JP2014185440A - 型枠構造物 - Google Patents

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一昌 高木
Eizo Takagi
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Abstract

【課題】短時間に効率よく組み立てることができ、手間を要さずに廉価に組み立てることができるとともに、打設されるコンクリートの側圧に十分に耐えることができる型枠構造物を提供する。
【解決手段】型枠構造物10Aは、第1および第2固定位置28,30に設置されたアングル43a,43bと、第1および第2固定位置の間に設置された複数の型枠パネル16a〜16iと、パネルの前後方向前方に設置されて上下方向へ延びる複数のトラス構造物17a〜17iと、トラス構造物17a〜17iの前後方向前方に位置しつつそれらトラス構造物17a〜17iに設置されて横方向へ延びる複数の横架設材18a〜18cと、横架設材18a〜18cの前後方向前方に設置されて横方向へ所定寸法離間して並ぶ複数の支持架設材19a〜19cとから作られている。
【選択図】図1

Description

本発明は、建造物の壁面の外側にコンクリートを増し打ちして新たな壁を作るために使用される型枠構造物に関する。
既設の建造物の壁面に新たに耐震補強壁を構築する場合、壁面の外側に型枠を組み立てた後、壁面と型枠との間の空間に複数本の鉄筋(埋込アンカー、縦筋、横筋、柱筋、フープ筋、あばら筋、斜め補強筋等)を配筋してその空間にコンクリートを打設し、コンクリートを所定期間養生した後、組み立てた型枠を解体することで、新設の鉄筋コンクリート製の耐震補強壁が作られる。型枠工事を担当する型枠大工は、打設されるコンクリートの側圧に型枠が耐えることができるとともに、壁面に対する型枠のベニヤ板の平行状態を維持することができるように、建造物の壁と型枠のベニヤ板との間に複数本のセパレータを設置し、それらセパレータによって壁とベニヤ板とを連結する。それらセパレータを利用して壁と型枠のベニヤ板とを連結することで、コンクリートの側圧によるベニヤ板の変形を防ぐことができ、建造物の壁とベニヤ板との平行状態を維持することができる。複数本のセパレータを使用した型枠が特許文献1や特許文献2に開示されている。
特開2000−8522号公報 特開2005−290711号公報
セパレータを設置するには、建造物の壁に複数個のアンカーホールを穿孔するとともに、アンカーホールの位置に対応する型枠のベニヤ板に複数の貫通孔を穿孔する。次に、それらアンカーホールに樹脂アンカーや機械式アンカーを設置するとともに、樹脂アンカーや機械式アンカーにセパレータの一方のフォームタイ(登録商標)を接続し、ベニヤ板の貫通孔から露出するセパレータの他方のフォームタイ(登録商標)に円筒管を噛ませた状態でクランプを螺着する。型枠を組み立てる場合、配筋された鉄筋に衝突しないように鉄筋の位置を考慮しつつ、壁の単位面積当たりに相当数のセパレータを設置しなければならないのみならず、建造物の壁にアンカーホールを穿孔する場合、壁に埋設された鉄筋を避けなければならず、さらに、アンカーホールを穿孔する穿孔位置を決めた後、その穿孔位置に対応するベニヤ板の任意の位置にアンカーホールに対応する複数の貫通孔を穿孔しなければならない。壁に対するアンカーホールの穿孔位置やベニヤ板に対する貫通孔の穿孔位置を正確に位置決め(墨出し)し、セパレータを使用して壁とベニヤ板との平行状態を確実に維持するには型枠大工の長年の経験および勘に頼らざるを得ないのが現状である。なお、型枠大工が型枠工事をする場合においても、設計どおりの型枠を組み立てるまでに相当の熟練と時間とを要するとともに、多くの手間を必要としている。
本発明の目的は、型枠大工の経験や勘に頼ることなく、短時間に効率よく組み立てることができ、手間を要さずに廉価に組み立てることができるとともに、打設されるコンクリートの側圧に十分に耐えることができる型枠構造物を提供することにある。
前記課題を解決するための本発明の前提は、建造物の壁面に組み立てられ、壁面の外側にコンクリートを増し打ちして新たな壁を作るために使用される型枠構造物である。
前記前提における本発明の特徴は、型枠構造物が、建造物の壁面から前後方向前方へ所定寸法離間した構築箇所上部の位置決めされた第1固定位置と壁面から前後方向前方へ所定寸法離間した構築箇所下部の位置決めされた第2固定位置とに設置されたアングル材と、第1および第2固定位置の間に設置されて上下方向へ一連に並ぶとともに横方向へ一連に並ぶ複数の型枠パネルと、型枠パネルの前後方向前方に設置されて上下方向へ延びるとともに横方向へ所定寸法離間して並ぶ複数の縦架設材と、縦架設材の前後方向前方に位置しつつそれら縦架設材に設置されて横方向へ延びるとともに上下方向へ所定寸法離間して並ぶ複数の横架設材と、横架設材の前後方向前方に設置されて横方向へ所定寸法離間して並ぶ複数の支持架設材とを備え、支持架設材が、横架設材から構築箇所下部に向かって延びる傾斜材と、パネルから前後方向前方へ延びる水平材とから形成され、傾斜材が、横架設材に押圧下に密着する上端部と、パネルから前方へ離間して構築箇所下部に固定された下端部とを有し、水平材が、パネルから前方へ離間して傾斜材の下端部に固定された前端部と、パネルの側に位置して縦架設材に固定された後端部とを有することにある。
本発明の一例として、型枠構造物では、傾斜材の上端部が縦架設材の近傍に延びる横架設材に押圧下に密着固定され、縦架設材と傾斜材と水平材とで三角構造が形成されている。
本発明の他の一例として、上下方向へ一連に並ぶ型枠パネルの1つのグループには、少なくとも1つの支持架設材が設置されている。
本発明の他の一例としては、傾斜材の下端部が構築箇所下部に回転可能に固定され、傾斜材がその下端部を中心に構築箇所下部に対して上下方向へ旋回可能であるとともに、構築箇所下部に対する傾斜角度を変更可能である。
本発明の他の一例としては、傾斜材が横架設材と構築箇所下部との間で伸縮可能な伸縮機構を有する。
本発明の他の一例として、上下方向へ一連に並ぶ型枠パネルのグループには、少なくとも3つの縦架設材が設置され、2つの縦架設材が型枠パネルの上下方向へ延びる両側部に配置され、1つの縦架設材が型枠パネルの中央部に配置されている。
本発明の他の一例として、横方向へ一連に並ぶ型枠パネルのグループには、少なくとも1つの横架設材が設置されている。
本発明の他の一例として、上下方向へ一連に並ぶ型枠パネルのグループでは、上下方向下方に位置するパネルに対する横架設材の設置本数が上下方向上方に位置するパネルに対する該横架設材のそれよりも多い。
本発明の他の一例として、横方向へ一連に並ぶ型枠パネルのグループでは、2つの横架設材がパネルの横方向へ延びる上下端部に配置され、1つの横架設材がパネルの中央部に配置されている。
本発明の他の一例としては、傾斜材の上端部が、上下方向へ一連に並ぶ型枠パネルのグループのうちの一番下に位置する型枠パネルに対して設置された横架設材に固定され、または、上下方向へ一連に並ぶ型枠パネルのグループのうちの下から2番目に位置する型枠パネルに対して設置された横架設材に固定されている。
本発明の他の一例としては、縦架設材が、型枠パネルに当接して上下方向へ直状に延びる第1垂直材と、第1垂直材から前後方向前方へ所定寸法離間して上下方向へ直状に延びる第2垂直材と、第1垂直材と第2垂直材との間に位置して上下方向へジグザグに延びるトラス材とから作られたトラス構造物であり、トラス構造物の上端部が第1固定位置に所定の固定手段を介して強固に固定され、トラス構造物の下端部が第2固定位置に所定の固定手段を介して強固に固定されているとともに、水平材の後端部がトラス構造物の第1垂直材に固定されている。
本発明の他の一例として、型枠パネルの少なくとも1つには、壁面とパネルとの間の空間にコンクリートを打設する打設口が作られ、パネルの少なくとも1つには、空間にコンクリートを打設するときに、空間へのコンクリートの打設状態を確認可能な確認窓が作られている。
本発明の他の一例としては、型枠パネルが壁面に対向する所定面積の対向面および縦架設材に当接する所定面積の当接面と上下面および両側面とを有する6面体であり、型枠パネルの6面には、パネルのコンクリートに対する摩擦抵抗を低下させるとともに該パネル全体の強度を増加させる合成樹脂が塗布されている。
本発明の他の一例としては、合成樹脂がイソシアネートと特殊アミンとからなるポリウレア樹脂であり、硬化した前記ポリウレア樹脂による所定厚みの平滑な被膜層が型枠パネルの6面に形成されている。
本発明の他の一例としては、建造物が既設のそれであり、型枠構造物が既設の建造物の壁面に作られる鉄筋コンクリート製の耐震補強壁の構築に利用される。
本発明にかかる型枠構造物によれば、型枠パネルの前後方向前方に設置されて上下方向へ延びるとともに横方向へ所定寸法離間して並ぶ複数の縦架設材を有し、壁面とパネルとの間の空間にコンクリートを打設したときのコンクリートの側圧によるパネルの前後方向前方への膨隆や湾曲をそれら縦架設材が押さえるから、空間にコンクリートを打設したときのパネルの変形を防ぐことができる。また、縦架設材の前後方向前方に位置しつつそれら縦架設材に設置されて横方向へ延びるとともに上下方向へ所定寸法離間して並ぶ複数の横架設材を有し、空間に打設されたコンクリートの側圧によるそれら縦架設材の前後方向前方への膨隆や湾曲、横方向への撓みをそれら横架設材が押さえるから、空間にコンクリートを打設したときのそれら縦架設材の変形を防ぐことができる。さらに、横架設材の前後方向前方に設置されて横方向へ所定寸法離間して並ぶ複数の支持架設材を有し、空間に打設されたコンクリートの側圧による横架設材の前後方向前方への膨隆や湾曲をそれら支持架設材が押さえるから、空間にコンクリートを打設したときの横架設材の変形を防ぐことができ、その結果として、縦架設材や横架設材、支持架設材によって型枠パネルの変形を防ぐことができ、コンクリートの側圧が作用したとしても壁とパネルとの平行状態を維持することができる。型枠構造物は、それら縦架設材とそれら横架設材とそれら支持架設材とを利用することで、壁面と型枠パネルとの間の空間に打設されたコンクリートの側圧に十分に耐えることができ、建造物の壁面とパネルとの平行状態を維持することができるから、壁面にコンクリートを確実に増し打ちすることができ、既設の壁の外側に構造計算された設計どおりの新たな壁を作ることができる。型枠構造物は、それを組み立てる際に複数本のセパレータを設置する必要はなく、セパレータを設置する手間や時間を省くことができるのみならず、型枠大工の経験や勘に頼る必要はなく、短時間に効率よく組み立てることができるとともに、手間を要さずに廉価に組み立てることができる。
傾斜材の上端部が縦架設材の近傍に延びる横架設材に押圧下に密着固定され、縦架設材と傾斜材と水平材とで三角構造が形成されている型枠構造物は、壁面と型枠パネルとの間の空間にコンクリートを打設したときのコンクリートの側圧によるパネルの前後方向前方への膨隆や湾曲、それら縦架設材の前後方向前方への膨隆や湾曲、横方向への撓み、横架設材の前後方向前方への膨隆や湾曲をそれら支持架設材が押さえるから、パネルや縦架設材、横架設材の変形を防ぐことができ、コンクリートの側圧が作用したとしても壁とパネルとの平行状態を維持することができる。型枠構造物は、それら縦架設材とそれら横架設材とそれら支持架設材とを利用することで、壁面と型枠パネルとの間の空間に打設されたコンクリートの側圧に十分に耐えることができ、建造物の壁面とパネルとの平行状態を維持することができるから、壁面にコンクリートを確実に増し打ちすることができ、既設の壁の外側に構造計算された設計どおりの新たな壁を作ることができる。
上下方向へ一連に並ぶ型枠パネルの1つのグループに少なくとも1つの支持架設材が設置されている型枠構造物は、上下方向へ一連に並ぶ型枠パネルのグループ毎に支持架設材が設置されるから、壁面とパネルとの間の空間に打設されたコンクリートの側圧がグループを形成する個々のパネルに作用したとしても、それら支持架設材によってパネルや縦架設材、横架設材の変形を防ぐことができ、コンクリートの側圧が作用したとしても壁とパネルとの平行状態を維持することができる。型枠構造物は、縦架設材と横架設材と支持架設材とを利用することで、壁面とパネルとの間の空間に打設されたコンクリートの側圧に十分に耐えることができ、建造物の壁面とパネルとの平行状態を維持することができるから、壁面にコンクリートを確実に増し打ちすることができ、既設の壁の外側に構造計算された設計どおりの新たな壁を作ることができる。
