JP3817589B2 - カンチレバー制御装置 - Google Patents
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Description
原子間力顕微鏡は振動するカンチレバーを有し、カンチレバーの先端に探針が形成されている。探針は測定対象物との距離に応じて原子間力の影響を受け、この原子間力の影響によってカンチレバーの等価剛性が変化する。等価剛性の変化はカンチレバーの固有振動数の変化となって現れる。したがって、カンチレバーの固有振動数の変化を検出し、検出した固有振動数の変化から探針に働く原子間力の影響を算出すれば、探針と測定対象物との間の距離を測定できる。探針と測定対象物との間の距離の測定を測定対象物の表面上でスキャニングすることにより、測定対象物の表面形状がサブナノメートルのオーダーで測定される。この表面形状の測定における分解能は、カンチレバーの固有振動数の変化の検出の容易性と正確性に依存している。
カンチレバーの固有振動数の変化を検出する方法には次の2つの方法がある。第一の方法は、カンチレバーの共振振動数自体の変化を検出し、検出した共振振動数の変化から固有振動数の変化を算出する方法である。第二番目の方法は、所定の共振振動数に対する応答振幅の減少を検出し、検出した応答振幅の減少から固有振動数の変化を算出する方法である。
原子間力顕微鏡がカンチレバー10、変位検出器34、振動速度算出器36、増幅器48、アクチュエータ20を有している。
変位検出器34がカンチレバー10の振動変位xを検出可能に構成されている。
振動速度算出器36は、微分器であり、変位検出器34からxを受信し、受信したxを微分し、dx/dtをカンチレバー10の振動速度として算出可能に構成されている。
ドライバ60は、増幅器48から受信するフィードバック制御信号S1を増幅してアクチュエータ20に送信可能に構成されている。
S1=K・dx/dt ・・・(1)
変位検出器34がカンチレバー10の振動変位xを検出し、検出されたxからフィードバック制御信号S1が生成され、このフィードバック制御信号S1をドライバ60によって増幅してアクチュエータ20を駆動し、カンチレバー10が自励振動する。
式(1)に示されるように、フィードバック制御信号S1は、カンチレバー10の振動速度dx/dtの変化に対応して線形フィードバックゲインKをもって線形に変化する。カンチレバー10の応答振幅aは次式(2)の関数gによって表される。
a=g(K) ・・・(2)
図7(i)に示されるように、線形フィードバックゲインKが発振下限値KLL1以下であると、応答振幅aが0となり、カンチレバー10は自励振動しない。線形フィードバックゲインKが発振下限値KLL1よりも大きければ、カンチレバー10が自励振動し、線形フィードバックゲインKが増大するにつれて応答振幅aも増大する。KLL1<Kの条件下、線形フィードバックゲインKを発振下限値KLL1に近づけると、自励振動するカンチレバー10の応答振幅aが小さくなる。
また、カンチレバー10の応答振幅aを小さく制限し、カンチレバー10の探針12と測定対象物70との接触を防止することが求められている。測定対象物70が生体関連試料のように損傷しやすいものである場合、測定対象物70に探針12が接触すると、探針12によって測定対象物70が損傷してしまうからである。したがって、応答振幅aを一定の振幅上限値aUL以下に制限しなければならない。ここで、振幅上限値aULとは、測定対象物70と探針12との接触が防止される応答振幅aの最大値である。図7(i)の振幅特性の曲線Cにおいて、振幅上限値aULに対応する線形フィードバックゲインKの値KUL1がゲイン上限値となる。
例えば、図7(ii)に示すように、振幅特性の曲線Cがシフトし、発振下限値がKLL1からKLL2に増大し、ゲイン上限値もKUL1からKUL2に増大してしまう場合、KLL1<K≦KUL1の条件を満足するように線形フィードバックゲインKを設定しておいても、線形フィードバックゲインKがKLL2<K≦KUL2の条件を満足しないおそれがある。線形フィードバックゲインKがKLL2<K≦KUL2の条件を満足しなければ、カンチレバー10の自励振動が停止し、又は、カンチレバー10の探針12が測定対象物70と接触してしまう。特に、測定環境が液中である場合、自励振動の停止が生じやすい。
S={K−G・|x|m・(dx/dt)n-1}・dx/dt ・・・(3)
ただし、S:フィードバック制御信号
K:正値であるフィードバックゲイン
G:正値であるフィードバックゲイン
x:カンチレバーの振動変位
dx/dt:カンチレバーの振動速度
m:0以上の整数
n:m+n≧2を満足する正の奇数
によって表される。
S=K・dx/dt−G・|x|m・(dx/dt)n ・・・(4)
となり、式(4)中のK・dx/dtがカンチレバーの先端の振動速度に対する線形成分の項となり、G・|x|m・(dx/dt)nがカンチレバーの先端の振動速度に対する非線形成分の項となる。
