JP2014190407A - ダンパ - Google Patents

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Abstract

【課題】搭載性を損なうことなく高減衰力を発揮することができるダンパを提供することである。
【解決手段】本発明の課題解決手段におけるダンパDは、伸側室R1と圧側室R2とを連通する高減衰通路5,6と、高減衰通路5,6に設けた高減衰バルブ7,8と、伸側室R1とタンク4とを連通する伸側吸込通路11と、伸側吸込通路11に設けた伸側チェックバルブ12と、タンク4から伸び途中で分岐して伸側室R1と圧側室R2とに通じる低減衰通路15と、低減衰通路15の分岐点15aより伸側室R1側に設けた伸側低減衰バルブ16と、低減衰通路15の分岐点15aより圧側室R2側に設けた圧側低減衰バルブ17と、低減衰通路15の分岐点15aよりタンク4側に設けた開閉弁18とを備えた。
【選択図】図1

Description

この発明は、ダンパに関し、特に、鉄道車両や構造物の水平方向の振動を抑制に適するダンパの改良に関する。
鉄道車両の車体の水平方向の振動を抑制するダンパは、車体と台車との間に介装されて使用され、車体振動を抑制するべく減衰力を発揮するようになっている。
このような用途で使用されるダンパが同じピストン速度で伸縮する場合を考えると、伸長作動時と収縮作動時とで減衰力の大きさに偏りがあると、減衰力が小さい方の作動時における変位量が大きい方の作動時における変位量より大きくなって、車体が台車に対して左右いずれかに偏ってしまう。
そのため、車体の水平方向の振動を抑制するダンパにあっては、伸長作動時と収縮作動時とで等しい減衰特性を備える必要がある。このことは、構造物と地盤との間に介装される免震装置や制振装置用のダンパにあっても同様である。
ダンパに伸長作動時と収縮作動時とで等しい減衰特性を発揮させるダンパとしてはピストンの両側に同じ断面積を持つピストンロッドを設けた所謂両ロッド型のダンパがあるが、基本長が長くなり搭載スペースを大きく確保しなければならない問題があるため、ピストンの一方側にしかピストンロッドを設けない片ロッド型のダンパであっても伸縮両側で等しい減衰特性を実現するダンパとしてユニフロー型のダンパが広く用いられている。
このユニフロー型のダンパは、伸長作動しても収縮作動してもシリンダ内からストローク量が同じであれば等しい量の作動油がタンクへ排出されるようにし、このシリンダからタンクへ排出される作動油の流れに減衰バルブで抵抗を与えて伸縮両方の減衰力を発揮させるようになっている(たとえば、特許文献1参照)。
特開平08−074914号公報
ところで、地震発生時には、車体が高速度で加振されるため、ダンパには高い減衰力の発揮が要求されるのであるが、減衰力はシリンダ内の圧力をピストンに作用させることで発揮するものであるから、高い減衰力を発揮するにはピストンの受圧面積を大きくするか、シリンダ内の圧力を大きくする必要がある。
シリンダ内の圧力を大きくすることのみで高減衰力を発揮させる方法を選択すると、ピストンロッド周りのシールの耐久性能が追い付かず、この方法を採用するのは難しい。
また、ユニフロー型のダンパでは、収縮作動時には、ピストンロッドがシリンダ内に侵入するため、ピストンロッドがシリンダ内に侵入する体積分の作動油がシリンダ内から排出されるのみであるものの、伸長作動時には、ピストンによってシリンダ内の伸側室が圧縮されて当該伸側室から作動油がタンクへ排出されるだけでなく、拡大される圧側室ではピストンの断面積にピストンの移動距離を乗じた容積分の作動油が不足するので、この不足分の作動油をタンクから吸い込む必要がある。よって、ピストンの受圧面積を大きくする場合、ダンパが伸長作動時にタンクからシリンダ内へ吸い込む作動油量も必然的に多くなる。
