JP2014176799A - 逆浸透膜分離方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】RO装置の給水にクロロスルファミン酸塩系酸化剤を添加して膜汚染を防止する逆浸透膜分離方法において、RO膜破損時におけるクロロスルファミン酸塩系酸化剤のリークを防止する。
【解決手段】逆浸透膜分離装置の給水にクロロスルファミン酸塩系酸化剤(スルファミン酸化合物を含む結合塩素系酸化剤)を存在させる逆浸透膜分離方法において、該逆浸透膜分離装置の透過水の全塩素濃度を測定し、全塩素濃度が所定値を超えるときにはクロロスルファミン酸塩系酸化剤の添加を停止する。クロロスルファミン酸塩系酸化剤の添加停止と共に、還元剤の添加を行ってもよい。
【選択図】図1

Description

本発明は、原水を逆浸透(RO)膜分離装置で処理する逆浸透膜分離方法に係り、特に、RO膜分離装置の給水にスルファミン酸化合物を含む結合塩素系酸化剤(以下「クロロスルファミン酸塩系酸化剤」と称す場合がある。)を添加してRO膜分離処理する逆浸透膜分離方法に関する。
液晶や半導体などを製造する電子産業分野においては、製造時に大量の超純水ないし純水を使用する。また、近年では、水資源を有効に利用するために、使用済純水や排水を回収して再生、再利用する排水処理装置の導入が進んでいる。
このような純水製造装置、排水回収装置などの水処理装置においては、圧力濾過装置、重力濾過装置、凝集沈澱処理装置、加圧浮上濾過装置、浸漬膜装置、膜式前処理装置などの前処理装置、電解質や中低分子の有機成分の除去が可能な逆浸透(RO)膜分離装置、電解質などのイオン性物質を除去するイオン交換樹脂装置や電気再生式連続純水装置、炭酸ガスなどの溶存ガスを除去する真空脱気塔や膜脱気装置、有機成分を酸化除去する紫外線酸化装置、微生物を死滅させる紫外線殺菌装置、有機成分を除去する生物処理装置や活性炭充填塔など、様々な装置、ユニットを組み合わせて目的の水質を得る。また、RO膜分離装置で得られた濃縮水については、これを更にRO膜分離装置(一般に「ブライン回収RO膜分離装置」と称される。)で処理して、系外へ排出する濃縮水量を低減し、透過水を原水と共に処理することにより水回収率を高めることが行われている。
このような水処理装置においては、原水中に含まれる微生物が、装置配管内や膜面で増殖してスライムを形成し、水槽内の微生物繁殖による臭気発生、膜の透過水量低下といった障害を引き起こすことがある。微生物による汚染を防止するためには、原水に殺菌剤を常時又は間欠的に添加し、被処理水又は装置内を殺菌しながら処理する方法が一般的である。
通常、重力濾過処理、凝集沈殿処理などの前処理装置においては、次亜塩素酸ナトリウムなどの遊離塩素系酸化剤で微生物の殺菌を行うが、ポリアミド系RO膜は遊離塩素に対する耐性が低いため、RO膜の前段で重亜硫酸ナトリウムなどの還元剤を注入し、遊離塩素を還元除去し、その後、モノクロラミンやクロロスルファミン酸ナトリウムといった結合塩素系酸化剤や、イソチアゾロン系化合物などの微生物増殖を抑制する化合物を含有するスライムコントロール剤を添加して、RO膜での微生物増殖を抑制する方法などが採られている(特許文献1〜4)。特に、特許文献3,4に記載されるスルファミン酸化合物を含む結合塩素系酸化剤(クロロスルファミン酸塩系酸化剤)は、従来よりも酸化力が低いにもかかわらず、上述した微生物による障害を効率的に防止することができる。これは、クロロスルファミン酸塩系酸化剤には、殺菌効果と併せて、付着したスライムないし微生物やそれらが排出する代謝物を剥離除去する効果があるためと考えられている。
この特許文献3,4に記載されるクロロスルファミン酸塩系酸化剤は、水中で安定な結合塩素剤であるクロロスルファミン酸塩を形成し、この結合塩素剤により、安定した遊離塩素濃度を維持することにより、透過膜の劣化を引き起こすことなく、良好な剥離効果を発揮する。即ち、透過膜の塩素系酸化剤由来の酸化劣化の原因についての詳細は定かではないが、膜分離装置の給水における遊離塩素濃度の変動が確認されており、遊離塩素濃度の増加に伴い透過膜が劣化してしまうものと考えられる。また、この透過膜の劣化は、給水中に鉄や銅など金属が含まれる系において発生することが多いことから、給水中の金属と塩素剤との間で触媒作用により高い酸化力が発現し、透過膜の酸化劣化を引き起こしているとも考えられる。これに対して、特許文献3,4に記載されるクロロスルファミン酸塩系酸化剤であれば、水中で安定な結合塩素剤であるクロロスルファミン酸塩が形成される結果、安定した微生物の殺菌・増殖抑制効果を得ることができ、また、遊離塩素濃度が増加するようなことがないため、耐塩素性の低いポリアミド系高分子等を素材とする透過膜を用いる場合においても、透過膜の酸化劣化を回避することができ、効率良く膜分離を行うことが可能となる。
