JP5831903B2 - 粘弾性測定方法及び粘弾性測定装置 - Google Patents

粘弾性測定方法及び粘弾性測定装置 Download PDF

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Description

本発明は、粘弾性体の性質を測定する方法に関するもので、特に、粘弾性体が、単純な力学モデルでは表せられない、複雑な粘弾性を持つ場合に、弾性および粘性を明瞭に区別して、粘弾性体内部の性質を推定するのに有効な粘弾性測定方法及び粘弾性測定装置を提供する。
従来、粘弾性体の粘弾性を測定する方法として、粘弾性体に強制的な振動変位を与えて、発生する応力を測定するか、粘弾性体に強制的な振動応力を与えて、発生する変位を測定することで、粘弾性を測定する方法が知られている(例えば、非特許文献1参照)。また、これらの方法を用いて粘弾性体の粘弾性を測定する計測器として、レオメータがある。レオメータには、振動体の形状によって、コーンプレート型レオメータ、共軸二重円筒型レオメータなどがある。
これらレオメータは、振動体と固定物体との間隙に挟まれた粘弾性体に、ずり変形を与えて、ずり応力を測定して粘弾性を測定するか、ずり応力を与えて、ずり変形を測定することで、緩和時間や、動的弾性率、損失弾性率などの粘弾性を測定している。
ここで、粘弾性体が、単純な力学モデルでは表せられない、複雑な粘弾性を持つ場合には、粘弾性体の内部に、複数のばね要素、及び複数の粘性要素が含まれると考えられ、複数の緩和時間を持つことになる。この場合、動的弾性率、および損失弾性率の周波数スペクトルは、複数の緩和時間に起因する波形が重畳したものとなる。
「日本レオロジー学会誌 Vol.29 (2001) , No.1 pp.21-25」
上記従来のレオメータは、粘弾性体が複雑な粘弾性を持つ場合に、上記複数の緩和時間に起因する波形が重畳した周波数スペクトルから、粘弾性体の粘弾性を推定しているが、弾性率が小さい場合や、緩和時間が近接している場合には、これらを明瞭に区別することは困難であった。
本発明は、粘弾性体の性質を測定する方法における上記の問題点を解決し、特に、粘弾性体が、単純な力学モデルでは表せられない、複雑な粘弾性を持つ場合に、弾性および粘性を明瞭に区別して、粘弾性体内部の性質を推定するのに有効な粘断性測定方法及び粘弾性測定装置を提供することを目的とする。
〔形態1〕 上記目的を達成するために、形態1の粘弾性測定方法は、測定対象物に接触させる振動体と、当該振動体を自励振動させるアクチュエータと、前記振動体の振動変位を検出する変位センサと、前記変位センサの出力信号である変位信号から特定周波数の信号成分を抽出する特定周波数成分抽出手段と、前記特定周波数成分抽出手段で抽出された前記特定周波数の信号成分に基づき、振動体の振動速度を検出する振動速度検出手段と、前記振動速度検出手段で検出される前記振動速度を正帰還して、
Fs=Glin・(dx/dt)
ただし、Fs:フィードバック制御信号
lin:正値である線形速度フィードバックゲイン
x:振動体の変位
dx/dt:振動体の振動速度
で表されるフィードバック制御信号により前記アクチュエータをフィードバック制御するフィードバック制御手段と、を含む粘弾性測定装置を用いた測定対象物の粘弾性測定方法であって、前記特定周波数成分抽出手段の前記信号成分を抽出時の前記特定周波数を変化させるステップと、前記変化させた特定周波数毎に、前記フィードバック制御における前記線形速度フィードバックゲインを変化させるステップと、前記変化させた線形速度フィードバックゲインによるフィードバック制御を行う毎に、前記振動体が自励振動したか否かを検出するステップと、前記振動体が自励振動したことを検出したときの前記線形速度フィードバックゲインを測定するステップと、を含むことを特徴としている。
〔形態2〕 さらに、形態2の粘弾性測定方法は、形態1の構成に対して、前記振動体が自励振動したことを検出したときの各特定周波数に対応する振動角周波数と前記線形速度フィードバックゲインの逆数との関係を示す粘弾性の周波数スペクトルを生成するステップをさらに含むことを特徴としている。
〔形態3〕 さらに、形態3の粘弾性測定方法は、形態1又は2の構成に対して、前記特定周波数成分抽出手段はバンドパスフィルタから構成されることを特徴としている。
〔形態4〕 一方、上記目的を達成するために、形態4の粘弾性測定装置は、測定対象物に接触させる振動体と、当該振動体を自励振動させるアクチュエータと、前記振動体の振動変位を検出する変位センサと、前記変位センサの出力信号である変位信号から特定周波数の信号成分を抽出する特定周波数成分抽出手段と、前記特定周波数成分抽出手段で抽出された特定周波数の変位信号成分に基づき、振動体の振動速度を検出する振動速度検出手段と、前記振動速度検出手段で検出される前記振動速度を正帰還して、
Fs=Glin・(dx/dt)
ただし、Fs:フィードバック制御信号
lin:正値である線形速度フィードバックゲイン
x:振動体の変位
dx/dt:振動体の振動速度
で表されるフィードバック制御信号により前記アクチュエータをフィードバック制御するフィードバック制御手段と、前記特定周波数成分抽出手段の前記信号成分を抽出時の前記特定周波数を変化させる特定周波数調整手段と、前記変化させた特定周波数毎に、前記フィードバック制御における前記線形速度フィードバックゲインを変化させるゲイン調整手段と、前記変化させた線形速度フィードバックゲインによるフィードバック制御を行う毎に、前記振動体が自励振動したか否かを検出する自励発振検出手段と、前記振動体が自励振動したことを検出したときの前記線形速度フィードバックゲインを測定する粘弾性測定手段と、を含むことを特徴としている。
