JP5831903B2 - 粘弾性測定方法及び粘弾性測定装置 - Google Patents
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Description
ここで、粘弾性体が、単純な力学モデルでは表せられない、複雑な粘弾性を持つ場合には、粘弾性体の内部に、複数のばね要素、及び複数の粘性要素が含まれると考えられ、複数の緩和時間を持つことになる。この場合、動的弾性率、および損失弾性率の周波数スペクトルは、複数の緩和時間に起因する波形が重畳したものとなる。
本発明は、粘弾性体の性質を測定する方法における上記の問題点を解決し、特に、粘弾性体が、単純な力学モデルでは表せられない、複雑な粘弾性を持つ場合に、弾性および粘性を明瞭に区別して、粘弾性体内部の性質を推定するのに有効な粘断性測定方法及び粘弾性測定装置を提供することを目的とする。
Fs=Glin・(dx/dt)
ただし、Fs:フィードバック制御信号
Glin:正値である線形速度フィードバックゲイン
x:振動体の変位
dx/dt:振動体の振動速度
で表されるフィードバック制御信号により前記アクチュエータをフィードバック制御するフィードバック制御手段と、を含む粘弾性測定装置を用いた測定対象物の粘弾性測定方法であって、前記特定周波数成分抽出手段の前記信号成分を抽出時の前記特定周波数を変化させるステップと、前記変化させた特定周波数毎に、前記フィードバック制御における前記線形速度フィードバックゲインを変化させるステップと、前記変化させた線形速度フィードバックゲインによるフィードバック制御を行う毎に、前記振動体が自励振動したか否かを検出するステップと、前記振動体が自励振動したことを検出したときの前記線形速度フィードバックゲインを測定するステップと、を含むことを特徴としている。
〔形態3〕 さらに、形態3の粘弾性測定方法は、形態1又は2の構成に対して、前記特定周波数成分抽出手段はバンドパスフィルタから構成されることを特徴としている。
Fs=Glin・(dx/dt)
ただし、Fs:フィードバック制御信号
Glin:正値である線形速度フィードバックゲイン
x:振動体の変位
dx/dt:振動体の振動速度
で表されるフィードバック制御信号により前記アクチュエータをフィードバック制御するフィードバック制御手段と、前記特定周波数成分抽出手段の前記信号成分を抽出時の前記特定周波数を変化させる特定周波数調整手段と、前記変化させた特定周波数毎に、前記フィードバック制御における前記線形速度フィードバックゲインを変化させるゲイン調整手段と、前記変化させた線形速度フィードバックゲインによるフィードバック制御を行う毎に、前記振動体が自励振動したか否かを検出する自励発振検出手段と、前記振動体が自励振動したことを検出したときの前記線形速度フィードバックゲインを測定する粘弾性測定手段と、を含むことを特徴としている。
これにより、粘弾性体が、単純な力学モデルでは表せられない、複雑な粘弾性を持つ場合であっても、弾性および粘性を明瞭に区別して、粘弾性体内部の性質を推定するのに有効な粘弾性の周波数スペクトルを測定することができるという効果が得られる。
(構成)
図1(a)は、本実施形態に係る粘弾性体と振動体とアクチュエータと変位センサとの関係を説明するための力学系の模式図であり、(b)は、複雑な分子的・微視的構造を持つ粘弾性体の力学系の一構成例を示す模式図である。
なお、ここで言う接触とは、粘弾性体の物性などに応じて、例えば、粘弾性体が半固体であれば振動体の一面を測定対象物に密着すること等が該当する。また、例えば、粘弾性体が流体であれば例えばカンチレバー等の振動体を流体内に挿入すること等が該当する。
M(d2x/dt2)+clin(dx/dt)+klinx=F ・・・(1)
上式(1)においてMは振動体の質量、clinは粘性項の比例係数(線形粘性率)、klinは線形弾性率、xは粘弾性体の変位(振動体の変位と同じ)である。そして、粘弾性体に、その運動速度に比例した力F(以下、Fvと称す)を与える場合、運動方程式は、下式(2)のようになる。
M(d2x/dt2)+clin(dx/dt)+klinx=Glin(dx/dt) ・・・(2)
M(d2x/dt2)+(clin−Glin)(dx/dt)+klinx=0
・・・(3)
線形速度フィードバックゲインGlinが粘性項の比例定数clinよりも大きくなると、負の粘性項が生まれ、粘弾性体に自励発振が発生する。この際の振動角周波数は、下式(4)で表せる。
ωs=(klin/M)1/2 ・・・(4)
ここで、上式(4)のωsは自励発振によって発生した振動(自励振動)の角周波数である。上式(4)から、自励発振の振動角周波数ωsを測定できれば、上式(4)を変形した下式(5)によって線形弾性率klinを算出することができる。