シリンダ内へ吸い込む作動油量が増えると、地震発生時に車体が高速で加振され、ダンパも高速で作動する場合、タンクとシリンダとを結ぶ通路の断面積を非常に大きくしないと、タンクからシリンダへ作動油の供給が追い付かず、シリンダ内で作動油の吸込不足が発生して、圧側室が負圧となったり、圧側室内で作動油に溶け込んでいた気体が気泡となって現れたりして、伸長作動から収縮作動に切り換わり後の収縮作動時の減衰力が不足したり、安定しなくなったりといった問題が生じる。これを阻止するには、通路断面積を大きくすることが考えられるが、そうすると、シリンダ外径を非常に大きくして通路断面積を確保することになり、ダンパの搭載性が著しく悪化し、鉄道車両、制振装置や免震装置に組み込むことができなくなる。
また、タンクからシリンダ内へ吸い込む作動油量が多いと、タンク内の油面の変動によってシリンダ内に空気が吸い込まれる場合もあり、これを防止するには、タンク内に気液分離を可能とするブラダ等を設ける必要もあって、この点でもダンパの大型化を招いてダンパの搭載性を損なってしまう。また、タンクからシリンダ内への作動油の吸込不良を改善する方策として、タンク内にガスを封入してシリンダ内圧を高めることも考えられるが、上記したように、ピストンロッド周りのシールの耐久性能の問題があり、この方法を採用することはできない。
そこで、本発明は上記不具合を改善するために創案されたものであって、その目的とするところは、搭載性を損なうことなく高減衰力を発揮することができるダンパを提供することである。
上記した目的を達成するために、本発明の課題解決手段は、シリンダと、当該シリンダ内に摺動自在に挿入されるピストンと、上記シリンダ内に移動自在に挿入されて一端が上記ピストンに連結されるピストンロッドと、上記シリンダ内に上記ピストンで区画された伸側室と圧側室と、タンクとを備えたダンパにおいて、上記伸側室と上記圧側室とを連通する高減衰通路と、上記高減衰通路に設けられて通過する液体の流れに抵抗を与える高減衰バルブと、上記圧側室と上記タンクとを連通する排出通路および圧側吸込通路と、上記排出通路に設けられて上記圧側室から上記タンクへ向かう液体の流れに抵抗を与えるベースバルブと、上記圧側吸込通路に設けられて上記タンクから上記圧側室へ向かう液体の流れのみを許容する圧側チェックバルブと、上記伸側室と上記タンクとを連通する伸側吸込通路と、上記伸側吸込通路に設けられて上記タンクから上記伸側室へ向かう液体の流れのみを許容する伸側チェックバルブと、上記タンクから伸びるとともに途中で分岐して上記伸側室と上記圧側室とに通じる低減衰通路と、上記低減衰通路の上記分岐点よりも上記伸側室側に設けられて上記伸側室から上記タンクへ向かう液体の流れのみを許容するとともに通過する液体の流れに抵抗を与える伸側低減衰バルブと、上記低減衰通路の上記分岐点よりも上記圧側室側に設けられて上記圧側室から上記タンクへ向かう液体の流れのみを許容するとともに通過する液体の流れに抵抗を与える圧側低減衰バルブと、上記低減衰通路の上記分岐点よりも上記タンク側に設けられて当該低減衰通路を開閉する開閉弁とを備えたことを特徴とする。
本発明のダンパでは、伸長作動時において圧側室でタンクから吸い込む液体量は、シリンダからピストンロッドが退出する体積分であり、従来のユニフロー型のダンパにおける吸込量であるピストンの断面積にピストンの移動量を乗じた容積分と比較しても、非常に少なくすることができる。
よって、本発明のダンパにあっては、高速で作動してもシリンダ内で液体の吸込不足が発生することはなく、圧側室が負圧となったり、圧側室内で液体に溶け込んでいた気体が気泡となって現れたりして、伸長作動から収縮作動に切り換わり後の収縮作動時の減衰力が不足したり、安定しなくなったりといった問題が生じることはない。
以上より、本発明のダンパによれば、大型化を招かずに高減衰力を発揮することができる、すなわち、鉄道車両や構造物の免震装置や制振装置への搭載性を損なうことなく高減衰力を発揮することができるのである。
一実施の形態における液圧ダンパの液圧回路図である。