このような構成であれば、変位センサによって振動体の変位が検出されると、特定周波数成分抽出手段によって、変位センサの出力信号から特定周波数の信号成分が抽出され、振動速度検出手段によって、特定周波数の信号成分に基づき振動体の振動速度が検出され、フィードバック制御手段によって、特定周波数に対応する振動速度に、線形速度フィードバックゲインを乗算したフィードバック制御信号により、アクチュエータがフィードバック制御される。アクチュエータがフィードバック制御されると、アクチュエータによって測定対象物に接触した振動体にその振動速度に比例した力が与えられる。また、特定周波数調整手段によって、信号成分を抽出時の特定周波数が変化させられると、ゲイン調整手段によって、変化させられた特定周波数毎に線形速度フィードバックゲインが変化させられ、自励発振検出手段によって、変化させられた線形速度フィードバックゲインによるフィードバック制御が行われる毎に、振動体が自励振動したか否かが検出される。そして、自励発振検出手段によって自励振動したことが検出されると、粘弾性測定手段によって、自励振動を検出時の線形速度フィードバックゲインが測定される。
以上説明したように、本発明によれば、変位センサの出力である振動体の変位を示す変位信号から特定周波数の信号成分を抽出し、この信号成分に基づき振動体の振動速度を検出し、この特定周波数に対応する振動速度に線形速度フィードバックゲインを乗算したフィードバック制御信号により、アクチュエータをフィードバック制御することで、振動体にその振動速度に比例した力を付与して、振動体を自励振動させる。その際、信号成分を抽出時の特定周波数を変化させ、変化させた特定周波数毎にフィードバックゲインを変化させ、変化させたフィードバックゲインによるフィードバック制御を行う毎に振動体が自励振動したか否かを検出し、自励振動したことを検出時のフィードバックゲインを測定するようにした。
これにより、粘弾性体が、単純な力学モデルでは表せられない、複雑な粘弾性を持つ場合であっても、弾性および粘性を明瞭に区別して、粘弾性体内部の性質を推定するのに有効な粘弾性の周波数スペクトルを測定することができるという効果が得られる。
(a)は、本発明の実施形態に係る粘弾性体と振動体とアクチュエータと変位センサとの関係を説明するための力学系の模式図であり、(b)は、複雑な分子的・微視的構造を持つ粘弾性体の力学系の一構成例を示す模式図である。 (a)は、複数の緩和時間にそれぞれ対応する動的弾性率及び損失弾性率の周波数応答曲線の一例を示す図であり、(b)は、本実施形態に係る粘弾性測定方法により得られる粘弾性スペクトルの一例を示す図である。 本発明の実施形態に係る粘弾性測定装置の一例を示す概略構成図である。 粘弾性測定処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。 本発明の実施形態に係る粘弾性測定装置の装置構成の一例を示す図である。
以下、図面に基づき、本発明に係る粘弾性測定方法及び粘弾性測定装置の実施形態を説明する。図1〜図5は、本発明に係る粘弾性測定方法及び粘弾性測定装置の一実施形態を示す図である。
(構成)
図1(a)は、本実施形態に係る粘弾性体と振動体とアクチュエータと変位センサとの関係を説明するための力学系の模式図であり、(b)は、複雑な分子的・微視的構造を持つ粘弾性体の力学系の一構成例を示す模式図である。
本実施形態の粘弾性測定方法は、粘弾性体に接触させた振動体と、振動体を介して粘弾性体に変形を与えるためのアクチュエータと、粘弾性体(振動体)の変位を測定するための変位センサと、変位センサの出力信号である変位信号から特定周波数の信号成分を抽出するバンドパスフィルタと、バンドパスフィルタの通過周波数帯域(特定周波数帯域)を変化させる手段と、変位信号の特定周波数成分を微分して振動速度を演算し、この振動速度にフィードバックゲインを乗算して力の出力に変換する変換回路と、各特定周波数帯域においてフィードバックゲインを変化させて、各特定周波数帯域における自励発振の発生の有無を検出する手段と、自励発振を検出時のフィードバックゲインを測定する手段とを含む粘弾性測定装置を用いる。
ここで、弾性と粘性とを併せ持つ粘弾性体は、ばねとダッシュポットをもつ力学系に置き換えることができる。このような力学系のモデルとして、ばねとダッシュポットとが直列に接続されたマクスウェルモデルと、ばねとダッシュポットとが並列に接続されたケルビン・フォークトモデルとが知られている。図1(a)に示す例は、ケルビン・フォークトモデルを適用した例であり、本実施形態の理論的背景を説明するのに必要な図である。図1(a)に示す力学モデルは、粘弾性体の弾性と粘性とが、それぞれ、ただ一つの要素で成り立っているような単純な力学系で表現できる場合の力学モデルを表している。具体的に、測定対象物である粘弾性体は、1つの線形弾性率klinのばねと、1つの線形粘性率clinのダッシュポットとを並列接続した構成として表現される。
この粘弾性体に対して、質量Mを有する振動体を介して変形力を与える場合、図1(a)に示すように、粘弾性体を示すばねとダッシュポットとに、質量Mの振動体を接続した、ばね・マス(質量)・ダッシュポット系の力学モデルとして表現できる。具体的に、粘弾性体に振動体を接触させ、この振動体に対してアクチュエータから力Fを加えて、振動体を変位(自励振動)させ、この振動体の変位を粘弾性体の変位として変位センサで検出する。例えば、振動体を介して粘弾性体にせん断方向(ずり変形方向)の力Fを加え、せん断方向の変位を検出する。
