JP2014189654A - 多孔性高分子フィルムの製造方法 - Google Patents

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    • C08J2300/20Polymers characterized by their physical structure

Abstract

【課題】工業的な生産に適した、多孔性高分子フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】サイクロトロンで加速されたイオンから構成されるイオンビームを高分子フィルムに照射して、当該ビーム中のイオンが衝突した高分子フィルムを形成する工程(I)と、工程(I)で形成した高分子フィルムを化学エッチングして、イオンの衝突の軌跡に対応する開口および/または貫通孔を高分子フィルムに形成する工程(II)とを含み、工程(I)では、イオンビームの経路における高分子フィルムの上流および/または下流においてイオンビームのビーム電流値を検出し、高分子フィルムに対するイオンの照射密度が設定した値となるように、検出したビーム電流値に基づいて、イオンビームの高分子フィルムへの照射条件を制御する方法とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、イオンビームの照射を用いた多孔性高分子フィルムの製造方法に関する。
イオンビームの照射とその後の化学エッチングとにより多孔性高分子フィルムを製造する方法が知られている(例えば、特許文献1〜3)。高分子フィルムにイオンビームを照射すると、当該フィルムにおけるイオンが通過した部分において、高分子フィルムを構成するポリマー鎖にイオンとの衝突による損傷が生じる。損傷が生じたポリマー鎖は、他の部分よりも化学エッチングされやすい。このため、イオンビームを照射した後の高分子フィルムを化学エッチングすることにより、イオンの衝突の軌跡に対応する細孔が形成された多孔性高分子フィルムが形成される。
特許文献3には、加速器により加速されたイオンを高分子フィルムに照射した例が記載されている。
特公昭52-3987号公報 特開昭54-11971号公報 特開昭59-117546号公報
特許文献1〜3に開示されている方法は、多孔性高分子フィルムの工業的な生産について十分に考慮されていない。本発明は、工業的な生産に適した、多孔性高分子フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
本発明の製造方法は、サイクロトロンで加速されたイオンから構成されるイオンビームを高分子フィルムに照射して、前記ビーム中のイオンが衝突した高分子フィルムを形成する工程(I)と、前記形成した高分子フィルムを化学エッチングして、前記イオンの衝突の軌跡に対応する開口および/または貫通孔を前記高分子フィルムに形成する工程(II)と、を含む。前記工程(I)では、前記イオンビームの経路における前記高分子フィルムの上流および/または下流において、当該イオンビームのビーム電流値を検出し、前記高分子フィルムに対する前記イオンの照射密度が設定した値となるように、前記検出したビーム電流値に基づいて、前記イオンビームの前記高分子フィルムへの照射条件を制御する。
本発明の製造方法は、多孔性高分子フィルムの工業的な生産に適している。
本発明の製造方法における工程(I)を説明するための模式図である。 本発明の製造方法における工程(II)を説明するための模式図である。 本発明の製造方法の一実施形態における、電流捕捉ワイヤーの配置の一例を示す模式図である。 本発明の製造方法の一実施形態を示す模式図である。 図4に示す実施形態において使用可能な被照射ロールの構造の一例を模式的に示す断面図である。 サイクロトロンで加速されたイオンから構成されるビーム(原ビーム)の一例について、その進行方向に垂直な断面を説明するための模式図である。 図6Aに示す断面におけるx軸方向の強度分布(イオンビームの強度分布)を示す模式図である。 非線形集束法によって原ビームの裾部を折り畳むために当該ビームに加える非線形磁場の一例を説明するための図である。 非線形集束法によって原ビームの裾部を折り畳む一例を示す模式図である。 裾部の折り畳みを経たイオンビームの一例の断面を示す模式図である。
本発明の製造方法では、加速させたイオンから構成されるイオンビームを高分子フィルムに照射して、当該ビーム中のイオンが衝突した高分子フィルムを形成する(工程(I))。イオンビームを高分子フィルムに照射すると、図1に示すように、ビーム中のイオン2が高分子フィルム1に衝突し、衝突したイオン2は当該フィルム1の内部に軌跡3を残す。イオン2が高分子フィルム1を貫通すれば当該フィルム1を貫通するように軌跡3が形成され(軌跡3a)、イオン2が高分子フィルム1を貫通しなければ当該フィルム1内で軌跡3が途切れる(軌跡3b)。イオン2が高分子フィルム1を貫通するか否かは、イオン2の種類(イオン種)、イオン2のエネルギー、高分子フィルム1の厚さ、高分子フィルム1を構成するポリマーの種類(ポリマー種)などにより決定される。高分子フィルム1に対するイオンビームの照射は、当該イオンビームの経路(ビームライン)に高分子フィルム1を配置することで実施される。このとき、高分子フィルム1はビームラインに対して静止していても、移動していてもよい。