以下に、図示した実施の形態に基づいて、この発明を説明する。一実施の形態におけるダンパDは、図1に示すように、シリンダ1と、当該シリンダ1内に摺動自在に挿入されるピストン2と、シリンダ1内に移動自在に挿入されて一端がピストン2に連結されるピストンロッド3と、シリンダ1内にピストン2で区画された伸側室R1と圧側室R2と、タンク4と、伸側室R1と圧側室R2とを連通する高減衰通路としての伸側高減衰通路5と圧側高減衰通路6と、伸側高減衰通路5に設けた高減衰バルブとしての伸側高減衰バルブ7と、圧側高減衰通路6に設けた高減衰バルブとしての圧側高減衰バルブ8と、圧側室R2とタンク4とを連通する排出通路9および圧側吸込通路10と、排出通路9に設けたベースバルブ11と、圧側吸込通路10に設けた圧側チェックバルブ12と、伸側室R1とタンク4とを連通する伸側吸込通路13と、伸側吸込通路13に設けた伸側チェックバルブ14と、タンク4から伸びるとともに途中で分岐して伸側室R1と圧側室R2とに通じる低減衰通路15と、低減衰通路15に設けた伸側低減衰バルブ16と、低減衰通路15に設けた圧側低減衰バルブ17と、低減衰通路15に設けられて当該低減衰通路15を開閉する開閉弁18とを備えて構成されている。
また、上記伸側室R1と圧側室R2には作動油等の液体が充填されるとともに、タンク4には、液体のほかに気体が充填されている。液体は、作動油以外にも、水や水溶液を使用することも可能である。なお、タンク4内は、特に、気体を圧縮して充填することによって加圧状態とする必要は無いが、加圧状態としてもよい。
このダンパDは、図示はしないが、たとえば、鉄道車両の車体と台車との間に介装されて、車体の水平方向の振動を抑制する。また、ダンパDは、鉄道車両以外にも、地盤と構造物との間にボールアイソレータや積層ゴム等といった弾性体とともに介装されて免震装置として使用されたり、柱と梁との間に介装されて制振装置としても使用したりすることができる。なお、ダンパの用途はこれに限定されるものではない。
以下、各部について説明する。シリンダ1は筒状であって、その図1中右端は蓋19によって閉塞され、図1中左端には環状のロッドガイド20が取り付けられている。また、上記ロッドガイド20の内周には、シリンダ1内に移動自在に挿入されるピストンロッド3が摺動自在に挿入されている。このピストンロッド3は、一端をシリンダ1内に摺動自在に挿入されているピストン2に連結してあり、他端をシリンダ1外へ突出させており、シリンダ1に対して移動自在とされている。
また、シリンダ1の外周を外筒21で覆っており、この外筒21の図1中左端と右端とは、シリンダ1と同様に、蓋19およびロッドガイド20とで閉塞されていて、この外筒21とシリンダ1との間の環状隙間でタンク4を形成している。
そして、ピストンロッド3の図1中左端である他端と、シリンダ1の右端を閉塞する蓋19には、図示はしないが、このダンパDを車体と台車との間の設置箇所へ取り付けることができるようにブラケットが設けられる。
ピストン2は、シリンダ1内に摺動自在に挿入されており、シリンダ1内を伸側室R1と圧側室R2とに区画しており、図示するところでは、何ら通路は設けられていないが、高減衰通路としての伸側高減衰通路5と圧側高減衰通路6、伸側高減衰バルブ7および圧側高減衰バルブ8を当該ピストン2に設けるようにしてもよい。
伸側高減衰通路5は、伸側室R1と圧側室R2とを連通しており、その途中には、伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れのみを許容し、かつ、液体の流れに抵抗を与える高減衰バルブとしての伸側高減衰バルブ7が設けられている。この伸側高減衰バルブ7によって上記伸側高減衰通路5は、伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れのみを許容する一方通行の通路に設定されている。
