JP2585887Y2 - 粘弾性測定用剛体振子 - Google Patents

粘弾性測定用剛体振子

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JP2585887Y2 JP1991099736U JP9973691U JP2585887Y2 JP 2585887 Y2 JP2585887 Y2 JP 2585887Y2 JP 1991099736 U JP1991099736 U JP 1991099736U JP 9973691 U JP9973691 U JP 9973691U JP 2585887 Y2 JP2585887 Y2 JP 2585887Y2
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Description

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本考案は,塗料,接着剤,高分子
構造材等の粘弾性物質の成膜について,その粘弾性を測
定するために用いる粘弾性測定用剛体振子に関する。
【0002】
【従来技術】塗料,接着剤,熱可塑性又は熱硬化性の高
分子構造材等は,これを各種相手材に塗布し,膜状の成
膜とすることが多い。そして,かかる成膜における粘弾
性を測定するために,従来,粘弾性測定用剛体振子が用
いられている。かかる粘弾性測定用剛体振子としては,
例えば図9〜図11に示すものがある。
【0003】該粘弾性測定用剛体振子(以下,単に剛体
振子ともいう)は,図に示すごとく,エッジ部91
と,枠部93と,その下方に垂設した棹状の質量部材9
4とよりなる。上記エッジ部91は,図10に示すごと
く,被測定物である粘弾性を有する成膜70に接触する
先端部910を有している。また,質量部材94は,上
記エッジ部の振動における慣性モーメントを確保するた
めの部位である。そして,該質量部材94には,その下
端近くに加振片95を,また中央付近に変位片96を有
している。そして,粘弾性の測定に当たっては,図10
に示すごとく,まずエッジ部9の先端部910を,成
膜70に接触させる。そして,図11に示すごとく,質
量部材94の加振片95に対して,制御部8,駆動装置
81,加振アクチュエータ82により電磁力による振動
を付与する。これにより,剛体振子9はエッジ部の先端
部910を支点として図(b)の左右方向に振子振動
する。
【0004】そこで,この振動を,図11に示すごとく
変位片96の近傍に配置した変位センサ84により測定
する。そして,変位センサの入力信号は,変位計83,
制御部8を経て,出力装置86に変位データとして出力
される。このとき,成膜70が高粘弾性の場合には,振
動減衰が早く,低粘弾性の場合には振動減衰が遅いた
め,これを測定することにより,成膜の粘弾性が測定で
きる(詳細は後述)。なお,図10において,符号72
は成膜を形成させる基台,73はその支持台でる。
【0005】ところで,従来,剛体振子を用いた粘弾性
測定装置としては,前記図9に示したものが発売されて
いる(例えば,オリエンテック社,旧社名東洋ボールド
ウィン:商品名「剛体振子型粘弾性測定器」,型式「D
DV−OPA」)。そして,図に示した形状の剛体振
子を基本として,いくつかのバリエーションが標準ある
いは別売として提供されている。また,市販機の実質的
な開発者である田中丈之(日本油脂)の講演や,オリエ
ンテック社と日本油脂(株)との共同出願の実用新案公
報(実公平3−11725号公報)にも種々の特徴を具
えた剛体振子が紹介,提案されている。
【0006】これらの剛体振子は,優れたものであり,
そのすべてに共通する特徴は,その構成がエッジ部とそ
の保持機構(エッジ部が本体部と同材質で一体であるこ
ともある)に,慣性モーメントと重心位置を調節する部
