以下、この発明を実施するための形態(以下「実施の形態」という)について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態1]
図1から図3は、実施の形態1に係る定着装置を用いた画像形成装置を示すものである。図1はその画像形成装置の全体の概要を示し、図2はその定着装置を正面側から見たときの概要を示し、図3はその定着装置を側面側(用紙出口側)から見たときの概要を示している。
実施の形態1に係る画像形成装置1は、例えばカラープリンタとして構成されたものである。この画像形成装置1は、図1に示されるように、未定着画像の一例としてのトナー像を記録用紙9に形成する画像形成手段2と、画像形成手段2で形成されたトナー像を記録用紙9に定着させる定着装置5と、その画像形成手段2、定着装置5等の動作を制御する制御装置3等を備えている。図1中の符号1aは画像形成装置の筐体を示し、一点鎖線は筐体1aの内部において記録用紙9が搬送される主な搬送経路を示す。
<画像形成手段の構成>
画像形成手段2は、現像剤を構成するトナーで現像されるトナー像を形成する複数の作像装置10と、各作像装置10で形成されたトナー像をそれぞれ一次転写により保持して最終的に記録用紙9に二次転写する二次転写位置まで搬送する中間転写装置20と、中間転写装置20の二次転写位置に供給すべき所要の記録用紙9を収容して搬送する給紙装置40とで構成されている。
作像装置10は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の4色のトナー像を電子写真方式によりそれぞれ専用に形成する4つの作像装置10Y,10M,10C,10Kで構成されている。この4つの作像装置10(Y,M,C,K)は、例えばほぼ水平方向に一列に並べた状態で配置されており、また、扱う現像剤の種類(色)が異なる点を除けば、以下に示すようにほぼ共通した構成のものである。
すなわち、各作像装置10(Y,M,C,K)は、矢印Aで示す方向に回転する感光ドラム11と、感光ドラム11の周面(像保持面)を所要の電位に帯電させる帯電装置12と、感光ドラム11の帯電された周面に画像の入力情報(信号)に基づく光を照射して静電潜像を形成する露光装置13と、その静電潜像を対応する色(Y,M,C,K)の現像剤のトナーで現像してトナー像にする現像装置14(Y,M,C,K)と、その各トナー像を中間転写装置20に転写するロール形態等の一次転写装置15と、一次転写後に感光ドラム11の像保持面に残留して付着するトナー等の付着物を取り除いて清掃するドラム清掃装置17等を備えている。
中間転写装置20は、各作像装置10(Y,M,C,K)の下方の位置に存在するように配置されている。この中間転写装置20は、感光ドラム11と一次転写装置15(一次転写ロール)の間となる一次転写位置を通過しながら矢印Bで示す方向に回転する中間転写ベルト21と、中間転写ベルト21をその内周面から所望の状態に保持して回転自在に支持する複数のベルト支持ロール22a〜22fと、中間転写ベルト21上のトナー像を記録用紙9に二次転写させるロール形態の二次転写装置25と、二次転写装置25を通過した後に中間転写ベルト21の外周面に残留して付着するトナー、紙粉等の付着物を取り除いて清掃するベルト清掃装置27等を備えている。複数のベルト支持ロール22a〜22fのうちベルト支持ロール22aは駆動ロールとして構成され、ベルト支持ロール22cは張力付与ロールとして構成されている。二次転写装置25は、中間転写ベルト21をベルト支持ロール22eに押し付けて二次転写部(二次転写位置)を構成している。
給紙装置40は、中間転写装置20及び二次転写装置25の下方側の位置に存在するように配置されている。この給紙装置40は、所望のサイズ、種類等の記録用紙9を積載した状態で収容する単数(又は複数)の用紙収容体41と、用紙収容体41から記録用紙9を1枚ずつ送り出す送出装置42とで構成されている。この給紙装置40と中間転写装置20の二次転写位置(中間転写ベルト21と二次転写装置25の接触部)との間には、給紙装置40から送り出される記録用紙9を二次転写位置まで搬送する複数の用紙搬送ロール対43a〜43cや図示しない搬送ガイド材で構成される給紙搬送路が設けられている。二次転写位置の直前の位置に配置される用紙搬送ロール対43cは、例えば記録用紙9の搬送時期を調整するロール(レジストロール)として構成されている。
また、中間転写装置20の二次転写部と定着装置5との間には、中間転写ベルト21から剥離されて送り出される二次転写後の記録用紙9を定着装置5まで搬送するためのベルト形態等の用紙搬送装置45,46が設けられている。さらに、定着装置5と筐体1aに形成される記録用紙9の排出口との間には、定着装置5から送り出される定着後の記録用紙9を筐体1aの外部に排出するための用紙排出ロール対47a,47b等で構成される排紙搬送路が設けられている。
次に、画像形成装置1による基本的な画像形成動作について説明する。ここでは、画像形成部2における上記4つの作像装置10(Y,M,C,K)を使用して、4色(Y,M,C,K)のトナー像を組み合わせて構成されるフルカラー画像を形成するときの画像形成動作を代表して説明する。
画像形成装置1は、制御装置3が画像形成動作(プリント)の要求指令を受けると、まず、画像形成手段2の各作像装置10(Y,M,C,K)において、各感光ドラム11が矢印Aで示す方向に回転し始めた後、各帯電装置12が各感光ドラム11の周面を所要の極性(実施の形態1ではマイナス極性)及び電位にそれぞれ帯電させる。続いて、露光装置13が、帯電後の感光ドラム11の周面に対して、画像形成装置1に入力される画像の情報を各色成分(Y,M,C,K)に変換して得られる画像の信号に基づく光を照射し、その周面に所要の電位からなる各色成分の静電潜像をそれぞれ形成する。