圧側高減衰通路6は、圧側室R2と伸側室R1とを連通しており、その途中には、圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れのみを許容し、かつ、液体の流れに抵抗を与える高減衰バルブとしての圧側高減衰バルブ8が設けられている。この圧側高減衰バルブ8によって上記圧側高減衰通路6は、圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れのみを許容する一方通行の通路に設定されている。
また、伸側高減衰バルブ7は、上流側である伸側室R1の圧力が開弁圧に達すると開弁して伸側高減衰通路5を開放して伸側室R1を圧側室R2に連通させる調圧バルブとされている。圧側高減衰バルブ8もまた調圧バルブとされており、上流側である圧側室R2の圧力が開弁圧に達すると開弁して圧側高減衰通路6を開放して圧側室R2を伸側室R1に連通させる。
このように、本実施の形態のダンパDにあっては、高減衰通路をいずれも一方通行の通路に設定される伸側高減衰通路5と圧側高減衰通路6とによって構成されているため、伸側高減衰バルブ7および圧側高減衰バルブ8に一方通行の調圧バルブを利用することができ、伸側および圧側の減衰力を独立して設定することができるようになっているが、双方向通行を可能とする絞り弁を高減衰バルブとして使用する場合には、高減衰通路を伸側と圧側でそれぞれ用意しなくともよい。
排出通路9は、タンク4と圧側室R2とを連通しており、この排出通路9の途中には、圧側室R2からタンク4へ向かう液体の流れに抵抗を与えるベースバルブ11が設けられている。このベースバルブ11は、上流側である圧側室R2の圧力が開弁圧に達すると開弁して排出通路9を開放して圧側室R2をタンク4に連通させる調圧バルブとされている。
圧側吸込通路10は、タンク4と圧側室R2とを連通しており、その途中には、タンク4から圧側室R2への液体の流れのみを許容する圧側チェックバルブ12が設けられている。そして、ダンパDが伸長作動する際にシリンダ1内からピストンロッド3が退出する体積に見合った量の液体が、この圧側吸込通路10を介してタンク4からシリンダ1内に供給されることで、体積補償が行われる。
伸側吸込通路13は、タンク4と伸側室R1とを連通しており、その途中には、タンク4から伸側室R1への液体の流れのみを許容する伸側チェックバルブ14が設けられている。そして、このダンパDの場合、詳しくは後述するが、圧側高減衰バルブ8が開弁せず圧側高減衰通路6が遮断される状況であって低減衰通路15のみが有効である際にダンパDが収縮作動すると、伸側吸込通路13を介して伸側室R1にタンク4から液体が供給されて、体積補償が行われる。
低減衰通路15は、タンク4から伸びるとともに途中の分岐点15aから分岐して伸側室R1と圧側室R2とに通じている。そして、この低減衰通路15の途中であって分岐点15aよりも伸側室R1側には、伸側室R1からタンク4へ向かう液体の流れのみを許容するとともに通過する液体の流れに抵抗を与える伸側低減衰バルブ16が設けられ、低減衰通路15の途中であって分岐点15aよりも圧側室R2側には、圧側室R2からタンク4へ向かう液体の流れのみを許容するとともに通過する液体の流れに抵抗を与える圧側低減衰バルブ17が設けられ、低減衰通路15の途中であって分岐点15aよりもタンク4側には、この低減衰通路15を開閉する開閉弁18が設けられている。
伸側低減衰バルブ16は、上流側である伸側室R1の圧力が開弁圧に達すると開弁して低減衰通路15を開放する調圧バルブとされている。この伸側低減衰バルブ16の開弁圧は、伸側高減衰バルブ7における開弁圧よりも低く設定されている。また、圧側低減衰バルブ17は、上流側である圧側室R2の圧力が開弁圧に達すると開弁して低減衰通路15を開放する調圧バルブとされている。この圧側低減衰バルブ17の開弁圧は、圧側高減衰バルブ8における開弁圧よりも低く設定されている。