傾斜材の下端部が構築箇所下部に回転可能に固定され、傾斜材がその下端部を中心に構築箇所下部に対して上下方向へ旋回可能であるとともに構築箇所下部に対する傾斜角度を変更可能な型枠構造物は、傾斜材の構築箇所下部に対する傾斜角度を変更することで、上下方向へ並ぶ横架設材のいずれかのそれに傾斜材の上端部を押圧下に密着させることができるから、上下方向へ並ぶ型枠パネルに作用するコンクリートの側圧を押さえるのに最適な横架設材を支持架設材に支持させることができる。型枠構造物は、傾斜材の上端部を固定する横架設材を選択することで、上下方向へ並ぶパネルのうちのコンクリートの側圧が一番作用するそれに設置された横架設材を支持架設材によって支持することができるから、空間にコンクリートを打設したときのその横架設材の変形を防ぐことができ、その結果として、縦架設材や横架設材、支持架設材によって型枠パネルの変形を防ぐことができ、コンクリートの側圧が作用したとしても壁とパネルとの平行状態を維持することができる。
傾斜材が横架設材と構築箇所下部との間で伸縮可能な伸縮機構を有する型枠構造物は、傾斜材の下端部を構築箇所下部に固定するとともに傾斜材の上端部を横架設材に当接させた後、伸縮機構を利用して傾斜材を伸長させることで、傾斜材を構築箇所下部と横架設材との間で突っ張らせることができ、傾斜材が横架設材をパネルに向かって押圧するから、横架設材を支持架設材によって確実に支持することができるとともに、空間にコンクリートを打設したときのコンクリートの側圧による横架設材の変形を防ぐことができ、コンクリートの側圧が作用したとしても壁とパネルとの平行状態を確実に維持することができる。
少なくとも3つの縦架設材が上下方向へ一連に並ぶ型枠パネルのグループに設置され、2つの縦架設材がパネルの上下方向へ延びる両側部に配置され、1つの縦架設材がパネルの中央部に配置されている型枠構造物は、壁面とパネルとの間の空間に打設されたコンクリートの側圧が個々のパネルの全体に満遍なく作用するが、1枚のパネルの一方の側部に1本の縦架設材が配置され、1枚のパネルの他方の側部に1本の縦架設材が配置されるとともに、1枚のパネルの中央部に1本の縦架設材が配置されるから、コンクリートの側圧によるパネルの前後方向前方への膨隆や湾曲がそれら縦架設材によって十分に押さえられ、空間にコンクリートを打設したときのパネルの変形を確実に防ぐことができる。型枠構造物は、1枚のパネルの両側部と中央部とに縦架設材を設置することで、壁面とパネルとの間の空間に打設されたコンクリートの側圧に十分に耐えることができ、コンクリートの側圧が作用したとしても壁面とパネルとの平行状態を維持することができるから、壁面にコンクリートを確実に増し打ちすることができ、既設の壁の外側に構造計算された設計どおりの新たな壁を作ることができる。
横方向へ一連に並ぶ型枠パネルのグループに少なくとも1つの横架設材が設置されている型枠構造物は、パネルの1つに必ず1つの横架設材が設置され、壁面とパネルとの間の空間にコンクリートを打設したときのコンクリートの側圧によるパネルの前後方向前方への膨隆や湾曲、それら縦架設材の前後方向前方への膨隆や横方向への撓みが横架設材によって押さえられるから、横架設材によってパネルや縦架設材の変形を防ぐことができ、コンクリートの側圧が作用したとしても壁とパネルとの平行状態を維持することができる。
上下方向下方に位置する型枠パネルに対する横架設材の設置本数が上下方向上方に位置するパネルに対する横架設材のそれよりも多い型枠構造物は、壁面とパネルとの間の空間に打設されたコンクリートの側圧が下方に位置するパネルに大きく作用するが、上下方向下方に位置するパネルに対する横架設材の設置本数が多いから、そのパネルの前後方向前方への膨隆や湾曲、縦架設材の前後方向前方への膨隆や横方向への撓みが横架設材によって押さえられ、それら横架設材によってパネルや縦架設材の変形を防ぐことができ、コンクリートの側圧が作用したとしても壁とパネルとの平行状態を確実に維持することができる。
2つの横架設材が型枠パネルの横方向へ延びる上下端部に配置され、1つの横架設材が型枠パネルの中央部に配置されている型枠構造物は、パネルの中央部に位置する横架設材によって縦架設材が押さえられるとともに、パネルの上下端部に位置する横架設材によって縦架設材が押さえられるから、それら横架設材によって縦架設材の変形を防ぐことができるとともに、パネルの変形を防ぐことができ、コンクリートの側圧が作用したとしても壁とパネルとの平行状態を確実に維持することができる。
傾斜材の上端部が上下方向へ一連に並ぶ型枠パネルのグループのうちの一番下に位置するパネルに対して設置された横架設材に固定され、または、傾斜材の上端部が上下方向へ一連に並ぶパネルのグループのうちの下から2番目に位置するパネルに対して設置された横架設材に固定されている型枠構造物は、壁面とパネルとの間の空間に打設されたコンクリートの側圧が下方に位置するパネルに大きく作用するが、一番下に位置する型枠パネルに対して設置された横架設材に傾斜材の上端部を押圧下に密着固定させることで、大きな側圧を受けるパネルに対して設置された横架設材を支持架設材に支持させることができるから、空間にコンクリートを打設したときのその横架設材の変形を防ぐことができ、その結果として、縦架設材や横架設材、支持架設材によって型枠パネルの変形を防ぐことができ、コンクリートの側圧が作用したとしても壁とパネルとの平行状態を維持することができる。型枠構造物は、下から2番目に位置するパネルに対して設置された横架設材に傾斜材の上端部を押圧下に密着固定させることで、大きな側圧を受けるパネルに対して設置された横架設材を支持架設材に支持させることができるから、空間にコンクリートを打設したときのその横架設材の変形を防ぐことができ、その結果として、縦架設材や横架設材、支持架設材によって型枠パネルの変形を防ぐことができ、コンクリートの側圧が作用したとしても壁とパネルとの平行状態を維持することができる。
縦架設材が上下方向へ直状に延びる第1および第2垂直材とそれら垂直材の間に位置して上下方向へジグザグに延びるトラス材とから作られたトラス構造物であり、トラス構造物の上端部が第1固定位置に所定の固定手段を介して強固に固定され、トラス構造物の下端部が第2固定位置に所定の固定手段を介して強固に固定されているとともに、前記水平材の後端部がトラス構造物の第1垂直材に固定されている型枠構造物は、壁面とパネルとの間の空間にコンクリートを打設したときのコンクリートの側圧によるパネルの前後方向前方への膨隆や湾曲をパネルに対向するそれらトラス構造物が押さえるから、空間にコンクリートを打設したときのパネルの変形を確実に防ぐことができる。型枠構造物は、トラス構造物を利用することで、壁面とパネルとの間の空間に打設されたコンクリートの側圧にパネルが十分に耐えることができるから、建造物の壁面にコンクリートを確実に増し打ちすることができ、既設の壁の外側に構造計算された設計どおりの新たな壁を作ることができる。
壁面とパネルとの間の空間にコンクリートを打設する打設口がそれらパネルの少なくとも1つに作られ、空間にコンクリートを打設するときに、空間へのコンクリートの打設状態を確認可能な確認窓がそれらパネルの少なくとも1つに作られた型枠構造物は、パネルに作られた打設口を利用することで、コンクリートを空間に容易に打設することができ、建造物の壁面にコンクリートを容易に増し打ちすることができるのみならず、空間へのコンクリートの打設状態を型枠パネルに作られた確認窓から確認することができるから、空間全域にコンクリートを確実に打設することができ、建造物の壁面にコンクリートを確実に増し打ちすることができる。
型枠パネルが壁面に対向する所定面積の対向面および縦架設材に当接する所定面積の当接面と上下面および両側面とを有する6面体であり、パネルのコンクリートに対する摩擦抵抗を低下させるとともにパネル全体の強度を増加させる合成樹脂がパネルの6面に塗布されている型枠構造物は、合成樹脂を塗布することによってパネルの6面を平滑にすることができ、それによって6面のコンクリートに対する摩擦抵抗が低下するから、打設されたコンクリートを養生した後、型枠構造物を解体するときに、硬化したコンクリートからパネルを容易に取り外すことができる。型枠構造物は、パネルの6面の平滑度が合成樹脂によって維持されるから、使用済みのパネルを繰り返して使用することができ、型枠構造物にかかるコストを押さえることができる。型枠構造物は、パネルの強度が合成樹脂によって増加し、使用中におけるパネルの座屈や破損、曲がり等の変形が防止されるから、パネルによって壁面とパネルとの間の空間にコンクリートを十分に滞留させることができ、建造物の壁面にコンクリートを確実に増し打ちすることができる。
合成樹脂がイソシアネートと特殊アミンとからなるポリウレア樹脂であり、硬化したポリウレア樹脂による所定厚みの平滑な被膜層が型枠パネルの6面に形成されている型枠構造物は、硬化したポリウレア樹脂によってパネルの6面に所定厚みの平滑な被膜層が形成され、それによって6面のコンクリートに対する摩擦抵抗が低下するから、打設されたコンクリートを養生した後、型枠構造物を解体するときに、硬化したコンクリートからパネルを容易に取り外すことができる。型枠構造物は、パネルの6面の平滑度がポリウレア樹脂の被膜層によって維持されるから、使用済みのパネルを繰り返して使用することができ、型枠構造物にかかるコストを押さえることができる。型枠構造物は、パネルの強度がポリウレア樹脂の被膜層によって増加し、使用中におけるパネルの座屈や破損、曲がり等の変形が防止されるから、パネルによって壁面とパネルとの間の空間にコンクリートを十分に滞留させることができ、建造物の壁面にコンクリートを確実に増し打ちすることができる。
建造物が既設のそれであり、既設の建造物の壁面に作られる鉄筋コンクリート製の耐震補強壁の構築に利用される型枠構造物は、それを使用することで、既設の建造物の壁に構造計算された設計どおりの新たな鉄筋コンクリート製の耐震補強壁を新設することができる。型枠構造物は、それを組み立てる際に複数本のセパレータを設置する必要はなく、セパレータを設置する手間や時間を省くことができるのみならず、型枠大工の経験や勘に頼る必要はなく、短時間に効率よく鉄筋コンクリート製の耐震補強壁を作ることができるとともに、鉄筋コンクリート製の耐震補強壁を手間を要さず廉価に作ることができる。
組み立てられた型枠構造物の一例を示す正面図。 組み立てられた型枠構造物の側面図。 一例として示す型枠パネルの斜視図。 図3の4−4線端面図。 支持架設材の拡大斜視図。 図1の型枠構造物を利用した耐震補強壁の施工手順の一例を示す図。 図6の側面図。 図6から続く耐震補強壁の施工手順を示す図。 図8の側面図。 図8から続く耐震補強壁の施工手順を示す正面図。 図10の側面図。 図10から続く耐震補強壁の施工手順を示す図。 図12から続く耐震補強壁の施工手順を示す背面図。 図13の側面図。 コンクリートの打設を説明する図2と同様の側面図。 組み立てられた型枠構造物の他の一例を示す正面図。 組み立てられた図16の型枠構造物の側面図。 図16の型枠構造物を利用した耐震補強壁の施工手順の一例を示す図。
組み立てられた型枠構造物10Aの一例を示す正面図である図1等の添付の図面を参照し、本発明にかかる型枠構造物の詳細を説明すると、以下のとおりである。なお、図2は、組み立てられた型枠構造物10Aの側面図であり、図3は、一例として示す型枠パネル16a〜16iの斜視図である。図4は、図3の4−4線端面図であり、図5は、支持架設材19a〜19cの拡大斜視図である。図1,2では、上下方向を矢印Aで示し、横方向の矢印B(図1のみ)で示すとともに、前後方向を矢印C(図2のみ)で示す。図2では、コンクリート12に埋設された鉄筋(埋込アンカー、縦筋、横筋、柱筋、フープ筋、あばら筋、斜め補強筋等)の図示を省略している。
型枠構造物10Aは、既設の建物(建造物)の壁面11の前後方向前方へ所定寸法離間した位置に組み立てられ、壁面11の外側にコンクリート12を増し打ちして新設の鉄筋コンクリート製の耐震補強壁13を作るために使用される。耐震補強壁13を作る箇所に複数本の鉄筋(図示せず)を配筋するとともに型枠構造物10Aを組み立て、壁面11と型枠構造物10A(型枠パネル16a〜16i)との間の空間14(壁面11の外側)にコンクリート12を打設する。打設したコンクリート12を所定期間養生した後、組み立てた型枠構造物10Aを解体(分解)することで、鉄筋コンクリート製の耐震補強壁13が作られる。
なお、図1,2では、建物の柱15の間に施設された既設壁の壁面11に耐震補強壁13を構築する場合を図示しているが、柱15の間のみならず、型枠構造物10A(後記する型枠構造物10Bを含む)を利用することで、壁梁の間の壁や床スラブの間の壁等のあらゆる既設壁の壁面に耐震補強壁を構築することができる。また、既設壁には、外壁や耐力壁、間仕切り壁、垂れ壁、袖壁、腰壁等のあらゆる壁が含まれる。型枠構造物10Aは、複数の型枠パネル16a〜16iと、複数のトラス構造物17a〜17i(縦架設材)と、複数の横架設材18a〜18cと、複数の支持架設材19a〜19cとから形成されている。