続いて、各現像装置14(Y,M,C,K)が、感光ドラム11に形成された各色成分の静電潜像に対し、所要の極性(マイナス極性)に帯電された対応する色(Y,M,C,K)のトナーを現像ロール等からそれぞれ供給して静電的に付着させて現像を行う。この現像により、各感光ドラム11には、4色(Y,M,C,K)のトナー像が専用に形成される。
続いて、各作像装置10(Y,M,C,K)の感光ドラム11上に形成された各色のトナー像が一次転写位置まで搬送されると、一次転写装置15が、その各色のトナー像を中間転写装置20の矢印Bで示す方向に回転する中間転写ベルト21の外周面に対して順番に重ね合わせるような状態で一次転写させる。これにより、中間転写ベルト21に多重のトナー像が一次転写される。一次転写が終了した各作像装置10では、ドラム清掃装置17が一次転写後の感光ドラム11の周面を清掃する。
続いて、中間転写装置20では、中間転写ベルト21の回転により一次転写された多重のトナー像を保持して二次転写位置まで搬送する。一方、給紙装置40では、作像動作に合わせて所要の記録用紙9を給紙搬送路に送り出す。給紙搬送路では、レジストロールとしての用紙搬送ロール対43cが記録用紙9を転写時期に合わせて二次転写位置に送り出して供給する。
二次転写位置においては、二次転写装置25が、中間転写ベルト21上の多重のトナー像を記録用紙9に一括して二次転写させる。また、二次転写が終了した中間転写装置20では、ベルト清掃装置27が、二次転写後の中間転写ベルト21の外周面を清掃する。
続いて、トナー像が二次転写された記録用紙9は、中間転写ベルト21から剥離された後に用紙搬送装置46,46により定着装置5まで搬送される。定着装置5では、後述するように必要な定着処理(加熱及び加圧)をして未定着のトナー像を記録用紙9に定着させる。最後に、定着が終了した後の記録用紙9は、その片面への画像の形成を行うだけの画像形成動作のときは、排紙搬送路を通して例えば筐体1aの外部に配置される図示しない排出収容部にむけて排出される。
以上の画像形成動作により、4色のトナー像を組み合わせて構成されるフルカラー画像が形成された記録用紙9が出力される。
<定着装置の構成>
次に、定着装置5について詳しく説明する。
定着装置5は、図2や図3に示されるように、無端状のベルト部材としての定着ベルト51と、定着ベルト51の内周面に接触するよう固定した状態で配置される固定部材52と、定着ベルト51の内周面に接触して定着ベルト51を固定部材52と協働して回転可能に支持する内部支持ロール53,54a〜54cと、定着ベルト51の外周面に接触して定着ベルト51を固定部材52及び内部支持ロール53,54a〜54cと協働して回転可能に支持する外部支持ロール55と、定着ベルト51を内部支持ロール53及び外部支持ロール55を介してそれぞれ加熱する加熱手段の一例としてのハロゲンヒータ56,57と、定着ベルト51を固定部材52に押し付けて未定着トナー像MTが形成された記録用紙9を通過させる定着処理部FNを形成する加圧ロール58とを、少なくとも備えている。定着処理部FNは、固定部材52に支持される定着ベルト51の部分と加圧ロール58とが接触して形成される接触部分(ニップ)であり、その接触部において未定着のトナー像MTを記録用紙9に定着させるための処理(加圧及び加熱)を行う部位である。
定着ベルト51は、例えば、無端状ベルトの基材と、基材の表面(外周面)側に形成される弾性層と、弾性層の上に形成される離型層とで構成されている。このうち基材は、ポリイミド樹脂等の材料で形成され、弾性層はシリコーンゴム等の弾性部材で形成される。離型層は、PFA(テトラフルオロエチレン−ペルフルオロアフキルビニルエーテル共重合体樹脂)等の材料で形成される。また、定着ベルト51は、そのベルト幅W(図3)が記録用紙9の搬送時の幅の最大値よりも大きい寸法に設定されており、そのベルト長が固定部材52及び複数の支持ロール53〜55に掛け回されて張架されるために必要な寸法に設定されている。
固定部材52は、固定した状態で配置される角筒状の支持体521と、支持体521の定着ベルト51の内周面と接触する面に設けた摺動部材523とで構成されている。
支持体521は、例えば鉄、ステンレス等の金属や、耐熱性を有する合成樹脂等の材料で形成されている。摺動部材523は、例えばフッ素樹脂等の材料で形成されている。また、摺動部材523の定着ベルト51の内周面と接触する部分は、例えば、平面、円筒曲面等の形状に形成されている。
内部支持ロール53は、アルミニウム等からなる円筒状のロールであり、固定部材52から最も離れた位置に回転自在な状態で配置されている。また、内部支持ロール53は、その内部空間に加熱手段の一例としてのハロゲンヒータ56が設けられており、これにより定着ベルト51をその内周面側から加熱する内部加熱ロールとして構成されている。内部支持ロール53には、その表面温度を検出する温度検出器67が設けられている。さらに、内部支持ロール53は、定着ベルト51をその内周面側から外周面側にむけて弾性的に押した状態で支持することにより所要の張力を付与する張力付与ロールとしても構成されている。
内部支持ロール54aは、定着ベルト51の固定部材52に接触する手前の姿勢を保持する進入時保持ロールであり、固定部材52の定着ベルト51が接触し始める側の接近した置に回転自在な状態で配置されている。また、内部支持ロール54bは、定着ベルト51の固定部材52を通過した後の姿勢を保持する通過後保持ロールであり、固定部材52の定着ベルト51が通過した側の接近した位置に回転自在な状態で配置されている。さらに、内部支持ロール54cは、定着ベルト51の回転走行時における姿勢を矯正する姿勢矯正ロールであり、内部支持ロール53と内部支持ロール54aの間の位置に回転自在な状態で配置されている。
