図1は、耐震補強壁11の施工手順の一例を示す図であり、図2は、図1の側面図である。図3は、図1から続く耐震補強壁の施工手順を示す図であり、図4は、図3の側面図である。図1,2では、上下方向を矢印Aで示し、横方向の矢印B(図1のみ)で示すとともに、前後方向を矢印C(図2のみ)で示す。なお、図1,2は、第1位置決め工程や第2位置決め工程、アングル第1設置工程、アングル第2設置工程が終了した状態を示し、図3,4は、トラス構造物第1固定工程(縦架設材第1固定工程)が終了した状態を示す。図3,4では、内側空間40に配筋される鉄筋(埋込アンカー、縦筋、横筋、柱筋、フープ筋、あばら筋、斜め補強筋等)の図示を省略している。
補強壁構築方法は、既設の建物(建造物)の強度を構造計算によって求めた上で最適な複数の構築箇所を選定し、それら構築箇所に鉄筋コンクリート製の耐震補強壁11(補強壁)(図23参照)を作る。補強壁構築方法では、耐震補強壁11を作る構築箇所に複数本の鉄筋(図示せず)を配筋するとともに型枠10を組み立て(図18〜図20参照)、型枠10の内側空間40(第1および第2型枠パネル29a〜29c,30a〜30cの間)にコンクリート41(図参照)を打設する。打設したコンクリート41を所定期間養生した後、組み立てた型枠10を解体することで鉄筋コンクリート製の耐震補強壁11が作られる。なお、図1,2では、建物の柱12A,12Bと梁(天井梁13A、床梁13B)との間に耐震補強壁11を構築する場合を図示しているが、柱と梁との間のみならず、この補強壁構築方法では、壁梁の間や床スラブの間等の既設の建物のあらゆる箇所に耐震補強壁11を作ることができる。
補強壁構築方法では、型枠組立工程、コンクリート打設工程、型枠解体工程の各工程が型枠組立工程→コンクリート打設工程→型枠解体工程の順で実施される。型枠組立工程には、第1位置決め工程、第2位置決め工程、アングル第1設置工程、アングル第2設置工程、トラス構造物第1固定工程(縦架設材第1固定工程)、型枠パネル第1固定工程、型枠パネル第2固定工程、トラス構造物第2固定工程(縦架設材第2固定工程)、横架設材第1固定工程、横架設材第2固定工程が含まれる。
型枠組立工程では、それら各工程が第1位置決め工程→第2位置決め工程→アングル第1設置工程→アングル第2設置工程→トラス構造物第1固定工程→型枠パネル第1固定工程→型枠パネル第2固定工程→トラス構造物第2固定工程→横架設材第1固定工程→横架設材第2固定工程の順で行われる。なお、この実施の形態の型枠組立工程では、トラス構造物第1固定工程、型枠パネル第1固定工程、型枠パネル第2固定工程、トラス構造物第2固定工程の各工程を2回行うが、構築する耐震補強壁11の横方向の寸法に応じてそれら各工程を1回のみ行う場合、または、それら各工程を3回以上行う場合がある。
第1位置決め工程では、建物内部の耐震補強壁11の構築箇所の天井梁13Aの底面(構築箇所上部)に後記する第1〜第3トラス構造物22a〜22c(第1〜第nトラス構造物)(第1アングル18)および第1型枠パネル29a〜29cを設置する上方第1取付位置14(上方第1墨出し位置)を正確に位置決め(墨出し)するとともに、床梁12Bの頂面(構築箇所下部)に第1〜第3トラス構造物22a〜22c(第1〜第nトラス構造物)(第2アングル19)および第1型枠パネル29a〜29cを設置する下方第1取付位置15(下方第1墨出し位置)を正確に位置決め(墨出し)する。第1位置決め工程によって取付位置14,15を決めた後、上方第1取付位置14に横方向へ延びる上方第1ライン(墨出し線)(図示せず)を引くとともに、下方第1取付位置15に横方向へ延びる下方第1ライン(墨出し線)(図示せず)を引く。
第2位置決め工程では、構築箇所の天井梁13Aの底面(構築箇所上部)に第1〜第3トラス構造物22a〜22c(第1〜第nトラス構造物)(第3アングル20)および第2型枠パネル30a〜30cを設置する上方第2取付位置16(上方第2墨出し位置)を正確に位置決め(墨出し)するとともに、床梁13Bの頂面(構築箇所下部)に第1〜第3トラス構造物22a〜22c(第1〜第nトラス構造物)(第4アングル21)および第2型枠パネル30a〜30cを設置する下方第2取付位置17(下方第2墨出し位置)を正確に位置決め(墨出し)する。
上方第2取付位置16は、上方第1取付位置14から前後方向前方へ所定寸法離間した位置であり、下方第2取付位置17は、下方第1取付位置15から前後方向前方へ所定寸法離間した位置である。第2位置決め工程によって取付位置16,17を決めた後、上方第2取付位置16に横方向へ延びる上方第2ライン(墨出し線)(図示せず)を引くとともに、下方第2取付位置17に横方向へ延びる下方第2ライン(墨出し線)(図示せず)を引く。上方第2取付位置16の上方第1取付位置14から前後方向前方への離間寸法および下方第2取付位置17の下方第1取付位置15から前後方向前方への離間寸法は同一である。
天井梁13Aの底面に上方第1ラインおよび上方第2ラインを引くとともに、床梁13Bの頂面に下方第1ラインおよび下方第2ラインを引いた後、図示はしていないが、それらラインの間に鉄筋(埋込アンカー、縦筋、横筋、柱筋、フープ筋、あばら筋、斜め補強筋等)を配筋する配筋工程を行う。なお、配筋工程では、既存の手順で鉄筋を第1ラインと第2ラインと間に据え付ける。ラインの間(第1取付位置14,15と第2取付位置16,17との間)に鉄筋を配筋した後、アングル第1設置工程およびアングル第2設置工程を行う。なお、それらアングル設置工程を行った後に鉄筋を配筋してもよい。
アングル第1設置工程では、上方第1取付位置14の上方第1ラインに沿って第1アングル18を設置し、下方第1取付位置15の下方第1ラインに沿って第2アングル19を設置する。アングル第2設置工程では、上方第2取付位置16の上方第2ラインに沿って第3アングル20を設置し、下方第2取付位置17の下方第2ラインに沿って第4アングル21を設置する。
アングル第1設置工程では、上方第1取付位置14の上方第1ラインに沿って横方向へ並ぶ複数のアンカーホールを穿孔し、それらアンカーホールに樹脂アンカーや機械式アンカーを設置する。次に、第1〜第3トラス構造物22a〜22cの上端部(寸法調節材の固定端部)が上方第1取付位置14に正確に位置するように、第1アングル18を上方第1ラインに配置し、第1アングル18に形成されたボルト孔にアンカーボルトを挿通するとともにそのアンカーボルトをアンカーホールに螺着して第1アングル18を上方第1取付位置14に強固に固定する。