なお、低減衰通路15の途中であって分岐点15aよりも伸側室R1側には、伸側低減衰バルブ16と並列するように設けた伸側オリフィス22と、伸側低減衰バルブ16に並列されるとともに伸側オリフィス22に直列に設けられて伸側室R1からタンク4へ向かう液体の流れのみを許容する伸側バイパスチェックバルブ23とが設けられている。また、低減衰通路15の途中であって分岐点15aよりも圧側室R2側には、圧側低減衰バルブ17と並列するように設けた圧側オリフィス24と、圧側低減衰バルブ17に並列されるとともに圧側オリフィス24に直列に設けられて圧側室R2からタンク4へ向かう液体の流れのみを許容する圧側バイパスチェックバルブ25とが設けられている。
つづいて、開閉弁18は、この実施の形態では、遮断ポジション18bと連通ポジション18cとを備えたバルブ本体18aと、遮断ポジション18bを採るようにバルブ本体18aを附勢するばね18dと、ばね18dに対向して通電時に連通ポジション18cを採るようにバルブ本体18aに推力を与えるソレノイド18eとを備えており、ソレノイド18eに電力供給を行わない非通電時には遮断ポジション18bを採る電磁開閉弁とされている。
そして、開閉弁18が低減衰通路15の途中であってタンク4と分岐点15aとの間に設けられており、開閉弁18が開弁すると低減衰通路15を通じて伸側室R1と圧側室R2がタンク4に連通可能な状態とされ、開閉弁18が閉弁すると低減衰通路15が遮断されて低減衰通路15を介しては伸側室R1と圧側室R2がタンク4に連通されない状態とされる。
以上のように構成されたダンパDの作動について説明する。まず、開閉弁18が閉じた状態について説明する。この場合、低減衰通路15が遮断されるため、ダンパDが伸縮しても液体は低減衰通路15を流れることが無い。つまり、この場合には、低減衰通路15は開閉弁18によって無効とされている状態である。
この場合に、ダンパDが伸長作動すると、圧縮される伸側室R1内の圧力が上昇し、伸側室R1の圧力が伸側高減衰バルブ7の開弁圧に達すると、伸側室R1内の液体が伸側高減衰通路5を通じて圧側室R2へ移動し、圧側チェックバルブ12が開弁してピストンロッド3がシリンダ1から退出する体積分の液体が圧側吸込通路10を通じてタンク4から圧側室R2へ供給される。開閉弁18が閉弁状態にあって、ダンパDが伸長作動を呈する場合、伸側高減衰バルブ7が開弁して液体の流れに抵抗を与えるので、ダンパDは高い減衰力を発揮する。
また、ダンパDが収縮作動すると、圧縮される圧側室R2内の圧力が上昇し、圧側室R2の圧力が圧側高減衰バルブ8およびベースバルブ11の開弁圧に達すると、圧側室R2内の液体が圧側高減衰通路16を通じて伸側室R1へ移動するとともに、シリンダ1内に侵入するピストンロッド3の体積分の液体は圧側室R2からベースバルブ11を押し開いて排出通路9を通じてタンク4へ排出される。
開閉弁18が閉弁状態にあって、ダンパDが収縮作動を呈する場合、圧側高減衰バルブ8とベースバルブ11とがそれぞれ通過する液体の流れに抵抗を与えるので、ダンパDは収縮作動時にも高い減衰力を発揮する。
これに対して、開閉弁18が開弁して低減衰通路15を開放する場合、ダンパDが伸縮すると低減衰通路15をも液体が流れることができるようになり、低減衰通路15は有効とされる。
この場合に、ダンパDが伸長作動すると、圧縮される伸側室R1内の圧力が上昇し、伸側室R1の圧力が伸側低減衰バルブ16の開弁圧に達すると、伸側室R1内の液体が低減衰通路15を通じてタンク4へ移動することができるようになり、圧側チェックバルブ12が開弁して拡大される圧側室R2には圧側吸込通路10を介してタンク4から液体が供給される。また、伸側室R1内の圧力が伸側低減衰バルブ16の開弁圧に達しない場合、伸側バイパスチェックバルブ23は開弁するので、伸側室R1内の液体は、伸側オリフィス22を通じてタンク4に移動することができる。よって、開閉弁18が開弁状態にあって、ダンパDが伸長作動を呈する場合、伸側オリフィス22或いはこの伸側オリフィス22と伸側低減衰バルブ16とで液体の流れに抵抗を与えることになり、伸側低減衰バルブ16の開弁圧は伸側高減衰バルブ7の開弁圧よりも低いので、ダンパDは低い減衰力を発揮することになる。
