JP2014175630A - 熱処理装置および熱処理方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】光照射加熱時における基板の温度の制御性を向上させることができる熱処理装置および熱処理方法を提供する。
【解決手段】チャンバー6内には複数の支持ピン12を備えた支持部10が固定設置されている。石英のサセプター70は支持部10に対して相対的に昇降移動するように設けられている。支持ピン12によって半導体ウェハーWを支持した状態にて、ハロゲンランプHLによる予備加熱およびフラッシュランプFLによるフラッシュ加熱が行われる。サセプター70を昇降させて半導体ウェハーWとサセプター70との距離を可変とすることにより、予備加熱の昇温工程および保温工程のそれぞれに適切な半導体ウェハーWとサセプター70との距離とすることができ、光照射加熱時における半導体ウェハーWの温度の制御性を向上させることができる。
【選択図】図1
【解決手段】チャンバー6内には複数の支持ピン12を備えた支持部10が固定設置されている。石英のサセプター70は支持部10に対して相対的に昇降移動するように設けられている。支持ピン12によって半導体ウェハーWを支持した状態にて、ハロゲンランプHLによる予備加熱およびフラッシュランプFLによるフラッシュ加熱が行われる。サセプター70を昇降させて半導体ウェハーWとサセプター70との距離を可変とすることにより、予備加熱の昇温工程および保温工程のそれぞれに適切な半導体ウェハーWとサセプター70との距離とすることができ、光照射加熱時における半導体ウェハーWの温度の制御性を向上させることができる。
【選択図】図1
Description
本発明は、半導体ウェハーや液晶表示装置用ガラス基板等の薄板状の精密電子基板(以下、単に「基板」と称する)に光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置および熱処理方法に関する。
半導体デバイスの製造プロセスにおいて、不純物導入は半導体ウェハー内にpn接合を形成するための必須の工程である。現在、不純物導入は、イオン打ち込み法とその後のアニール法によってなされるのが一般的である。イオン打ち込み法は、ボロン(B)、ヒ素(As)、リン(P)といった不純物の元素をイオン化させて高加速電圧で半導体ウェハーに衝突させて物理的に不純物注入を行う技術である。注入された不純物はアニール処理によって活性化される。この際に、アニール時間が数秒程度以上であると、打ち込まれた不純物が熱によって深く拡散し、その結果接合深さが要求よりも深くなり過ぎて良好なデバイス形成に支障が生じるおそれがある。
そこで、極めて短時間で半導体ウェハーを加熱するアニール技術として、近年フラッシュランプアニール(FLA)が注目されている。フラッシュランプアニールは、キセノンフラッシュランプ(以下、単に「フラッシュランプ」とするときにはキセノンフラッシュランプを意味する)を使用して半導体ウェハーの表面にフラッシュ光を照射することにより、不純物が注入された半導体ウェハーの表面のみを極めて短時間(数ミリ秒以下)に昇温させる熱処理技術である。
キセノンフラッシュランプの放射分光分布は紫外域から近赤外域であり、従来のハロゲンランプよりも波長が短く、シリコンの半導体ウェハーの基礎吸収帯とほぼ一致している。よって、キセノンフラッシュランプから半導体ウェハーにフラッシュ光を照射したときには、透過光が少なく半導体ウェハーを急速に昇温することが可能である。また、数ミリ秒以下の極めて短時間のフラッシュ光照射であれば、半導体ウェハーの表面近傍のみを選択的に昇温できることも判明している。このため、キセノンフラッシュランプによる極短時間の昇温であれば、不純物を深く拡散させることなく、不純物活性化のみを実行することができるのである。
このようなキセノンフラッシュランプを使用した熱処理装置として、特許文献1には、半導体ウェハーの表面側にフラッシュランプを配置するとともに裏面側にハロゲンランプを配置し、それらの組み合わせによって所望の熱処理を行うものが開示されている。特許文献1に開示の熱処理装置においては、サセプターに保持された半導体ウェハーをハロゲンランプによってある程度の温度にまで予備加熱し、その後フラッシュランプからのフラッシュ光照射によって所望の処理温度にまで昇温している。
特許文献1に記載の熱処理装置においては、サセプター上に配置された複数のバンプに半導体ウェハーを載置してハロゲンランプによる予備加熱およびフラッシュランプによるフラッシュ加熱を行っている。複数のバンプの高さは一定である。従って、半導体ウェハーの下面からサセプターの上面までの距離も常に一定である。
ハロゲンランプによる予備加熱時には、光を透過するがゆえに相対的に低温のサセプターが予備加熱される半導体ウェハーに熱影響を与えるのであるが、半導体ウェハーとサセプターとの距離が一定であると、熱影響の程度が調整できないために予備加熱時の半導体ウェハーの温度制御が困難となるおそれがある。一方、フラッシュ加熱時には、半導体ウェハーの表面近傍のみが極短時間に昇温された結果、表面のみが急激に熱膨張して半導体ウェハーが割れるおそれがある。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、光照射加熱時における基板の温度の制御性を向上させることができる熱処理装置および熱処理方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、基板に光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置において、基板を収容するチャンバーと、前記チャンバー内にて基板を支持する支持部と、石英の板状部材と、前記支持部に支持された基板に前記板状部材が近接または離間するように前記板状部材を前記支持部に対して相対的に昇降させる昇降駆動部と、前記支持部に支持された基板に光を照射して加熱する連続点灯ランプと、前記昇降駆動部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記連続点灯ランプからの光照射によって前記支持部に支持された基板が一定昇温速度で昇温する昇温過程では前記基板と前記板状部材との距離が第1間隔になるとともに、前記基板の昇温速度が低下して前記基板が目標温度に保持される保温過程では前記基板と前記板状部材との距離が第2間隔となるように前記昇降駆動部を制御することを特徴とする。
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係る熱処理装置において、前記目標温度が低くなるほど前記第2間隔が小さくなることを特徴とする。
また、請求項3の発明は、請求項1または請求項2の発明に係る熱処理装置において、前記第2間隔は前記第1間隔よりも小さいことを特徴とする。