さらに、下方第1取付位置15の下方第1ラインに沿って横方向へ並ぶ複数のアンカーホールを穿孔し、それらアンカーホールに樹脂アンカーや機械式アンカーを設置する。次に、第1〜第3トラス構造物22a〜22cの下端部が下方第1取付位置15に正確に位置するように、第2アングル19を下方第1ラインに配置し、第2アングル19に形成されたボルト孔にアンカーボルトを挿通するとともにそのアンカーボルトをアンカーホールに螺着して第2アングル19を下方第1取付位置15に強固に固定する。
アングル第2設置工程では、上方第2取付位置16の上方第2ラインに沿って横方向へ並ぶ複数のアンカーホールを穿孔し、それらアンカーホールに樹脂アンカーや機械式アンカーを設置する。次に、第1〜第3トラス構造物22a〜22cの上端部(寸法調節材の固定端部)が上方第2取付位置16に正確に位置するように、第3アングル20を上方第2ラインに配置し、第3アングル20に形成されたボルト孔にアンカーボルトを挿通するとともにそのアンカーボルトをアンカーホールに螺着して第3アングル20を上方第2取付位置16に強固に固定する。
さらに、下方第2取付位置17の下方第2ラインに沿って横方向へ並ぶ複数のアンカーホールを穿孔し、それらアンカーホールに樹脂アンカーや機械式アンカーを設置する。次に、第1〜第3トラス構造物22a〜22cの下端部が下方第2取付位置17に正確に位置するように、第4アングル21を下方第2ラインに配置し、第4アングル21に形成されたボルト孔にアンカーボルトを挿通するとともにそのアンカーボルトをアンカーホールに螺着して第4アングル21を下方第2取付位置17に強固に固定する。
それら取付位置14〜17に第1〜第4アングル18〜21を取り付けた後、トラス構造物第1固定工程(縦架設材第1固定工程)を行う。トラス構造物第1固定工程では、型枠パネル第1固定工程において上下方向に重ねる1組の第1型枠パネル29a〜29cに対応する位置に第1トラス構造物22a(第1縦架設材)を取り付けるとともに、型枠パネル第2固定工程において上下方向に重ねる1組の第2型枠パネル30a〜30cに対応する位置に第1トラス構造物22a(第1縦架設材)を取り付ける。
第1トラス構造物22aや第2〜第3トラス構造物22b,22cは、図4に示すように、上下方向へ直状に延びる第1垂直材23と、第1垂直材23から前後方向へ所定寸法離間して上下方向へ直状に延びる第2垂直材24と、第1垂直材23と第2垂直材24との間に位置して上下方向へジグザグに延びるトラス材25と、トラス構造物22a〜22cの高さ寸法を調節可能な寸法調節材26とから作られている。トラス構造物22a〜22cでは、第1垂直材23とトラス材25とがボルトおよびナットによって強固に連結され、第2垂直材24とトラス材25とがボルトおよびナットによって強固に連結されている。
寸法調節材26は、第1アングル18や第3アングル20を介して天井梁13Aの底面に固定される固定端部27と、第1垂直材23の側に位置して第1垂直材23に対する上下方向の固定位置を調節可能な開口部28とを有する。なお、第1垂直材23の上端部の寸法調節材26の開口部28に対する固定位置を調節(固定ボルトおよびナットによって第1垂直材23の上端部を寸法調節材26の開口部28に固定)することにより、開口部28の長さ寸法の限度でトラス構造物22a〜22cの上下方向の高さ寸法を調節することができる。寸法調節材26によってトラス構造物22a〜22cの上下方向の寸法を調節することで、トラス構造物22a〜22cの上下方向の寸法を耐震補強壁11の構築箇所の高さ寸法に一致させることができる。
トラス構造物第1固定工程では、第2アングル19に穿孔されたボルト螺着孔と第1トラス構造物22aの第1垂直材23の下端部に穿孔されたボルト螺着孔とにアジャスターボルトを螺着し、そのボルトにナットを螺着して第1垂直材23の下端部を第2アングル19に強固に固定する。第1トラス構造物22aの上下方向の高さ寸法を調節するために、第1垂直材23の上端部の寸法調節材26の開口部28に対する固定位置を決める。固定位置を決めた後、その固定位置において第1垂直材23の上端部を寸法調節材26の開口部28に強固に固定する。第1垂直材23の上端部と寸法調節材26とは固定ボルトおよびナットを介して固定される。さらに、第1アングル18に穿孔されたボルト螺着孔と寸法調節材26の固定端部27に穿孔されたボルト螺着孔とにアジャスターボルトを螺着し、そのボルトにナットを螺着して寸法調節材26の固定端部27を第1アングル18に強固に固定する。第1トラス構造物22aを第1および第2アングル18,19に取り付けることで、図4に示すように、第1トラス構造物22aが上方第1取付位置14と下方第1取付位置15との間(第1および第2アングル18,19の間)に設置される。
トラス構造物第1固定工程では、第4アングル21に穿孔されたボルト螺着孔と第1トラス構造物22aの第1垂直材23の下端部に穿孔されたボルト螺着孔とにアジャスターボルトを螺着し、そのボルトにナットを螺着して第1垂直材23の下端部を第4アングル21に強固に固定する。第1トラス構造物22aの上下方向の高さ寸法を調節するために、第1垂直材23の上端部の寸法調節材26の開口部28に対する固定位置を決める。固定位置を決めた後、その固定位置において第1垂直材23の上端部を寸法調節材26の開口部28に強固に固定する。さらに、第3アングル20に穿孔されたボルト螺着孔と寸法調節材26の固定端部27に穿孔されたボルト螺着孔とにアジャスターボルトを螺着し、そのボルトにナットを螺着して寸法調節材26の固定端部27を第3アングル20に強固に固定する。第1トラス構造物22aを第3および第4アングル20,21に取り付けることで、図4に示すように、第1トラス構造物22aが上方第2取付位置16と下方第2取付位置17との間(第3および第4アングル20,21の間)に設置される。
図5は、図3から続く耐震補強壁11の施工手順の一例を示す図であり、図6は、一例として示す型枠パネル29a〜29cの斜視図である。図7は、図6の7−7線端面図であり、図8は、図5から続く耐震補強壁11の施工手順の一例を示す図であり、図9は、図5および図8の側面図である。なお、図5は、型枠パネル第1固定工程が終了した状態を示し、図8は、型枠パネル第2固定工程が終了した状態を示す。図5,8,9では、内側空間40に配筋された鉄筋の図示を省略している。
第1トラス構造物22aを各取付位置14〜17に設置した後(トラス構造物第1固定工程が終了した後)、型枠パネル第1固定工程を行う。型枠パネル第1固定工程では、図5,9に示すように、第1トラス構造物22aに対して3枚の第1型枠パネル29a〜29cをパネル29c→パネル29b→パネル29aの順に設置する。なお、この実施の形態では、3枚のパネル29a〜29cを設置する例を示しているが、構築する耐震補強壁11の上下方向の寸法やパネルの上下方向の寸法によっては、上下方向に2枚のパネルを設置する場合や上下方向に4枚以上のパネルを設置する場合もある。