特開平1−104310号公報 特開平1−135506号公報 特開2006−263510号公報 特開2010−201313号公報
次亜塩素酸ナトリウムが含有する遊離塩素や、モノクロラミンにおいてアンモニアと塩素のモル比が1:1からずれた時に生成するアンモニアや遊離塩素はRO膜を透過するが、上記クロロスルファミン酸塩系酸化剤はRO膜を透過しない。そのため、クロロスルファミン酸塩系酸化剤をRO給水に添加しても、ROよりも後段側における処理に対してクロロスルファミン酸塩系酸化剤が影響することはない。ところが、RO膜が破損した場合に、クロロスルファミン酸塩系酸化剤がRO膜の後段に流出(以下、リークということがある)することになる。本発明は、かかる膜破損が生じた場合のクロロスルファミン酸塩系酸化剤のリークを防止する逆浸透膜分離方法を提供することを目的とする。
第1発明の逆浸透膜分離方法は、逆浸透膜分離装置の給水にスルファミン酸化合物を含む結合塩素系酸化剤(以下、「クロロスルファミン酸塩系酸化剤」という。)を添加する逆浸透膜分離方法において、該逆浸透膜分離装置の透過水の全塩素濃度を測定し、全塩素濃度が所定値を超えるときには前記クロロスルファミン酸塩系酸化剤の添加を停止することを特徴とするものである。
第2発明の逆浸透膜分離方法は、逆浸透膜分離装置の給水にクロロスルファミン酸塩系酸化剤を添加する逆浸透膜分離方法において、原水に塩素系酸化剤を添加し、その後、活性炭にて処理し、活性炭処理水に前記クロロスルファミン酸塩系酸化剤を添加して逆浸透膜分離装置に供給する方法であって、該逆浸透膜分離装置の透過水の全塩素濃度を測定し、全塩素濃度が所定値を超えるときには前記クロロスルファミン酸塩系酸化剤の添加を停止することを特徴とするものである。
第3発明の逆浸透膜分離方法は、逆浸透膜分離装置の給水にクロロスルファミン酸塩系酸化剤を添加する逆浸透膜分離方法において、前記原水に塩素系酸化剤を添加し、その後還元剤を添加して残留塩素系酸化剤を分解した後、前記クロロスルファミン酸塩系酸化剤を添加し、その後、前記逆浸透膜分離装置に供給する方法であって、該逆浸透膜分離装置の透過水の全塩素濃度を測定し、全塩素濃度が所定値を超えるときには、前記クロロスルファミン酸塩系酸化剤の添加を停止することを特徴とするものである。
本発明の一態様では、前記全塩素濃度が所定値を超えるときには、さらに逆浸透膜分離装置の給水(RO給水)に、クロロスルファミン酸の添加箇所によりも下流で、還元剤を添加するか、又は残留塩素系酸化剤を分解する還元剤の添加量を増加させる。
RO給水にクロロスルファミン酸塩系酸化剤を添加することにより、水中に安定な結合塩素剤であるクロロスルファミン酸塩が形成され、この結合塩素剤により、安定した遊離塩素濃度が維持される。これにより、透過膜の劣化を引き起こすことなく、スライム防止処理を行うことが可能となる。また、結合塩素が主成分であるため、RO膜劣化を防止することができる。
本発明では、RO透過水の全塩素を測定し、RO透過水に所定値を超える全塩素が検出されるときにはRO給水へのクロロスルファミン酸塩系酸化剤の添加を停止する。これにより、クロロスルファミン酸塩系酸化剤のリークが防止される。必要に応じRO給水に還元剤を添加することにより、残留するクロロスルファミン酸塩系酸化剤が分解される。
実施の形態に係る逆浸透膜分離方法のフロー図である。 実施の形態に係る逆浸透膜分離方法のフロー図である。 実施の形態に係る逆浸透膜分離方法のフロー図である。 実施の形態に係る逆浸透膜分離方法のフロー図である。 実施の形態に係る逆浸透膜分離方法のフロー図である。 実施の形態に係る逆浸透膜分離方法のフロー図である。 実施の形態に係る逆浸透膜分離方法のフロー図である。
以下に本発明の膜分離方法の実施の形態を詳細に説明する。