また、請求項4の発明は、請求項1から請求項3のいずれかの発明に係る熱処理装置において、前記目標温度に保持された前記基板にフラッシュ光を照射するパルス発光ランプをさらに備え、前記制御部は、前記パルス発光ランプから前記基板にフラッシュ光を照射するときには前記基板と前記板状部材との距離を第3間隔とするように前記昇降駆動部を制御することを特徴とする。
また、請求項5の発明は、請求項4の発明に係る熱処理装置において、前記制御部は、前記パルス発光ランプの発光条件に基づいて前記第3間隔を規定することを特徴とする。
また、請求項6の発明は、請求項4または請求項5の発明に係る熱処理装置において、前記第3間隔は前記第2間隔よりも大きいことを特徴とする。
また、請求項7の発明は、請求項4または請求項5の発明に係る熱処理装置において、前記第3間隔は前記第2間隔と等しいことを特徴とする。
また、請求項8の発明は、基板に光を照射することによって該基板を加熱する熱処理方法において、チャンバー内にて支持部に支持された基板に連続点灯ランプから光を照射して前記基板を一定昇温速度にて昇温する昇温工程と、前記基板の昇温速度を低下させて前記基板を目標温度に保持する保温工程と、を備え、前記昇温工程では前記基板と石英の板状部材との距離が第1間隔になるとともに、前記保温工程では前記基板と前記板状部材との距離が第2間隔となるように、前記板状部材を前記支持部に対して相対的に昇降させることを特徴とする。
また、請求項9の発明は、請求項8の発明に係る熱処理方法において、前記目標温度が低くなるほど前記第2間隔が小さくなることを特徴とする。
また、請求項10の発明は、請求項8または請求項9の発明に係る熱処理方法において、前記第2間隔は前記第1間隔よりも小さいことを特徴とする。
また、請求項11の発明は、請求項8から請求項10のいずれかの発明に係る熱処理方法において、前記目標温度に保持された前記基板にパルス発光ランプからフラッシュ光を照射するフラッシュ加熱工程をさらに備え、前記フラッシュ加熱工程では、前記基板と前記板状部材との距離が第3間隔となるように、前記板状部材を前記支持部に対して相対的に昇降させることを特徴とする。
また、請求項12の発明は、請求項11の発明に係る熱処理方法において、前記パルス発光ランプの発光条件に基づいて前記第3間隔を規定することを特徴とする。
また、請求項13の発明は、請求項11または請求項12の発明に係る熱処理方法において、前記第3間隔は前記第2間隔よりも大きいことを特徴とする。
また、請求項14の発明は、請求項11または請求項12の発明に係る熱処理方法において、前記第3間隔は前記第2間隔と等しいことを特徴とする。
請求項1から請求項7の発明によれば、連続点灯ランプからの光照射によって支持部に支持された基板が一定昇温速度で昇温する昇温過程では基板と板状部材との距離が第1間隔になるとともに、基板の昇温速度が低下して基板が目標温度に保持される保温過程では基板と板状部材との距離が第2間隔となるように昇降駆動部を制御するため、昇温過程および保温過程のそれぞれに適切な基板と板状部材との距離とすることができ、光照射加熱時における基板の温度の制御性を向上させることができる。
特に、請求項2の発明によれば、目標温度が低くなるほど第2間隔が小さくなるため、保温過程にて基板から石英の板状部材に伝わる熱量を多くして基板のオーバーシュートを防止することができる。
特に、請求項4の発明によれば、パルス発光ランプから基板にフラッシュ光を照射するときには基板と板状部材との距離を第3間隔とするため、フラッシュ光照射に適切な基板と板状部材との距離とすることができ、基板と板状部材との接触を防止することができる。
特に、請求項7の発明によれば、第3間隔が第2間隔と等しいため、保温過程終了後に直ちにパルス発光ランプからフラッシュ光を照射することができ、スループットを向上させることができる。
また、請求項8から請求項14の発明によれば、チャンバー内にて支持部に支持された基板に連続点灯ランプから光を照射して基板を一定昇温速度にて昇温する昇温工程では基板と石英の板状部材との距離が第1間隔になるとともに、基板の昇温速度を低下させて基板を目標温度に保持する保温工程では基板と板状部材との距離が第2間隔となるため、昇温工程および保温工程のそれぞれに適切な基板と板状部材との距離とすることができ、光照射加熱時における基板の温度の制御性を向上させることができる。
特に、請求項9の発明によれば、目標温度が低くなるほど第2間隔が小さくなるため、保温工程にて基板から石英の板状部材に伝わる熱量を多くして基板のオーバーシュートを防止することができる。
特に、請求項11の発明によれば、目標温度に保持された基板にパルス発光ランプからフラッシュ光を照射するフラッシュ加熱工程では、基板と板状部材との距離が第3間隔となるため、フラッシュ光照射に適切な基板と板状部材との距離とすることができ、基板と板状部材との接触を防止することができる。
特に、請求項14の発明によれば、第3間隔が第2間隔と等しいため、保温工程終了後に直ちにフラッシュ加熱工程に移行することができ、スループットを向上させることができる。
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明に係る熱処理装置1の構成を示す縦断面図である。本実施形態の熱処理装置1は、基板として円板形状の半導体ウェハーWに対してフラッシュ光照射を行うことによってその半導体ウェハーWを加熱するフラッシュランプアニール装置である。処理対象となる半導体ウェハーWのサイズは特に限定されるものではないが、例えばφ300mmやφ450mmである。熱処理装置1に搬入される前の半導体ウェハーWには不純物が注入されており、熱処理装置1による加熱処理によって注入された不純物の活性化処理が実行される。なお、図1および以降の各図には、それらの方向関係を明確にするためZ軸方向を鉛直方向とし、XY平面を水平面とするXYZ直交座標系を適宜付している。また、図1および以降の各図においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。
熱処理装置1は、半導体ウェハーWを収容するチャンバー6と、複数のフラッシュランプFLを内蔵するフラッシュ加熱部5と、複数のハロゲンランプHLを内蔵するハロゲン加熱部4と、を備える。チャンバー6の上側にフラッシュ加熱部5が設けられるとともに、下側にハロゲン加熱部4が設けられている。また、熱処理装置1は、ハロゲン加熱部4、フラッシュ加熱部5およびチャンバー6に設けられた各動作機構を制御して半導体ウェハーWの熱処理を実行させる制御部3を備える。
図2は、チャンバー6の平面図である。チャンバー6は、平面視で略矩形の筒状のチャンバー側壁部61の上下に石英製のチャンバー窓を装着して構成されている。チャンバー側壁部61は上下が開口された概略筒形状を有しており、上側開口には上側チャンバー窓63が装着されて閉塞され、下側開口には下側チャンバー窓64が装着されて閉塞されている。チャンバー側壁部61は、強度と耐熱性に優れた金属材料(例えば、ステンレススチール)にて形成されている。