振動源はフィードバック制御信号に比例する大きさの力又は曲げモーメントをカンチレバーに印加可能に構成されているものであれば良い。振動源は、カンチレバーと接触して設置される接触型の振動源によって構成でき、カンチレバーと接触せずに設置される非接触型の振動源によって構成しても良い。
請求項2の発明によると、mが0以上の偶数であるので、|x|mがxmと等しくなり、式(3)は次式(5)によって表される。
S={K−G・xm・(dx/dt)n-1}・dx/dt
=K・dx/dt−G・xm・(dx/dt)n ・・・(5)
ただし、S:フィードバック制御信号
K:正値であるフィードバックゲイン
G:正値であるフィードバックゲイン
x:カンチレバーの振動変位
dx/dt:カンチレバーの振動速度
m:0以上の偶数
n:m+n≧2を満足する正の奇数
請求項3の発明によると、mが2であり、nが1であるので、式(3)は次式(6)によって表される。
S=(K−G・x2)・dx/dt ・・・(6)
ただし、S:フィードバック制御信号
K:正値であるフィードバックゲイン
G:正値であるフィードバックゲイン
x:カンチレバーの振動変位
dx/dt:カンチレバーの振動速度
請求項4の発明によると、振動速度検出手段がカンチレバーの振動速度を検出し、変位算出手段がこの振動速度を積分等してカンチレバーの振動変位を算出する。そして、制御手段が、振動速度及び振動変位を用いてフィードバック制御信号を生成し、このフィードバック制御信号によって振動源を駆動する。
請求項5の発明によると、変位検出手段がカンチレバーの振動変位を検出し、振動速度算出手段がこの振動変位を微分等してカンチレバーの振動速度を算出する。そして、制御手段が、振動速度及び振動変位を用いてフィードバック制御信号を生成し、このフィードバック制御信号によって振動源を駆動する。
原子間力顕微鏡にカンチレバー制御装置1が装備されており、カンチレバー制御装置1は、カンチレバー10、アクチュエータ20、振動速度検出器30、変位算出器32、制御器40を有している。
カンチレバー10に振動源であるアクチュエータ20が接続されており、カンチレバー10の先端下側には探針12が形成されている。アクチュエータ20は、例えば、ピエゾ素子であり、アクチュエータ20が駆動してカンチレバー10が自励振動する構成となっている。
変位算出器32は、積分器であり、振動速度検出器30からdx/dtを受信し、受信したdx/dtを積分して、カンチレバー10の振動変位であるxを算出し、算出したxを制御器40に送信可能に構成されている。
制御器40は、乗算器46a、46b、増幅器48a、48bを有する。
乗算器46aは、変位算出器32からxを受信し、受信したxを二乗して、x2を算出可能に構成されている。
乗算器46bは、乗算器46aからx2を受信し、振動速度検出器30からdx/dtを受信し、受信したx2とdx/dtとを乗じて、x2・dx/dtを算出可能に構成されている。
増幅器48bは、振動速度検出器30からdx/dtを受信し、受信したdx/dtに正値である線形フィードバックゲインKを乗じて、K・dx/dtを算出可能に構成されている。
そして、制御器40が、増幅器48bが算出したK・dx/dtから増幅器48aが算出したG・x2・dx/dtを減じ、その結果得られた(K−G・x2)dx/dtをフィードバック制御信号Sとしてドライバ60に送信する構成となっている。すなわち、制御器40において生成されるフィードバック制御信号Sは前述の式(6)によって表される。
なお、振動速度検出器30が振動速度検出手段をなし、変位算出器32が変位算出手段をなし、振動速度検出器30と変位算出器32とが振動速度変位検出手段を構成し、制御器40が制御手段を構成している。また、カンチレバー制御装置1内で、送受信される各データはアナログ信号である。
カンチレバー10の探針12を測定対象物70の上方に位置させて、測定対象物70の表面形状の測定を開始する。カンチレバー10の振動速度dx/dtを振動速度検出器30が検出する。振動速度検出器30は、検出したdx/dtを変位算出器32、制御器40の乗算器46b、制御器40の増幅器48bに送信する。
変位算出器32が、振動速度検出器30から受信したdx/dtを積分し、カンチレバー10の振動変位であるxを算出し、算出したxを制御器40の乗算器46aに送信する。
乗算器46bが、乗算器46aから受信したx2と、振動速度検出器30から受信したdx/dtとを乗じ、x2・dx/dtを算出し、算出したx2・dx/dtを増幅器48aに送信する。
増幅器48aが、乗算器46bから受信したx2・dx/dtに非線形フィードバックゲインGを乗じてG・x2・dx/dtを算出する。