それら型枠パネル16a〜16iは、所定の厚み寸法を有する平面形状が四角形の板状に成型されている。パネル16a〜16iは、壁面11に対向する所定面積の対向面20と、対向面20の反対側に位置してトラス構造物17a〜17i(第1垂直材)に当接する所定面積の当接面21と、上下面22,23および両側面24,25とを有する6面体である。なお、それらパネル16a〜16iの上下方向の寸法や横方向の寸法、厚み寸法に特に限定はなく、構築する耐震補強壁13の横方向の寸法や厚み寸法等を考慮した構造計算によってパネル16a〜16iの各寸法が決定される。また、それら寸法の異なる各種複数のパネル16a〜16iを用意し、型枠構造物10Aを組み立てる際にそれらを適宜組み合わせて使用することもできる。
型枠パネル16a〜16iは、寸法が規定されたそれらがその製造工場において製造され、耐震補強壁13の構築現場に搬送された後、そのまま使用される場合の他、構築現場においてそれを所望の寸法に切断し、構築する耐震補強壁13の上下方向の寸法や横方向の寸法にあわせて使用することもできる。型枠構造物10Aは、耐震補強壁13の構築現場において、パネル16a〜16iを所望の寸法に加工(切断)し、パネル16a〜16iの上下方向の寸法や横方向の寸法を自由に変えることができるから、鋼材型枠等のあらかじめ寸法が決まった型枠部材と比較し、構築する耐震補強壁13の上下方向の寸法や横方向の寸法にあわせた型枠構造物10Aを容易に組み立てることができ、それぞれ上下方向の寸法や横方向の寸法が異なる既設の建物(建造物)の耐震改修において、構造計算どおりの耐震補強壁13を構築することができる。
型枠パネル16a〜16iは、ポリスチレンフォーム、硬質ウレタンフォーム、発泡ポリエチレン、フェノールフォーム等から作られている。パネル16a〜16iには、図3,4に示すように、その6面20〜25にイソシアネートと特殊アミンとからなるポリウレア樹脂26(合成樹脂)が塗布(スプレー塗布)されている。パネル16a〜16iの6面20〜25には、硬化したポリウレア樹脂26による所定厚みの平滑な被膜層が形成されている。パネル16a〜16iの6面20〜25に塗布されたポリウレア樹脂26によって6面20〜25の凹凸が修正され、6面20〜25が平滑に加工されている。
型枠パネル16a〜16iは、硬化したポリウレア樹脂26によって形成された被膜層により、6面20〜25における摩擦抵抗が大幅に低下し、養生後のコンクリート12が6面20〜25に付着することなく、コンクリート12に対する離型が容易である。さらに、硬化したポリウレア樹脂26によって形成された被膜層により、パネル16a〜16iの強度が大幅に増加し、パネル16a〜16iを上下方向へ重ねたときのその座屈や破損が防止されるのみならず、パネル16a〜16iの曲がり変形が防止される。
なお、型枠パネル16a〜16iにポリウレア樹脂26が塗布されていなくてもよい。また、パネル16a〜16iが強化プラスチックや透明な合成樹脂の板、木材(ベニヤ板)から作られていてもよい。この場合においても、パネル16a〜16iの6面20〜25にポリウレア樹脂26が塗布されることが好ましい。また、パネル16a〜16iには、ポリウレア樹脂26ではなく、その6面20〜25を平滑にすることが可能であれば、他の熱可塑性合成樹脂(ポリウレタンやポリスチレン、強化プラスチック用塗料等)や熱硬化性合成樹脂を塗布することもできる。
型枠パネル16a〜16iは、建物内部の耐震補強壁13の構築箇所の天井梁27の底面(構築箇所上部)(なお、床スラブに設置する場合は、天井の床スラブの底面)の正確に位置決め(墨出し)された第1固定位置28(第1墨出し位置)と構築箇所の床梁29の頂面(構築箇所下部)(なお、床スラブに設置する場合は、床の床スラブの頂面)の正確に位置決め(墨出し)された第2固定位置30(第2墨出し位置)との間に設置されている。
第1固定位置28と第2固定位置30との間には、第1固定位置28から第2固定位置30に向かって最上に位置するパネル16c,16f,16i→中間に位置するパネル16b,16e,16h→最下に位置するパネル16a,16d,16gの順にそれらパネル16a〜16iが上下方向へ並んでいる。さらに、上下方向へ並ぶ3枚のパネル16a〜16c,16d〜16f,16g〜16iを1つのグループとしたときに、その3つのグループが横方向へ並んでいる。なお、上下方向へ並ぶパネル16a〜16iの枚数や横方向へ並ぶパネル16a〜16iのグループ数に特に限定なく、構築する耐震補強壁13の各寸法に合わせて枚数やグループ数を適宜決定する。パネル16c,16f,16iは、その上端部の厚み寸法が残余の部位のそれよりも小さく、パネル16a,16d,16gは、その下端部の厚み寸法が残余の部位のそれよりも小さい。
型枠パネル16a〜16iのうち、パネル16c,16f,16iの上面22が天井梁27の底面(または、天井の床スラブの底面)に当接(密着)し、側面24,25が柱15に当接(密着)するとともに、横方向へ隣接するパネル16c,16f,16iの側面24,25どうしが当接(密着)し、下面23がパネル16b,16e,16hの上面22に当接(密着)している。パネル16b,16e,16hの側面24,25が柱14に当接(密着)し、横方向へ隣接するパネル16b,16e,16hの側面24,25どうしが当接(密着)するとともに、下面23がパネル16a,16d,16gの上面22に当接(密着)している。パネル16a,16d,16gの側面24,25が柱14に当接(密着)し、横方向へ隣接するパネル16a,16d,16gの側面24,25どうしが当接(密着)するとともに、下面23が床梁29の頂面(または、床の床スラブの頂面)に当接(密着)している。
型枠パネル16a〜16iの当接面21には、前後方向前方へ突出して横方向へ並ぶ把持可能な2つの取っ手31が取り付けられている。それら取っ手31は、コ字状の金属棒であり、その両端部がパネル16a〜16iを貫通するとともに、パネル16a〜16iの対向面20に配置された固定板に固定されている。それら取っ手31は、型枠構造物10Aの設置作業者が把持可能である。取っ手31には、連結紐32(連結部材)が結び付けられている。なお、連結部材には、紐32の他に、伸縮性を有するゴムバンド、プラスチックバンド、金属線バンド等を使用することもできる。
型枠パネル16fには、壁面11とパネル16a〜16i(型枠構造物10A)との間の空間14にコンクリート12を打設する(流入させる)ための打設口33が作られている。打設口33では、パネル16fが四角形にくり抜かれ、そこに金属製の口筒を有する四角形の鉄板が固定されている。なお、2枚以上のパネル16a〜16iに打設口33が作られていてもよい。パネル16a,16g,16iには、空間14にコンクリート12を打設するときに、空間14へのコンクリート12の打設状態を確認可能な四角形の確認窓34が作られている。確認窓34では、パネル16a,16g,16iが四角形にくり抜かれ、そこに透明な四角形の合成樹脂板が嵌め込まれている。
トラス構造物17a〜17i(縦架設材)は、それら型枠パネル16a〜16iの前後方向前方に位置して上下方向へ直状に延びている。それらトラス構造物17a〜17iは、横方向へ所定寸法離間して並んでいる。上下方向へ並ぶ1グループ組のパネル16a〜16c,16d〜16f,16g〜16iには、3つのトラス構造物17a〜17c,17d〜17f,17g〜17iが設置されている。1つのトラス構造物17a,17d,17gが1グループのパネル16a〜16c,16d〜16f,16g〜16iの一方の側縁部に配置され、1つのトラス構造物17c,17f,17iが1グループのパネル16a〜16c,16d〜16f,16g〜16iの他方の側縁部に配置されているとともに、1つのトラス構造物17b,17e,17hが1グループのパネル16a〜16c,16d〜16f,16g〜16iの中央部に配置されている。
なお、上下方向へ並ぶ1グループの型枠パネル16a〜16c,16d〜16f,16g〜16iに対するトラス構造物の個数について特に限定はなく、構築する耐震補強壁13の横方向の寸法や厚み寸法等を考慮した構造計算により、1グループのパネル16a〜16c,16d〜16f,16g〜16iに対して設置するトラス構造物の個数が決定される。また、トラス構造物17a〜17c,17d〜17f,17g〜17iの他に、縦架設材として、鉄やアルミ、真鍮、合金等の金属から作られた断面形状が四角形の金属柱や他の形状の金属柱を使用することもできるとともに、H型鋼や角型鋼管(コラム)、I型鋼、C型鋼、溝型鋼等の鋼材を使用することもできる。
トラス構造物17a〜17iは、型枠パネル16a〜16iの当接面21に対向して上下方向へ直状に延びる第1垂直材35と、第1垂直材35から前後方向前方へ所定寸法離間して上下方向へ直状に延びる第2垂直材36と、第1垂直材35と第2垂直材36との間に位置して上下方向へジグザグに延びるトラス材37と、トラス構造物17a〜17iの高さ寸法を調節可能な寸法調節材38とから作られている。トラス構造物17a〜17iでは、第1垂直材35とトラス材37とがボルトおよびナットによって強固に連結され、第2垂直材36とトラス材37とがボルトおよびナットによって強固に連結されている。なお、第1および第2垂直材35,36とトラス材37とが溶接によって固定されていてもよい。また、構築箇所の上下寸法とトラス構造物17a〜17iの高さ寸法とが一致すれば、寸法調節材38の必要はない。この場合、トラス構造物17a〜17iが第1垂直材35、第2垂直材36、トラス材37から作られる。
寸法調節材38は、天井梁27の底面(または、天井の床スラブの底面)に固定される固定端部39と、第1垂直材35の側に位置して垂直材35に対する上下方向の固定位置を調節可能な開口部40とを有する。なお、第1垂直材35の上端部の寸法調節材38の開口部40に対する固定位置(固定ボルトおよびナットによって第1垂直材35の上端部を寸法調節材38の開口部40に固定)を調節することにより、開口部40の長さ寸法の限度でトラス構造物17a〜17iの上下方向の高さ寸法を調節することができる。寸法調節材38によってトラス構造物17a〜17iの上下方向の寸法を調節することで、トラス構造物17a〜17iの上下方向の寸法を建物の壁面11の高さ寸法(耐震補強壁13の構築箇所の高さ寸法)に一致させることができる。
トラス構造物17a〜17iでは、その上端部41(寸法調節材38の固定端部39)が所定の固定手段を介して天井梁27の底面(または、天井の床スラブの底面)の位置決めされた第1固定位置28(第1墨出し箇所)に固定されている。また、その下端部42(第1垂直材35の下端部)が所定の固定手段を介して床梁29の頂面(または、床の床スラブの頂面)の位置決めされた第2固定位置30(第2墨出し箇所)に固定されている。なお、天井梁27の底面の第1固定位置28と床梁29の頂面の第2固定位置30とが略正確に一致している。固定手段の具体例としては、アングル43a,43b(アングル材)、アンカーボルト44、アジャスターボルト45を使用し、トラス構造物17a〜17iを天井梁27の底面や床梁29の頂面に固定する。
天井梁27の底面(または、天井の床スラブの底面)の位置決めされた第1固定位置29(16a〜16iの当接面21の直前)に横方向へ並ぶ複数のアンカーホールが穿孔され、それらアンカーホールに樹脂アンカーや機械式アンカーが設置され、アングル43aに形成されたボルト孔にアンカーボルト44を挿通するとともにそのアンカーボルト44をアンカーホール(アンカー)に螺着することで、アングル43aが第1固定位置28に強固に固定される。床梁29の頂面(または、床の床スラブの頂面)の位置決めされた第2固定位置30(16a〜16iの当接面21の直前)に横方向へ並ぶ複数のアンカーホールが穿孔され、それらアンカーホールに樹脂アンカーや機械式アンカーが設置され、アングル43bに形成されたボルト孔にアンカーボルト44を挿通するとともにそのアンカーボルト44をアンカーホール(アンカー)に螺着することで、アングル43bが第2固定位置30に強固に固定される。
次に、アングル43aに穿孔されたボルト螺着孔(図示せず)と寸法調節材38の固定端部39に穿孔されたボルト螺着孔とにアジャスターボルト45を螺着し、そのボルト45にナットを螺着することで、固定端部39がアングル43aに強固に固定される。さらに、アングル43bに穿孔されたボルト螺着孔(図示せず)と第1垂直材35の下端部42に穿孔されたボルト螺着孔とにアジャスターボルト45を螺着し、そのボルト45にナットを螺着することで、第1垂直材35の下端部42がアングル43bに強固に固定される。