外部支持ロール55は、アルミニウム等からなる円筒状のロールであり、内部支持ロール53と内部支持ロール54bの間の位置において定着ベルト51の外周面に圧接した状態でかつ回転自在な状態で配置されている。また、外部支持ロール55は、その内部空間に加熱手段の一例としてのハロゲンヒータ57が設けられており、これにより定着ベルト51をその外周面側から加熱する外部加熱ロールとして構成されている。また、外部支持ロール55には、その表面温度を検出する温度検出器68が設けられている。さらに、外部加熱ロール55は、駆動モータ等で構成される第1駆動装置61により所要の時期に回転駆動させられるよう構成されている。これにより、外部加熱ロール55は、定着ベルト51の外周面に接触して定着ベルト51を矢印Cで示す方向に回転駆動させることができるようになっている。
定着ベルト51は、固定部材52と内部支持ロール53,54に掛け回されて内周面側から支持されるとともに、外部支持ロール55により外周面側から支持されることにより回転可能になっている。また、定着ベルト51は、張力付与ロールとしての内部支持ロール53により必要な張力が付与されることにより、固定部材52を含む複数の支持ロールに張架された状態に保たれている。
加圧ロール58は、アルミニウム等からなる円筒状のロール基体581の外周面に、シリコーンゴム等からなる弾性層582と、PFA等からなる離型層583を順次積層した構造のロールである。弾性表582は、加圧ロール58が定着ベルト51を固定部材52に押し付けて定着処理部FNを形成したときに弾性変形する層であり、このため、例えば、その硬度が固定部材52の硬度よりも硬い関係になる値に設定されている。加圧ロール58は、その長さが記録用紙9の搬送時の幅の最大値よりも大きい寸法であればよく、この実施の形態1では定着ベルト51の幅Wよりも少し狭い幅に設定されている。
また、加圧ロール58は、固定部材52と向き合う位置に回転自在に支持されるとともに、加圧ロール58を次の2つの位置のいずれか一方に変位させる変位機構63により支持されている。変位機構63の変位させる2つの位置は、加圧ロール58を定着ベルト51に押し当てて上記定着処理部FNを形成する第1の位置P1(図2)と、加圧ロール58を定着ベルト51から離間させる第2の位置P2(図5)である。第1の位置P1は、換言すれば加圧ロール58が固定部材52に支持される定着ベルト51に押し当てられる圧接位置である。第2の位置P2は、換言すれば加圧ロール58が、定着ベルト51との接触状態が無くなる離間位置である。
変位機構63としては、例えば、加圧ロール58を回転自在に支持する支持フレームをカム等の変位駆動手段により変位させる仕組みのものが適用される。なお、加圧ロール58は、画像形成部2による画像形成動作が実行され、その画像形成動作の一工程としての定着動作が実行される時期に第1の位置(圧接位置)P1に変位させられるが、それ以外の時期には、後述する例外の場合を除いて原則として第2の位置(離間位置)P2に変位させられる。
さらに、加圧ロール58は、加圧機構64により固定部材52にむけて所要の圧力Fが付与されるようになっている(図3)。加圧機構64としては、バネ部材等を用いて構成されるものが適用され、また、変位機構63と組み合わせて機能するように構成される。また、加圧ロール58は、駆動モータ等で構成される第2駆動装置62により所要の時期に回転駆動させられるよう構成されている。これにより、加圧ロール58は、前記第1の位置P1に変位しているときに、固定部材52に押し付けられている定着ベルト51の外周面に接触して回転駆動することで、定着ベルト51を矢印Cで示す方向に回転させることができるようになっている。
また、定着装置5は、図2に示されるように、定着処理部FNの用紙導入側の近傍位置に、未定着のトナー像MTを保持する記録用紙9を定着処理部FNの入口にむけて案内する導入案内部材65が設けられている。また、定着処理部FNの排出側の近傍位置に、定着後の記録用紙9を定着処理部FNの出口から排出させた後に案内する排出案内部材66が設けられている。排出案内部材66のうち加圧ロール58に近い側に配置される下部案内部材66bは、定着処理部FNの出口から排出される記録用紙9を加圧ロール58の外周面から剥離させる先細り形状の剥離爪が加圧ロール58の外周面に軽く接触した状態で設けられている。また、下部案内部材66bは、変位機構63の変位可動部(フレームなど)に取り付けられており、変位機構63の変位動作に連動して変位するようになっている。さらに、定着ベルト51の内周面側には、固定部材52に接触して通過する際の摩擦抵抗を低減させるため、その内周面に対して潤滑剤を塗布する塗布装置69が設けられている。
そして、定着装置5は、図4や図5等に示されるように、例えば、そのウォームアップ動作の際に、変位機構63を作動させて加圧ロール58を上記第2の位置P2に変位させた状態に保ったうえで、内部支持(内部加熱)ロール53及び外部支持(外部加熱)ロール55のハロゲンヒータ56,57を作動させて定着ベルト51を加熱するときに、第1駆動装置61を作動させて外部支持ロール55を回転させるという制御を行う制御手段31を備えている。ウォームアップ動作は、画像形成装置1の主電源が投入されたときに、定着装置5にも必要な電力が供給されて定着動作を実行可能な状態にするために行われる準備動作である。