なお、ここで言う接触とは、粘弾性体の物性などに応じて、例えば、粘弾性体が半固体であれば振動体の一面を測定対象物に密着すること等が該当する。また、例えば、粘弾性体が流体であれば例えばカンチレバー等の振動体を流体内に挿入すること等が該当する。
このような構成において、粘弾性体(厳密には振動体)に力Fを加えると、その変位は、下式(1)のような運動方程式に従う。
M(d2x/dt2)+clin(dx/dt)+klinx=F ・・・(1)
上式(1)においてMは振動体の質量、clinは粘性項の比例係数(線形粘性率)、klinは線形弾性率、xは粘弾性体の変位(振動体の変位と同じ)である。そして、粘弾性体に、その運動速度に比例した力F(以下、Fvと称す)を与える場合、運動方程式は、下式(2)のようになる。
M(d2x/dt2)+clin(dx/dt)+klinx=Glin(dx/dt) ・・・(2)
ここで、上式(2)のGlinは、入力する力と、速度の比例係数であり、以下、線形速度フィードバックゲインと呼ぶ。上式(2)の右辺を左辺へ移項すると、下式(3)のようになる。
M(d2x/dt2)+(clin−Glin)(dx/dt)+klinx=0
・・・(3)
線形速度フィードバックゲインGlinが粘性項の比例定数clinよりも大きくなると、負の粘性項が生まれ、粘弾性体に自励発振が発生する。この際の振動角周波数は、下式(4)で表せる。
ωs=(klin/M)1/2 ・・・(4)
ここで、上式(4)のωsは自励発振によって発生した振動(自励振動)の角周波数である。上式(4)から、自励発振の振動角周波数ωsを測定できれば、上式(4)を変形した下式(5)によって線形弾性率klinを算出することができる。
lin=ωs 2×M ・・・(5)
このように、粘弾性体が、単純な力学モデルで表現できる場合には、自励発振を理論的に記述することができ、弾性率および粘性率を算出できる。
しかし、溶融プラスチックや、ゴムなどのように、複雑な分子的・微視的構造を持つ粘弾性体は、その粘弾性を図1(a)のような単純な力学モデルでモデリングできない場合がある。そのような場合、粘弾性体内部の正確な力学的構造を知ることは極めて困難となる。
本発明者らは、複雑な分子的・微視的構造を持つ粘弾性体は、その内部の力学的構造が、弾性率及び粘性率の異なる複数の粘弾性要素(例えば、図1(a)に示す構造の粘弾性要素(以下、単位粘弾性要素と称す))が混在する構成になっていると推定し、複雑な分子的・微視的構造を持つ粘弾性体を、図1(b)に示すモデルで表現するようにした。
具体的に、図1(b)に示すように、複雑な分子的・微視的構造を持つ粘弾性体を、異なる弾性率及び粘性率の複数の単位粘弾性要素が直列に連結され、かつこの直列に連結された複数の単位粘弾性要素からなる直列粘弾性要素群が並列に連結され、さらに、この並列に連結した直列粘弾性要素群に質量Mのマス(振動体)が連結されたモデルで表現するようにした。
次に、図2に基づき、従来のレオメータに適用されている測定方法の問題点について説明する。図2(a)は、複数の緩和時間にそれぞれ対応する動的弾性率及び損失弾性率の周波数応答曲線の一例を示す図であり、(b)は、本実施形態に係る粘弾性測定方法により得られる粘弾性スペクトルの一例を示す図である。
従来は、図1(b)のモデルで表さなければならないような複雑な粘弾性体の場合、複数の緩和時間が存在すると考え、動的弾性率(G’)や損失弾性率(G’’)の曲線は、図2(a)に示すように、複数の緩和時間に対応する波形が重なり合ったものになると推定していた。そして、このような推定に基づいて、動的弾性率や損失弾性率の測定結果から、変曲点や、頂点を読みとって、粘弾性体の微視的な力学構造を推測することが行われていた。
しかし、動的弾性率は、図2(a)の下図に示すように、なだらかなピークを持つ波形であり、損失弾性率は、図2(a)の上図に示すように、上限値を持つなだらかな単調増加曲線である。そのため、緩和時間や弾性率が異なっていても、重なり合ってしまえば、特徴の少ないなだらかな曲線となるだけであった。特に、緩和時間が近接している場合や、弾性率が小さい場合には、緩和時間ごとの曲線を明瞭に区別することは困難であった。
一方、本発明の粘弾性測定方法は、図1(b)のモデルにおける複数の単位粘弾性要素と付加質量との組み合わせが、それぞれ別の周波数で自励発振を発生させると考え、自励発振の発生を、周波数ごとに調べ、その周波数と、線形速度フィードバックゲインGlinとから、単位粘弾性要素と付加質量との組み合わせの一つに対応する粘性率と、弾性率及び付加質量の比とを、明確に特定できるようにしたものである。
図2(b)のように、縦軸に線形速度フィードバックゲインの逆数(1/Glin)をとり、横軸に角周波数(ω)をとったスペクトルは、図1(b)のモデルにおける複数の、単位粘弾性要素と付加質量との組み合わせの一つ一つに対応する鋭いピークとして表れ、明瞭に区別することができる。ここで、n種類(nは2以上の自然数)の特定周波数fpi(i=1,2,3,・・・,(n−1),n)に対応する変位信号成分について測定を行う場合に、これらn種類の変位信号成分にそれぞれ対応する、ピークの角周波数ωpiから、この角周波数ωpiに対応する線形弾性率kiと付加質量Miとの比の平方根((ki/Mi1/2)を知ることができ、ピークの高さから、角周波数ωpiに対応する線形粘性率の逆数の大きさ(1/Gi)を知ることができる。このようにして、本発明では、図1(b)のモデルで表さなければならないような複雑な粘弾性体の場合でも、力学的構成要素に対応した鋭いピークを得ることができ、従来法よりも遥かに明瞭な粘弾性スペクトルを測定できる。