第1型枠パネル29a〜29c(第2型枠パネル30a〜30cを含む)は、所定の厚み寸法を有する平面形状が四角形の板状に成型されている。第1型枠パネル29a〜29cは、第2型枠パネル30a〜30cに対向する所定面積の対向面30、対向面30の反対側に位置してトラス構造物22a〜f(第1垂直材23)に当接する所定面積の当接面31、上面および下面32,33、両側面34,35を有する6面体である。第2型枠パネル30a〜30cは、第1型枠パネル29a〜29cに対向する所定面積の対向面30、対向面30の反対側に位置してトラス構造物22a〜22f(第2垂直材24)に当接する所定面積の当接面31、上面および下面32,33、両側面34,35を有する6面体である。
なお、それら型枠パネル29a〜29c,30a〜30cの上下方向の寸法や横方向の寸法、厚み寸法に特に限定はなく、構築する耐震補強壁11の横方向の寸法や厚み寸法等を考慮した構造計算によってパネル29a〜29c,30a〜30cの各寸法が決定される。また、それら寸法の異なる各種複数のパネル29a〜29c,30a〜30cを用意し、型枠10を組み立てる際にそれらを適宜組み合わせて使用することもできる。
型枠パネル29a〜29c,30a〜30cは、その製造工場において製造され、耐震補強壁11の構築現場に搬送された後、そのまま使用される場合の他、構築現場においてそれを所望の寸法に切断し、構築する耐震補強壁11の上下方向の寸法や横方向の寸法にあわせて使用することもできる。補強壁構築方法は、耐震補強壁11の構築現場において、型枠パネル29a〜29c,30a〜30cを所望の寸法に加工(切断)し、型枠パネル29a〜29c,30a〜30cの上下方向の寸法や横方向の寸法を自由に変えることができるから、鋼材型枠等のあらかじめ寸法が決まった型枠部材と比較し、構築する耐震補強壁11の上下方向の寸法や横方向の寸法にあわせた型枠10を容易に組み立てることができ、それぞれ上下方向の寸法や横方向の寸法が異なる既設の建物(建造物)の耐震改修において、構造計算どおりの耐震補強壁11を構築することができる。
第1および第2型枠パネル29a〜29c,30a〜30cは、ポリスチレンフォーム、硬質ウレタンフォーム、発泡ポリエチレン、フェノールフォーム等から作られている。それら型枠パネル29a〜29c,30a〜30cには、図6,7に示すように、その6面31〜36にイソシアネートと特殊アミンとからなるポリウレア樹脂37(合成樹脂)が塗布(スプレー塗布)されている。それら型枠パネル29a〜29c,30a〜30cの6面31〜36には、硬化したポリウレア樹脂37による所定厚みの平滑な被膜層が形成されている。それら型枠パネル29a〜29c,30a〜30cの6面31〜36に塗布されたポリウレア樹脂37によって6面31〜36の凹凸が修正され、6面31〜36が平滑に加工されている。
第1および第2型枠パネル29a〜29c,30a〜30cは、硬化したポリウレア樹脂37によって形成された被膜層により、6面31〜36における摩擦抵抗が大幅に低下し、養生後のコンクリート41が6面31〜36に付着することなく、コンクリート41に対する離型が容易である。さらに、硬化したポリウレア樹脂37によって形成された被膜層により、パネル29a〜29c,30a〜30cの強度が大幅に増加し、パネル29a〜29c,30a〜30cを上下方向へ重ねたときのその座屈や破損が防止されるのみならず、パネル29a〜29c,30a〜30cの曲がり変形が防止される。
なお、第1および第2型枠パネル29a〜29c,30a〜30cにポリウレア樹脂37が塗布されていなくてもよい。また、第1および第2型枠パネル29a〜29c,30a〜30cが強化プラスチックや透明な合成樹脂の板、木材(ベニヤ板)から作られていてもよい。この場合においても、パネル29a〜29c,30a〜30cの6面31〜36にポリウレア樹脂37が塗布されることが好ましい。また、第1および第2型枠パネル29a〜29c,30a〜30cには、ポリウレア樹脂37ではなく、その6面31〜36を平滑にすることが可能であれば、他の熱可塑性合成樹脂(ポリウレタンやポリスチレン、強化プラスチック用塗料等)や熱硬化性合成樹脂を塗布することもできる。
第1型枠パネル29a〜29cの当接面32には、前後方向後方へ突出して横方向へ並ぶ把持可能な2つの取っ手38が取り付けられている。第2型枠パネル30a〜30cの当接面32には、前後方向前方へ突出して横方向へ並ぶ把持可能な2つの取っ手38が取り付けられている。それら取っ手38は、コ字状の金属棒であり、その両端部がパネル29a〜29c,30a〜30cを貫通するとともに、パネル29a〜29c,30a〜30cの対向面31に設置された固定板39に固定されている。
第2型枠パネル30a〜30cには、第1および第2型枠パネル29a〜29c,30a〜30cの間の内側空間40にコンクリート41を打設する(流入させる)ための打設口42が作られている。打設口42では、パネル30aが四角形にくり抜かれ、そこに金属製の口筒を有する四角形の鉄板が固定されている。なお、2枚以上の第2型枠パネル30a〜30cに打設口42が作られていてもよく、第1型枠パネル29a〜29cのいずれかに打設口42が作られていてもよい。第2型枠パネル30b,30cには、空間40にコンクリート41を打設するときに、空間40へのコンクリート41の打設状態を確認可能な四角形の確認窓43が作られている。確認窓43では、パネル30b,30cが四角形にくり抜かれ、そこに透明な四角形の合成樹脂板が嵌め込まれている。なお、第1型枠パネル29a〜29cのいずれかに確認窓43が作られていてもよい。
型枠パネル第1固定工程では、パネル29cの下面34が下方第1ライン(下方第1設置位置15)に位置するとともに、パネル29aの上面33が上方第1ライン(上方第1設置位置14)に位置するように、第1トラス構造物22aの直前にそれらパネル29a〜29cを配置する。型枠パネル第1固定工程において第1型枠パネル29a〜29cは、建物内部の耐震補強壁11の構築箇所の天井梁13Aの底面(構築箇所上部)(なお、床スラブに設置する場合は、天井の床スラブの底面)の正確に位置決めされた上方第1取付位置14と構築箇所の床梁13Bの頂面(構築箇所下部)(なお、床スラブに設置する場合は、床の床スラブの頂面)の正確に位置決めされた下方第1取付位置15との間に設置される。
