JP2014185248A - フェノール重合体および成形材料 - Google Patents

フェノール重合体および成形材料 Download PDF

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Abstract

【課題】フェノール重合体を用いた成形加工性を向上させたフェノール樹脂成形材料を提供する。
【解決手段】フェノールと、フェノール誘導体とを、有機溶媒と水溶液の混合溶媒中、酸化還元酵素を触媒として、酸化共重合して得られるフェノール重合体であって、フェノール誘導体が炭素数5〜7の直鎖アルキル基、又はベンジル基を有したものであり、酸化還元酵素が、ペルオキシダーゼまたはオキシダーゼである。フェノール重合体はそのままで成形材料として用いることが可能であり、さらにフェノール重合体にフィラー、硬化剤、充填材を含んでも良い。
【選択図】なし

Description

本発明は、酸化還元酵素を用いたフェノール類の重合方法、その重合方法で得られるフェノール樹脂、および当該樹脂を用いた成形材料に関する。
近年、高分子の合成方法において、酵素反応を定期要する例が見られるようになった。例えば、特許文献1では、フェノール樹脂とアニリン樹脂の特性を併せ持つ共重合体を得ることが目的としたフェノールモノマーとアニリンモノマーを用いた酵素重合法に関して記載されている。同じように特許文献2では、フェノール類とビスフェノール類とを酵素重合させてランダム共重合体を得ることが記載されている。
また、特許文献3では、フェノールとフェノール誘導体を用いて加工性を向上させたフェノール樹脂が記載されており、重合方法として酵素重合法に関して記載されている。当該発明により得られた樹脂は、有機溶媒への溶解性を向上し、フィルム加工性に優れるとの記載はある。
しかしながら、フェノール重合体を成形材料として汎用に用いることについての記載は見られない。
特開平11−286543 特開平7−127354号広報 特開2001−81185号広報
本発明の目的は、フェノール重合体を用いた成形加工性を向上させたフェノール樹脂成形材料を得ることである。
このような課題は、下記(1)〜(8)の本発明により達成される。
(1)フェノール重合体であって、フェノールと、下記一般式(1)で表わされるフェノール誘導体とを、有機溶媒と水溶液の混合溶媒中、酸化還元酵素を触媒として、酸化共重合して得られるフェノール重合体。
(一般式(1)中、Xは炭素数5〜7の直鎖(又は分岐のアルキル基)、フェニル基、ヒドロキシフェニル基、ベンジル基の中から選ばれる置換基を示す。また、Xの位置はオルト、パラ、メタのいずれでもよい。)
(2)前記フェノール誘導体において、一般式(1)のXが炭素数5〜7の直鎖アルキル基、又はベンジル基である(1)に記載のフェノール重合体。
(3)前記フェノール重合体が、水酸基を有するフェニレンユニットと、水酸基のないオキシフェニレンユニットの両方からなることを特徴とする(1)または(2)に記載のフ
ェノール重合体。
(4)前記フェノール重合体の数平均分子量が700〜5000である(1)乃至(3)のいずれか1項に記載のいずれかのフェノール重合体。
(5)前記フェノール重合体の軟化点が50〜150℃、10%重量減少温度が150〜400℃である(1)乃至(4)のいずれか1項に記載のいずれかのフェノール重合体。(6)前記酸化還元酵素が、ペルオキシダーゼまたはオキシダーゼである(1)に記載のフェノール重合体。
(7)前記有機溶媒が炭素数1〜4の低級アルコールであり、水溶液がpH4〜10の緩衝液である(1)に記載のフェノール重合体。
(8)(1)乃至(7)のいずれか1項に記載のフェノール重合体と、フィラー、硬化剤、充填材を含むことを特徴とする成形材料。
本発明によって、フェノール重合体を用いた成形加工性を向上させたフェノール樹脂成形材料を得ることができる。
以下、本発明のフェノール重合体について、好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
本発明のフェノール重合体は、フェノールと式(1)で表されるフェノール誘導体を水溶液中で、酸化還元酵素を触媒として、さらに酸化剤を用いて酸化共重合させることを特徴としている。
<フェノール誘導体>
一般式(1)で表されるフェノール誘導体において、Xは炭素5〜7の直鎖(又は分岐のアルキル基)、フェニル基、ヒドロキシフェニル基、ベンジル基の中から選ばれる置換基を示す。また、Xの位置はオルト、パラ、メタのいずれでもよい。
前記一般式(1)のフェノール誘導体の具体例としては、4−n−ペンチルフェノール、4−n−ヘキシルフェノール、2−フェニルフェノール、4−フェニルフェノール、2,2’−ビフェノール、4,4’−ビフェノール、2−ベンジルフェノール、4−ベンジルフェノール等が挙げられる。
前記フェノールと一般式(1)のフェノール誘導体との重合比率はフェノールに対して40モル%以上、好ましくは100モル%であり、上限は250モル%である。
(請求項3の説明)