次に、図3に基づき、本実施形態に係る粘弾性測定装置の概略構成を説明する。図3は、本実施形態に係る粘弾性測定装置の一例を示す概略構成図である。
図3に示すように、本実施形態に係る粘弾性測定装置100は、振動体1と、変位センサ2と、変位検出器3と、バンドパスフィルタ4と、周波数調整手段5と、振動速度演算器6と、ゲイン調整手段7と、増幅器8と、ドライバ9と、アクチュエータ10と、自励発振検出手段12と、演算器13と、メモリ14とを含んで構成される。
振動体1は、半導体材料等から構成された質量Mを有する構造体であり、その材質や形状等は、測定対象となる粘弾性体の物性等によって異なる。また、粘弾性体の粘弾性を測定時には、振動体1を粘弾性体に接触させる。粘弾性体が、例えばコーティング剤等の薄膜材料であれば、振動体1を例えば断面矩形状の構造体(例えば、立方体)とし、その一面を薄膜上に密着させる。また、粘弾性体が流体であれば、振動体1を、例えば、カンチレバーのような片持ち梁の形状とし、その探針部分を流体内に挿入する。他にも、従来のレオメータに採用されている、円錐形状、円筒形状などとしてもよい。
変位センサ2は、振動体1の変位を検出するためのセンサであり、そのセンサ出力を変位検出器3に供給する。
変位検出器3は、変位センサ2からのセンサ出力に基づき、振動体1の変位xを検出し、検出した変位xを示す変位信号をバンドパスフィルタ4に供給する。
なお、変位センサ2、又は変位センサ2及び変位検出器3の組み合わせとしては、例えば、静電容量変位センサ、エンコーダ、光学式変位計、ひずみゲージ等を用いることができる。
バンドパスフィルタ4は、通過帯域可変型のフィルタであり、周波数調整手段5によって設定される特定周波数fpiを中心周波数とした通過周波数帯域(以下、特定周波数帯域と称す)fbwiの信号成分を抽出して、抽出した変位信号の信号成分xi(以下、特定周波数成分xiと称す)を振動速度演算器6及び自励発振検出手段12にそれぞれ供給する。
なお、バンドパスフィルタ4として、アナログフィルタ、デジタルフィルタ、ロックインアンプ等を用いることができる。
周波数調整手段5は、測定対象物の物性等に応じて設定される測定周波数範囲におけるn個の特定周波数fp1〜fpnを順次切り替えて、バンドパスフィルタ4の通過周波数帯域を、特定周波数fp1〜fpnを中心周波数とした特定周波数帯域fbw1〜fbwnのいずれか1に設定する。具体的に、特定周波数fp1〜fpnの初期値(例えば、特定周波数fp1)を設定後は、自励発振検出手段12からの制御信号に応じて、順次、特定周波数を別の周波数(例えば、特定周波数fpi+1など)に変更する。
振動速度演算器6は、微分器を含んで構成され、バンドパスフィルタ4からの特定周波数成分xiを微分器で微分して、特定周波数fpiに対応する振動体1の振動速度dxi/dtを算出し、算出したdxi/dtを増幅器8に供給する。
ゲイン調整手段7は、周波数調整手段5からの制御信号に応じて、増幅器8の線形速度フィードバックゲインGlinの初期値を設定すると共に、自励発振検出手段12における各Glinに対する検出処理が完了する毎に増幅器8のゲインGlinを変化させる。具体的に、現在設定されているGlinに対する検出処理が完了する毎に当該Glinを予め設定されたΔgずつ増加(又は減少)する。このゲインの調整は、自励発振検出手段12によって、振動体1の自励発振が検出されるか、またはゲイン調整手段7において予め設定されたゲインの上限値(又は下限値)に到達するまで繰り返し行われる。
増幅器8は、可変増幅器を含んで構成され、ゲイン調整手段7によって設定された線形速度フィードバックゲインGlinと、振動速度演算器6から供給される振動速度dxi/dtとを乗算する。そして、増幅器8は、算出したGlin・dxi/dtをフィードバック制御信号Fsとして、ドライバ9に供給する。
ドライバ9は、増幅器8から供給されるフィードバック制御信号Fsに基づき、アクチュエータ10を、振動体1の運動速度に比例した力Fvを振動体1に与えるように駆動する駆動信号を生成し、生成した駆動信号をアクチュエータ10に供給する。例えば、増幅器8からのフィードバック制御信号Fsを増幅した駆動信号をアクチュエータ10に供給する。
アクチュエータ10は、ドライバ9から供給される駆動信号に基づき、振動体1に当該振動体1の運動速度に比例した力Fvを与えるものである。アクチュエータ10としては、例えば、モータ、ピエゾ素子、ボイスコイル、静電アクチュエータなどを用いることができる。
自励発振検出手段12は、特定周波数成分(振動変位)xi(又は振動速度dxi/dt、又は振動振幅の周波数スペクトル)に基づき、振動体1が自励発振しているか否かを検出する。自励発振検出手段12は、自励発振していると検出したときに、そのときの線形速度フィードバックゲインGlinを、発振限界ゲインGi*とし、当該Gi*を演算器13に供給する。
ここで、線形速度フィードバックゲインGlinを変化させたとき、線形速度フィードバックゲインGlinが発振限界に達した時点で初めて振動体1は自励振動を開始することになり、この発振限界における線形速度フィードバックゲインである発振限界ゲインは粘度相当値を表す。
具体的に、振動体1の振動振幅が比較的小さく、且つ上式(3)が成立し、式(3)中のdx/dtの係数の絶対値が小さいとき、振動体1の発振周波数は線形振動理論上、振動振幅に依存しない振動体1の線形の固有振動数にほぼ等しい値をとる。
そして、線形速度フィードバックゲインGlin(>0)を徐々に大きくすると、次式(6)の条件が満足されるとき、振動系は負減衰系となり自励振動が発生する。
lin−Glin<0 ・・・(6)