また、ダンパDが収縮作動すると、圧縮される圧側室R2内の圧力が上昇し、圧側室R2の圧力が圧側低減衰バルブ17の開弁圧に達すると、圧側室R2内の液体が低減衰通路15を通じてタンク4へ移動することができるようになり、伸側チェックバルブ14が開弁して拡大される伸側室R1には伸側吸込通路13を介してタンク4から液体が供給される。また、圧側室R2内の圧力が圧側低減衰バルブ17の開弁圧に達しない場合、圧側バイパスチェックバルブ25は開弁するので、圧側室R2内の液体は、伸側オリフィス24を通じてタンク4に移動することができる。よって、開閉弁18が開弁状態にあって、ダンパDが収縮作動を呈する場合、圧側オリフィス24或いはこの圧側オリフィス24と圧側低減衰バルブ17とで液体の流れに抵抗を与えることになり、圧側低減衰バルブ17の開弁圧は圧側高減衰バルブ8およびベースバルブ11の開弁圧よりも低いので、ダンパDは低い減衰力を発揮することになる。
このように、ダンパDは、開閉弁18の開閉によって、発揮する減衰力を高低切換えることができる。そして、ダンパDが低い減衰力を発揮する場合には、開閉弁18を開くことで、低減衰通路15を有効とし、ダンパDの伸縮時には拡大する伸側室R1或いは圧側室R2にはタンク4から液体が供給されることになる。この低い減衰力を発揮するモードを選択するのは、地震等の著大な振動が車体に作用した場合ではなく、鉄道車両の走行時における車体の振動を抑制する場合であるから、このように、タンク4から伸側室R1と圧側室R2に液体を吸い込むようにしても、吸込不足を生じることが無く、ダンパDは安定した減衰力を発揮することができる。
つづいて、地震によって車体が加振され、当該車体が著大な振動を呈する際には、ダンパDに高い減衰力を発揮させるべく、開閉弁18を閉じて低減衰通路15を無効として高減衰通路のみを有効とする。この場合、ダンパDが収縮する場合には、圧縮される圧側室R2から圧側高減衰通路6を通じて伸側室R1へ液体が移動し、シリンダ1内にピストンロッド3が侵入した体積分の液体はベースバルブ11を介してタンク4へ排出される。
これに対して、ダンパDの伸長作動時には、伸側高減衰通路5を通じて伸側室R1から圧側室R2へ液体が移動するため、圧側室R2で不足する液体量はシリンダ1からピストンロッド3が退出した体積分に等しく、この量の液体がタンク4から圧側室R2に吸い込まれることになる。他方、従来のユニフローダンパでは、伸長作動時に圧側室で吸い込む液体量は、ピストンの断面積にピストンの移動量である。また、ユニフロー型のダンパでは、伸縮両側で等しい減衰特性にするためには、ピストンの断面積とピストンロッドの断面積の比を2対1に設定しなくてはならないが、本発明のダンパDでは、伸長作動時には、伸側高減衰バルブ7、伸側低減衰バルブ16、伸側オリフィス22を利用して減衰力を発揮し、収縮作動時には、圧側高減衰バルブ8、圧側低減衰バルブ17、圧側オリフィス24を利用して減衰力を発揮するので、ピストン2の断面積とピストンロッド3の断面積の比を2対1にしなくてはならないという制約はない。
よって、ピストン2の断面積を大きくしてシリンダ1内の圧力をシールの耐圧力限界の範囲内に収めつつ、地震時の車体の振動を抑制できる高い減衰力を発揮するようにしても、本発明のダンパDでは、伸長作動時において圧側室R2でタンク4から吸い込む液体量は、シリンダ1からピストンロッド3が退出する体積分であり、従来のユニフロー型のダンパにおける吸込量であるピストンの断面積にピストンの移動量を乗じた容積分と比較しても、非常に少なくすることができる。なお、伸側室R1の液体は、圧側室R2へ伸側高減衰通路5を介して移動するが、伸側室R1の液体はピストン2によって押し出されて圧側室R2へ移動するので、この伸側室R1から圧側室R2へ移動する液体に関して吸込不良は生じない。