また、前記フェノール重合体が、水酸基を有するフェニレンユニットと、水酸基のないオキシフェニレンユニットの両方であることが必要である。
具体的には以下のような構造になる。
<酸化還元酵素>
本発明に用いる酸化還元酵素は、酸化カップリング反応を惹起するのに十分な酸化能を有するものであれば、特に限定するものではないが、例えば、ペルオキシダーゼまたはオキシダーゼが好適に使用される。好ましくはペルオキシダーゼであり、さらに、植物由来、細菌由来のペルオキシダーゼが好適であり、特に西洋わさびペルオキシダーゼは、酸化能が高く、量産化されており最も好適に使用することができる。
また、当該酵素は、精製、未精製を問わず使用可能である。
使用する酵素量は、フェノール及びフェノール誘導体の合計量1gに対し、0.5mg〜1mg使用する。
<酸化剤>
本発明の酸化重合において使用する酸化剤は、酸化重合を生起させる酸化剤であれば、よく、一般的には、過酸化物が用いられる。過酸化物は、有機過酸化物または無期過酸化物のいずれでもよいが、特に好ましいものは過酸化水素水である。
過酸化水素水の濃度は特に限定されない。
酸化剤は、重合反応において反応中に一度に添加しても良いが、酵素活性を維持させるために、何回かに分割して加える方が効果的である。
<反応溶媒>
本発明においてフェノール重合体を得るためには、フェノールとフェノール誘導体を有機溶媒中で、前記酸化還元酵素を含む水溶液を加えて、重合反応を進めることが必要である。
ここで使用する有機溶媒は、炭素数1〜4の低級アルコールが好適であり、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、tert−ブタノール等を好適に使用することができる。
また水溶液は、蒸留水や脱イオン水を使用することも可能であるが、好ましくはpH4〜10の緩衝液を使用することが好ましい。
本発明のフェノール重合体の数平均分子量は、通常700〜5000であり、好ましくは800〜3000程度である。
前記フェノール重合体の軟化点は、50〜150℃、10%であり、重量減少温度が150〜400℃である。この条件を満足するフェノール樹脂において、加工性に優れたものを得ることができる。
本発明のフェノール重合体はそのままで成形材料として用いることが可能である。また、本発明のフェノール重合体は、フィラーや硬化剤、充填剤を含んで成形材料とすることも可能である。
前記フィラーとしては、例えば、有機フィラーや無機フィラーなどが挙げられる。前記有機フィラーとしては、例えば、アクリル樹脂フィラー、フェノール樹脂フィラー、ポリカーボネート樹脂フィラーなどが挙げられる。
前記無機フィラーとしては、例えば、酸化物、炭酸塩、水酸化物、硫酸塩、亜硫酸塩、
ホウ酸塩、窒化物などが挙げられる。
前記硬化剤としては、通常ヘキサメチレンテトラミンを使用する。ヘキサメチレンテトラミンの含有量は、特に限定されないが、前記フェノール重合体100重量部に対して10〜20重量部使用することが好ましい。ヘキサメチレンテトラミンの含有量が、上記下限値未満では硬化に時間を要し、かつ硬化が不十分となることがある。また上記上限値を越えると成形材料にふくれが生じることがある。
充填剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、木粉、パルプ粉砕粉、布粉砕粉、熱硬化性樹脂の硬化物の粉、アラミド繊維、熱可塑性樹脂の粉などが挙げられる。
また、充填剤の形状としては、例えば、フレーク状、樹枝状、球状、繊維状などが挙げられ、特に限定されるものではない。
なお、充填剤が繊維状のものの場合は、繊維径0.1〜100μm、繊維長1〜50mm程度であるのが好ましい。
前述の様に作製した成形材料は、例えば、射出成型、押し出し成形、カレンダー成形等の一般的な成形材料として使用することが可能である。
また、溶液状にして、キャスト成形等でフィルムを作製することも可能である。
以下の実施例で本発明の実施形態を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
フェノール5.00gおよび4-ヘキシルフェノール9.46gをt−ブタノール10
0mlに溶解する。西洋わさびペルオキシダーゼ(和光純薬工業社製)10mgをリン酸緩衝液(pH7)100mlに溶解した溶液を上記に加える。
6%過酸化水素水を0.2ml/minの速度で30℃にて5時間かけて滴下する。収率92%。分子量はゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)(テトラヒドロフラン溶媒:ポリスチレンスタンダード)より算出し、Mn(数平均分子量)1750。
(実施例2)
フェノール2.99gおよび4-ベンジルフェノール13.67gをt−ブタノール1
00mlに溶解した以外の合成は請求項1に同じ。
収率82%。分子量はゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)(テトラヒドロフラン溶媒:ポリスチレンスタンダード)より算出し、Mn(数平均分子量)930。
(比較例1)
フェノール6.98gおよび4-ブチルフェノール4.78gを2−プロパノール10