すなわち、振動体1の発振が始まる自例振動の発振限界を与える線形速度フィードバックゲインGlin*(発振限界ゲイン)は、次式(7)で表すことができる。
lin(=Glin*)=clin ・・・(7)
従って、自励振動の発振限界を与えるときの線形速度フィードバックゲインGlin*を求めることにより、線形粘性率clinを同定することができる。
演算器13は、自励発振検出手段12からの発振限界ゲインGi*の受信に応じて、発振限界ゲインGi*の逆数である「1/Gi*」を演算する。更に、周波数調整手段5からの特定周波数fpiに2πを乗算して角周波数ωpiを演算する。なお、ωpiは、特定周波数fpiに反応する自励発振周波数を有する単位粘弾性要素と付加質量との組み合わせに対する、上式(4)に示す角周波数ωsであり、ωp{i}=(ki/Mi1/2となる。従って、ωpiを演算することで、線形弾性率kiと振動体1の質量Miとの比の平方根を演算することができる。そして、演算器13は、これら演算結果と、演算に用いた発振限界ゲインGi*及び特定周波数fpiとをメモリ14に記憶する。
メモリ14は、バンドパスフィルタ4の特定周波数fpiと、振動体1が自励発振したことを検出時の発振限界ゲインGi*と、これら測定値に基づき演算器13で演算される、角周波数ωpi(=(ki/Mi1/2)と、この角周波数ωpiに対応する発振限界ゲインの逆数である「1/Gi*」とを記憶するためのメモリである。
また、本実施形態の粘弾性測定装置100は、図示しないが、上記各機能をソフトウェア上で実現するため、または、各機能を実現するためのハードウェアを制御するためのコンピュータシステムを備えている。
具体的に、各種制御や演算処理を担うCPU(Central Processing Unit)と、ワークメモリの役割を担うRAM(Random Access Memory)と、上記各機能を実現するための専用のプログラムやプログラムの実行に必要なデータ等を記憶するROM(Read Only Memory)と、各構成要素にデータを伝送するためのデータ伝送用バスとを備えている。
(粘弾性測定処理)
次に、図4に基づき、粘弾性測定装置100において実行される粘弾性測定処理の処理手順を説明する。図4は、粘弾性測定処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図4に示すように、まず、ステップS100に移行し、周波数調整手段5において、バンドパスフィルタ4の通過周波数帯域を初期値に設定し、制御信号をゲイン調整手段7に出力して、ステップS102に移行する。この初期値は、例えば、測定対象物である粘弾性体の物性等に応じて予め設定された測定周波数範囲fp1〜fpnにおける最低周波数(例えば、fp1)を中心周波数(又は共振周波数)とした帯域を設定すればよい。
ステップS102では、ゲイン調整手段7において、周波数調整手段5からの制御信号に応じて、増幅器8の線形速度フィードバックゲインGlinを初期値に設定する。その後、ステップS104に移行する。この初期値は、任意の値に設定することができる。
ステップS104では、自励発振検出手段12において、振動体1が振動(自励発振)したか否かを判定し、振動したと判定した場合(Yes)は、そのときの線形速度フィードバックゲインGlinを発振限界ゲインGi*とし、Gi*を演算器13に供給する。その後、ステップS106に移行する。一方、振動していないと判定した場合(No)は、ステップS112に移行する。
ここで、振動体1が振動したか否かの判断は、例えば、振動変位xi或いは振動速度dxi/dtが予め設定したしきい値以上変化したときに、振動体1が振動したと判断するようにすればよい。
ステップS106に移行した場合は、演算器13において、自励発振検出手段12からの発振限界ゲインGi*の受信に応じて、発振限界ゲインの逆数(1/Gi*)を演算して、ステップS108に移行する。
ステップS108では、演算器13において、周波数調整手段5から特定周波数fpiを獲得し、獲得した特定周波数fpiに2πを乗算して、角周波数ωpiを演算する。その後、ステップS110に移行する。
ステップS110では、演算器13において、発振限界ゲインGi*と、特定周波数fpiと、ステップS106で演算した発振限界ゲインの逆数(1/Gi*)と、ステップS108で演算した角周波数ωpiとをメモリ14に記憶して、ステップS114に移行する。
一方、ステップS104において振動が検出されずにステップS112に移行した場合は、ゲイン調整手段7において、増幅器8の線形速度フィードバックゲインGlinが最大値に設定されているか否かを判定する。この判定により、最大値に設定されていると判定した場合(Yes)は、ステップS114に移行し、最大値に設定されていないと判定した場合(No)は、ステップS118に移行する。
ステップS114に移行した場合は、周波数調整手段5において、全ての特定周波数fpiに対して測定が終了したか否かを判定し、終了したと判定した場合(Yes)は、一連の処理を終了する。一方、終了していないと判定した場合(No)は、ステップS116に移行する。
ステップS116に移行した場合は、周波数調整手段5において、バンドパスフィルタ4の特定周波数帯域を別の未測定の周波数帯域に変更し、制御信号をゲイン調整手段7に出力して、ステップS102に移行する。
一方、ステップS112において最大値に設定されていないと判定され、ステップS118に移行した場合は、ゲイン調整手段7において、増幅器8に設定された現在の線形速度フィードバックゲインGlinを予め設定されたΔgだけ増加させて、ステップS104に移行する。
