以下、本発明に係る実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るガスエンジン100の要部を示す概略ブロック図である。図2は、図1に示すガスエンジン100における制御部40を中心に示すシステムブロック図である。
図1に示すガスエンジン100は、火花点火式ガスエンジンとされており、複数の気筒10(1)〜10(n)(nは2以上の整数)のエンジン部110を備えている。ここでは、nは12とされ、従って、ガスエンジン100は、12気筒のエンジン部110を備えている。
ガスエンジン100は、エンジン部110における複数の気筒10(1)〜10(n)に燃料ガスFGをそれぞれ供給する複数の燃料ガス供給手段20(1)〜20(n)(ここでは電動燃料ガス調節弁)と、複数の気筒10(1)〜10(n)からの排気ガスEGの温度をそれぞれ検知する複数の排気ガス温度センサー30(1)〜30(n)と、ガスエンジン100全体の制御を司る制御部40とをさらに備えている。
複数の燃料ガス供給手段20(1)〜20(n)および複数の排気ガス温度センサー30(1)〜30(n)は、何れも複数の気筒10(1)〜10(n)毎に設けられている。また、制御部40は、複数の排気ガス温度センサー30(1)〜30(n)による検知温度に基づいて複数の気筒10(1)〜10(n)の失火をそれぞれ検出する失火検出制御手段P1(図2参照)を備える。ここで、「失火」とは、気筒10内において燃焼が行われていない状態の他、燃焼していても正常に燃焼していない状態(例えば、各気筒の平均排気温度から排気温度を差し引いた偏差温度が基準偏差温度を上回った状態)を含む概念である。
詳しくは、ガスエンジン100は、空気ARを供給する吸気部51と、空気ARを分配する吸気マニホールド52と、吸気部51からの空気ARを吸気マニホールド52に導く吸気管53と、吸気マニホールド52からの空気ARを複数の気筒10(1)〜10(n)に導く複数の空気供給管54(1)〜54(n)と、燃料ガスFGを供給する燃料供給部55と、燃料供給部55の主燃料ガス供給管56と、主燃料ガス供給管56から分岐して主燃料ガス供給管56からの燃料ガスFGを複数の空気供給管54(1)〜54(n)にそれぞれ導く複数の燃料供給管57(1)〜57(n)と、複数の気筒10(1)〜10(n)からの排気ガスEGを排気マニホールド59にそれぞれ導く複数の排気管58(1)〜58(n)と、吸気部51からの空気ARを、吸気マニホールド52および複数の空気供給管54(1)〜54(n)を介して複数の気筒10(1)〜10(n)に供給する空気量調整手段60(ここでは電動スロットル弁)とをさらに備えている。
具体的には、複数の空気供給管54(1)〜54(n)、複数の燃料供給管57(1)〜57(n)および複数の排気管58(1)〜58(n)は、何れも複数の気筒10(1)〜10(n)毎に設けられている。吸気部51は、吸気管53に設けられて空気(外気)ARを圧縮する過給機511と、吸気管53の過給機511よりも上流側に設けられたエアーフィルタ512とを有している。吸気マニホールド52は、吸気部51から空気量調整手段60を経て送られてくる空気を複数の空気供給管54(1)〜54(n)を介して複数の気筒10(1)〜10(n)に均等に分配するようになっている。吸気管53は、一端側が吸気部5内に設けられる一方、他端側が吸気マニホールド52の吸入側に連通されている。空気量調整手段60は、吸気管53における吸気部51よりも下流側に介装されており、吸気部51からの空気ARの供給量を調整可能な構成とされている。複数の空気供給管54(1)〜54(n)は、一端が吸気マニホールド52の供給側に連通される一方、他端が複数の気筒10(1)〜10(n)の吸入側にそれぞれ連通されている。燃料供給部55は、燃料ガスFGを圧縮して昇圧するガスコンプレッサ551を有している。主燃料ガス供給管56は、一端が燃料供給部55の供給側に連通される一方、他端が閉塞されている。複数の燃料供給管57(1)〜57(n)は、一端が主燃料ガス供給管56の各所に設けられた貫通孔に連通される一方、他端が複数の空気供給管54(1)〜54(n)における複数の気筒10(1)〜10(n)の吸入側近傍部分(所定距離離れた部分)に設けられた貫通孔に連通されている。複数の燃料ガス供給手段20(1)〜20(n)は、それぞれ、複数の燃料供給管57(1)〜57(n)に介装されており、燃料供給部55からの燃料ガスFGの供給を遮断および燃料ガスFGの供給量を調整可能な構成とされている。複数の排気管58(1)〜58(n)は、一端が複数の気筒10(1)〜10(n)の排気側にそれぞれ連通される一方、他端が排気マニホールド59の吸入側に連通されている。
複数の排気ガス温度センサー30(1)〜30(n)は、それぞれ、複数の気筒10(1)〜10(n)通過後の複数の排気管58(1)〜58(n)、具体的には複数の気筒10(1)〜10(n)と排気マニホールド59との間に設けられた複数の排気管58(1)〜58(n)に設けられている。ここでは、複数の排気ガス温度センサー30(1)〜30(n)は、複数の排気管58(1)〜58(n)の複数の気筒10(1)〜10(n)の排気側近傍部分(所定距離離れた部分)に設けられている。複数の排気ガス温度センサー30(1)〜30(n)は、複数の排気管58(1)〜58(n)の温度をそれぞれ複数の気筒10(1)〜10(n)から排出される排気ガスEGの温度として検知するようになっている。なお、本実施の形態では、排気ガスEGの温度を複数の排気ガス温度センサー30(1)〜30(n)によりそれぞれ複数の排気管58(1)〜58(n)を介して間接的に検知するようにしたが、直接的に検知するようにしてもよい。
また、ガスエンジン100は、エンジン部110の振動を検知する振動センサー80と、燃料ガスFGの圧力を検知する燃料ガス圧力センサー90と、燃焼室11に供給される空気ARを冷却する第1冷却システム200と、燃焼室11を冷却する第2冷却システム300とをさらに備えている。
振動センサー80は、シリンダーブロック110aに設けられており、シリンダーブロック110aの振動を検知するようになっている。