0mlに溶解する。西洋わさびペルオキシダーゼ10mgをリン酸緩衝液(pH7)100mlに溶解した溶液を上記に加える。6%過酸化水素水を0.2ml/minの速度で30℃にて5時間かけて滴下する。さらに一時間撹拌し析出物を濾取し、水洗、乾燥する。
収率93%。分子量はゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)(テトラヒドロフラン溶媒:ポリスチレンスタンダード)より算出し、Mn(数平均分子量)1860。
(比較例2)
フェノール6.98gおよび4-tert−ブチルフェノール4.78gを2−プロパ
ノール100mlに溶解する。6%過酸化水素水を0.2ml/minの速度で30℃にて5時間かけて滴下する。さらに一時間撹拌し析出物を濾取し、水洗、乾燥する。収率96%。分子量はゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)(テトラヒドロフラン溶媒:ポリスチレンスタンダード)より算出し、Mn(数平均分子量)1780。
(比較例3)
フェノール10.00gをメタノール100mlに溶解する。西洋わさびペルオキシダーゼ10mgをリン酸緩衝液(pH7)100mlに溶解した溶液を上記に加える。6%過酸化水素水を0.2ml/minの速度で30℃にて5時間かけて滴下する。さらに一時間撹拌し析出物を濾取し、水洗、乾燥する。収率71%。分子量はゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)(テトラヒドロフラン溶媒:ポリスチレンスタンダード)より算出し、Mn(数平均分子量)1030。
(比較例4)
フェノール10.00gを2−プロパノール100mlに溶解する。
西洋わさびペルオキシダーゼ10mgをリン酸緩衝液(pH7)100mlに溶解した溶液を上記に加える。6%過酸化水素水を0.2ml/minの速度で30℃にて5時間かけて滴下する。さらに一時間撹拌し析出物を濾取し、水洗、乾燥する。収率96%。分子量はゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)(テトラヒドロフラン溶媒:ポリスチレンスタンダード)より算出し、Mn(数平均分子量)1410。
(比較例5)
フェノール10.00gをt−ブタノール100mlに溶解する。西洋わさびペルオキシダーゼ10mgをリン酸緩衝液(pH7)100mlに溶解した溶液を上記に加える。6%過酸化水素水を0.2ml/minの速度で30℃にて5時間かけて滴下する。さらに一時間撹拌し析出物を濾取し、水洗、乾燥する。収率95%。分子量はゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)(テトラヒドロフラン溶媒:ポリスチレンスタンダード)より算出し、Mn(数平均分子量)1460。
(比較例6)
フェノール5.00gおよび2,4,6−トリメチルフェノール7.23gをt−ブタノール100mlに溶解する。西洋わさびペルオキシダーゼ10mgをリン酸緩衝液(pH7)100mlに溶解した溶液を上記に加える。6%過酸化水素水を0.2ml/minの速度で30℃にて5時間かけて滴下する。さらに一時間撹拌し析出物を濾取し、水洗、乾燥する。収率はごく微量。分子量はゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)(テトラヒドロフラン溶媒:ポリスチレンスタンダード)より算出し、Mn(数平均分子量)270。
上記の実施例、比較例は、以下に述べる評価方法で評価し、結果を表1に示す。
<有機溶媒に対する溶解性試験>
各種有機溶媒5gに重合体0.1gを溶解し、90℃にて2時間撹拌させた後に溶解した重合体の重量を求めることにより、溶解性を試験した。
<軟化点>
エスアイアイ・ナノテクノロジー社製TMA/SS6100を用いて以下の測定条件にて変位量と温度の関係を曲線で示したグラフを作成し、得られる曲線の変曲点から算出した。
測定温度:30〜450℃
昇温速度:2℃/分
雰囲気:N2(150ml/分)
荷重:49mN
測定モード:針入モード
<耐熱性(10%重量減少温度)>
エスアイアイ・ナノテクノロジー社製TG−DTA6200を用いて以下の測定条件にて測定し、10%重量減少温度を算出した。
測定温度:30〜520℃、
昇温速度:10℃/分
雰囲気:N2
4−ヘキシルフェノールを用いた実施例1、および4-ベンジルフェノールを用いた実
施例2においては、軟化点、耐熱性、エポキシ樹脂との相溶性、および成形性に関して良好な結果が得られた。一方、フェノール誘導体中のXの炭素数4の比較例1,2においては、耐熱性以外の項目では、実施例に劣る結果となり、本願発明の有用性が確認された。
本発明によりフェノール重合体を用いた成形加工性を向上させたフェノール樹脂成形材料を得ることができ、得られた成形材料は、例えば、射出成型、押し出し成形、カレンダー成形等の一般的な成形材料として使用することが可能である。また、溶液状にして、キャスト成形等でフィルムを作製することも可能である。