チャンバー6の天井部を構成する上側チャンバー窓63は、石英により形成された板状部材であり、フラッシュ加熱部5から出射されたフラッシュ光をチャンバー6内に透過する石英窓として機能する。また、チャンバー6の床部を構成する下側チャンバー窓64も、石英により形成された板状部材であり、ハロゲン加熱部4からの光をチャンバー6内に透過する石英窓として機能する。チャンバー6の内側空間、すなわち上側チャンバー窓63、下側チャンバー窓64およびチャンバー側壁部61によって囲まれる空間が熱処理空間65として規定される。
また、チャンバー側壁部61の(+X)側には、チャンバー6に対して半導体ウェハーWの搬入および搬出を行うための搬送開口部(炉口)66が形設されている。搬送開口部66は、図示省略のゲートバルブによって開閉可能とされている。ゲートバルブが搬送開口部66を開放しているときには、搬送開口部66から熱処理空間65への半導体ウェハーWの搬入および熱処理空間65からの半導体ウェハーWの搬出を行うことができる。また、ゲートバルブが搬送開口部66を閉鎖するとチャンバー6内の熱処理空間65が密閉空間とされる。
また、熱処理装置1は、チャンバー6内部の熱処理空間65に処理ガスを供給するためのガス供給部80と、チャンバー6から排気を行う排気部85と、を備える。ガス供給部80は、ガス供給管81にガス供給源82と供給バルブ83とを備える。ガス供給管81の先端側はチャンバー6内の熱処理空間65に連通され、基端側はガス供給源82に接続される。ガス供給管81の経路途中に供給バルブ83が介挿されている。ガス供給源82は、ガス供給管81に処理ガス(本実施形態では窒素ガス(N2))を送出する。供給バルブ83を開放することによって、熱処理空間65に処理ガスが供給される。なお、ガス供給源82としては、熱処理装置1内に設けられた気体タンクと送給ポンプとで構成するようにしても良いし、熱処理装置1が設置される工場の用力を用いるにようにしても良い。また、処理ガスは窒素ガスに限定されるものではなく、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)などの不活性ガス、または、酸素(O2)、水素(H2)、塩素(Cl2)、塩化水素(HCl)、オゾン(O3)、アンモニア(NH3)などの反応性ガスであっても良い。
排気部85は、ガス排気管86に排気装置87と排気バルブ88とを備える。ガス排気管86の先端側はチャンバー6内の熱処理空間65に連通され、基端側は排気装置87に接続される。排気装置87を作動させつつ、排気バルブ88を開放することによって、熱処理空間65の雰囲気が排気される。排気装置87としては、真空ポンプや熱処理装置1が設置される工場の排気ユーティリティを用いることができる。
また、熱処理装置1は、サセプター70および昇降駆動部20を備える。サセプター70は、石英にて形成された略矩形の平板状部材である。サセプター70の縦および横の長さは、処理対象となる半導体ウェハーWの径よりも大きい(例えば、半導体ウェハーWの径がφ450mmであれば、サセプター70の縦および横の長さは450mmよりも大きい)。その一方、図2に示すように、サセプター70の平面サイズはチャンバー6内の熱処理空間65の平面サイズよりも小さい。
図3は、サセプター70の断面図である。図2および図3に示すように、サセプター70の上面中央には、円形の凹部71が形成されており、その径は半導体ウェハーWの径よりも若干大きい。凹部71の周縁部はテーパ面とされている(図3)。また、サセプター70には4個の貫通孔73が穿設されている。それぞれの貫通孔73は、サセプター70を上下に貫通するように設けられている。4個の貫通孔73は凹部71の内側に設けられている。貫通孔73は、後述する支持部10の支持ピン12が貫通するための孔である。
本発明に係る熱処理装置1においては、サセプター70が昇降駆動部20によってチャンバー6内にて昇降される。昇降駆動部20は、チャンバー6の(−Y)側および(+Y)側にそれぞれ1個ずつ設けられている。すなわち、2個の昇降駆動部20によってサセプター70を両持ちで支持して昇降させるのである。
各昇降駆動部20は、駆動モータ21、支持板22および支持軸23を備える。支持板22は、金属製の板であり、その先端部はサセプター70の端部とボルトおよびナットによって締結されている。支持板22の下面には支持軸23が連結されている。駆動モータ21は、支持軸23を昇降させることによって、支持板22を鉛直方向(Z軸方向)に沿って昇降させる。駆動モータ21が支持軸23を昇降させる機構としては、例えば支持軸23の下端に連結される部材に螺合するボールネジを駆動モータ21が回転させるボールネジ機構などを用いることができる。駆動モータ21としては、正確な位置決め制御が可能なパルスモータを用いるのが好ましい。また、サセプター70の高さ位置を検出するために、駆動モータ21にエンコーダを付設するのが好ましい。
図1に示すように、昇降駆動部20は、支持板22の先端の一部を除いてチャンバー6のチャンバー側壁部61よりも外側に設けられている。支持板22は、チャンバー側壁部61の(−Y)側および(+Y)側に形成された開口部を貫通するように設けられている。熱処理空間65の気密性を維持するために、支持板22が貫通するチャンバー側壁部61の両端開口部は筐体24によって覆われており、その筐体24の内側に昇降駆動部20が収納されている。このため、熱処理装置1外部と熱処理空間65とは雰囲気遮断されている。なお、昇降駆動部20自体の発塵によって生じたパーティクルが熱処理空間65に流入するのを防止するために、支持軸23等を蛇腹によって覆っておくことが好ましい。
チャンバー6の(−Y)側および(+Y)側に設けられた2個の昇降駆動部20の駆動モータ21は同期して支持板22を昇降させる。従って、サセプター70は、チャンバー6内にて水平姿勢(法線が鉛直方向に沿う姿勢)のまま、2個の昇降駆動部20によって鉛直方向に沿って昇降されることとなる。
また、熱処理装置1は、チャンバー6内にて半導体ウェハーWを支持する支持部10を備える。図4は、支持部10の平面図である。支持部10は、2本の支持アーム11を備える。それぞれの支持アーム11には、2本の支持ピン12が立設されている。よって、支持部10は計4本の支持ピン12を有する。2本の支持アーム11はチャンバー6内に固定設置されている。従って、チャンバー6内における4本の支持ピン12の水平面内位置および高さ位置も固定されている。
昇降駆動部20によってサセプター70が下降すると、4本の支持ピン12がサセプター70に穿設された貫通孔73を通過し、支持ピン12の上端がサセプター70の上面から突き出る。昇降駆動部20は、少なくとも支持ピン12の上端がサセプター70の上面から突き出る範囲(つまり、貫通孔73を支持ピン12が通過する範囲)でサセプター70を昇降移動させることができる。