材として,棹状部を下方に接続した構造となっているこ
とである。更に,注目すべきは,エッジ部周辺の支持構
造を除いてほとんどの質量部材をエッジの鉛直下方に配
置することであって,これは本原理を発案した牛尼清治
職業訓練大学校助教授の設計を踏襲したものと言える。
【0007】これらの剛体振子においては,棹状部の形
状・大きさ・材質によって慣性モーメントと重心位置を
調節する。剛体振子による粘弾性測定では,振子の慣性
モーメントの大きさは,その剛体振子を用いて測定する
粘弾性応答の範囲を規定する要素である。粘弾性応答と
は,試料としての成膜からの反作用の大きさのことで,
試料の粘弾性値と試料寸法とで決まる量である。剛体振
子の慣性モーメントが大きいほど,試料からの粘弾性応
答が剛体振子の運動に与える影響が小さい。
【0008】したがって,低粘性の液体に対しては慣性
モーメントの小さい剛体振子を,また高弾性の固体には
慣性モーメントの大きい剛体振子を用いる必要がある。
1個の剛体振子で測定できる粘弾性応答のダイナミック
レンジは,剛体振子の剛性が十分であれば振動の測定精
度に依存する。一方,振動の計測について考慮すると,
一般に振動の周期と振幅の減衰を決定するために必要な
観測時間は周期に比例するから,試料の状態の変化(硬
化反応や相転移)に対して十分に短くするため,振子の
周期には設計上,上限がある。また,振動計測手段側か
らの要請によって,同じく下限がある。
【0009】
【解決しようとする課題】しかしながら,従来の粘弾性
測定用剛体振子には,次の問題がある。即ち,上記のよ
うに,振子の周期(自由振動時)は,設計上許容される
範囲が存在する。前述のように粘弾性測定の対象範囲を
広く確保するには,まず剛体振子の慣性モーメントにつ
いて幅の広いバリエーションを設定する必要があるが,
一方では,その自由振動周期はある範囲に調節されねば
ならない。
【0010】ところが,従来装置で用いる剛体振子のよ
うに,慣性モーメントと重心位置を単一の部材で調節す
る構造であると,それぞれの設計可能範囲が限られてし
まう。特に,従来の剛体振子では低い粘弾性応答に対す
る感度を高めた設計,即ち低慣性モーメントの剛体振子
を適切な周期で設計することができない。剛体振子を用
いた粘弾性測定法では,原理的には焼付け初期の塗膜粘
性に対応し得るものであるが,従来品では上記のよう
に,これに対応する剛体振子の設計が困難である。さら
にまた,従来の剛体振子では,振動時に空気から受ける
粘性抵抗の大きさが無視できず,有効な測定範囲が制限
される。
【0011】上記のごとく,従来の粘弾性測定用剛体振
子においては,剛体振子の振動周期を適切な範囲に限定
しつつ慣性モーメントの設計範囲を広くすることは困難
であり,広範囲の粘弾性を測定することが困難である。
粘弾性応答の小さい測定に際しては,剛体振子が空気の
粘性抵抗の影響を受け易く,正確な粘弾性測定をなし難
い。本考案は,かかる従来の問題点に鑑み,広範囲の粘
弾性を容易に測定することが可能で,また空気の粘性抵
抗の影響が少なく,測定精度に優れた,粘弾性測定用剛
体振子を提供しようとするものである。
【0012】
【課題の解決手段】本考案は,塗膜等の粘弾性を有する
成膜に接触させると共に振動させるエッジ部と,該エッ
ジ部の振動における慣性モーメントを確保するための質
量部材とよりなる粘弾性測定用剛体振子において,上記
質量部材は,エッジ部が成膜と接触する先端部に対して
垂直な面に設けた円環体よりなると共に上記先端部から
離れた位置に配設してあり,かつ上記エッジ部の先端部
は上記円環体の内側に位置していることを特徴とする粘
弾性測定用剛体振子にある。
【0013】本考案において,上記エッジ部は,成膜に
接触させると共に振動を与える部分で,粘弾性測定の中
心部である。該エッジ部としては,その先端部を鋭角状
にしたもの(図3a),或いは先端部が円形を呈するも