制御手段31は、例えば、画像形成装置1における制御装置3の一部として構成されるものである。制御手段31を含む制御装置3は、中央演算処理部、各種プログラムや各種データが格納又は記憶される記憶部、入出力部、制御部等で構成されている。制御プログラムには、定着装置5のウォームアップ動作に関して図6に例示する制御動作を実行する制御プログラムや、定着装置5の定着動作に関して図7に例示する制御動作を実行する制御プログラムが含まれる。
制御手段31には、図4に示されるように、内部ロール53及び外部ロール55の各温度検出器67,68や、加圧ロール58の駆動時間を検出する駆動時間検出器(ソフトウェア上のタイマーを含む)38が接続されており、内部加熱ロール53,55の表面温度の情報や加圧ロール58の駆動時間の情報が入力される。また、制御手段31には、内部支持(内部加熱)ロール53を直接的に加熱するハロゲンヒータ56の動作を制御する内部加熱ロールの加熱制御部32や、外部支持(外部加熱)ロール55を直接的に加熱するハロゲンヒータ57の動作を制御する内部加熱ロールの加熱制御部33や、外部支持ロール55を回転駆動させる第1駆動装置61の動作を制御する外部加熱ロールの駆動制御部34や、加圧ロール58を回転駆動させる第2駆動装置62の動作を制御する加圧ロールの駆動制御部35や、加圧ロール58を変位させる変位機構63の動作を制御する加圧ロールの変位制御部36が接続されている。制御手段31は、それら各制御部32〜36に対して制御プログラム等に基づく必要な制御情報を送信し、また必要に応じて各制御部32〜36が保有する情報を入手している。
次に、定着装置5の動作について説明する。
定着装置5は、画像形成装置1の主電源が投入されると、それに伴い定着装置5にも必要な電力が供給されてウォームアップ動作を開始する。
定着装置5のウォームアップ動作は、図5や図6に示すように、変位制御部36により変位機構63を作動させて加圧ロール58を定着ベルト51から離間させる第2の位置P2に変位させた状態に保ったうえで、加熱制御部32,33によりハロゲンヒータ56,57を作動させて内部加熱ロール53及び外部加熱ロール55を加熱することで定着ベルト51を間接的に加熱することから始められる(ステップS10)。
ここで、ウォームアップ動作の開始するときには、加圧ロール58がすでに定着ベルト51から離間した第2の位置P2にある場合を示している。しかし、仮にウォームアップ動作の開始時に加圧ロール58が第1の位置P1にある設定がされている場合には、図6に二点鎖線で示すステップS01のように、ウォームアップ動作の開始時に(ステップS10に先立って)、変位制御部36により変位機構63を作動させて加圧ロール58を第1の位置P1に変位させる制御動作が実行される。
続いて、制御手段31(制御装置3)は、温度検出器67,68でそれぞれ検出される内部加熱ロール53及び外部加熱ロール55の各表面温度が予め定める暫定温度Sx以上になるまでを検知し(S11)、その各表面温度が暫定温度Sx以上になったことが確認された後に、変位機構63を作動させて加圧ロール58を第1の位置(圧接位置)P1に変位させる制御を行う(S12)とともに、駆動制御部34,35により第1駆動装置61及び第2駆動装置62をそれぞれ作動させて外部(加熱)支持ロール55及び加圧ロール58を回転駆動させる制御を行う(S13)。
これにより、定着ベルト51は、暫定温度Sxまで加熱された後、加圧ロール58により固定部材52に押し付けられた状態になり(図2参照)、また外部(加熱)支持ロール55と加圧ロール58の回転駆動により回転動力が伝達されて矢印Cで示す方向に回転し始める。この結果、定着ベルト51は、回転して複数の支持ロール53〜55と固定部材52をそれぞれ通過しながら周回移動するとともに、内部(加熱)支持ロール53と外部(加熱)支持ロール55を通過する際にベルト内周面及び外周面からそれぞれ加熱されることになり、ベルト全周にわたって加熱され始める。
ここで、上記暫定温度Sxについては、例えば、定着ベルト51が加熱により加熱前よりも柔らかい状態になるために必要な温度(例えば100〜150℃)に設定される。この暫定温度Sxについては、内部加熱ロール53及び外部加熱ロール55とも同じ温度に設定されるが、必要であれば異なる温度に設定することもできる。また、このときの外部(加熱)支持ロール55及び加圧ロール58の回転速度については、定着動作の実行時の速度と同じ速度に設定されるが、これに限定されず、例えば定着動作の実行時の速度よりも遅い速度に設定しても構わない。
またこの際、定着ベルト51は、少なくとも上記設定温度Sx以上に加熱されることで軟化した状態になってベルト本来が有する柔軟性(フレキシビリティ)が得られるようになるので、例えば、定着ベルト51に回転前の静止しているときの形状(たとえば固定部材52の曲面角部の形状)が残った状態(型がついた状態)にある場合には、複数の支持ロール53〜55や固定部材52を柔軟に変形しながら通過して円滑に回転し易い状態になる。このため、定着ベルト51は、加圧ロール58により固定部材52に押し付けられた状態で回転動力が伝達されるときに破損することもなく良好に回転し始める。
さらに、定着ベルト51は、ウォームアップ動作の回転始動時に、外部支持ロール55の回転動力に加えて加圧ロール58の回転動力が一時的に伝達される。このため、仮に回転前の定着ベルト51の固定部材52の曲面角部と接触する前後の部分に湾曲したような型がつく場合であって回転始動がし難い状態にあったとしても、その定着ベルト51は、外部支持ロール55及び加圧ロール58の双方の回転動力を受けることで確実に回転し始める。