なお、「Δg」は、線形速度フィードバックゲインGlinを「Glin+Δg」に維持したときに、振動体1の振動変位xiから発振周波数fpiを検出することのできる程度の比較的小さい値に設定する。「Δg」が大きくなると線形速度フィードバックゲインGlinが大きくなり、振動体1の振動振幅が大きくなる。その結果、振動体1の発振周波数fpiが線形の固有振動数からずれてしまい、振動振幅のわずかな変化に依存して発振周波数fpiが変動しやすくなる。したがって、「Δg」は、できるだけ小さな値が好ましい。
(動作)
次に、図5に基づき、本実施形態の粘弾性測定装置100の動作を説明する。
図5は、本実施形態の粘弾性測定装置100の装置構成の一例を示す図である。
図5に示す装置構成において、固定された円盤(プレート)と、振動体1としての円錐形状の構造物(以下、コーン1と称す)とが、コーン1の頂点を真下に向けた状態でプレートの上面と対向するように設置され、これら対向するプレートとコーン1との間隙に液体、あるいは固体の測定試料(粘弾性体)が挿入される。
コーン1の底面にはその中心と同心の回転軸が設けられており、この回転軸はエアベアリングによって回転自在に支持されている。さらに、この回転軸には、アクチュエータ10としてのモータ(以下、モータ10と称す)が接続されている。このモータ10によってコーン1には回転振動が与えられ、その変位は、変位センサ2及び変位検出器3としてのエンコーダ(以下、エンコーダ2,3と称す)によって検出される。エンコーダ2,3の出力は、バンドパスフィルタ4(不図示)によって周波数を限定され、その後、振動速度演算器6(不図示)で速度dxi/dtとされて、増幅器8(不図示)へと入力される。増幅器8では速度dxi/dtに線形速度フィードバックゲインGlinを乗算し、この乗算結果である線形速度フィードバック信号Fsを、ドライバ9としてのモータ駆動回路9(不図示)に入力する。エンコーダ2,3の出力が、モータ駆動回路9を通ることで、モータ10はコーン1の運動速度に比例する力Fvを発生することになる。
以下、図5に示す装置構成の粘弾性測定装置100の動作を説明する。
まず、測定を開始する前に、プレートとコーン1との間に試料を挿入する。次に、各構成機器の電源スイッチを入れる。
粘弾性測定装置100は、電源が供給されると、CPUによってROMに記憶された粘弾性測定用の制御プログラムを起動し、まず、周波数調整手段5によって、バンドパスフィルタ4の通過周波数帯域である特定周波数帯域を、予め設定された測定周波数範囲である特定周波数fp1〜fpnのうち予め設定した初期値(例えば、特定周波数fp1)を中心周波数とした帯域fbw1に設定する(ステップS100)。これにより、バンドパスフィルタ4は、エンコーダ2,3から供給される振動体の変位xを示す変位信号の信号成分のうち、特定周波数帯域fbw1の信号成分を通過させ、それ以外の周波数帯域の信号成分の通過を制限(減衰)する。つまり、バンドパスフィルタ4において、変位xの変位信号から特定周波数帯域fbw1の信号成分xiが抽出され、この抽出された特定周波数成分xiが、振動速度演算器6及び自励発振検出手段12にそれぞれ供給される。また、周波数調整手段5は、バンドパスフィルタ4の特定周波数帯域を設定すると、制御信号をゲイン調整手段7に出力する。
ゲイン調整手段7は、周波数調整手段5からの制御信号に応じて、増幅器8の線形速度フィードバックゲインGlinを予め設定された初期値(小さな値)に設定する(ステップS104)。
ここで、初期値設定後の初期段階においては、振動体1が変位していないため、エンコーダ2,3で検出される変位x及びバンドパスフィルタ4で抽出される特定周波数成分xiは「0」となり、振動速度dxi/dtも「0」となる。ところが、実際は周囲環境の雑音等が影響して、変位x及び特定周波数成分xiは「0」とならず、何らかの値を有する。従って、エンコーダではこの変位xが検出され、バンドパスフィルタ4では、この変位xの変位信号から特定周波数成分xiが抽出され、振動速度演算器6では、この抽出された特定周波数成分xiから、振動速度dxi/dtが演算される。この振動速度dxi/dtは、増幅器8に供給され、この振動速度dxi/dtと設定された線形速度フィードバックゲインGlinとが乗算されて、その乗算結果であるGlin・dxi/dtがフィードバック制御信号Fsとしてモータ駆動回路9に入力される。
なお、自励発振の初期段階において、コーン1の変位が、周囲環境の雑音等だけではエンコーダ2,3の検出下限を下回る場合は、予備的に、任意の周波数の振動を与える。つまり、コーン1を任意の一定周波数で振動させておく。
モータ駆動回路9は、増幅器8から受信したフィードバック制御信号Fsに基づき、コーン1の振動速度dxi/dtに比例した力Fvをコーン1に与えるためのモータ10の駆動信号を生成し、生成した駆動信号をモータ10に供給する。モータ10は、この駆動信号に応じて駆動し、コーン1に力Fvを与える。このようにして、フィードバックループが形成されると共に、コーン1に、その振動速度に比例した力Fvが与えられる。
一方、自励発振検出手段12では、バンドパスフィルタ4から供給される特定周波数成分xi(以下、振動変位xiと称す)に基づき、この振動変位xiと予め設定されたしきい値とを比較し、この比較結果に基づき、コーン1が振動したか否かを判定する(ステップS104)。これにより、振動変位xiがしきい値未満であり、コーン1が振動していないと判定された場合(ステップS104のNo)、ゲイン調整手段7に振動していないことを示す信号を入力する。これにより、ゲイン調整手段7は、線形速度フィードバックゲインGlinの現在の設定値が最大値となっているか否かを判定し(ステップS112)、最大値になっていないと判定した場合(ステップS112のNo)に、増幅器8の線形速度フィードバックゲインGlinをΔgだけ増加する(ステップS118)。この増加処理は、振動変位xiがしきい値未満であると判定されかつGlinが最大値になっていないと判定される毎に実行される。