燃料ガス圧力センサー90は、燃料ガスの供給経路(具体的には主燃料ガス供給管56)に介装されており、主燃料ガス供給管56における燃料ガスFGの圧力を検知するようになっている。
第1冷却システム200は、エンジン部110への吸気経路(具体的には吸気管53)に供給された空気ARを吸気管53に設けられたインタークーラ210の冷却水WAにより冷却するものであり、インタークーラ210と、インタークーラ210に対して冷却水WAを供給する冷却水経路220と、冷却水経路220において冷却水WAを循環させる冷却水ポンプ230と、第1膨張タンク240(具体的にはジャケット膨張タンク)と、第1水位センサー250とを備えている。第1膨張タンク240は、冷却水経路220に設けられており、運転中において冷却水WAの温度上昇により膨張した冷却水WAを一時的に滞留させておく構成とされている。第1水位センサー250は、第1膨張タンク240に設けられており、第1膨張タンク240における冷却水WAの水位を検知するようになっている。
また、第2冷却システム300は、燃焼室11に隣接して設けられている冷却室12に供給された冷却水WBにより燃焼室11を冷却するものであり、冷却室12に対して冷却水WBを供給する冷却水経路310と、冷却水経路310において冷却水WAを循環させる冷却水ポンプ320と、第2膨張タンク330(具体的にはクーラ膨張タンク)と、第2水位センサー340とを備えている。第2膨張タンク330は、冷却水経路310に設けられており、運転中において冷却水WBの温度上昇により膨張した冷却水WBを一時的に滞留させておく構成とされている。第2水位センサー340は、第2膨張タンク330に設けられており、第2膨張タンク330における冷却水WBの水位を検知するようになっている。
制御部40は、CPU(Central Processing Unit)等の処理部41と、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリやフラッシュメモリなどの書き込み可能な不揮発性メモリおよびRAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリを含む記憶部42とを備えている。
ガスエンジン100は、制御部40の処理部41が記憶部42のROMに予め格納された制御プログラムを記憶部42のRAM上にロードして実行することにより、各種構成要素を制御するようになっている。また、記憶部42における不揮発性メモリには、ガスエンジン100の動作パラメータや設定データなどの各種システム情報が格納されている。
図2に示すように、複数の排気ガス温度センサー30(1)〜30(n)は、制御部40の入力系に電気的に接続されており、検知した検知温度を制御部40に入力するようになっている。複数の燃料ガス供給手段20(1)〜20(n)(ここでは電動燃料ガス調節弁)は、制御部40の出力系に電気的に接続されており、制御部40からの指示信号によってそれぞれ作動制御されて燃料供給部55からの燃料ガスFGの供給を遮断または燃料ガスFGの供給量を調整するようになっている。空気量調整手段60(ここでは電動スロットル弁)は、制御部40の出力系に電気的に接続されており、制御部40からの指示信号によって作動制御されて吸気部51からの空気ARの供給量を調整するようになっている。
振動センサー80は、制御部40の入力系に電気的に接続されており、検知した値を制御部40に入力するようになっている。制御部40は、振動センサー80により検知した値が予め定めた所定の基準振動値Kを超えたときに、点火タイミングを遅らせるリタード制御を行ってノッキングを低減させる構成とされている。燃料ガス圧力センサー90は、制御部40の入力系に電気的に接続されており、検知した値を制御部40に入力するようになっている。制御部40は、燃料ガス圧力センサー90により検知した値が予め定めた所定の基準圧力Pc以下になったか否かを検出する構成とされている。第1水位センサー250は、制御部40の入力系に電気的に接続されており、検知した値を制御部40に入力するようになっている。制御部40は、第1水位センサー250により検知した値が予め定めた所定の第1基準水位La以下になったか否かを検出する構成とされている。第2水位センサー340は、制御部40の入力系に電気的に接続されており、検知した値を制御部40に入力するようになっている。制御部40は、第2水位センサー340により検知した値が予め定めた所定の第2基準水位Lb以下になったか否かを検出する構成とされている。
また、ガスエンジン100は、表示装置70をさらに備えている。表示装置70は、制御部40の出力系に電気的に接続されており、制御部40からの表示情報が出力されるようになっている。なお、複数の排気ガス温度センサー30(1)〜30(n)や失火検出制御手段P1等の制御部40による制御動作については、後ほど詳しく説明する。
かかる構成を備えたガスエンジン100では、複数の気筒10(1)〜10(n)が何れも正常に動作している場合には、吸気部51から吸気管53、空気量調整手段60、吸気マニホールド52および複数の空気供給管54(1)〜54(n)を経て導かれた空気ARと、燃料供給部55から主燃料ガス供給管56、複数の燃料供給管57(1)〜57(n)および複数の燃料ガス供給手段20(1)〜20(n)を経て導かれた燃料ガスFGとが複数の気筒10(1)〜10(n)の吸入側近傍部分でそれぞれ混合されて複数の気筒10(1)〜10(n)に吸入される。ここで、ガスエンジン100は、混合される空気ARと燃料ガスFGとの空燃比(空気質量を燃料ガス質量で割った比率)は、空気量調整手段60による空気ARの供給量と複数の燃料ガス供給手段20(1)〜20(n)による燃料ガスFGの供給量との調整加減によって設定される。そして、ガスエンジン100では、複数の気筒10(1)〜10(n)からの排気ガスEGがそれぞれ複数の排気管58(1)〜58(n)および排気マニホールド59を経て排気される。