ちなみに、この定着装置5では「外部支持ロール55の回転動力<加圧ロール58の回転動力」という大小関係があるので、ウォームアップ動作の際に外部(加熱)支持ロール55の回動動力のみだけで定着ベルト51を回転させようとした場合、例えば、定着ベルト51に上記した型がついていると、その定着ベルト51が回転せずに停止し続けることがあり得る。この場合、その定着ベルト51は、外部(加熱)支持ロール55と内部(加熱)支持ロール53による加熱を局部的に受けることにより損傷する可能性や、さらにはその局部的に加熱された部分に過度の張力がかかることにより破断する可能性がある。
この点、この定着装置5では、定着ベルト51を外部支持ロール55の回転動力と加圧ロール58の回転動力の双方を利用して回転させるので、上記定着ベルトの回転始動不良がなく、その回転始動不良に伴う上記定着ベルトの破損や破断の可能性を抑制することができる。
また、定着装置5では、定着ベルト51の外周面に接触する外部加熱支持ロール55及び加圧ロール58からそれぞれ回転動力が伝達される。このため、この定着装置5のように定着ベルト51の内周面に潤滑剤を塗布する塗布装置69が配置されている場合でも、例えば、外部加熱支持ロール55及び加圧ロール58が潤滑剤の影響によりスリップして回転動力を十分に伝達できずに回転始動不良が発生するおそれがなく、潤滑剤が塗布される定着ベルト51であっても良好に回転始動させることができる。
続いて、制御手段31は、駆動時間検出部38により加圧ロール58の駆動時間が予め定める所要時間Txに達するまでを検知し(S14)、その駆動時間が所要時間Txに達したことが確認された後に、変位制御部36により変位機構63を作動させて加圧ロール58を第1の位置(圧接位置)P1から第2の位置(離間位置)P2に変位させる(S15)。ここで、所要時間Txについては、定着ベルト51が回転始動して1〜3周するために必要な程度の短い時間で十分であり、例えば3〜10秒に設定される。
これにより、加圧ロール58は、ウォームアップ動作の際に、定着ベルト51に接触した状態にされるが、定着ベルト51が回転始動した後に定着ベルト51から離間した状態に戻される(図5)。この結果、加圧ロール58は、前記暫定温度Sxまで少なくとも加熱され始めた定着ベルト51に接触している時間が比較的短時間で終了するので、その定着ベルト51により過度に加熱されることがない。
したがって、この定着装置5では、そのウォームアップ動作の際に、定着ベルト51の回転駆動を実現しつつも、加圧ロール58の過度の温度上昇を抑制することができる。また、ウォームアップ動作の際に加圧ロール58の過度の温度上昇が抑制されるので、そのウォームアップ動作の後にプリント動作が開始されて定着動作が実行されることがあっても、加圧ロール58が過度に加熱されることがなく、例えば、その加圧ロール58の表面に排出案内部材66bの先端部に配置された剥離爪が接触しても、加圧ロール58の表面に剥離爪の接触跡(傷)が残って画像に転写される画質不良を誘発するおそれが防止される。さらに、ウォームアップ動作において加熱される定着ベルト51の熱が加圧ロール58に奪われてウォームアップ動作の所要時間が増加してしまうことが回避される。
その後、制御手段31は、温度検出器67,68でそれぞれ検出される内部加熱ロール53及び外部加熱ロール55の各表面温度が予め定める目標温度Sn以上になるまでを検知し(S16)、その各表面温度が目標温度Sn以上になったことが確認された後に、定着動作又は待機動作に移行する(S17)。このとき、ウォームアップ動作の際にすでにプリント動作が要求されている場合にはウォームアップ動作に続いて定着動作に移行し、そのプリント動作が要求されていない場合には待機動作に移行する。待機動作は、ウォームアップ動作が終了した後に、定着動作(プリント動作)が開始されるまでの時期に行われる予備動作である。
ここで、ステップS16における目標温度Snは、ウォームアップ動作において最終的に要求される加熱温度であり、例えば130〜180℃に設定される。この目標温度Snについては、上記暫定温度Sxよりも高い温度という関係(Sn>Sx)にあり、また定着温度(範囲)の上限温度Sfmaxと同じ温度又は近い温度であるという関係にある。また、定着装置5では、定着動作又は待機動作に移行する際には、制御手段31により加熱制御部32,33が温度検出器67,68からの検出温度に基づいてハロゲンヒータ56,57の加熱動作をON/OFF制御する。これにより、内部加熱ロール53と外部加熱ロール55(ひいては定着ベルト51)が所定の設定温度に保たれるようになっている。定着動作に移行する場合の設定温度は、定着温度である。また、待機動作に移行する場合の設定温度は、待機用の低い温度である。
以上により、定着装置5のウォームアップ動作が終了する。このウォームアップ動作の実行により、定着装置5は、その定着ベルト51が少なくとも定着動作可能な程度の温度まで加熱された状態に保たれる。
また、定着装置5では、画像形成装置1(画像形成部2)がプリント動作の要求を受けると、そのプリント動作の一工程である定着動作が実行される。
定着動作の際には、制御手段31(制御装置3)が、図7に示されるように、加熱制御部32,33によりハロゲンヒータ56,57の加熱動作を温度検出器67,68からの検出温度に基づいてON/OFF制御する(S20)。つまり、内部加熱支持ロール53及び外部加熱支持ロール55の表面温度ひいては定着ベルト51の表面温度が定着温度の許容範囲に納まって保たれるようにハロゲンヒータ56,57の加熱動作がON/OFF制御(加熱又は加熱解除の制御)される。