型枠パネル第1固定工程において第1トラス構造物22aの直前にそれらパネル29a〜29cを配置すると、図9に示すように、第1アングル18の天井梁13Aの底面から下方に延びる部分がパネル29aの上端部に当接するとともに、第2アングル19の床梁13Bの頂面から上方に延びる部分がパネル29cの下端部に当接し、パネル29a,29cの残余の部位における当接面32とパネル29bの当接面32とが第1アングル18の天井梁13Aの底面から下方に延びる部分や第2アングル19の床梁13Bの頂面から上方に延びる部分よりもわずか前方に位置し、パネル29a,29cの残余の部位における当接面32とパネル29bの当接面32とが第1トラス構造物22aの第1垂直材23に当接する。
第1型枠パネル29a〜29cを設置すると、最下に位置するパネル29cの下面34が床梁15Bの頂面の下方第1設置位置15に位置し、パネル29cの上面33が中間に位置するパネル29bの下面34に当接(密着)し、パネル29cとパネル29bとが上下方向へ重なり合う。中間に位置するパネル29bの上面33が最上に位置するパネル29aの下面34に当接(密着)し、パネル29bとパネル29aとが上下方向へ重なり合い、パネル29aの上面33が天井梁13Aの底面の上方第1設置位置14に位置する。それらパネル29a〜29cの側面35は、柱12Aに当接(密着)する。
第1型枠パネル29a〜29cを配置した後、パネル29a〜29cに取り付けられた取っ手38に連結布紐44(連結部材)を結び付けるとともに、その布紐44を第1トラス構造物22aの第2垂直材24に結び付ける。連結部材には、布紐44の他に、伸縮性を有するゴムバンド、プラスチックバンド、金属線バンド等を使用することもできる。連結部材としてゴムバンドを使用する場合、そのゴムバンドを取っ手38から伸長させた状態でトラス構造物22aに引っ掛ける。
取っ手38と第1トラス構造物22aとを布紐44で連結することで、パネル29a〜29cがトラス構造物22aに連結されてパネル29a〜29cがトラス構造物22aに支持され、上方第2取付位置16と下方第2取付位置17との間に設置された第1トラス構造物22aの側へのパネル29a〜29cの倒れ込みが防止される。なお、第1型枠パネル29a〜29cを配置すると、第1トラス構造物22aがパネル29a〜29cの一方の側部に位置する。
上方第1取付位置14と下方第1取付位置15との間に第1型枠パネル29a〜29cを設置した後(型枠パネル第1固定工程が終了した後)、型枠パネル第2固定工程を行う。型枠パネル第2固定工程では、図8,9に示すように、第1トラス構造物22aに対して3枚の第2型枠パネル30a〜30cをパネル30c→パネル30b→パネル30aの順に設置する。
型枠パネル第2固定工程では、パネル30cの下面34が下方第2ライン(下方第2設置位置17)に位置するとともに、パネル30aの上面33が上方第2ライン(上方第2設置位置16)に位置するように、第1トラス構造物22aの直後にそれらパネル30a〜30cを配置する。型枠パネル第2固定工程において第2型枠パネル30a〜30cは、建物内部の耐震補強壁11の構築箇所の天井梁13Aの底面(構築箇所上部)(なお、床スラブに設置する場合は、天井の床スラブの底面)の正確に位置決めされた上方第2取付位置16と構築箇所の床梁13Bの頂面(構築箇所下部)(なお、床スラブに設置する場合は、床の床スラブの頂面)の正確に位置決めされた下方第1取付位置17との間に設置される。
型枠パネル第2固定工程において第1トラス構造物22aの直後にそれらパネル30a〜30cを配置すると、図9に示すように、第3アングル20の天井梁13Aの底面から下方に延びる部分がパネル30aの上端部に当接するとともに、第4アングル21の床梁13Bの頂面から上方に延びる部分がパネル30cの下端部に当接し、パネル30a,30cの残余の部位における当接面32とパネル30bの当接面32とが第3アングル20の天井梁13Aの底面から下方に延びる部分や第4アングル21の床梁13Bの頂面から上方に延びる部分よりもわずか後方に位置し、パネル30a,30cの残余の部位における当接面32とパネル30bの当接面32とが第1トラス構造物22aの第1垂直材23に当接する。
第2型枠パネル30a〜30cを設置すると、最下に位置するパネル30cの下面34が床梁15Bの頂面の下方第2設置位置17に位置し、パネル30cの上面33が中間に位置するパネル30bの下面34に当接(密着)し、パネル30cとパネル30bとが上下方向へ重なり合う。中間に位置するパネル30bの上面33が最上に位置するパネル30aの下面34に当接(密着)し、パネル30bとパネル30aとが上下方向へ重なり合い、パネル30aの上面33が天井梁13Aの底面の上方第2設置位置16に位置する。それらパネル30a〜30cの側面35は、柱12Aに当接(密着)する。
第2型枠パネル30a〜30cを配置した後、パネル30a〜30cに取り付けられた取っ手38に連結布紐44(連結部材)を結び付けるとともに、その布紐44を第1トラス構造物22aの第2垂直材24に結び付ける。取っ手38と第1トラス構造物22aとを布紐44で連結することで、パネル30a〜30cがトラス構造物22aに連結されてパネル30a〜30cがトラス構造物22aに支持され、第2型枠パネル29a〜29cの側(上方第1取付位置14と下方第1取付位置15との間に設置された第1トラス構造物22aの側)へのパネル30a〜30cの倒れ込みが防止される。なお、第2型枠パネル30a〜30cを配置すると、第1トラス構造物22aがパネル30a〜30cの一方の側部に位置する。
図10は、図8から続く耐震補強壁11の施工手順の一例を示す図であり、図11は、図10から続く耐震補強壁11の施工手順の一例を示す図である。なお、図11は、トラス構造物第2固定工程が終了した状態を示す。図10,11では、内側空間40に配筋された鉄筋の図示を省略している。なお、この実施の形態では、トラス構造物第1固定工程およびトラス構造物第2固定工程において、3個のトラス構造物22a〜22cを設置する例を示しているが、構築する耐震補強壁11の上下方向の寸法や横方向の寸法、厚み寸法によっては、1個または2個のトラス構造物を設置する場合、または、4個以上のトラス構造物を設置する場合がある。
第1および第2型枠パネル29a〜29c,30a〜30cを設置した後(型枠パネル第2固定工程が終了した後)、トラス構造物第2固定工程(縦架設材第2固定工程)を行う。トラス構造物第2固定工程では、パネル設置工程において上下方向に重ねた1組の第1型枠パネル29a〜29cの直後にあらたに2個の第2および第3トラス構造物22b,22cを取り付ける。トラス構造物第2固定工程では、図10に示すように、第2トラス構造物22bがパネル29a〜29cの横方向中央部に位置するようにトラス構造物22bを上方第1取付位置14と下方第1取付位置15との間に設置するとともに、第3トラス構造物22cがパネル29a〜29cの他方の側部に位置するようにトラス構造物22cを上方第1取付位置14と下方第1取付位置15との間に設置する。第2および第3トラス構造物22b,22cの上下方向の高さ寸法を調節しつつ、第2アングル19に第1垂直材38の下端部を固定するとともに、第1アングル18に寸法調節材26の固定端部27を固定すると、天井梁13Aの底面と床梁13Bの頂面との間において上下方向へ延びる3個のトラス構造物22a〜22cが横方向へ所定寸法離間して設置される。