トラス構造物17a〜17iの上下方向の高さ寸法を調節しつつ、アングル43aに寸法調節材38の固定端部39を固定するとともに、アングル43bに第1垂直材35の下端部42を固定すると、第1垂直材35がパネル16a〜16iの当接面21に当接(密着)する。したがって、それらトラス構造物17a〜17iにより、空間14にコンクリート12を打設したときのコンクリート12の側圧によるそれらパネル16a〜16iの前後方向前方への膨隆や湾曲が押さえられ、パネル16a〜16iの前後方向前方への変形や積み重ねたパネル16a〜16iの崩落が防止される。
なお、型枠パネル16c,16f,16iの上端部の厚み寸法が残余の部位のそれよりも小さく、それによってアングル43aの厚みが上端部に吸収され、アングル43aが邪魔することなく、第1垂直材35がパネル16a〜16iの当接面21に確実に当接(密着)する。また、パネル16a,16d,16gの下端部の厚み寸法が残余の部位のそれよりも小さく、それによってアングル43bの厚みが下端部に吸収され、アングル43bが邪魔することなく、第1垂直材35がパネル16a〜16iの当接面21に確実に当接(密着)する。
トラス構造物17a〜17iの第2垂直材36には、取っ手31から延びる連結紐32(連結部材)が強く結び付けられている。型枠構造物10Aでは、それらパネル16a〜16iの取っ手31とトラス構造物17a〜17iとが連結紐32を介して連結され、それらパネル16a〜16iの壁面11の側への倒れ込みが防止される。なお、連結部材として連結ゴムバンドを使用する場合、そのゴムバンドを取っ手31から伸長させた状態でトラス構造物17a〜17iに引っ掛ける。
横架設材18a〜18cは、トラス構造物17a〜17iの前後方向前方(トラス構造物17a〜17iの第2垂直材36の直前)に位置しつつ、トラス構造物17a〜17iに固定されて横方向へ直状に延びている。それら横架設材18a〜18cは、上下方向へ所定寸法離間して並んでいる。それら横架設材18a〜18cは、図1,2に示すように、鉄やアルミ、真鍮、合金等の金属から作られた断面形状が円形の中空の金属パイプであるが、鉄やアルミ、真鍮、合金等の金属から作られた断面形状が四角形の中空の金属管を使用することもできるとともに、H型鋼やI型鋼、角型鋼材等の鋼材を使用することもできる。横架設材18a〜18cは、固定金具46を介してトラス構造物17a,17b,17e,17h,17iの第2垂直材36に強固に固定されている。なお、固定金具46を介して横架設材18a〜18cが全てのトラス構造物17a〜17iに強固に固定されていてもよい。
それら横架設材18a〜18cは、全てのトラス構造物17a〜17iの第2垂直材36に当接(密着)している。横架設材18aは、横方向へ並ぶパネル16a,16d,16gの前方に配置され、横架設材18bは、横方向へ並ぶパネル16b,16e,16hの前方に配置されている。さらに、横架設材18cは、横方向へ並ぶパネル16c,16f,16iの前方に配置されている。なお、型枠構造物10Aに3つの横架設材18a〜18cが設置されているが、型枠構造物10Aを形成する横架設材18a〜18cの本数に特に限定はなく、構築する耐震補強壁13の横方向の寸法や厚み寸法等を考慮した構造計算によって使用する横架設材の本数が決定される。
それら横架設材18a〜18cにより、空間14にコンクリート12を打設したときのコンクリート12の側圧によるそれらトラス構造物17a〜17iの前後方向前方への膨隆や湾曲が押さえられ、トラス構造物17a〜17iの前後方向前方への変形や横方向への撓みが防止される。その結果、コンクリート12の側圧によるそれら型枠パネル16a〜16iの前後方向後方への膨隆や湾曲が押さえられ、パネル16a〜16iの前後方向後方への変形や積み重ねたパネル16a〜16iの崩落が防止される。
支持架設材19a〜19cは、横架設材18a〜18cの前後方向前方(横架設材18a〜18cの直前)に設置されて横方向へ所定寸法離間して並んでいる。型枠構造物10Aでは、上下方向へ一連に並ぶ型枠パネル16a〜16c,16d〜16f,16g〜16iの1つのグループに1つの支持架設材19a〜19cが設置されている。なお、1つのグループに設置する支持架設材19a〜19cの個数に特に限定はなく、構築する耐震補強壁13の横方向の寸法や厚み寸法等を考慮した構造計算によってグループに設置する支持架設材に個数が決定される。
支持架設材19a〜19cは、横架設材18bから床梁29の頂面(または、床の床スラブの頂面)に向かって下り勾配に延びる傾斜材47と、パネル16a,16d,16gから前後方向前方へ延びる水平材48とから形成されている。傾斜材47や水平材48は、鉄やアルミ、真鍮、合金等の金属から作られた断面形状が円形の中空の金属パイプであるが、鉄やアルミ、真鍮、合金等の金属から作られた断面形状が四角形の中空の金属管を使用することもできるとともに、H型鋼やI型鋼、角型鋼材等の鋼材を使用することもできる。
傾斜材47は、トラス構造物17b,17e,17hの近傍に延びる横架設材18bに押圧下に密着固定された上端部49と、パネル16a,16d,16gから前方へ離間して床梁29の頂面(または、床の床スラブの頂面)に固定された下端部51と、上下端部49,51の間に延びる中間部50とを有する。傾斜材47の上端部49は、上下方向へ一連に並ぶパネル16a〜16c,16d〜16f,16g〜16iのグループのうちの下から2番目に位置するパネル16b,16e,16hに対して設置された横架設材18bに押圧下に密着している。傾斜材47の上端部49には、横架設材18bと床梁29の頂面(または、床の床スラブの頂面)との間で伸縮可能な伸縮機構52が作られている。なお、傾斜材47の上端部49が上下方向へ一連に並ぶパネル16a〜16c,16d〜16f,16g〜16iのグループのうちの一番下に位置するパネル16a,16d,16gに対して設置された横架設材18aに押圧下に密着していてもよい。
伸縮機構52は、傾斜材47の上端部49(金属パイプの上端部内側)に作られた雌螺子(図示せず)と、上端部49と横架設材18bとの間に配置されて前後方向へ延びる雄螺子部材53とから形成されている。雄螺子部材53の露出部分には、横架設材18b(固定金具46)に密着する密着板60が連接されている。伸縮機構52では、雄螺子部材53が上端部49の雌螺子に螺着されている。伸縮機構52では、雄螺子部材53を時計回り方向へ回転させることで、雄螺子部材53が傾斜材47(金属パイプ)の内部に次第に進入し、雄螺子部材53を含む傾斜材47の長さが縮まり、逆に、雄螺子部材53を反時計回り方向へ回転させることで、雄螺子部材53が傾斜材47(金属パイプ)の内部から次第に露出し、雄螺子部材53を含む傾斜材47の長さが伸びる。傾斜材47は、伸縮機構52を利用してその長さを伸長させることで、横架設材18bと床梁29の頂面(または、床の床スラブの頂面)との間で突っ張る突っ張りとして機能し、横架設材18bをパネル16b,16e,16hに向かって押圧する。
傾斜材47の下端部51は、床梁29の頂面(または、床の床スラブの頂面)に回転可能に固定されている。下端部51は、図2に示すように、床梁29の頂面に固定された固定座金54の軸受け55に軸56を介して回転可能に取り付けられている。固定座金54は、床梁29の頂面に作られたアンカーホール(樹脂アンカーや機械式アンカー)に螺着されたアンカーボルトによって床梁29の頂面に強固に固定されている。傾斜材47は、その下端部51が床梁29の頂面に回転可能に固定されているから、下端部51を中心に床梁29の頂面に対して上下方向へ旋回可能であるとともに、床梁29の頂面に対する傾斜角度を変更可能である。
水平材48は、床梁29の頂面(または、床の床スラブの頂面)から上方へわずかに離間している。水平材48は、パネル16a,16d,16gから前方へ離間して傾斜材47の下端部51に固定された前端部57と、パネル16a,16d,16gの側に位置してトラス構造物17b,17e,17h(縦架設材)に固定された後端部59と、前後端部57,59の間に延びる中間部58とを有する。水平材48の前端部57は、固定金具60を介して傾斜材47の下端部51に強固に固定されている。水平材48の後端部59は、固定金具61を介してトラス構造物17b,17e,17hの第1垂直材35に強固に固定されている。型枠構造物10Aでは、トラス構造物17b,17e,17hの第1垂直材35と傾斜材47と水平材48とで三角構造(トラス構造)が形成されている。
図6は、図1の型枠構造物10Aを利用した耐震補強壁13の施工手順の一例を示す図であり、図7は、図6の側面図である。図8は、図6から続く耐震補強壁13の施工手順を示す図であり、図9は、図8の側面図である。図10は、図8から続く耐震補強壁13の施工手順を示す図であり、図11は、図10の側面図である。なお、図6,7は、アングル材設置工程が終了した状態を示し、図8,9は、トラス構造物第1設置工程が終了した状態を示すとともに、図10,11は、パネル設置工程が終了した状態を示す。図6,7では、配筋工程の図示を省略し、図6〜9や図11では、配筋工程によって配筋された鉄筋(埋込アンカー、縦筋、横筋、柱筋、フープ筋、あばら筋、斜め補強筋等)の図示を省略している。
鉄筋コンクリート製の耐震補強壁13は、位置決め工程、配筋工程、アングル材設置工程、トラス構造物第1設置工程(縦架設材第1設置工程)、パネル設置工程、トラス構造物第2設置工程(縦架設材第2設置工程)、横架設材設置工程、支持架設材設置工程の各工程を実施することで型枠構造物10Aを組み立てた後、コンクリート打設工程、型枠解体工程の各工程を実施することによって作られる。最初に位置決め工程を行う。
位置決め工程では、建物内部の耐震補強壁13の構築箇所の天井梁27の底面(または、天井の床スラブの底面)(構築箇所上部)に型枠パネル16c,16f,16iのパネル第1固定位置(第1固定位置28)を正確に位置決め(墨出し)するとともに、天井梁27の底面にトラス構造物17a〜17i(アングル43a)のトラス第1固定位置(第1固定位置28)を正確に位置決め(墨出し)する。さらに、床梁29の頂面(または、床の床スラブの頂面)(構築箇所下部)にパネル16a,16d,16gのパネル第2固定位置(第2固定位置30)を正確に位置決め(墨出し)するとともに、床梁29の頂面にトラス構造物17a〜17i(アングル43b)のトラス第2固定位置(第2固定位置30)を正確に位置決め(墨出し)する。
天井梁27の底面における型枠パネル16c,16f,16iのパネル第1固定位置は壁面11から前後方向前方へ離間した箇所であり、そのパネル第1固定位置に横方向へ延びる第1ライン(墨出し線)(図示せず)を引く。天井梁27の底面におけるトラス構造物17a〜17iのトラス第1固定位置は壁面11から前後方向前方へ離間した箇所(パネル第1固定位置から前後方向前方へわずかに離間した箇所)であり、そのトラス第1固定位置に横方向へ延びる第2ライン(墨出し線)(図示せず)を引く。
床梁29の頂面における型枠パネル16a,16d,16gのパネル第2固定位置は壁面11から前後方向前方へ離間した箇所であり、そのパネル第2固定位置に横方向へ延びる第3ライン(墨出し線)(図示せず)を引く。床梁29の頂面におけるトラス構造物17a〜17iのトラス第2固定位置は壁面11から前後方向前方へ離間した箇所(パネル第2固定位置から前後方向前方へわずかに離間した箇所)であり、そのトラス第2固定位置に横方向へ延びる第4ライン(墨出し線)(図示せず)を引く。
パネル第1固定位置の壁面11から前後方向前方への離間寸法およびパネル第2固定位置の壁面11から前後方向前方への離間寸法は同一であり、トラス第1固定位置の壁面11から前後方向前方への離間寸法およびトラス第2固定位置の壁面11から前後方向前方への離間寸法は同一である。なお、位置決め工程において、パネル16c,16f,16iやパネル16a,16d,16gの固定位置を位置決めすることなく、トラス第1固定位置およびトラス第2固定位置のみを位置決めし、それら固定位置のみにラインを引いてもよい。
天井梁27の底面に第1および第2ラインを引くとともに、床梁29の頂面に第3および第4ラインを引いた後(位置決め工程が終了した後)、図示はしていないが、それらラインの間に鉄筋(埋込アンカー、縦筋、横筋、柱筋、フープ筋、あばら筋、斜め補強筋等)を配筋する配筋工程を行う。なお、配筋工程では、既存の手順で鉄筋を第1ラインと第3ラインと間に据え付ける。ラインの間に鉄筋を配筋した後(配筋工程が終了した後)、アングル材設置工程を行う。なお、アングル材設置工程の後に鉄筋を配筋してもよい。天井梁27の底面の位置決めされたトラス第1固定位置にアングル43a(アングル材)を取り付けるとともに、床梁29の頂面の位置決めされたトラス第2固定位置にアングル43b(アングル材)を取り付ける。