続いて、制御手段31は、変位制御部36により変位機構63を作動させて加圧ロール58を第2の位置(離間位置)P2から第1の位置(圧接位置)P1に変位させる(S21)とともに、駆動制御部35により第2駆動装置62を作動させて加圧ロール58を回転駆動させる(S22)。定着動作の際には、第1駆動装置61を作動させず、外部加熱支持ロール55を回転自在な状態にしておく。
これにより、定着装置5では、図2に示すように、加圧ロール58が定着ベルト51を固定接触部52に押し付けて定着処理部FNを形成した状態になる。この際、加圧ロール58の弾性層582は、固定接触部52と接触して通過する部分が食い込んだ状態に弾性変形する。また、定着装置5では、定着ベルト51がそのベルト外周面に接触する加圧ロール58から回転動力を伝達されて矢印Cで示す方向に回転する。この際、外部加熱支持ロール55は、回転駆動しておらず回転自在になっており、定着ベルト51に追従して回転する。このため、定着動作の際は、定着ベルト51は、加圧ロール58の回転動力のみを受けて矢印Cで示す方向に所要の速度で回転することになる。
続いて、制御手段31では、温度検出器67,68でそれぞれ検出される内部加熱ロール53及び外部加熱ロール55の各表面温度が予め定める定着温度の許容範囲の下限温度Sfmin以上になるまでを検知し(S23)、その各表面温度が定着温度の下限温度Sfmin以上になっていることが確認されると、未定着トナー像が形成(二次転写)された記録用紙9が、定着処理部FNに導入されて定着処理が実行される制御を行う(S24)。つまり、定着ベルト51が定着温度の許容範囲に納まっているかが確認される。
このとき、未定着トナー像MTが形成(二次転写)された記録用紙9は、下部の導入案内部材65bに誘導されて定着処理部FNである定着ベルト51と加圧ロール58の間の接触部を通過する。この定着処理部FNを通過する際に、加熱及び加圧の処理を受けて未定着トナー像が記録用紙9に定着される。定着が終了した記録用紙9は、定着処理部FNから排出される。詳しくは、記録用紙9は、定着処理部FNを通過した直後の定着ベルト51と加圧ロール58の双方から剥離された後、排出案内部材66に誘導されて排出される。
続いて、制御手段31は、要求されたプリント動作で発生した定着対象のすべての定着動作が終了したか否かを確認し(S25)、そのすべての定着動作が終了していない場合には上記した定着処理動作を同様に繰り返し、一方、そのすべての定着動作が終了した場合には変位機構63を作動させて加圧ロール58を第1の位置(圧接位置)P1から第2の位置(離間位置)P2に変位させる制御を行う(S26)。
以上により定着動作が終了する。この定着動作が終了した後は、定着装置5では待機状態に移行する。
[実施の形態2]
図8及び図9は、実施の形態2に係る定着装置を示すものである。図8はその定着装置を正面側から見たときの概要を示し、図9はその定着装置を側面側(用紙出口側)から見たときの概要を示している。
実施の形態2に係る定着装置5Bは、無端状のベルト部材としての定着ベルト51と、定着ベルト51の内周面に接触するよう固定した状態で配置される固定部材52と、定着ベルト51の内周面に接触して定着ベルト51を固定部材52と協働して回転可能に支持する第1内部支持ロール53及び第2内部支持ロール54と、定着ベルト51を2つの内部支持ロール53,54を介してそれぞれ加熱する加熱手段の一例としてのハロゲンヒータ56,57と、定着ベルト51を固定部材52に押し付けて未定着トナー像MTが形成された記録用紙9を通過させる定着処理部FNを形成する加圧ロール58とを、少なくとも備えている。
定着ベルト51、固定部材52及び加圧ロール58は、実施の形態1に係る定着装置5における定着ベルト51、固定部材52及び加圧ロール58とほぼ同じ構成からなるものである。この関係で図8、図9等において実施の形態1に係る定着装置5と共通する構成部分に対しては同じ符号を付し、その説明を必要な場合以外は省略している。ちなみに、定着ベルト51は、その周長が、実施の形態1における定着ベルト51の周長よりも短い点で相違する。
1つの内部支持ロール53は、アルミニウム等からなる円筒状のロールであり、定着ベルト51が固定部材52に接触する手前側になる位置に回転自在な状態で配置されている。また、内部支持ロール53は、その内部空間にハロゲンヒータ56が設けられており、これにより定着ベルト51をその内周面側から加熱する内部加熱ロールとして構成されている。内部支持ロール53には、その表面温度を検出する温度検出器67が設けられている。さらに、内部支持ロール53は、駆動モータ等で構成される第1駆動装置61と接続されて回転駆動するようになっており、これにより定着ベルト51の外周面に接触して定着ベルト51を矢印Cで示す方向に回転駆動させる駆動ロールとして構成されている。
もう1つの内部支持ロール54は、アルミニウム等からなる円筒状のロールであり、定着ベルト51が固定部材52を通過した後の所定の位置に回転自在な状態で配置されている。また、内部支持ロール54は、その内部空間にハロゲンヒータ57が設けられており、これにより定着ベルト51をその内周面側から加熱する内部加熱ロールとして構成されている。さらに、内部支持ロール54は、定着ベルト51をその内周面側から外周面側にむけて弾性的に押した状態で支持することにより所要の張力を付与する張力付与ロールとしても構成されている。
定着ベルト51は、固定部材52と内部支持ロール53,54に掛け回されて内周面側からほぼ逆三角の形態になるよう支持されることにより回転可能になっている。また、定着ベルト51は、張力付与ロールとしての内部支持ロール54により必要な張力が付与されることにより、固定部材52を含む2つの内部支持ロール53,54に張架された状態に保たれている。