第1型枠パネル29a〜29cに対する第2および第3トラス構造物22b,22cの設置手順は、トラス構造物第1固定工程における第1トラス構造物22aのそれと同一であるから、トラス構造物第1固定工程の説明を援用し、その説明は省略する。トラス構造物第2固定工程において第2および第3トラス構造物22b,22cを設置すると、パネル29a,29cの残余の部位における当接面32とパネル29bの当接面32とが第2および第3トラス構造物22b,22cの第1垂直材23に当接する。第2および第3トラス構造物22b,22cを設置した後、パネル29a〜29cに取り付けられた取っ手38に連結布紐44を結び付けるとともに、その布紐44を第2および第3トラス構造物22b,22cの第2垂直材24に結び付ける。
なお、第2および第3トラス構造物22b,22cを設置すると、一方のトラス構造物22bがパネル29a〜29cの中央部に位置し、他方のトラス構造物22cがパネル29a〜29cの他方の側部に位置する。第1型枠パネル29a〜29cの直後に横方向へ並ぶ3個の第1〜第3トラス構造物22a〜22cが設置されることにより、内側空間40にコンクリート41を打設したときの第1型枠パネル29a〜29cの前後方向後方への変形や積み重ねたそれらパネル29a〜29cの崩落が防止される。
トラス構造物第2固定工程では、パネル設置工程において上下方向に重ねた1組の第2型枠パネル30a〜30cの直前にあらたに2個の第2および第3トラス構造物22b,22cを取り付ける。トラス構造物第2固定工程では、図11に示すように、第2トラス構造物22bがパネル30a〜30cの横方向中央部に位置するようにトラス構造物22bを上方第2取付位置16と下方第2取付位置17との間に設置するとともに、第3トラス構造物22cがパネル30a〜30cの他方の側部に位置するようにトラス構造物22cを上方第2取付位置16と下方第2取付位置17との間に設置する。第2および第3トラス構造物22b,22cの上下方向の高さ寸法を調節しつつ、第4アングル21に第1垂直材23の下端部を固定するとともに、第3アングル20に寸法調節材26の固定端部27を固定すると、天井梁13Aの底面と床梁13Bの頂面との間において上下方向へ延びる3個のトラス構造物22a〜22cが横方向へ所定寸法離間して設置される。
第2型枠パネル30a〜30cに対する第2および第3トラス構造物22b,22cの設置手順は、トラス構造物第1固定工程における第1トラス構造物22aのそれと同一であるから、トラス構造物第1固定工程の説明を援用し、その説明は省略する。トラス構造物第2固定工程において第2トラス構造物22b,22cを設置すると、パネル30a,30cの残余の部位における当接面32とパネル30bの当接面32とが第2トラス構造物22b,22cの第1垂直材23に当接する。第2および第3トラス構造物22b,22cを設置した後、パネル30a〜30cに取り付けられた取っ手38に連結布紐44を結び付けるとともに、その布紐44を第2および第3トラス構造物22b,22cの第2垂直材24に結び付ける。
なお、第2および第3トラス構造物22b,22cを設置すると、一方のトラス構造物22bがパネル30a〜30cの中央部に位置し、他方のトラス構造物22cがパネル30a〜30cの他方の側部に位置する。第2型枠パネル30a〜30cの直前に横方向へ並ぶ3個の第1〜第3トラス構造物22a〜22cが設置されることにより、内側空間40にコンクリート41を打設したときの第2型枠パネル30a〜30cの前後方向後方への変形や積み重ねたそれらパネル30a〜30cの崩落が防止される。
図12は、図11から続く耐震補強壁11の施工手順の一例を示す図であり、図13は、図12から続く耐震補強壁11の施工手順の一例を示す図である。図14は、図13から続く耐震補強壁11の施工手順の一例を示す図であり、図15は、図14から続く耐震補強壁11の施工手順の一例を示す図である。なお、図13は、トラス構造物第1固定工程が終了した状態を示す。図14は、型枠パネル第1固定工程が終了した状態を示し、図15は、型枠パネル第2固定工程が終了した状態を示す。図12,13では、内側空間40に配筋された鉄筋の図示を省略している。
第2および第3トラス構造物22b,22cを各取付位置14〜17に設置した後(トラス構造物第2固定工程が終了した後)、図12,13に示すように、再びトラス構造物第1固定工程を行う。トラス構造物第1固定工程では、図12に示すように、第1トラス構造物22aを型枠パネル第1固定工程において設置した第1型枠パネル29a〜29cの横方向側方であって上方第1取付位置14と下方第1取付位置15との間に設置するとともに、図13に示すように、第1トラス構造物22aを型枠パネル第2固定工程において設置した第2型枠パネル30a〜30cの横方向側方であって上方第2取付位置16と下方第2取付位置17との間に設置する。トラス構造物第1固定工程における第1トラス構造物22aの設置手順は、図3,4において説明したそれと同一であるから、その説明は省略する。
第1トラス構造物22aを各取付位置14〜17に取り付けた後(トラス構造物第1固定工程が終了した後)、図14に示すように、再び型枠パネル第1固定工程を行う。型枠パネル第1固定工程では、第1トラス構造物22aに対して3枚の第1型枠パネル29a〜29cをパネル29c→パネル29b→パネル29aの順に設置する。型枠パネル第1固定工程における第1型枠パネル29a〜29cの設置手順は、図5において説明したそれと同一であるから、その説明は省略する。
第1トラス構造物22aの直前にそれらパネル29a〜29cを配置すると、パネル29a,29cの残余の部位における当接面32とパネル29bの当接面32とが第1トラス構造物22aの第1垂直材23に当接する。また、最下に位置するパネル29cの下面34が床梁13Bの頂面の下方第1設置位置15に位置し、パネル29cの上面33が中間に位置するパネル29bの下面34に当接(密着)し、パネル29cとパネル29bとが上下方向へ重なり合う。中間に位置するパネル29bの上面33が最上に位置するパネル29aの下面34に当接(密着)し、パネル29bとパネル29aとが上下方向へ重なり合い、パネル20aの上面33が天井梁13Aの底面の上方第1設置位置14に位置する。それらパネル29a〜29cの側面26,27は、先に設置したパネル29a〜29cの側面27と柱12Bとに当接(密着)する。型枠パネル第1固定工程を再度行って第1型枠パネル29a〜29cを配置した後、パネル29a〜29cの取っ手38に連結布紐44を結び付けるとともに、その布紐44を第1トラス構造物22aの第2垂直材24に結び付ける。