ところで、複数の気筒10(1)〜10(n)のうち何れか1つの気筒10(i)(iは1〜nのうち失火を検出した気筒の番号)が何らかの原因で(例えば点火プラグに異常が生じて)気筒10(i)からの排気ガスEGの温度が予め定めた許容下限温度より低下して失火を検出した場合にエンジン全体を停止させていたのでは、エンジンの故障率が上昇してしまう。
この点、本実施の形態では、制御部40は、失火検出制御手段P1により複数の気筒10(1)〜10(n)のうち何れか1つの気筒10(i)の失火を検出した場合に、失火を検出した1つの気筒10(i)に対応する燃料ガス供給手段20(i)による燃料ガスFGの供給を停止させ、ガスエンジン100の定格負荷を予め定めた所定量だけ減少させ、空燃比の設定値を予め定めた所定量だけリーン側に補正する制御を行う。なお、以下の説明において、かかる制御による運転を減筒運転という。
すなわち、制御部40は、減筒運転を行う減筒運転モードを有しており、運転中に失火検出制御手段P1により複数の気筒10(1)〜10(n)のうち何れか1つの気筒10(i)の失火を検出した場合には、減筒運転モードに移行する。
詳しくは、失火検出制御手段P1は、複数の気筒10(1)〜10(n)毎に、次の第1判定条件から第3判定条件で判定し、第1判定条件から第3判定条件のうち少なくとも1つの判定条件が成立すると(1つでも判定条件が成立すると)、判定条件が成立した気筒10を失火した気筒10とみなす検出を行う。
(a)第1判定条件
第1判定条件では、複数の排気ガス温度センサー30(1)〜30(n)による検知温度が予め定めた所定の基準温度Ts(例えば200℃)よりも下回った場合には、当該第1条件が成立する。そして、当該第1条件が成立した場合には、当該第1条件が成立した気筒10を失火した気筒10とみなす。ここで、基準温度Tsは、記憶部42(図2参照)の不揮発性メモリに予め設定(記憶)されている。なお、基準温度Tsは、実験等により予め決定しておくことができる。
(b)第2判定条件
第2判定条件では、複数の排気ガス温度センサー30(1)〜30(n)による検知温度の平均値を算出し、得られた平均値から、複数の排気ガス温度センサー30(1)〜30(n)による検知温度を個々に差し引いた偏差温度が予め定めた所定の基準偏差温度Td(例えば30℃)よりも上回った場合には、当該第2条件が成立する。そして、当該第2条件が成立した場合には、当該第2条件が成立した気筒10を失火した気筒10とみなす。ここで、基準偏差温度Tdは、記憶部42(図2参照)の不揮発性メモリに予め設定(記憶)されている。なお、基準偏差温度Tdは、実験等により予め決定しておくことができる。
(c)第3判定条件
第3判定条件では、複数の燃料ガス供給手段20(1)〜20(n)により燃料ガスFGを供給している供給期間(具体的には電動燃料ガス調節弁が開放している時間)が予め定めた所定の上限値taよりも上回り、かつ、複数の排気ガス温度センサー30(1)〜30(n)による検知温度から算出した平均値よりも複数の排気ガス温度センサー30(1)〜30(n)による検知温度が下回った場合には、当該第3条件が成立する。そして、当該第3条件が成立した場合には、当該第3条件が成立した気筒10を失火した気筒10とみなす。ここで、上限値taは、記憶部42(図2参照)の不揮発性メモリに予め設定(記憶)されている。なお、上限値taは、実験等により予め決定しておくことができる。
また、制御部40は、複数の燃料ガス供給手段20(1)〜20(n)による燃料ガスFGの複数の気筒10(1)〜10(n)への供給を個別に停止させる燃料ガス停止制御手段P2(図2参照)をさらに備える。
そして、制御部40は、失火検出制御手段P1により、複数の気筒10(1)〜10(n)のうち何れか1つの気筒10の失火を検出した場合に、失火検出制御手段P1にて失火を検出した1つの気筒10(i)に対応する燃料ガス供給手段20(i)による燃料ガスFGの供給を、燃料ガス停止制御手段P2により停止させる制御を行う。このとき、制御部40は、他の気筒10(j)(jは1〜nのうちi以外の気筒の番号)に対応する燃料ガス供給手段20(j)による燃料ガスFGの供給を継続する制御を行う。一方、制御部40は、失火検出制御手段P1により複数の気筒10(1)〜10(n)のうち2つ以上の気筒10の失火を検出した場合には、エンジン(具体的にはエンジン部110)全体を停止させる制御を行う。
ところで、失火を検出した1つの気筒10(i)への燃料ガスFGを停止させた場合、停止させた気筒10(i)以外に動作している気筒10(j)の数が正規の数(n)よりも1つ少ない状態で(n−1の数の気筒10(j)で)減筒運転するにあたって、定格負荷を、正規の数(n)の気筒10(1)〜10(n)で運転しているときの定格負荷と同じにすると、停止させた気筒10(i)の分、動作している気筒10(j)に負担がかかることになる。
このため、制御部40は、ガスエンジン100の定格負荷を予め定めた所定量(例えば定格負荷に対して所定割合の負荷)だけ減少させる定格負荷低減制御手段P3(図2参照)をさらに備える。ここで、定格負荷は、ガスエンジン100が発電機に搭載される場合には定格電力として表すことができる。
以下、ガスエンジン100が発電機に搭載された場合を例にとって定格負荷を定格電力として説明する。
定格負荷低減制御手段P3は、低減前の(正規の)定格電力をPa[kW]とし、所定割合をR[%]とし、所定量をΔP[kW]とした場合、ΔP[kW]を、
ΔP=Pa[kW]×R[%]
の演算式で算出することができる。ここで、低減前の定格電力をPa[kW]および所定割合R[%]は、記憶部42(図2参照)の不揮発性メモリに予め設定(記憶)されている。なお、所定割合R[%]は、実験等により予め決定しておくことができる。
また、定格負荷低減制御手段P3は、低減後の定格電力をPb[kW]とした場合、Pb[kW]を、
Pb[kW]=Pa[kW]−ΔP
=Pa[kW]×(100[%]−R[%])
の演算式で算出することができる。具体的には、低減前の定格電力Pa[kW]が700[kW]であった場合、所定割合R[%]を20[%]とすると、低減後の定格電力Pb[kW]は、700[kW]×(1−0.2)=560[kW]となる。