まず、本発明で用いるクロロスルファミン酸塩系酸化剤(スルファミン酸化合物を含む結合塩素系酸化剤)について説明する。
本発明で用いるクロロスルファミン酸塩系酸化剤は、塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物、又は、塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物とからなる結合塩素剤を含むものである。
クロロスルファミン酸塩系酸化剤に用いる塩素系酸化剤に特に制限はなく、例えば、塩素ガス、二酸化塩素、次亜塩素酸又はその塩、亜塩素酸又はその塩、塩素酸又はその塩、過塩素酸又はその塩、塩素化イソシアヌル酸又はその塩などを挙げることができる。これらのうち、塩形のものの具体例としては、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウムなどの次亜塩素酸アルカリ金属塩、次亜塩素酸カルシウム、次亜塩素酸バリウムなどの次亜塩素酸アルカリ土類金属塩、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウムなどの亜塩素酸アルカリ金属塩、亜塩素酸バリウムなどの亜塩素酸アルカリ土類金属塩、亜塩素酸ニッケルなどの他の亜塩素酸金属塩、塩素酸アンモニウム、塩素酸ナトリウム、塩素酸カリウムなどの塩素酸アルカリ金属塩、塩素酸カルシウム、塩素酸バリウムなどの塩素酸アルカリ土類金属塩などを挙げることができる。これらの塩素系酸化剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。これらの中で、次亜塩素酸塩は取り扱いが容易であり、好適に用いることができる。
クロロスルファミン酸塩系酸化剤に用いるスルファミン酸化合物としては、下記一般式[1]で表される化合物又はその塩が挙げられる。
Figure 2014176799
(ただし、一般式[1]において、R及びRは、各々独立に、水素又は炭素数1〜8の炭化水素基である。)
このようなスルファミン酸化合物としては、例えば、RとRがともに水素であるスルファミン酸のほかに、N−メチルスルファミン酸、N,N−ジメチルスルファミン酸、N−フェニルスルファミン酸などを挙げることができる。本発明に用いるスルファミン酸化合物のうち、前記化合物の塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩などのアルカリ土類金属塩、マンガン塩、銅塩、亜鉛塩、鉄塩、コバルト塩、ニッケル塩などの他の金属塩、アンモニウム塩及びグアニジン塩などを挙げることができ、具体的には、スルファミン酸ナトリウム、スルファミン酸カリウム、スルファミン酸カルシウム、スルファミン酸ストロンチウム、スルファミン酸バリウム、スルファミン酸鉄、スルファミン酸亜鉛などを挙げることができる。スルファミン酸及びこれらのスルファミン酸塩は、1種を単独で用いることもでき、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
次亜塩素酸塩等の塩素系酸化剤とスルファミン酸塩等のスルファミン酸化合物を混合すると、これらが結合して、クロロスルファミン酸塩を形成して安定化し、モノクロラミンのようなpHによる解離性の差、それによる遊離塩素濃度の変動を生じることなく、水中で安定した遊離塩素濃度を保つことが可能となる。
塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物との使用割合には特に制限はないが、塩素系酸化剤の有効塩素1モルあたりスルファミン酸化合物を0.5〜5.0モルとすることが好ましく、0.5〜2.0モルとすることがより好ましい。
クロロスルファミン酸塩系酸化剤は、塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む水溶液として好適に用いられるが、何らこの混合水溶液の形態に限らず、塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物とは別々に提供されるものであっても良い。
また、クロロスルファミン酸塩系酸化剤は、その効果を損なうことのない範囲において、塩素系酸化剤及びスルファミン酸化合物以外の他の成分を含有していても良い。この他の成分としては、アルカリ剤、アゾール類、アニオン性ポリマー、ホスホン酸類等が挙げられる。