図1に戻り、チャンバー6の上方に設けられたフラッシュ加熱部5は、筐体51の内側に、複数本(本実施形態では30本)のキセノンフラッシュランプFLからなる光源と、その光源の上方を覆うように設けられたリフレクタ52と、を備えて構成される。また、フラッシュ加熱部5の筐体51の底部にはランプ光放射窓53が装着されている。フラッシュ加熱部5の床部を構成するランプ光放射窓53は、石英により形成された板状の石英窓である。フラッシュ加熱部5がチャンバー6の上方に設置されることにより、ランプ光放射窓53が上側チャンバー窓63と相対向することとなる。フラッシュランプFLはチャンバー6の上方からランプ光放射窓53および上側チャンバー窓63を介して熱処理空間65にフラッシュ光を照射する。
複数のフラッシュランプFLは、それぞれが長尺の円筒形状を有する棒状ランプであり、それぞれの長手方向が水平方向に沿って互いに平行となるように平面状に配列されている。よって、フラッシュランプFLの配列によって形成される平面も水平面である。
キセノンフラッシュランプFLは、その内部にキセノンガスが封入されその両端部にコンデンサーに接続された陽極および陰極が配設された棒状のガラス管(放電管)と、該ガラス管の外周面上に付設されたトリガー電極とを備える。キセノンガスは電気的には絶縁体であることから、コンデンサーに電荷が蓄積されていたとしても通常の状態ではガラス管内に電気は流れない。しかしながら、トリガー電極に高電圧を印加して絶縁を破壊した場合には、コンデンサーに蓄えられた電気がガラス管内に瞬時に流れ、そのときのキセノンの原子あるいは分子の励起によって光が放出される。このようなキセノンフラッシュランプFLにおいては、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが0.1ミリセカンドないし100ミリセカンドという極めて短い光パルスに変換されることから、ハロゲンランプHLの如き連続点灯の光源に比べて極めて強い光を照射し得るという特徴を有する。すなわち、フラッシュランプFLは、1秒未満の極めて短い時間で瞬間的に発光するパルス発光ランプである。
また、リフレクタ52は、複数のフラッシュランプFLの上方にそれら全体を覆うように設けられている。リフレクタ52の基本的な機能は、複数のフラッシュランプFLから出射されたフラッシュ光を熱処理空間65の側に反射するというものである。リフレクタ52はアルミニウム合金板にて形成されており、その表面(フラッシュランプFLに臨む側の面)はブラスト処理により粗面化加工が施されている。
チャンバー6の下方に設けられたハロゲン加熱部4は、筐体41の内側に複数本(本実施形態では40本)のハロゲンランプHLを内蔵している。ハロゲン加熱部4は、複数のハロゲンランプHLによってチャンバー6の下方から下側チャンバー窓64を介して熱処理空間65への光照射を行う。
図5は、複数のハロゲンランプHLの配置を示す平面図である。本実施形態では、上下2段に各20本ずつのハロゲンランプHLが配設されている。各ハロゲンランプHLは、長尺の円筒形状を有する棒状ランプである。上段、下段ともに20本のハロゲンランプHLは、それぞれの長手方向が水平方向に沿って互いに平行となるように配列されている。よって、上段、下段ともにハロゲンランプHLの配列によって形成される平面は水平面である。
また、図5に示すように、上段、下段ともに支持部10に支持される半導体ウェハーWの中央部に対向する領域よりも周縁部に対向する領域におけるハロゲンランプHLの配設密度が高くなっている。すなわち、上下段ともに、ランプ配列の中央部よりも周縁部の方がハロゲンランプHLの配設ピッチが短い。このため、ハロゲン加熱部4からの光照射による加熱時に温度低下が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部により多い光量の照射を行うことができる。
また、上段のハロゲンランプHLからなるランプ群と下段のハロゲンランプHLからなるランプ群とが格子状に交差するように配列されている。すなわち、上段の各ハロゲンランプHLの長手方向と下段の各ハロゲンランプHLの長手方向とが直交するように計40本のハロゲンランプHLが配設されている。
ハロゲンランプHLは、ガラス管内部に配設されたフィラメントに通電することでフィラメントを白熱化させて発光させるフィラメント方式の光源である。ガラス管の内部には、窒素やアルゴン等の不活性ガスにハロゲン元素(ヨウ素、臭素等)を微量導入した気体が封入されている。ハロゲン元素を導入することによって、フィラメントの折損を抑制しつつフィラメントの温度を高温に設定することが可能となる。したがって、ハロゲンランプHLは、通常の白熱電球に比べて寿命が長くかつ強い光を連続的に照射できるという特性を有する。すなわち、ハロゲンランプHLは少なくとも1秒以上連続して発光する連続点灯ランプである。また、ハロゲンランプHLは棒状ランプであるため長寿命であり、ハロゲンランプHLを水平方向に沿わせて配置することにより上方の半導体ウェハーWへの放射効率が優れたものとなる。
また、制御部3は、熱処理装置1に設けられた上記の種々の動作機構を制御する。制御部3のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部3は、各種演算処理を行うCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく磁気ディスクを備えている。制御部3のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって熱処理装置1における処理が進行する。
上記の構成以外にも熱処理装置1は、半導体ウェハーWの熱処理時にハロゲンランプHLおよびフラッシュランプFLから発生する熱エネルギーによるハロゲン加熱部4、フラッシュ加熱部5およびチャンバー6の過剰な温度上昇を防止するため、様々な冷却用の構造を備えている。例えば、チャンバー側壁部61には水冷管(図示省略)が設けられている。ハロゲン加熱部4およびフラッシュ加熱部5は、内部に気体流を形成して排熱する空冷構造とされている。また、上側チャンバー窓63とランプ光放射窓53との間隙にも空気が供給され、フラッシュ加熱部5および上側チャンバー窓63を冷却する。また、チャンバー6には、支持部10に支持された半導体ウェハーWの温度を測定する温度センサ(例えば、非接触で温度測定する放射温度計)が設けられている。
次に、熱処理装置1における半導体ウェハーWの処理手順について説明する。ここで処理対象となる半導体ウェハーWはイオン注入法により不純物(イオン)が添加された半導体基板である。その不純物の活性化が熱処理装置1によるフラッシュ光照射加熱処理(アニール)により実行される。以下に説明する熱処理装置1の処理手順は、制御部3が熱処理装置1の各動作機構を制御することにより進行する。
図6は、熱処理装置1における半導体ウェハーWの処理手順を示すフローチャートである。また、図7から図10は、図6のいずれかの工程における状態を模式的に示す図である。