第1型枠パネル29a〜29cを設置した後(型枠パネル第1固定工程が終了した後)、図15に示すように、再び型枠パネル第2固定工程を行う。型枠パネル第2固定工程では、第1トラス構造物22aに対して3枚の第2型枠パネル30a〜30cをパネル30c→パネル30b→パネル30aの順に設置する。型枠パネル第2固定工程における第2型枠パネル30a〜30cの設置手順は、図8において説明したそれと同一であるから、その説明は省略する。
第1トラス構造物22aの直後にそれらパネル30a〜30cを配置すると、パネル30a,30cの残余の部位における当接面32とパネル30bの当接面32とが第1トラス構造物22aの第1垂直材23に当接する。また、最下に位置するパネル30cの下面34が床梁13Bの頂面の下方第2設置位置17に位置し、パネル30cの上面33が中間に位置するパネル30bの下面34に当接(密着)し、パネル30cとパネル30bとが上下方向へ重なり合う。中間に位置するパネル30bの上面33が最上に位置するパネル30aの下面34に当接(密着)し、パネル30bとパネル30aとが上下方向へ重なり合い、パネル30aの上面33が天井梁13Aの底面の上方第2設置位置16に位置する。それらパネル30a〜30cの側面26,27は、先に設置したパネル30a〜30cの側面27と柱12Bとに当接(密着)する。型枠パネル第2固定工程を再度行って第2型枠パネル30a〜30cを配置した後、パネル30a〜30cの取っ手38に連結布紐44を結び付けるとともに、その布紐44を第1トラス構造物22aの第2垂直材24に結び付ける。
図16は、図15から続く耐震補強壁11の施工手順の一例を示す図であり、図17は、図16から続く耐震補強壁11の施工手順の一例を示す図である。図18は、図17から続く耐震補強壁11の施工手順の一例を示す図であり、図19は、図18から続く耐震補強壁11の施工手順の一例を示す図である。図20は、図19の側面図である。なお、図17は、トラス構造物第2固定工程が終了した状態を示す。図18は、横架設材第1固定工程が終了した状態を示し、図19は、横架設材第2固定工程が終了した状態を示す。図20では、内側空間40に配筋された鉄筋の図示を省略している。
第1および第2型枠パネル29a〜29c,30a〜30cを設置した後(型枠パネル第2固定工程が終了した後)、再びトラス構造物第2固定工程を行う。トラス構造物第2固定工程では、図16に示すように、第2トラス構造物22bが第1型枠パネル29a〜29cの横方向中央部に位置するようにトラス構造物22bを上方第1取付位置14と下方第1取付位置15との間に設置するとともに、第3トラス構造物22cがパネル29a〜29cの他方の側部に位置するようにトラス構造物22cを上方第1取付位置14と下方第1取付位置15との間に設置する。
トラス構造物第2固定工程を再度行って第2および第3トラス構造物22b,22cを設置すると、パネル29a,29cの残余の部位における当接面32とパネル29bの当接面32とが第2および第3トラス構造物22b,22cの第1垂直材23に当接する。トラス構造物22b,22cを設置した後、パネル29a〜29cに取り付けられた取っ手38に連結布紐44を結び付けるとともに、その布紐44をトラス構造物22b,22cの第2垂直材24に結び付ける。なお、一方のトラス構造物22bがパネル29a〜29cの中央部に位置し、他方のトラス構造物22cがパネル29a〜29cの他方の側部に位置する。第1型枠パネル29a〜29cの直前に横方向へ並ぶ3個の第1トラス構造物18d〜18fを設置することにより、内側空間40にコンクリート41を打設したときのパネル29a〜29cの前後方向前方への変形や積み重ねたそれらパネル29a〜29cの崩落が防止される。
トラス構造物第2固定工程では、図17に示すように、第2トラス構造物22bが第2型枠パネル30a〜30cの横方向中央部に位置するようにトラス構造物22bを上方第2取付位置16と下方第2取付位置17との間に設置するとともに、第3トラス構造物22cがパネル30a〜30cの他方の側部に位置するようにトラス構造物22cを上方第2取付位置16と下方第2取付位置17との間に設置する。
トラス構造物第2固定工程を再度行って第2および第3トラス構造物22b,22cを設置すると、パネル30a,30cの残余の部位における当接面32とパネル30bの当接面32とが第2および第3トラス構造物22b,22cの第1垂直材23に当接する。トラス構造物22b,22cを設置した後、パネル30a〜30cに取り付けられた取っ手38に連結布紐44を結び付けるとともに、その布紐44をトラス構造物22b,22cの第2垂直材24に結び付ける。なお、一方のトラス構造物22bがパネル30a〜30cの中央部に位置し、他方のトラス構造物22cがパネル30a〜30cの他方の側部に位置する。第2型枠パネル30a〜30cの直前に横方向へ並ぶ3個の第1トラス構造物18d〜18fを設置することにより、内側空間40にコンクリート41を打設したときのパネル30a〜30cの前後方向前方への変形や積み重ねたそれらパネル30a〜30cの崩落が防止される。
上下方向へ並ぶ1組の第1型枠パネル29a〜29cの直後に第1〜第3トラス構造物22a〜22cを設置し、上下方向へ並ぶ1組の第2型枠パネル30a〜30cの直前に第1〜第3トラス構造物22a〜22cを設置した後(トラス構造物第2固定工程が終了した後)、横架設材第1固定工程を行う。横架設材第1固定工程では、図18に示すように、横方向へ直状に延びる6本の第1〜第6横架設材45a〜45f(第1〜第n横架設材)を上下方向へ所定寸法離間させた状態で第1〜第3トラス構造物22a〜22cの直後に固定する。横架設材第1固定工程では、固定金具46を利用して第1〜第6横架設材45a〜45fを各トラス構造物22a〜22cの第2垂直材24に強固に固定する。
