinを増加後の振動変位xと、予め設定された変位しきい値とを比較し、変位xが変位しきい値以上になったと判定すると、「Glin≧C+Clin」が成立したと判定し、変位xが変位しきい値未満であると判定すると、「Glin≧C+Clin」が成立していないと判定する。
Glinが発振限界ゲインGlin*のときに、「Glin*≒C+Clin」とできるので、演算器10は、既知のGlin*及びメモリに記憶された振動体1の減衰定数Cとから、測定対象流体の線形粘性係数Clinを演算する(ステップS122)。演算器10は、演算した測定対象流体の線形粘性係数Clinをメモリに記憶する。
さらに、振動体に力Fvを与えるアクチュエータを、線形速度フィードバックゲインGlinと振動速度dx/dtとを乗算した線形速度フィードバック制御信号と、非線形フィードバックゲインGnonと変位xの2乗と振動速度dx/dtとを乗算した非線形フィードバック制御信号とによって駆動してフィードバック制御することが可能である。
これにより、測定対象の材料の線形粘性、線形弾性のみならず、非線形粘性、非線形弾性をも計測することが可能となる。また、粘度の時間的変動をリアルタイムで測定することが可能となる。
ここで、上記実施形態において、増幅器5、乗算器11,12、増幅器13、演算器15及びドライバ7が、フィードバック制御手段を構成し、振動速度演算器4が、振動速度検出手段を構成し、変位センサ2、変位検出器3及び周波数検出部8が、物理量測定手段を構成し、演算器10が、粘弾性算出手段を構成する。
また、上記実施形態において、ステップS108,S114,S122,S126が
が、振動体が自励振動したか否かを検出するステップに対応し、ステップS108が、粘弾性算出ステップに対応する。
上記実施形態において、振動体としてカンチレバーを適用した場合を例に挙げて説明したが、この構成に限らない。
例えば、振動体として、従来の振動式粘度計、回転円筒、平行平板等を適用することも可能である。
また、条規実施形態では、フィードバック制御システムを、デジタル技術を用いて行う構成としたが、この構成に限らず、アナログ技術を用いた構成とすることも可能である。
また、上記実施形態において、測定対象物として粘性と弾性とを併せ持つ流体に適用した例を説明したが、流体に限らず、例えば、薄膜材料等の固体又は半固体に適用することも可能である。
また、上記実施形態は、本発明の好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、上記の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。また、上記の説明で用いる図面は、図示の便宜上、部材ないし部分の縦横の縮尺は実際のものとは異なる模式図である。
また、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
食品各社では、開発した食品についての品質、味、咀嚼感覚の科学的指標を得るために、精密な粘度の測定と管理とが重要視されている。
また、化学計測器メーカーでは、粘度計測の測定精度向上とユーザビリティの向上を目指しているが、高精度化へのブレークスルーとなる斬新な計測原理の発明には至っていない。他にも、興味を持つメーカーは広範囲に及ぶ。
本発明は、例えば、エンジン内の局所リアルタイム計測による燃費の向上を模索する自動車分野にも応用が可能である。
Claims (7)
- 測定対象物に接触させる振動体と、
前記振動体を自励振動させるアクチュエータと、
前記振動体の振動速度を検出する振動速度検出手段と、
前記振動速度検出手段で検出される前記振動速度を用いて、
Fb=(Glin−Gnon・x2)・(dx/dt) ・・・(1)
ただし、Fb:フィードバック制御信号
Glin:正値である線形速度フィードバックゲイン
Gnon:正値である非線形フィードバックゲイン
x:振動体の変位
dx/dt:振動体の振動速度
で表されるフィードバック制御信号により前記アクチュエータを駆動してフィードバック制御するフィードバック制御手段と、を含む粘弾性測定装置を用いた測定対象物の粘弾性測定方法であって、
前記フィードバック制御における前記線形速度フィードバックゲイン及び前記非線形フィードバックゲインのいずれか一方を選択的に変化させるゲイン調整ステップと、
前記ゲイン調整ステップにおいて前記線形速度フィードバックゲイン及び前記非線形フィードバックゲインのいずれか一方を変化させたときの前記振動体の振動に係る物理量を測定する物理量測定ステップと、