そして、制御部40は、定格負荷低減制御手段P3により、低減後の定格電力Pb[kW]を算出した後、定格電力の目標値(目標指令値)を(具体的には低減前の700[kW]から低減後の560[kW]に)下げる制御を行う。例えば、ガスエンジン100を搭載した発電機が系統連系を行う場合、定格電力の目標値を下げて系統に対する電力割合を低減させる。
ところで、失火を検出した1つの気筒10(i)への燃料ガスFGを停止させた場合、停止させた気筒10(i)以外に動作している気筒10(j)の数が正規の数(n)よりも1つ少ない状態で(n−1の数の気筒10(j)で)減筒運転するにあたって、空燃比を、正規の数(n)の気筒10(1)〜10(n)で運転しているときの空燃比と同じにすると、失火を検出した1つの気筒10(i)への燃料ガスFGを停止させ、さらに定格負荷を減少させた分、NOx(窒素酸化物)等の排気物(エミッション)の量が増えやすい。
このため、制御部40は、複数の気筒10(1)〜10(n)に吸入させる混合気の空気ARと燃料ガスFGとの空燃比を調整する空燃比調整制御手段P4(図2参照)をさらに備える。
空燃比調整制御手段P4は、空気量調整手段60を作動制御して空気ARの供給量を調整し、或いは/さらに、複数の燃料ガス供給手段20(1)〜20(n)を作動制御して燃料ガスFGの供給量を調整する。
そして、制御部40は、失火検出制御手段P1により複数の気筒10(1)〜10(n)のうち何れか1つの気筒10の失火を検出した場合に、空燃比調整制御手段P4により、空燃比の設定値を予め定めた所定量Hだけリーン側(空気の比率が大きくなる側)に補正する。ここで、所定量Hは、複数の気筒10(1)〜10(n)の数がn個から1つ少なくなった(n−1)個の場合においてガスエンジン100を減筒運転したときに、空燃比が適正なものになる量(例えば空気ARの供給量の増加量および/または燃料ガスFGの減少量)であり、記憶部42(図2参照)の不揮発性メモリに予め設定(記憶)されている。なお、所定量Hは、実験等により予め決定しておくことができる。
ところで、失火を検出した1つの気筒10(i)への燃料ガスFGを停止させた場合、停止させた気筒10(i)以外に動作している気筒10(j)の数が正規の数(n)よりも1つ少ない状態で(n−1の数の気筒10(j)で)減筒運転するにあたって、失火を検出した1つの気筒10(i)への燃料ガスFGの停止を開始して、ある程度継続して減筒運転していると、1つの気筒10(i)が停止している分、エンジン部110が疲労しやすい。
このため、失火を検出した1つの気筒10(i)への燃料ガスFGの供給を停止した時点を起点にした減筒運転を継続する時間である継続運転時間tcを制限するために、記憶部42(図2参照)の不揮発性メモリには、減筒運転の継続を許容する時間である予め定めた所定の継続許容運転時間tsが予め設定(記憶)されている。なお、継続許容運転時間tsは、実験等により予め決定しておくことができる。
そして、制御部40は、失火検出制御手段P1により複数の気筒10(1)〜10(n)のうち何れか1つの気筒10(i)の失火を検出した場合に、継続運転時間tcのカウントを開始し、継続運転時間tcが継続許容運転時間ts(例えば3時間)に達するまでは減筒運転の継続を許可する継続許容運転制御手段P5(図2参照)をさらに備える。また、制御部40は、継続運転時間tcが継続許容運転時間tsに達した後はエンジン全体を停止させる構成とされている。
ところで、各気筒10(1)〜10(n)において発生することがある失火の原因としては、例えば、次のことが考えられる。
図3は、燃焼室11内における燃焼温度Taに対する空気過剰率λを表したグラフである。ここで、空気過剰率λは、燃焼室11に吸入される混合気の空燃比を理論空燃比で割ったものである。
図3に示すように、空気過剰率λが図3のグラフにおける中央部の領域αにあるときには、混合気が正常に燃焼するが、空気過剰率λが大きくなると(空気ARが多くなると)、横軸の値が図3の右側の領域β1に移行し、縦軸の燃焼室11内の燃焼温度が下がり、さらに大きくなると、空気ARが多くなり過ぎて、失火する。この場合、減筒運転モードに移行している状態において、このまま減筒運転モードを続けたり、減筒運転モードに移行していない状態において、減筒運転モードに移行したりしても、特に不都合を招くことはない。
これに対し、空気過剰率λが小さくなりさらに1よりも小さくなると(燃料ガスFGが多くなると)、横軸の値が図3の左側の領域β2に移行し、縦軸の燃焼室11内の燃焼温度が下がり、さらに小さくなると、燃料ガスFGが多くなり過ぎて、失火することもある。この場合には、燃焼室への燃料ガスFGの供給を停止させる必要があり、従って、減筒運転を行うことなく、エンジン全体を停止させる必要がある。
また、かかる失火の原因とは別に、燃焼室11に冷却水WA,WBが混入されるといった不都合が発生することもある。この場合には、減筒運転モードに移行している状態において、このまま減筒運転モードを続けたり、減筒運転モードに移行していない状態において、減筒運転モードに移行したりすると、エンジン部110が破損するといった不都合を招くことがあり、従って、減筒運転を行うことなく、エンジン全体を停止させる必要がある。
そこで、本実施の形態に係るガスエンジン100は、燃焼室11に燃料ガスFGが過剰に供給されたり、或いは、燃焼室11に冷却水WA,WBが混入されたりするといった不都合が発生したと判定した場合には、減筒運転の条件が成立しても減筒運転を行うことなく、エンジン(エンジン部110)全体を停止させる構成とされている。
本実施の形態では、制御部40は、燃焼室11への燃料ガスFGの過剰供給となるべき条件である燃料ガス過剰供給条件または燃焼室11への冷却水WA,WBの混入となるべき条件である冷却水混入条件が成立するか否かを判定する判定手段P6(図2参照)をさらに備える。
詳しくは、判定手段P6は、後述する第1燃料ガス過剰供給条件から第4燃料ガス過剰供給条件、並びに、第1冷却水混入条件および第2冷却水混入条件で判定する。