本発明の製造方法では、工程(I)の後に、イオン2が衝突した高分子フィルム1を化学エッチングしてイオン2の衝突の軌跡3に対応する細孔を高分子フィルム1に形成し、多孔性高分子フィルムを得る(工程(II))。高分子フィルム1におけるイオン2の軌跡3では、当該フィルム1を構成するポリマー鎖に、イオンとの衝突による損傷が生じている。損傷が生じたポリマー鎖は化学エッチングにより、イオン2と衝突していないポリマー鎖よりも分解、除去されやすい。このため化学エッチングにより、高分子フィルム1における軌跡3の部分が選択的に除去され、図2に示すような、軌跡3に対応する細孔4が形成された多孔性高分子フィルム21が得られる。高分子フィルム1を貫通する軌跡3aに対応する細孔は、貫通孔4aとなる。高分子フィルム1内で途切れた軌跡3bに対応する細孔4は、多孔性高分子フィルム21の一方の面(イオン照射面)に開口4bを有する凹部となる。多孔性高分子フィルム21では、軌跡3に対応する開口4bおよび/または貫通孔4aが形成されている。本明細書における「多孔性」とは、このような開口および/または貫通孔が複数形成されていることをいう。多孔性高分子フィルム21における開口4bおよび貫通孔4a以外の部分は、フィルムの状態を変化させる工程をさらに実施しない限り、基本的に工程(I)に使用した高分子フィルム1と同一である。当該部分は、例えば無孔でありうる。
被照射物である高分子フィルム1のサイズスケールで見ると、通常、イオン2はほぼ直線状に高分子フィルム1と衝突し、直線状に伸びた軌跡3を当該フィルム1に残す。このため開口4bを有する凹部および貫通孔4aは、通常、直線状に伸びた形状を有する。ただし、この場合において直線状に伸びているのは凹部および貫通孔4aの中心線であり、その壁面の形状は、照射したイオン2の種類および高分子フィルム1を構成するポリマーの種類によって異なる。両者の間の相互作用の状態が、イオン種およびポリマー種によって異なるからである。例として、伸長方向(高分子フィルム1の厚さ方向)に径がほぼ変化しない直管状の貫通孔または凹部が形成されることがあるし、伸長方向に径が一度小さくなった後に再び拡大する、いわゆる砂時計状の貫通孔または凹部が形成されることがある。
[工程(I)]
工程(I)では、サイクロトロンで加速されたイオン2から構成されるイオンビームを高分子フィルム1に照射する。サイクロトロンは、例えば、AVFサイクロトロンである。イオン源で発生させたイオンの加速にサイクロトロンを用いた場合、高分子フィルム1に対して連続的かつ高加速・高密度にイオンを衝突させることが可能であり、例えば、高分子フィルム1をビームラインに連続的に配置することによって多孔性高分子フィルム21を連続的に製造できる。
工程(I)では、さらに、加速イオン2の経路における高分子フィルム1の上流および/または下流において当該イオンビームのビーム電流値を検出し、検出したビーム電流値に基づいて、高分子フィルム1に対するイオン2の衝突密度(照射密度)が設定した値となるようにイオンビームの高分子フィルム1への照射条件を制御する。サイクロトロンによるイオンの加速では、高分子フィルムに対して連続的にイオンを衝突させることが可能となる一方で、イオンの照射密度を経時的に一定に保つことが難しい。イオンの照射密度は、工程(II)の化学エッチングによって形成される開口および/または貫通孔の分布に強く影響する。このため、サイクロトロンにより加速されたイオンから構成されるイオンビームを単に高分子フィルムに照射するだけでは、開口および/または貫通孔の分布が制御された多孔性高分子フィルムを得ることが、例えば、当該分布が一定な多孔性高分子フィルムを連続して得ることが、困難である。これに対して本発明の製造方法では、高分子フィルムに照射するイオンのビーム電流値を検出し、検出したビーム電流値に基づいて(すなわち、検出したビーム電流値をフィードバックさせて)、高分子フィルム1に対するイオン2の照射密度が設定値になるようにイオンビームの高分子フィルムへの照射条件を制御している。当該制御とサイクロトロンとの組み合わせによって、開口および/または貫通孔の分布が制御された多孔性高分子フィルムを連続的に得ることが可能となり、本発明の製造方法は多孔性高分子フィルムの工業的な生産に適する。
照射密度の設定値は、得たい多孔性高分子フィルムにおける開口および/または貫通孔の分布に応じて任意に設定できる。当該分布が一定な多孔性高分子フィルムを連続して得るためには、例えば、照射密度を一定値に設定すればよい。そして照射密度が当該値を保つように、ビーム電流値の連続的または断続的な検出と、当該検出したビーム電流値に基づくイオンビーム照射条件の連続的または断続的な制御を行えばよい。