このようにして、線形速度フィードバックゲインGlinを徐々に大きくしていくと、Glinが、バンドパスフィルタ4に設定されている特定周波数帯域fbwi(特定周波数fpi)に反応する自励発振周波数を持つ力学要素の粘性力の比例定数ciを超えたときに、自励発振が発生する。
ここで、自励発振検出手段12は、自励発振が検出された場合(ステップS104のYes)、このときの自励発振が発生する限界の線形速度フィードバックゲイン(発振限界ゲイン)Gi*を演算器13に供給する。
そして、演算器13において、発振限界ゲインGi*の逆数「1/Gi*」を演算する(ステップS106)。更に、演算器13は、このときの特定周波数fpiを周波数調整手段5から獲得し、獲得したfpiに2πを乗算して角周波数ωpiを演算する(ステップS108)。そして、これら演算結果と、演算結果に対応する発振限界ゲインGi*及び特定周波数fpiとをメモリ14に記憶する(ステップS110)。
また、ここでは、発振限界ゲインGi*を測定する毎に、発振限界ゲインの逆数「1/Gi*」と角周波数ωpiとを演算してメモリ14に記憶する構成としているが、この構成に限らない。例えば、まず先に、各特定周波数に対応する発振限界ゲインG1*〜G*とこれら発振限界ゲインに対応する特定周波数fp1〜fpnとを順次メモリ14に記憶し、全ての特定周波数に対する測定が終了後に、メモリ14に記憶された測定結果から、発振限界ゲインの逆数「1/Gi*」及び角周波数ωpiを演算する構成としてもよい。
次に、未測定の特定周波数が存在する場合(ステップS114のNo)、周波数調整手段5によって、例えば、現在設定されているバンドパスフィルタ4の特定周波数帯域fbw1を未測定の特定周波数fp2を中心周波数とした別の特定周波数帯域fbw2に変更する(ステップS116)。これにより、バンドパスフィルタ4は、エンコーダ2,3から出力される変位信号の信号成分のうち、変更後の特定周波数fp2を中心周波数とした特定周波数帯域fbw2の信号成分を通過し、それ以外の周波数帯域の信号成分の通過を制限する。
そして、上記同様の処理(ステップS102〜S116の処理)を繰り返し実行し、特定周波数fp1〜fpnの全てについて測定が終了したと判定した場合(ステップS114のYes)に、測定を終了する。
なお、メモリ14に記憶された「1/Gi*」及び「ωpi=(ki/Mi1/2」とは、縦軸に「1/Gi*」をとり、横軸にωpiをとってグラフ化することで、測定試料に対応する、自励発振による粘弾性スペクトルとなる。
以上説明したように、本実施形態における粘弾性測定方法及び粘弾性測定装置100であれば、粘弾性体に接触した状態の振動体1の振動変位を示す変位信号からバンドパスフィルタ4によって特定周波数の信号成分を抽出し、抽出した特定周波数成分の振動変位を微分して、特定周波数成分に対応する振動速度を演算することが可能である。さらに、この振動速度に対して線形速度フィードバックゲインを乗算してフィードバック制御信号Fsを演算し、演算したFsによるフィードバック制御によって、振動体1に対して、当該振動体1の振動速度に比例した力Fvを与えて、振動体1を自励振動させることが可能である。一方、バンドパスフィルタ4の通過帯域(特定周波数)を変化させると共に、変化させた特定周波数毎にフィードバックゲインを変化させ、変化させたフィードバックゲインによるフィードバック制御を行う毎に振動体が自励振動したか否かを検出することが可能である。そして、変化させた特定周波数毎に、自励振動を検出時のフィードバックゲイン(発振限界ゲイン)を測定することが可能である。更に、測定した発振限界ゲインからその逆数を演算し、特定周波数から角周波数を演算し、発振限界ゲインを縦軸にとり、角周波数を横軸にとってグラフ化することで、粘弾性体の粘弾性スペクトルを得ることが可能である。
これにより、粘弾性体が、単純な力学モデルでは表せられない、複雑な粘弾性を持つ場合であっても、弾性および粘性を明瞭に区別して、粘弾性体内部の性質を推定するのに有効な粘弾性の周波数スペクトルを測定することが可能である。
ここで、上記実施形態において、変位センサ2及び変位検出器3が変位センサを構成し、バンドパスフィルタ4が特定周波数成分抽出手段を構成し、増幅器8及びドライバ9が、フィードバック制御手段を構成する。
また、上記実施形態において、振動速度演算器6が、振動速度検出手段を構成し、演算器13及びメモリ14が、粘弾性測定手段を構成する。
また、上記実施形態において、ステップS104が、振動体が自励振動したか否かを検出するステップに対応し、ステップS116が特定周波数を変化させるステップに対応し、ステップS118が、線形速度フィードバックゲインを変化させるステップに対応する。
また、上記実施形態において、ステップS106〜S110が、粘弾性を測定するステップに対応する。
(変形例)
上記実施形態において、本発明をコーンプレート型のレオメータに適用した例を説明したが、この構成に限らない。
例えば、引っ張り試験器や、レオプラストメータなどの粘弾性測定装置などにも適用可能である。
また、上記実施形態において、本発明をレオロジー性質の特定に用いた例を説明したが、自動車や、ロボット、建物などの、構造物の振動特性を測定する方法としても適用可能である。