の(図3b)などがある。前者の場合は,先端部は成膜
の内部まで侵入し,一方後者の場合は先端部が成膜の上
部に載置された状態となる。
【0014】また,該エッジ部は,例えば鋼,セラミッ
クスなど,測定温度範囲で弾性率が高く,試料と化学反
応を起こさない材質を用いる。また,上記エッジ部にお
いて,先端部の刃先角は粘弾性測定感度に大きく影響す
る。すなわち,刃先角が大きいほど試料から受けるトル
クが大きくなることにより感度が高い。しかし,塗膜等
の粘弾性測定では,溶媒等が揮発する過程で測定される
ことが多いので,刃先角が大きいほどこれら揮発成分の
揮散が妨げられ,測定が不正確となる。揮発成分の存在
する場合には,刃先角はおおむね60度以内が望まし
い。刃先角が小さい場合は,測定感度が低くなることに
加え,エッジ部の破損のおそれが増すので実用上10度
以上とする必要がある。また,該エッジ部の先端部は,
質量部材である上記円環体の内側に位置している(図
1,図6,図7,図8)。
【0015】一方,揮発成分のない試料では,150度
程度以内の刃先角を用い得るが,これ以上では振子の振
幅に対する試料歪が大きくなり過ぎて試料を破壊するお
それがある。また,質量部材は,慣性モーメントを確保
するための機能を有する。そして,該質量部材は,エッ
ジ部の上記先端部を含む鉛直面と垂直な面に,かつ上記
先端部から離れた位置にそれぞれ位置させる。かかる手
段としては,後述するホルダーや連結部材を用いて,質
量部材を上記垂直な面の上下の両側に位置させる手段が
ある。
【0016】該質量部材としては,ステンレス鋼,タン
グステン,白金合金等密度が高い材質がよい。装置の取
扱上,容易に変形しないことが望ましいので機械強度の
高い材料であることも必要である。また,質量部材の形
状としては,円環状を形成している円環体(図1,図
6,図7,図を用いる。また,上記エッジ部には,
これを保持するためのホルダーを設けることが好まし
い。また,該ホルダーと質量部材との間には両者を結合
する連結部材を介設することが好ましい。
【0017】上記ホルダーとしては,ベークライト,ガ
ラス繊維強化エポキシ樹脂等測定温度範囲で十分な機械
強度を持ち,なるべく熱伝導率の低い材質が望ましい。
エッジ部からの熱の放散が大きいと,測定部位の温度の
均一性が損なわれ,測定精度が低下するおそれがある。
また,上記連結部材としては,ジュラルミン,チタン,
マグネシウム合金,炭素繊維強化樹脂等密度が低く,剛
性の高い材料がよい。該連結部材は慣性モーメントを受
け持つ必要はなく,所望の剛性をもって上記ホルダーと
質量部材とを接続すればよい。
【0018】しかし,剛体振子の運動に伴う成膜以外に
由来する減衰を低減するため,振動方向の断面積を小さ
くして空気抵抗を低減し,また重量を低減してエッジ部
の先端部での摩擦を低減する必要があるので,比強度の
高い材質が好ましい。また,上記質量部材は,円環
(図1,図6,図7,図)とする。このような円環状
の質量部材を配置し,その間にエッジ部を配設した場
合,通常に用いられる塗料,接着剤等の粘弾性を測定す
る際に適切な剛体振子の慣性モーメントは,おおむね2
0〜10000gcmの範囲と考えられる。
【0019】これらの慣性モーメントを得るための円環
体の半径は,剛体振子の許容重量や円環体に採用する材
質の密度および機械強度に依存するので一意には定まら
ないが,装置の取扱上不都合を生じない限り,限定され
ない。なお典型的な測定条件に好適な円環体は,例えば
ステンレス鋼にて半径15mm〜70mmの範囲で製作
できる。
【0020】また,上記剛体振子においては,その質量
部材の一部分,或いはエッジ部を保持するホルダーなど
に,エッジ部に振動を付与するための加振片,及び振動
状態を測定するための変位片を設ける。そして,加振片
及び変位片の近傍には,前記従来例で示したごとく,ソ
レノイド等の加振器,変位センサ等を非接触で配置す