アングル材設置工程では、天井梁27の底面(または、天井の床スラブの底面)の位置決めされたトラス第1固定位置(第1固定位置28)に横方向へ並ぶ複数のアンカーホールを穿孔し、それらアンカーホールに樹脂アンカーや機械式アンカーを設置する。次に、トラス構造物17a〜17iの上端部(寸法調節材38の固定端部39)が第2ライン上に正確に位置するように、アングル43aを第2ラインに配置し、アングル43aに形成されたボルト孔にアンカーボルト44を挿通するとともにそのアンカーボルト44をアンカーホール(アンカー)に螺着してアングル43aを天井梁27の底面におけるトラス第1固定位置に強固に固定する。
また、床梁29の頂面(または、床の床スラブの頂面)の位置決めされたトラス第2固定位置(第2固定位置30)に横方向へ並ぶ複数のアンカーホールを穿孔し、それらアンカーホールに樹脂アンカーや機械式アンカーを設置する。次に、トラス構造物17a〜17iの下端部42が第4ライン上に正確に位置するように、アングル43bを第4ラインに配置し、アングル43bに形成されたボルト孔にアンカーボルト44を挿通するとともにそのアンカーボルト44をアンカーホール(アンカー)に螺着してアングル43bを床梁29の頂面におけるトラス第2固定位置に強固に固定する。
天井梁27の底面にアングル43aを取り付けるとともに、床梁29の頂面にアングル43bを取り付けた後(アングル材設置工程が終了した後)、トラス構造物第1設置工程(縦架設材第1設置工程)を行う。トラス構造物第1設置工程では、パネル設置工程において上下方向に重ねるパネル16a〜16c,16d〜16f,16g〜16iの1グループに対応する位置に1つのトラス構造物17a,17d,17g(縦架設材)を取り付け、柱15の間に合計3つのトラス構造物17a,17d,17gを取り付ける。
トラス構造物第1設置工程では、アングル43bに穿孔されたボルト螺着孔とトラス構造物17a,17d,17gの第1垂直材35の下端部42に穿孔されたボルト螺着孔とにアジャスターボルト45を螺着し、そのボルト45にナットを螺着して第1垂直材35の下端部42をアングル43bに強固に固定する。トラス構造物17a,17d,17gの上下方向の高さ寸法を調節するために、第1垂直材35の上端部の寸法調節材38の開口部40に対する固定位置を決める。固定位置を決めた後、その固定位置において第1垂直材35の上端部を寸法調節材38の開口部40に強固に固定する。第1垂直材35の上端部と寸法調節材38とは固定ボルトおよびナットを介して固定される。さらに、アングル43aに穿孔されたボルト螺着孔と寸法調節材38の固定端部39に穿孔されたボルト螺着孔とにアジャスターボルト45を螺着し、そのボルトにナットを螺着して寸法調節材38の固定端部39(トラス構造物17a,17d,17gの上端部41)をアングル43bに強固に固定する。
トラス構造物17a,17d,17gの上下方向の高さ寸法を調節しつつ、アングル43bに下端部42を固定するとともに、アングル43aに寸法調節材38の固定端部39(上端部41)を固定すると、図8に示すように、天井梁27の底面(第1固定位置28)と床梁29の頂面(第2固定位置30)との間において上下方向へ延びる3個のトラス構造物17a,17d,17gが横方向へ所定寸法離間して設置される。
それらトラス構造物17a,17d,17gをトラス第1固定位置とトラス第2固定位置との間に取り付けた後(トラス構造物第1設置工程が終了した後)、パネル設置工程を行う。パネル設置工程では、図10に示すように、トラス構造物17aに対して3つのパネル16a〜16cをパネル16a→パネル16b→パネル16cの順に設置し、トラス構造物17dに対して3つのパネル16d〜16fをパネル16d→パネル16e→パネル16fの順に設置するとともに、トラス構造物17gに対して3つのパネル16g〜16iをパネル16g→パネル16h→パネル16iの順に設置する。なお、パネル16fには、空間14にコンクリート12を打設するための打設口33が作られている。また、パネル16a,16g,16iには、空間14へのコンクリート12の打設状態を確認する確認窓34が作られている。
パネル設置工程では、パネル16a〜16iの対向面20を壁面11に対向させた状態で、パネル16a,16d,16gの下面23が第3ライン(パネル第2固定位置)に位置するとともに、パネル16c,16f,16iの上面22が第1ライン(パネル第1固定位置)に位置するように、トラス構造物17a,17d,17gと壁面11との間にそれらパネル16a〜16iを設置する。パネル16a〜16iを設置すると、アングル43aの天井梁27の底面から下方に延びる部分がパネル16c,16f,16iの上端部に当接するとともに、アングル43bの床梁29の頂面から上方に延びる部分がパネル16a,16d,16gの下端部に当接し、パネル16a,16d,16g,16c,16f,16iの残余の部位における当接面21とパネル16b,26e,16hの当接面21とがアングル43aの天井梁29から下方に延びる部分やアングル43bの床梁29から上方に延びる部分よりもわずか前方に位置し、パネル16a〜16iの当接面21がトラス構造物17a,17d,17gの第1垂直材35に当接する。
次に、パネル16a〜16iに取り付けられた取っ手31に連結紐32(連結部材)を結び付けるとともに、その連結紐32をトラス構造物17a,17d,17gの第2垂直材36に結び付ける。取っ手31とトラス構造物17a,17d,17gとを連結紐32で連結することで、パネル16a〜16iとトラス構造物17a,17d,17gとが連結され、それらパネル16a〜16iがトラス構造物17a,17d,17gに支持され、パネル16a〜16iの壁面11の側への倒れ込みが防止される。
トラス構造物17a,17d,17gと壁面11との間にパネル16a〜16iを設置すると、最下に位置するパネル16a,16d,16gの下面23が床梁29の頂面の第3ラインに位置し、パネル16a,16d,16gの上面22が中間に位置するパネル16b,16e,16hの下面23に当接(密着)し、パネル16a,16d,16gとパネル16b,16e,16hとが上下方向へ重なり合う。中間に位置するパネル16b,16e,16hの上面22が最上に位置するパネル16c,16f,16iの下面23に当接(密着)し、パネル16b,16e,16hとパネル16c,16f,16iとが上下方向へ重なり合い、パネル16c,16f,16iの上面22が天井梁27の底面の第1ラインに位置する。横方向へ隣接するパネル16a〜16iでは、パネル16a〜16iの側面24,25どうしが当接(密着)する。トラス構造物17aに支持されたパネル16a〜16cは、側面24が柱15に当接(密着)し、トラス構造物17gに支持されたパネル16g〜16iは、側面25が柱15に当接(密着)する。
図12は、図10から続く耐震補強壁13の施工手順を示す図であり、図13は、図12から続く耐震補強壁13の施工手順を示す図である。図14は、図13の側面図であり、図15は、コンクリート12の打設を説明する図2と同様の側面図である。図12は、トラス構造物第2設置工程が終了した状態を示し、図13は、横架設材設置工程が終了した状態を示す。図14,15では、鉄筋(埋込アンカー、縦筋、横筋、柱筋、フープ筋、あばら筋、斜め補強筋等)の図示を省略している。
パネル16a〜16iを設置した後(パネル設置工程が終了した後)、トラス構造物第2設置工程を行う。トラス構造物第2設置工程(縦架設材第2設置工程)では、パネル設置工程において上下方向に重ねたパネル16a〜16c,16d〜16f,16g〜16iの1グループの直前にあらたに2個のトラス構造物17b,17c,17e,17f,17h,17i(縦架設材)(トラス構造物17aの横方向に2つのトラス構造物17b,17c、トラス構造物17dの横方向に2つのトラス構造物17e,17f、トラス構造物17gの横方向に2つのトラス構造物17h,17i)を取り付ける。トラス構造物第1設置工程およびトラス構造物第2設置工程では、上下方向に重ねたパネル16a〜16c,16d〜16f,16g〜16iの1グループに3つのトラス構造物17a〜17c,17d〜17f,17g〜17iが取り付けられ、柱15の間に合計9つのトラス構造物17a〜17iが取り付けられる。
トラス構造物第2設置工程におけるトラス構造物17b,17c,17e,17f,17h,17iの設置手順は、トラス構造物第1設置工程におけるトラス構造物17a,17d,17gのそれと同一であるから、その説明は省略する。トラス構造物第2設置工程においてトラス構造物17b,17c,17e,17f,17h,17iを設置すると、パネル16a,16d,16g,16c,16f,16iの残余の部位における当接面21とパネル16b,16e,16hの当接面21とがトラス構造物17b,17c,17e,17f,17h,17iの第1垂直材35に当接する。トラス構造物17b,17c,17e,17f,17h,17iを設置した後、パネル16a〜16iに取り付けられた取っ手31に連結紐32を結び付けるとともに、その紐32をトラス構造物17b,17c,17e,17f,17h,17iの第2垂直材36に結び付ける。
トラス構造物第2設置工程が終了すると、天井梁27の底面と床梁29の頂面との間において上下方向へ延びる9つのトラス構造物17a〜17iが横方向へ所定寸法離間(略等間隔離間)して設置され、図12に示すように、1グループのパネル16a〜16c,16d〜16f,16g〜16iの一方の側部に1つのトラス構造物17a,17d,17gが位置し、1グループのパネル16a〜16c,16d〜16f,16g〜16iの他方の側部に1つのトラス構造物17c,17f,17iが位置するとともに、1グループのパネル16a〜16c,16d〜16f,16g〜16iの中央部に1つのトラス構造物17b,17e,17hが位置する。型枠構造物10Aでは、パネル16a〜16c,16d〜16f,16g〜16iの1グループ毎に横方向へ並ぶ3つのトラス構造物17a〜17iにより、空間14にコンクリート12を打設したときのパネル16a〜16iの前後方向前方への変形や積み重ねたそれらパネル16a〜16iの崩落が防止される。
パネル16a〜16iの直前にトラス構造物17b,17c,17e,17f,17h,17iを設置した後(トラス構造物第2設置工程が終了した後)、横架設材設置工程を行う。横架設材設置工程では、横方向へ延びる複数の横架設材18a〜18cを各トラス構造物17a〜17iに設置する。横架設材設置工程では、図13に示すように、横方向へ延びる3つの横架設材18a〜18cを上下方向へ所定寸法離間させた状態でそれらトラス構造物17a〜17iの前後方向前方(直前)に設置する。横架設材設置工程では、固定金具46を介して横架設材18a〜18cを各トラス構造物17a,17b,17d,17e,17h,17iの第2垂直材36に強固に固定する。
それら横架設材18a〜18cをトラス構造物17a〜17iに固定すると、横架設材18a〜18cをトラス構造物17a〜17iの第2垂直材36に当接する。横架設材18aがパネル16a,16d,16gの前方(トラス構造物17a〜17iの直前)であってパネル16a,16d,16gの中央部に位置し、横架設材18bがパネル16b,16e,16gの前方(トラス構造物17a〜17iの直前)であってパネル16b,16e,16gの中央部に位置する。さらに、横架設材18cがパネル16c,16f,16iの前方(トラス構造物17a〜17iの直前)であってパネル16c,16f,16iの中央部に位置する。型枠構造物10Aでは、それら横架設材18a〜18cによって各トラス構造物17a〜17iの前後方向前方への変形や横方向への撓みが防止される。
横架設材18a〜18cを設置した後(横架設材設置工程が終了した後)、支持架設材設置工程を行う。支持架設材設置工程では、図1に示すように、横方向へ並ぶ複数の支持架設材19a〜19cを横架設材18a〜18cの前後方向前方(横架設材18a〜18cの直前)に設置する。支持架設材設置工程では、上下方向へ一連に並ぶパネル16a〜16c,16d〜16f,16g〜16iの1つのグループの略中央部に支持架設材19a〜19cを設置し、トラス構造物17b,17e,17h(縦架設材)の第1垂直材35と傾斜材47と水平材48とから側面形状が三角形の三角構造を作る。
それら支持架設材19a〜19cを設置する手順の一例は、以下のとおりである。トラス構造物17b,17e,17hから前後方向前方へ離間した床梁29の頂面(または、床の床スラブの頂面)に固定座金54を固定する座金固定位置を正確に位置決め(墨だし)した後、その座金固定位置に複数のアンカーホールを穿孔し、それらアンカーホールに樹脂アンカーや機械式アンカーを設置する。アンカーを設置した後、座金固定54に形成されたボルト孔にアンカーボルトを挿通するとともにそのアンカーボルトをアンカーホール(アンカー)に螺着することで、床梁29の座金固定位置に固定座金54を強固に固定する。