本発明の製造方法では、高分子フィルムに対するイオンビームの照射条件を、イオンビームのビーム電流値によりフィードバック制御している。ビーム電流値はイオンの照射密度に密接に関連するとともに、その測定は比較的容易であり、その変化についても比較的速やかにかつ精度よく捉えることができる。このため本発明の製造方法によれば、開口および/または貫通孔の分布が一定な多孔性高分子フィルムを連続して得るだけでなく、例えば、当該分布について特定のパターンを有する多孔性高分子フィルムを得ることができる。ビームラインへの高分子フィルムの供給、配置方法を選択することにより、このような多孔性高分子フィルムを連続的に得ることも可能である。このような多孔性高分子フィルムの製造、特に連続的な製造、は、従来の方法では困難である。当該分布について特定のパターンとは、例えば、開口および/または貫通孔の分布が連続的または段階的に増加または減少するグラデーションパターン、あるいは互いに異なる当該分布を示す2または3以上の領域が交代で存在する縞状(ストライプ状)パターンである。ストライプパターンの1つの領域が、開口および/または貫通孔を有さない領域であってもよい。このようなパターンを実現するためには、例えば、ビームラインへの高分子フィルムの配置状態に応じて、照射密度の設定値を連続的または段階的に変化させればよい。
工程(I)では、ビーム電流値の検出および当該検出したビーム電流値に基づく高分子フィルムに対するイオンビームの照射条件の制御を、単発で、または繰り返して行ってもよく、繰り返して行う場合は断続的に行っても連続的に行ってもよい。サイクロトロンによるイオンの加速では、通常、イオンの照射密度が連続的に変動するため、上記ビーム電流値の検出および当該ビーム電流値のフィードバックによる照射条件の制御を繰り返して行うことが好ましい。
本発明の製造方法では、高分子フィルムに対するイオンビームの照射条件として、イオンビームの強度(ビーム強度)を制御してもよい。ビーム強度を大きくすると、高分子フィルムに対するイオンの照射密度が大きくなり、ビーム強度を小さくすると、高分子フィルムに対するイオンの照射密度が小さくなる。
ビーム強度の制御方法は特に限定されず、例えば、イオンのイオン源とサイクロトロンとの間におけるイオンビームの経路に配置されたビームチョッパーおよび/またはビームバンチャーにより行うことができる。この場合、特にビームチョッパーとビームバンチャーとを併用したときに、ビーム強度をより精度よくかつ速やかに制御することが可能である。
ビームチョッパーとは、ビームラインに対して横方向に矩形電場を印加することで、イオンビーム中のイオンをビームラインに対して横方向に偏向させるデバイスである。所定以上に偏向させられたイオンはサイクロトロンに入射されることなく消失するため、ビームチョッパーにおいて上記電場を印加する時間を制御することによって、ビーム強度を制御することができる。
ビームバンチャーとは、イオンビームの進行方向に対して高周波電場を印加し、当該ビームを進行方向に圧縮する(バンチする)デバイスである。イオン源からのイオンビームをそのままサイクロトロンに入射した場合、加速位相から外れたイオンは加速されずに失われてしまう。加速位相に合うようにイオンビームをバンチングすることによってビーム強度を増大させ、逆に加速位相から外れるようにイオンビームをバンチングすることによってビーム強度を減少させることができる。
ビーム強度の最大値は、イオン源で生成され、引き出される単位時間あたりのイオン量(電流値)により決定される。ビームチョッパーおよびビームバンチャーでは、ビーム強度を本質的に増大することはできない。このため、ビームチョッパーおよび/またはビームバンチャーを用いてビーム強度を制御する場合、(1)当該ビームチョッパーおよび/またはビームバンチャーを最適化した状態(得られるビーム強度が最大となる状態)を確立した後、(2)最適化した状態を意図的に外してビーム強度を下げ、当該下げたビーム強度において高分子フィルムにイオンビームを照射し、(3)検出したビーム電流値の変動に応じて、ビームチョッパーおよび/またはビームバンチャーの状態を変化させる、制御を行うことが好ましい。この場合、上記ビーム強度が最大となる状態までビームチョッパーおよび/またはビームバンチャーの状態を変化させることができ、ビーム電流値を増加させる方向への制御がより確実となる。
本発明の製造方法では、高分子フィルムに対するイオンビームの照射条件として、高分子フィルムに対するイオンビームの照射時間を制御してもよい。イオンビームの照射時間を長くすると、高分子フィルムに対するイオンの照射密度が大きくなり、照射時間を短くすると、高分子フィルムに対するイオンの照射密度が小さくなる。この方法は、ビーム強度の制御に比べて簡便である。なお、高分子フィルムに対するイオンビームの照射時間とは、当該フィルムのある部分を考えたときに、当該部分にイオンビームが照射される時間のことである。例えば、ビームラインを横切るように高分子フィルムを搬送し、高分子フィルムがビームラインを横切る際にイオンビームが照射される場合、高分子フィルムのある部分についてビームラインを横切り始めてから終わるまでの時間が、当該部分についてのイオンビームの照射時間に相当する。