る。また,加振器,変位センサは制御装置に電気的に接
続する。制御装置は,上記加振を行わせ,また変位セン
サからの信号により,自由減衰振動を計測する。また,
制御装置は,必要に応じ,試料である成膜の温度制御,
温度計測を行う。計測結果は,制御部で処理され,出力
装置よりアウトプットされる。
【0021】
【作用及び効果】本考案の粘弾性測定用剛体振子を用い
て粘弾性の測定をするに当たっては,まずエッジ部の先
端部を被測定物である成膜に接触させる(図3参照)。
次いで,加振器により,剛体振子を適切な振幅で振動さ
せる。次いで,変位センサにより,剛体振子の振動挙
動,即ち振動周期,振幅の減衰率等を測定する。次い
で,その測定値に基づき,所望の物理量を算出する(実
施例1参照)。
【0022】そして,本考案の粘弾性測定用剛体振子に
おいては,上記のごとく,質量部材としての円環体が上
記エッジ部の先端部を含む鉛直面に垂直な面に位置して
いる。そのため,円環体の形状,質量等の要素を変化さ
せることにより振子の重心位置を調節できるため,重心
位置の設計自由度が高く,しかも剛体振子の形状を大き
く変化させる必要がなく,自由に慣性モーメントを変化
させることができる。そのため,慣性モーメントを広い
範囲で設定することができ,広範囲の粘弾性を容易に測
定することができる。
【0023】また,慣性モーメントを確保するための質
量部材としての円環体を,振動軸であるエッジ部から離
れた位置に配置しており,また該エッジ部の先端部は上
記円環体の内側に位置しているので,等価な慣性モーメ
ントを有する従来型の剛体振子よりも,剛体振子全体を
小型にすることができる。そのため,振動周期が共通で
あっても,対気運動速度が小さいので,空気の粘性抵抗
を低減できる。そのため,粘弾性測定に当たり空気の粘
性抵抗の影響が少ない。
【0024】したがって,本考案によれば,広範囲の粘
弾性を容易に測定することができ,また空気の粘性抵抗
の影響が少なく,測定精度に優れた粘弾性測定用剛体振
子を提供することができる。
【0025】
【実施例】実施例1 本考案の実施例にかかる粘弾性測定用剛体振子につき,
図1〜図5を用いて説明する。本例の剛体振子1は,図
1〜図3に示すごとく,エッジ部10と,該エッジ部1
0の振動における慣性モーメントを確保するための,質
量部材としての円環体13とよりなり,該円環体13
は,エッジ部10が成膜70と接触する先端部101と
垂直な面に位置している。
【0026】即ち,図2,図3に示すごとく,エッジ部
10は,一対のホルダー15により挟持されて,ビス1
51により固定されている。そして,図2に示すごとく
該ホルダー15の左右両側は,一対の連結部材14に固
定されている。該連結部材14は,それぞれ,上記円環
体13にその上下を固定されている。また,連結部材1
4の下端部には,錘16を,ビス161により固定して
いる。上記のごとく,本例の剛体振子は,図1,図2に
示すごとく,エッジ部10の先端部101よりも上方に
ホルダー15があり,該ホルダー15に対して連結部材
14を介して円環体13が設けてある。それ故,エッジ
部10の上記先端部101に対し,質量部材としての円
環体13が上記先端部から離れた場所に位置しているこ
とになる。また,エッジ部10は,円環体13の内側に
位置している。
【0027】また,円環体13においては,図2(b)
に示すごとく,その左側には,エッジ部10の振動変位
を検出するための変位片11を,一方右側には円環体1
3,連結部材14,ホルダー15を介して,エッジ部に
振動を付与するための加振片12を設けてある。また,
図1に示すごとく,上記変位片11には,変位センサ2
4を非接触に対向配置し,加振片12には加振用のソレ
ノイド22を非接触に配置する。変位センサ24は,変
位計23,制御装置2に接続する。また,ソレノイド2