よって、本発明のダンパDにあっては、高速で作動してもシリンダ1内で液体の吸込不足が発生することはなく、圧側室R2が負圧となったり、圧側室R2内で液体に溶け込んでいた気体が気泡となって現れたりして、伸長作動から収縮作動に切り換わり後の収縮作動時の減衰力が不足したり、安定しなくなったりといった問題が生じることはない。また、外筒21の径を大型化する必要も無い。
以上より、本発明のダンパDによれば、大型化を招かずに高減衰力を発揮することができる、すなわち、鉄道車両や構造物の免震装置や制振装置への搭載性を損なうことなく高減衰力を発揮することができるのである。
また、高減衰通路としての伸側高減衰通路5と圧側高減衰通路6を設け、伸側高減衰通路5に伸側高減衰バルブ7を設け、圧側高減衰通路6に高減衰バルブとしての圧側高減衰バルブ8を設け、排出通路9にベースバルブ11を設け、低減衰通路15に設けた伸側低減衰バルブ16と圧側低減衰バルブ17を設けたので、各バルブを通過する流量が異なってもダンパDの伸側減衰特性と圧側減衰特性とを等しくすることができるので、ピストンロッド3の断面積とピストン2の断面積の比の設定の自由度が高く、ピストン2を大型化してもピストンロッド3の大型化を軽微とすることができ、高減衰力発生時において伸長作動時の圧側室R2でのタンク4からの吸込液体量を少なくすることができる。
なお、高減衰通路を一つとして、高減衰バルブを双方向への流れを許容する絞り弁とすることもでき、その場合、高減衰力発生時の減衰特性のチューニングは、当該絞り弁とベースバルブ11で行うことになるので、高減衰通路としての伸側高減衰通路5と圧側高減衰通路6を設け、伸側高減衰通路5に伸側高減衰バルブ7を設け、圧側高減衰通路6に高減衰バルブとしての圧側高減衰バルブ8を設ける方が、ピストンロッド3の断面積とピストン2の断面積の比の設定の自由度が高くなる。
また、低減衰通路15をタンク4から分岐させて伸側室R1と圧側室R2とに連通するようにし、分岐点15aから伸側室R1側に伸側低減衰バルブ16を設け、分岐点15aから圧側室R2側に圧側低減衰バルブ17を設け、分岐点15aからタンク4側に開閉弁18を設けたので、一つの開閉弁18にて低減衰通路15の死活を切換えることができ、この点でもダンパDの大型化を回避できるとともに、製造コストも低減することができる。
さらに、開閉弁18は、ソレノイド18eへ電力供給できなくなるフェール時には、低減衰通路15を遮断するため、ダンパDは高い減衰力を発揮するモードなるので、フェール時にあっても車体の振動を効率よく抑制することができる。
そしてさらに、伸側オリフィス22と伸側バイパスチェックバルブ23とを直列配置したものを低減衰通路15中に伸側低減衰バルブ16に並列させ、圧側オリフィス24と圧側バイパスチェックバルブ25とを直列配置したものを低減衰通路15中に圧側低減衰バルブ17に並列させているので、伸側室R1の圧力が開弁圧に達せずに伸側低減衰バルブ16が閉弁状態にあり、また、圧側室R2の圧力が開弁圧に達せずに圧側低減衰バルブ17が閉弁状態にあっても、伸側オリフィス22或いは圧側オリフィス24で低い減衰力を発揮することでき、ダンパDの伸縮の切換りにおいて減衰力の急変が生じないので、低減衰力発揮時に鉄道車両の車体や構造物へ振動を与えることがない。
なお、上記したところでは、伸側高減衰バルブ7、圧側高減衰バルブ8、ベースバルブ11、伸側低減衰バルブ16および圧側低減衰バルブ17を調圧バルブとしているが、調圧バルブ以外のバルブとしてもよく、通路を一方通行にするようにする他のバルブとされてもよい。
また、開閉弁18の遮断ポジション18bについては、止めバルブではなく、分岐点15a側からタンク4側へ向けての液体の流れを阻止するチェックバルブとして機能するようにしてもよい。
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。
1 シリンダ
2 ピストン
3 ピストンロッド
4 タンク