照射時間の制御方法は特に限定されない。本発明の製造方法では、帯状の高分子フィルムを用いて連続的に帯状の多孔性高分子フィルムを製造できるが、その場合、例えば、以下のようにして照射時間を制御してもよい:工程(I)において、帯状の高分子フィルムが巻回された送り出しロールから高分子フィルムを送り出し、送り出した高分子フィルムをイオンビームを横切るように搬送することによって、高分子フィルムがイオンビームを横切る際に当該フィルムにイオンビームを照射する(イオン2を衝突させる);照射時間の制御を、イオンビームを横切る際の高分子フィルムの搬送速度の制御により行う。搬送速度を小さくするとイオンビームの照射時間が長くなり、搬送速度を大きくするとイオンビームの照射時間が短くなる。高分子フィルムがイオンビームを横切る際には、一時的または段階的に搬送速度をゼロとしても(高分子フィルムの搬送をストップしても)、一時的に搬送速度をマイナスとしても(高分子フィルムを戻す方向に搬送しても)よい。また、ビーム自体を移動させることによってイオンビームを横切らせてもよく、上述した高分子フィルムの様々な搬送の形態と、イオンビーム自体の移動とを組み合わせてもよい。これらによってもイオンビームの照射条件を制御できる。
本発明の製造方法では、高分子フィルムに対するイオンビームの照射条件として、ビーム強度と高分子フィルムに対するイオンビームの照射時間とを組み合わせて制御してもよい。
工程(I)においてビーム電流値を検出する方法は特に限定されない。例えば、イオンビームの経路に電流捕捉用の金属を配置し、当該金属によって捕捉(捕集)された電荷の量からビーム電流値を求めることができる。
電流捕捉用に配置する金属の一例が電流捕捉ワイヤーである。電流捕捉ワイヤーとは、ビームラインに突き出るように配置された導電性のワイヤーであり、ワイヤーの少なくとも一部が電子回路に接続されている。ビームラインを移動してきたイオンの一部が当該ワイヤーによって捕捉され、電流として検出される。この電流を、予め求めておいた捕捉電流とビーム電流値との関係によって補正することで、ビーム電流値を求めることができる。ビーム電流値を求めたいイオンビームに対して1本の電流捕捉ワイヤーを配置しても、2本以上の電流捕捉ワイヤーを配置してもよい。2本以上の電流捕捉ワイヤーを配置することによって、求めるビーム電流値の精度が高くなる。また、イオンビームの均一性(ビームの進行方向に垂直な断面における強度分布の均一性;個々のイオンの大きさに比べてイオンビームの断面が遙かに大きいため、当該断面の各領域において、通過するイオン量(イオン強度)に差が生じうる)を評価することができる。イオンビームの均一性の評価に適した電流捕捉ワイヤーの配置の一例を図3に示す。図3に示す例では、矩形断面を有するイオンビーム11に対して、隣り合う電流捕捉ワイヤー32間の距離が等間隔となるように5本の電流捕捉ワイヤー32が配置されている。なお、図3の符号33は、イオンビーム11を通すビームダクト33である。
電流捕捉ワイヤーは導電性を有する材料から構成されていればよく、例えば、金メッキしたタングステンワイヤー、タングステンワイヤー、タングステン−レニウム合金ワイヤーを使用できる。
電流捕捉ワイヤーの直径を細くすることによって当該ワイヤーによるイオンビームの遮りが小さくなるため、電流捕捉ワイヤーは、その直径によっては、ビームラインにおける高分子フィルムの上流に配置することができる。高分子フィルムの下流への配置では、高分子フィルムを貫通しなかったイオンを検出することができないことから、上流への配置によってより精度よくビーム電流値を検出することができる。ビームラインにおける高分子フィルムの上流への配置を考慮すると、電流捕捉ワイヤーの直径は0.5〜5mmが好ましい。ただし、イオンの種類(イオン種)およびそのエネルギーと電流捕捉ワイヤーの材質との組合わせによっては、上記直径の範囲においても、イオンビーム中のイオンが大きく遮られることがある。その場合は、電流捕捉ワイヤーの直径を可能な限り小さくするか、ビームラインにおける高分子フィルムの下流に電流捕捉ワイヤーを配置することを検討すればよい。電流捕捉ワイヤーは、ビームラインにおける高分子フィルムの上流および下流の双方に配置することもできる。
このように本発明の製造方法では、ビーム電流値の検出を、ビームラインにおける高分子フィルムの上流および/または下流に配置された電流捕捉ワイヤーにより行ってもよい。高分子フィルムに対するイオンの照射密度を設定値により近づけるためには、電流捕捉ワイヤーを配置する位置が高分子フィルムにできるだけ近いことが好ましい。
電流捕捉用に配置する金属の別の一例がファラデーカップである。ファラデーカップの具体的な構成は特に限定されず、公知のファラデーカップを使用できる。ただし、ファラデーカップによりイオンビームが遮られるため、ファラデーカップはイオンビームの照射対象物である高分子フィルムの下流に配置する必要がある。すなわち、本発明の製造方法では、ビーム電流値の検出を、ビームラインにおける高分子フィルムの下流に配置されたファラデーカップにより行ってもよい。このとき工程(I)が実施できる限り、他の電流捕捉用金属、例えば、電流捕捉ワイヤーを併用できる。
上述したように本発明の製造方法では、帯状の高分子フィルムを用いて帯状の多孔性高分子フィルムを連続的に製造できる。その場合、例えば、高分子フィルムを搬送するロールを電流捕捉用金属として使用してもよい。このような実施形態の一例を図4に示す。