まず、チャンバー6の搬送開口部66が開放され、装置外部の搬送ロボットにより搬送開口部66を介してイオン注入後の半導体ウェハーWがチャンバー6内の熱処理空間65に搬入される(ステップS1)。このときには、サセプター70が下降して支持部10の4本の支持ピン12が貫通孔73を通過し、支持ピン12の上端がサセプター70の上面から突き出ている。
搬送ロボットによって搬入された半導体ウェハーWはサセプター70の凹部71の直上位置にまで進出して停止する。そして、搬送ロボットが下降することにより、半導体ウェハーWが搬送ロボットから4本の支持ピン12に渡されて載置される(ステップS2)。図7は、支持ピン12に半導体ウェハーWが載置された状態を示す図である。このときには、支持ピン12に載置された半導体ウェハーWと支持アーム11との間の高さ位置にサセプター70が位置しており、貫通孔73を支持ピン12が貫通している。半導体ウェハーWは、パターン形成がなされて不純物が注入された表面を上面として支持ピン12に支持される。
半導体ウェハーWが支持ピン12に載置された後、搬送ロボットが熱処理空間65から退出し、搬送開口部66がゲートバルブによって閉鎖される。そして、昇降駆動部20によってサセプター70が昇温位置に移動される(ステップS3)。昇温位置とは、後述するハロゲンランプHLによる予備加熱時に半導体ウェハーWが一定昇温速度で昇温するときのサセプター70の高さ位置である。
図8は、サセプター70が昇温位置に移動した状態を示す図である。サセプター70が昇温位置に移動したときには、支持部10の4本の支持ピン12によって支持される半導体ウェハーWの下面とサセプター70の上面との距離が第1間隔L1となる。このような昇温位置は予め制御部3の記憶部に記憶されており、制御部3はサセプター70がその昇温位置に移動するように昇降駆動部20を制御する。或いは、熱処理装置1の動作手順および処理条件等を記述したレシピにて昇温位置を指定するようにしても良い。
また、サセプター70が昇温位置に移動するとともに、ガス供給部80および排気部85によってチャンバー6内の雰囲気置換が行われる。ガス供給部80の供給バルブ83が開放されると、チャンバー6内の熱処理空間65に窒素ガスが供給される。そして、排気部85の排気装置87を作動させつつ、排気バルブ88が開放されると、チャンバー6内の気体が排気される。これにより、チャンバー6内の熱処理空間65が大気雰囲気から窒素雰囲気へと置換される。なお、半導体ウェハーWの搬入にともなう外部雰囲気の流入を最小限に抑制すべく、搬送開口部66を開放する前からチャンバー6内への窒素ガス供給を開始するようにしても良い。
半導体ウェハーWが支持部10によって支持され、サセプター70が昇温位置に移動した後、ハロゲン加熱部4の40本のハロゲンランプHLが一斉に点灯して予備加熱(アシスト加熱)が開始される。ハロゲンランプHLから出射されたハロゲン光は、石英にて形成された下側チャンバー窓64およびサセプター70を透過して半導体ウェハーWの下面(本実施形態では半導体ウェハーWの裏面)から照射される。ハロゲンランプHLからの光照射を受けることによって半導体ウェハーWが昇温する。
図11は、半導体ウェハーWの表面温度の変化を示す図である。ハロゲンランプHLによる予備加熱を行うときには、半導体ウェハーWの温度が図示省略の温度センサによって測定されている。測定された半導体ウェハーWの温度は制御部3に伝達される。制御部3は、温度センサの測定結果に基づいて、ハロゲンランプHLの出力をフィードバック制御している。制御部3による半導体ウェハーWの温度制御は例えばPID(Proportional,Integral,Derivative)制御により行われる。
図11に示すように、時刻t1にハロゲンランプHLが点灯して予備加熱が開始され、半導体ウェハーWが室温から昇温する(ステップS4)。制御部3は、時刻t1から時刻t2までは半導体ウェハーWが一定昇温速度(例えば、50℃/秒)にて昇温するように、つまり半導体ウェハーWの温度が予備加熱開始からの経過時間に比例して上昇するように、ハロゲンランプHLの出力を制御する。時刻t2は、半導体ウェハーWが目標温度である予備加熱温度T1よりも所定値だけ低い温度に到達する時刻である。
このような、支持部10に支持された半導体ウェハーWがハロゲンランプHLからの光照射によって一定昇温速度で昇温する時刻t1から時刻t2までの段階が昇温工程である。昇温工程においては、サセプター70が昇温位置に位置しており、支持部10に支持される半導体ウェハーWとサセプター70との距離は第1間隔L1である。
制御部3は、時刻t2以降の半導体ウェハーWの昇温速度が低下するように時刻t2にハロゲンランプHLの出力を調整する。上記の昇温工程と同じ昇温速度にて半導体ウェハーWを予備加熱温度(目標温度)T1にまで昇温するとウェハー温度が目標温度を超えて上昇するため(いわゆるオーバーシュート)、時刻t2以降は昇温速度を徐々に低下させるのである。
昇温速度が低下して時刻t3には半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達する。温度センサの測定結果から半導体ウェハーWが予備加熱温度T1に到達したことを検出した制御部3は、その後数秒程度半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1を維持するように、ハロゲンランプHLの出力を制御する。なお、予備加熱温度T1は、半導体ウェハーWに添加された不純物が熱により拡散する恐れのない、200℃ないし800℃程度とされる(本実施の形態では700℃)。
このような、半導体ウェハーWの昇温速度が低下して半導体ウェハーWが予備加熱温度(目標温度)T1に保持される時刻t2から時刻t4までの段階が保温工程である。すなわち、時刻t2に、ハロゲンランプHLからの光照射によって半導体ウェハーWが一定昇温速度で昇温する昇温工程から予備加熱温度T1に保持される保温工程に移行するのである(ステップS5)。
また、昇温工程から保温工程に移行する時刻t2には、制御部3が昇降駆動部20を制御してサセプター70を保温位置に移動させる(ステップS6)。図9は、サセプター70が保温位置に移動した状態を示す図である。サセプター70が保温位置に移動したときには、支持部10の4本の支持ピン12によって支持される半導体ウェハーWの下面とサセプター70の上面との距離が第2間隔L2となる。すなわち、保温工程においては、サセプター70が保温位置に位置しており、支持部10に支持される半導体ウェハーWとサセプター70との距離が第2間隔L2となる状態でハロゲンランプHLからの光照射加熱が行われる。本実施形態においては、昇温工程から保温工程に移行するときにサセプター70が上昇しており、第2間隔L2は第1間隔L1よりも小さい。なお、このような保温位置も予め制御部3の記憶部に記憶されており、制御部3はサセプター70がその保温位置に移動するように昇降駆動部20を制御する。