2は加振電源21,制御装置2に接続する。制御装置2
には,出力装置26を接続する。また,上記エッジ部1
0の先端部101の形状は,図3(a)に示すごとく,
鋭角状に突出させたものであっても,また図3(b)に
示すごとく円形状であっても良い。
【0028】次に,上記粘弾性測定用剛体振子1を用い
て,成膜70の粘弾性を測定するに当たっては,図1,
図3に示すごとく,まず基材72上に,被測定物として
の塗料等を塗布し成膜70を形成する。そして,脚部7
4を有する支持台73上に固定する。次に,上記剛体振
子1のエッジ部10を,上記成膜70上に接触させる。
このとき,流動性のある試料では,エッジ部10の先端
部101は図3(a)に示すごとく,成膜70内に侵入
して基材72上に接触する。また,流動性のない試料で
は,エッジ部の先端部は基板には達せず,試料表面に接
触するのみである。
【0029】次に,上記制御装置2,加振電源21によ
り,ソレノイド22を作動させる。これにより,円環体
13に設けた加振片12が振動する。そして,この振動
力は,連結部材14,ホルダー15を通じてエッジ部1
0に伝達される。そのため,円環体13はエッジ部の先
端部101を中心として図2(b)の左右方向(図1の
紙面方向)に回動する。上記加振片12への振動付与
は,1〜2秒間である。そして,上記振動付与を中止し
た後,変位片11に対向配置した変位センサ24によ
り,円環体13の振動挙動,即ち振動周期,振幅の減衰
率等を測定する。そして,その測定値に基づき,所望の
物理量を算出する(後述参照)。
【0030】そして,本例の剛体振子1においては,上
記のごとく,質量部材としての円環体13が,エッジ部
の先端部101と垂直な面に位置している。そのため,
重心位置の設計自由度が高く,しかも剛体振子1の形状
を大きく変化させる必要がない。それ故,自由に慣性モ
ーメントを変化させることができる。したがって,慣性
モーメントを広範囲で設定することができ,広範囲の粘
弾性を容易に測定することができる。
【0031】また,質量部材としての円環体13を,振
動軸であるエッジ部10から離れた位置に設けたので,
等価の慣性モーメントを有する従来の剛体振子よりも,
剛体振子全体をコンパクトにできる。また,質量部材と
して円環体13を用いているので,振動周期が共通であ
っても,対空気運動速度が小さいので,空気の粘性抵抗
を低減できる。そのため,粘弾性測定に当たり,空気の
粘性抵抗の影響が小さく,測定精度が向上する。また,
本例の剛体振子1は,質量部材としての円環体13が,
エッジ部の先端部101の中央を含み,上記先端部10
1と垂直な面の両側に,一対配置してある。そのため,
重心位置の設計自由度が高く,しかも剛体振子の形状を
大きく変化させる必要がなく,自由に慣性モーメントを
変化させることができる。したがって,本例によれば,
広範囲の粘弾性を測定でき,空気の粘性抵抗の影響が少
なく,測定精度に優れた粘弾性測定用剛体振子を提供す
ることができる。
【0032】以下に,これらにつき,更に具体的に説明
する。まず,粘弾性測定用剛体振子においては,測定す
る成膜の粘弾性が極端に大きいかあるいは小さい場合に
は,従来の慣性モーメントでは適用することができな
い。
【0033】すなわち,粘弾性が大きいと慣性モーメン
トを大きくする必要がある。逆に,粘弾性が小さいと慣
性モーメントを小さくする必要がある。この慣性モーメ
ントIは,図4,図5及び次の(1)式に示すごとく,
エッジ部の先端部101と振子の重心Gとの距離dに比
例する(なお,周期にも比例するが,測定においては一
定が望ましいため,上記距離dのみに比例する)。T=
2π(I/Mgd)1/2・・・(1)なお,上式にお
いて,Tは周期,gは重力加速度,Mは振子の質量,I
は慣性モーメント,dは支点と重心との距離である。
【0034】従来の粘弾性測定用剛体振子では,エッジ