そして、制御部40は、運転中に減筒運転モードに移行している状態において、判定手段P6により燃料ガス過剰供給条件(ここでは第1燃料ガス過剰供給条件から第4燃料ガス過剰供給条件のうち少なくとも1つ)または冷却水混入条件(ここでは第1冷却水混入条件および第2冷却水混入条件のうち少なくとも1つ)が成立すると判定した場合には、減筒運転モードを中断してエンジン全体を停止する停止制御手段P7をさらに備える。また、制御部40は、運転中に減筒運転モードに移行していない状態において、判定手段P6により燃料ガス過剰供給条件(ここでは第1燃料ガス過剰供給条件から第4燃料ガス過剰供給条件のうち少なくとも1つ)または冷却水混入条件(ここでは第1冷却水混入条件および第2冷却水混入条件のうち少なくとも1つ)が成立すると判定した場合には、減筒運転モードへの移行を禁止する禁止制御手段P8をさらに備える。そして、制御部40は、禁止制御手段P8により、減筒運転モードへの移行を禁止する場合には、失火検出制御手段P1にて複数の気筒10(1)〜10(n)のうち何れか1つの気筒10の失火を検出した場合でも、減筒運転モードの移行することなく、エンジン(具体的にはエンジン部110)全体を停止させる制御を行う。
詳しくは、制御部40は、第1燃料ガス過剰供給条件から第4燃料ガス過剰供給条件のうち少なくとも1つまたは第1冷却水混入条件および第2冷却水混入条件のうち少なくとも1つの判定条件が成立すると(1つでも判定条件が成立すると)、記憶部42(図2参照)の不揮発性メモリにおいて減筒運転モードを停止または禁止することを制御部40に識別させるために識別情報FLを設定(記憶)する。ここで、識別情報FLは、初期状態では減筒運転モードへの移行を許可することを制御部40に識別させるために工場出荷時においてをリセットしておき(具体的にはフラグを「0」にしておき)、第1燃料ガス過剰供給条件から第4燃料ガス過剰供給条件のうち少なくとも1つまたは第1冷却水混入条件および第2冷却水混入条件のうち少なくとも1つの判定条件が成立すると、減筒運転モードを停止または禁止することを制御部40に識別させるためにフラグを立てる(具体的にはフラグを「1」にする)。なお、ガスエンジン100は、識別情報FLのフラグが立った場合には、エンジン全体が停止した後、サービスマン等の作業者により故障箇所が修復されたときには、減筒運転モードへの移行を許可することを制御部40に識別させるためにフラグをリセットする(具体的には「0」に戻す)ことが可能な構成とされている。
次に、第1燃料ガス過剰供給条件から第4燃料ガス過剰供給条件並びに第1冷却水混入条件および第2冷却水混入条件について以下に説明する。
[A]燃料ガス過剰供給条件
[A1]第1燃料ガス過剰供給条件
第1燃料ガス過剰供給条件では、排温噴射補正制御における排温噴射補正率を利用して燃料ガス過剰供給条件を決定している。
すなわち、排温噴射補正制御は、各気筒10(1)〜10(n)の部品バラツキにより異なることがある出力が略均一になるように燃焼室11への燃料ガスFGの噴射期間(供給時間)を制御するものである。ここで、燃料ガスFGの噴射期間は、複数の燃料ガス供給手段20(1)〜20(n)により燃料ガスFGを供給している供給期間(具体的には電動燃料ガス調節弁が開放している時間)である。詳しくは、排温噴射補正制御は、全気筒(1)〜10(n)のうち、最も低い排気温度の気筒10が全気筒(1)〜10(n)の平均温度を中心とした上下の予め定めた所定率(例えば±1%)の基準温度範囲から外れている場合には、燃料ガスFGの噴射期間が1回毎に予め定めた所定の排温噴射補正率(例えば0.1%)だけ大きくなるように、また、最も高い排気温度の気筒10が基準温度範囲から外れている場合には、燃料ガスFGの噴射期間が1回毎に排温噴射補正率(例えば0.1%)だけ小さくなるように、全気筒(1)〜10(n)が基準温度範囲に入るまで、燃料ガスFGの噴射期間を予め定めた所定の時間(例えば3分)毎に変更して燃料ガスFGの噴射期間を補正する制御である。
当該第1燃料ガス過剰供給条件は、かかる排温噴射補正制御において、最も高い排気温度の気筒10が基準温度範囲から外れている場合に、排温噴射補正率が下限(例えばマイナス20%)に達したとき、すなわち、現在の排温噴射補正率と予め定めた所定の排温噴射補正率の下限値Cが等しくなったときに成立する。そして、当該第1燃料ガス過剰供給条件が成立した場合には、燃料ガスFGが燃焼室11に過剰供給されているとみなす。ここで、当該第1燃料ガス過剰供給条件が成立した状態は、図3に示すグラフにおいて、横軸の値が正常燃焼の領域αから、空気過剰率λが1になるまで小さくなって燃焼室11内の燃焼温度が徐々に上がっている状態であり、例えば、燃料ガス供給手段20(具体的には電動燃料ガス調節弁)が損傷して燃料ガス供給手段20に閉じることを示す信号が入力されているにも関わらず燃料ガスFGが微量に漏れ出ている状態とみなすことができる。なお、所定の下限値Cは、記憶部42(図2参照)の不揮発性メモリに予め設定(記憶)されている。
[A2]第2燃料ガス過剰供給条件
第2燃料ガス過剰供給条件では、燃焼室11への燃料ガスFGの噴射期間(供給時間)を利用して燃料ガス過剰供給条件を決定している。
すなわち、当該第2燃料ガス過剰供給条件は、燃料ガスFGの噴射期間が上限値taに達した状態で予め定めた所定の第1基準時間td(例えば15秒)継続したときに成立する。そして、当該第2燃料ガス過剰供給条件が成立した場合には、燃料ガスFGが燃焼室11に過剰供給されているとみなす。ここで、当該第2燃料ガス過剰供給条件が成立した状態は、例えば、燃焼室11に混合気を吸入または密閉するための吸気弁の破損により燃焼室11内に混合気が十分に溜まらずに出力が低下したことにより燃料ガスFGの供給量を増やす制御が行われたことで燃料ガスFGの供給量が増えて、結果的に燃料ガスFGが過剰供給されている状態とみなすことができる。なお、所定の第1基準時間tdは、記憶部42(図2参照)の不揮発性メモリに予め設定(記憶)されている。所定の第1基準時間tdは、製品の評価基準として予め決定しておくことができる。