Claims (8)

  1. フェノール重合体であって、
    フェノールと、下記一般式(1)で表わされるフェノール誘導体とを、有機溶媒と水溶液の混合溶媒中、酸化還元酵素を触媒として、酸化共重合して得られるフェノール重合体。
    (一般式(1)中、Xは炭素数5〜7の直鎖(又は分岐のアルキル基)、フェニル基、ヒドロキシフェニル基、ベンジル基の中から選ばれる置換基を示す。また、Xの位置はオルト、パラ、メタのいずれでもよい。)
  2. 前記フェノール誘導体において、一般式(1)のXが炭素数5〜7の直鎖アルキル基、又はベンジル基である請求項1に記載のフェノール重合体。
  3. 前記フェノール重合体が、水酸基を有するフェニレンユニットと、水酸基のないオキシフェニレンユニットの両方からなることを特徴とする請求項1または2に記載のフェノール重合体。
  4. 前記フェノール重合体の数平均分子量が700〜5000である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のいずれかのフェノール重合体。
  5. 前記フェノール重合体の軟化点が50〜150℃、10%重量減少温度が150〜400℃である請求項1乃至4のいずれか1項に記載のいずれかのフェノール重合体。
  6. 前記酸化還元酵素が、ペルオキシダーゼまたはオキシダーゼである請求項1に記載のフェノール重合体。
  7. 前記有機溶媒が炭素数1〜4の低級アルコールであり、水溶液がpH4〜10の緩衝液である請求項1に記載のフェノール重合体。
  8. 請求項1乃至7のいずれか1項に記載のフェノール重合体と、フィラー、硬化剤、充填材を含むことを特徴とする成形材料。












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