アルカリ剤は、クロロスルファミン酸塩系酸化剤中の塩素系酸化剤を安定化させるために用いられ、通常、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が用いられる。
アゾール類は、ヘテロ原子を2個以上含む5員環を有する芳香族化合物である。本発明で用いるアゾール類としては、例えば、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、テトラゾールなどの単環式アゾール系化合物、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾチアゾール、メルカプトベンゾイミダゾール、メルカプトメチルベンゾイミダゾール、メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、インダゾール、プリン、イミダゾチアゾール、ピラゾロオキサゾールなどの縮合多環式アゾール系化合物などや、さらにアゾール系化合物の中で塩を形成する化合物にあってはそれらの塩などを挙げることができる。これらのアゾール系化合物は、1種を単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
アニオン性ポリマーとしては、重量平均分子量が500〜50,000のものが好ましく、1,000〜30,000のものがより好ましく、1,500〜20,000のものがさらに好ましい。
このアニオン性ポリマーを構成するモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸及びこれらの不飽和カルボン酸の塩、例えば、ナトリウム塩やカリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩やマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、さらには無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸の無水物などを挙げることができる。これらのモノマーは単独で重合することができ、また2種以上を共重合することもでき、あるいは、該モノマー1種以上とその他の共重合可能なモノマー1種以上とを共重合させることもできる。他の共重合可能なモノマーとしては、例えば、不飽和アルコール、不飽和カルボン酸エステル、アルケン、スルホン酸基を有するモノマーなどを挙げることができる。不飽和アルコールとしては、例えば、アリルアルコール、メタリルアルコールなどを挙げることができる。不飽和カルボン酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチルなどを挙げることができる。アルケンとしては、例えば、イソブチレン、n−ブチレン、ジイソブチレン、ペンテンなどを挙げることができる。スルホン酸基を有するモノマーとしては、例えば、ビニルスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−アリロキシ−1−プロパンスルホン酸、イソプレンスルホン酸、スチレンスルホン酸などを挙げることができる。
アニオン性ポリマーの例としては、ポリマレイン酸、ポリアクリル酸、アクリル酸と2−ヒドロキシ−3−アリロキシプロパンスルホン酸との共重合物、アクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸との共重合物、アクリル酸とイソプレンスルホン酸との共重合物、アクリル酸とメタクリル酸2−ヒドロキシエチルとの共重合物、アクリル酸とメタクリル酸2−ヒドロキシエチルとイソプロピレンスルホン酸の共重合物、マレイン酸とペンテンとの共重合物、前記アニオン性ポリマーのアルカリ金属塩及び前記アニオン性ポリマーのアルカリ土類金属塩などを挙げることができる。