昇温工程および保温工程からなる予備加熱を行うことによって、半導体ウェハーWの全体を予備加熱温度T1に均一に昇温している。ハロゲンランプHLによる予備加熱の段階においては、より放熱が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部の温度が中央部よりも低下する傾向にあるが、ハロゲン加熱部4におけるハロゲンランプHLの配設密度は、半導体ウェハーWの中央部に対向する領域よりも周縁部に対向する領域の方が高くなっている。このため、放熱が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部に照射される光量が多くなり、予備加熱段階における半導体ウェハーWの面内温度分布を均一なものとすることができる。
半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達して所定時間が経過した時刻t4に制御部3が昇降駆動部20を制御してサセプター70をフラッシュ位置に移動させる(ステップS7)。図10は、サセプター70がフラッシュ位置に移動した状態を示す図である。サセプター70がフラッシュ位置に移動したときには、支持部10の4本の支持ピン12によって支持される半導体ウェハーWの下面とサセプター70の上面との距離が第3間隔L3となる。本実施形態においては、予備加熱の保温工程からフラッシュ加熱工程に移行するときにサセプター70が下降しており、第3間隔L3は第2間隔L2よりも大きい。このようなフラッシュ位置も予め制御部3の記憶部に記憶されており、制御部3はサセプター70がそのフラッシュ位置に移動するように昇降駆動部20を制御する。
サセプター70がフラッシュ位置に移動した後、時刻t5にフラッシュ加熱部5のフラッシュランプFLが半導体ウェハーWの表面にフラッシュ光照射を行う(ステップS8)。このとき、フラッシュランプFLから放射されるフラッシュ光の一部は直接にチャンバー6内へと向かい、他の一部は一旦リフレクタ52により反射されてからチャンバー6内へと向かい、これらのフラッシュ光の照射により半導体ウェハーWのフラッシュ加熱が行われる。
フラッシュ加熱は、フラッシュランプFLからのフラッシュ光(閃光)照射により行われるため、半導体ウェハーWの表面温度を短時間で上昇することができる。すなわち、フラッシュランプFLから照射されるフラッシュ光は、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが極めて短い光パルスに変換された、照射時間が0.1ミリセカンド以上100ミリセカンド以下程度の極めて短く強い閃光である。そして、フラッシュランプFLからのフラッシュ光照射によりフラッシュ加熱される半導体ウェハーWの表面温度は、瞬間的に1000℃以上の処理温度T2まで上昇し、半導体ウェハーWに注入された不純物が活性化された後、表面温度が急速に下降する。このように、熱処理装置1では、半導体ウェハーWの表面温度を極めて短時間で昇降することができるため、半導体ウェハーWに注入された不純物の熱による拡散を抑制しつつ不純物の活性化を行うことができる。なお、不純物の活性化に必要な時間はその熱拡散に必要な時間に比較して極めて短いため、0.1ミリセカンドないし100ミリセカンド程度の拡散が生じない短時間であっても活性化は完了する。このようなフラッシュ加熱工程においては、サセプター70がフラッシュ位置に位置しており、支持部10に支持される半導体ウェハーWとサセプター70との距離は第3間隔L3である。
フラッシュ加熱処理が終了した後、所定時間が経過した時刻t6にハロゲンランプHLが消灯する。これにより、半導体ウェハーWが予備加熱温度T1から急速に降温する。また、支持部10の4本の支持ピン12によって半導体ウェハーWを支持したまま、サセプター70はフラッシュ位置からさらに下降する。このときの状態は、半導体ウェハーWをチャンバー6内に搬入したときの図7と同様である。
その後、半導体ウェハーWの温度が所定以下にまで降温した後、チャンバー6の搬送開口部66が開放され、支持ピン12に載置されている半導体ウェハーWが装置外部の搬送ロボットによりチャンバー6から搬出され、熱処理装置1における半導体ウェハーWの加熱処理が完了する(ステップS9)。
本実施形態においては、支持部10の4本の支持ピン12によって半導体ウェハーWを支持した状態のまま、ハロゲンランプHLによる予備加熱およびフラッシュランプFLによるフラッシュ加熱が行われる。石英の板状部材であるサセプター70は昇降可能とされており、予備加熱およびフラッシュ加熱を行うときには支持ピン12に支持された半導体ウェハーWの下方にてサセプター70が昇降する。すなわち、半導体ウェハーWとサセプター70との距離は可変である。
ハロゲンランプHLによる予備加熱は昇温工程とそれに続く保温工程とで構成される。ハロゲンランプHLからの光照射によって支持部10に支持された半導体ウェハーWが一定昇温速度で昇温する昇温工程では、半導体ウェハーWとサセプター70との距離が第1間隔L1とされる。そして、半導体ウェハーWの昇温速度が低下して半導体ウェハーWが予備加熱温度T1に保持される保温工程では、半導体ウェハーWとサセプター70との距離が第2間隔L2とされる。本実施形態においては、第2間隔L2は第1間隔L1よりも小さい。
石英のサセプター70は、ハロゲンランプHLから出射された光をほとんど透過する。石英も多少はハロゲンランプHLからの光を吸収するのであるが、そのような波長域の成分は同じく石英の下側チャンバー窓64によって吸収されるため、サセプター70はハロゲンランプHLからの光をほとんど吸収しない。従って、ハロゲンランプHLからの光照射によって半導体ウェハーWが急速に昇温する一方でサセプター70はほとんど昇温しない。このため、ハロゲンランプHLによる予備加熱時には、相対的に低温のサセプター70が半導体ウェハーWに熱影響を与えることとなり、その程度は半導体ウェハーWとサセプター70との距離に依存する。
予備加熱の昇温工程にて半導体ウェハーWとサセプター70とが近接していると、昇温される半導体ウェハーWから低温のサセプター70に伝わる熱量が多くなり、半導体ウェハーWの昇温速度が低下するおそれがある。よって、昇温工程における半導体ウェハーWとサセプター70との距離である第1間隔L1は所定値以上の大きさとしておくのが好ましい。
続いて、予備加熱の保温工程に移行したときには、条件(予備加熱温度T1および昇温速度)によっては半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1を超えて上昇するオーバーシュートが生じるおそれがある。特に、予備加熱温度T1が低く、かつ、昇温工程での昇温速度が高い場合にはオーバーシュートが生じやすい。昇温工程から保温工程に移行したときに、半導体ウェハーWとサセプター70とが近接していると、予備加熱温度T1の近傍にまで昇温した半導体ウェハーWから低温のサセプター70に伝わる熱量が多くなり、昇温速度を急速に低下させてオーバーシュートを防止することができる。