横架設材第1固定工程において全ての第1〜第6横架設材45a〜45fを第2垂直材24に固定すると、最上に位置する第1型枠パネル29aに対して1本の第1横架設材45aが設置され、第1横架設材45aがパネル29aの前後方向後方であってパネル29aの上下方向の略中央部に位置する。中間に位置する第1型枠パネル29bに対して2本の第2および第3横架設材45b,45cが設置され、第2横架設材45bがパネル29bの前後方向後方であってパネル29bの上半分に位置し、第3横架設材45cがパネル29bの前後方向後方であってパネル29bの下半分に位置する。最下に位置する第1型枠パネル29cに対して3本の第4〜第6横架設材45d〜45fが設置され、第4横架設材45dがパネル29cの前後方向後方であってパネル29cの上部に位置し、第5横架設材45eがパネル29cの前後方向後方であってパネル29cの中間部に位置するとともに、第6横架設材45fがパネル29cの前後方向後方であってパネル29cの下部に位置する。
第1〜第6横架設材45a〜45fをトラス構造物22a〜22cに設置した後(横架設材第1固定工程が終了した後)、横架設材第2固定工程を行う。横架設材第2固定工程では、図19に示すように、横方向へ延びる6本の第1〜第6横架設材45a〜45f(第1〜第n横架設材)を上下方向へ所定寸法離間させた状態で第1〜第3トラス構造物22a〜22cの直前に固定する。横架設材第2固定工程では、固定金具46を利用して第1〜第6横架設材45a〜45fを各トラス構造物22a〜22cの第2垂直材24に強固に固定する。
横架設材第2固定工程において全ての第1〜第6横架設材45a〜45fを第2垂直材24に固定すると、最上に位置する第1型枠パネル30aに対して1本の第1横架設材45aが設置され、第1横架設材45aがパネル30aの前後方向前方であってパネル30aの上下方向の略中央部に位置する。中間に位置する第1型枠パネル30bに対して2本の第2および第3横架設材45b,45cが設置され、第2横架設材45bがパネル30bの前後方向前方であってパネル30bの上半分に位置し、第3横架設材45cがパネル30bの前後方向前方であってパネル30bの下半分に位置する。最下に位置する第1型枠パネル30cに対して3本の第4〜第6横架設材45d〜45fが設置され、第4横架設材45dがパネル30cの前後方向前方であってパネル30cの上部に位置し、第5横架設材45eがパネル30cの前後方向前方であってパネル30cの中間部に位置するとともに、第6横架設材45fがパネル30cの前後方向前方であってパネル30cの下部に位置する。
第1〜第6横架設材45a〜45fは、鉄やアルミ、真鍮、合金等の金属から作られた断面形状が円形の中空の金属筒であるが、鉄やアルミ、真鍮、合金等の金属から作られた断面形状が四角形の中空の金属管を使用することもできるとともに、H型鋼やI型鋼、角型鋼材等の鋼材を使用することもできる。なお、第1型枠パネル29a〜29cの前方に6本の第1〜第6横架設材45a〜45fが設置され、第2型枠パネル30a〜30cの前方に6本の第1〜第6横架設材45a〜45fが設置されているが、設置する横架設材の本数に特に限定はなく、構築する耐震補強壁11の横方向の寸法や厚み寸法等を考慮した構造計算によって使用する横架設材に本数が決定される。
第1〜第6横架設材45a〜45fをトラス構造物22a〜22cに設置することにより、内側空間40にコンクリート41を打設したときのコンクリート41の側圧によるそれらトラス構造物22a〜22cの前後方向への膨隆が押さえられ、トラス構造物22a〜22cの前後方向への変形や横方向への撓みが防止される。その結果、コンクリート41の側圧による第1および第2型枠パネル29a〜29c,30a〜30cの前後方向への膨隆が押さえられ、パネル29a〜29c,30a〜30cの前後方向への変形や積み重ねたパネル29a〜29c,30a〜30cの崩落が防止される。
図21は、図19から続く耐震補強壁11の施工手順の一例を示す側面図であり、図22は、図21から続く耐震補強壁11の施工手順の一例を示す側面図である。図23は、構築された耐震補強壁11の一例を示す図である。図21は、内側空間40へのコンクリート41の打設を示す。図22は、コンクリート打設工程が終了した状態を示し、図23は、型枠解体工程が終了した状態を示す。図21,22では、内側空間40に配筋された鉄筋の図示を省略している。
第1および第2位置決め工程、アングル第1および第2設置工程、トラス構造物第1固定工程、型枠パネル第1および第2固定工程、トラス構造物第2固定工程、横架設材第1および第2固定工程が完了すると、型枠10の組立が終了する。第1型枠パネル29a〜29cと第2型枠パネル30a〜30cとの間には、コンクリート41を打設する所定容積の内側空間40が形成されている。なお、図示はしていないが、空間40にコンクリート41を打設するときの空間40に存在する空気を外部に逃がす空気孔がいずれかのパネル29a〜29c,30a〜30cに形成されている。
型枠10を組み立てた後、コンクリート打設工程を行う。コンクリート打設工程では、図21に示すように、第2型枠パネル30aに形成された打設口42から内側空間40にコンクリート41を打設する。空間40へのコンクリート41の打設は、図示はしていないが、コンクリートミキサーから延びるホースをパネル30aの打設口42に接続し、打設口42から空間40にコンクリート41を圧入する。空間40の空気は、いずれかのパネル29a〜29c,30a〜30cに形成された空気孔から外部に排気される。コンクリート打設工程では、確認窓43から空間40を視認しつつ、確認窓43を利用して空間40へのコンクリート41の打設状態を判断しながら、コンクリート41の打設作業が行われる。
コンクリート打設工程において、パネル30aに作られた打設口42を利用することで、コンクリート41を空間40に容易に打設することができ、建物の内部の耐震補強壁11の構築箇所にコンクリート41を確実に打設することができる。また、空間40へのコンクリート41の打設状態を確認窓43から確認することができるから、空間40全域にコンクリート41を確実に打設することができ、空間40におけるコンクリート41の非打設箇所の発生を防ぐことができる。
コンクリート打設工程によってコンクリート41を空間40に打設すると、空間40に流入したコンクリート41の側圧が第1型枠パネル29a〜29cに作用する。コンクリート12の側圧がパネル29a〜29cに作用すると、各パネル29a〜29cが前後方向前方へ膨隆しようとするが、それらトラス構造物22a〜22cによってパネル29a〜29cの膨隆が押さえられ、コンクリート41の側圧によるパネル29a〜29cの変形や積み重ねたパネル29a〜29cの崩落が防止される。また、コンクリート41の側圧がパネル29a〜29cに作用すると、それによってそれらトラス構造物22a〜22cが前後方向前方へ膨隆しようとするが、第1〜第6横架設材45a〜45fによって各トラス構造物22a〜22cの膨隆が押さえられ、コンクリート41の側圧によるトラス構造物22a〜22cの変形や撓みが防止される。