図4に示す例では、帯状の高分子フィルム1が巻回された送り出しロール41から高分子フィルム1を送り出し、送り出した高分子フィルム1をイオンビームの経路上に配置された被照射ローラ43に搬送することで、高分子フィルム1が被照射ローラ43を通過する際に当該フィルム1にイオンビームを照射している。ここで、被照射ローラ43の表面に導電層が形成されており、ビーム電流値の検出を、当該導電層を捕集電極として被照射ローラ43により行う。このとき工程(I)が実施できる限り、他の電流捕捉用金属、例えば、電流捕捉ワイヤーを併用できる。
なお、図4に示す例では、被照射ローラ43を通過する際にイオンビーム11(イオン2)が照射された高分子フィルム1は、そのまま巻き取りロール42に巻回される。工程(I)では、このように、いわゆるロールtoロール方式により、高分子フィルムにイオンビームを照射してもよい。
被照射ローラ43の一例を図5に示す。図5に示す被照射ローラ43は、金属により構成される芯材44の表面に、絶縁性材料から構成される絶縁層45および導電性材料から構成される導電層46が順に形成された構造を有する。被照射ローラ43の構造は、被照射ローラ43の表面に導電層が形成されており、当該導電層を捕集電極としてビーム電流値を検出できる限り限定されない。
上記説明した照射条件の制御方法およびビーム電流値の検出方法は、工程(I)を実施できる限り、任意の組み合わせで組み合わせることができる。また、ビーム電流値の検出および照射条件の制御を自動で行わせることも可能であり、そのためのシステムは、本明細書を見た当業者であれば構築することができる。
工程(I)において、上記説明したビーム電流値の検出および照射条件の制御を除き、サイクロトロンで加速されたイオンから構成されるイオンビームを高分子フィルムに照射する方法自体は、公知の方法を適用できる。例えば、高分子フィルムに照射するイオンのイオン源は特に限定されない。イオン源におけるイオンの発生方法、サイクロトロンの具体的な構成、イオン源で発生させたイオンをサイクロトロンで加速する方法は、特に限定されない。本発明の効果が得られる限り、加速後のイオンから構成されるイオンビームに対して任意の処理を行ってもよい。
例えば、工程(I)において高分子フィルムに照射するイオンビームが、サイクロトロンで加速されたイオンから構成されるイオンビームを原ビームとして、当該原ビームの裾部(tail)を、非線形集束法(nonlinear focusing)によってビーム中心方向に折り畳んだ(folded)イオンビームであってもよい。
サイクロトロンで加速されたイオンから構成されるイオンビームの強度分布(ビーム中にイオン粒子が存在する確率分布ともいえる)はビーム全体にわたって均一とは限らない。通常、当該イオンビームは、ビームの進行方向に垂直な断面(以下、単に「断面」ともいう)の強度分布について、ビーム中心を最大強度とし、当該中心から離れるにしたがってビーム強度が連続的に低下するプロファイル(断面ビームプロファイル)を有している(図6A,図6B参照)。図6Aは、このようなイオンビームの一例51の断面を示しており、当該断面におけるイオンビームの強度分布は、ビーム中心52を通過する当該断面上のx軸(点E−点C−点E)を考えたときに、図6Bに示すようになる。図6Bの縦軸は、規格化されたイオンビームの強度Iであり、イオンビーム51がビーム中心52(点C)において最大強度となっていることがわかる。図6Bにおいて強度がほぼゼロとなる点Eが、図6Aにおいて破線で示されるイオンビーム51の縁53となる。なお、図6A,図6Bに示すイオンビーム51では、その断面の形状(縁53の形状)は円形であり、ビーム中心52から離れるにしたがってビーム強度が連続的かつ等方的に減少している。「等方的」とは、イオンビームの断面においてビーム中心を通過する任意の軸を考えたときに、いずれの軸においても同様のビーム強度分布(例えば、図6Bに示す分布)が得られることを意味する。図6Bに示すように、イオンビーム51は、ビーム中心52を最大強度とする正規分布に基づく強度分布を有する。すなわち、ビーム断面の強度分布について、ビーム中心を最大強度とする正規分布のプロファイルを有している。このようなイオンビームは、例えば、サイクロトロンで加速したイオンを、金属薄膜などにより構成される散乱体(scatterer)を通過させて得ることができる。
一方、このようなイオンビーム51を原ビームとし、当該原ビームに対して非線形集束法(nonlinear focusing)によるプロファイルの変更(裾部の折り畳み)を行ったイオンビームを高分子フィルム1に照射することとする。具体的に、サイクロトロンで加速されたイオンから構成される原ビームであって、ビームの進行方向に垂直な断面の強度分布について、ビーム中心を最大強度とし、当該中心から離れるにしたがってビーム強度が連続的に低下するプロファイルを有する原ビームの裾部を、非線形集束法によってビーム中心方向に折り畳んだイオンビームを高分子フィルム1に照射することとする。これにより、断面の強度分布について上記プロファイルを有する原イオンビーム51に比べて、断面におけるビーム強度の均一度が高いイオンビーム11を高分子フィルム1に照射できる。そして、高分子フィルム1に対するイオン2の衝突密度(照射密度)が設定した値となるようにイオンビーム11の高分子フィルム1への照射条件を制御することと相まって、例えば、開口および/または貫通孔の分布が一定な多孔性高分子フィルムを連続して得ることがより容易となる。