そして、この定着装置5Bは、図10、図11等に示されるように、例えば、そのウォームアップ動作の際に、変位機構63を作動させて加圧ロール58を上記第2の位置P2に変位させた状態に保ったうえで、内部支持(内部加熱)ロール53及び外部支持(外部加熱)ロール55のハロゲンヒータ56,57を作動させて定着ベルト51を加熱したときに、第1駆動装置61を作動させて外部支持ロール55を回転させる制御を行う制御手段31を備えている。
制御手段31は、実施の形態1に係る定着装置1における制御手段31(図4)とほぼ同様の構成からなるものである。ちなみに、実施の形態2における制御手段31は、図4の内容を借りて説明すれば、外部加熱ロールの加熱制御部33が2つめの内部加熱ロール54の加熱制御部33に変更され、また外部加熱ロールの駆動制御部34が内部加熱ロール54の駆動制御部34に変更され、さらに外部加熱ロールの温度検出部68が内部加熱ロール54の温度検出部68に変更されるが、それ以外においては同様の内容になる。
次に、定着装置5Bの動作について説明する。
定着装置5Bは、その定着装置5Bを装備する画像形成装置1の主電源が投入されると、それに伴い定着装置5Bにも必要な電力が供給されてウォームアップ動作を開始する。
定着装置5Bのウォームアップ動作は、図10や図11に示すように、変位制御部36により変位機構63を作動させて加圧ロール58を定着ベルト51から離間させる第2の位置P2に変位させた状態に保ったうえで、加熱制御部32,33によりハロゲンヒータ56,57を作動させて2つの内部加熱ロール53,54を加熱することで定着ベルト51を間接的に加熱することから始められる(ステップS30)。ステップS01については、前述した実施の形態1に係る定着装置5の動作の場合と同様である。
続いて、制御手段31(制御装置3)は、温度検出器67,68でそれぞれ検出される2つの内部加熱ロール53,54の各表面温度が予め定める暫定温度Sx以上になるまでを検知し(S31)、その各表面温度が暫定温度Sx以上になったことが確認された後に、変位機構63を作動させて加圧ロール58を第1の位置(圧接位置)P1に変位させる制御を行う(S32)とともに、駆動制御部34,35により第1駆動装置61及び第2駆動装置62をそれぞれ作動させて内部支持ロール53及び加圧ロール58を回転駆動させる制御を行う(S33)。
これにより、定着ベルト51は、暫定温度Sxまで加熱された後、加圧ロール58により固定部材52に押し付けられた状態になり(図8参照)、また内部支持ロール53と加圧ロール58の回転駆動により回転動力が伝達されて矢印Cで示す方向に回転し始める。この結果、定着ベルト51は、回転して2つの支持ロール53,54と固定部材52をそれぞれ通過しながら周回移動するとともに、2つの内部(加熱)支持ロール53,54を通過する際にベルト内周面からそれぞれ加熱されることになり、ベルト全周にわたって加熱され始める。
またこの際、定着ベルト51は、少なくとも上記設定温度Sx以上に加熱されることで軟化した状態になってベルト本来が有する柔軟性が得られるようになるので、例えば、定着ベルト51に回転前の静止しているときの形状が残った状態(型がついた状態)にある場合には、3つの支持ロール53,54や固定部材52を柔軟に変形しながら通過して円滑に回転し易い状態になる。このため、定着ベルト51は、加圧ロール58により固定部材52に押し付けられた状態で回転動力が伝達されるときに破損することもなく良好に回転し始める。
さらに、定着ベルト51は、ウォームアップ動作の回転始動時に、内部支持ロール53の回転動力に加えて加圧ロール58の回転動力が一時的に伝達される。このため、仮に回転前の定着ベルト51の固定部材52の曲面角部と接触する前後の部分に湾曲したような型がつく場合であって回転始動がし難い状態にあったとしても、その定着ベルト51は、内部支持ロール53及び加圧ロール58の双方の回転動力を受けることで確実に回転し始める。
ちなみに、この定着装置5Bでは「内部支持ロール53の回転動力<加圧ロール58の回転動力」という大小関係があるので、ウォームアップ動作の際に内部(加熱)支持ロール53の回動動力のみだけで定着ベルト51を回転させようとした場合、例えば、定着ベルト51に上記した型がついていると、その定着ベルト51が回転せずに停止し続けることがあり得る。しかし、この定着装置5Bでは、定着ベルト51を内部支持ロール53の回転動力と加圧ロール58の回転動力の双方を利用して回転させるので、上記定着ベルトの回転始動不良がなく、その回転始動不良に伴う上記定着ベルトの破損や破断の可能性を抑制することができる。
また、定着装置5Bでは、定着ベルト51の外周面に接触する加圧ロール58から回転動力が(一時的に)伝達される。このため、この定着装置5Bのように定着ベルト51の内周面に潤滑剤を塗布する塗布装置69が配置されている場合でも、少なくとも加圧ロール58が潤滑剤の影響によりスリップして回転動力を十分に伝達できずに回転始動不良が発生するおそれがなく、潤滑剤が塗布される定着ベルト51であっても良好に回転始動させることができる。
続いて、制御手段31は、駆動時間検出部38により加圧ロール58の駆動時間が予め定める所要時間Txに達するまでを検知し(S34)、その駆動時間が所要時間Txに達したことが確認された後に、変位制御部36により変位機構63を作動させて加圧ロール58を第1の位置(圧接位置)P1から第2の位置(離間位置)P2に変位させる制御を行う(S35)。