また、ホスホン酸類としては、例えば、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、ヒドロキシホスホノ酢酸、ニトリロトリメチレンホスホン酸、エチレンジアミン−N,N,N’,N’−テトラメチレンホスホン酸又は前記ホスホン酸の塩などを挙げることができる。本発明において、ホスホン酸類は遊離の酸として用いても、塩として用いても良い。ホスホン酸の塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などのアルカリ土類金属塩などを挙げることができる。ホスホン酸の塩は、酸の特性成分である水素が完全に置換された正塩であってもよく、酸成分の水素の一部が残っている酸性塩であってもよい。これらのホスホン酸及びその塩は、1種を単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
これらの他の成分を含む場合、クロロスルファミン酸塩系酸化剤の剤型に特に制限はなく、例えば、塩素系酸化剤及びスルファミン酸化合物と、アゾール類、アニオン性ポリマー、ホスホン酸類のいずれか1種以上とからなる1液型薬剤であっても良く、各成分を2液に分けた2液型薬剤とすることもできる。2液型薬剤としては、例えば、塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物を含有するA液と、その他の成分B液からなる2液型薬剤なとを挙げることができる。
1液型薬剤とする場合は、塩素系酸化剤の安定性を保つために、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリを添加して、pH12以上に調整することが好ましく、pH13以上、例えばpH13〜14に調整することがより好ましい。2液型薬剤とする場合は、同様に塩素系酸化剤を含有する剤をpH12以上に調整することが好ましく、pH13以上、例えばpH13〜14に調整することがより好ましい。
本発明で用いるクロロスルファミン酸塩系酸化剤は例えば、次のような配合とすることが好ましい。
(A) 有効塩素濃度1〜8重量%、好ましくは3〜6重量%の塩素系酸化剤と、1.5〜9重量%、好ましくは4.5〜8重量%のスルファミン酸化合物を含む、pH≧12の水溶液
(B) 上記(A)に、更に0.05〜3.0重量%のアゾール類、1.5〜3.0重量%のアニオン性ポリマー、0.5〜4.0重量%のホスホン酸類の1種又は2種以上を含む、pH≧12の水溶液
なお、上記(A),(B)において、pHはアルカリ剤の添加により調整される。
本発明の逆浸透膜分離方法では、RO膜分離装置の給水に、かかるクロロスルファミン酸塩系酸化剤を添加する。クロロスルファミン酸塩系酸化剤は、次亜塩素酸ナトリウムやモノクロラミンと比較して酸化力が弱いため、次亜塩素酸ナトリウム、モノクロラミンと同様の濃度で添加しても十分な殺菌効果を発揮しない。一方、クロロスルファミン酸塩系酸化剤はヒドラジンと同様に付着物を剥離する効果もあると考えられ、膜分離装置を安定運転するための濃度は次亜塩素酸ナトリウムやモノクロラミンと比較して低くても問題がない。
殺菌、剥離効果を得るためには、クロロスルファミン酸塩系酸化剤は、RO膜分離装置の給水中のクロロスルファミン酸塩系酸化剤濃度として、0.1〜1000mg/L、特に1〜200mg/Lとなるように添加することが好ましい。クロロスルファミン酸塩系酸化剤の添加量が多過ぎると膜劣化のリスクが高まるとともに、薬品コストがかかりすぎ、現実的でない。逆に、クロロスルファミン酸塩系酸化剤添加量が少な過ぎると、十分な殺菌、剥離効果を得ることができない。
クロロスルファミン酸塩系酸化剤の添加箇所としては、RO膜分離装置よりも上流側であれば良く、特に制限はない。RO膜分離装置の前段に保安フィルター等が設けられている場合には、この保安フィルターの入口側で添加することが保安フィルターでの微生物増殖を抑制できるので好ましい。
本発明では、次亜塩素酸ナトリウムなどの塩素系酸化剤をクロロスルファミン酸塩系酸化剤の添加箇所よりも上流側において被処理水に添加してもよい。この場合、塩素系酸化剤を上流側にて添加し、凝集反応槽や濾過装置等の殺菌を行った後、活性炭処理又は還元剤添加により残留塩素系酸化剤を分解し、その後、クロロスルファミン酸塩系酸化剤を添加してRO給水とすることが好ましい。
還元剤の添加により残留塩素系酸化剤を分解する場合、還元剤の添加箇所は塩素系酸化剤の下流側であって、クロロスルファミン酸塩系酸化剤の上流側であれば良く、特に制限はない。ただし、RO膜分離装置より前段に配置された装置は、塩素系酸化剤を含む状態で通水することで微生物増殖などを抑制することが好ましい。このため、RO膜分離装置の近くで還元剤を添加することが好ましく、RO膜分離装置の前段に保安フィルターを設ける場合には、保安フィルターとRO膜分離装置との間に還元剤とクロロスルファミン酸塩系酸化剤とをこの順番で添加することが好ましい。