また、このようなイオンビーム11の照射は、高分子フィルム1を当該フィルムがイオンビームを横切るように搬送させることとの親和性が非常に高く、両者の組み合わせによって、多孔度の均一性が高い多孔性高分子フィルムの生産性が著しく向上する。また、イオンビーム11は、原ビーム51と同様、サイクロトロンで加速されたイオンから構成されているため、高分子フィルム1に対する連続的な高加速・高密度のイオン照射が可能であることに基づく効果を得ることができる。
原ビームに対する非線形集束法による裾部の折り畳みは、例えば、イオンビームの経路に配置した多重極(multi-pole)電磁石を用いた当該ビームに対する非線形磁場の印加により実現可能である。具体的な例は、Yosuke Yuri et al., "Uniformization of the transverse beam profile by means of nonlinear focusing method", Physical Review Special Topics - Accelerators and Beams, vol. 10, 104001 (2007)に開示がある。
非線形集束法による原ビームの裾部の折り畳みの一例を、図7A,図7Bに示す。非線形集束法とは、非線形に制御された磁場をイオンビームに加えて、当該ビームを集束させる(focusing)手法である。例えば、ビーム断面の強度分布について、ビーム中心を最大強度とする正規分布のプロファイルを有するイオンビーム51(図6B参照)に対して図7Aに示す非線形磁場Bを加えると、図7Bに示すように、破線で示した原ビーム51の強度分布における裾部がビーム中心側に折り畳まれて実線の強度分布を示すイオンビーム11になる。図7Bから理解できるように、この折り畳みによって、イオンビーム11の断面における強度分布の均一性が原ビーム51よりも増す。
非線形集束法により折り畳んだイオンビーム11の強度分布のプロファイルは、特に限定されない。当該プロファイルは、例えば、図7Bに示すように、ビームの断面に設定した一軸方向のプロファイルにして、略台形状である。高分子フィルム1に対するイオンの衝突密度の均一性を向上させるためには、当該台形の上辺に相当する部分のイオン強度ができるだけ一定となるように折り畳みを実施することが好ましい。なお、イオンビーム11は、原ビーム51の裾部が折り畳まれたビームであるため、ビーム中心12における最大強度は、原ビーム51のビーム中心52における最大強度からそれほど変化しない場合が多く、ほぼ同等となりうる。これは、サイクロトロンの制御によって、原ビーム51だけでなく折り畳み後のイオンビーム11の最大強度を精度よくコントロールできることを意味する。
図8に示すように、非線形集束法により折り畳んだイオンビーム11の断面の形状(縁13の形状)が略矩形であることが好ましい。この場合、帯状の高分子フィルム1に対して、効率かつ均一性が高いビーム照射が可能となる。矩形は、正方形であっても長方形であってもよい。ただし、ビームの折り畳みは、必ずしも直線的に行われることができるとは限らないため、得られたイオンビーム11の断面の形状は、若干「樽型」あるいは「糸巻き型」となることがある。「略矩形」は、このような断面形状も含む。断面の形状が略矩形であるイオンビーム11は、例えば、原ビーム51の断面に対して互いに直交する2つの軸(x軸、y軸)を設定し、x軸方向およびy軸方向の各々の方向に対して非線形集束法による折り畳みを実施することで実現できる。各軸方向に対する折り畳みは、個別に行っても同時に行ってもよい。
工程(I)が実施できる限り、ビームラインへの高分子フィルムの配置方法、搬送方法も特に限定されない。イオンエネルギーの減衰を防ぐために、ビームラインは、例えば圧力10-5〜10-3Pa程度の高真空雰囲気に保たれる。高分子フィルムを同程度の高真空雰囲気に保たれたチャンバーに収容し、当該チャンバーにおいてイオンビームを照射することにより、高分子フィルムに衝突するまでのイオンエネルギーの減衰を抑えることができる。
サイクロトロンから高分子フィルム近傍までのビームラインを高真空雰囲気に保ちながら、低真空雰囲気(例えば圧力100Pa以上)または大気圧雰囲気にある高分子フィルムにイオンビームを照射してもよい。この場合、ビームラインにおけるイオンエネルギーの減衰をできるだけ抑えながら、(1)高分子フィルムの交換に要する時間を削減できる、(2)帯状の高分子フィルムを巻回したロールを使用した場合においても当該ロールからのアウトガスによる真空度への影響を抑えることができ、安定した照射雰囲気を実現できる(圧力100Pa以上の雰囲気は、高分子フィルムのロールを使用する場合にも安定して維持しやすい)、などの効果が得られる。なお、この場合、高真空雰囲気と低真空雰囲気または大気圧雰囲気との境界には、多孔性高分子フィルムが製造できる程度に、すなわち、工程(II)において化学エッチングにより開口および/または貫通孔が形成される程度にイオンを透過する圧力隔壁シートを配置すればよい。圧力隔壁シートは、例えば、金属シートである。圧力隔壁シートは、チタンシートまたはアルミニウムシートが好ましい。