[A3]第3燃料ガス過剰供給条件
第3燃料ガス過剰供給条件では、ノッキング現象の発生を検知して燃料ガスFGへの点火タイミングを遅らせるリタード制御を実行した履歴hを利用して燃料ガス過剰供給条件を決定している。
すなわち、当該第3燃料ガス過剰供給条件は、エンジン部110の振動を検知する振動センサー80により検知した値が所定の基準振動値Kを超えた場合にノッキング現象の発生を検出してリタード制御を行ったときに成立する。そして、当該第3燃料ガス過剰供給条件が成立した場合には、燃料ガスFGが燃焼室11に過剰供給されているとみなす。ここで、ノッキング現象の発生を検知してリタード制御が実行される要因としては、例えば、吸気弁の破損やピストンの亀裂が発生している可能性がある。よって、当該第3燃料ガス過剰供給条件が成立した状態は、例えば、ノッキング現象の発生による吸気弁の破損やピストンの亀裂により燃焼室11内に混合気が十分に溜まらずに出力が低下したことにより燃料ガスFGの供給量を増やす制御が行われたことで燃料ガスFGの供給量が増えて、結果的に燃料ガスFGが過剰供給されている状態とみなすことができる。ノッキング現象の発生は、燃料ガスFGの過剰供給以外に他の要因も考えられるが、当該第3燃料ガス過剰供給条件は、さらなる安全側への設計思想(フェールセーフ)を考慮した判定条件とされている。なお、リタード制御を行った履歴hは、記憶部42(図2参照)の不揮発性メモリに記憶される。また、所定の基準振動値Kは、記憶部42(図2参照)の不揮発性メモリに予め設定(記憶)されている。また、ガスエンジン100は、履歴hが記憶部42に記憶されている場合には、エンジン全体が停止した後、サービスマン等の作業者により故障箇所が修復されたときには、履歴hをリセットする(具体的には「消去」する)ことが可能な構成とされている。
[A4]第4燃料ガス過剰供給条件
第4燃料ガス過剰供給条件では、ガスコンプレッサ551により昇圧されて燃焼室11に供給される燃料ガスFGの圧力を利用して燃料ガス過剰供給条件を決定している。
すなわち、当該第4燃料ガス過剰供給条件は、燃料ガスFGの圧力を検知する燃料ガス圧力センサー90により検知した値が所定の基準圧力Pc(例えば0.25MPa)以下となった時間が予め定めた所定の第2基準時間te(例えば0.5秒)継続したとき(具体的には燃料ガス圧力センサー90によりサンプリングして検知した値が0.5秒連続して基準圧力Pc以下となったとき)に成立する。そして、当該第4燃料ガス過剰供給条件が成立した場合には、燃料ガスFGが過剰供給されているとみなす。ここで、当該第4燃料ガス過剰供給条件が成立した状態は、例えば、燃料ガス供給手段20(具体的には電動燃料ガス調節弁)が破損して燃料ガス供給手段20に閉じることを示す信号が入力されているにも関わらず燃料ガスFGが漏れ出して燃料ガスFGの圧力が急激に低下している状態とみなすことができる。なお、所定の基準圧力Pcおよび所定の第2基準時間teは、記憶部42(図2参照)の不揮発性メモリに予め設定(記憶)されている。所定の第2基準時間teは、瞬間的な信号ノイズが原因で燃料ガス圧力センサー90の出力信号が瞬間的に圧力低下を示す側に変化する場合があることを考慮して、瞬間的な信号ノイズの発生時間より大きくすることができる。こうすることで、瞬間的な信号ノイズにより誤検出することなく、燃料ガスFGの圧力が急減に低下したことを確実に検出することが可能となる。
[B]冷却水混入条件
[B1]第1冷却水混入条件
第1冷却水混入条件では、エンジン部110への吸気管53に供給された空気ARを吸気管53に設けられたインタークーラ210の冷却水WAにより冷却する第1冷却システム200(図1参照)において、インタークーラ210に対して冷却水WAを供給する冷却水経路220に設けられて冷却水WAの温度上昇により膨張した冷却水WAを一時的に滞留させておく第1膨張タンク240の水位の低下を利用して冷却水混入条件を決定している。
すなわち、当該第1冷却水混入条件は、第1膨張タンク240の水位を検知する第1水位センサー250により検知した値が所定の第1基準水位La以下となったときに成立する。そして、当該第1冷却水混入条件が成立した場合には、燃焼室11に冷却水WAが混入されているとみなす。ここで、第1膨張タンク240の水位の低下を検知する要因としては、例えば、インタークーラ210が破損し、具体的には、吸気管53と冷却水経路220との間で冷却水WAが流通するような亀裂が発生している可能性がある。よって、当該第1冷却水混入条件が成立した状態は、例えば、インタークーラ210が破損し、具体的には、吸気管53と冷却水経路220との間で冷却水WAが流通するような亀裂が発生して、冷却水経路220から吸気管53に冷却水WAが混入している状態とみなすことができる。第1膨張タンク240の水位の低下は、吸気管53への冷却水WAの混入以外に他の要因も考えられるが、当該第1冷却水混入条件は、さらなる安全側への設計思想(フェールセーフ)を考慮した判定条件とされている。なお、所定の第1基準水位Laは、記憶部42(図2参照)の不揮発性メモリに予め設定(記憶)されている。
[B2]第2冷却水混入条件
第2冷却水混入条件では、燃焼室11に隣接して設けられた冷却室12に供給された冷却水WBにより燃焼室11を冷却する第2冷却システム300(図1参照)において、冷却室12に対して冷却水WBを供給する冷却水経路310に設けられて冷却水WBの温度上昇により膨張した冷却水WBを一時的に滞留させておく第2膨張タンク330の水位の低下を利用して冷却水混入条件を決定している。