5 高減衰通路としての伸側高減衰通路
6 高減衰通路としての圧側高減衰通路
7 高減衰バルブとしての伸側高減衰バルブ
8 高減衰バルブとしての圧側高減衰バルブ
9 排出通路
10 圧側吸込通路
11 ベースバルブ
12 圧側チェックバルブ
13 伸側吸込通路
14 伸側チェックバルブ
15 低減衰通路
16 伸側低減衰バルブ
17 圧側低減衰バルブ
18 開閉弁
22 伸側オリフィス
23 伸側バイパスチェックバルブ
24 圧側オリフィス
25 圧側バイパスチェックバルブ
D ダンパ
R1 伸側室
R2 圧側室

Claims (4)

  1. シリンダと、当該シリンダ内に摺動自在に挿入されるピストンと、上記シリンダ内に移動自在に挿入されて一端が上記ピストンに連結されるピストンロッドと、上記シリンダ内に上記ピストンで区画された伸側室と圧側室と、タンクとを備えたダンパにおいて、上記伸側室と上記圧側室とを連通する高減衰通路と、上記高減衰通路に設けられて通過する液体の流れに抵抗を与える高減衰バルブと、上記圧側室と上記タンクとを連通する排出通路および圧側吸込通路と、上記排出通路に設けられて上記圧側室から上記タンクへ向かう液体の流れに抵抗を与えるベースバルブと、上記圧側吸込通路に設けられて上記タンクから上記圧側室へ向かう液体の流れのみを許容する圧側チェックバルブと、上記伸側室と上記タンクとを連通する伸側吸込通路と、上記伸側吸込通路に設けられて上記タンクから上記伸側室へ向かう液体の流れのみを許容する伸側チェックバルブと、上記タンクから伸びるとともに途中で分岐して上記伸側室と上記圧側室とに通じる低減衰通路と、上記低減衰通路の上記分岐点よりも上記伸側室側に設けられて上記伸側室から上記タンクへ向かう液体の流れのみを許容するとともに通過する液体の流れに抵抗を与える伸側低減衰バルブと、上記低減衰通路の上記分岐点よりも上記圧側室側に設けられて上記圧側室から上記タンクへ向かう液体の流れのみを許容するとともに通過する液体の流れに抵抗を与える圧側低減衰バルブと、上記低減衰通路の上記分岐点よりも上記タンク側に設けられて当該低減衰通路を開閉する開閉弁とを備えたことを特徴とするダンパ。
  2. 上記高減衰通路は、上記伸側室と上記圧側室とを連通する伸側高減衰通路と圧側高減衰通路とを備え、上記高減衰バルブは、上記伸側高減衰通路に設けられて通過する液体の流れに抵抗を与える伸側高減衰バルブと、上記圧側高減衰通路に設けられて通過する液体の流れに抵抗を与える圧側高減衰バルブとを備え、上記伸側高減衰バルブ、上記圧側高減衰バルブ、上記ベースバルブ、上記伸側低減衰バルブおよび上記圧側低減衰バルブは、調圧バルブであって、上記伸側高減衰バルブ、上記圧側高減衰バルブおよび上記ベースバルブの開弁圧は、上記伸側低減衰バルブおよび上記圧側低減衰バルブの開弁圧よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のダンパ。
  3. 上記開閉弁は、電磁開閉弁であって、通電時に上記低減衰通路を開放し、非通電時に上記低減衰通路を遮断することを特徴とする請求項1または2に記載のダンパ。
  4. 上記低減衰通路に上記伸側低減衰バルブと並列するように設けた伸側オリフィスと、上記低減衰通路に上記伸側低減衰バルブに並列されるとともに当該伸側オリフィスに直列に設けられて上記伸側室から上記タンクへ向かう液体の流れのみを許容する伸側バイパスチェックバルブと、上記低減衰通路に上記圧側低減衰バルブと並列するように設けた圧側オリフィスと、上記低減衰通路に上記圧側低減衰バルブに並列されるとともに当該圧側オリフィスに直列に設けられて上記圧側室から上記タンクへ向かう液体の流れのみを許容する圧側バイパスチェックバルブとを備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のダンパ。
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