保温工程における半導体ウェハーWとサセプター70との距離である第2間隔L2は、オーバーシュートが生じる程度に応じた値とするのが好ましい。すなわち、予備加熱温度T1が低く、かつ、昇温工程での昇温速度が高いほど大きなオーバーシュートが生じやすいため、第2間隔L2を小さくして半導体ウェハーWからサセプター70に伝わる熱量を多くする。逆に、予備加熱温度T1が高く、かつ、昇温工程での昇温速度が低いほどオーバーシュートが生じにくいため、第2間隔L2を大きくして半導体ウェハーWからサセプター70に伝わる熱量を少なくする。
このように、支持ピン12によって半導体ウェハーWを支持し、サセプター70を昇降させて半導体ウェハーWとサセプター70との距離を可変とすることにより、上記実施形態のように、昇温工程および保温工程のそれぞれに適切な半導体ウェハーWとサセプター70との距離とすることができる。その結果、光照射加熱時における半導体ウェハーWの温度の制御性を向上させることができる。
次に、予備加熱温度T1に保持された半導体ウェハーWにフラッシュランプFLからフラッシュ光を照射するフラッシュ加熱工程では、半導体ウェハーWとサセプター70との距離が第3間隔L3とされる。本実施形態においては、第3間隔L3は第2間隔L2よりも大きい。フラッシュ加熱工程におけるフラッシュ光の照射時間は0.1ミリセカンド以上100ミリセカンド以下程度の極めて短時間であり、そのような短時間で半導体ウェハーWからサセプター70に伝わる熱量はほとんど問題とならない程度に小さい。
但し、フラッシュ加熱時には、フラッシュ光照射によって、半導体ウェハーWの上面の温度は瞬間的に1000℃以上の処理温度T2にまで上昇する一方、その瞬間の下面の温度は予備加熱温度T1からさほどには上昇しない。すなわち、半導体ウェハーWの上面と下面とに瞬間的に大きな温度差が発生するのである。その結果、半導体ウェハーWの上面のみに急激な熱膨張が生じ、下面はほとんど熱膨張しないために、半導体ウェハーWが上面を凸とするように瞬間的に反る。このような瞬間的な反りが生じたときに、半導体ウェハーWとサセプター70とが近接していると、半導体ウェハーWの端部(エッジ)とサセプター70の上面とが接触し、サセプター70の石英が削られたり、半導体ウェハーWが割れるおそれがある。このため、フラッシュ加熱工程における半導体ウェハーWとサセプター70との距離である第3間隔L3は、フラッシュ光照射時に上面を凸とするように反った半導体ウェハーWの端部がサセプター70と接触しない大きさとしておくのが好ましい。
フラッシュ光照射時における半導体ウェハーWの反りの程度は、フラッシュランプFLの発光条件(電圧および電流の大きさ、通電時間等)によって変化する。フラッシュランプFLに印加する電圧および流れる電流が大きいほど、照射エネルギーも大きくなってフラッシュ光照射時に半導体ウェハーWの表面が急激に大きく昇温し、反りの程度も大きくなる。このため、フラッシュランプFLの発光条件に基づいて、フラッシュ光照射時に半導体ウェハーWの端部がサセプター70と接触しない程度の第3間隔L3を制御部3が規定しておくのが好ましい。これにより、フラッシュ光照射時における半導体ウェハーWとサセプター70との接触を防止して、サセプター70の石英が削られたり、半導体ウェハーWが割れたりするのを防止することができる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態においては、フラッシュ加熱工程での第3間隔L3を保温工程の第2間隔L2よりも大きくしていたが、第3間隔L3を第2間隔L2と等しくするようにしても良い。フラッシュ加熱時おける半導体ウェハーWの割れが大きな問題とならない場合には、保温工程での半導体ウェハーWのオーバーシュートを防止できる最適な第2間隔L2に第3間隔L3を一致させると良い。逆に、フラッシュ加熱時における半導体ウェハーWの割れが問題となる場合には、適切な第3間隔L3に第2間隔L2を一致させると良い。
フラッシュ加熱工程での第3間隔L3と保温工程での第2間隔L2とが等しければ、予備加熱からフラッシュ加熱工程に移行するときに、サセプター70を昇降させる必要がないため、予備加熱の保温工程終了後直ちにフラッシュランプFLからフラッシュ光を照射することができる。すなわち、上記実施形態における時刻t4から時刻t5までの時間差を無くすことができる。従って、半導体ウェハーWの1枚当たりの処理時間を短くして熱処理装置1のスループットを向上させることができる。
また、上記実施形態においては、保温工程での第2間隔L2を昇温工程での第1間隔L1よりも小さくしていたが、第2間隔L2と第1間隔L1とが等しくても良いし、第2間隔L2が第1間隔L1より大きくても良い。予備加熱の昇温工程から保温工程に移行したときに、条件によっては半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達しにくいアンダーシュートが生じることもある。特に、予備加熱温度T1が顕著に高い場合にはアンダーシュートが生じやすい。このようなアンダーシュートが生じる場合には、昇温工程から保温工程への移行時にサセプター70を下降させて第1間隔L1よりも第2間隔L2を大きくし、半導体ウェハーWから低温のサセプター70に伝わる熱量をさらに少なくしてアンダーシュートを防止する。
また、フラッシュ加熱処理が終了してハロゲンランプHLが消灯した時刻t6以降にサセプター70を上昇させて半導体ウェハーWとサセプター70との距離を第3間隔L3からさらに小さくするようにしても良い。このようにすれば、サセプター70がヒートシンクとして作用し、半導体ウェハーWからサセプター70に伝わる熱量が多くなって半導体ウェハーWの冷却効率を高めることができる。
また、上記実施形態においては、サセプター70を昇降させて半導体ウェハーWとサセプター70との距離を調整していたが、これに代えて、半導体ウェハーWを支持する支持部10の支持ピン12を昇降させて半導体ウェハーWとサセプター70との距離を調整するようにしても良い。具体的には、支持部10に支持アーム11を昇降させるための昇降駆動部(アクチュエータなど)を設ける。そして、半導体ウェハーWを支持する支持ピン12を昇降させることによって、上記実施形態と同様に半導体ウェハーWとサセプター70との距離を調整する。このようにしても、昇降工程および保温工程のそれぞれに適切な半導体ウェハーWとサセプター70との距離とすることができ、光照射加熱時における半導体ウェハーWの温度の制御性を向上させることができる。
さらには、サセプター70および支持ピン12の双方を昇降させて半導体ウェハーWとサセプター70との距離を調整するようにしても良い。要するに、支持部10に支持された半導体ウェハーWに石英のサセプター70が近接または離間するようにサセプター70を支持部10に対して相対的に昇降させる構成であれば良い。
また、上記実施形態においては、支持部10が支持アーム11に支持ピン12を立設していたが、これに代えて、石英の下側チャンバー窓64の上面に4本の支持ピン12を直接立設するようにしても良い。