また、コンクリート打設工程によってコンクリート41を空間40に打設すると、空間40に流入したコンクリート41の側圧が第2型枠パネル30a〜30cに作用する。コンクリート41の側圧がパネル30a〜30cに作用すると、各パネル30a〜30cが前後方向後方へ膨隆しようとするが、それらトラス構造物22a〜22cによってパネル30a〜30cの膨隆が押さえられ、コンクリート41の側圧によるパネル30a〜30cの変形や積み重ねたパネル30a〜30cの崩落が防止される。また、コンクリート41の側圧パネル30a〜30cに作用すると、それによってそれらトラス構造物22a〜22cが前後方向後方へ膨隆しようとするが、第1〜第6横架設材45a〜45fによって各トラス構造物22a〜22cの膨隆が押さえられ、コンクリート41の側圧によるトラス構造物22a〜22cの変形や撓みが防止される。
型枠10では、第1および第2型枠パネル29a〜29c,30a〜30cの6面31〜36にポリウレア樹脂37が塗布され、硬化したポリウレア樹脂37によってパネル29a〜29c,30a〜30c自体の曲げ強度が大幅に増加しているから、コンクリート41の側圧が各パネル29a〜29c,30a〜30cに作用したとしても、パネル29a〜29c,30a〜30cが曲がることはなく、パネル29a〜29c,30a〜30cの直状状態を維持することができる。また、パネル29a〜29c,30a〜30cの強度がポリウレア樹脂37の被膜層によって増加し、使用中におけるパネル29a〜29c,30a〜30cの座屈や破損、曲がり等の変形が防止されるから、パネル29a〜29c,30a〜30cの間の空間41にコンクリート41を十分に滞留させることができる。
空間40にコンクリート41を打設した後、コンクリート41を所定期間養生する。コンクリート41の養生期間が経過した後、型枠解体工程を行う。型枠解体工程では、第1〜第3トラス構造物22a〜22cの第2垂直材25から固定金具46を外し、各トラス構造物22a〜22cから第1〜第6横架設材45a〜45fを取り外す。横架設材45a〜45fを取り外した後、連結布紐44をトラス構造物22a〜22cの第2垂直材24からほどき、第1および第3アングル18,20のボルト螺着孔および寸法調節材26の固定端部27のボルト螺着孔からアジャスターボルトを取り外し、寸法調節材26の固定端部27とアングル18,20との固定を解除するとともに、第2および第4アングル19,21のボルト螺着孔および第1垂直材23の下端部のボルト螺着孔からアジャスターボルトを取り外し、第1垂直材23の下端部とアングル19,21との固定を解除し、天井梁13Aの底面や床梁13Bの頂面からそれらトラス構造物22a〜22cを取り外す。
トラス構造物22a〜22cを取り外した後、床梁13Bの頂面の下方第1取付位置15や下方第2取付位置17に穿孔されたアンカーホールの樹脂アンカーや機械式アンカーからアンカーボルトを抜き取り、床梁13Bとアングル19,21との固定を解除するとともに、天井梁13Aの底面の上方第1取付位置14や上方第2取付位置16に穿孔されたアンカーホールの樹脂アンカーや機械式アンカーからアンカーボルトを抜き取り、天井梁13Aとアングル18,20との固定を解除する。
第1〜第4アングル18〜21を取り外した後、第1および第2型枠パネル29a〜29c,30a〜30cの取っ手38を手で把持しつつ、パネル29a〜29c,30a〜30cを前後方向前方や前後方向後方へ引っ張り、パネル29a〜29c,30a〜30cを取り外す。それらパネル29a〜29c,30a〜30cの6面31〜36にはポリウレア樹脂37が塗布され、6面31〜36の摩擦抵抗が大幅に低下しているから、養生後の硬化したコンクリート41がパネル29a〜29c,30a〜30cに付着することなく、コンクリート41からパネル29a〜29c,30a〜30cを容易に取り外すことができる。型枠10を形成する全ての部材を取り外し、組み立てた型枠10を分解することで、図23に示す新設の鉄筋コンクリート製の耐震補強壁11が作られる。
耐震補強壁構築方法では、第1〜第3トラス構造物22a〜22c(第1〜第nトラス構造物)と第1〜第6横架設材45a〜45f(第1〜第n横架設材)とを利用することで、第1および第2型枠パネル29a〜29c,30a〜30cの間の内側空間40に打設されたコンクリート41の側圧がそれらパネル29a〜29c,30a〜30cに作用したとしても、パネル29a〜29c,30a〜30cが変形することはなく、コンクリート41の側圧に対して型枠10が十分に耐えることができるとともに、パネル29a〜29c,30a〜30cどうしの並行状態を維持することができるから、空間40に打設されたコンクリート41が変形した状態で硬化することはなく、既設の建物の内部に構造計算された設計どおりの新たな鉄筋コンクリート製の耐震補強壁11を作ることができる。
補強壁構築方法は、型枠10を組み立てる際に複数本のセパレータを設置する必要はなく、セパレータを設置する手間や時間を省くことができるのみならず、型枠大工の経験や勘に頼る必要はなく、短時間に効率よく型枠10を組み立てることができるとともに、手間を要さずに廉価に耐震補強壁11を構築することができる。また、補強壁構築方法は、型枠10を組み立てる際に空間40にセパレータを設置する必要がないことから、セパレータが空間40に配筋する鉄筋の邪魔になることはなく、空間40に自由に鉄筋(埋込アンカー、縦筋、横筋、柱筋、フープ筋、あばら筋、斜め補強筋等)を配筋することができ、強固な鉄筋コンクリート製の耐震補強壁11を作ることができる。補強壁構築方法は、パネル29a〜29c,30a〜30cの6面31〜36の強度や平滑度や強度がポリウレア樹脂37の被膜層によって維持されるから、使用済みのパネル29a〜29c,30a〜30cを繰り返して使用することができ、ベニヤ板を使い捨てにする型枠と比較し、型枠10にかかるコストを大幅に低減させることができる。
なお、空間40に打設されたコンクリート41の側圧が下方に位置するパネル29b,29c,30b,30cに大きく作用するが、補強壁構築方法は、中間と最下とに位置するパネル29b,29c,30b,30c(上下方向下方に位置するパネル29b,29c,30b,30c)に対する横架設材の設置本数が最上に位置するパネル29a,30bに対する横架設材のそれよりも多いから、それら第2〜第6横架設材45b〜45fによってそれらパネル29b,29c,30b,30cの前後方向への膨隆が確実に押さえられ、空間40にコンクリート41を打設したときのそれらパネル29b,29c,30b,30cの変形を確実に防ぐことができる。