前記物理量測定ステップで測定した物理量と、前記振動体の弾性及び減衰性をモデル化した力学モデルと、前記測定対象物の線形粘性、非線形粘性、線形弾性及び非線形弾性をモデル化した力学モデルと、前記式(1)との間で成立する方程式とに基づき、前記測定対象物の線形粘性係数、非線形粘性係数、線形弾性率及び非線形弾性率を算出する粘弾性算出ステップと、を含むことを特徴とする粘弾性測定方法。 - 前記粘弾性算出ステップにおいて、前記振動体をばね・マス・ダッシュポット系でモデル化した力学モデルと、前記測定対象物の線形粘性、非線形粘性、線形弾性及び非線形弾性をモデル化した力学モデルと、前記式(1)との間で成立する方程式の定常状態の解である、
x=acos((β+3Knona2/8β)t+C’) ・・・(2)
a=2((Glin−C−Clin)/(3Cnonβ2+Gnon))1/2
・・・(3)
β2=1+Klin ・・・(4)
ただし、a:振動体の振幅
C’:初期条件で決まる積分定数
C:振動体の減衰係数
K:振動体のバネ定数
Clin:測定対象物の線形粘性係数
Cnon:測定対象物の非線形粘性
Klin:測定対象物の線形弾性
Knon:測定対象物の非線形弾性
に基づき、前記測定対象物の線形粘性係数Clin、非線形粘性係数Cnon、線形弾性率Klin及び非線形弾性率Knonを算出することを特徴とする請求項1に記載の粘弾性測定方法。 - 前記ゲイン調整ステップにおいて、前記非線形フィードバックゲインGnonを大きくして、前記式(2)中における(β+3Knona2/8β)tの項をβtに近似できる程度に前記振幅aを小さくし、
前記物理量測定ステップにおいて、前記βtに近似した状態における前記振動体の発振角周波数であるβを測定し、
前記粘弾性算出ステップにおいて、前記物理量測定ステップで測定した前記βと、前記式(4)とに基づいて、前記線形弾性率Klinを算出することを特徴とする請求項2に記載の粘弾性測定方法。 - 前記ゲイン調整ステップにおいて、前記βtに近似した状態から前記非線形フィードバックゲインGnonを変化させて、前記振動体の振幅aを変化させると共に前記振動体の発振角周波数ωsを変化させ、
前記物理量測定ステップにおいて、前記Gnonを変化させたときの前記振動体の発振角周波数ωsと、前記振動体の振幅aとを測定し、
前記粘弾性算出ステップにおいて、前記物理量測定ステップで測定した前記発振角周波数ωs、前記振幅a及び前記βを用いて、
ωs=β+3Knona2/8β ・・・(5)
に基づき、前記非線形弾性率Knonを算出することを特徴とする請求項3に記載の粘弾性測定方法。 - 前記ゲイン調整ステップにおいて、前記線形速度フィードバックゲインGlinを変化させ、
前記粘弾性算出ステップにおいて、前記振動体が振動状態と非振動状態との間で状態変化するときの前記線形速度フィードバックゲインである発振限界ゲインGlin*と、前記振動体の減衰定数Cとを用いて、前記式(3)の分子式(Glin−C−Clin)に基づき、前記線形粘性係数Clinを算出することを特徴とする請求項4に記載の粘弾性測定方法。 - 前記ゲイン調整ステップにおいて、前記振動体が自励振動している状態から、前記線形速度フィードバックゲインGlinを大きくし、
前記粘弾性算出ステップにおいて、前記Glinと、前記Cと前記算出したClinと前記測定したβと、前記既知のGnonとを用いて、前記式(3)に基づき、前記非線形粘性係数Cnonを算出することを特徴とする請求項5に記載の粘弾性測定方法。 - 測定対象物に接触させる振動体と、
前記振動体を自励振動させるアクチュエータと、
前記振動体の振動速度を検出する振動速度検出手段と、
前記振動速度検出手段で検出される前記振動速度を用いて、
Fb=(Glin−Gnon・x2)・(dx/dt) ・・・(6)
ただし、Fb:フィードバック制御信号
Glin:正値である線形速度フィードバックゲイン
Gnon:正値である非線形フィードバックゲイン
x:振動体の変位
dx/dt:振動体の振動速度
で表されるフィードバック制御信号により前記アクチュエータを駆動してフィードバック制御するフィードバック制御手段と、
前記フィードバック制御における前記線形速度フィードバックゲイン及び前記非線形フィードバックゲインのいずれか一方を選択的に変化させるゲイン調整手段と、
前記ゲイン調整手段において前記線形速度フィードバックゲイン及び前記非線形フィードバックゲインのいずれか一方を変化させたときの前記振動体の振動に係る物理量を測定する物理量測定手段と、
前記物理量測定手段で測定した物理量と、前記振動体の弾性及び減衰性をモデル化した力学モデルと、前記測定対象物の線形粘性、非線形粘性、線形弾性及び非線形弾性をモデル化した力学モデルと、前記式(1)との間で成立する方程式とに基づき、前記測定対象物の線形粘性係数、非線形粘性係数、線形弾性率及び非線形弾性率を算出する粘弾性算出手段と、を備えることを特徴とする粘弾性測定装置。
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