すなわち、当該第2冷却水混入条件は、第2膨張タンク330の水位を検知する第2水位センサー340により検知した値が所定の第2基準水位Lb以下となったときに成立する。そして、当該第2冷却水混入条件が成立した場合には、燃焼室11に冷却水WBが混入されているとみなす。ここで、第2膨張タンク330の水位の低下を検知する要因としては、例えば、燃焼室11が破損し、具体的には、燃焼室11と冷却室12との間で冷却水WBが流通するような亀裂が発生している可能性がある。よって、当該第2冷却水混入条件が成立した状態は、例えば、燃焼室11が破損し、具体的には、燃焼室11と冷却室12との間で冷却水WBが流通するような亀裂が発生して、冷却水経路310から燃焼室11に冷却水WBが混入している状態とみなすことができる。第2膨張タンク330の水位の低下は、燃焼室11への冷却水WBの混入以外に他の要因も考えられるが、当該第2冷却水混入条件は、さらなる安全側への設計思想(フェールセーフ)を考慮した判定条件とされている。なお、所定の第2基準水位Lbは、記憶部42(図2参照)の不揮発性メモリに予め設定(記憶)されている。
次に、ガスエンジン100における制御部40による制御動作の一例について、図4および図5を参照しながら説明する。
図4および図5は、ガスエンジン100における制御部40による制御動作の一例を示すフローチャートである。図4は、その前半部分の処理例を示しており、図5は、その後半部分の処理例を示している。
図4に示すように、制御部40は、先ず、複数の排気ガス温度センサー30(1)〜30(n)により排気ガスEGの温度をそれぞれ検知する(ステップS1)。
次に、制御部40は、複数の気筒10(1)〜10(n)において第1判定条件が成立した気筒10があるか否かを判断する(ステップS2)。詳しくは、制御部40は、記憶部42に予め設定されている基準温度Tsを読み出し、第1判定条件として、複数の排気ガス温度センサー30(1)〜30(n)による検知温度が基準温度Tsよりも下回った場合には第1条件が成立するため、当該第1条件が成立した気筒10を失火した気筒10とみなす。すなわち、制御部40は、第1判定条件が成立した気筒10がある場合には(ステップS2:Yes)、図5に示すステップS13に移行する一方、それ以外の場合には(ステップS2:No)、ステップS3に移行する。
次に、制御部40は、複数の気筒10(1)〜10(n)において第2判定条件が成立した気筒10があるか否かを判断する(ステップS3)。詳しくは、制御部40は、記憶部42に予め設定されている基準偏差温度Tdを読み出し、第2判定条件として、複数の排気ガス温度センサー30(1)〜30(n)による検知温度から算出した平均値から、複数の排気ガス温度センサー30(1)〜30(n)による検知温度を個々に差し引いた偏差温度が基準偏差温度Tdよりも上回った場合には第2条件が成立するため、当該第2条件が成立した気筒10を失火した気筒10(i)とみなす。すなわち、制御部40は、第2判定条件が成立した気筒10がある場合には(ステップS3:Yes)、図5に示すステップS13に移行する一方、それ以外の場合には(ステップS3:No)、ステップS4に移行する。
次に、制御部40は、複数の気筒10(1)〜10(n)において第3判定条件が成立した気筒10があるか否かを判断する(ステップS4)。詳しくは、制御部40は、記憶部42に予め設定されている上限値taを読み出し、第3判定条件として、複数の燃料ガス供給手段20(1)〜20(n)により燃料ガスFGを供給している供給期間が上限値taよりも上回り、かつ、複数の排気ガス温度センサー30(1)〜30(n)による検知温度から算出した平均値よりも複数の排気ガス温度センサー30(1)〜30(n)による検知温度が下回った場合には第3条件が成立するため、当該第3条件が成立した気筒10を失火した気筒10(i)とみなす。すなわち、制御部40は、第3判定条件が成立した気筒10がある場合には(ステップS4:Yes)、図5に示すステップS13に移行する一方、それ以外の場合には(ステップS4:No)、ステップS5に移行する。
次に、制御部40は、燃料ガス過剰供給条件が成立したか否かまたは冷却水混入条件が成立したか否かを判断する(ステップS5〜S10)。
すなわち、制御部40は、記憶部42に予め設定されている下限値Cを読み出し、排温噴射補正制御において、燃料ガスFGの排温噴射補正率が下限値C(例えばマイナス20%)と等しくなったときに第1燃料ガス過剰供給条件が成立するため、燃料ガスFGが過剰供給されているとみなす。すなわち、制御部40は、第1燃料ガス過剰供給条件が成立した場合には(ステップS5:Yes)、ステップS11に移行する一方、それ以外の場合には(ステップS5:No)、ステップS6に移行する。
次に、制御部40は、記憶部42に予め設定されている上限値taおよび第1基準時間tdを読み出し、燃料ガスFGの噴射期間が上限値taに達した状態で第1基準時間td(例えば15秒)継続したときに第2燃料ガス過剰供給条件が成立するため、燃料ガスFGが過剰供給されているとみなす。すなわち、制御部40は、第2燃料ガス過剰供給条件が成立した場合には(ステップS6:Yes)、ステップS11に移行する一方、それ以外の場合には(ステップS6:No)、ステップS7に移行する。
次に、制御部40は、記憶部42においてリタード制御の履歴hが記憶されているときに第3燃料ガス過剰供給条件成立するため、燃料ガスFGが過剰供給されているとみなす。すなわち、制御部40は、第3燃料ガス過剰供給条件が成立した場合には(ステップS7:Yes)、ステップS11に移行する一方、それ以外の場合には(ステップS7:No)、ステップS8に移行する。
次に、制御部40は、記憶部42に予め設定されている基準圧力Pcおよび第2基準時間teを読み出し、燃料ガス圧力センサー90により検知した値が基準圧力Pc(例えば0.25MPa)以下となった時間が第2基準時間te(例えば0.5秒)継続したときに第4燃料ガス過剰供給条件が成立するため、燃料ガスFGが過剰供給されているとみなす。すなわち、制御部40は、第4燃料ガス過剰供給条件が成立した場合には(ステップS8:Yes)、ステップS11に移行する一方、それ以外の場合には(ステップS8:No)、ステップS9に移行する。
次に、制御部40は、記憶部42に予め設定されている第1基準水位Laを読み出し、第1水位センサー250により検知した値が第1基準水位La以下となったときに第1冷却水混入条件が成立するため、燃焼室11に冷却水WAが混入されているとみなす。すなわち、制御部40は、第1冷却水混入条件が成立した場合には(ステップS9:Yes)、ステップS11に移行する一方、それ以外の場合には(ステップS9:No)、ステップS10に移行する。