また、上記実施形態では、周波数調整手段5を設けて、バンドパスフィルタ4の通過周波数帯域(特定周波数)を自動で変化させる構成としたが、この構成に限らず、手動で変化させる構成としてもよい。
また、上記実施形態では、ゲイン調整手段7を設けて、増幅器8の線形速度フィードバックゲインGlinを自動で変化させる構成としたが、この構成に限らず、手動で変化させる構成としてもよい。
また、上記実施形態は、本発明の好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、上記の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。また、上記の説明で用いる図面は、図示の便宜上、部材ないし部分の縦横の縮尺は実際のものとは異なる模式図である。
また、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
本発明は、粘弾性体の粘弾性が単純な力学モデルでモデリングできない場合でも、明瞭な粘弾性スペクトルを測定できる。この技術は、レオメータに応用されることで、粘弾性体の高精度な弾性率測定が可能になり、プラスチック製品、食品、医薬品などの研究開発に役立つ。また、自動車や、ロボットや、建物などの構造物の振動特性を測定する方法としても役に立つ。
また、上記実施形態では、粘弾性体の測定に限定したが、ロボットや橋などのような、複数のばね要素と、粘性要素を併せ持つ力学系でモデリングしなければならない複雑な系において、内部の複数のばね定数や、粘性率と付加質量との比を明確に測定することも可能になる。
100…粘弾性測定装置、1…振動体、2…変位センサ、3…変位検出器、4…バンドパスフィルタ、5…周波数調整手段、6…振動速度演算器、7…ゲイン調整手段、8…増幅器、9…ドライバ、10…アクチュエータ、12…自励発振検出手段、13…演算器、14…メモリ

Claims (4)

  1. 測定対象物に接触させる振動体と、
    当該振動体を自励振動させるアクチュエータと、
    前記振動体の振動変位を検出する変位センサと、
    前記変位センサの出力信号である変位信号から特定周波数の信号成分を抽出する特定周波数成分抽出手段と、
    前記特定周波数成分抽出手段で抽出された前記特定周波数の信号成分に基づき、振動体の振動速度を検出する振動速度検出手段と、
    前記振動速度検出手段で検出される前記振動速度を正帰還して、
    Fs=Glin・(dx/dt)
    ただし、Fs:フィードバック制御信号
    lin:正値である線形速度フィードバックゲイン
    x:振動体の変位
    dx/dt:振動体の振動速度
    で表されるフィードバック制御信号により前記アクチュエータをフィードバック制御するフィードバック制御手段と、を含む粘弾性測定装置を用いた測定対象物の粘弾性測定方法であって、
    前記特定周波数成分抽出手段の前記信号成分を抽出時の前記特定周波数を変化させるステップと、
    前記変化させた特定周波数毎に、前記フィードバック制御における前記線形速度フィードバックゲインを変化させるステップと、
    前記変化させた線形速度フィードバックゲインによるフィードバック制御を行う毎に、前記振動体が自励振動したか否かを検出するステップと、
    前記振動体が自励振動したことを検出したときの前記線形速度フィードバックゲインを測定するステップと、を含むことを特徴とする粘弾性測定方法。
  2. 前記振動体が自励振動したことを検出したときの各特定周波数に対応する振動角周波数と前記線形速度フィードバックゲインの逆数との関係を示す粘弾性の周波数スペクトルを生成するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の粘弾性測定方法。
  3. 前記特定周波数成分抽出手段はバンドパスフィルタから構成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の粘弾性測定方法。
  4. 測定対象物に接触させる振動体と、
    当該振動体を自励振動させるアクチュエータと、
    前記振動体の振動変位を検出する変位センサと、
    前記変位センサの出力信号である変位信号から特定周波数の信号成分を抽出する特定周波数成分抽出手段と、
    前記特定周波数成分抽出手段で抽出された特定周波数の変位信号成分に基づき、振動体の振動速度を検出する振動速度検出手段と、
    前記振動速度検出手段で検出される前記振動速度を正帰還して、
    Fs=Glin・(dx/dt)
    ただし、Fs:フィードバック制御信号
    lin:正値である線形速度フィードバックゲイン
    x:振動体の変位
    dx/dt:振動体の振動速度
    で表されるフィードバック制御信号により前記アクチュエータをフィードバック制御するフィードバック制御手段と、
    前記特定周波数成分抽出手段の前記信号成分を抽出時の前記特定周波数を変化させる特定周波数調整手段と、
    前記変化させた特定周波数毎に、前記フィードバック制御における前記線形速度フィードバックゲインを変化させるゲイン調整手段と、
    前記変化させた線形速度フィードバックゲインによるフィードバック制御を行う毎に、前記振動体が自励振動したか否かを検出する自励発振検出手段と、
    前記振動体が自励振動したことを検出したときの前記線形速度フィードバックゲインを測定する粘弾性測定手段と、を備えることを特徴とする粘弾性測定装置。
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