固定座金54を固定した後、傾斜材47(中空の金属パイプ)の下端部51に穿孔された軸孔に軸56を挿通するとともに、固定座金54の軸受け55にその軸56を取り付け、傾斜材47の下端部51を固定座金54に回転可能に固定する。次に、固定金具61を介して水平材48(中空の金属パイプ)の後端部59をトラス構造物17b,17e,17hの第1垂直材35に強固に固定(連結)するとともに、固定金具60を介して水平材48の前端部57を傾斜材47の下端部51に強固に固定(連結)する。水平材48の前後端部57,59を固定すると、水平材48が床梁29の頂面から上方へわずかに離間し、水平材48がトラス構造物17b,17e,17h(アングル43b)と傾斜材47の下端部51との間で前後方向へ水平に延びる。
水平材48の前後端部57,59を固定した後、傾斜材47の下端部51を中心に傾斜材47を上下方向上方へ旋回させ、傾斜材47の上端部49を横架設材18bの位置に合わせる。次に、傾斜材47の伸縮機構52によって傾斜材47を前後方向後方へ伸長させ、傾斜材47の上端部49(密着板60)で横架設材18bを押圧し、上端部49を横架設材18bに密着固定させる。具体的には、傾斜材47の上端部49に作られた雌螺子に螺着された雄螺子部材53を反時計回り方向へ回転させ、雄螺子部材53を傾斜材47の内部から次第に露出させることで、雄螺子部材53を含む傾斜材47の長さを次第に伸長させて傾斜材47の上端部49(密着板60)を横架設材18bの周面(固定金具46)に押し当てる。上端部49を横架設材18bに押し当てることで、上端部49が横架設材18bに密着し、傾斜材47を横架設材18bと床梁29との間で突っ張らせ、横架設材18bをパネル16b,16e,16hの側に押圧する。傾斜材47の上端部49を横架設材18bに押圧下に密着させると、傾斜材47が横架設材18bから床梁29の頂面に向かって下り勾配に傾斜する(傾斜材47がその下端部51から上端部49に向かって上り勾配に傾斜する)。
位置決め工程、アングル設置工程、トラス構造物第1設置工程、パネル設置工程、トラス構造物第2設置工程、横架設材設置工程、支持架設材設置工程が終了すると、型枠構造物10Aの組立が完成する。壁面11と型枠構造物10A(型枠パネル16a〜16i)との間には、コンクリート13を打設する空間14が形成されている。なお、図示はしていないが、空間14にコンクリート12を打設するときの空間14に存在する空気を外部に逃がす空気孔がいずれかのパネル16c,16f,16iに形成されている。
型枠構造物10Aを組み立てた後(支持架設材設置工程が終了した後)、コンクリート打設工程を行う。コンクリート打設工程では、図15に示すように、パネル16fに形成された打設口33から空間14にコンクリート12を打設する。空間14へのコンクリート12の打設は、図示はしていないが、コンクリートミキサーから延びるホースをパネル16fの打設口33に接続し、打設口33から空間14にコンクリート12を圧入する。空間14の空気は、パネル16c,16f,16iの空気孔から外部に排気される。コンクリート打設工程では、確認窓34から空間14を視認しつつ、確認窓34を利用して空間14へのコンクリート12の打設状態を判断しながら、コンクリート12の打設作業が行われる。
コンクリート打設工程において、パネル16fに作られた打設口33を利用することで、コンクリート12を空間14に容易に打設することができ、建物の壁面11にコンクリート12を容易に増し打ちすることができる。また、空間14へのコンクリート12の打設状態を確認窓34から確認することができるから、空間14全域にコンクリート12を確実に打設することができ、壁面11にコンクリート12を確実に増し打ちすることができる。
コンクリート打設工程によってコンクリート12を空間14に打設すると、空間14に進入したコンクリート12の側圧がパネル16a〜16i全体に作用する。コンクリート12の側圧がそれらパネル16a〜16iに作用すると、各パネル16a〜16iが前後方向前方へ膨隆または湾曲しようとするが、それらトラス構造物17a〜17iによってパネル16a〜16iの膨隆や湾曲が押さえられ、コンクリート12の側圧によるパネル16a〜16iの変形や積み重ねたパネル16a〜16iの崩落が防止される。また、コンクリート12の側圧によってそれらトラス構造物17a〜17iが前後方向前方へ膨隆または湾曲しようとするが、それら横架設材18a〜18cによって各トラス構造物17a〜17iの膨隆や湾曲が押さえられ、コンクリート12の側圧によるトラス構造物17a〜17iの変形や撓みが防止される。さらに、コンクリート12の側圧によって横架設材18a〜18cが前後方向前方へ膨隆または湾曲しようとするが、それら支持架設材19a〜19cによって横架設材18a〜18cの膨隆や湾曲が押さえられ、コンクリート12の側圧による横架設材18a〜18cの変形や撓みが防止される。
型枠構造物10Aは、コンクリート12の側圧によるパネル16a〜16iの変形や積み重ねたパネル16a〜16iの崩落がトラス構造物17a〜17iや横架設材18a〜18c、支持架設材19a〜19cによって防止され、パネル16a〜16iと壁面11との平行状態が維持される。また、型枠構造物10Aでは、パネル16a〜16iの6面20〜25にポリウレア樹脂26が塗布され、硬化したポリウレア樹脂26によってパネル16a〜16i自体の曲げ強度が大幅に増加しているから、コンクリート12の側圧が各パネル16a〜16iに作用したとしても、パネル16a〜16iが部分的に変形することはなく、パネル16a〜16iの6面20〜25の直状状態を維持することができ、空間14にコンクリート12を十分に滞留させてコンクリート12を養生することができる。
空間14にコンクリート12を打設した後、コンクリート12を所定期間養生する。コンクリート12の養生期間が経過した後、型枠解体工程を行う。型枠解体工程では、傾斜材47の伸縮機構52によって傾斜材47を前後方向前方へ縮め、傾斜材47の上端部49(密着板60)と横架設材18b(固定金具46)との密着を解除する。具体的には、傾斜材47の上端部49に作られた雌螺子に螺着された雄螺子部材53を時計回り方向へ回転させ、雄螺子部材53を傾斜材47の内部に次第に進入させることで、雄螺子部材53を含む傾斜材47の長さを次第に縮め、傾斜材47の上端部49(密着板60)による横架設材18b(固定金具46)の押圧を解除する。次に、固定金具61を外して水平材48の後端部59とトラス構造物17b,17e,17hとの固定(連結)を解除するとともに、固定金具60を外して水平材48の前端部57と傾斜材47の下端部51との固定(連結)を解除する。
トラス構造物17a,17b,17e,17f,17h,17iの第2垂直材36から固定金具46を外し、トラス構造物17a,17b,17e,17f,17h,17iと横架設材18a〜18cとの固定(連結)を解除してトラス構造物17a〜17iから横架設材18a〜18cを取り外す。横架設材18a〜18cを取り外した後、連結紐43をトラス構造物17a〜17iの第2垂直材36からほどき、アングル43aのボルト螺着孔および寸法調節材38の固定端部39のボルト螺着孔からアジャスターボルト45を取り外し、寸法調節材38の固定端部39とアングル43aとの固定を解除するとともに、アングル43bのボルト螺着孔および第1垂直材35の下端部42のボルト螺着孔からアジャスターボルト45を取り外し、第1垂直材35の下端部42とアングル43bとの固定を解除し、天井梁27の底面や床梁29の頂面からそれらトラス構造物17a〜17iを取り外す。
トラス構造物17a〜17iを取り外した後、床梁29の頂面のトラス第2固定位置に穿孔されたアンカーホールの樹脂アンカーや機械式アンカーからアンカーボルト44を抜き取り、床梁29とアングル43bとの固定を解除するとともに、天井梁27の底面のトラス第1固定位置に穿孔されたアンカーホールの樹脂アンカーや機械式アンカーからアンカーボルト44を抜き取り、天井梁27とアングル43aとの固定を解除する。
アングル43a,43bを取り外した後、型枠パネル16a〜16iの取っ手31を手で把持しつつ、パネル16a〜16iを壁面11から離間する方向(前後方向前方)へ引っ張り、パネル16a〜16iを取り外す。それらパネル16a〜16iの6面20〜25にはポリウレア樹脂26が塗布され、6面20〜25の摩擦抵抗が大幅に低下しているから、養生後の硬化したコンクリート12がパネル16a〜16iの当接面21を除いた面20,22〜25に付着することなく、コンクリート12からパネル16a〜16iを容易に取り外すことができる。型枠構造物10Aを形成する全ての部材を取り外し、組み立てた型枠構造物10Aを解体することで、新設の鉄筋コンクリート製の耐震補強壁13が作られる。
型枠構造物10Aは、複数のトラス構造物17a〜17i(縦架設材)や複数の横架設材18a〜18c、複数の支持架設材19a〜19cを利用することで、建物の壁面11と型枠パネル16a〜16iとの間の空間14に打設されたコンクリート12の側圧に十分に耐えることができ、コンクリート12の側圧が作用したとしても壁面11とパネル16a〜16iとの平行状態を維持することができるから、壁面11にコンクリート12を確実に増し打ちすることができ、既設建物の壁面11の外側に構造計算された設計どおりの新たな鉄筋コンクリート製の耐震補強壁13を作ることができる。
型枠構造物10Aは、それを組み立てる際に複数本のセパレータを設置する必要はなく、セパレータを設置する手間や時間を省くことができるのみならず、型枠大工の経験や勘に頼る必要はなく、短時間に効率よく組み立てることができるとともに、手間を要さずに廉価に組み立てることができる。型枠構造物10Aは、空間14にセパレータを設置する必要がないことから、空間14に自由に鉄筋(埋込アンカー、縦筋、横筋、柱筋、フープ筋、あばら筋、斜め補強筋等)を配筋することができ、強固な鉄筋コンクリート製の耐震補強壁13を作ることができる。型枠構造物10Aは、型枠パネル16a〜16iの6面20〜25の強度や平滑度がポリウレア樹脂26の被膜層によって維持されるから、使用済みのパネル16a〜16iを繰り返して使用することができ、ベニヤ板を使い捨てにする型枠と比較し、型枠構造物10Aにかかるコストを大幅に低減させることができる。
図16は、組み立てられた型枠構造物10Bの他の一例を示す正面図であり、図17は、組み立てられた図16の型枠構造物10Bの側面図である。図16,17では、上下方向を矢印Aで示し、横方向の矢印B(図16のみ)で示すとともに、前後方向を矢印C(図17のみ)で示す。図17では、コンクリート12に埋設された鉄筋(埋込アンカー、縦筋、横筋、柱筋、フープ筋、あばら筋、斜め補強筋等)の図示を省略している。
型枠構造物10Bは、型枠構造物10Aと同様に、既設の建物の壁面11の前後方向前方へ所定寸法離間した位置に組み立てられ、壁面11の外側にコンクリート12を増し打ちして新設の鉄筋コンクリート製の耐震補強壁13を作るために使用される。耐震補強壁13を作る箇所に複数本の鉄筋(図示せず)を配筋するとともに型枠構造物10Bを組み立て、壁面11と型枠構造物10B(型枠パネル16a〜16i)との間の空間14(壁面11の外側)にコンクリート12を打設する。打設したコンクリート12を所定期間養生した後、組み立てた型枠構造物10Bを解体することで鉄筋コンクリート製の耐震補強壁13が作られる。
型枠構造物10Bが図1のそれと異なるところは、トラス構造物17a〜17lの数や横架設材18a〜18eの数、支持架設材19a〜19fの数が図1の型枠構造物10Aのそれよりも多い点、支持架設材19a〜19fの傾斜材47の上端部49が上下方向へ一連に並ぶパネル16a〜16c,16d〜16f,16g〜16iのグループのうちの1番下に位置するパネル16a,16d,16gに対して設置された横架設材18aに押圧下に密着している点にある。なお、この型枠構造物10Bにおけるその他の構成は図1のそれと同一であるから、図1の型枠構造物10Aの説明を援用することで、この型枠構造物10Bにおけるその他の構成の詳細な説明は省略する。型枠構造物10Bは、複数の型枠パネル16a〜16iと、複数のトラス構造物17a〜17l(縦架設材)と、複数の横架設材18a〜18eと、複数の支持架設材19a〜19fとから形成されている。
それら型枠パネル16a〜16iは、所定の厚み寸法および所定面積を有する平面形状が四角形の板状に成型されている。型枠パネル16a〜16iは、壁面11に対向する対向面20と、トラス構造物17a〜17lの第1垂直材35に当接する当接面21と、上下面22,23および両側面24,25とを有する6面体であり、6面20〜25にポリウレア樹脂26が塗布されている(図3,4援用)。なお、パネル16a〜16iの材質は、図1の型枠構造物10Aにおいて使用するそれと同一である。