klin=ωs 2×M ・・・(5)
このように、粘弾性体が、単純な力学モデルで表現できる場合には、自励発振を理論的に記述することができ、弾性率および粘性率を算出できる。
本発明者らは、複雑な分子的・微視的構造を持つ粘弾性体は、その内部の力学的構造が、弾性率及び粘性率の異なる複数の粘弾性要素(例えば、図1(a)に示す構造の粘弾性要素(以下、単位粘弾性要素と称す))が混在する構成になっていると推定し、複雑な分子的・微視的構造を持つ粘弾性体を、図1(b)に示すモデルで表現するようにした。
従来は、図1(b)のモデルで表さなければならないような複雑な粘弾性体の場合、複数の緩和時間が存在すると考え、動的弾性率(G’)や損失弾性率(G’’)の曲線は、図2(a)に示すように、複数の緩和時間に対応する波形が重なり合ったものになると推定していた。そして、このような推定に基づいて、動的弾性率や損失弾性率の測定結果から、変曲点や、頂点を読みとって、粘弾性体の微視的な力学構造を推測することが行われていた。
図3に示すように、本実施形態に係る粘弾性測定装置100は、振動体1と、変位センサ2と、変位検出器3と、バンドパスフィルタ4と、周波数調整手段5と、振動速度演算器6と、ゲイン調整手段7と、増幅器8と、ドライバ9と、アクチュエータ10と、自励発振検出手段12と、演算器13と、メモリ14とを含んで構成される。
変位検出器3は、変位センサ2からのセンサ出力に基づき、振動体1の変位xを検出し、検出した変位xを示す変位信号をバンドパスフィルタ4に供給する。
なお、変位センサ2、又は変位センサ2及び変位検出器3の組み合わせとしては、例えば、静電容量変位センサ、エンコーダ、光学式変位計、ひずみゲージ等を用いることができる。
なお、バンドパスフィルタ4として、アナログフィルタ、デジタルフィルタ、ロックインアンプ等を用いることができる。
振動速度演算器6は、微分器を含んで構成され、バンドパスフィルタ4からの特定周波数成分xiを微分器で微分して、特定周波数fpiに対応する振動体1の振動速度dxi/dtを算出し、算出したdxi/dtを増幅器8に供給する。
ドライバ9は、増幅器8から供給されるフィードバック制御信号Fsに基づき、アクチュエータ10を、振動体1の運動速度に比例した力Fvを振動体1に与えるように駆動する駆動信号を生成し、生成した駆動信号をアクチュエータ10に供給する。例えば、増幅器8からのフィードバック制御信号Fsを増幅した駆動信号をアクチュエータ10に供給する。
自励発振検出手段12は、特定周波数成分(振動変位)xi(又は振動速度dxi/dt、又は振動振幅の周波数スペクトル)に基づき、振動体1が自励発振しているか否かを検出する。自励発振検出手段12は、自励発振していると検出したときに、そのときの線形速度フィードバックゲインGlinを、発振限界ゲインGi*とし、当該Gi*を演算器13に供給する。
具体的に、振動体1の振動振幅が比較的小さく、且つ上式(3)が成立し、式(3)中のdx/dtの係数の絶対値が小さいとき、振動体1の発振周波数は線形振動理論上、振動振幅に依存しない振動体1の線形の固有振動数にほぼ等しい値をとる。
clin−Glin<0 ・・・(6)
すなわち、振動体1の発振が始まる自例振動の発振限界を与える線形速度フィードバックゲインGlin*(発振限界ゲイン)は、次式(7)で表すことができる。
Glin(=Glin*)=clin ・・・(7)
従って、自励振動の発振限界を与えるときの線形速度フィードバックゲインGlin*を求めることにより、線形粘性率clinを同定することができる。
また、本実施形態の粘弾性測定装置100は、図示しないが、上記各機能をソフトウェア上で実現するため、または、各機能を実現するためのハードウェアを制御するためのコンピュータシステムを備えている。
次に、図4に基づき、粘弾性測定装置100において実行される粘弾性測定処理の処理手順を説明する。図4は、粘弾性測定処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図4に示すように、まず、ステップS100に移行し、周波数調整手段5において、バンドパスフィルタ4の通過周波数帯域を初期値に設定し、制御信号をゲイン調整手段7に出力して、ステップS102に移行する。この初期値は、例えば、測定対象物である粘弾性体の物性等に応じて予め設定された測定周波数範囲fp1〜fpnにおける最低周波数(例えば、fp1)を中心周波数(又は共振周波数)とした帯域を設定すればよい。