部の先端部より鉛直下方のみに慣性モーメントを確保す
るための質量部材があるため,上記dの調整に制限があ
った。例えば,上記dを小さくするには質量部材を支点
近くに位置させる必要があり,非常に短い振子となって
しまう。一方,上記dを大きくするには質量部材を支点
より遠くに位置させる必要があり,非常に長い振子とな
ってしまう。これに対して,本考案のごとく,上記質量
部材がエッジ部の先端部と垂直な面に設けた円環状であ
場合には,重心位置の設計自由度が高く,しかも振子
の形状を大きく変化させる必要がなく,自由にd(慣性
モーメントI)を変化させることができる。
【0035】次に,空気粘性が測定結果に及ぼす影響に
つき説明する。試料(成膜)のない状態での測定動作に
より,剛体振子が空気粘性およびエッジ部での摩擦によ
って減衰振動することが観測できる。これらの抵抗力
は,試料の粘性項に加わるので測定精度を低下させる原
因となる。空気粘性と摩擦力の測定結果に及ぼす効果
は,試料のない状態での対数減衰率Δと周期T及び振子
の慣性モーメントIから次式(2)で求められるD値で
比較できる。 D=I・Δ/T・・・(2)
【0036】次に,表1に実施例1と比較例(前記図
参照)との実測結果を示す。これらの測定値は,それぞ
れ99回の測定値の平均値である。表1のD値から,実
施例は比較例の23.6倍高感度であることがわかる。
この感度差は,低粘性試料,たとえば焼付け初期の自動
車用上塗り塗膜への,適用の可否として重要な差とな
る。
【0037】
【表1】
【0038】次に慣性モーメントについて説明すると,
前記従来例の振子(図)では,自由振動の周期を約1
秒に限定すると,慣性モーメントIの値はおおむね20
00〜10000gcmの範囲に限定される。試料か
らの粘弾性応答が大きい場合には高いI値が必要となる
が,試料幅を調節するなどにより,通常の測定には10
000gcm以上のI値をもつ振子は必要としない。
【0039】しかし,試料からの粘弾性応答が小さい場
合には必然的に低いI値の振子が必要となる。従来型の
振子では,これが約2000gcmに限定されるのに
対し,本考案の振子では20gcmの慣性モーメント
I値をもつ振子を実用に供することができる。これによ
り,従来の振子に比べ約100倍の高感度測定が可能で
ある。
【0040】次に,本考案の粘弾性測定用振子を用いて
粘弾性を測定する理論,および手法について説明する。
即ち,ナイフエッジを支点とした剛体振子は,図4,図
5に示すごとく,塗膜素地で支えられ,塗膜の粘弾性に
よる力Fを受けながら振動する。剛体振子の振動変位
は静止位置を基準として振れ角θで表す。剛体振子の振
動は次式(3)で表現される。 I・dθ/dt+F・h/sinθ+Mgdθ=0・・・(3) I:剛体振子の刃先を軸とした回転慣性モーメント θ:剛体振子の振動変位角度 t:時刻 F:塗膜が刃の片面に及ぼす力 h:刃に接する塗膜の高さ θ:静止した剛体振子の刃面と素地面とのなす角度 M:剛体振子の質量 g:重力加速度 d:エッジ部の先端部から剛体振子の重心までの距離
【0041】上記(3)式の左辺第1項は慣性の効果
を,第2項は塗膜から受ける力Fの効果を,また第3
項は重力の効果を表す。外部から強制振動をさせないの
で(3)式の右辺は常にゼロである。ここで,Fを吟
味するため剛体振子が平衡位置から角度θだけ振れたと
きを考える。図5に示すごとく,刃先から距離aの位置
にある刃面上の点Pは,小さなθに対しては距離aθだ
け移動する。このとき,点Pから刃面に垂直な方向にみ
た塗膜の厚さは,atanθからaθだけ増加,ある
いは減少するので歪の大きさはθ/tanθと表せ
る。塗膜が刃面に及ぼす力が,この歪に比例するなら
ば, F=EScotθ・θ ・・(4) S=bh/sinθ・・・・・・(5) と表される。Sは塗膜と刃の片面とが接する面積で,b