本発明において、RO膜分離装置は、RO膜(NF膜を包含する。)を備えたRO膜エレメントをベッセルに装填したRO膜モジュールによって構成される。本発明で使用されるRO膜は、膜を介する溶液間の浸透圧差以上の圧力を高濃度側にかけて、溶質を阻止し、溶媒を透過する液体分離膜である。RO膜の膜構造としては、複合膜、相分離膜などの高分子膜などを挙げることができる。本発明に適用されるRO膜の素材としては、例えば、芳香族系ポリアミド、脂肪族系ポリアミド、これらの複合材などのポリアミド系素材などを挙げることができる。RO膜モジュールの形式については特に制限はなく、例えば、管状膜モジュール、平面膜モジュール、スパイラル膜モジュール、中空糸膜モジュールなどを適用することができる。
RO膜分離装置の給水に添加されたクロロスルファミン酸塩系酸化剤は、RO膜を透過しないので、RO膜分離装置の透過水にリークしない。ところが、RO膜は破損が生じると、透過水にクロロスルファミン酸塩系酸化剤がリークすることになる。そこで、本発明では、RO透過水の全塩素を測定し、所定値を超える全塩素が検出されるときには、クロロスルファミン酸塩系酸化剤の添加を停止する。また、必要に応じ、RO給水に還元剤を添加して残留クロロスルファミン酸塩系酸化剤を分解(還元)する。
この還元剤としては特に制限はなく、重亜硫酸、チオ硫酸、亜硫酸、チオグリコール酸及びアスコルビン酸などのナトリウム塩や他の金属塩等の1種又は2種以上を用いることができる。また、水素ガスを吹き込んでも良い。還元剤の添加量は、クロロスルファミン酸塩系酸化剤の還元当量の1〜5倍特に1〜3倍とすることが好ましい。
全塩素の検出にはDPD法またはその類似法を用いるのが好ましい。全塩素の前記所定値としては、0〜0.1mg/L特に0.01〜0.05mg/Lの範囲から選択した値であることが好ましい。
図1〜8はそれぞれ本発明の一例を示すフローである。図1,2では、原水槽1からの原水にクロロスルファミン酸塩系酸化剤を添加手段2によって添加した後、凝集反応槽3に導入し、凝集剤を添加して凝集反応させる。凝集剤としてはPAC、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化第二鉄およびポリ鉄(ポリ硫酸第二鉄)などを用いることができる。凝集処理液を砂濾過塔、二層濾過塔、MF膜およびUF膜などの濾過装置4によって濾過した後、水槽5を介して活性炭塔6に通水する。次いで、保安フィルタ7に通水した後、RO装置9に通水し、透過水を処理水として取り出す。図示はしないが、濃縮水については別途処理して系外に排出するか、又は原水槽1に戻す。RO透過水の全塩素を全塩素計10で検出し、全塩素検出値が所定値以下である場合(全塩素が検出されない場合を含む)には、そのまま運転を継続する。
全塩素の検出値が所定値を超えるときには、
(a) クロロスルファミン酸塩系酸化剤添加手段2からのクロロスルファミン酸塩系酸化剤の添加を停止する。
(b) クロロスルファミン酸塩系酸化剤の添加を停止すると共に、還元剤を添加する。
のいずれかの対策を行い、RO透過水中へのクロロスルファミン酸塩系酸化剤のリークを防止する。
クロロスルファミン酸塩系酸化剤が給水に添加されてから、クロロスルファミン酸塩系酸化剤が添加された給水が逆浸透膜分離装置へ到達する時間が短い場合、例えば10秒以下の場合には、上記(a)の対策を採用することができるが、クロロスルファミン酸塩系酸化剤が添加された給水が逆浸透膜分離装置へ到達する時間が長い場合、例えば10秒を超える場合には、上記(b)の対策とすることが好ましい。これは、クロロスルファミン酸塩系酸化剤が添加された給水が逆浸透膜分離装置へ到達する時間が長い場合、クロロスルファミン酸塩系酸化剤の添加を停止しても、配管内に残留するクロロスルファミン酸塩系酸化剤が相当量存在し、これらのリークを防止する必要があるためである。なお、透過水中の全塩素濃度が所定値を超えた場合にも、制御機器などのトラブルなどで、クロロスルファミン酸塩系酸化剤の添加が停止されない場合を考慮し、何れの場合でも、上記(b)の対策をとることが好ましい。