ステップS104では、自励発振検出手段12において、振動体1が振動(自励発振)したか否かを判定し、振動したと判定した場合(Yes)は、そのときの線形速度フィードバックゲインGlinを発振限界ゲインGi*とし、Gi*を演算器13に供給する。その後、ステップS106に移行する。一方、振動していないと判定した場合(No)は、ステップS112に移行する。
ステップS106に移行した場合は、演算器13において、自励発振検出手段12からの発振限界ゲインGi*の受信に応じて、発振限界ゲインの逆数(1/Gi*)を演算して、ステップS108に移行する。
ステップS110では、演算器13において、発振限界ゲインGi*と、特定周波数fpiと、ステップS106で演算した発振限界ゲインの逆数(1/Gi*)と、ステップS108で演算した角周波数ωpiとをメモリ14に記憶して、ステップS114に移行する。
ステップS116に移行した場合は、周波数調整手段5において、バンドパスフィルタ4の特定周波数帯域を別の未測定の周波数帯域に変更し、制御信号をゲイン調整手段7に出力して、ステップS102に移行する。
なお、「Δg」は、線形速度フィードバックゲインGlinを「Glin+Δg」に維持したときに、振動体1の振動変位xiから発振周波数fpiを検出することのできる程度の比較的小さい値に設定する。「Δg」が大きくなると線形速度フィードバックゲインGlinが大きくなり、振動体1の振動振幅が大きくなる。その結果、振動体1の発振周波数fpiが線形の固有振動数からずれてしまい、振動振幅のわずかな変化に依存して発振周波数fpiが変動しやすくなる。したがって、「Δg」は、できるだけ小さな値が好ましい。
次に、図5に基づき、本実施形態の粘弾性測定装置100の動作を説明する。
図5は、本実施形態の粘弾性測定装置100の装置構成の一例を示す図である。
図5に示す装置構成において、固定された円盤(プレート)と、振動体1としての円錐形状の構造物(以下、コーン1と称す)とが、コーン1の頂点を真下に向けた状態でプレートの上面と対向するように設置され、これら対向するプレートとコーン1との間隙に液体、あるいは固体の測定試料(粘弾性体)が挿入される。
まず、測定を開始する前に、プレートとコーン1との間に試料を挿入する。次に、各構成機器の電源スイッチを入れる。
粘弾性測定装置100は、電源が供給されると、CPUによってROMに記憶された粘弾性測定用の制御プログラムを起動し、まず、周波数調整手段5によって、バンドパスフィルタ4の通過周波数帯域である特定周波数帯域を、予め設定された測定周波数範囲である特定周波数fp1〜fpnのうち予め設定した初期値(例えば、特定周波数fp1)を中心周波数とした帯域fbw1に設定する(ステップS100)。これにより、バンドパスフィルタ4は、エンコーダ2,3から供給される振動体の変位xを示す変位信号の信号成分のうち、特定周波数帯域fbw1の信号成分を通過させ、それ以外の周波数帯域の信号成分の通過を制限(減衰)する。つまり、バンドパスフィルタ4において、変位xの変位信号から特定周波数帯域fbw1の信号成分xiが抽出され、この抽出された特定周波数成分xiが、振動速度演算器6及び自励発振検出手段12にそれぞれ供給される。また、周波数調整手段5は、バンドパスフィルタ4の特定周波数帯域を設定すると、制御信号をゲイン調整手段7に出力する。
ゲイン調整手段7は、周波数調整手段5からの制御信号に応じて、増幅器8の線形速度フィードバックゲインGlinを予め設定された初期値(小さな値)に設定する(ステップS104)。
モータ駆動回路9は、増幅器8から受信したフィードバック制御信号Fsに基づき、コーン1の振動速度dxi/dtに比例した力Fvをコーン1に与えるためのモータ10の駆動信号を生成し、生成した駆動信号をモータ10に供給する。モータ10は、この駆動信号に応じて駆動し、コーン1に力Fvを与える。このようにして、フィードバックループが形成されると共に、コーン1に、その振動速度に比例した力Fvが与えられる。
ここで、自励発振検出手段12は、自励発振が検出された場合(ステップS104のYes)、このときの自励発振が発生する限界の線形速度フィードバックゲイン(発振限界ゲイン)Gi*を演算器13に供給する。
なお、メモリ14に記憶された「1/Gi*」及び「ωpi=(ki/Mi)1/2」とは、縦軸に「1/Gi*」をとり、横軸にωpiをとってグラフ化することで、測定試料に対応する、自励発振による粘弾性スペクトルとなる。
ここで、上記実施形態において、変位センサ2及び変位検出器3が変位センサを構成し、バンドパスフィルタ4が特定周波数成分抽出手段を構成し、増幅器8及びドライバ9が、フィードバック制御手段を構成する。
また、上記実施形態において、ステップS104が、振動体が自励振動したか否かを検出するステップに対応し、ステップS116が特定周波数を変化させるステップに対応し、ステップS118が、線形速度フィードバックゲインを変化させるステップに対応する。