高分子フィルムに照射、衝突させるイオンの種類は限定されないが、高分子フィルムを構成するポリマーとの化学的な反応が抑制されることから、ネオンより質量数が大きいイオン、具体的にはアルゴンイオン、クリプトンイオンおよびキセノンイオンから選ばれる少なくとも1種が好ましい。高分子フィルムに形成される軌跡の形状は当該フィルムに照射したイオンの種類およびエネルギーによって変化するが、アルゴンイオン、クリプトンイオンおよびキセノンイオンでは、同じエネルギーの場合、原子番号が小さい原子のイオンほど、高分子フィルムに形成される軌跡の長さが長くなる。イオン種の変化およびイオンのエネルギーの変化に伴う軌跡の形状の変化は、工程(II)において形成される細孔の形状の変化となる。このため、多孔性高分子フィルムとして必要な細孔の形状に応じて、イオン種およびそのエネルギーを選択できる。
イオンがアルゴンイオンである場合、そのエネルギーは、典型的には100〜1000MeVである。厚さ10〜200μm程度のポリエチレンテレフタレートフィルムを高分子フィルムとして使用し、当該フィルムに貫通孔を形成する場合、イオンのエネルギーは100〜600MeVが好ましい。高分子フィルムに照射するイオンのエネルギーは、イオン種および高分子フィルムを構成するポリマー種に応じて調整しうる。
高分子フィルムを構成するポリマーは特に限定されない。ポリマーは、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデンである。
高分子フィルムの厚さは、例えば10〜200μmである。
高分子フィルムは帯状であってもよく、この場合、帯状の高分子フィルムが巻回された送り出しロールから連続的または断続的に高分子フィルムを送り出し、送り出した高分子フィルムに対してイオンビームを照射してもよい。この方法によれば、工程(I)を効率よく実施できる。さらに、イオンビームを照射した高分子フィルムを巻き取りロールに巻き取ることで、照射によりイオンが衝突したロール状の高分子フィルムを得てもよい。この方法によれば、多孔性高分子フィルムの生産がより効率的になる。
高分子フィルムを配置する雰囲気(高分子フィルムにイオンビームを照射する雰囲気)が空気であり、その圧力が大気圧である場合、高分子フィルムは密閉された空間(例えば、チャンバー内)に配置されていなくてもよく、開放空間に配置されていてもよい。送り出しロールおよび巻き取りロールについても同様である。もちろん、この場合においても、高分子フィルムは密閉された空間に配置されていてもよい。
高分子フィルムを配置する雰囲気が空気と異なる場合またはその圧力が大気圧未満である場合、高分子フィルムは密閉された空間、例えばチャンバー内に収容されていることが好ましい。送り出しロールおよび巻き取りロールについても同様である。すなわち、本発明の製造方法では、帯状の高分子フィルムが巻回された送り出しロールと、イオンビームを照射した(イオンを衝突させた)高分子フィルムを巻回する巻き取りロールとがチャンバー内に配置されており、工程(I)において、送り出しロールから高分子フィルムを送り出しながら、送り出された高分子フィルムにイオンビームを照射し、照射によりイオンが衝突した高分子フィルムを巻き取りロールに巻き取ることで、イオンが衝突したロール状の高分子フィルムを得てもよい。
工程(I)においてイオンビームは、例えば、高分子フィルムの主面に垂直な方向から当該フィルムに照射される。図1に示す例では、このような照射が行われている。この場合、工程(II)により、主面に垂直な方向に伸びる細孔が形成された多孔性高分子フィルムが得られる。工程(I)においてイオンビームを、高分子フィルムの主面に対して斜めの方向から当該フィルムに照射してもよい。この場合、工程(II)により、主面に対して斜めの方向に伸びる細孔が形成された多孔性高分子フィルムが得られる。高分子フィルムに対してイオンビームを照射する方向は、公知の手段により制御可能である。
工程(I)においてイオンビームは、例えば、複数のイオンの飛跡が互いに平行となるように当該フィルムに照射される。図1に示す例では、このような照射が行われている。この場合、工程(II)により、互いに平行に伸びる複数の細孔が形成された多孔性高分子フィルムが得られる。工程(I)においてイオンビームを、複数のイオンの飛跡が互いに非平行(例えば互いにランダム)となるように当該フィルムに照射してもよい。照射するイオンビームの(イオンの)飛跡は、公知の手段により制御可能である。
工程(I)を実施するための装置は、例えば、イオンガス源、ガスをイオン化させるイオン源装置、イオンのビームを偏向させる電磁石、サイクロトロン、サイクロトロンで加速されたイオンのビームラインを内包するビームダクト、イオンビームを集束・成形する多重極電磁石、イオンビームの経路を所定の真空度に保つための真空ポンプ、高分子フィルムを配置するチャンバー、高分子フィルムの搬送機構、ビーム電流値を検出する検出機構、検出したビーム電流値に基づいて高分子フィルムに対するイオンビームの照射条件を制御する制御機構、などを備える。
[工程(II)]
工程(II)では、工程(I)においてイオンビーム中のイオンが衝突した高分子フィルムを化学エッチングして、イオンの衝突の軌跡に対応する開口および/または貫通孔を高分子フィルムに形成し、多孔性高分子フィルムを得る。