次に、制御部40は、記憶部42に予め設定されている第2基準水位Lbを読み出し、第2水位センサー340により検知した値が第2基準水位Lb以下となったときに第2冷却水混入条件が成立するため、燃焼室11に冷却水WBが混入されているとみなす。すなわち、制御部40は、第2冷却水混入条件が成立した場合には(ステップS10:Yes)、ステップS11に移行する一方、それ以外の場合には(ステップS10:No)、ステップS12に移行する。
そして、制御部40は、ステップS11において、減筒運転を行わないことを示す識別情報FLを記憶部42の不揮発性メモリに設定(記憶)し(具体的にはフラグを「1」にし)、ステップS12に移行する。
次に、制御部40は、運転終了の指示があるまで(ステップS12:No)、ステップS1〜S12の処理を繰り返し、運転終了の指示があると(ステップS12:Yes)、エンジン全体を停止させて運転を終了する(ステップS28)。
一方、制御部40は、ステップS2で第1判定条件が成立した気筒10があるか(ステップS2:Yes)、ステップS3で第2判定条件が成立した気筒10があるか(ステップS3:Yes)、またはステップS4で第3判定条件が成立した気筒10がある場合(ステップS4:Yes)、図5に示すステップS13に移行する。
制御部40は、図5に示すように、記憶部42における識別情報FLが減筒運転を行わないことを示す識別情報であるか否かを判断し(ステップS13)、識別情報FLが減筒運転を行わないことを示す識別情報である場合には(ステップS13:Yes)、ステップS27に移行する一方、識別情報FLが減筒運転を行わないことを示す識別情報でない場合には(ステップS13:No)、ステップS14に移行する
次に、制御部40は、第1判定条件から第3判定条件のうち成立した判定条件の気筒10の数が1つか否かを判断し(ステップS14)、1つでない場合には(ステップS14:No)、ステップS27に移行する一方、1つの場合には(ステップS14:Yes)、記憶部42に予め設定されている低減前の(正規の)定格電力Pa、所定割合Rおよび所定量Hを読み出して前記した減筒運転を開始する(ステップS15)。
次に、制御部40は、減筒運転が開始された旨を報知し(ステップS16)、例えば、減筒運転が開始された旨を図2に示す表示装置70に表示させ、ステップS17に移行する。
次に、制御部40は、継続運転時間tcのカウントを開始し(ステップS17)。記憶部42に予め設定されている継続許容運転時間tsを読み出して継続運転時間tcが継続許容運転時間tsに達したか否かを判断する(ステップS18)。制御部40は、継続運転時間tcが継続許容運転時間tsに達していない場合には(ステップS18:No)、運転終了の指示があるまで(ステップS19:No)、ステップS18〜S25の処理を繰り返し、燃料ガス過剰供給条件が成立したか否かまたは冷却水混入条件が成立したか否かを判断する(ステップS20〜S25)。
すなわち、制御部40は、ステップS20〜S23では図4に示すステップS5〜S8と同様に第1燃料ガス過剰供給条件から第4燃料ガス過剰供給条件が成立したか否かを判断し、一つでも成立すると(ステップS20〜S23:Yes)、ステップS26に移行する。また、制御部40は、ステップS24〜S25では図4に示すステップS9〜S10と同様に第1冷却水混合条件および第2冷却水混合条件が成立したか否かを判断し、一つでも成立すると(ステップS24〜S25:Yes)、ステップS26に移行する。そして、制御部40は、ステップS26において、減筒運転を行わないことを示す識別情報FLを記憶部42の不揮発性メモリに設定(記憶)し(具体的にはフラグを「1」にし)、ステップS27に移行する。
また、ステップS19で運転終了の指示があると(ステップS19:Yes)、図4に示すステップS28に移行する。
一方、制御部40は、ステップS18で継続運転時間tcが継続許容運転時間tsに達した場合には(ステップS18:Yes)、エンジン全体を停止させる旨を報知し(ステップS27)、例えば、エンジン全体を停止させる旨を図2に示す表示装置70に表示させ、図4に示すステップS28に移行する。
以上説明したように、本実施の形態に係るガスエンジン100では、制御部40は、運転中に減筒運転モードに移行している状態において、判定手段P6により燃料ガス過剰供給条件(ここでは第1燃料ガス過剰供給条件から第4燃料ガス過剰供給条件のうち少なくとも一つ)または冷却水混入条件(ここでは第1冷却水混入条件および第1冷却水混入条件のうち少なくとも一つ)が成立すると判定した場合には、減筒運転モードを中断して停止する。
一方、制御部40は、運転中に減筒運転モードに移行していない状態において、判定手段P6により燃料ガス過剰供給条件(ここでは第1燃料ガス過剰供給条件から第4燃料ガス過剰供給条件のうち少なくとも一つ)または冷却水混入条件(ここでは第1冷却水混入条件および第1冷却水混入条件のうち少なくとも一つ)が成立すると判定した場合には、減筒運転モードへの移行を禁止する。
これにより、燃焼室11への燃料ガスFGの過剰供給または燃焼室11への冷却水WA,WBの混入の発生により複数の気筒10(1)〜10(n)のうち何れか1つの気筒10(i)で失火を検出した場合には、減筒運転を行うことなく、エンジン全体を停止させることが可能となる。
なお、本実施の形態に係るガスエンジン100は、それには限定されないが、例えば、系統連系運転で発電を行う発電機、自立運転で発電を行う発電機、或いは系統連系運転と自立運転とを切り換えて発電を行う発電機に好適に用いることできる。
本発明は、以上説明した実施の形態に限定されるものではなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、かかる実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。