図1では還元剤を保安フィルタ7の後段側に添加しているが、図2のように活性炭塔6の後段側かつ保安フィルタ7の前段側に還元剤を添加してもよい。
図1,2ではクロロスルファミン酸塩系酸化剤を原水槽1からの原水にのみ添加しているが、原水槽1からの原水と、活性炭塔6からの流出水との双方にクロロスルファミン酸塩系酸化剤を添加してもよい。このようにすれば、クロロスルファミン酸塩系酸化剤の一部が活性炭で分解されても、活性炭塔6の後段側にクロロスルファミン酸塩系酸化剤が添加されるので、活性炭塔6の後段側でスライムが抑制される。
図3,4では、原水槽1からの原水に対し次亜塩素酸ナトリウムなどの塩素系酸化剤を添加手段11によって添加している。クロロスルファミン酸塩系酸化剤は活性炭塔6の流出水に添加される。この場合も、RO透過水中の全塩素検出値が所定値を超えた場合、上記(a),(b)のいずれかの対策を行う。図3では、還元剤の添加を保安フィルタ7の後段側とし、図4では保安フィルタ7の前段側としている。
なお、図3,4において、添加手段11によって添加された次亜塩素酸ナトリウムなどの塩素系酸化剤により、凝集反応槽3〜活性炭6においてスライムが抑制される。この次亜塩素酸ナトリウム等の塩素系酸化剤は活性炭塔6によって分解されるので、RO給水には混入しない。
図5〜7では、活性炭塔6を省略していると共に、原水槽1からの原水に対し次亜塩素酸ナトリウムなどの塩素系酸化剤を添加している。そのため、RO給水に対し常に還元剤を添加して残留塩素系酸化剤を分解し、RO給水に塩素系酸化剤が残存しないようにしている。図5では還元剤及びクロロスルファミン酸塩系酸化剤を保安フィルタ7の前段側のライン5aにて添加している。この場合、まずライン5aの上流域において還元剤を添加し、次亜塩素酸ナトリウム等の塩素系酸化剤を還元剤で分解した後、ライン5aの下流域においてクロロスルファミン酸塩系酸化剤を添加する。ライン5aに添加した還元剤の多くは次亜塩素酸ナトリウム等の塩素系酸化剤との反応に消費されるので、残留還元剤によって分解されるクロロスルファミン酸塩系酸化剤の量はわずかであり、RO装置9でのスライムは十分に抑制される。
図6では、還元剤を保安フィルタ7の前段側のライン5aで添加し、クロロスルファミン酸塩系酸化剤を保安フィルタ7の後段側のライン7aで添加する。
図7では還元剤及びクロロスルファミン酸塩系酸化剤を保安フィルタ7の後段側のライン7aで添加する。この場合、まずライン7aの上流域において還元剤を添加し、次亜塩素酸ナトリウム等の塩素系酸化剤を還元剤で分解した後、ライン7aの下流域においてクロロスルファミン酸塩系酸化剤を添加する。ライン7aに添加した還元剤の多くは次亜塩素酸ナトリウム等の塩素系酸化剤との反応に消費されるので、残留還元剤によって分解されるクロロスルファミン酸塩系酸化剤の量はわずかであり、RO装置9でのスライムは十分に抑制される。図5〜7のその他の符号は図1〜4と同一部分を示している。
図5〜7のいずれにおいても、RO透過水中の全塩素検出値が所定値を超える場合には、クロロスルファミン酸塩系酸化剤の添加を停止する。なお、透過水中の全塩素濃度が所定値を超えた場合にも、制御機器などのトラブルなどで、クロロスルファミン酸塩系酸化剤の添加が停止されない場合を考慮し、残留塩素系酸化剤を分解するための還元剤の添加量を通常の1.1〜3倍に増量することが好ましい。
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
[実施例1]
図1に示す水処理装置において、本発明に従って処理を行った。
この水処理装置では、工水を原水とし、240m/hで原水槽1から送水し、クロロスルファミン酸塩系酸化剤を10mg/L添加した後、凝集反応槽3に導入し、凝集剤としてPACを10mg/L添加して凝集処理した後、砂濾過装置4にて濾過した。水槽5から活性炭塔6に通水し、保安フィルタ7、RO装置9に通水して処理水を得た。
RO装置9のRO膜としては、日東電工(株)製「ES20」(芳香族ポリアミド超低圧RO膜)を使用した。
クロロスルファミン酸塩系酸化剤としては、次亜塩素酸ナトリウム2重量%(有効塩素濃度として)、スルファミン酸8重量%、及び水酸化ナトリウム1重量%を含むpH13の水溶液からなるクロロスルファミン酸塩系酸化剤を、給水中のクロロスルファミン酸塩系酸化剤濃度が20mg/Lになるように添加した。RO透過水中に全塩素は検出されなかった。