化学エッチングのエッチング剤には、例えば、酸またはアルカリを使用できる。具体的な化学エッチングの方法は、公知の方法に従えばよい。
開口を有する細孔または貫通孔である細孔の細孔経は、工程(I)において用いたイオン種およびそのエネルギーにより異なるが、例えば、0.01〜10μmである。当該細孔は、通常、直線状に伸びる。
細孔が伸びる方向は、多孔性高分子フィルムの主面に垂直な方向でありうる。
得られた多孔性高分子フィルムにおける細孔の密度は、工程(I)において用いたイオン種、そのエネルギーおよびその衝突密度(照射密度)により制御できる。
本発明の効果が得られる限り、本発明の製造方法は工程(I)、(II)以外の任意の工程、例えばエッチング促進工程を含んでいてもよい。
本発明の製造方法によって生産した多孔性高分子フィルムは、従来の多孔性高分子フィルムと同様の様々な用途に使用できる。当該用途は、例えば、防水通気フィルタ、防水通音膜、多孔性電極シート、物品吸着用シートである。
本発明の製造方法により製造した多孔性高分子フィルムは、従来の多孔性高分子フィルムと同様の用途に使用できる。
1 高分子フィルム
2 イオン
3、3a、3b (高分子フィルム1におけるイオン2の)軌跡
4 細孔
4a 貫通孔
4b 開口
11 イオンビーム
12 (イオンビーム11の)ビーム中心
13 (イオンビーム11の)縁
21 多孔性高分子フィルム
32 電流捕捉ワイヤー
33 ビームダクト
41 送り出しロール
42 巻き取りロール
43 被照射ローラ
44 芯材
45 絶縁層
46 導電層(捕集電極)
51 イオンビーム(原ビーム)
52 (原ビーム51の)ビーム中心
53 (原ビーム51の)縁

Claims (9)

  1. サイクロトロンで加速されたイオンから構成されるイオンビームを高分子フィルムに照射して、前記ビーム中のイオンが衝突した高分子フィルムを形成する工程(I)と、
    前記形成した高分子フィルムを化学エッチングして、前記イオンの衝突の軌跡に対応する開口および/または貫通孔を前記高分子フィルムに形成する工程(II)と、を含み、
    前記工程(I)では、
    前記イオンビームの経路における前記高分子フィルムの上流および/または下流において、当該イオンビームのビーム電流値を検出し、
    前記高分子フィルムに対する前記イオンの照射密度が設定した値となるように、前記検出したビーム電流値に基づいて、前記イオンビームの前記高分子フィルムへの照射条件を制御する、
    多孔性高分子フィルムの製造方法。
  2. 前記照射条件として前記イオンビームの強度を制御する、請求項1に記載の多孔性高分子フィルムの製造方法。
  3. 前記イオンビームの強度の制御を、前記イオンのイオン源と前記サイクロトロンとの間における前記イオンビームの経路に配置されたビームチョッパーおよび/またはビームバンチャーにより行う、請求項2に記載の多孔性高分子フィルムの製造方法。
  4. 前記照射条件として、前記高分子フィルムに対する前記イオンビームの照射時間を制御する、請求項1に記載の多孔性高分子フィルムの製造方法。
  5. 前記工程(I)において、帯状の前記高分子フィルムが巻回された送り出しロールから当該フィルムを送り出し、前記送り出した高分子フィルムを前記イオンビームを横切るように搬送することによって、前記高分子フィルムが前記イオンビームを横切る際に当該フィルムに当該ビームを照射し、
    前記照射時間の制御を、前記イオンビームを横切る際の前記高分子フィルムの搬送速度の制御により行う、請求項4に記載の多孔性高分子フィルムの製造方法。
  6. 前記ビーム電流値の検出を、前記イオンビームの経路における前記高分子フィルムの上流および/または下流に配置された電流捕捉ワイヤーにより行う、請求項1に記載の多孔性高分子フィルムの製造方法。
  7. 前記ビーム電流値の検出を、前記イオンビームの経路における前記高分子フィルムの下流に配置されたファラデーカップにより行う、請求項1に記載の多孔性高分子フィルムの製造方法。
  8. 前記工程(I)において、帯状の前記高分子フィルムが巻回された送り出しロールから当該フィルムを送り出し、前記送り出した高分子フィルムを前記イオンビームの経路上に配置された被照射ローラに搬送することで、前記高分子フィルムが前記被照射ローラを通過する際に当該フィルムに前記イオンビームを照射し、
    前記被照射ローラの表面に導電層が形成されており、
    前記ビーム電流値の検出を、前記導電層を捕集電極として前記被照射ローラにより行う、請求項1に記載の多孔性高分子フィルムの製造方法。
  9. 前記工程(I)において前記高分子フィルムに照射するイオンビームが、
    サイクロトロンで加速されたイオンから構成される原ビームであって、ビームの進行方向に垂直な断面の強度分布について、ビーム中心を最大強度とし、当該中心から離れるにしたがってビーム強度が連続的に低下するプロファイルを有する原ビームの裾部を、非線形集束法によってビーム中心方向に折り畳んだイオンビームである、請求項1に記載の多孔性高分子フィルムの製造方法。
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