は刃に接する塗膜の長さである。
【0042】次に,上記Eは塗膜の複素弾性率を表
し, E=E′+iE″・・・・・・・(6) と表現される複素数である。ここで, とおくと前記(3)式は次のように書き換えられる。
【0043】 I・dθ/dt+K(E′+iE″)θ+Mgdθ=0・・(8) この式は,θのみがtの関数である場合には次の形の解
を持つ。 θ=θexp(−αt+iωt)t)・・・(9) θ,αおよびωは定数であり,それそれ時刻ゼロでの
振幅,振幅の減衰率および振動の角速度を表す。これを
tで微分すると dθ/dt=(−α+iω)θ・・・(10) dθ/dt=(−α+iω)θ・・・(11)
【0044】したがって,(8)式は次のようになり,
E′とE″が求まる。 I(−α+iω)+K(E′+iE″)+Mgd=0・・・(12) E′=−〔(α−ω)I+Mgd〕/K・・・・・・・・(13) E″=2αωI/K・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(14)
【0045】一般には粘性の相対変化を表すのに対数減
衰率Δを用いる。 Δ=αT(無次元)・・・・・(15) T=2π/ω・・・・・・・・(16) Δは1周期当たりの振幅変化の自然対数値で,振動を記
録したチャートから振幅を読み取って求めることができ
る。(14)式との比較により,Δと損失弾性率E″と
の間には Δ=〔πK/ωI〕・E″・・・(17) の関係があり,ωが一定すなわち振動周期Tが一定の場
合にはΔがE″に比例することがわかる。
【0046】試料の粘弾性に基づく振動現象から対数減
衰率を求めて粘性を評価する方法は,振桿硬度計やTB
A(Torsional Braid Analysi
s)でも行われる常法となっている。一般に液体あるい
は気体の粘性は粘度η(poise=dyne・sec
/cm=0.1Pa・sec)で表現される。ηはず
り応力をずり速度で除して得られ,測定に対しては定常
的なずり状態がよく用いられる。
【0047】粘弾性体に対しては,振動変位に対する応
答を測定する必要からηの代わりに次のη′が用いられ
る。 η′=E″/ω(定義)・・・(18) η′は動的粘性率と呼ばれ,ηと同じ次元,すなわち
〔質量〕〔長さ〕−1〔時間〕−1をもつ。(17)式
によれば対数減衰率Δは次のように表される。 Δ∝η′/ω=E″/ω・・・(19) すなわちΔは動的粘性率とはωを介して比例し,損失弾
性率とはωの係数で関係する。試料が液状で弾性が無
視できる場合には,ωは定数として取扱えるので,粘性
変化の表現にはΔ,η′あるいはE″のいずれを用いて
もよい。
【0048】一方,試料を粘弾性体として取扱う場合に
は,粘性と弾性をそれぞれ貯蔵弾性率E′と損失弾性率
E″で表現するのが適切である。そこで,ここではE′
とE″の相対変化を表す変数としてE′rとE″rを定
義する。 E′r=ω−α−ω ・・・(20) E″r=2αω・・・・・・・・・(21) ω=〔Mgd/I〕1/2・・・・(22) ωは無試料時の剛体振子振動の角速度を表す。
【0049】相対貯蔵弾性率E′rと相対損失弾性率
E″rは(13),(14)式によりそれぞれE′,
E″に比例し, E′r=(K/I)・E′・・・(23) E″r=(K/I)・E″・・・(24) tanδ=E″/E′=E″r/E′r・・・(25) となって,損失正接tanδを求めることが可能とな
る。tanδが極大となる温度は塗膜の微視的構造に由
来する特性値のひとつと考えられ,便宜上ガラス転移温
度Tgと呼ばれる。これは,剛体振子をセットした状態
で硬化させた塗膜について,温度を変化させながら粘弾
性を測定することにより得られる。
【0050】本原理によって粘弾性測定する手法は,次
の手順による。 〔1〕振子を適切な振幅で振動させる。ここに,加振の
方法は任意であるが,試料以外から振子に加わる力を少