そして、制御器40が、増幅器48bが算出したK・dx/dtから増幅器48aが算出したG・x2・dx/dtを減じ、(K−G・x2)dx/dtを算出し、算出した(K−G・x2)dx/dtをフィードバック制御信号Sとしてドライバ60に送信する。
ドライバ60が、制御器40から受信したフィードバック制御信号Sを増幅してアクチュエータ20に送信する。
アクチュエータ20が、ドライバ60からの送信によって駆動し、カンチレバー10を振動させる。カンチレバー10は、フィードバック制御されて自励振動することとなる。
S=K・dx/dt−G・x2・dx/dt ・・・(7)
となり、式(7)中のK・dx/dtがカンチレバー10の振動速度dx/dtに対する線形成分の項となり、G・x2・dx/dtがカンチレバー10の振動速度dx/dtに対する非線形成分の項となる。非線形成分とカンチレバー10の自励振動力とがバランスすると、測定環境がQ値の小さな液中であっても、カンチレバー10の自励振動の停止が防止され、カンチレバー10の応答振幅aが一定に維持される。
カンチレバー10の応答振幅aは次式(8)の関数gによって表される。
a=g(K、G) ・・・(8)
原子間力顕微鏡に装備されているカンチレバー制御装置1は、カンチレバー10、アクチュエータ20、変位検出器34、振動速度算出器36、制御器40を有している。
カンチレバー10にアクチュエータ20が接続されており、カンチレバー10の先端下側には探針12が形成されている。アクチュエータ20は、例えば、ピエゾ素子であり、アクチュエータ20が駆動してカンチレバー10が自励振動する構成となっている。カンチレバー10には例えばピエゾ素子が変位センサ14として装着されており、変位センサ14の出力としてカンチレバー10の撓み量が変位検出器34によって検出される構成となっている。
振動速度算出器36は、微分器であり、変位検出器34からxを受信し、受信したxを微分して、カンチレバー10の振動速度であるdx/dtを算出し、算出したdx/dtを制御器40に送信可能に構成されている。
乗算器46aは、変位検出器34からxを受信し、受信したxを二乗して、x2を算出可能に構成されている。
乗算器46bは、乗算器46aからx2を受信し、振動速度算出器36からdx/dtを受信し、受信したx2とdx/dtとを乗じて、x2・dx/dtを算出可能に構成されている。
増幅器48bは、振動速度算出器36からdx/dtを受信し、受信したdx/dtに正値である線形フィードバックゲインKを乗じて、K・dx/dtを算出可能に構成されている。
すなわち、制御器40によって生成されるフィードバック制御信号Sは前述の式(6)によって表される。
なお、変位検出器34が変位検出手段をなし、振動速度算出器36が振動速度算出手段をなし、変位検出器34と振動速度算出器36とが振動速度変位検出手段を構成し、制御器40が制御手段を構成している。また、カンチレバー制御装置1内で、送受信される各データはアナログ信号である。
カンチレバー10の探針12を測定対象物70の上方に位置させて、測定対象物70の表面形状の測定を開始する。カンチレバー10の振動変位xを変位センサ14を介して変位検出器34が検出する。変位検出器34は、検出したxを振動速度算出器36、制御器40の乗算器46aに送信する。
振動速度算出器36が、変位検出器34から受信したxを微分し、カンチレバー10の振動速度であるdx/dtを算出し、算出したdx/dtを制御器40の乗算器46b及び増幅器48bに送信する。
乗算器46bが、乗算器46aから受信したx2と、振動速度算出器36から受信したdx/dtとを乗じ、x2・dx/dtを算出し、算出したx2・dx/dtを増幅器48aに送信する。
増幅器48aが、乗算器46bから受信したx2・dx/dtに非線形フィードバックゲインGを乗じてG・x2・dx/dtを算出する。
そして、制御器40が、増幅器48bが算出したK・dx/dtから増幅器48aが算出したG・x2・dx/dtを減じ、(K−G・x2)dx/dtを算出し、算出した(K−G・x2)dx/dtをフィードバック制御信号Sとしてドライバ60に送信する。
アクチュエータ20が、ドライバ60からの送信によって駆動し、カンチレバー10を振動させる。カンチレバー10の応答振幅aは前述の式(8)によって表される。カンチレバー10は、フィードバック制御されて自励振動することとなる。
他の作用は、第1の実施の形態と同様である。
第1の実施の形態と同様に、原子間力顕微鏡に装備されているカンチレバー制御装置1は、カンチレバー10、アクチュエータ20、振動速度検出器30、変位算出器32、制御器40を有している。
制御器40は、A/D変換器50、CPU52、D/A変換器54を有する。
A/D変換器50は、変位算出器32からxをアナログデータとして受信し、振動速度検出器30からdx/dtをアナログデータとして受信し、受信したx及びdx/dtをそれぞれ時系列のデジタルデータに変換可能に構成されている。