これにより、加圧ロール58は、ウォームアップ動作の際に、定着ベルト51に接触した状態にされるが、定着ベルト51が回転始動した後に定着ベルト51から離間した状態に戻される(図10)。この結果、加圧ロール58は、前記暫定温度Sxまで少なくとも加熱され始めた定着ベルト51に接触している時間が比較的短時間で終了するので、その定着ベルト51により過度に加熱されることがない。
したがって、この定着装置5Bでは、そのウォームアップ動作の際に、定着ベルト51の回転駆動を実現しつつも、加圧ロール58の過度の温度上昇を抑制することができる。また、ウォームアップ動作の際に加圧ロール58の過度の温度上昇が抑制されるので、そのウォームアップ動作の後にプリント動作が開始されて定着動作が実行されることがあっても、実施の形態1に係る定着装置5の場合と同様に、前述したとおり加圧ロール58の表面に剥離爪の接触跡(傷)が残って転写されることに起因した画質不良の誘発が防止される。さらに、ウォームアップ動作において加熱される定着ベルト51の熱が加圧ロール58に奪われてウォームアップ動作の所要時間が増加してしまうことが回避される。
その後、制御手段31は、温度検出器67,68でそれぞれ検出される内部加熱ロール53,54の各表面温度が予め定める目標温度Sn以上になるまでを検知し(S36)、その各表面温度が目標温度Sn以上になったことが確認された後に、定着動作又は待機動作に移行する制御を行う(S37)。
以上により、定着装置5Bのウォームアップ動作が終了する。このウォームアップ動作の実行により、定着装置5Bは、その定着ベルト51が少なくとも定着動作可能な程度の温度まで加熱された状態に保たれる。
また、この定着装置5Bにおいても、画像形成装置1(画像形成部2)がプリント動作の要求を受けると、そのプリント動作の一工程である定着動作が実行される。
この定着装置5Bによる定着動作は、実施の形態1に係る定着装置5による定着動作(図7)とほぼ同じである。また、この定着装置5Bの定着動作においても、定着ベルト51の回転駆動については、加圧ロール58の回転動力のみを利用して行い(図7に示すステップ22の動作を参照)、駆動ロールでもある内部支持ロール53の回転動力は利用しない。
[他の実施の形態]
実施の形態1,2では、定着装置のウォームアップ動作の際に、加圧ロール58を第2の位置(離間位置)P2から第1の位置(接触位置)P1に一時的に変位させて回転駆動させる制御を行う構成(図6に示すステップS12,S13,S15の動作を参照)を示したが、これに限定されず、例えば、ウォームアップ動作の際には、加圧ロール58を第2の位置(離間位置)P2に変位させ続けて加圧ロール58の回転駆動もしない制御を行うように構成することもできる。この構成の場合であっても、ウォームアップ動作の際には、外部支持ロール55の回転動力により定着ベルト51を回転駆動させることが可能になるときもある。ちなみに、この構成の場合において外部支持ロール55の回転動力により定着ベルト51を回転駆動させることができないケースとしては、固定部材52が大きな曲率の部位を有しており、冷えているときの定着ベルト51に固定部材52の大きな曲率の部位の形状が型として付いたような場合があり得る。
また、実施の形態1,2では、定着装置のウォームアップ動作の際に、定着ベルト51を内部加熱支持ロール53と外部加熱支持ロール55により所要の暫定温度Sx以上になるまで加熱した後に加圧ロール58を第1の位置(接触位置)P1に一時的に変位させて回転駆動させる制御を行う構成(図6に示すステップS10〜S13の動作を参照)を示したが、これに限定されず、加熱を開始してから所定の時間が経過した後に加圧ロール58を第1の位置(接触位置)P1に一時的に変位させて回転駆動させる制御を行う構成にしても構わない。
さらに、実施の形態1,2では、固定部材52(の内部)にハロゲンヒータ等の加熱手段を設けてもよい。この場合、固定部材52の定着ベルト51を介して加圧ロール58と接触する部分の温度を計測する温度検出手段などを設け、固定部材52の加熱手段の動作を制御するようにすればよい。また、定着ベルト51を加熱する加熱手段としては、実施の形態1,2で例示したような定着ベルト51を支持する支持ロールを介して加熱する構成のものに限らず、定着ベルト51を加熱するだけの機能を有する専用の加熱手段を採用してもよい。
また、実施の形態1では、定着装置5の定着ベルト51を支持する複数の支持ロール53〜55のうち外部支持ロール55を駆動ロールとして構成した場合を示したが、これに限定されず、例えば、外部支持ロール55に代えて内部支持ロール53を駆動ロールとして構成することも可能である。また、実施の形態1,2では、外部支持ロール55又は内部支持ロール53と加圧ロール58とを別々の第1駆動装置61又は第2駆動装置62で回転駆動させる構成を示したが、これに限定されず、外部支持ロール55又は内部支持ロール53と加圧ロール58とを1つの駆動装置で回転動力を分配して回転駆動させる構成を採用してもよい。さらに、実施の形態1,2では、定着装置5,5Bにおける変位機構63の変位させる第2の位置P2として、加圧ロール58を定着ベルト51から離間させる離間位置に変位させる構成を示したが、その第2の位置P2としては、定着ベルト51と接触しているがその接触状態が定着動作時の加圧状態(圧力)よりも弱まる位置に加圧ロール58を変位させる構成を適用してもよい。
この他、定着装置5,5Bを用いる画像形成装置1については、未定着トナー像を記録用紙9等の被記録材に形成する画像形成手段を備えたものであれば、単色画像を形成する画像形成装置であっても、実施の形態1,2で例示した色や種類の画像以外の画像を形成することができる画像形成装置であっても勿論差し支えない。