また、上記実施形態においては、チャンバー6の上側にフラッシュ加熱部5を設け、下側にハロゲン加熱部4を設けるようにしていたが、これを逆にしても良い。また、半導体ウェハーWの表裏を反転させてチャンバー6内に搬入するようにしても良い。これらの場合、半導体ウェハーWの表面に対してハロゲンランプHLによる光照射が行われ、裏面にフラッシュランプFLからフラッシュ光が照射されることとなる。さらには、フラッシュランプFLを設けることなく、ハロゲンランプHLからのウェハー裏面または表面への光照射のみによって半導体ウェハーWを加熱する熱処理装置にも本発明に係る技術は適用することが可能である。この場合であっても、ハロゲンランプHLからの光照射加熱における昇温工程および保温工程のそれぞれに適切な半導体ウェハーWとサセプター70との距離とすることができ、光照射加熱時における半導体ウェハーWの温度の制御性を向上させることができる。
また、上記実施形態においては、フラッシュ加熱部5に30本のフラッシュランプFLを備えるようにしていたが、これに限定されるものではなく、フラッシュランプFLの本数は任意の数とすることができる。また、フラッシュランプFLはキセノンフラッシュランプに限定されるものではなく、クリプトンフラッシュランプであっても良い。また、ハロゲン加熱部4に備えるハロゲンランプHLの本数も40本に限定されるものではなく、任意の数とすることができる。
また、上記実施形態においては、1秒以上連続して発光する連続点灯ランプとしてフィラメント方式のハロゲンランプHLを採用し、発光時間が1秒未満のパルス発光ランプとしてフラッシュランプFLを用いていたが、連続点灯ランプとしては放電によって発光する例えばキセノンアークランプを用いるようにしても良い。
また、本発明に係る熱処理装置によって処理対象となる基板は半導体ウェハーに限定されるものではなく、液晶表示装置などのフラットパネルディスプレイに用いるガラス基板や太陽電池用の基板であっても良い。また、本発明に係る技術は、金属とシリコンとの接合、或いはポリシリコンの結晶化に適用するようにしても良い。
1 熱処理装置
3 制御部
4 ハロゲン加熱部
5 フラッシュ加熱部
6 チャンバー
10 支持部
12 支持ピン
20 昇降駆動部
70 サセプター
FL フラッシュランプ
HL ハロゲンランプ
L1 第1間隔
L2 第2間隔
L3 第3間隔
W 半導体ウェハー
3 制御部
4 ハロゲン加熱部
5 フラッシュ加熱部
6 チャンバー
10 支持部
12 支持ピン
20 昇降駆動部
70 サセプター
FL フラッシュランプ
HL ハロゲンランプ
L1 第1間隔
L2 第2間隔
L3 第3間隔
W 半導体ウェハー
Claims (14)
- 基板に光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置であって、
基板を収容するチャンバーと、
前記チャンバー内にて基板を支持する支持部と、
石英の板状部材と、
前記支持部に支持された基板に前記板状部材が近接または離間するように前記板状部材を前記支持部に対して相対的に昇降させる昇降駆動部と、
前記支持部に支持された基板に光を照射して加熱する連続点灯ランプと、
前記昇降駆動部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記連続点灯ランプからの光照射によって前記支持部に支持された基板が一定昇温速度で昇温する昇温過程では前記基板と前記板状部材との距離が第1間隔になるとともに、前記基板の昇温速度が低下して前記基板が目標温度に保持される保温過程では前記基板と前記板状部材との距離が第2間隔となるように前記昇降駆動部を制御することを特徴とする熱処理装置。 - 請求項1記載の熱処理装置において、
前記目標温度が低くなるほど前記第2間隔が小さくなることを特徴とする熱処理装置。 - 請求項1または請求項2に記載の熱処理装置において、
前記第2間隔は前記第1間隔よりも小さいことを特徴とする熱処理装置。 - 請求項1から請求項3のいずれかに記載の熱処理装置において、
前記目標温度に保持された前記基板にフラッシュ光を照射するパルス発光ランプをさらに備え、
前記制御部は、前記パルス発光ランプから前記基板にフラッシュ光を照射するときには前記基板と前記板状部材との距離を第3間隔とするように前記昇降駆動部を制御することを特徴とする熱処理装置。 - 請求項4記載の熱処理装置において、
前記制御部は、前記パルス発光ランプの発光条件に基づいて前記第3間隔を規定することを特徴とする熱処理装置。 - 請求項4または請求項5に記載の熱処理装置において、
前記第3間隔は前記第2間隔よりも大きいことを特徴とする熱処理装置。 - 請求項4または請求項5に記載の熱処理装置において、
前記第3間隔は前記第2間隔と等しいことを特徴とする熱処理装置。 - 基板に光を照射することによって該基板を加熱する熱処理方法であって、
チャンバー内にて支持部に支持された基板に連続点灯ランプから光を照射して前記基板を一定昇温速度にて昇温する昇温工程と、
前記基板の昇温速度を低下させて前記基板を目標温度に保持する保温工程と、
を備え、
前記昇温工程では前記基板と石英の板状部材との距離が第1間隔になるとともに、前記保温工程では前記基板と前記板状部材との距離が第2間隔となるように、前記板状部材を前記支持部に対して相対的に昇降させることを特徴とする熱処理方法。 - 請求項8記載の熱処理方法において、
前記目標温度が低くなるほど前記第2間隔が小さくなることを特徴とする熱処理方法。 - 請求項8または請求項9に記載の熱処理方法において、
前記第2間隔は前記第1間隔よりも小さいことを特徴とする熱処理方法。 - 請求項8から請求項10のいずれかに記載の熱処理方法において、
前記目標温度に保持された前記基板にパルス発光ランプからフラッシュ光を照射するフラッシュ加熱工程をさらに備え、
前記フラッシュ加熱工程では、前記基板と前記板状部材との距離が第3間隔となるように、前記板状部材を前記支持部に対して相対的に昇降させることを特徴とする熱処理方法。 - 請求項11記載の熱処理方法において、
前記パルス発光ランプの発光条件に基づいて前記第3間隔を規定することを特徴とする熱処理方法。 - 請求項11または請求項12に記載の熱処理方法において、
前記第3間隔は前記第2間隔よりも大きいことを特徴とする熱処理方法。 - 請求項11または請求項12に記載の熱処理方法において、
前記第3間隔は前記第2間隔と等しいことを特徴とする熱処理方法。
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- 2013-03-13 JP JP2013049869A patent/JP2014175630A/ja active Pending
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