[実施例2]
実施例1において、RO膜を破損膜に交換したこと以外は同様にして原水を処理したところ、RO透過水の全塩素濃度が予め設定した所定値である0.05mg/Lを超えた0.2mg/Lとなった。そこで、クロロスルファミン酸塩系酸化剤の添加を停止すると共に、還元剤としてNaHSOを図1の通り保安フィルタの後段側で2.4mg/L添加したところ、RO透過水の全塩素濃度は0.04mg/L以下となった。
[実施例3]
図3に示す水処理装置において、本発明に従って処理を行った。
この水処理装置では、工水を原水とし、100m/hで原水槽1から送水し、次亜塩素酸ナトリウムを10mg/L添加した後、凝集反応槽3に導入し、凝集剤としてポリ鉄を10mg/L添加して凝集処理した後、砂濾過装置4にて濾過した。水槽5から活性炭塔6に通水し、クロロスルファミン酸塩系酸化剤を20mg/L添加した後、保安フィルタ7、RO装置9に通水して処理水を得た。
RO装置9のRO膜及びクロロスルファミン酸塩系酸化剤としては、実施例1と同一のものを用い、給水中のクロロスルファミン酸塩系酸化剤濃度が20mg/Lになるように添加した。RO透過水中に全塩素は検出されなかった。
[実施例4]
実施例1において、RO膜を破損膜に交換したこと以外は同様にして原水を処理したところ、RO透過水の全塩素濃度が予め設定した所定値である0.05mg/Lを超えた0.1mg/Lとなった。そこで、クロロスルファミン酸塩系酸化剤の添加を停止すると共に、還元剤としてNaHSOを図3の通り保安フィルタの後段側で1.2mg/L添加したところ、RO透過水の全塩素濃度は0.04mg/L以下となった。
以上の実施例より、本発明によるとRO透過水中へのクロロスルファミン酸塩系酸化剤のリークを防止できることが認められた。
2 クロロスルファミン酸塩系酸化剤添加手段
8 還元剤添加手段
9 RO装置
10 全塩素計
11 次亜塩素酸ナトリウム等の塩素系酸化剤添加手段

Claims (6)

  1. 逆浸透膜分離装置の給水にスルファミン酸化合物を含む結合塩素系酸化剤(以下、「クロロスルファミン酸塩系酸化剤」という。)を添加する逆浸透膜分離方法において、
    該逆浸透膜分離装置の透過水の全塩素濃度を測定し、全塩素濃度が所定値を超えるときには前記クロロスルファミン酸塩系酸化剤の添加を停止することを特徴とする逆浸透膜分離方法。
  2. 請求項1において、前記全塩素濃度が所定値を超えるときには、さらに前記逆浸透膜分離装置の給水に、前記クロロスルファミン酸塩系酸化剤の添加箇所よりも下流で、還元剤を添加することを特徴とする逆浸透膜分離方法。
  3. 逆浸透膜分離装置の給水にクロロスルファミン酸塩系酸化剤を添加する逆浸透膜分離方法において、
    原水に塩素系酸化剤を添加し、その後、活性炭にて処理し、活性炭処理水に前記クロロスルファミン酸塩系酸化剤を添加して逆浸透膜分離装置に供給する方法であって、
    該逆浸透膜分離装置の透過水の全塩素濃度を測定し、全塩素濃度が所定値を超えるときには前記クロロスルファミン酸塩系酸化剤の添加を停止することを特徴とする逆浸透膜分離方法。
  4. 請求項3において、前記全塩素濃度が所定値を超えるときには、さらに前記逆浸透膜分離装置の給水に、前記クロロスルファミン酸塩系酸化剤の添加箇所よりも下流で、還元剤を添加することを特徴とする逆浸透膜分離方法。
  5. 逆浸透膜分離装置の給水にクロロスルファミン酸塩系酸化剤を添加する逆浸透膜分離方法において、
    前記原水に塩素系酸化剤を添加し、その後還元剤を添加して残留塩素系酸化剤を分解した後、前記クロロスルファミン酸塩系酸化剤を添加し、その後、前記逆浸透膜分離装置に供給する方法であって、
    該逆浸透膜分離装置の透過水の全塩素濃度を測定し、全塩素濃度が所定値を超えるときには、前記クロロスルファミン酸塩系酸化剤の添加を停止することを特徴とする逆浸透膜分離方法。
  6. 請求項5において、前記全塩素濃度が所定値を超えるときには、さらに前記還元剤の添加量を増加させることを特徴とする逆浸透膜分離方法。
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