なくするため,非接触の方法が望ましい。また振幅は,
これにより試料が破損しない範囲でなければならない。 〔2〕振子の振動挙動を計測する。その計測項目は,周
期,振幅の減衰率である。 〔3〕上述の理論に従い,所望の物理量を算出する。
【0051】実施例2 本例は,図6(a),(b)に示すごとく,実施例1の
粘弾性測定用剛体振子において,質量部材を楕円状の円
環体13としたものである。また,連結部材14の下部
には,錘を設けていない。その他は,実施例1と同様で
ある。このように質量部材は,実施例1のごとく真円状
体であっても,本例のごとく楕円状体であっても良い。
【0052】実施例3 本例は,図7(a),(b)に示すごとく,実施例1の
粘弾性測定用剛体振子において,連結部材14をワイヤ
ー31に代えたものである。該ワイヤー31により,ホ
ルダー15を質量部材の円環体13に剛性的に懸吊保持
している。上記ワイヤーとしては,ピアノ線,細いワイ
ヤーロープなどを用いる。その他は,実施例1と同様で
ある。本例においても,実施例1と同様の効果を得るこ
とができる。また,本例においては,連結部材としてワ
イヤー31を用いているので,測定時の空気粘性の抵抗
が一層少ない。
【0053】実施例 本例は,図(a),(b)に示すごとく,エッジ部1
0を設けたホルダー15と,質量部材としての円環体1
3とを横置きの連結部材14により連結したものであ
る。そして,本例は,実施例1と異なり,円環体13を
エッジ部10の中央部において1個のみ配置したもので
ある。その他は実施例1と同様である。本例において
は,質量部材としての円環体13がエッジ部の先端部1
1と垂直な面に位置している。それ故,実施例1と同
様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1にかかる粘弾性測定用剛体振子及び粘
弾性測定の全体説明図。
【図2】実施例1にかかる剛体振子の正面図及びそのA
−A線断面図。
【図3】実施例1におけるエッジ部を成膜上に載置した
状態の説明図。
【図4】実施例1における剛体振子の説明図。
【図5】実施例1における剛体振子の変位と成膜の歪の
説明図。
【図6】実施例2における粘弾性測定用剛体振子の正面
図及び側面図。
【図7】実施例3における粘弾性測定用剛体振子の正面
図及び側面図。
【図8】実施例4における粘弾性測定用剛体振子の
(b)図のB−B線断面図及びそのA−A線断面図。
【図9】従来例における粘弾性測定用剛体振子の正面図
及びそのA−A線断面図。
【図10】従来例における,エッジ部と成膜との接触状
態の説明図。
【図11】従来例における,粘弾性測定の説明図。
【符号の説明】
1...剛体振子,10...エッジ部,101...
先端部,11...変位片,12...加振片,1
3...円環体(質量部材),14...連結部材,1
5...ホルダー,31...ワイヤー,70...成
膜,
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) G01N 11/00 G01N 11/16 G01N 19/00

Claims (1)

    (57)【実用新案登録請求の範囲】
  1. 【請求項1】 塗膜等の粘弾性を有する成膜に接触させ
    ると共に振動させるエッジ部と,該エッジ部の振動にお
    ける慣性モーメントを確保するための質量部材とよりな
    る粘弾性測定用剛体振子において, 上記質量部材は,エッジ部が成膜と接触する先端部に対
    して垂直な面に設けた円環体よりなると共に上記先端部
    から離れた位置に配設してあり,かつ上記エッジ部の先
    端部は上記円環体の内側に位置していることを特徴とす
    る粘弾性測定用剛体振子。
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