D/A変換器54は、CPU52から(K−G・x2)dx/dtをデジタルデータとして受信し、受信した(K−G・x2)dx/dtをアナログデータのフィードバック制御信号Sに変換し、変換されたアナログデータのフィードバック制御信号Sをドライバ60に送信する構成となっている。
CPU52における演算処理がデジタル化されているので、線形フィードバックゲインK及び非線形フィードバックゲインGの調整を柔軟かつ容易に行うことができる。
他の作用は、第1の実施の形態の作用と同様である。
第2の実施の形態と同様に、原子間力顕微鏡に装備されているカンチレバー制御装置1は、カンチレバー10、アクチュエータ20、変位検出器34、振動速度算出器36、制御器40を有している。
A/D変換器50は、変位検出器34からxをアナログデータとして受信し、振動速度算出器36からdx/dtをアナログデータとして受信し、受信したx及びdx/dtをそれぞれ時系列のデジタルデータに変換可能に構成されている。
CPU52は、A/D変換器50からx及びdx/dtをデジタルデータとして受信し、受信したx及びdx/dtから(K−G・x2)dx/dtを算出可能に構成されている。なお、第2の実施の形態と同様に、Kは正値の線形フィードバックゲインであり、Gは正値の非線形フィードバックゲインである。
D/A変換器54は、CPU52から(K−G・x2)dx/dtをデジタルデータとして受信し、受信した(K−G・x2)dx/dtをアナログデータのフィードバック制御信号Sに変換し、変換されたアナログデータのフィードバック制御信号Sをドライバ60に送信する構成となっている。
CPU52における演算処理がデジタル化されているので、線形フィードバックゲインK及び非線形フィードバックゲインGの調整を柔軟かつ容易に行うことができる。
他の作用は、第2の実施の形態の作用と同様である。
なお、第3の実施の形態及び第4の実施の形態において、制御器40内で演算をデジタル化して行っているが、カンチレバー制御装置1全体における信号の送受信及び演算をデジタル化することも可能である。この場合、サンプリング定理からサンプリング周波数をカンチレバー10の固有振動数の2倍以上とする必要があり、工学上からはサンプリング周波数を5〜10倍とすることが好ましい。
10 カンチレバー
12 探針
14 変位センサ
20 アクチュエータ
30 振動速度検出器
32 変位算出器
34 変位検出器
36 振動速度算出器
40 制御器
46a、46b 乗算器
48、48a、48b 増幅器
50 A/D変換器
52 CPU
54 D/A変換器
60 ドライバ
70 測定対象物
S、S1 フィードバック制御信号
K、G フィードバックゲイン
x カンチレバーの振動変位
dx/dt カンチレバーの振動速度
C、D 振幅特性の曲線
a 応答振幅
aUL 振幅上限値
KLL1、KLL2 発振限界値
KUL1、KUL2 ゲイン上限値
Claims (5)
- 測定対象物の表面形状を測定する原子間力顕微鏡において、
先端に探針を有して振動するカンチレバーと、
前記カンチレバーを自励振動させる振動源と、
前記カンチレバーの振動速度及び振動変位を検出する振動速度変位検出手段と、
前記カンチレバーの振動速度及び振動変位に基づいて前記振動源をフィードバック制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段によって生成されるフィードバック制御信号が、
S={K−G・|x|m・(dx/dt)n-1}・dx/dt
ただし、S:フィードバック制御信号
K:正値であるフィードバックゲイン
G:正値であるフィードバックゲイン
x:カンチレバーの振動変位
dx/dt:カンチレバーの振動速度
m:0以上の整数
n:m+n≧2を満足する正の奇数
によって表されることを特徴とするカンチレバー制御装置。 - 前記mが0以上の偶数であることを特徴とする請求項1に記載のカンチレバー制御装置。
- 前記mが2であり、前記nが1であることを特徴とする請求項1に記載のカンチレバー制御装置。
- 前記振動速度変位検出手段が、前記カンチレバーの振動速度を検出する振動速度検出手段と、前記振動速度検出手段が検出した前記カンチレバーの振動速度に基づいて前記カンチレバーの振動変位を算出する変位算出手段と、を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のカンチレバー制御装置。
- 前記振動速度変位検出手段が、前記カンチレバーの振動変位を検出する変位検出手段と、前記変位検出手段が検出した前記カンチレバーの振動変位に基づいて前記カンチレバーの振動速度を算出する振動速度算出手段と、を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のカンチレバー制御装置。
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