型枠パネル16a〜16iは、建物内部の耐震補強壁13の構築箇所の天井梁27の底面(構築箇所上部)(または、天井の床スラブの底面)の正確に位置決めされた第1固定位置28と構築箇所の床梁29の頂面(構築箇所下部)(または、床の床スラブの頂面)の正確に位置決めされた第2固定位置30との間に設置されている。第1固定位置28と第2固定位置30との間には、最上に位置するパネル16c,16f,16i→中間に位置するパネル16b,16e,16h→最下に位置するパネル16a,16d,16gの順にそれらパネル16a〜16iが上下方向へ並んでいる。さらに、上下方向へ並ぶ3枚のパネル16a〜16c,16d〜16f,16g〜16iを1つのグループとしたときに、その3つのグループが横方向へ並んでいる。
型枠パネル16c,16f,16iは、その上端部の厚み寸法が残余の部位のそれよりも小さく、パネル16a,16d,16gは、その下端部の厚み寸法が残余の部位のそれよりも小さい。パネル16a〜16cの当接面21には、2つの取っ手31が取り付けられている。取っ手31には、連結紐32(連結部材)が結び付けられている。パネル16fには、空間14にコンクリート12を打設するための打設口33が作られている。型枠パネル16a,16g,16iには、空間14へのコンクリート12の打設状態を確認可能な四角形の確認窓34が作られている。
トラス構造物17a〜17l(縦架設材)は、型枠パネル16a〜16cの前後方向前方に位置して上下方向へ直状に延びている。トラス構造物17a〜17lは、横方向へ所定寸法離間して並んでいる。上下方向へ並ぶ1グループ組のパネル16a〜16c,16d〜16f,16g〜16iには、4つのトラス構造物17a〜17d,17e〜17h,17i〜17lが設置されている。1つのトラス構造物17a,17e,17iが1グループのパネル16a〜16c,16d〜16f,16g〜16iの一方の側縁部に配置され、1つのトラス構造物17d,17h,17lが1グループのパネル16a〜16c,16d〜16f,16g〜16iの他方の側縁部に配置されているとともに、2つのトラス構造物17b,17c,17f,17g,17j,17kが1グループのパネル16a〜16c,16d〜16f,16g〜16iの中央部に配置されている。
トラス構造物17a〜17lは、型枠パネル16a〜16iの当接面21に対向して上下方向へ直状に延びる第1垂直材35と、第1垂直材35から前後方向前方へ所定寸法離間して上下方向へ直状に延びる第2垂直材36と、第1垂直材35と第2垂直材36との間に位置して上下方向へジグザグに延びるトラス材37と、トラス構造物17a〜17iの高さ寸法を調節可能な寸法調節材38とから作られている。
トラス構造物17a〜17lでは、その上端部41(寸法調節材38の固定端部39)が所定の固定手段(アングル43a,43b(アングル材)、アンカーボルト44、アジャスターボルト45)を介して天井梁27の底面の位置決めされた第1固定位置28に強固に固定されている。また、その下端部42(第1垂直材35の下端部)が所定の固定手段(アングル43b,43b(アングル材)、アンカーボルト44、アジャスターボルト45)を介して床梁29の頂面の位置決めされた第2固定位置30に強固に固定されている。
トラス構造物17a〜17lの上下方向の高さ寸法を調節しつつ、アングル43aに寸法調節材38の固定端部39を固定するとともに、アングル43bに第1垂直材35の下端部42を固定すると、第1垂直材35がパネル16a〜16iの当接面21に当接(密着)する。それらトラス構造物17a〜17lにより、空間14にコンクリート12を打設したときのコンクリート12の側圧によるそれらパネル16a〜16iの前後方向前方への膨隆や湾曲が押さえられ、パネル16a〜16iの前後方向前方への変形や積み重ねたパネル16a〜16iの崩落が防止される。トラス構造物17a〜17lの第2垂直材36には、連結紐32が強く結び付けられている。それらパネル16a〜16iの取っ手31とトラス構造物17a〜17lとが連結紐32を介して連結され、それらパネル16a〜16iの壁面11の側への倒れ込みが防止される。
横架設材18a〜18eは、トラス構造物17a〜17lの前後方向前方(第2垂直材36の直前)に位置しつつ、トラス構造物17a〜17lに固定されて横方向へ直状に延びている。それら横架設材18a〜18eは、上下方向へ所定寸法離間して並んでいる。横架設材18a〜18eは、固定金具46を介してトラス構造物17b,17c,17f,17g,17j,17kの第2垂直材36に強固に固定されている。それら横架設材18a〜18eは、全てのトラス構造物17a〜17lの第2垂直材36に当接(密着)している。なお、固定金具46を介して横架設材18a〜18eが全てのトラス構造物17a〜17lに強固に固定されていてもよい。
横方向へ並ぶパネル16a,16d,16gの前方には、2つの横架設材18a,18bが配置され、横方向へ並ぶパネル16b,16e,16hの前方には、2つの横架設材18c,18dが配置されている。さらに、横方向へ並ぶパネル16c,16f,16iの前方には、1つの横架設材18eが配置されている。上下方向へ一連に並ぶパネル16a〜16c,16d〜16f,16g〜16iのグループでは、上下方向下方に位置するパネル16a,16d,16g,16b,16e,16hに対する横架設材18a〜18dの設置本数が上下方向上方に位置するパネル16c,16f,16iに対する横架設材18eのそれよりも多い。なお、横方向へ並ぶパネル16a,16d,16gの前方に3つの横架設材が配置され、横方向へ並ぶパネル16b,16e,16hの前方に3つの横架設材が配置されていてもよい。この場合、パネル16a,16d,16gやパネル16b,16e,16hの上下端部に2つの横架設材が配置され、パネル16a,16d,16gやパネル16b,16e,16hの中央部に1つの横架設材が配置される。
それら横架設材18a〜18eにより、空間14にコンクリート12を打設したときのコンクリート12の側圧によるそれらトラス構造物17a〜17lの前後方向前方への膨隆や湾曲が押さえられ、トラス構造物17a〜17lの前後方向前方への変形や横方向への撓みが防止される。その結果、コンクリート12の側圧によるそれら型枠パネル16a〜16iの前後方向後方への膨隆や湾曲が押さえられ、パネル16a〜16iの前後方向後方への変形や積み重ねたパネル16a〜16iの崩落が防止される。
支持架設材19a〜19fは、横架設材18a〜18eの前後方向前方(横架設材18a〜18eの直前)に設置されて横方向へ所定寸法離間して並んでいる。上下方向へ一連に並ぶ型枠パネル16a〜16c,16d〜16f,16g〜16iの1つのグループには、2つの支持架設材19a〜19b,19c〜19d,19e〜19fが設置されている。支持架設材19a〜19fは、横架設材18bから床梁29の頂面に向かって下り勾配に延びる傾斜材47と、パネル16a,16d,16gから前後方向前方へ延びる水平材48とから形成されている。
傾斜材47は、トラス構造物17b,17c,17f,17g,17j,17kの近傍に延びる横架設材18bに押圧下に密着(当接)する上端部49と、パネル16a,16d,16gから前方へ離間して床梁29の頂面に固定された下端部51と、上下端部49,51の間に延びる中間部50とを有する。傾斜材47の上端部49は、上下方向へ一連に並ぶパネル16a〜16c,16d〜16f,16g〜16iのグループのうちの1番下に位置するパネル16a,16d,16gに対して設置された横架設材18bに押圧下に密着している。
傾斜材47は、その下端部51が床梁29の頂面に回転可能に固定され、下端部51を中心に床梁29の頂面に対して上下方向へ旋回可能であるとともに、床梁29の頂面に対する傾斜角度を変更可能である。傾斜材47の上端部49には、横架設材18bと床梁29の頂面との間で伸縮可能な伸縮機構52が作られている。傾斜材47は、伸縮機構52を利用してその長さを伸長させることで、横架設材18bと床梁29の頂面(または、床の床スラブの頂面)との間で突っ張る突っ張りとして機能し、横架設材18bをパネル16b,16e,16hに向かって押圧する。
水平材48は、床梁29の頂面から上方へわずかに離間している。水平材48は、パネル16a,16d,16gから前方へ離間して傾斜材47の下端部51に固定された前端部57と、パネル16a,16d,16gの側に位置してトラス構造物17b,17c,17f,17g,17j,17k(縦架設材)に固定された後端部59と、前後端部57,59の間に延びる中間部58とを有する。水平材48の前端部57は、固定金具60を介して傾斜材47の下端部51に強固に固定されている。水平材48の後端部59は、固定金具61を介してトラス構造物17b,17c,17f,17g,17j,17kの第1垂直材35に強固に固定されている。型枠構造物10Aでは、トラス構造物17b,17c,17f,17g,17j,17kの第1垂直材35と傾斜材47と水平材48とで三角構造が形成されている。
図18は、図16の型枠構造物10Bを利用した耐震補強壁13の施工手順の一例を示す図である。なお、図18は、アングル設置工程、トラス構造物第1設置工程、パネル設置工程、トラス構造物第2設置工程が完了した状態を示す。鉄筋コンクリート製の耐震補強壁13は、位置決め工程、配筋工程、アングル材設置工程、トラス構造物第1設置工程(縦架設材第1設置工程)、パネル設置工程、トラス構造物第2設置工程(縦架設材第2設置工程)、横架設材設置工程、支持架設材設置工程の各工程を実施することで型枠構造物10Bを組み立てた後、コンクリート打設工程、型枠解体工程の各工程を実施することによって作られる。位置決め工程やアングル材設置工程、トラス構造物第1設置工程、パネル設置工程は、図1の型枠構造物10Aを使用した耐震補強壁13の施工手順のそれらと同一であるから、その説明は省略する。
トラス構造物第2設置工程(縦架設材第2設置工程)では、パネル設置工程において上下方向に重ねたパネル16a〜16c,16d〜16f,16g〜16iの1グループの直前にあらたに3個のトラス構造物17b,17c,17d,17f,17g,17h,17j,17k,17l(縦架設材)(トラス構造物17aの横方向に3つのトラス構造物17b,17c,17d、トラス構造物17eの横方向に3つのトラス構造物17f,17g,17h、トラス構造物17iの横方向に2つのトラス構造物17j,17k,17l)を取り付ける。トラス構造物第1設置工程およびトラス構造物第2設置工程では、上下方向に重ねたパネル16a〜16c,16d〜16f,16g〜16iの1グループに4つのトラス構造物17a〜17d,17e〜17h,17i〜17lが取り付けられ、柱15の間に合計16つのトラス構造物17a〜17lが取り付けられる。トラス構造物第2設置工程におけるトラス構造物17b,17c,17d,17f,17g,17h,17j,17k,17lの設置手順は、図1の型枠構造物10Aを使用した耐震補強壁13の施工手順のそれと同一であるから、その説明は省略する。
トラス構造物第2設置工程においてトラス構造物17b,17c,17d,17f,17g,17h,17j,17k,17lを設置すると、パネル16a,16d,16g,16c,16f,16iの残余の部位における当接面21とパネル16b,16e,16hの当接面21とがトラス構造物17b,17c,17d,17f,17g,17h,17j,17k,17lの第1垂直材35に当接する。トラス構造物17b,17c,17d,17f,17g,17h,17j,17k,17lを設置した後、パネル16a〜16iに取り付けられた取っ手31に連結紐32を結び付けるとともに、その紐32をトラス構造物の第2垂直材36に結び付ける。
パネル16a〜16c,16d〜16f,16g〜16iの1グループ毎に横方向へ並ぶ4つのトラス構造物17a〜17lにより、空間14にコンクリート12を打設したときのパネル16a〜16iの前後方向前方への変形や積み重ねたそれらパネル16a〜16iの崩落が防止される。また、取っ手28とトラス構造物とを連結紐32で連結することで、パネル16a〜16iとトラス構造物とが連結されてそれらパネル16a〜16iがトラス構造物17a〜17lに支持され、パネル16a〜16iの壁面11の側への倒れ込みが防止される。
横架設材設置工程では、横方向へ延びる複数の横架設材18a〜18eを各トラス構造物17a〜17lに設置する。横架設材設置工程では、5つの横架設材18a〜18eを上下方向へ所定寸法離間させた状態でそれらトラス構造物17a〜17lの前後方向前方に設置する。横架設材設置工程では、固定金具46を介してそれら横架設材18a〜18eを各トラス構造物17b,17c,17f,17g,17j,17kの第2垂直材36に強固に固定する。