また、上記実施形態において、ステップS106〜S110が、粘弾性を測定するステップに対応する。
上記実施形態において、本発明をコーンプレート型のレオメータに適用した例を説明したが、この構成に限らない。
例えば、引っ張り試験器や、レオプラストメータなどの粘弾性測定装置などにも適用可能である。
また、上記実施形態において、本発明をレオロジー性質の特定に用いた例を説明したが、自動車や、ロボット、建物などの、構造物の振動特性を測定する方法としても適用可能である。
また、上記実施形態では、ゲイン調整手段7を設けて、増幅器8の線形速度フィードバックゲインGlinを自動で変化させる構成としたが、この構成に限らず、手動で変化させる構成としてもよい。
また、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
また、上記実施形態では、粘弾性体の測定に限定したが、ロボットや橋などのような、複数のばね要素と、粘性要素を併せ持つ力学系でモデリングしなければならない複雑な系において、内部の複数のばね定数や、粘性率と付加質量との比を明確に測定することも可能になる。
Claims (4)
- 測定対象物に接触させる振動体と、
当該振動体を自励振動させるアクチュエータと、
前記振動体の振動変位を検出する変位センサと、
前記変位センサの出力信号である変位信号から特定周波数の信号成分を抽出する特定周波数成分抽出手段と、
前記特定周波数成分抽出手段で抽出された前記特定周波数の信号成分に基づき、振動体の振動速度を検出する振動速度検出手段と、
前記振動速度検出手段で検出される前記振動速度を正帰還して、
Fs=Glin・(dx/dt)
ただし、Fs:フィードバック制御信号
Glin:正値である線形速度フィードバックゲイン
x:振動体の変位
dx/dt:振動体の振動速度
で表されるフィードバック制御信号により前記アクチュエータをフィードバック制御するフィードバック制御手段と、を含む粘弾性測定装置を用いた測定対象物の粘弾性測定方法であって、
前記特定周波数成分抽出手段の前記信号成分を抽出時の前記特定周波数を変化させるステップと、
前記変化させた特定周波数毎に、前記フィードバック制御における前記線形速度フィードバックゲインを変化させるステップと、
前記変化させた線形速度フィードバックゲインによるフィードバック制御を行う毎に、前記振動体が自励振動したか否かを検出するステップと、
前記振動体が自励振動したことを検出したときの前記線形速度フィードバックゲインを測定するステップと、を含むことを特徴とする粘弾性測定方法。 - 前記振動体が自励振動したことを検出したときの各特定周波数に対応する振動角周波数と前記線形速度フィードバックゲインの逆数との関係を示す粘弾性の周波数スペクトルを生成するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の粘弾性測定方法。
- 前記特定周波数成分抽出手段はバンドパスフィルタから構成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の粘弾性測定方法。
- 測定対象物に接触させる振動体と、
当該振動体を自励振動させるアクチュエータと、
前記振動体の振動変位を検出する変位センサと、
前記変位センサの出力信号である変位信号から特定周波数の信号成分を抽出する特定周波数成分抽出手段と、
前記特定周波数成分抽出手段で抽出された特定周波数の変位信号成分に基づき、振動体の振動速度を検出する振動速度検出手段と、
前記振動速度検出手段で検出される前記振動速度を正帰還して、
Fs=Glin・(dx/dt)
ただし、Fs:フィードバック制御信号
Glin:正値である線形速度フィードバックゲイン
x:振動体の変位
dx/dt:振動体の振動速度
で表されるフィードバック制御信号により前記アクチュエータをフィードバック制御するフィードバック制御手段と、
前記特定周波数成分抽出手段の前記信号成分を抽出時の前記特定周波数を変化させる特定周波数調整手段と、
前記変化させた特定周波数毎に、前記フィードバック制御における前記線形速度フィードバックゲインを変化させるゲイン調整手段と、
前記変化させた線形速度フィードバックゲインによるフィードバック制御を行う毎に、前記振動体が自励振動したか否かを検出する自励発振検出手段と、
前記振動体が自励振動したことを検出したときの前記線形速度フィードバックゲインを測定する粘弾性測定手段と、を備えることを特徴とする粘弾性測定装置。
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