横架設材18a〜18eをトラス構造物17a〜17lに固定すると、2つの横架設材18a,18bがパネル16a,16d,16gの前方に位置し、2つの横架設材18c,18dが型枠パネル16b,16e,16hの前方に位置するとともに、1つの横架設材18eが型枠パネル16c,16f,16iの前方に位置する。型枠構造物10Bでは、それら横架設材18a〜18eによって各トラス構造物17a〜17lの前後方向前方への変形や横方向への撓みが防止される。
支持架設材設置工程では、図16に示すように、横方向へ並ぶ複数の支持架設材19a〜19fを横架設材18a〜18eの前後方向前方(横架設材18a〜18eの直前)に設置する。支持架設材設置工程では、上下方向へ一連に並ぶパネル16a〜16c,16d〜16f,16g〜16iの1つのグループに2つの支持架設材19a〜19fを設置し、トラス構造物17b,17e,17h(縦架設材)の第1垂直材35と傾斜材47と水平材48とから側面形状が三角形の三角構造を作る。支持架設材19a〜19fを設置する手順は、図1の型枠構造物10Aを使用した耐震補強壁13の施工手順のそれと同一であるから、その説明は省略する。型枠構造物10Bでは、それら支持架設材19a〜19fによって横架設材18a〜18eの前後方向前方への変形が防止される。
位置決め工程、アングル設置工程、トラス構造物第1設置工程、パネル設置工程、トラス構造物第2設置工程、横架設材設置工程、支持架設材設置工程が終了すると、型枠構造物10Bの組立が完成する。なお、空間14にコンクリート12を打設するときの空間14に存在する空気を外部に逃がす空気孔がいずれかのパネル16c,16f,16iに形成されている。型枠構造物10Bを組み立てた後(支持架設材設置工程が終了した後)、コンクリート打設工程を行う。コンクリート打設工程は、図1の型枠構造物10Aのそれと同一であるから、その説明は省略する。
コンクリート打設工程によってコンクリート12を空間14に打設すると、空間14に進入したコンクリート12の側圧がパネル16a〜16i全体に作用する。コンクリート12の側圧がそれらパネル16a〜16iに作用すると、各パネル16a〜16iが前後方向前方へ膨隆または湾曲しようとするが、それらトラス構造物17a〜17lによってパネル16a〜16iの膨隆や湾曲が押さえられ、コンクリート12の側圧によるパネル16a〜16iの変形や積み重ねたパネル16a〜16iの崩落が防止される。また、コンクリート12の側圧によってそれらトラス構造物17a〜17lが前後方向前方へ膨隆または湾曲しようとするが、それら横架設材18a〜18eによって各トラス構造物17a〜17lの膨隆や湾曲が押さえられ、コンクリート12の側圧によるトラス構造物17a〜17lの変形や撓みが防止される。さらに、コンクリート12の側圧によって横架設材18a〜18eが前後方向前方へ膨隆または湾曲しようとするが、それら支持架設材19a〜19fによって横架設材18a〜18eの膨隆や湾曲が押さえられ、コンクリート12の側圧による横架設材18a〜18eの変形や撓みが防止される。
型枠構造物10Bは、コンクリート12の側圧によるパネル16a〜16iの変形や積み重ねたパネル16a〜16iの崩落がトラス構造物17a〜17lや横架設材18a〜18e、支持架設材19a〜19fによって防止され、パネル16a〜16iと壁面11との平行状態が維持される。また、型枠構造物10Bでは、パネル16a〜16iの6面20〜25にポリウレア樹脂26が塗布され、硬化したポリウレア樹脂26によってパネル16a〜16i自体の曲げ強度が大幅に増加しているから、コンクリート12の側圧が各パネル16a〜16iに作用したとしても、パネル16a〜16iが変形することはなく、パネル16a〜16iの直状状態を維持することができ、空間14にコンクリート12を十分に滞留させてコンクリート12を養生することができる。
空間14にコンクリート12を打設した後、コンクリート12を所定期間養生する。コンクリート12の養生期間が経過した後、型枠解体工程を行う。型枠解体工程は、図1の型枠構造物10Aのそれと同一であるから、その説明は省略する。型枠構造物10Bを形成する全ての部材を取り外し、組み立てた型枠構造物10Bを解体することで、新設の鉄筋コンクリート製の耐震補強壁13が作られる。
型枠構造物10Bは、複数のトラス構造物17a〜17l(縦架設材)や複数の横架設材18a〜18e、複数の支持架設材19a〜19fを利用することで、建物の壁面11と型枠パネル16a〜16iとの間の空間14に打設されたコンクリート12の側圧に十分に耐えることができ、コンクリート12の側圧が作用したとしても壁面11とパネル16a〜16iとの平行状態を維持することができるから、壁面11にコンクリート12を確実に増し打ちすることができ、既設建物の壁面11の外側に構造計算された設計どおりの新たな鉄筋コンクリート製の耐震補強壁13を作ることができる。
型枠構造物10Bは、それを組み立てる際に複数本のセパレータを設置する必要はなく、セパレータを設置する手間や時間を省くことができるのみならず、型枠大工の経験や勘に頼る必要はなく、短時間に効率よく組み立てることができるとともに、手間を要さずに廉価に組み立てることができる。型枠構造物10Bは、空間14にセパレータを設置する必要がないことから、空間14に自由に鉄筋(埋込アンカー、縦筋、横筋、柱筋、フープ筋、あばら筋、斜め補強筋等)を配筋することができ、強固な鉄筋コンクリート製の耐震補強壁13を作ることができる。型枠構造物10Bは、型枠パネル16a〜16iの6面20〜25の強度や平滑度がポリウレア樹脂26の被膜層によって維持されるから、使用済みのパネル16a〜16iを繰り返して使用することができ、ベニヤ板を使い捨てにする型枠と比較し、型枠構造物10Bにかかるコストを大幅に低減させることができる。
10A 型枠構造物
10B 型枠構造物
11 壁面
12 コンクリート
13 耐震補強壁
14 空間
16a〜16i 型枠パネル
17a〜17l トラス構造物
18a〜18e 横架設材
19a〜19f 支持架設材
20 対向面
21 当接面
22 上面
23 下面
24 側面
25 側面
26 ポリウレア樹脂
28 第1固定位置
30 第2固定位置
31 取っ手
32 連結紐(連結部材)
33 打設口
34 確認窓
35 第1垂直材
36 第2垂直材
37 トラス材
38 寸法調節材
39 固定端部
40 開口部
41 上端部
42 下端部
43a,b アングル(アングル材)
47 傾斜材
48 水平材
49 上端部
51 下端部
52 伸縮機構
57 前端部
59 後端部

Claims (15)

  1. 建造物の壁面に組み立てられ、前記壁面の外側にコンクリートを増し打ちして新たな壁を作るために使用される型枠構造物において、
    前記型枠構造物が、前記建造物の壁面から前後方向前方へ所定寸法離間した構築箇所上部の位置決めされた第1固定位置と前記壁面から前後方向前方へ所定寸法離間した構築箇所下部の位置決めされた第2固定位置とに設置されたアングル材と、前記第1および第2固定位置の間に設置されて上下方向へ一連に並ぶとともに横方向へ一連に並ぶ複数の型枠パネルと、前記型枠パネルの前後方向前方に設置されて上下方向へ延びるとともに横方向へ所定寸法離間して並ぶ複数の縦架設材と、前記縦架設材の前後方向前方に位置しつつそれら縦架設材に設置されて横方向へ延びるとともに上下方向へ所定寸法離間して並ぶ複数の横架設材と、前記横架設材の前後方向前方に設置されて横方向へ所定寸法離間して並ぶ複数の支持架設材とを備え、
    前記支持架設材が、前記横架設材から前記構築箇所下部に向かって延びる傾斜材と、前記パネルから前後方向前方へ延びる水平材とから形成され、前記傾斜材が、前記横架設材に押圧下に密着固定された上端部と、前記パネルから前方へ離間して前記構築箇所下部に固定された下端部とを有し、前記水平材が、前記パネルから前方へ離間して前記傾斜材の下端部に固定された前端部と、前記パネルの側に位置して前記縦架設材に固定された後端部とを有することを特徴とする型枠構造物。
  2. 前記型枠構造物では、前記傾斜材の上端部が前記縦架設材の近傍に延びる前記横架設材に押圧下に密着固定され、前記縦架設材と前記傾斜材と前記水平材とで三角構造が形成されている請求項1に記載の型枠構造物。
  3. 上下方向へ一連に並ぶ前記型枠パネルの1つのグループには、少なくとも1つの前記支持架設材が設置されている請求項1または請求項2に記載の型枠構造物。
  4. 前記傾斜材の下端部が、前記構築箇所下部に回転可能に固定され、前記傾斜材が、その下端部を中心に前記構築箇所下部に対して上下方向へ旋回可能であるとともに、前記構築箇所下部に対する傾斜角度を変更可能である請求項1ないし請求項3いずれかに記載の型枠構造物。
  5. 前記傾斜材が、前記横架設材と前記構築箇所下部との間で伸縮可能な伸縮機構を有する請求項1ないし請求項4いずれかに記載の型枠構造物。
  6. 上下方向へ一連に並ぶ前記型枠パネルのグループには、少なくとも3つの前記縦架設材が設置され、2つの前記縦架設材が前記型枠パネルの上下方向へ延びる両側部に配置され、1つの前記縦架設材が前記型枠パネルの中央部に配置されている請求項1ないし請求項5いずれかに記載の型枠構造物。
  7. 横方向へ一連に並ぶ前記型枠パネルのグループには、少なくとも1つの前記横架設材が設置されている請求項1ないし請求項6いずれかに記載の型枠構造物。
  8. 上下方向へ一連に並ぶ前記型枠パネルのグループでは、上下方向下方に位置する前記型枠パネルに対する前記横架設材の設置数が上下方向上方に位置する該型枠パネルに対する該横架設材のそれよりも多い請求項1ないし請求項7いずれかに記載の型枠構造物。
  9. 前記横方向へ一連に並ぶ前記型枠パネルのグループでは、2つの前記横架設材が前記型枠パネルの横方向へ延びる上下端部に配置され、1つの前記横架設材が前記型枠パネルの中央部に配置されている請求項1ないし請求項8いずれかに記載の型枠構造物。
  10. 前記傾斜材の上端部が、上下方向へ一連に並ぶ前記型枠パネルのグループのうちの一番下に位置する型枠パネルに対して設置された横架設材に固定され、または、上下方向へ一連に並ぶ前記型枠パネルのグループのうちの下から2番目に位置する型枠パネルに対して設置された横架設材に固定されている請求項1ないし請求項9いずれかに記載の型枠構造物。
  11. 前記縦架設材が、前記型枠パネルに当接して上下方向へ直状に延びる第1垂直材と、前記第1垂直材から前後方向前方へ所定寸法離間して上下方向へ直状に延びる第2垂直材と、前記第1垂直材と前記第2垂直材との間に位置して上下方向へジグザグに延びるトラス材とから作られたトラス構造物であり、前記トラス構造物の上端部が、前記第1固定位置に所定の固定手段を介して強固に固定され、前記トラス構造物の下端部が、前記第2固定位置に所定の固定手段を介して強固に固定されているとともに、前記水平材の後端部が、前記トラス構造物の第1垂直材に強固に固定されている請求項1ないし請求項10いずれかに記載の型枠構造物。
  12. 前記型枠パネルの少なくとも1つには、前記壁面と前記型枠パネルとの間の空間にコンクリートを打設する打設口が作られ、前記型枠パネルの少なくとも1つには、前記空間にコンクリートを打設するときに、前記空間へのコンクリートの打設状態を確認可能な確認窓が作られている請求項1ないし請求項11いずれかに記載の型枠構造物。
  13. 前記型枠パネルが、前記壁面に対向する所定面積の対向面および前記縦架設材に当接する所定面積の当接面と上下面および両側面とを有する6面体であり、前記型枠パネルの6面には、該型枠パネルのコンクリートに対する摩擦抵抗を低下させるとともに該パネル全体の強度を増加させる合成樹脂が塗布されている請求項12に記載の型枠構造物。
  14. 前記合成樹脂が、イソシアネートと特殊アミンとからなるポリウレア樹脂であり、硬化した前記ポリウレア樹脂による所定厚みの平滑な被膜層が、前記型枠パネルの6面に形成されている請求項13に記載の型枠構造物。
  15. 前記建造物が、既設のそれであり、前記型枠構造物が、既設の前記建造物の壁面に作られる鉄筋コンクリート製の耐震補強壁の構築に利用される請求項1ないし請求項14いずれかに記載の型枠構造物。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN109057318A (zh) * 2018-09-25 2018-12-21 韶关学院 装配式建筑模板体系与墙体模块

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